以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る電動機付自転車1の構成を示す側面図である。電動機付自転車1は、フロントフォーク11、ヘッドパイプ12、ダウンチューブ13、シートチューブ14、シートステー15、チェーンステー16からなるフレームを有している。前輪21はフロントフォーク11に回動自在に取り付けられ、後輪22はシートステー15とチェーンステー16との交点に回動自在に取り付けられている。
ヘッドパイプ12には、ハンドルステム23が回動自在に挿通され、ハンドルステム23の上端にはハンドル24が取り付けられている。一方、シートチューブ14には、シートポスト25が嵌合されており、シートポスト25の上端にはサドル26が取り付けられている。
ペダル27は、クランク28を介してスプロケット(図示せず)に接続されている。ユーザがペダル27に踏力を加えることによりスプロケットが回転し、スプロケットが回転することによってチェーン29を介して後輪22に駆動力が伝達されるようになっている。
モータ160は、前輪21の車軸に装着され、前輪21を回転させる駆動力を発生させる。モータ160の回転は、減速機構(図示せず)によって減速され、前輪21に伝達されるように構成されている。なお、本実施形態では、車輪にモータを組み込むハブモータ式の電動機付自転車を例示しているが所謂センターマウント方式の電動機付自転車に本発明を適用することも可能である。
モータ160を駆動するための電力は、シートチューブ14に沿って着脱可能に設けられたバッテリ110から供給される。バッテリ110は、例えばリチウムイオン二次電池により構成され、充電を行うことによって繰り返し使用することが可能となっている。
フロントフォーク11の先端部には、カゴ30を支持するためのステー31が接続されている。ライト170は、ステー31の上部をカゴ30の下面に取り付けるための締結金具(図示せず)に取り付けられている。ライト170は、自車両の前方に向けて光を出射する灯具である。ライト170は、バッテリ110から電力の供給を受けて発光するLEDや白熱電球等の光源を含んで構成されている。なお、ライト170は、投光方向が自車両の前方に向くようにハンドル24やフロントフォーク11の適当な位置に設けられていてもよい。
ハンドル24には、操作・表示部180が設けられている。操作・表示部180は、踏力に対する補助駆動力の比率(以下、アシスト比率ともいう)の設定を選択するための入力操作を受け付けるモード選択ボタン185(図4参照)、ライト170を点灯および消灯させるための入力操作を受け付けるライトボタン186(図4参照)、電動機付自転車1の状態を表示する各種の表示部181〜184(図4参照)を有する。
図2は、電動機付自転車1の電気系統の構成を示すブロック図である。主制御部100は、後述する各種センサからの出力信号に基づいて検出した自車両の状態およびユーザによるモード選択ボタン185(図4参照)およびライトボタン186(図4参照)に対する操作入力に応じてモータ160およびライト170の駆動を統括的に制御するとともに、検出した自車両の状態を操作・表示部180に通知する。主制御部100は、例えば単一の半導体チップにCPU(主制御部)、メモリ、入出力回路、タイマー回路などを含むコンピュータシステムを集積したLSI(Large Scale Integration)を含んで構成されている。
トルクセンサ200は、ペダル27に加えられた人力による入力トルクの大きさを検出し、検出した入力トルクの大きさを示すトルク検出信号S1を生成する。トルクセンサ200によって生成されたトルク検出信号S1は、主制御部100に供給される。トルクセンサ200は、例えば、クランク軸に対して機械的な接触部分を有しない、磁歪効果を利用した公知のトルクセンサを用いることが可能である。
回転数センサ210は、モータ160の回転数を検出し、検出した回転数を示す回転数検出信号S2を生成する。回転数センサ210によって生成された回転数検出信号S2は、主制御部100に供給される。回転数センサ210は、例えば、モータ160を構成するロータの角度位置を検出するホール素子によって構成することが可能である。なお、回転数検出信号S2から、電動機付自転車1の車速を検出することも可能である。
温度センサ220は、電動機付自転車1の複数の部位に設けられており、当該各部位の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号S3を生成する。温度センサ220によって生成された温度検出信号S3は、主制御部100に供給される。温度センサ220は、例えば主制御部100、バッテリ110、モータ160およびトルクセンサ200に取り付けられており、これら各部位の温度を検出する。温度センサ220は、例えばサーミスタや熱電対等の公知の温度センサを用いることが可能である。なお、温度センサを設ける部位や、温度センサの設置数は適宜変更することが可能である。
ブレーキセンサ230は、ハンドル24の右側グリップおよび左側グリップにそれぞれ取り付けられたブレーキレバー(図示せず)が操作されたことを検出すると、ブレーキ操作検出信号S4を生成してこれを主制御部100に供給する。
主制御部100は、バッテリ110から電力を取り出してこれをモータ160に供給してモータ160を駆動することにより補助駆動力を得る力行モードと、モータ160の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生電流として回収する回生モードとの切り替えを制御する。また、主制御部100は、自車両の状態に基づいて回生モードへの移行可否を判定する。主制御部100は、自車両の状態が回生モードへの移行が可能な状態にあると判定した場合において、例えば、ブレーキレバーの少なくとも一方が操作され、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力された場合に回生モードに移行する。一方、主制御部100は、自車両の状態が回生モードへの移行が可能ではない状態にあると判定した場合には、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力された場合であっても回生モードに移行しない。なお、主制御部100による回生モードへの移行可否の判定の詳細については後述する。
電動機付自転車1は、回生モード時において、モータ160から回生電流を回収することでモータ160を減速させて制動力を発生させる。すなわち、電動機付自転車1は、回生モードへの移行が可能な状態において、ブレーキレバーが操作されると回生モードに移行し、ブレーキレバーの操作に連動して作動する機械式の前輪ブレーキおよび/または後輪ブレーキによる制動力に加えて、回生ブレーキによる制動力によって減速する。モータ160から回収された回生電流は、バッテリ110に供給され、これによってバッテリ110の充電が行われるようになっている(回生充電)。
主制御部100は、トルクセンサ200、回転数センサ210、温度センサ220およびブレーキセンサ230から供給される各種の検出信号並びにバッテリ110の状態に基づいて、力行モード時にはモータ駆動指令値C1を生成し、回生モード時には回生電流指令値C2を生成し、これらをモータ駆動部300に供給することによってモータ160の動作を制御する。
