次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、平面図、側面図、底面図、断面図などは模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。実施の形態は、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[第1の実施の形態]
(パワーモジュール)
第1の実施の形態に係るパワーモジュール10の一部を透過して示す模式的鳥瞰構成図は、図1(a)に示すように表わされ、図1(a)のI−I線に沿う模式的断面構造図は図1(b)に示すように表わされる。
パワーモジュール10は、半導体デバイスを樹脂封止する第1モールド30と、冷媒を取り込む取込口23Aと冷媒を取り出す取出口23Bとを有し、第1モールド30を取り囲む第2モールド21とを備える。
パワーモジュール10は、第1モールド30・第1放熱器40F・第2放熱器40S・下側第2モールド21S・上側第2モールド21F・下側金属枠27S・上側金属枠27F・出力端子O・正側電力端子P・負側電力端子N・第1半導体デバイスQ1のゲート端子G1・第1半導体デバイスQ1のソースセンス端子S1・第2半導体デバイスQ4のゲート端子G4・第2半導体デバイスQ4のソースセンス端子S4を備える。第1モールド30は、図示を省略している絶縁基板と、絶縁基板上に搭載された半導体デバイスとを樹脂封止したものである。以降において、第1モールド30と称する場合は、絶縁基板と半導体デバイスを含むものとして説明する。
下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fは、両者が組み合わされて第2モールド21を構成する。下側金属枠27Sと上側金属枠27Fは、第1モールド30を取り囲む。なお、下側金属枠27Sと上側金属枠27Fは、エンジニアリングプラスチックで構成された枠でも良いし、無くても良い。下側金属枠27Sと上側金属枠27Fの作用については、後述する。
パワーモジュール10は、第1モールド30の第1主表面30Fに接合される第1放熱器40Fを備える。また、第1主表面30Fに対向する第2主表面30Sに接合される第2放熱器40Sを備えても良い。第1・第2放熱器40F・40Sは、第1・第2主表面30F・30Sの絶縁されたCu面に、例えば半田付けで接合される。なお、図1においてCu面の表記は省略している。
図1(a)(b)に示すように、放熱器40S,40Fが接合された第1モールド30を、冷媒を取り込む取込口23Aと冷媒を取り出す取出口23Bとを有する第2モールド21が取り囲んでいる。第1モールド30と第2モールド21との間には、水路29が構成される。水路29は気密層と称しても良い。つまり、第2モールド21の第1モールド30側の表面には、気密層が形成される。
水路29は、取込口23Aから取り込んだ冷媒を流す。第1モールド30から熱を奪った冷媒は、取出口23Bから取り出される。冷媒は、取込口23Aから流入し、取出口23Bから一定流量で流出する。冷媒の流量を一定にすることで、冷却システム全体の設計が容易になる。なお、冷媒の流量は一定で無くても良い。例えば、脈動していても構わない。冷媒は、例えば、水または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液や冷却空気や冷却ガスが用いられる。
第1放熱器40F若しくは第2放熱器40Sは冷却フィンを備え、冷却フィンのフィンは、冷媒の移動方向に対して実質的に平行に配置される。第1・第2放熱器40F・40Sの表面は、冷媒との接触面積を大きくするため凸凹である。第1・第2放熱器40F・40Sの表面の凸部がフィンである。冷却フィンのフィンを、冷媒の移動方向に対して平行に配置することで、冷却システムの圧力損失を低減することができる。圧力損失について詳しくは後述する。なお、実質的に平行とは、厳密な平行でなくても同様の作用効果が得られる範囲を意味する。
また、第1・第2放熱器40F・40Sは一方または両方が無くても良い。つまり、第1モールド30の第1・第2主表面30F・30Sと冷媒との間の熱交換量が、必要十分であれば、第1・第2放熱器40F・40Sは不要である。また、第1・第2放熱器40F・40Sの片方のみを備えるようにしても良い。
図2(a)に、第1モールド30の第1主表面30F側から見た概略平面図を示す。また、図2(b)に、第1モールド30の内部構造を示す平面パターン構成図を示す。
図2(a)に示すように、第1モールド30は、Cu面34・端子導出部33を備える。Cu面34は、第1主表面30Fに配置され、絶縁されている。端子導出部33は、各々の端子の第1モールド30からの導出部分に配置され、第1モールド30と一体である。
図2(b)に示すように、絶縁基板31の上に導電パターンD(K1)・D(K4)・EPが配置される。絶縁基板31は、例えばDBC(Direct Bonding Copper)基板である。絶縁基板31の模式的断面構造図は、図3に示すように表され、例えば両面に導電層31U・31Dを備える。導電層31Uをパターニングして導電パターンD(K1)・D(K4)・EPを形成する。なお、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4の実装面と反対側の表面の導電層31Dは無くても良い。
導電パターンD(K1)に、第1半導体デバイスQ1とダイオードD1が配置される。また、導電パターンD(K4)に、第2半導体デバイスQ4とダイオードD2が配置される。
なお、図2(b)は、第1半導体デバイスQ1と第2半導体デバイスQ4とを、それぞれ2個用いる例を示している。ダイオードD1・D2は、フリーホイールダイオードであり、第1半導体デバイスQ1と第2半導体デバイスQ4のソース・ドレイン間に逆並列に接続される。なお、ダイオードD1/D2は、半導体デバイスQ1・Q4内に形成されているものを用いるようにして、省略しても良い。
図2(b)に例示する第1モールド30は、ツーインワンモジュールであり、その回路構成は図4に示すように表される。導電パターンD(K1)は、第1半導体デバイスQ1のドレイン電極と接続される。また、導電パターンD(K1)は、正側電力端子Pによって外部に取り出される。
第1半導体デバイスQ1のソース電極は、図示しない例えばリード部材等で、第2半導体デバイスQ4のドレイン電極が配置された導電パターンD(K4)に接続される。また、導電パターンD(K4)は、出力端子Oによって外部に取り出される。
導電パターンEPは、図示しない例えばリード部材等で、第2半導体デバイスQ4のソース電極に接続される。また、導電パターンEPは、負側電力端子Nによって外部に取り出される。
また、第1半導体デバイスQ1のゲート電極とソースセンス電極とは、それぞれ参照符号を省略している導電パターンとボンディングワイヤ(太い実線)で接続され、ゲート端子G1・ソースセンス端子S1によって外部に取り出される。第2半導体デバイスQ4についても同様に、ゲート電極とソースセンス電極とが、ゲート端子G4・ソースセンス端子S4によって外部に取り出される。
絶縁基板31・第1半導体デバイスQ1・第2半導体デバイスQ4は樹脂で覆われ、各々の端子P・N・O・G1・S1・G4・S4の先端部分のみが、他と導通する目的で樹脂から露出している。各々の端子P・N・O・G1・S1・G4・S4の第1モールド30からの導出部は、端子導出部33を構成する樹脂で覆われている。
第1モールド30を図2の矢印A方向から見た模式的鳥瞰構成図は、図5に示すように表される。第1・第2放熱器を接合した第1モールド30を矢印A方向から見た模式的鳥瞰構成図は、図6に示すように表される。また、第2モールド21を構成する下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fの模式的鳥瞰構成図は、図7に示すように表される。
下側第2モールド21Sの内側には、下側金属枠27Sが配置されている。上側第2モールド21Fの内側にも上側金属枠27Fが配置されるが、図7ではその表記は省略している。下側・上側第2モールド21S・21Fは、第2モールド21の防水性能を高める作用をする。
図5に示すように、第1モールド30の第1主表面30Fは、Cu面34が露出している。図5では確認できない第2主表面30SもCu面34が露出している。
第2主表面30S上のCu面34は、例えば絶縁基板31の裏面の導電層31D(図3)を、露出させた状態で樹脂封止することで容易に構成することができる。また、第1主表面30F上のCu面34は、例えば、第1主表面30Fの面積とほぼ等しい面積の銅箔を、樹脂封止し、その表面を露出することで容易に構成することができる。
第1・第2放熱器40F・40Sは、Cu面34に、例えば半田付け等で接合する。第1・第2放熱器40F・40Sが接合された第1モールド30は、下側第2モールド21Sの切欠き部25に、横方向に導出された各々の端子P・N・O・G1・S1・G4・S4の端子導出部33を嵌めて固定する。つまり、第1モールド30を、端子P・N・O・G1・S1・G4・S4で支える構造である。また、各端子P・N・O・G1・S1・G4・S4は、第1主表面30Fに対して実質的に平行方向に延伸して配置される。
そして、第1モールド30を固定した下側第2モールド21Sに、上側第2モールド21Fをインロー構造で噛み合わせ、下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fとを接合する。下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fとは、例えば超音波溶着で接合する。なお、図7においてインロー構造の噛み合わせ部分の構造の表記は省略している。
