JP2017207390A - 装飾品、装飾品の製造方法および時計 - Google Patents

装飾品、装飾品の製造方法および時計 Download PDF

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【課題】銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を提供する。【解決手段】装飾品10は、銀色の外観を呈する銀色部Sと、金色の外観を呈する金色部Gとを備える装飾品であって、銀色部Sの表面は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであり、金色部Gの表面は、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜で構成されており、Au系合金被膜の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜を有しており、銀色部Sの外表面が、前記金色部の外表面より、突出している。【選択図】図1

Description

本発明は、装飾品、装飾品の製造方法および時計に関する。
時計用外装部品のような装飾品には、優れた審美性(美的外観)が要求される。
従来、このような目的を達成するために、異なる色彩を有する複数の材料を組み合わせて用いることがあった。
より具体的には、基材上に、当該基材とは異なる材料で構成された被膜(異色層)を形成し、その後、マスキングをして被膜の一部を除去することにより、基材(素地)と、被膜との色彩を有する部位を有する装飾品を製造するというものである(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような方法では、製造することのできる装飾品の色調の組み合わせが、銀色と黒色との組み合わせ等に限定されてしまう。
その一方で、いずれも高級感のある銀色と金色とを組み合わせた外観を有する装飾品が求められている。
また、高級感のある金色を表現するためには、通常、金または金系合金(Au系合金)が用いられているが、一般に、金および金系合金は、傷つきやすく、摩耗、打痕等の損傷を受けやすいものであり、装飾品の外観を長期間にわたって安定的に優れたものとすることが困難であった。
特に、時計用外装部品のように、通常の使用形態において外部から接触し得る装飾品では、特に、上記のような問題を生じ易かった。
特許第3601784号公報
本発明の目的は、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を提供すること、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を効率よく製造することができる装飾品の製造方法を提供すること、また、前記装飾品を備えた時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の装飾品は、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備える装飾品であって、
前記銀色部の表面は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであり、
前記金色部の表面は、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜で構成されており、
前記Au系合金被膜の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜を有しており、
前記銀色部の外表面が、前記金色部の外表面より、突出していることを特徴とする。
これにより、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を提供することができる。
本発明の装飾品は、凹部を有する基材を備えるものであり、
前記金色部は、Au系合金被膜を平面視した際に、前記凹部と重なり合う部位に選択的に設けられたものであることが好ましい。
これにより、銀色部と金色部との間でより好適に高低差を設けることができ、装飾品の耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の装飾品では、前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼であることが好ましい。
これにより、銀色被膜の傷つきにくさ、摩耗、打痕等の損傷の受けにくさをより優れたものとすることができ、また、傷等がついた場合でも当該傷等を目立ちにくいものとすることができる。また、銀色被膜の耐食性をより優れたものとすることができる。このようなことから、装飾品の耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の装飾品では、前記オーステナイト系ステンレス鋼が、SUS316Lであることが好ましい。
これにより、銀色被膜の傷つきにくさ、摩耗、打痕等の損傷の受けにくさをさらに優れたものとすることができ、また、傷等がついた場合でも当該傷等をより目立ちにくいものとすることができる。また、銀色被膜の耐食性をさらに優れたものとすることができる。このようなことから、装飾品の耐久性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の装飾品は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材を備えるものであり、
前記銀色部では、前記基材上に、Ti系硬質化合物で構成された硬質被膜を介して、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜が設けられていることが好ましい。
これにより、装飾品の耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の装飾品は、時計用外装部品であることが好ましい。
時計用外装部品は、装飾品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品として耐久性も要求されるが、本発明によればこれらの要求を満足することができる。したがって、装飾品が時計用外装部品である場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。
本発明の装飾品では、前記時計用外装部品は、ケース、ベゼル、裏蓋およびバンドの駒よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの部材は、時計全体の外観に大きな影響を与えるとともに、時計の正常な使用時において、使用者等が接触しうる部材であり、優れた審美性とともに、特に優れた耐久性が求められる部材であるが、本発明によれば、これらの要求を満足することができる。すなわち、本発明が前述したような時計用外装部品に適用される場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
本発明の装飾品の製造方法は、少なくとも表面の一部が主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材上に、主としてTi系硬質化合物で構成された第1の硬質被膜を形成する第1の硬質被膜形成工程と、
前記第1の硬質被膜上に、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜を形成する銀色被膜形成工程と、
前記銀色被膜上に、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された第2の硬質被膜を形成する第2の硬質被膜形成工程と、
前記第2の硬質被膜上に、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜を形成するAu系合金被膜形成工程と、
前記第2の硬質被膜および前記Au系合金被膜の一部を選択的に除去し、前記銀色被膜の一部を露出させる銀色被膜露出工程とを有し、
露出させた前記銀色被膜の外表面が、残存する前記Au系合金被膜の外表面よりも突出したものとすることを特徴とする。
これにより、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を効率よく製造することができる装飾品の製造方法を提供することができる。
本発明の装飾品の製造方法では、前記基材として凹部を有するものを用い、
前記銀色被膜露出工程において、前記第2の硬質被膜および前記Au系合金被膜のうち、平面視した際に前記凹部と重なり合わない部位に設けられたものを選択的に除去することが好ましい。
これにより、銀色部と金色部との間でより好適に高低差を設けることができ、装飾品の耐久性をより優れたものとすることができる。
本発明の時計は、本発明の装飾品を備えたことを特徴とする。
これにより、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を備えた時計を提供することができる。
