JP2017201138A - 内燃機関の制御システム - Google Patents

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慎太郎 内海
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Abstract

【課題】水噴射装置を備えた内燃機関の潤滑油中の水の濃度の増加を緩和する。
【解決手段】内燃機関の吸気通路または気筒内に水を噴射する水噴射装置を備え、水噴射装置から水を噴射する所定の運転領域であり内燃機関の回転速度が同じ場合に水噴射装置から水を噴射しない運転領域よりも内燃機関のトルクが高い所定の運転領域であって内燃機関のトルクが大きいほど水噴射装置から噴射する水の量を多くする所定の運転領域において、潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも内燃機関の回転速度が同じ場合における内燃機関の最大トルクを減少させることにより水噴射装置からの最大水噴射量を減少させる。
【選択図】図10

Description

本発明は、内燃機関の制御システムに関する。
内燃機関の吸気通路内に水を噴射する水噴射弁を配置することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。水噴射弁から水を噴射することにより、水の気化潜熱で吸気温度が低下して燃焼温度が低下するため、ノッキングの発生を抑制することができる。また、水の気化潜熱により排気温度も低下するため、排気系に備わる部品の過熱を抑制できる。ここで、ノッキングの発生の抑制や排気系に備わる部品の過熱の抑制のために、燃焼温度及び排気温度を制限することが行われている。例えば、吸入空気量を制限することにより、機関トルクを低下させることで、燃焼温度及び排気温度を制限することができる。一方、内燃機関の吸気通路内または気筒内に水を噴射することで、水の気化潜熱を利用して燃焼温度及び排気温度を低下させることができる。したがって、水噴射を実施することにより、機関トルクをより大きくしたときの燃焼温度及び排気温度の上昇を抑制することができるため、ノッキングの発生の抑制や排気系に備わる部品の過熱の抑制をしつつ、トルクをより増加させることができる。
特開2006−125407号公報 特開2015−168379号公報 特開2008−261285号公報 特開2008−121592号公報
水噴射弁から水を噴射したとしても、水が蒸発せずに気筒壁面に付着して、この水が潤滑油中に混入すると、潤滑油の潤滑性能が低下する虞がある。したがって、潤滑油中の水の濃度は低いほうが好ましい。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水噴射装置を備えた内燃機関の潤滑油中の水の濃度の増加を緩和することにある。
上記課題を解決するために、内燃機関の吸気通路または気筒内に水を噴射する水噴射装置と、前記内燃機関の潤滑油中の水の濃度を推定または検出する水検出装置と、前記水噴射装置から水を噴射する所定の運転領域であり前記内燃機関の回転速度が同じ場合に前記水噴射装置から水を噴射しない運転領域よりも前記内燃機関のトルクが高い所定の運転領域であって前記内燃機関のトルクが大きいほど前記水噴射装置から噴射する水の量を多くする所定の運転領域において、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記内燃機関の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させる制御装置と、を備える。
潤滑油中に混入した水は、潤滑油の温度が高くなることにより蒸発するため、時間が経てば潤滑油から水が除去される。したがって、潤滑油中に水が混入したとしても、潤滑油中の水の濃度の増加が緩和されれば、潤滑油の潤滑性能が許容範囲外となる前に水が蒸発
し得る。ここで、所定の運転領域では、内燃機関のトルクが大きいほど、水噴射量を多くすることにより、内燃機関のトルクが大きくなったとしても燃焼温度の増加を抑制し得る。しかし、水噴射量が多くなることにより、潤滑油中の水濃度が増加する虞がある。潤滑油中の水濃度の増加を緩和させようとして燃焼温度の上昇抑制のために本来必要となる水噴射量よりも実際の水噴射量を減少させることも考えられるが、この場合、燃焼温度が高くなりすぎる虞がある。これに対して、内燃機関のトルクが大きいほど水噴射量を多くする所定の運転領域では、内燃機関の最大トルクを減少させることにより、最大水噴射量も減少する。また、このように、最大水噴射量を減少させたとしても、最大トルク以下では、内燃機関のトルクに応じた量の水が供給されるため、燃焼温度が高くなりすぎることを抑制できる。そして、内燃機関の最大トルクを減少させることにより、水噴射を実施する所定の運転領域は内燃機関のトルクが小さくなる側に狭くなるが、その分、最大水噴射量が減少するため、気筒壁面に付着する水の量を減少させることができるので、潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。
また、内燃機関の最大トルクが低下することにより気筒内の最大圧力が低下するため、ピストンリングと気筒壁面との間を通り抜けて潤滑油に混入する水の量が減少し得る。これによっても、潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。なお、機関回転速度によって最大トルクが変化するため、これにしたがって、最大水噴射量も変化する。このため、制御装置は、機関回転速度が同じ場合における最大トルク及び最大水噴射量を比較している。すなわち、水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも機関回転速度が同じ場合における最大トルク及び最大水噴射量を減少させている。
また、前記水噴射装置は、前記内燃機関の気筒内に水を噴射し、前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときには低いときよりも、前記水噴射装置からの水噴射時期をピストンが上死点により近いときに設定することができる。
水噴射時期が上死点に近いほど、ピストンに付着する水の量が多くなり、気筒壁面に付着する水の量が少なくなる。このため、水噴射時期を上死点に近付けることにより、水の蒸発が緩慢となって気化潜熱をすぐに得難くなるものの潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。一方、潤滑油中の水濃度が低いときには、水噴射時期を下死点に近付けることにより、広い空間内に水噴射を実施することができるため、水の蒸発を促進させることができる。これにより、水の気化潜熱をより有効に活用することができる。
また、前記水噴射装置は、前記内燃機関の吸気通路内に水を噴射し、前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が濃度閾値よりも高いときには吸気弁が閉じているときに前記水噴射装置から水を噴射させ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が前記濃度閾値以下のときには吸気弁が開いているときに前記水噴射装置から水を噴射させることができる。
