以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1から図14を参照して、本発明の第1実施形態に係る化粧料カートリッジ(以下、単に「カートリッジ」という)2およびカートリッジ式化粧料容器について説明する。本実施形態において、カートリッジ2は、カートリッジホルダー(以下、単に「ホルダー」という)1に対して着脱自在に取り付けられ、カートリッジ2がホルダー1に取り付けられた状態で、カートリッジ式化粧料容器が構成される。
以下の説明全体を通じ、ホルダー1、カートリッジ2およびカートリッジ式化粧料容器のそれぞれについて、カートリッジ2の先端開口11aに近い側を「先端側」とし、ホルダー1(駆動体30)の底面に近い側を「基端側」とする。例えば、図1に示すカートリッジ2の先端開口11aについて、カートリッジ外筒10の「先端側」の端面に開口するといい、基端開口11bについて、カートリッジ外筒10の「基端側」の端面に開口するという。
まず、図1および2を参照して、カートリッジ2の構成について説明する。
図1に示すように、カートリッジ2は、内部に化粧料4が充填されるカートリッジ外筒10と、カートリッジ外筒10に対して軸方向に移動可能に収容される保持部材70と、カートリッジ外筒10の外周上に取り付けられるキャップ3と、を備える。
カートリッジ2は、使用に際してホルダー1に取り付けられ、使用者によるホルダー1の操作に応じて内部に収容されている化粧料4が繰り出される。カートリッジ2は、ホルダー1に対して着脱自在であり、カートリッジ2を交換することで繰り出される化粧料4の種類を変更することができる。化粧料4を繰り出すための機構(繰出機構)は、カートリッジ2には設けられておらず、ホルダー1の内部に集約されている。
図2に示すように、カートリッジ外筒10は、軸方向に貫通する貫通孔17が形成された円筒状部材であり、先端側の端面(先端面)18aに開口する先端開口11aと、基端側の端面(後端面)18bに開口する基端開口11bと、を有する。また、カートリッジ外筒10は、化粧料4が収容される化粧料収容部12と、ホルダー1の本体筒20に嵌入される嵌入部19と、化粧料収容部12と嵌入部19との間に設けられ、嵌入部19の外周面よりも径方向外側に突出するフランジ14と、を有する。
貫通孔17は、先端開口11aから続く第1貫通孔17bと、第1貫通孔17bよりも内径が大きく、基端開口11bまで続く第2貫通孔17cと、を有し、第1貫通孔17bと第2貫通孔17cとは、段部17dにより互いに隔てられている。第1貫通孔17bの内周面には、基端側の端部に、径方向内側に突出する環状凸部17aが形成されている。
化粧料収容部12は、略円筒状に形成され、基端側の端部に、軸方向に延びるリブ13aと、嵌合凸部13bと、Oリング溝16aと、を有する。リブ13aは、キャップ3がカートリッジ外筒10に装着されたときに、キャップ3の内周面に設けられたローレット3aと係合し、キャップ3を周方向に係止する。嵌合凸部13bは、キャップ3がカートリッジ外筒10に装着されたときに、キャップ3の内周面に設けられた嵌合凹部3bと嵌合し、キャップ3を軸方向に係止する。Oリング溝16aには、カートリッジ外筒10とキャップ3との間で圧縮されるOリング5が取り付けられ、Oリング5により、キャップ3の内部の気密性が確保される。
嵌入部19は、略円筒状に形成され、先端側の端部に、フランジ14から基端側に延びる所定範囲に亘って雄ねじ部15を有する。また、嵌入部19は、雄ねじ部15よりも基端側にOリング溝16bを有し、Oリング溝16bには、カートリッジ外筒10と本体筒20との間で圧縮されるOリング9が取り付けられる。
フランジ14は、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられたときに、本体筒20の端部に当接して、軸方向におけるカートリッジ外筒10の位置を規定する。また、フランジ14は、キャップ3がカートリッジ外筒10に取り付けられたときに、キャップ3の端面に当接して、軸方向におけるキャップ3の位置を規定する。
保持部材70は、カートリッジ外筒10の貫通孔17に挿入される。カートリッジ外筒10の貫通孔17は、化粧料4が収容される第1領域(以下「化粧料充填領域」という)19aと、化粧料充填領域19aよりも基端側にあって、保持部材70が配置される第2領域(以下「保持部材挿入領域」という)19bと、に区画される。保持部材70は、化粧料充填領域19aから先端開口11aを通じて化粧料4を押し出すため、貫通孔17のうち、化粧料4よりも基端側に配置される。
