JP2022010459A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル特性に優れ、長寿命であるリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】正極2と、負極3と、電解液とを備える、リチウムイオン二次電池であって、正極は、集電体と正極合剤2Mとを有し、正極合剤は、正極活物質と炭素被覆アルミニウム酸化物とを含み、集電体は、金属薄膜(基材2S)とその表面に形成された炭素層2Cとを有する。そして、正極活物質は、リチウムとニッケルを含む複合酸化物を含み、複合酸化物のリチウムに対するニッケルの組成は、0.5以上1未満である。このように、正極において、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることにより、正極活物質の結晶構造を安定化し、また、集電体を構成する金属薄膜の腐食を抑制することができ、正極活物質として高ニッケルの複合酸化物を用いた場合においても、50℃サイクル特性の向上を図ることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度の二次電池であり、その特性を活かして、ノートパソコンや携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。リチウムイオン二次電池の形状には種々のものがあるが、円筒形リチウムイオン二次電池は、正極、負極及びセパレータの捲回式構造を採用している。例えば、2枚の帯状の金属箔に正極材料及び負極材料をそれぞれ塗着し、その間にセパレータを挟み込み、これらの積層体を渦巻状に捲回することで捲回群を形成する。この捲回群を、電池容器となる円筒形の電池缶内に収納し、電解液を注液後、封口することで、円筒形リチウムイオン二次電池が形成される。
円筒形リチウムイオン二次電池としては、18650型リチウムイオン二次電池が、民生用リチウムイオン二次電池として広く普及している。18650型リチウムイオン二次電池の外径寸法は、直径18mmで、高さ65mm程度の小型である。18650型リチウムイオン二次電池の正極活物質には、高容量、長寿命を特徴とするコバルト酸リチウムが主として用いられており、電池容量は、おおむね1.0Ah~2.0Ah(3.7Wh~7.4Wh)程度である。
例えば、特許文献1には、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物を含有する正極活物質層と、前記正極活物質層の表面上に設けられる水分吸収層を備え、前記水分吸収層は、比表面積が10~30m/gの粒子Aを含む、リチウムイオン二次電池用電極が開示されている。このように水分吸収層を設けることで、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物を正極活物質として用いた場合でも、水分の影響を受けにくく、その結果、サイクル特性の良好なリチウムイオン二次電池を提供できる技術が開示されている。
特開2020-21553号公報
リチウムイオン二次電池は、近年、電気自動車、ハイブリッド型電気自動車等に用いられる高出力用電源としても注目されている。このような自動車分野への適用において、高出力化、高容量化及び高温での長寿命化が要求されている。
上記特許文献1に記載のリチウムイオン二次電池は、正極に水分吸収層を設けることで、水分の影響を受けにくくし、サイクル特性の良好なリチウムイオン二次電池を提供するものであるが、正極集電体上に正極活物質層を介して水分吸収層を設けるため、水分吸収層を塗工するため製造工程が必要であり、また、正極に表層の水分吸収層が電極内部へのイオン拡散を阻害する可能性がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、リチウムとニッケルを含む複合酸化物を正極活物質として用いた場合でも、水分の影響を低減し、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
[1]本発明の一実施の形態におけるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液とを備える、リチウムイオン電池であって、前記正極は、集電体と前記集電体に形成された正極合剤とを有し、前記正極合剤は、正極活物質と表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物とを含み、前記集電体は、金属薄膜と前記金属薄膜の表面に形成された炭素層とを有し、前記正極活物質は、リチウムとニッケルを含む複合酸化物を含み、前記複合酸化物のリチウムに対するニッケルの組成は、0.5以上1未満である。
[2]上記[1]のリチウムイオン二次電池において、前記複合酸化物のリチウムに対するニッケルの組成は、0.6以上0.8以下である。
[3]上記[2]のリチウムイオン二次電池において、前記複合酸化物は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(NCA)またはリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物(NCM)である。
[4]上記[3]のリチウムイオン二次電池において、前記正極活物質は、他の複合酸化物として、リチウムマンガン系酸化物(LMO)を含む。
[5]上記[2]のリチウムイオン二次電池において、前記アルミニウム酸化物はイモゴライトである。
[6]上記[5]のリチウムイオン二次電池において、前記金属薄膜は、アルミニウム箔である。
[7]上記[1]のリチウムイオン二次電池において、50℃でのサイクル特性であって、50℃において、1Cの電流で4.2Vまで充電し、1Cの電流で3.0Vまで放電する充放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する80サイクル目の放電容量の割合である、80サイクル目の容量維持率が70%以上である。
本発明によれば、サイクル特性に優れ、長寿命であるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
実施の形態のリチウムイオン二次電池の構成を示す図である。 炭素層を設けていない金属薄膜を集電体とした場合の腐食の様子を示す断面図である。 ラミネート型のリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。 ラミネート型のリチウムイオン二次電池の電極群の構成を示す分解斜視図である。 円柱状のリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す断面斜視図である。 実施例のラミネート型のリチウムイオン二次電池の外観写真である。 初期の放電負荷特性を示すグラフである。 初期の充電負荷特性を示すグラフである。 サイクル特性を示すグラフである。
以下の実施の形態において、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する場合がある。また、A~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態)
まず、リチウムイオン二次電池の概要について簡単に説明する。リチウムイオン二次電池は、電池容器と、その内部に収容されている正極と負極とセパレータと電解液とを有している。正極と負極との間には、セパレータが配置されている(図1等参照)。
リチウムイオン二次電池を充電する際には、正極と負極との間に充電器を接続する。充電時においては、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液中に放出される。電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータを通過して、負極に到達する。この負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。
放電する際には、正極と負極との間に外部負荷を接続する。放電時においては、負極活物質内に挿入されていたリチウムイオンが脱離して電解液中に放出される。このとき、負極から電子が放出される。そして、電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータを通過して、正極に到達する。この正極に到達したリチウムイオンは、正極を構成する正極活物質内に挿入される。このとき、正極活物質にリチウムイオンが挿入することにより、正極に電子が流れ込む。このようにして、負極から正極に電子が移動することにより放電が行われる。
このように、リチウムイオンを正極活物質と負極活物質との間で挿入・脱離することにより、充放電することができる。
