JP2017198845A - 反射角度制御可透明材 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で選択的に反射させることが可能な反射角度制御可透明材を提供する。
【解決手段】
所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器20A,20B,20Cを備え、共振器20A,20B,20Cは、2以上の所定数の共振器20A,20B,20Cを含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、単位ユニットに含まれるそれぞれの共振器20A,20B,20Cは、共振器がアレイ状に配列された面内において、所定の方向を横方向、横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる。
【選択図】図3
【解決手段】
所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器20A,20B,20Cを備え、共振器20A,20B,20Cは、2以上の所定数の共振器20A,20B,20Cを含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、単位ユニットに含まれるそれぞれの共振器20A,20B,20Cは、共振器がアレイ状に配列された面内において、所定の方向を横方向、横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる。
【選択図】図3
Description
本発明は、所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で選択的に反射させることが可能な反射角度制御可透明材に関する。
光を制御する代表的な素子としてレンズおよびミラーが挙げられる。これらは、光をそれぞれ屈折、反射させることで光の進む方向を制御している。そして波の進む方向は、界面における波源から放射状に発生する素元波が集合的に形成する波面の向きである。反射という光が曲がる現象は、隣接する各波源との間に位相差が生じて、波面の向きが界面への入射前後で変化する現象と言うことができる。
光の進む方向を制御する技術の使用例として、移動体のフロントウィンドシールドに虚像を表示するヘッドアップディスプレイが知られている。例えば、特許文献1には、縦方向の拡大率を横方向の拡大率より小さくした凹面鏡を用いてフロントウィンドシールドに虚像を表示することで、虚像を拡大することができる技術が記載されている。
しかし、フロントウィンドシールドに対してヘッドアップディスプレイから投射される光の入射角と反射角とは等しくなるので(つまり、正反射するので)、運転者が視認できる範囲が限られてしまう。そこで、フロントウィンドシールドのより広い範囲に虚像を表示させながらも、運転者が視認可能であるような技術が求められていた。また、車両用のヘッドアップディスプレイに限らず、光学部材への光の入射角に対する反射角を制御できれば、光学機器の分野で種々の応用が期待できる。
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で選択的に反射させることが可能な反射角度制御可透明材を提供することにある。以下において所定の波長帯域に含まれ、共振波長として選択された光を「所定の波長の光」という。
本発明の実施形態に係る反射角度制御可透明材は、所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器を備え、前記共振器は、2以上の所定数の前記共振器を含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、前記単位ユニットに含まれるそれぞれの前記共振器は、前記共振器がアレイ状に配列された面内において、前記所定の方向を横方向、前記横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる。
本発明の実施形態に係る反射角度制御方法は、所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器を備え、前記共振器は、2以上の所定数の前記共振器を含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、前記単位ユニットに含まれるそれぞれの前記共振器は、前記共振器がアレイ状に配列された面内において、前記所定の方向を横方向、前記横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる反射角度制御可透明材を用意するステップと、前記反射角度制御可透明材に対して、前記所定の方向に垂直な方向へ電界振幅を有する光を入射させて、正反射と異なる反射角で反射させるステップと、を含む。
