JP2017222172A - 積層発泡シート及び発泡成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発泡層10と、該発泡層10に積層された非発泡層20とを備えている積層発泡シート1であって、前記発泡層10が、改質ポリプロピレン系樹脂を含む第1のポリプロピレン系樹脂組成物で形成され、前記非発泡層20が発泡層10と同じか又は異なる改質ポリプロピレン系樹脂を含む第2のポリプロピレン系樹脂組成物で形成されており、発泡層10と非発泡層20とに含まれるそれぞれの前記改質ポリプロピレン系樹脂は、いずれもポリプロピレン系樹脂と芳香族ビニルモノマーとの反応物であり、且つ、前記ポリプロピレン系樹脂よりも高い溶融張力を示すものであり、200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる前記それぞれの改質ポリプロピレン系樹脂の位相角は、周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下である積層発泡シート1。
【選択図】図1
Description
本願は、日本国特願2016−066506号及び日本国特願2016−066513号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
ポリプロピレン系樹脂製の成形品としては、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱成形した発泡成形品などが知られている。
このポリプロピレン系樹脂発泡シートとしては、発泡層単層のものや発泡層と非発泡層とが積層された積層構造を有するものが知られている。
これらについて区別する際には、「発泡シート」との用語が狭義に用いられて前者の意味で用いられ、後者のものは「積層発泡シート」などと称されている。
この発泡シートや積層発泡シートは、従来、押出発泡法によって作製されているが、ポリプロピレン系樹脂は一般的に結晶性を有することから溶融時の粘度及び溶融張力が不足し易く、良好な発泡状態のものが得られにくい。
例えば、下記の特許文献1には、溶融状態で測定した伸長粘度が歪量の増加に伴い急激に上昇する性質(“歪硬化性”ともいう)を有する改質ポリプロピレン系樹脂を得る方法について記載されている。
したがって、発泡層の形成材料として高溶融張力化された改質ポリプロピレン系樹脂を用いることで発泡シートは、熱成形に好適なものとなり、なかでも深絞り成形などに適したものとなり得る。
しかしながら、積層発泡シートに深絞り成形を行うと非発泡層に延伸による破れや穴開きなどの現象(以下、「樹脂切れ」という)が生じるなどするおそれがあり、発泡層の良好な成形性を十分に活用できない場合がある。
また、積層発泡シートの作製において発泡層と非発泡層とを共押出法によって一度に形成させようとした場合、押出されたシートが大きく垂れ下がる「ドローダウン」と呼ばれる現象が生じる場合があり、良好な積層発泡シートが得られない場合がある。
そのため、積層発泡シート製の発泡成形品についても十分良好な状態のものが得られない場合がある。
本発明は、このような要望を満足させることを課題としており、非発泡層に樹脂切れが生じ難く、発泡層と非発泡層とを共押出法によって一度に形成させることが容易な積層発泡シートを提供し、ひいては品質に優れた発泡成形品を提供することを課題としている。
以下においては、ポリプロピレン系樹脂と芳香族ビニルモノマーとを反応させた改質ポリプロピレン系樹脂を用いて積層構造を有するポリプロピレン系樹脂発泡シートを作製する場合を例にして図を参照しつつ説明する。
図1は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの概略断面図であり、図に示されているように本実施形態のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、発泡層と非発泡層とを備えている。
なお、以下においては、図1に示したような態様のものを含め1以上の発泡層と1以上の非発泡層とを備えたポリプロピレン系樹脂発泡シート並びに2以上の発泡層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを「積層発泡シート」と称し、発泡層単層のポリプロピレン系樹脂発泡シートと区別する。
従って、以下においては、特段の断りがない限りにおいて「積層発泡シート」との用語は図1に示したような積層構造を有するものを意味し、「発泡シート」との用語は発泡層単層のシートを意味する用語として用いる。
本実施形態の前記発泡層10は、押出発泡法で作製された発泡シートによって形成されている。
また、前記非発泡層20、20’は、押出法によって作製された樹脂フィルムで形成されている。
本実施形態の積層発泡シート1は、前記発泡層10と前記非発泡層20、20’との共押出品である。
即ち、本実施形態の積層発泡シート1は、押出発泡シートと押出フィルムとを作製するためのポリプロピレン系樹脂組成物が合流金型にて積層され、一つのダイスリットよりこれらが積層一体化された状態で押出されてなるものである。
発泡層10と非発泡層20、20’とを形成するポリプロピレン系樹脂組成物の内、発泡層10を形成する第1のポリプロピレン系樹脂組成物は、改質ポリプロピレン系樹脂を含み、さらに発泡のための成分を含有している。
非発泡層20、20’を形成する第2のポリプロピレン系樹脂組成物も改質ポリプロピレン系樹脂を含んでいる。
発泡層10を形成する第1のポリプロピレン系樹脂組成物と非発泡層20、20’を形成する第2のポリプロピレン系樹脂組成物とは含有する改質ポリプロピレン系樹脂が共通していても異なっていてもよい。
まずは、改質ポリプロピレン系樹脂とその製造方法とについて説明する。
本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、(A)ポリプロピレン系樹脂、(B)有機過酸化物、及び、(C)芳香族ビニルモノマーを含む樹脂組成物(以下「原料組成物」ともいう)を反応させて得られたものである。
本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂としては、200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる位相角が周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下となるものを採用することが好ましい。
周波数分散動的粘弾性測定においては、低周波数領域に粘性項の影響が現れやすい。
即ち、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、低周波数領域における位相角が小さく、分子間の“滑り”が生じ難いものとなっている。
