以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、この発明は以下の実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は発明の好ましい形態を示すものであり、発明の範囲を限定するものではない。
本実施例では、投影型表示装置の一例として、透過型液晶パネルを用いたプロジェクタについて説明する。しかし、本発明は、表示デバイスとして透過型液晶パネルを用いたプロジェクタに限らず、DLP、LCOS(反射型液晶)パネルなどの表示デバイスを用いたどのようなものであっても適用可能である。また、液晶プロジェクタには、単板式、3板式などが一般に知られているが、どちらの方式であっても良い。
本実施例の液晶プロジェクタは、表示するべき画像に応じて、液晶素子の光の透過率を制御して、液晶素子を透過した光源からの光をスクリーンに投影することで、画像をユーザに提示する。
以下、このような液晶プロジェクタについて説明する。
<全体構成>
まず、図1を用いて、本実施例の液晶プロジェクタの全体構成を説明する。
図1は、本実施例の液晶プロジェクタ100の全体の構成を示す図である。
本実施例の液晶プロジェクタ100は、CPU110、ROM111、RAM112、操作部113、画像入力部130、画像処理部140を有する。また、液晶プロジェクタ100は、さらに、液晶制御部150、液晶パネル151R、151G、151B、光源制御部160、光源161、色分離部162、色合成部163、光学系制御部170、投影光学系171を有する。また、液晶プロジェクタ100は、さらに、記録再生部191、記録媒体接続部192、通信部193を有する。さらに、撮像部194、表示制御部195、表示部196を有していてもよい。
CPU110は、液晶プロジェクタ100の各動作ブロックを制御するものあり、ROM111は、CUP110の処理手順を記述した制御プログラムを記憶するためのものである。RAM112は、ワークメモリとして一時的に制御プログラムやデータを格納するものである。またCPU110は、記録再生部191により記録媒体接続部192に接続されたUSBメモリ等の記録媒体から読みだされた静止画データや動画データを一時的に記憶し、ROM111に記憶されたプログラムを用いて、それらを再生することができる。また、CPU110は、通信部193より受信した静止画データや動画データを一時的に記憶し、ROM111に記憶されたプログラムを用いて、それぞれの画像や映像を再生したりすることもできる。また、撮像部194により得られた画像や映像を一時的にRAM112に記憶し、ROM111に記憶されたプログラムを用いて、静止画データや動画データに変換して記録媒体接続部192に接続されたUSBメモリ等の記録媒体に記録させることもできる。
また、操作部113は、ユーザの指示を受け付け、CPU110に指示信号を送信するものであり、例えば、スイッチやダイヤル、表示部196上に設けられたタッチパネルなどからなる。また、操作部113は、例えば、リモコンからの信号を受信する信号受信部(赤外線受信部など)で、受信した信号に基づいて所定の指示信号をCPU110に送信するものであってもよい。また、CPU110は、操作部113や、通信部193から入力された制御信号を受信して、液晶プロジェクタ100の各動作ブロックを制御する。
画像入力部130は、外部装置から映像信号を受信するものであり、例えば、コンポジット端子、S映像端子、D端子、コンポーネント端子、アナログRGB端子、DVI−I端子、DVI−D端子、HDMI(登録商標)端子等を含む。また、アナログ映像信号を受信した場合には、受信したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換する。そして、受信した映像信号を、画像処理部140に送信する。ここで、外部装置は、映像信号を出力できるものであれば、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話、スマートフォン、ハードディスクレコーダ、ゲーム機など、どのようなものであってもよい。
画像処理部140は、映像入力部130から受信した映像信号にフレーム数、画素数、画像形状などの変更処理を施して、液晶制御部150に送信するものであり、例えば画像処理用のマイクロプロセッサからなる。また、画像処理部140は、専用のマイクロプロセッサである必要はなく、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が画像処理部140と同様の処理を実行しても良い。画像処理部140は、フレーム間引き処理、フレーム補間処理、解像度変換処理、メニュー等のOSD重畳処理、歪み補正処理(キーストン補正処理)、エッジブレンディングといった機能を実行することが可能である。また、画像処理部140は、映像入力部130から受信した映像信号以外にも、CPU110によって再生された画像や映像に対して前述の変更処理を施すこともできる。