保持部材70は、全体として中実円柱状をなし、軸方向に長い長尺状の本体部75と、本体部75の先端側の端部に形成され、本体部75の外側面から径方向外側に突出する複数の凸部73と、化粧料4に対する接触面を形成する平面状の天面71と、天面71の反対側に設けられ、押棒60が当接する底面74と、凸部73よりも基端側に設けられ、本体部75よりも外径が大きい大径部72と、を有する。
本実施形態では、本体部75が長尺状に形成され、保持部材70がカートリッジ外筒10に組み付けられて、保持部材挿入領域19bに配置された状態で、凸部73を有する先端部が第1貫通孔17bに配置され、それ以外の部分が第2貫通孔17cに配置される。この「第2貫通孔17cに配置される部分」が保持部材70の延設部に相当する。大径部72が保持部材70の基端側の端部に設けられ、大径部72の端面により保持部材70の底面74が形成される。凸部73は、保持部材70が保持部材挿入領域19bに配置された状態で、環状凸部17aに対して軸方向に対向する。
本実施形態では、カートリッジ外筒10の第2貫通孔17cを形成する内周面において、段部17dの基端側の端面からカートリッジ外筒10の後端面18bまでの軸方向全体に亘ってローレット17eが形成されている。ローレット17eは、本実施形態に係る「回転規制機構」を構成する凹部に相当するものであり、カートリッジ外筒10の中心軸に対して垂直な断面において、カートリッジ外筒10の内周方向に連続する複数の溝を形成する。
保持部材70は、大径部72の外周面に、径方向外側に突出する一対のリブ76が形成されている。リブ76は、本実施形態に係る「回転規制機構」を構成する凸部に相当するものであり、保持部材70の中心軸を基準とする軸対称の位置に設けられている。リブ76は、保持部材70がカートリッジ外筒10に組み付けられた状態でローレット17eの溝と係合し、カートリッジ外筒10の貫通孔17内における保持部材70の軸方向の移動を許容する一方、カートリッジ外筒10に対する保持部材70の相対回転を制限する。
本実施形態では、カートリッジ外筒10の中心軸に対して垂直な断面において、ローレット17eを構成する溝が三角状をなし、リブ76がローレット17eの溝と噛み合う相補的な三角状をなしているが、ローレット17eおよびリブ76の構成は、これに限られるものではなく、四角状および半円状等、カートリッジ外筒10に対する保持部材70の相対回転を制限可能なあらゆる形状を採用することができる。
キャップ3は、有底円筒状に形成される。キャップ3は、カートリッジ外筒10の化粧料収容部12に取り付けられて先端開口11aを閉塞する。キャップ3には、その開口端に近い内周面に、カートリッジ外筒10のリブ13aと係合するローレット3aと、カートリッジ外筒10の嵌合凸部13bと係合する環状の嵌合凹部3bと、が設けられている。
Oリング5は、カートリッジ外筒10に設けられるOリング溝16aに取り付けられる。キャップ3がカートリッジ外筒10に取り付けられた状態で、Oリング5は、カートリッジ外筒10とキャップ3との間の隙間を塞ぎ、キャップ3の内部に外気が出入りすることを抑制し、化粧料4から揮発成分が蒸発することを防止する。
Oリング9は、カートリッジ外筒10に設けられるOリング溝16bに取り付けられる。カートリッジ外筒10がホルダー1の本体筒20に取り付けられた状態で、Oリング9は、カートリッジ外筒10と本体筒20との間の隙間を塞ぎ、基端開口11bを通じて外気が出入りすることを抑制し、化粧料4から揮発成分が蒸発することを防止する。
化粧料4は、カートリッジ外筒10の第1貫通孔17bの内周面と保持部材70の天面71とにより画定される空間(化粧料充填領域19a)に充填される。化粧料4は、カートリッジ2に充填する充填時には加熱された状態にあって液状であり、充填後、冷却を経て固形棒状となる。本実施形態において、冷却後の化粧料4は、直径が2mm〜3mmの、略円形の断面を有する。
次に、図1および2を参照して、カートリッジ2の組立手順について説明する。
まず、カートリッジ外筒10のOリング溝16a,16bにそれぞれOリング5,9を取り付ける。その後、カートリッジ外筒10の基端開口11bに保持部材70の天面71を通し、保持部材70の底面74を押して保持部材70をカートリッジ外筒10の貫通孔17に挿入する。