従って、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、発泡層を形成すべく発泡させるのに際して程良い伸びを示し、気泡の成長に伴って気泡膜が急激に薄くなってしまうことが抑制されることから連続気泡率の低い発泡シートを得るのに有利なものである。
さらに、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、非発泡層に樹脂切れが生じて非発泡層の表面に発泡層が露出している箇所が形成されてしまうことやダイスリットより積層一体化された状態で押出される際のドローダウンを抑制するのにも有利なものである。
(位相角の求め方)
動的粘弾性測定は、粘弾性測定装置PHYSICA MCR301(Anton Paar社製)、温度制御システムCTD450にて測定する。
まず、試料となる改質ポリプロピレン系樹脂を熱プレス機にて、温度200℃×5分加熱の条件下でプレスし、直径25mm、厚さ3mmの円盤サンプルを作製する。
次にサンプルを測定温度(200℃)に加熱した粘弾性測定装置のプレート上にセットし窒素雰囲気下にて5分間に亘って加熱し溶融させる。
その後、直径25mmのパラレルプレートにて間隔を2.0mmまで押しつぶし、プレートからはみ出した樹脂を取り除く。
更に測定温度±1℃に達してから5分間加熱後、歪み5%、周波数0.01〜100(Hz)、測定点の点数を21(5点/桁)、測定温度200℃の条件下にて、動的粘弾性測定を行い、位相角δ(°)を測定する。
なお、測定開始は高周波数側(100Hz)からとする。
そして、周波数0.01Hzにおける位相角δを求める。
改質ポリプロピレン系樹脂が原料として用いるポリプロピレン系樹脂よりも高い溶融張力を示すものかどうかは、例えば、230℃の温度で両者の溶融張力を比較することで判別可能である。
一般的なポリプロピレン系樹脂は、230℃での溶融張力が5cN未満であるため、出発原料たる(A)ポリプロピレン系樹脂と比較するまでもなく、230℃で測定した溶融張力が6cN以上の値を示すものについては改質ポリプロピレン系樹脂としてみなすことができる。
但し、改質ポリプロピレン系樹脂の溶融張力は、過度に高いと第1のポリプロピレン系樹脂組成物や第2のポリプロピレン系樹脂組成物を押出す際に押出機の負荷を大きなものにしてしまうおそれがあるため、230℃における値が30cN以下であることが好ましく、28cN以下であることがより好ましい。
[溶融張力測定方法]
試料は、測定対象がペレットの場合はそのまま使用し、積層発泡シートなどのシート状の場合は当該シートをペレタイザー(例えば、株式会社東洋精機製作所製の「ハンドトゥルーダ 型式PM−1」)を使用し、シリンダ温度220℃、試料充填から押し出し開始までの待機時間2.5分の条件でペレット化したものを用いる。
溶融張力は、ツインボアキャピラリーレオメーターRheologic5000T(イタリア チアスト社製)を用いて測定する。
すなわち、試験温度に加熱された径15mmのバレルに測定試料樹脂を充填後、5分間予熱したのち、上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.0mm、長さ20mm、流入角度フラット)からピストン降下速度(0.1546mm/s)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて、その巻取り速度を初速8.7mm/s、加速度12mm/s2で徐々に増加させつつ巻き取って行き、紐状物が切断する直前の極大値と極小値の平均を試料の溶融張力とする。
なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力とする。
より具体的には、改質ポリプロピレン系樹脂は、MFRが0.5g/10min以上であることが好ましく、0.7g/10min以上であることがより好ましく1.0g/10min以上であることが特に好ましい。
独立気泡性に優れた(連続気泡率の低い)発泡層を形成させる上において、改質ポリプロピレン系樹脂のMFRは0.7g/10min以上であることが好ましい。
但し、過度にMFRが高いと発泡層10に良好な発泡性を発揮させることが難しくなる場合があるので改質ポリプロピレン系樹脂のMFRは、5.0g/10min以下であることが好ましく、3.0g/10min以下であることがより好ましい。
(a)230℃の温度での溶融張力が15cN以上。
(b)温度230℃、公称荷重2.16kgの測定条件でのメルトマスフローレイト(MFR)が0.7g/10min以上。
(c)200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる位相角が周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下。
より具体的にはMFRは以下のようにして測定される。
測定対象がペレットの場合はそのまま測定用試料として使用する。
測定対象が、発泡シートの場合は当該発泡シートを株式会社東洋精機製作所製のペレタイザー「ハンドトゥルーダ 型式PM−1」を使用してペレット化したものを測定用試料として用いる。
なお、ペレタイザーを使用して発泡シートからペレットを作製する際のシリンダ温度は220℃とし、試料充填から押し出し開始までの待機時間は2.5分とする。
メルトマスフローレイト(MFR)は株式会社東洋精機製作所製のセミオートメルトインデクサー2Aを用い、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」によって測定する。
測定条件は、試料量3〜8g、予熱時間270秒、ロードホールド時間30秒、試験温度230℃、試験荷重21.18N、ピストン移動距離(インターバル)4mmとする。
試験回数は3回とし、その平均値をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
(A)ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーを重合させることにより得られる重合体である。
改質ポリプロピレン系樹脂を得るための原料組成物に含有させる(A)ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンモノマーの単独重合体やプロピレンモノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
前記共重合体は、例えば、重合成分100質量%中、プロピレンモノマーの含有量が50質量%以上であることが好ましく、プロピレンモノマーの含有量が80質量%以上であることがより好ましく、プロピレンモノマーの含有量が90質量%以上であることが特に好ましい。
