JP2017201289A - 電子顕微鏡によるナノ粒子の直接的な同定・定量のための検出キットおよび方法 - Google Patents

電子顕微鏡によるナノ粒子の直接的な同定・定量のための検出キットおよび方法 Download PDF

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Abstract

【課題】観察対象のナノ粒子が既知であるか未知であるかを問わず、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を感度よく同定することができるとともに、簡便でありながら迅速かつ正確に定量することができるナノ粒子の検出キットおよび方法を提供する。
【解決手段】検出キット1は、表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされているプレート2と、試料3中のナノ粒子3aを特異的に標識するための標識剤4と、試料3中のナノ粒子3aを薄膜6で覆うための電子顕微鏡観察用保護剤5とを具備し、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子の同定または定量を可能とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子顕微鏡によるナノ粒子の直接的な同定・定量のための検出キットおよび方法に関する。
近年のナノテクノロジーの発展に伴い、ナノ粒子をはじめ様々なナノ物質の構造や組織をナノレベルで解析する技術が確立されてきている。中でも、電子顕微鏡によるナノレベルでの観察・分析技術は、目覚ましい進展を遂げてきた一方で、機能面や性能面での要求も益々高まっている。
本発明者らは先に、生物試料を生きたままの状態で電子顕微鏡観察することを目的として、含水状態の生物試料の電子顕微鏡による迅速な観察方法を提案してきた(特許文献1)。この特許文献1の提案においては、生存環境付与成分、糖類および電解質を含有する電子顕微鏡観察用保護剤を含水状態の生物試料に塗布し、この生物試料に電子線またはプラズマを照射して試料表面に薄膜を形成して、この薄膜で生物試料を覆うことを特徴としている。また、この提案によれば、生物試料として、例えば含水状態のウイルス粒子を使用することもできるとされている。
国際公開WO2015/115502号パンフレット
ところで、従来の電子顕微鏡による直接観察では、対象のナノ粒子の同定と定量とを同時にかつ精度よく行うことは困難であった。特許文献1においては、マウスサイトメガロウイルスを用いて得られた電子顕微鏡観察による計数結果が、他の従来法であるプラークアッセイ法や定量PCR法による定量結果と比較して矛盾しないものであることが確認されている。しかしながら、特許文献1では、既知のウイルスの同定・定量に関して一定の適用性を有していることが示されているものの、未知のウイルス、あるいは試料中に何らかのウイルスが存在するか否かが不明であるような場合、さらには、試料として例えば患者から採取した細胞試料や、血液から分離した血清等の血液試料を用いて、これらの試料中に含まれるウイルスを同定・定量する場合については、必ずしも十分に検討されていなかった。また、特許文献1における含水状態の生物試料の定量方法には、定量性のさらなる向上の余地が残されている。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みて鋭意検討を重ねた結果なされたものであり、観察対象のナノ粒子が既知であるか未知であるかを問わず、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を感度よく同定することができるとともに、簡便でありながら迅速かつ正確に定量することができるナノ粒子の検出キットおよび方法を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明に係る検出キットは、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を同定または定量するための検出キットであって、表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされているプレートと、試料中のナノ粒子を特異的に標識するための標識剤と、試料中のナノ粒子を薄膜で覆うための電子顕微鏡観察用保護剤とを具備することを特徴としている。
ここで、前記検出キットは、前記プレートの表面の電荷および/または前記試料中のナノ粒子の表面の電荷を調整するための電荷調整剤をさらに具備していてもよい。
また、前記プレートが、第1プレートと第2プレートからなっていてもよい。
また、前記第1プレートが複数のウェルを有し、前記第2プレートが、前記第1プレートの前記複数のウェルに挿入される複数の突起部を有していてもよい。
また、前記検出キットにおいて、前記ナノ粒子がウイルス粒子であり、前記標識剤が標識ウイルス特異的抗体であってもよい。
ここで、前記検出キットは、多価第四級アミン高分子化合物、カチオンポリマーおよび部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーから選ばれる電荷調整剤をさらに具備していてもよい。
また、前記検出キットにおいて、前記ナノ粒子が細胞外小胞体であり、前記標識剤がビオチン標識化合物であってもよい。
ここで、前記検出キットは、カチオンポリマーである電荷調整剤をさらに具備していてもよい。
また、前記検出キットにおいて、前記試料が、ヒトの尿、咽頭塗付液、便、血液、体液および細胞破砕物からなる群のうちの少なくとも一つであってもよい。
本発明によれば、観察対象のナノ粒子が既知であるか未知であるかを問わず、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を感度よく同定することができるとともに、簡便でありながら迅速かつ正確に定量することができるナノ粒子の検出キットおよび方法が提供される。
本発明の例示的な実施形態に係るウイルスの検出キットの第1の態様における概要断面図である。 本発明の例示的な実施形態に係るウイルスの検出キットの第2の態様における概要断面図である。 図2に示した第2の態様におけるプレートの形状を模式的に示した概略図である。 本発明の例示的な実施形態に係るウイルスの検出キットの第3の態様における概要断面図である。 本発明の例示的な実施形態に係るウイルスの検出キットの第4の態様における概要断面図である。 実施例1に関し、スライドガラスの表面へのプラズマ照射時間とスライドガラス表面のゼータ電位の関係を示したグラフである。 実施例2に関し、ウイルス試料へのポリブレンの添加量と、ウイルス粒子表面のゼータ電位の関係を示したグラフである。 実施例3のSEM像である。(a)は、本発明の検出キットを用いたウイルス試料中のウイルス粒子のSEM像である。(b)は、スライドガラスの表面にプラズマ処理を行わなかった場合のウイルス試料中のウイルス粒子のSEM像である。 実施例4のSEM像である。 実施例5のSEM像である。 実施例6に関し、大腸菌由来のエクソソームのSEM像である。 実施例6に関し、カチオンプレートの表面に吸着固定され、二次抗体を介して金粒子修飾されたCD9、CD63、CD81抗体で免疫標識されたエクソソームのSEM像である。
以下に、本発明の実施形態について、必要に応じて添付の図面を参照して詳細に説明する。
<定義>
本明細書において、「ナノ粒子」とは、一つ、二つまたは三つの次元の平均粒径がナノスケールの範囲内にある粒子を意味する。ここで、本発明において、「ナノスケール」とは、1nm〜1000nmの範囲の大きさを意味する。
「ナノ粒子」の形状としては、特に制限されることはなく、例えば、球、ワイヤー、チューブ、ロッド、ホーン、針、板、扁平、燐片、紡錘、薄片、トーラス、中空体、立方体、放射状体、不定形状等が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、本発明において、ナノワイヤーは、中実のナノ粒子を意味する。ナノチューブは、中空のナノ粒子を意味する。ナノロッドは、短軸よりも長軸が長い棒状のナノ粒子を意味する。ナノホーンは、ナノチューブの一の先端が閉じた角(ホーン)状のナノ粒子を意味する。
「ナノ粒子」の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、光学顕微鏡を用い、SEM像、TEM像、光学顕微鏡像を観察することにより求めることができる。本発明においては、ナノ粒子の平均粒径は、典型的には、走査型電子顕微鏡を用い、1つの試料につきランダムに10箇所を選定し、走査型電子顕微鏡で撮影される一枚の視野の中に含まれる粒子の個数が少なくとも10個以上となるように撮影倍率を調整し、この測定範囲の中に存在するナノ粒子の長さを、画像解析ソフトにより測定し、その平均値から求めたものとする。なお、ナノ粒子の形状が球でない場合は、当該ナノ粒子の端から端までの長さで最も長い部分(長軸径)を測定するものとする。
本発明において、「ナノ粒子」には、生物および非生物が包含される。
生物の「ナノ粒子」には、例えば、原核生物および真核生物が含まれる。
原核生物には、真正細菌、古細菌が含まれる。
真正細菌には、アシドバクテリア門、アクイフェックス門、アクチノバクテリア門、エルシミクロビウム門、カルディセリクム門、クラミジア門、クロロビウム門、クロロフレクサス門、クリシオゲネス門、サーモデスルフォバクテリウム門、サーモミクロビア門、シアノバクテリア門、ゲマティモナス門、シネルギステス門、スピロヘータ門、ディクチオグロムス門、デイノコッカス-サーマス門、テネリクテス門、デフェリバクター門、テルモトガ門、ニトロスピラ門、バクテロイデス門、フィルミクテス門、フィブロバクター門、フソバクテリア門、プランクトミケス門、プロテオバクテリア門、ウェルコミクロビウム門、レンティスファエラ門が含まれる。
古細菌には、クレンアーキオータ門(界)、ユリアーキオータ門(界)、コルアーキオータ門(界)、ナノアーキオータ門、タウムアーキオータ門が含まれる。
真核生物には、原生生物界、植物界、菌界、動物界が含まれる。
原生生物界には、藻類(緑藻、褐藻、紅藻、珪藻類、ユーグレナ植物門、クリプト植物門、渦鞭毛植物門)、原生動物(繊毛虫門、根足虫類(アメーバ、有孔虫、太陽虫、放散虫)、胞子虫門(アピコンプレクサ、微胞子虫、粘液胞子虫)、鞭毛虫(トリパノソーマ類、襟鞭毛虫、超鞭毛虫、多鞭毛虫))、その他 、変形菌門、細胞性粘菌、ラビリンチュラ、二毛菌門が含まれる。
植物界には、緑藻門、コケ植物門、車軸藻門、維管束植物亜界(古マツバラン門、ヒゲノカズラ門、トクサ植物門、ハナヤスリ門、シダ植物門、球果植物門(マツ門)、ソテツ門、イチョウ門、マオウ門、被子植物門(モクレン門(双子葉植物綱(モクレン綱)、単子葉植物綱(ユリ綱)))が含まれる。
菌界には、ツボカビ門(ツボカビ)、接合菌門(ケカビ、クモノスカビ)、子嚢菌門(酵母、アカパンカビ)、担子菌門(キノコ)、不完全菌、地衣植物門が含まれる。
動物界には、海綿動物門、平板動物門(センモウヒラムシ)、刺胞動物門(クラゲ、イソギンチャク、サンゴ)、有櫛動物門(クシクラゲ)、中生動物門(ニハイチュウ)、扁形動物門(ウズムシ、プラナリア)、紐形動物門(ヒモムシ)、顎口動物門、腹毛動物門、輪形動物門(ワムシ)、動吻動物門、鉤頭動物門、内肛動物門、線形動物門(回虫、C. elegans)、類線形動物門(ハリガネムシ)、外肛動物門、箒虫動物門、腕足動物門、軟体動物門(貝、イカ、タコ)、鰓曳動物門、星口動物門(ホシムシ)、ユムシ動物門、環形動物門(ミミズ、ゴカイ)、緩歩動物門(クマムシ)、五口動物門、有爪動物門(カギムシ)、節足動物門(鋏角亜門(ウミグモ上綱、カブトガニ上綱(カブトガニ)、クモ上綱(クモ、サソリ))、甲殻亜門(エビ、カニ)、多足亜門(ムカデ綱(唇脚綱、ムカデ)、コムカデ綱(結合綱、コムカデ)、エダヒゲムシ綱(少脚綱、エダヒゲムシ)、ヤスデ綱(倍脚綱、ヤスデ))、六脚亜門(内顎綱、外顎綱(昆虫綱)))、有鬚動物門、棘皮動物門(ウニ、ヒトデ、クモヒトデ、ナマコ、ウミユリ)、毛顎動物門(ヤムシ)、半索動物門(ギボシムシ)、脊索動物門(尾索動物亜門(ホヤ)、頭索動物亜門(ナメクジウオ)、脊椎動物亜門(無顎上綱(ヌタウナギ綱、頭甲綱(ヤツメウナギ))、顎口上綱(軟骨魚綱(サメ、エイ、ギンザメ)、肉鰭綱(シーラカンス、ハイギョ)、条鰭綱、両生綱、爬虫綱、哺乳綱、鳥綱)))が含まれる。
特に、哺乳綱、哺乳動物としては、ウサギ科(ノウサギ、アナウサギ)、ネズミ科(マウス、ラット)、イヌ科、ネコ科(イエネコ)、ウシ科(ウシ、スイギュウ、ヤギ、ヒツジ)、イノシシ科(イノシシ、ブタ)、ウマ科(ウマ、ロバ)、オナガザル科(アカゲザル、カニクイザル、ニホンザル)等のオナガザル科、ヒト科(ヒト、チンパンジー)等が例示される。
また、生物の「ナノ粒子」には、上記の生物の生体内から摘出した組織だけでなく、単一細胞、培養細胞、細胞外小胞体等が含まれる。
例えば、動物の生体内から摘出した組織としては、例えば、皮膚、血管、毛髪、筋肉、胃、腸、肺、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、脳、眼球、角膜、神経、臍帯、胎盤、腹膜、横隔膜、筋膜、心膜等が例示される。
例えば、植物から摘出した組織としては、例えば、花弁、種子、果実、葉、茎、根、根毛、茎頂分裂組織、根端分裂組織、導管、師管、維管束、葉肉細胞等が例示される。
単一細胞としては、血球細胞、血小板、赤血球、白血球等が例示される。また、原生生物や原核生物の、酵母、大腸菌、枯草菌、納豆菌、細胞性粘菌等の単細胞生物も単一細胞として例示される。
培養細胞としては、例えば、ヒトまたは非ヒト動物由来の組織から単離した幹細胞、線維芽細胞、皮膚細胞、粘膜細胞、肝細胞、膵島細胞、神経細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨細胞、筋細胞、さらに、家畜などの動物や魚類の精子、卵子または受精卵等の生殖細胞、腫瘍細胞、昆虫細胞、植物細胞などを初代培養または継代培養したものが含まれる。さらに、株化されて市販されている細胞株を用いても構わない。また、細胞としては、接着細胞を用いてもよいし、浮遊細胞を用いてもよい。さらに、平板状に培養した細胞や細胞シートを用いてもよいし、立体的に三次元培養した細胞を用いてもよい。
細胞外小胞体としては、例えば、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体等を含む、脂質小胞等が例示される。
また、生物の「ナノ粒子」には、ウイルスに加えてウイロイドも含まれる。ウイルスの種類としては、DNAウイルスであってもよいし、RNAウイルスであってもよい。
DNAウイルスとしては、例えば、ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、サル痘ウイルス等)、ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス等)、アデノウイルス科(アデノウイルス)、パポバウイルス科(パピローマウイルス、JCウイルス等)、パルボウイルス科(パルボウイルス)、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス等)が例示される。
RNAウイルスとしては、例えば、アレナウイルス科(ラッサウイルス等)、オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルス等)、カリシウイルス科(ノロウイルス、サポウイルス等)、コロナウイルス科(SARSウイルス等)、トガウイルス科(風疹ウイルス等)、ノダウイルス科(ウイルス性神経壊死症ウイルス等)、パラミクソウイルス科(ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス等)、ピコルナウイルス科(ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス等)、フィロウイルス科(マールブルグウイルス、エボラウイルス等)、ブニヤウイルス科(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、重症熱性血小板減少症候群ウイルス等)、フラビウイルス科(黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス等)、ラブドウイルス科(狂犬病ウイルス等)、レオウイルス科、レトロウイルス科(ヒト免疫不全ウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス、サル免疫不全ウイルス、STLV等)が例示される。
非生物の「ナノ粒子」には、例えば、無機ナノ粒子および有機ナノ粒子が含まれる。
無機ナノ粒子を構成する無機材料としては、例えば、金属、金属酸化物、無機酸化物、半導体等が例示される。無機ナノ粒子は、1つの素材の粒子単独でなるものであってもよく、これらの素材が層状に積層されてなる多層粒子であってもよい。
前記金属としては、特に制限されることはなく、1種単独であってもよく、2種以上が併用されていてもよい。また、合金として用いられていてもよく、金属化合物であってもよい。
前記金属としては、具体的には、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、またはこれらの合金等が例示される。
前記金属酸化物としては、例えば、前記金属の酸化物等が例示される。
前記無機酸化物としては、例えば、SiO、SnO、ZnO、MgO、CaO、SrO、BaO、Al、ZrO、Nb、V、TiO、Sc、Y、La、Ga、GeO、Ta、HfO、Fe、Fe、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO(ATO)、ZnをドープしたIn(IZO)、MgIn、CuAlO、AgInO、13族元素(B、Al、Ga、In、Tl)をドープしたZnO、17族元素(F、Cl、Br、I)をドープしたZnO、1族元素(Li、Na、K、Rb、Cs)をドープしたZnO、15族元素(N、P、As、Sb、Bi)をドープしたZnOなどが挙げられる。
前記半導体としては、例えば、Si、Ge、SiC等のIV族半導体、CuCl等のI−VII族半導体、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe等のII−VI族半導体、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InP、InAs、InSb等のIII−V族半導体等が例示される。また、前記半導体は、CdSをコア−CdSeをシェル、CdSeをコア−CdSをシェル、CdSをコア−ZnSをシェル、CdSeをコア−ZnSをシェル、CdSeのナノ結晶をコア−ZnSをシェル、CdSeのナノ結晶をコア−ZnSeをシェル、Siをコア−SiOをシェルとするコア−シェル構造を有する半導体であってもよい。
