JP2017211005A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
Description
車輪用軸受装置80は、懸架装置94に固定される外輪81と、外輪81に対して同軸に配置され、回転自在の内軸82とを備えている。内軸82は、ハブシャフト95の軸端に内輪96を一体に組み合わせて形成されている。
図5における左側の端部には、車輪(図示を省略)を取り付けるフランジ84が内軸82と一体に形成されている。内軸82の内周にはドライブシャフト85が組み付けられていて、エンジンの動力が伝達されている。車輪用軸受装置80では、車輪が取り付けられる側が車両の外側となるので、図5の左側をアウタ側といい、その反対側をインナ側という。
組合せシールを使用すると、シールリップ93のしめしろ、特に軸方向のしめしろを正確に組み付けることができるので、リップ摺接部からの異物の浸入を適切に防止することができる。しかしながら、軸受鋼から成る内輪96とステンレス鋼板から成るスリンガ91とは金属同士の嵌合であり、スリンガ91を内輪96に圧入する時に発生するキズ等、その嵌合面において微小なすきまの存在を回避することは困難である。このため、スリンガ91と内輪96との篏合面からの浸水を防止する必要があった。
特許文献2の密封装置89では、エンコーダ97の径方向内方に全周にわたって唇状片99を形成し、この唇状片99を内輪96と弾性接触させることによって、スリンガ91と内輪96との篏合面からの水浸入を防止している。
本発明の実施形態を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる車輪用軸受装置の一実施形態(以下、第1実施形態)における軸方向断面の要部拡大図である。第1実施形態の車輪用軸受装置10では、密封装置12の形態に特徴があり、その他の形態は従来の車輪用軸受装置80と同様である。このため、密封装置12及びその周辺の構成について図1によって詳細に説明し、従来構造(図5参照)と共通する構成については、図5を参照しつつ同一の符号を付して簡単に説明する。
なお、以下の説明では、回転軸線mの方向を軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向、回転軸線mの回りを周回する向きを周方向という。
内軸82は、ハブシャフト95と内輪96とが一体に組み合わされた形態である。内輪96は、ハブシャフト95のインナ側にはめ合わされた後、ハブシャフト95の軸端を塑性変形させて軸方向に押しつけられている。
ハブシャフト95のアウタ側端部には、フランジ84がハブシャフト95と一体に形成されている。フランジ84にはハブボルト100が複数本組み付けられている。フランジ84には、図示しない車輪がハブボルト100によって固定されており、車輪は、車輪用軸受装置10によって回転自在に支持されている。ハブシャフト95の内周にはドライブシャフト85が組み付けられている。
密封装置12は、シールリング13と、スリンガ14と、スリンガ14に貼り付けられたエンコーダ20とで構成されている。
芯金15は、SPCC等の冷間圧延鋼板をプレス成型することによって環状に形成されている。芯金15は、断面がL字状であり、円筒形状の筒状部22と、筒状部22の軸方向の一端を径方向内方に直角に折り曲げて形成されたリップ支持部23とが一体になっている。
16はグリースリップで、スリンガ14の外周と小さいしめしろで接しており、環状空間88に封入されたグリースの流出を防いでいる。
17はラジアルリップで、スリンガ14の外周と摺接しており、異物が環状空間88に浸入するのを防ぐとともに、環状空間88のグリースの流出を防いでいる。ラジアルリップ17の径方向外方には、周方向に弾性を持って伸縮する環状のばね19が装着されていて、ラジアルリップ17をスリンガ14に向けて径方向に付勢している。
18はアキシャルリップで、スリンガ14のフランジ部25と摺接して、泥水や塵埃などの異物が、直接、ラジアルリップ17に到達するのを防いでいる。
各シールリップ16,17,18の材料には、ニトリルゴムやアクリルゴム等のゴム材料が使用される。各シールリップ16,17,18は、高温の金型で加硫成形されると同時に、芯金15と加硫接着されている。
ゴム磁石は、フェライトなどの磁性材粉末をニトリルゴムなどのゴム材料に混合したものである。磁性材粉末は、80〜90wt%の比率で含まれている。
