JP2017197689A - 粘着シート - Google Patents

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Abstract

【課題】使用時には充分な接着機能を発揮し、除去時には引張り除去性に優れる伸張性粘着シートを提供する。【解決手段】本発明によると、粘着剤層を備える伸張性粘着シートが提供される。上記粘着剤層を構成する粘着剤は、−30℃から20℃までの温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲を有する。上記温度範囲の上端温度と下端温度との差ΔT(1.0)は10℃以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、粘着シートに関する。
粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、典型的には粘着剤層を有する粘着シートの形態で、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯機器(例えば携帯型電子機器)における部品の固定等に好ましく利用されている。また、貼り付け後に再剥離される粘着シートとしても好ましく利用されている。この種の従来技術を開示する文献として、特許文献1および2が挙げられる。特許文献1および2はいずれも、伸長性粘着シートに関する従来技術を開示している。特許文献3は、部品の固定等に用いられる両面粘着シートに関するが、伸張性粘着シートに関するものではない。
特開2016−8288号公報 特表2011−514419号公報 特開2001−72951号公報
粘着シートには、その使用期間中に剥がれやズレ等の接着不良を生じないようにするため、所定以上の粘着力を示すことが求められる。その一方で、被着体に貼り付けられた粘着シートは、固定等の使用目的を終えた後には該被着体から除去され得る。例えば、携帯型電子機器の構成部材の固定手段として使用される粘着シートは、部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際に被着体から除去され得る。被着体から粘着シートを除去する一手段として、伸長性粘着シートを利用する方法が特許文献1,2に開示されている。この方法では、被着体に貼り付けられた粘着シートの一部を把持して引っ張り、該粘着シートを伸長変形させて接着面積を減少させることで被着体から除去する。
携帯電子機器その他の携帯機器は、携帯して使用されるものであることから、様々な状況で落下等による衝撃を受けることが想定される。しかし、引張り除去を意図して設計された従来の粘着シートは、該粘着シートによる接合部の耐衝撃性が不足しがちであった。そこで本発明は、使用時には良好な耐衝撃性を示す接合部を形成し、かつ除去時には引張り除去し得るように構成された伸張性粘着シートを提供することを目的とする。
本発明によると、粘着剤層を備える伸張性粘着シートが提供される。この伸張性粘着シート(以下、「粘着シート」と略記することがある。)は、−30℃から20℃までの温度領域に、tanδが1.0以上となる温度範囲を有する。上記温度範囲の上端温度と下端温度との差ΔT(1.0)は10℃以上である。上記温度領域において一定以上のtanδを示す温度範囲が広い粘着剤により構成された粘着剤層を備える粘着シートによると、使用時の耐衝撃性と除去時の引張り除去性とを好適に両立することができる。
上記粘着剤は、上記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxが1.2以上であることが好ましい。このような粘着剤を備える粘着シートは、より良好な耐衝撃性を示すものとなり得る。
上記粘着剤は、上記ΔT(1.0)と上記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxとの関係が次式:
((tanδmax−1.0)/ΔT(1.0))×1000≦50;
を満たすことが好ましい。上記関係式を満たす粘着剤は、温度を横軸、該温度におけるtanδを縦軸とするグラフにおいて、tanδが1.0以上となる部分のグラフ形状がなだらかである。このことは、様々な態様での衝撃に対して安定して良好な耐衝撃性を発揮する観点から有利となり得る。
好ましい一態様に係る粘着シートにおいて、上記粘着剤は、tanδのピーク温度Tpeakが−25℃以上15℃以下の範囲にある。このように構成することにより、耐衝撃性のよい粘着シートにおいて、引張り除去性がより向上する傾向にある。
上記粘着剤は、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の少なくともいずれかにより架橋していることが好ましい。このような構成において、耐衝撃性と引張り除去性とを両立する粘着シートが好適に実現され得る。
好ましい一態様に係る粘着シートにおいて、上記粘着剤は、ベースポリマー100重量部に対して20重量部以上100重量部以下の粘着付与樹脂を含む。このような構成において、耐衝撃性と引張り除去性とを両立する粘着シートが好適に実現され得る。
ここに開示される粘着シートは、総厚が140μmである態様で好ましく実施することができる。粘着シートの総厚が小さくなると、該粘着シートの耐衝撃性は概して低下する傾向にある。ここに開示される技術によると、このように所定以下の総厚でありながら、耐衝撃性と引張り除去性とを両立する粘着シートが好適に実現され得る。
好ましい一態様に係る粘着シートは、第一粘着面および第二粘着面を有する両面粘着シートとして構成されている。このような基材付き両面粘着シートは、信頼性の高い固定手段(典型的には、一の物体と他の物体とを接合する手段)として好ましく使用され得る。
この明細書により提供される粘着シートの好ましい一態様において、上記粘着シートは、一の物体と他の物体とを接合するために好ましく用いられる。上記粘着シートは、該粘着シートを挟んで上記一の物体と上記他の物体とが接合した状態において、上記粘着シートの一端を引くことにより伸張することが可能であり、かつ、その伸張によって上記一の物体と該他の物体との接合状態を解除することができる。したがって、上記一の物体と他の物体との接合は、再剥離可能な接合である。なお、上記一の物体と上記他の物体とは、一物品または一部材のなかの異なる箇所であり得る。
ここに開示される粘着シートは、携帯型電子機器に好ましく用いられる。特に、ここに開示される粘着シートは、使用時には耐衝撃性のよい接合部を形成し、かつ除去時には適切に引張り除去することができる。この特長を活かして、製品を構成する部材の修理や交換、製品検査等の際に除去される機会の多いバッテリー固定用途の粘着シートとして特に好ましく使用される。ここに開示される技術によると、バッテリーを固定するために好ましく使用される粘着シートが提供される。
粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。 引張り剥離応力Bの測定方法を模式的に示す説明図である。 図3(a)、図3(b)および図3(c)は、引張り除去の一態様を説明するための模式的側面図である。 図4(a)、図4(b)および図4(c)は、引張り除去の一態様を説明するための模式的上面図である。 耐衝撃性試験に用いる評価用サンプルを示す説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シートは、所定の粘弾性特性を示す粘着剤により構成された粘着剤層を含んで構成されている。上記粘着シートは、典型的には、粘着剤層をフィルム状基材(支持体)の少なくとも一方の表面(好ましくは両面)に有する形態の基材付き粘着シートである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。また、フィルム状基材はなくてもよい。
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す粘着シート1は、フィルム状基材10の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22を有する。使用前の粘着シート1は、粘着剤層21,22の各表面(各粘着面)が剥離ライナー(図示せず)に保護された構成を有している。あるいは、ここに開示される粘着シートは、特に図示しないが、粘着剤層のみからなる基材レスの両面粘着シートであってもよい。
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
ここに開示される粘着シートは、引張り除去性の観点から、長尺状部分を有することが好ましい。これにより、被着体に貼り付けられた粘着シートにおいて、長尺状に形成された部分の長手方向の一端を把持して引くことで、粘着シートを被着体から好ましく除去することができる。上記長尺状部分の形状は、典型的には帯状である。引張り除去性の観点から、上記長尺状部分は、長手方向の一端に向かって先細りする形状を有していてもよい。より好ましい一態様では、粘着シートはその全体が長尺状に形成されている。引張り除去作業性の観点から、粘着シートの長手方向の一端にはタブ(把持部)が設けられていることが好ましい。タブの形状は特に限定されないが、指で把持することが可能な形状(例えば矩形状)であることが好ましい。
<粘着剤層>
(粘着剤の特性)
ここに開示される粘着シートは、ΔT(1.0)が10℃以上である粘着剤により構成された粘着剤層を備える。上記ΔT(1.0)は、−30℃〜20℃の温度領域のうち粘着剤のtanδが1.0以上となる温度範囲の幅、すなわち該温度範囲の上端温度(℃)と下端温度(℃)との差を表す。したがって、上記上端温度の上限値は20℃であり、上記下端温度の下限値は−30℃である。また、上記温度領域(−30℃〜20℃)においてtanδが常に1.0以上である粘着剤のΔT(1.0)は50℃であり、該温度領域においてtanδが常に1.0未満である粘着剤のΔT(1.0)は0℃である。なお、−30℃〜20℃の温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲を有する粘着剤において、通常、該温度範囲は連続した1つの温度範囲である。上記温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲が分離して2以上存在する場合には、それらのうち最も広い温度範囲をΔT(1.0)とする。
ここで、粘着剤のtanδ(損失正接)とは、該粘着剤の貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の比をいう。すなわち、tanδ=G”/G’である。よりtanδの値が大きい粘着剤は、弾性に対する粘性の寄与がより大きいため、より衝撃エネルギーを吸収しやすい傾向にある。ここに開示される粘着シートは、少なくとも10℃以上の範囲にわたって1.0以上のtanδを示す粘着剤により構成された粘着剤層を備えることにより、良好な耐衝撃性を発揮することができる。また、−30℃〜20℃の温度領域において高いtanδを示すように設計されていることにより、使用時における接合部の耐衝撃性と除去時の引張り除去性とを好適に両立することができる。
ここに開示される技術において、粘着剤のtanδは、厚さ約2mm、直径7.9mmの円盤状の粘着剤サンプルをパラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験装置を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、測定温度範囲−60℃〜60℃、昇温速度5℃/分の条件で、せん断モードにより該粘着剤の温度分散試験を行い、その際の貯蔵弾性率G’(Pa)および損失弾性率G”(Pa)から次式:tanδ=G”/G’;により求められる。粘弾性試験装置としては、ティー・エー・インスツルメント社製のARESを用いることができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
よりΔT(1.0)が大きい粘着剤(すなわち、上記温度領域においてtanδが1.0以上となる温度幅が広い粘着剤)によると、より多様な衝撃に対して良好な耐衝撃性を示す粘着シートが実現され得る。このことは、例えば、落下時の姿勢、温度、高さ、落下地点の材質等が異なる様々な衝撃に曝され得る携帯機器において部品の固定等に用いられる粘着シートでは特に有意義である。かかる観点から、粘着剤のΔT(1.0)は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、例えば25℃以上でもよく、50℃(すなわち上限値)でもよい。一方、他の特性(例えば、初期粘着性、低温特性等)とのバランスを考慮して、ΔT(1.0)は、例えば45℃以下であってよく、40℃以下(例えば35℃以下)でもよい。ΔT(1.0)は、例えばベースポリマーの種類や組成、架橋剤の選択(使用の有無、使用する場合における種類や使用量)、粘着付与樹脂の選択(使用の有無、使用する場合における種類や使用量)等により調節することができる。
ここに開示される粘着シートにおいて、−30℃〜20℃の温度領域における粘着剤のtanδの最大値tanδmaxは、1.0以上(典型的には1.0超)であればよく、特に限定されない。引張り除去を意図した粘着シートの使用時における接合部の耐衝撃性を向上させるためには、粘着剤のtanδmaxは高いほうが有利である。かかる観点から、粘着剤のtanδmaxは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上であり、1.5以上(例えば1.6以上)であってもよい。tanδmaxの上限は特に制限されないが、他の特性(例えば凝集性、引張り除去性等)とのバランスを考慮して、通常は3.0以下が適当であり、2.5以下が好ましい。tanδが1.0以上の部分におけるグラフ形状がなだらかな粘着剤が得られやすいという観点から、好ましい一態様において、tanδmaxは、2.2未満であってよく、2.0未満であってもよい。tanδmaxは、例えば架橋剤の選択、粘着付与樹脂の選択等により調節することができる。
−30℃〜20℃の温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲ΔT(1.0)(℃)を有する粘着剤において、上記温度範囲におけるtanδのグラフ形状のなだらかさの程度(tanδの温度依存性の程度)は、tanδが1.0以上となる部分の温度幅に対する高さの比、すなわち(tanδmax−1.0)/ΔT(1.0)の値によって概ね把握され得る。tanδが1.0以上となる部分のグラフ形状がよりなだらか(幅広い形状)であると、(tanδmax−1.0)/ΔT(1.0)の値はより小さくなる傾向にある。以下、((tanδmax−1.0)/ΔT(1.0))×1000の値を、tanδの温度依存度Tdということがある。なお、上記式中のΔT(1.0)は、tanδが1.0以上となる部分の温度幅を摂氏(℃)で表した数値であって、当該数値自体は無次元数であるものとする。
ここに開示される粘着シートに用いられる粘着剤において、上記tanδの温度依存度Tdは、典型的には200以下であり、通常は100以下が適当であり、例えば75以下であり得る。温度依存度Tdが55以下(例えば45以下)である粘着剤によると、耐衝撃性と引張り除去性とがより好適に両立される傾向にある。好ましい一態様において、温度依存度Tdは、40以下であってよく、35以下、さらには30以下であってもよい。温度依存度Tdの下限は特に制限されないが、他の特性(例えば、初期粘着性、低温特性等)とのバランスを考慮して、通常は5以上が適当であり、10以上(例えば15以上)が好ましい。温度依存度Tdは、例えば架橋剤の選択、粘着付与樹脂の選択等により調節することができる。
粘着剤のtanδのピーク温度Tpeakは、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下(例えば8℃以下)であり得る。Tpeakが低くなると、粘着シートの初期粘着性や接合部の耐衝撃性が向上する傾向にある。ここに開示される粘着シートの一態様において、粘着剤のTpeakは、凡そ5℃以下(好ましくは凡そ0℃以下、例えば凡そ−5℃以下)であり得る。また、ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤のTpeakは、例えば−40℃以上とすることができ、通常は−30℃以上が適当であり、−25℃以上が好ましい。粘着剤のTpeakが高くなると、粘着シートの引張り除去性(引張り剥離性)は向上する傾向にある。ここに開示される粘着シートは、粘着剤のTpeakが例えば−20℃超(より好ましくは−15℃超、さらに好ましくは−10℃超)である態様で好ましく実施され得る。一態様において、粘着剤のTpeakは、−10℃より高く10℃以下の範囲(好ましい一態様では−10℃より高く0℃以下の範囲、他の好ましい一態様では0℃より高く10℃以下の範囲)であり得る。Tpeakは、例えばベースポリマーの種類や組成、粘着付与樹脂の選択等により調節することができる。
