以下、把持装置をロボットアームとして具体化した実施形態について、図1〜図17を参照して説明する。
図1に示されているように、ロボットアーム100では、例えば床面などに固定される基台111の上に、ボディー112が、第1回転軸L1を中心に回動可能に組み付けられている。そして、ボディー112には、第1関節113を介して、第1アーム114が、第2回転軸L2を中心に回動可能に取り付けられている。
第1アーム114の先端には、第2関節115が設けられており、第2関節115を介して、支持プレート116が、第3回転軸L3を中心に回動可能に取り付けられている。そして、支持プレート116には、第2アーム117が、第4回転軸L4を中心に回動可能に取り付けられている。
第2アーム117の先端には、第3関節118が設けられている。そして、第2アーム117には、第3関節118を介して、第3アーム119が、第5回転軸L5を中心に回動可能に取り付けられている。
第3アーム119には、第1把持爪131と第2把持爪132を有している把持機構130が、第6回転軸L6を中心に回動可能に取り付けられている。把持機構130は、第1把持爪131と第2把持爪132とを互いに近接させたり離間させたりするものである。これにより、ロボットアーム100は、第1把持爪131及び第2把持爪132によって把持対象物を把持することができるようになっている。なお、図1では、把持機構130を模式的に図示している。また、第3アーム119には、把持機構130の第1把持爪131及び第2把持爪132の先端近傍を撮影するカメラ160が取り付けられている。
このように、ロボットアーム100は、6つの回転軸L1〜L6を有している。そして、ロボットアーム100には、図示しない複数のモータなどが内蔵されている。これにより、ロボットアーム100では、互いに連結された各部を上記のモータなどの駆動力を利用して各回転軸L1〜L6を中心に回転させることにより、把持機構130を移動させることができるようになっている。すなわち、このロボットアーム100においては、基台111から第3アーム119までの各部によって把持機構130を移動させる可動部110が構成されている。なお、このロボットアーム100は、制御装置150を備えており、カメラ160や可動部110、把持機構130は、制御装置150に接続されている。そして、可動部110の動作や把持機構130の動作、そしてカメラ160の動作は、この制御装置150によって制御される。
このロボットアーム100は、図2に示されているプラネタリキャリア200の製造工程において使用される。なお、プラネタリキャリア200は、遊星歯車式の変速機を構成する部品の1つであり、プラネタリギアを支持するものである。
図2及び図3に示されているように、プラネタリキャリア200は全体として概ね円筒状になっていて、第1パーツ210、第2パーツ220、第3パーツ230を、各パーツ210,220,230の中心軸C1が揃うように組み合わせて形成されている。
第1パーツ210は、金属の粉末を圧縮して成型した粉末成型体であり、全体としてリング状をなしている。なお、第1パーツ210を構成する金属は、例えば、鉄、銅、ニッケル、またこれらを主成分とする合金などである。
第2パーツ220は、炭素鋼、ステンレス鋼などの板材をプレス成型したプレス成型体であり、全体としてリング状をなしている。第2パーツ220の下端部には内周側に飛び出すように延びている板状部221が設けられている。板状部221は、各パーツ210,220,230を組み合わせた際に、板状部221の内周側の縁が、第1パーツ210の外周面210aと、ごく僅かな隙間を有する状態で対向するように形成されている。板状部221の内周側の縁には、矩形の切欠き222が互いに周方向に離間して8つ設けられている。
第3パーツ230は、第1パーツ210と同様の金属の粉末を圧縮して成型した粉末成型体である。第3パーツ230には、外周面にギヤ歯が形成されたギヤブロック231が4つ設けられている。
図4に示されているように、プラネタリキャリア200を製造する際には、まず、組み付け工程(ステップS1)において、上述したように第1パーツ210、第2パーツ220、第3パーツ230を中心軸C1が揃うように組み合わせる。
なお、組み付け工程(ステップS1)において、各パーツ210,220,230を組み合わせると、第3パーツ230におけるギヤブロック231の上面231aに、第2パーツ220の板状部221と、第1パーツ210とが載置された状態になる。
図5に示されているように、こうして各パーツ210,220,230を組み合わせた状態では、第2パーツ220の板状部221に形成された切欠き222によってロウ材をセットするためのロウ材穴240が区画された状態になる。
図6に示されているように、ロウ材穴240の設けられている部分では、網掛けで示した部分のように、各パーツ210,220,230が3面合わせになっている。すなわち、第2パーツ220の板状部221の縁と第1パーツ210の外周面210aとが対向し、第3パーツ230におけるギヤブロック231の上面231aと第2パーツ220の板状部221とが対向し、第3パーツ230におけるギヤブロック231の上面231aと第1パーツ210とが対向している。
図4に示されているように、こうして各パーツ210,220,230を組み合わせると、各パーツ210,220,230を組み合わせた被加工物であるワークは、次のロウ材セット工程(ステップS2)に送られる。そして、このロウ材セット工程(ステップS2)において、図6に示されているように、ワークにおけるロウ材穴240に、各パーツ210,220,230を接合するためのロウ材300をセットする。ロウ材300は例えば、銅ロウやニッケルロウである。なお、ロボットアーム100は、このロウ材セット工程(ステップS2)においてロウ材300をワークにセットする際に使用される。ロウ材セット工程(ステップS2)の詳細な内容については後述する。
