JP2017207344A - レーザ光吸収率測定方法、レーザ光吸収率測定装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

レーザ光吸収率測定方法、レーザ光吸収率測定装置及びレーザ加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】精度よく金属部材の吸収率を測定することができるレーザ光吸収率測定方法、レーザ光吸収率測定装置及び測定したレーザ光吸収率に基づくレーザ加工方法を提供することを目的とする。【解決手段】レーザ光吸収率測定方法は、レーザ装置20と、赤外線カメラ装置30と、を用いて、試料62の実レーザ光吸収率εrを測定する。レーザ光吸収率測定方法は、照射スポット部62a1の実温度Trを測定する実温度測定工程S10と、昇温する照射スポット部62a1における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、レーザ装置20の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度ΔTtを算出する理論昇温温度算出工程S20と、実温度Trと複数の理論昇温温度ΔTtとに基づき試料62の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程S30と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、レーザ光吸収率測定方法、レーザ光吸収率測定装置、及び測定した実レーザ光吸収率に基づくレーザ加工方法に関する。
従来、レーザ光を金属部材の表面に照射し吸収させることによって金属部材を加熱する技術がある。金属部材を加熱することにより、熱処理、金属部材の切断、及び金属部材同士の接合等を行なうことができる。このとき、照射されるレーザ光は、各レーザ光に対応する各金属部材に固有の吸収率(レーザ光吸収率)に応じて、各金属部材に吸収される。そして、吸収されたレーザ光が金属部材内で熱に変換され金属部材を加熱する。このため、レーザ光を金属部材(の照射面)に照射し所望の温度まで加熱する際、所望の温度とするまでの時間をできるだけ短縮させるためには、金属部材の吸収率を正確に把握し、把握した正確な吸収率に基づき、レーザ光の照射出力、及び照射時間を設定することが非常に重要である。
しかしながら、通常、金属部材に対するレーザ光の吸収率は、様々な変動要因を有している。吸収率の変動要因としては、例えば、レーザ光が照射される照射面の面粗さ、照射面に付着している付着物(油等)の量や付着態様、及びレーザ光の波長と金属部材との相性等が挙げられる。これらをすべて精度よく把握することは非常に困難である。
これに対し、非特許文献1には、実際に吸収率を簡易に測定する手法が開示されている。非特許文献1では、試料の照射面に対し、所定の照射出力及び照射時間でレーザ光を照射する。そして、このときに昇温する試料の温度を熱電対によって測定する。熱電対は、試料の下面、即ちレーザ光が照射される照射面と背向する面に接触させ、照射面から伝導してくる熱を測定し、照射面の温度を推定している。そして、熱電対によって実際に測定した実温度と、演算によって得るレーザ光の所定の照射出力及び照射時間の照射によって上昇すべき試料の理論上の上昇温度とを比較する。
ここで、試料の理論上の上昇温度とは、試料の吸収率を暫定で設定し、レーザ光を所定の照射出力で、所定の照射時間だけ照射した場合に上昇すべき試料の計算上の上昇温度である。このとき、実温度と、理論上の上昇温度とが一致していなければ暫定で設定した吸収率が間違っていることになる。そこで、実温度と、理論上の上昇温度とが一致するよう吸収率を変更し、変更した吸収率を試料の吸収率とするものである。そして、以降のレーザ光の照射の設定は、変更した吸収率に基づき行なうことで、効率のよいレーザ光の照射ができる。
安永暢男、外4名、「cwCO2レーザ光による熱・光学特性の測定」、精密機械、公益社団法人精密工学会、1985年12月5日、Vol. 51 (1985) No. 12 P 2253、p. 91―96
しかしながら、非特許文献1に記載される技術では、試料の温度測定に接触式の熱電対を適用している。熱電対は、試料に接触した一箇所のみを測定するのみであり、昇温する一定の広い範囲の温度上昇を測定できない。また、熱電対は、レーザ光が照射される照射面の背向側の面に接触し、背向側の面の温度を測定している。このため、照射面の温度上昇特性を精度よく測定することは困難である。また、熱電対は、自身の温度の変化によって精度が変動する特性を有している。このため、常に精度よく温度の測定ができるとはいえない。これらにより、非特許文献1に記載される技術では、試料の吸収率を精度よく測定することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、精度よく金属部材の吸収率を測定することができるレーザ光吸収率測定方法、レーザ光吸収率測定装置及び測定したレーザ光吸収率に基づくレーザ加工方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るレーザ光吸収率測定方法は、試料の照射面に対して垂直にレーザ光を照射するレーザ装置と、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を前記照射スポット部が放出する赤外線量を検出することによって測定する赤外線カメラ装置と、を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する方法であって、前記赤外線カメラ装置によって、前記レーザ光の照射前、及び照射中における前記照射スポット部の前記実温度を測定する実温度測定工程と、前記レーザ装置の照射条件、前記試料のレーザ光吸収率、及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する前記照射スポット部における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、前記レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、前記レーザ装置の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度を算出する理論昇温温度算出工程と、前記実温度と前記複数の理論昇温温度とに基づき前記試料の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程と、を備える。