tanδのピーク強度(すなわち、ピーク温度Tpeakにおけるtanδの値)は、典型的には1.0以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上(例えば1.6以上)である。また、上記tanδのピーク強度は、通常、3.0以下が適当であり、好ましくは2.5以下であり、2.2未満(例えば2.0未満)であってもよい。tanδのピーク強度は、例えば架橋剤の選択、粘着付与樹脂の選択等により調節することができる。なお、tanδのピーク強度Tpeakが−30℃以上20℃以下の温度領域にある場合、Tpeakとtanδmax(すなわち、上記温度領域におけるtanδの最大値)とは一致する。
ここに開示される粘着剤層(基材付き両面粘着シートの場合は、第一粘着剤層および第二粘着剤層を包含する。以下同じ。)は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。詳しくは後述するが、ここに開示される粘着剤層の好適例として、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含むゴム系粘着剤層、およびウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系粘着剤層が挙げられる。あるいは、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーとゴム系ポリマーとを併用した粘着剤層であってもよい。
(アクリル系粘着剤)
好ましい一態様では、上記粘着剤層を構成する粘着剤は、粘着特性(典型的には粘着力)や粘弾性特性の調節に係る融通性や分子設計のしやすさ、経時安定性等の観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤である。なお、この明細書において粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1−14(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子でRがC4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
がC1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。粘着特性や糊残り防止等の観点から、BAがより好ましい。
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は、凡そ70重量%以上(例えば凡そ85重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)であることが好ましい。主モノマーの配合割合の上限は特に限定されないが、通常は凡そ99.5重量%以下(例えば凡そ99重量%以下)とすることが好ましい。また、モノマー成分としてC4−8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4−8アルキルアクリレートの割合は、凡そ70重量%以上であることが好ましく、凡そ90重量%以上であることがより好ましく、凡そ95重量%以上(典型的には凡そ99重量%以上凡そ100重量%以下)であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、全モノマー成分の凡そ50重量%以上(例えば凡そ60重量%以上)がBAである態様で好ましく実施され得る。上記全モノマー成分は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含んでもよい。一態様において、上記モノマー成分中に含まれるC4−8アルキルアクリレートの全量がBAであってもよい。
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。
上記カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)等が挙げられる。
上記水酸基含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)がより好ましい。
酸無水物基含有モノマーの例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、上記カルボキシ基含有モノマーの酸無水物体等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が例示される。
アミノ基含有モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
ケト基含有モノマーとしては、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルアセトアセテート等が例示される。
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルモルホリン等が例示される。
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
イミド基含有モノマーとしては、シクロへキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、イタコンイミド等が例示される。
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が例示される。
上記副モノマーの量は、所望の特性(粘弾性、凝集力等)が実現されるように適宜選択することができ、特に限定されない。通常は、耐衝撃性(耐衝撃接着性)と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の凡そ30重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ10重量%以下(例えば凡そ5重量%以下)である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、耐衝撃性と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上(例えば凡そ0.2重量%以上、典型的には凡そ0.5重量%以上)であることが好ましく、また、凡そ10重量%以下(例えば凡そ8重量%以下、典型的には凡そ5重量%以下)であることが好ましい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、耐衝撃性と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上(例えば凡そ0.01重量%以上、典型的には凡そ0.02重量%以上)であることが好ましく、また、凡そ10重量%以下(例えば凡そ2重量%以下)であることが好ましい。
ここに開示されるアクリル系ポリマーには、例えば、該アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整、粘着剤の粘弾性調整、粘着性能の調整等の目的で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーの非限定的な例として、例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類;例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー;等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも好ましい例としてビニルエステル類(例えばVAc)が挙げられる。上記その他モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましく、また、例えば凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.1重量%以上)とすることができる。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃以上(典型的には40℃以上)程度とすることができる。また、上記重合温度は、例えば170℃以下(典型的には140℃以下)程度とすることができる。あるいは、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005重量部以上凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.01重量部以上凡そ1重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
(ゴム系粘着剤)
ここに開示される粘着シートの他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はゴム系粘着剤により構成されている。上記ゴム系粘着剤は、天然ゴムおよび合成ゴムから選択される1種または2種以上のゴム系ポリマーを含むものであり得る。
天然ゴムのムーニー粘度は特に限定されない。一態様において、MS(1+4)100℃の測定条件におけるムーニー粘度が凡そ10以上(典型的には30以上、好ましくは50以上、例えば65以上)の天然ゴムを用いることができる。また、上記ムーニー粘度が凡そ150以下(好ましくは120以下、例えば100以下)の天然ゴムを用いることができる。
合成ゴムの具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン系ブロック共重合体等が挙げられる。合成ゴムの他の例として、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴムが挙げられる。合成ゴムのさらに他の例として、天然ゴムに他のモノマー(例えば、アクリル系モノマーやスチレン等)をグラフトさせたグラフト変性天然ゴムが挙げられる。
上記スチレン系ブロック共重合体の具体例としては、スチレンブタジエンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体、これらの水素添加物等が挙げられる。ここで、スチレンブタジエンブロック共重合体とは、スチレンブロックとブタジエンブロックとをそれぞれ少なくとも一つ有する共重合体をいう。スチレンイソプレン共重合体についても同様である。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマー(50重量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメントをいう。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。ブタジエンブロックおよびイソプレンブロックについても同様である。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体を含む。例えば、上記ベースポリマーがスチレンブタジエンブロック共重合体およびスチレンイソプレンブロック共重合体の少なくとも一方を含む。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、あるいはスチレンブタジエンブロック共重合体とスチレンイソプレンブロック共重合体との合計割合が70重量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95重量%以上100重量%以下)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95重量%以上100重量%以下)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。このような組成によると、引張り剥離性の良い粘着シートが好適に実現され得る。
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック共重合体やトリブロック共重合体等の直鎖構造のポリマーを主成分とするものであってもよく、放射状(radial)構造のポリマーを主成分とするものであってもよい。被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐衝撃性の観点から、例えば、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70重量%以上(例えば75重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60重量%以上85重量%以下のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5重量%以上40重量%以下であり得る。引張り剥離性の観点から、通常は、スチレン含有量が10重量%以上(より好ましくは10重量%よりも大、例えば12重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、被着体に対する粘着力や耐衝撃性の観点から、スチレン含有量が35重量%以下(典型的には30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、例えば20重量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。例えば、スチレン含有量が12重量%以上20重量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
ここに開示されるゴム系粘着剤は、ベースポリマーとして天然ゴムと合成ゴムとを含む粘着剤であってもよい。天然ゴムと組み合わせて使用する合成ゴムとしては、例えば、上述した各種合成ゴムの1種または2種以上を用いることができる。引張り除去性の観点から、スチレン成分が共重合された組成の合成ゴム(スチレン系ブロック共重合体やSBR等)と天然ゴムとの組合せが好ましい。例えば、天然ゴムとスチレンブタジエンブロック共重合体との組合せ、天然ゴムとスチレンイソプレンブロック共重合体との組合せ、等を好ましく採用することができる。天然ゴムと合成ゴムとの使用量の関係は特に限定されない。例えば、天然ゴム100重量部に対して合成ゴム5重量部以上(好ましくは10重量部以上、例えば20重量部以上)、120重量部以下(好ましくは80重量部以下、より好ましくは60重量部以下、例えば40重量部以下)を含む組成とすることができる。
(ウレタン系粘着剤)
ここに開示される粘着シートの他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はウレタン系粘着剤により構成されている。ここでウレタン系粘着剤(層)とは、ウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤(層)のことをいう。上記ウレタン系粘着剤は、典型的には、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系樹脂からなるものである。ウレタン系ポリマーとしては、特に限定されず、粘着剤として機能し得る各種ウレタン系ポリマー(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)のなかから適切なものを採用し得る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
(ベースポリマーのMw)
ここに開示されるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10以上500×10以下の範囲であり得る。凝集力と接着力とを高レベルでバランスさせる観点から、ベースポリマーのMwは、好ましくは20×10以上、より好ましくは30×10以上、さらに好ましくは40×10以上であり、また、好ましくは150×10以下、より好ましくは110×10以下、さらに好ましくは90×10以下である。好ましい一態様において、Mwが40×10以上60×10以下であるポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)をベースポリマーとして用いることができる。好ましい他の一態様において、Mwが60×10を超えて90×10以下であるポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)をベースポリマーとして用いることができる。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。
(ベースポリマーのTg)
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、例えば−80℃以上であり得る。ここに開示される粘着剤のベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)は、耐衝撃性の観点から、Tgが凡そ−15℃以下(典型的には凡そ−25℃以下、例えば凡そ−40℃以下)程度となるように設計されていることが適当である。また、上記ベースポリマーは、凝集性や引張り除去性の観点から、Tgが凡そ−70℃以上(好ましくは−60℃以上、例えば−55℃以上)となるように設計されていることが適当である。
