JP2017197649A - 重合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】毒性が低くかつ安価な試薬を用いて、特定の硫黄含有構造を有する重合体から前記構造を除去し、意図せぬ着色や臭気のない重合体を製造する方法の提供。【解決手段】特定の硫黄含有構造を有する重合体にスポンジニッケルを作用させ、前記構造を水素原子で置換することにより、目的の重合体を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、重合体の製造方法に関する。より詳細には、重合体中の硫黄含有構造を水素原子で置換する工程を含む、重合体の製造方法に関する。
分子量の制御された重合体を製造する方法として、RAFT重合(特許文献1)、MADIX重合(特許文献2)等のリビングラジカル重合が知られている。これらの方法では、通常のラジカル重合系に連鎖移動剤としてRAFT剤またはMADIX剤と呼ばれる硫黄化合物を添加して重合制御を行う。
RAFT重合等により得られる重合体は、RAFT剤等に由来する硫黄含有構造、例えばジチオカルバマート、ジチオエステル、トリチオカーボナート、ザンテート等を有する。これらの構造は得られる重合体の熱安定性低下や意図せぬ着色等の原因となることがあるため、重合体の用途によってはその除去が望まれる。
重合体から硫黄含有構造を除去する方法としては、例えば、ラジカル開始剤とトリアルキルスズヒドリドを使用する方法(非特許文献1)、ラジカル開始剤とトリアルキルシランを使用する方法(特許文献3)、およびラジカル開始剤と次亜燐酸塩を使用する方法(特許文献4)が知られている。
特表2002−508409号公報 特表2002−512653号公報 国際公開第2002/090397号明細書 特表2007−537341号公報
ポリマー,2005年,46巻,8458−8468頁
上記従来法は、用いる試薬の毒性が高い、あるいは高価であるといった問題点があった。また、硫黄含有構造を除去する工程において副生する硫黄化合物と重合体との分離が困難であり、その結果、得られる重合体は着色や臭気の点で課題を抱えていた。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、毒性が低くかつ安価な試薬を用いて、特定の硫黄含有構造を有する重合体から前記構造を除去し、意図せぬ着色や臭気のない重合体を製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の硫黄含有構造を有する重合体にスポンジニッケルを作用させることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、下記[1]〜[6]を提供する。
[1]下記一般式(1)で示される構造を有する重合体をスポンジニッケルと接触させ、前記構造を水素原子で置換する工程を含む、重合体の製造方法。
Figure 2017197649
(式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択される一種以上の原子を任意の位置に有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基またはその塩を表す。)
[2]前記重合体が付加重合体である、[1]の製造方法。
[3]前記付加重合体がRAFT重合またはMADIX重合により得られたものである、[2]の製造方法。
[4]前記付加重合体が、カルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物からなる群から選択される一種以上の化合物由来の単量体単位を含む、[2]または[3]の製造方法。
[5]前記付加重合体がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む、[2]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6]前記付加重合体が酢酸ビニル由来の単量体単位を含む、[2]〜[5]のいずれかの製造方法。
本発明により、毒性が低くかつ安価な試薬を用いて、特定の硫黄含有構造を有する重合体から前記構造を除去し、意図せぬ着色や臭気のない重合体を製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、下記一般式(1)で示される構造を有する重合体(以下、「重合体(X)」と称する)をスポンジニッケルと接触させ、前記構造が水素原子で置換された重合体(以下「重合体(Y)」と称する)を得る。
Figure 2017197649
(式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択される一種以上の原子を任意の位置に有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基またはその塩を表す。)
一般式(1)においてZが表す、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択される一種以上の原子を任意の位置に有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては特に制限はないが、例えば下記一般式(2)〜(5)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2017197649
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基または炭素数2〜20のへテロシクリル基もしくはその塩を表す。)