有機ナノ粒子を構成する有機材料としては、例えば、有機顔料、有機色素顔料、カーボン、グラファイト、フラーレン、ポリジアセチレン、ポリイミド等の高分子化合物顔料;芳香族炭化水素顔料(例えば、多環芳香族系顔料);脂肪族炭化水素顔料(例えば、配向性を有する芳香族炭化水素若しくは脂肪族炭化水素、または昇華性を有する芳香族炭化水素若しくは脂肪族炭化水素);(メタ)アクリル系、スチレン系、(メタ)アクリル−スチレン系、フッ素置換(メタ)アクリル系、フッ素置換(メタ)アクリル−スチレン系等の単量体または(共)重合体等が例示される。
また、非生物の「ナノ粒子」には、上記の無機ナノ粒子および/または有機ナノ粒子を用いて作製された材料、試薬等が含まれる。
<検出キットの構成>
本発明の一実施形態において、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を同定または定量するための検出キットは、
表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされているプレートと、
試料中のナノ粒子を特異的に標識するための標識剤と、
試料中のナノ粒子を薄膜で覆うための電子顕微鏡観察用保護剤とを具備する。
<プレート>
プレートは、板状体であり、その表面にマイナス電荷またはプラス電荷を有する化合物が塗布されているか、または表面にプラズマ等のエネルギー線が照射されることによって、表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされている。
プレートの表面に塗布される、マイナス電荷を有する化合物としては、例えば、アルブミン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヘパリン等が例示される。
プレートの表面に塗布される、プラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。
プレートにプラズマ処理を行った場合、プレートの表面の官能基が切断され、親水性基が表面に露出することにより、プレートの表面にマイナスの電荷をチャージさせることができる。これらの親水性基としては、例えば、水酸基やアミド基等が例示される。プレートのプラズマ処理の条件としては、例えば、圧力10-3〜10-5Pa、温度-20〜+80℃、加速電圧1〜10kV DCの条件でプラズマを照射すること等が例示される。このようなプラズマ処理には、従来公知のプラズマ照射装置を利用することができる。
プレートを構成する材質としては、例えば、金属やセラミックス、合成樹脂等も用いることができるが、上記のプラズマ処理等によってプレートの表面をマイナス電荷にチャージさせることや、表面平滑性等を考慮すると、ガラス製のプレートを用いることが好ましく考慮される。
このような表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされているプレートの表面には、ナノ粒子が、その固有のゼータ電位により、または後述する電荷調整剤を用いてその表面の電荷が調整されることにより、電気的に吸着固定される。
例えば、表面がマイナス電荷にチャージされているプレートの表面には、元々プラス電荷にチャージしているナノ粒子、あるいは本来マイナス電荷にチャージしているナノ粒子の表面を後述する電荷調整剤を用いてプラス電荷にチャージさせることにより、ナノ粒子を電気的に吸着固定させることができる。
また、表面がプラスにチャージされているプレートの表面には、元々マイナス電荷にチャージしているナノ粒子、あるいは本来プラス電荷にチャージしているナノ粒子の表面を後述する電荷調整剤を用いてマイナス電荷にチャージさせることにより、ナノ粒子を電気的に吸着固定させることができる。
本実施形態では、プレートは、第1プレートと第2プレートからなっていてもよい。より具体的には、例えば、プレートとして、それぞれマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされた平板状の第1プレートと第2プレートとを用いて、試料を第1プレートと第2プレートの間に挟み込み、マイナス電荷またはプラス電荷にチャージされた第1プレートおよび/または第2プレートの表面にナノ粒子を電気的に吸着固定させてもよい。この場合において、第1プレートと第2プレートは、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよいが、特に、同一形状、同一面積であることが好ましく考慮される。第1プレートと第2プレートが同一形状、同一面積であれば、試料の溶液がほぼ均一に引き延ばされ、表面張力による前記溶液表面の盛り上がりが抑制される。これにより、ナノ粒子3aの観察、同定、定量の効率がより向上する。
前記第1プレートおよび第2プレートがチャージされている電荷の組み合わせとしては、マイナスとマイナス、マイナスとプラス、およびプラスとプラスのいずれであってもよい。ここで、第1プレートと第2プレートが同一の電荷にチャージされている場合、すなわち、マイナスとマイナスまたはプラスとプラスの組み合わせの場合、これらのプレートの電荷と相反する電荷を有する試料中のナノ粒子は、第1プレートと第2プレートの両方の表面に吸着固定される。このとき、ナノ粒子は、第1プレートと第2プレートの電荷が釣り合うように、各々のプレートの表面に均等に吸着される。また、第1プレートと第2プレートが異なる電荷にチャージされている場合、すなわち、マイナスとプラスの組み合わせの場合、ナノ粒子の電荷と同一の電荷にチャージされているプレートを下側とし、当該プレートの表面にナノ粒子を含む試料を置き、その後、ナノ粒子の電荷と異なる電荷にチャージされているもう一方のプレートで当該試料を挟み込むことが好ましく考慮される。これにより、下側に配置したプレートの表面の電荷と試料中のナノ粒子との電荷が反発した状態で上側に配置したプレートの表面の電荷が試料に適用され、ナノ粒子が上側に配置したプレートの表面により効率的に吸着固定される。
前記第1プレートおよび第2プレートは、ナノ粒子が吸着固定された後に、それらが重ね合わされた状態から剥離され、一方もしくは両方のプレートが後述する標識剤および電子顕微鏡用保護剤による処理に供される。なお、第1プレートおよび第2プレートは、ナノ粒子の同定または定量後に、それぞれのプレートをその他の実験に供することができる。
ここで、前記第1プレートおよび第2プレートに関して、第1プレートが複数のウェルを有し、第2プレートが、第1プレートの複数のウェルに挿入される複数の突起部を有していてもよい。この場合において、第1プレートのウェル中に、試料(必要に応じて電荷調整剤と混和されたもの)、標識剤および電子顕微鏡用保護剤が入れられ、第2プレートの突起部が第1プレートのウェルに挿入される。これにより、第1プレートと第2プレートとの間に、試料、標識剤および電子顕微鏡観察用保護剤を挟み込むことにより、試料が第1プレートと第2プレートの間で均一に伸ばされる。このため、電子顕微鏡観察において、視野の深さ方向に複数のナノ粒子が重なることが軽減され、ナノ粒子の定量時にピントを調節して焦点深度を変更する必要がなくなる。
<標識剤>
標識剤は、ナノ粒子を特異的に標識する物質である。標識剤は、例えば、任意の溶媒中に溶解もしくは懸濁された液体状で、ナノ粒子が吸着固定されたプレートの表面に滴下することにより、試料中のナノ粒子を特異的に標識する。
標識剤としては、試料中のナノ粒子と特異的に反応し、顕微鏡観察による直接観察によって検出可能な物質であれば特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。標識剤としては、例えば、ナノ粒子と抗原抗体反応を起こすことができる物質、ナノ粒子の表面に存在する化合物の特定の官能基や残基を標的とした物質等が例示される。また、標識剤は、例えば、白金、金、パラジウム、銀、銅、ニッケル、インジウム等の金属または金属コロイド、または放射性同位元素等を有していてもよく、あるいは蛍光物質であってもよい。また、標識剤と、銀増感剤または金増感剤とを併用することにより、顕微鏡観察による直接観察によってより感度よく検出可能とすることも考慮される。
標識剤は、一種を単独で用いてもよいし、異なる種類の標識剤を二種類以上用いてもよい。例えば、試料中に含まれるナノ粒子が未知である場合、または試料中にナノ粒子自体が含まれているか否かが不明である場合において、複数種の標識剤を用いて、いずれの標識剤との特異的な反応が起きているかを確認することによって、未知のナノ粒子の同定・定量、またはナノ粒子の存在を検出し、同定・定量することができる。
<電子顕微鏡観察用保護剤>
電子顕微鏡観察用保護剤は、ナノ粒子を薄膜で覆うための物質である。電子顕微鏡観察用保護剤は、プレートの表面に存在する試料(標識剤で標識されたナノ粒子を含む)の表面に塗布され、電子線やプラズマ等のエネルギー線を照射されることにより硬化し、ナノ粒子を覆う薄膜を形成する。
本発明において、電子顕微鏡観察用保護剤は、電子顕微鏡観察を行う真空下においても保水能力を有する。これにより、試料が含水状態の生物試料である場合には、当該試料に疑似的な生活環境または生存環境を与えることができる。
本発明において、「真空」とは、例えば10−1Pa以下、さらには10−2Pa〜10−8Pa、特に10−4Pa〜10−8Paの範囲を意味する。
電子顕微鏡観察用保護剤は、界面活性剤含有溶液、両親媒性化合物、油脂類、イオン液体およびオスミウムから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく考慮される。
前記界面活性剤含有溶液は、本発明者らによる先行発明における蒸発抑制用組成物に代わるものであり、水/ガスバリア性能(Surface Shielding Effect,SS効果)を発揮する溶液である。
界面活性剤含有溶液は、界面活性剤を主成分(基剤)としている。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、天然由来の界面活性剤、微生物由来の両親媒性化合物(バイオサーファクタント)などのように分子構造から大きく区別されている。工業、食品、医療品など幅広い分野で用いられているが、基本的にどのような界面活性剤を用いてもある一定のバリア性能は発現することができる。
上記界面活性剤のうち、陰イオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型に分類される。このうち、具体的には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルエトキシレート硫酸ナトリウムなどが挙げられ、中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
上記界面活性剤のうち、陽イオン性界面活性剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩型、アルキルアミン型、複素環アミン型に分類される。具体的には、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリピリジニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
上記界面活性剤のうち、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、N-メチルアルキルグルカミドなどが挙げられる。中でも、ドデシルアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ラウロイルジエタノールアマイドの他、TritonTMX(TritonTMX-100など)、Pluronic(R) (Pluronic(R) F-123、F-68など)、Tween (Tween 20、40、60、65、80、85など)、Brij(R)(Brij(R)35、58、98など)、Span (Span 20、40、60、80、83、85)の名前で市販されているものが好ましい。
上記界面活性剤のうち、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、3-(テトラデシルジメチルアミニオ)プロパン-1-スルホナートなどがあるが、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)などを用いることが好ましい。
上記界面活性剤のうち、天然由来の界面活性剤としては、例えば、レシチン、サポニンが好ましく、レシチンとして称される化合物のうち、具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールなどが好ましい。また、サポニンとしてはキラヤサポニンが好ましい。
上記界面活性剤のうち、微生物由来の両親媒性化合物(バイオサーファクタント)としては、ラムノリピド、ソフオロリピド、マンノシルエリストールリピッドなどを用いることが好ましい。
上記界面活性剤に例示したもの以外に、一般に公知のものとして使用されている界面活性剤のうち、特に化粧品類に用いられている界面活性剤としては、例えば、アーモンド油PEG-6、アシル(C12,14)アスパラギン酸Na、アシル(C12、14)アスパラギン酸TEA、アラキデス-20、ステアリルアルコール、アルキル(C11、13、15)硫酸ナトリウム、アルキル(C11,13,15)硫酸TEA、アルキル(C11,13,15)リン酸カリウム、アルキル(C12,13)硫酸DEA、アルキル(C12,13)硫酸ナトリウム、アルキル(C12,13)硫酸TEA、アルキル(C12,14,16)硫酸アンモニウム、アルキル(C12-14)オキシヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩、アルキル(C12-14)ジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキル(C12-14)硫酸TEA、アルキル(C12-15)硫酸TEA、アルキル(C14-18)スルホン酸ナトリウム、アルキル(C16,18)トリモニウムクロリド、アルキル(C28)トリモニウムクロリド、イソステアラミドDEA、イソステアリルアルコール、イソステアリルグリセリル、イソステアリルラウリルジモニウムクロリド、イソステアリン酸PEG-2、イソステアリン酸PEG-3、イソステアリン酸PEG-4、イソステアリン酸PEG-6、イソステアリン酸PEG-8、イソステアリン酸PEG-10、イソステアリン酸PEG-12、イソステアリン酸PEG-15グリセリル、イソステアリン酸PEG-20、イソステアリン酸PEG-20グリセリル、イソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-20ソルビタン、イソステアリン酸PEG-30、イソステアリン酸PEG-30グリセリル、イソステアリン酸PEG-40、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-58水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-60グリセリル、イソステアリン酸PG、イソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルベス-3、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-3、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-5、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアレス-2、イソステアレス-10、イソステアレス-15、イソステアレス-22、イソステアロイル加水分解コラーゲン、イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD、イソステアロイル乳酸ナトリウム、イソセテス-10、イソセテス-20、イソパルミチン酸オクチル、イソパルミチン酸ポリグリセリル-2、イソ酪酸酢酸スクロース、ウンデシレノイル加水分解コラーゲンカリウム、エチレンジアミンテトラキスヒドロキシイソプロピルジオレイン酸、エポキシエステル-1、エポキシエステル-2、エポキシエステル-3、エポキシエステル-4、エポキシエステル-5、エルカ酸グリセリル、オクタン酸PEG-4、ノノキシノール-14、オクチルドデセス-2、オクチルドデセス-5、オクチルドデセス-10、オクチルドデセス-30、オクテニルコハク酸デキストリンTEA、オクトキシノール-1、オクトキシノール-2エタンスルホン酸ナトリウム、オクトキシノール-10、オクトキシノール-25、オクトキシノール-70、オリーブ油PEG-6、オリゴコハク酸PEG-3-PPG-20、オレアミドDEA、オレアミンオキシド、オレイルベタイン、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸TEA、オレイン酸PEG-2、オレイン酸PEG-10、オレイン酸PEG-10グリセリル、オレイン酸PEG-15グリセリル、オレイン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-30グリセリル、オレイン酸PEG-36、オレイン酸PEG-40ソルビット、オレイン酸PEG-75、オレイン酸PEG-150、オレイン酸PG、オレイン酸スクロース、オレイン酸ヒドロキシ{ビス(ヒドロキシエチル)アミノ}プロピル、オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリギリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-10、オレオイル加水分解コラーゲン、オレオイルサルコシン、オレオイルメチルタウリン酸ナトリウム、オレス-2、オレス-3リン酸DEA、オレス-7リン酸ナトリウム、オレス-8リン酸ナトリウム、オレス-10、オレス-10リン酸、オレス-10リン酸DEA、オレス-20、オレス-20リン酸、オレス-30、オレス-50、オレフィン(C14-16)スルホン酸ナトリウム、カチオン化加水分解コムギタンパク-1、カチオン化加水分解コムギタンパク-3、カチオン化加水分解コンキオリン-2、カチオン化加水分解ダイズタンパク-1、カチオン化加水分解ダイズタンパク-2、カチオン化加水分解ダイズタンパク-3、カチオン化デキストラン-2、カプラミドDEA、牛脂脂肪酸グリセリル、キョウニン油PEG-6、クエン酸ジステアリル、クエン酸脂肪酸グリセリル、クオタニウム-14、クオタニウム-18、クオタニウム-18ヘクトライト、クオタニウム18ベントナイト、クオタニウム-22、クオタニウム-33、コーン油PEG-6、コーン油PEG-8、コカミド、コカミドDEA、コカミドMEA、コカミドプロピルベタイン、ココアミンオキシド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホジ酢酸二ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシル硫酸ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸ニナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、ココイルアラニンTEA、ココイルアルギニンエチルPCA、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココイル加水分解カゼインカリウム、ココイル加水分解ケラチンカリウム、ココイル加水分解酵母カリウム、ココイル加水分解酵母タンパクカリウム、ココイル加水分解コムギタンパクカリウム、ココイル加水分解コラーゲン、ココイル加水分解コラーゲンカリウム、ココイル加水分解コラーゲンナトリウム、ココイル加水分解コラーゲンTEA、ココイル加水分解ジャガイモタンパクカリウム、ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム、ココイル加水分解トウモロコシタンパクカリウム、ココイル加水分解バレイショタンパクカリウム、ココイルグリシンカリウム、ココイルグリシンTEA、ココイルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸TEA、ココイルサルコシン、ココイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンTEA、ココイルタウリンナトリウム、ココイルメチルアラニン、ココイルメチルアラニンナトリウム、ココイルメチルタウリンカリウム、ココイルメチルタウリンマグネシウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ココグリセリル硫酸ナトリウム、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、ココベタイン、コハク酸PEG-50水添ヒマシ油、コハク酸脂肪酸グリセリル、コレス-10、コレス-15、酢酸イソセテス-3、酢酸セテス-3、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸グリセリル、酢酸脂肪酸グリセリル、酢酸ステアリン酸スクロース、酢酸トリデセス-3、酢酸トリデセス-15、酢酸ブチル、酢酸モノステアリン酸グリセリル、酢酸ラネス-9、ジアセチル酒石酸脂肪酸グリセリル、ジアルキル(C12-15)ジモニウムクロリド、ジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリド、ジイソステアリン酸PEG-8、ジイソステアリン酸PG、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジオレイン酸PEG-4、ジオレイン酸PEG-10、ジオレイン酸PEG-32、ジオレイン酸PEG-75、ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース、ジオレイン酸PEG-150、ジオレイン酸PG、ジオレイン酸グリコール、ジオレイン酸ポリグリセリル-6、ジ牛脂アルキルジモニウム硫酸セルロース、ジココジモニウムクロリド、ジ酢酸ステアリン酸グリセリル、ジステアリルジモニウムクロリド、ジステアリン酸PEG-2、ジステアリン酸PEG-12、ジステアリン酸PEG-20メチルグルコース、ジステアリン酸PEG-120、ジステアリン酸PEG-250、ジステアリン酸PEG-トリメチロールプロパン、ジステアリン酸PG、ジステアリン酸PPG-20メチルグルコース、ジステアリン酸グリコール、ジステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸スクロース、ジステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジセチルジモニウムクロリド、ジセテアリルリン酸MEA、ジヒドロキシエチルステアリルベタイン、ジパルミチン酸PEG-3、ジヒドロキシエチルラウラミンオキシド、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解カゼイン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、ジヒドロコレス-15、脂肪酸(C8-22)ポリグリセリル-10、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールエチル、ジメチコンコポリオールブチル、ジメチルステアラミン、ジラウリン酸PEG-4、ジラウリン酸PEG-12、ジラウリン酸PEG-32、ジラウリン酸スクロース、ジラウレス−4リン酸、ジラウレス-10リン酸、ジラウロイルグルタミン酸マグネシウム、水酸化レシチン、水添ココグリセリル、水添ダイズ脂肪酸グリセリル、水添タロウアミドDEA、水添タロウグルタミン酸ニナトリウム、水添タロウグルタミン酸TEA、水添ラノリン、水添ラノリンアルコール、水添リゾレシチン、水添レシチン、ステアラミド、ステアラミドDEA、ステアラミドMEA、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミンオキシド、ステアラルコニウムクロリド、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ステアリルトリモニウムサッカリン、ステアリルトリモニウムブロミド、ステアリルベタイン、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸PEG-2、ステアリン酸PEG-6ソルビット、ステアリン酸PEG-10、ステアリン酸PEG-10グリセリル、ステアリン酸PEG-14、ステアリン酸PEG-20グリセリル、ステアリン酸PEG-23、ステアリン酸PEG-25、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸PEG-120グリセリル、ステアリン酸PEG-150、ステアリン酸PEG-200グリセリル、ステアリン酸PG、ステアリン酸TEA、ステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ステアレス-4、ステアリン酸ステアロイルジヒドロキシイソブチルアミド、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸/リンゴ酸グリセリル、ステアルジモニウムヒドロキシジプロピル加水分解ケラチン、ステアルジモニウムヒドロキシジプロピル加水分解コラーゲン、ステアルジモニウムヒドロキシジプロピル加水分解シルク、ステアルトリモニウムクロリド、ステアレス-2リン酸、ステアレス-3、ステアレス-10、ステアレス-16、ステアレス-50、ステアレス-80、ステアレス-100、ステアロイル加水分解コラーゲンカリウム、ステアロイル加水分解コラーゲンナトリウム、ステアロイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸ニナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ステアロイルコラミノホルミルメチルピリジウムクロリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、スルホコハク酸(C12-14)パレスニナトリウム、スルホコハク酸PEG-2オレアミドニナトリウム、スルホコハク酸PEG-4ココイルイソプロパノールアミドニナトリウム、スルホコハク酸PEG-5ラウラミドニナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸シトステレスー14-2ナトリウム、
スルホコハク酸ラウリルニナトリウム、スルホコハク酸ラウレスニナトリウム、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸グリセリル、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ジグリセリル、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸メチルグルコース、セチルジメチコンコポリオール、セチルピリジウムクロリド、セチル硫酸ナトリウム、セチルリン酸DEA、セチルリン酸カリウム、セテアリルアルコール、セテアリルグルコシド・セテアリルアルコール、セテアリル硫酸ナトリウム、セテアレス-10、セテアレス-15、セテアレス-22、セテアレス-34、セテアレス-55、セテアレス-60、セテアレス-60ミリスチルグリコール、セテアレス-100、セテス-8リン酸、セテス-10、セテス-10リン酸、セテス-12、セテス-24、セテス-45、セトリモニウムクロリド、セトリモニウムサッカリン、セトリモニウムプロミド、セトレス-10、セトレス-20、セトレス-25、タロウアミドMEA、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、デカステアリン酸ポリグリセリル-10、デシルグルコシド、テトラオクタン酸ジグリセロールソルビタン、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-40、テトラオレイン酸ソルベス-60、テトラステアリン酸ソルベス-60、ドデシルベンゼンスルホン酸TEA、トリPEG-8アルキル(C12-15)リン酸、トリ(イソステアリン酸PEG-3)トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-15水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-30グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-30水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-50グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸PEG-3ソルビット、トリステアリン酸PEG-140グリセリル、トリステアリン酸PEG-160ソルビタン、トリステアリン酸スクロース、トリステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ポリグリセリル-10トリデセス-三酢酸ナトリウム、トリデセス-六酢酸ナトリウム、トリデセス-9、トリデセス-10、トリデセス-11、トリデセス-20、トリデセス-21、トリヒドロキシステアリン、トリベヘン酸スクロース、トリラウリルアミン、トリラウレス-四リン酸、トリラウレス-四リン酸ナトリウム、乳酸脂肪酸グリセリル、ノニルノノキシノール-10、ノニルノノキシノール-100、ノノキシノール-3、ノノキシノール-4硫酸ナトリウム、ノノキシノール-6リン酸、ノノキシノール-6リン酸ナトリウム、ノノキシノール-10、ノノキシノール-10リン酸、ノノキシノール-23、ノノキシノール-50、ノノキシノール-120、パーフルオロアルキルPEGリン酸、パーフルオロアルキルリン酸DEA、パーム核脂肪酸アミドDEA、パーム核脂肪酸アミドエチルヒドロキシエチルアミノプロピオン酸ナトリウム、パーム核脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム脂肪酸グルタミン酸ナトリウム、パルミタミドMEA、パルミチン酸PEG-6、パルミチン酸PEG-18、パルミチン酸PEG-20、パルミチン酸スクロース、パルミチン酸ソルビタン、パルミトイルアスパラギン酸二TEA、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ピーナッツ油PEG-6、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解カゼイン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コラーゲン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解シルク、ヒドロキシラノリン、プロピオン酸PPG-2ミリスチル、ヘプタステアリン酸ポリグリセリル-10、ヘプタデシルヒドロキシエチルカルボキシラートメチルイミダゾリニウム、ベヘナミドプロピルPGジモニウムクロリド、ベヘナミンオキシド、ベヘネス-10、ベヘネス-30、ベヘン酸グリセリル、ベヘントリモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオクタン酸ジグリセロールソルビタン、ペンタオレイン酸PEG-40ソルビット、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-6、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸TEA、ポリオキシエチレンエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸TEA、ポリオキシプロピレンカルボキシアルキル(C14-18)ジグルコシド、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルリン酸、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオレイン酸スクロース、ポリグリセリル-2オレイル、ポリステアリン酸スクロース、酢酸セチル、酢酸ラノリンアルコール、ポリバーム脂肪酸スクロース、ポリラウリン酸スクロース、ポリリシノレイン酸ポリグセリル、ポリリノール酸スクロースポロキサマー181、ポロキサマー333、ポロキサミン304、ポロキサミン901、ポロキサミン1104、ポロキサミン1302、ポロキサミン1508、マルチトールヒドロキシアルキル(C12,14)、ミリスタミドDEA、ミリスタミンオキシド、ミリスタルコニウムクロリド、ミリスチルPGヒドロキシエチルデカナミド、ミリスチルベタイン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸PEG-8、ミリスチン酸PEG-20、ミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸スクロース、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ミレス-3、ミリストイル加水分解コラーゲン、ミリストイル加水分解コラーゲンカリウム、ミリストイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ミレス-3、ミレス-3硫酸ナトリウム、モノ酢酸モノステアリン酸グリセリル、ヤシ脂肪酸TEA、ヤシ脂肪酸グリセリル、ヤシ脂肪酸スクロース、ヤシ脂肪酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸リシン、ラウラミドDEA、ラウラミドMEA、ラウラミドプロピルベタイン、ラウラミノジ酢酸ナトリウム、ラウラミノプロピオン酸、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム、ラウラミンオキシド、ラウリミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルDEA、ラウリルイソキノリニウムサッカリン、ラウリルイソキノリニウムプロミド、ラウリルグルコシド、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルヒドロキシ酢酸アミド硫酸ナトリウム、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルピリジニウムクロリドラウリルベタイン、ラウリル硫酸DEA、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸MEA、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸TEAラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ニナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリン酸PEG-2、ラウリン酸PEG-4DEA、ラウリン酸PEG-6、ラウリン酸PEG-8、ラウリン酸PEG-8グリセリル、ラウリン酸PEG-9、ラウリン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12グリセリル、ラウリン酸PEG-23グリセリル、ラウリン酸PEG-32、ラウリン酸PEG-75、ラウリン酸PEG-150、ラウリン酸PEGソルビット、ラウリン酸PG、ラウリン酸TEA、ラウリン酸グリセリル、ラウリン酸スクロース、ラウリン酸ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸マルチトール、ラウルトリモニウムクロリド、ラウルトリモニウムプロミド、ラウレス-2-硫酸アンモニウム、ラウレス-3酢酸、ラウレス-3硫酸TEA、ラウレス-3硫酸アンモニウム、ラウレス-3リン酸、ラウレス-4リン酸、ラウレス-4リン酸ナトリム、ラウレス-4.5酢酸カリウム、ラウレス-5酢酸、ラウレス-5硫酸ナトリム、ラウレス-6酢酸、ラウレス-6酢酸ナトリム、ラウレス-7リン酸、ラウレス-9、ラウレス-10、ラウレス-10酢酸、ラウレス-10酢酸カリウム、ラウレス-16酢酸ナトリム、ラウレス-17酢酸ナトリウム、ラウレス-40、ラウレス硫酸TEA、ラウロアンホPG酢酸リン酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸、ラウロイル加水分解コラーゲンカリウム、ラウロイル加水分解コラーゲンナトリウム、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸TEA、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス-2、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルグルタミン酸ジコレステリル、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス-2、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス-5、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンTEA、ラウロイルトレオニンカリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンTEA、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラネス-10、ラネス-25、ラネス-40、ラネス-75、ラノリン脂肪酸PEG-4、ラノリン脂肪酸PEG-12、ラノリン脂肪酸アミドDEA、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸グリセリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、ラピリウムクロリド、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸グリセリル、リシノレイン酸スクロース、リシノレイン酸ポリオキシプロピレンソルビット、リシノレイン酸ポリグリセリル-6、リノール酸ラノリル、リノレアミドDEA、硫酸化ヒマシ油、リンゴ酸ラウラミド、ロジン加水分解コラーゲン、ロジン加水分解コラーゲンAMPDなどが挙げられる。