ロウ材セット工程(ステップS2)を経て、ロウ材300がセットされたワークは、検査工程(ステップS3)に送られ、ロウ材300がロウ材穴240内に正しくセットされているかが検査される。検査工程(ステップS3)において、ロウ材300がロウ材穴240内に正しくセットされていることが確認されたワークは、焼結工程(ステップS5)へと送られる。焼結工程(ステップS5)では、ワークを加熱することによって、第1パーツ210及び第3パーツ230を焼結させるとともに、ロウ材300を溶融させて各パーツ210,220,230を接合する。
図6に示されているように、ロウ材穴240内にロウ材300をセットし、焼結工程(ステップS5)においてロウ材300を溶融させると、溶融したロウ材300が各パーツ210,220,230同士の境界面に侵入する。これにより、加熱終了後にロウ材300が凝固し、各パーツ210,220,230が接合される。
なお、検査工程(ステップS3)において、ロウ材が正しくセットされていないと判定されたワークは、手直し工程(ステップS4)においてロウ材を手作業で正しい位置にセットし直し、焼結工程(ステップS5)に送られる。
こうして焼結工程(ステップS5)を経ることにより、第1パーツ210及び第3パーツ230が焼結されるとともに、ロウ材によって各パーツ210,220,230が接合され、図2に示されているようなプラネタリキャリア200になる。
ところで、上述したように、ロボットアーム100は、ロウ材セット工程(ステップS2)において、ロウ材300をロウ材穴240内にセットするために用いられる。ロウ材セット工程(S2)において、ロボットアーム100は、載置台に載置されているロウ材300を把持し、ロウ材300をワーク上まで搬送し、ロウ材穴240にロウ材300を投入する。
ロボットアーム100のように、複数の把持爪によって把持対象物を挟んで把持する把持機構を備える把持装置を用いてロウ材300をロウ材穴240にセットする場合、以下のような課題が生じる。ここでは、図7及び図8を参照して、比較例の把持装置を例に、この課題について具体的に説明する。なお、図7及び図8では互いに直交する3つの方向を矢印X,Y,Zで示している。具体的には、矢印Zで示されている方向は、ロウ材300が載置されている載置台400の載置面と直交する方向であり、鉛直上方である。そして、矢印Xが示す方向は図7における紙面手前側の方向、図8における左側の方向であり、比較例の把持装置の把持機構500における各把持爪501,502が近接、離間する方向を左右方向としたときの前方である。そして、矢印Yで示されている方向は、矢印Xが示す方向と矢印Zが示す方向の双方と直交する方向であり、前方(矢印Xが示す方向)を向いたときの右側の方向である。すなわち、図7及び図8では、矢印Xに沿った方向が把持機構500の前後方向を、矢印Yに沿った方向が把持機構500の左右方向を、矢印Zに沿った方向が把持機構500の上下方向を示している。
把持装置でロウ材300を把持する際には、まず、ロウ材300の近傍まで把持爪を移動させ、それから把持爪を互いに近接させる把持動作を開始する。このとき、把持動作を開始する前に、カメラなどでロウ材300の位置を確認し、ロウ材300に対する把持爪の相対位置を合わせる。しかし、画像認識の精度による誤差や、把持爪の位置の制御誤差が存在するため、把持動作を開始する際の把持爪の位置に小さなずれが生じることは避けられない。
その結果、例えば、図7に示されているように、把持機構500の左右方向の中心軸C2とロウ材300の左右方向の中心軸C3とがずれてしまう。載置台400に載置されるロウ材300の形状が一定であったとしても、上記のようにロウ材300に対する把持機構500の位置がずれていると、把持爪501,502によってロウ材300を挟む際に、ロウ材300に近い方の把持爪501が、他方の把持爪502よりも先にロウ材300に当接してしまう。その結果、先に当接した把持爪501によってロウ材300が押されてロウ材300の姿勢が大きく変化してしまい、ロウ材300を把持することができないおそれがある。
また、ロウ材300を把持することができたとしても、ロウ材300が傾いていたりすることがある。
さらに、図8に示されているように、ロウ材300が傾いていなかったとしても、ロウ材300を把持している把持爪501,502の前後方向の中心軸C4がロウ材300を把持する位置として想定している位置から前後方向にずれているなど、把持爪501,502が想定している位置とは異なる位置を把持していたりすることもある。
上記のようにロウ材穴240上にロウ材300を搬送してロウ材穴240にロウ材300を投入する場合、把持爪501,502が想定している位置とは異なる位置を把持していたり、把持しているロウ材300が傾いていたりすると、ロウ材300をロウ材穴240に投入する際に、ロウ材穴240の縁にロウ材300がぶつかってしまうことがある。また、ロウ材300を把持した状態で把持機構500を移動させているときに、ロウ材穴240の周辺の部材、例えば、図6における第1パーツ210の外周面210aに把持爪501,502で把持しているロウ材300がぶつかってしまうこともある。
その結果、ロウ材300がロウ材穴240に入らなかったり、ロウ材300の一部がロウ材穴240からはみ出した状態になったりしてロウ材300をロウ材穴240に適切な姿勢で配置できないおそれがある。
ロウ材300がロウ材穴240内に適切に配置されていないと、ロウ材300を溶融させてワークを構成している各パーツ210,220,230同士を接合した場合に接合強度が不足したり、溶融したロウ材300がロウ材穴240などからはみ出して外観が損なわれてしまったりする。
