本願発明者等は、PDE4D7がある前立腺がん細胞又は細胞株において大きく発現増加し、従って、悪性のホルモン感受性前立腺がんのバイオマーカーとして用いられ得ることを見出した。PDE4D7阻害剤及びPDE4D7を修飾する又はPDE4D7の発現を修飾する化学薬品は、更に、薬剤として、特に悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療のために用いられ得る。
本発明は特定の実施の形態に関して説明されるが、この説明は限定的な意味に解釈されるべきではない。
本発明の例示的な実施の形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するために重要な定義が与えられる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「a」及び「an」の単数形は、文脈がそれ以外のことを明らかに規定する場合を除いて、対応する複数形も含んでいる。
本発明に関しては、「約」という用語は、当業者が当該特徴の技術的効果を依然として確実にすると理解する正確さの幅を意味している。この用語は、典型的には、示された数値からの±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更に好ましくは±5%のずれを示すものである。
「有する」という用語は限定的ではないことを理解されたい。本発明のために、「より成る」という用語は、「有する」という用語の好ましい形態であるとみなされる。以下において、あるグループが少なくともある数の具体的表現を有するように規定される場合、これは、好ましくはこれらの具体的表現のみより成るグループを含むことも意味する。
また、明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語及びこれらに類する用語は、類似する要素を区別するために用いられており、必ずしも連続する順序又は発生順を説明するために用いられるものではない。そのように用いられている用語は適切な状況下において置き換え可能であり、本明細書で説明される本発明の実施の形態は、本明細書中に説明されている又は示されている順序ではない他の順序で動作可能であることを理解されたい。
「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語が使用又は方法のステップに関係がある場合、本明細書で上記又は以下に記載の適用においてそれ以外のことが示されていない限り、ステップ間に時間又は時間間隔の統一性は存在しない。すなわち、各ステップは、同時に行われてもよいし、そのようなステップの間に秒、分、時間、日、週、月又は更には年の時間間隔が存在してもよい。
本発明は、異なっていてもよいものとして本明細書において説明される特定の方法論、プロトコル、タンパク質、バクテリア、ベクタ、試薬等に限定されないことを理解されたい。本明細書において用いられる専門用語は、単に特定の実施の形態を説明する目的であり、専ら添付の特許請求の範囲により限定される本発明の範囲を限定するように意図されてはいないことも理解されたい。特に定義されていない限り、本明細書において用いられる技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有している。
上記に示したように、本発明は、一観点では、悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるためのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)であって、悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、マーカーの発現が増加する当該ホスホジエステラーゼ4D7に関係している。「ホスホジエステラーゼ4D7」又は「PDE4D7」という用語は、ヒトホスホジエステラーゼPDE4Dのスプライス変異体7、すなわち、ヒトホスホジエステラーゼPDE4D7遺伝子と、好ましくは、核酸配列データベース(Genbank)の登録番号:AF536976(2009年3月3日の時点でバージョンAF536976.1,GI:22901883)に定義されているような配列と、より好ましくは、PDE4D7転写産物の上記に示した核酸配列データベース登録番号の配列に対応する配列識別番号SEQ ID NO:1に記載のヌクレオチド配列と関係があり、PDE4D7転写産物によってコードされるPDE4D7ポリペプチドの上記に示した核酸配列データベース登録番号の配列に対応する配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の対応するアミノ酸配列とも関係がある。この用語は、また、PDE4D7に対して高度の相同性を示すヌクレオチド配列を含んでおり、例えば、配列識別番号SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致する核酸配列、配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列、配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードする核酸配列、又は配列識別番号SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致する核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含んでいる。
本明細書において用いられる「ヒトホスホジエステラーゼPDE4D7遺伝子」、「PDE4D7遺伝子」又は「PDE4D7マーカー遺伝子」という用語は、ホスホジエステラーゼ4Dをコードする遺伝子と関係がある。好ましくは、この用語は、スプライス変異体7としてホスホジエステラーゼ4Dを発現させる遺伝子、例えば、核酸配列データベースの登録番号:AF536976(2009年3月3日の時点でバージョンAF536976.1,GI:22901883)に定義されている又は配列識別番号SEQ ID NO:1に記載の特定のエクソンの組み合わせと関係がある。この用語は、また、変異体7としてスプライシングされるホスホジエステラーゼ4DをコードするmRNA転写産物由来のDNA分子、好ましくはcDNA分子にも関係がある。
本明細書において用いられる場合、「マーカー」又は「PDE4D7マーカー」という用語は、本明細書において上記に定義された遺伝子、遺伝学的単位又は遺伝子配列(ヌクレオチド配列又はアミノ酸若しくはタンパク質配列)に関係があり、その発現レベルは、対照レベルと比較すると、好ましくは、正常組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、悪性のホルモン感受性前立腺がん細胞若しくは組織又はそのような細胞、組織若しくはその一部や断片を有する任意のタイプの試料において増加する。この用語は、また、上記遺伝学的単位又は遺伝子配列の任意の発現産物、特に、PDE4D7のmRNA転写産物、PDE4D7転写産物によりコードされるポリペプチド又はタンパク質又はその変異体若しくは断片、及び本明細書において上述したような相同誘導体を意味する。
本明細書において用いられる「発現レベル」という用語は、定義された細胞の数又は定義された組織の一部から導き出せるPDE4D7転写産物及び/又はPDE4D7タンパク質の量、好ましくは、標準的な核酸(例えば、RNA)又はタンパク質抽出手続きにおいて得られるPDE4D7転写産物及び/又はPDE4D7タンパク質の量を意味している。好適な抽出方法は、当業者には既知である。
本明細書において用いられる場合、「対照レベル」(又は「対照状態」)という用語は、状況又は病気の状態、例えば、非癌性、正常な又は良性の前立腺腫瘍、進行性前立腺がん等が知られている被験体から予め採取され、保管された試料を用いることによって、検査試料と同時に及び/又は類似した又は同等の条件下で決定され得る発現レベルに関係がある。「病気の状態」又は「癌性の病気の状態」という用語は、非癌性の細胞状態と末期の癌性の細胞状態(この状態を含む)との間の任意の状態又はタイプの細胞又は分子の状況に関係がある。好ましくは、この用語は、非癌性の細胞状態(この状態を含まない)と末期の癌性の細胞状態(この状態を含む)との間の有機体における様々な癌性の増殖/成長の段階又は腫瘍の成長のレベルを含んでいる。そのような成長の段階は、UICCにより定義されている悪性腫瘍のTNM(腫瘍、リンパ節、転移)分類体系の全ての病期、例えば、ステージ0及びIないしIVを含んでいる。この用語は、また、TNMのステージ0よりも早期の病期、例えば、当業者に既知のがんバイオマーカーが修飾を受けた発現又は発現パターンを示す発生段階も含んでいる。
上述した発現レベルは、好ましくは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルである。代替又は追加として、上記発現レベルは、また、好ましくはPDE4D7との関連において細胞内で発現する任意の他の適切な遺伝子又は遺伝因子の発現レベル、例えば、他のホスホジエステラーゼの発現レベル、ハウスキーピング遺伝子、例えばGAPDH又はPBGDの発現レベルであり得る。
「癌性の」という用語は、本発明に関しては、本明細書において上記に定義された癌性の病状に関係がある。
「非癌性の」という用語は、本発明に関しては、良性の増殖も悪性の増殖も検出されない状態に関係がある。上記検出のための好適な手段は、当該技術分野において既知である。
本発明に関して好ましい対照レベルは、正常な、すなわち健康な若しくは非癌性の組織におけるPDE4D7の発現、又は良性の前立腺腫瘍組織におけるPDE4D7の発現である。本明細書において用いられる「良性の前立腺腫瘍」という用語は、がんの3つの悪性の性質の全てがない、すなわち、無制限、侵攻性の形で成長しない、周囲の組織に侵入しない及び転移しない前立腺腫瘍を意味している。典型的には、良性の前立腺腫瘍は、がんの浸潤特性がない軽度で非進行性の前立腺腫瘍性又は腫脹疾患を示唆する。更に、良性の前立腺腫瘍は、典型的には、封じられており、従って悪性の形で作用する能力を抑制される。良性の腫瘍又は健康な状態は、当業者には既知の任意の好適な独立分子性組織学的又は生理学的方法により決定され得る。
代替として、上記対照レベルは、病状が分かっている被験体からの試料における本発明のPDE4D7マーカー遺伝子の以前に決定された発現レベルを分析することにより得られる結果に基づいて統計的方法により決定され得る。更に、上記対照レベルは、以前に検査された被験体、組織又は細胞からの発現パターン又は発現レベルのデータベースから導き出される。また、検査される生体試料における本発明のマーカー遺伝子の発現レベルは、複数の参照試料から決定される複数の対照レベルと比較され得る。患者由来の生体試料の組織のタイプと同様の組織のタイプから導き出される参照試料から決定される対照レベルを用いることが好ましい。病状が本明細書において上記に定義された非癌性である、すなわち、良性の増殖も悪性の増殖も検出されない健康な状態を示す被験体から得られる試料を用いることが特に好ましい。また、本明細書において上記に定義された良性の前立腺腫瘍がある、すなわち、良性の増殖が検出される健康状態を示す被験体から得られる試料を用いることも特に好ましい。本発明の他の実施の形態では、上記対照レベルは、前立腺がん、例えば、ホルモン非依存性又はホルモン抵抗性前立腺がんを患っていると診断された被験体から得られる参照試料から決定される。
代替として、参照試料は、細胞株、例えば不死化癌細胞株から得られる物質を有していてもよいし、又は組織異種移植片から得られたものであってもよい。好ましくは、前立腺がん細胞株から得られる材料又はヒトの前立腺組織、特に、良性かつ腫瘍由来のヒトの前立腺組織との組織異種移植片から得られる物質が、本発明に係る参照試料に含まれる。好ましいがん細胞株の例は、細胞株PC346P、PC346B、LNCaP、VCaP、DuCaP、PC346C、PC3、DU145l、PC346CDD、PC346Flu1、PC346Flu2を有している。好ましい異種移植片の例は、PC295、PC310、PC−EW、PC82、PC133、PC135、PC324及びPC374を有している。好ましくは、異種移植片及び細胞株のパネル全体、例えば、ヒトPC346パネルが用いられる。
更に好ましい代替案では、参照試料は、臨床環境において得られる患者の組織、組織パネル又は組織採取からもたらされる。上記試料は、例えば、手術を受ける男性患者から得られる。上記試料は、任意の好適な組織のタイプ、例えば、前立腺組織又はリンパ節からもたらされる。患者の組織採取の好ましい例は、外科的処置(例えば、前立腺切除)からもたらされる。
また、既知の病状を伴う母集団、例えば、良性の前立腺腫瘍がある母集団又は健康な母集団における本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルの標準値を用いることが好ましい。上記標準値は、当該技術分野において既知の任意の方法により得られる。例えば、平均値±2SD(標準偏差)又は平均値±3SDの範囲が標準値として用いられる。
更に、上記対照レベルは、また、病状が癌性であると知られている、すなわち、前立腺がん、特に、悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っていると個別に診断された被験体から予め採取され、保管された試料を用いることによって、検査試料と同時に及び/又は類似した又は同等の条件下で決定され得る。
本発明に関しては、癌性ではないと分かっている、例えば、健康な組織の試料又は良性の前立腺腫瘍の試料である生体試料から決定される対照レベルは、「正常な対照レベル」と呼ばれる。
対照レベルが癌性の生体試料、特に、ホルモン抵抗性がんが個別に診断された被験体からの試料から決定される場合、この対照レベルは「癌性の対照レベル」と呼ばれる。
「前立腺がん」という用語は、男性生殖器系における前立腺のがんに関係があり、これは、前立腺の細胞が突然変異し、制御不能に増殖し始めると発生する。典型的には、前立腺がんは、前立腺特異抗原(PSA)レベルの上昇と関連している。本発明の一実施の形態では、「前立腺がん」という用語は、4.0を上回るPSAレベルを示すがんに関係がある。他の実施の形態では、この用語は、2.0を上回るPSAレベルを示すがんに関係がある。「PSAレベル」という用語は、血液中のPSA濃度(単位はng/ml)を意味する。
「悪性のホルモン感受性前立腺がん」という用語は、前立腺がん又は前立腺がん細胞株の成長及び増殖が男性ホルモンの刺激に対して感受性が高いことを意味する。「感受性」という用語は、前立腺がん又は前立腺がん細胞株が男性ホルモンの存在下で生化学的反応又は細胞反応のパターンを示すが、成長及び/又は増殖のために男性ホルモンを必要としない状態を意味する。従って、ホルモン感受性前立腺は、PIN(前立腺上皮内新生物)のような前がん性の形から発症した悪性の前立腺腫瘍として理解され、その成長が依然として男性ホルモンであるアンドロゲンの存在に依存することによって特徴付けられる。対照的に、一度そのような腫瘍がホルモン除去療法によって治療されると、それらのがんは、典型的には、アンドロゲンの存在とは無関係に成長するホルモン抵抗性の形態になる。
従って、「悪性のホルモン抵抗性前立腺がん」という用語は、前立腺がん又は前立腺がん細胞株の成長及び増殖が男性ホルモンの刺激に耐性があることを意味する。この用語は、また、もはや抗ホルモン剤、好ましくは本明細書において上記に定義された抗アンドロゲンの投与を適用できない末期の前立腺がん成長段階にも関係がある。
本明細書において用いられる「男性ホルモン」という用語は、アンドロゲン、好ましくはテストステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオール又はアンドロステロンを意味する。
更なる観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、検出、監視又は予知するマーカーとしてのPDE4D7の使用に関係がある。
本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんを診断する」という用語は、本明細書において上記に定義された対照レベルと比較して、好ましくは、本明細書において上記に定義された正常な対照レベルと比較して、本発明のPDE4D7の発現レベルが増加している又は発現増加していると、被験体又は個体は悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っていると見なされることを意味する。「診断する」という用語は、また、上記比較プロセスを経て達した結論も意味する。
従って、本発明に関して(同義的に用いられる)「増加する」、「増加した発現レベル」、「発現増加した発現レベル」又は「発現レベルの増加」という用語は、分析される状況、例えば、患者の試料から導き出せる状況と、任意の適切な前立腺腫瘍又は当業者に既知のがんの病期から導き出せる正常な対照レベル又は癌性の対照レベルのいずれか一方である基準点との間における発現レベルの高まりを表している。例えば分析される試料中のPDE4D7遺伝子の発現が、対照レベルと比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく、又は、対照レベルと比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上異なる、すなわち高いと、発現レベルは「増加した」と見なされる。上記対照レベルは、本明細書において上記に定義された正常な対照レベル又は癌性の対照レベルのいずれか一方であり得る。癌性の対照レベルとの比較が行われるステップとなる場合、正常な対照レベルとの追加の比較が好ましい。そのような追加の比較は変化の傾向の決定を可能にし、例えば、発現レベルの増加の大きさが確認される及び/又は対応する結論が引き出される。良性の前立腺腫瘍との又は健康な組織若しくは健康な個体から得られる試料との比較が好ましい。
更なる実施の形態では、被験体から得られる試料と癌性である本明細書において上記に定義された参照試料との遺伝子の発現パターン全体における追加の類似性が、被験体が前立腺がんを患っていることを示す。本発明の他の実施の形態では、上記診断が追加のがんバイオマーカー、特に前立腺がんバイオマーカーの発現レベルの解明と組み合わせられる。好適なバイオマーカー、特に前立腺がんバイオマーカーは、当業者には既知である。例えば、PSAのようなバイオマーカーの発現が検査される。
本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルが本明細書において上記に定義された正常な対照レベルと比較して増加していると、悪性のホルモン感受性前立腺がんが診断されると見なされる。
更なる好ましい実施の形態では、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが、対照レベルと比較して、検査試料において20%ないし80%の値、好ましくは、30%、40%、50%、60%又は70%の値だけ増加していると、悪性のホルモン感受性前立腺がんが診断されると見なされる。上記対照レベルは、本明細書において上記に定義された正常な対照レベル又は癌性の対照レベルのいずれか一方であり得る。特に好ましい実施の形態では、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが、正常な、特に健康な組織又は良性の前立腺腫瘍の対照レベルと比較して、検査試料中において1.5ないし10倍、好ましくは2ないし5倍増加していると、悪性のホルモン感受性前立腺がんが診断されると見なされる。
本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんを検出する」という用語は、有機体に悪性のホルモン感受性前立腺がんの病気若しくは疾患の存在が決定される又はそのような病気若しくは疾患が有機体において確認されることを意味する。悪性のホルモン感受性前立腺がんの病気又は疾患の決定又は確認は、本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルと本明細書において上記に定義された正常な対照レベルとの比較によって達成される。悪性のホルモン感受性前立腺がんは、PDE4D7マーカーの発現レベルが本明細書において上記に定義された正常な対照レベルと比較して増加していると検出される。本発明の好ましい実施の形態では、悪性のホルモン感受性前立腺がんは、PDE4D7マーカーの発現レベルが、確立された、例えば独立して確立された前立腺がん細胞又は細胞株、例えば悪性のホルモン感受性前立腺がん細胞株又は本明細書において上記に定義された細胞株の発現レベルと類似している場合に検出される。
本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんを監視する」という用語は、例えば、治療処置中又はある期間中、典型的には、2か月、3か月、4か月、6か月、1年、2年、3年、5年、10年若しくは任意の他の期間中に診断又は検出される悪性のホルモン感受性前立腺がんの病気又は疾患の付随物(accompaniment)に関係がある。上記「付随物」という用語は、任意の期間、例えば、2週、3週、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年間、任意のタイプの周期的な時間セグメントで、例えば、毎週、2週間毎、毎月、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12か月に一度、1.5年に一度、2、3、4、5、6、7、8、9又は10年に一度、それぞれ、試料中の本発明のPDE4D7マーカーの発現レベルを、本明細書において上記に定義された正常な対照レベル、好ましくは、良性腫瘍の対照若しくは健康な対照から導き出される対照発現レベルと比較することにより、又は、確立された、例えば独立して確立された前立腺がん細胞若しくは細胞株、例えば悪性のホルモン感受性前立腺がん細胞株の発現レベルと比較することによって、本明細書において上記に定義された病気の状態及び特にこれらの病気の状態の変化が検出され得ることを意味する。追加の対照レベルを生じさせる上記確立された、例えば独立して確立された前立腺がん細胞又は細胞株は、がんの成長の異なる病期、例えば、TNM分類体系のステージ0及びIないしステージIVに対応する試料から導き出され得る。本発明の好ましい実施の形態では、上記用語は、診断された前立腺がん、より好ましくは悪性のホルモン感受性前立腺がんの付随物に関係がある。上記監視は、また、追加の遺伝子又は遺伝因子、例えばGAPDH若しくはPBGDのようなハウスキーピング遺伝子又は他のホスホジエステラーゼ、好ましくはPDE4D5の発現の検出も含んでいる。
本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんを予知する」という用語は、例えば、ある期間中、治療中又は治療後の診断又は検出された悪性のホルモン感受性前立腺がんの経過又は結果の予測を意味する。この用語は、また、病気からの回復又は生存の可能性の決定及び被験体の予想される生存可能期間の予測も意味する。予後は、具体的には、6か月、1年、2年、3年、5年、10年又は任意の他の期間のような今後のある期間中の被験体の生存についての見込みを確立することを含んでいる。
本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行」という用語は、がんの成長の異なる段階、例えば、TNM分類のステージ0及びIないしステージIV、又は健康な状態から始まって悪性のホルモン感受性前立腺がんまでの任意の他の段階若しくはサブ段階の間の移行に関係がある。典型的には、そのような移行は、PDE4D7の発現レベルの変化、典型的には、同じ個体からの以前の検査試料と比較した時の、例えば、良性の前立腺腫瘍の対照又は健康な組織の対照から導き出される試料と比較した時の検査試料における増加により達せられる。検査試料中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが、同じ個体からの以前の検査試料と比較して、3%ないし50%の値、好ましくは、10%、15%、20%又は25%の値だけ増加していると、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行が検出又は診断されると見なされる。上記変化は、任意の期間、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11,12か月、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年にわたって検出され得る。すなわち、上述した値は、第1の時点と上述した期間の後の第2の時点とにおけるPDE4D7の発現レベルを比較することにより計算され得る。
本発明の特に好ましい実施の形態では、「悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行」という用語は、健康な状態又は良性の前立腺腫瘍の状態から悪性のホルモン感受性前立腺がんの状態への移行に関係がある。検査試料中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが、健康であると診断された同じ個体からの以前の検査試料と比較して、20%ないし50%の値、好ましくは、20%、25%、30%又は35%の値だけ増加していると、健康な状態から悪性のホルモン感受性前立腺がんの状態への進行が検出又は診断されると見なされる。代替として、比較のために、他の個体からの検査試料、例えば、健康な個体の検査試料が用いられる。また、発現についての利用可能なデータベースの情報の使用又は細胞株の収集試料の使用等も想定される。
検査試料中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を患っていると診断された同じ個体からの以前の検査試料と比較して、3%ないし30%の値、好ましくは、5%、10%、15%又は20%の値だけ増加していると、良性の前立腺腫瘍の状態から悪性のホルモン感受性前立腺がんの状態への進行が検出又は診断されると見なされる。代替として、比較のために、他の個体からの検査試料、例えば、良性の前立腺腫瘍を患っていると診断された個体の検査試料が用いられる。また、発現についての利用可能なデータベースの情報の使用又は細胞株の収集試料の使用等も想定される。
上記変化は、任意の期間、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20年にわたって検出され得る。すなわち、上述した値は、第1の時点と上述した期間の後の第2の時点とにおけるPDE4D7の発現レベルを比較することにより計算され得る。
更なる実施の形態では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向の診断及び検出に関係がある。本発明に関して「悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向」とは、悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する危険のある状態である。好ましくは、悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが本明細書において上記に定義された正常な又は癌性の対照レベル、すなわち、明らかに健康である被験体の組織又は試料から導き出される参照発現レベルを上回る場合に存在する。この場合の「上回る」という用語は、そのような健康な対照レベルと比較して約2%ないし20%、好ましくは約15%増加したPDE4D7の発現レベルに関係がある。具体的な実施の形態では、上記PDE4D7の発現レベルは、正常な対照レベルを上回り、同時に癌性の対照レベルを下回る。ここで用いられている「下回る」という用語は、PDE4D7の発現レベルがそのような癌性の対照レベルと比較して約5%ないし10%、好ましくは約7%減少していることを意味する。代替として、本発明に関して悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現レベルが本明細書において上記に定義された正常な対照レベルを上回る及び/又は癌性の対照レベルを上回り又は下回り、更に、代替のがんマーカー、例えばPSAが発現レベル又は発現パターンの変化を示さない状況において与えられる。好適な更なるがんマーカーは、当業者には既知である。
従って、悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向は、上述した状況の1つが認められた場合に検出又は診断されると見なされる。検査生体試料の発現レベルと対照レベルとの差は、更なる対照核酸の発現レベルに標準化され、例えば、細胞が癌性の状態であるか非癌性の状態であるかによって発現レベルが異ならないことが知られているハウスキーピング遺伝子の発現レベルに標準化される。例示的な対照遺伝子は、とりわけ、β−アクチン、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)、ポルフォビリノゲンデアミナーゼ(PBGD)及びリボソームタンパク質P1を含んでいる。上記標準化は、また、他のホスホジエステラーゼ、好ましくは、さまざまな腫瘍の病期で変化しない発現パターンを示すヒトホスホジエステラーゼを用いても行われ得る。好ましいホスホジエステラーゼは、PDE4D7を除くPDE4Dの任意のアイソフォーム、好ましくはPDE4D5である。
本発明に関して、「診断する」及び「予知する」という用語は、また、予測及び尤度解析を含むように意図されている。従って、マーカーとしてのPDE4E7は、病気のサーベイランスのような診断基準又は治療的介入を含む治療法についての決定の際に臨床的に用いられ得る。本発明によれば、被験体の状態を調べた中間結果が与えられる。そのような中間結果は、被験体が病気を患っていることを診断する医師、看護師又は他の従業者の役に立つ追加の情報と組み合わせられる。代替として、本発明は、被験体由来の組織内のがん細胞を検出し、被験体が病気を患っていることを診断するために役立つ情報を医師に与えるために用いられる。