液晶制御部150は、画像処理部140からの映像信号を用いて、液晶パネル151R、151G、151Bの画素の液晶に印可する電圧を制御し、液晶パネル151R、151G、151Bの透過率を調整するもので、制御用のマイクロプロセッサからなる。また、液晶制御部150は、専用のマイクロプロセッサである必要はなく、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が液晶制御部150と同様の処理を実行しても良い。たとえば、画像処理部140に映像信号が入力されている場合、液晶制御部150は、画像処理部140から1フレームの画像を受信する度に、画像に対応する透過率となるように、液晶パネル151R、151G、151Bを制御する。液晶パネル151Rは、赤色に対応する液晶パネルであって、光源161から出力された光のうち、色分離部162で赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に分離された光のうち、赤色の光の透過率を調整するためのものである。液晶パネル151Gは、緑色に対応する液晶パネルであって、光源161から出力された光のうち、色分離部162で赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に分離された光のうち、緑色の光の透過率を調整するためのものである。液晶パネル151Bは、青色に対応する液晶パネルであって、光源161から出力された光のうち、色分離部162で赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に分離された光のうち、青色の光の透過率を調整するためのものである。
この液晶制御部150による液晶パネル151R、151G、151Bの具体的な制御動作や液晶パネル151R、151G、151Bの構成については、後述する。
光源制御部160は、光源161のオン/オフを制御や光量の制御をするものであり、制御用のマイクロプロセッサからなる。また、光源制御部160は、専用のマイクロプロセッサである必要はなく、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が光源制御部160と同様の処理を実行しても良い。また、光源161は、不図示のスクリーンに画像を投影するための光を出力するものであり、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプなどであっても良い。また、色分離部162は、光源161から出力された光を、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に分離するものであり、例えば、ダイクロイックミラーやプリズムなどからなる。なお、光源161として、各色に対応するLED等を使用する場合には、色分離部162は不要である。また、色合成部163は、液晶パネル151R、151G、151Bを透過した赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光を合成するものであり、例えば、ダイクロイックミラーやプリズムなどからなる。そして、色合成部163により赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の成分を合成した光は、投影光学系171に送られる。このとき、液晶パネル151R、151G、151Bは、画像処理部140から入力された画像に対応する光の透過率となるように、液晶制御部150により制御されている。そのため、色合成部163により合成された光は、投影光学系171によりスクリーンに投影されると、画像処理部140により入力された画像に対応する画像がスクリーン上に表示されることになる。
光学系制御部170は、投影光学系171を制御するものであり、制御用のマイクロプロセッサからなる。また、光学系制御部170は、専用のマイクロプロセッサである必要はない。例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が光学系制御部170と同様の処理を実行しても良い。また、投影光学系171は、色合成部163から出力された合成光をスクリーンに投影するものであり、複数のレンズ、レンズ駆動用のアクチュエータからなり、レンズをアクチュエータで制御して、投影画像の拡大、縮小、焦点調整などを行うことができる。