そのため、図4を参照して説明したように、ロウ材300を配置した後で検査を行ってロウ材300が正しくセットされていないものを見つけ出す必要がある。そして、上記のような把持動作開始時の把持爪501,502の位置ずれによるロウ材300のセット不良が頻繁に発生すると、ロウ材300を配置し直す手直しを頻繁に行わなければならなくなってしまう。
なお、ロウ材300の大きさに対するロウ材穴240の大きさをより大きくすれば、上記のようなセット不良は抑制できる。しかし、ロウ材300の大きさに対するロウ材穴240の大きさをより大きくしてしまうと、各パーツ210,220,230における互いに対向している部分の面積が小さくなり、接合強度不足になるため、ロウ材穴240を闇雲に大きくすることはできない。また、逆にロウ材穴240の大きさを変えずに、ロウ材300を小さくすることによっても上記のようなセット不良は抑制できるが、この場合には、ロウ材300の容量が不足することになる。
そこで、ロボットアーム100においては、こうしたロウ材穴240やロウ材300の変更によらずに、上記の課題の解消を図っている。
次に、図9〜図17を参照して、把持機構130を中心とするロウ材300を把持する部分の構造及びロボットアーム100の動作について説明する。なお、図9〜図11,図13〜図17においては、図7及び図8と同様に、第1把持爪131と第2把持爪132の近接、離間する方向を把持機構130の左右方向とした場合の前方を矢印Xで示すとともに、矢印Xが示す方向を向いたときの右側の方向を矢印Yで示し、上方を矢印Zで示している。
図9に示されているように、把持機構130は固定プレート120に固定されている。そして、固定プレート120は、ロボットアーム100の第3アーム119に固定されている。したがって、把持機構130は固定プレート120を介して可動部110に固定されている。
把持機構130は、第1把持爪131及び第2把持爪132と、第1把持爪131及び第2把持爪132を駆動するアクチュエータ136と、を有している。アクチュエータ136は、エアシリンダを内蔵しており、下方に突出している第1可動片137と第2可動片138とを空気圧を利用して互いに近接させたり離間させたりするように動作するものである。なお、把持機構130では、第1可動片137と第2可動片138とはリンク機構を介して連結されており、互いに連動して動作するようになっている。
図10に示されているように、第1把持爪131は、基端から先端に向かって途中で屈曲した形状をなしており、第1可動片137に対して着脱可能に形成されている。そのため、第1把持爪131には、第1可動片137が嵌め合わされる溝131bが形成されている。溝131b内には第1把持爪131を貫通している2つのボルト孔131cが開口している。また、第1把持爪131は、溝131bが形成されている部分から前方に向かって延び、上述したように途中で屈曲して、先端が下方に位置するように下方に向かって延びている。
第1把持爪131の先端における右側(図10における矢印Yが示す方向側)の部分には、把持対象物であるロウ材300を把持する把持面131aが形成されている。そして、第1把持爪131におけるこの把持面131aの後方には、把持面131aと隣接する位置から矢印Yで示されている把持機構130の右側の方向に向かって延びる当接部135が設けられている。換言すれば、このロボットアーム100では、当接部135は第1把持爪131と一体に形成されている。すなわち、当接部135は、第1把持爪131に固定されている。
図9に示されているように、第1把持爪131は、溝131bと第1可動片137とを嵌め合わせるように第1可動片137に取り付けた状態で、ボルト孔131cに蝶ボルト139を螺合させることにより、アクチュエータ136に固定されている。
図11に示されているように、第2把持爪132は、大部分が第1把持爪131と左右対称に形成されている。第2把持爪132には、第2可動片138が嵌め合わされる溝132bが形成されている。溝132b内には第2把持爪132を貫通している2つのボルト孔132cが開口している。また、第2把持爪132は、溝132bが形成されている部分から前方に向かって延び、途中で屈曲して、先端が下方に位置するように下方に向かって延びている。
第2把持爪132の先端における左側(図11における矢印Yが示す方向とは反対の方向側)の部分には、ロウ材300を把持する把持面132aが形成されている。そして、第2把持爪132におけるこの把持面132aの後方には、第1把持爪131の当接部135との接触を避けるための切欠き132dが設けられている。
図9に示されているように、第2把持爪132も第1把持爪131と同様に、溝132bと第2可動片138とを嵌め合わせるように第2可動片138に取り付けた状態で、ボルト孔132cに蝶ボルト139を螺合させることにより、アクチュエータ136に固定されている。
把持機構130は、アクチュエータ136の第1可動片137と第2可動片138とを近接させることにより、第1把持爪131と第2把持爪132とを左右方向において近接させ、互いに対向している第1把持爪131の把持面131aと第2把持爪132の把持面132aとによってロウ材300を挟んで把持する。
また、このロボットアーム100では、固定プレート120に押圧部140が固定されている。したがって、押圧部140は、固定プレート120を介して可動部110に固定されている。押圧部140は、固定プレート120に固定されたシリンダ143に押圧棒141の基端を収容したものであり、シリンダ143内には圧縮されたスプリング142が収容されている。これにより押圧棒141は、スプリング142の復元力により常に下方に付勢されている。なお、押圧棒141は、互いに対向している把持面131a,132aの間に先端が到達する位置まで延びている。
このように構成されている把持機構130及び押圧部140を備えたロボットアーム100は、図4を参照して説明したロウ材セット工程(ステップS2)を、図12に示されているような手順で実行する。