本発明の実施形態に係る反射角度制御可透明材によれば、所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で選択的に反射させることが可能である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
(反射角度制御)
最初に、第1実施形態の目的とする反射角度制御について説明する。まず、図1(A)は、一般的なガラス平板100にRGB3色の光が入射している様子を示す。図1(A)のように、一般的なガラス平板100のような透明材料では、RGB3色ともにその大半が透過し、数%は正反射する。
(反射角度制御)
最初に、第1実施形態の目的とする反射角度制御について説明する。まず、図1(A)は、一般的なガラス平板100にRGB3色の光が入射している様子を示す。図1(A)のように、一般的なガラス平板100のような透明材料では、RGB3色ともにその大半が透過し、数%は正反射する。
図1(B)は本実施形態に係る反射角度制御可透明材(以下、反射制御材1とする)にRGB3色の光が入射している様子の一例を示す。反射制御材1の反射面は、反射光の位相を制御できるメタサーフェスである。また、反射制御材1は、所定の波長帯域の光(例えばRGBのうちのG)を制御の対象とする。図1(B)に示されるように、反射制御材1は、RおよびBの光線を透過させて、Gの光を所望の角度へ反射させることができる。図1(B)の例では、Gの光のほとんどは正反射せずに、反射制御材1の反射面に対して垂直に反射している。そして、反射制御材1は、Gの光についてもある程度は透過させるため、透明な光学素子という特性も備えている。つまり、反射制御材1は、所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で選択的に反射させることが可能な透明性を有する光学素子である。
ここで、反射制御材1は、反射光の位相を制御する対象である光の波長帯域が狭ければ透明性を高めることができる。なぜならば、このような光の波長帯域が狭ければ、その他の広い波長帯域の光は透過するので、反射制御材1は実質的に透明になるからである。本実施形態に係る反射制御材1は、後述するように、特定の波長の光に対して共振する共振器を用いることによって、反射光を制御する光の狭帯域化を図っている。
(共振器の配置)
図2を用いて、本実施形態の反射制御材1における共振器20A,20B,20Cの配置を説明する。図2の上図は、共振器20A,20B,20Cがx軸とy軸とで作られるxy平面に配置される様子を示す平面図である。図2の下図は、上図と同じ共振器20A,20B,20Cをy軸に沿う方向に見た正面図である。以下において、共振器20A,20B,20Cを特に区別しない場合には、任意の一つであるとして共振器20と呼ぶ。
図2を用いて、本実施形態の反射制御材1における共振器20A,20B,20Cの配置を説明する。図2の上図は、共振器20A,20B,20Cがx軸とy軸とで作られるxy平面に配置される様子を示す平面図である。図2の下図は、上図と同じ共振器20A,20B,20Cをy軸に沿う方向に見た正面図である。以下において、共振器20A,20B,20Cを特に区別しない場合には、任意の一つであるとして共振器20と呼ぶ。
図2の例では、共振器20A,20B,20Cが単位ユニット30を構成する。このとき、本発明の「2以上の所定数」は3である。そして、単位ユニット30はx方向およびy方向にアレイ状に配置される。つまり、単位ユニット30が基材10に二次元的に繰り返し配置されている。図2では、単位ユニット30がx方向に配置される様子を示している。単位ユニット30のx方向の長さはピッチdである。
図2に示されるように、共振器20A,20B,20Cのそれぞれは縦横比(y方向の長さとx方向の長さとの比)が異なる形状を有する。そして、共振器20A,20B,20Cは、x方向のみに反射波の位相変化を生じるような周期構造になっている。本実施形態において、共振器20A,20B,20Cの高さ(z方向の長さ)は同じである。
(反射制御材の概略構成)
図3に例示されるように、反射制御材1は、可視光に対して透明な平板状の基材10に、導電性材料からなる共振器20A,20B,20Cを規則的に配列した構成(単位ユニット30)を有する。基材10は可視光全域における複素屈折率の虚部の値が略0の誘電体であって、例えば可視光に対して透明な樹脂であってもよいし、二酸化ケイ素(SiO2)等から形成されるガラスであってもよい。ここで、複素屈折率の虚部は吸収を表わす消光係数である。基材10の可視光全域における消光係数が0であれば、可視光は基材10に吸収されることなく透過する。複素屈折率の虚部の値が略0であるとは、厳密に0でなくても基材10がほとんど光を吸収せず、その用途に応じた透明性を備えると認められるならば非0の消光係数が許容されることを意味する。