ここで、ベースポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
ブチルアクリレート −55℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
ベースポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ベースポリマーのTgを調整することは、該ベースポリマーを含む粘着剤の粘弾性特性(例えば、tanδのグラフ形状)を調整する一手段として有効となり得る。一般に、よりTgの高いベースポリマーを用いることにより、tanδのピーク温度Tpeakは上昇する傾向にある。
(粘着付与樹脂)
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与樹脂を含む組成であり得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、1種を単独で選択するか、あるいは種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種または3種以上を併用することがより好ましい。
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)を用いることが好ましい。特に、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる1種または2種以上を併用することが好ましい。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)、これらの各種変性物(例えば、無水マレイン酸変性物)、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の、各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
ここに開示される技術では、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が凡そ70℃以上(典型的には凡そ80℃以上、好ましくは凡そ100℃以上、より好ましくは凡そ110℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、より接着力に優れた粘着シートが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、上記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、所望の使用効果が得られるように適宜設定することができる。ここに開示される技術において、粘着付与樹脂は、初期粘着力等の粘着特性を調整する目的のほか、粘着剤の粘弾性特性を調整する目的で好適に利用され得る。粘着付与樹脂の種類や使用量を適切に設定することは、例えば、ここに開示される粘着剤のΔT(1.0)、tanδmax、Td、Tpeak等の一または二以上を調節する有効な手段となり得る。
ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、例えば0.5重量部以上とすることができ、通常は2重量部以上が適当であり、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、15重量部以上でもよく、さらには20重量部以上でもよい。粘着付与樹脂の使用量の増大により、tanδの温度依存度Tdは小さくなる傾向にある。また、tanδmaxは小さくなる傾向にある。また、ΔT(1.0)の温度範囲は概して広くなる傾向にある。また、tanδのピーク温度Tpeakは高くなる傾向にある。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を25重量部以上としてもよく、30重量部以上としてもよい。一方、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、例えば150重量部以下とすることができ、通常は120重量部以下が適当であり、好ましくは90重量部以下、より好ましくは60重量部以下(例えば50重量部以下)である。粘着付与樹脂の使用量を抑えることにより、ΔT(1.0)を10℃以上に保持しやすくなる。また、tanδのピーク温度Tpeakが高くなりすぎることを回避して、良好な耐衝撃性を発揮することができる。ここに開示される粘着シートは、粘着付与樹脂を実質的に含まない粘着剤層を備える態様でも実施され得る。
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物(好適には、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤組成物)は、アクリル系オリゴマーを含んでもよい。アクリル系オリゴマーの使用により、粘着剤の粘弾性特性を調節することができ、ひいては耐衝撃性を改善することができる。また、粘着特性の調整にもアクリル系オリゴマーを利用し得る。特に、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる態様では、アクリル系オリゴマーは、例えばロジン系やテルペン系等の粘着付与樹脂に比べて硬化阻害(例えば、未反応モノマーの重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分としてアクリル系モノマーを含む重合体であり、上記アクリル系ポリマーよりもMwの小さい重合体として定義される。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、90重量%以上であってもよい。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系モノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、アクリル系ポリマーに利用され得るモノマーとして例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、その他モノマーを用いることができる。また、上記構成モノマーは脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上記で例示した各種モノマーの1種または2種以上を用いることができる。
上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(1)においてRがC1−12(例えばC1−8)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。なかでもMMAがより好ましい。
上記官能基含有モノマーの好適例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(典型的には窒素原子含有複素環)を有するモノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;HEA等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂環式炭化水素基の炭素原子数が4以上(典型的には5以上、好ましくは6以上、例えば8以上)、20以下(典型的には16以下、好ましくは12以下、例えば10以下)の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの1種または2種以上を使用することができる。好ましい具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)がより好ましい。アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合は、粘着性や凝集性の観点から、凡そ30〜90重量%(例えば50〜80重量%、典型的には55〜70重量%)とすることが好ましい。
好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記鎖状アルキル基含有および脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合が、凡そ80重量%以上(例えば90〜100重量%、典型的には95〜100重量%)であることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含むモノマー混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの重量割合(W)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの重量割合(W)との重量比率(W:W)は、1:9〜9:1であり、好ましくは2:8〜7:3(例えば3:7〜6:4、典型的には3:7〜5:5)である。
特に限定するものではないが、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成(すなわち重合組成)は、該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成に基づいて、上記アクリル系ポリマーの構成モノマー組成に基づくTgと同様にして求められる値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期粘着力の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、典型的には120℃以上)であることが好ましい。
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には0.1×10〜3×10程度である。粘着特性(例えば粘着力)や耐衝撃性を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×10以下が好ましく、1×10以下がより好ましく、0.8×10以下(例えば0.6×10以下)がさらに好ましい。また粘着剤の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×10以上(例えば0.3×10以上)が好ましい。アクリル系オリゴマーの分子量は、重合に際して必要に応じて連鎖移動剤を用いるなどして調節することができる。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは説明は繰り返さない。
ここに開示される粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して例えば0.5重量部以上とすることが適当である。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1重量部以上(例えば1.5重量部以上、典型的には2重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性やベースポリマーとの相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50重量部未満(例えば10重量部未満)とすることが適当であり、8重量部未満(例えば7重量部未満、典型的には5重量部以下)とすることが好ましい。このような少量添加でも、アクリル系オリゴマーの使用効果は発揮され得る。
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。使用する架橋剤の種類および量は、例えば、ここに開示される好ましい粘弾性や粘着特性(例えば凝集性)を示す粘着剤層が形成されるように設定することができる。
架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ15重量部以下(例えば凡そ0.005〜15重量部、好ましくは凡そ0.005〜10重量部)の範囲から選択することができる。ここに開示される技術は、架橋剤の使用量を低減することなく耐衝撃性を改善し得ることから、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ0.1重量部以上(例えば凡そ0.8重量部以上、典型的には凡そ1.2重量部以上)であってもよく、凡そ1.5重量部以上、さらには凡そ1.8重量部以上であってもよい。また、粘着特性(例えば初期粘着力)を高める観点から、架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して10重量部未満(好ましくは凡そ8重量部以下、例えば凡そ5重量部以下)としてもよい。
ここに開示される粘着剤に好ましく使用し得る架橋剤として、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が例示される。粘弾性や粘着特性の調節容易性の点からイソシアネート系架橋剤が好ましい。また、エポキシ系架橋剤によると、粘弾性や粘着特性を効率よく調節することができる。ここに開示される技術は、イソシアネート系架橋剤を単独で使用するか、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを組み合わせて使用する態様で好ましく実施され得る。
イソシアネート系架橋剤の例としては:トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。より具体的には、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等を例示することができる。
イソシアネート系架橋剤を使用する態様において、その使用量は特に限定されない。イソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.5重量部以上凡そ10重量部以下とすることができる。良好な耐衝撃性や引張り除去性を得る観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ1重量部以上とすることが適当であり、凡そ1.5重量部以上とすることが好ましい。また、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ8重量部以下とすることが適当であり、凡そ5重量部以下(例えば凡そ4重量部未満)とすることが好ましい。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3〜5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。
エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD−X」、「TETRAD−C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR−5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC−G」等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤を使用する態様において、その使用量は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ1重量部以下(好ましくは凡そ0.001〜0.5重量部)とすることができる。凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.002重量部以上とすることが適当であり、凡そ0.005重量部以上が好ましく、凡そ0.008重量部以上がより好ましい。また、粘着特性(例えば初期粘着力)の観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.2重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.1重量部以下とすることが好ましく、凡そ0.05重量部未満とすることがより好ましい。
イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを組み合わせて含む態様において、イソシアネート系架橋剤の含有量とエポキシ系架橋剤の含有量との関係は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の含有量は、例えば、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/20以下とすることができる。耐衝撃性と引張り除去性とをより好適に両立する観点から、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/30以下とすることが適当であり、凡そ1/40以下(例えば1/50以下)とすることが好ましい。また、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いることの効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上、例えば凡そ1/500以上とすることが適当である。
(フィラー粒子)
