図1〜59は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、車両用フロントシート(以下、単にシートという)6に本発明のシート駆動装置を適用した例を示す。各図中、矢印によりシート6を車両に搭載した状態における各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
図1は、シート6の外観を示す。シート6は、座部を成すシートクッション7の後方に、背凭れを成すシートバック8が前後回動自在に固定されている。そのため、シートクッション7の後部とシートバック8の下部とのヒンジ部には、シートバック8のリクライニング角度を調整するためのリクライナ(図示略)が設けられている。
シートバック8の上端部には、着座乗員の頭部を後方から支えるヘッドレスト9が設けられている。また、シートクッション7の左側部は、シートバック8の下部も含めてサイドシールド10により被われている。サイドシールド10内には、シート6に着座した乗員の好みに応じて着座姿勢を調整可能とするシート駆動装置の駆動装置40が収納されている。駆動装置40における操作部材を成す第1操作ノブ66及び第2操作ノブ67は、着座乗員による操作を可能とするようにサイドシールド10の外部に露出されている。
シート6は、車両フロアに前後移動自在に固定されている。そのため、車両フロアには、シートクッション7の左右両端部の下方に一対のロアレール1が固定されている。そして、各ロアレール1には、アッパレール2がそれぞれ嵌め込まれて、ロアレール1に対して前後方向にスライド自在とされている。各アッパレール2の上には、ブラケット3がそれぞれ固定され、各ブラケット3の上にフロントリンク4及びリヤリンク5をそれぞれ介してシートクッション7が固定されている。フロントリンク4及びリヤリンク5は、ブラケット3に対して前後方向に傾動自在とされている。従って、後述するように、シート6は、フロントリンク4及びリヤリンク5の角度調整により高さを調整可能とされている。
図2は、シート6の左側下部の骨格構造を示す。左右の各ロアレール1内には、スライド用ナット部材11が固定されている。スライド用ナット部材11は、前後方向に貫通する雌ねじを備えている。一方、左右の各アッパレール2内には、アッパレール2の前後方向に沿って延びるスライド用リードスクリュ12が回転自在に固定されている。スライド用リードスクリュ12の外周上には雄ねじが形成され、スライド用ナット部材11の雌ねじに螺合されている。
各アッパレール2の前端には、スライド用ギヤボックス13がそれぞれ固定されている(図1参照)。各スライド用ギヤボックス13内には、互いに噛み合う傘歯車(図示略)を内蔵している。一方の傘歯車は、スライド用リードスクリュ12の前端部に固定され、他方の傘歯車は、多角柱形状のスライド用連結ロッド14の各端部に固定されている。左側のロアレール1の前端部には、スライド用ギヤボックス13に並設して方向変換ギヤ装置15が設けられている。方向変換ギヤ装置15内には、互いに噛み合う傘歯車15a、15bを内蔵している。傘歯車15aは、スライド用ギヤボックス13の傘歯車(図示略)と同軸で、スライド用連結ロッド14に固定され、傘歯車15bは、方向変換ギヤ装置15の後方に延在するスライド用トルクケーブル16の端部に固定されている。
従って、スライド用トルクケーブル16が回転すると、その回転が、方向変換ギヤ装置15の傘歯車15b及び傘歯車15aにおいて方向変換されて、スライド用連結ロッド14に伝達される。そして、スライド用連結ロッド14の回転は、両側のスライド用ギヤボックス13において方向変換されて両側のスライド用リードスクリュ12に伝達される。スライド用リードスクリュ12の回転は、スライド用リードスクリュ12に螺合するスライド用ナット部材11によって前後進運動に変換されて、アッパレール2が前後方向に移動される。ここで、スライド用ナット部材11、スライド用リードスクリュ12、スライド用ギヤボックス13、スライド用連結ロッド14、及び方向変換ギヤ装置15は、ロアレール1及びアッパレール2と共に位置調整機構としてのスライド調整機構Msを構成している。
各側のフロントリンク4は、各下端がブラケット3の前端部に回動自在に固定され、各上端がシートクッション7の骨格を成すサイドフレーム20の前端部に回動自在に固定されている。また、各側のリヤリンク5は、各下端がブラケット3の後端部に回動自在に固定され、各上端がサイドフレーム20の後端部に回動自在に固定されている。従って、ブラケット3、フロントリンク4、リヤリンク5、及びサイドフレーム20は、4節リンクを構成している。
左側のリヤリンク5には、サイドフレーム20側の回転軸を中心に、その前側に略扇状に広がるセクタギヤ部5aが形成されている。また、左側のリヤリンク5に隣接して、サイドフレーム20側面には、リフタ用ギヤボックス21が設けられている。リフタ用ギヤボックス21は、ウォーム21a及びウォームホイール21bを含む減速機構を内蔵している。ウォームホイール21bには、同軸でリフタ用ピニオン21cが固定されている。リフタ用ピニオン21cは、セクタギヤ部5aと噛み合わされている。そして、ウォーム21aは、リフタ用ギヤボックス21の前方に延在するリフタ用トルクケーブル22の端部に固定されている。
リフタ用トルクケーブル22が回転すると、その回転がウォーム21aに伝達され、ウォームホイール21bで減速されてリフタ用ピニオン21cに伝達される。リフタ用ピニオン21cの回転は、セクタギヤ部5aを介してリヤリンク5に伝達されて、リヤリンク5が上端を中心に回転する。それにより、4節リンクを構成するフロントリンク4及びリヤリンク5が、ブラケット3側の固定点を中心に回転し、ブラケット3に対してサイドフレーム20を昇降する。ここで、フロントリンク4、リヤリンク5、及びリフタ用ギヤボックス21は、ブラケット3及びサイドフレーム20と共に位置調整機構としてのリフタ調整機構Mlを構成している。
左右のサイドフレーム20の前後方向中央部より前側には、板材から成るチルトアーム25が、その後端部を中心に回動自在に固定されている。チルトアーム25の前端部には、チルトリンク26の上端が回動自在に固定され、チルトリンク26の下端は、フロントリンク4の上端と同軸で回動自在に固定されている。
左側のチルトリンク26には、その下端の回転軸を中心に、その前側に略扇状に広がるセクタギヤ部26aが形成されている。また、左側のチルトリンク26に隣接して、サイドフレーム20側面には、チルト用ギヤボックス27が設けられている。チルト用ギヤボックス27は、ウォーム27a及びウォームホイール27bを含む減速機構を内蔵している。ウォームホイール27bには、同軸でチルト用ピニオン27cが固定されている。チルト用ピニオン27cは、セクタギヤ部26aと噛み合わされている。そして、ウォーム27aは、チルト用ギヤボックス27の後方に延在するチルト用トルクケーブル28の端部に固定されている。
チルト用トルクケーブル28が回転すると、その回転がウォーム27aに伝達され、ウォームホイール27bで減速されてチルト用ピニオン27cに伝達される。チルト用ピニオン27cの回転は、セクタギヤ部26aを介してチルトリンク26に伝達されて、チルトリンク26が下端を中心に回動する。それにより、チルトアーム25が、その後端部を中心に回動し、その前端部を昇降する。そのため、サイドフレーム20に対するチルトアーム25の傾斜角度が増減する。ここで、チルトリンク26、及びチルト用ギヤボックス27は、チルトアーム25及びサイドフレーム20と共に位置調整機構としてのチルト調整機構Mtを構成している。