保持部材70の大径部72に設けられたリブないし凸部76がカートリッジ外筒10に形成されたローレット17eの一部の溝に係合するように、保持部材70とカートリッジ外筒10との位置合わせを行い、底面74を更に押して保持部材70を前進させることで、保持部材70の凸部73が、カートリッジ外筒10の環状凸部17aを乗り越える。これにより、保持部材70が保持部材挿入領域19bに配置され、保持部材70の先端部が第1貫通孔17bに、延設部が第2貫通孔17cに配置される。保持部材70が保持部材挿入領域19に配置された状態で、保持部材70の底面74とカートリッジ外筒10の後端面18bとが略面一になる。
次に、カートリッジ外筒10の先端開口11aから貫通孔17(化粧料充填領域19a)に溶融した化粧料4を流し込み、化粧料4を冷却する。化粧料4は、冷却工程を経て固形状またはゲル状となる。
化粧料4がカートリッジ外筒10の貫通孔17に流し込まれる際に、カートリッジ外筒10に形成された環状凸部17aと、保持部材70に設けられた複数の凸部73とは、軸方向に互いに当接した状態にある。凸部73は、図2(e)に示すように、保持部材70の外側面に、周方向に間隔を空けて設けられるため、凸部73は、環状凸部17aに対し、周方向の一部においてのみ当接する。換言すれば、環状凸部17aと凸部73とは、上記当接する一部を除く周方向の残部で互いに当接しておらず、この当接していない部分の隙間を介して第1貫通孔17bと第2貫通孔17cとが連通した状態にある。よって、本実施形態では、化粧料4が貫通孔17に流し込まれる際に、貫通孔17に存在している空気は、環状凸部17aと凸部73とが当接していない部分の隙間を通じて基端開口11bから外部へ排出される。
また、保持部材70は、凸部73が環状凸部17aを乗り越えることにより、カートリッジ外筒10に組み付けられている。よって、化粧料4が貫通孔17に流し込まれる際に、貫通孔17に存在している空気に圧力がかかったとしても、凸部73が環状凸部17aに当接することにより保持部材70の移動が規制され、保持部材70が基端開口11bから脱落することが防止される。
このようにしてカートリッジ外筒10に化粧料4を充填した後、キャップ3のローレット3aとカートリッジ外筒10のリブ13aとを係合させながら、嵌合凹部3bと嵌合凸部13bとを嵌合させる。嵌合凹部3bと嵌合凸部13bとの嵌合により、キャップ3がカートリッジ外筒10に取外可能に固定される。
以上の手順により、カートリッジ2が完成する。
図3から図12を参照して、ホルダー1について説明する。
まず、ホルダー1の構成について説明する。
ホルダー1は、カートリッジ2から化粧料4を繰り出すための操作を行う対象であり、使用に際し、化粧料4が収容されたカートリッジ2が取り付けられる。
図5に示すように、ホルダー1は、カートリッジ2が取り付けられる本体筒20と、本体筒20に対して同軸に、かつ本体筒20に対して相対回転可能に取り付けられる駆動体30と、外周面に雄ねじ部61aが形成され、本体筒20に対する駆動体30の相対回転により繰り出される押棒60と、カートリッジ2が本体筒20に取り付けられた状態で雄ねじ部61aと螺合する雌ねじ部53が内周面に形成された雌ねじ部材50と、雌ねじ部材50および押棒60を付勢するコイルばね7と、を備える。
本体筒20は、本体外筒21と、本体外筒21に対して同軸に挿入される本体内筒40と、を有し、本体外筒21に対して駆動体30が相対回転可能に取り付けられる。
ホルダー1は、本体筒20に対する駆動体30の相対回転を一方向にのみ許容するラチェット機構180を更に備える(図3および4)。ラチェット機構180は、本体外筒21の内周面に形成されたラチェット溝24と、ラチェット溝24と噛み合うラチェット歯81bとを備え、本体外筒21に相対回転可能に収容されるラチェット部材80と、を有する。
図6に示すように、本体外筒21は、略円筒状に形成され、先端側と基端側とのそれぞれに前端開口22、後端開口29を有する。本体外筒21に対し、前端開口22から本体内筒40が挿入され、後端開口29から駆動体30(嵌入部31)が挿入される。 本体外筒21は、前端開口22に近い内周面に、本体内筒40の嵌合凸部42が嵌合する環状の嵌合凹部23を有する。また、本体外筒21は、後端開口29に近い内周面に、駆動体30の嵌合凸部34が嵌合し、駆動体30を相対回転可能に保持する環状の嵌合凹部28を有する。
