以下、複数の実施形態による冷蔵庫を、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。図1および図2に示すように、冷蔵庫本体1は、前面が開口した縦長矩形箱状の断熱箱体2内に、複数の貯蔵室を設けて構成されている。具体的には、断熱箱体2内には、上段から順に、冷蔵室3、野菜室4が設けられ、その下方に製氷室5と小冷凍室6が左右に並べて設けられ、これらの下方に冷凍室7が設けられている。製氷室5内には、周知の自動製氷装置8(図1参照)が設けられている。なお、断熱箱体2は、基本的には、鋼板製の外箱2aと合成樹脂製の内箱2bとの間に断熱材2cを設けて構成されている。
前記冷蔵室3及び野菜室4は、いずれも冷蔵温度帯(例えば1〜5℃)の貯蔵室であり、それらの間は、プラスチック製の仕切板10により上下に仕切られている。なお、冷蔵室3の温度は約4℃、野菜室4の温度はそれよりやや高い約5℃が好ましいとされている。前記冷蔵室3の前面部には、ヒンジ開閉式の断熱扉3aが設けられ、前記野菜室4の前面には引出し式の断熱扉4aが設けられている。この断熱扉4aの背面部には、貯蔵容器を構成する下部ケース11が連結されている。下部ケース11の上部には、下部ケース11よりも小型の上部ケース12が設けられている。
前記冷蔵室3内は、複数の棚板13により上下に複数段に区切られている。図3に示すように、冷蔵室3内の最下部(前記仕切板10の上部)において、右側にはチルド室14が設けられ、その左側には卵ケース15と小物ケース16が上下に設けられ、さらに、これらの左側には貯水タンク17が設けられている。チルド室14には、チルドケース18が出し入れ可能に設けられている。チルド室14も貯蔵室を構成する。チルド室14の温度は、0℃ぐらいが好ましいとされている。貯水タンク17は、前記自動製氷装置8の製氷皿8aに供給する水を貯留するためのものである。
前記製氷室5、小冷凍室6、並びに冷凍室7は、いずれも冷凍温度帯(例えば−10〜−20℃)の貯蔵室であり、前記野菜室4と製氷室5および小冷凍室6との間は、断熱仕切壁19により上下に仕切られている。製氷室5の前面部には、引出し式の断熱扉5aが設けられており、その断熱扉5aの背面部に貯氷容器20が連結されている。小冷凍室6の前面部にも、図示はしないが貯蔵容器が連結された引出し式の断熱扉が設けられている。冷凍室7の前面部にも、貯蔵容器22が連結された引出し式の断熱扉7aが設けられている。
この冷蔵庫本体1内には、全体として詳しく図示はしないが、前記冷蔵室3及び野菜室4を冷却するための冷蔵用冷却器24(冷却器)と、前記製氷室5、小冷凍室6、冷凍室7を冷却するための冷凍用冷却器25との2つの冷却器を備える冷凍サイクルが組込まれる。冷蔵庫本体1の下端部背面側には、機械室26が設けられ、詳しく図示はしないが、この機械室26内に、冷凍サイクルを構成する圧縮機27及び凝縮器などが配設されていると共に、それらを冷却するための冷却ファンや除霜水蒸発皿28等が配設されている。冷蔵庫本体1の背面下部寄り部分には、全体を制御するマイコン等を実装した制御装置29が設けられている。
冷蔵庫本体1内の前記冷凍室7の背部には、冷凍用冷却器室30が設けられている。この冷凍用冷却器室30内に、下部に位置させて前記冷凍用冷却器25や除霜用ヒータ(図示せず)等が配設されていると共に、上部に位置させて冷凍用送風機31が配設されている。冷凍用冷却器室30の前面の中間部には、冷気吹出口30aが設けられ、下端部には、戻り口30bが設けられている。
この構成において、冷凍用送風機31が駆動されると、冷凍用冷却器25により生成された冷気が、前記冷気吹出口30aから製氷室5、小冷凍室6、冷凍室7内に供給された後、前記戻り口30bから冷凍用冷却器室30内に戻されるといった循環を行うようになっている。これにより、それら製氷室5、小冷凍室6、および冷凍室7が冷却される。尚、冷凍用冷却器25の下方部には、当該冷凍用冷却器25の除霜時の除霜水を受ける排水樋32が設けられている。その排水樋32に受けられた除霜水は、庫外の前記機械室26内に設けられた除霜水蒸発皿28に導かれ、蒸発するようになっている。
そして、冷蔵庫本体1内における前記冷蔵室3および野菜室4の背部には、前記冷蔵用冷却器24や、この冷蔵用冷却器24により生成された冷気を前記冷蔵室3(及び野菜室4)内に供給するための冷気ダクト34(ダクト)、前記冷気を循環させるための冷蔵用送風機35(送風機)等が、以下のようにして配設される。即ち、冷蔵庫本体1における冷蔵室3の最下段の後方(前記チルド室14の後方)には、冷気ダクト34の一部を構成する冷蔵用冷却器室36が設けられ、この冷蔵用冷却器室36内に冷蔵用冷却器24が配設されている。
