JP2017224576A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
Description
触媒層の劣化を促進する要因として、触媒層上で生じる酸化還元反応の繰り返しが挙げられる。例えば、2次電池への充電要求や車両の加減速等に応じて燃料電池に要求される出力電力が変動すると、燃料電池の運転状態はアイドル運転と発電運転との間で変化し、それに伴い単セルの電圧(以下、セル電圧という)が高電圧域と低電圧域との間で変動する。
アイドル運転時の燃料電池は、自己の運転に要する電力相当だけを発電しており、このときのセル電圧Vは相対的に高電圧域(0.9〜1.0V)に保たれている。そして、このアイドル運転から出力電力が増加して発電運転に移行すると、燃料電池の内部抵抗に起因してセル電圧Vは低下して低電圧域(0.5〜0.8V)に切り換えられる。以上のセル電圧Vの増加及び低下に伴って触媒層上では酸化還元反応が繰り返され、これにより特に空気極側の触媒層の白金粒子がオストワルド成長による凝集や白金溶出によって発電反応比面積が減少し、結果として触媒層の劣化を進行させてしまう。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料電池の運転状態の変化に伴う燃料極や空気極の触媒層上での酸化還元反応を抑制でき、これにより触媒層の白金凝集・溶出に起因する劣化を確実に防止することができる燃料電池システムを提供することにある。
その他の態様として、前記出力電力制御手段が、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件の調整により前記電圧と前記出力電流との特性を変更可能であり、前記所定値の電圧を保ちつつ前記要求される出力電力を達成可能な前記電圧と出力電流との特性を選択し、その特性となるように前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することが好ましい。
その他の態様として、前記出力電力制御手段が、前記要求される出力電力に基づき、前記空気極への前記空気の供給量、前記燃料極への前記燃料ガスの供給量、前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つを制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することが好ましい。
その他の態様として、前記出力電力制御手段が、前記要求される出力電力に基づき、前記空気極への前記空気の供給量を制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することが好ましい。
その他の態様として、前記出力電力制御手段が、前記空気極への前記空気の供給量の制御では前記要求される出力電力を達成不能な場合に、加えて前記要求される出力電力に基づき、前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つを制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することが好ましい。
その他の態様として、前記出力電力制御手段が、前記空気極への前記空気の供給量の制御、及び前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つの制御では前記要求される出力電力を達成不能な場合に、加えて前記要求される出力電力に基づき前記燃料極への前記燃料ガスの供給量を制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することが好ましい。
その他の態様として、前記電圧の所定値を、発電効率が最も良好な最高効率電圧として設定することが好ましい。
図1は本実施形態の燃料電池システムを搭載した電動車両を示す全体構成図である。
本実施形態の電動車両1は、モータ2を走行用動力源とすると共に、その電源として2次電池3及び燃料電池システム4を備えたハイブリッド燃料電池車両である。周知のように2次電池3は、化学反応により直流電力を充放電可能な電池であり、燃料電池システム4は、後述する燃料電池10での水素ガスを用いた電気化学反応により発電するシステムである。基本的にモータ2は2次電池3からの電力により駆動され、燃料電池システム4は主に2次電池3を充電するレンジエクステンダの機能を果たすと共に、その出力電力が補助的にモータ2の駆動にも利用される。
燃料電池システム4は、燃料電池10、水素タンク11、エアブロアー12、加湿装置13、DC-DCコンバータ14等から構成される。本実施形態の燃料電池10は固体高分子型燃料電池であり、所期の電圧が得られるように多数の単セルを積層して直列接続してなる。それぞれの単セルは、固体高分子膜10a(電解質)の両側に触媒として白金(Pt)を担持した燃料極(負極)10b及び空気極(正極)10cを貼り合わせてMEA(Membrane Electrode Assembly:膜/電極接合体)を構成し、そのMEAを多孔質のガス拡散層及びガス流路を有するセパレータにより挟持してなる。このような構成は典型的な燃料電池10の構成に倣うため、図2では図示を省略する。
一方、燃料電池10は一対の冷却ライン32,33を介してラジエータ34と接続され、一方の冷却ライン32にはウォータポンプ35が介装されている。結果として燃料電池10、一方の冷却ライン32、ラジエータ34、他方の冷却ライン33からなる環状の冷却回路36が形成され、内部に充填された冷却水がウォータポンプ35の駆動により循環する。