ここで、第1モールド30は、制御端子G1・S1・G4・S4・O若しくは電力端子P・Nを導出する端子導出部33を備え、端子導出部33は第2モールド21の外側まで突出している。このように、第1モールド30は、第2モールド21によって取り囲まれる。なお、以後の説明においては、各制御端子および各電力端子を総称して「各端子」と称する。
第1モールド30と第2モールド21との間には、空間が形成される(図1(b)の水路29)。取込口23Aから冷媒を取り込み、取出口23Bから冷媒を取り出すことで、水路29に冷媒が流れる。
第2モールド21の樹脂層の厚みの薄い各端子の先端部分は、第2モールド21の外側に突出しているので、冷媒に曝されることがない。したがって、防水性の確保が難しい樹脂層の厚みの薄い各端子の先端部分から、第1モールド30の内部に冷媒が浸入することはない。
第1モールド30は、例えば撥水性の樹脂で一体成型すれば、一定の厚みの壁が水路29と対向するので、水路29から内部に冷媒が浸入することはない。このように、パワーモジュール10は、冷媒に水等の冷却水を用いた場合での動作を可能にし、信頼性を高めることができる。
また、各端子の突出方向と直交する面において、端子導出部33の断面は、長方形形状であり、長方形の長辺が冷媒の移動方向に対して実質的に平行に配置されている。この構成によれば、冷却フィンのフィンと同様に冷却システムの圧力損失を低減することができる。詳しくは後述する。
以上説明したパワーモジュール10は、半導体デバイスを封止した第1モールド30の周囲全体を冷却するので冷却性能を向上させる。その結果、パワーモジュール10は、パワーモジュールのさらなる大電力化を図れる。
(変形例1)
変形例1のパワーモジュール10Aの模式的鳥瞰構成図は、図8(a)に示すように表される。また、図8(a)に示す矢印B方向から見た模式的側面図は、図8(b)に示すように表される。また、図8(a)に示す矢印C方向から見た模式的側面図は、図8(c)に示すように表される。
パワーモジュール10Aは、パワーモジュール10に対して各端子の延伸方向を変えた点で異なる。また、パワーモジュール10Aは、結合器(カプラ)12を備える点で、パワーモジュール10と異なる。結合器12は、取込口23Aと取出口23Bにそれぞれ挿入され、冷媒を流すパイプ若しくはホースの結合を容易にするためのものである。
パワーモジュール10Aの第1・第2半導体デバイスQ1・Q4の制御端子G1・S1・G4・S4・O若しくは電力端子P・Nは、第1主表面30Fに対して実質的に鉛直方向に延伸して配置される。
制御端子G1・S1・G4・S4・Oは、冷媒の移動方向Wに対して平行な第1モールド30の一辺に沿って第1主表面30Fから鉛直方向に延伸される。電力端子P・Nは、制御端子G1・S1・G4・S4・Oと逆の鉛直方向に、第2主表面30Sの反対側の一辺から延伸される。
パワーモジュール10と同様に、各端子の端子導出部33の断面は、長方形形状であり、長方形の長辺が冷媒の移動方向に対して実質的に平行になるように配置されている。
パワーモジュール10Aの各端子の配置によれば、第1・第2主表面30F・30Sと対向する範囲に、例えば制御系の回路若しくは電源系の回路を構成することが可能である。よって、パワーモジュール10Aは、パワーモジュールを含むシステムの平面サイズを小さくすることができる。
(変形例2)
変形例2のパワーモジュール10Bの模式的鳥瞰構成図は、図9(a)に示すように表される。また、図9(a)に示す矢印B方向から見た模式的側面図は、図9(b)に示すように表される。また、図9(a)に示す矢印C方向から見た模式的側面図は、図9(c)に示すように表される。
パワーモジュール10Bは、パワーモジュールA(図8)に対して、電力端子P・Nを第1モールド30の側面部から延伸するようにした点で異なる。パワーモジュール10Bの電力端子P・Nは、制御端子G1・S1・G4・S4・Oと反対側の側面部から第2モールド21の外側に向けて延伸されている。
電力端子P・Nの端子導出部33の断面は、パワーモジュール10・10Aと同様に長方形形状であり、長方形の長辺が冷媒の移動方向に対して実質的に平行になるように配置されている。
パワーモジュール10Aの各端子の配置によれば、第1・第2主表面30F・30Sと対向する範囲に、例えば制御系の回路を構成することが可能であり、パワーモジュールを含むシステムの平面サイズを小さくすることができる。
(変形例3)
変形例3のパワーモジュール10Cの模式的鳥瞰構成図は、図10(a)に示すように表される。また、図10(a)に示す矢印B方向から見た模式的側面図は、図10(b)に示すように表される。また、図10(a)に示す矢印C方向から見た模式的側面図は、図10(c)に示すように表される。
パワーモジュール10Cは、各端子を一方の鉛直方向に延伸した点で、パワーモジュールA(図8)と異なる。パワーモジュール10Cの電力端子P・Nは、制御端子G1・S1・G4・S4・Oと同方向の鉛直方向に延伸される。
パワーモジュール10Cの各端子の配置によれば、第1主表面30Fと対向する範囲に、例えば制御系の回路若と電源系の回路を集約することが可能である。よって、パワーモジュール10Cは、パワーモジュールを含むシステムの体積を小さくすることができる。
なお、各端子は、図10とは逆の鉛直方向に、第2主表面30Sから延伸させても良い。その場合でも、パワーモジュール10Cは、パワーモジュールを含むシステムの体積を小さくすることができる。
(変形例4)
変形例4のパワーモジュール10Dの模式的鳥瞰構成図は、図11(a)に示すように表される。また、図11(a)に示す矢印B方向から見た模式的側面図は、図11(b)に示すように表される。また、図11(a)に示す矢印C方向から見た模式的側面図は、図11(c)に示すように表される。
変形例4は、ゲートドライバ基板28を備える点で、パワーモジュール10Aと異なる。パワーモジュール10Dは、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4上に配置されたゲートドライバ基板28と、ゲートドライバ基板28上に搭載されたドライバ回路とを備える。ドライバ回路の表記は、省略している。
ドライバ回路は、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4を駆動および制御する回路である。このようにドライバ回路をパワーモジュールと一体化することで、パワーモジュールを小型化することができる。
なお、ドライバ回路は、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4がスイッチングする際に発生する電磁波雑音の影響を受ける場合がある。そこで、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4とゲートドライバ基板28との間にシールド層を備えるようにしても良い。
シールド層を備えることで、パワーモジュールの誤動作を防止することができる。
シールド層は、ゲートドライバ基板28を例えば図3に示したDBC基板で構成し、第1・第2半導体デバイスQ1・Q4と対向する面の導電層31Dで構成しても良い。また、例えば図1に示した上側・下側金属枠27F・27S若しくは第1・第2放熱器40F・40Sは、シールド層と同様に作用する。よって、専用のシールド層を用意しなくても同様の作用効果を得ることができる。
(冷却能力と圧力損失)
冷却システムの冷却能力と圧力損失との関係について説明する。
冷却システムの概略システム構成図は、図12に示すように表される。冷却水量と冷却能力、および冷却水量と圧力損失との関係を示す模式的特性図は、図13に示すように表される。
本実施形態のパワーモジュールを冷却する冷却システムは、例えばパワーモジュール10を含む冷却器IPMと、パワーモジュール10を冷却する冷媒64と、冷却器IPMに冷媒64を供給する流路62と、冷媒64を冷却するとともに冷却器IPM方向への流量を与えるポンプ60とを備える。冷媒64は、気体または液体である。冷媒64が気体の場合は、ポンプ60はファンに置き換わる。
図13に示す模式的特性図の横軸は、例えば、冷却水流量(L/min)、縦軸は冷却能力T(W)と圧力損失ΔE(kpa)である。冷却水水量を増加させると、冷却能力Tは大きくなる。しかし、圧力損失ΔEも冷却水水量の増加に伴って増加する特性を示す。
圧力損失ΔEとは、流体が機械装置などを通過する際の単位時間単位流量あたりのエネルギー損失である。よって、冷却システム全体で消費するエネルギーは、冷却水水量を一定とした時の冷却能力TE1と圧力損失ΔE1との和(TE1+ΔE1)で、主に表される。
したがって、冷却システムにおいては、圧力損失ΔEを小さくすることが課題になる。この課題を解決する目的で、パワーモジュール10の第1放熱器40F若しくは第2放熱器40Sの冷却フィンのフィンは、冷媒64の移動方向に対して実質的に平行に配置する。また、各端子の延伸する方向と直交する面において、端子導出部33の断面を長方形形状とし、長方形の長辺が冷媒の移動方向に対して実質的に平行に配置されるように構成する。
なお、冷媒64の流量は、半導体デバイスの発熱量に応じて変動させる。流量は、ポンプ60を制御することで容易に変動させることができる。
(放熱器)
第1・第2放熱器40F・40Sの具体例の模試的鳥瞰構成図は、図14に示すように表される。また、第1・第2放熱器40F・40Sの他の具体例の模試的鳥瞰構成図は、図15に示すように表される。