吸気通路内に噴射した水が吸気通路に付着してしまうと、水の蒸発が緩慢となって気化潜熱をすぐに得難くなる。ここで、吸気弁が開いているときに水を噴射することにより、水が吸気の流れに乗って気筒内に供給されるため、水が吸気通路に付着することを抑制できる。したがって、水が吸気中で蒸発することにより、気筒内の温度を速やかに低下させ
ることができる。このように、潤滑油中の水濃度が濃度閾値以下のときには、吸気弁が開いているときに水噴射を実施することにより、水噴射の効果を高めることができる。なお、濃度閾値は、水濃度の増加を緩和する必要のない水濃度の上限値である。しかし、吸気弁が開いているときに噴射された水が液体のまま気筒内に流入すると、気筒壁面に水が付着して潤滑油中の水濃度が増加する虞がある。これに対して、吸気弁が閉じているときに水を噴射することにより、吸気通路に多くの水が付着する。この吸気通路に付着した水は蒸発してから気筒内に流入することになるため、液体のまま気筒内に流入する水の量を減少させることができる。これにより、気筒壁面に付着する水の量を減少させることができる。このように、潤滑油中の水濃度が濃度閾値よりも高いときには、吸気弁が閉じているときに水噴射を実施することにより、水の蒸発が緩慢となって気化潜熱をすぐに得難くなるものの潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。
また、前記水噴射装置は、前記内燃機関の気筒内に水を噴射し、前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときには低いときよりも前記水噴射装置からの水噴射圧力を低下させることができる。
水噴射圧力を高くすることにより水の微粒化を促進させることができるため、水の蒸発を促進させることができる。したがって、気化潜熱をより有効に活用することができる。このように、潤滑油中の水濃度が低いときには、水噴射圧力を高くすることにより、水噴射の効果を高めることができる。しかし、水噴射圧力を高くすることにより気筒壁面に水が付着して水が潤滑油中に混入すると、潤滑油中の水濃度が増加する虞がある。これに対して、水噴射圧力を低くすることにより、気筒壁面に水が付着することを抑制できる。したがって、潤滑油中の水濃度が高いときには水濃度が低いときよりも水噴射圧力を低くすることにより、水の蒸発が緩慢となって気化潜熱をすぐに得難くなるものの潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。
前記制御装置は、前記水噴射装置から水を噴射しない運転領域の最大トルクを前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度によっては変化させないことができる。
所定の運転領域では、潤滑油中の水濃度に応じて最大トルクを変化させるが、水を噴射しない運転領域では、潤滑油中の水濃度の上昇が抑制されるため、潤滑油中の水濃度に応じて最大トルクを変化させる必要はない。したがって、水を噴射しない運転領域では、潤滑油中の水濃度によっては最大トルクを変化させないようにすることができるため、潤滑油中の水の濃度によらず所望の最大トルクを得ることが可能となる。すなわち、水噴射によって広がった運転領域で内燃機関を運転させることが困難となった場合であっても、水を噴射しない運転領域は変化しないため、水噴射装置を備えていない内燃機関と同等の機関トルクを得ることができる。
本発明によれば、水噴射装置を備えた内燃機関の潤滑油中の水の濃度の増加を緩和することができる。
実施例1−3に係る内燃機関の概略構成を表す図である。 機関回転速度と、機関トルクと、水噴射弁から水を噴射する領域との関係を示した図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第一の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第二の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第三の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第四の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第五の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第六の図である。 機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第七の図である。 実施例1に係る最大水噴射量の設定フローを示した第一のフローチャートである。 実施例1に係る最大水噴射量の設定フローを示した第二のフローチャートである。 実施例1に係る最大水噴射量の設定フローを示した第三のフローチャートである。 実施例に係る水噴射の制御フローを示したフローチャートである。 実施例2に係る機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク、最大水噴射量、水噴射時期との関係を示した図である。 実施例2に係る最大水噴射量及び水噴射時期の設定フローを示したフローチャートである。 実施例3に係る最大水噴射量及び水噴射時期の設定フローを示したフローチャートである。 実施例4に係る内燃機関の概略構成を表す図である。 実施例4に係る機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク、最大水噴射量、水噴射圧力との関係を示した図である。 実施例4に係る最大水噴射量及び水噴射圧力の設定フローを示したフローチャートである。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
図1は、本実施例に係る内燃機関1の概略構成を表す図である。なお、本実施例においては、内燃機関1を簡潔に表示するため、一部の構成要素の表示を省略している。内燃機関1は、火花点火式のガソリン機関である。内燃機関1は、たとえば車両に搭載される。また、図1には1つの気筒2のみを記載しているが、内燃機関1は、複数の気筒2を有していてもよい。
内燃機関1のシリンダヘッド10には、吸気管42及び排気管72が接続されている。吸気ポート41及び吸気管42は、吸気通路4に含まれている。シリンダヘッド10には、吸気管42から気筒2に通じる吸気ポート41、及び、排気管72から気筒2に通じる排気ポート71が形成されている。排気ポート71及び排気管72は、排気通路7に含ま
れている。吸気ポート41の気筒2側の端部には、吸気弁5が備わる。吸気弁5の開閉は、吸気側カム6によって行われる。また、排気ポート71の気筒2側の端部には、排気弁9が備わる。排気弁9の開閉は排気側カム11によって行われる。吸気管42の途中には、内燃機関1の吸入空気量を調整するスロットル8が設けられている。スロットル8よりも上流の吸気通路4には、内燃機関1の吸入空気量を検出するエアフローメータ19が取り付けられている。