本発明の装飾品の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(基材用意工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(第1の硬質被膜形成工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(銀色被膜形成工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(第2の硬質被膜形成工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(Au系合金被膜形成工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(マスキング工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(銀色被膜露出工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の好適な実施形態の工程(マスク除去工程)を模式的に示す断面図である。 本発明の装飾品の製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を模式的に示す部分断面図である。
以下、添付する図面を参照しつつ、好適な実施形態について詳細な説明をする。
《装飾品》
まず、本発明の装飾品について説明する。
図1は、本発明の装飾品の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
本実施形態の装飾品10は、銀色の外観を呈する銀色部Sと、金色の外観を呈する金色部Gとを備えており、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材1と、基材1の一方の面側に設けられ、主としてTi系硬質化合物で構成された硬質被膜(第1の硬質被膜)2と、第1の硬質被膜2の基材1に対向する面とは反対の面に設けられ、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜3と、銀色被膜3の表面(第1の硬質被膜2に対向する面とは反対の面)の一部に設けられ、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜(第2の硬質被膜)4と、第2の硬質被膜4の銀色被膜3に対向する面とは反対の面に設けられ、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜5とを備えている。
そして、銀色部Sの表面が銀色被膜3で構成されており、金色部Gの表面がAu系合金被膜5で構成されている。そして、銀色部Sの外表面が、金色部Gの外表面より、突出している。
すなわち、以下のように言い換えることができる。
装飾品10は、銀色の外観を呈する銀色部Sと、金色の外観を呈する金色部Gとを備えている。銀色部Sの表面は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであり、金色部Gの表面は、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜5で構成されている。また、Au系合金被膜5の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜(第2の硬質被膜)4を有している。そして、銀色部Sの外表面が、金色部Gの外表面より、突出している。
このように、表面が主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたもの銀色部Sと、表面が主としてAu系合金で構成された金色部Gとを備えることにより、高級感に溢れる銀色および金色を含む審美性に優れた外観が得られる。
また、銀色部Sの表面が主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであるとともに、Au系合金被膜5の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜(第2の硬質被膜)4を有しており、さらに、銀色部Sの外表面が、金色部Gの外表面より、突出していることにより、装飾品10の耐久性は優れたものとなる。より具体的には、摩擦、衝撃等の外力に対して比較的強く、比較的傷つきにくく、摩耗、打痕等の損傷を受けにくく、また、傷等がついた場合でも当該傷等が目立ちにくい材料で構成された銀色部Sの外表面を、高級感のある金色を呈するものの、傷つきやすく、摩耗、打痕等の損傷を受けやすいAu系合金で構成されたAu系合金被膜5(金色部G)よりも突出したものとすることにより、金色部Gを好適に保護することができる。さらに、金色部Gの外表面を構成するAu系合金被膜5の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜(第2の硬質被膜)4を設けることにより、金色部Gの審美性を優れたものとしつつ、金色部Gに外力が加わった場合でも、金色部Gに傷や打痕が付くこと等を効果的に防止することができる。このようなことから、装飾品10の耐久性は優れたものとなる。
なお、本発明において、金色とは、単体金属であるAuが呈する金色のほか、ピンクゴールド(ローズゴールドを含む)等の色調を含むものとする概念である。また、本発明において、銀色とは、単体金属であるAgが呈する銀色のほか、銀白色、銀黒色等を含む概念であり、単体金属であるTiが呈する銀色、Ti系合金が呈する銀色、ステンレス鋼が呈する銀色等を含む概念である。
特に、装飾品10が、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材1を備えるものであり、銀色部Sでは、基材1上に、Ti系硬質化合物で構成された硬質被膜(第1の硬質被膜)2を介して、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜3が設けられていることにより、銀色部Sにおける傷つきにくさ、摩耗、打痕等の損傷の受けにくさをより優れたものとすることができるとともに、銀色被膜3と基材1との密着性(第1の硬質被膜を介した密着性)をより優れたものとすることができ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
≪基材≫
基材1は、装飾品10の主部をなすものであり、通常、装飾品10に対応する形状を有するものである。
また、基材1は、第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4、Au系合金被膜5を支持する機能を有している。
本実施形態において、基材1は、主としてTi、ステンレス鋼のうち少なくとも一方で構成された金属製のものである。
基材1がこのような材料で構成されたものであると、基材1自体の強度等を優れたものとすることができるとともに、基材1と第1の硬質被膜2との密着性をより優れたものとすることができ、装飾品10の耐久性を優れたものとすることができる。また、装飾品を構成する被膜(第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4、Au系合金被膜5)が後に詳述するように比較的薄いものである場合に、基材1も装飾品10の外観に大きな影響を与えるが、基材1が上記のような材料で構成されたものであることにより、装飾品10全体としての審美性を優れたものとすることができる。
なお、本発明において、「主として」とは、該当する部位の50質量%以上が当該成分で構成されていることを言い、特に、該当する部位の70質量%以上が当該成分で構成されているのが好ましく、該当する部位の80質量%以上が当該成分で構成されているのがより好ましい。
基材1が、主としてTiで構成されたものである場合、当該基材1の構成材料としては、金属TiやTi系合金が挙げられる。
Ti系合金中におけるTiの含有率は、55質量%以上であるのが好ましく、75質量%以上であるのがより好ましい。
基材1を構成するステンレス鋼としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼が挙げられる。
基材1は、例えば、表面の少なくとも一部(第1の硬質被膜2と接触する表面)が上記の材料で構成されており、他の部位が上記の材料とは異なる材料で構成されていてもよい。例えば、基材1は、上記の材料とは異なる材料で構成された基部と、上記の材料で構成された表面層とを有するものであってもよい。このような場合、基部の構成材料としては、上記の材料とは異なる金属材料や、各種セラミックス材料、各種樹脂材料等が挙げられる。
また、基材1は、例えば、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
本実施形態では、基材1は、凹部11を有するものである。
これにより、銀色被膜3とAu系合金被膜5との間でより好適に高低差を設けることができ、より好適に銀色部Sの外表面を金色部Gの外表面より突出したものとすることができる。特に、金色部Gを凹部11内に設けられたものとすることができる。その結果、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
