JP2017214603A - 内燃機関用ピストンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】必ずしも特殊な封孔処理等を行うまでもなく、空隙率と機械的特性(強度、靱性等)を両立した陽極酸化層を頂面部に有する内燃機関用のピストンを提供する。【解決手段】本発明のピストンは、アルミニウム合金からなり燃焼室の一部を構成する頂面部と、頂面部の少なくとも一部を被覆する陽極酸化層とを備え、陽極酸化層は、空隙率が30%以上、空孔の平均最大長が5μm以下、空孔の平均最大径が1μm以下、隣接する空孔間の平均最大間隔が5μm以下、硬さが180Hv以上を満たす。このような陽極酸化層は、例えば、陽極酸化処理前に、ピストン頂面部のAl合金に対して金属組織(例えばSi粒)の微細化処理を施すことにより得られる。微細化処理は、例えば、レーザー照射による再溶融急冷凝固等により行える。【選択図】図1

Description

本発明は、断熱性のみならず信頼性にも優れた陽極酸化層を頂面部に有する内燃機関用ピストンとその製造方法に関する。
アルミニウム系部材は、耐食性、耐摩耗性、絶縁性等の向上を目的として陽極酸化処理されることが多い。陽極酸化処理は、アルミニウム系部材の被処理部を電解液浴(硫酸浴、シュウ酸浴等)に浸漬等して、その被処理部を陽極として通電することによりなされる酸化処理である。これにより被処理部の表面(被処理面)には、基材が酸化して生成された酸化アルミニウム(Al等)からなる陽極酸化膜(アルマイト皮膜)が形成される。陽極酸化処理は、基材自体の酸化を伴う点でめっき処理等とは異なる。
陽極酸化膜は、通常、緻密で薄い(数十nm程度)バリヤー層(活性層)と、このバリヤー層上に成長するポーラス層とからなる。一般的な陽極酸化膜は、厚さが高々数〜十数μm程度であり、その大部分がポーラス層からなる。ポーラス層は、通常、表面側に開口した多数の直管状の微細孔からなる。このため、それを封孔する封孔処理または孔全体を埋める封止処理が適宜なされる。
ところで、このような従来の陽極酸化膜とは異なり、空隙率を高めた陽極酸化層を、高温環境下に曝される部材の断熱層として利用することが検討されている。この具体的な利用例に関する記載が、下記の特許文献1または2にある。
特開2013−60620号公報 特開2015−31226号公報 特開平5−17899号公報 特開平6−330386号公報 特開2006−83467号公報
特許文献1および特許文献2は、内燃機関(ディーゼルエンジン等)の燃焼室に臨む壁面(ピストン頂面等)に、低い熱伝導性と高い温度追従性(両者を併せて、適宜「スイング特性」という。)を高次元で両立し得る高空隙率な陽極酸化層(膜)を形成することを提案している。
これら特許文献では、陽極酸化層の界面側(母材側)に、実質的に閉じた大きく歪な空孔(第2ミクロ孔)を多数形成することにより、陽極酸化層の空隙率を高めている。このような空孔は陽極酸化層の破壊起点となり易いため、それら特許文献では、別途、ポリシラザン等を表面に塗布した後、焼成し、空孔にシリカ等を充填することにより陽極酸化層を補強している。
しかし、ポリシラザン等を用いた補強処理は、製造コストの上昇要因になると共に、陽極酸化層の表面側にある空孔を埋設して閉塞するため、陽極酸化層全体としての空隙率(つまり断熱性)の低下させ得る。
なお、高断熱性を意図していない低空隙率な陽極酸化膜に係る特許文献も、参考までに上記に示した。具体的にいうと、特許文献3は、内燃機関用ピストンのリング溝に形成するアルマイト処理層の密着性を高めるために、その基材表面に露出するSi粒子を微細化または希釈化することを提案している。このSi粒子の微細化と希釈化は、TIG溶接装置を用いた高密度エネルギ熱線の照射によるSi粒子の再溶融と溶加材(純Al)の溶け込みにより行っている。しかし、特許文献3に係るアルマイト処理層は、リング溝の耐摩耗性を確保するために設けられており、薄くて空隙率の小さいものである(特許文献1の[0018]等)。
