JP2017210994A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】摺動開始直後の強い衝撃負荷が加わる状況でも摺動面の樹脂に損傷が起き難い摺動部材の提供。【解決手段】本発明の摺動部材は、裏金層と摺動層を備え、摺動層は、合成樹脂と鱗片状黒鉛粒子からなり、鱗片状黒鉛粒子の体積の合計は、摺動層の5〜50体積%を占め、鱗片状黒鉛粒子は平板形状を有し、その断面組織は、黒鉛結晶のAB面が平板形状の厚さ方向に複数積層しており、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は3〜25μmである。鱗片状黒鉛粒子は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子、すなわち長軸方向の長さが3μm以上であり、断面組織内で鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に伸長する空隙であって、空隙の鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に平行な方向の長さが、鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さの50%以上である空隙を有する空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が10%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材に関するものであり、詳細には、裏金層と、合成樹脂および鱗片状黒鉛からなる摺動層とを備えた摺動部材に係るものである。
合成樹脂に固体潤滑剤として鱗片状黒鉛を添加した樹脂組成物を有する摺動部材が、従来より用いられている(特許文献1)。天然黒鉛は、一般的に、その性状によって、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土壌黒鉛に分けられる。黒鉛化度は、鱗状黒鉛が100%と最も高く、次いで鱗片状黒鉛の99.9%であり、土壌黒鉛は28%と低い。従来、摺動部材用の固体潤滑剤としての黒鉛は、黒鉛化度が高い鱗状黒鉛または鱗片状黒鉛の天然黒鉛を機械的に粉砕した鱗片状粒子が用いられてきた。
この鱗片形状の黒鉛は、炭素原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がるAB面(六角網面平面、ベーサル面)が多数積層し、AB面に垂直なC軸方向に厚みを有する結晶である。積層したAB面相互間のファンデルワールス力による結合力がAB面の面内方向の結合力に比べてはるかに小さいため、AB面間でせん断が起きやすい。そのため、この黒鉛は、AB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、全体としては薄板状を呈している。なお、鱗片状黒鉛粒子は、外力を受けた場合にAB面間のせん断が起こることにより固体潤滑剤として機能すると考えられている。
特開2005-89514号公報
空調装置の圧縮機等のように変動荷重を支承する軸受部では、圧縮機の運転開始直後のしばらくの間は軸部材の軸心の振れが生じる。この時、摺動部材の摺動面には、軸部材の表面からの衝撃負荷が繰り返し加えられる。特許文献1の摺動部材をこのような軸受部に用いると、圧縮機の運転開始直後の軸部材からの衝撃負荷によって、摺動部材の摺動面の樹脂に割れが生じて摺動面から脱落するという損傷が生じることがある。
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記欠点を克服して、摺動開始直後の強い衝撃負荷が加わる状況でも摺動面の樹脂に損傷が起き難い摺動部材を提供することである。
本発明の一観点によれば、裏金層と、この裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材が提供される。この摺動層は、合成樹脂と、合成樹脂に分散された鱗片状黒鉛粒子からなり、鱗片状黒鉛粒子の体積の合計は、摺動層の体積の5〜50体積%を占める。鱗片状黒鉛粒子は平板形状を有し、その断面組織は、黒鉛結晶のAB面が平板形状の厚さ方向(すなわち、黒鉛結晶のAB面に対して垂直方向であるC軸方向)に複数積層している。鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は3〜25μmである。鱗片状黒鉛粒子は、組織内部に空隙を有する空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含む。ここで、空隙含有鱗片状黒鉛粒子とは、鱗片状黒鉛粒子のうち、
長軸方向の長さが3μm以上であり、
断面組織内で鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に伸長する空隙であって、鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に平行な方向の空隙長さが、鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さの50%以上である空隙を有するものである。摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合は10%以上である。