冷蔵用冷却器室36の上方には、上方に延びる冷気供給ダクト37が設けられていて、冷蔵用冷却器室36の上端部が冷気供給ダクト37の下端部に連通している。この場合、冷蔵用冷却器室36と冷気供給ダクト37により、冷気ダクト34を構成している。冷蔵用冷却器室36の前部壁36aは、冷気供給ダクト37よりも前方へ膨出している。なお、前部壁36aの下方には、図6〜図8に示すように、当該前部壁36aよりも前方へ膨出した下部膨出部36cが設けられていて、上部の前部壁36aと下部の下部膨出部36cとの間に段部36bが形成されている。前部壁36aの裏側には、断熱性を有する断熱材38が設けられている。冷気供給ダクト37の前部には、冷蔵室3内に開口する冷気供給口39が複数個設けられている。
冷蔵用冷却器室36内の下部には、冷蔵用冷却器24の下方に位置させて、該冷蔵用冷却器24からの除霜水を受ける排水樋40が設けられている。この排水樋40に受けられた除霜水も、前記排水樋32で受けられた除霜水と同様に、庫外の前記機械室26内に設けられた除霜水蒸発皿28に導かれ、蒸発するようになっている。排水樋40の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法は、冷蔵用冷却器24の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法よりも大きく設定されていて、冷蔵用冷却器24から滴下する除霜水をすべて受けられる大きさに構成されている。
前記野菜室4の後方には、排水樋40の下方に位置させて、前記冷蔵用送風機35が配設されていると共に、送風ダクト42及び吸込み口43が設けられている。そのうち送風ダクト42は、上端部が排水樋40をう回するようにして冷蔵用冷却器室36(冷気ダクト34)に連通している。吸込み口43は、野菜室4において開口している。なお、冷蔵室3の底部を構成する仕切板10の後部の左右の両隅部には、図5に示すように、連通口44が形成されている(図5には右側の連通口44のみ示す)。この連通口44は、冷蔵室3とこれの下方の野菜室4とを連通させている。
この構成において、冷蔵用送風機35が駆動されると、主に図1の白抜き矢印で示すように、野菜室4内の空気が吸込み口43から冷蔵用送風機35側に吸い込まれ、その吸い込まれた空気は、送風ダクト42側へ吹き出される。送風ダクト42側へ吹き出された空気は、冷気ダクト34(冷蔵用冷却器室36および冷気供給ダクト37)を通り、複数の冷気供給口39から冷蔵室3内に吹き出される。冷蔵室3内に吹き出された空気は、連通口44を通して野菜室4内にも供給され、最終的に冷蔵用送風機35に吸い込まれるという循環が行われる。この過程で、冷蔵用冷却器室36内を通る空気が冷蔵用冷却器24に接触し冷却されて冷気となり、その冷気が冷蔵室3および野菜室4に供給されることによって、冷蔵室3および野菜室4が冷蔵温度帯の温度に冷却される。
前記冷気ダクト34のうち冷蔵用冷却器室36の前面側には、図2、図4に示すように、前方から見て右側で、前記チルド室14の後方に位置させて、ミスト用専用ダクト45が着脱可能に設けられている。このミスト用専用ダクト45は、図5〜図8にも示すように、冷蔵用冷却器室36の前部壁36aと、冷蔵用冷却器室36の前面に装着されたダクト構成部材46によって形成されていて、ミスト用専用ダクト45を形成するダクト構成部材46が前部壁36aに対して着脱可能な構成となっている。この場合、ミスト用専用ダクト45は、前部壁36aに沿って左右方向に長く、かつ前後方向の奥行き寸法が小さく、扁平な矩形箱状に形成されている。そして、このミスト用専用ダクト45内に、ミストを放出するためのミスト放出手段を構成する静電霧化装置48の主体部が収容されている。以下、この静電霧化装置48について詳述する。
静電霧化装置48は、図9に示すように、ミスト放出部50を有するミスト発生ユニット51と、前記ミスト放出部50に負の高電圧を印加するための電源装置(トランス)52とを備えて構成されている。ミスト発生ユニット51は、ミスト放出部50に水分を供給する給水部53を備えている。給水部53は、左右方向に延びる水平部53aと、この水平部53aの右端部から下方に延びる垂直部53bとを有し、正面から見て逆L字状をなしていて、L字状をなすケース54内に、保水材55を収容して構成されている。したがって、給水部53は、水平部53aと垂直部53bとの間に屈折部53cを有している。給水部53における水平部53aと垂直部53bは、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように当該前部壁36aに沿って配置されている。