各側のサイドフレーム20の後端部には、板材から成るリクライナプレート31が固定されている。リクライナプレート31には、略円盤状のリクライナ32を介してシートバック8の下端部が結合されている。このリクライナ32は、周知のハイポサイクロイド減速機を構成するものである。即ち、リクライナ32は、内歯歯車を有してリクライナプレート31に固定される第1ディスクと、内歯歯車の歯数よりも少ない歯数でこれに噛合する外歯歯車を有する第2ディスクと、内歯歯車及び外歯歯車を噛合すべくこれらの偏心状態を保つ楔部材と、第1ディスク(内歯歯車)と同軸に配置されて第2ディスクが軸支され楔部材を移動させるカム軸等とを備えて構成される。そして、リクライナ32は、第2ディスクにおいてシートバック8に固定されている。リクライナ32は、カム軸の回転に伴う楔部材の移動により、内歯歯車及び外歯歯車の噛合状態を保ったまま第2ディスクを公転させることで、この公転時における第2ディスクの自転数としてカム軸の回転を減速する。そして、第1ディスクに対する第2ディスクの回転により、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。
左側のリクライナプレート31には、その外側にリクライナ用ギヤボックス33が固定されている。このリクライナ用ギヤボックス33は、ウォーム33a及びウォームホイール33bから成る減速機構を内蔵する。ウォームホイール33bは、シート幅方向に延びる軸線を有して両側のリクライナ32間に橋渡しされる多角柱状のリクライナ用連結ロッド34に一体回転するように連結されている。このリクライナ用連結ロッド34は、両側のリクライナ32を貫通してそれらのカム軸に一体回転するように連結されている。一方、ウォーム33aは、リクライナ用ギヤボックス33の前方に延在するリクライナ用トルクケーブル35の端部に固定されている。
従って、リクライナ用トルクケーブル35が回転すると、その回転がリクライナ用ギヤボックス33の入力側であるウォーム33a及び出力側であるウォームホイール33b間で減速されてリクライナ用連結ロッド34に伝達される。そして、リクライナ用連結ロッド34の回転は、リクライナ32のカム軸に伝達される。これにより、前述の態様でリクライナ32の第1ディスクに対して第2ディスクが回転し、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。ここで、リクライナ32、リクライナ用ギヤボックス33及びリクライナ用連結ロッド34は、リクライナプレート31及びシートバック8とともに位置調整機構としてのリクライニング角度調整機構Mrを構成する。
つまり、本第1実施形態は、スライド調整機構Ms、リフタ調整機構Ml、チルト調整機構Mt及びリクライニング角度調整機構Mrの各々における正方向及び逆方向のシート位置の調整が可能な、いわゆる8ウェイパワーシートとなっている。
左側のサイドフレーム20のリフタ用ギヤボックス21及びチルト用ギヤボックス27間に挟まれる前後方向中間部には、駆動装置40が固定されている。駆動装置40は、後述のように単一の出力軸を有する駆動モータを内蔵する。その駆動モータの出力軸は、後述のようにクラッチ機構を介して、スライド用トルクケーブル16、リフタ用トルクケーブル22、チルト用トルクケーブル28及びリクライナ用トルクケーブル35に接続している。従って、一つの駆動モータによりスライド調整機構Ms、リフタ調整機構Ml、チルト調整機構Mt及びリクライニング角度調整機構Mrを調整可能としている。
図3は、駆動装置40を含むシート駆動装置のシステム概要を示す。ここで、第1位置調整機構M1は、8ウェイパワーシートにおいて、比較的調整頻度の高い位置調整機構であり、具体的にはスライド調整機構Msである。また、第2位置調整機構M2は、8ウェイパワーシートにおいて、第1位置調整機構M1以外の位置調整機構であり、具体的にはリクライニング角度調整機構Mrである。なお、リフタ調整機構Ml及びチルト調整機構Mtは、ここでは図示を省略している。
第1位置調整機構M1は、第1クラッチ機構461を介して駆動モータ41の出力軸に接続されている。また、第2位置調整機構M2は、第2クラッチ機構462を介して駆動モータ41の出力軸に接続されている。第1クラッチ機構461は常時接続形式とされ、第2クラッチ機構462は、常時非接続形式とされている。第1クラッチ機構461は、隣接して第1クラッチ駆動手段511を備え、第1クラッチ駆動手段511が作動されると、第1クラッチ機構461を非接続状態に切り換える。また、第2クラッチ機構462は、隣接して第2クラッチ駆動手段512を備え、第2クラッチ駆動手段512が作動されると、第2クラッチ機構462を接続状態に切り換える。
第2クラッチ駆動手段512は、第2位置調整機構M2を作動させるために操作される第2操作部材67の操作により作動される。また、第1クラッチ駆動手段511は、連携部材53を介して第2クラッチ駆動手段512により作動される。従って、第2操作部材67が操作されると、第2クラッチ駆動手段512が作動されると共に、第1クラッチ駆動手段511も作動される。その結果、第2操作部材67が操作されると、第2クラッチ機構462が接続状態に切り換えられると同時に、第1クラッチ機構461が非接続状態に切り換えられる。
第2クラッチ駆動手段512が作動されると、遅延構造を介して第2スイッチ操作手段58が作動され、スイッチ59が第2操作部材67の操作方向に応じて切り換えられる。その結果、駆動モータ41が作動され、第2クラッチ機構462を介して第2位置調整機構M2が第2操作部材67の操作方向に応じて作動される。このとき、上述のように第1クラッチ機構461が非接続状態とされているため、第1位置調整機構M1は作動されない。また、スイッチ59の切換は、第2スイッチ操作手段58が第2クラッチ駆動手段512により遅延構造を介して作動されるため、第2クラッチ機構462が接続状態、第1クラッチ機構461が非接続状態とされた後に駆動モータ41が作動される。そのため、駆動モータ41は、第2クラッチ機構462が接続状態、第1クラッチ機構461が非接続状態に切り換えられる前に作動してしまう不具合を防止することができる。
また、上述のように、第2クラッチ駆動手段512に伝達された第2操作部材67の操作力は、連携部材53を介して第1クラッチ駆動手段511に伝達される。そのため、第2操作部材67の操作のみで、第2クラッチ機構462を接続状態とする作動と、第1クラッチ機構461を非接続状態とする作動とを連携して行うことができる。
第1位置調整機構M1を作動させるために操作される第1操作部材66は、第1スイッチ操作手段57を作動するように結合されている。第1スイッチ操作手段57は、第2スイッチ操作手段58と並列に配置され、第1スイッチ操作手段57が作動されると、スイッチ59が第1操作部材66の操作方向に応じて切り換えられる。なお、第1操作部材66と第1クラッチ駆動手段511は結合されていない。そのため、第1操作部材66が操作されると、第1スイッチ操作手段57によりスイッチ59が切り換えられ、駆動モータ41が作動される。駆動モータ41の出力は、常時接続状態にある第1クラッチ機構461を介して第1位置調整機構M1を作動させる。
第1操作部材66と第2操作部材67とは、連結部材68により連結されている。連結部材68は、第1操作部材規制部を備え、第1操作部材規制部は、第1操作部材66が操作されて、原位置から調整位置に移動された状態で、第2操作部材67が原位置から調整位置に移動操作されるのを規制している。また、連結部材68は、第2操作部材規制部を備え、第2操作部材規制部は、第2操作部材67が操作されて、原位置から調整位置に移動された状態で、第1操作部材66が原位置から調整位置に移動操作されるのを規制している。従って、第1操作部材66と第2操作部材67とは、いずれか一方のみの操作はできるが、両方を同時に操作することはできない。そのため、一つの駆動モータ41により第1位置調整機構M1及び第2位置調整機構M2を同時に作動させる不具合を防止することができる。