診断、監視される被験体若しくは個体、又は悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行若しくは悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向が本発明に従って検出若しくは予知されるべき被験体若しくは個体は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは人間である。
悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、検出、監視又は予知するマーカーとしてPDE4D7を使用することに関して、当業者に知られているような分子イメージング、例えば、磁気共鳴映像(MRI)及び/又は磁気光子共鳴映像(magnetic photon resonance imaging;MPI)技術の機器の使用が特に好ましい。例えば、PDE4D7は、人体中の診断マーカーのオンライン検出を可能にするMRI又はMPIのような手法で悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、検出、監視又は予知するマーカーとして用いられる。
更なる観点では、本発明は、個体における悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行又は悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向を診断、検出、監視又は予知するための組成物に関係がある。本発明に係る組成物は、PDE4D7発現産物又はタンパク質に対する核酸及び/又はペプチド親和性リガンドを有している。
本明細書において用いられる「PDE4D7発現産物に対する核酸親和性リガンド」という用語は、PDE4Dのスプライス変異体7に由来するPDE4D7転写産物又はDNA分子、更により好ましくは、SEQ ID NO:1に記載されたDNA配列、SEQ ID NO:1に記載された配列の相補的DNA配列又は対応するRNA分子に特異的に結合することができる核酸分子を意味している。上記核酸親和性リガンドは、また、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列、SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードするDNA配列又は上記配列の任意の断片に特異的に結合することもできる。
本明細書において用いられる「PDE4D7タンパク質に対するペプチド親和性リガンド」という用語は、PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができるペプチド分子を意味している。このペプチド分子は、好ましくは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はポリペプチドに特異的に結合することができる。上記ペプチド親和性リガンドは、また、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチド、SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチド又は上記配列の任意の断片に特異的に結合することもできる。「ペプチド」という用語は、2個よりも多いアミノ酸を有する任意のタイプのアミノ酸配列、例えば、ポリペプチド構造、タンパク質構造又はそれらの機能性誘導体を意味する。更に、ペプチドは、更なる化学的部位又は官能基と結合する。
本明細書において用いられる「発現産物」という用語は、PDE4D遺伝子の発現により生成されるPDE4D7転写産物又はmRNA分子を意味する。より好ましくは、この用語は、例えばSEQ ID NO:1に記載の配列を介した本明細書において上記に定義されたプロセス型のPDE4D転写産物に関係がある。
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の組成物は、PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット、PDE4D7発現産物に対して特異的なプローブ、PDE4D7発現産物又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及びPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体より成る群から選択された核酸及び/又はペプチド親和性リガンドを有している。
上記本発明の組成物は、例えば、PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット及び/又はPDE4D7発現産物に対して特異的なプローブを有している。本明細書において用いられる「PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチド」という用語は、PDE4Dのスプライス変異体7のアンチセンス鎖又はセンス鎖に相補的であるヌクレオチド配列を意味する。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されているDNA配列に相補的であるか、又はSEQ ID NO:1に示されている配列の相補的DNA配列である。オリゴヌクレオチド配列は、また、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列又はSEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードするDNA配列に相補的である。
上記オリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1の配列又はその相補体から導き出せるような当業者には既知の任意の適切な長さ及び配列を持っている。典型的には、オリゴヌクレオチドは、8から60ヌクレオチド、好ましくは10から35ヌクレオチドの長さを持ち、より好ましくは、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33ヌクレオチドの長さを持っている。PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチド配列は、当業者に既知のソフトウェアツールを利用して定義され得る。
本発明の更なる実施の形態では、オリゴヌクレオチド配列は、PDE4D7遺伝子のエクソン1又はエクソン2に局在する配列、PDE4D7遺伝子のエクソン1とエクソン2との境界に局在する配列又はPDE4D7遺伝子のエクソン2だけに局在する配列に相補的であり、好ましくは、PDE4D7の271の独自のヌクレオチドの区間、すなわち、PDE4Dのエクソン1の3´末端における42ヌクレオチド及びPDE4D7のエクソン2の5´末端における229ヌクレオチドに相補的である。例えば、順方向プライマとして使用可能なオリゴヌクレオチドはPDE4D7遺伝子のエクソン1とエクソン2との境界に局在し、逆方向プライマとして使用可能なオリゴヌクレオチドはPDE4D7遺伝子のエクソン2に局在する。
本発明の好ましい実施の形態では、オリゴヌクレオチドのセットは、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:4に記載の配列を持っている。SEQ ID NO:10及び/又はSEQ ID NO:11に記載の配列を持つ又は有するオリゴヌクレオチドは、更に好ましい。
本明細書において用いられる「PDE4D7発現産物に対して特異的なプローブ」という用語は、PDE4Dのスプライス変異体7のセンス鎖又はアンチセンス鎖に相補的であるヌクレオチド配列を意味する。好ましくは、上記プローブは、SEQ ID NO:1に示されているDNA配列に相補的であるか、又はSEQ ID NO:1に示されている配列の相補的DNA配列である。上記プローブ配列は、また、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列又はSEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードするDNA配列に相補的である。
上記プローブは、SEQ ID NO:1の配列又はその相補体から導き出せるような当業者には既知の任意の適切な長さ及び配列を持っている。典型的には、プローブは、6から300ヌクレオチド、好ましくは15から60ヌクレオチドの長さを持ち、より好ましくは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50ヌクレオチドの長さを持っている。PDE4D7発現産物に対して特異的なプローブ配列は、当業者に既知のソフトウェアツールを利用して定義され得る。
本発明の更なる実施の形態では、プローブ配列は、PDE4D7遺伝子のエクソン1又はエクソン2に局在する配列に相補的であり、好ましくは、PDE4D7の271の独自のヌクレオチドの区間、すなわち、PDE4Dのエクソン1の3´末端における42ヌクレオチド及びエクソン2の5´末端における229ヌクレオチドに相補的である。プローブが定量的PCR反応、例えばリアルタイムPCRに用いられることになる場合、該プローブは順方向及び逆方向プライマの結合位置の間の位置に局在するように設計される。好ましくは、プローブは、プライマのオリゴヌクレオチドの1つの近くに局在するように設計される。より好ましくは、プローブは、順方向プライマの近くに局在する。
本発明の好ましい実施の形態では、プローブは、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:12に記載の配列を持っている。
本発明の組成物は、PDE4D7発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマを追加として又は代替として有していてもよい。本明細書において用いられる「PDE4D7発現産物に対して特異的なアプタマ」という用語は、PDE4Dのスプライス変異体7に特異的に結合することができる短い核酸分子、例えば、RNA、DNA、PNA、CNA、HNA、LNA若しくはANA又は当業者には既知の任意の他の適切な核酸のフォーマット、好ましくは、PDE4Dのスプライス変異体7由来のDNA分子を意味する。より好ましくは、核酸アプタマ分子は、SEQ ID NO:1に示されているDNA配列又はその二本鎖の誘導体に特異的に結合する。本発明に係る核酸アプタマは、また、PDE4D7転写産物に対応するRNA分子、好ましくは、SEQ ID NO:1に記載のDNA配列に対応するRNA分子にも結合する。
核酸アプタマは、更に、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列、SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードするDNA配列又はこれらの配列に対応するRNA分子に特異的に結合することができる。
PDE4Dのスプライス変異体7に対する核酸アプタマの特異性は、上記スプライス変異体に単独で存在する配列、例えば、PDE4Dのエクソン2又はエクソン1とエクソン2とのエクソン境界への特異的な結合により付与される。本発明の特定の実施の形態では、PDE4Dのスプライス変異体7に対する核酸アプタマの特異性は、PDE4D7の271の独自のヌクレオチドの区間内に位置する配列、すなわち、PDE4Dのエクソン1の3´末端における42ヌクレオチド及びエクソン2の5´末端における229ヌクレオチドへの特異的な結合により付与される。核酸アプタマは、当業者に既知の任意の適切な方法に従って、例えば、インビトロセレクション又はSELEX法により生成され得る。好ましくは、核酸アプタマは、Ellington and Szostak,1990, Nature,346:818-822において与えられている手引きに従って生成及び/又は設計される。本発明に係る核酸アプタマは、更に、追加の部分と、例えば、ビオチンのような相互作用部分又はリボザイム素子のような酵素的機能部(enzymatic functionality)と結合し得る。
本明細書において用いられる「PDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ」という用語は、相互作用し、PDE4D7タンパク質を特異的に結合することができる短いペプチドを意味する。このペプチドアプタマは、好ましくは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はポリペプチドに特異的に結合することができる。このペプチドアプタマは、また、SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチド又はSEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチドにも特異的に結合することができる。典型的には、ペプチドアプタマは、例えば10ないし20のアミノ酸を有する可変ペプチドループである。本発明に関しては、ペプチドアプタマは、好ましくは、一方又は両方の末端において骨格構造に付着する。上記骨格構造は、良好な溶解特性を有する任意の分子、好ましくはタンパク質である。好適な骨格構造の分子は、当業者には既知である。本発明に関連して用いられる好ましい骨格分子は、細菌タンパク質のチオレドキシン−Aである。アプタマペプチドループは、好ましくは、上記骨格分子の還元性活性部位内に挿入される。代替として、ブドウ球菌プロテインA及びそのドメイン並びにプロテインZ又はリポカリンのようなこれらのドメインの誘導体が、本発明に関する骨格分子として用いられ得る。
ペプチドアプタマは、当業者には既知の任意の適切な方法に従って、例えば、酵母ツーハイブリッド法によって生成される。
他の実施の形態では、本発明は、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体に関係がある。そのような抗体は、本願において定義される任意の用途、使用、方法、組成物、免疫学的検定、スクリーニング法及び診断用又は医薬用の組成物又はキット向けに考えられている。本明細書において用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原を免疫学的に結合する抗体結合部位を含む分子を意味する。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
本発明の抗体は、当該抗体が認識又は特異的に結合する本発明のPDE4D7ポリペプチドのエピトープ又は一部の観点から説明又は特定される。本発明に係る好ましいエピトープは、PDE4D7タンパク質の、好ましくはPDE4D7タンパク質のN末端部、より好ましくはSEQ ID NO:2の配列のアミノ酸の1〜10、2〜11、3〜12、4〜13、5〜14、6〜15、7〜16、8〜17、9〜18、10〜19、11〜20、12〜21、13〜22、14〜23、15〜24、16〜25、17〜26、18〜27、19〜28、20〜29、21〜30、22〜31、23〜32、24〜33、25〜34、26〜35、27〜36、28〜37、29〜38、30〜39、31〜40、32〜41、33〜42、34〜43、35〜44、36〜45、37〜46、38〜47、39〜48、40〜49、41〜50、42〜51、43〜52、44〜53、45〜54、46〜55、47〜56、48〜57、49〜58、50〜59、51〜60、52〜61、53〜62、54〜63、55〜64、56〜65、57〜66、58〜67、59〜68、60〜69、61〜70、62〜71、63〜72、64〜73、65〜74、66〜75、67〜76、68〜77、69〜78、70〜79、71〜80、72〜81、73〜82、74〜83、75〜84、76〜85、77〜86、78〜87、79〜88、80〜89、81〜90、82〜91、83〜92、84〜93、85〜94、86〜95、87〜96、88〜97、89〜98、90〜99、91〜100、1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24、6〜25、7〜26、8〜27、9〜28、10〜29、11〜30、12〜31、13〜32、14〜33、15〜34、16〜35、17〜36、18〜37、19〜38、20〜39、21〜40、22〜41、23〜42、24〜43、25〜44、26〜45、27〜46、28〜47、29〜48、30〜49、31〜50、32〜51、33〜52、34〜53、35〜54、36〜55、37〜56、38〜57、39〜58、40〜59、41〜60、42〜61、43〜62、44〜63、45〜64、46〜65、47〜66、48〜67、49〜68、50〜69、51〜70、52〜71、53〜72、54〜73、55〜74、56〜75、57〜76、58〜77、59〜78、60〜79、61〜80、62〜81、63〜82、64〜83、65〜84、66〜85、67〜86、68〜87、69〜88、70〜89、71〜90、72〜91、73〜92、74〜93、75〜94、76〜95、77〜96、78〜97、79〜98、80〜99、81〜100、1〜30、2〜31、3〜32、4〜33、5〜34、6〜35、7〜36、8〜37、9〜38、10〜39、11〜40、12〜41、13〜42、14〜43、15〜44、16〜45、17〜46、18〜47、19〜48、20〜49、21〜50、22〜51、23〜52、24〜53、25〜54、26〜55、27〜56、28〜57、29〜58、30〜59、31〜60、32〜61、33〜62、34〜63、35〜64、36〜65、37〜66、38〜67、39〜68、40〜69、41〜70、42〜71、43〜72、44〜73、45〜74、46〜75、47〜76、48〜77、49〜78、50〜79、51〜80、52〜81、53〜82、54〜83、55〜84、56〜85、57〜86、58〜87、59〜88、60〜89、61〜90、62〜91、63〜92、64〜93、65〜94、66〜95、67〜96、68〜97、69〜98、70〜99、71〜100である。
当業者には既知の方法に従って認識、決定、説明され、その後使用され得る他の適切なエピトープの全てが更に含まれる。
本明細書において用いられる「PDE4D7タンパク質に対して特異的な」という用語は、本明細書において上記に定義された抗原エピトープに対する免疫特異性の検出及び抗体の結合を意味する。「特異的に結合する」という用語は、非特異的結合を排除するが、必ずしも他の抗原との、特に本発明の抗体により検出されるものと同じ抗原エピトープを有する抗原との交差反応を排除するものではない。
好ましい実施の形態では、本発明の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、多特異性、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、Fab´フラグメント、Fab発現ライブラリにより生成されるフラグメント、F(ab´)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、ミニボディ(minibody)、二重特異性抗体(diabody)、scFv、sc(Fv)2、全免疫グロブリン分子、小モジュラー免疫医薬品(SMIP)、結合領域免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、抗イディオタイプ(anti-Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対するanti-Id抗体を含む)及び上記の任意のエピトープ結合フラグメントを含んでいる。
最も好ましくは、抗体は、本発明の抗原結合性抗体フラグメントであり、Fab、Fab´及びF(ab´)2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)及びVL又はVHドメインを有するフラグメントを含んでいる。
本明細書において用いられる「Fabフラグメント」という用語は、無傷の免疫グロブリンタンパク質の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)、軽鎖の定常ドメイン(CL)、重鎖の可変ドメイン(VH)及び軽鎖の可変ドメイン(VL)より成る抗体フラグメントを意味する。本明細書において用いられる「F(ab´)2」又は「F(ab´)2フラグメント」という用語は、無傷の免疫グロブリンタンパク質の2つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)、2つの軽鎖の定常ドメイン(CL)、2つの重鎖の可変ドメイン(VH)及び2つの軽鎖の可変ドメイン(VL)より成る抗体フラグメントを意味する。すなわち、2つのFabフラグメントを有している。本明細書において用いられる「Fab´フラグメント」という用語は、「F(ab´)2」分子に由来するフラグメント、好ましくは、抗体ヒンジ領域にS−S結合を有するフラグメントを意味する。本明細書において用いられる「Fvフラグメント」という用語は、2つの可変抗体ドメインVH及びVLより成る抗体フラグメントを意味する。本明細書において用いられる「一本鎖Fvフラグメント(scFv)」という用語は、フレキシブルペプチドリンカ〜によって結合している2つのVH及びVLドメインより成る抗体フラグメントを意味する。
本発明に係る抗体は、鳥及び哺乳動物を含む任意の動物に由来するものである。好ましくは、抗体は、ヒト、ネズミ科の動物(例えば、マウス及びラット)、ロバ、サル、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ又はニワトリである。
本発明に係る抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性又はより大きい多重特異性である。多重特異性抗体は、本発明のポリペプチドの種々のエピトープに対して特異的であるか、又は本発明のポリペプチドと、異種ポリペプチド又は固体支持材料(solid support material)のような異種のエピトープとの両方に対して特異的である。
本発明の抗体は、また、その交差反応の観点から説明又は特定される。特に好ましい実施の形態では、本発明は、本発明のポリペプチドの任意の他のアナログ、オルソログ又はホモログを結合させない抗体に関係がある。しかしながら、本発明のポリペプチドと(当該分野において既知の本明細書において説明されている方法を用いて計算される)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%及び少なくとも50%の同一性を有するポリペプチドを結合させる抗体も本発明に含まれる。
本発明は、また、競合的結合を決定する当該分野において既知の任意の方法によって、例えば、免疫測定法を用いて決定される本発明のエピトープへの抗体の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。好ましい実施の形態では、抗体は、エピトープへの結合を少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%競合的に阻害する。
更なる実施の形態では、本発明の抗体は、例えば抗体への任意のタイプの分子の共有結合により、該共有結合が抗体のエピトープへの特異的結合を防ぐ又は抗イディオタイプの反応の発生を防ぐように修飾される誘導体を含んでいる。そのような修飾の典型的な例は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合等である。化学的修飾は、特異的な化学開裂、アセチル化、ホルミル化等を含む既知の技術によって行われ得る。加えて、誘導体は1つ又はそれ以上の非古典的アミノ酸を含んでいる。
抗体は、当業者に既知の任意の適切な方法に従って製造される。ポリクローナル抗体は、最適な抗原を持つ動物の免疫により製造される。例えば、本発明のポリペプチドは、任意の真核生物、原核生物又はファージのクローンを含む種々の宿主動物に投与される。定義された特異性を持つモノクローナル抗体は、例えば、ケーラー及びミルスタインにより開発されたハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein,1976, Eur.J.Immunol., 6:511〜519)を用いて製造される。
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の技術によって生成される。例えば、本発明のFab及びF(ab´)2フラグメントは、(Fabフラグメントを製造するための)パパイン又は(F(ab´)2フラグメントを製造するための)ペプシンのような酵素を用いて免疫グロブリン分子のタンパク質切断により製造される。
本明細書において上記に用いられている「キメラ抗体」という用語は、マウスモノクローナル抗体及びヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を持つ抗体のような抗体の様々な部分が様々な動物種に由来する分子を意味する。本明細書において上記に用いられている「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の種からの1つ又はそれ以上の相補性決定領域(COR)とヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを持つ所望の抗原を結合させる抗体分子を意味する。ヒト化抗体の製造技術は、当業者には既知である。本明細書において用いられる「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を持つ抗体を意味し、ヒト免疫グロブリンライブラリから又は1つ若しくはそれ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子導入動物から単離された抗体を含んでいる。
本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上記に定義された抗体又はそのフラグメントは、ビオチニル化又は標識化される。本明細書において用いられる「ビオチニル化」という用語は、上記抗体がビオチン分子に共有結合していることを意味する。典型的には、ビオチンは、例えば、イプシロンアミン又はN末端アルファアミンのリジン側鎖に存在する一級アミノ基に結合される。代替として、上記結合は、抗体分子に存在するスルフヒドリル基、カルボキシル基、糖類又は残基を介して行われる。また、ビオチン化は、非特異的ビオチン化として行われ得る。
本明細書において用いられる「標識抗体」という用語は、当該抗体が抗体鎖のC又はN末端に1つ又はそれ以上の標識を有することを意味している。代替として、上記抗体は、また、分子中の任意の位置に1つ又はそれ以上の標識を有している。好ましくは、上記抗体は1から10個の標識を有し、これらは、同じであっても、異なっていても、それらの任意の組み合わせであってもよい。より好ましくは、上記抗体は1から5個の標識を有し、更に好ましくは、1つの標識を有している。上記標識は、当業者には既知の適切な標識、例えば、放射性標識、蛍光標識又は化学発光標識である。特に好ましい実施の形態では、上記標識は、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、化学発光標識又は生物発光標識である。
「酵素標識」という用語は、酵素活性を持つ標識に関係がある。典型的な好ましい例は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素であり、これは抗体に連結又は結合する。この酵素複合体は、その後、最終的に光の放出又は色反応の生成をもたらす抗体の近くにおいて適切な基質、例えば、化学発光基質の感作試薬への変換を触媒する。特に、これに関連して用いられる強化された化学発光が、微量の標識分子の検出を可能にする。
「放射性標識」という用語は、好ましくは放射性同位元素によって構成された放射線を放出する標識に関係がある。標識に関連する「放射性同位元素」という用語は、当業者には既知の任意のそのような要素に関係がある。より好ましくは、この用語は、3H、14C、32P、33P、35S又は125Iに関係がある。
「化学発光標識」という用語は、化学反応の結果として制限された熱放射を伴う光(ルミネセンス)を発することができる標識に関係がある。好ましくは、この用語は、ルミノール、サイリューム、塩化オキサリル、TMAE(テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン)、ピロガロール、ルシゲニン、アクリジニウムエステル又はジオキセタンに関係がある。
「生物発光標識」という用語は、生化学反応により光を発することができる標識に関係がある。典型的には、この用語は、ルシフェリン及びルシフェラーゼの反応による光の生成を意味する。そのような反応スキームでは、ルシフェラーゼが光及び不活性オキシルシフェリンをもたらすルシフェリンの酸化を触媒する。例えば、本発明に係る抗体は、ルシフェラーゼに結合され得る。代替として、抗体は、ルシフェリンでも標識される。ルシフェリン及びルシフェラーゼと酸素のような補因子とは、単一発光タンパク質を形成するために結合され得る。この分子は、本発明に係る抗体に結合される。光の放射は、特定の化合物、例えば、特定の型のイオン、好ましくはカルシウムが存在するとトリガされる。本発明に関連して用いられるルシフェリンの例は、バクテリアルシフェリン、ジノフラゲラートルシフェリン、ヴァルグリン、セレンテラジン及びホタルルシフェリンを含んでいる。