図14に示す第1・第2放熱器40F・40Sは、基端部FB・フィン44を備える。基端部FBは、第1モールド30の第1・第2主表面30F・30Sの表面のCu面34に、例えば半田付け等で接合される。フィン44の向きは、冷媒の移動方向と一致する向きになるように配置される。
図15に示す第1・第2放熱器40F・40Sは、形状の異なるフィン42を備える。フィン42の形状は、細い円柱形状であり、円柱が市松模様を形成するように基端部FB上に配置されている。
円柱形状のフィン42は、冷媒の移動方向と対向する断面形状が円形である。よって、図15に示す第1・第2放熱器40F・40Sは、第1モールド30に固定する向きが限定されない。
なお、基端部FBの四隅に示す円は、例えば、ねじ穴である。第1・第2放熱器40F・40Sは、第1モールド30にねじ等で固定するようにしても良い。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るパワーモジュール100の模式的鳥瞰構成図は、図16に示すように表される。また、図16に示すII−II線に沿う模式的断面構造図は、図17に示すように表される。
図16に示すようにパワーモジュール100は、第2モールド121・取込口112・取出口112・端子導出部133・ソース端子138S・ドレイン端子138Fを備える。パワーモジュール100は、半導体デバイスに例えばSiC MOSMOSFETを1個用いたワンインワンパワーモジュールである。図16において、電力端子P・Nの表記は省略している。
図17を参照してパワーモジュール100の詳しい構成を説明する。パワーモジュール100は、第1モールド130・第1放熱器140F・第2放熱器140S・第1金属枠127F・第2金属枠127Sを備える。
第1モールド130は、半導体デバイス1301・接合層70・柱状電極1302・第1厚銅139F・第2厚銅139S・第1絶縁基板136F・第2絶縁基板136S・第1放熱器140F・柱状電極1302を備える。
半導体デバイス1301のドレイン電極は、接合層70で第1厚銅139Fに接続される。第1厚銅139Fは、接合層70でドレイン端子138Fに接続される。
第1厚銅139Fの半導体デバイス1301と反対側の面には、第1絶縁基板136Fの第1導電層135Fが接合層70で接続される。第1絶縁基板136Fを挟んで第1導電層135Fと反対側の第2導電層137Fは、第1モールド130の表面に露出しており、露出した第2導電層137Fに、第1放熱器140Fが接合層70で接続される。
半導体デバイス1301のソース電極には、接合層70で柱状電極1302が接続される。柱状電極1302の半導体デバイス1301と反対側の面は、接合層70で第2厚銅139Sに接続される。第2厚銅139Sは、接合層70でソース端子138Sに接続される。
第2厚銅139Sの半導体デバイス1301と反対側の面には、第2絶縁基板136Sの第1導電層135Sが接合層70で接続される。第2絶縁基板136Sを挟んで第1導電層135Sと反対側の第2導電層137Sは、第1モールド130の表面に露出しており、露出した第2導電層137Sに、第2放熱器140Sが接合層70で接続される。
半導体デバイス1301を中心とした第2導電層137F〜第2導電層137Sの構成は、樹脂131で成型され、第1モールド130を構成する。第1モールド130の主表面の第2導電層137Fには第1放熱器140F、第1モールド130のもう一方の主表面の第2導電層137Sには第2放熱器140Sがそれぞれ接続される。第1・第2放熱器140F・140Sの両端は、この例では凹形状の第1金属枠127Fと第2金属枠127Sの底面内側の壁に突き当たっている。
第1金属枠127Fと第2金属枠127Sの凹形状の側壁の両先端部のそれぞれは、ドレイン端子138Fとソース端子138Sの端子導出部133の壁に突き当たっている。そして、第1金属枠127Fと第2金属枠127Sの外側は、第2モールド121で取り囲まれている。
第1モールド130と第1・第2金属枠127F・127Sとの間には、水路164が形成される。水路164は、取込口112から流入する冷媒64で満たされる。
第1・第2金属枠127F・127Sは、水路164の防止性能を高める。また、第1・第2金属枠127F・127Sは、半導体デバイス1301が発生する電磁波雑音を遮断するシールド層としても作用する。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係るパワーモジュール100Aの模式的鳥瞰構成図は、図18に示すように表される。また、図18に示すIII−III線に沿う模式的断面構造図は、図19に示すように表される。
パワーモジュール100Aは、パワーモジュール100の第1モールド130と第1・第2放熱器140F・140Sを、反時計方向に90°回転させ、第2モールド121の一面からドレイン端子138Fとソース電極138Sを取り出したものである。
パワーモジュール100Aの構成要素は、パワーモジュール100と同じである。よって、図18と図19に参照符号を示して説明は省略する。
図17と図19とを対比することで明らかなように、パワーモジュールのドレイン端子138Fとソース電極138Sは、第2モールド121のいずれの面から取り出しても良い。電力端子P・Nについても同様である。
(パワーモジュールの製造方法)
パワーモジュール10・100・100Aの製造方法について説明する。その製造方法の一例は、図20(a)〜(d)に示すように表される。図20(a)〜(d)は、製造工程例を示す模式的断面構造図である。
パワーモジュール10・100・100Aの製造方法は、半導体デバイスを封止した第1モールド30を、ブロー成型用の注入口21Bを有する樹脂チューブ21A内に挿入する工程と、第1モールド30を挿入した樹脂チューブ21Aを金型52に設置する工程と、金型52を加熱した状態で、樹脂チューブ21Aの注入口に圧縮空気を注入する工程と、圧縮空気を注入した状態で、金型52を冷却する工程と、金型52から樹脂チューブ21Aを取り出し、樹脂チューブ21Aの端子部分G1・Oの樹脂を取り除く工程とを有する。
まず、第1モールド30を、ブロー成型用の注入口21Bを有する樹脂チューブ21A内に挿入する(図20(a))。第1モールド30の製造方法については後述する。
次に、第1モールド30を挿入した樹脂チューブ21Aを、金型52に設置する(図20(b))。金型52は、第1モールド30を収容するキャビティ52Cを備える。キャビティ52Cの断面形状は、第1モールド30を収容する中央部分が長方形であり、第1モールド30の両端の端子G1・Oに向けてテーパ状である。金型52は上下に2つに分かれる金型であり、樹脂チューブ21Aを上下2つの金型で挟んで固定する。図2(b)において、金型52が上下に分かれる構成の表記は省略している。
次に、金型52を加熱した状態で、注入口21Bから圧縮空気(ブロー)を注入し、樹脂チューブ21A内の内圧を上げ、樹脂チューブ21Aを膨張させる。この時、注入口21Bの他に、図示しない排出口21Cを設け、圧縮空気を金型52の外側に排出させても良い。注入口21Bを取込口23A、排出口21Cを取出口23Bとして用いると都合が良い。
次に、樹脂チューブ21Aを膨張させた状態で、金型52を冷却する(図2(c))。次に、金型52から樹脂チューブ21Aを取り出し、樹脂チューブ21Aの端子部分G1・Oの樹脂を取り除き、端子G1・Oが外部と接続するように加工する(図2(d))。
以上の工程を有することで、パワーモジュール10・100・100Aを製造することができる。なお、図20(a)に示す工程において、樹脂チューブ21Aはチューブで無くても良い。樹脂チューブ21Aを、2枚の樹脂膜で構成し、2枚の樹脂膜を金型52で挟むことで樹脂チューブを構成するようにしても良い。
また、パワーモジュール10・100・100Aの製造方法は、半導体デバイスを樹脂でモールドした第1モールド30を成型する工程と、第1モールド30を、冷媒を取り込む取込口23Aと冷媒を取り出す取出口23Bとを有する下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fで囲み、下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fとを溶着させる工程とを有する方法でも良い。
まず、半導体デバイスと、半導体デバイスを搭載した絶縁基板31等を樹脂で封止した第1モールド30を成型する(図2参照)。次に、第1モールド30の端子導出部33を、下側第2モールド21Sの切欠き部25に嵌めて固定する。そして、第1モールド30が固定された下側第2モールド21Sと、上側第2モールド21Fとを組み合わせる(図7参照)。以上の工程を有することで、パワーモジュール10・100・100Aを製造することができる。
下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fとを組み合わせる場合、両者の接合面をインロー構造にすると位置決めが容易である。下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fの接合面は、例えば超音波溶着で接合させる。