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層には、フィラー粒子を含有させることができる。粘着剤層にフィラー粒子を含ませることにより、粘着シートの伸張変形時に、上記フィラー粒子が後述する引張り剥離応力Bの低減に寄与し得る。これによって、粘着シートの使用時における良好な接着機能(例えば、後述する初期粘着力Aや耐衝撃性)と、除去時における引張り除去性との両立が実現される。この点について説明する。粘着剤層に含まれたフィラー粒子は、粘着面に露出した状態または該粘着剤層内に内包された状態で存在し得る。粘着面に露出したフィラー粒子は、粘着面における粘着剤面積を減少させ、接着界面のせん断方向へのスリップ性を向上させる。これにより、引張り剥離応力Bは低減するが、この粘着面における粘着剤面積の減少は、初期粘着力Aの低下ももたらす。一方、粘着剤層内部に存在するフィラー粒子は、初期粘着力Aを低下させることなく、引張り剥離応力Bの低減に大きく寄与すると考えられる。その主たる理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、粘着シートの変形にともなう粘着剤層の状態変化が考えられる。具体的には、引張り剥離は、粘着剤を接着面に平行する方向(引張り剥離方向。せん断方向ともいう。)に引き剥がす態様であるため、引張り剥離の際に粘着シートは当該方向に変形する。伸長性の粘着シートは上記の引張りに対して伸長し、それにともない粘着剤層も変形する。例えば、粘着剤層を支持するフィルム状基材が引張りに対して伸長性を有する場合、該基材の伸長にともなって粘着剤層も大きく変形する。この粘着剤層の変形によって、該粘着剤層に含まれるフィラー粒子の粘着面への露出量が増大し、接着界面におけるせん断方向へのスリップ性が向上すると考えられる。また、粘着剤層内において粘着剤(粘着成分)は引張り剥離により変形するのに対し、フィラー粒子は粘着剤層内において粘着剤と異なる挙動を示すことも考慮される。この引張り剥離に対する粘着剤とフィラー粒子の挙動の違いが引張り剥離応力の低減に寄与していることも考えられる。そして、上述の粘着剤層表面状態の変化や、粘着剤層構成成分の挙動は、剥離態様の違いから例えば90度剥離や180度剥離では顕在化せず、あるいは無視し得る程度であると考えられる。しかし、典型的には引張り剥離時には応力変化に大きく影響していると考えられる。その結果、粘着剤層に含まれたフィラー粒子は、初期粘着力Aの維持および引張り剥離応力Bの低減の両立に大きく寄与するものと考えられる。
使用されるフィラー粒子の種類は、特に制限されない。例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラー粒子(典型的には粒子状フィラー)の構成材料は、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の金属水酸化物および水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、PE、PP、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、引張り剥離応力Bの低減(引張り除去性の向上)の観点から、粒子状フィラーが好ましく、そのなかでも、無機材料(例えば水酸化アルミニウム)から構成された粒子状フィラーの使用が好ましい。
フィラー粒子の平均粒径は、粘着剤層の厚さの50%未満であることが好ましい。ここで、本明細書中においてフィラー粒子の平均粒径とは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において、重量基準の累積粒度が50%となる粒径(50%メジアン径)をいう。フィラー粒子の平均粒径が粘着剤層の厚さの50%未満であれば、粘着剤層に含まれるフィラー粒子の50重量%以上が当該粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有するといえる。粘着剤層に含まれるフィラー粒子の50重量%以上が該粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有することにより、粘着剤層の表面(粘着面)において良好な表面状態(例えば平滑性)が維持される傾向が大きくなる。このことは、被着体との密着性向上による接着機能(例えば初期粘着力Aや耐衝撃性)の向上の観点から好ましい。好ましい一態様において、フィラー粒子の平均粒径は、粘着剤層の厚さの45%以下(例えば40%以下)であり得る。
フィラー粒子の平均粒径は、粘着剤層の厚さの3%より大きいことが好ましい。このような平均粒径を有するフィラー粒子によると、引張り剥離応力Bが効果的に低減される傾向にある。より高い効果を得る観点から、フィラーの平均粒径は、粘着剤層の厚さの4%以上とすることができ、10%以上であってもよく、さらには15%以上であってもよい。好ましい一態様において、粘着剤層に含まれるフィラー粒子の平均粒径は、該粘着剤層の厚さの20%以上(より好ましくは25%以上、例えば30%以上)であり得る。
好ましい一態様では、粘着剤層に含まれるフィラー粒子の60重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)が、上記粘着剤層の厚さTよりも小さい粒子径を有する。粘着剤層に含まれるフィラー粒子の実質的に全量(典型的には99重量%以上100重量%以下)が該粘着剤層の厚さTよりも小さい粒子径を有していることがより好ましい。他の好ましい一態様では、粘着面の表面状態をより良好にする観点から、粘着剤層に含まれるフィラー粒子の40重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)が、該粘着剤層の厚さTの2/3よりも小さい粒子径(すなわち、2/3T未満の粒子径)を有する。上記フィラー粒子の40重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)が上記粘着剤層の厚さTの1/2よりも小さい粒子径(すなわち1/2T未満の粒子径)を有することがより好ましい。なお、フィラー粒子のX重量%以上がYより小さい粒子径を有するとは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において、粒径Y(μm)までの累積粒度(重量基準)がX(重量%)未満であることをいう。所定の粒子径を有するフィラー粒子の割合(重量%)は、上記粒度分布に基づいて求めることができる。
好ましい一態様において、粘着剤層に含まれるフィラー粒子は、粒子径が30μm未満の粒子が50重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には90重量%以上)を占める。このようなフィラー粒子を含む粘着剤層は、該粘着剤層の厚さが比較的小さくても粘着面の平滑性が損なわれにくい。したがって、より薄い粘着剤層によっても、使用時における充分な接着機能と、除去時における優れた引張り除去性とを好ましく両立する粘着シートが好適に実現され得る。このことは粘着シートの総厚低減の観点から有利である。一態様において、粘着剤層に含まれるフィラー粒子は、粒子径が20μm未満(より好ましくは15μm未満、例えば10μm未満)の粒子が50重量%以上(より好ましくは70重量%以上、さらには80重量%以上)を占めることがより好ましい。
また、好ましい一態様では、粘着剤層に含まれるフィラー粒子のうち、1μm未満の粒子径を有する粒子の割合は50重量%以下である。引張り剥離応力低減の観点から、フィラー粒子の粒子径はある程度の大きさを有することが望ましい。また、微小粒子の量が制限されていることは、例えば粘着剤組成物の調製において過度の粘度上昇が起こらないなど生産性の点で好ましい。上記粘着剤層に含まれるフィラー粒子のうち、1μm未満(例えば2μm未満、典型的には5μm未満)の粒子径を有する粒子の割合が30重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)であることがより好ましい。
粘着剤層に含まれるフィラー粒子全体の平均粒径は、通常は0.5μm以上とすることが適当であり、好ましくは0.8μm以上である。平均粒径が大きくなると、引張り剥離応力低減効果が向上する傾向がある。一態様において、上記平均粒径は、1μm以上(典型的には1μm超、例えば2μm以上)であってよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。上記平均粒径の上限は、例えば50μm以下であり得る。粘着シートの総厚低減等の観点から、フィラー粒子の平均粒径は、通常、30μm以下が適当であり、20μm以下(例えば18μm以下)であることが好ましい。ここに開示される粘着シートは、平均粒径15μm以下(より好ましくは12μm以下、例えば10μm以下)のフィラー粒子を含む粘着剤層を有する態様で好ましく実施され得る。
フィラー粒子の形状は特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状(例えば六角板状)、層状等であり得る。バルク形状の概念には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。フィラー粒子の形状は、バルク形状が好ましく、そのなかでも球形状がより好ましい。
フィラー粒子の平均アスペクト比は特に限定されず、引張り剥離応力低減の観点から、凡そ100未満が適当であり、好ましくは50未満、より好ましくは10未満(例えば5未満、典型的には2未満)であり得る。ここで、フィラー粒子の平均アスペクト比は、該フィラー粒子における長径/短径により表される各粒子のアスペクト比の平均値として求められる。長径とは典型的には測定対象粒子の最大差渡し長さをいい、短径とは典型的には測定対象粒子の最小差渡し長さをいうものとする。平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡観察を通じて把握することができる。
フィラー粒子を含む粘着剤層において、フィラー粒子の含有量は、所望の効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。粘着剤層におけるフィラー粒子の含有量は、該粘着剤層に含まれるベースポリマー100重量部に対し、例えば凡そ0.5重量部以上(典型的には凡そ1重量部以上、例えば凡そ3重量部以上)とすることができ、また、凡そ100重量部以下(典型的には凡そ100重量部未満)とすることができる。ベースポリマー100重量部に対するフィラー粒子の含有量は、5重量部より多くてもよく、10重量部より多くてもよい。ここに開示される粘着シートは、ベースポリマー100重量部に対するフィラー粒子の含有量が凡そ12重量部以上(例えば凡そ15重量部以上、さらには凡そ20重量部以上)である態様で好ましく実施することができる。好ましい一態様において、ベースポリマー100重量部に対するフィラー粒子の含有量を凡そ25重量部以上(典型的には凡そ25重量部超、例えば凡そ30重量部またはそれ以上)としてもよい。フィラー粒子の粒子径と含有量とを適切に調整することにより、初期粘着力Aの低下を抑制しつつ引張り剥離応力Bを好ましく低減することができる。また、ベースポリマー100重量部に対するフィラー粒子の含有量は、通常、凡そ80重量部以下(例えば凡そ70重量部以下)が適当であり、凡そ60重量部以下が好ましく、凡そ55重量部以下(例えば凡そ50重量部以下)であってもよい。
(その他の成分)
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。また、例えば粘着剤組成物(典型的にはアクリル系粘着剤組成物)に対してシリコーン系オリゴマー等の粘着力調整剤を添加してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
(粘着剤組成物)
ここに開示される粘着剤層は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着力等の粘着特性を好適に実現する観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施される。
(粘着剤層の形成方法)
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。フィルム状基材を有する粘着シートでは、例えば、該フィルム状基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層をフィルム状基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。また、粘着剤組成物の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度(好ましくは60〜130℃程度)とすることができる。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
(粘着剤層の厚さ)
ここに開示される粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常、粘着剤層の厚さは、乾燥効率等の生産性や粘着性能等の観点から、凡そ3μm以上が適当であり、好ましくは凡そ5μm以上、より好ましくは凡そ8μm以上、さらに好ましくは凡そ15μm以上である。また、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ50μm以下、さらに好ましくは凡そ40μm以下、例えば凡そ35μm以下である。一般に、粘着剤層が薄くなると衝撃吸収性は低下する傾向にあるため、本発明を適用して耐衝撃性を向上させる意義はより大きくなる。かかる観点から、一態様において、粘着剤層の厚さは、凡そ30μm以下であってもよく、さらには凡そ25μm以下であってもよい。フィルム状基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、各粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
好ましい一態様に係る粘着シートは、非発泡の粘着剤により構成された粘着剤層を備える。ここで、非発泡の粘着剤により構成された粘着剤層とは、当該層の見かけの体積に占める気泡の体積の割合が5体積%未満(典型的には3体積%未満、例えば1体積%未満)である粘着剤層をいう。このような粘着剤層は、機械的強度の点で弱点となり得る気泡(ボイド)が実質的に存在しないことから、引張り除去時の糊残り防止性に優れる傾向がある。ここに開示される粘着シートは、粘着剤が適切な粘弾性特性を有することにより、該粘着剤が非発泡であっても良好な耐衝撃性を発揮することができる。このことによって耐衝撃性と引張り除去性とを好適に両立することができる。非発泡の粘着剤を採用し得ることは、粘着剤層の表面平滑性、製造容易性、経済性(コスト)等の点にも優れ、粘着シートの総厚を低減する観点からも有利である。
<フィルム状基材>
粘着剤層を支持(裏打ち)するフィルム状基材(支持基材)を有する粘着シートにおいて、該フィルム基材としては、例えば、凡そ100%以上(好ましくは凡そ200%以上)の破断時伸びを示すものを用いることができる。上記破断時伸びを示す基材は、粘着シート除去時の引張りに対して伸長する。この伸長により粘着シートは変形して被着体から剥がれる。このように、引張りと基材の変形とが相互に作用して、粘着シートの引張り除去性はより向上する。上記破断時伸びは、より好ましくは凡そ300%以上(例えば凡そ400%以上、典型的には凡そ500%以上)である。上記破断時伸びの上限は特に限定されない。粘着シートの除去作業性等の観点から、上記破断時伸びは、例えば凡そ1500%以下であってもよく、凡そ1200%以下であってもよい。上記破断時伸びは、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。上記基材の破断時伸びは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
