JP2017226612A - 4’−デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白剤および美白用飲食物 - Google Patents

4’−デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白剤および美白用飲食物 Download PDF

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Abstract

【課題】 加齢と共に増えていく老人性色素斑などのシミに対しては主にL-システイン・ビタミンC配合内服剤、コウジ酸やアルブチン配合の外用剤が用いられているが、これらのメラニン産生抑制作用は強くない。その他のメラニン産生抑制作用を持つ化合物や植物エキスも実際に人における十分なシミ改善効果はない。そこで本発明は優れたシミ改善作用を有する内服剤、外用剤、化粧料および飲食物を開発することを目的とした。【解決手段】 カンキツ果皮成分のノビレチンの脱メチル体である4’-デメチルノビレチンを用いることによる安全な原材料を提供する。これにより飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品(外用剤)いずれにおいても利用が可能となる。また併用も可能であり、体全体、局所部位の効能が高まる。本発明は4’-デメチルノビレチンを有効成分とするメラニン産生抑制剤、美白剤を提供する。これらは内服剤、外用剤、化粧料あるいは飲食物とすることができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する、美白用の化粧料、外用剤、内服剤および飲食物に関する。
顔や手などの肌のシミは長年に亘り紫外線を受けたことにより加齢と共に徐々に進行する。見た目に老けて見えることから、シミの悩みを持っている人が多い。特に女性の場合は、見た目を気にすることから人前に出ることを控えるなど生活の質(QOL)を損ねることにもなりかねない。加齢と共に増えてくるシミの多くは老人性色素斑である。
シミに対応した内服剤としてはL-システインとビタミンCを配合した医薬品が主流であるが、主な効果は新陳代謝を促進させることであり、非常に緩和な作用である。また、外用剤については、コウジ酸やアルブチン配合の医薬部外品が用いられることが多いが、これらについてもメラニン産生細胞へのメラニン産生抑制作用は強くない(特許文献1、非特許文献1参照)。
これらの他に、メラニン産生抑制作用を持つ化合物や植物エキスが報告されているが(特許文献2、3参照)、実際に人における十分なシミの改善効果を持つ薬剤は見当たらない。
特開昭60-016906号公報 特開2011-246353号公報 特開2011-046683号公報
Yamazaki Y, Kawano Y, Chem.Pharm.Bull., 58(11)1536-1540(2010)
本発明は、上記課題を解決し、優れたシミ改善作用を有する内服剤、外用剤、化粧料および飲食物を開発することを目的とする。
ポリメトキシフラボノイドであるノビレチンは、カンキツ特有のフラボノイドであるが、近年、がん予防、老化抑制、抗動脈硬化作用等さまざまな生理作用が知られるようになってきた。本発明者らは、ノビレチンを多く含有するカンキツ類の果皮を用い、特定種類の麹菌で発酵することにより、主成分のノビレチンが4'-デメチルノビレチン(下記[化1]参照)に変換することを明らかにした。また、本発明者らは、4'-デメチルノビレチンが、優れた記憶改善作用を有することも見出した(特許第5667561号明細書参照)。
本発明者らは、さらに4'-デメチルノビレチンの機能性について、検討を重ねた結果、ヒト由来メラニン産生細胞において顕著なメラニン産生抑制作用を示すことを認めた。さらにヒトにおいてシミ改善効果が得られた。
即ち、請求項1に係る本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有するメラニン産生抑制剤に関する。
請求項2に係る本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有するメラニン産生抑制用飲食物に関する。
請求項3に係る本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白剤に関する。
請求項4に係る本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白用飲食物に関する。