「蛍光標識」という用語は、蛍光色素分子の化学反応性誘導体に関係がある。典型的に広く知られている反応基は、FITC及びTRITC(フルオレセイン及びローダミンの誘導体)のようなアミン反応性イソチオシアネート誘導体、NHS−フルオレセインのようなアミン反応性スクシンイミジルエステル及びフルオレセイン−5−マレイミドのようなスルフヒドリル反応性マレイミド活性化蛍光体を含んでいる。本発明によれば、当業者には既知の任意の適切な蛍光標識が用いられる。好ましくは、蛍光標識のFITC、フルオレセイン、フルオレセイン−5−EX、5−SFX、ロ−ダミングリーン−X、BodipyFL−X、Cy2、Cy2−Osu、Fluor X、Bodipy TMR−X、ローダミン、ローダミンレッド−X、テキサスレッド、テキサスレッド−X、Bodipy TR〜X、Cy3.5−Osu、Alexa Fluor、Dylight Fluor及び/又はCy5.5−Osuが用いられる。本発明のより好ましい実施の形態では、蛍光標識の6〜FAM、HEX、TET、ROX、Cy3、Cy3−Osu、Cy5、Cy5−Osu、テキサスレッド又はローダミンが用いられる。
代替として、抗体は、また、蛍光ポリペプチド、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び当業者には既知のその誘導体で標識される又はそれらと結合する。
これらの標識は、個々に又は任意の組み合わせのグループで用いられる。更に他の観点では、本発明は、本明細書において上記に定義された抗体又はそのフラグメントをコードする核酸分子に関係がある。本発明は、また、例えば本明細書において上記に定義された厳しい又は低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件下において抗体をコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を含んでいる。好ましくは、そのようなハイブリダイズする分子によりコードされる抗体は、PDE4Dタンパク質、より好ましくはSEQ ID NO:2のプリペプチドに又は例えば本明細書において上述したそれに含まれるエピトープに特異的に結合する。
代替として、抗体をコードするポリヌクレオチドは、好適なソースからの核酸から生成される。
本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上記に定義された抗体又はそのフラグメントをコードする核酸分子が、組み換え抗体発現に用いられる。好ましくは、そのような発現ベクタは、抗体をコードする配列と適切な転写及び翻訳制御シグナルとを含んでいる。上記ベクタは、可変重鎖、可変軽鎖又は両方のためのコード配列を有している。そのようなベクタは、また、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでいる。
好ましい実施の形態では、哺乳類細胞、より好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が、ヒトサイトメガロウィルス由来の主要中間体の初期遺伝子のプロモータ要素のようなベクタと共に、抗体のための効果的な発現系として用いられる。細菌系では、発現する抗体分子を対象とした使用に依存して幾つかの発現ベクタが有利に選択される。
他の実施の形態では、本発明は、本明細書において上記に定義された抗体又はそのフラグメントを製造する細胞に関係がある。そのような細胞は、本明細書において上記に定義されたハイブリドーマ細胞又は本発明に係る抗体をコードする核酸分子を発現させる細胞であり得る。核酸分子を安定的に発現させる細胞又は細胞株が特に好ましい。
本発明の核酸分子が製造される、合成される又は組み換え技術によって発現すると、該核酸分子は、免疫グロブリン分子の精製に関して当該分野において既知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、好ましくはプロテインAの後の特異抗原に対する親和性による親和性、サイジングカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、示差溶解度又は当業者には既知のタンパク質の精製についての任意の他の標準的な技術によって精製される。
更に、本発明の抗体又はそのフラグメントは、例えば、抗体の精製を容易にするため又は抗体に標的手段を与えるために任意の異種ポリペプチド配列と融合する。細胞障害性異種タンパク質又は分子、例えば、毒素等との融合もまた想定される。対応する例及び技術は、当業者には既知である。
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記組成物、例えば、診断用組成物は、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体、好ましくは、本明細書において上記に定義された一本鎖抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、一本鎖Fvフラグメント(sc(Fv))、sc(Fv)2抗体、モノクローナルPDE4D7特異抗体に基づくFabフラグメント若しくはF(ab´)2フラグメント、小モジュラー免疫医薬品(SMIP)、結合領域免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体又はVHH含有抗体等のようなモノクローナル又はポリクローナル抗体の変異体又はフラグメントを有しているか又は追加として有している。本発明の具体的な実施の形態では、NB300−652(Novus Biologicals社)又はGTX14629(GeneTex社)のような市販の抗PDE4D7抗体が、上記組成物に含まれているか又は診断上で用いられる。
本明細書において上述した親和性リガンドは、検出、視覚化及び/又は定量化を可能にするために、種々のマーカーで標識されるか又は種々のマーカーで標識された二次(secondary)親和性リガンドにより検出される。これは、当業者には既知の任意の適切な技術又は方法を用いて、PDE4D7発現産物若しくはPDE4D7タンパク質と相互作用することが可能な親和性リガンドに又は任意の二次親和性リガンドに結合する任意の適切な標識を用いることにより達成される。「二次親和性リガンド」という用語は、本明細書において上記に定義された親和性リガンドと結合することができる分子を意味する(すなわち、2つの相互作用する親和性リガンドの系に関して用いられる場合は「一次親和性リガンド」)。上記結合相互作用は、好ましくは特異的な結合である。
一次的及び/又は二次的親和性リガンドに結合する標識の例は、蛍光色素又は金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団色素(chromophoric dye)(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミノール、イミダゾール)及び生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)を含んでいる。
特に好ましい実施の形態では、プローブとして、特に本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物に対して特異的なプローブとして用いられる親和性リガンドは、6−FAM、HEX、TET、ROX、Cy3、Cy5、テキサスレッド又はローダミンのような蛍光標識で及び/又は同時にTAMRA、ダブシル、ブラックホールクエンチャ、BQH−1又はBQH−2のようなで消光標識で標識される。種々の他の有用な蛍光体及び発色団は、Stryer,1968,Science,162:526〜533に述べられている。親和性リガンドは、また、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、11C、13N、15O、18F、64Cu、62Cu、124I、76Br、82Rb、68Ga又は18F)又は粒子(例えば、金)でも標識される。
様々なタイプの標識が、種々の化学的性質を用いて、例えば、アミン反応又はチオール反応を使用して親和性リガンドに結合する。しかしながら、アミン及びチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸及びグルタミンも用いられ得る。
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドは、造影剤として機能するために修飾される。本明細書において用いられる「造影剤」という用語は、PDE4D7マーカーと特異的に相互作用することができ、ヒト又は動物の体外に位置する装置により検出される分子化合物を意味する。好ましくは、そのような造影剤は、画像化技術、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)又は磁気光子映像法(MPI)での使用に適している。「特異的に相互作用する」という用語は、ヒト又は動物の体内に存在する細胞の細胞表面でそのような細胞により発現する他のタンパク質よりもPDE4D7マーカーと優先的に相互作用する分子化合物の性質を意味する。造影剤組成物とも呼ばれる好ましい造影剤は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列若しくはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を持つ分子又は本明細書において上記に定義されたその誘導体若しくは相同変異体を特異的に検出することができる。好ましい造影剤は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物若しくはPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ及び本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体であるか、又は上記アプタマに関連若しくは関係している。
造影剤は、PDE4D7マーカーを特異的に認識することができる当該造影剤の性質の他に、典型的には、用いられる特異的検出技術により検出可能である更なる分子を更に有している。従って、本明細書において用いられる「機能するために修飾される」という用語は、画像化方法、特にMRI又はMPIにおける造影剤の使用を可能にするために必要な当業者には既知の任意の適切な修飾を意味する。例えば、検出手段として蛍光分光法が用いられる場合、そのような分子は、特定の波長において励起する検出可能なマーカー分子として蛍光色素分子を有する。代替として、放射性標識、例えば、本明細書において上述した放射性同位元素が使用される。MRIに好適である本発明に係る好ましい造影剤に関して、上述した抗体のような造影剤は、MRIによって検出可能なマーカー分子を有する。そのような検出可能な標識は、例えば、USPIOS及び19Fluorを含んでいる。
本発明の具体的な実施の形態では、組成物は、更に、PCRバッファ、dNTP、ポリメラーゼ、二価のカチオン又は一価のカチオンのようなイオン、ハイブリダイゼーション溶液、二次抗体のような二次的親和性リガンド、検出色素及び当業者には既知の本明細書において上記に定義された親和性リガンド又は造影剤のいずれかに基づいて検出を行うために必要な任意の他の適切な化合物又は液体を有している。
他の観点では、本発明は、本明細書において上述した悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行又は悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向を個別に診断、検出、監視又は予知するための組成物の生成のための、本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物又はタンパク質に対する核酸又はペプチド親和性リガンドの使用に関係がある。
好ましい実施の形態では、本発明は、本明細書において上述した悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行又は悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向を個別に診断、検出、監視又は予知するための組成物の生成のための、本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット及び/又はPDE4D7発現産物に対して特異的なプローブの使用に関係がある。他の好ましい実施の形態では、本発明は、本明細書において上述した悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行又は悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向を個別に診断、検出、監視又は予知するための組成物の生成のための、本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマの使用に関係がある。
更なる実施の形態では、本発明は、本明細書において上記に定義されたがん、がんの進行又はがんについての傾向を個別に診断、検出、監視又は予知するための組成物の生成のための、本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の使用に関係がある。
本発明の好ましい実施の形態では、本明細書において上記に定義された組成物は、診断用組成物である。
更に他の実施の形態では、本発明は、がんの治療用の組成物の生成のための本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の使用に関係がある。
他の観点では、本発明は、がんを検出、診断、監視若しくは予知するため又はがんの治療のためのPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の使用に関係がある。本発明の好ましい実施の形態では、本明細書において上述した抗体は、前立腺がんを検出、診断、監視若しくは予知するため又は前立腺がんの治療のために用いられる。更により好ましい実施の形態では、本明細書において説明されている抗体が、悪性のホルモン感受性前立腺がんを検出、診断、監視若しくは予知するため又は悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療のために用いられる。
他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん、悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行又は悪性のホルモン感受性前立腺がんについての傾向を検出、診断、監視又は予知する診断キットに関係があり、この診断キットは、PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット、PDE4D7発現産物に対して特異的なプローブ、PDE4D7発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマ及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及びPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体を有する。
典型的には、本発明の診断キットは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の特異的検出を可能にする1つ又はそれ以上の物質を含んでいる。本発明によれば、診断キットの上記物質又は成分は、1つ又はそれ以上の容器又は別個の物(entity)に含まれている。上記物質の性質は、当該キットが目的とする検出の方法により決定される。PDE4D7のmRNA発現レベルにおける、すなわち、PDE4D7発現産物を介した検出が意図される場合、含まれる物質は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット及び/又はPDE4D7発現産物に対して特異的なプローブであり、これらは、当該技術分野において既知の方法に従って、例えば、本明細書において上述した標識でオプションで標識される。更に又は代替として、PDE4D7発現産物に対して特異的なアプタマが含まれていてもよい。PDE4D7のタンパク質レベルにおける検出が意図される場合には、含まれる物質は、本明細書において上述した1つ又はそれ以上の抗体又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体若しくは抗体変異体の抗原結合フラグメントを含む化合物である。更に又は代替として、PDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマが含まれていてもよい。代替として、診断キットは、本明細書において上記に定義された造影剤を含んでいてもよい。
特異的タンパク質の存在は、また、PDE4D7と特異的に相互作用する他の化合物、例えば、特異的基質又はリガンドを用いても検出され得る。
好ましくは、本発明の診断キットは、PDE4D7発現産物又はPDE4D7タンパク質用の検出試薬を含んでいる。そのような検出試薬は、例えば、緩衝液、標識又は洗浄剤を有している。更に、上記キットは、該キットのキャリブレーションに又は内部制御用として用いられるある量の既知の核酸分子又はタンパク質を有している。典型的には、PDE4D7発現産物の検出のためのキットは、PCRバッファ、dNTP、ポリメラーゼ、二価のカチオン又は一価のカチオンのようなイオン、ハイブリダイゼーション溶液等のような副成分を有している。PDE4D7タンパク質の検出のためのキットもまた、二次親和性リガンド、例えば、二次抗体、検出色素及び当業者には既知のタンパク質の検出を行うために必要な任意の他の適切な化合物又は液体のような副成分を有している。そのような成分は、当業者には既知であり、行われる検出方法に依存して異なる。更に、上記キットは、使用説明書を有していてもよい及び/又は得られた結果の妥当性についての情報を与えてもよい。
他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を、例えば個別に、検出、診断、監視又は予知する方法であって、少なくとも試料中のPDE4D7のレベルを決定するステップを有する当該方法に関係がある。「PDE4D7のレベルを決定する」という用語は、PDE4D7発現産物、例えば、PDE4D7の転写産物の存在又は量の決定及び/又はPDE4D7タンパク質の存在及び/又は量の決定を意味する。従って、「PDE4D7のレベル」という用語は、PDE4D7発現産物、例えば、PDE4D7の転写産物の存在又は量の決定及び/又はPDE4D7タンパク質の存在又は量の決定を意味する。PDE4D7発現産物、例えば、PDE4D7の転写産物又はPDE4D7タンパク質の存在又は量の決定は、当該技術分野において既知の任意の手段により達成される。
本発明の好ましい実施の形態では、PDE4D7発現産物、例えば、PDE4D7の転写産物及び/又はPDE4D7タンパク質の存在又は量の決定は、核酸若しくはタンパク質レベルの測定により又はPDE4D7の生物学的活性の決定により達成される。従って、PDE4D7の発現レベルは、PDE4D7遺伝子によってコードされたmRNAの検出、PDE4D7の転写産物によりコードされたPDE4D7タンパク質の検出及び/又はPDE4D7タンパク質の生物学的活性の検出を伴う方法によって決定され得る。
例えば、核酸レベルのPDE4D7発現の測定は、その後本明細書において上記に定義されたPDE4D7特異性オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズするアガロース又はポリアクリルアミドゲル中の試料から得られる核酸分子(例えば、RNA又はcDNA)の分離により評価される。代替として、上記発現レベルは、その後配列を決定したゲル上において分離される試料から得られる核酸の標識化によって決定される。核酸試料は、患者とコントロール又はスタンダード核酸とが隣接するレーンに存在するようにゲル上に配される。発現レベルの比較は、視覚的に又は濃度計(densitometer)を用いて達成される。mRNA又は発現産物の検出方法は、当業者には既知である。典型的には、ノーザンブロット解析がそのような目的のために用いられる。
代替として、核酸レベルのPDE4D7発現は、DNAアレイ又はマイクロアレイ法で検出される。典型的には、検査される被験体に由来する試料の核酸が、処理され、好ましくは蛍光標識で標識される。次いで、そのような核酸分子が、本発明のPDE4D7マーカー遺伝子、既知のバイオマーカー又はがんマーカー遺伝子に対応する固定化捕捉プローブとのハイブリダイゼーションの手法において用いられる。マイクロアレイ解析を行う好適な手段は、当業者には既知である。
標準的なセットアップでは、DNAアレイ又はマイクロアレイは、多数の遺伝子を検出するために固定化された高密度プローブを有している。上記アレイ上のプローブは、マーカー遺伝子の配列の1つ若しくはそれ以上の部分に又はマーカー遺伝子のコーディング領域全体に相補的である。本発明では、ポリヌクレオチドがPDE4D7発現と他の遺伝子の発現との特異的な違いを可能にする限り、任意のタイプのPDE4D7に関連したポリヌクレオチドがDNAアレイ用のプローブとして用いられ得る。典型的には、cDNA、PCR産物及びオリゴヌクレオチドがプローブとして有用である。好ましくは、PDE4D7のスプライス変異体7の特定の部分を含むプローブが、プローブとして用いられる。PDE4D7発現の決定に加えて、他の遺伝子、例えば、追加のバイオマーカー又はがんマーカー遺伝子の発現の決定もまた達成され得る。
DNAアレイ又はマイクロアレイを用いた検出方法は、典型的には、以下のステップを有している。すなわち、(1)mRNAを試料から分離し、オプションで該mRNAをcDNAに変換し、その後、このRNA又はcDNAを標識するステップ。RNAを分離する方法、RNAをcDNAに変換する方法及び核酸を標識する方法は、マイクロアレイ技術に関するマニュアルに説明されている。(2)ステップ1からの核酸をマーカー遺伝子に関するプローブとハイブリダイズするステップ。試料からの核酸は、蛍光色素Cy3(赤)又はCy5(青)のような色素で標識されている。一般に、対照試料は異なる色素で標識される。(3)試料からの核酸のプローブとのハイブリダイゼーションを検出し、調べられるPDE4D7及び/又は追加のマーカー遺伝子についての試料中のmRNAの量を少なくとも定性的に、より詳細には定量的に決定するステップ。試料と対照試料との発現レベルの差は、シグナル強度の差に基づいて推定される。これらは、例えばアフィメトリクスにより与えられるソフトウェア(しかしながら、これに限定されない。)のような適切なソフトウェアによって測定及び解析される。
DNAアレイにスポットされる、用いられるマーカー遺伝子に対応するプローブの数に制限はない。また、マーカー遺伝子は、遺伝子の様々な部分にハイブリダイズする2つ又はそれ以上のプローブによって表される。プローブは、選択されるマーカー遺伝子それぞれについて設計される。そのようなプローブは、典型的には、5ないし50ヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドである。より長いDNAは、PCRにより又は化学的に合成される。そのようなオリゴヌクレオチドを合成し、それらを基板上に塗布する方法は、マイクロアレイの分野においてよく知られている。マーカー遺伝子以外の他の遺伝子もまたDNAアレイにスポットされる。例えば、分析結果を標準化するため又は複数のアレイの分析結果若しくは様々な分析を比較するために、発現レベルが著しく変化しない遺伝子に関するプローブがDNAアレイにスポットされる。
代替として、核酸レベルのPDE4D7発現は、定量RT−PCR法で、好ましくは、PDE4D7mRNA転写産物の逆転写後のリアルタイムPCR法で検出される。典型的には、第1のステップとして、当業者には既知の任意の適切な方法に従って、転写産物がcDNA分子に逆転写される。次いで、上述したように得られる第1のDNA鎖に基づいて、定量又はリアルタイムPCR法が行われる。
好ましくは、このタイプの主なFREDベースのプローブとしてタックマン(Taqman)又は分子ビーコン(Molecular Beacon)プローブが定量PCRの検出に用いられる。両方のケースにおいて、プローブ、好ましくは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7プローブは、関心のある標的領域、好ましくは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7オリゴヌクレオチドのセットに隣接する対向プライマのペアとともに用いられる内部プローブとしての役割を果たす。標的セグメントが増幅すると、プローブはプライマ部位の間の識別配列における生成物に選択的に結合し、それによって、標的の周波数の増加に対するFRETのシグナル伝達の増加が引き起こされる。
好ましくは、本発明に係る定量PCR法に用いられるタックマンプローブは、両末端に関してFRETのペアで標識された約22ないし30塩基の上記に定義されたPDE4D7オリゴヌクレオチドを有している。典型的には、5´末端はフルオレセインのようなより短い波長の蛍光色素分子(例えば、FAM)を有し、3´末端は、一般に、より長い波長の蛍光消光剤(例えば、TAMRA)又は非蛍光消光剤化合物(例えば、ブラックホールクエンチャ)で標識されている。定量PCR法に用いられるプローブ、特に、本明細書において上記に定義されたPDE4D7プローブは、プローブが分解された後にレポータフルオレセインの消光を避けるために、レポータ色素に隣接する5´末端にグアニン(G)を有していないことが好ましい。
本発明に係る定量PCR法に用いられる分子ビーコンプローブは、好ましくは、各プローブが5´蛍光標識末端及び3´クエンチャ標識末端を有する状態で、PCR産物を検出し、定量化するためにFRETの相互作用を用いる。上記プローブの構造のこのヘアピン又はステムループの形態は、好ましくは、2つの短い自己結合末端を持つステムと約20ないし30塩基の長い内部ターゲット特異的領域を持つループとを有する。
本発明に関して同様に使用され得る代替の検出メカニズムは、ループ構造のみを伴い、短い相補的ステム領域を伴うことなく作られたプローブに向けられる。本発明に関して同様に使用され得る代替のFRETベースの手法は、第1のプローブが3´末端において蛍光ドナー標識を持ち、第2のプローブは5´末端において蛍光アクセプタ標識を持つターゲット上の隣接する部位に結合する2つのハイブリダイゼーションプローブの使用に基づくものである。
PDE4D7タンパク質又は任意のフラグメント、相同体若しくはその誘導体のタンパク質レベルの測定は、当該技術分野において既知の任意の適切な検出技術によって行われる。好ましくは、PDE4D7及びその誘導体のタンパク質レベルは、例えば、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体、好ましくは、本明細書において上記に定義された抗体を用いることにより免疫学的に決定される。代替として、本明細書において上記に定義された抗体変異体又はフラグメントが用いられる。本発明は、また、本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマのようなペプチド親和性リガンドの使用も想定している。
PDE4D7タンパク質のタンパク質レベルの決定は、例えば、ポリアクリルアミドゲル上における試料からのタンパク質の分離、その後のウェスタンブロット解析における特異的に結合する抗体を用いたPDE4D7タンパク質の確認により達成される。代替として、タンパク質は、二次元ゲル電気泳動システムにより分離される。二次元ゲル電気泳動は、当該技術分野においてよく知られており、典型的には1次元目の等電点電気泳動と2次元目のSDS−PAGEとを含んでいる。二次元SDS−PAGEのゲルの解析は、ゲル上のタンパク質スポットの強度を決定することにより行われるか、又は免疫検出を用いて行われる。他の実施の形態では、タンパク質試料が質量分析により解析される。
本発明に関する中では、PDE4D7特異抗体は、支持体上に配され、固定化される。次いで、分析される試料又は組織に由来するタンパク質が抗体と混合される。その後、例えば、本明細書において上記に定義された二次親和性リガンド、好ましくは、特異抗体を用いて、検出反応が行われる。
本発明に関して、特に本発明の診断の目的のために用いられる免疫学的検査は、例えば、ウェスタンブロット、RIA(radio-linked immunoassay)のような放射免疫測定法、ELIZA(enzyme linked immunosorbent assay)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降測定法、沈降素反応、ゲル内拡散沈降素反応、免疫拡散測定法、凝集アッセイ、例えばラテックス凝集、補体結合測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、例えばFIA(fluorescence-linked immunoassay)、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)及びプロテインA免疫測定のような技術を用いる競合及び非競合測定系を含んでいる。そのような測定法は、ルーチンであり、当業者にはよく知られている。
また、抗原に対する抗体の結合親和性及び抗体−抗原の相互作用のオフレートは、競合的結合測定により決定される。競合的結合測定の一例は、増加した量の非標識抗原の存在下における好適な抗体との標識抗原(例えば、3H又は125I)の培養及び標識抗原に結合した抗体の検出を有する放射免疫測定である。特定の抗原について関心のある抗体の親和性及び結合オフレートは、任意の適切な解析手法による、例えば、スキャッチャードプロット解析によるデータから決定される。第2の抗体との競合もまた放射免疫測定を用いて決定され得る。このケースでは、抗原は、増加した量の標識されていない第2の抗原の存在下において、標識化合物(例えば、3H又は125I)に結合する適切な抗体と培養される。