上記フィルム状基材は、3MPa以上の破断強度を示すことが好ましい。上記破断強度を示すフィルム状基材を使用することで、粘着シートはより千切れにくくなり、優れた引張り除去性を発揮し得る。一態様において、上記破断強度は、凡そ5MPa以上(例えば凡そ6MPa以上)であってよく、さらには凡そ7MPa以上(例えば凡そ8MPa以上)であってもよい。好ましい一態様において、上記破断強度は、凡そ10MPa以上(より好ましくは凡そ15MPa以上、例えば凡そ20MPa以上)であり得る。破断強度の上限は特に限定されない。通常は、フィルム状基材の弾性や伸長性等の観点から、上記破断強度は100MPa以下(例えば90MPa以下、典型的には80MPa以下)程度とすることが好ましい。上記破断強度は、後述する粘着シートの場合と同様の方法により測定される。フィルム状基材の破断強度は、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートに用いられるフィルム状基材は、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。フィルム状基材の100%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。上記100%モジュラスは、後述する粘着シートの場合と同様の方法により測定される。基材の100%モジュラスは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材の引張り回復率は、特に限定されない。千切れ防止や作業性向上の観点から、通常、上記引張り回復率が凡そ10%以上(例えば凡そ25%以上)であることが適当であり、50%を超えることが好ましい。上記引張り回復率は、実質的に100%であってよい。あるいは、上記引張り回復率は、凡そ95%以下であってよく、凡そ90%以下(例えば凡そ85%以下)であってもよい。フィルム状基材の引張り回復率は、後述する粘着シートの引張り回復率と同様にして測定される。上記引張り回復率は、例えば基材材料種の選択によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートのフィルム状基材としては、例えば、織布フィルム、不織布フィルム、樹脂フィルムを使用することができる。なかでも、樹脂フィルムが好ましい。上記樹脂フィルムは、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルム、発泡体フィルム等であり得る。なかでも、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルムが好ましく、非発泡の樹脂フィルムがより好ましい。非発泡の樹脂フィルムは、機械的強度の点で弱点となり得る気泡(ボイド)が実質的に存在せず、発泡体と比べて引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。ここに開示される粘着シートは、粘着剤が適切な粘弾性特性を有することにより、非発泡の樹脂フィルムを用いても良好な耐衝撃性を発揮することができる。このことによって耐衝撃性と引張り除去性とを好適に両立することができる。非発泡の樹脂フィルムはまた、加工性や寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の点にも優れ、粘着シートの総厚を低減する観点からも有利である。
なお、この明細書における「樹脂フィルム」は、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。また、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が凡そ1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。非発泡の樹脂フィルムには、例えば、軟質ポリオレフィン、軟質ポリウレタン、軟質ポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル等と称される軟質樹脂フィルムが包含される。
フィルム状基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。フィルム状基材の厚さは、通常、凡そ10μm以上とすることが適当であり、凡そ20μm以上(例えば凡そ30μm以上)とすることが好ましい。より千切れにくく引張り除去性に優れた基材として、厚さが凡そ40μm以上(例えば凡そ45μm以上)、さらには凡そ50μm以上のフィルム状基材を用いてもよい。また、フィルム状基材の厚さは、通常、凡そ250μm以下とすることが適当であり、凡そ200μm以下(より好ましくは凡そ150μm以下、例えば凡そ120μm以下)とすることが好ましい。ここに開示される粘着シートは、厚さが凡そ100μm以下(典型的には凡そ100μm未満)のフィルム状基材を用いて好ましく実施され得る。このような厚さのフィルム状基材は、例えば、総厚が凡そ150μm以下の粘着シートの構成要素として好適である。一態様において、上記フィルム状基材の厚さは、凡そ90μm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ80μm以下、より好ましくは凡そ75μm以下、さらに好ましくは凡そ70μm以下(例えば凡そ65μm以下)であり、凡そ60μm以下(例えば凡そ60μm未満)であってもよい。ここに開示される技術によると、このような厚さのフィルム状基材を用いる構成においても、良好な引張り除去性を実現することができる。フィルム状基材の厚さを薄くすることは、該フィルム状基材を含む粘着シートの薄型化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。上記フィルム状基材の厚さは、非発泡の樹脂フィルム基材に対して好ましく適用され得る。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例としては、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン;ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー;PE、PP、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;等が挙げられる。上記ポリエステルとしては、PBT、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートがより好ましい。上記樹脂材料は、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンエチレンブチレン共重合体、スチレンエチレンプロピレン共重合体、スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体等のスチレン系共重合体(典型的にはスチレン系エラストマー)であってもよく、アクリルゴムと称されるアクリル系共重合体であってもよく、軟質ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル(PVC)系樹脂であってもよい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記樹脂材料の概念には、一般にゴムや熱可塑性エラストマーと称されるものが包含される。
(ポリウレタン系樹脂フィルム)
好ましい一態様では、フィルム状基材はポリウレタン系樹脂フィルムである。ここでポリウレタン系樹脂フィルムとは、樹脂成分の主成分(最も配合割合の高い成分、典型的には50重量%を超えて含まれる成分。以下同じ。)としてポリウレタンを含む樹脂フィルムのことをいう。ポリウレタン系樹脂フィルムは、典型的には降伏点を実質的に示さない材料から構成されており、所定の破断強度や伸び、さらに必要であれば引張り回復率を示す粘着シートを実現しやすいフィルム材料である。ポリウレタン系樹脂フィルムはまた、例えば可塑剤等の添加成分を添加しなくても良好な物性を実現し得るため、上記添加成分のブリードアウトを防止する点でも、ここに開示される技術において好ましい基材となり得る。
ポリウレタン系樹脂フィルムに含まれる樹脂成分に占めるポリウレタンの割合は、好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90重量%以上100重量%以下)である。ここに開示されるポリウレタン系樹脂フィルムは、ポリウレタンとその他の樹脂とのポリマーブレンドからなるフィルムであってもよい。上記他の樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等の1種または2種以上であり得る。あるいは、ここに開示される技術は、ポリウレタン以外の樹脂成分を実質的に含まない基材を用いる態様でも実施することができる。
上記ポリウレタンは、ポリオール(例えばジオール)とポリイソシアネート(例えばジイソシアネート)とを所定の割合で重付加反応させることにより合成される高分子化合物である。なお、ポリウレタンのNCO/OH比は、所望の機械的特性(例えば破断強度、破断時伸び、引張り回復率)となるよう当業者の技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール;上記ジオールとジカルボン酸(例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸)との重縮合物であるポリエステルポリオール;ポリアルキレンカーボネートジオール等のカーボネートジオール;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートや、これらのジイソシアネートの多量体(例えば2量体、3量体)等が挙げられる。上記ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
上記ポリウレタンには、ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、他の共重合成分が導入されていてもよい。他の共重合成分として、モノカルボン酸やジカルボン酸、三官能以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、それらの誘導体等の1種または2種以上を使用することができる。これら他の共重合成分の割合は、ポリウレタン中の30重量%未満(例えば10重量%未満、典型的には5重量%未満)程度とすることが適当である。ここに開示される技術は、他の共重合成分を含まないポリウレタンを主成分とするポリウレタン系樹脂フィルム基材を備える態様でも好ましく実施され得る。
(ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂フィルム)
他の好ましい一態様では、フィルム状基材は、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーを含む樹脂フィルム(ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂フィルム)である。ここに開示されるウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を用いることができる。ここでウレタン(メタ)アクリレートとは、一分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のことをいい、かかる化合物を特に制限なく用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは好ましくは2つ以上のウレタン結合と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する。ウレタン(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリロイル基の数は、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。ここで「ウレタンアクリレート」とは、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる(メタ)アクリロイル基のうちアクリロイル基の個数割合が50%を超えるものをいう。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販されている各種ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができる。例えば、日本合成化学工業社製の商品名「UV−3300B」、荒川化学工業社製の商品名「ビームセット505A−6」等を好ましく用いることができる。
(PVC系樹脂フィルム)
他の好ましい一態様では、フィルム状基材はPVC系樹脂フィルムである。上記PVC系樹脂フィルムは、PVC系樹脂を含むPVC系樹脂組成物(成形材料)をフィルム状に成形することにより作製される。ここでPVC系樹脂組成物とは、樹脂成分(ポリマー成分)のうちの主成分(すなわち50重量%以上)がPVC系樹脂(典型的にはPVC)である樹脂組成物をいう。該PVC系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量のうち凡そ80重量%以上(より好ましくは凡そ90重量%以上)がPVC系樹脂であることが好ましい。樹脂成分の実質的に全量がPVCであってもよい。かかるPVC系樹脂組成物によると、粘着シートの基材として好適な物性を示すPVC系樹脂フィルムが形成され得る。
(エラストマー系樹脂フィルム)
他の好ましい一態様では、上記フィルム状基材は、エラストマー層を有する樹脂フィルム(典型的には、非発泡の樹脂フィルム)である。以下、エラストマー系樹脂フィルムという。上記エラストマー層は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な樹脂を含み得る。このような樹脂の例として、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。好ましくは、エラストマー層はオレフィン系エラストマーを含む。エラストマー層がオレフィン系エラストマーを含むことによって、ここに開示される伸張性粘着シートの構成要素として有用なフィルム状基材が好適に実現され得る。このような基材の使用により、例えば、低い応力で大きく伸張変形させて接着面積を減少させることができ、接着機能と引張り除去性とを好ましく両立する粘着シートが構成され得る。
エラストマー層におけるオレフィン系エラストマーの含有割合は、典型的には凡そ50重量%以上であり、通常は凡そ60重量%以上(例えば凡そ65重量%以上)であることが好ましい。一態様において、上記含有割合は、凡そ70重量%以上であってもよく、凡そ80重量%以上、凡そ90重量%以上、さらには凡そ95重量%以上であってもよい。エラストマー層の実質的に100重量%がオレフィン系エラストマーであってもよい。
好適なオレフィン系エラストマーの具体例として、α−オレフィン系エラストマーが挙げられる。好ましいα−オレフィン系エラストマーとして、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーおよび1−ブテン系エラストマーが挙げられる。なかでも、エチレン系エラストマーおよびプロピレン系エラストマーのいずれか一方または両方を含むオレフィン系エラストマーが好ましい。
なお、エチレン系エラストマーとは、典型的にはエチレンを主モノマーとする共重合体をいい、エチレンの共重合割合が50重量%を超える共重合体であり得る。同様に、プロピレン系エラストマーとは、典型的にはプロピレンを主モノマーとする共重合体をいい、プロピレンの共重合割合が50重量%を超える共重合体であり得る。他のα−オレフィン系エラストマーについても同様である。
α−オレフィン系エラストマーは、市販品として入手することも可能である。このような市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の「タフマー」(登録商標)シリーズのなかのいくつか(例えば、タフマーPN−3560等)、エクソンモービル社製の「ビスタマックス(Vistamaxx)」(登録商標)シリーズのなかのいくつか(例えば、ビスタマックス6202、ビスタマックス7010、ビスタマックス3000等)が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記エラストマー層は、エラストマー(好ましくはオレフィン系エラストマー)に加えて、非エラストマー性の樹脂を含んでいてもよい。ここで非エラストマー性オレフィン系樹脂とは、エラストマー性オレフィン系樹脂ではないオレフィン系樹脂を意味する。非エラストマー性オレフィン系樹脂は、市販品を用いてもよい。
非エラストマー性オレフィン系樹脂の非限定的な例としては、α−オレフィンのホモポリマー、2種以上のα−オレフィンの共重合体、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、1種または2種以上のα−オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。共重合体における共重合の形態としては、例えば、ブロック形態やランダム形態が挙げられる。
α−オレフィンのホモポリマーとしては、例えば、PE、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等が挙げられる。PEとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ホモPPの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。2種以上のα−オレフィンの共重合体としては、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体、エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとを含む共重合体、プロピレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとを含む共重合体、等が挙げられる。1種または2種以上のα−オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン/メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン/非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記非エラストマー性オレフィン系樹脂としては、PEおよびホモPPから選ばれる少なくとも1種を含むものがより好ましい。例えば、HDPEおよびホモPPから選ばれる少なくとも1種を含む非エラストマー性オレフィン系樹脂を好ましく採用し得る。