図1は、本実施の形態のリチウムイオン二次電池の構成を示す図である。なお、図1(A)は、電池の模式的な断面図を、図1(B)は、正極の部分拡大断面図を、図1(C)は、正極合材中の炭素被覆アルミニウム酸化物の拡大写真を示す。また、リチウムイオン二次電池のより詳細な構成例については、後述する(例えば、図3~図5参照)。
図1(A)に示すように、リチウムイオン電池は、正極2と、負極3と、これらの間に配置されたセパレータ4と、電解液(図示せず)とを有している。正極2と、セパレータ4と、負極3との積層体を電極群と言う場合がある。
正極2は、集電体(2S、2C)及びその上部に形成された正極合剤2Mよりなる。正極合剤2Mは、集電体(2S、2C)の上部に設けられた少なくとも正極活物質を含む層である。
負極3は、集電体3S及びその上部に形成された負極合剤3Mよりなる。負極合剤3Mは、集電体3Sの上部に設けられた少なくとも負極活物質を含む層である。なお、図1では合剤同士が対向配置するように示されている。
ここで、本実施の形態においては、正極活物質として高ニッケルのリチウムを含む複合酸化物を用いており、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、正極用の集電体として炭素被覆金属薄膜を用いている。炭素被覆アルミニウム酸化物は、図1(B)に示すように、アルミニウム酸化物のコアと、その外周の炭素の被覆層とを有する。例えば、図1(C)からも、アルミニウム酸化物(ここでは、イモゴライト)のコアに、炭素の被覆層が形成されていることが確認できる。また、正極用の集電体となる炭素被覆金属薄膜は、図1(B)に示すように、金属薄膜よりなる基材2Sと、被覆層となる炭素層(炭素コートとも言う)2Cとを有する。
かかる構成によれば、正極活物質の結晶構造を安定化し、また、集電体を構成する金属薄膜の腐食を抑制することができ、正極活物質として高ニッケルの複合酸化物を用いた場合においても、電池の50℃サイクル特性の向上、即ち、電池の長寿命を図ることができる。
これに対し、集電体を構成する金属薄膜(ここでは、アルミニウム箔)の表面に炭素層を設けていない場合には、図2に示すように、金属薄膜(基材2S)の腐食により、複数のホールhが確認されている。図2は、炭素層を設けていない金属薄膜(ここでは、アルミニウム箔)を集電体とした場合の腐食の様子を示す断面図である。
次に、本実施の形態におけるリチウムイオン電池の構成要素である正極と負極と電解液とセパレータとその他の構成部材とに関して順次説明する。
1.正極
本実施形態の正極(正極板)は、前述したように、集電体及びその上部に形成された正極合剤よりなる。正極合剤は、集電体の上部に設けられた少なくとも正極活物質を含む層であり、本実施の形態においては、スピネル型リチウムマンガン酸化物(LMO)と、ニッケル酸リチウム(NCA)とを含む。また、本実施の形態において、正極合剤は、正極活物質に加え、炭素被覆アルミニウム酸化物を含む。なお、正極合剤中には、導電剤、結着剤などが含まれていてもよい。正極用の集電体は、集電箔(Al箔)に、炭素層(炭素コートとも言う)を設けたものを用いることができる。
上記正極合剤は、例えば、集電体の片面または両面に形成(塗布)されていてもよい。
(正極活物質)
LMO(リチウムマンガン系酸化物)としては、以下の組成式(化1)で表されるものを用いることが好ましい。Li(1+η)Mn(2-λ)M’λ …(化1)
上記組成式(化1)において、(1+η)はLiの組成比、(2-λ)はMnの組成比、λは元素M’の組成比を示す。O(酸素)の組成比は4である。
元素M’は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Al、Ga、Zn(亜鉛)、及びCu(銅)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
0≦η≦0.2、0≦λ≦0.1である。
上記組成式(化1)における元素M’としては、MgまたはAlを用いることが好ましい。MgやAlを用いることにより、電池の長寿命化を図ることができる。また、電池の安全性の向上を図ることができる。
正極活物質としてLMOを含む場合、充電状態において化合物中のMnが安定であるため、充電反応による発熱を抑制できる。これにより、電池の安全性を向上させることができる。すなわち、正極における発熱を抑制でき、電池の安全性を高めることができる。
NCA(リチウムとニッケルを含む複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物)としては、以下の組成式(化2)で表されるものを用いることが好ましい。
LiNiCoAl …(化2)
上記組成式(化2)において、wはNi(ニッケル)の組成比、xはCo(コバルト)の組成比、yはAl(アルミニウム)の組成比を示す。zは、元素Mの組成比を示す。O(酸素)の組成比は2である。
元素Mは、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、及びSn(錫)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素である。w、x、y、zは、0.5≦w<1、0<x≦0.6、0<y≦0.3、0≦z≦0.3であり、かつ、3w+3x+3y+(Mの価数)×z=3である。
このNCAは、NCM(リチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物)に類似した化合物であるが、NCMよりニッケルをより多く含み、マンガンの代わりにアルミニウムが使用されているため変質しにくく、発火性も低い。また、NCMと比較し、正極と負極の電位差を大きくでき、ニッケルの量に応じて、容量を大きくすることができる。かかる観点から、リチウムに対するニッケルの組成は、0.5以上1未満が好ましく、0.6以上0.8以下がより好ましい。即ち、0.5≦w<1が好ましく、0.6≦w≦0.8がより好ましい。このように、本実施の形態において用いられるNCAは、高ニッケルのリチウムを含む複合酸化物である。
このように、正極活物質として、LMOとNCAとの混合物を用いることで、高容量化しても、充電時の正極の安定性を高め、発熱を抑制することができる。その結果、安全性に優れた電池を提供することができる。
NCAの含有量は、電池の高容量化の観点から、正極合剤の全量に対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
正極活物質に適用するNCAの粒子としては、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等のものが用いられる。中でも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
電池のような電気化学素子においては、その充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パスの切断等の劣化が生じやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子を用いるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものを用いる方が、膨張収縮のストレスを緩和し、上記劣化を防ぐことができるため好ましい。また、板状等の軸配向性の粒子よりも球状ないし楕円球状の粒子を用いる方が、電極内における配向が少なくなるため、充放電時の電極の膨張収縮が小さくなり好ましい。また、電極の形成時において、導電材等の他の材料とも均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質に適用するNCA粒子のメジアン径D50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子のメジアン径D50)について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、上限は、20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。上記下限未満では、タップ密度(充填性)が低下し、所望のタップ密度が得られなくなる恐れがあり、上記上限を超えると粒子内のリチウムイオンの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下を招く恐れがある。また、上記上限を超えると、電極の形成時において、結着材や導電材等の他の材料との混合性が低下する恐れがある。よって、この混合物をスラリー化し塗布する際に、均一に塗布できず、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、正極活物質として、異なるメジアン径D50をもつものを2種類以上混合することで、タップ密度(充填性)を向上させてもよい。なお、メジアン径D50は、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布から求めることができる。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合における一次粒子の平均粒径について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.08μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、上限は、3μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子が形成し難くなり、タップ密度(充填性)の低下や、比表面積の低下により、出力特性等の電池性能が低下する恐れがある。また、上記下限未満では、結晶性の低下により、充放電の可逆性が劣化する等の問題を生ずる恐れがある。