共重合は、ランダム共重合であってもよく、ブロック共重合であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、共重合体である場合、プロピレンモノマー以外の成分が、エチレンモノマー及び炭素数4〜8のαオレフィンモノマーからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、エチレンモノマー及び1−ブテンモノマーの内の1種以上であることがより好ましい。
(A)ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの単独重合体であることが好ましく、プロピレンホモポリマーであることが好ましい。
一般的な発泡シートの形成材料として用いられるポリプロピレン系樹脂は、MFRが1g/10min以下程度であるが改質ポリプロピレン系樹脂の出発原料たるポリプロピレン系樹脂としては、メルトマスフローレイト(MFR)が、4.0g/10min以上であることが好ましい。
(A)ポリプロピレン系樹脂のMFRは、4.0g/10min以上20.0g/10min以下であることがより好ましく、7.0g/10min以上18.0g/10min以下であることが特に好ましい。
そのため上記のように高いMFRの(A)ポリプロピレン系樹脂だけを改質ポリプロピレン系樹脂の出発原料としたのでは、改質ポリプロピレン系樹脂に高い溶融張力を与えるために(B)有機過酸化物や(C)芳香族ビニルモノマーの使用量を増大させる結果となって改質ポリプロピレン系樹脂中に多くのゲルを含ませてしまう可能性がある。
そこで、改質ポリプロピレン系樹脂の出発原料としては、4.0g/10min以上のMFRを示す第1のポリプロピレン系樹脂と、MFRが4.0g/10min未満の第2のポリプロピレン系樹脂とを併用することが好ましい。
このように複数のポリプロピレン系樹脂を改質ポリプロピレン系樹脂の出発原料とする場合、この複数のポリプロピレン系樹脂を混合した混合樹脂は、MFRが4.0g/10min以上であることが好ましい。
混合樹脂のMFRは、例えば、出発原料に含まれる割合と同じ割合でポリプロピレン系樹脂をブレンドし、ブレンドされたポリプロピレン系樹脂を溶融混合して測定用試料を作製し、該測定用試料のMFRを測定することによって求めることができる。
[A1×a1+A2×a2]/100 ≧ 4.0 ・・・(x)
原料組成物における第1のポリプロピレン系樹脂と第2のポリプロピレン系樹脂とが上記の関係を有することにより、連気率の低い押出積層発泡シートが得られるための改質ポリプロピレン系樹脂を得ることができるという効果を奏する。
しかしながら、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、上記のようにMFRの異なる複数のポリプロピレン系樹脂を出発原料とすることで、そのゲル分率の値を、例えば、1.0質量%以下とすることができ、好ましくは、ゲル分率の値を0.6質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下とすることができる。
[ゲル含有量測定方法]
試料はペレットやビーズはそのまま使用し、発泡体は1cm角程度にカットする。
その試料0.8gを精秤後、底部が平らで側面をひだ折りにした200メッシュ金網にいれる。
200mLトールビーカー(図4の符号TB)にスノコ(図4の符号BM)を入れ、該スノコとトールビーカーの底との間の空間にスターラーピース(図4の符号ST)を入れる。
スノコの上に試料をいれたメッシュ金網を設置し、キシレン80mLを加える。
加熱攪拌ドライバス装置(アズワン製HDBS−6)を用いて130℃、80rpmで3時間攪拌後、トールビーカー内の200メッシュ金網をピンセットで取り出し、130℃に加熱したキシレン80mL中にて共洗いし金網側面の付着物除去を行う。
その後、金網上の樹脂不溶物をドラフト内で自然乾燥させてキシレンを蒸発させ、最後に樹脂不溶物を金網ごと恒温乾燥器で120℃、2時間乾燥させる。
デシケーター内で放冷後金網ごと質量を測定し、ゲル含有量(質量%)を次式で算出した。
ゲル含有量(質量%)=金網上の不溶樹脂質量(g)/試料質量(0.8g) ×100
(金網上の不溶樹脂質量=ろ過乾燥後の金網質量−ろ過前金網のみ質量)
本実施形態においては、前記ラジカル発生剤として有機過酸化物を用い、前記モノマーとして芳香族ビニルモノマーを用いる。
本実施形態の(B)有機過酸化物は、ポリプロピレン系樹脂に対する水素引抜能を有するものであり、特に限定されず、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール及びケトンパーオキサイド等が挙げられる。
前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、及び、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3等が挙げられる。
前記パーオキシエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、及びジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ブタン、n−ブチル4,4−ジ-(t−ブチルパーオキシ)バレレート、及び2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
前記ケトンパーオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
前記有機過酸化物は、下記一般式(X)で表される構造を有していることが好ましい。
「R1」が2−エチルヘキシルに酸素原子が結合したアルコキシ基以外の場合、酸素原子は、2級炭素か3級炭素かに結合していることが好ましく下記一般式(Y)で表される構造を有していることが好ましい。
具体的には、下記一般式(Z)で表される構造を有していることが好ましい。
本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、(B)有機過酸化物の含有量が過少であると、原料組成物の反応性が低くなるため、良好な改質効果が発揮されないおそれがある。
本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂は、(B)有機過酸化物の含有量が過大であると、溶融混練時にポリプロピレン系樹脂の分解反応が起こり易くなるため弾性成分が小さくなり良好な改質効果が発揮されないおそれがある。