モータ駆動部300は、力行モード時においては、主制御部100から供給されるモータ駆動指令値C1によって示されるアシスト量(トルク目標値)に対応した駆動電力をバッテリ110から取り出してモータ160に供給する。一方、モータ駆動部300は、回生モード時においては、主制御部100から供給される回生電流指令値C2によって示される値の回生電流をモータ160から回収し、回収した回生電流によってバッテリ110を充電する。
ライト駆動部400は、主制御部100から供給される制御信号に基づいて駆動電力をバッテリ110から取り出してライト170に供給することによってライト170を点灯させる。
バッテリ110は、主制御部100と通信可能に接続されており、主制御部100は常時バッテリ残量を監視している。
操作・表示部180は、主制御部100と通信可能に接続されており、操作・表示部180におけるモード選択ボタン185およびライトボタン186(図4参照)に対する入力操作がなされたことが主制御部100に通知される一方、電動機付自転車1の状態を示す情報が主制御部100から操作・表示部180に通知される。
図3は、バッテリ110、モータ駆動部300およびモータ160の接続関係を詳細に示す図である。モータ駆動部300は、トランジスタT1〜T6を含むインバータ回路301と、トランジスタT1〜T6を個別にオンオフするためのゲート信号を生成するインバータ制御回路302と、インバータ回路301に接続されたトランジスタT7と、を含んでいる。トランジスタT7もインバータ制御回路302から供給されるゲート信号に応じてオンオフする。
各トランジスタT1〜T6は、ドレイン側にカソードが接続され、ソース側にアノードが接続されたダイオードを有するnチャネルMOSFETによって構成されている。トランジスタT1〜T6は、オフ状態においてもダイオードを介して逆方向に電流を流すことが可能となっている。一方、トランジスタT7は、ドレイン側にアノードが接続され、ソース側にカソードが接続されたダイオードを有するpチャネルMOSFETによって構成されている。トランジスタT7は、オフ状態においても、ダイオードを介して逆方向に電流を流すことが可能となっている。
本実施形態において、モータ160は、アウターロータ型のブラシレスモータであり、永久磁石を含むロータと、モータ巻線Lを有するステータと、ロータの回転位置を検出するための3つのホール素子Hと、を含んでいる。なお、本実施形態において、ホール素子Hはモータ160の回転数を検出する回転数センサ210を兼ねている。
バッテリ110の正極側(ハイサイド側)に接続されたトランジスタT1、T3、T5と、バッテリ110の負極側(ローサイド側)に接続されたトランジスタT2、T4、T6との各接続点u、v、wは、モータ160を構成する3つのモータ巻線Lにそれぞれ接続されている。
インバータ制御回路302は、力行モード時には3つのホール素子Hからそれぞれ出力される検知信号によってロータの角度位置を検出し、検出したロータの角度位置に応じてトランジスタT1〜T6を一定の順序でオンさせる。これにより、モータ巻線Lに流れる電流の向きが順次切り替わりロータが回転する。インバータ制御回路302は、力行モード時においては、主制御部100から供給されるモータ駆動指令値C1によって示されるアシスト量(トルク目標値)が得られるようにトランジスタT1〜T6のオンデューティを調整する。
一方、インバータ制御回路302は、回生モード時にはハイサイド側のトランジスタT1、T3およびT5を全てオフ状態に維持しつつローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6を互いに同一のタイミングでオンオフするようにPWM制御し、且つトランジスタT7をオンさせる。上記PWM制御において、ローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6がオン状態とされている期間においてはモータ巻線Lに短絡電流が流れてモータ巻線Lにエネルギーが蓄えられ、これによってモータ160が減速して回生ブレーキによる制動力が発生する。その後、ローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6がオフ状態とされるとモータ巻線Lに電圧が誘起される。かかる誘起電圧がバッテリ電圧を超えると、各トランジスタに付随するダイオードおよびトランジスタT7を介してバッテリ110に向けて回生電流が流れ、モータ巻線Lに蓄えられたエネルギーが放出されるとともにバッテリ110が充電される。インバータ制御回路302は、回生モード時においては、主制御部100から供給される回生電流指令値C2によって示される電流値の回生電流が得られるようにローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6のオンデューティを調整する。
図4(a)は、本発明の報知装置の一例である操作・表示部180の構成の一例を示す平面図、図4(b)は操作・表示部180の電気系統の構成を示すブロック図である。
操作・表示部180の操作・表示面には、自車両の状態を表示するための複数の表示部181〜184が設けられている。また、操作・表示部180の操作・表示面には、アシスト比率の設定を選択するための入力操作を受け付けるモード選択ボタン185と、ライト170を点灯および消灯させるための入力操作を受け付けるライトボタン186とが設けられている。
操作・表示部180は、主制御部100から通知される各種の情報(信号)の入力を受け付ける入出力インターフェース部188を有し、入力された情報(信号)に基づいて、表示部181〜184において各種の表示を行う。また、操作・表示部180は、モード選択ボタン185およびライトボタン186の操作がなされたことを入出力インターフェース部188を介して主制御部100に向けて出力する。操作・表示部180における主制御部100との間の信号の送受信は、入出力インターフェース部188を介して行われる。主制御部100から通知される各種の情報(信号)には、後述する、回生モードへの移行可否を示す情報(信号)も含まれる。なお、入出力インターフェース部188は、本発明における入力手段の一例である。
モード選択ボタン185が押下された場合には、主制御部100は、モータ160によるアシスト比率を切り替える。本実施形態においては、アシスト比率の大きさが互いに異なる3つのアシストモード(エコ、標準、パワー)のいずれかをモード選択ボタン185を押下することによって選択することが可能となっており、モード選択ボタン185を押下する毎に上記3つのアシストモードのいずれかが順次選択されるようになっている。主制御部100は、選択されたアシストモードに応じたアシスト比率にてモータ160を駆動するべくモータ駆動部300にモータ駆動指令値C1を供給する。
一方、ライトボタン186が押下された場合には、主制御部100は、ライト170の点灯および消灯を切り替える。すなわち、主制御部100は、ライトボタン186が押下される毎にライトの点灯および消灯を切り替えるべくライト駆動部400を制御する。
バッテリ残量表示部181は、バッテリ110に蓄積された電荷の残量(以下、バッテリ残量と称する)を表示する表示部である。バッテリ残量表示部181は、一列に並んで配置された5つの発光部を含んでいる。表示制御部187は、バッテリ残量を示す情報を主制御部100から受信すると、当該情報によって示されるバッテリ残量に応じた数だけ発光部を点灯もしくは点滅させる。