本発明は、カンキツ果皮の麹菌発酵物から得られた食品由来の安全な4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有してなる機能性飲食品や医薬品(老人性色素斑、ソバカス、肝斑などのシミに対して有効なもの)、美白化粧料を提供することを可能とする。
4'-デメチルノビレチン単離物のメラニン産生抑制作用を示す図である。棒グラフは左から陰性対照(無添加)、コウジ酸500μM、アルブチン500μM、4'-デメチルノビレチン単離物20μM、ノビレチン単離物20μMの結果を示す。縦軸は対照(無添加)を100%としたメラニン産生量(%)を示す。バーは標準偏差を示す。 4’-デメチルノビレチン配合製剤のヒトに対するシミ肌改善効果を示す図である。図中、白が改善、グレーが維持、黒が進行(悪化)を示す。 L-システイン・ビタミンC製剤のヒトに対するシミ肌改善効果を示す図である。図中、白が改善、グレーが維持、黒が進行(悪化)を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有するメラニン産生抑制剤、美白剤、並びに、これらの用途に用いられる飲食物に関する。
また、本発明は、4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する老人性色素斑、ソバカス、肝斑などのシミに対して有効な化粧品、医薬部外品(外用剤)、医薬品および飲食物に関する。
〔4'-デメチルノビレチン〕
4'-デメチルノビレチン([化1]参照)は市販されていないが、合成品、あるいは、先に報告した特許第5667561号明細書の方法により、ノビレチンを含有するカンキツ類、特に果皮を用いた麹菌発酵により得られた4'-デメチルノビレチン純品(単離物)または4'-デメチルノビレチン含有組成物を用いることができる。しかしながら、麹菌発酵によるノビレチンの生物変換を利用する特許第5667561号明細書の方法の方が簡便かつ安価なため、好適である。
4'-デメチルノビレチンは、ノビレチンが体内で吸収された後にできる代謝産物の一つでもある。カンキツ果皮はマーマレード、砂糖煮などのお菓子の原料として利用され、また、ノビレチン含量の高いマンダリンオレンジ(Citrus reticulata)はチンピとして長年の食経験があり、4'-デメチルノビレチンおよびその含有組成物は、非常に安全性が高い。
特許第5667561号明細書に記載された4'-デメチルノビレチンおよびその含有組成物の製造方法について、以下に説明する。
〔発酵原料〕
麹菌発酵の原料は、ポリメトキシフラボノイドであるノビレチンを含有するカンキツ類の‘果実’(果皮、果汁、果肉、種子などを含む果実全体)であるが、特には、ノビレチンの含有率、廃棄物の有効利用の観点から、‘果皮’を用いることが望ましい。
また、カンキツ類の種類としては、ノビレチンを含有するカンキツ類であれば、如何なる品種、系統のもの(例えば、ポンカン、シークワーシャ、タンジェリン、タチバナなど)も用いることもできる。
なお、発酵原料としては、カンキツ類の植物体の他の部分(例えば、葉、芽、茎、花、など)を含むものを用いてもよいが、ノビレチンの含有率の点でこれらを含まないものであることが望ましい。
上記カンキツ類は、好ましくは、収穫・採取した生のもの、水洗いしたもの、を用いることが望ましいが、乾燥、凍結、長期保存したものなどであっても用いることができる。
また、カンキツ類はそのままの形態で用いてもよいが、刻むか、砕片化するか、擂潰するかのいずれかの処理を行うことが望ましい。
当該工程は、カンキツ類をいくつかの破片に大きめに刻むこと、細かい小片に細断すること、破砕すること、擂り潰すこと、粉末状にすること、等、幅広い行為を含むものである。好ましくは、1〜数cm程度に大きめに刻んだ状態にすることによって、行うことができる。
またさらには、これら発酵原料から、予めノビレチンを抽出して得た抽出物(エキス、乾燥物)や、純品のノビレチンとして単離したものを用いることもできる。
なお、これら発酵原料は、後記の麹菌発酵を行う前に、加熱処理を行って、原料中の雑菌を殺菌しておくことが好ましい。
〔麹菌発酵〕
前記発酵原料を発酵させる麹菌としては、例えばアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、リゾプス属糸状菌(別名クモノスカビ)、などを用いることができる。また、これらを混合させて用いてもよい。
前記麹菌のうち好ましくは、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、を用いると、4’-デメチルノビレチンを高い含有率で得ることができる。