即ち、(B)有機過酸化物の含有量が0.1質量部以上1.5質量部以下であることにより、前記原料組成物は、溶融混練時における反応条件を高い精度でコントロールしなくても優れた溶融張力を有する改質ポリプロピレン系樹脂を作製することができる。
(C)芳香族ビニルモノマーは、(A)ポリプロピレン系樹脂に化学的結合をし、分岐構造を形成するとともにポリプロピレン系樹脂どうしを架橋する架橋剤として作用する成分である。
原料組成物に含有させる(C)芳香族ビニルモノマーは、1種のみでも、2種以上でもよい。
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのイソプロペニルベンゼンが挙げられる。
なかでも、芳香族ビニルモノマーは、スチレンであることが好ましい。
改質ポリプロピレン系樹脂は、(C)芳香族ビニルモノマーの含有量が過少であると、溶融混練において分岐、架橋構造が十分に形成されないおそれがある。また、(C)芳香族ビニルモノマーの含有量が過少であると過酸化物による樹脂の分解抑制も不十分になるため、良好な改質効果を発揮できないおそれがある。
改質ポリプロピレン系樹脂は、(C)芳香族ビニルモノマーの含有量が過大であると、溶融混練で(C)芳香族ビニルモノマーの一部が未反応となり易い。そのため、(C)芳香族ビニルモノマーの含有量が過大であると、改質ポリプロピレン系樹脂にオリゴマーを多く含有させたり、ミクロ相分離などを原因とした白濁の問題を有するものになるおそれがある。その結果、改質ポリプロピレン系樹脂の特性に弾性成分の影響が大きく反映されるようになり、改質ポリプロピレン系樹脂は、ノビが悪く良好な改質効果を示さないおそれがある。
即ち、原料組成物における(C)芳香族ビニルモノマーの含有量が0.1質量部以上10質量部以下であることにより、溶融混練時における反応条件を高い精度でコントロールしなくても良質の改質ポリプロピレン系樹脂を作製することができる。
このようにして得られる改質ポリプロピレン系樹脂は、連続気泡率が低い発泡層を備えた積層発泡シートの作製に有効なものとなる。
該モノマーとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどのα−オレフィンモノマー;シクロペンテン、ノルボルネンなどのシクロオレフィンモノマー;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエンモノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素系モノマー;アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸などのアクリル系モノマー;エポキシ系モノマー;ビニルアセテートなどのアセテート系モノマーがあげられる。
前記改質ポリプロピレン系樹脂を得るために、前記原料組成物は、その反応性を制御すべく(D)ラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。
(D)ラジカル捕捉剤の使用は、改質ポリプロピレン系樹脂の溶融張力を高くするのに有効である。
即ち、(D)ラジカル捕捉剤は、改質ポリプロピレン系樹脂を使って外観が良好な樹脂発泡体を得る上において有効なものである。
(D)ラジカル捕捉剤は、アルキルラジカルと結合した後の芳香族ビニルモノマーと結合可能であることが好ましい。
(D)ラジカル捕捉剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、及びビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等が挙げられる。
また、(A)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対する(D)ラジカル捕捉剤の含有量は、好ましくは1質量部以下である。
(D)ラジカル捕捉剤の含有量が前記下限以上及び前記上限以下であると、改質ポリプロピレン系樹脂の溶融張力が効果的に高くなり、発泡体の外観がより一層良好になる。
(E)添加剤は、様々な目的に応じて適宜用いられ、特に限定されない。
(E)添加剤の具体例としては、耐候性安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、消臭剤、光安定剤、結晶核剤、顔料、滑材、すべり性の付与又はアンチブロッキング性の付与を目的とした界面活性剤、無機充填剤、並びに無機充填剤の分散性を向上させる分散性向上剤等が挙げられる。
前記分散性向上剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
また、(E)添加剤は、溶融混練後に添加して改質ポリプロピレン系樹脂に含有させるようにしてもよい。
(E)添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本実施形態に係る改質ポリプロピレン系樹脂は、発泡させた際に内部で破泡が生じにくく、連続気泡率の低い外観が良好な発泡成形品を得ることができる。
また、本実施形態に係る改質ポリプロピレン系樹脂は、低い連続気泡率を有する発泡シートが得られ易いという利点を有する。
さらに、本実施形態に係る改質ポリプロピレン系樹脂は、低いゲル分率を有するとともに良好な流れ性を示し、発泡層の形成のみならず非発泡層の形成材料としても好適なものである。
改質ポリプロピレン系樹脂の製造に際しては、例えば、(A)ポリプロピレン系樹脂100質量部と、(B)有機過酸化物0.1質量部以上1.5質量部以下と、(C)芳香族ビニルモノマー0.1質量部以上10質量部以下とを含む原料組成物を溶融混練して、改質ポリプロピレン系樹脂を得る方法が採用できる。
原料組成物の溶融混練時には、当該原料組成物を良好な溶融状態とするために加熱温度を制御することが好ましい。
前記原料組成物は、その溶融混練時における加熱により反応する。
即ち、前記加熱により有機過酸化物がラジカルを発生させ、当該ラジカルがポリプロピレン系樹脂の三級炭素に結合している水素を攻撃してアルキルラジカルを形成させる。
なお、そのままの状態ではβ開裂が生じポリプロピレン系樹脂の分子切断が生じることになるが本実施形態においては芳香族ビニルモノマーが当該箇所に結合し、分岐構造(架橋構造)を形成する。
但し、(A)ポリプロピレン系樹脂と(B)有機過酸化物と(C)芳香族ビニルモノマーとは、一括で混合されてもよい。
(D)ラジカル捕捉剤は、(C)芳香族ビニルモノマーを添加する前に添加されてもよく、(C)芳香族ビニルモノマーを添加した後に添加されてもよく、他の成分と一括で混合されてもよい。
(E)添加剤は、(C)芳香族ビニルモノマーを添加する前に添加されてもよく、(C)芳香族ビニルモノマーを添加した後に添加されてもよく、他の成分と一括で混合されてもよい。