記録再生部191は、記録媒体接続部192に接続された記録媒体から静止画データや動画データを再生したり、また、撮像部194により得られた画像や映像の静止画データや動画データをCPU110から受信して記録媒体に記録したりするものである。また、通信部193より受信した静止画データや動画データを記録媒体に記録しても良い。記録媒体接続部192は、記録媒体と電気的に接続するインタフェースであって、記録再生部191は、記録媒体接続部192を介して記録媒体と通信するためのマイクロプロセッサもしくは専用回路からなる。また、記録再生部191には、専用のマイクロプロセッサを含む必要はなく、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が記録再生部191と同様の処理を実行しても良い。
通信部193は、外部機器からの制御信号や静止画データ、動画データなどを受信するためのものであり、例えば、無線LAN、有線LAN、USB、Bluetooth(登録商標)などであってよく、通信方式を特に限定するものではない。また、画像入力部130の端子が、例えばHDMI(登録商標)端子であれば、その端子を介してCEC通信を行うものであっても良い。ここで、外部装置は、液晶プロジェクタ100と通信を行うことができるものであれば、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話、スマートフォン、ハードディスクレコーダ、ゲーム機、リモコンなど、どのようなものであってもよい。
撮像部194は、本実施例の液晶プロジェクタ100の周辺を撮像して画像信号を取得するものであり、投影光学系171を介して投影された画像を撮影(スクリーン方向を撮影)することができる。撮像部194は、得られた画像や映像をCPU110に送信し、CPU110は、その画像や映像を一時的にRAM112に記憶し、ROM111に記憶されたプログラムに基づいて、静止画データや動画データに変換する。撮像部194は、レンズ、レンズを駆動するアクチュエータ、アクチュエータを制御するマイクロプロセッサ、レンズを介して取得した光学像を画像信号に変換する撮像素子、撮像素子により得られた画像信号をデジタル信号に変換するAD変換部などからなる。また、撮像部194は、スクリーン方向を撮影するものに限られず、例えば、スクリーンと逆方向の視聴者側を撮影しても良い。なお、撮像部194は投影光学系171が投影する範囲よりも広角を撮影出来る様に構成している。これにより、例えば複数のプロジェクタが、それぞれ投影領域を一部重畳させて、より広い投影画像を得るような場合には、他のプロジェクタが投影した映像の一部も撮影することが出来る。
表示制御部195は、液晶プロジェクタ100に備えられた表示部196に液晶プロジェクタ100を操作するための操作画面やスイッチアイコン等の画像を表示させるための制御をするものであり、表示制御を行うマイクロプロセッサなどからなる。また、表示制御部195専用のマイクロプロセッサである必要はなく、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が表示制御部195と同様の処理を実行しても良い。また、表示部196は、液晶プロジェクタ100を操作するための操作画面やスイッチアイコンを表示するものである。表示部196は、画像を表示できればどのようなものであっても良い。例えば、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイであって良い。また、特定のボタンをユーザに認識可能に掲示するために、各ボタンに対応するLED等を発光させるものであってもよい。
なお、本実施例の画像処理部140、液晶制御部150、光源制御部160、光学系制御部170、記録再生部191、表示制御部195は、これらの各ブロックと同様の処理を行うことのできる単数または複数のマイクロプロセッサあっても良い。または、例えば、ROM111に記憶されたプログラムによって、CPU110が各ブロックと同様の処理を実行しても良い。
<基本動作>
次に、図1、図2を用いて、本実施例の液晶プロジェクタ100の基本動作を説明する。
図2は、本実施例の液晶プロジェクタ100の基本動作の制御を説明するためのフローチャートである。図2の動作は、基本的にCPU110が、ROM111に記憶されたプログラムに基づいて、各機能ブロックを制御することにより実行されるものである。図2のフローチャートは、操作部113や不図示のリモコンによりユーザが液晶プロジェクタ100の電源のオンを指示した時点をスタートとしている。