本体外筒21は、その内周面に、近接ガイド部25とガイド凸部26とを有する。近接ガイド部25は、本体外筒21の軸方向略中央に設けられ、径方向内側に突出して形成されている。ガイド凸部26は、前端開口22と近接ガイド部25との間(本実施形態では、略中央)から近接ガイド部25までの範囲に亘って設けられ、径方向内側に突出して形成されている。
ガイド凸部26は、本体内筒40の外周面に設けられるガイド凹部45と係合する。また、ガイド凸部26は、本体内筒40を本体外筒21に挿入する際に、本体外筒21に対して本体内筒40を相対回転不能に案内する。挿入後、ガイド凸部26とガイド凹部45との係合により、本体内筒40が本体外筒21に対して周方向に係止され、本体外筒21に対する本体内筒40の周方向の位置が規定される。
近接ガイド部25は、中心軸を挟んで互いに対向する位置に夫々設けられている。近接ガイド部25は、軸方向に対して傾斜する傾斜面25aが形成され、近接ガイド部25の傾斜面25aは、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられるときに、雌ねじ部材50の羽根部55の後端面55bに当接する。傾斜面25aが軸方向に対して傾斜しているので、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10とともに軸方向に移動するとともに、径方向中心に向けて移動する。
また、本体外筒21は、内周面に複数のラチェット溝24を有し、ラチェット溝24は、内周面の周方向全体に亘って設けられ、近接ガイド部25から基端側に延びる所定範囲に亘って形成されている。
図7に示すように、駆動体30は、有底円筒状に形成されている。駆動体30は、本体外筒21に嵌入される嵌入部31と、嵌入部31に連続して形成され、本体外筒21外に配置されて、使用に際して使用者により摘んで用いられる摘み部32と、を有する。
嵌入部31は、略円筒状に形成されている。嵌入部31の基端側の端縁に近い(摘み部32の付近)の外周面には、本体外筒21の嵌合凹部28に嵌合する嵌合凸部34が環状に形成されている。また、嵌入部31の外周面(本実施形態では、嵌合凸部34よりも先端側)には、環状のOリング溝33が形成されている。Oリング溝33にOリング6を取り付けることで、本体外筒21に対する駆動体30の相対回転に適度な抵抗を付与することができ、使用者による操作感を向上させることができる。
摘み部32は、嵌入部31よりも大径に形成されている。本実施形態において、摘み部32は、本体外筒21の外径と略同径に形成されており、これにより、駆動体30が本体外筒21に組み付けられた状態で、本体外筒21の外周面と摘み部32の外周面とを略面一とし、カートリッジ式化粧料容器の操作性およびデザイン性を向上させている。
また、駆動体30は、押棒60の大径部63に形成されるリブ63bと係合することにより駆動体30に対する押棒60の相対回転を制限する複数の溝35と、ホルダー1を組み立てる際に押棒60を支持する支柱36と、を有する。
溝35は、駆動体30の内周面に、底面37から前端開口39に亘って軸方向に形性されている。本実施形態では、溝35は、4つ設けられている。
支柱36は、略円柱状に形成され、底面37から前端開口39に向けて突出するように、軸方向に延設されている。支柱36の先端部は、押棒60の腔部64への挿入を容易にするため、半球状に丸めて形成されている。
溝35のうち、前端開口39に近い部分の底面には、径方向内側に突出する突部38が形成されている。突部38は、ラチェット部材80の突部85と係合し、ホルダー1を組み立てる際に、駆動体30からラチェット部材80が容易に脱落することを防止する。
図8に示すように、押棒60は、略円柱状に形成されている。押棒60は、本体筒20および駆動体30に収容される。押棒60は、棒軸61と、棒軸61の基端側の端部に設けられる大径部63と、を有し、本体筒20および駆動体30の内部において、これらと同軸に配置される。さらに、大径部63の端面から先端側に向けて軸方向に腔部64が凹設されるとともに、先端側の端面に、平面状の天面62が形成されている。
棒軸61は、外周面に雄ねじ部61aを有する。雄ねじ部61aのねじ山のピッチを適切に設定することで、本体筒20に対して駆動体30が一回転する間に押棒60が前進する距離を調整し、カートリッジ2に収容された化粧料4を微量ずつ押し出すことができる。
雄ねじ部61aは、雌ねじ部材50に設けられる雌ねじ部53と螺合可能である。押棒60の繰出ストロークは、雄ねじ部61aが軸方向に存在する長さにより決定される。