エンコーダ20は、フランジ部25の固定部27と反対側の側面に、加硫接着等によって同軸に貼り付けられている。エンコーダ20のインナ側の表面には、その一部が着磁されることによって、パルサ部21が形成されている。着磁される領域は、フランジ部25とエンコーダ20とが互いに接着されている領域と軸方向に対向する環状の領域であって、周方向にS極とN極が交互に形成されている。
カバー部26のスリンガ14側の側面には、第1突起29と第2突起31が形成されている。第1突起29及び第2突起31は、カバー部26から軸方向に突出している。第1突起29と第2突起31の、それぞれカバー部26から突出する高さは、互いにほぼ等しい。軸方向断面では、第1突起29と第2突起31は、それぞれ台形形状である。図示を省略したが、矢印Aで示す向きで軸方向からみたときには、第1突起29及び第2突起31はそれぞれスリンガ14の固定部27と同軸の円形状で、第1突起29の直径寸法は、第2突起31の直径寸法より小径である。第1突起29と第2突起31は互いに所定寸法だけ径方向に離れており、軸方向断面では、第1突起29と第2突起31の間に窪んだ領域が形成されている。
シールリング13の筒状部22の外径寸法は、外輪81の肩37の内径寸法よりわずかに大きいので、筒状部22は、外輪81の内周にしまり篏めの状態で組み付けられている。また、スリンガ14の固定部27の内径寸法は、内輪96の肩36の外径寸法よりわずかに小さいので、固定部27は、内輪96の外周にしまり篏めの状態で組み付けられている。
こうして、第1突起29と第2突起31がそれぞれ内輪端面33と接触して、第1突起29と第2突起31の間には環状の空間35が形成されている。
長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化して第1突起29の弾性がなくなった場合には、第1突起29は内輪端面33と接した状態で硬化している。そして、飛散する泥水等の勢いが強い場合に、内輪端面33との接触部にごくわずかなすきまが形成されるに過ぎない。したがって、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化したとしても、第1突起29を越えて環状の空間35に噴出する泥水等の勢いを低減することができる。
第2突起31においても、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化して第2突起31の弾性がなくなった場合であっても、第2突起31は内輪端面33と接している。したがって、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化したとしても、泥水等が第2突起31を越えてスリンガ14と内輪96との篏合部に浸入するのを防止することができる。
次に、本発明にかかる車輪用軸受装置の他の実施形態(以下、第2実施形態)について説明する。図2は、第2実施形態の車輪用軸受装置40における軸方向断面の要部拡大図である。第2実施形態では、外輪81と内輪96との間の開口部に、密封装置41が組み付けられている。第2実施形態の車輪用軸受装置40では、第1実施形態に比べて、密封装置41の形態、特にエンコーダ46の形態が異なっている。また、エンコーダ46の形態に合わせて、内輪端面33の形態が異なっている。その他の構成は同等であるので、以下、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して図2を参照しつつ説明する。
第2実施形態のエンコーダ46は、第1実施形態と同じ材料のゴム磁石で形成されている。エンコーダ46は、円板状で、スリンガ14のフランジ部25の側面に加硫接着等によって同軸に貼り付けられている。外径寸法は概ねスリンガ14の外径寸法と等しい。
エンコーダ46には、第1実施形態と同様に環状のパルサ部47が形成されている。パルサ部47は、フランジ部25とエンコーダ46が接着している環状の領域と軸方向に対向する領域に形成されている。
円筒カバー部49は、略円筒形状で、その外周にはゴム磁石が全周にわたって径方向外方に突出して、第1突起44が形成されている。軸方向断面では、第1突起44は台形形状である。
第2突起51の先端部と内輪端面33との間にすきまが生じるのを防ぐために、密封装置41は、カバー部48がインナ側にわずかに撓む位置で組み付けられて、第2突起51の先端部と内輪端面33との間に接触圧が生じる状態で組み付けられるのが望ましい。