そして、内燃機関1のクランクシャフト13にコンロッド14を介して連結されたピストン15が、気筒2内で往復する。吸気管42には、燃料を吸気ポート41へ向けて噴射する燃料噴射弁81が設けられている。なお、本実施例では、吸気ポート41へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁81を設けているが、これに代えて、気筒2内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を設けてもよい。また、内燃機関1には、気筒2内に電気火花を発生させる点火プラグ83、及び、水を気筒2内に噴射する水噴射弁84が設けられている。なお、本実施例では、水噴射弁84が気筒2内に水を噴射しているが、これに代えて、吸気通路4に向けて水を噴射する水噴射弁を備えていてもよい。図1においては、吸気通路4に向けて水を噴射する水噴射弁85を破線で示している。なお、図1においては、スロットル8よりも下流側に水噴射弁85を設けているが、これに代えて、スロットル8よりも上流側に水噴射弁85を設けてもよい。本実施例においては水噴射弁84または水噴射弁85が、本発明における水噴射装置に相当する。なお、本実施例では、気筒2内に水を噴射する水噴射弁84を設けているものとして説明する。
内燃機関1には、潤滑油中の水の濃度を検出する濃度センサ20が設けられている。なお、濃度センサ20により潤滑油中の水濃度を検出することに代えて、ECU90が内燃機関1の運転状態に基づいて潤滑油中の水濃度を推定してもよい。すなわち、内燃機関1の運転状態と、水噴射時の潤滑油中の水濃度の単位時間当たりの増加量と、には関連性があるため、この関係を予め実験またはシミュレーション等により求めてマップ化しておき、潤滑油中の水濃度の単位時間当たりの増加量を求めて積算していくことにより、水濃度を求めることができる。本実施例においては濃度センサが、本発明における水検出装置に相当する。また、ECU90が水濃度を推定することにより、本発明における水検出装置として機能する。
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU90が併設されている。このECU90は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1を制御する。ECU90には、上記センサの他、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ量に応じた信号を出力するアクセル開度センサ91、およびクランクシャフト13の回転角に応じた信号を出力するクランクポジションセンサ92が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU90に入力される。ECU90は、アクセル開度センサ91からの信号に基づいて、要求機関トルクを算出する。また、ECU90は、クランクポジションセンサ92からの信号に基づいて、機関回転速度を算出する。一方、ECU90には、スロットル8、燃料噴射弁81、点火プラグ83、及び、水噴射弁84若しくは水噴射弁85が電気配線を介して接続されており、該ECU90によりこれらの機器が制御される。
ECU90は、気筒2内の空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁81を制御する。この目標空燃比は、内燃機関1の運転状態(機関回転速度及び機関トルク)に応じて設定される空燃比である。ECU90は、エアフローメータ19により検出される吸入空気量と、目標空燃比と、に基づいて燃料噴射量を算出し、この燃料噴射量となるように燃料噴射弁81の開弁時間を調整する。
また、ECU90は、内燃機関1の運転状態(機関回転速度及び機関トルク)に基づい
て、水噴射弁84を制御する。図2は、機関回転速度と、機関トルクと、水噴射弁84から水を噴射する領域との関係を示した図である。実線は、水噴射を実施したときの最大トルクを示しており、破線は、水噴射を実施しないときの最大トルクを示している。破線より機関トルクの大きな範囲(すなわち、ハッチングを施した範囲:以下、所定の運転領域ともいう。)は、水噴射を実施することにより運転領域が広がる範囲である。したがって、所定の運転領域は、機関回転速度が同じ場合に水噴射弁84から水を噴射しない運転領域よりも機関トルクが高い運転領域である。また、水噴射弁84からの単位時間当たり若しくはサイクル毎の水噴射量は、機関トルクに応じて変えており、ECU90は、同じ機関回転速度の場合において、機関トルクが大きいほど、水噴射量を多くする。なお、本実施例においては、図2の破線と実線とで囲まれるハッチングを施した範囲が、本発明における所定の運転領域に相当する。
そして、ECU90は、水噴射を実施する運転領域において、潤滑油中の水濃度が高いときには低いときよりも最大トルクを低下させることにより水噴射量の最大値(以下、最大水噴射量という。)を少なくする。ここで、所定の運転領域では、機関トルクが大きいほど水噴射量を多くしているため、機関トルクが大きいほど潤滑油中に水が混入し易くなる。このため、潤滑油中の水濃度が増加し易くなる。一方、機関トルクが小さいほど、水噴射量は少なくて済むため、内燃機関1の最大トルクが例えば図2の実線で示した機関トルクよりも小さければ、最大水噴射量を減少させることができる。そして、最大水噴射量が減少することにより、潤滑油中の水濃度の増加が緩和する。すなわち、潤滑油中の水濃度が高いときには低いときよりも最大トルクを低下させることにより最大水噴射量を少なくすることで、潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。なお、所定の運転領域よりも機関トルクが低い運転領域における最大トルク(すなわち、図2の破線)は、潤滑油中の水濃度によっては変化しない。ECU90は、最大トルクを減少させるときに、スロットル8の最大開度を減少することにより最大吸入空気量を減少させる。最大吸入空気量を減少させることにより、目標空燃比とするために必要となる最大燃料噴射量も減少するため、ECU90は、燃料噴射弁81からの最大燃料噴射量も減少させる。このようにして、最大トルクが低下するため、最大水噴射量を減少させることができる。
図3は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第一の図である。図3に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。図3においては、水濃度が制御閾値を超えると、最大トルクが減少されることにより最大水噴射量が減少される。なお、制御閾値は、水濃度の増加を緩和する必要のない水濃度の上限値である。したがって、潤滑油中の水濃度が制御閾値以下の場合の最大トルクは機関回転速度に応じて予め決定されている最大トルクであって、最大水噴射量が減少されていないときの最大トルクである(図2の実線参照。)。制御閾値を超えると、最大トルクが減少されるため、それに応じて、最大水噴射量も減少する。図3においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