また、下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fとは、ねじ等で固定するようにしても良い。その場合は、例えば、第1放熱器40Fと下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fと第2放熱器40Sとをねじで固定する(図14参照)。この場合、インロー構造にした下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fの接合面に、Oリングを配置するようにしても良い。なお、Oリングは超音波溶着で接合させる場合に用いても良い。
また、第1モールド30を、下側第2モールド21Sの切欠き部25に嵌めて固定した後、第1モールド30が固定された下側第2モールド21Sと、上側第2モールド21Fとをかみ合わせ(溶着)、下側第2モールド21Sと上側第2モールド21Fの全体を樹脂でモールドしても良い。
(パワーモジュールの連結構造体)
パワーモジュール10・100・100Aを複数備え、複数のパワーモジュールを連結させたパワーモジュールを構成しても良い。例えば、ツーインワンのパワーモジュール10を3個連結し、パワーモジュールの連結構造体130(シックスインワンパワーモジュール(3相交流インバータ))を構成した模式的鳥瞰構造図は、図21に示すように表される。
パワーモジュールの連結構造体133は、n個目のパワーモジュール10n(n≧2)の取出口23Bに、n+1個目のパワーモジュール10の取込口23Aを接続し、複数のパワーモジュール10を直列に接続したものである。
パワーモジュールの連結構造体130は、3個のパワーモジュール101〜103・結合器12を備える。1個目のパワーモジュール101の取出口23Bと2個目のパワーモジュール102の取込口23Aとは、結合器12で結合される。また、2個目のパワーモジュール102の取出口23Bと3個目のパワーモジュール103の取込口23Aとは、別の結合器12で結合される。
1個目のパワーモジュール101の取込口23Aから流入した冷媒は、3個目のパワーモジュール103の取出口23Bから流出する。
このように本実施形態に係るパワーモジュール10を複数組み合わせることで、結合器12による取り付けのみで水路が一系統でかつ両面冷却が可能な例えば3相交流インバータを簡単に構成することができる。また、冷媒の流路を、極めて簡単に構成することができる。
なお、複数のパワーモジュール10は並列に接続しても良い。パワーモジュール10を3個並列に連結したパワーモジュールの連結構造体143の模式的鳥瞰構造図は、図22に示すように表される。パワーモジュールの連結構造体143は、3相交流インバータを構成する点で、パワーモジュールの連結構造体133と同じである。
パワーモジュールの連結構造体140は、n個目のパワーモジュール10の取込口23Aとn+1個目のパワーモジュール10の取込口23Aとを接続し、n個目のパワーモジュール10の取出口23Bとn+1個目のパワーモジュールの取出口23Bとを接続し、複数のパワーモジュールを並列に接続したものである。
パワーモジュールの連結構造体143は、流路62A・流路62B・3個のパワーモジュール10・結合器12を備える。図22に示すように、パワーモジュール101・102・103のそれぞれの取込口23Aは、流路62Aと結合器12で接続する。また、パワーモジュール101・102・103のそれぞれの取出口23Bは、流路62Bと結合器12で接続する。
パワーモジュールの連結構造体143は、各パワーモジュール101・102・103に並列に冷媒を供給することができるので、冷却能力を向上させることができる。
なお、複数のパワーモジュール101〜103を積層したパワーモジュールの連結構造体を構成しても良い。また、複数のパワーモジュール101〜103を組み合わせて立体化(例えば三角柱・立方体)したパワーモジュールの連結構造体を構成しても良い。
なお、パワーモジュール10の内部に収容される第1モールド30は、樹脂や絶縁基板等の熱膨張率の異なるもの同士が密着して構成される。第1モールド30を構成する樹脂は、例えば約200℃といった高温で成型されるため、成型後に常温に戻った際に、熱膨張率の差によってパワーモジュールに反りが生じる。
この反りを吸収するために、十分な厚さの放熱器接着層が必要になる。この放熱器接着層が、放熱器を含む第1モールド30の厚みを厚くしてしまう。放熱器を含む第1モールド30の厚みが厚くなると、水路29の容積が減少し冷却能力が低下する。また、反りが大きいと、パワーモジュールの加熱と冷却の温度サイクルによる歪みがより多く蓄積され、パワーモジュールの信頼性を悪化させる場合も想定される。
よって、反り量を減らす必要がある。次に、反り量を減少させるように構成した第4の実施の形態について説明する。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態に係るパワーモジュール250の主要部の断面を示す模式的断面構造部は、図23に示すように表される。
パワーモジュール250は、第1モールド30と、放熱器接着層26を介して第1モールド30の下面に接着された放熱器105とを備える。第1モールド30は、半導体デバイス40と、半導体デバイス40を搭載した絶縁基板80とを封止する第1樹脂層15と、第1樹脂層15を封止する第2樹脂層18とを備える。
第1モールド30は、絶縁基板80と、絶縁基板80上に配置されたシリコンカーバイトデバイスやワイドバンドギャップ型のデバイス等からなるパワー回路用の半導体デバイス(半導体チップ)40(401・402・403)と、半導体チップ40(401・402・403)および絶縁基板80上に配置され、半導体チップ40(401・402・403)を覆うように形成される第1樹脂層15(例えば汎用樹脂)と、第1樹脂層15の熱膨張率(CTE)よりも小さい熱膨張率(CTE)を有するとともに、第1樹脂層15の弾性率よりも大きい弾性率を有する第2樹脂層18(例えば多フィラー樹脂)とを備え、第2樹脂層18は、第1樹脂層15の少なくとも上面を覆うように形成される。
絶縁基板80は、例えば、セラミックスの基板と、当該基板の上下に配置された銅箔を備えてもよい。
また、第1樹脂層15および第2樹脂層18は、ハードレジンである。
また、第1樹脂層15の熱膨張率と第2樹脂層18の熱膨張率は、それぞれ絶縁基板80(或いは銅箔)の熱膨張率よりも大きくなされていても良い。
また、半導体チップ40は、単一のチップでもよいし、図23に例示するように複数個の半導体チップ401・402・403でもよい。
このような、第1樹脂層15と第2樹脂層18とを組み合わせた二重モールド構造を用いることで、単一モールド構造を有する第1モールド30における反り量に比べて、実施の形態に係るパワーモジュール250の反り量(図23の例では、反り量W1)を大幅に低減することができる(詳細は後述する)。
また、第1樹脂層15と第2樹脂層18とを組み合わせた二重モールド構造を用いることで、モールド成型の温度を(例えば、約200℃から約180℃に)低減することができ、信頼性の向上や高効率化を図ることができる。
(二重モールド構造)
実施の形態に係るパワーモジュール250に適用する封止樹脂として、図24に示すような第2樹脂層18(熱膨張率が比較的低く、反り量が比較的小さい多フィラー樹脂)と、第1樹脂層15(密着力が比較的高い汎用樹脂)とを用いる。
半導体チップ40を封止する樹脂の主材料は、エポキシ樹脂と反応に必要な硬化剤であるが、それ以外に主材料の半分以上をSiO2のフィラー13が占めている。フィラー13は、樹脂の熱膨張率(CTE)よりも小さい熱膨張率(CTE)を有するため、このようなフィラー13を樹脂に含有させることで、樹脂の実効熱膨張率を下げることができる。
例えば、第1樹脂層15と第2樹脂層18に含まれるフィラー13は、50容量パーセント濃度(vol%)以上のフィラー13を用いても良い。
より具体的には、図25に例示するように、密着力の高い第1樹脂層15(汎用樹脂)を基板80側に成型し、反りを抑制する効果のある第2樹脂層18(多フィラー樹脂)を第1樹脂層15の上面に付加することで、反り量と密着度のトレードオフを解消する。
図26は、樹脂の厚みと反り量との関係(樹脂をどの程度の厚みにすれば、反りが抑制できるのか)を検証するためのシミュレーションに用いた二重モールド構造の例を模式的示す。シミュレーションに用いた二重モールド構造は、図26に例示するように、セラミックス基板80(CTE=3)の上に汎用樹脂を用いた第1樹脂層15(CTE=16)を形成し、第1樹脂層15の上面に多フィラー樹脂を用いた第2樹脂層18(CTE=9)を形成した二重モールド構造である。この例では、第1樹脂層15の厚さは、第2樹脂層18の厚さよりも薄く形成されていても良い。
図27は、樹脂の厚みと反り量との関係を検証するためのシミュレーションの結果を模式的に示す。このシミュレーションにおいては、例えば、約50mm×約40mmの大きさの基板上に全樹脂厚t0=7.6mmに対し第1樹脂層15の厚みt(mm)を横軸とし、反り量を縦軸としている。図27において、t=0mm(符号18)は、多フィラー樹脂(第2樹脂層18)による単一モールド構造でのシミュレーション結果に対応し、t=7.6mm(第1樹脂層15)は、汎用樹脂(第1樹脂層15)による単一モールド構造でのシミュレーション結果に対応する。
図27において、反り量をプロットした結果、二重モールド構造の反り量は、第1樹脂層15の厚みtが1〜3mmの範囲において極小値が得られ、これは、多フィラー樹脂(第2樹脂層18)による単一モールド構造でのシミュレーション結果の反り量(単一モールド構造での最小値)よりも優れた値(反りがさらに抑制された値)になっている。