このように、上記態様においては、レーザ光を照射する試料の照射面の実温度を赤外線カメラ装置によって非接触状態で直接測定する。なお、このとき、照射面に照射するレーザ光は照射面に対して垂直である。ただし、ここでいう垂直とは、照射面に対して90°である場合に限らず、90°近傍の角度も含む。これにより、レーザ光が照射される照射面ではなく、照射面の配向面に熱電対を接触させて試料の温度を測定する従来技術と比較して、レーザ光の照射により昇温する試料の昇温特性を精度よく測定できる。
そして、精度よく測定された実温度と、理論昇温温度算出工程により算出した複数の理論昇温温度とに基づき試料の実レーザ光吸収率を算出する。具体的には、精度よく測定された実温度と、複数の理論昇温温度とを比較する。複数の理論昇温温度は、レーザ装置の照射条件、試料のレーザ光吸収率、及びレーザ光の照射スポット部への照射により昇温する昇温温度を規定する理論的な関係(式)を用いて、レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、レーザ装置の実照射条件に基づいて算出される。そして、算出された複数の理論昇温温度のうち最も実温度に近い理論昇温温度を抽出し、当該理論昇温温度特性の算出に使用された仮定レーザ光吸収率を試料の実レーザ光吸収率とする。このように、赤外線カメラ装置によって精度よく測定された実温度と、算出する理論昇温温度とに基づき実レーザ光吸収率を算出するので、精度のよい実レーザ光吸収率を得ることができる。
金属材料別のレーザ光の波長と吸収率との関係を示すグラフである。 実施形態に係るレーザ光吸収率測定装置の概要図である。 照射スポット部を複数の領域に分割した際における各領域のイメージ図である。 照射スポット部における実際に測定した実温度と照射時間との関係を示すグラフCである。 照射スポット部における算出した理論上の理論上昇温度と照射時間との関係を示すグラフD(D1〜D4)である。 グラフCとグラフDとの比較をした状態を説明する図である。 第一実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法のフローチャート1である。 第一実施形態に係るレーザ加工方法のフローチャート2である。 レーザ加工方法を実施する際におけるレーザ光吸収率測定装置10の構成を説明する図である。 第四実施形態における断熱材を説明する図である。
<1.第一実施形態>
(1−1.概要)
まず、本発明の第一実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法及びレーザ光吸収率測定装置の概要について説明する。レーザ光吸収率測定方法(及びレーザ光吸収率測定装置)は、レーザ光の照射により、例えば、熱処理が施される金属部材の吸収率(以降、レーザ光吸収率εと称す)を精度よく測定して把握することを目的とする。精度よくレーザ光吸収率εを把握することにより、例えば、熱処理を行なうためレーザ光を金属部材の照射面に照射する際、把握した精度のよいレーザ光吸収率εに基づいてレーザ光の照射条件である照射出力P及び照射時間τを設定することできる。これにより、金属部材を所望の時間内で効率よく所望の温度まで昇温させて熱処理を速やかに行なうことができる。なお、熱処理の種類については限定しない。
(1−2.金属部材の吸収率について)
ここで、まず金属部材の吸収率について説明しておく。レーザ光は、金属部材の表面(照射面)に照射され、照射面から内部に吸収されることによって熱エネルギーに変換されて金属部材を加熱する。このようにして、金属部材を所望の温度まで加熱し、公知の熱処理、金属部材の切断、及び金属部材同士の接合等を行なうことができる。
このとき、照射されるレーザ光は、参考例として例示する図1に示すように、各レーザ光の波長に対応する各金属部材に固有のレーザ光吸収率εに応じて、各金属部材に吸収される。レーザ光を金属部材の照射面に照射し、所望の温度まで加熱する際に、照射面を所望の温度とするまでの時間をできるだけ短縮させるためには、この金属部材の吸収率を正確に把握し、把握した正確な吸収率に基づき、レーザ光の照射出力P、及び照射時間τを設定することが非常に重要となる。
しかしながら、金属部材に対するレーザ光のレーザ光吸収率εは、様々な変動要因を有している。レーザ光吸収率εの変動要因としては、例えば、レーザ光が照射される金属部材の照射面の面粗さ、照射面に付着している付着物(油等)の量や付着態様、及びレーザ光の波長と金属部材との相性等が挙げられる。しかし、これらをすべて精度よく把握し、レーザ光吸収率εを正確に求めることは非常に困難である。
そこで、発明者は、従来技術とは異なる新たな方法によって、レーザ光吸収率εを、実測して求める方法(レーザ光吸収率測定方法)及び装置(レーザ光吸収率測定装置)を考えた。なお、ここでいう従来技術とは、精密工学会のJSPE−51−12(‘85−12−2253)に公開される技術であり、熱電対によってレーザ光が照射された試料の温度を測定し、測定した試料の温度に基づいてレーザ光吸収率εを測定する技術である。以下において、レーザ光吸収率測定方法、及びレーザ光吸収率測定装置について詳細に説明する。なお、説明の都合上、レーザ光吸収率測定装置から説明する。
(1−3.レーザ光吸収率測定装置の構成)
図2に示すレーザ光吸収率測定装置10は、試料62にレーザ光L1を照射することによって試料62のレーザ光吸収率(実レーザ光吸収率εr)を測定する装置である。このとき、試料62は、試料62によって実レーザ光吸収率εrを求めた後に熱処理等のためレーザ照射を行なう金属部材と同じ材質、形状及び仕様であることが好ましい。本実施形態においては、金属部材及び試料62は、ともにSUJ(JIS G 4805)とする。ただし、SUJは一例であって、レーザ加工が可能な材料であればどうような物でもよい。
また、試料62の照射面62aは、レーザ光L1の照射前において、研磨がされていない非研磨状態であるものとする。このため、照射面62aでは、研磨された鏡面状態の場合よりもレーザ光L1が吸収されやすくなる。これにより、照射したレーザ光L1を照射面62aに吸収させ、昇温させることによって試料62の実レーザ光吸収率εrを求める本発明にとって精度のよい結果を得やすくなる。なお、実レーザ光吸収率εrの詳細については、後述する。
図2に示すように、レーザ光吸収率測定装置10は、レーザ装置20と、赤外線カメラ装置30と、制御部40と、を備える。レーザ装置20は、レーザ発振器21、レーザヘッド22、及び筐体23を備える。レーザヘッド22は、筐体23内に配置される。
本実施形態において、レーザ発振器21は、半導体レーザの発振器である。レーザ発振器21が発振するレーザ光L1の波長は、1050nm(1.05μm)前後である。また、レーザ発振器21は、制御部40の制御によって出力の変更が可能となっている。