NCA粒子のBET比表面積について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1m/g以上、好ましくは0.3m/g以上、さらに好ましくは0.4m/g以上であり、上限は、4.0m/g以下、好ましくは2.5m/g以下、さらに好ましくは1.5m/g以下である。上記下限未満では、電池性能が低下する恐れがある。上記上限を超えるとタップ密度が上がりにくくなり、結着材や導電材等の他の材料との混合性が低下する恐れがある。よって、この混合物をスラリー化し塗布する際の塗布性が劣化する恐れがある。BET比表面積は、BET法により求められた比表面積(単位gあたりの面積)である。
(炭素被覆アルミニウム酸化物)
炭素被覆アルミニウム酸化物は、正極合剤中の水分や不所望な金属(金属イオン)の吸着剤としての役割を果たす。本実施の形態においては、粒子状のアルミニウム酸化物の表面の一部又は全部が炭素で被覆された構造を有する。アルミニウム酸化物としては、例えば、アルミニウムケイ酸化合物(アルミニウムケイ酸塩)が挙げられる。アルミニウムケイ酸化合物は、SiとAlの酸化物塩である。SiとAlは価数が異なるため、SiとAlとの酸化物塩にはOH基が多く存在し、これがイオン交換能を有している。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alは、0.1以上4.0未満であることが好ましく、0.2以上3.0以下であることがより好ましく、0.4以上2.5以下であることがさらに好ましい。元素モル比が上記範囲であると、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能に優れ、サイクル特性が向上する傾向にある。
なお、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物におけるケイ素とアルミニウムの元素モル比Si/Alは、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(例えば、株式会社日立製作所、P-4010)を用いて、常法により元素分析を行うことにより求めることができる。
アルミニウムケイ酸化合物としては、例えば、アルミニウムケイ酸塩であるアロフェン、カオリン、ゼオライト、サポナイト、及びイモゴライト、並びに無定形アルミニウムケイ酸化合物が挙げられる。これらの中でも、サイクル特性向上のための比表面積の調整が容易な観点から、アルミニウムケイ酸化合物としては、無定形アルミニウムケイ酸化合物が好ましい。このような無定形アルミニウムケイ酸化合物は、例えば、nSiO・Al・mHO[n=0.6~10.0、m=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
無定形アルミニウムケイ酸塩は、X線源としてCuKa線を用いた粉末X線回折スペクトルにおいて、ムライト構造を示すピークが観測されず、2θ=10°~30°近辺にブロードなピークを有する。X線回折装置としては、例えば、株式会社リガク製のGeigerflex RAD-2Xを用いることができる。具体的な測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.30mm
X線出力:40kV、40mA
アルミニウムケイ酸化合物の表面を炭素で被覆する方法は特に制限されない。例えば、熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)をアルミニウムケイ酸化合物に付着させ、これに対して熱処理を行って有機化合物を炭素質に変化させる方法が挙げられる。アルミニウムケイ酸化合物に有機化合物を付着させる方法としては、有機化合物を溶媒に溶解又は分散させた混合溶液に核となる粒子状のアルミニウムケイ酸化合物を添加した後、溶媒を加熱等で除去する湿式法;粒子状のアルミニウムケイ酸化合物と固体状の有機化合物とを混合して得られた混合物にせん断力を加えながら混練して被覆させる乾式法;CVD(Chemical Vapor Deposition)等の気相法;などが挙げられる。製造コスト及び製造プロセスの低減の観点からは、溶媒を使用しない乾式法及び気相法が好ましい。
熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)としては特に制限されない。有機化合物としては、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等の熱分解により生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等のピッチ;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂;などが挙げられる。これらの有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機化合物を表面に付着させたアルミニウムケイ酸化合物を熱処理する際の条件は、有機化合物の炭素化率を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、800℃~1300℃の熱処理温度であることが好ましい。熱処理温度が800℃以上であると、有機物の焼成が充分に進み、比表面積が高すぎることによる初回の不可逆容量の増大が抑制される傾向にある。また、熱処理温度が1300℃以下であると、比表面積が低すぎて抵抗が上昇するのが抑制される傾向にある。また、熱処理は不活性雰囲気で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム及びこれらの組み合わせが挙げられる。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、例えば、80m/g以下であることが好ましく、サイクル特性及び保存特性をより向上させる観点から、40m/g以下であることがより好ましく、20m/g以下であることがさらに好ましい。また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、フッ化水素(HF)及び金属イオンの吸着能をより向上させる観点から、1m/g以上であることが好ましく、2m/g以上であることがより好ましく、3m/g以上であることがさらに好ましい。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のBET比表面積は、正極活物質のBET比表面積と同様に、JIS Z 8830:2001に準じて、77Kでの窒素吸着能から測定する。
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、電池容量及びサイクル特性をより向上させる観点から、示差熱-熱重量分析装置(TG-DTA)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス、TG-DTA-6200)を用いて測定される25℃~350℃の範囲での重量減少率(D1)が、例えば、5質量%未満であることが好ましく、4質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることがさらに好ましい。重量減少率(D1)は、実用的な観点から、例えば、0.01質量%以上であることが好ましい。