一般的に、狭いすきまを通過した流体が、断面積の大きい流路に浸入したときにはその流速は低下する。したがって、第1突起44と凹部50の内周面55とのすきまを通過した後、容積の大きい環状の空間53に噴出するときの泥水等の勢いは、第1突起44に向けて流入したときの勢いに比べて大幅に低減している。
第2実施形態では、第1突起44に向けて流入する泥水等の勢いが低減しているので、環状の空間53に噴出するときの泥水等の勢いは第1実施形態より更に低減している。
第2実施形態では、環状の空間53に噴出する泥水等の勢いが、第1実施形態に比べて低減しているので、第2突起51に向けて飛散する泥水等の勢いが更に低減されている。
この結果、泥水等が、第2突起51を越えてスリンガ14と内輪96との篏合面に浸入するのを更に確実に防止することができる。
長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化して第1突起44の弾性がなくなった場合には、第1突起44は内周面55と接した状態で硬化している。そして、飛散する泥水等の勢いが強い場合に、内周面55との接触部にごくわずかなすきまが形成されるに過ぎない。したがって、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化したとしても、第1突起44を越えて環状の空間53に噴出する泥水等の勢いを低減することができる。
第2突起51においても、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化して弾性がなくなった場合であっても、第2突起51は内周面55と接している。したがって、長期にわたる使用によってゴム磁石が硬化したとしても、泥水等が第2突起51を越えてスリンガ14と内輪96との篏合部に浸入するのを更に確実に防止することができる。
次に、本発明にかかる車輪用軸受装置の第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態の車輪用軸受装置60の軸方向断面の要部拡大図である。第3実施形態では、外輪81と内輪96との間の開口部に、密封装置61が組み付けられている。第3実施形態の車輪用軸受装置60では、第2実施形態に比べて、密封装置61の形態、特にエンコーダ62のカバー部63の形態が異なっている。その他の構成は同等であるので、以下、第2実施形態と共通する構成については同一の符号を付して図3を参照しつつ説明する。
円筒カバー部64は、略円筒形状で、その外周にはゴム磁石が全周にわたって径方向外方に突出して、第1突起66が形成されている。軸方向断面では、第1突起66は台形形状である。
第2芯金68は、エンコーダ62を成形するときにあらかじめ金型に挿入され、エンコーダ62を成形すると同時に円筒カバー部64を構成するゴム磁石と加硫接着されている。
次に、本発明にかかる車輪用軸受装置の第4実施形態について説明する。図4は、第4実施形態の車輪用軸受装置70の軸方向断面の要部拡大図である。第4実施形態では、外輪81と内輪96との間の開口部に、第1実施形態と同一の密封装置12が組み付けられており、エンコーダ20のカバー部26が接触する内輪端面33の形態のみが相違している。その他の構成は第1実施形態と同等であるので、以下、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して図4を参照しつつ説明する。
溝部74は、軸方向断面がコの字状に窪んだ形態である。溝部74は、大径の外方周面75と小径の内方周面76を有しており、外方周面75と内方周面76は、それぞれ内輪96の肩36と同軸の円筒形状である。内輪端面33と外方周面75、及び、内輪端面33と内方周面76とがつながる稜線部分は、それぞれ角張ったエッジ部77,78でつながっており、稜線部分にはR形状の面取り加工等は施されていない。
各エッジ部77,78は、それぞれ第2突起31及び第1突起29に向けて凸となっているので、スリンガ14を内輪96に組み付けて、第1突起29及び第2突起31を内輪端面33に当接させたときには、第1突起29の先端部の径方向の略中央がエッジ部77と接触し、第2突起31の先端部の径方向の略中央がエッジ部78と接触している。
なお、エッジ部77が、第2突起31に向けて凸であるとは、エッジ部77から所定寸法離れた外方周面75上の点と、内輪端面33上の点とを結ぶ直線に対し、エッジ部77が第2突起31の側に存在することをいう。