特許文献4は、硫酸に難溶なAl−Mn系金属間化合物析出物を微細に分散させた表面に、ポア(空孔)が非整列構造になった硬質陽極酸化皮膜の形成方法を提案している。しかし、その硬質陽極酸化皮膜も、耐摩耗性の向上等を図ったものであり、やはり空隙率は小さい。
特許文献5には、プラス電圧とマイナス電圧を交互に印加して、ADC12(Si:9.6〜12質量%)からなる船外機部品の表面に形成した高耐食性の陽極酸化皮膜に関する記載がある。この陽極酸化皮膜は、封孔処理をしなくても、高耐食性を発揮するほどに緻密なものであり、空隙率は当然小さい。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、特殊な補強処理等を行うまでもなく、高空隙率と高信頼性を両立し得る陽極酸化層を頂面部に有する内燃機関用ピストンと、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、陽極酸化層中に形成される空孔の形態を制御することにより、陽極酸化層の空隙率と硬さを高次元で両立することに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《ピストン》
(1)本発明の内燃機関用ピストン(単に「ピストン」という。)は、アルミニウム合金からなり燃焼室の一部を構成する頂面部と、該頂面部の少なくとも一部を被覆する陽極酸化層とを備え、前記陽極酸化層は以下の特性を満たす。
空隙率が30%以上、
空孔の平均最大長が5μm以下、
空孔の平均最大径が1μm以下、
隣接する空孔間の平均最大間隔が5μm以下、
硬さが180Hv以上
(2)本発明に係る陽極酸化層は、単に空隙率が高いのみならず、微細な空孔がほぼ均一的に分散した形態となっており、十分な硬さ(機械的特性を代表する指標)も有する。このため本発明に係る陽極酸化層は、ピストンの頂面部(トップ)に作用する高温高圧な燃焼ガスに繰返し曝されても、応力集中による破壊が回避され、高い断熱性を安定的に発揮し続ける。従って、本発明のピストンを用いれば、内燃機関(単に「エンジン」という。)の熱効率や排ガス特性の向上と信頼性の確保を図れる。
《ピストンの製造方法》
(1)本発明は、上述したピストンの一製造方法としても把握できる。すなわち、本発明は、アルミニウム合金からなる頂面部の少なくとも一部を電解液に接触させて通電することにより該頂面部に陽極酸化層を形成する陽極酸化処理工程を備える内燃機関用ピストンの製造方法であって、前記陽極酸化処理工程前に、前記陽極酸化層の形成される前記頂面部の表面域にある晶出物を微細化する微細化工程を備えることを特徴とする内燃機関用ピストンの製造方法でもよい。
(2)本発明の製造方法では、微細化工程で晶出物が微細化されたピストン頂面部(基材)に対して陽極酸化処理工程を行うことにより、微細な空孔がほぼ均一的に分散した陽極酸化層が形成される。この製造方法により、ピストン頂面部に高空隙率(高断熱性)で高信頼性(高機械的特性)の陽極酸化層が形成される理由は、次のように推察される。
先ず、アルミニウム合金(適宜「Al合金」という。)が陽極酸化処理された際に、陽極酸化層中に形成される空孔には、大別して次の二形態(タイプ)がある。一つは、酸化アルミニウム(主にα−Al)の成長方向とほぼ平行に伸びてアスペクト比が大きく、直径が数〜数十nm程度である直管状の空孔である。この空孔は、基材となるAl合金の組成や組織の影響をあまり受けずに形成される。この空孔を、適宜、一次空孔という。
もう一つは、その基材(特に晶出物の種類や形態)に相関して、形状や大きさ等の形態、形成量(空隙率)が変化する空孔である。この空孔を、適宜、二次空孔という。二次空孔は、電解液に溶解する晶出物等が消失した後にできる空隙と、消失せずに残った晶出物の周りで、陽極酸化層の形成に伴いAlからAlもしくはAl(OH)への変化に対応する体積が膨張(約2倍)することにより形成される空隙と、により主に生じると考えられる。