また、使用頻度の高い第1位置調整機構M1が作動されるときは、第1クラッチ駆動手段511は作動されず、第1クラッチ機構461は接続状態に維持されたままとされる。そのため、第1位置調整機構M1が高い頻度で調整されても、第1位置調整機構M1に対応する第1クラッチ機構461の劣化を抑制することができる。
図4〜6は、駆動装置40の詳細を示す。駆動装置40は、図4に示す駆動機構部分と図5に示す操作機構部分とから成る。
図4の駆動機構部分は、単一の駆動モータ41を備え、駆動モータ41は、単一のモータ出力軸42を備える。モータ出力軸42には、ウォーム43が結合され、ウォーム43には、上下に分散する一対のウォームホイール44、45が噛み合わされている。従って、ウォーム43とウォームホイール44、45の組み合わせによって、駆動モータ41からの一軸の回転出力が二軸の回転出力に変換されている。
ウォームホイール44、45の各回転軸の両側には、それぞれクラッチ機構が結合されている。即ち、ウォームホイール44の回転軸の前側の入力軸44aには、チルト用クラッチ機構46Tが結合され、後側の入力軸44bには、リフタ用クラッチ機構46Lが結合されている。また、ウォームホイール45の回転軸の前側の入力軸45aには、スライド用クラッチ機構46Sが結合され、後側の入力軸45bには、リクライナ用クラッチ機構46Rが結合されている。
チルト用クラッチ機構46Tの出力軸47Tには、ハスバ歯車48Tが結合され、ハスバ歯車48Tには、その回転軸に対して交差方向に回転軸を配置されたハスバ歯車49Tが噛合されている。ハスバ歯車48T、49Tの組み合わせによって、チルト用クラッチ機構46Tの出力軸47Tの軸方向が変換されている。
また、リフタ用クラッチ機構46Lの出力軸47Lには、ハスバ歯車48Lが結合され、ハスバ歯車48Lには、その回転軸に対して交差方向に回転軸を配置されたハスバ歯車(図示略)が噛合されている。ハスバ歯車48Tともう一つのハスバ歯車の組み合わせによって、リフタ用クラッチ機構46Lの出力軸47Lの軸方向が変換されている。
更に、スライド用クラッチ機構46Sの出力軸47Sには、ハスバ歯車48Sが結合され、ハスバ歯車48Sには、その回転軸に対して交差方向に回転軸を配置されたハスバ歯車49Sが噛合されている。ハスバ歯車48S、49Sの組み合わせによって、スライド用クラッチ機構46Sの出力軸47Sの軸方向が変換されている。なお、リクライナ用クラッチ機構46Rの出力軸47Rは、軸方向が変換されない。
スライド用クラッチ機構46Sは、上述の第1クラッチ機構461に相当し、常時接続形式とされている。リクライナ用クラッチ機構46Rは、上述の第2クラッチ機構462に相当し、常時非接続形式とされている。
駆動装置40の駆動機構部分を構成する駆動モータ41、各クラッチ機構46S、46T、46L、46R等の各部材は、ギヤケース半体50a内に収納されている。ギヤケース半体50aには、組み合わせることにより一つの函体であるギヤケース50を成すギヤケース半体50bが被せられている(図6参照)。
図5の操作機構部分は、ギヤケース50の左側に、上述の第1クラッチ駆動手段511及び第2クラッチ駆動手段512(図示略)等を配置してクラッチカバー56を被せて構成されている。また、クラッチカバー56の左側には、上述の第1スイッチ操作手段57及び第2スイッチ操作手段58(図示略)等が配置されてスイッチカバー65が被せられている。更に、スイッチカバー65の左側には、第1操作ノブ(上述の第1操作部材に相当)66及び第2操作ノブ(上述の第2操作部材に相当)67が配置されている。
図6は、駆動装置40の操作機構部分の詳細構成を示す。ギヤケース半体50bを挟んで、各クラッチ機構46S、46T、46L、46Rに対応して、スライド用クラッチピン51S、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rが配置されている。スライド用クラッチピン51Sは、上述の第1クラッチ駆動手段511に相当する。また、リクライナ用クラッチピン51Rは、上述の第2クラッチ駆動手段512に相当する。
チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rは、それぞれ図9〜11に拡大して示すように、それぞれギヤ部51a、突部51e及び膨出部51dを備えて構成されている。各ギヤ部51aは、各回転軸51cを中心として形成され、各回転軸51cの周りの一部に形成されている。また、各突部51eは、各回転軸51cから偏芯した位置に形成されている。更に、膨出部51dは、回転軸51cの周りの4分の3程度に形成されている。そして、チルト用クラッチピン51T及びリフタ用クラッチピン51Lの各ギヤ部51aは、スライド用クラッチピン51S及びリクライナ用クラッチピン51Rの各ギヤ部51aに比べて、その歯幅が大きくされている。
一方、スライド用クラッチピン51Sは、図8に拡大して示すように、上述のチルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rと類似構造を備える。スライド用クラッチピン51Sの主な特徴は、突部51bが膨出部51dの形成範囲の両端部に一対設けられている点と、膨出部51dの形成範囲が回転軸51cの周りの半分程度に形成されている点である。
スライド用クラッチピン51S、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rは、ギヤケース半体50bの左側面に各回転軸51cを中心として回転自在に支持されている。そして、各突部51b、51eは、ギヤケース半体50bを貫通して、各クラッチ機構46S、46T、46L、46Rを操作可能に配置されている。
ギヤケース半体50bの左側面上で、スライド用クラッチピン51S、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rに囲まれる中心位置には、第2センタカム53が配置されている。第2センタカム53は、上述の連携部材に相当する。図39に拡大して示すように、第2センタカム53は、全体として円板形状を成し、中心に貫通孔である嵌合孔53eを備える。また、第2センタカム53は、スライド用クラッチピン51Sのギヤ部51aに噛合するギヤ部53aを備える。更に、第2センタカム53は、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rの膨出部51dに対応して、放射状に形成された放射状突起53b、53c、53dを備える。なお、第2センタカム53は、チルト用クラッチピン51Tとリフタ用クラッチピン51Lの間に切欠53fが形成されている。切欠53fは、上方に向けて開放された形状を成している。
図6のように、第2センタカム53は、ギヤケース半体50bの左側面上の中央部に突出して形成された嵌合突起50cに嵌合孔53eを嵌合させて回転自在に固定されている。そして、第2センタカム53の左側面上に第1センタカム52が重ねて配置されている。図44に拡大して示すように、第1センタカム52は、第2センタカム53と類似形状とされており、全体として円板形状を成し、中心に嵌合孔52bを備え、円板形状の周りの一部にギヤ部52a及び切欠52cを備える。また、第1センタカム52の後下部にも切欠52dを備える。