図3に例示されるように、反射制御材1は、可視光に対して透明な平板状の基材10に、導電性材料からなる共振器20A,20B,20Cを規則的に配列した構成(単位ユニット30)を有する。基材10は可視光全域における複素屈折率の虚部の値が略0の誘電体であって、例えば可視光に対して透明な樹脂であってもよいし、二酸化ケイ素(SiO2)等から形成されるガラスであってもよい。ここで、複素屈折率の虚部は吸収を表わす消光係数である。基材10の可視光全域における消光係数が0であれば、可視光は基材10に吸収されることなく透過する。複素屈折率の虚部の値が略0であるとは、厳密に0でなくても基材10がほとんど光を吸収せず、その用途に応じた透明性を備えると認められるならば非0の消光係数が許容されることを意味する。
共振器20A,20B,20Cは、プラズモン共鳴を利用した共振器であり、設計自由度(例えば形状の選択の幅等)が比較的高い。また、共振器20A,20B,20Cの寸法は可視光の波長よりも小さいため、可視光に対して実質的に透明である。そのため、反射制御材1は透明性を有する。ここで、「共振器20A,20B,20Cの寸法は可視光の波長よりも小さい」とは、共振器20A,20B,20Cのx方向またはy方向の長さのうち最も長いものが可視光の波長の下限(約360[nm])よりも小さいことを意味する。
また、共振器20を構成する導電性材料としては、光共振を生じる所定の波長の可視光を反射させる場合に、固有のプラズマ周波数がその波長よりも短波長側である導体、例えば金、銀、またはアルミニウム等の金属を用いる。例えば、共振器20として金を用いた場合に、光共振を生じる所定の光は赤色領域の波長であり、例えば赤色半導体レーザーなどに対応した635[nm]などが含まれる。ここで、青や緑領域での光共振を望む場合等には、よりプラズマ周波数が短波長側の銀やアルミニウムを導電性材料として用い、共振器の光の入射方向に垂直な断面の長手方向の長さを短くすることで、共振波長を短波長側へシフトすることが可能である。
図3の例では、x軸とy軸とを含む平面に平行に基材10が配置され、基材10の一方の面の面上(z軸の負方向)に共振器20が設けられている。共振器20は、基材10の面上の一方向(図3の例ではx方向)の所定の長さ(ピッチd)の範囲に所定の間隔で配列された一組の共振器20A,20B,20Cを単位ユニット30とし、この単位ユニット30が基材10上のx方向(本発明の所定の方向および横方向)およびy方向(本発明の縦方向)にアレイ状に配置されている。すなわち、x方向にはピッチdの周期で異なる共振器20が、単位ユニット30を一周期として繰り返し周期的に配置され、y方向には、同じ光共振特性の共振器20が繰り返し配置される。
図3の破線は共振器20A,20B,20Cの共振波長(所定の波長)の入射光の波面であって、この例では、入射光はz軸の負から正の方向(矢印51の方向)に進む。入射光の電界の振動方向はy方向であり、磁界の振動方向はx方向である。そして、共振器20A,20B,20Cで反射して反射光が生じるが、共振器20A,20B,20Cはそれぞれ異なる光共振特性を有している。光共振特性の一つを具体的に挙げるとQ値である。ここで、Q値は共振の強度、つまり光の閉じ込めの強さを表す値である。光共振が生じると光の波長よりも小さな空間に光が閉じ込められるが、共振器20のQ値が大きいほど強く閉じ込められるので反射光の位相遅れが大きくなる。図3の例では、共振器20A,20B,20Cの順にQ値が大きくなり、反射光の位相が遅れる。そのため、反射光の波面は図3の実線のようになり、反射光は矢印52の方向に進む。つまり、反射光は入射光の正反射ではなく(z軸の正から負の方向ではなく)、x方向に傾いた方向に反射する。ここで、共振器20のQ値、ピッチd、および隣接する共振器20の間隔の少なくとも1つを変更することによって、反射光の進む方向を変化させることが可能である。このように、反射制御材1は、光共振特性の異なる共振器20を適切な周期で配置することによって、光を入射角とは異なる所望の角度で反射させることが可能である。
また、共振器20が光共振によって光閉じ込め効果を生じるのは、共振器20A,20B,20Cの共振波長の周辺の所定の波長帯域の光だけである。光共振は、電界方向の電子の振動により発生した局在型プラズモンと入射光とが、所定の共振波長で共鳴することにより生じる。この共振波長は、共振器20A,20B,20Cの導電性材料の種別および導電性材料の電界方向の大きさ等により決まる。その共振波長の周辺の波長帯域に含まれない光は反射制御材1を透過するので、反射制御材1は、所定の波長帯域の光だけを選択的に反射させる透明な光学素子となる。
また、反射制御材1は、単位ユニット30が基材10に二次元的に繰り返し配置されている。反射制御材1は、単位ユニット30のx方向(ピッチd)で略2πの位相差を有するので、x方向に隣接する単位ユニット30と反射光の波面を揃えることができる。言い換えると、1つの単位ユニット30の1つの共振器20が、x方向に隣接する他の単位ユニットの1つの共振器20と略2πの位相差を有するので、反射光の波面を揃えることができ、反射制御材1は回折格子として機能する。ここで、位相差が略2πであるとは、厳密に位相差が2πでなくても波面が揃って反射光が得られるならば位相差のずれが許容されることを意味する。