上記界面活性剤の他、フッ素系の界面活性剤を用いることもできる。具体的には、例えば、ヘプタデカフルオロ-1-オクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロ-1-オクタンスルホン酸リチウム、ペンタデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸水和物、ヘプタデカフルオロ-1-オクタンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
上記界面活性剤の他、例えば、N-長鎖アシルグルタミン酸塩、N-長鎖アシルアスパラギン酸塩、N-長鎖アシルグリシン塩、N-長鎖アシルアラニン塩、N-長鎖アシルスレオニン塩、N-長鎖アシルサルコシン塩などのN-長鎖アシル中性アミノ酸塩等のN-長鎖アシルアミノ酸塩、N-長鎖脂肪酸アシル-N-メチルタウリン塩、アルキルサルフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸系界面活性剤、アルキルフォスフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸などのアニオン界面活性剤、グリセリンエーテルおよびそのアルキレンオキシド付加物などのエーテル型界面活性剤、グリセリンエステルおよびそのアルキレンオキシド付加物などのエステル型界面活性剤、ソルビタンエステルおよびそのアルキレンオキシド付加物などのエーテルエステル型界面活性剤、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルキロールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン水添ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、グリセリンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、アシルアミノ酸ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型界面活性剤、アルキルグルコシド類、硬化ヒマシ油ピログルタミン酸ジエステルおよびそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸アルカノールアミドなどの含窒素型の非イオン性界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(C16-C22)、ジアルキルジメチルアンモニウムメトサルフェート塩などの脂肪族アミン塩、それらの4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩などの芳香族4級アンモニウム塩、脂肪酸アシルアルギニンエステル、N−長鎖アシルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩、アミドアミン類、ステアラミドプロピルジメチルアミングルタミン酸塩、ステアラミドプロピルジメチルアミン乳酸塩、ステアラミドプロピルジメチルアミンピロリドンカルボン酸塩、ベヘナミドプロピルジメチルアミングルタミン酸塩ベヘナミドプロピルジメチルアミン乳酸塩、ベヘナミドプロピルジメチルアミンピロリドンカルボン酸塩等のカチオン両親媒性化合物並びにアルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノプロピオネート、カルボキシベタインなどのベタイン型両親媒性化合物、N−長鎖アシルアルギニン、N−(3−アルキル(12,14)オキシ−2−ヒドロキシプロピル)アルギニン塩酸塩、アミノカルボン酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤などの両性界面活性剤などを用いることもできる。
また、界面活性剤含有溶液は、界面活性剤の他に金属化合物を含んでいても構わない。金属化合物としては、金属イオンを含むものであれば幅広く用いることができる。
上記金属化合物は、陽イオンと陰イオンからなる塩(単塩)であっても、二種類以上からなる塩(複塩)であってもよい。
上記金属化合物は、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、乳酸塩などの化合物であってもよい。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化リチウム、塩化ハフニウム、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化銅、塩化コバルト、塩化硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸一水素ナトリウム、乳酸カルシウムなどが挙げられる。
上記金属化合物は、金属酸化物であってもよい。金属アルコキシドはMORで示される化合物であり、金属(M)とアルコキシド(RO-)(Rは炭化水素)からなる。金属(M)として、具体的には、ケイ素、チタン、アルミニウム、ホウ素、ジルコニウム、ホウ素、バナジウム、タングステン、リン、ゲルマニウム、インジウム、ハフニウム、モリブデンなどが挙げられ、種々のアルコールから金属アルコキシドが得られる。これらの金属アルコキシドをそのまま用いてもよく、これらの金属アルコキシドを酸またはアルカリ存在下でゾルゲル反応を行った反応物を用いてもよい。金属アルコキシドとしては、単一成分を用いず、二種類以上のものを混合してもよい。
上記金属化合物は、金属錯体であってもよい。具体的には、エチレンジアミンニッケル錯体、テトラアンミンコバルト錯体などが挙げられる。
また、界面活性剤含有溶液は、糖類を含んでいても構わない。糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類とその誘導体を配合する。具体的には、単糖類として、グルコース、フルクトースなどが挙げられる。二糖類として、スクロース、トレハロースなどが挙げられる他、多糖類として、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、プルラン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、イヌリンなどを挙げることができ、特にプルランのような多糖類が好ましい。その他、カラメル、蜂蜜、ミツロウなどを用いてもよい。また、哺乳動物の涙、毛穴から分泌されるワックスエステル、スクアレン、トリグリセリド、脂肪酸などの皮脂、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、硫酸コレステロールなどの角質細胞間脂質、唾液や消化器から分泌される消化液、気道や消化器官を中心とする上皮細胞の膜表面に存在する膜型ムチンや分泌型ムチンなどを用いてもよい。また、節足動物などの無脊椎動物がクチクラ表面に分泌するワックス成分や水可溶性物質や脊椎動物の毛穴から分泌される油脂や水可溶性物質を用いてもよい。また、サメ、タラ、エイなどの肝臓にふくまれる肝油、クラゲ、ナマコなどの体液を用いてもよい。また、植物や菌類が分泌する天然分泌液を用いてもよく、植物由来では、ユーカリ油、はっか油、ひまし油など種々の植物の種子から採取できるオイル、松油、漆、サクラ、クヌギ、ヤナギなどの樹液を用いてもよい。原核生物が分泌するバイオフィルムを形成する初期分泌物やバイオフィルムそのものを用いてもよい。
また、界面活性剤含有溶液は、油脂類を含んでいても構わない。
油脂類としては、例えば、シリコンオイルなどが挙げられる。シリコンオイルは、生物試料の組織または細胞の水環境を保つ水分保持剤として機能し、これにより生きたままの生物試料の動的観察を達成する。すなわち、真空下においても組織や細胞の水が失われない、バリア性能を有する材料として用いることができる。
シリコンオイルとしては、例えば、25℃における粘度が1〜100,000mPa・sのものを使用できる。例えば、和光純薬工業「636−04001」、信越シリコーン「KF−54」、「KF−96」などが使用できる。
シリコンオイルを用いた界面活性剤含有溶液は、シリコンオイルを組成物全量に対して好ましくは10重量%以上含有し、それ以外の成分として、下記に例示したような成分を配合してもよい。
また、界面活性剤含有溶液は、イオン液体を含んでいても構わない。
イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、ピペリジニウム塩類、ピロリジニウム塩類、四級アンモニウム塩類、ホスホニウム類、スルホニウム類、ピラゾリウム類などが挙げられる。
イミダゾリウム塩類としては、例えば、1-アルキル-3-アルキルイミダゾリウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-オクチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリイウム、1-メチル-3-テトラデシルイミダゾリウム、1-ヘキサデシル-3-イミダゾリウム、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-エチルイミダゾリウム、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウム、1,3-ジアリルイミダゾリウム、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
1-アルキル-2,3-ジアルキルイミダゾリウム塩としては、例えば、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,-トリエチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジデシル-2-メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
ピリジニウム塩類としては、例えば、1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-エチル-3-メチルピリジニウム、1-メチル-4-メチルピリジニウム、1-プロピル-4-メチルピリジニウム、1-プロピル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-2-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-エチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウム、1-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムなどが挙げられる。
ピペリジニウム塩類としては、例えば、1-メチル-1-プロピルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1-(メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムなどが挙げられる。
ピロリジニウム塩類としては、例えば、1,1-ジメチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-(メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムなどが挙げられる。
四級アンモニウム塩類としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、エチル-ジメチル-プロピルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウムなどの他、コリン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、トリメチルアミンオキシドなどが挙げられる。
ホスホニウム類としては、例えば、テトラブチルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリエチルペンチルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、トリエチルテトラデシルホスホニウムなどが挙げられる。
スルホニウム類としては、例えば、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウムなどが挙げられる。
ピラゾリウム類としては、例えば、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムなどの他、グアニジニウム、N-(メトキシエチル)-N-メチルモルホリニウムなどが挙げられる。
上記、イオン液体と称される化合物のうち、アニオン部位は、次のようなものであってよい。すなわち、飽和/不飽和炭化水素基の他、芳香族炭化水素基、エーテル基、アルキル水酸基、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、アセテート、ラクテート、メトキシスルホネート、エトキシスルホネート、ジメトキシホスフェート、n-ブチルスルホネート、ジエトキシホスフェート、エチルスルホネート、n-ヘキシルホスフェート、ハイドロゲンホスフェート、チオシアネート、オクチルスルホネート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルサルフェート、トリシアノメタン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフラート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、エチルサルフェート、パーフルオロブタンスルホネート、ジシアンアミド、トリフルオロアセテート、ホルメート、リン酸二水素イオン(ジハイドロゲンホスフェート)、炭酸水素、メチルカルボネート、ジブチルホスフェート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[オキサレート(2-)-O,O’]ボレート、デカノエート、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィネート、ドデシルベンゼンスルホネート、p-トリエンスルホネート、ジエチルホスホネート、ベンゾエート、チオサリシネート、テトラクロロフェラート、テトラクロロアルミネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどであってもよい。
また、アニオン部位は、J.Am.Chem.Soc., 2005, 127, 2398-2399に示す方法でイオン交換して得られる任意のアミノ酸であってもよい。ここでいうアミノ酸はモノマーであっても、ジペプチド、オリゴペプチドであってもよい。
また、界面活性剤含有溶液は界面活性剤を主成分とし、あるいは界面活性剤と金属化合物または糖とを含み、あるいは油脂類を含み、あるいはイオン液体を含むが、これらの成分に加え、以下の項目に挙げるアミノ酸およびその誘導体、多価アルコール、ビタミン類およびその誘導体、脂肪酸およびその誘導体、高分子材料などを任意の割合で加えてもよい。
上記水/ガスバリア性能を与える界面活性剤含有溶液の組成分として、アミノ酸およびその誘導体を配合しても良い。アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどの単体、塩酸塩、二分子以上で結合しているもの、その高分子などが挙げられる。これらは1種単独であっても二種類以上の混合物であってもよい。さらに、これらの誘導体であってもよい。
上記水/ガスバリア性能を与える界面活性剤含有溶液の組成分として、多価アルコールおよびその誘導体を配合してもよい。水酸基を分子内にもち、低蒸気圧物質であるものが好ましい。具体的には、例えば、グリセリン、トリグリセリド、ポリレゾルシノール、ポリフェノール、タンニン酸、ウルシオールなどが挙げられ、特にタンニン酸を用いることが好ましい。