天面62は、カートリッジ2がホルダー1に取り付けられた状態で押棒60が繰り出されたときに、保持部材70の底面74に当接する。この状態で押棒60が更に繰り出されると、天面62が保持部材70を押圧し、化粧料4が先端開口11aを通じてカートリッジ2から押し出される。
大径部63は、棒軸61よりも大径の円板状に形成されている。大径部63は、コイルばね7が載置されるコイルばね載置部63aと、コイルばね載置部63aの反対側に形成された後端面63cと、を有し、駆動体30に対する押棒60の相対回転を制限するとともに、押棒60の移動を軸方向に案内する。ここで、押棒60が繰出下降限にあるときに、大径部63の後端面63cは、駆動体30の底面37に当接する。
また、大径部63は、その外周面に、駆動体30の溝35と係合する複数のリブ63bを有する。リブ63bが駆動体30の溝35と係合することで、駆動体30に対する押棒60の相対回転が制限される。これにより、使用者が駆動体30を摘み、駆動体30を本体筒20に対して回転させると、押棒60と駆動体30とがともに回転し、雄ねじ部61aと雌ねじ部53との螺合により押棒60が前進する。
腔部64は、駆動体30の支柱36に対応する形状に形成され、支柱36よりも軸方向に長く形成されている。これにより、ホルダー1の組み立てに際して、腔部64に支柱36を挿入しておくことが可能である。
図5に示すように、コイルばね7は、コイルばね載置部63aとラチェット部材80との間に、棒軸61と同軸に配置される。コイルばね7の自由長(負荷をかけていない状態での長さをいう)は、繰出下降限に位置する押棒60のコイルばね載置部63aとラチェット部材80の後端面80bとの間の距離よりも長く、ホルダー1が組み立てられた状態で、コイルばね7は、大径部63とラチェット部材80との間で圧縮状態にあり、これらを互いに離間させる方向に押棒60とラチェット部材80とを付勢する。
図10に示すように、本体内筒40は、略円筒状に形成され、先端側と基端側のそれぞれに前端開口41、後端開口48を有する。本体内筒40に対し、前端開口41を介してカートリッジ外筒10の嵌入部19が挿入され、後端開口48を介して雌ねじ部材50が挿入される。
本体内筒40は、内周面に前端開口41から基端側に延びる所定範囲に亘って形成された雌ねじ部43と、外周面に凹状に形成されたガイド凹部45と、後端開口48に近い内周面に形成された離間ガイド部44と、を有する。また、本体内筒40は、前端開口41に近い外周面に、本体外筒21の嵌合凹部23と嵌合する環状の嵌合凸部42を有する。
雌ねじ部43は、カートリッジ外筒10の雄ねじ部15に対応して形成されている。雌ねじ部43と雄ねじ部15との螺合により、カートリッジ外筒10が本体内筒40に固定される。
ガイド凹部45は、後端面47から先端側に延びる所定範囲に亘って形成されている。ガイド凹部45は、本体外筒21のガイド凸部26に対応する位置に形成されており、ガイド凸部26と係合する。これにより、本体外筒21に対する本体内筒40の相対回転が制限される。
離間ガイド部44は、本体外筒21の近接ガイド部25に対応して一対形成されている。換言すれば、ホルダー1の中心軸に対し、一側に位置する離間ガイド部44および近接ガイド部25が対を構成し、他側に位置する離間ガイド部44および近接ガイド部25が他の対を構成する。本体内筒40を本体外筒21に挿入した状態で、離間ガイド部44は、近接ガイド部25に対して平行に配置され、近接ガイド部25から軸方向に隙間を空けて、近接ガイド部25よりも先端側、換言すれば、本体外筒21の前端開口22側に配置される。この隙間の大きさは、近接ガイド部25と離間ガイド部44との間に雌ねじ部材50の羽根部55を挿入可能な大きさに設定される。
離間ガイド部44は、本体内筒40の中心軸に対して傾斜する傾斜面44aと、軸方向に沿って延在する内側面44bと、を有し、本体内筒40の内周面から径方向内側に突出するように形成されている。
離間ガイド部44の傾斜面44aは、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外され、雌ねじ部材50がコイルばね7の弾性力により軸方向に移動するときに、雌ねじ部材50の羽根部55の前端面55aに当接する。傾斜面44aが本体内筒40の中心軸に対して傾斜しているので、雌ねじ部材50は、コイルばね7の弾性力により軸方向に移動するとともに、羽根部55が傾斜面44a上を案内されることで、中心から離れるように径方向に移動する。