図5は、バッテリ残量と、バッテリ残量表示部181における表示態様との対応の一例を示す図である。バッテリ残量が80〜100%の範囲にある場合にはバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の全てが点灯する。バッテリ残量が、60〜79%の範囲にある場合にはバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から4つの発光部の各々が点灯する。バッテリ残量が、40〜59%の範囲にある場合にはバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から3つの発光部の各々が点灯する。バッテリ残量が、20〜39%の範囲にある場合にはバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から2つの発光部の各々が点灯する。バッテリ残量が、10〜19%の範囲にある場合にはバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左端の発光部のみが点灯する。バッテリ残量が10%未満の場合には左端の発光部が点滅する。バッテリ残量が略0%となった場合には、左端の発光部がより短い周期で点滅する。本実施形態において、バッテリ残量表示部181がバッテリ残量表示を行う場合の各発光部の発光色は青色である。なお、バッテリ残量とバッテリ残量表示部181における表示態様との関係や各発光部における発光色は上記したものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
アシストモード表示部182は、モード選択ボタン185の操作によって選択されたアシストモードを表示する表示部である。アシストモード表示部182は、上記3つのアシストモード(エコ、標準、パワー)に対応する3つの発光部を有する。表示制御部187は、現在選択されているアシストモードを示す情報を主制御部100から受信すると、当該選択されているアシストモードに対応する発光部を点灯させる。
ライト点灯表示部183は、ライト170の駆動状態を表示する発光部を含んでいる。表示制御部187は、ライト170が点灯していることを示す情報を主制御部100から受信すると、ライト点灯表示部183における発光部を点灯させ、ライト170が点灯していることを示す情報を受信しない場合には、ライト点灯表示部183における発光部を消灯させる。
状態表示部184は、電動機付自転車1の状態を表示する単一の発光部を含んでいる。表示制御部187は、電動機付自転車1の状態を示す情報を主制御部100から受信すると、当該情報によって示される状態に対応した態様で状態表示部184を構成する発光部を点灯させる。本実施形態において、状態表示部184を構成する発光部は、赤、緑、青の3つのLEDチップが1つのパッケージ内に収容された所謂3色LEDによって構成されており、電動機付自転車1における後述する4つの状態を、発光色よって識別表示する。状態表示部184において表示される電動機付自転車1の状態については後述する。
状態表示部184を構成する発光部は、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の配列に沿うように、これらに隣接して設けられている。また、状態表示部184を構成する発光部は、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の各々とは異なる形状および大きさを有している。これにより、状態表示部184における表示とバッテリ残量表示部181における表示との混同を防止することができる。なお、状態表示部184を構成する発光部は、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の各々に対して形状および大きさのいずれか一方が異なっていてもよい。
図6は、主制御部100によって実現される各種機能と、操作・表示部180に設けられたバッテリ残量表示部181、アシストモード表示部182、ライト点灯表示部183および状態表示部184との関連を示す図である。図7は、電動機付自転車1の状態と、状態表示部184における表示態様との対応を示す図である。
<バッテリ監視機能>
主制御部100におけるバッテリ監視機能105は、主制御部100がバッテリ110と通信することによってバッテリ残量(バッテリ電圧またはバッテリの充電率等)を示す情報をバッテリ110から取得する機能である。主制御部100は、バッテリ110から取得したバッテリ残量を示す情報を表示制御部187に通知する。表示制御部187は、バッテリ残量を示す情報を受信すると、バッテリ残量表示部181を構成する発光部をバッテリ残量に応じた数だけ点灯または点滅させる。これにより、ユーザは、現在のバッテリ残量を認識することができる。
<アシストモード選択機能>
主制御部100におけるアシストモード選択機能106は、モード選択ボタン185に対する操作入力に応じてアシストモードを選択する機能である。主制御部100は、選択されたアシストモードに応じたアシスト比率にてモータ160を駆動するべくモータ駆動指令値C1を生成するとともに、現在選択されているアシストモードを示す情報を表示制御部187に通知する。表示制御部187は、アシストモードを示す情報を受信するとアシストモード表示部182を構成する3つの発光部のうち、対応する発光部を点灯させる。これにより、ユーザは、現在選択されているアシストモードを認識することができる。
<ライト駆動制御機能>
主制御部100におけるライト駆動制御機能107は、ライトボタン186に対する操作入力に応じてライト170を点灯および消灯させる機能である。表示制御部187は、ライト170が点灯していることを示す情報を主制御部100から受信すると、ライト点灯表示部183を点灯させる。これにより、ユーザは、現在ライト170が点灯しているのか否かを認識することができる。
<異常検出機能>
主制御部100における異常検出機能101は、電動機付自転車1において生じた異常を検出する機能である。主制御部100は、自車両に異常が生じていることを検出すると、異常が生じている旨および異常の種類(異常の内容)を示す情報を操作・表示部180を構成する表示制御部187に通知する。表示制御部187は、かかる情報を受信すると状態表示部184を構成する発光部を例えば赤色で点灯させるとともに、バッテリ残量表示部181を構成する発光部を、主制御部100から通知された異常の種類(異常の内容)に応じた態様で点灯させる。すなわち、異常が検出された場合には、バッテリ残量表示部181は、バッテリ残量を表示するバッテリ残量表示モードから異常内容を表示する異常内容表示モードに自動的に切り替わる。
図8は、主制御部100において検出される異常の種類(異常の内容)と、バッテリ残量表示部181における表示態様との対応を例示した図である。表示制御部187は、モータ駆動部300の異常を示す情報が主制御部100から通知された場合には、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち一番左側の発光部を点灯させる。なお、主制御部100は、例えば、モータ駆動部300からモータ160に供給される駆動電流が、モータ駆動指令値C1に応じた大きさになっていない場合等にモータ駆動部300に異常が生じているものと判定してもよい。