上記水/ガスバリア性能を与える界面活性剤含有溶液の組成分として、ビタミン類およびその誘導体と関連物質を配合してもよい。具体的には、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、あるいはこれら誘導体が挙げられる。中でも、レチナール、β-カロテン、ビタミンB3(ニコチン酸、ニコチンアミド)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)、ビタミンB9(葉酸)が好ましい。この他、ビタミン誘導体としては、D-アラボアスコルビン酸、セトフラビンT、4-デオキシピリドキシン塩酸塩、ジベンゾイルチアミン、2,6-ジ-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド二ナトリウム水和物、(+)-5,6-O-イソプロピリデン-L-アスコルビン酸、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、プロフラビンヘミ硫酸塩水和物、ピリドキサール塩酸塩、5-リン酸ピリドキサール一水和物、ピリドキシン3,4-ジパルミタート、イソアスコルビン酸ナトリウム一水和物、チアミンジスルフィド水和物、チアミンジスルフィド硝酸塩などが挙げられる。ビタミン関連物質としては、塩化コリン、臭化コリン、クエン酸二水素コリン、重酒石酸コリンコエンザイムQ10、補酵素Qo、メチオニンメチルスルホニルクロリド、イノシトール類などが挙げられる。
高分子材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、テフロン(登録商標)(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、チタンイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
上記水/ガスバリア性能を与える界面活性剤含有溶液の組成分として、金属化合物、糖など、上記に例示した成分以外に、下記の成分を配合してもよい。
配位化合物:クラウンエーテル、シクロデキストリン、レゾルシン環状四量体、カリックスアレーン、デンドリマーなど。
脂肪酸とその誘導体:リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレイン酸など。
糖と脂肪酸の誘導体:ヒアルロン酸、セラミド、両親媒性化合物、コラーゲン、アミノ酸、精油、ワセリンなど。
ゲル化剤:Poly(pyridinium-1,4-diyliminocarbonyl-1,4-phenylenemethylene chlorideなど。
色素:クロロフィル、カロテノイド(リコペン)、フィコビリン、メラニンなどの他、パプリカ色素、マラカイトグリーンなど。
導電性ポリマー:ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの他、ナフィオン(登録商標)など。
ナノクレイ:Nanoclay Nanomer(R) Laponiteの名前で商品化されているものやモンモリロナイトなど。
質量分析用試薬で主にMALDI法に用いられるマトリックス素材:3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸、シナピン酸、エスクレチン、4-ヒドロキシアゾベンゼン-2'-カルボン酸、3-ヒドロキシ-2-ピリジンカルボン酸、ニコチン酸、2',4',6'-トリヒドロキシアセトフェノン、α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸など。
界面活性剤含有溶液は、固体状態や液状であってよいが、真空下において試料組織の水環境を保持するために、液状で粘性の高い状態のものが好ましい。また、固体状態のものは、使用する際は液状態にして用いることができる。
界面活性剤含有溶液は、例えば、上記した各成分を水、有機溶剤などに溶かして、試料に直接コートなどすると、試料の表面にごく薄い薄膜を形成することができる。
界面活性剤含有溶液において、界面活性剤と、金属化合物および糖との配合割合は、特に限定されないが、例えば次のような組成が好ましいものとして例示される。
(1)界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム):金属化合物(エチレンジアミンニッケル錯体)=0.005:0.001〜0.05〜0.01
(2)界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム):金属化合物(エチレンジアミンニッケル錯体)=0.005:0.0001〜0.05〜0.001
(3)界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム):金属化合物(テトラアンミンコバルト錯体)=0.005:0.001〜0.05〜0.01
(4)界面活性剤(Tween 20)/糖(トレハロース)=3/1〜20/2
(5)界面活性剤(Tween 20)/糖(プルラン)=3/0.2〜20/2
(6)界面活性剤(Tween 20/糖(イヌリン)=3/0.1〜20/7
なお、電子顕微鏡観察用保護剤には、糖類および電解質の組み合わせのほか、例えば、電子顕微鏡観察用保護剤と糖鎖と電解可能な官能基とを有する高分子化合物を用いてもよい。すなわち、電子顕微鏡観察用保護剤、糖類および電解質は、各々別個の物質であってもよく、また、一つの物質中にこれらの構成要素またはそれと同等の機能を有する分子構造を備える物質であってもよい。
上記糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類とそれらの誘導体等が例示される。具体的には、単糖類として、グルコース、フルクトースなどが挙げられる。二糖類として、スクロース、トレハロースなどが挙げられる他、多糖類として、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、プルラン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、イヌリンなどを挙げることができる。特にグルコースのような単糖類が好ましい。その他、カラメル、蜂蜜、ミツロウなどを用いてもよい。また、哺乳動物の涙、毛穴から分泌されるワックスエステル、スクアレン、トリグリセリド、脂肪酸などの皮脂、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、硫酸コレステロールなどの角質細胞間脂質、唾液や消化器から分泌される消化液、気道や消化器官を中心とする上皮細胞の膜表面に存在する膜型ムチンや分泌型ムチンなどを用いてもよい。また、節足動物などの無脊椎動物がクチクラ表面に分泌するワックス成分や水可溶性物質や脊椎動物の毛穴から分泌される油脂や水可溶性物質を用いてもよい。また、サメ、タラ、エイなどの肝臓にふくまれる肝油、クラゲ、ナマコなどの体液を用いてもよい。また、植物や菌類が分泌する天然分泌液を用いてもよく、植物由来では、ユーカリ油、はっか油、ひまし油など種々の植物の種子から採取できるオイル、松油、漆、サクラ、クヌギ、ヤナギなどの樹液を用いてもよい。原核生物が分泌するバイオフィルムを形成する初期分泌物やバイオフィルムそのものを用いてもよい。
上記電解質としては、金属化合物、金属錯体、無機塩、有機塩、酸塩基等が例示される。
金属化合物としては、金属イオンを含むものであれば幅広く用いることができる。
上記金属化合物は、陽イオンと陰イオンからなる塩(単塩)であっても、二種類以上からなる塩(複塩)であってもよい。
上記金属化合物は、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、乳酸塩などの化合物であってもよい。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化リチウム、塩化ハフニウム、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化銅、塩化コバルト、塩化硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸一水素ナトリウム、乳酸カルシウムなどが挙げられる。
上記金属化合物は、金属酸化物であってもよい。金属アルコキシドはMORで示される化合物であり、金属(M)とアルコキシド(RO-)(Rは炭化水素)からなる。金属(M)として、具体的には、ケイ素、チタン、アルミニウム、ホウ素、ジルコニウム、ホウ素、バナジウム、タングステン、リン、ゲルマニウム、インジウム、ハフニウム、モリブデンなどが挙げられ、種々のアルコールから金属アルコキシドが得られる。これらの金属アルコキシドをそのまま用いてもよく、これらの金属アルコキシドを酸またはアルカリ存在下でゾルゲル反応を行った反応物を用いてもよい。金属アルコキシドとしては、単一成分を用いず、二種類以上のものを混合してもよい。
上記金属化合物は、金属錯体であってもよい。具体的には、エチレンジアミンニッケル錯体、テトラアンミンコバルト錯体などが挙げられる。
上記酸塩基は、具体的には、例えば、塩酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸等が例示され、特にクエン酸を用いることが好ましい。
また、上記電解質としては、市販のスポーツドリンク粉末や粉末のリンガー試薬等を使用することもできる。特に、市販のスポーツドリンク粉末は、糖類を含んでいるため、グリセリン等に溶解するだけで、電子顕微鏡観察用保護剤を調製することができる。
また、電子顕微鏡観察用保護剤として、オスミウムも好適に用いることができる。オスミウムとしては、通常の電子顕微鏡観察における導電染色に用いられる、四酸化オスミウム等が好適に用いられる。電子顕微鏡観察用保護剤として、オスミウムを用いる際には、スパッター等を用いて試料に塗布することができる。
電子顕微鏡観察用保護剤の塗布は、塗布に限らず、浸漬、滴下等各種の方法を採用しても構わない。さらに使用に際しては、試料の特性に応じて原液を希釈して用いることがある。例えば、試料特性として、構造の安定性・気密性に優れているウイルスやウイロイド等には、電子顕微鏡観察用保護剤を10倍から10,000倍の範囲で希釈して使用することが好ましい。特に、電子顕微鏡観察用保護剤を薄く塗布した方が、電子顕微鏡により微細構造およびその変化を解析する上で有効であることから、100倍程度に希釈したものを用いることが好ましく考慮される。ただし、電子顕微鏡観察用保護剤を原液のまま利用する場合、必ずしも微細構造観察には不適というわけではない。あくまで試料特性を鑑み、試料ごとに保護効果を生み出す最適希釈率で電子顕微鏡観察用保護剤を使用することにより、含水状態を維持したまま継時的かつ高分解能・高解像度で試料を電子顕微鏡観察するための最も良い条件が得られる。
このような電子顕微鏡観察用保護剤の希釈には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールや、リンガー液、生理食塩水、種々の緩衝液等を用いることが例示されるが、アルコールを用いることが特に好ましく考慮される。なお、アルコールは、原液での使用よりも水で適宜希釈した含水アルコール溶液として用いることが好ましい。ウイルスの観察には、電子顕微鏡観察用保護剤を、アルコールにより100倍程度に希釈することが特に好ましく考慮される。
電子顕微鏡観察用保護剤において、糖類および電解質との配合割合は、特に限定されないが、例えば次のような組成が好ましいものとして例示される。なお、これらの組成の電子顕微鏡観察用保護剤を原液とし、試料の特性等に応じて希釈してもよい。また、本発明の電子顕微鏡観察用保護剤の組成(例えば、基材となるグリセリンと、糖類および電解質との配合割合)は、試料に含まれる物質(有機物、無機物など)の種類や含有量等を考慮して、適宜調整することができる。
(1)グリセリン:水:糖類(グルコース):電解質(塩化ナトリウム)=20:10:0.7:0.03〜20:10:0.4:0.01
(2)グリセリン:糖類(グルコース):電解質(塩化ナトリウム)=20:0.7:0.03〜20:0.4:0.01
(3)グリセリン:水:糖類(グルコース):電解質(リン酸一水素ナトリウム)=20:10:0.7:0.03〜20:10:0.4:0.01
(4)グリセリン:糖類(グルコース):電解質(リン酸一水素ナトリウム)=20:0.7:0.03〜20:0.4:0.01
(5)グリセリン:(水):糖類(グルコース):電解質(クエン酸)=20:10:0.7:0.03〜20:10:0.4:0.01
(6)グリセリン:糖類(グルコース):電解質(クエン酸)=20:0.7:0.03〜20:0.4:0.01
(7)グリセリン:(水):糖類(グルコース):電解質(乳酸カルシウム)=20:10:1:0.03〜20:10:0.4:0.01
(8)グリセリン:糖類(グルコース):電解質(乳酸カルシウム)=20:1:0.03〜20:0.4:0.01
なお、電子顕微鏡観察用保護剤は水を含有したものの方が、調製が容易であり、試料に塗布しやすく好ましい。
また、上記配合割合(3)と(4)では、電解質成分としてリン酸二水素ナトリウムを用いてもよい。
グリセリン等を基材とする電子顕微鏡観察用保護剤は、それ自身導電性が乏しい化合物であるが、塩化ナトリウム等の電解質を添加することによって、導電性を付与することができる。これにより、低倍率ならばSEM画像を得ることができるようになり、本発明者らによる先行発明で用いられているイオン液体と同等の機能を備えるようになると考えられる。また、電子顕微鏡観察用保護剤それ自体が保水性を備えているものの、糖類を添加することで相乗効果が生じ、より保水性が高まると考えられる。このような高い保水性と導電性を兼ね備えた電子顕微鏡観察用保護剤によって、含水状態で試料中のナノ粒子の電子顕微鏡観察、ひいてはその同定や定量が可能になると考えられる。
また、試料特性として、例えば、対象となるナノ粒子であるウイルスに罹患、感染しているヒトの組織や血液、細胞等の含水状態の生物試料中に、電子顕微鏡観察用保護剤を構成する成分と同等の作用効果(生存環境の付与、保水性の付与、導電性の付与等)を発揮する物質が存在する場合には、上記に例示した組成は、電子顕微鏡観察用保護剤を適用した後の試料の表面において、上記に例示した組成を満たした状態となることを含んでおり、そのような状態とするために適用された組成物は、電子顕微鏡観察用保護剤に含まれる。
電子顕微鏡観察用保護剤は、固体状態や液状であってよいが、真空下において試料組織の水環境を保持するために、液状で粘性の高い状態のものが好ましい。また、固体状態のものは、使用する際は液状にして用いることができる。
電子顕微鏡観察用保護剤は、試料に塗布した後、余分な液をキムワイプのような柔らかい布状の紙、ろ紙などで吸い取ることが好ましい。
このようにしてプレートの表面に存在する試料の表面に塗布された電子顕微鏡観察用保護剤に、電子線またはプラズマ等のエネルギー線を照射すると、含水状態の試料の表面に薄膜が形成され、この薄膜により含水状態の試料中のナノ粒子が被覆される。このように薄膜で覆われた含水状態の試料(および標識剤で標識されたナノ粒子)の電子顕微鏡像を表示装置に表示することによって、試料中に存在するナノ粒子をそのままの形状で観察することができる。
前記薄膜は、電子顕微鏡の試料室内において試料観察用の電子線を含水状態の試料に照射することによって、試料の表面に形成される。
あるいは、電子顕微鏡による試料観察前に予め、電子顕微鏡の試料観察用の電子線とは別途の電子線またはプラズマを試料に照射することによって、試料の表面に薄膜が形成される。
照射条件は、使用する電子顕微鏡観察用保護剤等の組成に応じて適宜に選択されるため、特に限定されないが、一例としては、従来の前処理をせずに電子顕微鏡観察用保護剤を塗布した含水状態の試料に、SEMの電子ビーム(例えば5.0kV程度)を試料室内で60分間照射することによって、高真空(例えば10-4〜10-7Pa)下において試料のSEM観察、例えば通常のFE-SEMでのナノ粒子の同定または定量を可能にする。
また、別の一例では、従来の前処理をせずに電子顕微鏡観察用保護剤を塗布した含水状態の試料に予め3分間程度プラズマを照射することによって、高真空下での試料のSEM観察やTEM観察に基づくナノ粒子の同定および定量が可能になる。
このような電子線やプラズマ等のエネルギー線の照射によって、含水状態の試料の表面に形成される薄膜の厚さは、例えば、1nm〜1000nmの範囲にすることができる。
プラズマの照射による重合は、例えば、従来のイオンスパッタリング装置などを用いて、圧力10-3〜10-5Pa、温度-20〜+80℃、加速電圧1〜10kV DCの条件で行うことが例示される。あるいは、従来のプラズマ重合で用いられているような反応管のような装置や方法で行うことも例示される。
また、一部のウイルス等のナノ粒子については、プラズマの照射によって当該ナノ粒子の萎縮や変形等が認められることがあるため、電子線の照射によって前記薄膜を形成することが好ましい。
本発明の検出キットを用いることにより、含水状態の試料の表面を薄膜で被覆することができ、試料中に存在するナノ粒子を、走査型電子顕微鏡下で帯電(チャージアップ)することなく直接観察し、ナノ粒子を同定または定量することが可能となる。
すなわち、本発明の検出キットによるナノ粒子の同定・定量は、用いた標識剤と特異的に反応を起こし、結合したナノ粒子を電子顕微鏡下で直接観察することによって行うことができる。
また、本発明の検出キットによるナノ粒子の同定は、例えば、複数種の標識剤を用いて、それらの標識剤のうち、いずれの標識剤とナノ粒子とが特異的に反応を起こし、結合しているかを電子顕微鏡下で直接観察することによって行うことができる。
また、本発明の検出キットによるナノ粒子の定量は、例えば、複数種の標識剤を用いて、それらの標識剤のうち、いずれの標識剤とナノ粒子とが特異的に反応を起こし、結合しているかを電子顕微鏡下で直接観察し、計数することによって行うことができる。
<電荷調整剤>
本実施形態に係る検出キットは、プレートの表面の電荷および/または前記試料中のナノ粒子の表面の電荷を調整するための電荷調整剤をさらに具備していてもよい。
電荷調整剤は、例えば、本来ナノ粒子が有している電荷や試料中に分散しているナノ粒子のゼータ電位の性質等に応じて、プレートの表面の電荷の調整ために、プレートの表面に塗布され得る。
また、電荷調整剤は、例えば、ナノ粒子の表面の電荷を調整する物質であってもよい。この場合、電荷調整剤は、例えば、任意の溶媒に溶解もしくは懸濁された液体状の試料中に添加され、試料と混和されて、試料中のナノ粒子の表面をコーティングすることにより、ナノ粒子の表面の電荷を調整する。
電荷調整剤としては、例えば、プラス電荷を有する化合物、マイナス電荷を有する化合物等が例示される。