また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物は、入出力特性及びサイクル特性をより向上させる観点から、示差熱-熱重量分析装置(TG-DTA)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス、TG-DTA-6200)を用いて測定される350℃~850℃の範囲での重量減少率(D2)が、例えば、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることがさらに好ましい。重量減少率(D2)が上記範囲内であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物と電解液とが反応することによる抵抗の上昇がより抑制される傾向にあり、また、フッ化水素(HF)、金属イオン等の吸着能がより向上する傾向にある。
重量減少率(D1)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、25℃から350℃まで昇温することで測定できる。重量減少率(D1)は、下式(1)にて求められた値とする。式中のW0は25℃での質量であり、W1は350℃での質量である。
D1(%)={(W0-W1)/W0}×100 …式(1)
重量減少率(D2)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、350℃から850℃まで昇温し、850℃で20分間保持した際の質量から測定できる。重量減少率(D2)は、下式(2)にて求められた値とする。式中のW1は350℃での質量であり、W2は850℃での質量である。
D2(%)={(W1-W2)/W1}×100 …式(2)
炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(体積平均粒子径、D50)は特に制限されず、最終的な所望の大きさに合わせて選択できる。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(D50)は、例えば、0.1μm~50μmであることが好ましく、0.5μm~10μmであることがより好ましい。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(D50)が0.1μm以上であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する際のスラリーの粘度の上昇が抑制され、作業性が良好に維持される傾向にある。また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(D50)が50μm以下であると、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物層を形成する際のスジの発生が抑制される傾向にある。炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(D50)は、フッ化水素(HF)、金属イオン等の吸着能をより向上させる観点からは、8μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
なお、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のメジアン径(D50)は、正極活物質のメジアン径(D50)と同様に、レーザー回折散乱法により求めた粒度分布から求めることができる。
また、炭素被覆アルミニウムケイ酸化合物のマンガンイオン吸着能は、5mg/g以上が好ましい。この金属イオン吸着能は、例えば、次のようにして測定することができる。所定の濃度(X)のMn(Mnイオン)を電解液に溶解させた溶液とアルミニウムケイ酸化合物を接触させた後、24時間静置後、上澄み液を0.45μmのフィルタでろ過してICP-AESなどによりろ液中のMnの濃度(Y)を測定し、(X-Y)×100/Xから吸着率(%)を算出する。
(正極用導電材)
正極用の導電材としては、例えば、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
正極用の導電材としては、アセチレンブラックを含むことが好ましい。前記アセチレンブラックは、平均粒径が20nm以上100nm以下の粒子が好ましく、この粒径範囲であれば特に制限はない。ここで粒子とは、例えば、粒状、フレーク状、球状、柱状、不規則形状などが挙げられる。前記「粒状」とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000)。前記フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも言われ、本発明においては、SEM観察の結果から解析を行い、アスペクト比(粒子径a/平均厚さt)が2~100の範囲を片状とする。ここでいう粒子径aは、片状の粒子を平面視したときの面積Sの平方根として定義するものとし、これを本願の粒径とする。前記「球状」とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。また、形状は必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数あるいは真球度と言うことがある)が1.0~1.2の範囲にあるものとし、粒径とは長径(DL)を指すものとする。前記柱状とは、略円柱、略多角柱等が挙げられ、粒径とは柱の高さを指すものとする。
導電材に含まれるアセチレンブラックは平均粒径が100nmを超えると、正極活物質との接触点が少なくなって活物質間の導電網が阻害され、電池の入出力特性が低下する傾向がある。また、平均粒径が20nm未満になると、正極合剤中での分散性が悪くなり、アセチレンブラックの偏析等の悪影響によって電池性能の低下が顕著になる。このように、アセチレンブラックの平均粒径は、20nm以上100nm以下が好ましいが、30nm以上80nm以下であることより好ましく、40nm以上60nm以下であることが特に好ましい。
なお、導電材の平均粒径は、20万倍で撮影した走査型電子顕微鏡により撮影し、画像内粒子像の全ての径を測定した算術平均粒子径である。
導電材の含有量は、正極合剤の全量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい、導電材の含有量の上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性に優れたものとなる。
さらに、前記導電材に含まれるアセチレンブラックの含有量は、導電性と高容量化の観点から、正極合剤全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、2質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性に優れたものとなる。
(正極用結着材)
正極用の結着材としては、特に限定されず、塗布法により正極合剤を形成する場合には、分散溶媒に対する溶解性や分散性が良好な材料が選択される。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。正極の安定性の観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子を用いることが好ましい。
正極合剤の全量に対する結着材の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、サイクル特性等の電池性能をより良好なものとすることができる。
(その他)
正極合剤は、上記正極活物質、炭素被覆アルミニウム酸化物、導電材、結着材の他、必要に応じて用いられる増粘材などの他の材料が含まれていてもよい。
(正極合剤の製法)
前述したように、正極合剤(正極活物質、導電材、結着材、及び必要に応じて用いられる増粘材などの他の材料)は、乾式で混合してシート状にし、これを集電体に圧着する(乾式法)。また、正極合剤(正極活物質、導電材、結着材、及び必要に応じて用いられる増粘材などの他の材料)を、分散溶媒に溶解または分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布し、乾燥する(湿式法)。
上記湿式法や乾式法を用いて集電体上に形成された層は、正極活物質の充填密度を向上させるため、ハンドプレスやローラープレス等により圧密化することが好ましい。
本実施の形態で使用する正極合剤は、密度が2.4g/cm以上3.3g/cm以下で、集電体への片面塗布量が7mg/cm以上25mg/cm以下であることが好ましい。
(集電体)