本発明の摺動部材では、鱗片状黒鉛粒子が潤滑成分として作用する。上記のとおり、摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子は、AB面(六角網面平面)が多数積層し、AB面に垂直方向であるC軸方向に厚みを有する結晶であり、AB面間でせん断が起きやすく平板状を呈しており、摺動面に黒鉛結晶のAB面からなる面が露出した場合、摺動方向に相手軸と摺動面では相手軸に対してAB面が接触するので、相手軸から摺動面に対して略平行に負荷が加わると、AB面間でせん断が容易に起こり、その結果、摺動面と相手軸表面との摩擦力が小さくなり、摺動層の摩耗量が少なくなる。
また、本発明の摺動部材は、摺動部材が用いられる装置の始動直後の軸部材の心振れ(軸心の振れ)により摺動層に衝撃負荷が加わる状況では、摺動層中に分散する、組織内部に空隙を有する空隙含有鱗片状黒鉛粒子によって、以下の理由により摺動面の樹脂の脱落が防がれる。
空隙含有鱗片状黒鉛粒子の組織内(内部組織)の空隙の長軸方向に垂直な方向の最大長さ(隙間)は、摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織にて0.01μm〜1μm程度である。摺動層に含まれる空隙含有鱗片状黒鉛粒子は、外力が加わると粒子の内部の隙間が小さくなるように弾性変形が起こる。すなわち、空隙の長軸方向と略垂直方向の空隙の長さが小さくなるように弾性変形する。
そのため、本発明の摺動部材では、装置の始動直後の衝撃負荷が加わる場合は、摺動層に含まれる空隙含有鱗片状黒鉛粒子は、空隙が小さくなるように弾性変形を起こすことにより、摺動層に加わる衝撃負荷が緩和させる。このような緩衝作用を有する空隙含有鱗片状黒鉛粒子が摺動層内に分散するため、摺動層の合成樹脂に加わる衝撃負荷が緩和され、この結果、摺動面の樹脂の脱落が防がれる。
長軸方向の長さが3μm未満の鱗片状黒鉛粒子は、組織内部に空隙を有していても、摺動層の摺動面に加わる衝撃負荷を緩和する効果が低い。長軸方向の長さが3μm以上であると、摺動層の摺動面に加わる衝撃負荷を緩和する効果を有するので、合成樹脂に長軸方向の長さが3μm以上である空隙含有鱗片状黒鉛粒子が分散することにより、摺動層の摺動面に衝撃負荷が加わった場合でも、摺動面の合成樹脂の割れや脱落が防がれる。
組織内部に空隙を有してない鱗片状黒鉛粒子を合成樹脂に分散させた摺動層を有する従来の摺動部材では、摺動部材が用いられる軸受装置の運転開始直後の軸部材の心振れ(軸心の振れ)による衝撃負荷によって摺動面の合成樹脂に割れが生じて脱落し、この合成樹脂の脱落部が起点となって、摺動層の摩耗が起きやすくなる。
鱗片状黒鉛粒子(空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含む全鱗片状黒鉛粒子)の平均粒径は、3〜25μmとすることが好ましい。鱗片黒鉛粒子の平均粒径が3μm未満であると、摺動層中に鱗片黒鉛粒子どうしの凝集部が形成されやすく、摺動層の強度が低くなる場合がある。鱗片黒鉛粒子の平均粒径が25μmを超えると、摺動時に摺動層に加わる負荷により摺動層中の鱗片状黒鉛粒子にせん断が起こり、摺動層の強度が低くなる場合がある。
本発明の一具体例によれば、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上であることが好ましい。摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上である場合は、20体積%未満である場合よりも耐摩耗性がさらに向上する。これは、摺動層中に分散する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が多くなることにより、摺動層が受ける軸部材からの衝撃負荷がより緩和されるために、摺動面から樹脂が脱落し難くなり、耐摩耗性が向上すると考えられる。さらに、空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合は25体積%以上であることが好ましい。
本発明の一具体例によれば、鱗片状黒鉛粒子(空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含む全鱗片黒鉛粒子)の長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比(A1)は、5〜15であることが好ましい。鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比が5以上であると、平均アスペクト比が5未満である場合よりも、耐摩耗性がさらに向上する。これは、鱗片状黒鉛粒子の表面積が大きくなることにより、合成樹脂との鱗片状黒鉛粒子の接触面積が大きくなり、合成樹脂との密着性が大きくなるために摺動時に摺動面から脱落し難くなるからと考えられる。さらに、鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比は、6以上とすることが好ましい。また、鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比が15以下であると、摺動時に摺動層に加わる負荷により摺動層中の鱗片状黒鉛粒子にせん断が起こり難いが、鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比が15を超えると、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子にせん断が起こり摺動層の強度が小さくなる場合がある。
