JP6988375B2 - 光学素子 - Google Patents
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Description
R=|(Z1−Z2)/(Z1+Z2)|2 (1)
で表される。ここで、波動インピーダンスZは、真空の波動インピーダンスZ0と媒質の比誘電率εr、比透磁率μrを用いて
Z=Z0(μr/εr)1/2 (2)
で表される。以上から、媒質界面での反射光を抑制するには、それぞれの媒質の波動インピーダンスを整合する必要がある。しかしながら、光領域における光学材料は一般的にμr=1であるため、媒質の屈折率nと比誘電率εrおよび比透磁率μrの関係式である
n=εr 1/2μr 1/2 (3)
を用いると、光の反射率Rは
R=|(n2−n1)/(n2+n1)|2 (4)
で表される。したがって、異なる屈折率をもつ媒質の界面では反射光が必ず生じるということが一般的な考え方である。
(基本構造)
図2(a)、(b)に、本発明の実施形態1に係る光学素子の微細周期構造として、下部層(基板)101上に配置した微細周期構造である梁型構造体アレイ110を用いた例を示す。図2(a)、(b)はそれぞれ、梁型構造体アレイ110の一部を上部から見た図および側面から見た断面図である。なお、梁型構造体アレイ110の周期pは、1次以上の回折光が生じないよう、入射光の波長以下である。上記構造では、梁型構造体111を構成する材料の屈折率nが周囲媒質に比べて高い場合、入射光が梁型構造体111内部に強く閉じ込められた状態で梁型構造体111内部を伝搬する。このとき、入射光の波長をλ、梁型構造体111の厚みをh、梁型構造体111内部での光の等価屈折率をneff、任意の整数をmとした場合、
h=(λ/neff)×(m/2),(m=1,2,3・・・) (5)
を満足する近傍で、構造内部における多重光反射により強い光共鳴が生じる。なお、等価屈折率neffは梁型構造体111の幅w(光の伝搬方向に対して垂直方向の長さ)に依存するため、この梁型構造体111の幅wの変化のみで共鳴状態を制御できる。この光共鳴は入射光の電界・磁界の両者に応答するため、上記共鳴条件およびその付近において、梁型構造体111と周囲媒質から構成される複合構造120の比誘電率εrと比透磁率μrの変化が生じる。この複合構造120の波動インピーダンスZと屈折率nは、式(2)および式(3)より比誘電率εrと比透磁率μrの両者から決定されるため、上記共鳴の共鳴状態を梁型構造体111の幅wとその分布状態との組み合わせにより、波動インピーダンスZと屈折率nを基板上の位置に応じて個別に変化させることが可能となる。
wmin=0.6(λ/π)/(n1 2−n2 2)1/2 (6)
となり、この値以上の梁型構造体111の幅wを用いることが望ましい。
hmin=λ/(2n1) (7)
であり、この値以上の梁型構造体111の厚みhを用いる必要がある。
h2π=λ/({0.8(n1 2−n2 2)+n2 2}1/2−n2) (8)
となる。
(1/n3)(1−Rmax 1/2)/(1+Rmax 1/2)
<=(μr/εr)1/2
<=(1/n3)(1+Rmax 1/2)/(1−Rmax 1/2)
(9)
を満たすような比誘電率εrと比透磁率μrが望ましい。同様に、複合構造120と上部層の媒質(構造周囲の媒質)との界面による光反射については、上部層の媒質の屈折率n2、許容できる反射率の上限をRmax=0.1とするとき、
(1/n2)(1−Rmax 1/2)/(1+Rmax 1/2)
<=(μr/εr)1/2
<=(1/n2)(1+Rmax 1/2)/(1−Rmax 1/2)
(10)
を満たすような比誘電率εrと比透磁率μrが望ましい。
本実施形態1の構造を用いた光学素子の一例として、図4(a)に位相分布の位相変化量の勾配が線形かつ総位相変化量が0〜2π必要な一次元回折格子(グレーティング)を梁型構造体アレイ210で形成した例の断面図を示す。この例では、回折格子の周期P内を波長以下の梁型構造体周期pで分割し、所望の光学機能を実現する理想の空間的な位相分布に整合するように、それぞれの周期内の梁型構造体211の幅wを決定することで、図4(b)に示すような既存の位相回折格子と同等の機能の光学素子を実現できる。また、本構造は一定の構造厚みであるため、効率低下の一因となるシャドー効果が生じず、既存の位相回折格子と比較して高い回折効率を実現できる。
また、この他にも、上記のような梁型構造体211を用いることで、一方向にのみ集光機能を持ったシリンドリカルレンズと同等の機能をもつ光学素子を形成する例も考えられる。一般に集光機能を実現するために理想的な位相変化量φは、レンズ中心からの距離r、入射光の波長λ、焦点距離fを用いて次式で表される。
φ(r)=(2π/λ)×(f−(r2+f2)1/2)+2πm (11)
ここでmは正の整数である。図には示さないが、この場合も上記と同様に、式(11)に示すような所望の光学機能を実現する理想の位相分布に整合するように、梁型構造体211の数、幅w、分布を決定または最適化し、基板上に配置すればよい。
以上は、一次元方向のみ光の位相を制御し、光学機能を実現する素子について述べたが、その他の例として、図5(a)に二次元平面において光の位相を制御し、光学機能を実現する素子の上面図を示す。図5(a)に示す素子は、二次元方向において集光機能を有するレンズを上記の梁型構造体311で形成した例である。この実施形態では、位相変化量の勾配方向が極座標系の動径方向であるため、梁型構造体311を波長以下の周期pの間隔で円環状に配置し、所望の光学機能を実現する理想の位相分布に整合するように、梁型構造体311の幅wを決定する。これにより、式(11)または図5(b)に示すような位相分布を形成することに可能となり、通常のレンズやフレネルレンズに相当する機能を有する光学素子が実現できる。