凹部11の深さは、特に限定されないが、100μm以上3000μm以下であるのが好ましく、150μm以上2000μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の外観を立体感に溢れたものとし、装飾品10の審美性をより優れたものとしつつ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
また、凹部11の深さは、各被膜(第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5)の厚さの和よりも大きいものであるのが好ましい。すなわち、凹部11に対応する部位に設けられた第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5は、凹部11内に収容されており、凹部11の外部に突出していないものであるのが好ましい。
これにより、装飾品10の外観を立体感に溢れたものとし、装飾品10の審美性をより優れたものとしつつ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
図示の構成では、凹部11の縦断面形状は、矩形状である。
これにより、基材1と、凹部11内に設けられた各被膜(第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5)との密着性をより優れたものとすることができ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。また、装飾品10の製造時において、より好適に凹部11内に各被膜を形成することができる。
≪第1の硬質被膜≫
第1の硬質被膜2は、基材1と銀色被膜3との間に介挿され、基材1および銀色被膜3に接触するように設けられている。
第1の硬質被膜2は、主としてTi系硬質化合物で構成されたものである。
このような第1の硬質被膜2を備えることにより、基材1と銀色被膜3との密着性を優れたものとすることができる。また、第1の硬質被膜2を銀色被膜3の下地(硬質な下地)として有することにより、銀色被膜3の摩耗や打痕等による損傷を受けにくいものとする。このようなことから、装飾品10の耐久性を優れたものとすることができる。
第1の硬質被膜2を構成するTi系硬質化合物としては、例えば、チタン炭化物(TiC)、チタン炭窒化物(TiCN)、チタン窒化物(TiN)、チタン酸化物等が挙げられるが、特に、チタン炭窒化物で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができるとともに、装飾品10の審美性もより優れたものとすることができる。
第1の硬質被膜2は、主としてTi系硬質化合物で構成されたものであればよく、他の成分(特に、不純物としての他の成分)を含むものであってもよい。
第1の硬質被膜2中におけるTi系硬質化合物以外の成分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、第1の硬質被膜2は、各部位で均一な組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、第1の硬質被膜2は、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
第1の硬質被膜2の厚さは、特に限定されないが、0.03μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性および審美性をより優れたものとすることができる。
また、第1の硬質被膜2の厚さは、各部位で均一なものであってもよいし、異なるものであってもよい。
例えば、装飾品10において、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されている部位と、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されていない部位とで、第1の硬質被膜2の厚さが異なるものであってもよい。
さらに具体的には、装飾品10において、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されていない部位での第1の硬質被膜2の厚さは、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されている部位での第1の硬質被膜2の厚さよりも厚いものであってもよい。
これにより、例えば、基材1が有する凹部11の深さが比較的浅いものである場合や、基材1が凹部11を有さないものであっても、銀色部Sの外表面と、金色部Gの外表面との高低差を十分に大きいものとすることができる。
≪銀色被膜≫
銀色被膜3は、第1の硬質被膜2と第2の硬質被膜4との間に介挿され、第1の硬質被膜2および第2の硬質被膜4に接触するように設けられている。
銀色被膜3は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の被膜であり、銀色部Sの外表面を構成するものであり、銀色の外観を呈する。
このような銀色被膜3を備えることにより、装飾品10を、高級感のある銀色を呈する領域(銀色部S)を備え、審美性に優れたものとすることができる。
また、銀色被膜3は、第1の硬質被膜2に対向する面とは反対側の面において、一部のみが第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されており、他の部位は、露出している。
このような構成により、装飾品10において、銀色被膜3とAu系合金被膜5とが露出しており、これらの部位が、ともに外部から直接視認できるように構成されている。
したがって、装飾品10は、複数の異なる色彩の領域(銀色被膜3が視認できる領域である銀色部S、および、Au系合金被膜5が視認できる領域である金色部G)を有し、審美性に優れたものとなる。特に、銀色部Sおよび金色部Gが、それぞれ、前述したような材料で構成されたものであることにより、光沢感があり高級感に溢れる外観が得られる。
また、銀色被膜3は、後に詳述する装飾品10の製造方法の銀色被膜露出工程に対して十分な耐性を有するものであり、装飾品10の製造過程においてダメージを受けにくいものである。したがって、審美性に優れた装飾品10を好適に製造することができる。
また、銀色被膜3は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであり、後に詳述するAu系合金被膜5に比べて、高硬度で、傷がつきにくく、摩耗、打痕等の損傷を受けにくいものである。そして、銀色部Sの外表面(銀色被膜3の外表面)は、金色部Gの外表面(Au系合金被膜5の外表面)よりも突出している。
このような構成により、装飾品10全体として、傷がつきにくく、摩耗、打痕等の損傷を受けにくいものとすることができ、装飾品10の耐久性を優れたものとすることができる。
銀色部Sの外表面(銀色被膜3の外表面)が、金色部Gの外表面(Au系合金被膜5の外表面)より、突出していればよいが、金色部G(Au系合金被膜5)を平面視したときの金色部G(Au系合金被膜5)の全外周長さのうち、銀色部S(銀色被膜3)が接触している部分の長さの割合が、30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
銀色部Sの外表面(銀色被膜3の外表面)と、金色部Gの外表面(Au系合金被膜5の外表面)との高低差(突出高さ)は、95μm以上3000μm以下であるのが好ましく、140μm以上2000μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の外観を立体感に溢れたものとし、装飾品10の審美性をより優れたものとしつつ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
前述したように、銀色被膜3は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものである。
銀色被膜3を構成する主としてTiで構成された材料(Ti系材料)としては、金属Ti(実質的に単物質としてのTi)やTi系合金等が挙げられる。
銀色被膜3が、主としてTiで構成されたものである場合、銀色被膜3中におけるTi以外の成分の含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、銀色被膜3を構成するステンレス鋼としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼が挙げられる。