前記原料組成物を溶融混練する際には、押出機を用いることが好ましい。
押出機に前記原料組成物を供給して、押出機内で架橋反応をさせて、改質ポリプロピレン系樹脂を形成しつつ、押出機から改質ポリプロピレン系樹脂を押出すことが好ましい。
押出機に前記原料組成物を連続的に供給し、押出機から改質ポリプロピレン系樹脂を連続的に押出すことにより、改質ポリプロピレン系樹脂が効率的に得られる。
前記押出機は、単独で、又は複数連結したタンデム型の押出機として、改質ポリプロピレン系樹脂の製造に用いることができる。
特に、ベース樹脂であるポリプロピレン系樹脂に対して、他の成分の分散性及び反応性をより一層高める観点からは、二軸押出機が好ましい。
即ち、改質ポリプロピレン系樹脂の製造方法においては、溶融混練することによってポリマーとモノマーとを反応させる反応工程と、反応工程での溶融混練によって得られた混練物に二酸化炭素を加える二酸化炭素添加工程、及び、前記二酸化炭素を加えた混練物から二酸化炭素を含むガスを排出させる脱気工程を実施することが好ましい。
即ち、前者の場合、例えば、押出機の出口付近に二酸化炭素の供給地点が設けられ、この二酸化炭素供給地点よりも上流側に(A)ポリプロピレン系樹脂、(B)有機過酸化物、(C)芳香族ビニルモノマーなどの原料組成物の材料供給地点が設けられた押出機を用いて実施できる。
また、後者の場合、上流側押出機と下流側押出機とが連結されたタンデム押出機を用い、上流側押出機でポリプロピレン系樹脂の改質を実施し、下流側押出機で二酸化炭素を加えてさらなる溶融混練を実施すればよい。
前記二酸化炭素添加工程や前記脱気工程を実施することにより、反応工程で反応に消費されずに残存したモノマー、ポリマーの分解生成物であるオリゴマー、有機過酸化物が分解して形成されたアルコール類、ケトン類などを二酸化炭素に同伴して排出させることができ、揮発性有機物の低減された改質ポリプロピレン系樹脂を得ることができる。
従って、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂の製造方法においては、押出機の先端に装着したダイスから混練物をシート状やストランド状に押出して改質ポリプロピレン系樹脂シートや改質ポリプロピレン系樹脂ストランドを作製し、該シートやストランドをペレタイザーでペレット化することが好ましい。
また、本実施形態の改質ポリプロピレン系樹脂の製造方法においては、押出機の先端に装着したダイスから混練物をストランド状に押出しつつこのダイス出口でストランドを断続的にカットしてペレット化を行ってもよい。
即ち、本実施形態における脱気工程は、押出機から混練物を押出す際の自然放出によって混練物からガスを排出させるような方法で実施できる。
このとき混練物に加える二酸化炭素の量が多い方が改質ポリプロピレン系樹脂に含まれる揮発性有機物の量を低減することができる。
しかし、過度に二酸化炭素を加えると、脱気工程において改質ポリプロピレン系樹脂シートや改質ポリプロピレン系樹脂ストランドに発泡を生じさせるおそれがある。
発泡した改質ポリプロピレン系樹脂ペレットは、積層発泡シートを共押出法によって作製する際に発泡層に粗大気泡を形成させる原因や非発泡層に樹脂切れを生じさせる原因となり得る。
なお、要すれば、二酸化炭素とともに、例えば、メタン、エタン、プロパンなどの炭素数5以下の炭化水素や窒素を少量含んだ混合ガス(例えば、95質量%以上のCO2と5質量%以下の他のガスとを含む混合ガス)を用いて二酸化炭素添加工程を実施しても良い。
このような混合ガスを用いる場合も、その割合は上記のような範囲内とすることが好ましい。
ペレット化された改質ポリプロピレン系樹脂に対する二酸化炭素添加工程は、例えば、改質ポリプロピレン系樹脂ペレットを圧力容器に入れ、該圧力容器内に超臨界状態の二酸化炭素を導入して改質ポリプロピレン系樹脂ペレットに超臨界状態の二酸化炭素を含浸させるような方法によって実施できる。
この場合、一定時間経過後に圧力容器内から二酸化炭素を排出させ、必要に応じて圧力容器内を大気圧以下に減圧することで脱気工程を実施することができる。
このポリプロピレン系樹脂としては、改質ポリプロピレン系樹脂の出発物質として前記に例示したものが挙げられる。
改質ポリプロピレン系樹脂とともに積層発泡シートを構成するポリプロピレン系樹脂としては、多段重合法によって得られる軟質系のものが好ましい。
なお、改質ポリプロピレン系樹脂以外のポリマー成分を第1のポリプロピレン系樹脂組成物や第2のポリプロピレン系樹脂組成物に含有させる場合、改質ポリプロピレン系樹脂と他の樹脂とは、例えば、9:1〜1:9(改質ポリプロピレン系樹脂:他の樹脂)の質量比率とすることが好ましい。
なお、積層発泡シートの形成に他の樹脂を用いる場合、第1のポリプロピレン系樹脂組成物や第2のポリプロピレン系樹脂組成物についても改質ポリプロピレン系樹脂と同様に200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる位相角が周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下を示すことが好ましい。
(MFR1)≦(MFR2) ・・・ (y)
(ここで、「MFR1」とは、温度230℃、公称荷重2.16kgでの第1のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトを意味し、「MFR2」とは、温度230℃、公称荷重2.16kgでの第2のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトを意味する。)
第1のポリプロピレン系樹脂組成物には発泡層を形成するのに際して発泡剤が含有されるため、発泡剤による可塑化効果を利用して押出温度を低下させることができる。
一方で非発泡層の形成に際して用いる第2のポリプロピレン系樹脂組成物にはそのような効果を発揮することが期待し難いため、押出温度の低下が困難となる。
よって、非発泡層の押出温度を下げるために、第1のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR1)と第2のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR2)とが上記のような関係を満たすことが好ましい。
(PA1) ≦ (PA2) ・・・ (z)
(ここで、「PA1」とは、200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる第1のポリプロピレン系樹脂組成物の周波数0.01Hzにおける位相角を意味し、「PA2」とは、200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる第2のポリプロピレン系樹脂組成物の周波数0.01Hzにおける位相角を意味する。)