なお、レーザ発振器21は、半導体レーザの発振器に限らず、CO2レーザの発振器であってもよい。また、レーザ発振器21は、YAGレーザに代表される近赤外波長のレーザ光を発振する発振器でもよい。ただし、各レーザ光の波長は0.7μm〜2.5μmの範囲にあることが好ましい。レーザ発振器21は、レーザ発振器21から発振されたレーザ光L1をレーザヘッド22に伝送する光ファイバ25を備える。
図2に示すように、筐体23内に配置されるレーザヘッド22は、試料62の照射面62aから距離Xを隔て、且つ試料62の照射面62aに対向して配置される。つまり、レーザヘッド22から照射されるレーザ光L1は、照射面62aに対して垂直に照射される。ただし、ここでいう垂直とは、照射面62aに対して90°である場合に限らず、90°近傍の角度も含む。レーザ光L1の照射角度の詳細については、後述する。
レーザヘッド22は、コリメートレンズ24、ミラー26、及びfθレンズ27を有している。コリメートレンズ24は、光ファイバ25から出射されたレーザ光L1をコリメートして平行光に変換する。ミラー26は、コリメートされたレーザ光L1が、fθレンズ27に入射するようレーザ光L1の進行方向を変換する。本実施形態において、ミラー26は、レーザ光L1の進行方向を90度変換する。fθレンズ27は、ミラー26から入射された平行なレーザ光L1を集光するレンズである。
次に、赤外線カメラ装置30について説明する。赤外線カメラ装置30は、レーザ光L1が照射される照射面62aの照射スポット部62a1の実温度Trを、照射スポット部62a1が放出する赤外線放射エネルギー量(赤外線量に相当)を検出することによって測定する装置である。
具体的には、赤外線カメラ装置30は、前面のレンズ31を通して、温度測定の対象物である試料62の照射面62aの照射スポット部62a1から放出される赤外線の赤外線放射エネルギー量を図略の素子によって受光し検出する。このため、赤外線カメラ装置30は、前面のレンズ31が照射面62aの方向を向くよう配置される。また、前面のレンズ31から照射面62aまでの距離がHとなるよう配置される。Hは温度測定を可能にする任意の距離である。そして、赤外線カメラ装置30は、図略の素子で検出した赤外線放射エネルギー量を、演算部(図略)で演算し温度データに変換する。
つまり、赤外線カメラ装置30は、公知の赤外線サーモグラフィーに相当する。なお、上記の照射スポット部62a1とは、レーザ光L1が実際に照射面62a上に照射される実際の照射範囲をいう。本実施形態において、照射スポット部62a1の直径は、例えばφ0.2〜φ0.4mm程度である。ただし、この直径はあくまで一例を例示したのみであり、この限りではない。
また、赤外線カメラ装置30が素子(図略)によって、照射面62aから放出される赤外線の放射エネルギー量を検出する際、赤外線カメラ装置30は、図3に示すように、照射スポット部62a1を、複数の領域に分割して検出し、複数の領域ごとに温度(実温度Tr)の測定が可能である。複数の領域は、赤外線カメラ装置30の素子が備える画素に応じて分割される。
また、本実施形態において、赤外線カメラ装置30が検出する赤外線の波長は、3〜5μm程度とする。この波長は、照射面62aで照射されるレーザ光L1の波長1050nm(1.05μm)と重複しない値である。これにより、照射面62aで反射したレーザ光L1の反射レーザ光L2が、赤外線カメラ装置30の前面のレンズ31に入射されても、赤外線カメラ装置30は、反射レーザ光L2を照射面62aの熱として誤検出しないようにすることができる。
また、図2に示すように、赤外線カメラ装置30は、赤外線カメラ装置30の軸線Aが、レーザ光L1の軸線Bに対して±β°以内となるよう配置される。本実施形態において、β°は60°とする。これにより、照射スポット部62a1から放出される赤外線の放射エネルギー量を精度よく検出できる。
なお、上記態様に限らず、赤外線カメラ装置30は、赤外線放射エネルギー量のみ検出し、赤外線放射エネルギー量を温度に変換する機能を有していない単なる赤外線カメラであってもよい。ただし、このときには、制御部40が外線放射エネルギー量を温度に変換する演算部を備えるものとする。
制御部40は、レーザ光照射制御部41と、赤外線カメラ装置作動制御部42と、実温度測定部43と、理論昇温温度算出部44と、実吸収率算出部45と、を備える。
レーザ光照射制御部41は、レーザ装置20のレーザ発振器21に電気的に接続され、レーザ光L1の照射のON/OFFによって照射時間τを制御するとともに、レーザ光L1の照射出力Pを制御する。
赤外線カメラ装置作動制御部42は、赤外線カメラ装置30と電気的に接続され、赤外線カメラ装置30の作動のON/OFFを制御する。
実温度測定部43は、赤外線カメラ装置30と電気的に接続され、赤外線カメラ装置30によって測定されたレーザ光L1の照射前、及び照射中における照射スポット部62a1の赤外線放射エネルギー量を素子(図略)によって取得する。このとき、素子が赤外線放射エネルギー量を検出する際、前述したように複数の領域に分割された照射スポット部62a1の各領域がそれぞれ赤外線放射エネルギー量を検出する。そして、複数の領域ごとに検出された検出データが温度(実温度Tr)データに変換される。
このとき、実温度測定部43が、照射スポット部62a1における実温度Trを算出する際には、照射スポット部62a1の各領域における複数の実温度Trの平均実温度AvTrを算出して照射スポット部62a1の実温度Tr(=AvTr)とする(Trの一例を示す図4のグラフC参照)。図4のグラフCは、横軸がレーザ光L1の照射開始からの照射時間τであり、縦軸が照射スポット部62a1における実温度Tr(=平均実温度AvTr)である。つまり、グラフCは、照射時間τに対応する実温度Trが複数測定され、測定された複数の実温度Trがプロットされ作成される。
図4のグラフを見ると、実温度Trは、レーザ光L1の照射が開始された直後において急激に立ち上がり、その後、横軸と平行な線の傾きに近づき緩やかに飽和温度に向かっていることがわかる。なお、このとき、レーザ光L1の照射開始前における照射スポット部62a1の実温度Trも事前に測定され、図4のグラフ内で基準実温度TrB(実温度)として示される。つまり、図4のグラフCは、レーザ光L1の照射中における照射スポット部62a1での基準実温度TrBからの昇温温度(Tr−TrB)の変化量特性として示される。
ただし、上記態様に限らず、実温度測定部43は、照射スポット部62a1における実温度Trを算出する際、上述した照射スポット部62a1の各領域における各実温度Tr(n)をそれぞれ算出して照射スポット部62a1の複数の実温度Tr(n)としてもよい。この場合、図4のグラフCに相当するグラフは、領域ごとに複数得られる。