特に、銀色被膜3は、オーステナイト系ステンレス鋼で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、銀色被膜3の傷つきにくさ、摩耗、打痕等の損傷の受けにくさをより優れたものとすることができ、また、傷等がついた場合でも当該傷等を目立ちにくいものとすることができる。また、銀色被膜3の耐食性をより優れたものとすることができる。このようなことから、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。また、装飾品10の製造時には、後述する第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去等の際に銀色被膜3がダメージを受けることをより効果的に防止することができ、装飾品10の信頼性をより優れたものとすることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS301、SUS301L、SUS301J1、SUS302B、SUS303、SUS304、SUS304Cu、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS304J1、SUS304J2、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS312L、SUS315J1、SUS315J2、SUS316、SUS316L、SUS316LN、SUS316Ti、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317、SUS317L、SUS317LN、SUS317J1、SUS317J2、SUS836L、SUS890L、SUS321、SUS347、SUSXM7、SUSXM15J1等が挙げられるが、銀色被膜3は、SUS316Lで構成されたものであるのが好ましい。
これにより、銀色被膜3の傷つきにくさ、摩耗、打痕等の損傷の受けにくさをさらに優れたものとすることができ、また、傷等がついた場合でも当該傷等をより目立ちにくいものとすることができる。また、銀色被膜3の耐食性をさらに優れたものとすることができる。このようなことから、装飾品10の耐久性をさらに優れたものとすることができる。また、装飾品10の製造時には、後述する第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去等の際に銀色被膜3がダメージを受けることをさらに効果的に防止することができ、装飾品10の信頼性をさらに優れたものとすることができる。
銀色被膜3が主としてステンレス鋼で構成されたものである場合、銀色被膜3中におけるステンレス鋼以外の成分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、銀色被膜3は、各部位で均一な組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、銀色被膜3は、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
銀色被膜3の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上1.0μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上0.4μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性および審美性をより優れたものとすることができる。また、装飾品10の生産性をより優れたものとすることができる。
また、銀色被膜3の厚さは、各部位で均一なものであってもよいし、異なるものであってもよい。
例えば、装飾品10において、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されている部位と、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されていない部位とで、銀色被膜3の厚さが異なるものであってもよい。
さらに具体的には、装飾品10において、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されていない部位での銀色被膜3の厚さは、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されている部位での銀色被膜3の厚さよりも厚いものであってもよい。
これにより、例えば、基材1が有する凹部11の深さが比較的浅いものである場合や、基材1が凹部11を有さないものであっても、銀色部Sの外表面と、金色部Gの外表面との高低差を十分に大きいものとすることができる。
また、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5で被覆されている部位での銀色被膜3は、それ自体が、装飾品10の外観に与える影響が非常に小さいものであるため、このような部位の銀色被膜3の厚さを小さいものとすることにより、装飾品10の審美性を優れたものとしつつ、装飾品10の生産コストの抑制を図ることができる。また、省資源の観点からも好ましい。
≪第2の硬質被膜≫
第2の硬質被膜4は、銀色被膜3とAu系合金被膜5との間に介挿され、銀色被膜3およびAu系合金被膜5に接触するように設けられている。
第2の硬質被膜4は、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成されたものである。
このような第2の硬質被膜4を備えることにより、銀色被膜3とAu系合金被膜5の密着性を優れたものとすることができる。また、第2の硬質被膜4をAu系合金被膜5の下地(硬質な下地)として有することにより、Au系合金被膜5の摩耗や打痕等による損傷を受けにくいものとする。このようなことから、装飾品10の耐久性を優れたものとすることができる。また、Au系合金被膜5の厚さが比較的薄い場合(Au系合金被膜5の下地の色調が金色部Gの外観に与える影響が比較的大きい場合)であっても、金色部Gの色調を好適なものとすることができ、装飾品10全体としての審美性を優れたものとすることができる。
第2の硬質被膜4は、銀色被膜3の表面のうち、金色部Gに対応する部位に選択的に設けられている。
これにより、上記のような効果が得られるとともに、銀色部Sにおいて、銀色被膜3が有する優れた光沢感、色調等を好適に表現することができ、装飾品10全体としての審美性を優れたものとすることができる。
第2の硬質被膜4を構成するTi系硬質化合物としては、例えば、第1の硬質被膜2の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられるが、特に、チタン炭窒化物で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができるとともに、装飾品10の審美性もより優れたものとすることができる。
第2の硬質被膜4を構成するZr系硬質化合物としては、例えば、ジルコニウム炭化物(ZrC)、ジルコニウム炭窒化物(ZrCN)、ジルコニウム窒化物(ZrN)、ジルコニウム酸化物等が挙げられるが、特に、ジルコニウム炭窒化物、ジルコニウム窒化物で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができるとともに、装飾品10の審美性もより優れたものとすることができる。
第2の硬質被膜4は、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうち少なくとも一方を主成分(最も含有率が高いもの)として含むものであればよく、他の成分(特に、不純物としての他の成分)を含むものであってもよい。
第2の硬質被膜4中におけるTi系硬質化合物、Zr系硬質化合物以外の成分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、第2の硬質被膜4は、各部位で均一な組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、第2の硬質被膜4は、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
第2の硬質被膜4の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.05μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性および審美性をより優れたものとすることができる。
≪Au系合金被膜≫
Au系合金被膜5は、第2の硬質被膜4の外表面(銀色被膜3に接触する面とは反対側の面)に接触して設けられており、装飾品10の外表面に露出している。
Au系合金被膜5は、主としてAu系合金で構成されたものであり、金色部Gの外表面を構成するものであり、金色の外観を呈する。
このようなAu系合金被膜5を備えることにより、装飾品10を、高級感のある金色を呈する領域(金色部G)を備え、審美性に優れたものとすることができる。
特に、Au系合金被膜5が装飾品10の外表面の一部に選択的に設けられ、Au系合金被膜5とともに銀色被膜3が露出した構成になっていることにより、装飾品10は、銀色部Sおよび金色部Gを備え、それぞれ光沢感があり高級感に溢れる外観を呈するものとなっており、装飾品10全体の審美性が優れたものとなっている。
また、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜5は、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された第2の硬質被膜4に対し密着性に優れるものである。したがって、装飾品10の耐久性を優れたものとすることができる。