操作部113や不図示のリモコンによりユーザが液晶プロジェクタ100の電源のオンを指示すると、CPU110は、不図示の電源部からプロジェクタ100の各部に不図示の電源回路から電源を供給するとともに、投影開始処理を実行する(S201)。具体的には、光源制御部160に指示して光源161の点灯制御、液晶制御部150に指示して液晶パネル151R、151G、151Bの駆動制御、画像処理部の動作設定などである。
次に、画像入力部130から入力信号変化があったか否かを判定する(S202)。入力信号変化が無かった場合にはS204に進み、入力信号変化があった場合は、入力切替処理を実行する(S203)。具体的には、入力信号の解像度、フレームレートなどを検知して、それに適したタイミングで入力画像をサンプリングし、必要な画像処理を実施した上で投影する。
次に、ユーザ操作があったか否かを判定する(S204)。ユーザによる操作部113やリモコンの操作が無かった場合にはS208に進み、ユーザ操作が行われた場合は、終了操作か否かを判定する(S205)。終了操作であった場合は、投影終了処理を実行し、終了する(S206)。具体的には、光源制御部160に指示して光源161の消灯制御、液晶制御部150に指示して液晶パネル151R、151G、151Bの駆動停止制御、必要な設定のROM111への保存などである。
ユーザ操作が終了操作でなかった場合には、ユーザ操作の内容に対応したユーザ処理を実行する(S207)。例えば、設置設定の変更、入力信号の変更、画像処理の変更、情報の表示などである。
次に、投影処理を実施する(S208)。投影処理に関しては後程詳しく説明する。
次に、通信部193からコマンド受信があったか否かを判定する(S209)。コマンド受信が無かった場合には、S202に戻る。コマンド受信があった場合には、終了操作か否かを判定する(S210)。終了操作であった場合は、S206に進む。終了操作ではなかった場合には、受信したコマンドの内容に対応したコマンド処理を実行する(S211)。例えば、設置設定、入力信号設定、画像処理設定、状態取得などである。
本実施例のプロジェクタ100では、画像入力部130より入力された映像のほか、記録再生部191により記録媒体192から読み出された静止画データや動画データの画像や映像をRAM112に展開して表示することもできる。また、通信部193から受信した静止画データや動画データの画像や映像をRAM112に展開して表示することもできる。
次に本実施例の特徴的な構成について詳しく説明する。
図3は本実施例における表示システムの構成の一例を示す図である。4台のプロジェクタ11a〜11dが、ハブ50を介して4本のLANケーブル40a〜40dで接続されている。なお、本実施例ではプロジェクタ同士をLANケーブルで接続する例を挙げて説明したが、プロジェクタ同士が相互に通信できるならば、どのような通信線を用いても良い。以降の説明は、図3に示される構成でマルチ投影を行った場合を例に挙げて説明を行う。
図4は、図1の画像処理部140の内部構成を詳しく説明するためのブロック図である。
画像処理部140は、各種画像処理部410,統計量取得部420から構成される。
元画像信号sig401は、画像入力部130から入力される。また、タイミング信号sig402は、元画像信号sig401に同期した垂直同期信号、水平同期信号、クロックなどのタイミング信号であって、元画像sig401の供給元から供給される。画像処理部140内の各ブロックは、タイミング信号sig402に基づいて動作するが、画像処理部140の内部でタイミング信号を作り直して使用してもよい。
各種画像処理部410は、画像信号sig401を入力とし、CPU110と連携して各種画像処理を施して生成した画像処理後信号sig403を統計量取得部に対して出力する。各種画像処理とは、IP変換、フレームレート変換、解像度変換、OSD表示、γ変換、色域変換、色補正、エッジ強調、台形歪補正などである。これらの画像処理の詳細については公知であるので説明を割愛する。
統計量取得部420は、各種画像処理部410が生成した画像処理後信号sig403を解析して統計量情報を取得する。ここで統計量情報とは、画像信号の色情報のヒストグラムなどである。統計量取得部420から出力された統計量情報は、信号sig404として、システムバスを介して液晶制御部150に入力される。
上記説明では、以降の説明を簡単化するために統計量取得部420は、各種画像処理部410より後ろにある例を説明したが、各種画像処理部410よりも前にある構成としても良い。