更に、PDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、好ましくは本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマがPDE4D7タンパク質を検出する方法において用いられる。そのようなアプタマは、好ましくは、タンパク質−リガンドの相互作用の検出を可能にするために標識される。
PDE4D7の生物学的活性の決定は、PDE4D7の対応する機能に対して特異的な分子又は酵素の検定を使用することにより行われる。好ましくは、ホスホジエステラーゼによるcAMPの変換に基づく読み出しシステムが用いられる。好適な技術は、当業者には既知である。更に好ましい実施の形態では、PDE4D7の生物学的活性の決定のための検定は、他のPDE4Dスプライス変異体、他のPDE4アイソフォーム及び/又は他のPDE、好ましくはcAMPの変換を行うことができる他のPDEの活性阻害と組み合わせて用いられる。そのような活性阻害は、当業者には既知の任意の適切な手段によって、好ましくは、適切なアンチセンスヌクレオチド、siRNA分子又はmiRNA分子の使用を介して、より好ましくは、アンチセンスヌクレオチド、特異的siRNA分子又はmiRNA分子を特異的にハイブリダイズすることにより行われる。
更なる好ましい実施の形態では、PDE4D7の生物学的活性は、特異的PDE4D7阻害剤を活用して調べられる。そのような阻害剤の使用は、例えば、cAMPの基質の変換に基づいて読み出しシステムと組み合わせられる。典型的には、用いられるPDE4D7阻害剤は、アンチセンス分子、siRNA分子又はmiRNA分子を有している。
PDE4D7のレベルは、また、組織学的又は細胞生物学的処置を伴う方法でも検出される。典型的には、光学顕微鏡法、免疫蛍光法又は紫外線鏡検法のような視覚的技術及びフローサイトメトリ又はルミノメトリが用いられる。細胞中のPDE4D7タンパク質の存在は、例えば、本明細書において上記に定義された試料から検査される細胞を取り除くことにより検出又は決定される。また、組織切片又は生検試料も上記方法のために用いられる。その後、PDE4Dに対する親和性リガンド、好ましくは抗体又はアプタマが塗布される。典型的には、そのような親和性リガンドは、好ましくは本明細書において上記に定義された蛍光標識で標識される。そのような手続きは、定量化のためにPDE4D7の検出を可能にし、更に、PDE4D7の発現の分布及び相対的なレベルを決定することを可能にする。
そのような手続きは、視覚化方法の使用を伴う。好適な視覚化方法は、当業者には既知である。用いられる典型的な方法は、蛍光分析、発光分析(luminometric)又は酵素技術を有する。蛍光は、一般に、特定の波長の光に蛍光標識を曝し、その後、放出される特定の波長の光を検出及び/又は定量化することにより検出及び/又は定量化される。発光標識された親和性リガンドの存在は、化学反応中に生じる発光により検出及び/又は定量化される。酵素反応の検出は、化学反応から起きる試料中の色ずれのためである。
更なる好ましい実施の形態では、PDE4D7のレベルは、適切な分子画像化技術、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)又は磁気光子映像法(MPI)により及び/又は適切な造影剤、例えば、本明細書において上記に定義された造影剤を用いて決定される。
更なる好ましい実施の形態では、本発明の悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を検出、診断、監視又は予知する方法は、測定された核酸若しくはタンパク質のレベル又は測定された生物学的活性を対照レベルと比較する追加のステップを有している。本明細書において用いられる「対照レベル」という用語は、本明細書において上記に定義された正常の対照又は癌性の対照におけるPDE4D7マーカー又は他の適切なマーカーの発現を意味する。対照レベルの状態、性質、量及び条件は、必要に応じて調節される。好ましくは、健康な又は良性の対照レベルが用いられる。本明細書において用いられる「比較する」という用語は、データを評価(assess)、計算、検討(evaluate)又は処理する任意の適切な方法を意味する。
更に他の実施の形態では、更なる追加のステップとして、がんの存在若しくは病期又はがんの進行に関する決定が上記比較ステップの結果に基づいて存在する。悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとしてのPDE4D7に関して本明細書において上記に与えられた対応する定義に従う上記方法で、悪性のホルモン感受性前立腺がんが診断若しくは予知されるか、又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行が診断若しくは予知される。
他の実施の形態では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を検出、診断、監視又は予知する方法であって、少なくとも、
(a)悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っている疑いがある少なくとも1つの個体から得られる少なくとも1つの試料中のPDE4D7発現産物又はPDE4D7タンパク質の発現を検査するステップと、
(b)悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っていない少なくとも1つの個体から得られる少なくとも1つの対照試料中のPDE4D7発現産物又はPDE4D7タンパク質の発現を検査するステップと、
(c)ステップ(a)とステップ(b)との上記発現の差を決定するステップと、
(d)ステップ(c)において得られた結果に基づいて、悪性のホルモン感受性前立腺がんの存在若しくは病期又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を判断するステップと
を有する当該方法に関係がある。
一実施の形態では、診断のこの方法のステップa)、b)、c)及び/又はd)は、ヒト又は動物の体外において、例えば、患者又は個体から得られた試料中で行われる。
他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、監視又は予知する方法であって、良性及び悪性のホルモン感受性前立腺がんを区別し、
(a)PDE4D7のレベルを決定するステップと、
(b)試料中の参照遺伝子の発現のレベルを決定するステップと、
(c)測定されたPDE4D7の発現レベルを上記参照遺伝子の発現に標準化するステップと、
(d)標準化された上記発現レベルを良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較するステップであって、上記カットオフ値を上回る標準化発現レベルは、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、上記カットオフ値は約−2から+2の間、好ましくは約0である当該ステップと
を有する当該方法に関係がある。
上記PDE4D7のレベルは、本明細書において上述した核酸、タンパク質又は活性レベルに基づいて決定される。PDE4D7転写産物及び/又はタンパク質の量の決定が好ましい。更に、試料中のハウスキーピング遺伝子のレベルが決定され得る。
本明細書において用いられる「参照遺伝子」という用語は、任意の適切な遺伝子、例えば、最適な生物中の任意の安定に発現し、連続的に検出可能な遺伝子、遺伝子産物、発現産物、タンパク質又はタンパク質変異体を意味する。この用語は、また、発現タンパク質、ペプチド、ポリペプチドのような遺伝子産物及びその修飾変異体も含んでいる。従って、本発明は、参照遺伝子に由来する参照タンパク質も含んでいる。また、参照遺伝子から導き出せる全ての種類の転写産物及びその修飾体又はそれに関連がある二次パラメータも含まれる。代替又は追加として、他の参照パラメータ、例えば、代謝濃度、細胞の大きさ等も参照の目的のために用いられ得る。
上記発現は、好ましくは同じ試料中で行われる。すなわち、PDE4D7のレベル及び参照遺伝子のレベルは、同じ試料中で決定される。検査が同じ試料中で行われる場合、本明細書において説明される単一検出又は多重検出法が行われ得る。好ましくは、多重検出の場合、SEQ ID NO:10,11及び12の配列を持つオリゴヌクレオチド及びプローブが用いられる。多重検出を行う場合、プライマ及び/又はプローブオリゴヌクレオチドの濃度は、変更され得る。また、緩衝液、イオン等のような更なる成分の濃度及び存在が変更、例えば、製造元の表示と比較して増加又は減少され得る。
本発明の具体的な実施の形態では、1つよりも多い参照遺伝子又は安定に発現する遺伝子の発現が決定される。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30又はそれよりも多くの参照遺伝子の発現が決定される。そのような測定の結果は、平均発現指数を得るために組み合わせられるか又は個別に計算される。また、参照遺伝子の発現パターンが、その後のステップの基準として決定される及び/又は用いられる。そのようなパターンは、あるがん、特に前立腺がんの病期又は状態における遺伝子の既知の発現挙動に基づくものである。
更に、発現の結果は、参照症例又はデータベースからの既に知られている結果と比較される。この比較は、結果の統計的な妥当性を向上させるために標準化手順を更に含んでいてもよい。
本発明の代替の実施の形態では、試料中の参照遺伝子の発現のレベルを決定する代わりに、更なるがんマーカー又は非安定的に発現する遺伝子の発現が決定される。例えば、ホルモン抵抗性前立腺がんの間減少することが知られている又はホルモン感受性前立腺がんの間増加することが知られている遺伝子の発現が決定される。
更なる実施の形態では、両方の遺伝子発現もまた行われる。すなわち、参照遺伝子の発現の決定と更なるがん又はバイオマーカー遺伝子の発現の決定とが行われる。
発現の結果は、当業者には既知の任意の適切な方法に従って、例えば、スタンダードスコア、スチューデントT−検定、スチューデント化残差検定、標準化積率(moment)検定又は係数変動検定のような標準化の統計的方法に従って標準化される。典型的には、当業者には既知のそのような検定又は対応する式が、遺伝子発現レベルの真のばらつきと測定プロセスによるばらつきとの差別化を可能にするよう発現データを標準化するために用いられる。
ステップ(a)及び(b)において得られる発現の結果及び/又はステップ(c)において得られる標準化された結果に基づいて、PDE4D7についてのカットオフ値との比較が行われる。それよりも大きいとPDE4D7の発現レベルは悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、それにより良性の前立腺腫瘍の形態又は健康な状態若しくは健康な組織の形態を排除するカットオフ値は、約−3から+3、−3から+2.75、−3から+2.5、−3から+2.25、−3から+2、−3から+1.75、−3から+1.5、−3から+1.25、−3から+1、−3から+0.75、−3から+0.5、−3から+0.25、−3から0、−2.75から+3、−2.5から+3、−2.25から+3、−2から+3、−1.75から+3、−1.5から+3、−1.25から+3、−1から+3、−0.75から+3、−0.5から+3、−0.25から+3又は0から+3の間である。約0のカットオフ値、例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1又は−0.9、−0.8、−0.7、−0.6、−0.5、−0.4、−0.3、−0.2、−0.1のカットオフ値がより好ましい。特に好ましい実施の形態では、上記カットオフは、参照遺伝子としての異なるホスホジエステラーゼとともに用いられることになる。更により好ましくは、上記カットオフは、参照遺伝子としてのPDE4D5とともに用いられることになる。
本発明の好ましい実施の形態では、上記カットオフ値は、血液試料、例えば、血清又は血漿試料、尿試料又は尿沈渣試料中のPDE4D7についてのカットオフ値である。本発明の特に好ましい実施の形態では、尿試料中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質若しくはポリペプチド又はその誘導体についてのカットオフ値である。本発明の他の特に好ましい実施の形態では、上記カットオフ値は、尿に含まれる細胞から分泌される尿又はエキソソームに含まれる細胞中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質若しくはポリペプチド又はその誘導体についてのカットオフ値である。本発明の更により好ましい実施の形態では、上記カットオフ値は、尿沈渣試料中及び尿沈渣試料中に含まれる細胞中又は尿沈渣試料中に含まれる細胞から分泌されるエキソソーム中の本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質若しくはポリペプチド又はその誘導体についてのカットオフ値である。
上記測定された及び/又は標準化されたPDE4D7の発現が示されたカットオフ値よりも小さい場合、これは、個体が良性の腫瘍に対して健康であること又は単に良性の前立腺腫瘍を患っており、悪性のホルモン感受性前立腺がんを患ってはいないことを示すものと見なされる。
他の観点では、本発明は、少なくとも
(a)個体中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)ステップ(a)において決定された上記発現を対照レベルと比較するステップと
を有するデータ収集の方法に関係がある。
上記PDE4D7の発現の検査は、上記に定義されたステップに従って行われる。好ましくは、上記検査は、PDE4D7の核酸若しくはタンパク質レベルの測定として又はPDE4D7の生物学的活性を決定することにより行われ、より好ましくは、そのような測定についての本明細書において上述した選択肢によって行われる。検査は、個体内で、すなわち生体内で行われるか又は個体外で、すなわち生体外又は生体内で行われる。データ収集の方法に関連して用いられる「対照レベル」という用語は、本明細書において上記に定義された正常な対照又は癌性の対照におけるPDE4D7マーカー又は他の適切なマーカーの発現を意味する。対照レベルの状態、性質、量及び条件は、必要に応じて調節される。好ましくは、正常な、健康な対照レベルが用いられる。対照レベルとの発現の比較は、データを評価、計算、検討又は処理する任意の適切な方法に従って行われ、特に、2つのデータセット間の差の検出を目的としている。この差の有意性の統計学的評価が更に行われ得る。好適な統計学的方法は、当業者には既知である。得られるデータ及び情報は、1つ又はそれ以上のその後の推論又は結論のステップのために専門家がデータを使用することを可能にするため、当業者に既知の適切な情報科学又はコンピュータの手法又はツールによって保存、蓄積又は処理される及び/又は適切なやり方で与えられる。
他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を検出、診断、監視又は予知する免疫学的検定であり、少なくとも
(a)個体から得られた試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)対照試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(c)ステップ(a)とステップ(b)とのPDE4D7の発現の差を決定するステップと、
(d)ステップ(c)において得られた結果に基づいて悪性のホルモン感受性前立腺がんの存在若しくは病期又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を判断するステップと
を有する当該免疫学的検定に関係がある。
この免疫学的検定は、好ましくは、PDE4D7に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書に述べられているPDE4D7抗体の1つ又はそれ以上の使用に基づいている。代替として、上記免疫学的検定は、任意の他の適切な薬剤を用いて行われるか、又は任意の他の適切な薬剤と組み合わせられる。例えば、検定は、核酸の検出又は本明細書に説明される酵素試験方法と組み合わせられる。
更なる観点では、本発明は、良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別する免疫学的検定であって、
(a)試料中のPDE4D7のレベルを決定するステップと、
(b)試料中の参照遺伝子の発現のレベルを決定するステップと、
(c)測定されたPDE4D7の発現レベルを上記参照遺伝子の発現に標準化するステップと、
(d)標準化された上記発現レベルを良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較するステップであって、上記カットオフ値を上回る標準化発現レベルは、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、上記カットオフ値は約〜2から+2の間、好ましくは約0である当該ステップとを有する当該免疫学的検定に関係がある。
上記PDE4D7のレベルは、好ましくは、本明細書において上述したタンパク質又は活性レベルに基づいて決定される。PDE4D7特異抗体、例えば、本明細書に述べられているPDE4D7抗体の1つ又はそれ以上を活用してのPDE4D7タンパク質の量の決定が好ましい。代替として、この免疫学的検定は、任意の他の適切な薬剤を用いて行われるか、又は他の要素の決定と組み合わせられる。例えば、検定は、核酸の存在若しくは量の検出又は本明細書に説明される酵素試験方法と組み合わせられる。
更に、本明細書において上記に定義された参照遺伝子のレベルが決定される。参照遺伝子の検出のために、好ましくは当業者には既知の1つ又はそれ以上の適切な抗体を用いて、遺伝子の発現産物(すなわち、タンパク質)の量が決定される。代替として、参照遺伝子の決定は、任意の他の適切な薬剤を用いて行われるか、又は、核酸の存在若しくは量の検出又は本明細書に説明される酵素試験方法と組み合わせられる。
ステップ(a)及びステップ(b)において得られる発現の結果及び/又はステップ(c)において得られる標準化の結果に基づいて、PDE4D7についてのカットオフ値との比較が行われる。それよりも大きいとPDE4D7の発現レベルは悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、それにより良性の前立腺腫瘍の形態又は健康な状態若しくは健康な組織の形態を排除するカットオフ値は、約−3から+3、−3から+2.75、−3から+2.5、−3から+2.25、−3から+2、−3から+1.75、−3から+1.5、−3から+1.25、−3から+1、−3から+0.75、−3から+0.5、−3から+0.25、−3から0、−2.75から+3、−2.5から+3、−2.25から+3、−2から+3、−1.75から+3、−1.5から+3、−1.25から+3、−1から+3、−0.75から+3、−0.5から+3、−0.25から+3又は0から+3の間である。約0のカットオフ値、例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1又は−0.9、−0.8、−0.7、−0.6、−0.5、−0.4、−0.3、−0.2、−0.1のカットオフ値がより好ましい。特に好ましい実施の形態では、上記カットオフは、参照遺伝子としての異なるホスホジエステラーゼとともに用いられることになる。更により好ましくは、上記カットオフは、参照遺伝子としてのPDE4D5とともに用いられることになる。
上記カットオフ値は、本明細書において以下に説明される血液試料中の、例えば、血清若しくは血漿試料、尿試料又は尿沈渣試料等の中のPDE4D7についてのカットオフ値である。
上記測定された及び/又は標準化されたPDE4D7の発現が、示されたカットオフ値よりも小さい場合、これは、個体が良性の腫瘍に対して健康であること又は単に良性の前立腺腫瘍を患っており、悪性のホルモン感受性前立腺がんを患ってはいないことを示すものと見なされる。上記値は、更に、個体がホルモン抵抗性前立腺がんを患っていることを示し得る。ホルモン抵抗性のがんの存在を調べるため又は排除するために、更なる好適なバイオマーカーのレベル、例えば、PSAのレベルが検査される。ホルモン抵抗性前立腺がんの場合、20ng/mlよりも大きいPSAのレベルが予想されるべきである。
更なる観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療の適格性に関して個体を認定する方法であって、
(a)個体から得られた試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)上記試料中の参照遺伝子の発現を検査する及び/又は対照試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(c)ステップ(b)におけるレベルと比較してステップ(a)の発現のレベルを分類するステップと、
(d)上記個体の試料がPDE4D7の発現の増加したレベルを持つと分類された場合に、上記個体を悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療を受けるに値すると認定するステップと
を有する当該方法に関係がある。
上記PDE4D7のレベルは、本明細書において上述した核酸、タンパク質又は活性レベルに基づいて決定される。PDE4D7転写産物及び/又はタンパク質の量の決定が好ましい。更に、試料中の本明細書において上述した参照遺伝子のレベルが決定される。参照遺伝子の発現の検査は、PDE4D7の決定のために用いられる試料と同じ試料中で行われる。この検査が同じ試料中で行われる場合、単一検出又は多重検出法が行われ得る。好ましくは、多重検出の場合、SEQ ID NO:10,11及び12の配列を持つオリゴヌクレオチド及びプローブが用いられる。多重検出を行う場合、プライマ及び/又はプローブオリゴヌクレオチドの濃度は、変更され得る。また、緩衝液、イオン等のような更なる成分の濃度及び存在が変更、例えば、製造元の表示と比較して増加又は減少され得る。代替として、参照遺伝子の発現の検査は、異なる試料中、好ましくは、本明細書において上記に定義された対照試料中で行われる。好ましくは、そのような対照試料は、検査試料と同じ個体からの対照試料又は異なるソース若しくは個体に由来する対照試料である。対照試料は、更に、同じ組織、例えば前立腺組織に由来にする試料であるか、又は異なる組織のタイプに由来している。好ましい代替の組織のタイプの例は、間質前立腺組織、膀胱上皮組織及び尿道上皮組織である。また、参照遺伝子の発現に関する検査試料の検査及びPDE4D7の発現に関する対照試料の検査は、組み合わせられ得る。
更なる実施の形態では、上記対照試料は、参照遺伝子の発現に関して検査される。参照遺伝子の発現に関して1つよりも多い試料が検査された場合、得られた発現の結果は、当業者には既知の任意の適切な統計学的方法に従って比較及び/又は平均化又は標準化される。
本明細書において用いられる「ステップ(b)におけるレベルと比較してステップ(a)の発現のレベルを分類する」という表現は、例えば適切な標準化の基準に対しての標準化後に、検査試料中のPDE4D7についての発現と対照試料中のPDE4D7についての発現とが比較されることを意味する。比較の結果に応じて、検査試料は、対照試料と同様の発現、対照試料と比較して増加した発現又は対照試料と比較して減少した発現を与えていると示される。この表現は、また、例えば標準化の基準としての更なる遺伝子に対しての標準化後に、検査試料中のPDE4D7についての発現と同じ検査試料中の参照遺伝子についての発現とが比較されることも意味する。比較の結果に応じて、検査試料は、参照遺伝子と同様の発現、参照遺伝子と比較して増加した発現又は参照遺伝子と比較して減少した発現を与えていると示される。
発現の結果の分類に応じて、PDE4D7の発現レベルが増加している場合には、個体は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療に適していると見なされる。検査試料中のPDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇すると、又は、PDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中の参照遺伝子の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は参照遺伝子の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇すると、発現レベルは「増加した」と見なされる。具体的な実施の形態では、参照遺伝子の発現もまた、追加の遺伝子又はマーカー、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して標準化又は調節される。
更なる観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの病気を持つ個体又は個体のコホートを階層化する免疫学的検定であって、
(a)個体から得られた試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)上記試料中の参照遺伝子の発現を検査すること及び/又は対照試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(c)ステップ(a)のPDE4D7の発現とステップ(b)におけるPDE4D7及び/又は参照遺伝子の発現との差を決定するステップと、
(d)上記個体の試料がPDE4D7発現の増加したレベルを持つ場合、ステップ(c)において得られた結果に基づいて、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療に関して個体又は個体のコホートを階層化するステップと
を有する当該免疫学的検定に関係がある。
上記PDE4D7の発現の検査は、好ましくは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質の量の決定又はPDE4D7活性レベルの決定により行われる。PDE4D7特異抗体、例えば、本明細書において述べられたPDE4D7抗体の1つ又はそれ以上を用いたPDE4D7タンパク質の量の決定が好ましい。代替として、この免疫学的検定は、任意の他の適切な薬剤を用いて行われるか、又は他の要素の決定と組み合わされる。例えば、検定は、核酸の存在若しくは量の検出又は本明細書において上述した酵素試験方法と組み合わせられる。更に、試料中の本明細書において上述した参照遺伝子のレベルが決定される。参照遺伝子の発現の検査は、PDE4D7の決定のために用いられる試料と同じ試料中で行われる。この検査が同じ試料中で行われる場合、単一検出法又は並列若しくは多重検出法が行われ得る。好ましくは、並列又は多重検出法の場合、異なって標識された一次又は二次抗体が用いられる。
代替として、上記参照遺伝子の発現の検査は、異なる試料中、好ましくは、本明細書において上記に定義された対照試料中で行われる。好ましくは、そのような対照試料は、検査試料と同じ個体からの対照試料又は異なるソース若しくは個体に由来する対照試料である。対照試料は、更に、同じ組織、好ましくは前立腺組織に由来にする試料であるか、又は異なる組織のタイプに由来している。好ましい代替の組織のタイプの例は、間質前立腺組織、膀胱上皮組織及び尿道上皮組織である。また、参照遺伝子の発現に関する検査試料の検査及びPDE4D7の発現に関する対照試料の検査は、組み合わせられ得る。
更なる実施の形態では、上記対照試料は、また、参照遺伝子の発現に関しても検査される。1つよりも多くの試料が参照遺伝子の発現に関して検査されるケースでは、得られた発現の結果は、当業者には既知の任意の適切な統計学的方法に従って比較及び/又は平均化又は標準化される。
本明細書において用いられる「ステップ(a)のPDE4D7の発現とステップ(b)におけるPDE4D7及び/又は参照遺伝子の発現との差を決定する」という表現は、例えば適切な標準化の基準に対しての標準化後に、検査試料中のPDE4D7についての発現と対照試料中のPDE4D7についての発現とが比較されることを意味する。比較の結果に応じて、検査試料は、対照試料と同様の発現、対照試料と比較して増加した発現又は対照試料と比較して減少した発現を与えていることを示される。この表現は、更に、例えば標準化の基準としての更なる遺伝子に対しての標準化後に、代替又は追加として、検査試料中のPDE4D7についての発現と同じ検査試料中の参照遺伝子についての発現とが比較されることも意味する。比較の結果に応じて、検査試料は、参照遺伝子と同様の発現又は発現の差を与えていることを示される。上記の差は、参照遺伝子と比較して増加した発現又は参照遺伝子と比較して減少した発現である。
本明細書において用いられる「前立腺がんの治療に関して個体又は個体のコホートを階層化する」という表現は、固体が、最適な治療の形態は前立腺がんの治療であり、好ましくは、本明細書において上述した発現検査の結果に応じた、特に、PDE4D7の発現レベルと参照遺伝子の発現レベル又は異なる試料中のPDE4D7の発現レベルとの間に発生する差に応じたホルモン感受性前立腺がんに対する治療である類似した固体のグループに属すると認定されることを意味する。上記発現の差の決定に従って、PDE4D7の発現レベルが増加すると、固体は、最適な治療の形態が悪性のホルモン感受性前立腺がん治療である類似した固体のグループに属すると認定される。検査試料中のPDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇すると、又は、PDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中の参照遺伝子の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は参照遺伝子の上記発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇すると、発現レベルは「増加した」と見なされる。具体的な実施の形態では、参照遺伝子の発現もまた、追加の遺伝子又はマーカー、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して標準化又は調節される。