本発明の一具体例によれば、鱗片状黒鉛粒子(空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含む全鱗片黒鉛粒子)は、異方分散指数S1が3以上であることが好ましい。この異方分散指数S1は、各鱗片状黒鉛粒子についての比X1/Y1の値の平均として定義される。ここで、X1は、摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織における鱗片状黒鉛粒子の摺動面に平行方向の長さであり、Y1は、摺動層の摺動面に対し垂直方向の断面組織における鱗片状黒鉛粒子の摺動面に垂直方向の長さである。
鱗片状黒鉛の長軸方向(AB面からなる表面の広がる方向)が摺動面に略平行に配向するものの割合が大きいほど、この異方分散指数S1の値が大きくなる。
鱗片状黒鉛粒子は、異方分散指数S1が3以上であり、長軸方向が摺動面に略平行に配向するものの割合が大きいと、摺動層の摺動面に露出する鱗片状黒鉛粒子のうちAB面が摺動面に略平行の配向するものの割合が大きくなるので、摺動層の摺動面と軸部材表面との摩擦力が小さくなり、摺動層の摩耗量が少なくなる。鱗片状黒鉛粒子の異方分散指数は、4以上であることがさらに好ましい。
さらに、上記のとおり摺動部材が用いられる装置の始動直後の摺動部材の摺動面には軸部材からの衝撃負荷が加わる場合、異方分散指数S1が3以上であると、空隙含有鱗片状黒鉛粒子も、その長軸方向および粒子の内部組織の空隙の伸長方向が摺動面に略平行に配向するものの割合が大きくなるために、空隙含有鱗片状黒鉛粒子の空隙による摺動層に加わる衝撃負荷を緩和する効果がさらに高まる。
本発明の一具体例によれば、合成樹脂は、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PA(ポリアミド)、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、球状黒鉛、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤1〜20体積%をさらに含むことができる。固体潤滑剤を含有することにより、摺動層の摺動特性を高めることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%をさらに含むことができる。充填材を含有することにより、摺動層の耐摩耗性を高めることが可能となる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材は、裏金層と摺動層との間に多孔質金属層をさらに有することができる。裏金層の表面に多孔質金属層を設けることにより、摺動層と裏金層の接合強度を高めることができる。すなわち、多孔質金属層の空孔部に摺動層を構成する組成物が含浸されることによるアンカー効果により裏金層と摺動層との接合力の強化が可能になる。
多孔質金属層は、Cu、Cu合金、Fe、Fe合金等の金属粉末を金属板や条等の表面上に焼結することにより形成することができる。多孔質金属層の空孔率は20〜60%程度であればよい。多孔質金属層の厚さは0.05〜0.5mm程度とすればよい。この場合、多孔質金属層の表面上に被覆される摺動層の厚さは0.05〜0.4mm程度となるようにすればよい。ただし、ここで記載した寸法は一例であり、本発明がこの値の限定されるものではなく、異なる寸法に変更するも可能である。
本発明の一例による摺動部材の断面を示す図。 空隙含有鱗片状黒鉛粒子の断面を示す図。 鱗片状黒鉛粒子のアスペクト比(A1)および異方分散指数(S1)を説明する図。 本発明の他の例による摺動部材の断面を示す図。
図1に本発明による摺動部材1の一例の断面を概略的に示す。摺動部材1は、裏金層2上に摺動層3が設けられている。摺動層3は、合成樹脂4と5〜50体積%の鱗片状黒鉛粒子5とからなる。鱗片状黒鉛粒子5の断面組織は、黒鉛結晶のAB面が平板形状の厚さ方向(黒鉛結晶のC軸方向)に複数積層している。鱗片状黒鉛粒子5の平均粒径は3〜25μmである。
鱗片状黒鉛粒子5は、摺動層3の摺動面に対して垂直方向の断面組織を観察すると、長軸および短軸を有する伸長形状を有している。鱗片状黒鉛粒子5の長軸は、黒鉛結晶のAB面に平行な方向に伸長する。
鱗片状黒鉛粒子5は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51およびそれ以外の非空隙含有鱗片状黒鉛粒子52とからなる。なお、非空隙含有鱗片状黒鉛粒子52には、内部組織に隙間を有さない鱗片状黒鉛粒子のみならず、空隙を有するものの上記に記載した空隙含有鱗片状黒鉛粒子の要件を満足しない鱗片状黒鉛粒子も含まれる。
摺動層3中の鱗片状黒鉛粒子5の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の体積割合は10%以上であり、好適には20%以上であり、より好適には25%以上である。