前記発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素やこれらのハロゲン化物、炭酸ガス及び窒素が挙げられる。
前記気泡調整剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機化合物粒子などが挙げられる。
さらには、加熱分解型の発泡剤としても機能するアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物なども前記気泡調整剤として用いることができる。
該気泡調整剤や前記発泡剤は、1種単独で用いる必要はなく2種以上を併用してもよい。
図2は、本実施形態の積層発泡シートの製造に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、サーキュラーダイから発泡剤を含有する第1のポリプロピレン系樹脂組成物を押出発泡するとともに同じサーキュラーダイから第2のポリプロピレン系樹脂組成物を非発泡な状態で押出し、非発泡層が発泡層の両面に重なり合った筒状の積層発泡体を形成させた後、該積層発泡体を冷却マンドレルの外周に沿わせて冷却し、冷却された積層発泡体を上下に二分割してロールに巻き取る様子を示したもので図3は、図2の破線丸囲いAで示した部分の詳細を示すべく拡大した断面図を表している。
そして、本実施形態の積層発泡シートは、改質ポリプロピレン系樹脂が非発泡層の形成材料として採用されていることから発泡層の高速押出し及び高倍率での拡径に対しても非発泡層が高い追従性を示して樹脂切れなどが生じ難い。
なお、そのような条件設定を行うと押出発泡された発泡層が冷却され難くなるため発泡層に気泡破れが発生しやすくなる押出条件を設定することになる。
しかしながら、本実施形態の積層発泡シートは、第1のポリプロピレン系樹脂組成物に含まれている改質ポリプロピレン系樹脂のゲル分率が低く、且つ、MFRが高い。
即ち、気泡膜の破れの起点となるゲルが少なく、且つ、高いMFRによって気泡膜に優れた伸展性が発揮されることから本実施形態の積層発泡シートは、第2押出ライン80の押出機の負荷を軽減しつつも発泡層を緻密で独立気泡性の高い発泡状態とすることができる。
積層発泡シートは、カップ容器のような深絞り成形される場合、底面部と側面部との境界部で非発泡層の樹脂切れなどが生じやすいが、本実施形態の積層発泡シートは、非発泡層に改質ポリプロピレン系樹脂が含まれ、且つ、この改質ポリプロピレン系樹脂が高いMFRを示すことからこのようなトラブルが生じ難い。
即ち、本実施形態の積層発泡シートは、その製造時における効率改善に有効であるばかりでなく、成形品の歩留まり向上にも有効である。
従って、本実施形態の積層発泡シートは優れた生産効率で作製することができる。
積層発泡シートは、ブローアップ比が1.8以上の条件で製造されることが好ましく、ブローアップ比が2.3以上の条件で製造されることがより好ましい。
なお、ブローアップ比とは、サーキュラーダイの円環状の吐出口の直径(d)に対する冷却マンドレルの直径(D)によって求められる値(D/d)であり、サーキュラーダイの吐出口の直径(d)とは吐出口の内縁を通る円の直径を意味する。
また非発泡層の厚みが薄い積層発泡シートは、非発泡層に樹脂切れが生じ易いが、本実施形態の積層発泡シートはこのような場合においても樹脂切れが生じないため、積層発泡シートや成形品の軽量化に有効であると言える。
このような点において、本実施形態の積層発泡シートは、非発泡の坪量が100g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以下であることがより好ましい。
(密度測定方法)
積層発泡シートから、100cm3以上の試料を作製し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、見掛け密度を下記式により算出する。
見掛け密度(g/cm3)=試料の質量(g)/試料の体積(cm3)
なお、試料の寸法測定には、例えば、Mitutoyo Corporation社製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
すなわち、積層発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸をミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求める。
次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス社製)を使用して、1−1/2−1気圧法により測定用試料の体積(cm3)を求める。
これらの求めた値と下記式とにより連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求める。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で行う。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc 小8.5cc)にて補正を行う。
連続気泡率(%)=100×(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積
該熱成形としては、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形、プレス成型などが挙げられる。
この熱成形により作製する具体的な製品としては、容器が好ましい。
このようにして作製される発泡樹脂製容器は、軽量且つ高強度であるばかりでなく大量生産が容易であることから各種の包装用容器として利用されることが好ましい。
また、発泡樹脂製容器は、断熱性などにおいても優れることから食品包装に用いられることが好ましい。
本実施形態の発泡成形品の表面には、用途に応じて、不織布、金属箔、化粧紙、印刷フィルム等を積層してもよい。
<ドローダウン>
非発泡層が発泡層に積層された状態の積層発泡体作製時に、サーキュラーダイの円環状の吐出口(スリット間隔0.4mm)から円筒状に押出されたシートが垂れ下ってしまい、冷却マンドレルに到達できずに円筒状発泡体をうまく形成出来なかったものを「×」とし、冷却マンドレルまでシートをうまく展開できたものを「○」と判定した。
結果的に「×」のものは、積層発泡シート得ることが出来なかった。
(1)改質ポリプロピレン系樹脂の作製
ポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「E111G」、MFR=0.5g/10min、密度=0.9g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ株式会社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:156℃)0.49質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が41mmの二軸押出機(L/D=42)に供給し、液体注入ポンプを用いて二軸押出機の途中から、スチレンモノマーをポリプロピレン系樹脂100質量部に対する割合が2.5質量部となるように供給した。
フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数120rpm、ギアポンプ回転数25rpmの条件にて二軸押出機中で、原料組成物を溶融混練させ、先端に取り付けた口径2mm、ランド10mm、孔数9個のダイスから、45kg/hの吐出量で、溶融混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の溶融混練物を、30℃の水を収容した冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランド状の混練物を、ペレタイザーでカットして、改質ポリプロピレン系樹脂A(MFR=0.2g/10min、溶融張力=20.4cN、以下、「改質PP−A」)のペレットを得た。
(2)発泡体の作製
得られた「改質PP−A」100質量部及び、気泡調整剤(大日精化工業社製「ファインセルマスターHCPO410K」)0.45質量部とをドライブレンドして、混合物を得た。
この混合物を、口径50mmのNo.1押出機と、口径65mmのNo.2押出機とを持つタンデム型押出機のNo.1押出機のホッパーに供給し、No.1押出機のバレル内で加熱溶融混練した後、発泡剤として混合ブタンガス(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)を3質量%の割合となるようにNo.1押出機へ圧入し、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練して発泡層形成用の第1のポリプロピレン系樹脂組成物を当該押出機内で調製した後、この第1のポリプロピレン系樹脂組成物をNo.1押出機とNo.2押出機とを接続する移送部を通じてNo.2押出機へ流入させた。
次いで、このNo.2押出機のバレル内で均一に第1のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却した後、合流ダイへ流入させた。
この時の樹脂温度は177℃であり、No.2押出機からの吐出量は30kg/hであった。
具体的には前記の「改質PP−A」を74質量部、前記熱可塑性エラストマーを13質量部及び、高分子型帯電防止剤を13質量部の割合で含有する混合原料を口径32mmの単軸押出機のホッパーに供給して溶融混練させた後、前記合流ダイへ流入させた。
この時の吐出量は3kg/hであった。
この後、非発泡層が発泡層に積層された状態の円筒状発泡体を冷却マンドレルによって冷却成形後、冷却マンドレルの後部に取り付けたカッターにより円筒状発泡体を切開して長尺帯状の積層発泡シートを引き取り速度2.1m/minで巻き取った。
このときの積層発泡シートの平均厚みは1.61mmであった。
改質ポリプロピレン系樹脂を得るために使用したポリプロピレン系樹脂、スチレン量、有機過酸化物量及び、積層発泡シート得るために使用した改質ポリプロピレン系樹脂を以下の表どおりに変更した以外は上記と同様にして積層発泡シートを作製した。また比較例では、非発泡層の改質ポリプロピレン系樹脂を各々、改質前のポリプロピレン系樹脂に変更した(表2)。
評価結果を下記に示す。
なお、表1、2の「E111G」、「E200GP」、「PL400A」とは、以下のようなポリプロピレン系樹脂を意味する。
「E111G」:
ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「E111G」、MFR=0.5g/10min、密度=0.9g/cm3
「E200GP」:
ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「E200GP」、MFR=2.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「PL400A」:
ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PL400A」、MFR=2.0g/10min、密度=0.9g/cm3
以下においては発泡層の連続気泡率について評価を行った。
(実施例4)
(1)改質ポリプロピレン系樹脂の作製
ポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PM600A」、MFR=7.5g/10min、密度=0.9g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ株式会社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:156℃)0.84質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が41mmの二軸押出機(L/D=42)に供給し、液体注入ポンプを用いて二軸押出機の途中から、スチレンモノマーをポリプロピレン系樹脂100質量部に対する割合が2.5質量部となるように供給した。
フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数120rpm、ギアポンプ回転数25rpmの条件にて二軸押出機中で、原料組成物を溶融混練させ、先端に取り付けた口径2mm、ランド10mm、孔数9個のダイスから、45kg/hの吐出量で、溶融混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の溶融混練物を、30℃の水を収容した冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランド状の混練物を、ペレタイザーでカットして、改質ポリプロピレン系樹脂a(MFR=1.7g/10min、溶融張力=18.5cN、以下、「改質PP−a」)のペレットを得た。
(2)発泡体の作製
得られた「改質PP−a」85質量部、サンアロマー社製の熱可塑性エラストマー樹脂、商品名「Q100F」15質量部、及び、気泡調整剤(大日精化工業社製「ファインセルマスターHCPO410K」)0.45質量部をドライブレンドして、混合物を得た。