また、本体内筒40は、本体内筒40の内周面から突出する突壁部46と、本体内筒40の内周面に設けられる段部49と、を有する。突壁部46は、本体内筒40の内周面から径方向内側に突出するように形成されている。突壁部46の周方向の両側には、凹部46aが夫々形成されている。段部49は、離間ガイド部44により形成され、傾斜面44aの反対側に位置する。
図11に示すように、雌ねじ部材50は、本体部51と、本体部51から軸方向に連続して形成された挿通部52と、を有する。本体部51は、押棒60と同軸に配置され、押棒60の棒軸61を周方向の一部で包囲する。挿通部52は、環状に形成されて、押棒60が挿通される孔52aを有し、その一部は、本体部51から連続して形成されている。
雌ねじ部材50の後端面(挿通部52の後端面)50bに、ラチェット部材80の前端面80aが当接し、コイルばね7の弾性力がラチェット部材80を介して作用する。コイルばね7の弾性力が後端面50bに作用することにより、雌ねじ部材50は、押棒60の大径部63から離間する方向(本体内筒40の前端開口41へ向かう方向)に付勢される。ここで、挿通部52が環状をなすことで、雌ねじ部材50は、後端面50bが環状に形成されている。これにより、コイルばね7の弾性力がラチェット部材80を介して偏りなく均一に雌ねじ部材50に作用するので、雌ねじ部材50の中心軸がホルダー1の中心軸に対して傾くことが抑制される。
雌ねじ部材50の前端面(本体部51の前端面)50aは、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられた状態で、カートリッジ外筒10の後端面18bに当接する。つまり、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられるときに、カートリッジ外筒10により軸方向に押圧され、ラチェット部材80を介してコイルばね7を圧縮して収縮させながら、カートリッジ外筒10とともに移動する。
コイルばね7は、雌ねじ部材50を、本体内筒40の前端開口41へ向かう方向(カートリッジ外筒10による押圧方向とは反対の方向)に付勢する。これにより、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外され、カートリッジ外筒10による雌ねじ部材50の押圧が解除されたときに、コイルばね7の付勢力により、カートリッジ外筒10とともに本体内筒40の前端開口41へ向けて移動する。
本体部51は、中心軸に対して垂直な断面で円弧状に形成された基部51aと、基部51aの周方向の両端から互いに平行に延設された一対の延在部51bと、を有する。延在部51bは、基部51aとは反対側に向いた開口端面56aと、外側面56bと、を有する。
延在部51bの外側面56bは、雌ねじ部材50(本体部51)を本体内筒40に挿入した状態で、離間ガイド部44の内側面44bと対向して配置される。これにより、本体内筒40に対する雌ねじ部材50の相対回転が制限される。
延在部51bは、開口端面56aが本体内筒40の凹部46aの底面に対向するように、本体内筒40の凹部46aに挿入される。ここで、延在部51bは、基部51aが本体内筒40の内周面に接した状態で開口端面56aと凹部46aの底面との間にある程度の隙間が形成される長さに設定されている。これにより、雌ねじ部材50は、挿通部52に押棒60が挿通されていない状態で本体内筒40との間に遊びを有し、本体内筒40に対し、この隙間の範囲内で径方向に移動可能である。
挿通部52の孔52aは、雌ねじ部材50の中心軸に対して垂直な断面で略楕円状をなし、かつこの楕円の長軸が延在部51bの外側面56bに沿うように形成されている。これにより、雌ねじ部材50は、挿通部52に押棒60が挿通された状態でも径方向に移動可能である。
また、雌ねじ部材50は、延在部51bの外側面に形成された突部51dと、基部51aの内周面に、周方向の一部に亘って形成された雌ねじ部53と、延在部51bの外側面から径方向外側に突出するように形成された羽根部55と、を有する。
突部51dは、前端面50aの近傍に形成されており、雌ねじ部材50にコイルばね7の弾性力が作用していない状態で、本体内筒40の段部49に接した状態に置かれる。これにより、雌ねじ部材50が本体内筒40から容易に脱落することが防止され、ホルダー1の組み立てが容易になる。