次に図5を用いてユーザによって行われるマルチ投影の設定に関して説明する。図5は、図3においてプロジェクタ11aで表示されるマルチ投影の設定を行うための操作画面の一例を示した図である。501はマルチ投影設定ダイアログであり、マルチ投影が何台で行われるかを設定するためのスピンボタン502、503が配置されている。ユーザはスピンボタン502、503を操作することにより、縦何台、横何台のマルチ投影を行うかを選択する事ができる。図3に示した例では縦2台、横2台の計4台でマルチ投影を行っているため、図5の操作画面でもユーザが同様の設定を行っている例を図示している。504はユーザが、いま操作しているプロジェクタの担当領域を指定するための操作画面である。図5は、左上に投影するプロジェクタ11aの設定画面を図示しているので、ユーザが担当領域を左上に設定した様子を表している。なお、図5に示されるマルチ投影の設定を行うための操作画面は一例であり、これに限定されない。マルチ投影の構成と、操作しているプロジェクタがどの領域を担当しているかを指定できる操作画面であれば、どのような操作画面であっても良い。図5に示した例のような操作画面によって、自プロジェクタのマルチ投影画面内における位置と、隣接するプロジェクタの位置を特定することが可能となる。図5の例では、マルチ投影画面内で左上に配置される事が分かるため、プロジェクタ11aのCPU110は、自プロジェクタの右側、下側、右下に隣接するプロジェクタが存在することも認識できる。
なお、本実施例では、マルチ投影の構成を専用の操作画面で設定する例を挙げて説明したが、設定値からマルチ投影の位置を推測するようにしても良い。例えばエッジブレンドの設定からマルチ投影の位置を推測するようにしても良い。一般的に、マルチ投影を行う場合、各プロジェクタの投影領域を少し重ねて、エッジブレンドを行い投影するケースが多い。エッジブレンドの設定は、マルチ投影を行う前に事前に設定されるため、エッジブレンドを行っている辺が分かれば、どの位置に他のプロジェクタが存在するか判定する事ができる。
図5のマルチ投影の設定や、エッジブレンドの設定がユーザによって行われると、CPU110によって、マルチ投影の設定値(縦、横の台数と自プロジェクタの担当領域)やエッジブレンドの設定値がROM110に保存される。以降の説明では、これらの設定値を総称してマルチ投影用のパラメータと記載する。
図6は、図2のS208における投影処理のフローチャートである。
投影処理が開始されると、CPU110は各種画像処理部410と統計量取得部420に各種画像処理の実施と統計量の取得の指示を行う(S601)。S601で実施される統計量取得処理では、CPU110が統計量取得部420から画像処理後信号sig403の画像の統計量を取得し、画像信号、時刻情報と共にRAM112に保存する。画像の統計量は前述の通り、画像信号の色情報のヒストグラムなどである。
次にCPU110はROM111のマルチ投影パラメータを読み取り、現在マルチ投影を行っているかを判定する(S602)。マルチ投影を行っていない場合は、S615に進む。マルチ投影を行っている場合、CPU110は、RAM112に保存されている他のプロジェクタと時刻同期を行った否かを判定するフラグを読み取り、他のプロジェクタと時刻同期を行ったかを判断する(S603)。このフラグは、プロジェクタの電源ON時に未実施状態に初期化されるように構成されており、時刻同期を行った後はCPU110によって、時刻同期を実施した事が記録される。よって、プロジェクタの電源ON後に他のプロジェクタと時刻同期を行う事となる。時刻同期が実施済みであった場合はS605に進み、未実施であった場合はS604に進み、時刻同期処理を行う。他のプロジェクタとの時刻同期処理はCPU110によって、通信部193を介して行われる。時刻同期処理の一例としてはSNTP(Simple Network Time Protocol)を用いる方法が挙げられる。なお、時刻同期の方法はSNTPに限定されず、どのような手法で行っても良い。
時刻の同期処理後、CPU110は前回の撮像から所定の時間が経過しているか判定する(S605)。なお、前回の撮像とはS606で行われる撮像処理の事である。撮像が行われてから所定時間が経過していない場合は、S613に進み、前回の撮像から所定の時間が経過している場合、もしくは一度も撮像が行われていない場合は、S606に進む。S605で所定の時間経過したかを判定する理由は、プロジェクタの輝度や色味の大きな変化は短時間では起こらないためである。プロジェクタの輝度低下や色味の変化は、長時間の投影によるランプや光学部品の劣化などが原因となるため、S605で前回との撮像時間の差を確認する事によって、短時間で多くの撮像を行う事を避け、電力消費を抑える効果が得られる。なお、本実施例では所定の時間間隔を空けて撮像を行う例を説明したが、投影処理の度に毎回撮像を実施するようにしても良い。その場合は、本実施例で説明するよりも多くの電力を消費する事となる。撮像処理S606では、CPU110は撮像部194に撮像を指示し、撮像された画像を時刻情報と共にRAM111に保存する。なお、撮像処理S606で保存された時刻情報がS605の判定に用いられる。