理論昇温温度算出部44は、照射スポット部62a1において、レーザ光L1の照射により昇温するレーザ光照射前の温度を基準とした理論上の理論昇温温度ΔTtを算出する。具体的には、理論昇温温度算出部44は、レーザ光L1の照射条件(照射出力P、照射時間τ)、試料62のレーザ光吸収率ε、及び、レーザ光L1の照射スポット部62a1への照射により昇温する照射スポット部62a1における理論昇温温度ΔTtを規定する理論的な関係を用いて、試料62のレーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率εe(n)とした場合に、レーザ装置20の実照射条件(照射出力Pa、照射時間τa)に基づいて複数の理論昇温温度ΔTt(n)を算出する。
上述した理論的な関係は、下記に示す公知の移動熱源の理論式である下記(数1)式で表わせる。つまり、理論上の複数の理論昇温温度ΔTt(n)は、下記に示す公知の移動熱源の理論式(数1式)によって算出する。下記数1式では、理論上の理論昇温温度ΔTt=T(x、y、z)である。また、下記数1式は、複数の理論昇温温度ΔTt(n)のうちの一つの理論昇温温度ΔTtを算出する式である。
Figure 2017207344
P;レーザ光L1の照射出力(W)
λ;試料62の熱伝導率(W/mm・K)
ε;照射スポット部62a1のレーザ光吸収率(仮定レーザ光吸収率)(%)
a;熱拡散率(mm/s)
τ;レーザ光L1の照射時間(s)
r0;照射スポット部62a1の半径(mm)
v;熱源移動速度(mm/s)
xyz;座標(mm)
上記においては、レーザ光吸収率ε(仮定レーザ光吸収率εeに相当)を除く各値のうち、JIS等の文献に記載の物性値が適用できる項目については文献の値を代入する。照射スポット部62a1の半径r0、及び熱源移動速度vは、実際の値を代入する。また、レーザ光吸収率εには、予め設定した複数の仮定レーザ光吸収率εe(n)のうちの一つの仮定レーザ光吸収率を代入する。また、レーザ光L1の照射条件(照射出力P,照射時間τ)には、実際にレーザ光L1が照射された実照射条件(照射出力Pa,照射時間τa)を代入する。なお、照射出力Paは、照射スポット部62a1を複数の領域で分割した各領域ごとのレーザ光L1の出力を平均化した照射出力とする。
ただし、この態様に限らず、実温度測定部43で測定したのと同様、照射出力Paを照射スポット部62a1を複数の領域で分割した各領域ごとのレーザ光L1の照射出力としてもよい。ただし、このとき、照射スポット部62a1の半径r0は、各領域ごとの半径となる。そして、この場合、理論昇温温度ΔTtは、照射スポット部62a1の各領域ごとのレーザ光L1の照射出力に基づき各々算出されたのち、各領域の理論昇温温度ΔTtを平均化して算出すればよい。
照射時間τaは複数あり、レーザ光L1の照射を開始した時点の照射時間τ0から照射時間τnまでの間で任意の複数の照射時間τaを代入する。そして、代入した複数の照射時間τaに対応する複数の理論昇温温度ΔTt(n)を算出する(図5中の黒丸参照)。
そして、理論昇温温度算出部44では、算出した複数の理論昇温温度ΔTt(n)を例えば最小二乗法によって演算処理し、図5に示す理論上の理論昇温温度ΔTtの変化量特性のグラフDを作成する。理論昇温温度算出部44では、このようにして、複数の仮定レーザ光吸収率εe(n)ごとにグラフD(n)を複数算出する。なお、図5には、四本の変化量特性のグラフD1〜D4を例示している。
実吸収率算出部45は、実温度測定部43で測定した実温度Tr(即ち、基準実温度TrBからの昇温温度(Tr−TrB)の変化量特性のグラフC)と、理論昇温温度算出部44により算出された理論上の理論昇温温度ΔTtの変化量特性のグラフD(例えば、D1〜D4)と、に基づき試料62の実レーザ光吸収率εrを算出する。
具体的には、図6に示すように、グラフCの基準実温度TrBと、グラフD1〜D4の開始点とを一致させた状態において、グラフCと、グラフD1〜D4とを比較する。そして、グラフD1〜D4のうち、グラフCと最もよく一致する例えばグラフD2を選択する。
なお、このとき、グラフCと最もよく一致したか否かは、どのように決定してもよい。例えば、グラフCと、グラフD1〜D4の立ち上がり部分(a)同士を比較し、グラフCとグラフD1〜D4の間の差が最も小さいグラフをグラフCと最もよく一致するグラフとしてもよい。
また、比較する部分を、立ち上がり部分(a)から、平行(近似)部分(c)に変更してもよい。また、比較する部分を、グラフCと、グラフD1〜D4の変曲部(b)に変更してもよい。さらには、比較する部分を、グラフCと、グラフD1〜D4の全体(a),(b),(c)としてもよい。なお、本実施形態では、グラフCと、グラフD1〜D4の全体(a),(b),(c)とを比較する態様とする。そして、グラフCと、グラフにおける全体(a),(b),(c)が最もよく一致した例えばグラフD2で適用したレーザ光吸収率を、試料62の実レーザ光吸収率εrとする。
(1−4.レーザ光吸収率測定方法)
次に、レーザ光吸収率測定方法について、図7に示すフローチャート1に基づき、説明する。レーザ光吸収率測定方法は、上述したレーザ光吸収率測定装置10を用いて、試料62の照射面62aの照射スポット部62a1にレーザ光L1を照射し、試料62の実レーザ光吸収率εrを測定する方法である。
なお、照射スポット部62a1にレーザ光L1を照射する照射条件(実照射条件)としては、照射出力をP(Pa)とし,照射時間をτ(τa)とする。その他の条件についても、上述したレーザ光吸収率測定装置10で説明したとおりである。レーザ光吸収率測定方法は、実温度測定工程S10(S10A,S10B,S10C)と、理論昇温温度算出工程S20(S20A,S20B)と、実吸収率算出工程S30(S30A,S30B)と、を備える。
(1−4−1.実温度測定工程S10)
まず、実温度測定工程S10A(S10)では、赤外線カメラ装置作動制御部42が、赤外線カメラ装置30を制御し、レーザ光L1の照射前における照射スポット部62a1の基準実温度TrBを測定し、測定結果を赤外線カメラ装置30の図略の記憶部に記憶する。なお、赤外線カメラ装置30による照射スポット部62a1の温度の測定原理については、上記で説明したためここでの説明は行なわない。
実温度測定工程S10B(S10)では、レーザ光照射制御部41が、レーザ発振器21を制御し、レーザ光L1を、実照射条件である照射出力Paで発振させる。これにより、レーザヘッド22から、レーザ光L1が、試料62の照射面62a上の照射スポット部62a1に照射される。このとき、レーザ光L1は、照射面62aに対して垂直に照射される。
ただし、前述したように、ここでいう垂直とは、照射面62aに対して90°である場合に限らず、90°近傍の角度も含む。つまり、照射面62aに対するレーザ光L1の照射角度は、レーザ光L1の照射によって上昇する照射面62aの温度の上昇が、レーザ装置20によるレーザ光L1の照射条件(照射出力P,照射時間τ)との間で理論的な関係(上記数1式)を成立させる範囲の角度を含むものとする。