図12に示されているように、まず、制御装置150は、可動部110を動作させて把持機構130を、ロウ材300が載置されている載置台400上に移動させる(ステップS201)。
そして、次に、制御装置150は、カメラ160で撮影している載置台400上のロウ材300の画像を用いて、ロウ材300の位置を認識する(ステップS202)。
ロウ材300の位置を認識すると、制御装置150は、認識したロウ材300の位置に基づいて、可動部110を動作させて把持機構130の位置を調整する(ステップS203)。
なお、上述したように、このようにカメラ160を用いて把持機構130の位置を調整したとしても、画像認識の精度による誤差や可動部110の制御精度による誤差が存在するため、ロウ材300に対する把持機構130の相対位置を完璧に合わせることは難しい。
図13(a)及び図13(b)には、こうして位置を調整したときの第1把持爪131及び第2把持爪132と、押圧棒141と、ロウ材300との位置関係の一例が模式的に示されている。
図13(a)に示されているように、このときには、第1把持爪131及び第2把持爪132の先端は、載置台400上に載置されているロウ材300よりも上方に位置している。また、このときには押圧部140の押圧棒141の先端もロウ材300よりも上方に位置している。
また、図13(b)に示されているように、このときには、押圧棒141は、ロウ材300の上方に位置している。すなわち、押圧棒141は、前後方向においてロウ材300と重なる位置に、位置している。そして、第1把持爪131に固定されている当接部135は、ロウ材300よりも上方、且つ前後方向においてロウ材300よりも後方に位置している。
図12に示されているように、把持機構130の位置を調整すると、制御装置150は、次に固定プレート120を下方に移動させるように可動部110を駆動し、押圧棒141でロウ材300を押さえる(ステップS204)。このときには、固定プレート120に固定されている把持機構130及び押圧部140が、固定プレート120の移動に伴って下方に移動する。
その結果、図14(a)及び図14(b)に示されているように、押圧棒141の先端がロウ材300に当接し、スプリング142が圧縮される。これにより、ロウ材300は、スプリング142の復元力によって載置台400側に向かって付勢されている押圧棒141により、載置台400に向かって押圧された状態になる。すなわち、このときには、押圧部140がロウ材300を載置台400に押圧している状態になる。
なお、このときには、図14(a)及び図14(b)に示されているように、把持機構130の移動に伴い、第1把持爪131及び第2把持爪132は、互いの把持面131a,132aがロウ材300と左右方向において対向する位置まで移動している。
図12に示されているように、制御装置150は、次に、把持機構130を前方に移動させるように可動部110を動作させ、当接部135をロウ材300に当接させる(ステップS205)。
これにより、図15(b)に示されているように、当接部135がロウ材300に後方から当接するようになる位置まで把持機構130が前方に移動する。
なお、当接部135がロウ材300に当接したか否かは、可動部110を動作させている際に把持機構130に作用する反力の変化によって判定することができる。このときには、ロウ材300は、押圧部140によって載置台400に押圧されているため、ロウ材300に当接部135が当接すると、把持機構130に作用する反力が大きくなる。その結果、可動部110を動作させるために駆動しているモータなどの負荷が大きくなるため、この負荷の変化から当接部135がロウ材300に当接したことを判定できる。
このように、把持機構130を前方に移動させることにより当接部135をロウ材300に当接させるため、押圧部140がロウ材300を載置台400に押圧する力の大きさは、当接部135をロウ材300に当接させる際にはロウ材300が動かない程度の大きさに設定されている。
また、押圧部140は、上述したように把持機構130とともに固定プレート120に固定されている。そのため、可動部110を動作させることにより、把持機構130を前方に移動させた際には、押圧部140のシリンダ143も前方に移動することになる。
これに対して、載置台400に押圧されているロウ材300は動かないため、ロウ材300を載置台400に押圧している押圧棒141の先端は、前方には移動しない。
このロボットアーム100における押圧部140では、図9に示されているように押圧棒141の長さが十分に長くなっている。そのため、このときには、シリンダ143内での押圧棒141のガタつき、すなわちシリンダ143と押圧棒141との間に生じる隙間の範囲での押圧棒141の傾きによって、押圧棒141の先端でロウ材300を押圧した状態でのシリンダ143の前方への移動が許容されるようになっている。
こうして押圧部140によってロウ材300を載置台400に押圧した状態で把持機構130を移動させ、当接部135をロウ材300に当接させることにより、ロウ材300に対する把持機構130の前後方向における相対位置、すなわち、ロウ材300に対する第1把持爪131及び第2把持爪132の前後方向における相対位置が規定される。特に当接部135が固定されている第1把持爪131の前後方向における当接位置は、厳密に規定された状態になる。
図12に示されているように、当接部135をロウ材300に当接させ、ロウ材300に対する把持機構130の前後方向における相対位置を規定すると、制御装置150は、把持機構130における第1把持爪131及び第2把持爪132を近接させて把持動作を開始して、ロウ材300を把持する(ステップS206)。
ところで、把持動作を開始する時点では、ロウ材300に対する把持機構130の左右方向における相対位置にずれが生じていることがある。