図6のように、スライド用クラッチピン51Sの回転軸51cには、中間ギヤ54が回転自在に結合されている。そして、中間ギヤ54は、第1センタカム52のギヤ部52aに噛合されている。
ギヤケース半体50bの左側面上で、スライド用クラッチピン51S及びチルト用クラッチピン51Tの間の前側には、スライド用ドライブギヤ55Sが配置されている。また、ギヤケース半体50bの左側面上で、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rの間の後側には、リクライナ用ドライブギヤ55Rが配置されている(図44参照)。スライド用ドライブギヤ55S及びリクライナ用ドライブギヤ55Rは、それぞれ図12、14に拡大して示すように、それぞれギヤ部55aを備えて構成されている。各ギヤ部55aは、各回転軸55bを中心として形成され、各回転軸55bの周りの一部に形成されている。また、各回転軸55bの先端には、四角柱形状の面取部55cが形成されている。
図6のように、スライド用ドライブギヤ55Sには、その回転軸55bに貫通して被せられるようにチルト用ドライブギヤ55Tが配置されている。同様に、リクライナ用ドライブギヤ55Rには、その回転軸55bに貫通して被せられるようにリフタ用ドライブギヤ55Lが配置されている。チルト用ドライブギヤ55T及びリフタ用ドライブギヤ55Lは、それぞれ図15、14に拡大して示すように、それぞれギヤ部55aを備えて構成されている。各ギヤ部55aは、各回転軸55bを中心として形成され、各回転軸55bの周りの一部に形成されている。また、リフタ用ドライブギヤ55Lの回転軸55bの先端には、四角柱形状の面取部55cが形成されている。更に、チルト用ドライブギヤ55Tは、突部55dを備え、突部55dは、回転軸55bから偏芯した位置で、左方向に向けて突出して形成されている。
図6のように、スライド用ドライブギヤ55S及びリクライナ用ドライブギヤ55Rは、ギヤケース半体50bの左側面上で回転自在に支持されている。そして、スライド用ドライブギヤ55S及びリクライナ用ドライブギヤ55Rに対して、各回転軸55bを中心にチルト用ドライブギヤ55T及びリフタ用ドライブギヤ55Lが回転自在に支持されている。
図44に示すように、スライド用ドライブギヤ55Sのギヤ部55aは、中間ギヤ54に噛合されている。また、リクライナ用ドライブギヤ55Rのギヤ部55aは、リクライナ用クラッチピン51Rのギヤ部51aに噛合されている。従って、スライド用ドライブギヤ55Sが回転されると、中間ギヤ54を仲介して第1センタカム52が回転され、後述のようにスイッチ59が操作される。また、リクライナ用ドライブギヤ55Rが回転されると、リクライナ用クラッチピン51Rが回転されて、後述のようにリクライナ用クラッチ機構46Rが接続状態とされる。
図43に示すように、チルト用ドライブギヤ55Tのギヤ部55aは、チルト用クラッチピン51Tのギヤ部51aに噛合されている。また、リフタ用ドライブギヤ55Lのギヤ部55aは、リフタ用クラッチピン51Lのギヤ部51aに噛合されている。従って、チルト用ドライブギヤ55Tが回転されると、チルト用クラッチピン51Tが回転されて、後述のようにチルト用クラッチ機構46Tが接続状態とされる。また、リフタ用ドライブギヤ55Lが回転されると、リフタ用クラッチピン51Lが回転されて、後述のようにリフタ用クラッチ機構46Lが接続状態とされる。なお、スライド用ドライブギヤ55Sは、本発明の第1操作部材に相当する。また、チルト用ドライブギヤ55T、リフタ用ドライブギヤ55L及びリクライナ用ドライブギヤ55Rは、本発明の第2操作部材に相当する。
図39〜42は、第2センタカム53の機能を説明している。ここでは、チルト用クラッチピン51Tが回転された場合を示している。チルト用クラッチピン51Tが回転されると、チルト用クラッチピン51Tの膨出部51dにより第2センタカム53の放射状突起53bが押圧され、第2センタカム53が図40、41のように時計方向に回転される。その結果、第2センタカム53のギヤ部53aがスライド用クラッチピン51Sのギヤ部51aを介してスライド用クラッチピン51Sを回転させる。リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rが回転された場合も、チルト用クラッチピン51Tが回転された場合と同様に、第2センタカム53を介してスライド用クラッチピン51Sが回転される。なお、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rの各膨出部51dの形状と、第2センタカム53の各放射状突起53b、53c、53dの形状は、両者間に適宜の隙間を設けている。そのため、回転される各膨出部51dにより各放射状突起53b、53c、53dを押圧することはできるが、回転される各放射状突起53b、53c、53dにより各膨出部51dを押圧することはできなくされている。
このように、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rは、それぞれ対応するチルト用ドライブギヤ55T、リフタ用ドライブギヤ55L及びリクライナ用ドライブギヤ55Rにより個別に回転操作される。しかし、スライド用クラッチピン51Sは、スライド用ドライブギヤ55Sによって回転操作されず、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rのいずれかが回転操作されるのに連動して回転操作されている。
図29〜31は、チルト用クラッチピン51Tの回転によりチルト用クラッチ機構46Tが非接続状態から接続状態に切り換えられる様子を示す。図29は、チルト用クラッチピン51Tが回転される前の初期状態を示す。この状態では、チルト用クラッチピン51Tの突部51eがチルト用クラッチ機構46Tの第2操作体46dの膨出部46eに当接していて、チルト用クラッチ機構46Tを非接続状態としている。次に図30のように、チルト用クラッチピン51Tが反時計方向に回転されると、チルト用クラッチピン51Tの突部51eが第2操作体46dの膨出部46eに当接していた位置からずれ始める。図31のように、チルト用クラッチピン51Tが更に回転されると、チルト用クラッチピン51Tの突部51eが第2操作体46dの膨出部46eに当接しない位置となる。なお、図29〜31では、チルト用クラッチピン51T及びチルト用クラッチ機構46Tに関して説明したが、リフタ用クラッチピン51L及びリフタ用クラッチ機構46L、並びにリクライナ用クラッチピン51R及びリクライナ用クラッチ機構46Rに関しても同様に構成されている。
図26〜28は、図29〜31と同様の部分をチルト用クラッチピン51Tを除外して示す。チルト用クラッチ機構46Tは、連結筒体46aを備え、この連結筒体46aが、図26のように入力軸44aから離れている状態では、入力軸44aと出力軸47Tを非接続状態とする。一方、連結筒体46aが、図28のように入力軸44aに嵌合した状態では、入力軸44aと出力軸47Tを接続状態とする。連結筒体46aは、出力軸47T側にフランジ部46bを備え、フランジ部46bが第2操作体46dにより押圧されるように構成されている。具体的には、第2操作体46dは、連結筒体46aの外周上を跨がる門型を成し、門型の右側両端部が上述のギヤケース半体50aに揺動自在に結合されている。図示を省略したが、連結筒体46aと出力軸47Tとの間には、圧縮ばねが配置されており、連結筒体46aを入力軸44aに嵌合する方向に常時付勢している。図27は、図30に対応しており、チルト用クラッチ機構46Tが非接続状態から接続状態に切り換えられる途中の状態を示す。従って、連結筒体46aが入力軸44aに向けて移動している途中の状態を示す。なお、図26〜28では、チルト用クラッチ機構46Tに関して説明したが、リフタ用クラッチ機構46L及びリクライナ用クラッチ機構46Rに関しても同様に構成されている。