発酵原料へ前記麹菌を接種する方法としては、麹菌の胞子を発酵原料に直接振りかけて付着させることができる。また、予め前記麹菌を液体培養により予備発酵した培地を、発酵原料全体に行き渡るように接種してもよい。
前記麹菌を発酵原料に接種する場合の微生物発酵条件としては、好気的条件で行うことが望ましいことから、例えば有底円筒状の底部が広く深さが浅い容器が好適である。
このような容器の底部に、発酵原料を万遍なく広げ、空気との接触面積が大きくなるようにするとよい。
発酵温度としては、前記麹菌の生育に好適な条件として、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜32℃で行われる。加えて、前記麹菌の生育に好適な条件として、暗所で発酵させるのが好ましい。また、原料中に十分な水分が含まれている状態であることが好ましい。
4’-デメチルノビレチンを多量に得るための微生物発酵の発酵期間としては、好ましくは2〜21日、より好ましくは3〜14日、さらに好ましくは4〜12日である。
この発酵期間が2日未満の場合には、前記麹菌による微生物発酵がほとんど進行していないことから十分な4’−デメチルノビレチンが得られない。また、逆に21日を超える場合には、微生物変換により生成された4’-デメチルノビレチンの分解が進み、またカンキツ由来の好ましい芳香が消失する。
また、当該麹菌発酵においては、麹菌から分泌される酵素によって、ノビレチンがデメチル化され、4'-デメチルノビレチンへと変換させるものである。
従って、麹菌発酵を行う代わりに、当該麹菌もしくは発酵後に得られる発酵物から溶液抽出を行ってノビレチンをデメチル化する酵素を含む酵素液を得、当該酵素を用いて前記原料と酵素反応を行って反応物を得ることで、4'-デメチルノビレチンを得ることも可能である。
具体的には、当該麹菌発酵後の発酵物からの水溶解物を回収し、粗酵素液として用いることで、酵素反応を行うことができる。
本発明の麹菌発酵を行うことによって、前記カンキツ原料に含有されるポリメトキシフラボノイドであるノビレチンは、すべて4'−デメチルノビレチンに変換される。
具体的には、前記カンキツ原料を麹菌発酵することによって、4'−デメチルノビレチンが乾燥重量あたり約0.5〜1.5質量%(具体的には、約1質量%)という、高い含有率の麹菌発酵物を得ることができる。
従って、ここで得られた麹菌発酵物を、得られたそのままの形態で、もしくは、加工(例えば、細片化、擂潰、粉末化、乾燥、など)して、本発明の薬剤、機能性飲食品、美白化粧料の有効成分として用いることができる。
〔溶液抽出〕
なお、純度の点を鑑みると、本発明の薬剤、機能性飲食品、美白化粧料の製造においては、前記麹菌発酵の後に得られる発酵物から溶液抽出を行って、抽出物を得ることが望ましい。
当該溶液抽出工程は、前記麹菌発酵物に対して直接行うこともできるが、前記麹菌発酵物について、さらに細片化、破砕、擂潰、粉末化等のいずれかの処理を行った後に得られたものに対して行うことが望ましい。
溶液抽出工程に用いる溶媒は、水、緩衝液、有機溶媒、またはそれらの含水溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールのような低級脂肪族アルコールや、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられる。
これらの溶媒の中でも、水、エタノールあるいは含水エタノールが抽出効率や取り扱いやすさ、安全性の面で特に好ましい。
また、特には、終濃度55%以上、好ましくは終濃度60%以上、さらに好ましくは終濃度80%以上のエタノールを用いて抽出を行うことで、不純物である多糖類の溶出を抑制でき、4'-デメチルノビレチンの抽出効率を向上できるため好ましい。
抽出条件としては、前記原料(好ましくは砕片化物)に対して、前記溶媒を、1から50倍量、好ましくは2〜15倍量(いずれも質量比)加え、0℃〜溶媒の沸点の温度条件、好ましくは室温〜溶媒の沸点以下の温度で、5分〜1ヶ月間、好ましくは20分〜1週間、浸漬もしくは振盪することにより、抽出することが可能である。
得られた抽出液は、凍結乾燥やエバポレーター等を用いて乾燥させることで、濃縮乾固物とすることができる。
また、溶液抽出工程は、異なる複数の溶媒で、複数回行うこともできる。特に、一度目の抽出を水や低濃度の含水アルコールで行った場合、次に前記特定濃度以上のエタノールを用いた抽出を行うことで、4'-デメチルノビレチンの抽出効率を向上させることができる。
上記により得られた抽出物(前記抽出液や濃縮乾固物)は、そのまま本発明の薬剤、機能性飲食品、美白化粧料の有効成分として用いることができる。
〔精製〕