また、図4は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第二の図である。図4に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。図4においては、水濃度が制御閾値を超えると、最大トルクが段階的に減少されることにより、最大水噴射量が段階的に減少される。図4においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。さらに、図4においては、水濃度が制御閾値よりも高いときに水濃度の増加に応じて最大トルクを段階的に減少させることにより最大水噴射量が段階的に減少されるので、この点でも、潤滑油中の
水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
また、図5は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第三の図である。図5に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。図5においては、水濃度が制御閾値を超えると、水濃度が高くなるほど、最大トルクを徐々に減少させることにより、最大水噴射量が徐々に減少される。図5においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。さらに、図5においては、水濃度が制御閾値よりも高いときに水濃度の増加に応じて最大トルクを徐々に減少させることにより最大水噴射量が徐々に減少されるので、この点でも、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
なお、図3、図4、図5では、水濃度が制御閾値を超える場合であっても、最大水噴射量は0にはならない。一方、以下のように、最大水噴射量が0になるまで最大トルクを減少させることで、水噴射を禁止するようにしてもよい。
図6は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第四の図である。図6に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。図6においては、水濃度が噴射閾値を超えると、最大トルクを減少させる。このときの最大トルクの減少量DTQは、図3に示した場合よりも大きく、図2の破線で示される機関トルクまで最大トルクを減少させる。これにより、最大水噴射量が0に設定される。すなわち、最大水噴射量を減少させることには、最大水噴射量を0にすることも含む。なお、噴射閾値は、潤滑油中の水濃度の許容範囲の上限値であり、これよりも水濃度が高くなると水噴射を禁止する水濃度である。図6においては、水濃度が噴射閾値以下の場合よりも、噴射閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるといえるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
また、図6では、水濃度が噴射閾値以下の場合には、最大トルク及び最大水噴射量を減少させていないが、これに代えて、水濃度が噴射閾値以下の場合であっても、水濃度の増加に応じて最大トルクを減少させることにより、最大水噴射量を減少させてもよい。
図7は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第五の図である。図7に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。図7においては、水濃度が噴射閾値を超えるまでは、水濃度が高くなるほど最大トルクが徐々に減少されることにより最大水噴射量が徐々に減少される。そして、水濃度が噴射閾値に達すると最大水噴射量が0になり、水噴射が実施されなくなる。水濃度が噴射閾値のときの最大トルクは、図2の破線で示される機関トルクである。図7においては、水濃度が噴射閾値以下の場合よりも、噴射閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるといえるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。さらに、図7においては、水濃度が噴射閾値以下のときに水濃度の増加に応じて最大トルクを徐々に減少させることにより最大水噴射量が徐々に減少されるので、この点でも、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
また、噴射閾値及び制御閾値とは関係なく、水濃度に応じて最大水噴射量を設定しても
よい。図8は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第六の図である。水濃度が高くなるほど、最大トルクを徐々に減少させることにより、最大水噴射量を徐々に減少させる。なお、最大トルクを段階的に減少させることにより、最大水噴射量を段階的に減少させてもよい。図8においては、水濃度が高いほど最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が減少されるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。
図9は、機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク及び最大水噴射量との関係を示した第七の図である。図9においては、水濃度が制御閾値を超えるまでは、最大トルク及び最大水噴射量を変化させず、水濃度が制御閾値から噴射閾値までの間で最大トルク及び最大水噴射量が徐々に減少される。噴射閾値における最大トルクは、水を噴射しない機関トルクであり、図2の破線で示される機関トルクである。このようにすることで、最大トルクは、制御閾値までは変化がなく、制御閾値から噴射閾値までの間は徐々に減少される。そして、水濃度が噴射閾値を超えると、水噴射量が0になり、水噴射が実施されなくなる。なお、制御閾値は噴射閾値よりも小さな値である。図9の破線で示すように、最大トルク及び最大水噴射量を段階的に減少させてもよい。図9においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。また、図9においては、水濃度が噴射閾値以下の場合よりも、噴射閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。また、図9においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、噴射閾値より高い場合の方が、最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が少なくなるため、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。さらに、図9においては、水濃度が制御閾値よりも高く且つ噴射閾値以下のときに、水濃度の増加に応じて最大トルクを徐々に減少させることにより最大水噴射量が徐々に減少されるので、この点でも、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも最大トルクを減少させることにより最大水噴射量を減少させているといえる。なお、図3−図9に示した関係は、予め実験またはシミュレーション等により求めてECU90に記憶させておくことができる。