実温度測定工程S10C(S10)では、実温度測定工程S10Bによるレーザ光L1の照射面62aへの照射と同時に赤外線カメラ装置作動制御部42が、赤外線カメラ装置30を制御し、レーザ光L1の照射中における照射スポット部62a1の実温度Trを照射時間τと対応させて複数測定する。そして、測定した複数の実温度Trを赤外線カメラ装置30の図略の記憶部に記憶する。そして、図略の記憶部に記憶された基準実温度TrB及び複数の実温度Trは、制御部40の理論昇温温度算出部44及び実吸収率算出部45に送信される。
なお、上記実温度測定工程S10Cにおいては、前述したとおり、赤外線カメラ装置30が、照射スポット部62a1における基準実温度TrB,Trを測定する際、照射スポット部62a1の各領域における各実温度Trの平均実温度AvTrを算出して照射スポット部62a1の実温度Tr(=AvTr)とする。
(1−4−2.理論昇温温度算出工程S20)
次に、理論昇温温度算出工程S20A(S20)では、理論昇温温度算出部44が、照射スポット部62a1においてレーザ光L1の照射により昇温する、レーザ光照射前を基準とする理論上の理論昇温温度ΔTtを算出する。具体的には、理論昇温温度算出部44は、レーザ装置20によるレーザ光L1の照射条件(照射出力P、照射時間τ)、試料62のレーザ光吸収率ε、及び、レーザ光L1の照射スポット部62a1への照射により昇温する照射スポット部62a1における理論昇温温度ΔTtを規定する理論的な関係(上記数1式)を用いて、試料62のレーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率εe(n)とした場合にレーザ装置20の実照射条件(照射出力Pa、複数の照射時間τa)に基づいて複数の理論昇温温度ΔTt(n)を算出する。
上記において、レーザ装置20の実照射条件(照射出力Pa、複数の照射時間τa)は、レーザ光照射制御部41から取得する。また、複数の仮定レーザ光吸収率εe、及びその他の数1式に必要なデータ類は、予め準備され記憶されている例えば理論昇温温度算出部44の図略の記憶部から取得する。
理論昇温温度算出工程S20B(S20)では、上述したように、理論昇温温度算出部44によって算出した複数の理論昇温温度ΔTt(n)(図5中、黒丸参照)を、例えば最小二乗法によって演算処理し、図5に示す理論上の理論昇温温度ΔTtの変化量特性のグラフDを、複数の仮定レーザ光吸収率εe(n)ごとに、複数(例えば、グラフD1〜D4)作成する。そして、グラフD1〜D4のデータを実吸収率算出部45に送信する。
このとき、理論昇温温度算出工程S20A,S20Bにおいては、理論昇温温度算出部44が(数1)式に基づき理論昇温温度ΔTtを算出する際、照射出力Paは、照射スポット部62a1を複数の領域で分割した各領域ごとのレーザ光L1の出力を平均化した照射出力として算出する。
ただし、この態様に限らず、実温度測定部43で測定したのと同様、照射出力Paを照射スポット部62a1を複数の領域で分割した各領域ごとのレーザ光L1の照射出力としてもよい。そして、各領域ごとのレーザ光L1の照射出力に基づき、分割された照射スポット部62a1の各領域における各理論昇温温度ΔTtを算出し、その後、各理論昇温温度ΔTtの平均理論昇温温度AvΔTtを算出して照射スポット部62a1の理論昇温温度ΔTtとしてもよい。
(1−4−3.実吸収率算出工程S30)
実吸収率算出工程S30A(S30)では、実吸収率算出部45が、実温度測定部43で測定され送信された基準実温度TrB,実温度Tr(平均値)の変化量特性のグラフCと、理論昇温温度算出部44で算出され送信された理論上の理論昇温温度ΔTt(平均値)の変化量特性のグラフD(D1〜D4)と、を比較し、グラフCと最もよく一致するグラフD(D1〜D4)を探索し抽出する。
このため、実温度Trの基準実温度TrBと、理論上の理論昇温温度ΔTtのグラフD1〜D4の開始点とを一致させる。そして、この状態において、グラフCと、グラフD1〜D4とを比較する。グラフD1〜D4のうち、グラフCとグラフ全体が最もよく一致する例えばグラフD2を選択する。なお、比較し最もよく一致するか否かを決定する方法については上述したとおりである。
次に、実吸収率算出工程S30B(S30)において、グラフCと最もよく一致した例えばグラフD2で適用したレーザ光吸収率を、試料62の実レーザ光吸収率εrとする。
このように、実レーザ光吸収率εrは、分割された各領域ごとに算出される基準実温度TrB,及び実温度Trの平均値と、分割された各領域に照射されるレーザ光L1の実際の照射出力に基づき算出される理論上の理論昇温温度ΔTtの平均値とに基づき求められる。
このため、試料と同様の材料で形成された工作物の照射面に対してレーザ光L1を照射し、熱処理等のレーザ加工を行なう場合、精度よく測定された基準実温度TrB,及び実温度Tr(平均値)と、精度よく測定された理論昇温温度ΔTt(平均値)とに基づき実レーザ光吸収率εrが精度よく求められる。従って、精度のよい実レーザ光吸収率εrに基づき、レーザ光L1の照射条件(照射出力P、照射時間τ)が設定できるので、所望の時間内で効率よくレーザ加工が実施できる。
(1−5.レーザ加工方法)
次に、レーザ光吸収率測定装置10を用いたレーザ加工方法について図8のフローチャート2に基づき説明する。レーザ加工方法は、レーザ加工を行なう対象物である試料62が有する実レーザ光吸収率に基づき、フィードバック制御するレーザ加工方法である。このとき、フィードバック制御するのは、レーザ装置20の照射条件であるレーザ光L1の照射出力P及びレーザ光L1の照射時間τの少なくとも一方である。レーザ加工は、例えば熱処理である。
図8のフローチャート2に示すように、レーザ加工方法は、実吸収率算出工程S100と新照射条件算出工程S110と、新照射条件レーザ照射工程S120を備える。実吸収率算出工程S100は、第一実施形態のフローチャート1で説明した実温度測定工程S10(S10A,S10B,S10C)、理論昇温温度算出工程S20(S20A,S20B)、及び実吸収率算出工程S30(S30A,S30B)である。よって、実吸収率算出工程S100については、レーザ加工方法の説明に必要な部分以外の説明は省略する。また、レーザ加工方法において、図9に示すように、制御部40は、新照射条件算出部46を備える。
まず、上述したように、実吸収率算出工程S100において、試料62の実レーザ光吸収率εrが求められる。そして、実レーザ光吸収率εrは、制御部40の新照射条件算出部46に送信される(図9参照)。
次に、新照射条件算出工程S110では、新照射条件算出部46に送信された実レーザ光吸収率εrに基づき、新たにレーザ光L1の照射条件である照射出力Pb及び照射時間τbを設定する。そして、新たに設定された照射出力Pb及び照射時間τbをレーザ光照射制御部41に送信する。