プレートの表面に塗布されるかまたは試料中に添加される、プラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。
プレートの表面に塗布されるかまたは試料中に添加される、マイナス電荷を有する化合物としては、例えば、アルブミン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヘパリン等が例示される。
電荷調整剤を試料中に添加する場合の濃度としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、液体状の試料に対して電荷調整剤の最終濃度が、0.05μg/ml〜1000μg/ml、0.5μg/ml〜200μg/ml、1.0μg/ml〜150μg/ml、または10μg/ml〜100μg/mlとなるように電荷調整剤を添加し、混和することができる。
このようにしてプレートの表面の電荷またはナノ粒子の表面の電荷が調整されることにより、ナノ粒子が、その表面の電荷と相反する電荷にチャージされているプレートにより効率的に吸着固定されるので、元々の試料中におけるナノ粒子の数や濃度が低かったとしても、ナノ粒子が濃縮され、ナノ粒子の同定や定量をより容易にすることが可能となる。
<試料>
なお、本発明の検出キットに適用される試料としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。試料としては、例えば、ヒトの尿、咽頭塗付液、便、血液、体液および細胞破砕物からなる群のうちの少なくとも1つであってもよい。また、試料は、ヒト由来の試料に限定されることはなく、各種脊椎動物、無脊椎動物由来の試料についても適用可能である。さらには、植物由来の試料であってもよい。ヒトの便や細胞破砕物を試料として用いる場合には、予め適当な孔径を有する濾紙やメンブランフィルターを用いて、ナノ粒子以外の夾雑物を除去しておくことが好ましく考慮される。
<例示的実施形態の説明>
次に、本発明の検出キットの例示的な実施形態として、ナノ粒子がウイルスである場合を例にして説明する。
従来より、インフルエンザ、エボラ出血熱等のウイルス感染症は人類にとって大きな脅威である。近年、グローバル化や地球温暖化に伴い、デング熱やジカウイルス感染症等の主に熱帯・亜熱帯地域で流行の見られていたウイルス感染症への罹患が、我が国においても報告されている。また、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスや、新型鳥インフルエンザウイルスなど、ヒト以外の動物を宿主とするウイルスが変異して、ヒトにウイルス性疾患を引き起こす新興感染も確認されている。このようなウイルス感染症には、常にパンデミックの危険性があるため、より迅速かつ正確なウイルスの同定および定量技術の確立が求められている。
このような背景から、これまでにウイルスの検出にともなうウイルスの同定方法や定量方法について様々な手法が採用され、またその改善、工夫が試みられている。例えば、ウイルスの同定については、症状の観察や、ウイルス粒子の形態の顕微鏡観察により、既知のウイルスデータと対比して診断することが一般的であったが、近年ではDNA型の判別による同定が進められてきている。
しかしながら、症状の対比は経験則による不確定さが避けられなかった、また、顕微鏡観察においては、電子顕微鏡によるより高精度のウイルス粒子観察ができるものの、生きたままの活動しているウイルス粒子の確認は難しく、しかもその準備、観察、判定には多大の労力と時間を必要とするという問題があった。
また、従来のウイルス定量法としては、プラークアッセイ法、定量PCR法、ELISA法およびフローサイトメトリー等が利用されている。
しかしながら、これら従来の技術においては、いずれも問題があった。例えば、プラークアッセイ法は、準備にかかる時間や再現性の乏しさが問題とされる。
定量PCRは、非常に有効なウイルス定量法であるが、ウイルスDNAを抽出する工程におけるDNAの損失が不可避であることが課題とされている。また、定量PCRによるウイルス定量は、試料溶液中に含まれる全てのウイルスゲノム量を測定するため、実際のウイルス粒子の数については推定の域を超えることができなかった。
ELISA法では、ウイルス試料液をマイクロプレート等の固相に固定する際に、標的ウイルス由来のタンパク質等の夾雑物が多量に存在する場合、それらの夾雑物の影響を受けて定量性が悪くなる恐れがある。また、標的ウイルスと特異的に結合する抗体がなければ、ELISA法を行うことは実質的に不可能である。
フローサイトメトリー法は、定量性が高く、測定に要する時間も数時間と比較的短時間で結果が得られるものの、フローサイトメーターの設備が必要であり、ウイルス試料の調製の労力も大きかった。
これらの従来のウイルス定量方法は、いずれもウイルス粒子を間接的に測定する方法であり、必ずしも定量性や簡便さ等の点において満足のゆくものではなかった。このため、ウイルス粒子を定量的に直接測定することが理想であるが、その一方で、生物試料の直接測定法であるTEM、クライオ電子顕微鏡を用いたウイルス定量法には定量性に技術的な困難があった。
本発明は、上記のような従来の課題を解決するものであり、簡便でありながら迅速かつ安全に、電子顕微鏡による直接観察で、試料中のウイルスの同定・定量を可能にする。
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るウイルスの検出キットの第1の態様における概要断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るウイルスの検出キット1の第1の態様では、表面がマイナス電荷にチャージされているプレート2に、ウイルス試料である試料3が配置されている。試料3は、電荷調整剤としてプラス電荷を有する化合物が添加され、混和されており、試料3中のウイルス粒子3aはプラス電荷にチャージしている。また、ウイルス粒子3aは、標識剤4によって特異的に標識されている。また、試料3の表面は、電子顕微鏡観察用保護剤5によって形成された薄膜6で覆われている。このようにして、検出キット1は、電子顕微鏡による直接観察での試料3中のウイルス粒子3aの同定または定量を可能としている。
プレート2は、板状体であり、その表面にマイナス電荷を有する化合物が塗布されているか、または表面にプラズマ等のエネルギー線が照射されることによって、表面がマイナス電荷にチャージされている。
このような表面がマイナス電荷にチャージされているプレート2の表面には、本来マイナス電荷にチャージしているウイルス試料3中のウイルス粒子3aの表面をプラス電荷にチャージさせることにより、ウイルス試料3を電気的に吸着固定させることができる。
ウイルス試料3中のウイルス粒子3aをプラスにチャージさせる方法としては、例えば、ウイルス試料3に電荷調整剤としてプラス電荷を有する化合物を添加して、ウイルス粒子3aの表面を前記化合物によりコーティングする方法等が例示される。
このようなプラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。中でも、多価第四級アミン高分子化合物の一つであるポリブレンが好適に用いられる。ポリブレンは、マイナス電荷にチャージしているガラス製のプレート2の表面と、本来マイナス電荷にチャージしているウイルス粒子3aの表面との間の糊の役割を果たすことができる。
ウイルス試料3中のウイルス粒子3aにポリブレン処理する方法としては、例えば、液体状のウイルス試料3にポリブレンの最終濃度が、例えば、0.5μg/ml〜200μg/mlとなるようにポリブレンを添加し、混和する方法等が例示される。
このようにして、ウイルス粒子3a表面の電荷と相反する電荷を表面にチャージさせたプレート2に、ウイルス試料3中のウイルス粒子3aを吸着させることにより、元々のウイルス試料中におけるウイルス粒子数、ウイルス濃度が低かったとしても、ウイルス粒子を濃縮して、ウイルス種の同定や定量を容易にすることが可能となる。
ウイルス試料3としては、ヒトの尿、咽頭塗付液、便、血液、体液および細胞破砕物からなる群のうちの少なくとも1つであることが好ましい。また、ウイルス試料3は、ヒト由来の試料に限定されることはなく、各種脊椎動物、無脊椎動物由来の試料についても適用可能である。さらには、植物由来の試料であっても構わない。ヒトの便や細胞破砕物をウイルス試料3として用いる場合には、予め適当な孔径を有する濾紙やメンブランフィルターを用いて、ウイルス粒子3a以外の夾雑物を除去しておくことが好ましく考慮される。
また、あらかじめ宿主細胞において増殖させたウイルスを回収しておくことも好ましく考慮される。ウイルスの回収方法としては、宿主細胞にウイルス粒子を感染させ、培養上清中に存在するウイルス粒子を回収したり、ウイルスに感染した細胞を緩衝液中で磨砕し、得られたウイルス感染細胞の磨砕液をフィルターろ過、ショ糖密度勾配法、超遠心処理するなど公知の方法を好適に用いることが可能である。また、これらの方法は、単独または複数を組み合わせることができる。
ウイルス試料3中のウイルスとして、上記のようなウイルスやウイロイドを用いる場合、結晶状のウイルス粒子を観察することができる。また、ウイルス粒子と宿主細胞とを共存状態で電子顕微鏡観察に供し、生きた宿主細胞へのウイルスの感染過程や増殖過程を経時的につぶさに観察することも可能である。
上記のウイルス試料3中のウイルスは、生存状態であってもよいし、従来の電子顕微鏡観察における一次化学固定処理をしたものであってもよい。ヒトに対する病原性を有するウイルスの多くは、化学固定処理によって感染性を失うため、病原性ウイルスの拡散や二次感染等を未然に防止することが可能である。この場合の化学固定処理に用いられ試薬としては、例えば、カコジル酸緩衝液、グルタールアルデヒド、パラホルムアルデヒド、エタノール、メタノール、アセトン等が例示される。
本実施形態に係るウイルスの検出キット1は、上記のようにして、プレート2の表面において濃縮されたウイルス試料3中のウイルス粒子3aと抗原抗体反応を起こすことができる標識剤として、金属標識ウイルス特異的抗体4を具備している。
金属標識ウイルス特異的抗体4としては、ウイルス試料3中のウイルスと特異的に抗原抗体反応を起こす抗体であれば特に制限されることはなく、例えば、全長抗体、部分抗体、抗体断片および改変抗体等を用いることができる。
全長抗体とは、可変領域および定常領域を各々含む重鎖および軽鎖を含む抗体(例えば、2つのFab部分およびFc部分を含む抗体等が例示される)をいう。
抗体断片は、全長抗体の一部であり、上記全長抗体に由来する抗体断片であってもよい。例えば、F(ab’)2、Fab’、 Fab、Fv等が例示される。
金属標識ウイルス特異的抗体4はまた、単鎖抗体等の改変抗体であってもよい。
単鎖抗体等の改変抗体としては、例えば、抗HBV抗体、抗HCV抗体、抗HTLV−I抗体等が例示される。
金属標識ウイルス特異的抗体4としては、例えば、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。
また、金属標識ウイルス特異的抗体4は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等の免疫グロブリンのいずれのアイソタイプであってもよい。
さらに、金属標識ウイルス特異的抗体4としては、前記ウイルスの中和抗体を用いることが好ましく考慮される。
中和抗体は、金属標識ウイルス特異的抗体4の中でも、抗原抗体反応によってウイルスと結合した場合に、ウイルスの病原性を中和して、無毒化することができる抗体である。このような中和抗体を金属標識ウイルス特異的抗体4として用いることにより、本実施形態に係るウイルスの検出キット1を用いてウイルスを同定した場合に、そのウイルスの病原性を中和して、無毒化することができる中和抗体のタイプについても同時に特定することが可能である。
このような金属標識ウイルス特異的抗体4は、抗体の力価を保つ観点から、抗体溶液をマイクロチューブ等の保存容器に小分けして、冷蔵ないし冷凍保存されていることが好ましい。
プレート2の表面に滴下する金属標識ウイルス特異的抗体4は、単独で用いてもよいし、異なる種類の抗体を二種類以上用いてもよい。例えば、HCVの感染を診断することを目的としたキットの場合、HCVの非構造抗原タンパク質の抗原に異なる部位で結合する複数種の抗体を混合したものをプレート2の表面に滴下することができる。
また、何らかのウイルスに感染し、ウイルス性疾患を発症した患者の血清や尿、便由来のウイルス試料3について、ウイルス種を同定し、診断することを目的として本実施形態に係るウイルスの検出キット1を用いる場合には、あらかじめ、患者の症状に応じたウイルス種に対する金属標識ウイルス特異的抗体4を用意しておくことが好ましい。例えば、高熱と下痢を引き起こすウイルスに対する金属標識ウイルス特異的抗体4のセット、皮膚に湿疹を生じるウイルスに対する金属標識ウイルス特異的抗体4のセットなどが例示される。
さらに、地球上の特定地域の風土病とも言えるウイルス性疾患の原因ウイルスに対する金属標識ウイルス特異的抗体4を用意しておくことも好ましい。例えば、東南アジアで流行しているウイルス性疾患の原因ウイルスに対する金属標識ウイルス特異的抗体4のセット、アフリカで流行しているウイルス性疾患の原因ウイルスに対する金属標識ウイルス特異的抗体4のセット等が例示される。
また、金属標識ウイルス特異的抗体4を一次抗体とし、この金属標識ウイルス特異的抗体4を抗原とする二次抗体を反応させることにより、ウイルス試料3を免疫染色することも可能である。この場合、前記二次抗体を銀増感または金増感によってより感度よく検出することも考慮される。さらにまた、一次抗体である金属標識ウイルス特異的抗体4に対し、直接金粒子を付着させることも可能である。この場合、二次抗体を用いることなく、電子顕微鏡下で免疫染色像を観察することができるため、免疫染色に要する時間を大幅に短縮させることも可能である。また、標識剤4として、ウイルス特異的抗体を一次抗体とし、このウイルス特異的抗体を抗原とするビオチン標識二次抗体を反応させることも可能である。そして、このビオチン標識二次抗体に金、銀等の金属粒子が付着したストレプトアビジンを反応させることによって、電子顕微鏡による直接観察で、ウイルス試料中のウイルス粒子3aが同定・定量される。この場合、前記ビオチン標識二次抗体を銀増感または金増感によってより感度よく検出することも考慮される。
ここで、本実施形態に係るウイルスの検出キット1の第1の態様においては、プレート2として、平板状の2枚のガラス板を用いて、ウイルス試料3を2枚のガラス板間に挟み込み、マイナス電荷にチャージされたガラス板の表面にウイルス粒子3aを吸着固定させる態様も取りうる。この場合、前記平板状の2枚のガラス板は、同一形状であってもよいし、異なる形状のものを用いてもよいが、特に、同一形状、同一面積であることが好ましく考慮される。前記2枚のガラス板が同一形状、同一面積であれば、ウイルス試料3の溶液がほぼ均一に引き延ばされ、表面張力による前記溶液表面の盛り上がりが抑制される。これにより、ウイルス粒子3aの観察、計数の効率が向上する。
本実施形態に係るウイルスの検出キット1の第2の態様では、図2に示すように、プレート2が、複数のウェル21aを有し、これらのウェル底部21bの表面がマイナス電荷にチャージしている第1プレート21と、この第1プレート21の複数のウェル21aに挿入される複数の突起部22aを有する第2プレート22からなることが好ましく考慮される。
このように、2枚のプレートを有するウイルスの検出キット1では、図3に示すように、第1プレート21と第2プレート22との間に、ウイルス試料3、金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5を挟み込むことにより、ウイルス試料3が2枚のプレート間で均一に伸ばされる。このため、視野の深さ方向に複数のウイルス粒子が重なることが軽減され、ウイルスの定量時にピントを調節して焦点深度を変更する必要がなくなる。
図4に示すように、本実施形態に係るウイルスの検出キット1の第3の態様としては、プレート2のマイナス電荷にチャージされている表面と対向する面がマイナス電荷にチャージされている複数のプレートを具備することが好ましく考慮される。
この場合、第1プレート21の表面と第2プレート22の表面の両方がマイナス電荷にチャージされているため、プラス電荷にチャージされたウイルス試料3中のウイルス粒子3aは、第1プレート21の表面と第2プレート22の表面とに吸着固定される。第1プレート21および第2プレート22として、同一形状、同一面積のガラス板を用いる場合、ウイルス試料3を2枚のプレート21、22間に挟み込むことで、ウイルス試料3の溶液がほぼ均一に引き延ばされ、表面張力による前記溶液表面の盛り上がりが抑制される。また、第1プレート21と第2プレート22の電荷が釣り合うように、ウイルス粒子3aが、それぞれのプレート21、22の表面に均等に吸着することが確認されている。
そして、第1プレート21および第2プレート22は、ウイルス粒子3aが吸着固定された後に、それらが重ね合わされた状態から剥離され、一方もしくは両方のプレートが上記の金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5による処理に供されるが、ウイルスの同定または定量後には、第1プレート21および/または第2プレート22の表面に存在するウイルス試料3をその他の実験に供することが可能である。例えば、それぞれのプレートのウイルス粒子3aが吸着固定された表面に対し、抗ウイルス剤の候補物質等を滴下して、薬剤スクリーニング試験を行うことや、一方のプレートの表面において免疫染色を行うこと等が可能である。このような、ウイルス試料3の同定または定量以外の実験については、第1プレート21と第2プレート22のいずれを用いても構わない。
図5に示すように、本実施形態に係るウイルスの検出キット1の第4の態様においては、プレート2が、複数のウェル21aを有し、これらのウェル底部21bの表面がマイナス電荷にチャージされている第1プレート21と、この第1プレート21の複数のウェル21aに挿入される表面がマイナス電荷にチャージされている複数の突起部22aを有している第2プレート22からなることが好ましく考慮される。
この場合、第1プレート21および第2プレート22が表面平滑な平板状の実施形態と比較して、複数のウェル21aにウイルス試料3を吸着固定させることにより、一つのプレートで一度に多検体の同定を行うことが可能であり、ウイルスの同定作業の効率化を図ることができる。また、ウェル21aの深さを生かして、ウイルス試料と宿主細胞とをウェル21a内部で共培養しながら、ウイルスの感染過程を観察することにも応用可能である。