単一モールド構造の場合は、第1樹脂層15と第2樹脂層18のそれぞれの熱膨張率と基板80の熱膨張率の差によって、反り量が決まる。この場合、第1樹脂層15と第2樹脂層18のそれぞれの熱膨張率(CTE=9、CTE=16)の方が基板80(CTE=3)の熱膨張率よりも大きいので、必ず下方向に反ることになる。
一方で、二重モールド構造の場合、図28に例示するように、基板80と第1樹脂層15との間の境界(下境界)と、第1樹脂層15と第2樹脂層18との間の境界(上境界)の2つの境界がある。ここで、下境界と上境界においてそれぞれ反りが発生すると考えると、図28(a)に例示するように、基板80(CTE=3)と第1樹脂層15(CTE=16)との間の下境界では下反りが生じ、図28(b)に例示するように、第1樹脂層15(CTE=16)と第2樹脂層18(CTE=9)との間の上境界では、CTE値の関係が下境界とは逆転しており、上反りが生じる。
このように、上境界における上反りの効果が高まることにより、下境界における下反りを抑制できる(図28(c))。
上境界における上反りの効果を高めるためには、(1)式に例示するように曲げ剛性を考慮する必要がある(互いの曲げ剛性のバランスで反り量が決まる(反りを0にすることも可能))。
剛性kB=EI/L、Ix=∫Ay2dA=at3/12 (1)
ここで、Eはヤング率、Lは長さ、aは幅、Iは断面二次モーメント、Aは断面積である(図29参照)。特に、剛性kBは、厚みtの3乗に比例するため、厚みtのバランスを調整することで、単一モールド構造よりもさらに反り量を低減させることができる。
(二重モールド構造の製造方法)
実施の形態に係るパワーモジュール250に適用する二重モールド構造の製造方法の一
例は、図30〜31に示すように表される。
二重モールド構造の製造方法は、金型350内に半導体デバイスが表面に搭載された基板80を設置するステップと、金型350内に入れ子310を挿入するステップと、入れ子310を挿入した状態の金型350に対して第1の樹脂を投入して、基板80の表面を覆うように第1樹脂層15を形成するステップと、金型350から入れ子310を取り除くステップと、第1樹脂層15を入れ子が取り除かれた金型に設置するステップと、入れ子310が取り除かれた金型350に対して第2の樹脂を投入して、第1樹脂層15の少なくとも上面を覆うように第1樹脂層15の上に第2樹脂層18を形成するステップと、金型350を取り外すステップとを有し、第2樹脂層18は、第1樹脂層15の熱膨張率よりも小さい熱膨張率を有するとともに、第1樹脂層15の弾性率よりも大きい弾性率を有する。
まず、図30(a)に例示するように、金型の厚さを可変できる入れ子金型350を用意し、金型350内に基板80を設置する。
次に、入れ子310を挿入した状態の金型350(小金型)に対して(図30(b))、汎用樹脂を投入して第1樹脂層15(例えば樹脂厚2.5mm)を成型する(図30(c))。第1樹脂層15は、例えばトランスファーモールドで成型される。
次に、入れ子310を抜いた状態の金型350(大金型)に対して(図31(a))、多フィラー樹脂を投入して第2の樹脂層18(例えば樹脂厚7.6mm)を成型する(図31(b))。
次に、金型350を取り外すと、第1樹脂層15と第2樹脂層18とが配置された二重モールド構造が得られる(図31(c))。
以上説明したように実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法は、第1の樹脂による1次モールドの後、さらに第2の樹脂による2次モールドを行う。1次モールドと2次モールドによって、第1樹脂層15と第2樹脂層18の組成を任意に設計することが可能である。
例えば、第2樹脂層18は、第1樹脂層15の熱膨張率よりも小さい熱膨張率を有するとともに、第1樹脂層15の弾性率よりも大きい弾性率を有するようにすることもできる。
(樹脂層の厚みと反り量との関係の検証)
図32は、先に図27に示したシミュレーション結果(折線)の模式的グラフ上に、この実測試験による反り量の実測値M1〜M4をプロットした図である。実測値M1は、多フィラー樹脂を用いた第2樹脂層18の単一モールド構造による反り量の実測値であり、実測値M2は、汎用樹脂を用いた第1樹脂層15の単一モールド構造による反り量の実測値であり、実測値M3およびM4は、第1樹脂層15と第2樹脂層18との二重モールド構造による反り量の実測値である。
シミュレーションした単一モールド構造は、約40mm×約30mmの大きさのセラミック基板80上に汎用樹脂を用いた第1樹脂層15または第2樹脂層18を厚みt=7.6mmで形成している。また、実測値M3の二重モールド構造は、セラミック基板80上に汎用樹脂を用いた第1樹脂層15厚みt=2.5mmで形成し、さらに第1樹脂層15の上面に多フィラー樹脂を用いた第2樹脂層18を形成している。実測値M4の二重モールド構造は、第1樹脂層15厚み=6.2mmである。
それぞれの実測値M1、M2、M3、M4は、図27に示したシミュレーション結果(折線)のデータと略一致している。尚、第2樹脂層18の単一モールド構造による実測試験の結果、第2樹脂層18と基板80との密着性が弱いことがわかった。
また、図33は、樹脂厚みと反り量との関係を検証するための別のシミュレーションに用いたモールド構造であって、基板80の端面が第1樹脂層15または第2樹脂層18の端面と面一な場合を示している。図33(a)は、単一モールド構造(多フィラー樹脂)の例を模式的に示し、図33(b)は、単一モールド構造(汎用樹脂)の例を模式的示し、図333(c)は、二重モールド構造(第1樹脂層15+第2樹脂層18)の例を模式的示している。また、図34は、図33に示した各モールド構造を用いたシミュレーションの結果を模式示す。
このシミュレーションにおいては、全樹脂厚t0=7mmに対し第1樹脂層15の厚みt(mm)を横軸とし、反り量を縦軸としている。図34において、ポイントS1(t=0)は、多フィラー樹脂(第2樹脂層18)の単一モールド構造でのシミュレーション結果に対応し、ポイントS2(t=7)は、汎用樹脂(第1樹脂層15)による単一モールド構造でのシミュレーション結果に対応し、ポイントS3は、二重モールド構造(第1樹脂層15+第2樹脂層18)によるシミュレーション結果に対応する。図15から明らかなように、二重モールド構造の反り量は、第1樹脂層15の厚みtが2.5mm付近において極小値(約37μm)が得られ、これも、多フィラー樹脂(第2樹脂層18)の単一モールド構造での反り量(約42μm:単一モールド構造での最小値)よりも優れた値になっている。汎用樹脂(第1樹脂層15)による単一モールド構造での反り量は、約121μmであった。
(反りの温度特性)
図35は、図32に示した実測試験にそれぞれ用いた単一モールド構造と二重モールド構造のそれぞれの反りと温度との関係を例示する模式的グラフである。図35において、ポイントM13は、樹脂モールドの成型温度(175℃:反り量=0μm)であり、ポイントM11は、単一モールド構造を用いた場合の反り量(約56μm)であり、ポイントM12は、二重モールド構造を用いた場合の反り量(約12μm)である。
図35から明らかなように、反りは、温度によって変化し、単一モールド構造を用いた場合の反り量は、成型温度(175℃)ではゼロであり、常温で約56μmとなる。一般的なパワーモジュール等の場合、信頼性の面から−50℃程度までの動作補償が求められており、単一モールド構造を用いた場合の反りは、−50℃では常温のときの約2倍の100μm程度も反ることになる。そうすると、1.5倍程度の設計マージンを考慮すると、単一モールド構造を用いた場合の放熱器接着層26の厚みは、150μm程度の反りを吸収するために、150μm程度必要になる。
その一方で、二重モールド構造を用いた場合の反り量は、常温で約12μmであり、−50℃においても約20μm程度であると考えられる。したがって、1.5倍程度の設計マージンを考慮しても、二重モールド構造を用いた場合の放熱器接着層26の厚みは、50μm弱の反りを吸収できる、約50μm程度に設定される。
(第1モールドの構成例)
実施の形態に係る第1モールド30の構成例(その1)は、図36(a)に例示するように、セラミックス基板80と、セラミックス基板80上に配置された単一の半導体チップ40と、半導体チップ40およびセラミックス基板80上に配置され、半導体チップ40を覆うように形成される第1樹脂層15(例えば汎用樹脂)と、第1樹脂層15の熱膨張率(CTE)よりも小さい熱膨張率(CTE)を有するとともに、第1樹脂層15の弾性率よりも大きい弾性率を有する第2樹脂層18(例えば多フィラー樹脂)とを備え、第2樹脂層18は、第1樹脂層15の少なくとも上面を覆うように形成される。
実施の形態に係る第1モールド30の構成例(その2)では、図36(b)に例示するように、図36(a)の構成例(その1)に比べて、第1樹脂層15の厚みを薄く形成している。図36(b)の例では、第1樹脂層15の厚みは、半導体チップ40の高さよりも少し低く設定されている。また、第1樹脂層15の厚みを薄くした分、第2樹脂層18の厚みを増加させて、二重モールド構造全体の厚みを、構成例(その1)のものと同程度に形成している。
実施の形態に係る第1モールド30の構成例(その3)では、図36(c)に例示するように、第1樹脂層15と第2樹脂層18との間に第3樹脂層17aを挿入している。第3樹脂層17aの熱膨張率は、第1樹脂層15の熱膨張率よりも小さく、かつ第2樹脂層18の熱膨張率よりも大きくなされていても良い。また、第3樹脂層17aの弾性率は、第1樹脂層15の弾性率よりも大きく、かつ第2樹脂層18の弾性率よりも小さくなされていても良い。