また、表示制御部187は、回転数センサ210を構成するホール素子Hに異常があることを示す情報が主制御部100から通知された場合には、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から2番目の発光部を点灯させる。主制御部100は、例えば、モータ160の停止時に回転数センサ210から回転数ゼロを示す回転数検出信号S2を適正に受信できない場合等に回転数センサ210に異常があるものと判定してもよい。
また、表示制御部187は、トルクセンサ200に異常があることを示す情報が主制御部100から通知された場合には、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から3番目の発光部を点灯させる。主制御部100は、例えば、トルクセンサ200のキャリブレーション時にトルクセンサ200からトルク検出信号S1を適正に受信できない場合等にトルクセンサ200に異常があるものと判定してもよい。
また、表示制御部187は、主制御部100とバッテリ110との間の通信に異常があることを示す情報が主制御部100から通知された場合には、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち左から4番目の発光部を点灯させる。主制御部100は、例えば、バッテリ110からバッテリ残量を示す情報を取得できない場合等にバッテリ110との間の通信に異常があるものと判定してもよい。
また、表示制御部187は、主制御部100にエラーが生じていることを検出した場合には、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち一番右の発光部を点灯させる。表示制御部187は、例えば、主制御部100から適正な信号を受信しない場合に主制御部100にエラーが生じているものと判定してもよい。
このように、電動機付自転車1に何らかの異常が生じた場合には、状態表示部184を構成する発光部が赤色で点灯するとともにバッテリ残量表示部181において異常の種類(異常の内容)に対応した箇所の発光部が点灯するので、ユーザは電動機付自転車1に異常が生じていることを認識することができるだけでなく、異常が生じている箇所を特定することができる。
なお、バッテリ残量表示部181において表示される異常の種類や、バッテリ残量表示部181における表示態様は適宜変更することが可能である。また、本実施形態では、バッテリ残量表示部181における5つの発光部を用いて5種類の異常を識別表示することとしているが、バッテリ残量表示部181における2以上の発光部を同時に点灯または点滅させることにより、5種類以上の異常を識別表示させることも可能である。
また、本実施形態においては、電動機付自転車1に異常が生じた場合には、バッテリ残量表示部181は、バッテリ残量表示モードから異常内容表示モードに自動的に切り替わることとしているが、電動機付自転車1に対する特定の入力操作がなされた場合に異常内容表示モードに切り替わるようにしてもよい。すなわち、この場合、上記特定の入力操作が行われるまでは、バッテリ残量表示部181においてバッテリ残量の表示が維持される。上記特定の入力操作としては、例えば、モード選択ボタン185およびライトボタン186の双方を所定期間(例えば3秒)に亘り継続して押下する操作や、ブレーキレバーを操作しながらモード選択ボタン185およびライトボタン186の双方を押下する操作等が挙げられる。
<補助駆動力制限機能(パワーセーブ機能)>
主制御部100における補助駆動力制限機能(パワーセーブ機能)102は、温度センサ220から供給される温度検出信号S3によって示される各部位の温度が所定範囲内にない場合に、モータ160による補助駆動力(アシスト力)の大きさが一定以上とならないように制限する機能である。本実施形態において、温度センサ220は、主制御部100、バッテリ110、モータ160およびトルクセンサ200に取り付けられており、これら各部位の温度が所定範囲内にない場合にモータ160による補助駆動力の大きさが制限される。これにより、発熱源であるモータ160およびバッテリ110における過剰な発熱を防止することができる。また、主制御部100およびトルクセンサ200が動作保証温度範囲から外れた温度環境で使用された場合には、適切にモータ160を制御することができなくなるおそれがあるので、主制御部100およびトルクセンサ200の温度が所定範囲から外れた場合に補助駆動力を制限することで走行安全性を確保することができる。
主制御部100は、補助駆動力を制限している間、補助駆動力が制限されている状態にあることを示す情報を表示制御部187に通知する。表示制御部187は、補助駆動力が制限されている状態にあることを示す情報を受信すると、状態表示部184を構成する発光部を例えば黄色で点灯させる。これにより、ユーザは、補助駆動力が制限されている状態にあることを認識することができる。補助駆動力が制限された場合にはペダルが急に重くなることが想定され、ユーザはモータ160等に異常が生じたものとの疑念を抱くおそれがある。そこで、補助駆動力制限機能(パワーセーブ機能)に基づいて補助駆動力が制限されていることを状態表示部184において表示することにより、ユーザはモータ等に異常はないものと認識することができる。
<電力供給制限機能(節電機能)>
主制御部100における電力供給制限機能(節電機能)103は、トルクセンサ200からのトルク検出信号S1に基づいて、ペダル27に対する踏力の印加が所定期間(例えば3分間)継続して行われてないと判定した場合に、ライト170を強制的に消灯させるとともにバッテリ残量表示部181、アシストモード表示部182およびライト点灯表示部183を構成する各発光部を強制的に消灯させることにより、バッテリ110から電力供給を受けて動作するライト170および操作・表示部180等の電装品に対する電力供給を抑制する機能である。主制御部100は、ライト170および操作・表示部180に対する電力供給を制限している間、バッテリ110からの電力供給が制限されていることを示す情報を表示制御部187に供給する。表示制御部187は、バッテリ110からの電力供給が制限されていることを示す情報を受信すると状態表示部184を構成する発光部を例えば青色で点灯させる。これにより、ユーザはバッテリ110からの電力供給が制限されていることを認識することができる。電力供給制限機能(節電機能)103が作動すると、ライト170、バッテリ残量表示部181、アシストモード表示部182およびライト点灯表示部183が消灯状態となるので、ユーザはバッテリ110、ライト170および操作・表示部180に異常が生じたものとの疑念を抱くおそれがある。そこで、電力供給制限機能(節電機能)103に基づいてバッテリ110からの電力供給が制限されている状態にあることを状態表示部184において表示することにより、ユーザは、バッテリ110、ライト170および操作・表示部180において異常はないものと認識することができる。
<回生充電制御機能>
主制御部100における回生充電制御機能104は、回生モードへの移行を制御する機能である。主制御部100は、自車両の状態に基づいて、回生モードへの移行の可否を判定し、回生モードへの移行が可能であると判定した場合において、例えば、ブレーキレバーの少なくとも一方が操作され、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力された場合に、回生モードに移行する。
図9は、主制御部100が回生モードへの移行可否を判定する判定プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