一般式(2)〜(5)において、R〜Rがそれぞれ独立して表す炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式炭化水素基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、1−メチルベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
一般式(2)〜(5)において、R〜Rがそれぞれ独立して表す炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(2)〜(5)において、R〜Rがそれぞれ独立して表す炭素数2〜20のヘテロシクリル基としては、例えば、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、インドリニル基、ピロリル基、ピロリドニル基、オキサゾリドニル基、イミダゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基、モルホリル基等が挙げられる。
一般式(2)〜(5)において、R〜Rがそれぞれ独立して表す炭素数2〜20のヘテロシクリル基の塩としては、例えば、2−ピリジル基の塩酸塩、2−ピリジル基のトルエンスルホン酸塩、2−ピリジル基のトリフルオロメタンスルホン酸塩、4−ピリジル基の塩酸塩、4−ピリジル基のトルエンスルホン酸塩、4−ピリジル基のトリフルオロメタンスルホン酸塩、イミダゾリル基の塩酸塩、2−イミダゾリル基のトルエンスルホン酸塩、2−イミダゾリル基のトリフルオロメタンスルホン酸塩等が挙げられる。
一般式(1)においてZが表す構造としては、具体的には、以下の例が挙げられる。
Figure 2017197649
重合体(X)において、一般式(1)で示される構造の位置に制限はなく、重合体(X)の末端に位置していても側鎖に位置していてもよく、重合体(X)の主鎖の一部を構成していてもよい。また、一般式(1)で示される構造の数量に制限はなく、重合体(X)1分子に対して1つ有していても、2つ以上有していてもよい。
本発明の製造方法は、重合体(X)が付加重合体である場合に好適に用いることができ、重合体(X)がRAFT重合やMADIX重合により得られた付加重合体である場合に特に好適に用いることができる。この場合、一般式(1)で示される構造はRAFT剤またはMADIX剤由来のものである。
前記付加重合体としては、例えばカルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物からなる群から選択される一種以上の化合物由来の単量体単位を含む付加重合体が挙げられる。
なお、本明細書中で「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
重合体(X)がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む重合体である場合(以下、「重合体(X)’」と称する)および重合体(Y)がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む重合体である場合(以下、「重合体(Y)’」と称する)、かかる重合体(X)’および重合体(Y)’はエステル部分をけん化し、ヒドロキシ基を有する重合体に変換して用いられることが多い。ヒドロキシ基を有する重合体を重合体(X)’のけん化により製造する場合、重合体(X)’が有する下記一般式(A)で示される構造は、一般式(B)で示される構造を経て、脱硫化水素により下記一般式(C)で示される構造に変換される。しかし、一般式(C)で示される構造はヒドロキシ基等と副反応を起こすため、ヒドロキシ基を有する重合体を重合体(X)’のけん化により製造することは望ましくない。一方で、本発明の製造方法のように重合体(X)’から重合体(Y)’を製造した後に重合体(Y)’をけん化した場合、上記の副反応の懸念がない。上記の観点から、本発明の製造方法は、重合体(X)がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む付加重合体である場合に特に好適に用いることができる。
また、重合体(Y)’と硫黄化合物とが混合している場合、重合体(Y)’をけん化して得られる重合体が有するヒドロキシ基と硫黄化合物との副反応が懸念される。一方で本発明の製造方法では、後述する理由により、従来法に比べて硫黄化合物の除去が容易であり、上記の副反応の懸念がない。上記の観点からも、本発明の製造方法は、重合体(X)がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む重合体である場合に特に好適に用いることができる。
Figure 2017197649
(式中、Zは前記定義の通りである。)
また、重合体(X)’から硫黄含有構造を除去する場合、重合体(X)’の有するアルコキシカルボニル基の還元反応が進行する恐れがある。しかし本発明の製造方法のようにスポンジニッケルを用いることで係る還元反応の進行を抑制することができる。
上記カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば蟻酸ビニル、酢酸ビニル、n−プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、デカン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手性の観点から、本発明の製造方法は酢酸ビニル、n−プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル由来の単量体単位を含む重合体(X)に好適に用いることができ、酢酸ビニル由来の単量体単位を含む重合体(X)により好適に用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(トリメチルシリルオキシ)プロピルなどが挙げられる。これらの中でも、原料の入手性の観点から、本発明の製造方法は(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の炭素数5以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合体(X)に好適に用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸の塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