例えばFC-ECU40は、水素タンク11及びエアブロアー12の元弁17,27を共に所定の開度で開弁し、水素タンク11から吐出される水素ガスを水素供給ライン15を経て燃料極10bに供給すると共に、エアブロアー12から吐出される空気を空気供給ライン25を経て空気極10cに供給する。
一方、インバータ5にはモータECU45が接続され、このモータECU45によりモータ2の駆動制御等が実行される。例えばモータECU45はインバータ5を駆動制御し、2次電池3や燃料電池10から供給される出力電力によりモータ2を駆動する一方、モータ2による回生電力を2次電池3に充電する。
以上のFC-ECU40、モータECU45及びバッテリECU49は、上位ユニットに相当する車両ECU46に接続されており、各ECU40,45,46,49は、それぞれ入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。
そのために車両ECU46には、アクセルセンサ47からのアクセル開度等の各種検出情報が入力されると共に、バッテリECU49を介してバッテリモニタリングユニット48から2次電池3のSOC(充電率:State Of Charge)や温度TBAT等が入力され、FC-ECU40を介して燃料電池システム4の運転状態が入力され、モータECU45を介してモータ2の運転状態が入力される。
また車両ECU46は、2次電池3のSOCや車両走行のための要求出力に基づき燃料電池システム4の出力電力を算出し、その出力電力を達成するようにFC-ECU40に指令信号を出力する。例えば、2次電池3のSOCが所定値未満まで低下して充電を要する場合、或いは2次電池3からの電力供給のみではモータ2が要求出力を達成不能と判定した場合、車両ECU46は燃料電池10の出力電力を増加側に設定する。
燃料電池10の運転状態をセル電圧Vで表すと、図11に示す4種の状況に大別できる。即ち、燃料電池10が発電運転中でセル電圧Vが低電圧域に保たれている状況(以下、低電圧時Aという)、発電運転からアイドル運転への移行中でセル電圧Vが増加方向に変化している状況(以下、電圧増加時Bという)、アイドル運転中でセル電圧Vが高電圧域に保たれている状況(以下、高電圧時Cという)、アイドル運転から発電運転への移行中でセル電圧Vが低下方向に変化している状況(以下、電圧低下時Dという)である。
セル電圧Vの高電圧時Cでは、触媒層上でPtの酸化反応が生起され、アイドル運転が継続されるほど酸化劣化が進行すると共に、この劣化現象は高電圧域近傍の低電圧側でも生じ、高電圧域で最も顕著となる。
以上のように触媒層の劣化抑制の観点から、燃料電池10の発電運転中に相当する低電圧時A(低電圧域)にセル電圧Vを保つのが最も好ましく、特に、低電圧域には発電効率が最も良好な最高効率電圧(例えば、0.75V)が含まれるため、定電圧電流可変制御ではセル電圧Vを最高効率電圧V0に保つのが最も好ましいとの結論に至った。
1)ガス供給量制御(空気供給量制御及び水素ガス供給量制御)
従来技術では、予め設定した図4に破線で示す酸素利用率(70%)の特性線や図5に破線で示す水素利用率(90%)の特性線に基づき、空気極10cへの空気供給量や燃料極10bへの水素ガス供給量(以下、ガス供給量と総称する場合もある)を決定していた。なお、ガス供給量の増加に応じて燃料電池10の効率は向上するものの、空気の供給にはエアブロアー12の駆動電力を要するため、酸素利用率の特性線については、燃料電池10の効率向上とエアブロアー12の電力消費とのバランス点として70%が定められている。
以上のガス供給量制御は、空気或いは水素ガスの流量調整により実施されるため、他の2つの手法に比較して制御応答性の点で優れる。但し、無料で入手可能な空気に対して水素ガスは有料であるため、水素ガスの供給量調整は燃料電池10の運用コストを高騰させる要因になる。そこで定電圧電流可変制御を実施する際には、水素ガスの供給量調整よりも空気の供給量調整を優先して実施しており、両者の区別のために以下の説明ではガス供給量制御として、空気供給量を調整する側を空気供給量制御と称し、水素ガス供給量を調整する側を水素ガス供給量制御と称する。
2)セル温度制御
従来技術では、図6に破線で示すようにセル温度を一定に保っていたのに対し、本実施形態のセル温度制御では実線で示すように、セル温度(燃料電池10の温度)を上昇或いは下降させることで出力電流を低下させる。このとき相対湿度は一定に保つ。そして、セル温度が変化すると、図7に実線で示すように温度上昇側と温度低下側との何れの場合もセルの反応抵抗及び内部抵抗が増加することから、結果として出力電流の低下に応じてセルの反応抵抗及び内部抵抗が増加することになり、出力電流の増減に関わらずセル電圧Vが一定に保たれる。
よって、セル温度の上昇により出力電流を低下させる場合には、良好な制御応答性が得られると共に、制御自体もウォータポンプ35を回転低下或いは停止させるだけのため容易に実施できる。但し、燃料電池10の温度上昇を抑制する冷却回路36の機能を故意に制限するため、燃料電池10の劣化防止の点ではあまり好ましくない。
そこで、双方の特徴の何れを重要視するかに応じて、何れかの手法を選択すればよい。以下の説明では、制御応答性を重視してセル温度制御としてセル温度を上昇させる手法を実施するものとする。
3)相対湿度制御
従来技術では、図8に破線で示すように空気極10c及び燃料極10bの相対湿度及び内部抵抗をそれぞれ一定に保っていたのに対し、本実施形態の相対湿度制御では実線で示すように、相対湿度を低下させることでセルの反応抵抗及び内部抵抗を増加させる。相対湿度の低下は空気極10cのみでもよいし、燃料極10bのみでもよいし、空気極10c及び燃料極10bの双方でもよいが、何れにしても、このときセル温度は一定に保つ。結果として図9に示すように、セルの反応抵抗及び内部抵抗を一定のまま出力電流を低下可能となり、出力電流の増減に関わらずセル電圧Vが一定に保たれる。