なお、摺動層3と裏金層2との間に多孔質金属層6を設けてもよい。多孔質金属層6を
設けた摺動部材の一例の断面を図4に概略的に示す。
図2に、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の概略図を示す。摺動層3内に分散する空隙含有鱗片状黒鉛粒子51は、内部組織に空隙7を有し、空隙7は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の長軸方向と略平行な方向に伸長する。
空隙7は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の長軸方向に平行な方向の空隙の長さL1が、その鱗片状黒鉛粒子51の長軸の長さLの50%以上である。空隙7は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の長軸方向に対して垂直な方向の最大長さが0.01〜1μm程度である。
なお、図2では、内部組織に1つの空隙7を有する鱗片状黒鉛粒子51を示したが、内部組織に複数の空隙を有してもよい。(この場合の空隙の長さL1は、各空隙の長さの合計から、長軸方向に平行な方向に重複する長さを引いた値になる。)
次に、摺動層3に含まれる鱗片黒鉛粒子5の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子52の体積割合の測定方法について説明する。摺動層3の摺動面に垂直な方向の複数箇所の断面を電子顕微鏡を用い倍率1000倍(他倍率も可)で電子像を撮影する。一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、撮影画像中の鱗片黒鉛粒子5を、空隙含有鱗片状黒鉛粒子51と、それ以外の非空隙含有鱗片状黒鉛粒子52に区分する。撮影画像中の全鱗片状黒鉛粒子5の合計面積と全空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の合計面積を測定し、鱗片状黒鉛粒子5に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子51の面積割合を算出する。この面積割合は、体積割合に相当する。
摺動層3内に分散する鱗片状黒鉛粒子5の長軸Lと短軸Sとの比の平均で表される平均アスペクト比A1は5〜15であることが好ましい。平均アスペクト比A1は、6以上とすることがさらに好ましい。
摺動層3に分散する鱗片状黒鉛粒子5の異方分散指数S1は、3以上であることが好ましい。異方分散指数S1は、摺動層3の摺動面に対して垂直方向の断面組織での鱗片状黒鉛粒子5の摺動面に対して平行方向の長さをX1、摺動層3の摺動面に対して垂直方向の断面組織での鱗片状黒鉛粒子5の摺動面に対して垂直方向の長さをY1としたとき(図3参照)、各鱗片状黒鉛粒子の比X1/Y1の値を全鱗片状黒鉛粒子について平均したものとして表される。異方分散指数S1は4以上とすることがさらに好ましい。
上記に説明した摺動部材について、製造工程に沿いながら以下に詳細に説明する。
(1)原材料黒鉛粒子の準備
鱗片状黒鉛粒子の原材料としては、平板形状を有する鱗片状黒鉛粒子を用いるが、天然鱗片状黒鉛粒子および人造鱗片状黒鉛粒子のいずれを用いてもよい。この鱗片状黒鉛粒子は、レーザー回折式粒度測定装置により測定されるAB面(六角網面)に平行な方向の平均粒径が3〜30μmであり、また、粒子の平均厚さが0.2〜3.5μmであるものを用いることが好ましい。なお、原材料である鱗片状黒鉛粒子は、内部組織に空隙を有していない。
(2)合成樹脂粒子の準備
原材料である合成樹脂粒子は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50〜150%の平均粒径を有するものを用いることが好ましい。合成樹脂としては、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPSおよびPEIのうちから選ばれる1種または2種以上からなるものを用いることができる。
(3)混合
鱗片状黒鉛粒子の体積割合が5〜50体積%となるように、準備した鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子との割合を調整する。この鱗片状黒鉛粒子および合成樹脂粒子を有機溶剤で希釈しロールミルを用いて混合して粘度が40000〜110000mPa・sとなる組成物を作製する。
従来は、黒鉛粒子や他の充填材粒子を含有する樹脂組成物の希釈液の粘度は、通常は最大でも15000mPa・s程度とされていた。しかし、ここでは、希釈した組成物の粘度を40000〜110000mPa・sと通常よりも大きくする。組成物の粘度が110000mPa・sを超えると、溶剤の濃度が低すぎて、樹脂粒子と鱗片状黒鉛粒子とを均質に分散させ難くなり、さらに、ロールミルでの混合時に、鱗片状黒鉛粒子に割れが発生する場合がある。
ロールミルのロール間のギャップは、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の400%程度に相当する間隔に設定して、有機溶剤中に樹脂粒子、鱗片状黒鉛粒子や他充填材粒子を均質分散させる。