非エラストマー性オレフィン系樹脂を含むエラストマー層において、該エラストマー層における非エラストマー性オレフィン系樹脂の含有割合は特に限定されず、例えば凡そ1重量%以上、典型的には凡そ5重量%以上であり、凡そ7重量%以上、凡そ10重量%以上、さらには凡そ15重量%以上(例えば凡そ20重量%以上)であってもよい。上記含有割合は、通常、凡そ50重量%未満が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましく、凡そ20重量%以下(例えば凡そ15重量%以下)、凡そ10重量%以下、さらには凡そ5重量%以下であってもよい。非エラストマー性オレフィン系樹脂を実質的に含まないエラストマー層であってもよい。
上記エラストマー系樹脂フィルム(フィルム基材)は、このようなエラストマー層を1層または2層以上含み得る。一態様に係るフィルム状基材は、非エラストマー性樹脂(典型的にはオレフィン系非エラストマー性樹脂)を含むエラストマー層Ehと、非エラストマー性樹脂を含まないかあるいか該非エラストマー性樹脂の含有割合が層Ehよりも少ないエラストマー層Esとを含み得る。層Ehと層Esとを組み合わせることにより、フィルム状基材の特性を好適に調整し得る。フィルム状基材の少なくとも一方の表面を上記層Ehで構成することにより、該基材の取扱い性、耐ブロッキング性等が向上し得る。上記フィルム状基材は、例えば、層Esの一方の側に層Ehが配置された(Es/Eh)構造や、層Esの一方の側および他方の側にそれぞれ層Ehが配置された(Eh/Es/Eh)構造の積層体であり得る。
層Esおよび層Ehを含むエラストマー系樹脂フィルム(例えば、(Eh/Es/Eh)構造のフィルム状基材)において、層Esの厚さは、通常、凡そ5μm以上が適当であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ15μm以上、例えば凡そ20μm以上である。層Esの厚さは、通常、凡そ120μm以下(例えば凡そ100μm以下)が適当であり、好ましくは凡そ80μm以下、より好ましくは凡そ60μm以下であり、凡そ45μm以下でもよく、凡そ35μm以下、さらには凡そ30μm以下でもよい。
また、層Ehの厚さは特に限定されず、例えば凡そ1μm以上、通常は凡そ2μm以上、好ましくは凡そ5μm以上、より好ましくは凡そ8μm以上である。一態様において、層Ehの厚さは、凡そ10μm以上でもよく、凡そ12μm以上、さらには凡そ15μm以上でもよい。層Ehの厚さは、例えば凡そ30μm以下とすることができ、凡そ25μm以下でもよく、凡そ20μm以下でもよい。2以上の層Ehを含むフィルム状基材において、それらの層Ehの厚さは、同一であってもよく異なってもよい。
上記エラストマー系樹脂フィルムは、少なくとも1層の上記エラストマー層と、他の任意の適切な層とを含む積層体であってもよい。このように構成することにより、フィルム状基材の特性を好適に調整し得る。また、フィルム状基材の取扱い性や耐ブロッキング性の向上にも役立ち得る。上記他の層の層数は特に限定されず、例えば1層〜5層(好ましくは1層〜3層、より好ましくは1層または2層)程度であり得る。
エラストマー層と積層される層の一好適例として、オレフィン系樹脂層が挙げられる。例えば、エラストマー層の一方の側および他方の側にそれぞれ1層のオレフィン系樹脂層を有するフィルム状基材が好ましい。また、上記オレフィン系樹脂層がフィルム状基材の少なくとも一方の表面を構成していることが好ましい。
上記オレフィン系樹脂層は、典型的には、非エラストマー性オレフィン系樹脂を含む。非エラストマー性オレフィン系樹脂としては、エラストマー層に含有させ得る非エラストマー性オレフィン系樹脂と同様のものを使用し得る。非エラストマー性オレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上のブレンドや共重合体であってもよい。オレフィン系樹脂層における非エラストマー性オレフィン系樹脂の含有割合は、典型的には凡そ50重量%以上、好ましくは凡そ75重量%以上であり、凡そ90重量%以上、さらには凡そ95重量%以上であってもよく、実質的に100重量%であってもよい。
エラストマー系樹脂フィルムを含むフィルム状基材において、エラストマー層の厚さ(複数のエラストマー層を含む場合はそれらの合計厚さ、すなわちエラストマー層の総厚)は、通常、凡そ10μm以上が適当であり、好ましくは凡そ20μm以上、より好ましくは凡そ30μm以上、例えば凡そ40μm以上である。一態様において、エラストマー層の厚さは、凡そ45μm以上、さらには凡そ50μm以上であってもよい。また、上記エラストマー層の厚さは、典型的には凡そ150μm以下であり、通常は凡そ120μm以下(例えば凡そ100μm以下)が適当であり、好ましくは凡そ80μm以下、より好ましくは凡そ70μm以下、例えば凡そ60μm以下である。フィルム状基材の一態様(例えば、エラストマー層に加えて他の層を含む態様)において、上記エラストマー層の厚さは、凡そ50μm以下、凡そ40μm以下、さらには凡そ30μm以下であってもよい。
エラストマー層とオレフィン系樹脂層とを含むフィルム状基材において、オレフィン系樹脂層の厚さは特に限定されず、例えば凡そ1μm以上であり得、通常は凡そ2μm以上が適当であり、好ましくは凡そ5μm以上、より好ましくは凡そ8μm以上である。一態様において、上記オレフィン系樹脂層の厚さは、凡そ10μm以上、凡そ12μm以上、さらには凡そ15μm以上であってもよい。オレフィン系樹脂層の厚さは、例えば凡そ30μm以下とすることができ、凡そ25μm以下であってもよく、凡そ20μm以下であってもよい。2以上のオレフィン系樹脂層を含むフィルム状基材において、それらのオレフィン系樹脂層の厚さは、同一であってもよく異なってもよい。
フィルム状基材は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は、上述した樹脂のいずれか(好ましくは、オレフィン系エラストマー等のエラストマー、非エラストマー性ポリオレフィン系樹脂等の非エラストマー樹脂、ポリウレタン、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーおよびPVCから選択されるいずれか)の連続構造を有する層であることが好ましい。
フィルム状基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤(顔料、染料)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、安定剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば、フィルム状基材として軟質のPVC系樹脂フィルムを使用する場合、可塑剤の配合量はPVC系樹脂100重量部当たり凡そ20〜100重量部(より好ましくは凡そ30〜70重量部)とすることが適当である。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
フィルム状基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、フィルム状基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。なお、フィルム状基材がポリウレタン系樹脂フィルムの場合には、その表面エネルギーの高さにより、上述のような表面処理が施されていなくても良好な投錨性を得ることができる。
フィルム状基材の製造方法は、従来公知の方法を適宜採用すればよく、特に限定されない。フィルム状基材として樹脂フィルム基材を採用する場合には、例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して作製した樹脂フィルム基材を使用することができる。
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、凡そ300%以上の破断時伸びを示すことが好ましい。これにより、引張りと粘着シートの伸長変形とが相互に作用して、優れた引張り除去性が実現される。上記破断時伸びは、より好ましくは凡そ400%以上(例えば凡そ450%以上、典型的には凡そ500%以上)である。上記破断時伸びの上限は特に限定されない。粘着シートの除去作業性等の観点から、上記破断時伸びは、例えば凡そ1500%以下であってよく、凡そ1200%以下であってもよい。
上記破断時伸びは、JIS K 7311:1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断時伸びを測定することができる。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。試験に際しては、粘着面にパウダーをまぶして、粘着剤のべたつきによる影響を除去しておくことが好ましい。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断時伸びは、例えば基材材料種の選択によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートは、通常、凡そ3MPa以上の破断強度を示すことが適当である。これにより、粘着シートの引張り除去時に千切れ等の損傷が生じにくくなる。好ましい一態様において、上記破断強度は、凡そ5MPa以上(例えば凡そ6MPa以上)であってよく、さらには凡そ7MPa以上(例えば凡そ8MPa以上)であってもよい。好ましい一態様において、上記破断強度は、凡そ10MPa以上(より好ましくは凡そ15MPa以上、例えば凡そ20MPa以上)であり得る。破断強度の上限は特に限定されない。通常は、粘着シートの弾性や伸長性等の観点から、上記破断強度は、通常、凡そ100MPa以下とすることが適当であり、凡そ80MPa以下(例えば凡そ70MPa以下)とすることが好ましい。
上記破断強度は、JIS K 7311:1995に記載の「引張強さ」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断強度を測定することができる。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断強度は、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートは、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。粘着シートの100%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。
上記100%モジュラスは、JIS K 7311:1995に記載の「引張応力」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で引っ張り、上記標線距離が100%伸びたときの応力[MPa]を100%モジュラスとする。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。粘着シートの100%モジュラスは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートの引張り回復率は、特に限定されない。粘着シートが所定以上の引張り回復率を示すことは、該粘着シートの千切れ防止や作業性向上の点で有利となり得る。かかる観点から、粘着シートの引張り回復率は、通常、凡そ10%以上(例えば凡そ25%以上)であることが適当であり、50%を超えることが好ましい。上記引張り回復率は、実質的に100%であってよい。あるいは、上記引張り回復率は、凡そ95%以下であってよく、凡そ90%以下(例えば凡そ85%以下)であってもよい。
引張り回復率の測定は、下記の方法で行われる。
[引張り回復率の測定]
粘着シートにつき、該粘着シートの特定区間距離Lを200%引き伸ばす引張試験を行う。該粘着シートを200%引き伸ばした後、解放して5分経過後における上記特定区間の長さをLとしたときに、式:引張り回復率(%)=(1−(L−L)/(L−L))×100;より引張り回復率を求める。ここでLは、上記特定区間距離Lに200%の伸びを加えたときの上記特定区間の長さである。
より具体的には、JIS K 7311:1995に準拠して、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で200%引き伸ばす。換言すると、上記標線間隔が60mmに延伸するまで上記試験片を引っ張る。そして、引張りから解放して5分経過後における標線間の長さL(mm)を計測し、式:引張り回復率(%)=(1−(L−L)/(L−L))×100;より引張り回復率を求める。この方法において、Lは初期の標線間隔20mmであり、Lは200%引き伸ばし時の標線間長さ60mmである。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートまたはその長尺部の長手方向と一致させることが好ましい。上記引張り回復率は、例えば基材材料種の選択によって調整することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、ポリカーボネート(PC)に対する初期粘着力Aが凡そ1N/20mm以上(例えば2N/20mm以上)であることが好ましい。これにより、PC等の各種材料から形成された被着体に対して充分な接着機能を発揮することができる。また、上記初期粘着力Aを有する粘着シートを、例えば携帯型電子機器に適用した場合には、携帯型電子機器が落下したときにも被着部材の固定配置を保持し得る。初期粘着力Aは、3N/20mm以上(さらに好ましくは4N/20mm以上、例えば5N/20mm以上)であることがより好ましい。好ましい一態様において、初期粘着力Aは、6N/20mm以上(さらには7N/20mm以上)であり得る。初期粘着力Aの上限は特に限定されない。引張り除去性や糊残り防止性の観点からは、通常、初期粘着力Aを20N/20mm未満とすることが適当であり、15N/20mm未満(より好ましくは12N/20mm未満、例えば10N/20mm未満)とすることが好ましい。
初期粘着力Aの測定は、次の方法で行うことができる。幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした粘着シートを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シート(典型的には両面粘着シート)の粘着面を露出させ、該粘着面をPC板の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。粘着シートが両面粘着シートの場合には、他方の粘着面に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた後、測定対象粘着面をPC板に圧着して測定を行えばよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、PCに対する引張り剥離応力Bが凡そ25N/20mm以下であることが適当である。上記引張り剥離応力Bが所定値以下であることにより、接着面に対して0度方向(せん断方向)に作用する方向(典型的には、接着面に対して−90度〜+90度の方向。以下、単に「引張り剥離方向」ともいう。)に粘着シートを引っ張ることで、粘着シートを各種被着体からスムーズに除去することができる。上記引張り剥離応力Bは、好ましくは凡そ20N/20mm以下、より好ましくは凡そ18N/20mm以下、例えば凡そ15N/20mm以下である。引張り剥離応力Bの下限は特に限定されないが、初期粘着力Aとの関係性から、通常は凡そ2N/20mm以上(例えば5N/20mm以上)とすることが適当である。
引張り剥離応力Bの測定は、次の方法で行うことができる。粘着シートを幅20mm、長さ120mmのサイズにカットして測定用の試験片を用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片(典型的には両面粘着シート)の各粘着面を2枚のPC板(30mm×100mm×2mm厚)の表面にそれぞれ重ねて2kgのローラを1往復させて圧着する。試験片の長手方向の一端から70mm分(すなわち20mm×70mm)を各PC板に圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、2枚のPC板をそれぞれ固定し、引張速度300mm/分、剥離角度0度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。具体的には、図2に示すように、試験片100の各粘着面100A、100Bを2枚のPC板111,112にそれぞれ貼り合わせて圧着する。これを上述の速度で図2中の矢印方向(すなわち、引張り剥離方向)に引っ張り、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。片面接着性の粘着シート(片面粘着シート)の場合は、その一の粘着面を一のPC板に固定する他は上記と同様にして剥離強度[N/20mm幅]を測定すればよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