図35〜38は、チルト用クラッチピン51Tが回転された際のチルト用クラッチピン51Tの突部51eとチルト用クラッチ機構46Tの第2操作体46dの膨出部46eとの相互作用を示す。図35は、突部51eと膨出部46eとがまっすぐ正面に当接している状態を示す。この状態では、連結筒体46aが圧縮ばね(図示略)の付勢力に抗して第2操作体46dにより押圧され、連結筒体46aは入力軸44aから離れた状態とされている。図36のように、チルト用クラッチピン51Tが時計方向に回転されると、突部51eが膨出部46eの側方に移動し、連結筒体46aは圧縮ばね(図示略)の付勢力により第2操作体46dと共に後方に移動する。図37は、チルト用クラッチピン51Tが時計方向に更に回転された状態を示し、連結筒体46aは更に入力軸44aに接近する。図38は、チルト用クラッチピン51Tの回転が終了した状態を示し、この状態では、突部51eは膨出部46eの側方に位置して、連結筒体46aは入力軸44aに嵌合された状態となる。即ち、チルト用クラッチ機構46Tは接続状態とされる。
チルト用クラッチピン51Tが上述とは反対に反時計方向に回転された場合は、突部51eが膨出部46eの反対側に位置して、チルト用クラッチ機構46Tは接続状態とされる。なお、図35〜38では、チルト用クラッチピン51T及びチルト用クラッチ機構46Tに関して説明したが、リフタ用クラッチピン51L及びリフタ用クラッチ機構46L、並びにリクライナ用クラッチピン51R及びリクライナ用クラッチ機構46Rに関しても同様に構成されている。
図32〜34は、スライド用クラッチピン51Sが回転された際のスライド用クラッチピン51Sの一対の突部51bとスライド用クラッチ機構46Sの第1操作体46cの膨出部46fとの相互作用を示す。図32は、一対の突部51bが膨出部46fの両側部に当接している状態を示す。この状態では、膨出部46fは一対の突部51bにより押圧されていないため、連結筒体46aは圧縮ばね(図示略)の付勢力により入力軸44aに嵌合した状態とされている。図33のように、スライド用クラッチピン51Sが反時計方向に回転されると、一方の突部51bが膨出部46fに当接し始め、連結筒体46aは圧縮ばね(図示略)の付勢力に抗して第1操作体46cと共に前方に移動する。図34は、スライド用クラッチピン51Sの回転が終了した状態を示し、この状態では、一方の突部51bは膨出部46fの頂上部分に位置して、連結筒体46aは入力軸44aから完全に切り離された状態となる。即ち、スライド用クラッチ機構46Sは非接続状態とされる。
スライド用クラッチピン51Sが上述とは反対方向に回転された場合は、一対の突部51bのうちの他方の突部51bによって膨出部46fが押圧されて、スライド用クラッチ機構46Sは非接続状態とされる。
図16〜21は、以上説明したギヤケース半体50bの左側面上に組み付けられる各部品の組付手順を示す。まず、図16のように、ギヤケース半体50bの左側面上に第2センタカム53が組み付けられる。次に、図17のように、第2センタカム53の上に第1センタカム52が被せられて組み付けられる。その後、図18のように、第2センタカム53の周りで、ギヤケース半体50bの左側面上にスライド用クラッチピン51S、チルト用クラッチピン51T、リフタ用クラッチピン51L及びリクライナ用クラッチピン51Rが組み付けられる。また、図19のように、スライド用クラッチピン51Sの上に中間ギヤ54が被せられて組み付けられる。更に、図20のように、ギヤケース半体50bの左側面上の前側及び後側にスライド用ドライブギヤ55S及びリクライナ用ドライブギヤ55Rが組み付けられる。そして、図21のように、スライド用ドライブギヤ55Sの上にチルト用ドライブギヤ55Tが被せられて組み付けられる。また、リクライナ用ドライブギヤ55Rの上にリフタ用ドライブギヤ55Lが被せられて組み付けられる。
図21のように、ギヤケース半体50bの左側面上の上下部には、上下方向に対向して突部50dが形成されている。各突部50dの間には、ギヤケース半体50bの左側面上に組み付けられる各部品が収納されている。
図6のように、チルト用ドライブギヤ55T及びリフタ用ドライブギヤ55Lの左側にはクラッチカバー56が被せられる。クラッチカバー56は、ギヤケース半体50bの各突部50dに跨って固定されている。そして、クラッチカバー56の前後端部には、それぞれ貫通孔56aが形成されている。前側の貫通孔56aには、互いに重ね合わされたスライド用ドライブギヤ55Sとチルト用ドライブギヤ55Tの回転軸55bが貫通されている。また、後側の貫通孔56aには、互いに重ね合わされたリクライナ用ドライブギヤ55Rとリフタ用ドライブギヤ55Lの回転軸55bが貫通されている。また、クラッチカバー56の中央部には、左方向に突出する突起56bが形成されている。
図22は、ギヤケース半体50bの各突部50dにクラッチカバー56が固定された状態を示す。この状態では、前側の貫通孔56aからスライド用ドライブギヤ55Sの回転軸55bが突出し、後側の貫通孔56aからリフタ用ドライブギヤ55Lの面取部55c及びリクライナ用ドライブギヤ55Rの回転軸55bが突出している。また、チルト用ドライブギヤ55Tの突部55dがクラッチカバー56の前側から左方向に突出している。
図6のように、クラッチカバー56の突起56bには、第2スイッチカム58及び第1スイッチカム57が重なった状態で貫通して前後方向に揺動自在に配置されている。図45、46に示すように、第2スイッチカム58の後部には、右側に突出する連結部材58aが形成されている。また、図45、46に示すように、第1スイッチカム57の上部には、右側に突出する連結部材57aが形成されている。それらの連結部材58a及び連結部材57aは、クラッチカバー56を貫通して延び、連結部材58aの先端部は、第1センタカム52の切欠52dに嵌合している。また、連結部材57aの先端部は、第1センタカム52の切欠52c及び第2センタカム53の切欠53fに嵌合している。連結部材58aの切欠52dへの嵌合は、両者間に隙間を設けずに行われ、連結部材57aの切欠52c及び切欠53fへの嵌合は、両者間に隙間D1、D2を設けて行われている。ここで、切欠52cの隙間D1は、切欠53fの隙間D2より大きくされている。なお、図45、46では、クラッチカバー56の記載を省略している。なおまた、第2センタカム53の切欠53fは、本発明の係合部に相当する。
従って、第1センタカム52が回転されたとき、その回転は、連結部材58aを介して第2スイッチカム58に遅滞なく伝達される。しかし、第1センタカム52の回転は、切欠52cの隙間D1により第1スイッチカム57には伝達されない。一方、第2センタカム53が回転されたとき、その回転は、連結部材57aを介して第1スイッチカム57に伝達される。但し、その伝達は、切欠53fの隙間D2分だけ遅れることになる。また、第2センタカム53により第1スイッチカム57が回転されたとき、その回転は、第1センタカム52には伝達されない。なぜなら、切欠52cの隙間D1により連結部材57aの回転動作が第1センタカム52に伝達されない。