次に、新照射条件レーザ照射工程S120において、レーザ光照射制御部41が、レーザ発振器21を制御し、レーザ光L1を、新たな実照射条件である照射出力Pbで発振させレーザ光L1をレーザヘッド22から照射面62aに向けて照射させる。そして、この後、照射時間が新たに設定した照射時間τbとなるまで、レーザ光L1を照射し、照射時間τbとなったらレーザ光L1の照射を停止する。このように、適切な実レーザ光吸収率εrに基づき設定したレーザ光L1の照射条件によってレーザ加工ができるので、効率的な加工(熱処理)が行なえる。なお、上記においては、レーザ光L1の新照射条件として、照射出力Pb及び照射時間τbを設定したが、これには限らず、何れか一方のみの設定を行なうだけでもよい。これによっても相応の効果が期待できる。
<2.他の実施形態>
(2−1.第二実施形態)
第二実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法について説明する。上記第一実施形態のレーザ光吸収率測定方法では、実温度測定工程S10A,10Cにおいて、実温度測定部43が、照射スポット部62a1における基準実温度TrB,実温度Trを算出する際、分割された照射スポット部62a1の各領域における各実温度Trの平均実温度AvTrを算出して照射スポット部62a1の実温度Tr(=AvTr)とした。また、理論昇温温度算出工程S20Bにおける理論昇温温度算出部44においても、理論昇温温度ΔTtを算出する際、分割された照射スポット部62a1の各領域における各理論昇温温度ΔTtの平均理論昇温温度AvΔTtを算出して照射スポット部62a1の理論昇温温度ΔTtとしてもよいとした。
しかし、この態様には、限らない。第二実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法として、実温度測定工程S10A,10Cでは、照射スポット部62a1の基準実温度TrB,及び実温度Trが、複数の領域に分割された状態で、赤外線カメラ装置30により各領域ごとに測定されてもよい。また、同様に理論昇温温度算出工程S20Bでは、複数の理論昇温温度ΔTtが、レーザ装置20の照射条件の一つである各領域ごとのレーザ光L1の照射出力Pに基づき算出されてもよい。
さらに、この場合、実吸収率算出工程S30A,S30Bにおいても、実吸収率算出部45が、第一実施形態と同様の方法によって、照射スポット部62a1の各領域ごとに、複数の実レーザ光吸収率εrを求めてもよい。これにより、変化量特性のグラフCを作成する際,及びグラフDを算出する際、各領域のデータ量が増えた分だけ制御部40における演算の負荷は増大するが、更に精度よく実レーザ光吸収率εrの算出が可能となる。
(2−2.第一,第二実施形態の変形例1)
なお、第一,二実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法の変形例1として、基準実温度TrB,実温度Tr及び複数の理論昇温温度ΔTtの何れか一方のみが、複数の領域に分割された状態で測定され、他方が各領域ごとに求めた基準実温度TrB,実温度Tr又は理論昇温温度ΔTtの平均値であってもよい。これによっても相応の効果が期待できる。
(2−3.第一,第二実施形態の変形例2)
また、第一,第二実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法では、赤外線カメラ装置30のレンズ31が照射スポット部62a1から距離Hだけ離間するよう配置した。しかし、この態様には限らず、第一,第二実施形態の変形例2として、照射面62aから赤外線カメラ装置30のレンズ31までの距離をHから更に照射スポット部62a1側に接近させる態様としてもよい。これにより、赤外線カメラ装置30の素子(図略)の空間分解能は向上する。このため、更に精度よくレーザ光吸収率の算出が可能となる。
(2−4.第三実施形態)
次に、第三実施形態に係るレーザ光吸収率測定方法について説明する。第三実施形態のレーザ光吸収率測定方法では、第一,第二実施形態に対して、赤外線カメラ装置30が、フィルタ32(遮断部)を備える(図2参照)。フィルタ32は、赤外線カメラ装置30のレンズ31に装着され、照射面62aにおけるレーザ光L1の反射レーザ光L2が含む赤外線を遮断する。これにより、赤外線カメラ装置30が反射レーザ光L2に含まれる赤外線を誤って検出してしまい、照射面62aの温度測定に影響を及ぼすことを抑制することができる。なお、このとき、反射レーザ光L2の赤外線の波長は、赤外線カメラ装置30が検出する3〜5μm以外の波長である。このため、本来、赤外線カメラ装置30は反射レーザ光L2を検出しないはずであるが、フィルタ32を装着することにより、その予防効果は確実なものとすることができる。
(2−5.第四実施形態)
次に、第四実施形態のレーザ光吸収率測定方法について説明する。第四実施形態は、第一〜第三実施形態に対して、レーザ光L1以外の熱源による照射スポット部62a1への熱の伝達を遮断する第一レーザ光吸収率補正部を備える。第四施形態において、第一レーザ光吸収率補正部は、図10に示すように断熱材47である。断熱材47を図10に示すように、レーザ光L1と試料62の周囲を覆う様に配置することで、レーザ光L1と試料62の外周側からの熱の影響を遮断できる。これにより、赤外線カメラ装置30は、レーザ光L1の照射のみによって加熱された照射面62aの温度を精度よく測定できる。なお、断熱材47はどのようなものでもよい。例えば、建築用のグラスファイバー、発泡スチロール等でもよい。
(2−6.第四実施形態の変形例1)
また、第四実施形態の変形例1として、第一レーザ光吸収率補正部に替えて、第二レーザ光吸収率補正部(図略)が、制御部40に設けられていてもよい。この場合、レーザ光L1以外の熱源による照射スポット部62a1への熱の伝達を他の温度センサ(図略)によって検出する。そして、第二レーザ光吸収率補正部によって、検出した温度が照射スポット部62a1に与える熱の影響(温度)を推定するとともに、赤外線カメラ装置30が測定した照射スポット部62a1の温度から、伝達されたであろう温度(熱の伝達分)を演算により除外し補正する。そして、第二レーザ光吸収率補正部は、補正したデータを実温度測定部43及び理論昇温温度算出部44に出力する。これにより、第四実施形態と同様の効果が得られる。
<3.その他>
なお、第一〜第四実施形態において、レーザ光L1の種類を変更したことにより、レーザ光L1の波長が、赤外線カメラ装置30が検出する波長と一致した場合には、赤外線カメラ装置30を変更し赤外線カメラ装置30が検出する波長を、レーザ光L1の波長からずらせばよい。
また、上記第一〜第四実施形態では、試料62の照射面62aは、レーザ光L1の照射前において非研磨状態であるとした。しかし、この態様には限らない。レーザ光L1の照射前において、試料62の照射面62aは、研磨された状態であってもよい。これによって照射面62aに対するレーザ光L1のレーザ光吸収率は低下するが、相応の効果は得られる。