図10は、本実施例に係る最大水噴射量の設定フローを示した第一のフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。所定の時間毎は、1サイクル毎としてもよいし、複数のサイクル毎としてもよい。本フローチャートは、図9に対応している。また、図10に示したフローチャートによって得られる水噴射フラグに応じて、図13に示したフローチャートにおいて水噴射が制御される。
ステップS101では、ECU90は、水噴射要求フラグがONであるか否か判定する。水噴射要求フラグは、要求機関トルクが、水噴射を実施する領域に入っている場合にはONとなり、入っていない場合にはOFFとなるフラグである。要求機関トルクが、図2に示した破線よりも大きい場合には、水噴射要求フラグがONとなり、図2に示した破線以下の場合には、水噴射要求フラグがOFFとなる。要求機関トルクは、アクセル開度センサ91により検出されるアクセル開度に応じた機関トルクである。すなわち、本ステップS101では、水噴射弁84からの水噴射を実施する運転領域で内燃機関1が運転されることが要求されているか否か判定しているといえる。ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS109へ進む。
ステップS109では、ECU90は、水噴射フラグをOFFにする。水噴射フラグは、水噴射を実行することができる状態のときにONとし、水噴射を実行することができない状態のときにOFFとするフラグである。後述の図13に示すように、ECU90は、所定の水噴射時期に水噴射フラグがONのときには水噴射弁84からの水噴射を実行し、所定の水噴射時期に水噴射フラグがOFFのときには水噴射弁84からの水噴射を実行しない。所定の水噴射時期は、水噴射を実施する場合における最適な水噴射時期であり、予め実験またはシミュレーション等により決定される。例えば、気筒2内に水を噴射する水噴射弁84を用いる場合には、吸気行程または圧縮行程において水噴射を実施する。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行されており、ステップS109が処理された後は、次回にフローチャートが実行されるまで、水噴射フラグがOFFのまま維持される。
ステップS102では、ECU90は、濃度センサ20により検出される潤滑油中の水濃度を取得する。ステップS102の処理が終了するとステップS103へ進み、ECU90は、ステップS102で取得された水濃度が噴射閾値以下であるか否か判定する。噴射閾値は、潤滑油中の水濃度の許容範囲の上限値であり、これよりも水濃度が高くなると水噴射を禁止する水濃度である。本ステップS103では、水噴射弁84からの水噴射を実施できるか否か判定しているといえる。ステップS103で肯定判定がなされた場合にはステップS104へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS108へ進む。
ステップS104では、ECU90は、ステップS102で取得された水濃度が制御閾値よりも高いか否か判定する。制御閾値は、水濃度の増加を緩和する必要のない水濃度の上限値である。本ステップS104では、水噴射量を減少させる必要があるか否か判定しているといえる。ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS106へ進む。
ステップS105では、ECU90は、最大水噴射量を設定する。本ステップS105では、ステップS102で取得された水濃度に応じて設定されるその時の機関回転速度に対応する最大トルクに応じて、最大水噴射量が設定される。ECU90は、ステップS102で取得された水濃度と、現時点の機関回転速度に対応する図9に示した関係と、から最大トルクを設定する。同時に、ECU90は、最大トルクに対応する最大水噴射量を設定する。これにより、水濃度が高いときは低いときよりも機関回転速度が同じ場合における最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が減少される。図9に示した関係は予め実験またはシミュレーション等により求めてECU90に記憶させておく。ステップS105の処理が終了するとステップS107へ進み、ECU90は、水噴射フラグをONとする。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行されており、ステップS107が処理された後は、次回にフローチャートが実行されるまで、水噴射フラグがONのまま維持される。
ステップS106では、ECU90は、通常の最大水噴射量になるように最大水噴射量を設定する。通常の最大水噴射量とは、図2において実線で示されるその時の機関回転速度に対応する最大トルクに応じた水噴射量であり、最大水噴射量を減少させない場合の最大水噴射量である。すなわち、本ステップS106では、ECU90は、最大トルクを図2において実線で示される最大トルク(通常の最大トルク)に設定する。同時に、ECU90は、最大水噴射量が通常の最大トルクに対応する通常の最大水噴射量となるように、最大水噴射量を設定する。
また、ステップS103で否定判定がなされた場合にはステップS108へ進んで、ECU90は、最大水噴射量を0に設定する。ECU90は、最大トルクを図2において破
線で示されるその時の機関回転速度に対応する最大トルクに設定する。同時に、ECU90は、最大水噴射量を最大トルクに応じて0に設定する。
図11は、本実施例に係る最大水噴射量の設定フローを示した第二のフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。図10に示されるフローチャートと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。図11に示したフローチャートは、図6または図7に対応している。また、図11に示したフローチャートによって得られる水噴射フラグに応じて、図13に示したフローチャートにおいて水噴射が制御される。
図11に示したフローチャートでは、ステップS103で肯定判定がなされた場合にはステップS110へ進む。ステップS110では、ECU90は、ステップS102で取得された水濃度と、図6または図7に示した関係と、から現時点の機関回転速度に対応する最大トルクを設定する。同時に、ECU90は、設定される最大トルクに応じて最大水噴射量を設定する。これにより、水濃度が高いときは低いときよりも機関回転速度が同じ場合における最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が減少される。ステップS110の処理が終了するとステップS107へ進み、水噴射フラグがONとされる。