雌ねじ部53は、押棒60の雄ねじ部61aとリードが同一となるように形成されており、基部51aの内周面が棒軸61に近接することにより、雌ねじ部53が雄ねじ部61aと螺合する。雌ねじ部53が雄ねじ部61aと螺合した状態で押棒60が雌ねじ部材50に対して相対回転することにより、押棒60が雌ねじ部材50に対して進退する。
羽根部55は、先端側に面する前端面55aと、基端側に面する後端面55bと、を有し、ホルダー1が組み立てられた状態で、本体外筒21の近接ガイド部25と本体内筒40の離間ガイド部44との間に挿入され、前端面55aが離間ガイド部44の傾斜面44aと対向し、後端面55bが近接ガイド部25の傾斜面25aと対向する。
カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられる際に、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10により軸方向に押圧され、ラチェット部材80を介してコイルばね7を圧縮して収縮させながら、カートリッジ外筒10とともに移動する。ここで、羽根部55の後端面55bが、本体外筒21の近接ガイド部25の傾斜面25aに当接する。
近接ガイド部25の傾斜面25aは、ホルダー1が組み立てられた状態において、押棒60の中心軸に対し、雌ねじ部材50の雌ねじ部53側の端部25bがその反対側の端部25cよりも先端側に位置するように傾斜する。これにより、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられる際に、カートリッジ外筒10により押圧されて軸方向に移動するとともに、羽根部55が近接ガイド部25上を案内されることで、雌ねじ部53が押棒60の雄ねじ部61aに近接する方向に移動する。このように、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられる際に、雌ねじ部材50がカートリッジ外筒10により軸方向に押圧され、羽根部55の後端面55bが近接ガイド部25に当接することで、雌ねじ部53が雄ねじ部61aに近付くように、雌ねじ部材50が径方向に案内され、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が促される。
本体内筒40の突壁部46は、ホルダー1が組み立てられた状態で雌ねじ部53に対向する領域に設けられ、換言すれば、突壁部46と雌ねじ部材50の基部51aとは、押棒60の棒軸61を挟んで径方向に対向して配置される。これにより、突壁部46は、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられる際に、雌ねじ部材50が近接ガイド部25により案内され、押棒60の棒軸61が雌ねじ部材50の基部51aにより径方向に押圧されると、基部51aとは反対側で棒軸61に当接し、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除される方向への押棒60の移動ないし変位を制限する。
一方、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外される際に、雌ねじ部材50は、ラチェット部材80を介してコイルばね7の弾性力を受け、カートリッジ外筒10とともに軸方向に移動する。ここで、羽根部55の前端面55aが、本体内筒40の離間ガイド部44の傾斜面44aに当接する。
離間ガイド部44の傾斜面44aは、ホルダー1が組み立てられた状態において、押棒60の中心軸に対し、雌ねじ部材50の雌ねじ部53側の端部44cがその反対側の端部44dよりも先端側に位置するように傾斜する。これにより、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外される際に、ラチェット部材80を介してコイルばね7により付勢されて軸方向に移動するとともに、羽根部55が離間ガイド部44上を案内されることで、雌ねじ部53が押棒60の雄ねじ部61aから離間する方向に移動する。このように、離間ガイド部44は、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外される際に、カートリッジ外筒10による雌ねじ部材50の押圧が解除されることで、雌ねじ部材50を、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除される方向に案内する。