また、これらに対して、精製工程を行うことによって、純度をさらに高めることができる。
精製工程としては、液−液分離抽出や、シリカゲル、化学修飾シリカゲル、活性炭、合成吸着樹脂担体等によるカラム精製により、高純度化を行うことができる。以下に好適な精製条件の一例を示す。
まず、抽出液(具体的にはエタノール抽出を経た抽出液)のエタノール除去液を、水で平衡化した多孔性合成吸着樹脂(具体的には、ダイヤイオンHP−20〔三菱化学社製〕)のカラムに供する。そして、水溶出する成分を除去した後、さらに39〜41%エタノール(具体的には40%エタノール)で溶出される液を除去する。次に、44〜46%エタノール(具体的には45%エタノール)で溶出される成分を回収することにより、高純度化した4'-デメチルノビレチン含有組成物を得ることができる。
なお、上記に記載した好適な条件で抽出および精製を行うことにより、純度80%以上の4'-デメチルノビレチンを高含有する組成物を得ることができる。
また、上記のように得られた4'-デメチルノビレチン含有組成物は、さらにODSカラムクロマトグラフィー(具体的には45%メタノール溶出)、薄層クロマトグラフィー(TLC)(具体的にはヘキサン/エタノール〔7:3〕)、ODS−HPLC(具体的には37%〔V/V〕アセトニトリル・水の混合溶媒)に供し、目的ピークを採取することで、4'-デメチルノビレチンの純品を単離することができる。
上記により得られる4’−デメチルノビレチンは、4’位が脱メチル化したノビレチンのモノデメチル体である。4’−デメチルノビレチンは脱メチル化により極性が高くなり、ノビレチンに比べてアルコール、水への溶解性に優れる。
また、4'−デメチルノビレチンは、ノビレチンに比べて優れた「美白作用」、具体的には「メラニン産生抑制作用」を有するものである。
〔薬剤・機能性飲食品〕
上記の4'-デメチルノビレチンは、上記工程で得られる各組成物(‘発酵物を直接含有する組成物’‘溶液抽出物’‘精製物’)や、‘単離物’として各種原料に混合することで、薬剤や機能性飲食品の有効成分として用いることができる。
なお、本発明における「薬剤」には医薬品、医薬部外品、化粧料が含まれるものとする。また、前記医薬品、医薬部外品は内服剤、外用剤のいずれの形態であってもよい。
内服剤や機能性飲食品として経口摂取する場合の4'-デメチルノビレチンの有効摂取量としては、体重60kgの成人1日あたり、1mg以上、好ましくは5mg以上経口摂取することにより、老人性色素斑、ソバカス、肝斑などのシミに対して優れた改善作用を得ることができる。あるいは化粧料、医薬部外品等として外用する際は、4'-デメチルノビレチンを0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上を含む外用剤により、優れたシミ改善効果が得られる。
従って、この必要量を確保できる形態や摂取方法(回数、量)で、本発明の薬剤または機能性飲食品を摂取または塗布することで、上記薬理作用が得られることが期待される。ただし、対象の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、摂取量や塗布量を適宜決定することが望ましい。
また、薬剤や機能性飲食品における4'-デメチルノビレチンの含有量としては、上記必要な摂取量を担保できるように含有するものであればよいが、具体的には、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上となるように含有させることができる。また、上限としては、20質量%以下を挙げることができる。
薬剤の形態としては、例えば、服用する際は粉末状、細粒状、顆粒状、などとすることができ、カプセルに充填する形態の他、水に分散した溶液の形態、クリーム状、賦形剤等と混和して得られる錠剤の形態とすることもできる。医薬部外品や化粧料などの外用剤として用いる際は、液体状やジェル状、クリーム状、軟膏などの形態とすることができる。
本発明の薬剤には、4'-デメチルノビレチンまたはその含有組成物以外にも、本発明の効果を奏する範囲内で、各種担体や添加剤、他の薬効成分などが含まれていても良い。
また、機能性飲食品としては、種々の食品原料や添加剤などと混合して、例えば、ビスケット、スナック菓子、ガム、チュアブル錠、清涼飲料水、ドリンク、スープ、ゼリー、キャンディ等の形態とすることができる。
上記、飲食物、化粧品、医薬部外品、医薬品は、スキンケアとして外用、内服両方を併用することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
<実施例1> 4’-デメチルノビレチン含有組成物の調製