(回折格子)
次に、図7(a)〜(d)に、本発明の実施形態2に係る光学素子の基板上の位置に対する位相変化量φと、微細構造体の例を示す。本実施形態2の構成では、梁型構造体511の幅wを位置の関数として連続的に変化させ、所望の光学機能を実現する理想の位相分布を形成することができる。この例は、実施形態1と異なり、位相分布の変化方向と梁型構造体511の長軸方向とが平行であり、所望の位相分布に整合するように連続的に梁型構造体511の幅wを変化させるように梁型構造体アレイ510を形成する。この方法により、従来の光学素子において生じていた、図7(a)の点線で示すような離散的(階段状)な位相分布の理想の位相分布からのズレに起因した素子の効率低下を、図7(a)の実線で示すように位相変化量φを位置xの関数として連続的に変化させ、理想の位相分布に近づけることで解決することができる。
また、この他にも、上記のような梁型構造体511を用いることで、一方向にのみ集光機能を持ったシリンドリカルレンズと同等の機能をもつ光学素子を形成する例も考えられる。図には示さないが、この場合も上記と同様に、式(11)に示すような所望の光学機能を実現する理想の位相分布に整合するように、梁型構造体511の幅wを位置xの関数として連続的に変化させ、基板上に単数または複数配置すればよい。
以上は、1次元方向のみ光の位相を制御し、光学機能を実現する素子について述べた。実施形態1と同様に、その他の例として、図8に、実施形態2に係る光学素子の2次元平面において光の位相を制御し、光学機能を実現する素子の上面図を示す。図8に示す素子は、2次元方向において集光機能を有するレンズを幅wを極座標系における位置の関数として連続的に変化させた梁型構造体611で形成した例である。この実施形態では、位相変化量の勾配方向が極座標系の動径方向であるため、梁型構造体611をレンズの中心から放射状に配置し、所望の光学機能を実現する理想の位相分布に整合するように、梁型構造体611の幅wをレンズの中心からの距離rの関数として連続的に変化させる。これにより、式(11)に示すような位相分布を形成することが可能となり、通常のレンズやフレネルレンズに相当する機能を有する光学素子が実現できる。
(基本構造)
上記では、1方向の寸法が波長以下の微細構造体で光共鳴を生じさせ、複合構造の比誘電率εrおよび比透磁率μrの変化による、実効的な波動インピーダンスZと屈折率nの制御により光学素子を形成する例であった。次に、上記の構造を2次元的に拡張し、直交する2方向の寸法が波長以下の構造による光学素子形成の例を示す。
上記の柱型構造体を用いた光学素子の一例として、図11(a)に、実施形態1および2と同様に、一次元回折格子を柱型構造体アレイで形成した例を示す。この例では、回折格子の周期P内を波長以下の柱型構造体811の周期pで分割し、所望の光学機能を実現する理想の空間的な位相分布に整合するように、それぞれの周期内の柱型構造体811の幅wを決定することで、図4(b)に示すような既存の位相回折格子と同等の機能の光学素子を実現できる。
また、この他にも、上記のような柱型構造体811を用いることで、偏光素子を形成することができる。一例として、図12(a)〜(c)に、本発明の実施形態3に係る光学素子の基板上の位置に対する位相変化量φと、偏光ビームスプリッタを構成する上面が長方形である柱型構造体911の例を示す。上記で説明したように、上面を長方形とすることで、直交する入射偏光に対して異なる位相変化量を与えることができる。
実施形態1〜3において説明した各微細構造体および光学素子の実装形態について例を示す。
図13に、本発明の実施形態4に係る光学素子の一例の断面図を示す。本実施形態4では、実施形態1〜3のいずれかの光学素子の微細構造体1011が下部層(基板)1001および上部層1002の材料によって埋め込まれている構成としたものである。図13に示すように、微細構造体1011の周囲を上部層1002を構成する他の材料で満たすことで、形成する光学素子に対して、外力からの保護効果や防塵効果を付加できる。また、下部層1001および上部層1002を構成する材料は、同一であっても異なっていてもよい。
図14に、本発明の実施形態5に係る光学素子の一例の断面図を示す。本実施形態5では、実施形態1〜3のいずれかの光学素子の微細構造体1111−1、1111−2が下部層(基板)1101の両面に形成されている構成としたものである。図14に示すように、微細構造体1111−1、1111−2を基板1101の両面に配置することで、一層のみの位相変調では困難な複雑な光波面の制御を実現することができる。このとき両面の微細構造体1111−1、1111−2の形状・分布は同一であっても異なっていてもよく、同一または異なる位相変調の重ね合わせとすることが可能である。
図15に、本発明の実施形態6に係る光学素子の一例の断面図を示す。本実施形態6では、実施形態1〜3のいずれかの光学素子の微細構造体1211が曲面を有する下部層(基板)1201上に形成されている構成としたものである。図15に示すように、例えば、微細構造体1211を曲面状の基板1201であるレンズ上に形成させることで、レンズによる位相変調に加えて、微細構造体1211による位相変調の効果を付加し、複雑な光波面の制御を実現することができる。または、微細構造体1211を曲面状の基板1201上に配置することで、曲面構造による位相変調の効果を打消し、光を直進させるような効果を実現することもできる。
図16に、本発明の実施形態7に係る光学素子の一例の断面図を示す。本実施形態7では、実施形態1〜3のいずれかの光学素子の微細構造体1311が発光ダイオードや面発光レーザといった発光素子1301の表面または上部層に形成されている構成としたものである。図16に示すように、発光素子1301上に微細構造体1311を配置することで、発光素子1301に指向性制御機能、偏光制御機能、ビーム整形機能、集光機能等を新たな付加することができる。また、発光素子1301としては、半導体レーザ、面発光レーザ、発光ダイオード、熱輻射光源等が挙げられる。