正極用の集電体としては、炭素被覆金属薄膜を用いることができる。本実施の形態では、炭素被覆アルミニウム箔を集電体として用いる。炭素被覆アルミニウム箔は、基材(2S)であるアルミニウム箔と、その表面に設けられた炭素層(2C)とを有する(図1(B)参照)。この炭素被覆アルミニウム箔は、アルミニウム箔上に、カーボン粒子をアルミカーバイドウィスカーで固定することにより形成することができる。具体的には、アルミニウム箔の表面に炭素材料を付着させた後に、メタンやエタンなどの炭化水素を含む雰囲気中で加熱する。加熱温度は、例えば、400~650℃である。炭素層の厚さとしては、0.5~3μmが好ましい。
正極用の集電体(基材)の材質としては特に制限はなく、具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。アルミニウムとしては、純アルミニウムの他、アルミニウム合金を用いてもよい。基材の厚さとしては、例えば、1~100μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。炭素材料としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などを用いることができる。
このような炭素被覆アルミニウム箔は、例えば、トーヤルカーボ(東洋アルミ社製)などとして市販されている。
なお、上記においては箔状(平板状の薄膜)の集電体について説明したが、集電体の形状としては特に制限はなく、種々の形状に加工された材料を用いることができる。具体例としては、金属材料については、金属箔の他、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
2.負極
本実施形態の負極(負極板)は、集電体及びその上部に形成された負極合剤よりなる。負極合剤は、集電体の上部に設けられた少なくとも負極活物質を含む層である。
負極活物質としては、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。中でも、炭素質材料またはリチウム複合酸化物が安全性の観点から好ましい。
金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能なものであれば特に制限はないが、Ti(チタン)、Li(リチウム)またはTi及びLiの双方を含有するものが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
炭素質材料としては、非晶質炭素、天然黒鉛、天然黒鉛に乾式のCVD(Chemical Vapor Deposition)法や湿式のスプレイ法で形成される被膜を形成した複合炭素質材料、エポキシやフェノール等の樹脂原料もしくは石油や石炭から得られるピッチ系材料を原料として焼成して得られる人造黒鉛、非晶質炭素材料などの炭素質材料を用いることができる。
また、リチウムと化合物を形成することでリチウムを吸蔵放出できるリチウム金属や、リチウムと化合物を形成し、結晶間隙に挿入されることでリチウムを吸蔵放出できる珪素、ゲルマニウム、錫など第四族元素の酸化物もしくは窒化物を用いてもよい。
特に、炭素質材料は、導電性が高く、低温特性、サイクル安定性の面から優れた材料である。さらに、負極活物質として、黒鉛質、非晶質、活性炭などの導電性の高い炭素質材料を混合して用いてもよい。
また、負極活物質として用いる第1炭素質材料に、これとは異なる性質の第2炭素質材料を導電材として添加してもよい。上記性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量の一つ以上の特性を示す。
第2炭素質材料(導電材)としては、黒鉛質、非晶質、活性炭などの導電性の高い炭素質材料を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。このように、第2炭素質材料(導電材)を添加することにより、電極の抵抗を低減するなどの効果を奏する。
第2炭素質材料(導電材)の含有量(添加量、割合、量)について、負極合剤の質量に対する導電材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限は、45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。上記下限未満では、導電性の向上効果が得にくく、また、上記上限を超えると、初期不可逆容量の増大を招く恐れがある。
負極活物質の結着材としては、非水系電解液や電極の形成時に用いる分散溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結着材の含有量は、負極合剤の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。結着材の含有量の上限は、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
上記上限を超えると、電池容量に寄与しない結着材の割合が増加し、電池容量の低下を招く可能性がある。また、上記下限未満では、負極合剤の強度の低下を招く可能性がある。
特に、結着材として、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として用いる場合の負極合剤の質量に対する結着材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
また、結着材として、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として用いる場合の負極合剤の質量に対する結着材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限は、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
増粘材は、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘材としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
増粘材を用いる場合の負極合剤の質量に対する増粘材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
上記下限未満では、スラリーの塗布性が低下する恐れがある。また、上記上限を超えると、負極合剤に占める負極活物質の割合が低下し、電池容量の低下や負極活物質間の抵抗の上昇の恐れがある。
負極合剤は、集電体上に形成される。その形成方法に制限はないが正極合剤と同様に乾式法や湿式法を用いて形成される。
負極用の集電体の材質としては特に制限はなく、具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工のし易さとコストの観点から銅が好ましい。
集電体の形状としては特に制限はなく、種々の形状に加工された材料を用いることができる。具体例としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、金属薄膜が好ましく、銅箔がより好ましい。銅箔には、圧延法により形成された圧延銅箔と、電解法により形成された電解銅箔とがあり、どちらも集電体として用いて好適である。集電体の厚さに制限はないが、厚さが25μm未満の場合、純銅よりも強銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu-Cr-Zr合金等)を用いることでその強度を向上させることができる。
スラリーを形成するための分散溶媒としては、負極活物質、結着材、及び必要に応じて用いられる導電材や増粘材などを溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系溶媒の例としては、水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられ、有機系溶媒の例としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましい。この増粘材に併せて分散材等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、上記分散溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
3.電解液
本実施の形態の電解液は、リチウム塩(電解質)と、これを溶解する非水系溶媒から構成される。必要に応じて、添加材を加えてもよい。
リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用の非水系電解液の電解質として使用可能なリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば以下に示す無機リチウム塩、含フッ素有機リチウム塩やオキサラトボレート塩等が挙げられる。