上記した合成樹脂粒子の平均粒径が、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50〜150%である関係は、ロール間のギャップを通過するときに鱗片黒鉛粒子に過度な負荷が加わりせん断が発生してしまうことを防ぐために好適である。摺動層に、固体潤滑剤や充填材をさらに含有させる場合、これら固体潤滑剤や充填材の粒子は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50%以下の平均粒径を有するものが好ましい。
合成樹脂粒子と鱗片状黒鉛粒子との混合方法は、上記実施形態で示したロールミルを用いた混合方法に限定されないで、他の混合機を使用するか、または、他の混合条件で調整することも可能である。
(4)裏金
裏金層としては、Fe合金、Cu、Cu合金等の金属板を用いることができる。裏金層表面、すなわち摺動層との界面となる側に多孔質金属層を形成してもよい。多孔質金属層は裏金層と同じ組成を有することも、異なる組成または材料を用いることも可能である。
(5)被覆工程
混合後の組成物は、裏金層の一方の表面、あるいは裏金層上の多孔質金属層に塗布され、組成物を塗布した裏金は、組成物の厚さを均一とするため、所定の一定の間隙を有するロール間に通される。
混合後の組成物の粘度は、摺動部材の摺動層中での鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の異方分散(配向)にも密接に関係するため、この鱗片状黒鉛粒子の異方分散は、この被覆工程での条件設定が重要であることが判明した。
混合工程で組成物の粘度が高い(すなわち、有機溶剤の割合が少ない)場合、組成物を塗布した裏金層がロール間を通過するときに、組成物中の鱗片状黒鉛粒子が、その平板面(黒鉛結晶のAB面)が摺動面に対して平行な方向を向くように流動しにくくなるからである。
他方、組成物の粘度が110000mPa・s以下であると、被覆工程で鱗片状黒鉛粒子が有機溶剤とともに流動しやすいので、鱗片状黒鉛粒子は、その平板面の向く方向が、摺動部材の摺動層内で配向、すなわち異方に分散する。具体的には、組成物の粘度が110000mPa・s以下であると、摺動層に分散する鱗片状黒鉛粒子は、異方分散指数S1が2.5以上となる。さらに組成物の粘度が100000mPa・s以下であると異方分散指数が3以上、80000mPa・s以下であると異方分散指数が4以上となる。
(6)予備乾燥工程
組成物を被覆した裏金層(あるいは、裏金層および多孔質多孔質金属層)に、有機溶剤が組成物中に5〜15体積%残存するように予備乾燥を施す。従来の製造方法では予備乾燥工程を圧延工程前には行われていないが、予備乾燥工程により組成物中の有機溶剤の体積割合を5〜15%程度に低くすることが、後述する圧延工程での空隙含有鱗片状黒鉛粒子の形成に密接に関係する。
なお、従来の摺動部材の製造では、圧延工程前に予備乾燥工程を設けることはなかった。
(7)圧延工程
組成物を被覆した裏金層(あるいは、裏金層および多孔質多孔質金属層)は、予備乾燥後に、厚さを均一とするため所定の一定間隙を有するロール間に通される。予備乾燥工程後の組成物は、有機溶剤が5〜15体積%しか残存しないため組成物中で鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子が接触する頻度が高くなっている。このため、圧延工程で組成物がロール間の間隙を通過する際、鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子が接した状態で、ロールから負荷が加えられることで、鱗片状黒鉛粒子の表面が局部的に高い負荷を受け内部に空隙が形成されると考えられる。
従来の組成物の粘度は最大でも15000mPa・s程度になされており組成物中の有機溶剤の割合が多く(40〜50体積%程度)、また、圧延工程前に有機溶剤の残存する体積割合を少なくするための予備乾燥も施されることがなかったので、圧延工程において組成物の有機溶剤の割合が多すぎて鱗片状黒鉛粒子に対し内部に空隙が形成される負荷が加わることがなかった。
なお、予備乾燥工程での組成物中の有機溶剤の残存割合が5%未満であると、圧延工程で組成物が流動し難く、摺動部材(摺動層)の厚さの均一化、摺動面の平滑化が困難になるばかりでなく、圧延工程時に鱗片状黒鉛粒子に過度の負荷が加わり鱗片状黒鉛粒子が複数の小粒子にせん断されやすくなる。
(8)乾燥焼成工程
圧延工程を終えた後、組成物中に残存する有機溶剤の乾燥および合成樹脂の焼成のための加熱を施して、摺動部材が得られる。
なお、上記の実施例の製造方法とは異なり、合成樹脂に空隙を有さない鱗片状黒鉛粒子のみが分散した摺動層を有する従来の摺動部材に対して圧延工程を施すことで、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の内部に空隙を形成する試みを行ったが、結果は、鱗片状黒鉛粒子の内部組織に空隙の形成は確認できなかった。これは、摺動部材の摺動層の鱗片状黒鉛粒子は、既に焼成により強度が高くなった合成樹脂により保持(拘束)されるので、圧延工程での負荷により鱗片状黒鉛粒子は周囲の合成樹脂とともに流動するだけで、鱗片状黒鉛粒子には組織内部に空隙が形成される程度の負荷が加えられないからと考えられる。