111、211、311、411、511、611 梁型構造体
110、210、510 梁型構造体アレイ
410 梁型構造体ユニット
710、810、910 柱型構造体アレイ
711、811、911 柱型構造体
1001、1101、1201、1301 下部層(基板)
1011、1111、1211、1311 微細構造体
1002 上部層
Claims (13)
- 基板と、前記基板上に繰り返し周期を有して形成された複数の構造体とを有する光学素子であって、前記複数の構造体により一次元回折格子が形成された光学素子において、
前記複数の構造体は、入射光の波長以下の間隔で配置されており、
前記複数の構造体の媒質の屈折率、ならびに前記複数の構造体の各々の光の伝搬方向の長さ、および前記複数の構造体の各々の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さは、前記複数の構造体と前記複数の構造体間の周囲媒質とからなる複合構造において光共鳴を引き起こす屈折率および長さであり、
前記複数の構造体の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さであって、前記一次元回折格子の短手方向の長さが、前記一次元回折格子の周期内における前記一次元回折格子の長手方向の位置の関数として連続的に変調されている、ことを特徴とする光学素子。 - 基板と、前記基板上に繰り返し周期を有して形成された複数の構造体とを有する光学素子であって、前記複数の構造体により一次元回折格子が形成された光学素子において、
前記複数の構造体は、入射光の波長以下の間隔で配置されており、
前記複数の構造体の媒質の屈折率、ならびに前記複数の構造体の各々の光の伝搬方向の長さ、および前記複数の構造体の各々の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さは、前記複数の構造体と前記複数の構造体間の周囲媒質とからなる複合構造において光共鳴を引き起こす屈折率および長さであり、
前記複数の構造体の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さであって、前記一次元回折格子の短手方向の長さが、前記一次元回折格子の周期内における前記一次元回折格子の長手方向の位置に応じて段階的に増加又は減少する、ことを特徴とする光学素子。 - 前記複数の構造体が配置される方向は、前記光の伝搬方向に対して垂直な単一の方向、または前記光の伝搬方向に対して垂直な互いに直交する2つの方向であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記複数の構造体が配置される方向は、前記光の伝搬方向に対して垂直な極座標系における動径方向であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記構造体の前記光の伝搬方向の長さが、前記構造体の媒質内での光の波長の半分より大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
- 前記構造体の媒質の屈折率をn1、前記周囲媒質の屈折率をn2、前記基板の媒質の屈折率をn3とするとき、n1>n2およびn1>n3を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
- 前記構造体の媒質の屈折率をn1、前記周囲媒質の屈折率をn2、前記構造体の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さをw、前記入射光の波長をλとするとき、w>=0.6×(λ/π)/(n1 2−n2 2)1/2を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
- 前記複合構造の比誘電率をεr、比透磁率をμr、前記周囲媒質の屈折率をn2、前記基板の媒質の屈折率をn3とするとき、
(1/n2)(1−0.11/2)/(1+0.11/2)<=(μr/εr)1/2<=(1/n2)(1+0.11/2)/(1−0.11/2)、
(1/n3)(1−0.11/2)/(1+0.11/2)<=(μr/εr)1/2<=(1/n3)(1+0.11/2)/(1−0.11/2)
を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。 - 前記複数の構造体の各々の前記光の伝搬方向に対して垂直方向の長さが前記基板上の位置によって周期的に変化していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
- 前記複数の構造体間の間隔が一定でないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光学素子。
- 前記複合構造が前記基板の両面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の光学素子。
- 前記基板の前記構造体が形成されている表面が曲面であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の光学素子。
- 発光素子をさらに備え、前記基板が前記発光素子の出射面を構成していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の光学素子。
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