本明細書において上述した悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療を受けるに値すると見なされた又は悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療に関して階層化された個体は、当業者には既知のこの前立腺がんの状態に対する任意の適切な治療的処置を受けることができる。特に、本明細書において用いられる「悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療」という用語は、当業者に既知の任意の適切な前立腺がんの治療を意味し、好ましくは、男性ホルモンの産生の主な器官としての精巣の摘出による外科的去勢、例えばアンドロゲンの生成の抑制若しくはアンドロゲン受容体の活性阻害による化学的去勢、細胞毒性を有する化学療法、放射線療法(体外照射療法、近接照射療法)、凍結療法、HIFU(高密度焦点式超音波)アブレーションのような部分治療(focal therapy)又は熱焼灼を含んでいる。
典型的には、増加したPDE4D7の発現のために悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療を受けるに値すると見なされた個体は、ホルモン感受性前立腺がんを患っている又は今後、例えば1ないし24か月以内にホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向があると考えられる。それに対応して認定された又は階層化された個体は、例えば本明細書において以下に定義される本発明に係る阻害性医薬組成物を用いて治療され得る。更なる実施の形態では、それに対応して認定された個体は、追加のがん治療と組み合わせて本発明に係る阻害性医薬組成物により治療される。上記「追加のがん治療」という用語は、当業者に既知の任意のタイプのがん治療を意味する。ホルモン抵抗性前立腺がんに対して既知のがん治療の形態が好ましい。この用語は、例えば、化学療法、放射線療法、外科手術、抗体療法等の全ての適切な形態を含んでいる。
代替として、それに対応して認定された又は階層化された個体は、化学療法、放射線療法、外科手術、抗体療法等のような1つ又はそれ以上のがん治療のみによっても治療され得る。前立腺がんに通常用いられるがん治療が好ましく、悪性のホルモン感受性前立腺がんに用いられるがん治療がより好ましい。
本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上述した適格性に関する分類方法又は階層化のための免疫学的検定が、個体、例えば、悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っていると分類された個体の治療を監視するためにも用いられる。監視プロセスは、例えば治療セッション中又は治療セッション後の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10か月又は1、2、3年若しくはそれ以上の間の長期にわたる発現の決定として行われる。上記決定ステップは、適切な間隔で、例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2か月毎、3か月毎、6か月毎、12か月毎等で行われる。本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上述した任意の治療スキームが、監視プロセスの結果に応じて任意の適切なやり方で調節される、例えば強化される若しくは弱められるか、又は変更される。
PDE4D7の発現の検査は、本明細書において上記に定義されたステップに従って行われる。好ましくは、上記検査は、PDE4D7のタンパク質レベルの測定として行われ、より好ましくは、そのような測定に関して本明細書において上述した選択肢によって行われる。対照物又は対照試料として、本明細書において上記に定義された対照物が用いられる。特に好ましい実施の形態では、上記検査ステップは、PDE4D7に特異的に結合する抗体、例えば、NB300−652又はGTX14629のような市販の抗PDE4D7抗体の使用をベースにしている。がんマーカーとしてのPDE4D7に関する本明細書において上記に与えられた対応する定義に従って、上記免疫学的検定において、がんが診断若しくは予知されるか又はがんの進行が診断若しくは予知される、又は、免疫学的検定において個体若しくは個体のコホートが階層化される。従って、上記PDE4D7の発現の検査又は決定は、核酸若しくはタンパク質レベルの測定により又はPDE4D7の生物学的活性の決定により達成される又は付加的に達成される、同様の測定は、参照遺伝子に対しても行われる。
本発明の特に好ましい実施の形態では、上記参照遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子又は異なるホスホジエステラーゼである。人体では、「ハウスキーピング遺伝子」の例は、とりわけ、β−アクチン、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)、ポルフォビリノゲンデアミナーゼ(PBGD)及びリボソームタンパク質P1を含んでいる。これらの遺伝子の他に、特にがんの成長の様々な病期の間、より好ましくは前立腺がんの成長の様々な病期の間、より好ましくはホルモン感受性前立腺がんのホルモン抵抗性前立腺がんの状態への移行の間に、遺伝子が安定した非修飾レベルで発現又は転写産物を示す限りにおいては、任意の他の適切な遺伝子がハウスキーピング遺伝子として用いられ得る。GAPDHの遺伝子、転写産物、発現産物又はタンパク質が特に好ましい。更に、PBGDの遺伝子、転写産物、発現産物又はタンパク質が特に好ましい。ハウスキーピング遺伝子の発現データは、同じ個体の1つ若しくはそれ以上の試料から又はより多くの、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、1000、5000、10000若しくはそれ以上の個体から得られる。発現データは、また、データベースから又は当業者が入手可能なデータの集合体からも得られる。
本明細書において用いられる「異なるホスホジエステラーゼ」という用語は、PDE4D7ではない他のホスホジエステラーゼを意味する。参照遺伝子として好適であるそのようなホスホジエステラーゼは、最適な生物中において安定に発現し、連続的に検出可能な遺伝子産物、発現産物、タンパク質又はタンパク質変異体を与えなければならない。PDE4Dファミリのホスホジエステラーゼ、例えば、PDE4D1、PDE4D2、PDE4D3、PDE4D4、PDE4D5、PDE4D6、PDE4D8及びPDE4D9が特に好ましい。PDE4D5ホスホジエステラーゼがより好ましい。従って、GAPDH、PBGD及び特にPDE4D5を用いた標準化及び/又は比較は、上述したカットオフをベースにした診断方法及び免疫学的検定、認定方法又は個体を区別若しくは階層化する免疫学的検定のために好ましく用いられる。対応する決定ステップは、単独の反応又は特に好ましくは複数の反応において行われる。複数の反応が行われる場合、プライマ及び/又はプローブオリゴヌクレオチドの濃度は変更され得る。また、緩衝液、イオン等のような更なる成分の濃度及び存在が変更、例えば、製造元の表示と比較して増加又は減少され得る。
本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上述したPDE4D7の発現に基づいて悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療の適格性に関して個体を認定する方法は、1つ又はそれ以上の異なるバイオマーカーの発現に基づく1つ又はそれ以上の同様の認定方法と更に組み合わせられる。血液中の前立腺特異抗原(PSA)のレベルの決定が好ましい。従って、血液中のPSAのレベルが、約2ないし5ng/ml若しくはそれ以上の範囲、好ましくは、2.2ないし4.8ng/ml若しくはそれ以上、2.4ないし4.4ng/ml若しくはそれ以上、2.6ないし4.2ng/ml若しくはそれ以上又は2.8ないし4.0ng/ml若しくはそれ以上、より好ましくは2.5ないし4ng/ml若しくはそれ以上の範囲で生じる場合、個体は、ホルモン感受性前立腺がんを患っている又は近いうちに、例えば、1、2、3、4、5、6、12、14、48か月以内にホルモン感受性前立腺がんを発症する傾向があると見なされる。PDE4D7の発現の検査は、本明細書において上述したステップに従って行われる。好ましくは、上記検査は、PDE4D7のタンパク質レベルの測定として行われ、より好ましくは、そのような測定についての本明細書において上述した選択肢によって行われる。対照物又は対照試料として、本明細書において上記に定義された対照物が用いられる。特に好ましい実施の形態では、上記検査ステップは、PDE4D7に特異的に結合する抗体、例えば、本明細書において上記に定義された抗体又はNB300−652若しくはGTX14629のような市販の抗PDE4D7抗体の使用をベースにしている。悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとしてのPDE4D7に関する本明細書において上記に与えられた対応する定義に従って、上記免疫学的検定において、悪性のホルモン感受性前立腺がんが診断若しくは予知されるか、又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行が診断若しくは予知される。
本発明の好ましい実施の形態では、上述した診断、検出、監視又は予知は、個体から得られる試料に関して行われる。本明細書において用いられる「個体から得られる試料」という用語は、個体から当業者には既知の適切な方法を介して得られる任意の生物学的物質を意味する。本発明に関して用いられる試料は、好ましくは臨床的に許容可能なやり方で集められ、より好ましくは核酸(特に、RNA)又はタンパク質が保存されるやり方で集められる。
上記生物学的試料は、体内組織、血液、汗、痰又は唾液、精液及び尿のような流体並びに糞又は便の試料を含んでいる。また、上記生物学的試料は、上皮細胞、好ましくは、がん性の上皮細胞に由来する細胞抽出物若しくは上皮細胞、好ましくは、がん性の上皮細胞を含む細胞集団又はがん性であることが疑われる組織に由来する上皮細胞を含んでいる。更により好ましくは、上記生物学的試料は、腺組織に由来する細胞集団を含んでおり、例えば、雄個体の前立腺に由来するものである。更に、細胞は、必要に応じて得られた体内組織及び流体から精製され、その後、生物学的試料として用いられる。
試料は、特に初期処理後に、プールされ得る。しかしながら、プールされない試料も用いられ得る。
本発明の具体的な実施の形態では、生物学的試料の内容物は、また、濃縮ステップに送られる。例えば、試料は、例えば磁気粒子で官能基化される細胞膜又はある細胞のタイプ、例えば前立腺細胞の細胞小器官に対して特異的なリガンドと接触させられる。磁気粒子により濃縮された物質は、その後、本明細書において上述した又は下記に説明される検出及び解析ステップのために用いられる。
本発明の具体的な実施の形態では、生検試料又は切除試料が得られる及び/又は用いられる。そのような試料は、細胞又は細胞溶解物を有している。
また、細胞、例えば腫瘍細胞は、流体又は液体試料、例えば、血液、尿、汗等の濾過プロセスを介して濃縮される。そのような濾過プロセスは、本明細書において上述したリガンド特異的な相互作用に基づく濃縮ステップと組み合わせられもする。
本発明の特に好ましい実施の形態では、試料は、組織試料、生検試料、尿試料、尿沈渣試料、血液試料、唾液試料、精液試料、循環腫瘍細胞を有する試料又は前立腺から分泌されるエキソソームを含む試料である。血液試料は、例えば、血清試料又は血漿試料である。
更に他の観点では、本発明は、(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、(f)PDE4D7のアンチセンス分子、(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体及び(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体より成る群から選択された少なくとも1つの要素を有する阻害性医薬組成物に関係がある。
本明細書において用いられる「PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物」という表現は、PDE4D7の活性を低下させることができる化合物を意味する。そのような化合物は、PDE4D7の任意の直接的相互作用物質であり、PDE4D7の触媒活性に負の影響を及ぼす。そのような化合物は、好ましくは、PDE4D7の触媒活性の拮抗物質である。
本明細書において用いられる「PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物」という表現は、PDE4D7の直接的相互作用物質との相互作用(「間接的相互作用物質」)により又はPDE4D7との相互作用を伴わない間接的な作用経路を介してPDE4D7の活性を低下させることができる化合物を意味する。そのような化合物は、PDE4D7の相互作用物質の任意の直接的相互作用物質である。PDE4D7の相互作用物質のうちの直接的相互作用物質により伝達される作用は、それ自体の相互作用物質がPDE4D7の活性に負の作用を及ぼす場合に負であるか、又はPDE4D7の相互作用物質がPDE4D7の活性に正の作用を及ぼす場合に正である。
ホスホジエステラーゼ、特にPDE4の、より具体的にはPDE4Dの、更により具体的にはPDE4D7の阻害剤が特に好ましい。本発明に係る阻害性医薬組成物に単独で又は任意の組み合わせで含まれる好適なホスホジエステラーゼ阻害剤の例は、ロフルミラスト、ピクラミラスト、Awd12−281、アリフロ、Sch351591、シロミラスト、ロリプラム、Ro20−1724、エタゾレート、ヒドロクロリド、CP80633、ICI63197、マレイン酸イルソグラジン、メソプラム、YM976、Sch35159、V11294a、アロフィリン、デンブフィリン及びホスホジエステラーゼ4阻害剤である。好適な阻害剤の更なる例は、当業者には既知であり、それらも本発明によって想定されている。上記阻害剤の構造、有効性、好適な製剤形態(formulation)等についての詳細も、当業者には既知である及び/又は好適なテキスト又は刊行物、例えば、Joseph A. Beavo, Sharron H. Francis, Miles D Houslay, Cyclic Nucleotide Phosphodiesterase in Health and Disease, CRC Press 2006から得られる。
阻害性医薬組成物に関して、以下の阻害性化合物、すなわち、ロリプラム、Ro20−1724、CP80633、ICI63197、YM976、Sch35159及びホスホジエステラーゼ4阻害剤が特に好ましい。
ロリプラムは、2.0μMのIC50を持つcAMPホスホジエステラーゼ(PDE4)の選択的な完全阻害剤(full inhibitor)である。ロリプラムは、PDE4アイソザイムの2つの立体配座の形態を区別する。
Ro20−1724は、2.0μMのIC50を持つPDE4に対して選択的な広く用いられている環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼの阻害剤である。
CP80633は、ヒト肺のPDE4、肺のPDE1、肺のPDE2、心臓のPDE3及び血小板のPDE5に対してそれぞれ1.9μM、>100μM、>100μM、>100μM及び>100μMのIC50値を持つ4型ホスホジエステラーゼの選択的阻害剤である。CP80633は、有意なPDE4アイソザイム選択性を示さない。CP80633は、単離したヒト末梢血単球、好酸球及びT細胞におけるcAMPの加水分解を阻害し、生体内で抗炎症作用及び気管支拡張作用を示す。
ICI63197は、(ラット脳に結合する[3H]−ロリプラムの阻害について)35nMのIC50を持つ強力なホスホジエステラーゼ(PDE)4の阻害剤である。
YM976は、20nMのIC50を持つ経口で活性なPDE4阻害剤である。これは、低い脳透過性のためであることが示唆される低い催吐活性を示す。
ホスホジエステラーゼ4阻害剤は、それぞれ33nM及び21nMのIC50を持つ、高親和性活性部位に結合するホスホジエステラーゼ4B及び4Dの阻害剤としての役割を果たすピラゾール化合物である。これは、PDE4B及びPDE4Dについてロリプラム(それぞれ、IC50=570nM及び1.1μMである。)よりもはるかに強力であることが分かっており、PDE1B、PDE2A、PDE3B、PDE5A、PDE7B、PDE8A、PDE9A及びPDE11A(IC50>30μM)に関してより大きい選択性を示し、6.9μMのIC50でPDE10Aを最小限に阻害する。
上記に定義された阻害性化合物は、本明細書において与えられる詳細に従って、調剤、投薬、使用又は投与される。特に、下記の阻害剤の表が、必要な濃度、製剤形態、アジュバント等の決定のために用いられる。
阻害剤の表
代替として、そのような負に作用する間接的相互作用物質は、直接的に結合するタンパク質の結合挙動の変更を引き起こし、これはPDE4D7の活性低下をもたらす。典型的には、負に作用する間接的相互作用物質は、PDE4D7の活性化因子に対して阻害作用を有する。そのような相互作用物質の例は、酵素活性を低下させるPDE4D7の活性化因子又はPDE4D7の活性化因子を結合及び消滅させることができるタンパク質である。代替として、そのような相互作用物質は、PDE4D7の分解をもたらす活性を正に調整する(例えば、プロテイナーゼ)。更なる例及びその実現は、当業者には既知である。
代替として、PDE4D7の活性の間接的な阻害は、PDE4D7の内在性遺伝子の発現を不活性化する、妨げる又は破壊する化合物によって伝達される。そのような化合物の例は、PDE4D7遺伝子のプロモータへの基底転写の仕組み及び転写因子の結合を阻害する及び/又は妨げるPDE4D7の転写因子の特異的相互作用物質、PDE4D7のmRNAの特異的不安定化活性体又はPDE4D7に対して特異的なスプライシング因子を阻害する因子である。更なる例及びその実現は、当業者には既知である。
本明細書において用いられる「腫瘍マーカーのタンパク質の優性阻害体をコードし、発現させる核酸」という表現は、天然に存在するタンパク質又はポリペプチドの突然変異型を発現させることができる任意の核酸を意味する。従って、この表現は、アンチモルフの修飾を有する、特に、PDE4D7に悪影響を及ぼすPDE4D7の変異体をコードする核酸を意味する。典型的には、そのような挙動は、アンチモルフの変異体がPDE4D7と相互作用するが、その機能の幾つかの面を妨げる場合に生じる。好ましくは、そのような変異体は、PDE4D7の特異的領域、例えば、1つ又はそれ以上のタンパク質−タンパク質相互作用又は二量化領域、複合体集合領域、1つまたはそれ以上の膜結合領域等を有して又は欠いている。
上記「PDE4D7に対して特異的なmiRNA」という用語は、PDE4D7の遺伝子発現を調節する典型的には18ないし27ヌクレオチドの長さの短い一本鎖RNA分子を意味する。miRNAは、それらのDNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されない遺伝子によってコードされる。自然な状況では、miRNAは、まず、キャップ及びポリA尾部により一次転写産物又はプリmiRNAとして転写され、細胞核内においてプレmiRNAとして知られる短い70ヌクレオチドのステムループ構造に処理される。この処理は、ヌクレアーゼドローシャと二本鎖RNA結合タンパク質パシャとから成るマイクロプロセッサ複合体として知られるタンパク質複合体により動物内で行われる。これらのプレmiRNAは、その後、エンドヌクレアーゼのダイサーとの相互作用により細胞質内において成熟miRNAにされ、これはRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)の形成も引き起こす。活性RISC複合体への組み込み後、miRNAは、それらの相補的mRNA分子と塩基対をつくり、翻訳を阻害するか、又はRISC複合体の触媒活性要素、例えばアルゴノートタンパク質によりmRNAの分解を引き起こす。成熟miRNA分子は、典型的には、本発明の発現産物に対応するmRNA分子に少なくとも部分的に相補的であり、遺伝子発現を完全に又は部分的に低下させる。好ましくは、本発明に係るmiRNAは、標的配列に100%相補的である。代替として、本発明に係るmiRNAは、例えば末端残基において又は分子の中心部において、1、2又は3のミスマッチを持つ。本発明に係るmiRNAは、約18ないし27ヌクレオチドの長さ、例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26又は27ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、21ないし23merである。
100%の相補性を有するmiRNAは、好ましくは本発明に係る核酸の分解のために用いられるのに対して、100%よりも低い相補性を示すmiRNAは、好ましくは翻訳プロセスのブロックのために用いられる。
上記「PDE4D7のアンチセンス分子」という用語は、配列識別番号SEQ ID NO:1若しくは6又はその相補鎖に含まれる配列に対応する核酸を意味する。好ましくは、本発明のアンチセンス分子は、本発明に係るPDE4D7発現産物の少なくとも一部に相補的な配列を有する。PDE4D7のコード領域の配列に相補的なアンチセンス分子が用いられるが、転写領域及び非翻訳領域に相補的なアンチセンス分子が好ましい。
一般に、アンチセンス技術は、アンチセンスDNA若しくはRNAを介して又は三重らせんの形成を介して遺伝子発現を制御する、すなわち減少又は終了させるために用いられる。一実施の形態では、アンチセンス分子は、有機体によって内部で生成され、例えば、外因性配列からの転写により細胞内で生成される。ベクタ又はその一部は、転写され、本発明のアンチセンス核酸をもたらす。そのようなベクタは、本発明のアンチセンス核酸をコードする配列を含んでいる。そのようなベクタは、所望のアンチセンス分子を生成するために転写され得る限りにおいては、エピソームのままであるか、又は染色体に組み込まれるようになる。対応するベクタは、当業者には既知の組み換えDNA技術の方法により構築される。ベクタは、骨髄動物細胞内における複製及び発現のために用いられるプラスミド、ウイルス又は当該分野において既知の他のもの、例えば本明細書において上記に定義されたベクタである。
他の実施の形態では、上記アンチセンス分子は、個別に投与される。一例として、本発明に係るPDE4D7核酸の5´コード部分は、約6から50ヌクレオチドまでの長さのアンチセンスRNA又はDNAオリゴヌクレオチドを設計するために用いられる。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド又は少なくとも50ヌクレオチドの長さである。
本発明のアンチセンス核酸は、典型的には、関心のある遺伝子のRNA転写産物の少なくとも一部に相補的な配列を有している。しかしながら、絶対相補性は、好ましいが必要とされない。本明細書にある「RNA転写産物の少なくとも一部に相補的な」配列は、RNAとハイブリダイズすることができる十分な相補性を有する配列を意味し、これは二本鎖のアンチセンス核酸の場合、安定な二重鎖、三重鎖を形成する。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度及びアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズする核酸が大きいほど、より多くの塩基が本発明のRNA配列とミスマッチし、安定な二重鎖又は三重鎖を含み、依然として形成する。当業者は、ハイブリダイズされた複合体の融点を決定する標準手順の使用によりミスマッチの許容度を確認することができる。
好ましくは、転写産物の5´末端に相補的なアンチセンス分子、例えば、AUG開始コドンまで(これを含む。)の5´非翻訳配列は、翻訳の阻害のために用いられる。更に好ましい実施の形態では、mRNAの3´非翻訳配列に相補的な配列も用いられる。
本発明に係るアンチセンス分子は、一本鎖若しくは二本鎖のDNA、RNA又はキメラ混合物、その誘導体若しくは修飾バージョンであり得る。本発明に係るアンチセンス分子、好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチド若しくは任意の更なるアンチセンス核酸分子又は本発明に係るsiRNA分子は、例えば、ハイブリダイゼーション、分子の安定性を向上させる等のために、塩基部分、糖部分又はリン酸骨格において修飾され得る。上記分子は、(例えば、生体内で宿主細胞受容体を標的にするために)ペプチドのような他の追加のグループ、細胞膜を横断する輸送を容易にする化学薬品又は血液脳関門のハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤(cleavage agent)若しくは挿入剤を含んでいてもよい。従って、上記分子は、他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションにより誘発される架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤等に結合する。
上記アンチセンス分子又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNA又はsiRNA分子は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキュエオシン、5´−メトキシカルボキシメチルウラシン、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル(pseudouracil)、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシン及び2,6−ジアミノプリンを含む群から選択される少なくとも1つの修飾塩基部分を有している。上記の部分は、また、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース及びヘキソースを含む群から選択される(しかしながら、これらに限定されない。)少なくとも1つの修飾糖部分も有している。他の実施の形態では、上記分子は、代替又は追加として、少なくとも1つの修飾されたリン酸骨格を有しており、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミダート、ホスホロジアミダート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル及びそのホルムアセタール又はその類似物を有している。
他の実施の形態では、アンチセンス分子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチド、すなわち、鎖が互いに平行して走っている、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドである。
上記「PDE4D7に対して特異的なsiRNA」という用語は、特殊なタイプのアンチセンス分子、すなわち、表1に従って腫瘍マーカーの遺伝子発現を負に調節するためにRNA干渉(RNAi)経路を引き起こす短い阻害性RNA二本鎖を意味する。これらのsiRNA分子は、長さが多様であり、約18ないし28ヌクレオチドの長さであり、例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチドの長さを有している。好ましくは、上記分子は、21、22又は23ヌクレオチドの長さを有している。本発明に係るsiRNA分子は、好ましくはアンチセンス鎖において、標的mRNAに対する様々な程度の相補性を含んでいる。siRNAは、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の5´又は3´末端の対になっていない過剰塩基を有し得る。「siRNA」という用語は、2つの平行な鎖の二本鎖及び二本鎖領域を有するヘアピン構造を形成することができる一本鎖を含んでいる。好ましくは、siRNAは二本鎖であり、そこでは、二本鎖siRNA分子は、第1及び第2の鎖を有しており、siRNA分子のそれぞれの鎖は約18ないし約23ヌクレオチドの長さであり、siRNA分子の第1の鎖はRNA干渉を介して標的RNAに対して十分な相補性を持つヌクレオチド配列を有し、上記siRNA分子の第2の鎖は第1の鎖に相補的であるヌクレオチド配列を有する。
所与の標的核酸に向けられる好適なsiRNAを設計する方法は、当業者には既知である。