ここに開示される粘着シートは、初期粘着力A[N/20mm]に対する引張り剥離応力B[N/20mm]の比(B/A)が凡そ3.0以下であることが好ましい。これにより、使用時における充分な接着機能と、除去時における優れた引張り除去性とを好ましく両立することができる。一態様において、上記比(B/A)は、凡そ2.5未満(好ましくは凡そ2.4以下、例えば凡そ2.2以下)であり得る。好ましい一態様に係る粘着シートにおいて、上記比(B/A)は、凡そ2.0以下(より好ましくは凡そ1.8以下、さらに好ましくは凡そ1.6以下、例えば凡そ1.5以下)であり得る。上記比(B/A)は、理想的には低ければ低いほどよいが、実用上、例えば凡そ0.8以上であってもよく、あるいは凡そ1.0以上であってもよい。
<粘着シートのサイズ等>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層および基材を含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚は、特に限定されない。粘着シートの総厚は、例えば凡そ20μm以上とすることができ、通常は30μm以上が適当であり、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上である。粘着シートの総厚を55μm以上、さらには65μm以上(例えば75μm以上)とすることにより、より千切れにくく引張り除去性に優れた粘着シートが実現される傾向にある。また、粘着シートの総厚は、通常、300μm以下とすることが適当であり、250μm以下(より好ましくは200μm以下、例えば170μm以下)とすることが好ましい。ここに開示される粘着シートの一態様において、該粘着シートの総厚は、好ましくは150μm以下(典型的には150μm未満)、より好ましくは130μm以下、さらに好ましくは120μm以下、例えば110μm以下である。ここに開示される技術によると、このように比較的薄い粘着シートにおいても、良好な引張り除去性を実現することができる。粘着シートを薄くすることは、該粘着シートの薄型化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。また、一般に粘着シートが薄くなると衝撃吸収性は低下する傾向にあるため、上記のように比較的薄い粘着シートでは、本発明を適用して耐衝撃性を向上させることが特に有意義である。
ここに開示される粘着シートにおいて、該粘着シートの総厚に占める粘着剤層の厚さ(フィルム状基材の両面に第一粘着剤層および第二粘着剤層を有する粘着シートでは、第一粘着剤層と第二粘着剤層との合計厚さ)の割合は、例えば20%以上とすることができ、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。粘着剤層の厚さの割合が大きくなると、粘着剤層の特性(例えば粘弾性特性)が粘着シートの耐衝撃性に及ぼす影響がより大きくなり、本発明の適用効果がよりよく発揮され得る。フィルム状基材を有しない粘着シートでは、総厚に占める粘着剤層の厚さの割合は100%である。フィルム状基材を有する粘着シートにでは、上記割合は、通常は95%以下が適当であり、好ましくは75%以下、より好ましくは60%以下であり、例えば50%以下であってもよい。
ここに開示される粘着シートが長尺形状を有する場合、その長さは、引張りによる除去作業性の観点から、1cm以上(例えば3cm以上、典型的には5cm以上)とすることが好ましい。除去作業性の観点から、粘着シートの長さは30cm以下(例えば15cm以下)とすることが好ましい。一態様に係る粘着シートにおいて、該粘着シートの長さが10cm以下(例えば5cm以下)であってもよい。
ここに開示される粘着シートが長尺形状を有する場合、その幅は30mm以下(例えば20mm以下、典型的には15mm以下)程度に構成され得る。例えば、粘着シートを携帯型電子機器内において用いる場合、上記幅が好ましく採用され得る。引張り除去の際に千切れる等の損傷を防止する観点から、粘着シートの幅は1mm以上(例えば3mm以上、典型的には5mm以上)であることが好ましく、10mm以上(例えば12mm以上)であることがより好ましい。なお、粘着シート全体が長尺状である場合、上述の幅は粘着シートの幅となる。
<用途>
ここに開示される粘着シートは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる表面を有する被着体に貼り付けられて用いられ得る。
ここに開示される粘着シートは、使用時には良好な耐衝撃性を示す接合部を形成し、かつ除去時には引張り除去することができる。この特長を生かして、貼り付け後に再剥離され得る各種用途の粘着シートとして好ましく利用される。例えば、電子機器用途の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、ディスプレイ(例えばテレビのディスプレイ)のデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に、ここに開示される粘着シートを適用することができる。なかでも、使用時には所定以上の接着力が求められる一方、構成部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際にスムーズな除去が求められる携帯型電子機器用粘着シートとして好ましく利用することができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯型電子機器において、表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、キーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材(回路基板、各種パネル用部材、ボタン、照明機器部材、内部カメラ部材、放熱材、グラファイトシート)の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく適用され得る。また、ここに開示される粘着シートは、電子機器以外の携帯機器、例えば機械式の腕時計や懐中時計、懐中電灯、手鏡、定期入れ等における部材の固定や表示等の用途にも好ましく適用され得る。ここに開示される粘着シートは、良好な耐衝撃性を示すので、このような携帯機器(典型的には、上述ような携帯型電子機器)に用いられた場合に、当該携帯機器が落下したときの衝撃に対しても被着部材の固定配置を保持し得る。このことは、バッテリー固定用途において特に有利である。固定対象であるバッテリーは経時使用により膨張し得るため、その周辺にはギャップが設けられており、落下衝撃等による固定不良(粘着シートの剥がれ)は、顕著な不具合となりやすい傾向があるためである。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
また、ここに開示される粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、被着体間から引き抜くようにして除去する性能(引き抜き除去性)に優れる。ここで引き抜き除去性とは、粘着シートを介して固定された2つの被着体から、該粘着シートの一部(典型的にはタブ)を露出させておき、この露出部位を引っ張り、粘着シートを引き抜くことで被着体の固定(典型的には接合)の解除を行うような除去のしやすさのことをいう。なお、2つの被着体は一部材の2箇所であり得る。以下、図3、4を参照してより具体的に説明する。
図3は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的側面図であって、(a)は粘着シートの引張り除去を開始する状態を示す図であり、(b)は粘着シートを引っ張って除去を行っている状態を示す図であり、(c)は粘着シートの引張り除去が完了した状態を示す図である。図4は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的上面図であって、図4(a)〜(c)はそれぞれ図の(a)〜(c)に対応する図である。
図3の(a)、図4の(a)に示すように、粘着シート(両面粘着シート)200には、被着体A,Bを接合する際に外部に露出するタブTが設けられている。この粘着シート200を用いて被着体Aに被着体Bを接合する。そして、当該接合目的を達成した後、タブTを指でつまんで被着体A,B間から引き抜くように粘着シート200を引っ張る。すると、粘着シート200は伸び始め、引張り方向に直交する方向が収縮し、被着体A,Bから剥がれ始める(図3の(b)、図4の(b)参照)。そして、最終的に粘着シート200の全接着領域が剥がれて、粘着シート200の被着体A,B間からの引き抜きは完了する(図3の(c)、図4の(c)参照)。被着体Aに接合されていた被着体Bの取外しも同時に完了する。
上述のような引張り除去性に優れる粘着シートは、携帯型電子機器においてバッテリー(一次電池および二次電池を包含する。例えばポリマーバッテリー)を固定する目的で用いられる粘着シートとして好適である。バッテリーは通常、携帯型電子機器の構成部材(バッテリーを含む。)の修理や交換、検査等の際に、取外しを要する箇所に配置されていることが多い。そのため、当該バッテリー固定用の粘着シートは、除去を要する頻度が高い。しかし、バッテリーの取外しを、取外し具の使用や手剥がし、加熱等の物理的手段で行うことは、バッテリーを損傷するおそれがあり、安全性の面で好ましくない場合がある。光硬化による剥離力低減も粘着シートの適用部位の関係上、バッテリー越しの照射となるため有効ではない。ここに開示される粘着シートは、バッテリーを良好に固定する機能を発揮しつつ、使用期間を終えたバッテリーを取り外す際には、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、その取外しを簡易に行うことができる。上記粘着シートは、特にポリマーバッテリーを固定する目的で用いられる粘着シートとして好ましい。ポリマーバッテリーは他種のバッテリー(典型的には金属ケースを備えるバッテリー)と比べて変形しやすい傾向があるため、従来の引き剥がし方法ではバッテリーが変形してしまい、機能が損なわれてしまう場合があった。ここに開示される粘着シートによると、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、ポリマーバッテリーの変形を抑制しつつ、粘着シートを良好に除去することができる。
また、携帯型電池機器のバッテリー固定に用いられる粘着シートは、バッテリー周辺に存在する他の部品や、バッテリーの配置等により、除去の際に、せん断方向に平行して引くことができない場合が多い。そのような場合、粘着シートは、接着面に対して非平行の角度(例えば45度以上90度以下の角度、典型的には70度以上90度未満の角度)で引っ張って除去することとなり、除去の際に、被着体(バッテリー)や障害物との接触等により損傷するおそれがあった。ここに開示される技術によると、そのような除去態様においても、粘着シートを損傷することなく好ましく除去することができる。
さらに、上記引張り除去性(典型的には引き抜き除去性)に優れる粘着シートは、壁面や柱、家具、家電製品、ガラス面等に貼り付けられ、所定期間使用された後、貼り換えられる被着体(被固定物、被貼り付け物等)を固定する目的で用いられる粘着シート(典型的には両面粘着シート)としても好適である。この用途においても、被着体固定中は、粘着シートは良好な固定機能を発揮しつつ、被着体の取外しの際には、粘着シートに設けたタブ等を掴んで該粘着シート全体を引き抜くことにより、該粘着シートの除去(例えば図4の(c)中の矢印方向への除去)を効率よく行うことができる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 粘着剤層を有する伸張性粘着シートであって、
上記粘着剤層を構成する粘着剤は、−30℃から20℃までの温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲を有し、上記温度範囲の上端温度と下端温度との差ΔT(1.0)が凡そ10℃以上である、粘着シート。
(2) 上記粘着剤は、上記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxが凡そ1.2以上である、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記粘着剤は、上記ΔT(1.0)と、上記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxとの関係が、次式:
((tanδmax−1.0)/ΔT(1.0))×1000≦50;
を満たす、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記粘着剤は、tanδのピーク温度Tpeakが凡そ−25℃以上凡そ15℃以下の範囲にある、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シート。
(5) 上記粘着剤は架橋している(好ましくは、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の少なくともいずれかにより架橋している)、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記粘着剤は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ20重量部以上凡そ100重量部以下の粘着付与樹脂を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着シート。
(7) 上記粘着剤は非発泡である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート。
(8) 上記粘着剤層はアクリル系粘着剤層である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 第一粘着面および第二粘着面を有する両面粘着シートとして構成されている、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記粘着剤層はフィラー粒子を含有する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着シート。
(11) 上記フィラー粒子の平均粒径は、上記粘着剤層の厚さの凡そ3%より大きく凡そ50%未満である、上記(10)に記載の粘着シート。
(12) 上記粘着剤層における上記フィラー粒子の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ12重量部以上凡そ60重量部以下である、上記(10)または(11)に記載の粘着シート。
(13) 総厚が凡そ140μm以下である、上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の粘着シート。
(14) 上記粘着剤層を支持するフィルム状基材をさらに備える、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) 上記フィルム状基材の厚さは凡そ10μm以上凡そ90μm以下である、上記(14)に記載の粘着シート。
(16) 上記フィルム状基材は非発泡の樹脂フィルムである、上記(14)または(15)に記載の粘着シート。
(17) 上記粘着剤層として、上記フィルム状基材の第一面に設けられた第一粘着剤層と、該フィルム状基材の第二面に設けられた第二粘着剤層と、を備える、上記(14)〜(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 粘着シートの総厚に占める粘着剤層の厚さが凡そ30%以上凡そ75%以下(好ましくは凡そ35%以上凡そ60%以下)である、上記(14)〜(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) 一の物体と他の物体とを接合するために用いられ、上記粘着シートを挟んで上記一の物体と上記他の物体とが接合した状態において上記粘着シートの一端を引くことで該粘着シートが伸張し、上記一の物体と該他の物体との接合状態が解除される、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 携帯型電子機器のバッテリーを固定するために使用される、上記(1)から(19)のいずれかに記載の粘着シート。