次にCPU110はRAM111に保存した撮像画像の解析処理を行う(S607)。撮像画像の解析処理とは撮像した画像から自プロジェクタが投影を担当する領域と、周辺プロジェクタが投影を担当する領域を認識する処理の事である。
撮像画像の解析処理を説明する前に、図7を用いて各プロジェクタが投影する画像と、各プロジェクタの撮像部194で取得される画像と、各プロジェクタの統計量取得部420で取得される統計量の関係に関して、図7を用いて説明する。
図7(a)はマルチ投影の全体の画像を示した図である。700が全体の画像であり、破線で区切られた700a、700b、700c、700dは、図3のプロジェクタ11a、11b、11c、11dの画像入力部130に入力される画像である。なお、説明を簡単化するため、エッジブレンドや台形歪補正は行わない場合の例を挙げて説明を行う。図7(b)の太線で囲った701aはプロジェクタ11aの撮像部194で取得される撮像画像である。各プロジェクタの撮像部194で取得される画像は、図で示した通り、プロジェクタが投影する範囲よりも広い範囲を撮像可能なように構成されている。図7(c)はプロジェクタ11aに入力される画像を拡大した図であり、破線で区切られた小さい矩形エリア702aは、統計量取得部420で統計量を取得する範囲を表した図である。画像の統計量は、破線で区切られた各エリアで取得される構成となっている。よって、画像の右側部分、画像の下側部分などの特定のエリアの画像の統計量を取得することも可能である。
S607の撮像画像解析処理では、撮像部194で取得される撮像画像701aから、プロジェクタに入力されている画像700aの部分の識別を行う。識別には画像のマッチングなどの技術を用いる。700aの部分を認識した後、自プロジェクタのマルチ投影用パラメータから、どの方向に隣接するプロジェクタが存在するか確認し、斜線で表現されている隣接するプロジェクタの画像領域の一部701bと701cを認識する。701bと701cのサイズは、700aの右辺、下辺から予め決められた幅を隣接するプロジェクタの画像範囲として認識しておく。
次に、CPU110は通信部193を介して他のプロジェクタの各種情報を取得する(S608)。各種情報とは、図5の設定画面で設定したマルチ投影用のパラメータと、各プロジェクタの統計量取得部420で取得される投影画像の統計量と、その統計量を取得した時刻情報などである。CPU110が他のプロジェクタの各種情報を取得する際には、S601で統計量取得処理を行った時刻を含めて、他のプロジェクタに対して各種情報取得の依頼を行う。他のプロジェクタのCPU110は、依頼に付加されている時刻情報を元に、S601で保存された統計量の中から時刻が近い物を選択して応答を返す。
次に、CPU110は他のプロジェクタから得られたマルチ投影用のパラメータから、隣接するプロジェクタを判定する(S609)。マルチ投影用のパラメータには、図5で説明した通り、マルチ投影画面内のどのエリアの画像を投影しているかの情報が含まれている。そのため、自プロジェクタの担当エリアと、取得された他のプロジェクタの担当エリアを比較する事により隣接するプロジェクタを判定可能である。
次に、CPU110は隣接するプロジェクタの統計量と自プロジェクタの統計量を比較し、統計量が所定の範囲内の差異であるかどうかを比較する(S610)。プロジェクタ11a、11bの場合では、図7(d)の斜線で示される703aと703bの範囲で統計量の比較が行われる。この統計量が近い場合には、プロジェクタ11aと11bに入力されている画像700aと700bは連続的な絵である事が分かるため、隣接するプロジェクタの接している辺の付近の画像は似ている画像である事が分かる。統計量が異なる場合には、700aと700bは非連続であることがわかる。統計量が所定の範囲以上異なっている場合には、以降の輝度や色味の比較処理をスキップしてS615に進む。図7(d)の説明では左右に隣接する例を挙げて説明したが、上下左右の全ての方向に対して、隣接するプロジェクタが存在すれば同様の統計量比較処理を上下左右の全ての方向に対して行う。このように構成することで、隣接するプロジェクタが異なった絵を表示している際に、輝度や色味を比較してしまい、誤った不具合の通知をユーザにしてしまうことを回避する事ができる。