また、上記第一〜第四実施形態では、実温度測定部43で測定された実温度Trの変化量特性のグラフCと、理論昇温温度算出部44で算出された理論上の理論昇温温度ΔTtの変化量特性のグラフD(D1〜D4)と、を比較した。そして、グラフCと最もよく一致するグラフD(D1〜D4)を探索し抽出した。しかし、この態様には限らない。照射時間τcに対応する実温度Trを一点だけ測定し、照射時間τcに対応する理論上の理論昇温温度ΔTtと比較し、両者がよく一致しているか否かを判定してもよい。これによって、実温度Trを測定する制御負荷が大幅に低減される。
<4.実施形態による効果>
上記第一〜第四実施形態によれば、レーザ光吸収率測定方法は、試料62の照射面62aに対して垂直にレーザ光L1を照射するレーザ装置20と、レーザ光L1が照射される照射面62aの照射スポット部62a1の実温度Trを照射スポット部62a1が放出する赤外線量を検出することによって測定する赤外線カメラ装置30と、を用いて、試料62の実レーザ光吸収率εrを測定する。
そして、レーザ光吸収率測定方法は、赤外線カメラ装置30によって、レーザ光L1の照射前、及び照射中における照射スポット部62a1の実温度Trを測定する実温度測定工程S10と、レーザ装置20の照射条件、試料62のレーザ光吸収率、及びレーザ光L1の照射スポット部62a1への照射により昇温する照射スポット部62a1における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率εeとした場合に、レーザ装置20の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度ΔTtを算出する理論昇温温度算出工程S20と、実温度Trと複数の理論昇温温度ΔTtとに基づき試料62の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程S30と、を備える。
このように、レーザ光L1を照射する試料62の照射面62aの実温度Trを赤外線カメラ装置30によって非接触状態で直接測定する。なお、このとき、照射面62aに照射するレーザ光L1は照射面に対して垂直である。これにより、レーザ光が照射される照射面ではなく、照射面の配向面に熱電対を接触させて試料の温度を測定する従来技術と比較して、レーザ光L1の照射により昇温する試料62の実際の昇温特性を精度よく測定できる。
そして、精度よく測定された実温度Tr(グラフC)と、理論昇温温度算出工程S20により算出した複数の理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)とに基づき試料62の実レーザ光吸収率εrを算出する。具体的には、実温度Tr(グラフC)と、複数の理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)とを比較する。複数の理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)は、レーザ装置の照射条件(照射出力、照射時間)、試料62のレーザ光吸収率、及びレーザ光L1の照射スポット部62a1への照射により昇温する昇温温度を規定する理論的な関係(数1式)を用いて、レーザ光吸収率εを複数の仮定レーザ光吸収率εeとした場合に、レーザ装置20の実照射条件に基づいて算出される。そして、算出された複数の理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)のうち最も実温度Tr(グラフC)に近い理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)を抽出し、当該理論昇温温度特性の算出に使用された仮定レーザ光吸収率を試料の実レーザ光吸収率とする。このように、赤外線カメラ装置30によって精度よく測定された実温度Tr(グラフC)と、算出する理論昇温温度ΔTt(グラフD1〜D4)とに基づき実レーザ光吸収率を算出するので、精度のよい実レーザ光吸収率を得ることができる。
また、上記第一実施形態によれば、実吸収率算出工程S30において、実レーザ光吸収率は、分割された各領域ごとに算出される各実レーザ光吸収率の平均値として算出される。これにより、制御部40の演算の負荷が低減され、低コスト化が図れる。
また、上記第一実施形態のレーザ加工方法によれば、試料62が有する実レーザ光吸収率に基づきレーザ装置20の照射条件であるレーザ光L1の照射出力P及びレーザ光L1の照射時間τの少なくとも一方を制御して試料62をレーザ光L1の照射により加工する。そして、照射条件の制御は、第一実施形態のレーザ光吸収率測定方法で測定した試料62の実レーザ光吸収率に基づき、レーザ光L1の照射条件をフィードバックして設定し、新たな照射条件のレーザ光L1によって試料62を加工する。このように、適切な実レーザ光吸収率εrに基づき設定したレーザ光L1の照射条件によってレーザ加工ができるので、効率的な加工が行なえる。
また、上記第一実施形態によれば、レーザ光吸収率測定装置10は、試料62のレーザ光吸収率を測定するレーザ光吸収率測定装置である。そして、試料62の照射面62aに対して垂直にレーザ光を照射するレーザ装置20と、レーザ光L1が照射される照射面62aの照射スポット部62a1の実温度Trを照射スポット部62a1が放出する赤外線量を検出することによって測定する赤外線カメラ装置30と、レーザ光L1の照射を制御するとともに、赤外線カメラ装置30の作動を制御する制御部40と、を備える。
そして、制御部40は、赤外線カメラ装置30と接続され赤外線カメラ装置30によって、レーザ光L1の照射前、及び照射中における照射スポット部62a1の実温度Trを測定する実温度測定部43と、レーザ装置20の照射条件、試料62のレーザ光吸収率、及び、前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する前記照射スポット部における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、前記レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、レーザ装置20の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度を算出する理論昇温温度算出部44と、実温度Trと複数の理論昇温温度ΔTtとに基づき試料62の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部45と、を備える。これにより、レーザ光吸収率測定方法で測定したレーザ光吸収率と同様のレーザ光吸収率が得られる。