このように切欠53fに隙間D2が設定されていることにより、第2センタカム53に対して時間遅れを持たせて第1スイッチカム57を回転させている。また、切欠52cに隙間D1が設定されていることにより、第1センタカム52が回転されたとき、その回転が連結部材57aを介して第1スイッチカム57に伝達されないようにしている。しかも、第2センタカム53により第1スイッチカム57が回転されたとき、その回転が第1センタカム52に伝達されないようにしている。従って、切欠53fの隙間D2は、本発明の遅延構造に相当し、切欠52cの隙間D1は、本発明のワンウェイ構造に相当する。なお、第1スイッチカム57は、本発明のスイッチ操作手段及び第1スイッチ操作手段に相当する。また、第2スイッチカム58は、本発明のスイッチ操作手段及び第2スイッチ操作手段に相当する。
この第1実施形態では、第1スイッチカム57及び第2スイッチカム58に連結部材57a、58aを設け、第2センタカム53及び第1センタカム52に切欠53f、52cを設けて、第2センタカム53及び第1センタカム52の回転を第1スイッチカム57及び第2スイッチカム58に伝達している。しかし、この構成は次のように変更してもよい。即ち、第2センタカム53及び第1センタカム52に連結部材57a、58aを設け、第1スイッチカム57及び第2スイッチカム58に切欠53f、52cを設けて、第2センタカム53及び第1センタカム52の回転を第1スイッチカム57及び第2スイッチカム58に伝達することもできる。
図23に示すように、クラッチカバー56に第2スイッチカム58及び第1スイッチカム57が配置されたとき、クラッチカバー56の左側面上で、第2スイッチカム58及び第1スイッチカム57の下方に、対を成すリミットスイッチ59a、59bが固定されている。リミットスイッチ59a、59bは、第1スイッチカム57及び第2スイッチカム58が回転されたとき駆動モータ41の作動回路が閉路するように構成されている。リミットスイッチ59aが操作されたときに閉路される駆動モータ41の作動回路と、リミットスイッチ59bが操作されたときに閉路される駆動モータ41の作動回路とでは、駆動モータ41の回転方向が反対とされている。
図6のように、クラッチカバー56の各貫通孔56aの左側には、共に扇形の第1セクタギヤ60及び第2セクタギヤ61が互いに向かい合わせに配置されている。第1セクタギヤ60は、その嵌合孔60bが貫通孔56aから突出したスライド用ドライブギヤ55Sの回転軸55bに嵌合して回転自在とされている。また、第2セクタギヤ61は、その角孔61bが貫通孔56aから突出したリフタ用ドライブギヤ55Lの面取部55cに結合されている。そして、第1セクタギヤ60のギヤ部60aと第2セクタギヤ61のギヤ部61aには、両者間に挟まれて中間ギヤ62が噛合されている。従って、第1セクタギヤ60がスライド用ドライブギヤ55Sの回転軸55bをヒンジピンとして回転されたとき、その回転が中間ギヤ62を介して第2セクタギヤ61に伝達され、第2セクタギヤ61は、その角孔61b、面取部55cを通じてリフタ用ドライブギヤ55Lを回転させる。なお、第1セクタギヤ60のギヤ部60aに隣接する部位には、左方向に向けて突出する突部60cを備える。
第1セクタギヤ60の嵌合孔60bの左側には、リンク63とリンクギヤ64とが重ねて配置されている。図24は、この状態を示している。また、リンクギヤ64の左側には、スイッチカバー65が被せられている。スイッチカバー65は、クラッチカバー56を含めてギヤケース50の左側に配置された全ての部品を被ってギヤケース半体50bに固定されている。更に、スイッチカバー65の左側には、第1操作ノブ66及び第2操作ノブ67が配置されている。図25は、スイッチカバー65の面上に配置された第1操作ノブ66及び第2操作ノブ67の様子を示している。
図6のように、リンク63は、概ね上下方向に長い楕円形を成し、その下部に嵌合突起63aを備え、その上部に角孔63bを備える。また、リンクギヤ64は、概ね下方向に開いた形状の扇形を成し、その上部に左方向に突出する突部64aを備え、その下部に嵌合孔64cを備え、その下端部にギヤ部64bを備える。リンク63の嵌合突起63aは、リンクギヤ64の嵌合孔64cに嵌合して互いに回動自在に結合されている。一方、リンク63の角孔63bは、スライド用ドライブギヤ55Sの面取部55cに嵌合して回転方向に結合されている。また、リンクギヤ64の突部64aは、スイッチカバー65を貫通して第1操作ノブ66の中央部にビス66aにより固定されている。
図50は、スイッチカバー65の右側面の形状を示す。スイッチカバー65は、板面上に複数の貫通孔65b〜65eが形成されている。貫通孔65bは、突部64aが貫通する位置に形成され、貫通孔65cは、リフタ用ドライブギヤ55Lの突部55dが貫通する位置に形成されている。また、貫通孔65dは、第1セクタギヤ60の突部60cが貫通する位置に形成され、貫通孔65eは、リクライナ用ドライブギヤ55Rの回転軸55bが貫通する位置に形成されている。なお、貫通孔65bの下方には、上方に向けてトロコイドカムギヤ65aが形成されている。
図51は、第2操作ノブ67の右側面の形状を示す。第2操作ノブ67の下部中央にはリクライナ用ドライブギヤ55Rの面取部55cを受け入れる角孔67cが形成されている。面取部55cが角孔67cに嵌合された状態でビス67aにより締結されて(図6参照)、リクライナ用ドライブギヤ55Rが第2操作ノブ67に固定されている。また、第2操作ノブ67の下部前方には、右方に突出して突部67dが形成されている。従って、第2操作ノブ67は、リクライナ用ドライブギヤ55Rの回転軸55bを中心として回動し、リクライナ用ドライブギヤ55Rを回動させる。このとき、突部67dがスイッチカバー65の貫通孔65e内で移動範囲を規制され、第2操作ノブ67の回動範囲が規制されている。なお、第2操作ノブ67の左側面には、ビス67aを隠すようにノブカバー67bが被せられている(図6参照)。
図52は、第1操作ノブ66の右側面の形状を示す。第1操作ノブ66の中央下部にはリンクギヤ64の突部64aが結合されている。ここでは、突部64aの先端にワッシャ66cを挟んでビス66aが締結されている(図6参照)。そして、第1操作ノブ66はワッシャ66cと突部64aとの間に挟まれた状態とされ、突部64aを中心としてシーソー運動自在とされている。しかも、第1操作ノブ66は、前後方向に延びて形成された貫通孔65bを介して前後方向にスライド操作自在とされている。
また、第1操作ノブ66の前上部にはチルト用ドライブギヤ55Tの突部55dが結合されている。更に、第1操作ノブ66の後上部には第1セクタギヤ60の突部60cが結合されている。
従って、第1操作ノブ66は、その前端部を上下方向に移動することによりチルト用ドライブギヤ55Tを回動させる。このときの第1操作ノブ66の移動範囲は、貫通孔65cの形状によって規制されている。また、第1操作ノブ66は、その後端部を上下方向に移動することにより第1セクタギヤ60を回動させる。このときの第1操作ノブ66の移動範囲は、貫通孔65dの形状によって規制されている。更に、第1操作ノブ66は、前後方向に移動することによりリンクギヤ64の突部64aを前後方向に移動する。図48、49は、そのときのリンクギヤ64及びリンク63の動きを示す。リンクギヤ64が移動すると、そのギヤ部64bはトロコイドカムギヤ65aに噛み合って移動する。リンクギヤ64の移動に伴って、リンク63の嵌合突起63aも移動されて、リンク63は、角孔63bを中心として回動される。そのため、角孔63bに嵌合しているスライド用ドライブギヤ55Sが回動されることになる。このような第1操作ノブ66の前後方向の移動を可能とするため、図52に示すように、第1操作ノブ66の回転軸55b及び突部60cに隣接して前後方向に延びる溝66dが形成されている。なお、第1操作ノブ66の左側面には、ビス66aを隠すようにノブカバー66bが被せられている(図6参照)。