(9)測定
鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の測定は、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を1000倍で撮影して行なう。具体的には、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は、得られた電子像を一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径に換算して求める。ただし、電子像の撮影倍率は1000倍に限定されず、他の倍率に変更することができる。
鱗片状黒鉛粒子は、断面組織が、黒鉛結晶のAB面が平板形状の厚さ方向(C軸方向)に複数積層している組織となっていることは、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面において、複数個(例えば20個)の鱗片状黒鉛粒子を電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で電子像を撮影し、撮影画像中の鱗片状黒鉛粒子の断面組織が、平板形状の厚さ方向に複数積層している層状部が形成されていることを観察することにより確認できる。
上記の方法によって、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が10%以上であることも確認できる。
鱗片状黒鉛粒子のアスペクト比A1は、摺動部材の摺動面に対して垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を200倍で撮影した画像を、上記の像解析手法を用い、各鱗片状黒鉛粒子の長軸の長さLと短軸の長さSの比(L/S)として求める(図3参照)。なお、鱗片状黒鉛粒子の長軸の長さLは、上記電子画像中の鱗片状黒鉛粒子の長さが最大となる位置での長さを示し、鱗片状黒鉛粒子の短軸の長さSは、この長軸の長さLの方向に直交する方向での長さが最大となる位置での長さを示す。
鱗片状黒鉛粒子の異方分散指数S1は、上記の手法で得られた電子像を、上記画像解析手法を用い、摺動層中の各鱗片状黒鉛粒子の摺動面に対して平行方向の長さX1と、摺動面に対して垂直方向の長さY1を測定し、それらの長さの比(X1/Y1)の平均値を算出して求める(図3参照)。
本発明による裏金層および摺動層を有する摺動部材の実施例1〜11、および比較例12〜16を以下に示すとおり作製した。実施例1〜11および比較例12〜16の摺動部材の摺動層の組成は、表1に示すとおりである。
実施例1〜11および比較例12〜16の原材料として用いた鱗片状黒鉛粒子は、平面状に広がるAB面(六角網面平面)が多数積層しC軸方向に厚みを有する組織となっており、AB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、粒子の形状は薄板状を呈している。この鱗片状黒鉛粒子は、内部組織内には空隙がなかった。
実施例1〜11および比較例12〜16の原材料である合成樹脂(PAI、PI)粒子は、平均粒径が、原材料である鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して125%であるものを用いた。実施例5〜7の原材料として用いた固体潤滑剤(球状黒鉛、PTFE)は平均粒径が、原材料である鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して100%のものを用い、充填材(CaCo)の粒子は、平均粒径が鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して25%のものを用いた。
上記の原材料を用いた表1に示す組成物を有機溶剤で希釈し、表1の「粘度(mPa・s)」欄に示す粘度の組成物を準備し、次に、ロールミルを用いて組成物の混合を行った。なお、ロールミルのロール間のギャップは、実施例1〜11および比較例12〜16では、原材料として用いた鱗片状黒鉛粒子の平均径に対する比率を400%に設定した。
次に混合後の組成物をFe合金製の裏金層の一方の表面に塗布したのち、ロールにて組成物が所定の厚さとなるように被覆した。なお、実施例1〜9及び比較例12〜16の裏金層としてはFe合金を用い、実施例10、11は表面にCu合金の多孔質焼結部を有するFe合金を用いた。
次に、実施例1〜11および比較例13〜16については、組成物中の溶剤を10%残存するように予備乾燥工程を施した後に圧延工程を実施し、比較例12については、予備乾燥工程を実施しない(有機溶剤の残存量は50%)で圧延工程を実施し、その後組成物の有機溶剤の乾燥および合成樹脂の焼成を施して摺動部材を作製した。作製された実施例1〜11および比較例12〜16の摺動部材の摺動層の厚さは0.3mmであり、裏金層の厚さは1.7mmであった。
作製した各摺動部材について、上記に説明した測定方法による黒鉛粒子の平均粒径の測定を行い、その結果を表1の「平均粒径」欄に示した。また、上記に説明した測定方法により、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合の測定を行い、その結果を表1の「体積割合」欄に示した(比較例16の括弧内の体積割合については後述する)。