保水材55は、例えば繊維を絡ませたフェルト状のもので、吸水性および保水性に優れていて、後述する貯水容器56に貯留された水(除霜水)を毛細管現象により吸い上げる。なお、保水材55は、水を毛細管現象で吸い上げることができれば、連続発泡体のものでもよい。給水部53の水平部53aは、ミスト用専用ダクト45内のやや右寄りに配置され、垂直部53bの下端部は、図8に示すように、ダクト構成部材46の下部、前記冷蔵用冷却器室36の前部の段部36bに形成された孔を貫通して冷蔵用冷却器室36内の下部の前部に挿入されている。保水材55の外周はケース54により覆われている。保水材55において、水平部53aの部分と垂直部53bとの部分とを別々の部材で構成してもよい。保水材55は、貯水容器56からミスト放出部50まで水を移送する給水部材を構成する。
冷蔵用冷却器室36内の下部の前部には、貯水部を構成する貯水容器56(図8参照)が設けられている。この貯水容器56は、冷蔵用冷却器24とこれの下方に存する前記排水樋40との間で、かつ前記給水部53の下方に位置させて、前部を冷蔵用冷却器室36の下部膨出部36cに取り付けることによって、後方へ突出するような片持ち状態に設けられている。この場合、貯水容器56の前部を取り付けた下部膨出部36cは、前部壁36aの下方にあって当該前部壁36aよりも前方へ膨出(突出)している。前部壁36aを第1の膨出部とすると、下部膨出部36cはこれよりも前方へ突出した第2の膨出部となっている。貯水容器56は、下部膨出部36cへの取り付け状態で、冷蔵用冷却器24、および冷蔵用冷却器室36の後面を形成する内箱2bから離間している。冷蔵用冷却器24は、冷蔵用冷却器室36の後面を形成する内箱2bに接触している。
前記給水部53における垂直部53bの下端部は、ダクト構成部材46の下部、前記冷蔵用冷却器室36の前部の段部36bに形成された孔を貫通して、貯水容器56内に上方から挿入されている。貯水容器56は、冷蔵用冷却器24から滴下する除霜水を受けて貯留する。給水部53の保水材55は、前述したように貯水容器56に貯留された水(除霜水)を毛細管現象により吸い上げて前記ミスト放出部50に供給する。
貯水容器56の後部側の先端部の上部には、他よりも低く設定された溢水部56aが形成されていて、貯水容器56内に貯留された水が溢れる場合には、その溢水部56aから溢れることになる。その溢水部56aは、前記排水樋40の上方に位置していて、その溢水部56aから溢れた水は排水樋40にて受けられ、機外の除霜水蒸発皿28へ排出されるようになる。
給水部53における水平部53aに、ミスト放出部50が設けられている。ミスト放出部50は、それぞれ突部を構成する複数本のミスト放出ピン57によって構成されている。ミスト放出ピン57は、水平部53aの上部側に上向きに、複数本この場合4本が左右方向の横一列状に並び、かつそれぞれ離間して配置されているとともに、水平部53aの下部側に下向きに、複数本この場合4本が左右方向の横一列状に並び、かつそれぞれ離間して配置されている。したがって、ミスト放出部50は、異なる方向(上方と下方)に向けて突出する複数のミスト放出ピン(突部)57により構成されている。また、ミスト放出部50は、複数のミスト放出ピン(突部)57が、給水部53における水平部53aを間にして上下の反対方向に延びるように配置されている。また、複数のミスト放出ピン(突部)57は、上下2段に配置されている。各ミスト放出ピン57は、前記冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように沿って配置されている。ミスト放出部50は、冷蔵室3の下方後部であって野菜室4に隣接する位置に設けられ、チルド室14の後方に配置されている。
各ミスト放出ピン57は、例えば、ポリエステル繊維と、導電性物質としてのカーボン繊維を混ぜて撚り合わせてピン状(棒状)に形成したもので、保水性及び水の吸い上げ特性を有するとともに、導電性を有している。各ミスト放出ピン57には、白金ナノコロイドを担持させている。白金ナノコロイドは、例えば、当該白金ナノコロイドを含む処理液にミスト放出ピン57を浸漬して、これを焼成することによって担持させることができる。各ミスト放出ピン57は、基端部を、前記給水部53におけるケース54を貫通して前記保水材55に接触させている。給水部53における水平部53aの左端部には、受電用の電極を構成する受電ピン58が左向きに突出するように設けられている。受電ピン58の基端部は、ケース54内において前記保水材55に接触している。