実施の形態に係る第1モールド30の構成例(その4)では、図36(d)に例示するように、第1樹脂層15と第2樹脂層18との間に第4樹脂層17bを挿入している。第4樹脂層17bは、比較的高い熱膨張率を有する樹脂(例えば第1樹脂層15に用いられる樹脂)と比較的低い熱膨張率を有する樹脂(例えば第2樹脂層18に用いられる樹脂)とが混合された樹脂を含有する。第4樹脂層17bの熱膨張率は、第1樹脂層15の熱膨張率よりも小さく、かつ第2樹脂層18の熱膨張率よりも大きい。また、第4樹脂層17bの弾性率は、第1樹脂層15の弾性率よりも大きく、かつ第2樹脂層18の弾性率よりも小さい。
尚、実施の形態に係る第1モールド30の構成例(その1〜その4)においては、単一の半導体チップ40を搭載する例を示したが、搭載する半導体チップ40の数はこれに限定されず、必要に応じて、2以上の半導体チップ40を搭載しても良い。
以上説明したように、実施の形態に係る第1モールド30は、反り量を小さくすることができる。反り量が小さいと温度サイクルにおける信頼性を高めることができる。よって、実施の形態に係る第1モールド30は、高い信頼性が要求される車載用のパワーモジュールに用いるのに好適である。次に、実施の形態に係るパワーモジュールの連結構造体を用いた第5の実施の形態について説明する。
[第5の実施の形態]
(電気自動車)
第5の実施の形態に係る電気自動車のパワーコントロールユニット700に適用可能なパワーモジュールの連結構造体133において、モジュール用冷却系614を含む冷却機構部612のシステムブロック構造は、図37に示すように表される。
第5の実施の形態に係る電気自動車は、実施の形態に係るパワーモジュール10の連結構造体130を搭載する。また、パワーモジュールの連結構造体133に冷却水を循環させるためのモジュール用冷却系614を備える。
図37に示すように、第5の実施の形態に係る電気自動車のパワーコントロールユニット700に適用可能な冷却機構部612は、例えば、自動車用エンジンとなるモータ(図示省略)に3相の駆動電流を供給する3相交流インバータとして構成されるパワーモジュールの連結構造体133を、モジュール用冷却系614を用いて冷却するように構成される。
冷却機構部612において、モジュール用冷却系614は、ラジエータ616とポンプ618とを有する。ラジエータ616は、パワーモジュールの連結構造体130より熱を吸収することによって上昇した冷却水の温度を、ある温度まで低下させる。ポンプ618は、ラジエータ616によって一定の温度に保持された冷却水を、パワーモジュールの連結構造体133の流路に繰り返し供給する。
このような構成を備える冷却機構部612は、例えば、電気自動車のパワーコントロールユニット700において、モータの駆動などをコントロールするECU(Engine Control Unit)702によって制御されるようにしても良いし、ECU702の制御によらず常にパワーモジュールの連結構造体133を冷却できるようにしても良い。
なお、この冷却機構部612を、モータとは別に、自動車用エンジンを搭載したハイブリッドカーのパワーコントロールユニット710に適用する場合においては、図38に示すように、パワーモジュールの連結構造体133をモジュール用冷却系614により冷却する場合に限らず、エンジン冷却用に搭載されているエンジン用ラジエータ716とポンプ718とを有するハイブリッド用冷却系714を用いて冷却するようにしても良い。ハイブリッド用冷却系714によってパワーモジュールの連結構造体130を冷却できるようにしたハイブリッドカーにおいては、モジュール用冷却系614による冷却とハイブリッド用冷却系714による冷却とをECU712によって切換可能に構成することは勿論のこと、冷却機構部612におけるモジュール用冷却系614の搭載を省略することも可能である。
電気自動車のパワーコントロールユニット700またはハイブリッドカーのパワーコントロールユニット710においては、パワーモジュールの連結構造体130に限らず、いずれの実施の形態に係るパワーモジュール10・10A等も適用可能である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、半導体デバイスを封止したモジュール全体を冷却することで冷却性能を高め、温度サイクルに対する信頼性も高めた電気自動車またはハイブリッドカーを提供することができる。
(第1モールドおよび半導体チップの詳細構成例)
実施の形態に係る第1モールド30であって、ツーインワンモジュール(2 in 1 Module:ハーフブリッジ内蔵モジュール)において、第2樹脂層18を形成前の模式的平面パターン構成は図39に示すように表され、第2樹脂層18を形成後の模式的鳥瞰構成は図41に示すように表される。また、実施の形態に係るパワーモジュールであって、半導体デバイス(チップ)としてSiC MOSFETを適用した図39に対応したツーインワンモジュール(ハーフブリッジ内蔵モジュール)の回路構成は、図40に示すように表される。
実施の形態に係る第1モールド30は、2つのMOSFETQ1・Q4が1つのモジュールに内蔵されたハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
図39においては、MOSFETQ1・Q4は、それぞれ4チップ並列に配置されている例が示されている。
実施の形態に係る第1モールド30は、図39に示すように、樹脂層15nに被覆されたMOSFETQ1・Q4を搭載するセラミックス基板8の第1の辺に配置された正側電力端子Pおよび負側電力端子Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子Oと、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4とを備える。ここで、図39に示すように、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、MOSFETQ1のゲート用信号配線パターンGL1・ソース用信号配線パターンSL1に接続され、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4は、MOSFETQ4のゲート用信号配線パターンGL4・ソース用信号配線パターンSL4に接続される。
図39に示すように、MOSFETQ1・Q4から信号基板241・244上に配置されたゲート用信号配線パターンGL1・GL4およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4に向けてゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4が接続される。また、ゲート用信号配線パターンGL1・GL4およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL4には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4が半田付けなどによって接続される。
信号基板241・244は、セラミックス基板8上に、半田付けなどによって接続される。
また、実施の形態に係る第1モールド30であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、上面板電極221・224を形成後で第2樹脂層18を形成前の模式的鳥瞰構成は、図42に示すように表される。4チップ並列に配置されたMOSFETQ1・Q4のソースS1・S4は、上面板電極221・224によって共通に接続される。尚、図42においては、ゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4は図示を省略している。
また、図39〜図42においては、図示は省略されているが、MOSFETQ1・Q4のD1・S1間およびD4・S4間に逆並列にダイオードが接続されていても良い。
図39〜図42に示された例では、4チップ並列に配置されたMOSFETQ1・Q4のソースS1・S4は、上面板電極221・224によって共通に接続されているが、上面板電極221・224の代わりにソース同士がワイヤで導通されていても良い。
正側電力端子P・負側電力端子N、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4は、例えば、Cuで形成可能である。
信号基板241・244は、セラミックス基板で形成可能である。セラミックス基板は、例えば、Al2O3、AlN、SiN、AlSiC、若しくは少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
主配線導体(電極パターン)321・324・22nは、例えば、Cu、Alなどで形成可能である。
MOSFETQ1・Q4のソースS1・S4と上面板電極221・224を接続する柱状電極251・254および上面板電極221・224部分は、例えば、Cu、CuMoなどで形成されていても良い。CTEの値が同等である同じ大きさの材料を比較すると、発生応力は、ヤング率の値が大きい材料の方が大きくなる。このため、ヤング率×CTEの数値が、より小さい材料を選定することによって、発生応力の値の小さな部材を達成することができる。CuMoは、このような利点を有している。また、CuMoは、Cuには劣るが、電気抵抗率も相対的に低い。また、上面板電極221・224間の表面に沿った離隔距離は、沿面距離と呼ばれる。沿面距離の値は、例えば、約2mmである。