単位ユニット30のx方向のピッチdに並べられる共振器20の数は特に限定されないが、共振器20の共振の強さ(Q値)が徐々に大きくなる、または小さくなるように配置される必要がある。
(ピッチ)
ここで、ピッチdは以下のように求めることができる。図4のように、入射光の入射角θin、反射光の反射角θoutを反射制御材1のアレイ状に配列された共振器20が形成する反射面に垂直な直線に対する角度で定める。図4の左側の反射制御材1に向かう矢印が入射光であり、図4の右側の反射制御材1から離れる矢印が反射光である。そして、反射制御材1の制御対象である光の波長λ(所定の波長)を用いて、ピッチdは下記の式によって決められる。整数mは利用する回折光の次数である。
ここで、ピッチdは以下のように求めることができる。図4のように、入射光の入射角θin、反射光の反射角θoutを反射制御材1のアレイ状に配列された共振器20が形成する反射面に垂直な直線に対する角度で定める。図4の左側の反射制御材1に向かう矢印が入射光であり、図4の右側の反射制御材1から離れる矢印が反射光である。そして、反射制御材1の制御対象である光の波長λ(所定の波長)を用いて、ピッチdは下記の式によって決められる。整数mは利用する回折光の次数である。
d=mλ/(sinθout−sinθin)
例えば、光の波長λを532[nm]とし、入射角θinが30°、−1次回折光を利用して、反射制御材1に対して垂直に反射させたい場合、ピッチdは1.06[um]となる。また、例えば、光の波長λを532[nm]とし、入射角θinが45°、1次回折光を利用して、入射した方向に戻るようとしたい場合は、ピッチdは0.38[um]となる。このとき、380[nm]のピッチdの中に複数の共振器を配置することになる。反射制御材1の単位ユニット30は、上記の式で得られるピッチdをx方向の幅とする。一般に、正反射の角度と差異が大きい角度の回折作用を持たせるためには、ピッチdは狭くなる。
ここで、局在型プラズモンは、隣接して配置された場合に、電界が強く発生集中している領域と共振器の導電性材料(例えば、金属)とが重なると、共振器同士の相互作用が発生して、導電性材料による損失の増大、および、作成時の製造誤差による性能劣化が生じる可能性がある。本実施形態に係る反射制御材1では、仮にx方向の一周期の長さであるピッチdを500[nm]程度とし、この周期内に複数の共振器20を並べるためには、必然的に共振器の大きさや間隔は数10[nm]〜数100[nm]程度しか許容されない。このため、入射光の電界振幅を有する方向(電界方向)がx方向であるとすると、x方向に隣接する共振器同士の相互作用が生じるおそれがある。本実施の形態では、入射光の電界方向を共振器20の周期的配列の方向と直交するy方向としたことによって、ピッチdが狭い場合でも隣接する共振器との相互作用による悪影響を抑制することができる。
(共振器及び共振器アレイの製造方法)
本実施形態に係る共振器および共振器アレイは、直方体、楕円柱などの比較的簡易な構造の導体で形成される。よって、一般的なEB(Electron Beam)リソグラフィを用いて作製できる。EBリソグラフィとは、蒸着、スパッタリング、エッチング等を用いたプロセスである。
本実施形態に係る共振器および共振器アレイは、直方体、楕円柱などの比較的簡易な構造の導体で形成される。よって、一般的なEB(Electron Beam)リソグラフィを用いて作製できる。EBリソグラフィとは、蒸着、スパッタリング、エッチング等を用いたプロセスである。
以上に説明したように、本実施形態の反射制御材1は、所定の波長帯域の光を入射角とは異なる角度で反射させることが可能である。ここで、従来から知られる一般的な回折格子も光の反射角度を正反射から変化させることに用いられる。しかし、従来の一般的な回折格子は、波面を強めあう条件を満たす任意の波長に対して作用を発揮するため、各波長の光が波長に応じた異なる角度で回折される。このため、所定の波長帯域の光のみを選択的に回折させることはできなかった。本実施形態の反射制御材1は、異なる光共振特性を有する共振器20を用いることで、所定の波長帯域の光の反射角度を正反射から変化させることができる。
また、本実施形態の反射制御材1では、共振器20が導電性材料である。導電性材料としては例えば金属を選択できるが、金属固有のプラズマ周波数に基づいて金属の種類を選択することで、必要な波長の光の反射を制御することができる。
さらに、本実施の形態の反射制御材1は、共振器20A,20B,20Cが周期的に配列された方向(x方向)に垂直なy方向へ電界振幅を有する光によって光共振を生じるように、共振器20A,20B、20Cの導電性材料および形状を選択して構成した。これにより、y方向に電界振幅を有する共振波長の光を入射させたとき、隣接する共振器20の間で相互作用による悪影響を抑制しつつ、正反射と異なる反射角に制御して反射させることができる。