無機リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩や、LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩や、LiAlCl等の無機塩化物塩等が挙げられる。
含フッ素有機リチウム塩としては、LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等が挙げられる。
オキサラトボレート塩としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等が挙げられる。
これらのリチウム塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒に対する溶解性、二次電池とした場合の充放電特性、入出力特性、サイクル特性等を総合的に判断すると、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)が好ましい。
非水系電解液中の電解質の濃度に特に制限はないが、電解質の濃度範囲は次のとおりである。濃度の下限は、0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、濃度の上限は、2mol/L以下、好ましくは1.8mol/L以下、より好ましくは1.7mol/L以下である。濃度が低すぎると、電解液の電気伝導率が不充分となる恐れがある。また、濃度が高すぎると、粘度が上昇するため電気伝導度が低下する恐れがある。このような電気伝導度の低下により、リチウムイオン二次電池の性能が低下する恐れがある。
非水系溶媒としては、リチウムイオン二次電池用の電解質の溶媒として使用可能な非水系溶媒であれば特に制限はないが、例えば次の環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、環状エーテル及び鎖状エーテル等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数が2~6のものが好ましく、2~4のものがより好ましい。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
また、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートのような、分子内に二重結合を有する環状カーボネート又はハロゲン原子を含む環状カーボネートを用いることもできる。負極活物質として炭素材料を用いる場合は、サイクル特性の観点から、ビニレンカーボネートを含むことが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、2つのアルキル基の炭素数が、それぞれ1~5のものが好ましく、1~4のものがより好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート等の対称鎖状カーボネート類;メチルエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート類等が挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。
鎖状エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。中でも、低温特性改善の観点から酢酸メチルを用いることが好ましい。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。中でも、入出力特性改善の観点からテトラヒドロフランを用いることが好ましい。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用した混合溶媒を用いることが好ましい。例えば、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。好ましい組み合わせの一つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類とを主体とする組み合わせである。中でも、非水系溶媒に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、80容量%以上、好ましくは85容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつ環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計に対する環状カーボネート類の容量が次の範囲であるものが好ましい。環状カーボネート類の容量の下限は、5容量%以上、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上であり、上限は、50容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは30容量%以下である。このような非水系溶媒の組み合わせを用いることで、電池のサイクル特性及び保存特性が向上する。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート等が挙げられる。
これらの組み合わせの中で、鎖状カーボネート類として非対称鎖状カーボネート類を含有するものがさらに好ましい。具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの組み合わせが挙げられる。このような、エチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類との組み合わせにより、サイクル特性及び入出力特性を向上させることができる。中でも、非対称鎖状カーボネート類がメチルエチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が1~2であるものが好ましい。
添加材としては、リチウムイオン二次電池の非水系電解液用の添加材であれば特に制限はないが、例えば、窒素、硫黄または窒素及び硫黄を含有する複素環化合物、環状カルボン酸エステル、フッ素含有環状カーボネート、その他の分子内に不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
また、上記添加材以外に、求められる機能に応じて過充電防止材、負極皮膜形成材、正極保護材、高入出力材等の他の添加材を用いてもよい。
4.セパレータ
セパレータは、正極及び負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性及び負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、非水系電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布等を用いることが好ましい。
無機物としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられる。例えば、繊維形状または粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。薄膜形状の基材としては、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状または粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着材を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極または負極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。例えば、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として結着させた複合多孔層を、正極の表面に形成してもよい。
(リチウムイオン二次電池の構成)
次に、リチウムイオン二次電池の構成例について説明する。
(1)ラミネート型のリチウムイオン二次電池
図3は、ラミネート型のリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。図4は、ラミネート型のリチウムイオン二次電池の電極群の構成を示す分解斜視図である。
図3及び図4に示すように、ラミネート型のリチウムイオン二次電池10は、ラミネートフィルムである電池外装体16の内部に、電極群(15)と電解液とを収容したものである。電池外装体16からは、電極群(15)の正極集電タブ12Tと負極集電タブ13Tとが突出している。
図4に示すように、電極群15は、正極集電タブ12Tを有する正極12と、セパレータ14と、負極集電タブ13Tを有する負極13とを有する。正極12と、セパレータ14と、負極13とは、積層されている。なお、正極12、セパレータ14及び負極13のそれぞれの大きさ、積層枚数は、適宜変更可能である。