次に、ピストン頂面部に設ける断熱層のように、高断熱性(低熱伝導性または高空隙率)と高信頼性(高機械的特性)を両立できる陽極酸化層を得るには、微細で多くの二次空孔を形成すると共に、陽極酸化層中またはその界面近傍に残存する晶出物(電解液に溶解せずに残存する晶出物)を微細化しておくこととが好ましい。粗大な晶出物や二次空孔は、陽極酸化層の破壊起点となり易いからである。
本発明の製造方法の場合、陽極酸化処理前の頂面部表面域にある晶出物が予め微細化されている。このため、その頂面部に形成される陽極酸化層中にできる二次空孔や残存する晶出物も微細化したものとなる。この結果、本発明の製造方法によれば、空隙率を高めるためにAl合金基材中の晶出物を増加させても、破壊起点や応力集中部となる空孔(二次空孔)や晶出物が少なく、高断熱性と高信頼性を両立し得る陽極酸化層をピストンの頂面部に形成することが可能となる。
《ピストン用断熱層またはその製造方法》
本発明は、上述したピストンまたはその製造方法としてのみならず、上述した陽極酸化層からなり、ピストン頂面部に形成されるピストン用断熱層としても把握できる。また、上述した微細化工程と陽極酸化処理工程を備えるピストン用断熱層の製造方法としても把握できる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
微細化処理したAl合金上に形成した陽極酸化層を観察した顕微鏡写真である。 未処理のAl合金上に形成した陽極酸化層を観察した顕微鏡写真である。 Si量と陽極酸化層の硬さとの関係を示すグラフと、それぞれの陽極酸化層を観察した顕微鏡写真である。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、ピストンのみならず、その製造方法にも適宜該当する。方法的な構成要素であっても、物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《陽極酸化層》
(1)本発明に係る陽極酸化層は、多くの微細な空孔(二次空孔)が均一的に分散していると好ましい。先ず、陽極酸化層は、空隙率が30%以上、35%以上さらには40%以上であると好ましい。空隙率が過少では、ピストン頂面部に要求される断熱性の確保が困難となる。空隙率は大きいほど好ましいが、陽極酸化層の強度等を確保する観点から、55%以下さらには45%以下であると好ましい。なお、本明細書でいう空隙率は、酸化アルミニウムの真密度(ρ0)に対する陽極酸化層の嵩密度(ρ)の割合(100×ρ/ρ0)として求まる。ここでρ0=4.0g/cmとし、ρは次のようにして求めた。先ず、対象となる陽極酸化層を顕微鏡で断面観察して求めた厚さと、陽極酸化層が形成されている面積とから、陽極酸化層の体積を算出する。次に、測定対象とした陽極酸化層を硫酸+クロム酸などで除去して、その除去前後の質量変化から陽極酸化層の質量を算出する。こうして求めた陽極酸化層の体積と質量から、陽極酸化層のρを算出した。
次に陽極酸化層中の空孔は、平均最大長が5μm以下、3μm以下さらには1μm以下であり、空孔の平均最大径が1μm以下、0.5μm以下さらには0.1μm以下であると好ましい。加えて、隣接する空孔間の平均最大間隔(換言すれば、Al酸化物相の幅)が5μm以下、1μm以下さらには0.5μm以下であると好ましい。これらが過大であると、応力集中や破壊が生じ易くなり、陽極酸化層の機械的特性や信頼性が低下し得る。なお、それらは小さいほど好ましいが、生産性等を考慮して敢えていうと、平均最大長は0.5μm以上、平均最大径は0.05μm以上、平均最大間隔は0.1μm以上としてもよい。
ここで、各空孔の最大長と最大径、または隣接する各空孔間の最大間隔は、対象となる陽極酸化層の縦断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた所定領域(視野)内の画像に基づいて特定する。具体的にいうと、各空孔の最大長は、断面で得られた各空孔を包摂する円の直径とする。また各空孔の最大径は空孔面積(S)を円と仮定した時の直径(円面積相当径/2・(S/π)1/2)とする。隣接する各空孔間の最大間隔は空孔間の重心間距離とする。