図12は、本実施例に係る最大水噴射量の設定フローを示した第三のフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。図10または図11に示したフローチャートと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。図12に示したフローチャートは、図3−図5に対応している。また、図12に示したフローチャートによって得られる水噴射フラグに応じて、図13に示したフローチャートにおいて水噴射が制御される。
図12に示されるフローチャートでは、ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS111へ進む。ステップS111では、ECU90は、ステップS102で取得された水濃度と、図3、図4、図5の何れかに示した関係と、から現時点の機関回転速度に対応する最大トルクを設定する。同時に、ECU90は、設定される最大トルクに応じて最大水噴射量を設定する。これにより、水濃度が高いときは低いときよりも機関回転速度が同じ場合における最大トルクを減少させることにより最大水噴射量が減少される。ステップS111の処理が終了するとステップS107へ進む。このように、水濃度が高い場合に水噴射を実施したとしても、最大トルクが減少されることにより最大水噴射量が減少されるため、水濃度の増加を緩和することができる。
図13は、本実施例に係る水噴射の制御フローを示したフローチャートである。本フローチャートはECU90により、図10−図12に示した最大水噴射量を設定するフローチャートとは別々に所定の時間毎に繰り返し実行される。
ステップS121では、ECU90は、所定の水噴射時期であるか否か判定する。すなわち、水噴射を実施すると仮定した場合に、水噴射を実施する時期が到来したか否か判定される。ステップS121で肯定判定がなされた場合にはステップS122へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本フローチャートを終了させる。
ステップS122では、ECU90は、水噴射フラグがONであるか否か判定する。すなわち、本ステップS122では、水噴射を実施してもよい状態であるか否か判定している。ステップS122で肯定判定がなされた場合にはステップS123へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本フローチャートを終了させる。
ステップS123では、ECU90は、現時点における内燃機関1のトルクを算出する
。内燃機関1のトルクは、周知の技術により算出することができる。例えば、前サイクルにおける内燃機関1の気筒内の圧力を検出し、この圧力に基づいて機関トルクを算出してもよい。また、機関回転速度の変動を検出し、この変動に基づいて機関トルクを算出してもよい。さらに、吸入空気量に基づいて機関トルクを算出してもよい。ステップS123の処理が終了するとステップS124へ進む。
ステップS124では、ECU90は、水噴射量を算出する。水噴射量は、現時点の機関トルクに応じて算出される。現時点の機関トルクと水噴射量との関係は予め実験またはシミュレーション等により求めてECU90に記憶させておく。機関回転速度が同じであれば、現時点の機関トルクが大きくなるほど、水噴射量は多くなる。また、現時点の機関トルクが最大トルクである場合には、水噴射量は最大水噴射量に設定される。したがって、最大トルクが制限されている場合には、最大水噴射量も制限される。ステップS124の処理が終了するとステップS125へ進む。
ステップS125では、ECU90は、水噴射を実行する。ECU90は、ステップS124で算出した水噴射量に対応した時間、水噴射弁84を開弁する。これにより、気筒2内に水が噴射される。ステップS125の処理が終了すると、本フローチャートを終了させる。
なお、図13に示したフローチャートでは、水噴射を実行する毎に水噴射量を算出しているが、これに代えて、図10、図11、または図12のフローチャートが実行された後に水噴射量を算出した後は、次回に図10、図11、または図12のフローチャートが実行されるまでは、水噴射量を同じ量としてもよい。
ステップS124で算出される水噴射量は、潤滑油中の水濃度に応じて設定される最大水噴射量によって制限されるため、潤滑油中の水濃度が増加することを緩和できる。なお、本実施例においてはECU90が図10−図12の何れか1つに示したフローチャート、及び、図13に示したフローチャートを処理することにより、本発明における制御装置として機能する。
ここで、潤滑油中の水は潤滑油の温度が高くなることにより蒸発する。そうすると、潤滑油中の水濃度が低下する。したがって、内燃機関1の運転状態によっては、水濃度が低下し得る。また、ヒータ等により潤滑油を加熱することによっても、水濃度を低下させることができる。したがって、水濃度の増加を緩和しておけば、水濃度を低下させることができる時期が来るまで潤滑油の潤滑性能が許容範囲よりも低下することを可及的に抑制することができる。
以上説明したように本実施例によれば、潤滑油中の水濃度に応じて内燃機関1の最大トルクを設定することにより、水濃度の増加を緩和することができる。なお、潤滑油中に混入するものとしては、水の他にも燃料が挙げられる。しかし、潤滑油中の燃料濃度の増加によって生じる問題は、空燃比を制御し難くなることによるエミッション悪化であり、水とは別の手法により対策を行えばよい。
<実施例2>
本実施例では、気筒2内に水を噴射する水噴射弁84を用いる。したがって、本実施例においては水噴射弁84が、本発明における水噴射装置に相当する。そして、水噴射弁84からの水噴射量の他に、水噴射弁84からの水噴射時期についても潤滑油中の水濃度に応じて変更する。ここで、気筒2内に水を噴射する場合には、ピストン15が下死点近くに位置するときに水を噴射したほうが、広い空間に水を分散させることができるため、水の蒸発を促進させることができる。そうすると、水の気化潜熱により燃焼温度及び排気温
度が速やかに低下するため、水噴射の効果を速やかに得ることができる。しかし、ピストン15が下死点近くに位置するときに水噴射を実施すると、蒸発しないまま気筒2の壁面に水が到達し易くなる。したがって、気筒2の壁面に水が付着し易くなるため、潤滑油中の水濃度が上昇し易くなる。一方、ピストン15が上死点近くに位置するときに水噴射を実施すると、噴射された水がピストン15に当たり、その一部がピストン15に付着する。このため、水の蒸発が緩慢となる。しかし、ピストン15に水が付着することにより、気筒2の壁面に付着する水の量を減少させることができる。したがって、潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。また、ピストン15に水が付着しても、その後に水が蒸発するため、燃焼温度及び排気温度を低下させることはできる。
そこで本実施例では、潤滑油中の水濃度が高いときは低いときよりも、ピストン15が上死点により近ときに水噴射を実施する。この水噴射時期は、水の噴射を開始する時期としてもよい。