以下に、本実施形態に係るウイルスの検出キットを用いた、ウイルスの同定または定量の方法について詳細に説明する。
本実施形態に係るウイルスの検出キットを用いたウイルスの同定または定量方法は、ウイルス試料3に含まれるウイルス粒子3aのウイルス種が未知の場合であっても、ウイルス種の同定または定量を可能とするものである。
まず、表面がマイナス電荷にチャージされているプレート2に、表面がプラス電荷にチャージされている含水状態のウイルス試料3を滴下してプレート2の表面にウイルス試料3中のウイルス粒子3aを吸着固定する。
プレート2の表面をマイナス電荷にチャージさせる方法としては、例えば、プラズマ等のエネルギー線を照射することが例示される。プレート2の材質がガラスである場合、その表面にエネルギー線を照射することにより、ガラス表面の分子構造の一部が切断されて、水酸基やアミド基等のマイナス電荷を帯びた親水性の官能基がガラスの表面に露出する。このため、プラズマ処理を行うことにより、プレートの表面をマイナス電荷にチャージさせることが可能となる。
プラズマ処理としては、例えば、従来のイオンスパッタリング装置などを用いて、圧力10-3〜10-5Pa、温度-20〜+80℃、加速電圧1〜10kV DCの条件下でプレート2にプラズマを照射することが例示される。
前記のとおり、本実施形態に係るウイルスの検出キット1は、このようなプラズマ処理等によって、表面がマイナス電荷にチャージされたプレート2を具備しているため、検出キットの使用者は、プレート2の表面に対し、必ずしも特段の処理を行う必要はない。なお、本来ウイルス粒子3aが有している電荷やウイルス試料3中に分散しているウイルス粒子3aのゼータ電位の性質等に応じて、プレート2の表面に、電荷調整剤を適用してもよい。
含水状態のウイルス試料3中のウイルス粒子3aの表面をプラス電荷にチャージさせる方法としては、例えば、電荷調整剤として、ウイルス粒子3aの表面にプラス電荷を有する化合物を塗布すること等が例示される。このようなプラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。中でも、多価第四級アミン高分子化合物の一つであるポリブレンが好適に用いられる。ポリブレンは、マイナス電荷にチャージしているガラス製のプレート2の表面と、本来マイナス電荷にチャージしているウイルス粒子3aの表面との間の糊の役割を果たすことができる。
ウイルス試料3中のウイルス粒子3aにポリブレン処理する方法としては、例えば、液体状のウイルス試料3にポリブレンの最終濃度が、例えば、0.5μg/ml〜200μg/mlとなるようにポリブレンを添加し、混和する方法等が例示される。
このようにして、ウイルス粒子3aの表面の電荷と相反する電荷を表面にチャージさせたプレート2に、ウイルス試料3中のウイルス粒子3aを電気的に吸着させることにより、ウイルス粒子3aをプレート2の表面に固定することができる。また、元々のウイルス試料中におけるウイルス粒子数やウイルス濃度が低かったとしても、ウイルス試料3中のウイルス粒子3aのみをプレート2の表面に吸着固定することができるため、ウイルス粒子3aを濃縮して、ウイルス種の同定や定量を容易にすることが可能となる。
次いで、ウイルス試料3(ウイルス粒子3a)が固定配置されたプレート2の表面に金属標識ウイルス特異的抗体4を滴下して抗原抗体反応させる。
金属標識ウイルス特異的抗体4としては、前記の各種抗体を用いることができる。また、金属標識ウイルス特異的抗体4は、使用時まで抗体溶液としてマイクロチューブなどの保存容器に小分けにして冷蔵ないし冷凍保存されていることが好ましく考慮される。
また、抗体としては、例えば、ウイルス試料3を抗原とする一次抗体と、この一次抗体を抗原とする二次抗体とを併用することが例示される。二次抗体の表面には、あらかじめ、銀修飾や金コロイド修飾等の金属標識を行うことにより、電子顕微鏡下での観察に必要な導電性をウイルス試料3および金属標識ウイルス特異的抗体4に付与することができる。また、上記の金コロイド修飾に、一般的な電子顕微鏡観察で用いられている銀増感や金増感等の方法を組み合わせることにより、ウイルス粒子と抗原抗体反応を起こして結合した金属標識ウイルス特異的抗体4を感度よく検出することが可能となる。特に、金増感は特異性が高いため、本発明のウイルスの同定方法または定量方法において、好適に適用することができる。
次に、プレート2の表面に両親媒性化合物、油脂類、イオン液体およびオスミウムから選ばれる少なくとも1種を含有する電子顕微鏡観察用保護剤5を塗布する。
その後、電子顕微鏡観察用保護剤5にプラズマまたは電子線を照射して薄膜6を形成し、試料3(金属標識ウイルス特異的抗体4で標識されたウイルス粒子3aを含む)を薄膜6で覆う。
電子顕微鏡用保護剤5にプラズマを照射する際の条件としては、例えば、圧力10-3〜10-5Pa、温度-20〜+80℃、加速電圧1〜10kV DCの条件で、プラズマを照射すること等が例示される。このようなプラズマ処理には、従来公知のプラズマ照射装置を利用することができる。
また、電子顕微鏡観察用保護剤5に電子線を照射する際の条件としては、例えば、使用する電子顕微鏡観察用保護剤の種類に応じて適宜に選択され、特に限定されないが、一例としては、電子顕微鏡観察用保護剤で被覆した含水状態のウイルス試料3に、SEMの電子ビーム(例えば加速電圧5.0kV程度)を試料室内で60分間照射することによって、高真空(例えば10-4〜10-7 Pa)での含水状態のウイルス試料3のSEM観察、例えば通常のFE-SEMや簡易型のSEM装置での電子顕微鏡観察が可能となる。
あるいは、電子顕微鏡によるウイルス試料3の観察前に、予め、電子顕微鏡の試料観察用の電子線とは別途の電子線またはプラズマを試料に照射することによって、含水状態のウイルス試料3の表面に薄膜6を形成することができる。
薄膜6の厚さとしては、生物試料表面に形成する場合には、例えば、1nm〜1000nmの範囲にすることが例示される。
次いで、薄膜6で被覆されたウイルス試料3を電子顕微鏡により直接観察し、金属標識ウイルス特異的抗体4で標識されたウイルス粒子3aの同定または定量を行う。
本実施形態に係るウイルスの検出キットを用いたウイルスの同定方法または定量方法においては、未知のウイルス試料3に対し、複数種の既知の金属標識ウイルス特異的抗体4を滴下して、抗原抗体反応を起こした金属標識ウイルス特異的抗体4の種類から未知のウイルス試料3を同定し、さらに所定の面積の視野におけるウイルス粒子3aの粒子数を計数することにより定量することができる。なお、ウイルス粒子3aの粒子数の計数は、人の手によって行ってもよいし、画像解析システム等を利用して自動化してもよい。いずれの場合においても、本発明のウイルスの定量法においては、ウイルス粒子3aは、金属標識ウイルス特異的抗体4によって夾雑物等と明瞭に区別することができるため、計測者の技量に依らずに、前記の画像解析システム等でも正確な計数、定量が可能となる。
一方、本発明のウイルスの同定方法または定量方法によれば、以下のような応用利用も可能である。
例えば、既知のウイルスをウイルス試料3として利用し、ウイルスに感染した患者の血清を金属標識ウイルス特異的抗体4を含む試料として利用し、上記の患者の血清中から、ウイルス試料3に対する中和抗体をスクリーニングし、抗体医薬開発に応用することが例示される。
さらにまた、本実施形態に係るウイルスの検出キットを用いたウイルスの同定法は、抗体産生細胞等を用いて産生した複数種の抗体の混合物中から、ウイルス試料3に対する特異的抗体4のみを選択的に回収することにも適用可能である。
本実施形態に係るウイルスの検出キットを用いたウイルスの同定方法または定量方法においては、図2および図3に示すように、プレート2が、複数のウェル21aを有し、これらのウェル底部21bの表面がマイナス電荷にチャージされた第1のプレート21と、この第1プレート21の複数のウェル21aに挿入される複数の突起部22aを有している第2のプレート22からなり、第1プレート21と第2プレート22とで、ウイルス試料3、金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5を挟む工程を含むことも好ましく考慮される。
この場合、第1プレート21および第2プレート22として、ガラス製のマルチウェルプレート(マイクロウェルプレート)等を用いることが好ましい。複数のウェル21aとしては、例えば、6〜96ウェル程度のウェル数のものが好適に利用できる。これら複数のウェル21aのウェル底部21bには、全てのウェル21aにおいて同一種のウイルスを吸着固定してもよいし、ウェル21aごとに異なるウイルス種を吸着固定してもよい。
例えば、上記の未知のウイルスを同定する場合や、既知のウイルス試料3に対する中和抗体を探索する際などには、すべてのウェル21aにおいて同一種のウイルスを吸着固定したウイルスの検出キットを用いることが好ましい。一方、既知の抗体がどのようなウイルスに対して抗原抗体反応を起こすのかについて調査する場合などには、ウェル21aごとに異なるウイルス種を吸着固定してもよい。
また、本発明のウイルスの同定方法においては、図4に示すように、プレート2と、このプレート2のマイナス電荷にチャージされている表面と対向する面がマイナス電荷にチャージされている複数のプレートとで、ウイルス試料3、金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5を挟む工程を含むことも好ましく考慮される。
この場合、第1プレート21の表面と第2プレート22の表面の両方がマイナス電荷にチャージされているため、プラス電荷にチャージされたウイルス試料3中のウイルス粒子3aは、第1プレート21の表面と第2プレート22の表面に吸着固定される。第1プレート21および第2プレート22として、同一形状、同一面積のガラス板を用いる場合、ウイルス試料3を2枚のプレート21、22間に挟み込むことで、ウイルス試料3の溶液がほぼ均一に引き延ばされ、表面張力による前記溶液表面の盛り上がりが抑制される。また、第1プレート21と第2プレート22の電荷が釣り合うように、ウイルス粒子3aが、それぞれのプレート21、22の表面に均等に吸着することが確認されている。
そして、第1プレート21および第2プレート22は、ウイルス粒子3aが吸着固定された後に、それらが重ね合わされた状態から剥離され、一方もしくは両方のプレートが上記の金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5による処理に供されるが、ウイルスの同定または定量後には、第1プレート21および/または第2プレート22の表面に存在するウイルス試料3をその他の実験に供することが可能である。例えば、それぞれのプレートのウイルス粒子3aが吸着固定された表面に対し、抗ウイルス剤の候補物質等を滴下して、薬剤スクリーニング試験を行うことや、一方のプレートの表面において免疫染色を行うこと等が可能である。このような、ウイルス試料3の同定または定量以外の実験については、第1プレート21と第2プレート22のいずれを用いても構わない。
さらに、本発明のウイルスの同定方法においては、図5に示すように、プレート2が、複数のウェル21aを有し、これらのウェル底部21bの表面がマイナス電荷にチャージしている第1プレート21と、この第1プレート21の複数のウェル21aに挿入される表面がマイナス電荷にチャージされている複数の突起部22aを有している第2プレート22からなり、第1プレート21と第2プレート22とで、ウイルス試料3、金属標識ウイルス特異的抗体4および電子顕微鏡観察用保護剤5を挟む工程を含むことが好ましく考慮される。
この場合、第1プレート21および第2プレート22が表面平滑な平板状の実施形態と比較して、複数のウェル21aにウイルス試料3を吸着固定させることにより、一つのプレートで一度に多検体の同定を行うことが可能であり、ウイルスの同定作業の効率化を進めることができる。また、ウェル21aの深さを生かして、ウイルス試料と宿主細胞とをウェル21a内部で共培養しながら、ウイルスの感染過程を観察することにも応用可能である。
本発明において、ウイルス粒子3aの同定または定量のためのウイルス試料3の観察は、従来の走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等のこれまでに知られている構成の装置によって行うことができる。
次に、本発明の検出キットの例示的な実施形態として、ナノ粒子が細胞外小胞体である場合を例にして説明する。
近年、新たな細胞間コミュニケーションツールとして、細胞外小胞体が注目されている。細胞外小胞体の種類は、その発生機序、サイズによって、大きく分けて以下の3つに分類できるとされている:
エクソソーム:30〜200nm
マイクロベシクル:100〜1000nm
アポトーシス小体:1〜5μm。
細胞外小胞体は、免疫応答の調整、炎症反応、組織再生、癌の病理学的状態や神経変性疾患などとの関係が明らかとなってきており、細胞外小胞体の特性(形態的特徴、物理学的性質等)を知ることによって得られる情報は、様々な診断ツールとして利用できる可能性があり、その同定・定量法の開発に対する要請が存在している。特に、エクソソームに関しては、その内部にタンパク質やmicro RNAを含有していることから、疾患治療や予後診断、バイオマーカーとしての応用が期待されている。
従来、エクソソームの観察には電子顕微鏡が用いられているが、走査型電子顕微鏡の場合には、固定・染色・脱水の過程を経なければならず、手間がかかる等の理由から、透過型電子顕微鏡による観察がより一般的である。例えば、FE-TEMでは細胞外小胞体のサイズや物理学的性質の分析が可能であり、Cryo-TEMでは細胞外小胞体表面の脂質二重膜の分析が可能であるが、一方で、これらの透過型電子顕微鏡による観察では、細胞外小胞体を定量することはできない。
試料中のエクソソーム濃度を求めることができる装置として、NanoSight機器が挙げられる。このNanoSight機器は、光散乱を利用したNTA(Nano Tracking Analysis)技術により、試料中のナノ粒子のブラウン運動の様子を観察し、また、ブラウン運動の速度を専用ソフトウェアにより計測することで、粒子径と個数の粒度分布を得ることが可能とされている。
しかしながら、光散乱を利用する手法の場合、試料中で弱く散乱するナノ粒子の存在に留意して目的のエクソソームを同定・定量する必要がある。また、NanoSight機器で用いられている手法は、そもそもナノ粒子を直接観察し、同定・定量するものではない。
したがって、エクソソームのような30〜200nm程度のサイズのナノ粒子について、直接的でかつ精度よく同定・定量することができる手法に対する要請が依然として存在している。
本発明は、上記のような従来の課題を解決するものであり、簡便でありながら迅速かつ安全に、電子顕微鏡による直接観察で、試料中の細胞外小胞体の同定・定量を可能にする。
本実施形態に係る細胞外小胞体の検出キットでは、その基本的な構成は、上記のウイルスの検出キットと同様の構成を採用することができる。そのため、以下では、細胞外小胞体の同定・定量において、特にエクソソームの同定・定量を例として、好ましく考慮される特徴について説明する。
本発明者らは、これまでの種々の検討の結果から、エクソソームはアニオンの電荷を固有のゼータ電位として有していることを知見している。このため、プレートとしては、その表面がプラス電荷にチャージされているプレートを用い、このプレートの表面に、エクソソームの固有のゼータ電位を利用して、エクソソームを吸着固定することが好ましく考慮される。ここで、プレートが第1プレートと第2プレートからなる場合、第1プレートおよび第2プレートの両方の表面がプラス電荷にチャージされていてもよく、また、第1プレートおよび第2プレートのいずれか一方の表面がプラス電荷にチャージされていてもよい。
プレートの表面に塗布される、プラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。中でも、カチオンポリマーが好適に用いられ、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)がより好適に用いられる。
また、プレートの表面は、マイナス電荷にチャージされていてもよい。この場合、電荷調整剤として、プラス電荷を有する化合物を用いてエクソソームの表面の電荷をプラス電荷にチャージさせることによって、エクソソームをプレートの表面に吸着固定させることができる。
試料中のエクソソームをプラスにチャージさせる方法としては、例えば、試料に電荷調整剤としてプラス電荷を有する化合物を添加して、エクソソームの表面を前記化合物によりコーティングする方法等が例示される。
このようなプラス電荷を有する化合物としては、例えば、多価第四級アミン高分子化合物や、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(PDMAEMA)、キトサン等のカチオンポリマーが例示される。また、部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー等が例示される。中でも、カチオンポリマーが好適に用いられ、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-D-リジン(PDL)がより好適に用いられる。
本実施形態に係る細胞外小胞体の検出キットでは、標識剤がビオチン標識化合物であることが好ましく考慮される。ビオチン標識化合物としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。ビオチン標識化合物としては、例えば、第一級アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、炭水化物など、細胞外小胞体の表面に存在する特定の官能基や残基を標的としたビオチン標識化合物等が例示される。また、細胞外小胞体の表面に存在する分子を特異的に認識するマーカー化合物(例えば、エクソソームの倍には、CD9抗体、CD63抗体、CD81抗体等の表面タンパク質マーカー等が挙げられる。)を用いて免疫染色を行った細胞外小胞体に対して、ビオチン標識化合物として、当該マーカー化合物を抗原とするビオチン標識した二次抗体を反応させることができる。そして、このビオチン標識化合物に金、銀等の金属粒子が付着したストレプトアビジンを反応させることによって、電子顕微鏡による直接観察で、試料中の細胞外小胞体が同定・定量される。なお、上記細胞外小胞体のマーカー化合物に対してビオチン標識が施されていてもよく、また、ビオチン−アビジン相互作用による検出に加えて、必要に応じて銀増感または金増感を行ってもよい。