本実施形態では、Au系合金被膜5(金色部G)は、Au系合金被膜5を平面視した際に、基材1が有する凹部11と重なり合う部位に選択的に設けられている。特に、図示の構成では、金色部G(Au系合金被膜5)は、基材1が有する凹部11内に設けられている。
これにより、銀色被膜3とAu系合金被膜5との間でより好適に高低差を設けることができ、より好適に銀色部Sの外表面を金色部Gの外表面より突出したものとすることができる。その結果、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
Au系合金被膜5の構成材料としては、各種Au系合金を用いることができるが、Auの含有率が80質量%以上のAu系合金を好適に用いることができる。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
Au系合金被膜5は、Au系合金以外の成分を含むものであってもよい。
Au系合金被膜5中におけるAu系合金以外の成分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、Au系合金被膜5は、各部位で均一な組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、Au系合金被膜5は、厚さ方向に組成の異なる層が積層された積層体や、傾斜的に組成が変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
Au系合金被膜5の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上1.0μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上0.4μm以下であるのがより好ましい。
これにより、装飾品10の耐久性および審美性をより優れたものとすることができる。また、装飾品10の生産性をより優れたものとすることができる。
装飾品10は、装飾性を備えた物品であればいかなるものでもよく、例えば、置物等のインテリア、エクステリア用品、宝飾品、時計用外装部品、メガネ、ネクタイピン、カフスボタン、指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ブローチ、ペンダント、イヤリング、ピアス等の装身具、ライターまたはそのケース、自動車のホイール、ゴルフクラブ等のスポーツ用品、銘板、パネル、賞杯、その他ハウジング等を含む各種機器部品、各種容器等が挙げられるが、装飾品10は、時計用外装部品であるのが好ましい。
時計用外装部品は、装飾品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品として耐久性も要求されるが、本発明によればこれらの要求を満足することができる。したがって、装飾品10が時計用外装部品である場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。
装飾品が時計用外装部品である場合、当該時計用外装部品としては、例えば、ケース、ベゼル、裏蓋およびバンドの駒、文字板、時計用針等が挙げられるが、ケース、ベゼル、裏蓋およびバンドの駒よりなる群から選択されるものであるのが好ましい。
これらの部材は、時計全体の外観に大きな影響を与えるとともに、時計の正常な使用時において、使用者等が接触しうる部材であり、優れた審美性とともに、特に優れた耐久性が求められる部材であるが、本発明によれば、これらの要求を満足することができる。すなわち、本発明が前述したような時計用外装部品に適用される場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
なお、本発明において、時計用外装部品とは、時計の使用時において、外部から視認しうる部材であればよく、時計の外部に露出しているものに限定されないが、正常な使用時において、使用者等が接触しうる部材であるのが好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
《装飾品の製造方法》
次に、本発明の装飾品の製造方法について説明する。
図2〜図9は、本発明の装飾品の好適な実施形態の工程を模式的に示す断面図である。また、図10は、本発明の装飾品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の装飾品10の製造方法は、少なくとも表面の一部が主としてTi、ステンレス鋼のうち少なくとも一方で構成された金属製の基材1を用意する基材用意工程と、基材1上に、主としてTi系硬質化合物で構成された第1の硬質被膜2を形成する第1の硬質被膜形成工程と、第1の硬質被膜2上に、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜3を形成する銀色被膜形成工程と、銀色被膜3上に、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された第2の硬質被膜4を形成する第2の硬質被膜形成工程と、第2の硬質被膜4上に、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜5を形成するAu系合金被膜形成工程と、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の一部を選択的に除去し、銀色被膜3の一部を露出させる銀色被膜露出工程とを有する。そして、露出させた銀色被膜3の外表面が、残存するAu系合金被膜5の外表面よりも突出したものとする。
これにより、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を製造することができる。また、銀色被膜3の構成材料(主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたもの)と、第2の硬質被膜4を構成するTi系硬質化合物、Zr系硬質化合物、Au系合金被膜5を構成するAu系合金との関係においては、銀色被膜3の構成材料のエッチングレート(例えば、Tiのエッチングレート)に比べて、第2の硬質被膜4の構成材料、Au系合金被膜5の構成材料のエッチングレートが非常に大きい種々の剥離剤(エッチャント)が存在する。したがって、銀色被膜3が侵されることを十分に防止しつつ、効率よく装飾品10を製造することができる。
≪基材用意工程≫
基材用意工程では、前述したような凹部11を有する基材1を用意する。
また、後述する工程に先立ち、基材1の表面に対しては、例えば、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工を施してもよい。
これにより、得られる装飾品10の表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、得られる装飾品10の装飾性をさらに向上させることができる。鏡面加工は、例えば、周知の研磨方法を用いて行うことができ、例えば、バフ(羽布)研磨、バレル研磨、その他の機械研磨等を採用することができる。
また、このような表面加工を施した基材1を用いて製造される装飾品10は、被膜(第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4、Au系合金被膜5)に対して表面加工を直接施すことにより得られるものに比べて、被膜のギラツキ等が抑制されたものとなり、特に審美性に優れたものとなる。また、被膜(第1の硬質被膜2、銀色被膜3、第2の硬質被膜4、Au系合金被膜5)の厚さが前述したように比較的薄いものである場合、被膜に対して表面加工を直接施す場合には、当該表面加工を施す際に被膜にカケ、剥離等の欠陥を生じ易く、装飾品10製造の歩留りが著しく低下する場合があるが、基材1に対して表面処理を行うことにより、このような問題の発生も効果的に防止することができる。また、基材1に対する表面処理は、被膜に対する表面加工に比べて、温和な条件で容易に行うことができる。
また、第1の硬質被膜形成工程に先立ち、基材1に対して、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理を施してもよい。
これにより、基材1と第1の硬質被膜2の密着性を特に優れたものとすることができる。
≪第1の硬質被膜形成工程≫
第1の硬質被膜形成工程では、基材1の表面に第1の硬質被膜2を形成する。
第1の硬質被膜2の形成方法(成膜方法)は、特に限定されないが、乾式めっき法であるのが好ましい。
これにより、均質で、かつ基材1との密着性が特に優れた第1の硬質被膜2を比較的容易に形成することができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、さらに向上する。また、乾式めっき法を用いることにより、特に高密度の第1の硬質被膜2を形成することが可能となる。その結果、装飾品10は、長期間にわたって特に優れた審美性を保持できるものとなる。また、第1の硬質被膜2の組成の制御をより容易に行うことができる。