上記共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン、β-ミルセン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン等が挙げられる。
なお重合体(X)は、ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物以外の他の単量体を含有してもよい。
上記他の単量体としては、例えば、エテン、プロペン、n−ブテン、イソブテン等のモノオレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等のN−ビニルアミド;臭化ビニル、臭化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸;マレイン酸の塩、エステルまたは無水物等のマレイン酸誘導体;イタコン酸;イタコン酸の塩、エステルまたは無水物等のイタコン酸誘導体;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
重合体(X)が2種以上の単量体から構成される場合、その共重合の態様に制約はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体であってもよい。
また、本発明の製造方法は2種以上の重合体(X)の混合物に対して適用してもよい。例えば、2種以上の単独重合体(X)の混合物であってもよく、単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体からなる群から選択される2種以上の重合体(X)の混合物であってもよい。
重合体(X)の数平均分子量に特に制限はないが、本発明の製造方法は数平均分子量が500〜1,200,000である重合体(X)に好適に用いることができ、数平均分子量が1,000〜200,000である重合体(X)により好適に用いることができる。なお、本明細書において数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
重合体(X)をRAFT重合により製造する場合は、例えば特許文献1に記載の方法を採用できる。また、MADIX重合により製造する場合は、例えば非特許文献2に記載の方法を採用できる。
本発明の製造方法において用いるスポンジニッケルは、ラネー(登録商標)ニッケル、スケルタールニッケル、スケルタール触媒、スポンジ−メタルニッケル、スポンジニッケル金属合金触媒、スポンジ−メタル触媒と呼ばれることもあり、これらを使用することもできる。
上記スポンジニッケルの使用量は、ニッケル原子換算で重合体(X)中の硫黄原子のモル数の5〜400倍であることが好ましく、10〜100倍であることが好ましい。使用量が上記範囲未満では、前記一般式(1)で示される構造が水素原子で置換される反応の進行が遅くなりやすい。一方で、使用量が上記範囲を超える場合には反応後に重合体(Y)からスポンジニッケルを除去するのが困難となりやすい。
上記スポンジニッケルの形状は特に制限はないが、表面積が大きいほど反応性が向上することから、粉状または粒状が好ましく、粉状がより好ましい。
重合体(X)をスポンジニッケルと接触させる方法に制限はなく、例えば、所定量のスポンジニッケルと反応溶媒が入ったガラス製容器またはステンレス製耐圧容器に重合体(X)を一括もしくは逐次で添加する方法がある。
前記反応溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;などが用いられる。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記反応溶媒の使用量は、生産性と反応温度制御の観点から、重合体(X)の質量の0.2〜20倍であることが好ましく、1〜9倍であることがより好ましい。
前記工程における反応温度は、0〜100℃が好ましく、10〜80℃がさらに好ましい。反応温度が上記範囲未満では、前記一般式(1)で示される構造が水素原子で置換される反応の進行が遅くなりやすい。一方で、反応温度が上記範囲を超える場合には、重合体(X)や重合体(Y)が変質するといった問題が生じやすい。
前記工程は、窒素やアルゴン等の不活性ガスまたは水素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。一般式(1)で示される構造はスポンジニッケルに吸着されている水素により置換されるため、水素ガス存在下で前記工程を実施することは必須ではない。しかし、反応の進行を助長する目的で、水素ガス存在下で前記工程を実施してもよく、さらに水素ガスで加圧して実施してもよい。
重合体(X)から硫黄含有構造を除去する場合、前記構造に由来する硫黄化合物が副生する。従来法で副生する硫黄化合物は、前記構造とラジカル開始剤に由来する化合物であるが、当該化合物は沸点や溶解性が高いために重合体(Y)と分離することが難しい。そのため、従来法では、着色や臭気のない重合体(Y)を製造することが困難であった。一方で、本発明の製造方法により得られる重合体(Y)は、硫黄含有構造に由来する硫黄化合物の残留が極めて少なく、着色や臭気がない。これは、前記硫黄化合物がスポンジニッケルに吸着するため、スポンジニッケルとともに重合体(Y)から前記硫黄化合物を容易に分離することができるからだと考えられる。また、本発明の製造方法における前記硫黄化合物が二硫化炭素である場合、揮発しやすく毒性や引火性の高い二硫化炭素をスポンジニッケルに吸着させて容易に除去することできるため、安全性の面でも有利である。