図14は、本実施例に係る機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク、最大水噴射量、水噴射時期との関係を示した図である。図14に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。最大トルク及び最大水噴射量は、図3に示した場合と同じである。例えば、潤滑油中の水濃度が制御閾値よりも高い場合の水噴射時期を390から330BTDCとし、潤滑油中の水濃度が制御閾値以下の場合の水噴射時期を300から180BTDCとする。図14においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、水噴射時期が排気上死点に近付くため、水濃度が高いときには低いときよりも水噴射時期を上死点に近付けるといえる。このようにして、潤滑油中の水濃度の増加を緩和することができる。図14に示した関係は、予め実験またはシミュレーション等により求めてECU90に記憶させておくことができる。
図15は、本実施例に係る最大水噴射量及び水噴射時期の設定フローを示したフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。なお、前述のフローチャートと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図15に示したフローチャートでは、ステップS111の処理が終了した場合には、ステップS201へ進む。ステップS201では、ECU90は、ステップS102で取得される水濃度と、図14に示される関係と、から水噴射時期を設定する。すなわち、所定の水噴射時期が設定される。ステップS201の処理が終了すると、ステップS107へ進む。
また、図15に示したフローチャートでは、ステップS106の処理が終了した場合には、ステップS202へ進む。ステップS202では、ECU90は、通常の水噴射時期となるように水噴射時期を設定する。通常の水噴射時期とは、図2において実線で示される最大トルクに対応する水噴射時期であり、潤滑油中の水濃度が制御閾値以下の場合の水噴射時期である。ECU90は、ステップS102で取得される水濃度と、図14に示される関係と、から水噴射時期を設定する。すなわち、所定の水噴射時期が設定される。ステップS202の処理が終了すると、ステップS107へ進む。そして、図15に示したフローチャートにより設定される水噴射時期を所定の水噴射時期として図13に示したフローチャートが実行される。なお、本実施例においてはECU90が図15に示したフローチャート、及び、図13に示したフローチャートを処理することにより、本発明における制御装置として機能する。
本実施例では、図14で説明したように、制御閾値を境に水噴射時期を排気上死点に近付けているが、これに代えて、潤滑油中の水濃度が高いほど、ピストン15が排気上死点
により近いときに水噴射時期を設定してもよい。この場合、潤滑油中の水濃度に応じて水噴射時期を、段階的に排気上死点に近づけてもよく、無段階に排気上死点に近づけてもよい。なお、ピストン15が圧縮上死点により近いときに水噴射時期を設定することによっても、ピストン15に水が付着し易くなるため、水濃度の増加を緩和することができる。ただし、水噴射時期を排気上死点に近付けた方が、長い時間をかけて水が蒸発するため、水の蒸発量をより多くすることができるので、より好ましい。
以上説明したように本実施例によれば、水噴射量の他に水噴射時期を潤滑油中の水濃度に基づいて変更することで、潤滑油中の水濃度の増加をより確実に緩和することができる。
<実施例3>
本実施例では、吸気通路4へ水を噴射する水噴射弁85を用いる。したがって、本実施例においては水噴射弁85が、本発明における水噴射装置に相当する。そして、本実施例では、水噴射弁85からの水噴射量の他に、水噴射弁85からの水噴射時期についても潤滑油中の水濃度に応じて変更する。ここで、吸気通路4内に水を噴射する場合には、吸気弁5が開いているときに水を噴射したほうが、吸気の流れに乗って水が気筒2内に運ばれるため、吸気通路4に付着して蒸発が緩慢となる水の量が少なくなる。したがって、吸気弁5が開いているときに水を噴射することにより水の蒸発が促進されて、水噴射の効果を速やかに得ることができる。しかし、液体のまま気筒2内に水が流入すると、気筒2の壁面に水が付着し易くなるため、潤滑油中の水濃度が上昇し易くなる。一方、吸気弁5が閉じているときに水噴射を実施すると、噴射された水が吸気通路4の壁面に当たり、その一部が吸気通路4の壁面に付着する。このため、水の蒸発が緩慢となる。しかし、吸気通路4の壁面に付着した水は、蒸発後に気筒2内へ流入するため、液体の水が気筒2の壁面に付着して潤滑油中の水濃度が増加することを抑制できる。また、吸気通路4の壁面に付着した水はその後に蒸発するため、燃焼温度及び排気温度を低下させることはできる。
そこで本実施例では、潤滑油中の水濃度が制御閾値よりも高いときには吸気弁5が閉じているときに水噴射を実施し、潤滑油中の水濃度が制御閾値以下のときには吸気弁5が開いているときに水噴射を実施する。なお、本実施例においては制御閾値が、本発明における濃度閾値に相当する。
図16は、本実施例に係る最大水噴射量及び水噴射時期の設定フローを示したフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。なお、前述のフローチャートと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図16に示したフローチャートでは、ステップS111の処理が終了するとステップS301へ進む。ステップS301では、ECU90は、吸気弁5が閉じているときに水噴射を実施するように水噴射時期を設定する。すなわち、所定の水噴射時期が、吸気弁5が閉じている時期に設定される。ステップS301の処理が終了すると、ステップS107へ進む。一方、ステップS106の処理が終了するとステップS302へ進み、ECU90は、吸気弁が開いているときに水噴射を実施するように水噴射時期を設定する。すなわち、所定の水噴射時期が、吸気弁5が開いている時期に設定される。ステップS302の処理が終了すると、ステップS107へ進む。そして、図16に示したフローチャートにより設定される水噴射時期を所定の水噴射時期として図13に示したフローチャートが実行される。なお、本実施例においてはECU90が図16に示したフローチャート、及び、図13に示したフローチャートを処理することにより、本発明における制御装置として機能する。
以上説明したように本実施例によれば、水噴射量の他に水噴射時期を潤滑油中の水濃度に基づいて変更することで、潤滑油中の水濃度の増加をより確実に緩和することができる。
<実施例4>
本実施例では、気筒2内に水を噴射する水噴射弁84を用いる。したがって、本実施例においては水噴射弁84が、本発明における水噴射装置に相当する。そして、本実施例では、水噴射弁84からの水噴射量の他に、水噴射弁84からの水噴射圧力についても潤滑油中の水濃度に応じて変更する。ここで、水噴射圧力が高い場合には、水の微粒化が促進されるために水が速やかに蒸発する。しかし、水噴射圧力が高いと、気筒2の壁面まで水が到達し易くなるため、潤滑油中の水濃度が増加し易くなる。そこで本実施例では、潤滑油中の水濃度が高いときには低いときよりも水噴射圧力を低くする。