主制御部100は、ステップA11において、バッテリ電圧が所定値以下であるか否かを判定する。主制御部100は、バッテリ電圧が所定値以下であると判定した場合には、処理をステップA12に移行し、バッテリ電圧が所定値以下ではないと判定した場合には、処理をステップA14に移行する。
主制御部100は、ステップA12において、回転数センサ210から出力される回転数検出信号S2によって示される自車両の車速が所定値以下であるか否かを判定する。主制御部100は、自車両の車速が所定値以下であると判定した場合には、処理をステップA13に移行し、自車両の車速が所定値以下ではないと判定した場合には、処理をステップA14に移行する。
主制御部100は、ステップA13において、回生モードへの移行が可能であると判定する。一方、主制御部100は、ステップA14において、回生モードへの移行が不可であると判定する。
主制御部100は、ステップA15において、回生モードへの移行可否についての判定結果を表示制御部187に通知する。
表示制御部187は、主制御部100から回生モードへの移行が可能であることが通知された場合に、状態表示部184を構成する発光部を例えば緑色で点灯させる。一方、表示制御部187は、主制御部100から回生モードへの移行が不可であることが通知された場合に状態表示部184を構成する発光部を消灯させる。
主制御部100は、回生モードへの移行が可能であると判定している場合において、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力された場合に、回生モードに移行する。この場合、ユーザによるブレーキ操作に応じて従来の機械式ブレーキによる制動力に加え、回生ブレーキによる制動力が作用する。一方、主制御部100は、回生モードへの移行が不可であると判定している場合には、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力された場合でも回生モードに移行しない。この場合、ユーザによるブレーキ操作に応じて従来の機械式ブレーキによる制動力は作用するが、回生ブレーキによる制動力は作用しない。
本実施形態に係る電動機付自転車1によれば、バッテリ電圧が所定値以下であり、且つ回転数センサ210から出力される回転数検出信号S2によって示される自車両の車速が所定値以下である場合に、回生モードへの移行が可能となる。換言すれば、バッテリ電圧が所定値よりも大きい場合および車速が所定値よりも大きい場合には、回生モードへの移行が不可とされる。バッテリ電圧が所定値よりも大きい場合に回生モードへの移行を不可とすることで、バッテリの過充電を防止することができる。また、車速が大きい程、モータ160による発電電力が大きくなり、モータ160から回収可能な回生電流が増大するところ、車速が所定値よりも大きい場合に回生モードへの移行を不可とすることで、回生充電時においてバッテリに過電流が流入することを防止することができる。
また、本実施形態に係る電動機付自転車1によれば、回生モードへの移行が可能である場合には、状態表示部184を構成する発光部が緑色で点灯し、回生モードへの移行が不可である場合には状態表示部184を構成する発光部が消灯する。すなわち、回生モードへの移行可否が状態表示部184によってユーザに報知される。従って、ユーザは、ブレーキ操作を行う前に、回生ブレーキによる制動力が作用する状態にあるのか否かを認識することができ、ブレーキ操作に応じて作用する制動力の大きさを予測することができる。
仮に、回生モードへの移行可否が報知されない場合には、ユーザは、ブレーキ操作時において回生ブレーキによる制動力が常に作用することを期待する。しかしながら、回生モードへの移行が不可とされている場合には、ブレーキ操作が行われても回生ブレーキによる制動力が作用しないので、ユーザが期待する大きさの制動力が得られない。これにより、ユーザは、ブレーキ操作時に作用する制動力に対して違和感を覚えるおそれがある。本実施形態に係る電動機付自転車によれば、回生モードへの移行可否が状態表示部184において報知されるので、このような違和感を緩和することができる。なお、本実施形態では、回生モードへの移行が不可である場合に状態表示部184を構成する発光部を消灯させる場合を例示したが、他の色で点灯させてもよいし、点滅させてもよい。
上記のように、本実施形態に係る電動機付自転車1によれば、状態表示部184は、主制御部100によって実現される上記の各種機能に基づいてもたらされる自車両の状態(異常が検出された状態、補助駆動力が制限されている状態、回生充電への移行が可能とされている状態およびバッテリからの電力供給が制限されている状態)を発光色によって識別表示される。なお、上記の各状態と発光色との組み合わせは適宜変更することが可能である。
ところで、状態表示部184において表示される自車両の状態(異常が検出された状態、補助駆動力が制限されている状態、回生充電への移行が可能とされている状態およびバッテリからの電力供給が制限されている状態)のうち2つ以上の状態が同時に生じる場合が考えられる。このような場合には、同時に生じた状態のうち、予め定められた優先順位の最も高い状態が状態表示部184において表示される。本実施形態において優先順位が最も高い状態は、バッテリからの電力供給が制限されている状態であり、2番目は異常が検出された状態であり、3番目は補助駆動力が制限されている状態であり、4番目は回生充電への移行が可能とされている状態である。なお、優先順位は、上記したものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
図10は、状態表示部184における表示制御を行うための表示制御プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。主制御部100は、この表示制御プログラムを所定期間毎に繰り返し実行することによって状態表示部184における表示制御を行う。
ステップB21において、主制御部100は、バッテリからの電力供給が制限されている状態にあるか否かを判定し、バッテリからの電力供給が制限されている状態にあると判定した場合には処理をステップB22に移行し、バッテリからの電力供給が制限されている状態にないと判定した場合には処理をステップB23に移行する。
ステップB22において、主制御部100は、バッテリからの電力供給が制限されている状態にあることを示す情報を操作・表示部180に供給することによって状態表示部184を青色で点灯させた後、本ルーチンを終了させる。
ステップB23において、主制御部100は、自車両に異常が検出されている状態にあるか否かを判定し、異常が検出されている状態にあると判定した場合には処理をステップB24に移行し、異常が検出されている状態にないと判定した場合には、処理をステップB25に移行する。
ステップB24において、主制御部100は、自車両に異常が検出されている状態にあることを示す情報を操作・表示部180に供給ことにより状態表示部184を構成する発光部を赤色で点灯させた後、本ルーチンを終了させる。
ステップB25において、主制御部100は、補助駆動力が制限されている状態にあるか否かを判定し、補助駆動力が制限されている状態にあると判定した場合には処理をステップB26に移行し、補助駆動力が制限されている状態にないと判定した場合には処理をステップB27に移行する。
ステップB26において、主制御部100は、補助駆動力が制限されている状態にあることを示す情報を操作・表示部180に供給することにより、状態表示部184を構成する発光部を黄色で点灯させた後、本ルーチンを終了させる。