スポンジニッケルの除去方法は特に制限されず、例えば前記工程後の反応溶液からろ別することにより除去できる。また、反応溶液から除去したスポンジニッケルは、公知の方法(例えば、特許第3963839号明細書に記載の方法)等により再生し、再度使用できる。
以下、実施例などにより本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
(原料)
2−ブロモプロピオン酸メチル(東京化成工業株式会社製)
エチルキサントゲン酸カリウム(東京化成工業株式会社製)
エタノール(和光純薬工業株式会社製)
ジエチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)
ペンタン(和光純薬工業株式会社製)
硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
酢酸ビニル(和光純薬工業株式会社製)
アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製)
ヘキサン(和光純薬工業株式会社製)
2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオアート(シグマ・アルドリッチ社製)
メタクリル酸メチル(株式会社クラレ製)
シアノメチルn−ドデシルトリチオカーボナート(シグマ・アルドリッチ社製)
スチレン(和光純薬工業株式会社製)
スポンジニッケル(市販名:スケルタールニッケル、東京化成工業株式会社製)
メタノール(和光純薬工業株式会社製)
テトラヒドロフラン(THF)(和光純薬工業株式会社製)
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定)
実施例および比較例において得られた重合体(Y)について、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定を行い、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)の値を求めた。
装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8220GPC」
分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
H−NMR測定)
実施例および比較例において得られた重合体(Y)について、下記の条件でH−NMR測定を行い、重合体(Y)の構造を確認した。
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置 「JNM−ECX400」
溶媒:重水素化クロロホルム
温度:25℃
(二硫化炭素の濃度の測定)
株式会社ガステック製の気体検知管(二硫化炭素用、No.13L)を用い、重合体(X)をスポンジニッケルと接触させる工程後の反応容器中に存在する二硫化炭素ガスの濃度を測定した。
[参考例1]
(−SC(=S)OCで示される構造を有するポリ酢酸ビニル(X−1)の合成)
(1)RAFT剤(O−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチルジチオカーボナート)の合成
アルゴン置換された200mLガラス製3口フラスコに2−ブロモプロピオン酸メチル(8.35g、0.050モル)、エタノール(80mL)を投入し、0℃に冷却した。攪拌しながらエチルキサントゲン酸カリウム(8.82g、0.055モル)を投入後、室温で10時間反応させた。生成物をジエチルエーテル(200mL)とペンタン(100mL)の混合液で抽出し、イオン交換水で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、抽出溶媒を留去して、O−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチルジチオカーボナート(8.43g、0.041モル、収率81.1%)を得た。
(2)−SC(=S)OCで示される構造を有するポリ酢酸ビニルの合成
アルゴン置換された20mLステンレス製容器に(1)で合成したO−エチル−S−(1−メトキシカルボニル)エチルジチオカーボナート(208mg、1.0ミリモル)、酢酸ビニル(4.30g、50ミリモル)、アゾビスイソブチロニトリル(3.3mg、0.020ミリモル)を投入し、60℃で4時間攪拌した。内容物をヘキサン(100mL)中に投入し、ポリ酢酸ビニル(X−1)(1.60g、収率35%、黄色固体、硫黄臭あり)を得た。
数平均分子量(Mn):1,900、重量平均分子量(Mw):2,200
分子量分布(Mw/Mn):1.17
[参考例2]
(−SC(=S)SCで示される構造を有するポリメタクリル酸メチル(X−2)の合成)
アルゴン置換された20mLステンレス製容器に2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオアート(221mg、1.0ミリモル)、メタクリル酸メチル(5.00g、50ミリモル)、アゾビスイソブチロニトリル(3.3mg、0.020ミリモル)を投入し、60℃で8時間攪拌した。内容物をメタノール(100mL)中に投入し、ポリメタクリル酸メチル(X−2)(1.88g、収率36%、赤色固体、硫黄臭あり)を得た。
数平均分子量(Mn):2,400、重量平均分子量(Mw):2,900
分子量分布(Mw/Mn):1.21
[参考例3]