平均最大長、平均最大径または平均最大間隔は、それぞれ、最大長、最大径または最大間隔の相加平均値とする。それぞれの具体的な測定および算出は、画像処理ソフト(例えば、Image−J)を用いて行う。
なお、本明細書でいう空孔(二次空孔)は、上述した範囲内にある限り、その形状・形態は問わないが、例えば、緩やかに屈曲した細管状孔からなる(図1参照)。このような場合も考慮して、一つ一つの空孔は、陽極酸化層の直下にあり空孔の形成に関与しているる晶出物(Si粒)の最大長(既述の方法で特定される)の2倍を基準として区画(個別化)する。
ちなみに、縦断面は、陽極酸化層の成長方向である縦方向に陽極酸化層を切断したときの断面である。ピストン頂面部に形成された陽極酸化層の略中心を通過する縦断面について観察する。観察範囲(視野)は、酸化層の略中心、横:25μmの領域とする。
(2)本発明に係る陽極酸化層は、その機械的特性を指標する硬さが、180Hv以上、200Hv以上さらには220Hv以上であると好ましい。硬さが過小な陽極酸化層は、ピストン頂面部に形成する断熱層として、必ずしも信頼性が十分とはいえない。なお、硬さは大きいほど好ましいが、生産性や靱性等を考慮して、硬さは400Hv以下さらには350Hv以下であると好ましい。
なお、本明細書でいう硬さは、圧子の押し付け荷重(試験力)を25gfとして測定したときのマイクロビッカース硬さである。硬さの測定は、陽極酸化層の最表面について行い、約1mm間隔で測定した5点の平均値とする。ピストン頂面部に形成された陽極酸化層の硬さは、陽極酸化層の略中央付近の最表面について測定する。
(3)陽極酸化層は、セラミックスである酸化アルミニウムからなるため耐熱性に優れることは勿論、高空隙率であることにより断熱性に優れ、さらに熱容量も十分に小さいため、ピストンや燃焼室内の温度変化にも即応できる高い温度追従性も有する。
但し、陽極酸化層の厚さが過小では、十分な断熱性の確保等が困難となる。一方、過大に厚い陽極酸化層の形成は、陽極酸化処理時間が長くなり好ましくない。そこで陽極酸化層の厚さは、30μm〜300μmさらには50μm〜150μmとするとよい。なお、本明細書でいう陽極酸化層の厚さは、その縦断面の顕微鏡写真(SEM像等)に基づいて特定される。具体的にいうと、陽極酸化層の最表面から界面までの深さを、その厚さとする。なお、陽極酸化層とAl合金(基材)との界面は、金属Alの有無によるSEM像のコントラストにより判断する。
(4)本発明に係る陽極酸化層は、内部に含まれる空孔が微細で均一的に分散しており、またAl合金との界面近傍に存在する晶出物も微細(さらには粒状)であるため、補強処理等をするまでもなく、機械的特性に優れる。このため、従来のように、ポリシラザンやポリシロキサン等のSi系ポリマーを陽極酸化層の表面に塗布し、それを焼成してケイ素化合物(例えば、シリカを含むケイ酸塩)からなる封孔層または封止層を形成し、空孔の開口等を塞ぐ封孔処理、または孔全体を埋める封止処理を行うまでもない。但し、本発明は、このような封孔処理または封止処理を行う場合を除くものではない。さらに本発明に係る陽極酸化層も、従来の陽極酸化膜と同様に、沸騰水や高圧蒸気等に曝した際に生じる体積膨張(酸化アルミニウムの水和物化)を利用した封孔処理がなされてもよい。
《Al合金》
(1)陽極酸化層が形成されるピストン頂面部(基材)のAl合金は、種々の組成からなり得る。例えば、Al合金は、その全体を100質量%(単に「%」という。)として、Siを5〜15%さらには8〜13%含むと好ましい。陽極酸化層は、基材表面にあるSi粒(晶出物または析出物)を回避して成長するため、Si粒の存在により空孔の形成が促進され、空隙率の向上が図られる。Si量が過少ではその効果が乏しく、Si量が過多になるとピストン(頂面部)または陽極酸化層の機械的特性(例えば硬さ)の低下が懸念される。なお、適量なSiは、ピストンの鋳造(またはダイカスト含む)も容易にするため、Al合金中に含有されていると好ましい。
Al合金は、Al、Si以外にも、種々の合金元素を含み得る。例えば、Cu:2.5〜8%さらには4〜6%、またはMg:0.5〜3%さらには0.7〜2%含んでもよい。また、Al合金を微細化する元素(P等)を少量(例えば0.01〜1%程度)含んでもよい。勿論、Al合金は、当然、コスト的または技術的に除去困難な不可避不純物を含む。