図15(a)には、ロウ材300の位置に対して把持機構130の位置が、把持機構130における左側の方向(図15(a)における矢印Yとは反対の方向)にずれており、把持機構130における左右方向における中心軸C5と、ロウ材300の左右方向における中心軸C6とが左右方向においてずれている状態が示されている。そのため、把持機構130における右側の把持爪である第2把持爪132の把持面132aとロウ材300との距離D1は、把持機構130における左側の把持爪である第1把持爪131の把持面131aとロウ材300との距離D2よりも小さくなっている。
このような状態で把持動作を開始し、第1把持爪131と第2把持爪132とを近接させると、第2把持爪132が第1把持爪131よりも先にロウ材300に当接することになる。
しかし、このときには、図15(a)及び図15(b)に示されているように、ロウ材300は、押圧部140によって載置台400に押圧されており、上下方向の移動が規制されている。また、ロウ材300には後方から当接部135が当接しており、ロウ材300の後方への移動は当接部135によって規制されている。
そのため、このときには、把持動作の進行に伴い、ロウ材300の移動の方向を制限した状態で、第2把持爪132によってロウ材300を把持機構130の中心軸C5側に押すことができる。
なお、このとき第2把持爪132がロウ材300を押す力の大きさ、すなわち把持動作の際に第1把持爪131及び第2把持爪132を近接させる力の大きさは、ロウ材300が押圧部140によって載置台400に押圧されている状況下であっても、ロウ材300を載置台400に沿って移動させることができる程度の大きさに設定されている。換言すれば、押圧部140がロウ材300を載置台400に押圧する力の大きさは、上述したように当接部135をロウ材300に当接させる際にはロウ材300が動かないものの、把持動作中に第1把持爪131や第2把持爪132に押されたロウ材300が載置台400に沿って移動するように設定されている。なお、このような要件を満たすように押圧する力の大きさは、ロウ材300の寸法や、載置台400及び押圧棒141とロウ材300との間の摩擦係数などによって決まるため、押圧部140がロウ材300を押圧する力の大きさは、事前に行う実験などの結果に基づいて決めることが好ましい。そして、こうした実験などの結果に基づいてスプリング142のばね定数を調整することによって、押圧部140がロウ材300を載置台400に押圧する力の大きさを、上記のような大きさに設定することができる。
図16(a)及び図16(b)は、把持動作が進行してロウ材300が把持された状態を示している。図16(a)に白抜き矢印で示されているように、上記のようにして把持動作が進行すると、ロウ材300は第2把持爪132によって把持機構130の中心軸C5側に押される。これにより、ロウ材300は、ロウ材300の中心軸C6と把持機構130の中心軸C5とが一致する位置まで押され、把持機構130の左右方向における中央で第1把持爪131と第2把持爪132とによって挟まれ、把持される。
図12に示されているように、こうしてロウ材300を把持すると、制御装置150は、把持機構130を、各パーツ210,220,230を組み合わせたワーク上に移動させる(ステップS207)。
そして、制御装置150は、カメラ160で撮影している画像を用いて、ロウ材穴240の位置を認識する(ステップS208)。
ロウ材穴240の位置を認識すると、制御装置150は、認識したロウ材穴240の位置に基づいて、把持機構130の位置を調整する(ステップS209)。すなわち、認識したロウ材穴240の位置に基づいて、第1把持爪131及び第2把持爪132を離間させてロウ材300を離すのに適した位置になるように、把持機構130の位置を調整する。
そして、制御装置150は、把持機構130における第1把持爪131及び第2把持爪132を離間させてロウ材穴240上でロウ材300を離し、ロウ材穴240にロウ材300を投入する(ステップS210)。
図17(a)及び図17(b)には、このときの状態が示されている。ロウ材300を把持機構130によって把持しているときには、押圧部140のスプリング142が圧縮された状態になっている。そのため、第1把持爪131及び第2把持爪132を離間させてロウ材300を離したときには、スプリング142の復元力により押圧棒141がロウ材300を下方に押し出す。
これにより、第1把持爪131及び第2把持爪132を離間させるときに、第1把持爪131の移動速度と第2把持爪132の移動速度とに僅かな差があったとしても、ロウ材300は傾きにくく、まっすぐにロウ材穴240に向かって押し出されるようになる。したがって、ロウ材300が適切な姿勢で、ロウ材穴240内にセットされやすくなっている。
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)押圧部140によってロウ材300を載置台400に押圧した状態で、当接部135がロウ材300に当接するようになるまで把持機構130を移動させるため、ロウ材300の移動を制限した状態で当接部135を当接させ、ロウ材300に対する各把持爪131,132の相対位置を規定することができる。そして、押圧部140によってロウ材300を載置台400に押圧しつつ当接部135を当接させている状態で把持動作を開始するようにしているため、把持動作の開始前にこうした相対位置の規定を行わない場合と比較してロウ材300に対する各把持爪131,132の前後方向における当接位置のずれを抑制することができる。また、把持動作の開始時に、各把持爪131,132の左右方向における位置のずれがあるとしても、第1把持爪131又は第2把持爪132に押されることによるロウ材300の移動は載置台400及び押圧棒141、そして当接部135により規制されているため、把持動作中のロウ材300の姿勢の変化も抑制される。