ゲート用ワイヤGW1・GW4およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW4は、例えば、Al、AlCuなどで形成可能である。
MOSFETQ1・Q4としては、SiC DIMOSFET、SiC TMOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)などのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
実施の形態に係る第1モールド30においては、4チップ構成のMOSFETQ1は、主配線導体(電極パターン)321上に半田層などを介して配置された第1器部材101内の主配線導体(電極パターン)321上にチップ下接合層2を介して配置されている。さらに、第1器部材101内には、第1樹脂層151が充填され、4チップ構成のMOSFETQ1を樹脂封止している。同様に、4チップ構成のMOSFETQ4は、主配線導体(電極パターン)324上に半田層などを介して配置された第2器部材104内の主配線導体(電極パターン)324上にチップ下接合層2を介して配置されている。さらに、第2器部材104内には、第1樹脂層154が充填され、4チップ構成のMOSFETQ4を樹脂封止している。第1樹脂層151と第1樹脂層154は同一材料で形成される。尚、器部材101・104は、図37および図35に示す例では複数のMOSFETQ1・Q4を内包しているが、複数のMOSFETQ1・Q4をそれぞれ内包するように配置しても良い。
実施の形態に係る第1モールド30の主要部は、セラミックス基板8と、セラミックス基板8上に配置された半導体デバイスQ1・Q4と、セラミックス基板8上に配置され、半導体デバイスQ1・Q4を囲む器部材101・104と、器部材101・104の内側に配置され、半導体デバイスQ1・Q4を封止する第1樹脂層151・154と、器部材101・104の外側および第1樹脂層151・154上に配置され、第1樹脂層151・154およびセラミックス基板8を封止する第2樹脂層18とを備える。
(パワーモジュールの具体例)
実施の形態に係るパワーモジュール20であって、ワンインワンモジュールのSiC MOSFETの模式的回路表現は、図43(a)に示すように表され、ワンインワンモジュールのIGBTの模式的回路表現は、図43(b)に示すように表される。
図43(a)には、MOSFETQに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。MOSFETQの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。同様に、図43(b)には、IGBTQに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。IGBTQの主電極は、コレクタ端子CTおよびエミッタ端子ETで表される。
また、実施の形態に係るパワーモジュール20であって、ワンインワンモジュールのSiC MOSFETの詳細回路表現は、図44に示すように表される。
実施の形態に係るパワーモジュール20は、1つのMOSFETQが1つのモジュールに内蔵されている。一例として5チップ(MOSFET×5)搭載可能であり、それぞれのMOSFETQは、5個まで並列接続可能である。尚、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
さらに詳細には、図44に示すように、MOSFETQに並列にセンス用MOSFETQsが接続される。センス用MOSFETQsは、MOSFETQと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。図44において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流センス端子であり、Gは、ゲート信号端子である。尚、実施の形態においても半導体デバイスQには、センス用MOSFETQsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
また、実施の形態に係るパワーモジュール20Tであって、ツーインワンモジュールのSiC MOSFETの模式的回路表現は、図45(a)に示すように表される。
図45(a)に示すように、2つのMOSFETQ1・Q4と、MOSFETQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードD1・D4が1つのモジュールに内蔵されている。G1は、MOSFETQ1のゲート信号端子であり、S1は、MOSFETQ1のソース端子である。G4は、MOSFETQ4のゲート信号端子であり、S4は、MOSFETQ4のソース端子である。Pは、正側電源入力端子であり、Nは、負側電源入力端子であり、Oは、出力端子である。
また、実施の形態に係るパワーモジュール20Tであって、ツーインワンモジュールのIGBTの模式的回路表現は、図45(b)に示すように表される。図45(b)に示すように、2つのIGBTQ1・Q4と、IGBTQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードD1・D4が1つのモジュールに内蔵されている。G1は、IGBTQ1のゲート信号端子であり、E1は、IGBTQ1のエミッタ端子である。G4は、IGBTQ4のゲート信号端子であり、E4は、IGBTQ4のエミッタ端子である。Pは、正側電源入力端子であり、Nは、負側電源入力端子であり、Oは、出力端子である。
(半導体デバイスの構成例)
実施の形態に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC MOSFETの模式的断面構造は、図46(a)に示すように表され、IGBTの模式的断面構造は、図46(b)に示すように表される。
実施の形態に適用可能な半導体デバイス110(Q)の例として、SiC MOSFETの模式的断面構造は、図46(a)に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたソース領域130Sと、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたn+ドレイン領域124と、n+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
図46(a)では、半導体デバイス110は、プレーナゲート型nチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する図50に示すように、nチャネル縦型SiC TMOSFETなどで構成されていても良い。
また、実施の形態に適用可能な半導体デバイス110(Q)には、SiC MOSFETの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
実施の形態に適用可能な半導体デバイス110には、SiC系、GaN系のいずれかのパワーデバイスを採用可能である。
さらには、実施の形態に適用可能な半導体デバイス110には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
同様に、実施の形態に適用可能な半導体デバイス110A(Q)の例として、IGBTは、図46(b)に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたエミッタ領域130Eと、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、エミッタ領域130Eおよびpボディ領域128に接続されたエミッタ電極134Eと、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたp+コレクタ領域124Pと、p+コレクタ領域124Pに接続されたコレクタ電極136Cとを備える。
図46(b)では、半導体デバイス110Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型nチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFETの模式的断面構造は、図47に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。
また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図47に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体基板126内には、図46(a)或いは、図47の中央部と同様に、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
さらに、図47に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜144上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
実施の形態に適用する半導体デバイス110Aの例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むIGBTの模式的断面構造は、図41に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域130Eおよびpボディ領域128に接続されたエミッタ電極134Eに接続される。