第1の硬質被膜2の形成に適用する乾式めっき法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられるが、中でも、スパッタリングが好ましい。
これにより、より均質で、かつ、基材1との密着性が特に優れた第1の硬質被膜2を比較的容易に形成することができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、特に優れたものとなる。また、スパッタリングを用いることにより、特に高密度の第1の硬質被膜2を形成することが可能となり、得られる装飾品10は、長期間にわたって特に優れた審美性を保持できるものとなる。
スパッタリングは、例えば、以下のような条件で行うのが好ましい。
スパッタリング時におけるスパッタ電圧は、例えば、300V以上800V以下であるのが好ましく、400V以上650V以下であるのがより好ましい。
スパッタ電圧が前記範囲内の値であると、基材1との密着性に優れた第1の硬質被膜2を形成することができる。また、形成される第1の硬質被膜2は、各部位における膜厚のバラツキが小さいものとなり、内部応力が小さく、クラックが発生し難いものとなる。
スパッタリング時におけるスパッタ電流は、例えば、5A以上150A以下であるのが好ましく、10A以上40A以下であるのがより好ましい。
スパッタ電流が前記範囲内の値であると、基材1と第1の硬質被膜2との密着性をより優れたものとすることができる。また、形成される第1の硬質被膜2は、各部位における膜厚のバラツキが小さいものとなり、内部応力が小さく、クラックが発生し難いものとなる。
第1の硬質被膜2の組成は、スパッタリング時における雰囲気ガスの組成等を調整することにより制御することができる。
スパッタリング時における雰囲気の圧力は、特に限定されないが、1×10−2Pa以上8×10−1Pa以下であるのが好ましく、1×10−1Pa以上6×10−1Pa以下であるのがより好ましい。
≪銀色被膜形成工程≫
銀色被膜形成工程では、第1の硬質被膜2の表面に銀色被膜3を形成する。
銀色被膜3の形成方法としては、例えば、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射、金属箔の接合等が挙げられるが、この中でも特に、乾式めっき法が好ましい。
銀色被膜3の形成方法として、乾式めっき法を用いることにより、第1の硬質被膜2と銀色被膜3との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、特に優れたものとなる。
なお、銀色被膜3の形成に先立ち、第1の硬質被膜2に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理、エッチング処理等が挙げられるが、この中でも特に、清浄化処理が好ましい。
第1の硬質被膜2の表面に、清浄化処理を施すことにより、第1の硬質被膜2と銀色被膜3との密着性を特に優れたものとすることができる。
≪第2の硬質被膜形成工程≫
第2の硬質被膜形成工程では、銀色被膜3の表面に第2の硬質被膜4を形成する。
第2の硬質被膜4の形成方法(成膜方法)は、特に限定されないが、乾式めっき法であるのが好ましい。
これにより、均質で、かつ銀色被膜3との密着性が特に優れた第2の硬質被膜4を比較的容易に形成することができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、さらに向上する。また、乾式めっき法を用いることにより、特に高密度の第2の硬質被膜4を形成することが可能となる。その結果、装飾品10は、長期間にわたって特に優れた審美性を保持できるものとなる。また、第2の硬質被膜4の組成の制御をより容易に行うことができる。
第2の硬質被膜4の形成に適用する乾式めっき法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられるが、中でも、スパッタリングが好ましい。
これにより、より均質で、かつ、銀色被膜3との密着性が特に優れた第2の硬質被膜4を比較的容易に形成することができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、特に優れたものとなる。また、スパッタリングを用いることにより、特に高密度の第2の硬質被膜4を形成することが可能となり、得られる装飾品10は、長期間にわたって特に優れた審美性を保持できるものとなる。
スパッタリングは、例えば、以下のような条件で行うのが好ましい。
スパッタリング時におけるスパッタ電圧は、例えば、300V以上800V以下であるのが好ましく、450V以上600V以下であるのがより好ましい。
スパッタ電圧が前記範囲内の値であると、銀色被膜3との密着性に優れた第2の硬質被膜4を形成することができる。また、形成される第2の硬質被膜4は、各部位における膜厚のバラツキが小さいものとなり、内部応力が小さく、クラックが発生し難いものとなる。
スパッタリング時におけるスパッタ電流は、例えば、5A以上150A以下であるのが好ましく、10A以上40A以下であるのがより好ましい。
スパッタ電流が前記範囲内の値であると、銀色被膜3と第2の硬質被膜4との密着性をより優れたものとすることができる。また、形成される第2の硬質被膜4は、各部位における膜厚のバラツキが小さいものとなり、内部応力が小さく、クラックが発生し難いものとなる。
第1の硬質被膜2の組成は、スパッタリング時における雰囲気ガスの組成等を調整することにより制御することができる。
スパッタリング時における雰囲気の圧力は、特に限定されないが、1×10−2Pa以上8×10−1Pa以下であるのが好ましく、1×10−1Pa以上6×10−1Pa以下であるのがより好ましい。
なお、第2の硬質被膜4の形成に先立ち、銀色被膜3に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理、エッチング処理等が挙げられる。
銀色被膜3の表面に、清浄化処理を施すことにより、銀色被膜3と第2の硬質被膜4との密着性を特に優れたものとすることができる。
≪Au系合金被膜形成工程≫
Au系合金被膜形成工程では、第2の硬質被膜4の表面に銀色被膜3とは異なる色調の材料で構成されたAu系合金被膜5を形成する。
Au系合金被膜5の形成方法としては、例えば、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射、金属箔の接合等が挙げられるが、この中でも特に、乾式めっき法が好ましい。
Au系合金被膜5の形成方法として、乾式めっき法を用いることにより、第2の硬質被膜4とAu系合金被膜5との密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、得られる装飾品10の耐久性は、特に優れたものとなる。
なお、Au系合金被膜5の形成に先立ち、第2の硬質被膜4に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理、エッチング処理等が挙げられるが、この中でも特に、清浄化処理が好ましい。
第2の硬質被膜4の表面に、清浄化処理を施すことにより、第2の硬質被膜4とAu系合金被膜5との密着性を特に優れたものとすることができる。
≪マスキング工程≫
本実施形態では、後述する銀色被膜露出工程に先立ち、Au系合金被膜5の表面の一部に、マスク7を被覆するマスキング工程を有している。このマスク7は、銀色被膜露出工程において、被覆した部位の第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を保護する機能を有する。
このようなマスク7を形成することにより、銀色被膜露出工程での第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去の選択性をより優れたものとすることができ、より確実に、所望のパターンで第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を除去することができる。
特に、本実施形態では、Au系合金被膜5のうち、平面視した際に凹部11と重なり合う部位に選択的にマスク7を形成している。
これにより、後に詳述する銀色被膜露出工程において、当該部位以外の第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を選択的に除去することができる。その結果、銀色被膜3とAu系合金被膜5との間でより好適に高低差を設けることができ、より好適に銀色部Sの外表面を金色部Gの外表面より突出したものとすることができ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
マスク7としては、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を除去する工程において、被覆した部位の第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を保護する機能を有するものであればいかなるものでもよいが、後述するマスク除去工程において、容易に除去することができるものであるのが好ましい。
このようなマスク7を構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、エポキシ系、フッ素系、ビニル系、ゴム系等の樹脂材料等が挙げられる。