また、上記に説明した鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比(A1)、異方分散指数(S1)の測定を行い、その結果を表1の「アスペクト比(A1)」欄、「分散指数(S1)」欄に示した。
さらに、各実施例および各比較例を平板形状に形成し、表2に示す条件で摺動試験を行った。各実施例および各比較例の摺動試験後の摺動層の摩耗量を表1の「摩耗量」欄に示す。また、各実施例および各比較例は、摺動試験後の摺動面を、形状測定器(粗さ測定器)を用いて樹脂の脱落の有無を確認した。摺動面に深さ10μm以上の樹脂の脱落部(凹部)が確認された場合には「有」、確認されなかった場合には「無」とし、表1の「樹脂脱落の有無」欄に結果を示した。
表1に示す結果から分かるとおり、実施例1〜11では、摺動試験後の摺動層の摺動面には合成樹脂の脱落はなかったが、比較例12〜16では、摺動試験後の摺動層の摺動面には合成樹脂の脱落が発生した。実施例1〜11の摺動部材は摺動層の摺動面の合成樹脂の脱落が防がれた理由は、上記のように、摺動層中の空隙含有鱗片状黒鉛粒子の空隙により軸部材から摺動層の摺動面の合成樹脂に加わる衝撃負荷が緩和された効果によると考えられる。また、実施例1〜11では、比較例12〜16に対して、摺動試験後の摺動層の摩耗量が少なくなった。この理由は、上記のように実施例1〜11は、摺動面に加わる衝撃負荷が緩和され、合成樹脂の脱落が防がれたため合成樹脂の脱落部を起点とした摩耗が起こらなかったことによると考えられる。
さらに、鱗片状黒鉛粒子のアスペクト比(A1)が5以上である実施例4〜9は、アスペクト比(A1)が5未満である実施例1〜3よりも摩耗量が少なくなる結果となった。これは、上記で説明したように鱗片状黒鉛粒子の表面積が大きくなることにより、合成樹脂との鱗片状黒鉛粒子の接触面積が大きくなり、合成樹脂との密着性が大きくなるために摺動時に摺動面から脱落し難くなり、しいては耐摩耗がよくなるからと考えられる。但し、実施例10、11の結果から、鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比(A1)は、15以下であるほうが摩耗量が少なくなることが理解できる。
また、実施例4〜7は、異方分散指数(S1)が4未満である実施例8〜11よりも摩耗量が少なくなる結果となったが、これは、上記で説明したように鱗片状黒鉛粒子の長軸方向が摺動面に略平行に配向するものの割合が大きいために、摺動面に加わる衝撃負荷をより緩和しやすくなるからと考えられる。
比較例12は、黒鉛粒子を含む組成物を有機溶剤で粘度が15000mPa・sとなるよう希釈し、圧延工程前の組成物中の有機溶剤の残存量を少なくするための予備乾燥工程を実施しなかったため、組成物中の有機溶剤の割合が多く、圧延工程で組成物を被覆した裏金層がロール間を通るときに組成物中の鱗片状黒鉛粒子に対し内部に空隙が形成される負荷が加わらなかったため、内部組織に空隙が形成されなかったと考えられる。このため、比較例12の摺動部材は、摺動層に空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含まない。摺動試験において、比較例12の摺動部材は、相手軸からの衝撃負荷が緩和されることなく摺動層の摺動面の合成樹脂に加わることにより、摺動面から合成樹脂が脱落し、摺動面の摩耗が促進されたと考えられる。
比較例13は、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が5.3%と低すぎるため、負荷の衝撃を緩和する働きが不十分となり、摺動層の表面の樹脂の脱落が発生し、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例14は、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子が3体積%と少ないため、摺動層と相手軸との摩擦力を低くする効果が不十分となり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例15は、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子が60体積%と多いため、摺動層の強度が低くなり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例16は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さ(L)の衝撃負荷を緩和する作用への影響を確認するための比較材である。具体的には、比較例16では、実施例に対し原材料の鱗片状黒鉛粒子は、平均粒径が小さいものを用い、摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子の平均粒径が1.5μmとなるようにした。表1の「体積割合」に示す比較例16の括弧付の値10.5は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合ではなく、摺動層に分散する鱗片状黒鉛粒子のうち、
鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さLが1.5μm以上であり、