前記電源装置52は、ミスト用専用ダクト45内において、前記ミスト発生ユニット51の左側に位置させて固定状態に設けられている。この電源装置52の右端部には、リード線60が接続された、ファストン端子からなる給電端子61が設けられていて、この給電端子61に、ミスト発生ユニット51の前記受電ピン58が接続されている。
前記電源装置52は、周知のように、高周波電源(交流電源)を直流に変換する高圧トランスを含む整流回路や、昇圧回路等を備えていて、負の高電圧(例えば−6kV)を発生させ、給電端子61を介して前記受電ピン58に出力するようになっている。
これにより、電源装置52からの負の高電圧が、受電ピン58から、保水材55の水分を介して各ミスト放出ピン57に印加され、各ミスト放出ピン57が負に帯電するようになっている。また、この場合、冷蔵庫本体1の外箱2aは、アース線(図示せず)などを介して接地されるようになっている。
このように構成された静電霧化装置48においては、貯水容器56の水が保水材55により吸い上げられて各ミスト放出ピン57に供給された状態で、各ミスト放出ピン57に、電源装置52からの負の高電圧が印加される。このとき、各ミスト放出ピン57の先端部に電荷が集中し、当該先端部に含まれる水に表面張力を超えるエネルギーが与えられる。これにより、各ミスト放出ピン57の先端部の水が分裂(レイリー分裂)して、先端部から微細なミスト状に放出されるようになる(静電霧化現象)。ここで、ミスト状に放出された水粒子は、負に帯電しており、そのエネルギーによって生成したヒドロキシラジカルを含んでいる。
従って、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルが各ミスト放出ピン57からミストとともに放出されるようになり、当該ヒドロキシラジカルの作用によって除菌や脱臭が可能となる。この場合、負に帯電したミスト放出ピン57に対応する対極を設けていない。そのため、ミスト放出ピン57からの放電自体が非常に穏やかになり、放電電極と対極との間でコロナ放電が発生することなく、有害ガス(オゾンや、当該オゾンが空気中の窒素を酸化することによって発生する窒素酸化物、亜硝酸、硝酸など)の発生を抑えることができる。
ここで、ミスト放出ピン57(ミスト放出部50)は、ヒドロキシラジカルという除菌成分(脱臭成分でもある)を放出する除菌成分放出手段(脱臭成分放出手段でもある)ということができ、静電霧化装置48は、除菌成分発生手段(脱臭成分発生手段)ということができる。
前記ミスト用専用ダクト45の後壁を構成する冷蔵用冷却器室36の前部壁36aには、風供給口62a(図4、図6参照)が設けられている。この風供給口62aは、上下のミスト放出部50(ミスト放出ピン57)に対向するような位置に位置させて、上下に2個配置されている。各風供給口62aは、横長な矩形状に形成されている。風供給口62aの後ろ側には、通風路62b(図6参照)が設けられている。この通風路62bは、図6に示すように、断熱材38の前部に上下方向に延びるように形成されていて、下端部は開口して冷蔵用冷却器室36内に連通し、上部は前記風供給口62aを通してミスト用専用ダクト45内に連通している。したがって、冷蔵用送風機35の駆動時には、送風ダクト42から冷蔵用冷却器室36側へ吹き出された空気の多くは、冷蔵用冷却器24を通って上方の冷気供給ダクト37側へ流れるが、一部の空気は、冷蔵用冷却器24を通過せずに、冷蔵用冷却器24の手前側から通風路62bを通り、2個の風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給されるようになっている(図6の矢印A1参照)。風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給された空気は、ミスト用専用ダクト45内で対流するようになる。
電源装置52の上方には、冷蔵用冷却器室36の前部壁36aの裏側に位置させて、上方に延びる冷蔵室向けミスト用ダクト63(図4、図7参照)が設けられている。この冷蔵室向けミスト用ダクト63は、下端部がミスト用専用ダクト45内において開口して冷蔵室用ミスト吹出口63aとされ、上端部が冷気ダクト34における冷気供給ダクト37内に連通している。したがって、ミスト用専用ダクト45内に発生したミストの一部は、冷蔵室用ミスト吹出口63aから冷蔵室向けミスト用ダクト63、冷気供給ダクト37を通り、冷気供給口39から冷蔵室3内に供給されるようになっている(図4、図7の矢印B1参照)。