電池外装体16の材料としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等を挙げることができる。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製することができる。例えば、正極合剤が塗布された集電体を角形に切断し、集電体にタブを溶接し、正極集電タブ12Tを有する正極12を作製する。また、負極合剤が塗布された集電体を角形に切断し、集電体にタブを溶接し、負極集電タブ13Tを有する負極13を作製する。
正極12、セパレータ14、負極13をこの順番に積層した積層体を作製し、この積層体をアルミニウム製のラミネートパック内に収容する。
この際、正極集電タブ12T及び負極集電タブ13Tをアルミラミネートパックの外に出した状態で、注液口以外の部分の電池外装体16の外周を密着させる。次に、非水電解質を、注液口からラミネートパック内に注液し、ラミネートパックの注液口を密封する。これにより、ラミネート型のリチウムイオン二次電池を製造することができる。
このようなラミネート型のリチウムイオン二次電池において、前述したように正極において、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることにより、正極活物質の結晶構造を安定化し、また、集電体を構成する金属薄膜の腐食を抑制することができる、その結果、正極活物質として高ニッケルの複合酸化物を用いた場合においても、電池の50℃サイクル特性の向上、即ち、電池の長寿命を図ることができる。
(2)円柱状のリチウムイオン二次電池
図5は、円柱状のリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す断面斜視図である。
図5に示すように、本実施の形態のリチウムイオン二次電池20は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器26を有している。電池容器26には、帯状の正極22及び負極23がセパレータ24を介して断面渦巻状に捲回された電極群25が収容されている。電極群25は、正極22及び負極23がポリエチレン製多孔質シートのセパレータ24を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ24は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群25の上端面には、一端部を正極2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子22Tが導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群25の上側に被覆され正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群25の下端面には、一端部を負極3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子23Tが導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器26の内底部に抵抗溶接で接合されている。従って、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群25の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群25の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器26の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池20の内部は密封されている。また、電池容器26内には、図示しない非水電解液が注液されている。
このような円柱状のリチウムイオン二次電池において、前述したように正極において、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることにより、正極活物質の結晶構造を安定化し、また、集電体を構成する金属薄膜の腐食を抑制することができる、その結果、正極活物質として高ニッケルの複合酸化物を用いた場合においても、電池の50℃サイクル特性の向上、即ち、電池の長寿命を図ることができる。
特に、前述した高ニッケルの正極活物質を用いる場合には、大気中の水分により正極活物質が劣化しやすく、この劣化によるサイクル特性などの電池特性の低下がみられる。このような水分の影響を避けるために厳しいドライ環境での製造を行うことも可能であるが、製造コストが大きくなる。これに対し、本実施の形態においては、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることにより、大気中の水分などの影響が緩和され、サイクル特性などの電池特性の向上を図ることができ、また、電池の製造環境の制限を少なくすることができる。
<実施例>
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
<炭素被覆アルミニウム酸化物の準備>
正極合剤用の添加剤として、炭素被覆アルミニウム酸化物を準備した。核材(コア)は、Si/Alが2.0のイモゴライトであり、この炭素被覆アルミニウム酸化物のメジアン径(D50)は、5.7μm、BET比表面積は、12m/g、金属吸着能(Mn)は、16%、導電性は、1.9×10-2S/cmである。
<正極用集電体の準備>
正極用集電体として、炭素被覆アルミニウム箔を準備した。基材のアルミニウム箔の厚さ15μm、炭素層の厚さ1μmの市販物を準備した。
[正極の作製]
正極の作製を以下のように行った。正極活物質(LMO、NCA)に、導電材としてアセチレンブラック(平均粒径50nm)と、上記炭素被覆アルミニウム酸化物と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを順次添加し、混合することにより正極材料の混合物を得た。なお、LMO/NCA/導電材/炭素被覆アルミニウム酸化物/PVDF=71.6/17.9/4.5/0.5/5.5(質量比)とした。
次いで、上記混合物に対し、分散溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを上記正極用集電体の片面に実質的に均等かつ均質に塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。正極合剤密度は2.90g/cmとし、正極合剤の片面塗布量15mg/cmとした。
[負極の作製]
負極の作製を以下のように行った。負極活物質として黒鉛(日立化成株式会社製:SMG-NSO5)を用いた。この負極活物質に結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、混合することにより負極材料の混合物を得た。負極活物質/PVDF=95/5(質量比)とした。
次いで、上記混合物に対し、分散溶媒であるNMPを添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを負極用の集電体である厚さ10μmの圧延銅箔の両面に実質的に均等かつ均質に所定量塗布した。負極合剤密度は1.5g/cmとし、負極合剤の片面塗布量5.7mg/cmとした。
[電池の作製]
13.5cmの角形に切断した正極をポリエチレン製多孔質シートのセパレータ(旭化成株式会社製:ハイポア(登録商標))で挟み、さらに14.3cmの角形に切断した負極を重ね合わせて積層体を作製した。この積層体をアルミニウムのラミネート容器(大日本印刷株式会社製:アルミラミネートフィルム)に入れ、非水電解質(1.2MのLiPFを含むエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジエチルカーボネート(DMC)=2/2/3混合溶液(体積比))に、混合溶液全量に対してビニレンカーボネート(VC)を0.8質量%添加したもの(宇部興産株式会社製)を1mL添加し、アルミニウムのラミネート容器を熱溶着させ、ラミネート型電池を作製した。図6は、実施例のラミネート型のリチウムイオン二次電池の外観写真である。
[比較例]
比較例として、炭素被覆アルミニウム酸化物を添加していない、正極合材用の混合物を用いる以外は、実施例の場合と同様にして正極合材用の混合物を用いて正極を作製した。正極合材用の混合物は、LMO/NCA/導電材/PVDF=72/18/4.5/5.5(質量比)とした。
次いで、実施例の場合と同様にして、上記比較例の正極、実施例と同様の負極を用いて、ラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製した。