本明細書において用いられる「PDE4D7の発現産物に対して特異的な又はタンパク質に対して特異的なアプタマ」という表現は、相互作用し、PDE4D7タンパク質を特異的に結合することができる短いぺプチドを意味する。このペプチドアプタマは、好ましくは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ配列を有するタンパク質又はポリペプチドに特異的に結合することができる。このペプチドアプタマは、また、配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチド又はSEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはポリペプチドとも特異的に結合する。典型的には、ペプチドアプタマは、例えば10ないし20アミノ酸を有する可変ペプチドループである。本発明に関しては、ペプチドアプタマは、好ましくは、一方又は両方の末端において骨格構造に付着する。上記骨格構造は、良好な溶解特性を有する任意の分子、好ましくはタンパク質である。好適な骨格分子は、当業者には既知である。本発明に関連して用いられる好ましい骨格分子は、細菌タンパク質のチオレドキシン−Aである。アプタマペプチドループは、好ましくは、上記骨格分子の還元性活性部位内に挿入される。代替として、ブドウ球菌プロテインA及びそのドメイン並びにプロテインZ又はリポカリンのようなこれらのドメインの誘導体が、本発明に関する骨格分子として用いられる。ペプチドアプタマは、当業者には既知の任意の適切な方法に従って、例えば、酵母ツーハイブリッド法によって生成される。
好ましい実施の形態では、上述したペプチドアプタマは、PDE4D7タンパク質又はポリペプチド、好ましくは、SEQ ID NO:2に対応するタンパク質又はポリペプチドに結合し、未処理の試料から得られる対照レベルと比較して、該タンパク質の生物学的活性及び/又は酵素活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は少なくとも98%若しくは99%低下させることができる。
本明細書において用いられる「PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子」という表現は、好ましくは生物学的に活性である、すなわち生体分子であるが、好ましくはポリマではない小有機化合物を意味する。そのような有機化合物は、任意の適切な形態又は化学的性質を有している。上記化合物は、天然化合物、例えば二次代謝産物又はデノボ設計若しくは生成された人工化合物である。本発明の一実施の形態では、小分子は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を妨げることができる。小分子の同定及び生成並びに小分子の検査のための検定に関する方法及び技術は、当業者には既知である。
本発明に関する「PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができるペプチド模倣体」という表現は、ペプチドを模倣するように設計され、PDE4D7タンパク質に結合することができる小分子タンパク質様の鎖を意味する。そのようなペプチド模倣体は、分子の性質を変えるために既存のペプチド、例えば、本明細書において上記に定義されたペプチド又はペプチドアプタマの修飾から生じ得る。ペプチド模倣体は、分子の安定性又は結合能力を変化させる修飾から生じ得る。これらの修飾は、典型的には、天然に存在しないペプチドへの変化を含んでいる。例えば、本発明に係るペプチド模倣体は、改変されたペプチド骨格を有するか、又は非天然アミノ酸を有している。好ましくは、本発明に係るペプチド模倣体は、ホスホジエステラーゼ分子、特にPDE4D7、又は相互作用若しくは隔離(sequestering)タンパク質に相当する。本発明の一実施の形態では、ペプチド模倣体は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を妨げる。ペプチド模倣体の生成及びペプチド模倣体の検査のための検定に関する方法及び技術は、当業者には既知である。
本発明に係る阻害性医薬組成物は、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体、例えば、本明細書において上記に定義された抗体又は抗体変異体も有していてもよい。
好ましい実施の形態では、そのような抗体又は抗体フラグメントは、PDE4D7の生物学的活性及び/又は酵素活性を阻害することができる。
当業者は、また、PDE4D7に対して特異的な結合抗体(conjugated antibody)によって悪性のホルモン感受性前立腺がん細胞及び組織を標的にする及び破壊する可能性を認識するであろう。従って、本発明の具体的な実施の形態では、本明細書において上記に定義された抗体又はそのフラグメントは、治療薬又は細胞毒性薬に結合し得る。上記「治療薬」という用語は、細胞、組織又は有機体全体に治療効果を与えることができる任意の化合物、薬物、小分子又は薬剤を意味する。そのような化学物質の例は、当業者には既知である。上記「細胞毒性薬」という用語は、細胞又は組織に毒性作用を与えることができる任意の化合物、薬物、小分子又は薬剤を意味する。そのような化学物質は、例えば、内因性の細胞毒性エフェクタ系を活性化させる化合物及び放射性同位元素、ホロ毒素、修飾毒素、毒素の触媒サブユニット又は定義された条件下で細胞死を引き起こす通常細胞の表面に存在しない任意の分子若しくは酵素を有している。この用語は、また、当該分野において既知の放射性同位元素、固有の又は誘発された内因性の細胞毒性エフェクタ系、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNAse、α毒素、リシン、アブリン、緑膿菌外毒素A、ジフテリア毒素、サポリン、モモルジン、ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、α−サルシン及びコレラ毒素を結合する追加の抗体(又はその補体結合を含む部分)も含んでいる。この用語は、また、細胞毒性プロドラッグも意味する。「細胞毒性プロドラッグ」により、通常細胞内に存在する酵素により細胞毒性化合物に変化する非毒性化合物が意味される。本発明によって用いられる細胞毒性プロドラッグは、安息香酸マスタードアルキル化剤のグルタミル誘導体、エトポシド又はマイトマイシンCのリン酸塩誘導体、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン及びドキソルビシンのフェノキシアセトアミド誘導体を含んでいる。
本発明の一実施の形態では、上記医薬組成物は、更に、がん細胞に対して活性である追加の化合物を有している。また、本発明の他の実施の形態では、上記医薬組成物は、更に、ホルモン阻害剤を有し、好ましくは、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ケトコナゾール、フィナステリド(finasteride)又はデュタステリド(dutasteride)のような抗アンドロゲン又はアンドロゲン拮抗薬を有している。
更なる実施の形態では、本発明は、スクリーニング手順、及び本明細書において上述したPDE4D7の発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、PDE4D7酵素活性の拮抗物質、PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、PDE4D7に対して特異的なmiRNA、PDE4D7のアンチセンス分子、PDE4D7に対して特異的なsiRNA及びPDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体の同定のための方法も想定している。そのようなスクリーニング手順は、(a)細胞膜上の分泌タンパク質又は細胞内成分のようなポリペプチドとしてPDE4D7を発現させる細胞を生成するステップ、(b)ステップ(a)において生成されたポリペプチドを、相互作用分子、例えば、PDE4D7の発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、PDE4D7酵素活性の拮抗物質、PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、PDE4D7タンパク質の優性阻害体若しくはその生物学的に活性な同等物、PDE4D7に対して特異的なmiRNA、PDE4D7のアンチセンス分子、PDE4D7に対して特異的なsiRNA又はPDE4D7に特異的に結合することができる小分子若しくはペプチド模倣体を含んでいる可能性がある検査試料と接触させるステップと、(c)結合及び/又はPDE4D7の活性の阻害又は変調を観察することにより相互作用分子を同定するステップとを有する。
代替として、そのようなスクリーニング手順は、(a)直接的又は間接的に相互作用する分子、例えば、PDE4D7の発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、PDE4D7酵素活性の拮抗物質、PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、PDE4D7タンパク質の優性阻害体若しくはその生物学的に活性な同等物、PDE4D7に対して特異的なmiRNA、PDE4D7のアンチセンス分子、PDE4D7に対して特異的なsiRNA又はPDE4D7に特異的に結合することができる小分子若しくはペプチド模倣体を含んでいる可能性がある検査試料を、転写産物としてPDE4D7を発現させる1つ又はそれ以上の細胞と接触させるステップと、(b)上記配列の発現レベルを検出するステップと、(c)結合又はPDE4D7の発現レベルの変調若しくは低下を観察することにより相互作用分子を同定するステップとを有する。
本発明は、また、本明細書において上述したスクリーニング手順又は方法により得られる又は入手可能なPDE4D7の発現産物又はタンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、PDE4D7酵素活性の拮抗物質、PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、PDE4D7に対して特異的なmiRNA、PDE4D7のアンチセンス分子、PDE4D7に対して特異的なsiRNA及びPDE4D7に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体も想定している。
更なる観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防のための本明細書において上記に定義された阻害性医薬組成物に関係がある。
また、更に他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防用の阻害性医薬組成物の生成のための(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、(f)PDE4D7のアンチセンス分子、(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体及び/又は(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の使用に関係がある。
他の観点では、本発明は、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防の方法であって、(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、(f)PDE4D7のアンチセンス分子、(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体及び/又は(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の個体、特に、悪性のホルモン感受性前立腺がんを患っている又は悪性のホルモン感受性前立腺がんを発症する兆候がある個体への投与を有する当該方法に関係がある。
更に他の観点では、本発明は、(a)PDE4D7の活性を直接的に刺激又は変調する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性のアロステリック作動物質、(b)PDE4D7の活性を間接的に刺激又は変調する化合物、(c)PDE4D7タンパク質又はその生物学的に活性な同等物、(d)PDE4D7をコードし、発現させる核酸、(e)PDE4D7のmiRNAに対して特異的なmiRNA阻害剤、(f)脱メチル化剤及び(g)ホスホジエステラーゼ置換因子より成る群から選択された少なくとも1つの要素を有する刺激性医薬組成物に関係がある。
本明細書において用いられる「PDE4D7の活性を直接的に刺激又は変調する化合物」という表現は、PDE4D7との直接的な相互作用によりcAMPを分解するためにPDE4D7の活性を増加させることができる化合物を意味する。そのような化合物は、PDE4D7の任意の直接的相互作用物質であり、PDE4D7の触媒活性に正の影響を及ぼす。そのような化合物は、好ましくは、PDE4D7の酵素活性のアロステリック作動物質、例えば、ホモトロピックアロステリック調節因子である。好ましいPDE4D7のアロステリック作動物質は、cAMP又はcAMP類似体である。本発明により想定される他の直接的に刺激する化合物は、イオン、好ましくは、生物学的に活性な一価及びCa2+、Mg2+のような二価の陽イオンである。
本明細書において用いられる「PDE4D7の活性を間接的に刺激又は変調する化合物」という表現は、PDE4D7の直接的相互作用物質との相互作用(「間接的相互作用物質」)により又はPDE4D7との相互作用を伴わない間接的な作用経路を介してcAMPを分解するためにPDE4D7の活性を増加させることができる化合物を意味する。そのような化合物は、PDE4D7の相互作用物質の任意の直接的相互作用物質である。PDE4D7の相互作用物質のうちの直接的相互作用物質により伝達される作用は、PDE4D7自体の相互作用物質がPDE4D7の活性に正の作用を及ぼす場合に正であるか、又はPDE4D7の相互作用物質がPDE4D7の活性に負の作用を及ぼす場合に負である。典型的には、正に作用する間接的相互作用物質は、cAMPの生成を増加させること等により直接的相互作用物質のアゴニスト作用を刺激する。例えば、PDE4D7によって与えられないcAMP分解プロセスを阻害することによりcAMP又はその類似体のようなアロステリックに作用する化合物の濃度の増加を引き起こす。
代替として、そのような正に作用する間接的相互作用物質は、直接的に結合するタンパク質の結合挙動の変調を引き起こし、これはPDE4D7の活性増加をもたらす。典型的には、負に作用する間接的相互作用物質は、PDE4D7の阻害剤に対して阻害作用を有する。そのような相互作用物質の例は、酵素活性を分解するPDE4D7阻害剤又はPDE4D7阻害剤を結合及び消滅させることができるタンパク質である。代替として、そのような相互作用物質は、PDE4D7の分解をもたらす活性を阻害する(例えば、プロテイナーゼ阻害剤)。更なる例及びその実現は、当業者には既知である。
代替として、PDE4D7の活性の間接的な刺激は、内在性のPDE4D7遺伝子の発現を活性化する、保護する又は持続する化合物によって伝達される。そのような化合物の例は、PDE4D7特異的転写因子、PDE4D7特異的mRNA安定化活性又はPDE4D7スプライス因子である。更なる例及びその実現は、当業者には既知である。
上記刺激性医薬組成物に含まれる「PDE4D7タンパク質」は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7タンパク質である。特に、これは、ヒトホスホジエステラーゼPDE4Dのスプライス変異体7によりコードされるタンパク質であり、より好ましくは、核酸配列データベース(Genbank)の登録番号:AF536976(2009年3月3日の時点でバージョンAF536976.1,GI:22901883)に定義されているアミノ酸配列を有し、更により好ましくは、配列識別番号SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有している。これに関連して用いられる「PDE4D7タンパク質」は、また、配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列及び配列識別番号SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有している。PDE4D7の相同変異体、特に、上述したPDE4D7の相同変異体は、好ましくは、PDE4D7の機能性を有している。すなわち、cAMPを分解することができる。本発明の更なる実施の形態では、PDE4D7の相同変異体は、追加又は代替として、細胞内又は組織型内でPDE4D7と類似した又は同一の局在パターンを有する。
更なる好ましい実施の形態では、PDE4D7の相同変異体とPDE4D7との領域又は相同性は、タンパク質のC末端部に限定されている。例えば、相同変異体は、PDE4D7に存在するN末端ドメイン及び本明細書において上記に示したPDE4D7に対してある相同性の程度を有するタンパク質の残基を有している。相同変異体のN末端部は、PDE4D7から得られる1ないし120、1ないし110、1ないし100、1ないし90、1ないし80、1ないし70、1ないし60、1ないし50、1ないし40、1ないし30、1ないし20又は1ないし10のアミノ酸を有している。
本明細書において用いられる「PDE4D7の生物学的に活性な同等物」という用語は、PDE4D7の機能の全て又は大部分を実行することができるPDE4D7タンパク質を意味する。好ましくは、これは、cAMPを分解することができるタンパク質に関係がある。本発明の更なる実施の形態では、PDE4D7の生物学的に活性な同等物は、追加又は代替として、細胞内又は組織型内でPDE4D7と類似した又は同一の局在パターンを有している。PDE4D7の生物学的に活性な同等物は、また、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の変異体も有している。
本発明に係るPDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物は、当業者には既知の任意の適切な方法によって組み換えで生成される。従って、本発明は、PDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物の生成についての方法も含んでいる。
よって、本発明は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物をコードするポリヌクレオチドを含むベクタ、宿主細胞及び組み換え技術によるPDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物の生成を含んでいる。
好適なベクタは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスである。レトロウイルスベクタは、複製要素又は複製欠損性のものである。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、宿主細胞を補完する際にのみ生じる。PDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物をコードするポリヌクレオチドは、宿主内における増殖のために選択可能なマーカーを含むベクタ又はキャリアに接合される。対応するポリヌクレオチドの挿入部は、ファージラムダPLプロモータ、E.coli lac、trip、phoA及びtacプロモーター、SV40early及びlateプロモータ、レトロウイルスLTRのプロモータ又はPSAプロモータのような適切なプロモータに動作可能に連結される。他の適切なプロモータは、当業者には既知である。発現構築物は、更に、転写開始、終結のための部位及び転写領域内の翻訳のためのリボソーム結合部位を含んでいる。上記構築物により発現する転写産物のコーディング部分は、好ましくは、初めに翻訳開始コドンを含み、翻訳されるポリペプチドの末端に適切に配された終止コドン(UAA、UGA又はUAG)を含んでいる。
ポリペプチド又はタンパク質は、グリコシル化又は非グリコシル化され、そうでなければ修飾される。また、ポリペプチド又はタンパク質は、宿主経由プロセスの結果としての幾つかのケースでは最初の修飾メチオニン残基も含んでいる。更に、ポリペプチド、タンパク質又はペプチドは、アセチル化、ペグ化、ヘス(HES)化、ホルミル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、特異的化学分解、タンパク質分解的切断、細胞リガンド若しくは他のタンパク質への結合又はハプ化(hapylation)、すなわち、グリシンに富むホモアミノ酸ポリマ(HAP)との融合により修飾される。そのような修飾は、当業者に既知の適切な技術により行われる。また、ポリペプチド、ペプチド又は変異体は、1つ又はそれ以上の非古典的アミノ酸を含んでいる。
更に、本発明のPDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物は、当該技術分野において既知の技術を用いて、例えば、ペプチドシンセサイザを用いて化学的に合成され得る。
本明細書において上記に定義された刺激性医薬組成物に含まれる「PDE4D7をコードし、発現させる核酸」は、発現可能なPDE4D7遺伝子を有する、例えば本明細書において上述したような任意の適切なキャリア因子を意味する。好ましくは、そのようなキャリア因子は、核酸配列データベース(Genbank)の登録番号:AF536976(2009年3月3日の時点でバージョンAF536976.1,GI:22901883)に定義されている配列、より好ましくは、配列識別番号SEQ ID NO:1に記載のヌクレオチド配列を含んでいる。そのようなキャリア因子は、また、PDE4D7に対して高い相同性の程度を示すヌクレオチド配列、例えば、配列識別番号SEQ ID NO:1に記載の配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致する核酸配列又は配列識別番号SEQ ID NO:2に記載の配列と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%一致するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含んでいる。代替として、上記キャリアは、PDE4Dのゲノム配列、好ましくは、配列識別番号SEQ ID NO:6に対応するENSEMBLデータベースエントリENSG00000113448(バージョンENSG00000113448.8,Ensembl release 53、2009年3月)に定義されている配列を有するか、又は核酸配列データベースの登録番号:AC034234(2009年3月24日の時点でバージョンAF034234.4,GI:18390182)と組み合わせた核酸配列データベースの登録番号:AC008934(2009年3月24日の時点でバージョンAF008934.5,GI:17386235)から導き出せる。より好ましくは、上記キャリアは、配列識別番号SEQ ID NO:6に定義されているPDE4Dのゲノム配列を有する。
更に、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の生物学的に活性な同等物は、本発明のキャリアに含まれていてもよい。
PDE4D7をコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、ヒト細胞における増殖のために選択可能なマーカーを含むベクタに接合される。好ましい実施の形態では、ポリヌクレオチドの挿入部は、PSAプロモータに動作可能に連結される。
本発明の一実施の形態では、本明細書において上記に定義されたPDE4D7をコードし、発現させる核酸は、生きた(living)治療を介して与えられる。上記「生きた治療」という用語は、本明細書において上記に定義されたPDE4D7又はPDE4D7の生物学的に活性な同等物が任意の適切な生きたキャリア中で発現することを意味する。従って、本発明は、生きた細胞内における発現に適した対応するポリヌクレオチドに関係がある。本発明は、また、そのようなポリヌクレオチドを含むベクタ、適切な宿主細胞及びその宿主細胞内における組み換え技術によるポリペプチドの製造にも関係がある。
上記「生きたキャリア」という用語は、当業者には既知の任意の適切な生きている宿主細胞又はウイルスを意味する。適切な宿主の代表的な例は、大腸菌又は乳酸菌のような細菌細胞、酵母細胞、原生動物、昆虫細胞又は動物細胞のような真菌細胞を含んでいるが、これらに限定されない。好ましくは、この用語は、弱毒化細菌、弱毒化真菌細胞又は弱毒化原生動物に関係がある。適切なウイルスの代表的な例は、アデノウイルス、レトロウイルス又はレンチウイルスの群のウイルス、特に、アデノウイルスの群の弱毒化ウイルスを含んでいる。好ましい実施の形態では、プロバイオティック細菌細胞、特に、プロバイオティック大腸菌又は乳酸菌細胞が用いられる。より好ましくは、大腸菌ニッスル(Nissle)1973の細胞及び更により好ましくはラクトバチルスカゼイ又はラクトバチルスゼアエ393の細胞が用いられる。
本明細書において上記に定義された刺激性医薬組成物に含まれる「PDE4D7のmiRNAに対して特異的なmiRNA阻害剤」は、PDE4D7のmiRNA又はミクロRNA分子に相補的な核酸配列をコードする核酸分子を意味する。本明細書において用いられる「相補的」という用語は、ミスマッチのないmiRNA阻害性核酸(センス分子)とmiRNA(アンチセンス分子)との完全な相補及び該核酸がmiRNAと比較して任意の塩基ミスマッチ及び/又は追加の又は欠損したヌクレオチドを含む状況を意味する。他の実施の形態では、上記2つの分子は、1つ又はそれ以上の塩基ミスマッチを有するか又は(追加又は欠失のために)ヌクレオチドの総数が異なる。更なる実施の形態では、「相補的」miRNA阻害性核酸分子は、miRNA分子に含まれる配列との完全な相補性を示す少なくとも10の隣接ヌクレオチドを有している。
典型的には、miRNA阻害性核酸分子は、天然に存在するDNA若しくはRNA分子又は配列中に同じ型の若しくは1つ以上の異なる型の1つ以上の修飾ヌクレオチドを有する合成核酸分子である。
例えば、本発明によって、そのようなmiRNA阻害性核酸分子は、少なくとも1つのリオヌクレオチド骨格ユニット及び少なくとも1つのデオキシリボ核酸骨格ユニットを有することが考えられる。また、上記miRNA阻害性核酸分子は、2´−O−メチル基又は2´−O−メトキシエチル基(「2´−O−メチル化」とも呼ばれる)にRNA骨格の1つ又はそれ以上の修飾を含んでおり、これは、培地内におけるヌクレアーゼ分解を防ぐとともに、重要なことには、RNA誘導型サイレンシング複合体ヌクレアーゼによるエンドヌクレアーゼ的切断も防ぎ、miRNAの不可逆阻害を引き起こす。2´−O−メチル化と機能的に同等である他の可能な修飾は、本明細書において上記に定義された1つ又はそれ以上のLNAヌクレオチドモノマを含む核酸類似体を意味するロックド核酸(LNA)を含んでいる。
本発明に関連して用いられるmiRNA発現のサイレンサの他の種類は、コレステロールに結合した一本鎖RNA分子を意味し、「antagomir」と称される化学的に操作されたオリゴヌクレオチドを含んでいる。この分子は、19から25のヌクレオチドを有している。好ましくは、この分子は、20、21、22、23又は24のヌクレオチドを有している。より好ましくは、この分子は23のヌクレオチドを有している(更なる詳細は、Krutzfeldt等の2005,Nature,438:685-689から得られる。)。
本発明の他の実施の形態では、本明細書において上記に定義されたmiRNA阻害剤は、組織又は細胞に導入される発現ベクタの形態で与えられる。代替として、そのようなベクタは、また、本明細書において上記に定義された生体の治療においても導入され得る。
典型的には、RNAは、トランスフェクション又は一過性発現ベクタ若しくはキャリアの形態で与えられる。例えば、競合的miRNA阻害剤は、関心のあるミクロRNAへの1つよりも多い、好ましくは多数のタンデム結合部位を含む強力なプロモータから発現する転写産物として与えられる。Ebert等の2007,Nat,Methods,4:721-726に記載されている「ミクロRNAスポンジ」は、この技術の例示的、非限定的な例である。
本明細書において上記に定義された刺激性医薬組成物に含まれる「脱メチル化剤」は、クロマチン構造、好ましくはプロモータ領域、より好ましくはPDE4D7プロモータを脱メチル化することができる化学物質を意味する。本発明に関連して用いられる脱メチル化剤の例は、5−アザ−2´−デオキシシチジン及び5−アザシチジンであり、これらは、DNAのメチル化を含む構造的なクロマチン変化によって不適切に静められた遺伝子を再活性化させるとともに、これらの変化を逆にし、従って、主細胞経路を回復させる。これは、典型的には、遺伝子の再発現及び形質転換状態の幾つかの面の復帰(reversion)をもたらす。5−アザシチジン及び5−アザ−2´−デオキシシチジンは、典型的には、DNA中の5−アザ−2´−デオキシシチジン残基と酵素との安定な複合体の形成を介してDNAシトシンC5−DNAメチルトランスフェラーゼを不活性化し、それによって、メチルトランスフェラーゼ酵素に結合する際に安定な遷移状態の中間体を模倣する。
それ自体で又は5−アザ−2´−デオキシシチジン及び/又は5−アザシチジンと組み合わせられて本発明に係る刺激性医薬組成物に含まれる更なる化学物質は、トリコスタチンA(TSA)である。
本明細書において上記に定義された刺激性医薬組成物に含まれる「ホスホジエステラーゼ置換因子」は、相互作用パートナー又は相互作用物質とのホスホジエステラーゼ、特にPDE4D7の相互作用を妨げる又は阻害することができる化合物を意味する。そのようなプロセスは、最終的には、PDE、特にPDE4D7の以前とは異なる相互作用パートナーとの会合をもたらし、その結果、PDEの再分布をもたらす。そのような新たな相互作用パートナーは、PDE、特にPDE4D7を隔離し、それに応じて細胞挙動を変更する。例えば、受容体の結合又は他の下流の活性に対する影響を与える。そのような置換反応に含まれる及び/又はPDE、特にPDE4D7を隔離することができるタンパク質パートナーの例は、AKAPのようなアンカリングタンパク質、DISK1、β−アレスチン若しくはRACK1のような骨格タンパク質、XAP2/AIP/ARA9のような調節タンパク質、PKA−RサブユニットのようなcAMP結合タンパク質又はβ−アドレナリン受容体のような受容体及びERKのような酵素である。