したがって、ロウ材300の姿勢が変化していることに起因してロウ材300を把持できなくなることを抑制し、さらに、把持機構130で把持したロウ材300の姿勢が、その後にロウ材300を適切に配置するための前提として想定している姿勢から大きく乖離してしまうことを抑制することができる。ひいては、ロウ材300をロウ材穴240内に適切に配置することができる。
(2)上記のロボットアーム100では、押圧部140は、ロウ材300を載置台400に押圧するときにロウ材300に当接する押圧部材である押圧棒141と、押圧棒141と可動部110との間に介在している弾性部材であるスプリング142と、を有しており、固定プレート120を介して可動部110に固定されている。
そのため、可動部110を動作させて載置台400上に載置されたロウ材300の上面に押圧棒141を当接させ、さらに可動部110を載置台400側に移動させてスプリング142を弾性変形させることにより、スプリング142の復元力を利用してロウ材300を載置台400に押圧することができる。したがって、可動部110の制御を通じて、ロウ材300を載置台400に押圧する押圧動作を実現することができる。
(3)把持機構130は、複数の把持爪として、押圧部140がロウ材300を押圧する方向である上下方向と直交する左右方向に近接したり離間したりする把持爪131,132を有している。そして、当接部135は、押圧部140がロウ材300を押圧する上下方向、及び把持爪131,132が近接したり離間したりする左右方向の双方と直交する前後方向における、把持動作を開始する際のロウ材300に対する把持機構130の相対位置を規定するものである。そのため、当接部135をロウ材300に当接させることにより、ロウ材300に対する把持爪131,132の前後方向の相対位置を規定することができる。これにより、載置台400及び押圧部140によりロウ材300の上下方向の移動を規制し、さらにロウ材300に対する把持爪131,132の前後方向の位置を規定した状態で、左右方向から把持爪131,132をロウ材300に近接させて把持動作を行うことができる。すなわち、互いに直交する3つの方向のうち、互いに直交する2つの方向における位置を規定し、ロウ材300に対する各把持爪131,132の位置のずれを残りの1つの方向に限定した状態で、把持爪131,132でロウ材300を挟むことができる。そのため、ロウ材300の姿勢が変化していることに起因してロウ材300を把持できなくなることを大幅に抑制し、さらに、ロボットアーム100で把持したロウ材300の姿勢が、その後にロウ材300を適切に配置するための前提として想定している姿勢から乖離してしまうことを効果的に抑制することができる。
(4)押圧部140がロウ材300を載置台400に押圧する力の大きさは、当接部135をロウ材300に当接させる際にはロウ材300が動かないものの、把持動作中に把持爪131,132に押されたロウ材300が載置台400に沿って移動するように設定されている。
そのため、当接部135をロウ材300に当接させる際には、ロウ材300の移動が規制される。一方で、把持動作中に第1把持爪131又は第2把持爪132がロウ材300を押した際には、載置台400及び押圧棒141、そして当接部135によって移動の方向が規制された状態でロウ材300が載置台400に沿って移動する。
したがって、把持動作を開始するときに、ロウ材300に対する各把持爪131,132の位置のずれが完全に解消されておらず、把持動作中に把持爪131,132が同時にロウ材300に当接しない場合であっても、移動の方向を制限した状態で把持動作の進行に伴ってロウ材300を移動させ、ロウ材300を適切な位置に近づけることができる。そのため、把持動作を開始するときにロウ材300に対する各把持爪131,132の位置のずれが完全に解消されていない場合であっても、ロウ材300を理想的な姿勢に近い姿勢で把持することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態で実施することもできる。
・上記実施形態では、プラネタリキャリア200を製造する工程において把持装置であるロボットアーム100を用いる例を示したが、ロボットアーム100のような把持装置の用途はプラネタリキャリア200を製造する工程に限らない。要するに、上記ロボットアーム100のような把持装置は、部品を把持して所定の位置に配置する用途全般に適用可能である。
複数の把持爪によって把持対象物を挟んで把持する把持機構を備える把持装置であれば、上記ロボットアーム100と同様の構成を採用することにより、把持対象物の姿勢が変化していることに起因して把持爪によって把持対象物を把持できなくなることを抑制することができる。また、把持機構で把持した把持対象物の姿勢が、その後に把持対象物を適切に配置するための前提として想定している姿勢から大きく乖離してしまうことを抑制することができ、ひいては、把持対象物を所定の位置に適切に配置することができる。
したがって、ワークを構成するパーツは粉末成型体でなくてもよい。図4を参照して説明した製造工程では、焼結工程において粉末成型体である第1パーツ210及び第3パーツ230を焼結させるとともに、ロウ材300を溶融させていた。すなわち、第1パーツ210及び第3パーツ230を焼結する焼結工程を利用して、ロウ材300を溶融させ各パーツ210,220,230を接合するようにしていた。しかし、ワークを構成するパーツが粉末成型体でない場合には、焼結工程は必要ないため、焼結工程に替えて、ロウ材300を溶融させる加熱工程を設けるようにすればよい。