マスク7の形成方法は、特に限定されず、例えば、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射等が挙げられる。
マスク7の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、100μm以上2000μm以下であるのが好ましく、500μm以上1000μm以下であるのがより好ましい。
また、マスク7は透明であることが好ましい。これによりAu系合金被膜5との密着状態を外部から視認することが可能となる。
マスク7は、Au系合金被膜5の表面に、直接、所望の形状となるように形成されるものに限定されない。例えば、Au系合金被膜5の表面のほぼ全面に、マスク7の構成材料を被覆した後、その一部を除去することにより、所望のパターンを有するマスク7としてもよい。
Au系合金被膜5の表面のほぼ全面に被覆されたマスク7の一部を除去する方法としては、例えば、除去したい部位のマスク7に、レーザー光を照射する方法等が挙げられる。このとき用いられるレーザーとしては、例えば、Ne−Heレーザー、Arレーザー、COレーザー等の気体レーザーや、ルビーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー等が挙げられる。
≪銀色被膜露出工程≫
銀色被膜露出工程では、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の一部(マスク7で被覆されていない部位)を選択的に除去し、銀色被膜3の一部を露出させる。
これにより、銀色被膜3の外表面が、Au系合金被膜5の外表面よりも突出したパターンを形成する。
特に、本実施形態では、Au系合金被膜5のうち、平面視した際に凹部11と重なり合う部位が選択的にマスク7で被覆された状態で、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の一部(マスク7で被覆されていない部位)を除去する。
これにより、マスク7で被覆されていない部位の第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5(第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5のうち、平面視した際に凹部11と重なり合わない部位に設けられたもの)を選択的に除去することができる。その結果、銀色被膜3とAu系合金被膜5との間でより好適に高低差を設けることができ、より好適に銀色部Sの外表面を金色部Gの外表面より突出したものとすることができ、装飾品10の耐久性をより優れたものとすることができる。
第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去は、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を除去することが可能で、かつ、銀色被膜3、マスク7を実質的に溶解、剥離しない剥離剤を用いて行うことができる。
第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去に用いられる剥離剤は、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を除去することが可能であり、かつ、銀色被膜3、マスク7を実質的に溶解、剥離しないものであれば、特に限定されないが、液体、気体等の流体であるのが好ましく、その中でも特に、液体であるのが好ましい。これにより、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去を容易かつ確実に行うことが可能となる。
剥離剤としては、例えば、硝酸、硫酸、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルテトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒等の有機溶媒等から選択される1種または2種以上を混合したものや、これらに、塩化水素、フッ化水素、リン酸等の酸性物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア等のアルカリ性物質、過マンガン酸カリウム(KMnO)、二酸化マンガン(MnO)、二クロム酸カリウム(KCr)、オゾン、サラシ粉、キノン類等の酸化剤、チオ硫酸ナトリウム(Na)、硫化水素、ヒドロキノン類等の還元剤を混合したもの等が挙げられるが、その中でも特に、0.1体積%以上5体積%以下の水酸化カリウムと、30体積%以上60体積%以下の過酸化水素とを含む溶液(特に、水溶液)であるのが好ましい。
剥離剤として、このような溶液を用いることにより、銀色被膜3、マスク7に実質的なダメージを与えることなく、マスク7が被覆されていない部位の第2の硬質被膜4(特に、TiCN、ZrCNで構成された第2の硬質被膜4)およびAu系合金被膜5を容易に除去することができる。
第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5を除去する方法としては、例えば、剥離剤を噴霧する方法、液体状態の剥離剤に浸漬する方法(ディッピング)、液体状態の剥離剤に浸漬した状態で電解する方法等が挙げられるが、この中でも特に、液体状態の剥離剤に浸漬する方法が好ましい。これにより、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去をさらに容易かつ確実に行うことが可能となる。また、第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去は、例えば、超音波振動を与えながら行ってもよい。
第2の硬質被膜4およびAu系合金被膜5の除去を液体状態の剥離剤に浸漬することにより行う場合、剥離剤の温度は、特に限定されないが、例えば、15℃以上100℃以下であるのが好ましく、20℃以上50℃以下であるのがより好ましく、30℃以上40℃以下であるのがさらに好ましい。
また、剥離剤への浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、5分間以上120分間以下であるのが好ましく、20分間以上60分間以下であるのがより好ましい。
≪マスク除去工程≫
本実施形態では、銀色被膜露出工程の後に、さらに、マスク7を除去するマスク除去工程を有している。
これにより、Au系合金被膜5を外部に露出させることができ、装飾品10の審美性を優れたものとすることができる。
マスク7の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、マスク7を除去することが可能であり、かつ銀色被膜3およびAu系合金被膜5に対して、実質的にダメージを与えないマスク除去剤を用いて行うのが好ましい。
このようなマスク除去剤を用いることにより、マスク7の除去を容易かつ確実に行うことができる。
マスク7の除去に用いられるマスク除去剤は、特に限定されないが、液体、気体等の流体であるのが好ましく、その中でも特に、液体であるのが好ましい。
これにより、マスク7の除去をさらに容易かつ確実に行うことが可能となる。
マスク除去剤としては、例えば、硝酸、硫酸、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルテトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒等の有機溶媒等から選択される1種または2種以上を混合したものや、これらに、塩化水素、フッ化水素、リン酸等の酸性物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア等のアルカリ性物質、過マンガン酸カリウム(KMnO)、二酸化マンガン(MnO)、二クロム酸カリウム(KCr)、オゾン、サラシ粉、キノン類等の酸化剤、チオ硫酸ナトリウム(Na)、硫化水素、ヒドロキノン類等の還元剤を混合したもの等が挙げられる。
マスク7を除去する方法としては、例えば、マスク除去剤を噴霧する方法、液体状態のマスク除去剤に浸漬する方法、液体状態のマスク除去剤に浸漬した状態で電解する方法等が挙げられるが、この中でも特に、液体状態のマスク除去剤に浸漬する方法が好ましい。
これにより、マスク7の除去をさらに容易かつ確実に行うことが可能となる。また、マスク7の除去は、例えば、超音波振動を与えながら行ってもよい。
マスク7の除去を、液体状態のマスク除去剤に浸漬することにより行う場合、マスク除去剤の温度は、特に限定されないが、例えば、15℃以上100℃以下であるのが好ましく、30℃以上50℃以下であるのがより好ましい。
また、マスク除去剤への浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、5分間以上60分間以下であるのが好ましく、5分間以上30分間以下であるのがより好ましい。
前述したような装飾品の製造方法をフローチャートにまとめると、図10のようになる。
《時計》
次に、本発明の時計について説明する。