ステップB27において、主制御部100は、回生モードへの移行が可能な状態であるか否かを判定し、回生モードへの移行が可能な状態にあると判定した場合には、処理をステップB28に移行し、回生モードへの移行が可能な状態にないと判定した場合には、処理をステップB29に移行する。
ステップB28において、主制御部100は、回生モードへの移行が可能な状態にあることを示す情報を操作・表示部180に供給することにより、状態表示部184を構成する発光部を緑色で点灯させた後、本ルーチンを終了させる。
ステップB29において、主制御部100は、回生モードへの移行が不可の状態にあることを示す情報を操作・表示部180に供給することにより、状態表示部184を構成する発光部を消灯させた後、本ルーチンを終了させる。
なお、状態表示部184において表示される自車両の状態(異常が検出された状態、補助駆動力が制限されている状態、回生充電への移行が可能とされている状態およびバッテリからの電力供給が制限されている状態)のうち2つの状態の優先順位を同じ順位で表示してもよい。例えば、補助駆動力が制限され且つ回生モードへの移行が可能である場合には、状態表示部184を構成する発光部を緑色で点滅させ、補助駆動力が制限され且つ回生モードへの移行が不可である場合には、状態表示部184を構成する発光部を黄色で点灯させ、補助駆動力が制限されておらず且つ回生モードへの移行が可能である場合には、状態表示部184を構成する発光部を緑色で点灯させ、補助駆動力が制限されておらず且つ回生モードへの移行が不可である場合には、状態表示部184を構成する発光部を消灯させてもよい。
以上のように、本実施形態に係る電動機付自転車1によれば、回生モードへの移行可否がユーザに報知される。従って、ユーザは、ブレーキ操作に先立って回生ブレーキによる制動力が作用する状態にあるのか否かを認識することができる。すなわち、ユーザは、ブレーキ操作を行った場合に作用する制動力を予測することができるので、ブレーキ操作時に作用する制動力に対するユーザの違和感を緩和することができる。
なお、本実施形態においては、ブレーキ操作に応じて回生モードに移行する場合を例示したが、この態様に限定されるものではない。回生モードへの移行が可能とされている場合において、例えば、車速が所定値以上であり且つ入力トルクが印加されていない状態(すなわち、下り坂を走行しているときまたは惰性走行時)となった場合に回生モードに移行してもよい。かかる状態は、トルクセンサ200および回転数センサ210からの出力信号に基づいて検出することが可能である。
また、本実施形態では、回生モードへの移行可否の判定をバッテリ電圧および車速に基づいて判定する場合を例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、バッテリ電圧および車速のいずれか一方に基づいて回生モードへの移行可否を判定してもよい。また、温度センサ220から出力される温度検出信号S3によって示される各部の温度が、所定範囲内にない場合に回生モードへの移行を不可としてもよい。例えば、バッテリ110やモータ160の温度が所定の上下限の範囲内にない場合に回生モードへの移行を不可としてもよい。また、回生モードへの移行可否の判定をバッテリ電圧、車速および温度の全てに基づいて行ってもよい。また、回生モードへの移行可否の判定をバッテリ電圧以外のバッテリの状態に基づいて行ってもよく、例えば、バッテリ110の充電率に基づいて回生モードへの移行可否の判定を行ってもよい。この場合、例えば、バッテリ110の充電率が所定値よりも大きい場合に回生モードへの移行を不可としてもよい。また、回生モードへの移行可否の判定を、車速以外の走行状態に基づいて行ってもよく、例えば、モータ160の回転数に基づいて回生モードへの移行可否の判定を行ってもよい。この場合、例えば、モータ160の回転数が所定値よりも大きい場合に回生モードへの移行を不可としてもよい。
また、回生モードへの移行可否を、自車両が走行状態である場合、すなわち、車速が0よりも大きい場合に報知するようにしてもよい。すなわち、自車両が停止状態にある場合には、回生モードへの移行可否の判定結果を報知しないようにしてもよい。また、本実施形態では、回生モードへの移行可否を状態表示部184において報知する場合を例示したが、回生モードへの移行可否をバッテリ残量表示部181において報知するようにしてもよい。
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る操作・表示部180Aの電気系統の構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る操作・表示部180Aは、スピーカ188を更に含む点において、第1の実施形態に係る操作・表示部180と異なる。
表示制御部187は、主制御部100から通知される回生モードへの移行可否の判定結果が、不可から可に切り替った場合に第1の報知音をスピーカ188から出力させる。一方、表示制御部187は、主制御部100から通知される回生モードへの移行可否の判定結果が、可から不可に切り替った場合に、第1の報知音とは異なる第2の報知音をスピーカ188から出力させる。
本実施形態に係る電動機付自転車によれば、第1の実施形態に係る電動機付自転車と同様、回生モードへの移行可否がスピーカ188から発せられる報知音によってユーザに報知される。従って、ユーザは、回生ブレーキによる制動力が作用する状態にあるのか否かをブレーキ操作前に認識することができ、ブレーキ操作を行った場合に作用する制動力を予測することができるので、ブレーキ操作時における違和感を緩和することができる。本実施形態に係る電動機付自転車によれば、ユーザに状態表示部184の目視を行わせることなく回生モードへの移行可否を報知することができるので、ユーザの利便性を更に向上させることができる。
なお、本実施形態では、操作・表示部180Aにスピーカ188を設ける場合を例示したが、スピーカ188の配置は、適宜変更することが可能である。例えば、主制御部100の近傍やバッテリ110にスピーカ188を設けてもよい。
また、回生モードへの移行可否をスピーカ188からの報知音によって報知するとともに、上記の第1の実施形態のように、状態表示部184を構成する発光部の発光によって報知してもよい。
また、報知音によって回生モードへの移行可否を報知する他の態様として、回生モードへの移行が不可とされている場合において、ブレーキ操作がなされた場合に、スピーカ188から報知音を出力してもよい。この態様によれば、ユーザは、ブレーキ操作を行った直後に回生モードへの移行が不可であることを認識することができるので、制動力に対する違和感を一定程度緩和する効果が期待できる。
[第3の実施形態]
図12は、主制御部100の機能的な構成を示す機能ブロック図である。主制御部100は、記憶部121、駆動指令値導出部122、最大値導出部123、係数導出部124、回生電流指令値導出部125および選択部126を含んで構成されている。
駆動指令値導出部122は、力行モード時において、トルクセンサ200から供給されるトルク検出信号S1および回転数センサ210から供給される回転数検出信号S2に基づいて、走行状況に適したアシスト量(トルク目標値)を導出し、導出したアシスト量(トルク目標値)をモータ駆動指令値C1として選択部126に供給する。例えば、モータ160の回転数が低く且つ入力トルク(踏力)が大きい場合には発進直後の状態または上り坂を走行している状態等であると推測されるので、このような場合、駆動指令値導出部122は、比較的大きなアシスト量(トルク目標値)をモータ駆動指令値C1として導出する。