10・・・レーザ光吸収率測定装置、 20・・・レーザ装置、 30・・・赤外線カメラ装置、 32・・・遮断部 (フィルタ)、 40・・・制御部、 43・・・実温度測定部、 44・・・理論昇温温度算出部、 45・・・実吸収率算出部、 47・・・第一レーザ光吸収率補正部(断熱材)、 62・・・試料、 62a・・・照射面、 62a1・・・照射スポット部、 L1・・・レーザ光、 P,Pa,Pb・・・照射出力、 S10・・・実温度測定工程、 S10A・・・実温度測定工程、 S10A,S10B,S10C・・・実温度測定工程、 S20,S20A,S20B・・・理論昇温温度算出工程、 S30,S30A,S30B・・・実吸収率算出工程、 S100・・・実吸収率算出工程、 Tr・・・実温度、 TrB・・・基準実温度、 ΔTt・・・理論昇温温度、 εe・・・仮定レーザ光吸収率、 εr・・・実レーザ光吸収率、 τ・・・照射時間。

Claims (10)

  1. 試料の照射面に対して垂直にレーザ光を照射するレーザ装置と、
    前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を前記照射スポット部が放出する赤外線量を検出することによって測定する赤外線カメラ装置と、
    を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する方法であって、
    前記赤外線カメラ装置によって、前記レーザ光の照射前、及び照射中における前記照射スポット部の前記実温度を測定する実温度測定工程と、
    前記レーザ装置の照射条件、前記試料のレーザ光吸収率、及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する前記照射スポット部における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、前記レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、前記レーザ装置の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度を算出する理論昇温温度算出工程と、
    前記実温度と前記複数の理論昇温温度とに基づき前記試料の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程と、
    を備えるレーザ光吸収率測定方法。
  2. 前記実温度測定工程では、前記照射スポット部の前記実温度が、前記赤外線カメラ装置により前記照射スポット部が複数の領域に分割された状態で前記赤外線カメラ装置により各前記領域ごとに測定され、
    理論昇温温度算出工程では、前記複数の理論昇温温度が、前記レーザ装置の前記照射条件である各前記領域ごとの前記レーザ光の照射出力に基づき算出される、請求項1に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  3. 前記実吸収率算出工程において、前記実レーザ光吸収率は、分割された各前記領域ごとに算出される各実レーザ光吸収率の平均値として算出される、請求項2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  4. 前記実吸収率算出工程において、前記実レーザ光吸収率は、分割された各前記領域ごとに算出される、請求項2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  5. 前記赤外線カメラ装置は、前記照射面における前記レーザ光の反射レーザ光が含む前記赤外線を前記赤外線カメラ装置が検出しないよう前記反射レーザ光の前記赤外線を遮断する遮断部を備える、請求項1−4の何れか1項に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  6. 前記試料の前記照射面は、前記レーザ光の前記照射前において非研磨状態である、請求項1−5の何れか1項に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  7. 前記レーザ光吸収率測定方法では、
    前記レーザ光以外の熱源による前記照射スポット部への熱の伝達を遮断する第一レーザ光吸収率補正部を備える、請求項1−6の何れか1項に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  8. 前記レーザ光吸収率測定方法では、
    前記実吸収率算出工程において、前記レーザ光以外の熱源により前記照射スポット部へ伝達された熱の伝達分を演算により除外する第二レーザ光吸収率補正部を備える、請求項1−6の何れか1項に記載のレーザ光吸収率測定方法。
  9. 試料が有する実レーザ光吸収率に基づきレーザ装置の照射条件であるレーザ光の照射出力及び前記レーザ光の照射時間の少なくとも一方を制御して前記試料を前記レーザ光の照射により加工するレーザ加工方法であって、
    前記制御は、請求項1−8の何れか1項に記載の前記レーザ光吸収率測定方法で測定した前記試料の前記実レーザ光吸収率に基づき前記レーザ光の前記照射条件をフィードバックし前記試料を加工する、レーザ加工方法。
  10. 試料のレーザ光吸収率を測定するレーザ光吸収率測定装置であって、
    前記試料の照射面に対して垂直にレーザ光を照射するレーザ装置と、
    前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を前記照射スポット部が放出する赤外線量を検出することによって測定する赤外線カメラ装置と、
    前記レーザ光の照射を制御するとともに、前記赤外線カメラ装置の作動を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記赤外線カメラ装置と接続され前記赤外線カメラ装置によって、前記レーザ光の照射前、及び照射中における前記照射スポット部の前記実温度を測定する実温度測定部と、
    前記レーザ装置の照射条件、前記試料のレーザ光吸収率、及び、前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する前記照射スポット部における昇温温度を規定する理論的な関係を用いて、前記レーザ光吸収率を複数の仮定レーザ光吸収率とした場合に、前記レーザ装置の実照射条件に基づいて複数の理論昇温温度を算出する理論昇温温度算出部と、
    前記実温度と前記複数の理論昇温温度とに基づき前記試料の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部と、
    を備えるレーザ光吸収率測定装置。
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