この混合物を、口径50mmのNo.1押出機と、口径65mmのNo.2押出機とを持つタンデム型押出機のNo.1押出機のホッパーに供給し、No.1押出機のバレル内で加熱溶融混練した後、発泡剤として混合ブタンガス(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)を2.5質量%の割合となるようにNo.1押出機へ圧入し、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練して発泡層形成用の第1のポリプロピレン系樹脂組成物を当該押出機内で調製した後、この第1のポリプロピレン系樹脂組成物をNo.1押出機とNo.2押出機とを接続する移送部を通じてNo.2押出機へ流入させた。
次いで、このNo.2押出機のバレル内で均一に第1のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却した後、合流ダイへ流入させた。
この時の樹脂温度は180℃であり、No.2押出機からの吐出量は30kg/hであった。
具体的には前記の「改質PP−a」を74質量部、前記熱可塑性エラストマーを13質量部及び、高分子型帯電防止剤を13質量部の割合で含有する混合原料を口径32mmの単軸押出機のホッパーに供給して溶融混練させた後、前記合流ダイへ流入させた。
この時の吐出量は3kg/hであった。
この後、非発泡層が発泡層に積層された状態の円筒状発泡体を冷却マンドレルによって冷却成形後、冷却マンドレルの後部に取り付けたカッターにより円筒状発泡体を切開して長尺帯状の積層発泡シートを引き取り速度2.1m/minで巻き取った。
このときの積層発泡シートの平均厚みは2.12mmであった。
改質ポリプロピレン系樹脂を得るために使用したポリプロピレン系樹脂、スチレン量、有機過酸化物量及び、積層発泡シート得るために使用した改質ポリプロピレン系樹脂を以下の表どおりに変更した以外は上記と同様にして実施した。また改質PP−eでは、改質ポリプロピレン系樹脂を得るために使用したポリプロピレン系樹脂を「PM600A」と「E111G」とを70/30となるように混合したポリプロピレン系樹脂を用い、改質PP−lでは、改質ポリプロピレン系樹脂を得るために使用したポリプロピレン系樹脂を「PM802A」と「PM900A」とを70/30となるように混合したポリプロピレン系樹脂を用いた(表4)。
なお、表4、5の「J105G」、「FY4」、「E111G」、「E200GP」、「PL400A」とは、以下のようなポリプロピレン系樹脂を意味する。
以上の積層発泡シートについて連続気泡率を測定した結果を表6に示す。
「J105G」:
ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「J105G」、MFR=9.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「FY4」:
ホモポリプロピレン樹脂、日本ポリプロ社製「FY4」、MFR=5.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「E111G」:
ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「E111G」、MFR=0.5g/10min、密度=0.9g/cm3
「E200GP」:
ホモポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製「E200GP」、MFR=2.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「PL400A」:
ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PL400A」、MFR=2.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「PL500A」:
ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PL500A」、MFR=3.3g/10min、密度=0.9g/cm3
「PM802A」:
ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PM802A」、MFR=20.0g/10min、密度=0.9g/cm3
「PM900A」:
ホモポリプロピレン樹脂、サンアロマー社製「PM900A」、MFR=30.0g/10min、密度=0.9g/cm3
10 発泡層
20 非発泡層
Claims (5)
- 発泡層と、該発泡層に積層された非発泡層とを備えている積層発泡シートであって、
前記発泡層が、改質ポリプロピレン系樹脂を含む第1のポリプロピレン系樹脂組成物で形成され、
前記非発泡層が発泡層と同じか又は異なる改質ポリプロピレン系樹脂を含む第2のポリプロピレン系樹脂組成物で形成されており、
発泡層と非発泡層とに含まれるそれぞれの前記改質ポリプロピレン系樹脂は、いずれもポリプロピレン系樹脂と芳香族ビニルモノマーとの反応物であり、且つ、前記ポリプロピレン系樹脂よりも高い溶融張力を示すものであり、
200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる前記それぞれの改質ポリプロピレン系樹脂の位相角は、周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下である積層発泡シート。 - 前記それぞれの改質ポリプロピレン系樹脂は、
下記の(a)、(b)、及び、(c)に示した全ての要件を満足する請求項1記載の積層発泡シート。
(a)230℃の温度での溶融張力が15cN以上
(b)温度230℃、公称荷重2.16kgの測定条件でのメルトマスフローレイトが0.7g/10min以上
(c)200℃での周波数分散動的粘弾性測定で求められる位相角が周波数0.01Hzにおいて30°以上70°以下 - 前記第1のポリプロピレン系樹脂組成物、及び、前記第2のポリプロピレン系樹脂組成物の内の少なくとも一方に含まれる前記改質ポリプロピレン系樹脂は、温度230℃、公称荷重2.16kgの測定条件で4.0g/10min以上のメルトマスフローレイトを示すポリプロピレン系樹脂と、芳香族ビニルモノマーとの反応物である、請求項1又は2に記載の積層発泡シート。
- 前記発泡層が押出発泡シートで構成され、前記非発泡層が押出フィルムで構成されており、前記発泡層と前記非発泡層との共押出品である請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層発泡シート。
- 積層発泡シート製の発泡成形品であり、前記積層発泡シートが請求項1乃至4の何れか1項に記載の積層発泡シートである発泡成形品。
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