さらに、本発明によれば、上記のウイルスの検出キットと同様の構成を採用して、例えば、インク用等の顔料、トランスフェクション試薬等の遺伝子工学用試料をはじめ各種の非生物のナノ粒子ついても、簡便でありながら迅速かつ安全に、電子顕微鏡による直接観察で、試料中の当該ナノ粒子の同定・定量が可能である。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、SEM観察は、典型的には、電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM,S−8000(Hitachi))を用いて、1.0kV、3.0kV、5.0kVの加速電圧で行った。
<実施例1>
プレート表面をマイナス電荷にチャージさせる際の、プラズマの照射時間について検討を行った。縦1.2cm×横0.7cmのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製)の表面に、イオンスパッタリング装置(日本電子(JOEL) HDT-400)を用いて、圧力10-5Pa、25℃、5kV DCの条件下で、プラズマをそれぞれ0、5、10、20、30、60秒間照射した。次いで、プラズマ照射後の各スライドガラスの表面におけるゼータ電位について、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム ELSZ-1000S(大塚電子)と平板試料用セルを用いて測定した。ゼータ電位の測定結果を図6に示す。
図6に示したように、スライドガラスの表面におけるゼータ電位は、プラズマ照射5秒後から急速に低下し、その後20秒後からは上昇に転じた。一般に、測定対象の表面におけるゼータ電位の数値が低いほど、測定対象の表面にマイナス電荷にチャージしている官能基が表出していると判断される。このため、上記のプラズマ照射条件においては、スライドガラスの表面にプラズマを5秒〜20秒間程度照射することにより、所定のゼータ電位を有し、マイナス電荷にチャージされたプレートを得られることが確認された。
<実施例2>
ウイルス試料をプラス電荷にチャージさせる際の、ポリブレン濃度について検討を行った。マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)粒子、ヒトヘルペスウイルス(HSV)、インフルエンザウイルスを108〜1010個/mlの濃度で含有するウイルス試料液0.1mlに対し、終濃度がそれぞれ0、10、100μg/mlとなるようにポリブレンを添加して、混和した。次いで、ポリブレン添加後のウイルス粒子の表面におけるゼータ電位について、ゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-1000Sと平板試料用セルを用いて測定した。ゼータ電位の測定結果を図7に示す。
図7に示したように、ポリブレンの濃度依存的にゼータ電位が上昇することが確認された。
<実施例3>
マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)粒子、ヒトヘルペスウイルス(HSV)、インフルエンザウイルス粒子を108〜1010個/mlの濃度で含有するウイルス試料液1mlに対し、終濃度が100μg/mlとなるようにポリブレンを添加して、混和した。次いで、プラズマを10秒間照射したスライドガラスをプレートとして用い、プレートの表面にウイルス試料液を載せ、プレートの表面にウイルス粒子を吸着固定させた。次いで、抗インフルエンザ抗体、抗HCMV抗体を滴下して抗原抗体反応による免疫染色を行い、金コロイド修飾された二次抗体を添加して標識した。なお、必要に応じて銀増感または金増感を行った。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行った。
なお、電子顕微鏡観察用保護剤としては、基材(生存環境付与成分)としてグリセリンと水を、糖類としてグルコースを、電解質として塩化ナトリウムを用い、基材(グリセリン):(水):糖類(グルコース):電解質(塩化ナトリウム)=20:10:0.7:0.03の配合割合で混合したものを原液とし、これを1/100-1/1000の濃度に希釈して用いた。以下の実施例においても、特に記載がない限り、同様である。
このようにして抗インフルエンザ抗体、抗HCMV抗体で免疫標識されたHCMVのSEM像を図8(a)に示す。なお、対照区として、表面がプラズマ処理されていないスライドガラス表面のHCMVのSEM像を図8(b)に示す。
図8(a)では、プラズマ処理された(表面がマイナス電荷にチャージされた)スライドガラスの表面に吸着固定されたHCMVのウイルス粒子の像が極めて明瞭であり、計数によるウイルスの定量も容易に行うことができることが確認された。
一方、図8(b)では、表面がプラズマ処理されていない(表面がプラス電荷にチャージしている)スライドガラス表面においてHCMVのウイルス粒子とバックグラウンドとの区別がつかず、計数によるウイルスの定量を行うことは困難であった。
なお、本実施例では、抗ウイルス抗体による免疫染色の後、金コロイド修飾された二次抗体を添加して標識した例を示したが、ビオチン付き二次抗体を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させた場合にも、図8(a)と同様に、プラズマ処理されたスライドガラスの表面に吸着固定されたウイルス粒子の像が極めて明瞭であり、計数によるウイルスの定量も容易に行うことができることが確認された。
<実施例4>
ウイルス試料中のウイルス粒子をプレート表面に吸着固定させる際の、プレートの電荷との関係について検討を行った。
マイナス電荷にチャージされたプレート(以下、「アニオンプレート」とも称する。)として、表面にプラズマを20秒間照射したスライドガラスを用いた。
プラス電荷にチャージされたプレート(以下、「カチオンプレート」とも称する。)を以下のようにして作製した。スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製)を100%エタノールで洗浄し、水洗した後、プラズマを10秒間照射して処理する。プラズマ処理されてマイナス電荷にチャージしているスライドガラスの上に、10〜100μg/mlのポリ-D-リジン(PDL)を重層した後、12時間以上静置し、3回純水で洗浄する。その後、12時間以上自然乾燥させる。
カチオンプレートの表面に、インフルエンザウイルス粒子を含有するウイルス試料液を載せ、その上にアニオンプレートを被せて試料液を挟み込んだ。このとき、カチオンプレートとアニオンプレートとの間に拡がる試料液の液量が25〜35nl/mmとなるように調整した。このようにしてカチオンプレートの表面にインフルエンザウイルス粒子を吸着固定させた。
次いで、水中でプレート同士を剥離させた後、カチオンプレートおよびアニオンプレートの表面に、抗インフルエンザ抗体を滴下して抗原抗体反応による免疫染色を行い、1.4nm金粒子で修飾された二次抗体を添加して標識し、さらに金増感を行った。またはビオチン付き二次抗体を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させた。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行った。図9にSEM像を示す。
図9から明らかなように、カチオンプレートの表面には、インフルエンザウイルス粒子が多数吸着固定され、それぞれのウイルス粒子の像が極めて明瞭であり、計数によるウイルスの定量も容易に行うことができることが確認された。一方、アニオンプレートの表面には、インフルエンザウイルス粒子と同定される像はほとんど確認されなかった。
これらの結果は、本実施例で用いたインフルエンザウイルス粒子がマイナスのゼータ電位を有することにより、カチオンプレートの表面に効率よく電気的に吸着固定されたこと、また、このインフルエンザウイルス粒子が、抗インフルエンザ抗体と適切な標識手段を組み合わせることで、簡便かつ迅速に同定・定量可能であることを示すものである。さらに、電子顕微鏡観察用保護剤を用いて形成された薄膜で覆われたウイルス試料(ウイルス粒子)は、生存状態が保持される一方で、それらの感染力はこの薄膜によって防止されているので、電子顕微鏡による直接観察における安全性も確保されている。このように、本発明の検出キットの構成を満たすことによって、電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を感度よく同定することができるとともに、簡便でありながら迅速かつ安全に定量することができることが確認された。
<実施例5>
試料液としてヒトサイトメガロウイルス(HCMV)粒子、インフルエンザウイルス粒子を含有するウイルス試料液を用いたこと以外は実施例4と同様にして、カチオンプレートの表面にウイルス粒子を吸着固定させた。
次いで、水中でプレート同士を剥離させた後、カチオンプレートの表面に、抗インフルエンザ抗体、抗HCMV抗体を滴下して抗原抗体反応による免疫染色を行い、1.4nm金粒子で修飾された二次抗体を添加して標識し、さらに金増感を行った。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行った。図10にSEM像を示す。なお、対照(control)として、ウイルス試料液を用いなかったこと以外は上記と同様の手順を経て得られたカチオンプレートのSEM像を撮影した。
図10から明らかなように、カチオンプレートの表面に吸着固定されたHCMV、インフルエンザウイルスのウイルス粒子の像は極めて明瞭であり、計数によるウイルスの定量も容易に行うことができることが確認された。
なお、本発明者らは、実施例4でインフルエンザウイルス粒子について示したように、ウイルス粒子の多くがマイナスのゼータ電位を有することを知見しているため、本実施例ではカチオンプレートの表面にウイルス試料液を載せる例を示したが、対象のウイルス粒子の固有のゼータ電位に応じて、カチオンプレートとアニオンプレートの位置関係を逆としてもよく、アニオンプレートの上に試料液を載せてもよいことに留意されたい。
また、本実施例では、抗ウイルス抗体による免疫染色の後、金コロイド修飾された二次抗体を添加して標識した例を示したが、ビオチン付き二次抗体を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させた場合にも、図10と同様に、カチオンプレートの表面に吸着固定されたウイルス粒子の像が極めて明瞭であり、計数によるウイルスの定量も容易に行うことができることが確認された。
<実施例6>
本実施例では、細胞外小胞体の検出例として、エクソソームを用いた。
まず、対象とする大腸癌由来のエクソソームのゼータ電位を予めゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-1000Sを用いて測定し、このエクソソームがマイナスのゼータ電位を有することを確認した。
次に、カチオンプレートの表面に、エクソソームを含有する試料液を載せ、カチオンプレートの表面に大腸癌由来のエクソソームを吸着固定させた。このカチオンプレートの表面に、上記の成分組成を有する電子顕微鏡観察用保護剤を1/10または1/100の濃度に希釈して塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行った。図11にSEM像を示す。
図11に示したように、カチオンプレートの表面に吸着固定された大腸菌由来のエクソソームの像が極めて明瞭に確認された。
次に、試料液としてウイルスの代わりにエクソソームを含有する試料液を用いたこと以外は実施例4と同様にして、カチオンプレートの表面にエクソソームを吸着固定させた。
次いで、水中でプレート同士を剥離させた後、カチオンプレートの表面に、エクソソームの表面タンパク質マーカーであるCD9、CD63、CD81抗体を滴下して抗原抗体反応による免疫染色を行い、ビオチン付き二次抗体を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させた。なお、必要に応じて銀増感または金増感を行った。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行った。図12にSEM像を示す。
図12から明らかなように、カチオンプレートの表面に吸着固定され、二次抗体を介して金粒子修飾されたCD9、CD63、CD81抗体で免疫標識されたエクソソームの像は極めて明瞭であり、計数によるエクソソームの定量も容易に行うことができることが確認された。
なお、本発明者らは、エクソソームの多くがマイナスのゼータ電位を有することを知見しているため、本実施例ではカチオンプレートの表面にエクソソーム試料液を載せる例を示したが、対象のエクソソームの固有のゼータ電位に応じて、カチオンプレートとアニオンプレートの位置関係を逆としてもよく、アニオンプレートの上に試料液を載せてもよいことに留意されたい。
<実施例7>
本実施例では、細菌類の検出例として、大腸菌を用いる。なお、対象の細菌類のゼータ電位を予めゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-1000Sを用いて測定することにより、試料液を載せるプレートの電荷の選択がより効率的となることが理解される。
試料液としてウイルスの代わりに大腸菌を含有する試料液を用いること以外は実施例4と同様にして、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面に大腸菌を吸着固定させる。
次いで、水中でプレート同士を剥離させた後、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面に、ビオチン付き抗大腸菌抗体を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させる。なお、必要に応じて銀増感または金増感を行う。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行う。このようにして、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面に吸着固定された大腸菌の像は極めて明瞭であり、計数による大腸菌の定量も容易に行うことができることが確認される。
<実施例8>
本実施例では、非生物のナノ粒子のうち、遺伝子工学用試薬の検出例として、トランスフェクション試薬を用いる。なお、対象の試薬中のナノ粒子のゼータ電位を予めゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-1000Sを用いて測定することにより、試料液を載せるプレートの電荷の選択がより効率的となることが理解される。
試料液としてウイルスの代わりにトランスフェクション試薬を含有する試料液を用いること以外は実施例4と同様にして、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面にトランスフェクション試薬中に含まれるナノ粒子を吸着固定させる。
次いで、水中でプレート同士を剥離させた後、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面に、ビオチン付きマーカー化合物を添加して標識した後、40nm金粒子が付着したストレプトアビジンにて反応させる。なお、必要に応じて銀増感または金増感を行う。次いで、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜し、SEM観察を行う。このようにして、カチオンプレートまたはアニオンプレートの表面に吸着固定されたトランスフェクション試薬中に含まれるナノ粒子の像は極めて明瞭であり、計数による当該ナノ粒子の定量も容易に行うことができることが確認される。
1 検出キット
2 プレート
21 第1プレート
21a 複数のウェル
21b ウェル底部
22 第2プレート
22a 突起部
3 試料(ウイルス試料)
3a ナノ粒子(ウイルス粒子)
4 標識剤(標識ウイルス特異的抗体)
5 電子顕微鏡観察用保護剤
6 薄膜

Claims (9)

  1. 電子顕微鏡による直接観察で試料中のナノ粒子を同定または定量するための検出キットであって、
    表面がマイナス電荷またはプラス電荷にチャージされているプレートと、
    試料中のナノ粒子を特異的に標識するための標識剤と、
    試料中のナノ粒子を薄膜で覆うための電子顕微鏡観察用保護剤とを具備することを特徴とする検出キット。
  2. 前記プレートの表面の電荷および/または前記試料中のナノ粒子の表面の電荷を調整するための電荷調整剤をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の検出キット。
  3. 前記プレートが、第1プレートと第2プレートからなることを特徴とする請求項1または2に記載の検出キット。
  4. 前記第1プレートが複数のウェルを有し、前記第2プレートが、前記第1プレートの前記複数のウェルに挿入される複数の突起部を有することを特徴とする請求項3に記載の検出キット。
  5. 前記ナノ粒子がウイルス粒子であり、前記標識剤が標識ウイルス特異的抗体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出キット。
  6. 多価第四級アミン高分子化合物、カチオンポリマーおよび部分分解ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーから選ばれる電荷調整剤をさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の検出キット。
  7. 前記ナノ粒子が細胞外小胞体であり、前記標識剤がビオチン標識化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検出キット。
  8. カチオンポリマーである電荷調整剤をさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の検出キット。
  9. 前記試料が、ヒトの尿、咽頭塗付液、便、血液、体液および細胞破砕物からなる群のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の検出キット。
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