図11は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を模式的に示す部分断面図である。
本実施形態の腕時計(携帯時計)100は、胴(ケース)22と、裏蓋23と、ベゼル(縁)24と、ガラス板25とを備えている。また、ケース22内には、図示しないムーブメント(例えば文字盤、針付きのもの)が収納されている。
胴22には巻真パイプ26が嵌入・固定され、この巻真パイプ26内にはりゅうず27の軸部271が回転可能に挿入されている。
胴22とベゼル24とは、プラスチックパッキン28により固定され、ベゼル24とガラス板25とはプラスチックパッキン29により固定されている。
また、胴22に対し裏蓋23が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)50には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)40が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部50が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず27の軸部271の途中の外周には溝272が形成され、この溝272内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)30が嵌合されている。ゴムパッキン30は巻真パイプ26の内周面に密着し、該内周面と溝272の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず27と巻真パイプ26との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず27を回転操作したとき、ゴムパッキン30は軸部271と共に回転し、巻真パイプ26の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
本実施形態の腕時計100は、ベゼル24、胴22、りゅうず27、裏蓋23、時計バンド等の装飾品(特に、時計用外装部品)のうち少なくとも1つが前述したような本発明の装飾品で構成されたものである。言い換えると、本実施形態の時計は、本発明の装飾品を備えたものである。
これにより、銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備え、審美性に優れるとともに、耐久性にも優れる装飾品を備えた時計を提供することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の装飾品、時計では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
例えば、装飾品の表面の少なくとも一部には、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等を付与し、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向上するコート層(保護層)等が形成されていてもよい。このようなコート層は、装飾品の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、装飾品は、基材と第1の硬質被膜と銀色被膜と第2の硬質被膜とAu系合金被膜とがこの順に積層された5層構成を有するものである場合について代表的に説明したが、これらの構成のうち隣り合う2つの構成の間に、少なくとも1層の中間層が設けられていてもよい。
また、銀色部の表面は、基材の表面の一部であってもよく、このような場合、装飾品は、前述したような第1の硬質被膜および銀色被膜を備えていないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、凹部の縦断面形状が矩形状である場合について代表的に説明したが、凹部の形状は、このようなものに限定されず、例えば、縦断面形状が三角形のもの、半円形のもの等であってもよい。また、凹部の縁部と基材の凹部以外の表面との間に角部が存在していなくてもよく、凹部の縁部と基材の凹部以外の表面とが曲面で連続しているものであってもよい。
また、本発明の装飾品の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、銀色被膜露出工程の前にマスク形成工程を有し、マスクを用いて第2の硬質被膜およびAu系合金被膜の一部を除去する場合について代表的に説明したが、本発明ではマスク形成工程を省略してもよい。このような場合でも、例えば、基材と第1の硬質被膜と銀色被膜と第2の硬質被膜とAu系合金被膜とを備える積層体に対して、インクジェット法等を用いて剥離剤を所定のパターンで付与することにより、第2の硬質被膜およびAu系合金被膜を所望のパターンで除去することができる。
また、本発明の装飾品は、前述したような製造方法を用いて製造されたものに限定されない。
10…装飾品、S…銀色部、G…金色部、1…基材、11…凹部、2…第1の硬質被膜、3…銀色被膜、4…第2の硬質被膜、5…Au系合金被膜、7…マスク、100…腕時計(携帯時計)、22…胴(ケース)、23…裏蓋、24…ベゼル(縁)、25…ガラス板、26…巻真パイプ、27…りゅうず、271…軸部、272…溝、28…プラスチックパッキン、29…プラスチックパッキン、30…ゴムパッキン(りゅうずパッキン)、40…ゴムパッキン(裏蓋パッキン)、50…接合部(シール部)

Claims (10)

  1. 銀色の外観を呈する銀色部と、金色の外観を呈する金色部とを備える装飾品であって、
    前記銀色部の表面は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成されたものであり、
    前記金色部の表面は、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜で構成されており、
    前記Au系合金被膜の下地として、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された硬質被膜を有しており、
    前記銀色部の外表面が、前記金色部の外表面より、突出していることを特徴とする装飾品。
  2. 装飾品は、凹部を有する基材を備えるものであり、
    前記金色部は、Au系合金被膜を平面視した際に、前記凹部と重なり合う部位に選択的に設けられたものである請求項1に記載の装飾品。
  3. 前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼である請求項1または2に記載の装飾品。
  4. 前記オーステナイト系ステンレス鋼が、SUS316Lである請求項3に記載の装飾品。
  5. 装飾品は、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材を備えるものであり、
    前記銀色部では、前記基材上に、Ti系硬質化合物で構成された硬質被膜を介して、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜が設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装飾品。
  6. 装飾品は、時計用外装部品である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装飾品。
  7. 前記時計用外装部品は、ケース、ベゼル、裏蓋およびバンドの駒よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の装飾品。
  8. 少なくとも表面の一部が主としてTiまたはステンレス鋼で構成された金属製の基材上に、主としてTi系硬質化合物で構成された第1の硬質被膜を形成する第1の硬質被膜形成工程と、
    前記第1の硬質被膜上に、主としてTiまたはステンレス鋼で構成された銀色被膜を形成する銀色被膜形成工程と、
    前記銀色被膜上に、Ti系硬質化合物、Zr系硬質化合物のうちの少なくとも一方を含む材料で構成された第2の硬質被膜を形成する第2の硬質被膜形成工程と、
    前記第2の硬質被膜上に、主としてAu系合金で構成されたAu系合金被膜を形成するAu系合金被膜形成工程と、
    前記第2の硬質被膜および前記Au系合金被膜の一部を選択的に除去し、前記銀色被膜の一部を露出させる銀色被膜露出工程とを有し、
    露出させた前記銀色被膜の外表面が、残存する前記Au系合金被膜の外表面よりも突出したものとすることを特徴とする装飾品の製造方法。
  9. 前記基材として凹部を有するものを用い、
    前記銀色被膜露出工程において、前記第2の硬質被膜および前記Au系合金被膜のうち、平面視した際に前記凹部と重なり合わない部位に設けられたものを選択的に除去する請求項8に記載の装飾品の製造方法。
  10. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装飾品を備えたことを特徴とする時計。
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