且つ、
内部組織に空隙を有し、空隙は、鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に平行な方向の長さ(L1)が、鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さ(L)の50%以上である
鱗片状黒鉛粒子の体積割合を示す。
比較例16の摺動部材においては、摺動試験後の摺動層の摺動面の合成樹脂の脱落が発生し、摩耗量も多くなった。実施例と、この比較例15の結果から、長軸方向の長さが3μm未満の鱗片状黒鉛粒子は、組織内部に空隙を有していても、摺動層の摺動面に加わる衝撃負荷を緩和する効果が低いことがわかる。
1:摺動部材
2:裏金層
3:摺動層
4:合成樹脂
5:鱗片状黒鉛粒子
51:空隙含有鱗片状黒鉛粒子
52:非空隙含有鱗片状黒鉛粒子
6:多孔質金属層
7:空隙

Claims (8)

  1. 裏金層と、該裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材であって
    前記摺動層は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散された鱗片状黒鉛粒子とからなり、
    前記鱗片状黒鉛粒子の体積の合計は、前記摺動層の体積の5〜50体積%を占め、
    前記鱗片状黒鉛粒子は、平板形状を有し、前記鱗片状黒鉛粒子の断面組織は、黒鉛結晶のAB面が前記平板形状の厚さ方向に複数積層しており、
    前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は、3〜25μmであり、
    前記鱗片状黒鉛粒子は、空隙含有鱗片状黒鉛粒子、すなわち
    長軸方向の長さが3μm以上であり、
    断面組織内で前記鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に伸長する空隙であって、該空隙の前記鱗片状黒鉛粒子の長軸方向に平行な方向の長さが、前記鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さの50%以上である空隙を有する
    空隙含有鱗片状黒鉛粒子を含み、
    前記摺動層中の前記鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する前記空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が10%以上である、摺動部材。
  2. 前記摺動層中の前記鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する前記空隙含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上である、請求項1に記載された摺動部材。
  3. 前記鱗片状黒鉛粒子の長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比が5〜15である、請求項1または請求項2に記載された摺動部材。
  4. 前記鱗片状黒鉛粒子の異方分散指数が3以上であり、該異方分散指数は、各鱗片状黒鉛粒子についての比X1/Y1の平均により表され、ここで
    X1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記鱗片状黒鉛粒子の前記摺動面に対して平行方向の長さであり、
    Y1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記鱗片状黒鉛粒子の前記摺動面に対して垂直方向の長さである、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  5. 前記合成樹脂が、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPS、及びPEIから選ばれる1種または2種以上からなる、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  6. 前記摺動層が、球状黒鉛、MoS、WS、h−BN、及びPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を1〜20体積%をさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  7. 前記摺動層が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、及びMoCから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%さらに含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  8. 前記裏金層と前記摺動層との間に、多孔質金属層をさらに有する、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された摺動部材。
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