(2)陽極酸化層の直下(基材との界面付近)にあるAl合金中に含まれる晶出物(特にSi粒)は、平均粒径が3μm以下さらには1μm以下であると好ましい。過大な晶出物は、それ自体が破壊起点や応力集中部となって陽極酸化層の破壊や剥離等を招くと共に、陽極酸化層中の空孔を粗大化し、陽極酸化層自体の機械的特性も低下させ得る。晶出物は微細な程好ましいが、現実的には、平均粒径が0.05μm以上さらには0.1μm以上でも十分である。
なお、晶出物の一種であるSi粒の平均粒径は、共晶または化合物等として存在するSi(粒)を除外して、組織中に単独で存在する(初晶)Si粒について算出する。例えば、Al合金が鋳造組織からなる場合であれば、初晶Si粒またはそれが粉砕されたSi粒について、上述した方法により平均粒径を算出する。
本明細書でいう各晶出物の粒径は、陽極酸化層の界面近傍の縦断面をSEMで観察して得られた所定領域(視野)内の画像に基づいて特定され、切片法で求める。観察範囲(視野)は、その縦断面内にある陽極酸化層とAl合金の界面から、幅:100μm×深さ:20μmのAl合金側の領域とする。平均粒径は、その視野内にある各晶出物の粒径の相加平均値とする。具体的な測定および算出は、前述したように、画像処理ソフトを用いて行う。
《微細化工程》
陽極酸化処理前に施す微細化工程は、例えば、ピストン頂面部のAl合金に含まれる晶出物を、再溶融急冷凝固または機械的粉砕して行える。具体的にいうと、再溶融急冷凝固は、例えば、ピストン頂面部へレーザー照射することにより行える。機械的粉砕は、例えば、ピストン頂面部を摩擦撹拌することにより行える。この他、微細化工程は、摩擦撹拌以外の機械的粉砕方法で行ってもよいし、レーザー照射する場合でも再溶融急冷凝固以外にアブレーションを生じさて行ってもよい。
また、溶射を用いると、晶出物が微細に分散したAl合金組織からなるピストン頂面部の形成も容易である。この際、ピストン本体とその頂面部とで、合金組成または組織(微細化の程度)を異なったものにすることもできる。
Al合金からなる基材に対して、表面を微細化処理してから陽極酸化処理した試料と、表面を未処理のまま陽極酸化処理した試料を製作した。各試料の表面に形成された陽極酸化層を観察および評価した。このような具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)基材
ディーゼルエンジンのピストン頂面部を想定して、Al−12%Si鋳造合金からなる基材を用意した。
(2)微細化工程
その基材の表面にYAGレーザーを照射して、表面の金属組織(特に初晶Si粒)を微細化した。このときの照射条件は、レーザによるAl合金の溶融深さが100〜500μm程度となるように調整した。
(3)陽極酸化処理工程
レーザー照射した基材(試料1)と、未処理(レーザー未照射)の基材(試料C1)とを用いて、それぞれの表面に陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理は、硫酸水溶液(電解液)中に各基材の表面(被処理面)を浸し、それを陽極、白金電極を陰極として通電して行った。この際、被処理面を除く他面はマスキングし、被処理面と白金電極の間で通電がされるようにした。また電解液は、硫酸濃度(質量%):20%、温度(浴温):10℃とした。
通電は、直流電源を用いて、125mA/cm、通電時間16分として電解処理を行った。通電終了後、各基材を電解液から取り出して蒸留水でよく洗浄し、圧縮空気を吹き付けて水分を除去した後、大気中で十分に乾燥させた。こうして、基材表面に陽極酸化層が形成された各試料を得た。
(4)Al合金組成
Al合金組成(Si量)を変更した基材も用意した。微細化処理(レーザー照射)した基材表面と、未処理な基材表面とに、それぞれ上述した方法で陽極酸化層を形成した。各基材中に含まれるSi量は表1にまとめて示した(試料2、C2、C3)。
《観察・測定》