以上の空気供給量制御、セル温度制御、相対湿度制御、及び水素ガス供給量制御を端的に表現すると、互いの内容は相違するものの、何れも空気と水素ガスとの反応条件を調整することによりセル電圧Vと出力電流との特性を変更可能な手法と見なせる(出力電力制御手段)。そして、例えば空気供給量制御の実施により、要求出力電力を達成可能な出力電流となるように図4に示す特性線Loに沿って空気供給量を制御することは、換言すると、図3に示すセル電圧Vと出力電流との複数の特性線の中から、要求電力を達成可能な出力電流に制御したときにセル電圧Vが最高効率電圧V0となる特性線を選択し、その特性線を要求出力電力の変化に応じて順次変更することを意味する。
図10はFC-ECU40が実行する定電圧電流可変湿度低下ルーチンを示すフローチャートであり、FC-ECU40は当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まず、ステップS1で車両ECU46から要求された燃料電池10の出力電力を読み込み、続くステップS2で現在の燃料電池10の出力電力が要求出力電力と一致しているか否かを判定し、Yes(肯定)のときには一旦ルーチンを終了する。またステップS2でNo(否定)の判定を下したときにはステップS3に移行し、空気供給量制御を実行して要求出力電力の達成を図る。即ち、セル電圧Vを最高効率電圧V0に保ちつつ要求出力電力を達成可能な出力電流となるように、図4に示す特性線Lhに沿って空気供給量を制御する。
また、現在の出力電力が要求出力電力と一致するまで、空気と水素ガスとの反応条件を調整する手法として制御応答性が良好なものから順に実施している。燃料電池10に対する要求出力電力は2次電池3のSOCや車両走行のための要求出力に応じて常に変動することから、空気と水素ガスとの反応条件を調整する際の制御応答性が悪い場合には、セル電圧Vが最高効率電圧V0から逸脱して触媒層上で酸化還元反応を生起させてしまう。制御応答性が良好な手法から順に実施することにより、セル電圧Vを最高効率電圧V0に保つことができ、これにより触媒層上での酸化還元反応をより確実に抑制することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電動車両1に搭載される燃料電池システム4に具体化したが、これに限るものではなく、例えば定置側の燃料電池システムに適用してもよい。
10 燃料電池
10b 燃料極
10c 空気極
40 FC-ECU(出力電力制御手段)
Claims (7)
- 空気極に空気を供給すると共に燃料極に燃料ガスを供給して発電する燃料電池において、
前記燃料電池に要求される出力電力に基づき前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整することにより、前記燃料電池の電圧を所定値に保ちつつ前記燃料電池の出力電流を変化させて前記要求される出力電力を達成する出力電力制御手段を備えた
ことを特徴とする燃料電池システム。 - 前記出力電力制御手段は、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件の調整により前記電圧と前記出力電流との特性を変更可能であり、前記所定値の電圧を保ちつつ前記要求される出力電力を達成可能な前記電圧と出力電流との特性を選択し、その特性となるように前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記出力電力制御手段は、前記要求される出力電力に基づき、前記空気極への前記空気の供給量、前記燃料極への前記燃料ガスの供給量、前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つを制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。 - 前記出力電力制御手段は、前記要求される出力電力に基づき、前記空気極への前記空気の供給量を制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の燃料電池システム。 - 前記出力電力制御手段は、前記空気極への前記空気の供給量の制御では前記要求される出力電力を達成不能な場合に、加えて前記要求される出力電力に基づき、前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つを制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整する
ことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。 - 前記出力電力制御手段は、前記空気極への前記空気の供給量の制御、及び前記燃料電池の温度、前記空気極の相対湿度、前記燃料極の相対湿度の内の少なくとも何れか1つの制御では前記要求される出力電力を達成不能な場合に、加えて前記要求される出力電力に基づき前記燃料極への前記燃料ガスの供給量を制御することにより、前記空気と前記燃料ガスとの反応条件を調整する
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。 - 前記電圧の所定値は、発電効率が最も良好な最高効率電圧として設定された
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の燃料電池システム。
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