また、把持機構によって把持して、ワークにセットする把持対象物はロウ材でなくてもよい。上記のロボットアーム100のような把持装置は、把持対象物を把持して搬送し、所定の位置に配置するものであれば同様に適用することができる。すなわち、把持対象物の姿勢が想定通りの姿勢から乖離してしまうという課題は、ロウ材を配置する場合に限ったものではなく、把持対象物を掴んでワーク上に配置する場合には共通しているものである。要するに、複数の把持爪を備える把持機構で把持対象物を挟み、搬送し、被加工物であるワークに配置する場合には、把持装置によって把持対象物を想定どおりの姿勢で掴むことができるようにすることが望まれており、上記のロボットアーム100のような構成を採用することで上記のような課題を解消することができる。
・上記実施形態のロボットアーム100には、カメラ160が設けられていたが、カメラで画像認識する機能を備えていなかったり他の手段でロウ材300に対する位置を認識したりする場合であっても、上記のような課題は同様に生じる。したがって、把持装置は、画像認識により位置を調整するためのカメラを備えていなくてもよいし、他の位置認識手段を備えていてもよい。
・当接部135が第1把持爪131に固定されている例を示したが、当接部は把持機構とともに移動するようになっており、把持機構に対する相対位置が変化しないものであればよい。そのため、例えば、把持機構130におけるアクチュエータ136のハウジングに当接部を固定するようにしてもよい。
なお、複数の把持爪により把持対象物を適切に把持するためには、把持対象物に対する各把持爪の相対位置を正確に合わせることが好ましい。
しかし、アクチュエータ136のハウジングのように把持機構とともに移動するものの、把持爪とは別の部分から延びる当接部を設けるようにした場合、当接部が把持対象物に当接することにより把持対象物に対する把持機構の相対位置が規定されていたとしても、各把持爪の相対位置まで正確に規定されているかは保証できない。
これに対して、上記実施形態のロボットアーム100のように、当接部が把持爪に固定されている構成であれば、当接部を把持対象物に当接させることにより、同当接部が固定されている把持爪の把持対象物に対する相対位置をより確実に規定することができるようになる。そのため、把持爪の把持対象物に対する相対位置をより確実に規定する上では、上記実施形態のロボットアーム100のように、当接部は、把持爪に固定されていることが好ましい。なお、上記のロボットアーム100では、当接部135は第1把持爪131と一体に形成されていたが、把持爪とは別に形成した当接部を、把持爪に取り付けて固定するようにしてもよい。
・なお、当接部の数は1つに限らない。例えば、上記のロボットアーム100において、第2把持爪132を第1把持爪131と左右対称な形状にして当接部135を2つ設けるようにしてもよい。この場合には、第2把持爪132に設けられた当接部135が第1把持爪131に設けられた当接部135と対向する位置に設けられていることになるため、各把持爪131,132に設ける当接部135の長さを短くし、ロウ材300を把持する際に各当接部135同士が当接しないようにする必要がある。こうした構成を採用した場合には、双方の把持爪131,132に設けられた双方の当接部135をロウ材300に後方から当接させることにより、上記実施形態と同様の作用効果を生じさせることができる。
また、図18に示されているように、異なる方向から当接させるように複数の当接部を設けることもできる。なお、図18は把持爪131,132と、把持対象物600と、当接部170,180との位置関係を把持対象物600の上方から下方に向かって見た状態を示す模式的な断面図である。
図18に示されている例は、把持機構130とともに移動し、把持対象物600に後方から当接する当接部180と、把持対象物600に左方から当接する当接部170とを設けた例である。
こうした把持装置によれば、例えば、ロボットアーム100と同様に後方から当接部180を把持対象物600に当接させるように把持機構130を移動させ、次に左方から当接部180を把持対象物600に当接させるように把持機構130を移動させることにより、前後方向と左右方向の双方における把持機構130の位置を規定することができる。
・上記のロボットアーム100における押圧部140は、押圧部材である押圧棒141と、可動部110との間に、弾性部材であるスプリング142が介在しており、スプリング142の復元力を利用して把持対象物であるロウ材300を載置台400に押圧するものであった。しかし、押圧部の構成は、このように、押圧部材と可動部との間に弾性部材が介在している構成でなくてもよい。例えば、押圧部に押圧部材を駆動するアクチュエータ、例えば空気圧で動くエアシリンダなどを設けてもよい。この場合には、アクチュエータを制御することにより、把持対象物を押圧する力を調整することになる。なお、この場合には制御装置150によって押圧部のアクチュエータを制御する必要がある。
・押圧部140と把持機構130とが同一の固定プレート120に固定されている例を示したが、押圧部と把持機構とは同一の部材に固定されて一体に移動するように構成されていなくてもよい。例えば、押圧部と把持機構とが互いに前後方向に相対移動可能に可動部に固定されていてもよい。
上記のロボットアーム100では、押圧部140におけるシリンダ143内での押圧棒141のガタを利用して、ロウ材300を押圧しながらの押圧部140の前方への移動を可能にしていたが、押圧部と把持機構とが互いに前後方向に相対移動可能になっていれば、こうしたガタを利用する必要はなくなり、押圧部や把持爪の設計の自由度が高くなる。
・押圧部は、把持対象物を載置台に押圧することのできるものであればよい。例えば、押圧部を、ある程度の変形が可能なゴムの塊のような弾性部材単体によって構成することもできる。こうした構成を採用した場合でも、押圧部を把持対象物に当接させ、さらに載置台側に移動させるように可動部を移動させれば、押圧部によって把持対象物を載置台に押圧する押圧動作を実現することができる。