ミスト用専用ダクト45におけるダクト構成部材46の前面部(上面とは異なる位置)には、前記電源装置52の上方に位置させて、チルド室用ミスト吹出口65(図4、図7参照)が設けられていて、そのチルド室用ミスト吹出口65からチルド室14内にミストの一部が供給される(図4、図7の矢印B2参照)。また、ダクト構成部材46の前面部において、チルド室用ミスト吹出口65の左側に位置させて、卵ケース用ミスト吹出口66(図4参照)が設けられていて、その卵ケース用ミスト吹出口66から卵ケース15内にもミストの一部が供給されるようになっている(図4の矢印B3参照)。
さらに、ミスト用専用ダクト45の右側の下部には、図5に示すように、野菜室用ミスト吹出口67が設けられている。この野菜室用ミスト吹出口67は、前記連通口44に連通していて、ミスト用専用ダクト45内のミストの一部は、野菜室用ミスト吹出口67、連通口44を通して野菜室4内にも供給されるようになっている。
ミスト用専用ダクト45の上部には、ミスト放出部50の上方に位置させて、チルド室用冷気供給口68(図4、図6、図8参照)が設けられている。このチルド室用冷気供給口68は、図8に示すように、後部が断熱材38を貫通して冷蔵用冷却器室36に連通し、前部がミスト用専用ダクト45を貫通してチルド室14に連通している。したがって、冷蔵用冷却器室36の冷蔵用冷却器24を通過した直後の冷気の一部は、そのチルド室用冷気供給口68を通してチルド室14に直接供給されるようになっていて(図6、図8の矢印A2参照)、その冷気により、チルド室14の温度は0℃ぐらいに保持される。また、断熱材38は、冷蔵用冷却器24とミスト放出部50の間の絶縁手段をも兼ねている。
次に、上記構成の作用について述べる。上記したように、冷蔵室3および野菜室4を冷却する際には、冷蔵用冷却器24により冷却された冷気(冷蔵用冷却器24を通過後の冷気)が、冷蔵用送風機35の送風作用により、主に図1に白抜き矢印で示すように、冷気供給ダクト37を通り、複数の冷気供給口39から冷蔵室3内に供給されるとともに、一部がチルド室用冷気供給口68からチルド室14内に直接供給される(図6、図8の矢印A2参照)。冷蔵室3内およびチルド室14に供給された冷気は、食品などの貯蔵物の冷却に寄与した後、合流して、連通口44から野菜室4内にも供給される。野菜室4内に供給された冷気は、野菜などの貯蔵物の冷却に寄与した後、吸込み口43から冷蔵用送風機35側に吸い込まれ、再び冷蔵用冷却器24により冷却されるという循環を繰り返す。
また、この冷蔵室3および野菜室4の冷却時には、冷蔵用冷却器室36内を流れる空気のうち、冷蔵用冷却器24を通過する前の空気の一部が、図6に矢印A1で示すように、通風路62bを通り、2個の風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給される。ミスト用専用ダクト45内に供給された空気は、ミスト発生ユニット51のミスト放出部50(ミスト放出ピン57)やダクト構成部材46の内面にぶつかり、ミスト用専用ダクト45内を対流して拡散していく。
このとき、静電霧化装置48が駆動されていると、ミスト発生ユニット51における複数の各ミスト放出ピン57から、前述したようにヒドロキシラジカルを含んだ微細なミストが放出される。ミスト放出ピン57から放出されたミストの一部は、図7の矢印B1で示すように、ミスト用専用ダクト45内を対流する空気に乗って、冷蔵室用ミスト吹出口63aから冷蔵室向けミスト用ダクト63、冷気供給ダクト37を通り、冷気供給口39から冷蔵室3内に供給される。
また、ミスト放出ピン57から放出されたミストの一部は、図4および図7の矢印B2で示すように、チルド室用ミスト吹出口65からチルド室14内に供給されるとともに、図4に矢印B3で示すように、卵ケース用ミスト吹出口66から卵ケース15内にも供給される。さらに、ミスト放出ピン57から放出されたミストの一部は、右下部の野菜室用ミスト吹出口67から連通口44を通して野菜室4内にも供給される。
したがって、本実施形態においては、ミスト用専用ダクト45内で発生したミストを、冷蔵室3、チルド室14、卵ケース15、ならびに野菜室4といった複数の供給先へ供給することができ、それらの供給先の除菌や脱臭の効果を期待できるとともに、野菜などの保湿や鮮度保持も期待することができる。
上記した第1実施形態によれば次のような作用効果を得ることができる。