なお、駆動指令値導出部122は、操作・表示部180のモード選択ボタン(図示せず)に対する入力操作によって選択されたアシストモードに応じたアシスト量(トルク目標値)を導出する。本実施形態においては、アシスト比率の大きさが互いに異なる3つのアシストモード(エコ、標準、パワー)が予め定められており、これらのいずれかを操作・表示部180のモード選択ボタンを押下することによって選択することが可能となっている。記憶部121には、アシストモード毎に入力トルクおよびモータ160の回転数と、アシスト量との関係を示すマップが記憶されている。駆動指令値導出部122は、記憶部121に記憶された上記のマップを参照することにより入力トルクおよびモータ160の回転数に応じた最適なアシスト量(トルク目標値)を導出する。
最大値導出部123は、回生モードに移行した場合に、モータ160から回収可能な回生電流の最大値IMAXをモータ160の回転数に追従して導出する。
ここで、図13(a)は、回生モード時にモータ駆動部300において行われるPWM制御におけるローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6のオンデューティと、回生電流との関係の一例を示す図である。図13(a)において、モータ160の回転数(車速)が比較的高い場合が実線で示され、モータ160の回転数(車速)が比較的低い場合が破線で示され、モータ160の回転数(車速)が中程度の場合が一点鎖線で示されている。
図13(a)に示すように、回生電流は、あるオンデューティでピークを持つ。これは、回生モード時において、ローサイド側のトランジスタT2、T4およびT6のオンデューティが小さすぎるとモータ160のインダクタ(モータ巻線L)に蓄えられるエネルギーが小さくなる一方、オンデューティが大きすぎるとモータ160のインダクタ(モータ巻線)に蓄えられたエネルギーを放出する時間が不足するためである。また、回生電流の最大値はモータ160の回転数が高い程(車速が高い程)大きくなる。図13(a)においてラインAは、各回転数における回生電流のピークを結んだ線である。最大値導出部123は、回生モード時において、刻々と変化するモータ160の回転数を回転数センサ210から逐次取得し、取得したモータ160の回転数においてモータ160から回収可能な回生電流の最大値IMAXを導出する。
図13(b)は、モータ160の回転数とモータ160から回収可能な回生電流の最大値IMAXとの関係の一例を示す図である。図13(b)に示す特性カーブは、実測またはシミュレーション等に基づいて取得され、上記特性カーブを示す情報が記憶部121に記憶されている。最大値導出部123は、回転数センサ210から取得したモータ160の回転数に対応する回生電流の最大値IMAXを、記憶部121に記憶された上記の特性カーブから抽出する。なお、モータ160の回転数とモータ160から回収可能な回生電流の最大値IMAXとの関係を示す関係式を記憶部121に記憶しておき、最大値導出部123は、上記関係式に回転数センサ210から取得したモータ160の回転数を代入することによって回生電流の最大値IMAXを導出してもよい。
係数導出部124は、回転数センサ210から出力される回転数検出信号S2によって示される自車両の車速に基づいて、係数αを所定期間毎(例えば0.1msec)に導出する。係数αの値は0≦α≦1の範囲内に設定され、車速が大きい程、小さい値が導出される。なお、車速と係数αとの関係を示すデータが記憶部121に記憶されている。係数導出部124は、自車両の車速に対応する係数αを、記憶部121に記憶されたデータから抽出する。なお、車速と係数αとの関係を示す関係式を記憶部121に記憶しておき、係数導出部124は、上記関係式に車速を代入することによって係数αを導出してもよい。係数αは、車速に対して連続的に変化するものであってもよいし、段階的に変化するものであってもよい。
回生電流指令値導出部125は、最大値導出部123によって導出された回生電流の最大値IMAXと係数導出部124によって導出された係数αとを乗算することによって得られる回生電流の電流値I(I=α×IMAX)を回生電流指令値C2として導出し、これを選択部126に供給する。
選択部126は、回生モードへの移行が可能であると判定されている場合において、ブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力されているものと判定した場合に、回生モードに移行し、回生電流指令値導出部125から供給される回生電流指令値C2を選択してこれをモータ駆動部300に供給する。一方、選択部126は、回生モードへの移行が不可であると判定されている場合およびブレーキセンサ230からブレーキ操作検出信号S4が出力されていないものと判定した場合に、力行モードに移行し、駆動指令値導出部122から供給されるモータ駆動指令値C1を選択してこれをモータ駆動部300に供給する。
モータ駆動部300は、選択部126からモータ駆動指令値C1が供給された場合には、当該モータ駆動指令値C1によって示されるアシスト量の補助駆動力が得られるようにモータ160を駆動する。一方、モータ駆動部300は、選択部126から回生電流指令値C2が供給された場合には、当該回生電流指令値C2によって示される電流値の回生電流をモータ160から回収する。
本実施形態に係る電動機付自転車において、係数αは、モータ160から回収される回生電流の回収率に相当する。車速が大きくなる程、回生電流の最大値IMAXが大きくなるところ、車速が大きくなる程、係数αの値を小さくしてモータ160から回収される回生電流の回収率を小さくすることで、バッテリ110に過大な回生電流が流入することを防止できる。なお、車速が所定値よりも大となった場合には、回生モードへの移行が不可とされる。係数導出部124によって導出された係数αは、操作・表示部180を構成する表示制御部187に通知される。
表示制御部187は、回生モードへの移行が可能である場合には、係数導出部124から通知された係数αの値に応じた周期で状態表示部184を構成する発光部を点滅させる。例えば、表示制御部187は、係数導出部124から通知された係数αの値が大きい程(すなわち、モータ160から回収される回生電流の回収率が高い程)、短い周期で状態表示部184を点滅させてもよい。なお、表示制御部187は、回生モードへの移行が不可である場合には、状態表示部184を構成する発光部を消灯させる。
このように、係数αの大きさに応じて状態表示部184における表示態様を変化させることで、ユーザは、回生モード移行時に、モータ160からどの程度の電力が回収可能なのかを予め把握することができ、回生ブレーキによる制動力の大きさを予測することができる。これにより、ユーザが期待する制動力と実際に作用する制動力との間の乖離をなくし、ブレーキ操作時における違和感を緩和する効果を更に促進することができる。
また、表示制御部187は、回生モード時において、バッテリ残量表示部181における表示を、バッテリ残量表示モードから回生状態表示モードに切り替え、例えば、モータ160から実際に回収されている回生電流の大きさに応じた回生状態表示をバッテリ残量表示部181において行う。