(1)各試料を縦方向(陽極酸化層の成長方向)に切断して、SEMにより陽極酸化層(基材との界面近傍を含む)を観察した。試料1の顕微鏡写真を図1に、試料C1の顕微鏡写真を図2にそれぞれ示した。
(2)各試料の顕微鏡写真を画像処理して、陽極酸化層に含まれる各空孔の平均最大長および平均最大径と、各空孔間の平均最大間隔と、陽極酸化層の厚さとを既述した方法により算出した。これらの結果を表1に併せて示した。
(3)既述した方法により、各試料の陽極酸化層の密度を測定し、それぞれの空隙率を求めた。これらの結果も表1に併せて示した。
(4)各試料の陽極酸化層の硬さも既述した方法により求めた。これらの結果も表1に併せて示した。また、各試料について、基材の合金組成(Si量)と、陽極酸化層の硬さの関係を図3に示した。図3のグラフに示した各試料については、顕微鏡写真(SEM像)も併せて示した。
(5)各試料について、陽極酸化層と基材の界面近傍(陽極酸化層の直下付近)にある晶出物の平均粒径も既述した方法により求めた。これらの結果も表1に併せて示した。
《評価》
(1)図1から明らかなように、陽極酸化処理前に微細化処理を行うことにより、屈曲した細管状の微細な空孔が均一的に分散した陽極酸化層が得られることがわかった。一方、図2から明らかなように、陽極酸化処理前に微細化処理を行わない場合、歪で粗大な空孔が不規則に点在した陽極酸化層が形成されることがわかる。このような陽極酸化層の形態の相違は、陽極酸化層が形成される基材側の金属組織(初晶Siの平均粒径)の相違に起因していることが、図1と図2の対比からも明らかである。
(2)また表1と図3から明らかなように、本発明で規定する条件を満たす陽極酸化層は、基材中に含まれるSi量が15%以下のときでも、十分な機械的特性(硬さ)を発揮することがわかる。このような陽極酸化層は、高空隙率であるため断熱性(低熱伝導性)に優れることは勿論、ピストン頂面部で高温高圧の燃焼ガスに曝されても、十分な信頼性(耐久性)を発揮し得る。

Claims (7)

  1. アルミニウム合金からなり燃焼室の一部を構成する頂面部と、
    該頂面部の少なくとも一部を被覆する陽極酸化層と、
    を備える内燃機関用ピストンであって、
    前記陽極酸化層は、
    空隙率が30%以上、
    空孔の平均最大長が5μm以下、
    空孔の平均最大径が1μm以下、
    隣接する空孔間の平均最大間隔が5μm以下、
    硬さが180Hv以上、
    を満たすことを特徴とする内燃機関用ピストン。
  2. 前記アルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSiを5〜15%含む請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
  3. 前記陽極酸化層の直下にあるアルミニウム合金中に含まれる晶出物は、平均粒径が3μm以下である請求項1または2に記載の内燃機関用ピストン。
  4. 前記陽極酸化層は、厚さが30μm〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関用ピストン。
  5. アルミニウム合金からなる頂面部の少なくとも一部を電解液に接触させて通電することにより該頂面部に陽極酸化層を形成する陽極酸化処理工程を備える内燃機関用ピストンの製造方法であって、
    前記陽極酸化処理工程前に、前記陽極酸化層の形成される前記頂面部の表面域にある晶出物を微細化する微細化工程を備えることを特徴とする内燃機関用ピストンの製造方法。
  6. 前記微細化工程は、前記晶出物を再溶融急冷凝固または機械的粉砕をしてなされる請求項5に記載の内燃機関用ピストンの製造方法。
  7. 前記晶出物の再溶融急冷凝固は、前記頂面部へのレーザー照射によりなされ、
    前記晶出物の機械的粉砕は、該頂面部を摩擦撹拌してなされる請求項6に記載の内燃機関用ピストンの製造方法。
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