好ましいホスホジエステラーゼ置換因子は、ペプチド、ペプチド模倣体、小分子、抗体及びアプタマである。
ホスホジエステラーゼ置換因子に関連する「ペプチド」は、ホスホジエステラーゼ分子、特にPDE4D7に存在する若しくはそれを表すアミノ酸の区間又は本明細書において上記に定義された相互作用若しくは隔離タンパク質を意味する。上記ペプチドに含まれるアミノ酸の区間は、5ないし100のアミノ酸、好ましくは10ないし50のアミノ酸、より好ましくは20ないし30のアミノ酸の長さを有する。上記区間は、PDE、相互作用タンパク質又はその一部と完全に一致するか、又は配列変異を有する。例えば、ペプチド配列は、全ての位置の25%までにおいて修飾アミノ酸残基を有し、好ましくは、上記修飾は分子の構造特性又は結合特性を変えない修飾である。ペプチドに存在するアミノ酸配列は、代替として、PDE若しくは相互作用タンパク質の空間ドメインを表し、それに応じて、分子の一次配列中に隣接されていないアミノ酸の区間の並置を有する。
ホスホジエステラーゼ置換因子に関連する「ペプチド模倣体」は、ペプチドを模倣するように設計された小分子タンパク質様の鎖を意味する。そのようなペプチド模倣体は、分子の性質を改変するために既存のペプチド、例えば、本明細書において上記に定義されたペプチドの修飾から生じ得る。ペプチド模倣体は、分子の安定性又は結合能力を変化させる修飾から生じ得る。これらの修飾は、典型的には、天然に存在しないペプチドへの変化を含んでいる。例えば、本発明に係るペプチド模倣体は、改変されたペプチド骨格を有するか、又は非天然アミノ酸を有している。好ましくは、本発明に係るペプチド模倣体は、ホスホジエステラーゼ分子、特にPDE4D7又は本明細書において上記に定義された相互作用若しくは隔離タンパク質に相当する。
本発明の一実施の形態では、ペプチド模倣体は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を妨げる。本発明の他の実施の形態では、ペプチド模倣体は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を高める。
ペプチド模倣体の生成及びペプチド模倣体の検査のための検定に関する方法及び技術は、当業者には既知である。
ホスホジエステラーゼ置換因子に関連する「小分子」は、好ましくは生物学的に活性である、すなわち生体分子であるが、好ましくはポリマではない小有機化合物を意味する。そのような有機化合物は、任意の適切な形態又は化学的性質を有している。上記化合物は、天然化合物、例えば二次代謝産物又はデノボ設計若しくは生成された人工化合物である。本発明の一実施の形態では、小分子は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を妨げることができる。本発明の他の実施の形態では、小分子は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質との相互作用を高める。小分子の同定及び生成並びに小分子の検査のための検定に関する方法及び技術は、当業者には既知である。
ホスホジエステラーゼ置換因子に関連する「抗体」又は「アプタマ」は、PDE、特にPDE4D7とその相互作用物質の1つ又はそれ以上との相互作用を妨げる又は阻害する能力を持つ本明細書において上記に定義されたPDE4D7特異抗体、抗体変異体若しくはフラグメント又はPDE4D7特異アプタマを意味する。代替として、この用語は、また、同様にPDE、特にPDE4D7とその相互作用物質の1つまたはそれ以上との相互作用を妨げる又は阻害する能力を持ち、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の相互作用物質の任意の1つ又はそれ以上に結合する抗体又はアプタマを意味する。上述した抗体又はアプタマの生成又は検査に関する方法は、当業者には既知である。
更に好ましい実施の形態では、上記に定義された阻害性医薬組成物又は上記に定義された刺激性医薬組成物は、PDE4D7の発現レベルに依存して前立腺がんの治療のために用いられ、上記発現のレベルは、
(a)試料中のPDE4D7のレベルを決定するステップ、
(b)試料中の参照遺伝子の発現のレベルを決定するステップ、及び
(c)測定されたPDE4D7の発現レベルを上記参照遺伝子の発現に標準化するステップ
に従って決定及び/又は監視される。上記PDE4D7のレベルは、本明細書において上述した核酸、タンパク質又は活性レベルに基づいて決定される。更に、試料中の本明細書において上記に定義された参照遺伝子のレベルが決定される。この実施の形態に関して好ましい参照遺伝子は、本明細書において上述したようにPDE4D5である。
上記「PDE4D7の発現レベルに依存して」という表現は、阻害性医薬組成物又は刺激性医薬組成物の投与の選択が、試料中のPDE4D7のレベルが好ましくはPDE4D5のような参照遺伝子と比較して決定された後になされることを意味する。
本発明の特に好ましい実施の形態では、増加した及び/又は増加しているPDE4D7のレベルの場合は本発明に係る阻害性医薬組成物が投与され、減少した及び/又は減少しているPDE4D7のレベルの場合には本発明に係る刺激性医薬組成物が投与される。
これに関連して用いられる「増加した」という用語は、検査試料中のPDE4D7遺伝子の発現のレベルが、対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇した、又は、PDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中の参照遺伝子の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は参照遺伝子の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上上昇したことを意味する。具体的な実施の形態では、参照遺伝子の発現もまた、追加の遺伝子又はマーカー、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して標準化又は調節される。好ましい対照試料又は基準点として、非癌性の対照物、健康な組織、健康な個体から得られる組織若しくは細胞、良性腫瘍の組織又はそれらから得られたデータ等が用いられる。代替として、任意の他の対照試料又は対照点も用いられ得る。
上記「増加している」という用語は、ある期間にわたって増大する傾向がある、すなわち、例えば、4週、6週、2か月、4か月、6か月、8か月、12か月、1.5年、2年、2.5年毎等に繰り返される決定ステップの後、より高くなっている適宜に決定される発現の値を意味する。従って、「増加している」PDE4D7の発現レベルは、検査期間毎に0.5ないし100%を上回るまで、好ましくは、10%、20%、30%、40%、50%等上昇する。当業者は知っているように、増加そのものは検査の頻度に依存し、それに応じて有意性が調整される。
好ましい実施の形態では、増加した又は増加しているPDE4D7のレベルは、前立腺がんの成長の初期の段階において、すなわち、ホルモン感受性前立腺がんの腫瘍の段階にあるまで決定される。代替として、組織学的決定が前立腺腫瘍の病期診断についての独立した情報を与える。そのような独立した決定に依存して、良性の前立腺腫瘍の病期又はホルモン依存性の腫瘍の病期が診断される。この場合、(非癌性の又は健康な対象物又は病期と比較して)増加した又は増加しているPDE4D7のレベルは、本発明に係る阻害性医薬組成物の投与をもたらす。
代替として、PSAのレベルが更に決定される。2.0ないし3.0ng/ml未満の低いPSAレベルが生じた場合、増加した又は増加しているPDE4D7のレベルは、本発明に係る阻害性医薬組成物の投与をもたらす。
これに関連して用いられる「減少した」という用語は、検査試料中のPDE4D7遺伝子の発現のレベルが、対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく又は対照試料中のPDE4D7の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上低下した、又は、PDE4D7遺伝子の発現が、対照試料中の参照遺伝子の発現と比較して、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%若しくは50%よりも大きく減少した又は参照遺伝子の発現と比較して、少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍若しくはそれ以上減少したことを意味する。具体的な実施の形態では、参照遺伝子の発現もまた、追加の遺伝子又はマーカー、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して標準化又は調節される。好ましい対照試料又は基準点として、非癌性の対照物、特にホルモン感受性又はホルモン依存性前立腺がんの組織又はそれから得られるデータ等が用いられる。代替として、任意の他の対照試料又は対照点も用いられる。
上記「減少している」という用語は、ある期間にわたって小さくなる傾向がある、すなわち、例えば、4週、6週、2か月、4か月、6か月、8か月、12か月、1.5年、2年、2.5年毎等に繰り返される決定ステップの後、より小さくなっている適宜に決定される発現の値を意味する。従って、「増加している」PDE4D7の発現レベルは、検査期間毎に0.5ないし100%を上回るまで、好ましくは、10%、20%、30%、40%、50%等上昇する。当業者は知っているように、減少そのものは検査の頻度に依存し、それに応じて有意性が調整される。
好ましい実施の形態では、減少した又は減少しているPDE4D7のレベルは、PDE4D7の増加後、ホルモン感受性前立腺がんが既に決定された腫瘍の段階までに決定される。代替として、組織学的決定が前立腺腫瘍の病期診断についての独立した情報を与える。そのような独立した決定に依存して、ホルモン感受性の腫瘍の病期が診断される。この場合、(始めの腫瘍の病期と比較して)減少した又は減少しているPDE4D7のレベルは、本発明に係る刺激性医薬組成物の投与をもたらす。
代替として、血液中のPSAのレベルが更に決定される。約20ng/mlの、例えば、17、18、19、20、21、22、23、24、25ng/ml等の及び/又はより高いPSAレベルが生じた場合、減少した又は減少しているPDE4D7のレベルは、本発明に係る刺激性医薬組成物の投与をもたらす。
更に具体的な実施の形態では、本発明は、ある期間にわたって、すなわち、例えば、4週、6週、2か月、4か月、6か月、8か月、12か月、1.5年、2年、2.5年、3年、4年又は任意の他の適切な期間毎等に繰り返される決定ステップの後、好ましくは本明細書において上述した参照遺伝子の決定と組み合わせたPDE4D7の決定を含む前立腺がんの成長を監視する方法を想定している。この方法は、対象物、例えば、非癌性の対照物、癌性の対照物又は同じ個体から得られる以前のデータと比較してPDE4D7のレベルが増加又は減少したことを示すデータを与える。これらのデータは、経時的なPDE4D7の発現曲線を表す又は作るために用いられる。当業者には既知の適切な統計的方法を活用して、上記曲線内における位置が決定される。上記曲線内における、すなわち、上記曲線の増大した部分又は低下した部分における位置に依存して、ホルモン依存性/ホルモン感受性前立腺がん又はホルモン抵抗性前立腺がんの存在又は今後の成長が診断される。それに応じて、本発明に係る阻害性医薬組成物又は本発明に係る刺激性医薬組成物の使用が考えられる。好ましくは、任意のそのような決定は、二次バイオマーカー、例えば、前立腺がんのバイオマーカー、特にPSAの決定と組み合わされる。(2.0ないし4.0ng/mlまでの)低いPSAレベルの場合、PDE4D7データは、初期の前立腺がん、すなわち、良性又はホルモン依存性/ホルモン感受性の前立腺がんについて解析される。(約20ng/mlよりも高い、例えば、約30、40又は50ng/mlの)より高いPSAレベルの場合、PDE4D7データは、より進行した前立腺がん、すなわち、ホルモン抵抗性前立腺がんについて解析される。
本発明に係る医薬組成物は、当業者には既知の種々のデリバリーシステム、例えば、リポソーム中におけるカプセル化、微粒子(miroparticle)、マイクロカプセル、化合物を発現させることができる組み換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス、レトロウイルス又は他のベクタの一部としての核酸の構築等を活用して患者、被験体又は個体に投与される。導入の方法は、局所性、経腸又は非経口の方法であり、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、吸入、硬膜外及び経口の投与法を含んでいる。上記組成物は、任意の簡便な投与法、例えば、注入若しくはボーラス注入により、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸着により又は吸入により投与され、他の生物学的に活性な化学物質とともに投与され得る。投与は、全身的又は局所的である。局所投与の好ましい方法は、直接注入による方法である。
他の実施の形態では、上記医薬組成物は、関心のある部位に直接的に注射針を誘導するために用いられる画像化デバイスの使用によって内臓器官、体腔等に直接的に送達される。上記医薬組成物は、また、外科的介入時に疾患の部位に投与される。更に他の実施の形態では、上記組成物は、放出制御システムにおいて送達される。
好ましくは、上記医薬組成物は、経口、局所又は全身性の投与に好適な形態である。好ましい実施の形態では、上記医薬組成物は、局所投与、経口投与又は全身投与される。
本発明の具体的な実施の形態では、上記阻害性医薬組成物は、個体を階層化する免疫学的検定後又は本明細書において上述した前立腺がんの適格性に関して個体を認定する方法が実行された後に、特に、PDE4D7の増加したレベルを有するような個体の分類の際に投与される。更なる実施の形態では、上記医薬組成物は、治療効果のある量の本明細書において上述した本発明の医薬組成物の成分及び治療上受け入れられるキャリアを有している。上記「治療上受け入れられる」という用語は、動物に及びより詳細には人間に使用するために規制機関又は他の一般的に承認されている薬局方により許可されていることを意味する。上記「キャリア」という用語は、それらを用いて治療が行われる希釈剤、アジュバント、賦形剤(excipient)又は媒介物(vehicle)を意味する。そのようなキャリアは、治療上受け入れられる。すなわち、使用される量及び濃度で受容体に対して毒性がない。
一般に、上記成分は、例えば、活性物質の量を示すサシェット又はアンプルのような密閉された容器内の冷凍乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として単位投薬量の形で単独で与えられるか又は混合される。
本発明の医薬組成物は、中性又は塩の形態として構築される。
好ましくは、上記医薬組成物は、直接的に又は当業者には既知の任意の適切なアジュバントと組み合わせて投与される。本発明の医薬組成物は、動物、好ましくは哺乳動物に投与される。本明細書において用いられる「哺乳動物」は、当業者に広く理解されている意味と同じ意味を持つことが意図されている。特に、「哺乳動物」は、人間を含んでいる。
上記「投与される」という用語は、前述の組成物の治療効果のある投薬量の投与を意味する。「治療効果のある量」によって、投与された効果をもたらす投薬量が意味され、好ましくは、この効果はPDE4D7の減少及び分解である。正確な投薬量は、治療の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認できる。当該分野において既知であり、上述したように、全身的送達対局所的送達についての調節、年齢、体重、全身の健康、性別、食生活、投与時間、薬物相互作用及び状態の重症度が必須であり、当業者による日常的な実験によって確認できる。
本発明に係る医薬組成物の活性成分又は化合物の濃度は、意図した投薬計画、意図した使用期間、当該組成物の全ての成分の正確な量及び割合並びに当業者には既知の更なる要素及びパラメータに更に調節される。
本発明に係る活性物質又は化合物は、単独で又は他の治療と組み合わせて投与される。好ましい実施の形態では、本発明の医薬組成物は、抗がん治療、例えば、従来の抗前立腺がん治療と組み合わせて投与される。
本発明の医薬組成物は、また、当業者には既知の任意の適切な保存剤を有していてもよい。
更に、本発明に係る製剤(preparation)は、抗酸化性、フリーラジカル捕捉剤、抗紅斑性、抗炎症性又は抗アレルギー性の作用を持つ化合物を、当該作用を補完する又は高めるために有していてもよい。
本発明の他の実施の形態では、本明細書において上記に定義された医薬組成物の活性成分は、適切な担体タンパク質と、例えば、IgFc受容体タンパク質又はポリマIg受容体と融合する。好ましくは、本明細書において上記に定義されたPDE4D7の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物は、融合タンパク質として与えられる。融合パートナは、N又はC末端に与えられる。
本発明に係る医薬組成物が本明細書において上記に定義された生細胞又は生きた治療の形で投与されるステップとなる場合、形質転換された又は調製された細胞は、当業者には既知の任意の適切な形で患者に投与される。好ましくは、生体の治療は、102から1012の細胞の量、好ましくは、103から108の細胞の量の微生物、例えば、上記に説明された乳酸菌を有する組成物の形で投与される。
本発明の更に好ましい実施の形態では、医薬組成物又は薬剤中の2つ又はそれ以上の成分間の割合が、当業者の知識により適宜に調節される。
本発明の医薬組成物の成分に関する最適な割合及び/又は投薬量の範囲を特定するのを支援するために、好適な検定がオプションで使用される。正確な投薬量及び本明細書において上記に定義された医薬組成物の成分間の割合は、とりわけ、投与の経路及び病気又は疾患の正確な型に依存し、専門家の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。効果的な投薬量及び成分比率は、体外又は(動物の)モデル検査システムから得られる投薬量−応答曲線から推定される。
典型的な投薬量は、例えば、0.001ないし1000μgの範囲内であるが、特に前述した要素を考慮すると、この例示的な範囲を下回る又は上回る投薬量が想定される。
他の観点では、本発明は、本発明に係る阻害性又は刺激性医薬組成物の成分を有する医療用キットに関係がある。好ましくは、本発明は、(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質;(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物;(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物;(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸;(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA;(f)PDE4D7のアンチセンス分子;(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA;(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ;(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体;及び(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の群から選択された少なくとも1つの要素を有する悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防のための医療用キットに関係がある。
本明細書において上記に定義された医薬組成物の投与に関連して用いられる医療用キット、特に本発明に係るキットは、前立腺がん、例えば、悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防のために用いられる。
本発明によれば、医療用キットの成分は、1つ又はそれ以上の容器又は別個の物に含まれている。上記成分は、好ましくは、医薬組成物又は薬剤として構築され、より好ましくは、本発明の医薬組成物に関連して本明細書において上述したように構築され、例えば、好適な医薬担体等を有する。本発明の医薬組成物に関連して本明細書において上述したような局所投与のための製剤が特に好ましい。本発明に係る医療用キットは、また、オプションで医療用キットの使用法(use)又は使用(equipment)を示す文書も有していてもよい。好ましくは、本発明の医療用キットに含まれる説明書は、推奨される治療の選択肢、投薬計画等を有する。上記キットは、また、使用説明書を有していてもよい及び/又は使用法、投与量等ついての追加の情報を与えてもよい。
本発明の医療用キットは、当業者には既知の任意の適切な投薬計画に従って患者に投与される。上記医療用キット又はキットの構成要素は、他に指示がない限り、好ましくは、週に1回、より好ましくは、週に2回、3回、4回、5回又は6回、最も好ましくは、毎日及び/又は1日に2回又はそれ以上与えられる。治療の進行の間、投薬が非常に長い時間間隔で与えられるとともに、必要な場合には、非常に短い時間間隔で、例えば、一日に数回与えられる。好ましいケースでは、治療に対する反応が、本明細書において説明された方法及び当業者には既知の更なる方法を用いて監視され、それに応じて、投薬、例えば、必要な場合には、量及び/又は組成が最適化される。進行は定期的な評価により監視される。上記医療用キットは、併用治療法、すなわち、他の薬剤又は薬品との、例えば、抗生物質、抗ウイルス薬又は免疫グロブリンIgG若しくはIgA、細胞毒性抗がん剤との同時投与において使用されることも想定され、好ましくは、医療用では、阻害性医薬組成物、抗ホルモン剤、より好ましくは本明細書において上述した抗アンドロゲンを含んでいる。
更に具体的な観点では、本発明は、前立腺がん、特に本明細書において上記に定義された悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療のための医療用キットの成分とともに本明細書において上記に定義されたPDE4D7の発現の決定のための成分を有するキットに関係がある。
本発明の更に特に好ましい実施の形態では、診断、検出、監視若しくは予知される、その進行が診断、検出、監視若しくは予知される又は上述した医薬組成物を用いて又は本発明に係る治療の方法によって治療されるがんは、ホルモン感受性ステージIないしIVの前立腺がん、ホルモン感受性再発前立腺がん又はホルモン感受性転移前立腺がんである。
本明細書において用いられる「ホルモン感受性ステージIないしIVの前立腺がん」は、国際対がん連合(UICC)によるTNM分類に従ってステージIないしステージIVに分類される前立腺がんを意味する。好ましくは、上記用語は、以下のT−原発前立腺腫瘍の分類一覧を遂行する前立腺がんの分類に関係がある。
TX.原発腫瘍が評価できない
T0.原発腫瘍を認めない
T1.触知不能又は画像では診断不可能な明らかでない腫瘍
T1a.組織学的に切除組織の5%以下に偶発的に発見される腫瘍
T1b.組織学的に切除組織の5%を超える偶発的に発見される腫瘍
T1c.針生検により確認される腫瘍(例えば、PSAの上昇による)
T2.前立腺に限局する腫瘍(針生検により片葉又は両葉に発見され、触知不能又は画像では診断不可能な腫瘍はT1cに分類される。)
T2a.片葉の1/2以内を侵している腫瘍
T2b.片葉の1/2を超えて侵しているが、両葉には及ばない腫瘍
T2c.両葉を侵している腫瘍
T3.前立腺被膜を超えて広がる腫瘍(前立腺尖部又は前立腺被膜内(ただし、被膜を超えない)への浸潤はT3ではなく、T2に分類される。)
T3a.被膜外へ進展(一側性又は両側性)
T3b.精嚢に浸潤する腫瘍
T4.精嚢遺体の隣接組織(膀胱頚部、外括約筋、直腸、挙筋又は骨盤壁)に固定された又は浸潤する腫瘍
N1.所属リンパ節に浸潤する腫瘍
M1a.所属リンパ節以外に浸潤する腫瘍
M1b.骨に浸潤する腫瘍
M1c.他の部位に浸潤する腫瘍
G.病理組織学的分化度
GX.分化度が評価できない
G1.高分化(軽度異型)(グリーソン2−4)
G2.中分化(中等度異型)(グリーソン5−6)
G3−4.低分化/未分化(高度異型)(グリーソン7−10)
Tのカテゴリは、身体的検査、画像化、内視鏡、生体及び生化学的検査であり、Nのカテゴリは、身体的検査及び画像化検査であり、Mのカテゴリは、身体的検査、画像化、骨格調査及び生化学的検査であり、悪性前立腺がんのステージIないしIVは以下の体系に対応する。
ステージI: T1a;N0;M0;G1
ステージII: T1a;N0;M0;G2,3−4、又は
T1b,c;N0;M0;任意のG、又は
T1,T2;N0;M0;任意のG
ステージIII: T3;N0;M0;任意のG
ステージIV: T4;N0;M0;任意のG、又は
任意のT;N1;M0;任意のG、又は
任意のT;任意のN;M1;任意のG
ステージIVは、ホルモン抵抗性前立腺がんを含まない。
本明細書において用いられる「ホルモン感受性再発前立腺がん」は、成長及び進行が制御され、男性ホルモンに依存する前立腺がんを意味している。そのような男性ホルモンの好ましい例は、アンドロゲンである。
本明細書において用いられる「ホルモン感受性転移前立腺がん」は、成長及び進行が制御されず、男性ホルモンに依存しない前立腺がんを意味している。そのような男性ホルモンの好ましい例は、アンドロゲンである。
以下の実施例及び図面は、例示の目的のために与えられている。従って、実施例及び図面は限定するように解釈されるべきではないことが理解される。当業者は、明らかに本明細書で挙げられた原理の更なる変更を目論むことができるであろう。
実施例1−定量的RT−PCRアッセイ
図1A及びBに示されている個体及び試料から、RNAを分離し、標準手順によりcDNAに転写した。
qRT−PCR:材料及び方法
DNAのコンタミネーションがないことを確実にするために、デオキシリボヌクレアーゼを用いてRNA試料を処理した。cDNAの合成の前に、デオキシリボヌクレアーゼI(インビトロジェン社)を用いて37℃で30分間RNA試料を処理した。その後、製造業者のガイドラインの通りにqPCR解析のための一本鎖DNAを合成するためにスーパースクリプトVilo(インビトロジェン社)を用いて1μgのRNA試料を処理した。その後、リボヌクレアーゼH1を用いて37℃で30分間DNA試料を処理した。
結果として生じたDNAを50ないし60ng/μlの最終濃度に希釈し、その5μlを96ウェルの光学反応プレートの各反応ウェルに加えた。
以下の手順に従って、15μlの反応体積でABI Prism 7300を用いて定量的PCR反応を行った。
ROX添加7.5μlPlatinum qPCR SyperMix-UDG(インビトロジェン社)
2.2μlヌクレアーゼフリー水
0.1μl 100pmol/μlプローブ
0.1μl 100pmol/μl順方向プライマ
0.1μl 100pmol/μl逆方向プライマ
各反応ウェルの体積の合計は、cDNAを含めて15μlであった。
qRT−PCR:プライマ及びプローブ(TAQMAN)
PDE4D7に関するRT−PCRのために以下のオリゴヌクレオチドプライマ及びプローブを用いた。すなわち、101の長さの生成物を生じる順方向プライマ5´−TGCCTCTGAGGAAACACTAC−3´(SEQ ID NO:3)、逆方向プライマ5´−GCTGAATATTGCGACATGAAAG−3´(SEQ ID NO:4)を用いた。
プローブとして、配列5´−CCAGTAATGAAGAGGAAGACCCTTTCCGC−3´(SEQ ID NO:5)を用いた。プローブのセットは、PDEアイソフォームの特異的N末端領域を標的にするように設計した。単位複製配列(amplicon)は、ABI Prism技術に基づくTaqmanアッセイのために最適範囲内にあるように設計した。
データの完全性を最大するために、全てのアッセイを4通り行った。GAPDH参照プローブも含められており、これを全ての連続データの基準とした。
qRT−PCR:データ解析
種々のRT−PCRの実験を標準化及び比較するためにddCt法を行った。マニュアルで閾値を観察することにより、Ct値を得た。各プローブのセットは、同等の効率において指数関数的に増幅していた。特に以下のステップを行った。
1)実験試料(ES)のdCtを与えるために、参照物と関心のある遺伝子(関心のある遺伝子から差し引かれたGAPDH)とのサイクル数(Ct)の差を計算した。
2)(LNCaP)(C)に対して比較される基準として1つの試料を選択し、そのdCtを計算した。
3)dCt(ES)−dCt(C)=ddCtによりサイクル数の変化を導き出した。
4)各サイクル後のDNAの倍加を考慮するために、2−ddCtにより最終的な比較(comparable)発現値を導き出した。従って、LNCaPと比較したmRNAの量が示された。
この演算は、(1の値を持つ)LNCaPと比較した値を与える。すなわち、1よりも大きい任意の値は発現の増加であると見なし、1よりも小さい値は発現の減少であると見なした。
従って、全てのPCR反応の伸長効率は、1の値をもたらすある範囲内にあると仮定した。
種々のRT−PCRの実験を標準化及び比較するための比率法
各プローブのセットについて、Ct(サイクル数)値を得た。これは、指数増殖期の間に増幅曲線を横切るベースラインを見つけることにより引き出した。ベースラインは、各実験において得られた曲線に従って動的に生成した。その後、GOIのCt(交差又はサイクル)値を基準のGAPDHのCt値から差し引いた。式Ct(GAPDH)−Ct(GOI)=dCtによって、GOIのCt値は参照遺伝子よりも常に大きいと仮定すると、dCtの値は負の数、すなわち−dCtの値になる。各サイクルの倍加作用に基づいて、比較発現値=2−dCtによって絶対値を決定した。