(−SC(=S)SC1225で示される構造を有するポリスチレン(X−3)の合成)
アルゴン置換された20mLステンレス製容器にシアノメチルn−ドデシルトリチオカーボナート(318mg、1.0ミリモル)、スチレン(5.21g、50ミリモル)、アゾビスイソブチロニトリル(3.3mg、0.020ミリモル)を投入し、60℃で10時間攪拌した。内容物をメタノール(100mL)中に投入し、ポリスチレン(X−3)(2.2g、収率40%、黄色固体、硫黄臭あり)を得た。
数平均分子量(Mn):2,400、重量平均分子量(Mw):2,500
分子量分布(Mw/Mn):1.07
[実施例1]
(ポリ酢酸ビニル(Y−1)の合成)
参考例1により合成したポリ酢酸ビニル(X−1)(950mg、0.50ミリモル)をメタノール(3mL)に溶解させ、スポンジニッケル(粉状、1.17g、ニッケル原子換算で20ミリモル)、およびメタノール(2mL)の入った30mLガラス製3口フラスコに投入した。アルゴン雰囲気下、20℃で6時間攪拌後、反応液の一部をサンプリングし、スポンジニッケルをろ別して溶媒を留去することでポリ酢酸ビニル(Y−1)を得た。また、前述の方法により、ポリ酢酸ビニル(X−1)をスポンジニッケルと接触させる工程後の反応容器に存在する二硫化炭素ガスの濃度を測定したところ、測定下限(0.1ppm)以下であった。
H−NMR測定において−SC(=S)OCで示される構造に由来する、4.65ppm(エトキシ基のメチレンプロトン)、1.43ppm(エトキシ基のメチルプロトン)のピークが消失していることから、前記工程が水素原子で置換されていることを確認した。また、得られたポリ酢酸ビニル(Y−1)は無色透明、かつ無臭であった。
[実施例2]
(ポリメタクリル酸メチル(Y−2)の合成)
参考例2により合成したポリメタクリル酸メチル(X−2)(480mg、0.20ミリモル)をTHF(2mL)に溶解させ、スポンジニッケル(粉状、470mg、ニッケル原子換算で8ミリモル)、およびTHF(2mL)の入った30mLガラス製3口フラスコに投入した。アルゴン雰囲気下、20℃で6時間攪拌後、反応液の一部をサンプリングし、スポンジニッケルをろ別して溶媒を留去することでポリメタクリル酸メチル(Y−2)を得た(無色固体、無臭)。また、前述の方法により、ポリメタクリル酸メチル(X−2)をスポンジニッケルと接触させる工程後の反応容器に存在する二硫化炭素ガスの濃度を測定したところ、測定下限(0.1ppm)以下であった。
H−NMR測定において−SC(=S)C5で示される構造に由来する、7.31〜7.93ppm(フェニル基のプロトン)のピークが消失していることから、前記構造が水素原子で置換されていることを確認した。また、得られたポリメタクリル酸メチル(Y−2)は無色透明、かつ無臭であった。
[実施例3]
(ポリスチレン(Y−3)の合成)
参考例3により合成したポリスチレン(X−3)(480mg、0.20ミリモル)をTHF(2mL)に溶解させ、スポンジニッケル(粉状、704mg、ニッケル原子換算で12ミリモル)、THF(2mL)の入った30mLガラス製3口フラスコに投入した。アルゴン雰囲気下、20℃で6時間攪拌後、反応液の一部をサンプリングし、スポンジニッケルをろ別して溶媒を留去することでポリスチレン(Y−3)を得た(無色固体、無臭)。また、前述の方法により、ポリスチレン(X−3)をスポンジニッケルと接触させる工程後の反応容器に存在する二硫化炭素ガスの濃度を測定したところ、測定下限(0.1ppm)以下であった。
H−NMR測定において、−SC(=S)SC1225で示される構造に由来する3.25ppm(ドデシル基のメチレンプロトン)のピークが消失していることから、前記構造が水素原子で置換されていることを確認した。また、得られたポリスチレン(Y−3)は無色透明、かつ無臭であった。
本発明により得られる重合体は、意図せぬ着色や臭気のない重合体であり、成形体、フィルム、シート、粘着剤、接着剤、コーティング剤などに利用可能である。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示される構造を有する重合体をスポンジニッケルと接触させ、前記構造を水素原子で置換する工程を含む、重合体の製造方法。
    Figure 2017197649
    (式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子からなる群から選択される一種以上の原子を任意の位置に有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基またはその塩を表す。)
  2. 前記重合体が付加重合体である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記付加重合体がRAFT重合またはMADIX重合により得られたものである、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記付加重合体が、カルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物からなる群から選択される一種以上の化合物由来の単量体単位を含む、請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 前記付加重合体がカルボン酸ビニルエステル由来の単量体単位を含む、請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記付加重合体が酢酸ビニル由来の単量体単位を含む、請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。

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