ミスト放出部50からミストを放出する静電霧化装置48(ミスト放出手段)を備える。ミスト放出部50には、冷蔵用送風機35によって循環される、冷蔵用冷却器24通過前の空気の一部(風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給される風)が供給され、その空気とともに前記ミスト放出部50から放出されたミストを、それぞれ貯蔵室を構成する冷蔵室3、チルド室14、および野菜室4に供給するように構成している。ここで、ミスト放出部50から放出されたミストを各貯蔵室に供給するための風として、冷蔵用送風機35によって循環される空気のうち、冷蔵用冷却器24通過前、すなわち冷蔵用冷却器24によって冷却される前の比較的温かな空気を利用するようにしているので、冷蔵用冷却器24通過直後の比較的温度の低い空気を利用する場合とは違い、ミストを供給するための空気で貯蔵室、特に野菜室4が冷え過ぎてしまうことを防止することができる。また、ミスト放出部50に供給される空気(風)は、上述したように冷蔵用冷却器24通過前、すなわち冷蔵用冷却器24によって冷却される前の空気であるから、その空気でミスト放出部50が凍結してしまうことも防止できる。
冷蔵用冷却器24は、冷蔵用送風機35によって循環される空気が通る冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36内に配置され、ミスト放出部50は、前記冷気ダクト34外であるミスト用専用ダクト45内に配置されている。そして、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに、冷蔵用冷却器24の上流側の空気をミスト放出部50に供給する風供給口62aが設けられている。この構成によれば、ミスト放出部50は、冷蔵用冷却器24が配置された冷気ダクト34外に配置されていて、ミスト放出部50から放出されたミストは冷蔵用冷却器24には供給されないから、ミスト凍結の発生を防止できる。
冷気ダクト34は、冷蔵用冷却器24が配置される冷蔵用冷却器室36の前部壁36a(第1の膨出部)と、この前部壁36aの下方であって貯水容器56が配置される下部膨出部36c(第2の膨出部)とを有し、ミスト放出部50に風を供給する風供給口62aは、第1の膨出部となる前部壁36aに設けている。この構成によれば、貯水容器56は冷気ダクト34内に配置され、貯水容器56には、風供給口62aからミスト放出部50に供給される風は供給されないから、貯水容器56に貯留された水は蒸発し難く、ミスト用の水を良好に確保することができる。
第2の膨出部となる下部膨出部36cは、第1の膨出部となる前部壁36aよりも前方へ大きく突出するように設けられ、ミスト放出手段を構成する静電霧化装置48は、貯水容器56からミスト放出部50まで水を移送する保水材(給水部材)55を有し、その保水材55は下部膨出部36cから冷気ダクト34外のミスト用専用ダクト45内に延び、ミスト放出部50は、前部壁36aの前方に配置されている。この構成によれば、ミスト放出部50に風を供給する風供給口62aは、前部壁36aに形成されていて、その風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給される風は、貯水容器56の水を吸い上げる保水材55の下部には当たらないから、特に保水材55の下部が風供給口62aからの風で乾くことを防止でき、貯水容器56の水をミスト放出部50に水を良好に供給することができる。しかも、保水材55はケース54で覆われているから、ケース54が風を受けても保水材55は乾き難くなっている。
ミスト用専用ダクト45には、冷蔵用冷却器24通過直後の空気(冷気)の一部をチルド室14に直接供給するチルド室用冷気供給口68を設けているので、チルド室14は、そのチルド室用冷気供給口68から供給される冷気により、冷蔵室3および野菜室4よりも低い温度まで冷却することができ、チルド室14の温度を約0℃に維持することができる。
ミスト放出手段を構成する静電霧化装置48は、ミストを放出するミスト放出部50と、ミスト放出部50に水分を供給する給水部53と、ミスト放出部50に負の電圧を印加する電源装置52とを備え、前記ミスト放出部50は、異なる方向に向けて突出する複数のミスト放出ピン(突部)57により構成した。この構成により、ミスト発生用の突部の突出方向が一方向のみである場合とは違い、ミストの供給方向を複数方向にすることができ、ミストの供給範囲を広くすることができる。