特許第5667561号明細書に記載の方法により、ポンカン果皮を麹菌発酵することによりノビレチン変換物4'-デメチルノビレチンを調製した。
すなわち、ポンカン果皮100kgを刻んで細片化し、蒸煮処理により滅菌処理を行った。得られたポンカン果皮に、全体に行き渡るようにアスペルギルス・アワモリ((株)ビオック製)を接種した。そして、30℃の恒温室内にて(麹菌発酵)を好気的に5日行うことで、麹菌発酵物を得た。
得られた麹菌発酵物60kgに対して水750Lを添加し、100℃において1時間熱水エキス抽出した後、連続遠心処理することにより得られたエキスをスプレードライして、4’-デメチルノビレチン含有組成物を得た。
<実施例2> 4’-デメチルノビレチン単離物の調製
上記実施例1で得られた麹菌発酵物1kgを擂り潰して砕片化し、エタノール5Lを加えて室温で3日間抽出し、抽出液を得た。
次に、得られた抽出液を、ろ紙フィルターでろ過し、ろ液をロータリエバポレータで濃縮し1Lとした。そして、水5Lを加えて水溶性溶液を得た。
得られた溶液をあらかじめ水で平衡化したダイヤイオンHP20(多孔性合成吸着樹脂カラム)に供し、3Lの水で非吸着成分を除いた後、さらに2Lの40%エタノールで溶出する成分を除いた。次いで、2Lの45%エタノールで溶出する成分を回収し、さらにエバポレータで濃縮乾固して、4'-デメチルノビレチン高含有組成物とした。
上記により得られた4'-デメチルノビレチン高含有組成物2gを20%メタノールに溶解し、ODSカラムクロマトグラフィー(内径20mmφ、長さ30cmカラムに和光ゲル50C18を30g詰めた)に供した。40%メタノールで溶出する成分を除去し、60%メタノールで溶出する成分を得た。
次いで、得られた成分について、展開溶媒ヘキサン/エタノール7:3の条件で分取TLCクロマトグラフィー(シリカゲル70PF254プレートワコー、膜厚0.75mm、和光純薬製)を行い、4’-デメチルノビレチンを含む画分を、UVランプを用いて確認しながら採取した。
そして、得られた画分を、分取HPLCカラム(TSK GEL ODS、東ソー社製、4.6mm×25cm)に供し、37%(v/v)アセトニトリルの移動層によって、純品の4’-デメチルノビレチン20mgを得た。
<実施例3> メラニン産生抑制作用の検討
実施例2で得られた4'-デメチルノビレチン単離物を用い、メラニン産生抑制作用を調べた。メラニン産生細胞としてヒト由来メラノーマ細胞(HMV-II,DSファーマバイオメディカル)を用いた。
細胞は5%CO2存在下、37℃のインキュベータ中で、1 0%牛胎児血清を含むDMEM培地にて培養し、0.1%EDTAを含む0.25%トリプシン処理により3日〜4日毎に継代を行った。
メラノーマ細胞を6ウエルプレートに播種(3×104cell/well)し、1日後および4日後に4’-デメチルノビレチン単離物(実施例2製造物)を添加した。比較対照としてノビレチン単離物を、陽性対照としてコウジ酸(シグマ)またはアルブチン(シグマ)を、それぞれ同様に添加した。
7日後に培養液は除去し、以下に述べる方法で細胞内のメラニン産生量をアルカリ融解法にて測定した。即ち、メラノーマ細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、1N NaOHを1ml添加して16時間室温に置くことで細胞を溶解した。475nmにおいての吸光度を測定することにより細胞内のメラニン量を測定し、無添加(陰性対照)の値を100%として被検物添加のメラニン産生抑制効果を評価した。
その結果、各被検物はいずれもメラニン細胞の細胞増殖性に影響を与えなかった。図1に4'-デメチルノビレチン単離物によるメラニン産生抑制効果を示した。
図1において、棒グラフは左から陰性対照(無添加)、コウジ酸500μM、アルブチン500μM、4'-デメチルノビレチン単離物20μM、ノビレチン単離物20μMの結果を示す。縦軸は対照(無添加)を100%としたメラニン産生量(%)を示す。バーは標準偏差を示す。図1に示されるように、純品で比較した結果においては、コウジ酸、アルブチンの500μM濃度で各々無添加の陰性対照に比べて50%、79%であったのに対して、4’-デメチルノビレチン、ノビレチン単離物各20μMにおいて各々37%、83%の産生量であった。
以上から、4’-デメチルノビレチンは明らかにコウジ酸、アルブチンあるいはまたノビレチンに対して顕著なメラニン産生抑制作用を示すことが分かった。
<実施例4> 人のシミに対する効果(色素沈着予防・改善作用)の検討
4'-デメチルノビレチン製剤を人に経口投与して、人のシミに対する有効性を調べた。
(1)被検物の調製