図14は、バッテリ残量表示部181における回生状態表示の一例を示す図であり、バッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の発光状態の推移を示した図である。表示制御部187は、回生モードに移行するとバッテリ残量表示部181における表示モードをバッテリ残量表示モードから回生状態表示モードに切り替える。これに伴ってバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部における発光色を切り替えてもよい。バッテリ残量表示部181における表示モードが、回生状態表示モードに切り替わると、表示制御部187は、はじめに、バッテリ残量表示部181を構成する1番左の発光部のみを点灯させる。その後、左から2番目、3番目、4番目の発光部を順次点灯させていき、最後に一番右の発光部を点灯させる。表示制御部187は、かかる一連の表示を繰り返すことにより、モータ160から回生電流が回収されていることをバッテリ残量表示部181に表示させる。表示制御部187は、モータ160から回収される回生電流の大きさが大きい程、上記一連の表示の繰り返し周期を短くする。これにより、ユーザは、モータ160から回生電流が回収されていることおよび回生電流の大まかな大きさを把握することができる。なお、モータ160から回収される回生電流の大きさは、例えば、回生電流が流れる電流経路上に設けられた抵抗素子の電圧降下によって検出することが可能であり、検出された回生電流の大きさは、主制御部100を介して表示制御部187に通知される。
このように、回生モード時にバッテリ残量表示部181において回生状態表示を行うことで、ユーザは、実際にモータ160から電力が回収されていることを、視覚を通じて認識することが可能となる。
回生電流の大きさに応じた回生状態表示の他の例として、回生電流の大きさに応じて点灯させる発光部の数を変化させてもよい。図15(a)は、回生電流の大きさが比較的小さい場合の回生状態表示の例であり、図15(b)は、回生電流の大きさが比較的大きい場合の回生状態表示の例である。
本実施形態では、回生状態表示を回生電流の大きさに基づいて行う場合を例示したが、例えば、回生ブレーキによる制動トルクを算出し、算出した制動トルクの大きさ応じた回生状態表示を行ってもよい。また、係数導出部124から通知された係数αの大きさに応じた回生状態表示を行ってもよい。例えば、係数αの大きさが大きい程、図14に示す一連の表示の繰り返し周期を短くしてもよい。この場合、状態表示部184において係数αに応じた表示は行わないこととしてもよい。
また、本実施形態では、車速に基づいて係数αを導出する場合を例示したが、この態様に限定されるものではない。例えば、バッテリ電圧やバッテリの充電率等のバッテリの状態に基づいて係数αを導出してもよい。この場合、バッテリ電圧またはバッテリの充電率が高い程、小さい値の係数αが導出されるように構成することが好ましい。これにより、バッテリ電圧またはバッテリの充電率が高い程、回生電流の回収率が小さくなるので、バッテリの過充電を防止することができる。また、温度センサ220から出力される温度検出信号S3によって示される各部の温度に基づいて係数αを導出してもよい。また、本実施形態では、係数αの表示を状態表示部184において行う場合を例示したが、係数αの表示をバッテリ残量表示部181において行うこととしてもよい。
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る電動機付自転車において、主制御部100は、回生電流について可変の制限値を設定する。より具体的には、主制御部100は、モータ160から回収する回生電流の大きさを、バッテリ110の電圧、充電率、温度およびモータ160の回転数のうちの少なくとも1つに基づいて制限する。この場合において、主制御部100は、モータ160から回収する回生電流の最大値を電流値IAに制限する。すなわち、本実施形態において、モータ160から回収される回生電流の大きさは、いかなる場合でも電流値IAを超えないように制御される。
ここで、図16は、モータ160の回転数と、モータ160から回収可能な回生電流および回生電流の制限値の関係の一例を示す図である。例えば、モータ回転数がr2を超える領域では、理論上、電流値IAよりも大きい電流をモータ160から回収することが可能である。しかしながら、図16に示す例によれば、主制御部100が回生電流の制限値を最大値である電流値IAに設定している場合には、モータ回転数がr2を超える領域において、回生電流を電流値IAに制限する。
主制御部100は、例えば、バッテリ110の電圧若しくは充電率が高くなるほど、回生電流の制限値を最大値IAから低下させる方向に変化させる。また、主制御部100は、例えば、バッテリ110の温度が高くなる程、回生電流の制限値を低下させる方向に変化させてもよい。また、主制御部100は、例えば、モータ160の回転数が低くなる程、回生電流の制限値を低下させる方向に変化させてもよい。
例えば、モータ回転数がr1を超える領域では、理論上、電流値IBよりも大きい電流をモータ160から回収することが可能である。しかしながら、主制御部100が回生電流の制限値を電流値IAよりも小さいIBに設定している場合には、モータ回転数がr1を超える領域において、回生電流を電流値IBに制限する。
主制御部100は、電流値IBをIAで除算した値(IB/IA)を、モータ160からの電流回収率Rとして導出する。なお、電流回収率Rのとり得る範囲は、0<R≦1である。主制御部100によって導出された電流回収率Rは、操作・表示部180を構成する表示制御部187に通知される。
表示制御部187は、回生モードへの移行が可能である場合には、主制御部100から通知された電流回収率Rの値に応じた周期で状態表示部184を構成する発光部を点滅させる。例えば、表示制御部187は、主制御部100から通知された電流回収率Rの値が大きい程、長い周期で状態表示部184を点滅させてもよい。例えば、0<R<0.3の場合に状態表示部184を比較的短い周期で点滅させ、0.3≦R<0.7の場合に状態表示部184を比較的長い周期で点滅させ、0.7≦R≦1の場合に状態表示部184を点灯させてもよい。なお、電流回収率Rの値に応じてバッテリ残量表示部181における表示態様を変化させてもよい。例えば、0<R<0.3の場合にバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち一番左の発光部を発光させ、0.3≦R<0.7の場合にバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部のうち一番左、左から2番目および左から3番目の発光部を発光させ、0.7≦R≦1の場合にバッテリ残量表示部181を構成する5つの発光部の全てを発光させてもよい。このように、電流回収率Rの表示は、状態表示部184において行ってもよいし、バッテリ残量表示部181において行ってもよい。また、状態表示部184およびバッテリ残量表示部181の双方を用いて電流回収率Rの表示を行ってもよい。
このように、電流回収率Rの大きさに応じて状態表示部184における表示態様を変化させることで、ユーザは、回生モード移行時に、モータ160からどの程度の電力が回収可能なのかを予め把握することができ、回生ブレーキによる制動力の大きさを予測することができる。これにより、ユーザが期待する制動力と実際に作用する制動力との間の乖離をなくし、ブレーキ操作時における違和感を緩和する効果を更に促進することができる。