この計算から得られる値は非常に小さいため、ハンドリング上の目的のために上記値を1000倍した。
正常、良性及び悪性の前立腺組織試料のGAPDHに対するPDE4D7の相対的発現レベルのボックスプロットが図2から得られる。特に、この図では、正常な/対照組織の試料(7)と良性組織の試料(31)と悪性組織の試料(10)との比較が示されている。
良性対悪性(中央値の差)の0.00025のp値のT検定(2-tailed)に基づいて、結果が得られた。この図は、一方では正常及び良性組織と他方では悪性前立腺組織との間に相対的な発現の著しい増加が存在することを示している。
図3には、正常、良性及び悪性の前立腺組織試料のGAPDHに対するPDE4D7の相対的発現レベルの散布図が与えられている。この図には、正常、良性及び悪性の前立腺組織中の個々のPDE4D7の相対的発現値が示されている。発現値は、GAPDHの発現に対して与えられている。結果は、4.7の任意のカットオフのアプリケーションが70%の感度において92%の良性の前立腺試料と悪性の前立腺試料との区別ための診断テスト特異性を与えることを示している。
図4には、良性対悪性の前立腺試料中のPDE4D7の発現のROC曲線解析が与えられている。ここでは、良性対悪性の前立腺組織中の(GAPDHと比較した)相対的なPDE4D7の発現に基づいてFP対TPの分類をプロットすることにより、良性対悪性の前立腺組織の相対的なPDE4D7の発現値を解析した(上記ボックスプロットを参照されたい。)。AUC(曲線下面積)は0.91で計算した。
説明及び比較のために、図5に、良性及び種々の病期の悪性の前立腺の病気を患っている90人の男性のヒト血液のPSA値のボックスプロットが示されている。この図において、良性の前立腺の病気を患っている男性(30)と、小さいがんを持つ悪性の前立腺の病気を患っている男性(30)と、大きいがんを持つ悪性の前立腺の病気を患っている男性(30)との比較を行った。この図は、良性の前立腺腫瘍と悪性の腫瘍との間の発現の増分がPDE4D7の結果と比較してあまり顕著ではないことを示している。
図6には、良性の前立腺の病気を患っている男性対種々の病期の悪性の前立腺の病気を患っている男性の血液のPSAレベルの対応するROC曲線解析が与えられている。ここでは、良性の病気対悪性の病気の血液中のPSA値の発現に基づいてFP対TPの分類をプロットすることにより、良性の男性(30)対悪性の男性(小さいがん30、大きいがん30)の前立腺試料の血液のPSAの発現値を解析した(上記ボックスプロットを参照されたい。)。AUC(曲線下面積)は0.7で計算した。
実施例2−ヒト組織の試料(Origene社のヒト前立腺がん組織パネルI及びII)を用いた定量的RT−PCRアッセイにおけるPDE4D7及びPDE4D5の検出
種々の患者のパネルからヒトPDE4D7及び参照遺伝子としてのヒトPDE4D5の相対的な遺伝子の発現を評価した。
材料及び方法
PDE遺伝子発現実験のqPCR測定に用いた試料の詳細は、以下の表1及び表2に与えられている。
表1:Origene社のヒト前立腺がん組織パネルI(HPRT501、Origene社)
(表注:gender(性別)、Male(男性)、tissue(組織)、Prostate/Prostate(前立腺/前立腺)、appearance(外観)、Normal(正常)、Lesion(病変)、Tumor(腫瘍)、diagnosis(診断)、Adenocarcinoma of prostate(前立腺がん)、Carcinoma of bladder(膀胱がん)、Carcinoma of bladder、urothelial(膀胱、尿路上皮がん)、Hyperplasia of prostate(前立腺の過形成)、atypical(異型)、Glandular hyperplasia of prostate(前立腺の腺過形成)、Adenoma of prostate(前立腺の腺腫)、tumor grade(腫瘍悪性度)、Gleason Score(グリーソンスコア)、Poorly differentiated(低分化)、Not Reported(報告なし)、differentiated(分化)、NULL(空))
表2:Origene社のヒト前立腺がん組織パネルII(HPRT502、Origene社)
(表注:sample diagnosis from pathology verification(病理検査からのサンプル診断)、within normal limits(正常範囲内)、not applicable(不適用)、Prostate/Lymph node(前立腺/リンパ節)、metastatic(転移性)、表1の表注参照)
以下に説明する実験に用いたOrigene社のヒト前立腺がん組織パネルI及びIIは、全て男性患者(48〜87歳)から得られた試料を有している。「tissue」のカラムは、手術中に採取された組織を定義している。「appearance」のカラムは、RNAを分離するために用い、最終的にはqPCRの測定のために用いた組織切片の病理学的状態を示している。これに関連して、「Normal」は、正常な隣接組織(NAT)を意味し、これは(通常、前立腺全摘出術又はTURP(経尿道的前立腺切除)による)手術の材料から採取される組織であるが、正常/健康な形態及び組織に見え、従って、対照物として用いられる。「Lesion」の定義は以下の通りである。すなわち、病理学的診断で何らかの異常がある(しかしながら、腫瘍ではない。)という点で正常ではない非腫瘍性組織である。これは、炎症、良性の過形成のような病理組織を含んでいる(例:大腸炎、クローン病、子宮内膜症、肺気腫、気管支炎)。「Tumor」は、病理学的診断に基づく良性又は悪性である腫瘍性組織(例えば、腺腫、腺癌、肉腫)と定義される。「diagnosis」のカラムは、予定された手術の理由を記述している(例えば、患者9は膀胱がんであるが、前立腺がん組織も採取された。)。「tumor grade」のカラムは、該当する場合(すなわち、腫瘍組織の場合)にグリーソンスコアを記述している。「normal」、「lesion」及び「tumor」のカラムは、RNAの分離に用いた組織切片内に組織学的に見出される対応する組織の割合を規定している。Origene社のヒト前立腺がん組織パネルIは、7個の正常試料(正常隣接組織、NAT)、11個の過形成試料(BPH−良性前立腺過形成)、20個の病変試料及び10個の前立腺腫瘍試料を含んでいる。腫瘍試料のうちの7個が7又はそれよりも高いグリーソンスコアを有する腫瘍からのものである。Origene社のヒト前立腺がん組織パネルIIは、8個の正常試料(正常隣接組織)、1個の過形成試料(BPH−良性前立腺過形成)及び39個の前立腺腫瘍試料を含んでいる。腫瘍試料のうちの10個が6までのグリーソンスコアをランク付けされた供与体に由来するものであり、29個が7又はそれよりも高いグリーソンスコアを有する腫瘍からのものである。
ヒトPDE4D5に関して用いたプライマ配列
センスプライマ配列:GCAGCATGAGAAGTCCAAGA(SEQ ID NO:7)
アンチセンスプライマ配列:TGTATGTGCCACCGTGAAAC(SEQ ID NO:8)
プローブ配列:TCGGTTTCTCCCAAGCTCTCTCCAGTGATAAACCGA(FAM標識)(SEQ ID NO:12)
ヒトPDE4D7に関して用いたプライマ配列
センスプライマ配列:CGGAATGGAACCCTATCTTGTC(SEQ ID NO:10)
アンチセンスプライマ配列:TTGGTCGTTGAATGTTCTCTGAT(SEQ ID NO:11)
プローブ配列:CCTCTCGCCTTCAGACAGTTGGAACAAGGAGAGG(FAM標識)(SEQ ID NO:12)
PDE4D7及びPDE4D5に特異的なプライマ(SEQ ID NO:7,8,10及び11)は、定量的リアルタイムPCR(qPCR)を行うためにFAMプローブとプレミックスし、製造業者(Primer Design社、UK)の説明に従って1:20の希釈で用いた。ヒトcDNA試料(表1及び2参照)は、標準的なqPCR対応の96ウェルのマイクロタイター(MT)プレートに配した。48人の異なる患者から得た48の組織試料は、1プレートにつき用いた48ウェルのそれぞれが約2〜3ngのRNAを逆転写cDNAを含む状態で96ウェルMTプレートごとに配した。
各ウェルのcDNA含量は、cDNA含量の更なる標準化が必要ないように、βアクチン、GAPDH、β−2−ミクログロブリンのようなハウスキーピング遺伝子についてのqPCRに基づいて標準化した。
MTプレートの用いたウェルのそれぞれに対して、15μLのApplied Biosystems社のGeneAmp mastermix(2x)、13.5μLのRNAse/DNAseフリー水及び2μLのPrimerDesign PerfectProbe primermix(Primer Design社、UK)を加えた。以下のPCRのプロトコルで、すなわち、50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、蛍光をレコードする間50℃で30秒、72℃で15秒及び最後の3ステップを50回繰り返して全ての試料を解析した。
相対的遺伝子発現値を全て計算するために、以下の手順を用いた。すなわち、40以上又は16未満のCT値は質がよくないという理由で排除した(ここで調べた遺伝子は、平均して約31のCT値を有していた。)。種々のqPCRプレートにわたってCT値を標準化するために、「正常(Normal)」の組織試料のCT値の中央値を計算し、この値に対する「病変(Lesion)」、「過形成(Hyperplasia)」及び「腫瘍(Tumor)」試料の相対的発現値を、「病変」、「過形成」及び「腫瘍」試料のCT値と「正常」試料のCT値との比を計算することによって決定した。典型的には、これは、約1の相対的発現値という結果になった。(同じパネルの複数のプレートを用いて)遺伝子発現を複数回解析した場合には、個々の試料それぞれの相対的発現値を平均化した。
ヒト前立腺組織中のヒトPDE4D5の相対的発現
ヒトPDE4D5アイソフォームの遺伝子発現レベルは、上述したヒト前立腺組織に関して決定した。相対的発現レベルは、4つの定義された前立腺組織(「正常」、「病変」、「過形成」、「腫瘍」)によって決定された。グループ「病変」、「過形成」及び「腫瘍」についての発現レベルは、「正常」グループのCT値の中央値に対する「病変」、「過形成」、「腫瘍」グループの個々の患者の組織それぞれについてCT値の比を求めることによって標準化された値として上記のように計算した。「正常」グループの個々の患者の組織それぞれについても、このグループの発現値の中央値が1であるように同じことを行った。
図7及び図8から分かるように、正常な前立腺組織と比較した異常性(病変、過形成及び腫瘍)前立腺組織については、ヒトPDE4D5に関する大きく異なる発現は検出されなかった。異常であるが非がん性である(病変、過形成)組織対腫瘍組織の比較のための全てのp値が0.5よりも小さかった。
ヒト前立腺組織中のヒトPDE4D7の相対的発現
ヒトPDE4D7アイソフォームの遺伝子発現レベルは、上述したヒト前立腺組織に関して決定した。相対的発現レベルは、4つの定義された前立腺組織(「正常」、「病変」、「過形成」、「腫瘍」)によって決定された。グループ「病変」、「過形成」及び「腫瘍」についての示された発現レベルは、「正常」グループのCT値の中央値に対する「病変」、「過形成」、「腫瘍」グループの個々の患者の組織それぞれについてCT値の比を求めることによって標準化された値として上記のように計算した。「正常」グループの個々の患者の組織それぞれについても、このグループの発現値の中央値が1であるように同じことを行った。
ヒトPDE4D7の遺伝子発現が正常な前立腺組織に対して種々の腫瘍組織において平均して著しく上昇しているかどうかを調べるために、スチューデントt検定を行った。種々のペアワイズ比較から得られたp値は、良性(病変+過形成)対腫瘍のT検定でp=0.0035、正常対腫瘍のT検定でp=0.092、過形成対腫瘍のT検定でp=0.040、病変対腫瘍のT検定でp=0.031であった。
図9及び10並びに示された上記p値から分かるように、悪性前立腺組織と比較して異常性(病変、過形成)前立腺組織については、PDE4D7に関する大きく異なる発現が検出された。
PDE4D7の発現の受信者動作特性(ROC)曲線解析
続いて、種々のペアワイズ比較のためにAUC(曲線下面積)を決定するため、受信者動作特性(ROC)曲線解析を行った。図11に、診断能力を評価するためのPDE4D7遺伝子発現の受信者動作特性曲線が示されている。このROC解析は、PDE4D7の発現レベルに基づく良性の前立腺組織と悪性の前立腺組織との区別が約80%の感度(偽陰性率)レベルにおいて80%よりも大きい特異性(偽陽性率)で可能である証拠を与えた。
前立腺PDE指数(PPI)−良性の前立腺の病気と悪性の前立腺の病気とを効率的に区別するためにヒトPDE4D5に対して標準化されたヒト前立腺組織中のヒトPDE4D7の相対的発現
上述したヒト前立腺組織についてヒトPDE4D7及びヒトPDE4D5アイソフォームの遺伝子発現レベルを決定した。4つの定義された前立腺組織(「正常」、「病変」、「過形成」、「腫瘍」)によって相対的な発現レベルを決定した。PDE4D7の相対的発現レベルは、ヒトPDE4D5の個々のCt値からヒトPDE4D7の個々のCt値を差し引くことによって計算した。典型的には、これは、約0(+2から−2まで)の「正常」の発現値の分布をもたらす。また、非腫瘍(「正常」、「病変」、「過形成」)試料と腫瘍(「腫瘍」)試料との最適なカットオフ値は、−1から+1までのような値である。
この手法は、PDE4D7のCT値と内部対照物、すなわちPDE4D5との比較を有利に可能にする。従って、実際の検査の場で常に入手可能なわけではない幾らかの正常な細胞に対して該当する臨床的患者のグループの試料を標準化する必要がない。この検査は、デルタ(Ct[ヒトPDE4D5]−Ct[ヒトPDE4D7])として定義される前立腺PDE指数を形成するために内部参照対照物としてのヒトPDE4D5を用いて単純な検定として実行され得る。
前立腺PDE指数は、悪性の前立腺の病気と良性の前立腺の病気との区別のための最適なカットオフが−2から+2の間、好ましくは0(ゼロ)であるように実験的に実行した。上記アッセイのカットオフ値は、レトロスペクティブに収集された臨床試料に関して測定された病歴データに基づいて確立される。PPIは、任意の正の値が患者の悪性腫瘍の存在のリスクの上昇を引き起こし、任意の負の値が悪性の存在のリスクの減少を引き起こすが、むしろ、前立腺における非悪性の病変の存在を示すように解釈される。
種々の臨床的患者グループ間の平均発現値の差について統計的有意性を決定するために、スチューデントT検定を行った。このスチューデントT検定は、「病変+過形成」グループの平均値の見込みが、p=2.28E−11だけ異なることを示している。「正常」グループと「腫瘍」グループとの区別の場合、p=0.0003である。
図12及び13並びに示された上記p値から分かるように、悪性の前立腺組織と比較して異常性前立腺組織(病変、過形成)については、ヒトPDE4D7に関する著しく異なる発現が検出された。
PDE4D7の発現の受信者動作特性(ROC)曲線解析
続いて、種々のペアワイズ比較のためにAUC(曲線下面積)を決定するため、受信者動作特性(ROC)曲線解析を行った。図14に、診断能力を評価するためのPDE4D7遺伝子発現の受信者動作特性曲線が示されている。このROC解析は、前立腺PDE指数に基づく良性の前立腺組織と悪性の前立腺組織との区別が約80%の感度(偽陰性率)レベルにおいて80%よりも大きい特異性(偽陽性率)で可能である証拠を与えた。
前立腺PDE指数アッセイ−ヒトPDE4D5及びヒトPDE4D7の多重qPCRアッセイ
PDE4D5及びPDE4D7の両方の発現からPPIを決定するための検査手順を簡単にするために、単一qPCR反応において両方の遺伝子についてCT値を決定する多重アッセイを開発した。
上記のようなヒトPDE4D5及びPDE4D7用の同じプライマ及びプローブを用い、ヒトPDE4D5用のプローブの蛍光標識を異なるものにしたことのみを変更した。単一の多重qPCRアッセイにおいて両方の遺伝子を測定することができるように、特に、上記プローブのFAM色素をCy5色素(FAMの518nmでの最大発光に対し、670nmで最大発光する)に交換した。PDE4D5及びPDE4D7のプライマは、英国のPrimer Design社から入手し、プレミックスされたプローブとともに届けられた。
プレミックスされたプライマ/プローブアッセイの場合、PDE4D5:PDE4D7の1:1.5の比が最適に機能することが分かった。従って、1及び1.5μLのプレミックスされたプライマ/プローブアッセイを最終的なアッセイの体積が30μlのPCR混合物全体にそれぞれ加えた。
製造業者の説明に従ってPCRの手順を行った。すなわち、50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、蛍光(FAM及びCy5)をレコードする間50℃で30秒、72℃で15秒及び最後の3ステップを50回繰り返した。
種々の臨床的患者グループ間の平均発現値の差について統計的有意性を決定するために、スチューデントT検定を行った。このスチューデントT検定は、「病変+過形成」グループの平均値の見込みが、p=5.70E−06だけ異なることを示している。
図15及び16並びに示された上記p値から分かるように、前立腺PDE指標を決定するための多重アッセイの測定に基づく悪性の前立腺組織と比較して異常のある前立腺組織(病変、過形成)については、ヒトPDE4D7に関する著しく異なる発現が検出された。
PDE4D7の発現の受信者動作特性(ROC)曲線解析
続いて、種々のペアワイズ比較のためにAUC(曲線下面積)を決定するため、受信者動作特性(ROC)曲線解析を行った。図17に、診断能力を評価するためのPDE4D7遺伝子発現の受信者動作特性曲線が示されている。このROC解析は、前立腺PDE指数に基づく良性の前立腺組織と悪性の前立腺組織との区別が約80%の感度(Sensitivity)(偽陰性率)レベルにおいて80%よりも大きい特異性(Specificity)(偽陽性率)で可能である証拠を与えた。
実施例3−前立腺がん細胞の増殖に対するロリプラムの作用
エクセリジェンスアッセイのために、5000セルの播種値(seeding value)から37℃、5%CO2においてLNCaP細胞を成長させた。最終的なプレーティング体積は、200μlであった。E-Plate 96 wellのプレートをロシェ(Roche)社から得た(Cat NO 05232368001)。リアルタイムの電気インピーダンス測定中に成長データを得た。増殖能及び形態学的変化のないことを調べるために、アッセイの最初のプレーティングダウンフェーズの12時間後、すなわち12時間ないし60時間後に測定を行った。細胞は、アンドロゲンが存在しないと評価された。3通りの値のみのT検定を用いて、種々の成長速度の有意性を計算した。図18から分かるように、10μMのPDE4選択的阻害剤ロリプラムを添加したLNCaP前立腺がん細胞の培養は、細胞成長のリアルタイムの測定において細胞増殖の著しい抑制(p<0.01)をもたらす。細胞増殖の平均阻害レベルは、約50%であり、これは約10μMの化合物のIC50をもたらす。約2μMの体外のPDE4の50%阻害についての体外のIC50と比較して、10μMの体内のIC50は、PDE4の活性のために増殖阻害効果が大きいことを結論づける。
MTT成長アッセイのために、5000セルの播種値から37℃、5%CO2においてLNCaP細胞を成長させた。最終的なプレーティング体積は、200μlであった。増殖アッセイをプロメガ(Promega)社から得た(Cat NO G3582)。A590の吸光度の測定中に成長データを得た。増殖能及び形態学的変化のないことを調べるために、アッセイの最初のプレーティングの48時間後に測定を行った。細胞は、アンドロゲンが存在しないと評価された。3通りの値のみのT検定を用いて、最終的なA590の読み出しの有意性を計算した。図19から分かるように、10μMのPDE4選択的阻害剤ロリプラムを添加したLNCaP前立腺がん細胞の培養は、細胞成長の終点測定において細胞増殖の著しい抑制(p<0.01)をもたらす。細胞増殖の平均阻害レベルは、約50%であり、これは約10μMの化合物のIC50をもたらす。約2μMのPDE4インビトロの50%阻害についてのインビトロIC50と比較して、10μMのインビトロIC50は、PDE4の活性のために増殖阻害効果が大きいことを結論づける。
以下の追加の具体例を有する用途
アイテム1:悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるためのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)であって、悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、上記マーカーの発現が増加する当該ホスホジエステラーゼ4D7。
アイテム2:悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、検出、監視又は予知するための組成物であって、PDE4D7発現産物又はタンパク質に対する核酸親和性リガンド及び/又はペプチド親和性リガンドを有する当該組成物。
アイテム3:上記核酸親和性リガンド又はペプチド親和性リガンドが、造影剤として機能するために修飾されたアイテム2に記載の組成物。
アイテム4:上記親和性リガンドが、PDE4D7発現産物に対して特異的なオリゴヌクレオチドのセット、PDE4D7発現産物に対して特異的なプローブ、PDE4D7発現産物又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体であるアイテム2に記載の組成物。
アイテム5:悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、検出、監視又は予知するマーカーとしてのPDE4D7の使用。
アイテム6:悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を検出、診断、監視又は予知する方法であって、少なくとも試料中のPDE4D7のレベルを決定するステップを有する当該方法。
アイテム7:上記決定ステップが、核酸若しくはタンパク質のレベルの測定により又はPDE4D7の生物学的活性の決定により達成されるアイテム6に記載の方法。
アイテム8:測定された前記核酸若しくはタンパク質レベル又は測定された前記生物学的活性を対照レベルと比較する追加のステップを有するアイテム7に記載の方法。
アイテム9:悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を診断、監視又は予知する方法であって、良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別し、
(a)核酸若しくはタンパク質レベルの測定により又はハウスキーピング遺伝子、好ましくはGAPDHの生物学的活性の決定により試料中のPDE4D7のレベルを決定するステップと、
(b)核酸若しくはタンパク質レベルの測定により又はハウスキーピング遺伝子、好ましくはGAPDHの生物学的活性の決定により試料中のハウスキーピング遺伝子の発現のレベルを決定するステップと、
(c)PDE4D7の測定された核酸若しくはタンパク質レベル又は測定された生物学的活性を上記ハウスキーピング遺伝子、好ましくはGAPDHの発現に標準化するステップと、
(d)標準化された上記発現レベルを良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較するステップであって、上記カットオフ値は、約0.1から100の間、好ましくは約4.7であり、上記カットオフ値を上回る標準化発現レベルは、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示す当該ステップと
を有する当該方法。
アイテム10:少なくとも
(a)個体内においてPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)ステップ(a)において決定された上記発現を対照レベルと比較するステップと
を有するデータ収集の方法。
アイテム11:上記診断、検出、監視、予知又はデータ収集が、個体から得られる試料に関して行われるアイテム2に記載の使用又はアイテム6ないし10のいずれか一項に記載の方法。
アイテム12:悪性のホルモン感受性前立腺がん又は悪性のホルモン感受性前立腺がんへの進行を検出、診断、監視又は予知する免疫学的検定であり、少なくとも
(a)個体から得られた試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(b)対照試料中のPDE4D7の発現を検査するステップと、
(c)ステップ(a)とステップ(b)とのPDE4D7の発現の差を決定するステップと、
(d)ステップ(c)において得られた結果に基づいてがんの存在若しくは病期又はがんの進行を判断するステップと
を有する免疫学的検定であって、上記検査するステップは、PDE4D7に特異的に結合する抗体の使用に基づく当該免疫学的検定。
アイテム13:上記試料が、組織試料、生検試料、尿試料、尿沈渣試料、血液試料、唾液試料、精液試料又は循環腫瘍細胞を有する試料であるアイテム11に記載の方法又はアイテム12に記載の免疫学的検定。
アイテム14:(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、
(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、
(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、
(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、
(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、
(f)PDE4D7のアンチセンス分子、
(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、
(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、
(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体、及び
(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体
の群から選択された少なくとも1つの要素を有する医薬組成物。
アイテム15:(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、
(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、
(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、
(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、
(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、
(f)PDE4D7のアンチセンス分子、
(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、
(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、
(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体、及び
(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体
の群から選択された少なくとも1つの要素を有する悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防のための医薬組成物。
アイテム16:悪性のホルモン感受性前立腺がんの治療又は予防のための医薬組成物のための
(a)PDE4D7の活性を直接的に阻害する化合物、好ましくはPDE4D7酵素活性の拮抗物質、
(b)PDE4D7の活性を間接的に阻害する化合物、
(c)PDE4D7タンパク質の優性阻害体又はその生物学的に活性な同等物、
(d)PDE4D7の優性阻害体をコードし、発現させる核酸、
(e)PDE4D7に対して特異的なmiRNA、
(f)PDE4D7のアンチセンス分子、
(g)PDE4D7に対して特異的なsiRNA、
(h)PDE4D7発現産物に対して又はPDE4D7タンパク質に対して特異的なアプタマ、
(i)PDE4D7タンパク質に特異的に結合することができる小分子又はペプチド模倣体、及び/又は
(j)PDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体
の使用。
アイテム17:がん、好ましくは前立腺がん、より好ましくは悪性のホルモン感受性前立腺がんを検出、診断、監視若しくは予知するため又はがんの治療のためのPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体及び/又はPDE4D7タンパク質に対して特異的な抗体変異体の使用。
アイテム18:上記悪性のホルモン感受性前立腺がんが、ホルモン感受性ステージIないしIVの前立腺がん、ホルモン感受性再発前立腺がん又はホルモン感受性転移前立腺がんであるアイテム1に記載のホスホジエステラーゼ、アイテム2ないし4のいずれか一項に記載の組成物、アイテム5、11又は13記載の使用、アイテム6ないし11若しくは13のいずれか一項に記載の方法、アイテム12若しくは13に記載の免疫学的検定、アイテム14若しくは15に記載の医薬組成物又はアイテム16若しくは17に記載の使用。