[評価]
上記実施例及び比較例の電池について、それぞれ初期の充放電特性(放電負荷特性、充電負荷特性)及びサイクル特性を調べた。充電条件及び放電条件を表1に示す。
Figure 2022010459000002
放電負荷特性については、CCCV充電方式、電流値0.5C、電圧4.2V、終止条件は、5時間(hr)または0.01Cの充電と、CC放電方式、電流値0.2~5C、電圧3.0Vの放電を行った。そして、電流値5Cの放電容量の0.2Cの放電容量に対する比率(容量維持率)を求めた。図7は、初期の放電負荷特性を示すグラフである。横軸は、放電率[CA]、縦軸は、容量維持率(対0.2CA)[%]を示す。実施例は、グラフa、比較例はグラフbである。
充電負荷特性については、CC充電方式、電流値0.5~5C、電圧4.2Vの充電と、CC放電方式、電流値0.5C、電圧3.0Vの放電を行った。そして、電流値5Cの充電容量の電流値0.5Cの充電容量に対する比率(容量維持率)を求めた。その結果を図8のグラフに示す。図8は、初期の充電負荷特性を示すグラフである。横軸は、充電率[CA]、縦軸は、容量維持率(対0.5CA_CCCV充電)[%]を示す。実施例は、グラフa、比較例はグラフbである。
50℃でのサイクル特性については、充放電を繰り返すサイクル試験にて評価した。充電は、50℃の環境下で、電池を、1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.2Vまで行い、続いて4.2Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、5時間(hr)または電流値0.01Cとした。放電は、50℃の環境下、1Cの電流値で定電流放電を3.0Vまで行った。この充放電を100回繰り返し(100サイクル)、以下の式により各サイクル時点での容量維持率(サイクル特性)を算出した。
容量維持率=(nサイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
図9は、サイクル特性を示すグラフである。横軸は、サイクル数、縦軸は、容量維持率(対初期容量)[%]を示す。実施例は、グラフa、比較例はグラフbである。
図7及び図8に示すように、正極において、炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、炭素被覆アルミニウム箔を集電体とした実施例(グラフa)においては、これらを用いていない比較例(グラフb)と遜色のない初期の充放電特性を示す。即ち、炭素被覆アルミニウム酸化物の添加や、アルミニウム箔の表面の炭素層は、電池の充放電特性にほとんど影響を与えないことが判明した。
さらに、図9に示すように、炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、炭素被覆アルミニウム箔を集電体とした実施例(グラフa)においては、80サイクル目の容量維持率が70%以上であり、良好な特性を示した。これに対し、比較例においては、50サイクル目において容量維持率が70%まで低下している。また、80サイクル目の容量維持率が実施例においては比較例より20%程度改善している。
このように、正極において、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることにより、電池の50℃サイクル特性の向上、即ち、電池の長寿命化を確認することができた。
なお、図示は省略するが、発明者の他の検討によれば、正極において、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加しただけの比較例Aは、80サイクル目の容量維持率が上記比較例より5%程度の改善にとどまり、正極において集電体として炭素被覆金属薄膜を用いただけの比較例Bは、80サイクル目の容量維持率が上記比較例より3%程度の改善にとどまっている。これにより、正極合剤中への炭素被覆アルミニウム酸化物の添加と、集電体として炭素被覆金属薄膜を採用することによる相乗効果により、50℃サイクル特性が格段に向上することが判明した。即ち、炭素被覆アルミニウム酸化物の添加による正極活物質の結晶構造の安定化に基づく正極活物質の抵抗上昇抑制効果と、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いることによる集電体の腐食抑制に基づく正極合剤と集電体との間の接触抵抗の上昇抑制効果の相乗効果により、50℃サイクル特性が格段に向上したものと考えられる。
(応用例)
上記においては、正極活物質として、高ニッケルのNCAを用いたが、高ニッケルのNCMを用いる場合にも、同様の水分の問題が生じ得るため、NCMを用いる場合においても、ニッケルの組成が、0.5以上1未満、より好ましくは、0.6以上0.8以下であるような場合には、正極合剤中に炭素被覆アルミニウム酸化物を添加し、集電体として炭素被覆金属薄膜を用いる構成を採用することで、サイクル特性に優れ、長寿命であるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態及び実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
2 正極
2C 炭素層
2M 正極合剤
2S 基材
3 負極
3M 負極合剤
3S 集電体
4 セパレータ
10 リチウムイオン二次電池
12 正極
12T 正極集電タブ
13 負極
13T 負極集電タブ
14 セパレータ
15 電極群
16 電池外装体
20 リチウムイオン二次電池
22 正極
22T 正極タブ端子
23 負極
23T 負極タブ端子
24 セパレータ
25 電極群
26 電池容器

Claims (7)

  1. 正極と、負極と、電解液とを備える、リチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、集電体と前記集電体上に形成された正極合剤とを有し、
    前記正極合剤は、正極活物質と表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物とを含み、
    前記集電体は、金属薄膜と前記金属薄膜の表面に形成された炭素層とを有し、
    前記正極活物質は、リチウムとニッケルを含む複合酸化物を含み、
    前記複合酸化物のリチウムに対するニッケルの組成は、0.5以上1未満である、リチウムイオン二次電池。
  2. 請求項1記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記複合酸化物のリチウムに対するニッケルの組成は、0.6以上0.8以下である、リチウムイオン二次電池。
  3. 請求項2記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記複合酸化物は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(NCA)またはリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物(NCM)である、リチウムイオン二次電池。
  4. 請求項3記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記正極活物質は、他の複合酸化物として、リチウムマンガン系酸化物(LMO)を含む、リチウムイオン二次電池。
  5. 請求項2記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記アルミニウム酸化物はイモゴライトである、リチウムイオン二次電池。
  6. 請求項5記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記金属薄膜は、アルミニウム箔である、リチウムイオン二次電池。
  7. 請求項1記載のリチウムイオン二次電池において、
    50℃でのサイクル特性であって、50℃において、1Cの電流で4.2Vまで充電し、1Cの電流で3.0Vまで放電する充放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する80サイクル目の放電容量の割合である、80サイクル目の容量維持率が70%以上である、リチウムイオン二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023225797A1 (zh) * 2022-05-23 2023-11-30 宁德时代新能源科技股份有限公司 二次电池用正极极片和二次电池

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