[第2実施形態]
以下に、第2実施形態に係る反射制御材1について説明する。重複説明を回避するために、第1実施形態と異なる共振器20の配置構成についてのみ説明する。図5に示されるように、共振器20A〜20Fが単位ユニット30を構成する。そして、図5の単位ユニット30は、基材10のx方向およびy方向にアレイ状に配置されている。単位ユニット30のx方向の長さはピッチdである。図2の例では単位ユニット30は3つの共振器20A,20B,20Cを含むが、図5の例では単位ユニット30はさらに多くの共振器20A〜20Fを含む。以下、共振器20A〜20Fを特に区別しない場合には、任意の一つであるとして共振器20と呼ぶ。
以下に、第2実施形態に係る反射制御材1について説明する。重複説明を回避するために、第1実施形態と異なる共振器20の配置構成についてのみ説明する。図5に示されるように、共振器20A〜20Fが単位ユニット30を構成する。そして、図5の単位ユニット30は、基材10のx方向およびy方向にアレイ状に配置されている。単位ユニット30のx方向の長さはピッチdである。図2の例では単位ユニット30は3つの共振器20A,20B,20Cを含むが、図5の例では単位ユニット30はさらに多くの共振器20A〜20Fを含む。以下、共振器20A〜20Fを特に区別しない場合には、任意の一つであるとして共振器20と呼ぶ。
図5に示されるように、共振器20A〜20Fのそれぞれは縦横比(y方向の長さとx方向の長さとの比)が異なる形状を有する。図5の例でもy方向が長手方向でx方向が短手方向である。入射光の電界の振動方向はy方向である。
一例として、共振器20A〜20Fは方形(直方体形状)であって、それぞれのx方向の幅が85[nm]で共通である。また、共振器20A〜20Fの中心間距離(隣接する共振器20同士の間隔)は131[nm]で共通である。そして、共振器20A〜20Fは、y方向の長さのみ互いに異なっている。ここで、xy平面に垂直に、y方向へ電界振幅を有する光を入射すると、ピッチd(例えば1050[nm])に応じた角度で回折光が発生する。入射光はy方向への電界振幅を持つために、共振器20A〜20Fのそれぞれにより発生する電界集中は、共振器20A〜20Fのそれぞれのy方向端で、互いにずれて生じる。そのため、x方向で隣接する共振器20の相互作用が発生しにくい。
(シミュレーション)
図6は、基材10として二酸化ケイ素を用いて、共振器20を金で直方体形状に構成して、x方向の幅85[nm]、z方向の高さ60[nm]、中心間距離131[nm]を共通にして、ピッチdを1050[nm]とした場合のシミュレーション結果の一例を示す。図6の横軸は入射光の波長を示し、縦軸は回折効率を示す。図6は、M={1,0,−1}として、(M,0)Tおよび(M,0)Rと示された6つの特性曲線を含む。(M,0)TはM次の透過回折効率、(M,0)RはM次の反射回折効率を示す。共振波長として635[nm]を選択する場合、+1次の反射回折効率が0.8%であるのに対して、−1次の反射回折効率は7.2%である。また、+1次の透過回折効率が1.1%であるのに対して、−1次の透過回折効率は12.0%である。このように、+1次光と−1次光との回折効率には大きな差が生じており、一般的な回折格子とは異なり、本実施形態に係る反射制御材1は、所定の波長帯域の光だけを選択的に反射させる透明な光学素子となっている。
図6は、基材10として二酸化ケイ素を用いて、共振器20を金で直方体形状に構成して、x方向の幅85[nm]、z方向の高さ60[nm]、中心間距離131[nm]を共通にして、ピッチdを1050[nm]とした場合のシミュレーション結果の一例を示す。図6の横軸は入射光の波長を示し、縦軸は回折効率を示す。図6は、M={1,0,−1}として、(M,0)Tおよび(M,0)Rと示された6つの特性曲線を含む。(M,0)TはM次の透過回折効率、(M,0)RはM次の反射回折効率を示す。共振波長として635[nm]を選択する場合、+1次の反射回折効率が0.8%であるのに対して、−1次の反射回折効率は7.2%である。また、+1次の透過回折効率が1.1%であるのに対して、−1次の透過回折効率は12.0%である。このように、+1次光と−1次光との回折効率には大きな差が生じており、一般的な回折格子とは異なり、本実施形態に係る反射制御材1は、所定の波長帯域の光だけを選択的に反射させる透明な光学素子となっている。
本実施形態の反射制御材1は、第1実施形態で説明した効果に加えて、回折効率の高い設計がしやすいとの効果を奏する。入射光が電界振幅を持つ方向(y方向)の長さを変化させる構造であるため、特性(特に共振波長)を変化させ易くなるからである。
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の部材などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