(21) 粘着剤層を有する伸張性粘着シートであって、
上記粘着剤層を構成する粘着剤は、−30℃から20℃までの温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲を有し、上記温度範囲の上端温度と下端温度との差ΔT(1.0)が凡そ15℃以上凡そ35℃以下であり、かつtanδのピーク温度Tpeakが凡そ−10℃以上凡そ10℃以下の範囲にあり、
上記粘着シートの破断時伸びが凡そ300%以上であり、
上記粘着シートの総厚が凡そ140μm以下である、粘着シート。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<粘着シートの作製>
(例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてBA100部、VAc5部、AA3部およびHEA0.1部と、重合開始剤としてAIBN0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーAP1の溶液を得た。このアクリル系ポリマーAP1のMwは55×10であった。
上記溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーAP1の100部あたり、重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃;表1では「TR1」と表記)20部およびテルペンフェノール樹脂(住友ベークライト社製、製品名「スミライトレジンPR12603N」、軟化点133℃;表1では「TR2」と表記)20部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)3部およびエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、製品名「TETRAD−C」)0.01部と、フィラー粒子としての水酸化アルミニウム粒子(昭和電工社製、製品名「ハイジライトH−32」)40部とを加え、攪拌混合して粘着剤組成物C1を調製した。上記フィラー粒子は、平均粒径が8μmであり、25μm未満の粒子径を有する粒子の割合が85%以上、1μm未満の粒子径を有する粒子の割合が3%である。
市販の剥離ライナー(商品名「SLB−80W3D」、住化加工紙社製)を2枚用意した。それらの剥離ライナーのそれぞれ一方の面(剥離面)に上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上に粘着剤層(第一粘着剤層および第二粘着剤層)をそれぞれ形成した。
厚さ60μmの非発泡エーテル系ポリウレタン樹脂フィルム(日本マタイ社製、商品名「エスマーURS ET−N」)の両面に、上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層をそれぞれ貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間エージングした。このようにして総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
(例2)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてBA95部およびAA5部と、重合開始剤としてAIBN0.2部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、60℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーAP2の溶液を得た。このアクリル系ポリマーAP2のMwは約70×10であった。
上記溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーAP2の100部あたり、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、製品名「YSポリスターT−115」、軟化点約115℃、水酸基価30〜60mgKOH/g;表1では「TR3」と表記)30部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)2部およびエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、製品名「TETRAD−C」)0.01部と、フィラー粒子(昭和電工社製、製品名「ハイジライトH−32」)40部とを加え、攪拌混合して粘着剤組成物C2を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C2を用いた他は例1と同様にして、総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
(例3)
例2により得られたアクリル系ポリマーAP2の溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーAP2の100部あたり、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、製品名「YSポリスターS−145」、軟化点約145℃、水酸基価70〜110mgKOH/g;表1では「TR4」と表記)30部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)2部およびエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、製品名「TETRAD−C」)0.01部と、フィラー粒子(昭和電工社製、製品名「ハイジライトH−32」)40部とを加え、攪拌混合して粘着剤組成物C3を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C3を用いた他は例1と同様にして、総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
(例4)
例1により得られた上記アクリル系ポリマーAP1の溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーAP1の100部あたり、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)3部およびフィラー粒子(昭和電工社製、製品名「ハイジライトH−32」)40部を加え、攪拌混合して粘着剤組成物C4を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C4を用いた他は例1と同様にして、総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
(例5)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてBA70部、2EHA30部、AA3部および4HBA0.05部と、重合開始剤としてAIBN0.08部と、重合溶媒(トルエンと酢酸エチルとの重量比1:1の混合溶媒)とを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーAP3の溶液を得た。このアクリル系ポリマーAP3のMwは50×10であった。
上記溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーAP3の100部あたり、重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃)30部、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)3部およびフィラー粒子(昭和電工社製、製品名「ハイジライトH−32」)40部を加え、攪拌混合して粘着剤組成物C5を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C5を用いた他は例1と同様にして、総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
(例6)
天然ゴム(MS(1+4)100℃におけるムーニー粘度が75の天然ゴム)100部、スチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック3460C」、放射状構造SIS、スチレン含有量25重量%)30部、無水マレイン酸変性C5/C9系石油樹脂(日本ゼオン社製、製品名「クイントンD−200」、軟化点約100℃、酸価17;表1では「TR5」と表記)40部、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製、製品名「YSレジンPX1250」、軟化点125℃、酸価1以下;表1では「TR6」と表記)30部およびイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)4部をトルエンに溶解し、攪拌混合して粘着剤組成物C6を調製した。
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C6を用いた他は例1と同様にして、総厚100μmの両面粘着シートを作製した。
例1〜6に係る粘着シートの作製に使用した粘着剤組成物C1〜C6の概略組成を表1に示す。
<測定および評価>
(粘弾性測定)
各例に係る粘着剤組成物を剥離ライナーの剥離面上に塗布し、100℃で2分間乾燥させて厚さ50μmの粘着剤層を形成した。この厚さ50μmの粘着剤層を重ね合わせることにより、厚さ約2mmの積層シート状の粘着剤サンプルを作製した。上記粘着剤サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜いた試料をパラレルプレートで挟み込んで固定し、粘弾性試験機(ティー・エー・インスツルメント社製、ARES)を用いて以下の条件で温度分散試験を行った。その際の貯蔵弾性率G’(Pa)および損失弾性率G”(Pa)から、次式:tanδ=G”/G’;により、tanδ(損失正接)を測定した。
[試験条件]
・測定モード:せん断モード
・温度範囲 :−60℃〜60℃
・昇温速度 :5℃/min
・測定周波数:1Hz
(耐衝撃性評価)
図5に示すように、長さ100mm、幅50mm、厚さ5mmの長方形状であって重量30gのポリカーボネート板(PC板)52と、長方形の板状体であってその片面にPC板52を周囲に余裕をもって収容し得る幅および深さの溝54Aが長手方向の一端から他端まで形成されている重量200gのポリカーボネート製治具(PC治具)54とを用意し、各例に係る両面粘着シートを幅10mm、長さ90mmの帯状にカットして作製した試験片2を用いてPC板52を溝54Aの底面に固定した。より詳しくは、試験片2の片面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面をPC板52の長手方向の一端から幅中央に沿って貼り付けた。次いで、PC板52に貼り付けられた試験片2の他面を覆う剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させた。このPC板52を、上記粘着面を下にしてPC治具54の溝54Aのほぼ中央に載せ、2kgのローラを一往復させて圧着した後、室温(約23℃)で1時間保持したものを耐衝撃性評価用サンプルとして使用した。なお、見やすさのため、図5においてPC板52は仮想線(二点鎖線)で示している。
室温(約23℃)において、この評価用サンプルを1.5mの高さからコンクリート板上に自由落下させる落下試験を行った。このとき、上記評価用サンプルの6面が順次下方となるように、1回毎に落下の向きを調節した。具体的には、1回目の落下から6回目の落下まではPC治具54の一方の短辺、一方の長辺、他方の短辺、他方の長辺、表面(溝54Aが形成された側の面)および裏面がそれぞれ下方となる落下パターンをこの順に各1回行い、7回目の落下以降は1〜6回目と同じ落下パターンを繰り返した。そして、PC板52がPC治具54から剥がれるまでの落下回数に基づいて、以下の3段階で耐衝撃性を評価した。結果を表2に示した。
E(耐衝撃性に優れる):20回落下させても剥がれなかった。
G(耐衝撃性良好):11回目の落下から20回目の落下までの間に剥がれた。
P(耐衝撃性に乏しい):10回目の落下以前に剥がれた。
(引張り除去試験)
各例に係る両面粘着シートを幅20mm、長さ120mmのサイズにカットして試験片を用意した。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片の各粘着面を2枚のPC板(長さ100mm、幅30mm、厚さ2mm)の表面にそれぞれ重ね、2kgのローラを1往復させて圧着した。このとき、試験片の長手方向の一端から70mm(すなわち20mm×70mm)の範囲を各PC板に圧着し、残りの30mmは上記PC板の間からはみ出させた。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、2枚のPC板をそれぞれ固定し、上記試験片の他端(PC板の間からはみ出した部分)を掴んで引張速度300mm/分、剥離角度0度の条件で引っ張り、試験片の千切れを生じることなく該試験片をPC板の間から引き抜くことができるか否かを観察した。観察結果を以下の3段階で評価した。結果を表2に示した。
E(引張り除去性に優れる):試験片の千切れを生じることなく引張り除去することができた。
A(実用上十分な引張り除去性を有する):被着体表面に多少の糊残りがみられたが、試験片の千切れを生じることなく引張り除去することができた。
P(引張り除去性に乏しい):引張りの途中で試験片が千切れ、引張り除去することができなかった。
Figure 2017197689
Figure 2017197689
表2に示されるように、tanδmaxが1.0以上であり、かつΔT(1.0)が10℃以上である例1〜5の粘着シートは、例6の粘着シートに比べて明らかに良好な耐衝撃性を示した。また、これら例1〜5の粘着シートは、いずれも実用上十分な引張り剥離性を有するものであった。なかでも例1〜3に係る粘着シートは優れた引張り剥離性を示した。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。
1,200 粘着シート
2,100 試験片
10 フィルム状基材
21,22 粘着剤層
52,111,112 ポリカーボネート板(PC板)
54 ポリカーボネート製治具(PC治具)
54A 溝
100A,100B 粘着面

Claims (10)

  1. 粘着剤層を有する伸張性粘着シートであって、
    前記粘着剤層を構成する粘着剤は、−30℃から20℃までの温度領域にtanδが1.0以上となる温度範囲を有し、前記温度範囲の上端温度と下端温度との差ΔT(1.0)が10℃以上である、粘着シート。
  2. 前記粘着剤は、前記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxが1.2以上である、請求項1に記載の粘着シート。
  3. 前記粘着剤は、前記ΔT(1.0)と、前記温度領域におけるtanδの最大値tanδmaxとの関係が、次式:
    ((tanδmax−1.0)/ΔT(1.0))×1000≦50;
    を満たす、請求項1または2に記載の粘着シート。
  4. 前記粘着剤は、tanδのピーク温度Tpeakが−25℃以上15℃以下の範囲にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着シート。
  5. 前記粘着剤は、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の少なくともいずれかにより架橋している、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着シート。
  6. 前記粘着剤は、ベースポリマー100重量部に対して20重量部以上100重量部以下の粘着付与樹脂を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着シート。
  7. 総厚が140μm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着シート。
  8. 第一粘着面および第二粘着面を有する両面粘着シートとして構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着シート。
  9. 一の物体と他の物体とを接合するために用いられ、前記粘着シートを挟んで前記一の物体と前記他の物体とが接合した状態において前記粘着シートの一端を引くことで該粘着シートが伸張し、前記一の物体と該他の物体との接合状態が解除される、請求項8に記載の粘着シート。
  10. 携帯型電子機器のバッテリーを固定するために使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の粘着シート。
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