ミスト放出部50は、前記ミスト放出ピン(突部)57が給水部53の水平部53aを間にして上下反対方向に延びる構成としたことにより、ミストを上方と下方の反対方向にも放出でき、ミストの供給範囲を広くできる。また、給水部53の水平部53aおよび各ミスト放出ピン57は、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように当該前部壁36aに沿って配置したことにより、前後方向の薄型化が可能になる。ミスト放出ピン(突部)57を上下2段に配置したことにより、コンパクト化が可能となる。
ミスト放出部50は、前記ミスト放出ピン(突部)57が列状に複数並んで配置されている構成としたことにより、ミストの放出量を多くでき、ミストの供給範囲を一層広くすることができ、また、薄型化が可能になる。
前記給水部53は、屈折部53cを有し、前記屈折部53cの下方には水を貯留する貯水容器56が設けられ、前記貯水容器56に貯留された水を前記屈折部53cに供給可能な構成とした。これにより、貯水容器56の水を、屈折部53cを介してミスト放出ピン57に供給することができる。また、ミスト放出ピン57を、貯水容器56から離すことができる。前記電源装置52は、ミスト放出部50を間にして前記屈折部53cの反対側に配置した。これにより、電源装置52を貯水容器56から一層離すことが可能になる。
また、電源装置52およびミスト発生ユニット51を、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように当該前部壁36aに沿って配置したことにより、静電霧化装置48の奥行き方向の薄型化が可能になる。
ミスト放出ピン57に供給する水は、貯水容器56に貯留した冷蔵用冷却器24の除霜水を利用しているので、貯水容器56への給水を自動的に行うことができ、使用者が給水するという手間を省くことができる。
ミスト放出手段を構成する静電霧化装置48を冷蔵庫本体1内に設置し、前記静電霧化装置48のミスト放出部50におけるミスト放出ピン(突部)57を、冷気ダクト34に沿うように配置した。これにより、静電霧化装置48の前後方向の奥行き寸法を抑えることが可能になり、薄型化が可能になる。これに伴い、庫内容積の減少を抑えることが可能になる。また、ミスト放出ピン(突部)57は、ミスト用専用ダクト45内に配置することもできるし、ミスト用専用ダクト45を用いずに冷蔵室3内や野菜室4内に配置することも可能になる。
冷蔵庫本体1に、ミスト放出部50を有する静電霧化装置48を収容するミスト用専用ダクト45を備え、このミスト用専用ダクト45に、前記ミスト放出部50により発生したミストの供給先を異ならせる複数のミスト吹出口を設けた。複数のミスト吹出口とは、具体的には、冷蔵室用ミスト吹出口63aと、チルド室用ミスト吹出口65と、卵ケース用ミスト吹出口66と、野菜室用ミスト吹出口67である。これにより、ミスト用専用ダクト45内に発生したミストを、冷蔵室3、チルド室14、卵ケース15、および野菜室4の、4つの供給先に供給することができ、ミストの供給範囲を広くすることができ、ミストの効果範囲を拡大することができる。ミストの供給先のうち、チルド室14、卵ケース15、および野菜室4は、それぞれチルドケース18、卵ケース15、野菜ケース(下部ケース11、上部ケース12)があり、それらケース内にミストを良好に供給することができる。
この場合、複数のミスト吹出口(冷蔵室用ミスト吹出口63aと、チルド室用ミスト吹出口65と、卵ケース用ミスト吹出口66と、野菜室用ミスト吹出口67)は、ミスト放出部50を中心とした周囲に配置されているので、ミスト放出部50から放出されたミストを各ミスト吹出口に良好に供給することができる。
ミスト発生ユニット51はミスト放出ピン(突部)57を有し、前記ミスト用専用ダクト45の前記複数のミスト吹出口(冷蔵室用ミスト吹出口63aと、チルド室用ミスト吹出口65と、卵ケース用ミスト吹出口66と、野菜室用ミスト吹出口67)は、前記ミスト放出ピン57と対向する位置とは異なる位置に配置しているので、万一、それらミスト吹出口からミスト用専用ダクト45内に手指や異物が挿入されたとしても、それらがミスト放出ピン57に直接触れることを防止することができ、安全性を確保できる。
また、ミスト用専用ダクト45を形成するダクト構成部材46は着脱可能であるため、ミスト発生ユニット71などのメンテナンスが容易にできる。
(第2実施形態)
図10〜図12は第2実施形態を示す。この第2実施形態では、風供給口の構成が、第1実施形態とは異なっている。