ここで、本実施形態においては、z軸の負から正の方向(図3の矢印51の方向)に進む入射光を例示し、共振器20は、基材10の入射光に対向する面の上に設けられていた。しかし、入射光は反対の方向(z軸の正から負の方向)に進んでもよい。また、共振器20は、基材10の入射光に対向する面とは別の面の上に設けられてもよい。また、共振器20は、一部または全てが基材10の内部に埋め込まれるように設けられてもよい。
また、各共振器20の高さ(光の入射方向であるz方向の長さ)が均一であれば、反射制御材1の製造上の難易度を低下させることができる。例えば、図5では共振器20は方形(直方体形状)であるが楕円柱形状であってもよい。共振器20が楕円柱形状の場合には、光の入射方向(図5のz方向)に垂直な面の縦横比は、断面である楕円の長径(y方向)と短径(x方向)との比になる。直方体を含む角柱や楕円柱は、製造上の難易度を大きく上げることはないと考えられ、共振器20の形状に適している。
また、上記の実施形態では、入射光の電界の振動方向はy方向であることを前提に説明したが、一部の電界の振動方向がy方向以外である入射光が用いられてもよい。
1 反射制御材(反射角度制御可透明材)
10 基材
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F 共振器
30 単位ユニット
100 ガラス平板
10 基材
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F 共振器
30 単位ユニット
100 ガラス平板
Claims (11)
- 所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器を備え、
前記共振器は、2以上の所定数の前記共振器を含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、
前記単位ユニットに含まれるそれぞれの前記共振器は、前記共振器がアレイ状に配列された面内において、前記所定の方向を横方向、前記横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる、反射角度制御可透明材。 - 前記単位ユニットに含まれるそれぞれの前記共振器は、光共振特性が互いに異なる、請求項1に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記共振器は、前記所定の方向に垂直な方向へ電界振幅を有する前記所定の波長の光によって光共振を生じる請求項1または2に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記光共振特性は、共振の強度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記共振器は、導電性材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。
- 可視光全域における複素屈折率の虚部の値が略0の誘電体である基材を備え、
前記導電性材料は、プラズマ周波数が前記所定の波長よりも短波長側である導体であって、
前記共振器は、前記基材の上、または内部に設けられる、請求項5に記載の反射角度制御可透明材。 - 前記共振器は、方形または楕円柱形状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記単位ユニットは、隣接する他の単位ユニットとの反射光の位相差が略2πとなるように配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記共振器の寸法は、可視光の波長よりも小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。
- 前記単位ユニットの前記所定の方向の前記一周期のピッチdは、
前記所定の波長をλ、前記アレイ状に配列された前記共振器が形成する面に対する前記所定の波長の光の入射角をθin、反射角をθout、整数で表される次数をmとしたときに、下記式
d=mλ/(sinθout−sinθin)
を満たす、請求項1から9のいずれか一項に記載の反射角度制御可透明材。 - 所定の波長で光共振を生じるアレイ状に配列された複数の共振器を備え、前記共振器は、2以上の所定数の前記共振器を含む単位ユニットを一周期として、所定の方向に周期的に配置され、前記単位ユニットに含まれるそれぞれの前記共振器は、前記共振器がアレイ状に配列された面内において、前記所定の方向を横方向、前記横方向に直交する方向を縦方向とするとき、寸法の縦横比が互いに異なる反射角度制御可透明材を用意するステップと、
前記反射角度制御可透明材に対して、前記所定の方向に垂直な方向へ電界振幅を有する光を入射させて、正反射と異なる反射角で反射させるステップと、
を含む反射角度制御方法。
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