また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、図48に示すように、半導体デバイス110Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体基板126内には、図46(b)或いは、図48の中央部と同様に、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
さらに、図48に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜144上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
―SiC DIMOSFET―
実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、SiC DIMOSFETの模式的断面構造は、図49に示すように表される。
実施の形態に適用可能なSiC DIMOSFETは、図49に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板126と、半導体基板126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn+ソース領域130Sと、pボディ領域128間の半導体基板126の表面上に配置されたゲート絶縁膜132と、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138と、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126の表面と反対側の裏面に配置されたn+ドレイン領域124と、n+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
図49では、半導体デバイス110は、pボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn+ソース領域130Sが、ダブルイオン注入(DI)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、図49に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。
SiC DIMOSFETは、図49に示すように、pボディ領域128に挟まれたn-高抵抗層からなる半導体基板126内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗RJFETが形成される。また、pボディ領域128/半導体基板126間には、図49に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
―SiC TMOSFET―
実施の形態に適用可能な半導体デバイス110の例であって、SiC TMOSFETの模式的断面構造は、図50に示すように表される。
実施の形態に適用可能なSiC TMOSFETは、図50に示すように、n層からなる半導体基板126Nと、半導体基板126Nの表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn+ソース領域130Sと、pボディ領域128を貫通し、半導体基板126Nまで形成されたトレンチの内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGと、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、半導体基板126Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ドレイン領域124と、n+ドレイン領域124に接続されたドレイン電極136とを備える。
図50では、半導体デバイス110は、pボディ領域128を貫通し、半導体基板126Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130Sおよびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁膜132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GP(図示省略)は、図50に示すように、半導体デバイス110の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144U上に配置される。
SiC TMOSFETでは、SiC DIMOSFETのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗RJFETは形成されない。また、pボディ領域128/半導体基板126N間には、ボディダイオードBDが形成される。
実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ140の模式的回路構成において、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図51(a)に示すように表される。同様に、実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ140Aの模式的回路構成において、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL、接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図51(b)に示すように表される。
実施の形態に係るパワーモジュールを電源Eと接続する際、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300A、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Vにこのサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PLと接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを一部吸収することができる。
(パワーモジュールを適用した応用例)
次に、図52を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用した実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ140について説明する。
図52に示すように、3相交流インバータ140は、ゲートドライブ部150と、ゲートドライブ部150に接続された半導体装置部152と、3相交流モータ部154とを備える。半導体装置部152は、3相交流モータ部154のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。ここで、ゲートドライブ部150は、SiC MOSFETQ1・Q4、SiC MOSFETQ2・Q5、およびSiC MOSFETQ3・Q6に接続されている。
パワーモジュール152は、蓄電池(E)146が接続されたコンバータ148のプラス端子(+)とマイナス端子(−)間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFETQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFETQ1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードD1〜D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
次に、図53を参照して、半導体デバイスとしてIGBTを適用した実施の形態に係るパワーモジュール20Tを用いて構成した3相交流インバータ140Aについて説明する。
図53に示すように、3相交流インバータ140Aは、ゲートドライブ部150Aと、ゲートドライブ部150Aに接続されたパワーモジュール152Aと、3相交流モータ部154Aとを備える。パワーモジュール152Aは、3相交流モータ部154AのU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。ここで、ゲートドライブ部150Aは、IGBTQ1・Q4、IGBTQ2・Q5、およびIGBTQ3・Q6に接続されている。
パワーモジュール152Aは、蓄電池(E)146Aが接続されたコンバータ148Aのプラス端子(+)とマイナス端子(−)間に接続され、インバータ構成のIGBTQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。さらに、IGBTQ1〜Q6のエミッタ・コレクタ間には、フリーホイールダイオードD1〜D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
本実施の形態に係るパワーモジュールは、ワンインワン、ツーインワン、フォーインワン、シックスインワン若しくはセブンインワン型のいずれにも形成可能である。
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体デバイスを封止したモジュール全体を冷却することができ、冷却性能を高めたパワーモジュール、パワーモジュールの連結構造体、および電気自動車またはハイブリッドカーを提供することができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。