第1操作ノブ66は、前後方向に操作されることによりシート6のスライド調整を行い、後端部を上下方向に操作されることによりシート6のリフタ調整を行い、前端部を上下方向に操作されることによりシート6のチルト調整を行うようにされている。但し、これらの操作は、個々には操作可能でも、複数の操作を同時にはできないように構成されている。即ち、第1操作ノブ66が前後方向のいずれかに操作されると、スイッチカバー65の突部65fが第1操作ノブ66の溝66d内へ移動して、第1操作ノブ66は、前端部、後端部どちらも上下移動できない状態とされる。また、第1操作ノブ66が後端部を上下方向のいずれかに操作されると、突部65fが第1操作ノブ66の係合部66f、66gに係合して、第1操作ノブ66は、前後方向に移動できない状態とされる。同様に、第1操作ノブ66が前端部を上下方向のいずれかに操作された場合も、突部65fが第1操作ノブ66の係合部66f、66gに係合して、第1操作ノブ66は、前後方向に移動できない状態とされる。
図6のように、スイッチカバー65の右側には、インヒビット部材(上述の連結部材に相当)68が設けられている。また、図50のように、スイッチカバー65の右側面上の貫通孔65eの上下には、互いに対向して一対の壁65gが形成されている。インヒビット部材68は、一対の壁65gの間に前後方向に摺動自在に配置されている。
インヒビット部材68は、前後方向に長く形成され、前端部には突部68aが左方に突出形成されている。図53は、第1操作ノブ66及び第2操作ノブ67とインヒビット部材68との結合関係を示す。インヒビット部材68の突部68aは、第1操作ノブ66の嵌合穴66eに嵌合して、インヒビット部材68は、第1操作ノブ66の前後方向への移動に追随して移動される。しかし、第1操作ノブ66の後端部の上下移動に対しては、インヒビット部材68の突部68aは、第1操作ノブ66の嵌合穴66e内を上下方向に移動してインヒビット部材68は移動されない。
インヒビット部材68には、長手方向に沿ってスリット68bが形成されている。また、スリット68bの前後方向の中央部の上下に対応してインヒビット部材68には、溝68cが形成されている。スリット68bには、第2操作ノブ67の突部67dが摺動自在に嵌合されている。突部67dのスリット68bへの嵌合は、左右方向に関して部分的であり、突部67dが溝68cに対応する位置にあるときは、溝68cを通って突部67dは上下方向へ移動可能とされている。ここで、突部67d及び溝68cは、上述の第1操作部材規制部を構成し、突部67d及びスリット68bは、上述の第2操作部材規制部を構成している。
図54は、第1操作ノブ66が操作されていない状態を示す。この状態では、第2操作ノブ67の突部67dは、インヒビット部材68の溝68cに対応する位置にある。そのため、第2操作ノブ67は回動操作が可能とされている。
図55は、スライド調整のため、第1操作ノブ66が後側に操作されている状態を示す。この状態では、第2操作ノブ67の突部67dは、インヒビット部材68のスリット68bの前端部に位置している。そのため、第2操作ノブ67の突部67dは上下方向に移動することができず、第2操作ノブ67の回動操作は規制されている。即ち、スライド操作を行っている最中にリクライニング角度調整をできないようにしている。
図56は、スライド調整のため、第1操作ノブ66が前側に操作されている状態を示す。この状態では、第2操作ノブ67の突部67dは、インヒビット部材68のスリット68bの後端部に位置している。そのため、第2操作ノブ67の突部67dは上下方向に移動することができず、第2操作ノブ67の回動操作は規制されている。即ち、スライド操作を行っている最中にリクライニング角度調整をできないようにしている。
図57は、リクライニング角度調整のため、第2操作ノブ67が時計方向に操作されている状態を示す。この状態では、第2操作ノブ67の突部67dは、インヒビット部材68の上側の溝68c内に位置している。そのため、インヒビット部材68は、溝68c部分で第2操作ノブ67の突部67dと干渉して前後方向に移動することができない。従って、第1操作ノブ66の前後方向への操作は規制されている。即ち、リクライニング角度調整操作を行っている最中にスライド調整をできないようにしている。
図58は、リクライニング角度調整のため、第2操作ノブ67が反時計方向に操作されている状態を示す。この状態では、第2操作ノブ67の突部67dは、インヒビット部材68の下側の溝68c内に位置している。そのため、インヒビット部材68は、溝68c部分で第2操作ノブ67の突部67dと干渉して前後方向に移動することができない。従って、第1操作ノブ66の前後方向への操作は規制されている。即ち、リクライニング角度調整操作を行っている最中にスライド調整をできないようにしている。
図7は、第1操作ノブ66及び第2操作ノブ67の操作によるシート6の各位置の調整機能を説明している。シート6のスライド位置調整のため、第1操作ノブ66が前後方向に操作されると、リンクギヤ64及びリンク63により前後方向の操作が回転操作に変換されて、スライド用ドライブギヤ55Sが回転される。そのため、中間ギヤ54を介して第1センタカム52が回転され、第2スイッチカム58が揺動される。第2スイッチカム58は、揺動されると、リミットスイッチ59を操作して駆動モータ41を作動させる。スライド用ドライブギヤ55Sにより中間ギヤ54が回転されるとき、中間ギヤ54は、スライド用クラッチピン51Sの回転軸51cを中心として回転するが、スライド用クラッチピン51Sは回転されない。その結果、スライド用クラッチピン51Sによるスライド用クラッチ機構46Sの切換作動は行われず、スライド用クラッチ機構46Sは接続状態のまま維持される。一方、駆動モータ41は作動されるため、シート6のスライド位置調整が実現される。リミットスイッチ59は、第1操作ノブ66の操作方向に応じて第2スイッチカム58が揺動されてリミットスイッチ59a又は59bが操作される。従って、シート6のスライド位置を任意に調整することができる。
スライド位置調整は、シート6の各位置調整の中で調整頻度が高い。使用頻度の高いスライド位置調整のスライド用クラッチ機構46Sは、常時接続状態とされ、スライド位置調整する際は、接続状態のままに維持される。そのため、スライド位置が高い頻度で調整されても、その都度スライド用クラッチ機構46Sが切り換えられることはない。従って、スライド用クラッチ機構46Sの劣化を抑制することができる。
シート6のリフタ調整のため、第1操作ノブ66の後端部が上下方向に操作されると、第1セクタギヤ60、中間ギヤ62、第2セクタギヤ61を介してリフタ用ドライブギヤ55Lが回転される。そのため、リフタ用クラッチピン51Lは、回転され、リフタ用クラッチ機構46Lを非接続状態から接続状態に切り換える。同時に、リフタ用クラッチピン51Lは、第2センタカム53を回転し、第1スイッチカム57を揺動させる。第1スイッチカム57は、揺動されると、リミットスイッチ59を操作して駆動モータ41を作動させる。第2センタカム53が回転されると、スライド用クラッチピン51Sが回転され、スライド用クラッチ機構46Sが接続状態から非接続状態に切り換えられる。その結果、シート6のリフタ調整が行われる。リミットスイッチ59は、第1操作ノブ66のリフタ調整の操作方向に応じて第1スイッチカム57が揺動されてリミットスイッチ59a又は59bが操作される。従って、シート6のリフタ調整を任意の方向に行うことができる。