統計量が近い場合、S607で解析した画像から、隣接したプロジェクタと自装置の輝度や色味情報に差異が発生していないか比較する(S611)。プロジェクタ11a、11bの場合では、図7(e)の斜線で示される704aと704bの範囲で画像の輝度や色味情報を比較する。輝度や色味を比較する範囲の704aと704bは、S610で統計量を比較した703a、703bと対応する範囲である。
次に、CPU110はS611で行った比較処理の結果、輝度や色味が所定値以上で異なっているかを判定する(S612)。輝度や色味の差異が所定値以上であった場合には、その時点の時刻をRAM112に記録しS613に進み、輝度や色味の差異が所定値未満であった場合には、RAM112に記録されている時刻情報をリセットしS615に進む。次に、CPU110はRAM112に記録されている輝度や色味の差異が確認された時刻を確認し、輝度や色味の差異が所定の時間以上続いているか判定する(S613)。このように一定時間以上の輝度や色味の差異をみることによって、外的要因(投影面の前を人が横切った場合など)による誤検知を回避する効果が得られる。輝度や色味の差異が所定の時間以上続いていた場合、CPU110は通信部193を介して輝度や色味のずれが発生している事をユーザに通知する(S614)。ユーザへの通知方法としては、例えばSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)を用いてメールで通知する方法などが挙げられる。より具体的には、不具合に関する情報を、ユーザの電子メールアドレスを宛先とした電子メールを外部のメールサーバに送る。そのメールサーバは、アドレス情報に従って電子メールを送信することで、ユーザはメールを受信し不具合の中身を認識することが出来る。なお、ユーザへの通知は輝度や色味がずれている事が通知できるならば、どのような通信内容で行っても良く、SNSを介したメッセージの通知であっても構わない。
なお、CP110は、1台の投影装置だけで画像を投影するモードでも、輝度や色味の経時変化による投影画像の画質低下を検出し、不具合が検出された場合に、通信部193を介して他の機器に送信することとしている。通知方法は上記の説明と同様に電子メールで行う。
ここで、複数台の投影装置で1つの画像を合成して投影するマルチ投影時(マルチ投影モード)に、投影装置の不具合として認識する輝度や色味の劣化の程度は、1台の投影装置だけで画像を投影するモード判定基準より厳しい。つまり、輝度や色味の経時変化による画質低下の度合いが、通常投影時よりも少ない変化で不具合判定をしている。マルチ投影時(マルチ投影モード)では、他のプロジェクタが投影した画像との間で輝度や色味のずれがわずかでも有ると、そのずれが目につきやすい。そのため、マルチ投影時での不具合の判定基準を、1台の投影装置だけで画像を投影する通常投影時(通常投影モード)の場合よりも厳しい条件で行っている。つまり投影モードに応じて、不具合の判定方法を変更している。
次に、CPU110は通常の不具合判定処理を実施する(S615)。通常の不具合判定処理とは、不図示の温度センサによる温度のチェックや、光源161の駆動時間が所定の値以上になっていないかといったチェックの事を指している。通常の不具合判定処理の際に異常が確認された場合、S614の処理と同様にユーザに対して異常を知らせる通知を行う。通知の手段はS614と同様にどのような手段を用いても良い。
以上、説明したように投影処理を実施することによって、マルチ投影を実施している際にはS602〜S614までの処理が実行され、隣接する他のプロジェクタと輝度や色味の差異が生じていないか確認できるようになる。これによって、複数の投影装置間で輝度や色味がずれてしまい、表示品位が低下してしまう不具合を検知する事が可能となる。
[その他の実施例]
本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、装置に供給することによっても、達成される。このとき、供給された装置の制御部を含むコンピュータ(またはCPUやMPU)は、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、上述のプログラムコードの指示に基づき、装置上で稼動しているOS(基本システムやオペレーティングシステム)などが処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、装置に挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれ、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。このとき、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行う。