第1実施形態と比較して説明する。第1実施形態では、内輪端面33が一様な平面であるため、第1突起29及び第2突起31の先端部と内輪端面33との接触領域ではほぼ一様な接触面圧が生じる。これに対し、第4実施形態では、各先端部が、角張ったエッジ部77,78と接触している。このため、各先端部のうちで内輪端面33と接触する領域と接触しない領域との境界において、接触面圧が局部的に高くなる。
このように接触面圧が高い場合には、泥水等がその接触領域を通過しにくくなる。このため、第4実施形態では、第1実施形態に比べて、泥水等が第1突起29及び第2突起31と内輪端面33との接触部を通過することが更に困難になる。
こうして、泥水等が篏合部に到達するのを防止できる。この結果、長期にわたってスリンガ14と内輪96との嵌合面からの水の浸入を防止することができるので、耐久性に優れた車輪用軸受装置70を提供することができる。
10:車輪用軸受装置、12:密封装置、13:シールリング、14:スリンガ、15:芯金、16:グリースリップ、17:ラジアルリップ、18:アキシャルリップ、20:エンコーダ、21:パルサ部、22:筒状部、23:リップ支持部、25:フランジ部、26:カバー部、27:固定部、29:第1突起、31:第2突起、33:内輪端面、35:環状の空間、
(第2実施形態)
40:車輪用軸受装置、41:密封装置、44:第1突起、46:エンコーダ、47:パルサ部、48:カバー部、49:円筒カバー部、50:凹部、51:第2突起、53:環状の空間、55:内周面、
(第3実施形態)
60:車輪用軸受装置、61:密封装置、62:エンコーダ、63:カバー部、64:円筒カバー部、66:第1突起、68:第2芯金、69:円筒部、
(第4実施形態)
70:車輪用軸受装置、72:環状の空間、74:溝部、77,78:エッジ部、
(従来技術)
80:車輪用軸受装置、81:外輪、82:内軸、83:玉、84:フランジ、85:ドライブシャフト、88:環状空間、89,90:密封装置、91:スリンガ、92:シールリング、93:シールリップ、94:懸架装置、95:ハブシャフト、96:内輪、97:エンコーダ、98:センサ、99:唇状片
Claims (4)
- 内周に外側軌道面を備えた外輪と、外周に内側軌道面を備えた内輪と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動自在に配置された複数個の転動体と、前記外輪と前記内輪との間に存在する環状空間のインナ側開口端部を塞ぐ密封装置と、を備えた車輪用軸受装置であって、
前記密封装置は、前記外輪に固定されるシールリングと、前記内輪に固定されるスリンガと、このスリンガに固定されるエンコーダとを備えており、
前記シールリングは、金属製の第1芯金と、前記スリンガと摺接する弾性体のシールリップとを備えており、
前記スリンガは、前記内輪の外周に嵌合固定される固定部と、この固定部の軸方向の一端につながって径方向に形成されたフランジ部とを備えており、
前記エンコーダは、ゴム磁石製で、前記フランジ部の側面に固定されるとともに周方向にS極とN極が交互に形成されるパルサ部と、前記パルサ部の内周につながって前記固定部が嵌め合わされる前記内輪の外周面より径方向内方に延在するカバー部とを備えており、
前記カバー部の前記内輪と対向する面には、それぞれ環状に突出して前記内輪と接触する第1突起と第2突起とが同軸に形成されており、前記第1突起は前記第2突起より小径で、前記第1突起と前記第2突起との間に環状の空間が形成されている車輪用軸受装置。 - 前記内輪の端面には、軸方向に延在する円筒形状の内周面を有する環状の凹部が形成されており、
前記カバー部は、その内周が全周にわたって軸方向に屈曲して略円筒形状の円筒カバー部が形成されており、
前記第1突起は、前記円筒カバー部の外周に形成されるとともに、前記内周面と径方向に接触していることを特徴とする請求項1に記載する車輪用軸受装置。 - 前記エンコーダは、前記円筒カバー部の内周側で前記第1突起と径方向に対向する位置に、第2芯金を備えており、前記第1突起が、前記凹部と前記第2芯金とで径方向に挟まれていることを特徴とする請求項2に記載する車輪用軸受装置。
- 前記内輪の端面に環状の溝部が形成されており、前記内輪の端面と前記溝部とが少なくとも前記第2突起に向けて凸となるエッジでつながっており、
前記第2突起が前記エッジと接触していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載する車輪用軸受装置。
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