第1スイッチカム57によるリミットスイッチ59の操作には時間遅れがある。そのため、リフタ用クラッチ機構46L及びスライド用クラッチ機構46Sの切換作動が完了した後に駆動モータ41の回転が行われる。一方、第2スイッチカム58によるリミットスイッチ59の操作には時間遅れがない。そのため、第1操作ノブ66によるスライド位置調整の操作が行われると、遅れなく駆動モータ41が作動される。
シート6のチルト調整のため、第1操作ノブ66の前端部が上下方向に操作されると、チルト用ドライブギヤ55Tが回転される。そのため、チルト用クラッチピン51Tは、回転され、チルト用クラッチ機構46Tを非接続状態から接続状態に切り換える。同時に、チルト用クラッチピン51Tは、第2センタカム53を回転し、第1スイッチカム57を介してリミットスイッチ59を操作して駆動モータ41を作動させる。第2センタカム53が回転されると、スライド用クラッチ機構46Sが接続状態から非接続状態に切り換えられる。その結果、シート6のチルト調整が行われる。リミットスイッチ59は、第1操作ノブ66のチルト調整の操作方向に応じて第1スイッチカム57が揺動されてリミットスイッチ59a又は59bが操作される。従って、シート6のチルト調整を任意の方向に行うことができる。チルト用クラッチ機構46T及びスライド用クラッチ機構46Sの切換作動が完了した後に駆動モータ41の回転が行われるのは、リフタ調整の場合と同様である。
シート6のリクライニング角度調整のため、第2操作ノブ67が前後方向に操作されると、リクライナ用ドライブギヤ55Rが回転される。そのため、リクライナ用クラッチピン51Rは、回転され、リクライナ用クラッチ機構46Rを非接続状態から接続状態に切り換える。同時に、リクライナ用クラッチピン51Rは、第2センタカム53を回転し、第1スイッチカム57を介してリミットスイッチ59を操作して駆動モータ41を作動させる。第2センタカム53が回転されると、スライド用クラッチ機構46Sが接続状態から非接続状態に切り換えられる。その結果、シート6のリクライナ調整が行われる。リミットスイッチ59は、第1操作ノブ66のリクライナ調整の操作方向に応じて第1スイッチカム57が揺動されてリミットスイッチ59a又は59bが操作される。従って、シート6のリクライナ調整を任意の方向に行うことができる。リクライナ用クラッチ機構46R及びスライド用クラッチ機構46Sの切換作動が完了した後に駆動モータ41の回転が行われるのは、リフタ調整の場合と同様である。
図59は、第1実施形態における各部材を、本発明の第1規制部材及び第2規制部材、並びに第1通路及び第2通路に対応させて模式的に示している。第1操作部材(第1操作ノブ)66は、前後方向にスライド操作されるものであり、また、第2操作部材(第2操作ノブ)67は、前後方向に回動操作されるものである。図59では、便宜上、第2操作部材67は、上下に直線移動するものとして記載している。
第1操作部材66及び第2操作部材67のそれぞれ原位置から調整位置への移動操作時の移動軌跡の延長線は、「交点」で互いに交差している。第2規制部材(第2操作部材67の突部)67dは、第2操作部材67が操作されてない状態で、「交点」上に位置している。また、第2規制部材67dは、第1操作部材66が操作されてない状態で、第1規制部材(インヒビット部材、連結部材)68の第1通路(スリット)68bと第2通路(溝)68cとの交点に位置している。従って、第1操作部材66が操作されてない状態では、第2操作部材67の操作は可能である。そのため、第2操作部材67が原位置から調整位置へ移動操作されると、第2規制部材67dが「交点」外の「第2交点」に移動する。一方、第1規制部材68は、第1操作部材66が、原位置から調整位置へ移動操作された状態では、「第2交点」に移動して、第2操作部材67の原位置から調整位置への移動操作を規制する。また、第2操作部材67が、原位置から調整位置へ移動操作された状態では、第2規制部材67dが「第2交点」に位置するため、第1操作部材66の原位置から調整位置への移動操作を規制する。
従って、第1操作部材66と第2操作部材67とは、いずれか一方のみの操作はできるが、両方を同時に操作することはできない。そのため、一つの駆動モータ41により第1位置調整機構M1及び第2位置調整機構M2を同時に作動させる不具合を防止することができる。
図60は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、「交点」に対する第1規制部材及び第2規制部材の配置を変更した点である。その他の点は、両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
第1規制部材は、第1操作部材66に設けられ、第1操作部材66が原位置から調整位置へ移動操作された状態では、「交点」内に移動して、第2操作部材67の原位置から調整位置への移動操作を規制する。また、第1操作部材66が原位置にある状態では、「交点」外にあって、第2操作部材67の原位置から調整位置への移動操作を可能とする。
第2規制部材は、第2操作部材67に設けられ、第2操作部材67が原位置から調整位置へ移動操作された状態では、「交点」内に移動して、第1操作部材66の原位置から調整位置への移動操作を規制する。また、第2操作部材67が原位置にある状態では、「交点」外にあって、第1操作部材66の原位置から調整位置への移動操作を可能とする。
従って、第1操作部材66と第2操作部材67とは、いずれか一方のみの操作はできるが、両方を同時に操作することはできない。そのため、一つの駆動モータ41により第1位置調整機構M1及び第2位置調整機構M2を同時に作動させる不具合を防止することができる。
図61は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態ではインヒビット部材68を第1操作ノブ66に直接結合したのに対し、第3実施形態ではインヒビット部材68をリンクギヤ64の突部64aに結合した点である。その他の点は、両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
インヒビット部材68の突部68aとリンクギヤ64の突部64aとは、連結片69によって結合されている。リンクギヤ64の突部64aは、第1操作ノブ66に結合されているので、第3実施形態のインヒビット部材68は、インヒビット部材68を第1操作ノブ66に直接結合した第1実施形態と同様に機能することができる。第3実施形態によれば、構造上の制約で、第1実施形態のようにインヒビット部材68を第1操作ノブ66に直接結合することができない場合に、インヒビット部材68をリンクギヤ64の突部64aに結合して、第1実施形態と同様の機能を達成することができる。
なお、第3実施形態では、インヒビット部材68による第2操作ノブ67の操作の規制は、第1実施形態と同じとされている。しかし、第3実施形態における第1操作ノブ66と同様、構造上の制約で、インヒビット部材68により第2操作ノブ67の操作の規制を直接行うことが困難な場合は、第2操作ノブ67と連動する部品、例えばリクライナ用ドライブギヤ55Rを通じて第2操作ノブ67の操作の規制を行うこともできる。
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、第1操作部材66が直線移動し、第2操作部材67が回転移動するものとしたが、第1及び第2操作部材66、67が共に直線移動、又は共に回転移動するものとしてもよい。
上記実施形態では、本発明を車両のシートに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載のシートに適用しても良い。