図17は、本実施例に係る内燃機関1の概略構成を表す図である。図1と異なる点について主に説明する。水噴射弁84は、水通路50を介して水タンク51に接続されている。水タンク51内には、水を水タンク51から水噴射弁84へ向けて吐出するポンプ52が設けられている。水通路50の途中には、水の噴射圧力を調整するレギュレータ53が設けられており、余剰の水がリターン通路54を介して水タンク51へ戻される。レギュレータ53は、電気配線を介してECU90に接続されており、ECU90によりレギュレータ53が制御される。ECU90は、レギュレータ53を制御することによって水噴射弁84からの水噴射圧力を調整する。
図18は、本実施例に係る機関回転速度が一定と仮定した場合の潤滑油中の水濃度と、最大トルク、最大水噴射量、水噴射圧力との関係を示した図である。図18に示した関係は、機関回転速度毎に異なる。最大トルク及び最大水噴射量は、図3に示した場合と同じである。潤滑油中の水濃度が制御閾値よりも高いときには、制御閾値以下のときよりも、水噴射圧力を低くしている。図18においては、水濃度が制御閾値以下の場合よりも、制御閾値より高い場合の方が、水噴射圧力が低くなるため、水濃度が高いときには低いときよりも水噴射圧力を低下させているといえる。図18に示した関係は、予め実験またはシミュレーション等により求めてECU90に記憶させておくことができる。なお、本実施例では、潤滑油中の水濃度が高いほど、水噴射圧力を低くしてもよい。この場合、潤滑油中の水濃度に応じて水噴射圧力を、段階的に低くしてもよく、無段階に低くしてもよい。
図19は、本実施例に係る最大水噴射量及び水噴射圧力の設定フローを示したフローチャートである。本フローチャートはECU90により所定の時間毎に繰り返し実行される。なお、前述のフローチャートと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図19に示したフローチャートでは、ステップS111の処理が終了するとステップS401へ進む。ステップS401では、ECU90は、ステップS102で取得される水濃度と、図18に示される関係と、から水噴射圧力を設定する。ステップS401の処理が終了すると、ステップS107へ進む。
また、図19に示したフローチャートでは、ステップS106の処理が終了するとステップS402へ進む。ステップS402では、ECU90は、通常の水噴射圧力になるように水噴射圧力を設定する。通常の水噴射圧力とは、図2において実線で示される最大トルクに対応する水噴射圧力であり、水濃度が制御閾値以下の場合の水噴射圧力である。ECU90は、ステップS102で取得される水濃度と、図18に示される関係と、から水噴射圧力を設定する。ステップS402の処理が終了すると、ステップS107へ進む。そして、図19に示したフローチャートにより設定される水噴噴射圧力に応じて、図13
に示したフローチャートが実行される。なお、本実施例においてはECU90が図19に示したフローチャート、及び、図13に示したフローチャートを処理することにより、本発明における制御装置として機能する。
以上説明したように本実施例によれば、水噴射量の他に水噴射圧力を潤滑油中の水濃度に基づいて変更することで、潤滑油中の水濃度の増加をより確実に緩和することができる。
1 内燃機関
2 気筒
4 吸気通路
5 吸気弁
6 吸気側カム
7 排気通路
8 スロットル
9 排気弁
10 シリンダヘッド
11 排気側カム
13 クランクシャフト
14 コンロッド
15 ピストン
19 エアフローメータ
20 濃度センサ
41 吸気ポート
42 吸気管
71 排気ポート
72 排気管
81 燃料噴射弁
83 点火プラグ
84 水噴射弁
85 水噴射弁
90 ECU
91 アクセル開度センサ
92 クランクポジションセンサ

Claims (5)

  1. 内燃機関の吸気通路または気筒内に水を噴射する水噴射装置と、
    前記内燃機関の潤滑油中の水の濃度を推定または検出する水検出装置と、
    前記水噴射装置から水を噴射する所定の運転領域であり前記内燃機関の回転速度が同じ場合に前記水噴射装置から水を噴射しない運転領域よりも前記内燃機関のトルクが高い所定の運転領域であって前記内燃機関のトルクが大きいほど前記水噴射装置から噴射する水の量を多くする所定の運転領域において、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記内燃機関の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させる制御装置と、
    を備える内燃機関の制御システム。
  2. 前記水噴射装置は、前記内燃機関の気筒内に水を噴射し、
    前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときには低いときよりも、前記水噴射装置からの水噴射時期をピストンが上死点により近いときに設定する請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
  3. 前記水噴射装置は、前記内燃機関の吸気通路内に水を噴射し、
    前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が濃度閾値よりも高いときには吸気弁が閉じているときに前記水噴射装置から水を噴射させ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が前記濃度閾値以下のときには吸気弁が開いているときに前記水噴射装置から水を噴射させる請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
  4. 前記水噴射装置は、前記内燃機関の気筒内に水を噴射し、
    前記制御装置は、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときは低いときよりも前記内燃機関の回転速度が同じ場合における前記所定の運転領域の最大トルクを減少させることにより前記水噴射装置からの最大水噴射量を減少させ、且つ、前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度が高いときには低いときよりも前記水噴射装置からの水噴射圧力を低下させる請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
  5. 前記制御装置は、前記水噴射装置から水を噴射しない運転領域の最大トルクを前記水検出装置により推定または検出される潤滑油中の水の濃度によっては変化させない請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関の制御システム。
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