実施例1で得られた4’-デメチルノビレチン含有組成物を用いて下記の処方で錠剤とした。
陽性対照として市販のL-システイン、ビタミンC製剤の医薬品を用いた。
(2)ヒト試験
被験者は40歳以上の手の甲にシミのある男女とし、服用期間は8か月とした。4’-デメチルノビレチン錠剤の服用者14名(男4名、女10名)は1日1回6粒を摂取した。4’-デメチルノビレチンの1日摂取量は5mgであった。一方、L-システイン・ビタミンC製剤の服用者6名(女6名)は毎食後2粒ずつ計6粒を摂取した。L-システイン、ビタミンCの1日摂取量は各々240mg,1000mgであった。
試験開始前と8か月後の試験終了時に撮影した左右の手の甲の写真を比較することで、シミの予防・改善効果を調べた。
開始前と8か月後の左右の手の甲の写真は、試験前後の被験者情報は伏せて、試験に立ち会っていない第3者6名が、その色素沈着の改善度合いを評価した。即ち、左右手の甲の2つの写真(試験前後)について、どちらが改善しているかを、「変化なし(維持)(0点)」、「やや改善(1点)」、「改善(2点)」、「かなり改善(3点)」、の基準で目視判定を行った。この評価では、仮に試験開始前の方が改善していると評価された場合には、被検物摂取によりシミが進行(悪化)したことになり、それぞれ、やや改善は「やや進行(-1点)」、改善は「進行(-2点)」、かなり改善は「かなり進行(-3点)」となる。左右両方の手の得点を足し合わせ、個々の被験者に対して±0点の場合は変化なし(維持)、得点がプラスの場合は改善、マイナスの場合は進行と評価した。
結果を表2、図2−1、図2−2に示した。なお、図2−1、図2−2中、白が改善、グレーが維持、黒が進行(悪化)を示す。
表2に示すように、4’-デメチルノビレチン配合製剤を摂取した場合においては、維持・改善の割合が平均81%だったのに対して、L-システイン・ビタミンC製剤を摂取した場合においては平均44%であり、明らかに4’-デメチルノビレチン製剤はL-システイン・ビタミン製剤に比べて維持・改善効果(美白効果)が高かった。
図2−1、図2−2に示すように、改善の割合も4’-デメチルノビレチン配合製剤で48%、L-システイン・ビタミンC製剤においては3%であり、L-システイン・ビタミン製剤に対する顕著な優位性が認められた。
<実施例5> 外用剤の処方例
処方例1
クリームの調製
オリーブスクワラン 30ml
ミツロウ 5g
4’-デメチルノビレチン100mg含有1,3-プロパンジオール溶液 5ml
精製水 15ml

処方例2
軟膏の調製
オリーブスクワラン 30ml
ミツロウ 5g
ティートゥリー精油 3滴
4’-デメチルノビレチン100mg含有1,3-プロパンジオール溶液 5ml

処方例3
ローションの調製
グリセリン 7g
4’-デメチルノビレチン20mg含有1,3-プロパンジオール溶液 5ml
水 86ml
カーボポール 0.1g

処方例4
化粧水の調製
水 200ml
尿素 5g
グリセリン 1ml
4’-デメチルノビレチン20mg含有1,3-プロパンジオール溶液 1ml

処方例5
サンスクリーン剤の調製
スクワラン 30ml
ミツロウ 5g
微粒子二酸化チタン 7g
4’-デメチルノビレチン20mg含有1,3-プロパンジオール溶液 1ml
精製水 70ml
本発明により、安全性の高い原料である4'-デメチルノビレチンを有効成分として維持・改善効果の高い、美白用化粧料、外用剤および内服剤さらに飲食物を提供することを可能とする。
従って、本発明は、美白・美肌のための飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品分野において利用されることが期待される。また、加齢と共に徐々に進行するシミ(老人性色素斑)は誰もが発症するものであり、その改善・予防効果を持つ本発明は、長寿社会を迎えた現代社会において、肌の若さを保つための素材として大きな需要が期待されるものである。

Claims (4)

  1. 4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有するメラニン産生抑制剤。
  2. 4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有するメラニン産生抑制用飲食物。
  3. 4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白剤。
  4. 4'-デメチルノビレチンを有効成分として含有する美白用飲食物。
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