ミスト用専用ダクト45の後部壁を構成する冷蔵用冷却器室36の前部壁36aにおいて、給水部53の水平部53aの後方に位置させて、1個の風供給口70を設けている。この風供給口70は、第1実施形態の1個の風供給口62aより上下方向の寸法が大きく、かつ水平部53aの上下方向の寸法よりも大きな矩形状に形成されていて、後部が、断熱材38の通風路62bに連通している。給水部53における水平部53aの後面には、断面が山形状をなす風分離部71が設けられている。
この構成において、通風路62bを上方に向けて流れる空気は、風供給口70からミスト用専用ダクト45内に供給される(図11の矢印A3参照)。このとき、ミスト用専用ダクト45内に供給された空気(風)は、風分離部71により上方と下方に分けられ、上下のミスト放出部50(ミスト放出ピン57)に当たりやすくなり、ミスト放出部50から放出されるミストが拡散されやすくなる。
このような構成の第2実施形態においても、第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図13は第3実施形態を示す。この第3実施形態では、ミスト放出手段を構成する静電霧化装置75におけるミスト発生ユニット76の構成が、第1実施形態とは異なっている。
ミスト発生ユニット76は、ミスト放出部77と、このミスト放出部77に水分を供給する給水部78とを備えている。給水部78は、正面から見て円形をなす円形部78aと、この円形部78aから下方に延びる垂直部78bとを有していて、ケース79内に第1実施形態と同様な保水材55を収容して構成されている。垂直部78bの下端部は、ダクト構成部材46の下部、前記冷蔵用冷却器室36の前部の段部36b(図8参照)の孔を貫通し、冷蔵用冷却器室36内に設けられた貯水容器56内に上方から挿入されている。給水部78における円形部78aおよび垂直部78bは、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように当該前部壁36aに沿って配置されている。
ミスト放出部77は、それぞれ突部を構成する複数本のミスト放出ピン57によって構成されている。ミスト放出ピン57は、円形部78aの外周部に放射状に設けられている。したがって、ミスト放出部77は、異なる方向に向けて突出する複数のミスト放出ピン57(突部)によって構成されている。各ミスト放出ピン57の基端部は、ケース79を貫通して保水材55に接触している。各ミスト放出ピン57も、冷気ダクト34における冷蔵用冷却器室36の前部壁36aに平行となるように当該前部壁36aに沿って配置されている。
給水部78における円形部78aの左部には、左側方へ突出する突出部78cが設けられていて、その突出部78cに受電ピン58が左向きに突出する状態で設けられている。その受電ピン58が、電源装置52側の給電端子61に接続されている。ミスト用専用ダクト45内(ミスト放出部72)に風を供給するための風供給口62aは、冷蔵用冷却器室36の前部壁36aにあって給水部78の円形部78aの上部と下部に対応するように、上下に2個形成されている。
この構成において、貯水容器56内に貯留された水が保水材55により吸い上げられて、各ミスト放出ピン57に供給される。また、電源装置52からの負の高電圧が、受電ピン58から、保水材55の水分を介して各ミスト放出ピン57に印加され、これに基づき、各ミスト放出ピン57から微細なミストが放出される。各ミスト放出ピン57から放出されたミストは、第1実施形態と同様に、風供給口62aからミスト用専用ダクト45内に供給された風に乗って、複数のミスト吹出口(冷蔵室用ミスト吹出口63a、チルド室用ミスト吹出口65、卵ケース用ミスト吹出口66、野菜室用ミスト吹出口67)から冷蔵室3、チルド室14、卵ケース15、ならびに野菜室4といった複数の供給先へ供給されるようになる。
このような第3実施形態においては、特に、ミスト放出ピン57が放射状に配置されているから、第1実施形態の場合よりもミストを一層多方向へ放出することができる利点がある。
(その他の実施形態)
ミスト放出手段としては、静電霧化装置に限られず、例えば、貯水部に貯留された水を、超音波振動子の超音波振動により霧化させてミストを放出させる、超音波式霧化装置を用いるようにしてもよい。
また、ミスト放出手段から放出されたミストを吹き出すためのミスト吹出口としては、冷蔵室用ミスト吹出口63aおよび卵ケース用ミスト吹出口66はなくてもよい。
以上のように本実施形態の冷蔵庫によると、ミスト放出部から放出されたミストを、冷却器通過前の空気の風を利用して貯蔵室に供給する構成としたので、貯蔵室が冷え過ぎたり、ミスト放出部が凍結したりすることを防止することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。