・把持機構130は、把持爪131,132が連動して動くものであったが、把持機構は複数の把持爪のそれぞれを別々に動作させることのできるものであってもよい。例えば、複数の把持爪をそれぞれに独立したアクチュエータによって駆動するようにしてもよい。
なお、この場合、把持機構を制御する制御装置は、押圧部が把持対象物を載置台に押圧しており且つ当接部が把持対象物に当接している状態で実行する把持動作において、以下のように各把持爪を駆動することが好ましい。
まず、各把持爪を把持対象物に当接し始める位置まで移動させる。
そして、全ての把持爪が把持対象物に当接するのを待ってから全ての把持爪で把持対象物を挟むように各把持爪をさらに駆動し、把持対象物を把持する。
こうした構成を採用すれば、把持動作中に、他の把持爪よりも先に当接した把持爪によって把持対象物が移動させられてしまうことを抑制することができる。すなわち、把持動作中に把持対象物の姿勢が変化してしまうことを抑制することができるため、把持対象物を理想的な姿勢に近い姿勢で把持することができる。
なお、把持対象物を極力移動させないように各把持爪を把持対象物に当接し始める位置まで移動させるためには、各把持爪に作用する反力を検知して把持爪の移動を停止させることのできる機能を設ける必要がある。こうした機能は、例えば、各把持爪の把持面に、ピアゾ素子など圧力の変化を検知するセンサを設け、把持対象物に把持爪が当接したことをセンサの出力の変化によって判定して、把持爪を停止させることによって実現することができる。また、モータによって把持爪を駆動する場合には、モータに作用する負荷の変化を利用して把持対象物に把持爪が当接したことを判定して、把持爪を停止させるようにすることもできる。
・把持機構が備える把持爪は3つ以上でもよい。3つ以上の把持爪が、右側、左側に分けて配置されており左右方向に近接、離間するようになっている構成でもよい。また、3つ以上の把持爪を、把持対象物を取り囲むように配設して、各把持爪が、把持対象物に向かって近接したり、把持対象物から離れるように離間したりするようになっている構成でもよい。なお、把持爪が3つ以上存在する構成において、当接部を把持爪に設ける場合、少なくとも1つの把持爪に当接部を設ければよい。
・把持装置を、可動部110の先端に、当接部135を備える把持機構130及び押圧部140が取り付けられており、把持機構130及び可動部110を制御する制御装置150を備えたロボットアーム100に具体化した実施形態を例示したが、把持装置はこうした構成に限定されるものではない。
把持装置は、少なくとも、把持機構と、押圧部と、当接部とを備えており、当接部が把持対象物に当接することによって、把持動作を開始する際の把持対象物に対する把持機構の相対位置を規定することのできる構成であればよい。把持機構と、押圧部と、当接部と、を備えていれば、把持対象物の姿勢が変化していることに起因して把持爪によって把持対象物を把持できなくなることを抑制し、さらに、把持装置で把持した把持対象物の姿勢が、その後に把持対象物を適切に配置するための前提として想定している姿勢から大きく乖離してしまうことを抑制することが可能になる。
具体的には、上記実施形態のロボットアーム100における可動部110に相当する汎用的なロボットアームの先端に取り付けるアタッチメントとして把持装置を具体化することもできる。この場合、把持装置自体は可動部を備えている必要はなく、押圧部で把持対象物を押圧したり、当接部を把持対象物に当接させたりするための押圧部や把持機構の移動はロボットアームの動作によって実現することができる。
ロボットアームを動作させることにより、当接部が把持対象物に当接するようになるまで把持機構を移動させることにより、把持対象物に対する把持機構の位置、すなわち各把持爪の把持対象物に対する相対位置を規定することができるようになる。したがって、把持動作を開始する前に把持対象物に当接部を当接させて把持対象物と把持機構の相対位置を規定しておくことにより、把持動作における各把持爪の当接位置のずれを抑制することができる。
また、ロボットアームを動作させることにより、押圧部によって載置台に把持対象物を押圧し、把持対象物の移動を抑制することができる。したがって、把持動作中に押圧部によって載置台に把持対象物を押圧しておけば、把持動作の進行に伴って把持爪に押されることによる把持対象物の姿勢の変化が抑制されるようになる。
なお、上記のように把持対象物に当接部を当接させて把持対象物と把持機構の相対位置を規定することは、必ずしも押圧部によって把持対象物を載置台に押圧していなくても実施することができる。したがって、把持対象物に当接部を当接させて把持対象物と把持機構の相対位置を規定してから、押圧部による把持対象物の押圧を実施するようにしてもよい。
また、ロボットアームの先端に取り付けるアタッチメントとして構成した把持装置自体に、把持機構や押圧部を移動させる可動部を設けるようにしてもよい。すなわち、上記のロボットアーム100における固定プレート120と把持機構130及び押圧部140の間に可動部を設けたような構成としてもよい。この場合には、汎用的なロボットアームによって大まかな位置の調整を行った上で、ロボットアームの先端に取り付けられたアタッチメントとしての把持装置に設けられた可動部によって押圧部や把持機構を移動させ、押圧動作や当接部を把持対象物に当接させる動作を実行すればよい。
なお、上記のように汎用のロボットアームと組み合わせて使用するアタッチメントとして把持装置を構成する場合、把持機構の動作は、把持機構をロボットアームの制御装置と接続してロボットアームの制御装置によって実行してもよいし、把持装置専用の制御装置によって制御してもよい。したがって、把持装置は必ずしも専用の制御装置を備えていなくてもよい。また、把持装置は、制御用のアプリケーションをインストールした汎用コンピュータを繋いで動作させるものでもよい。