雌ねじ部53が雄ねじ部61aから離間して、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除されることにより、押棒60は、雌ねじ部材50に対する相対回転に関わらず、雌ねじ部材50に対して軸方向に移動可能となる。
コイルばね7は、押棒60の大径部63とラチェット部材80との間に圧縮状態で介装されており、雌ねじ部材50と大径部63とが互いに離間する方向に、換言すれば、雌ねじ部材50の前端面50aがカートリッジ外筒10の後端面18bに当接した状態で、押棒60を繰出下降限に向けて付勢する。これにより、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外され、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除されると、押棒60は、コイルばね7の弾性力により繰出下降限に向けて移動し、繰出下降限に復帰する。
図12に示すように、ラチェット部材80は、本体外筒21に収容される本体部81と、駆動体30に嵌入される嵌入部82と、を有する。本体部81は、駆動体30外に配置され、嵌入部82は、本体部81から軸方向に連続して、略円筒状に形成される。
嵌入部82は、その外周面に、本体部81の基端側の端縁から後端面80bに至るまで軸方向に延設された複数のリブ84と、リブ84の上面から突出するように形成された突部85と、を有する。
リブ84は、駆動体30の溝35と係合し、駆動体30に対するラチェット部材80の相対回転を制限する。よって、使用者が駆動体30を摘んで回転させると、ラチェット部材80は、駆動体30とともに回転する。
突部85は、嵌入部82が駆動体30に嵌入された状態で、駆動体30の突部38に対して基端側、換言すれば、前端開口39とは反対側に配置される。これにより、ラチェット部材80がコイルばね7により付勢され、先端側に移動すると、ラチェット部材80の突部85が駆動体30の突部38と係合することで、駆動体30からラチェット部材80が容易に脱落することが防止される。
本体部81は、中心軸に対して垂直な断面で円弧状をなし、周方向の一端部のみが嵌入部82に支持される2つの支持部81aと、支持部81aの周方向の他端部に設けられ、径方向外側に突出するように形成されたラチェット歯81bと、を有する。2つの支持部81aは、周方向に並び、一方の支持部81aの一端部と他方の支持部81aの他端部との間に、スリット83a,83bが形成されている。
支持部81aがその一端部のみで嵌入部82に支持された状態にあることで、支持部81aの他端部(ラチェット歯81b)に径方向内側に向けた力が作用すると、支持部81aに撓みが生じ、ラチェット歯81bが径方向内側に移動する。そして、この力が解除され、支持部81aの他端部に作用しなくなると、支持部81aの形状が復元し、ラチェット歯81bが元の位置に復帰する。
ラチェット歯81bは、本体外筒21に対するラチェット部材80の相対回転を一方向にのみ許容するように、本体外筒21のラチェット溝24と係合する。ラチェット溝24が軸方向に延設されていることで、ラチェット部材80は、本体外筒21内を軸方向に移動可能である。
ラチェット部材80の前端面(本体部81の前端面)80aは、雌ねじ部材50の後端面50bに当接する。ラチェット部材80の後端面(嵌入部82の後端面)80bにコイルばね7が当接し、コイルばね7の弾性力が作用することで、コイルばね7の弾性力が、ラチェット部材80を介して雌ねじ部材50に作用する。
ラチェット部材80は、カートリッジ外筒10が本体筒20に取り付けられる際に、雌ねじ部材50を介してカートリッジ外筒10により押圧され、コイルばね7を圧縮して収縮させながら、雌ねじ部材50とともに軸方向に移動する。ラチェット部材80は、カートリッジ外筒10が本体筒20から取り外される際に、カートリッジ外筒10による押圧が解除されると、コイルばね7の弾性力を受け、カートリッジ外筒10および雌ねじ部材50とともに移動する。
ラチェット部材80は、本体外筒21に収容されるとともに、嵌入部82が駆動体30の嵌入部31に挿入され、本体部81が駆動体30の嵌入部31と雌ねじ部材50との間に配置される。
ラチェット機構180を備えることで、駆動体30(ラチェット部材80)を、本体筒20に対して押棒60を繰り出す方向に相対回転させることのみが許容され、これとは逆に押棒60を繰り戻す方向に相対回転させることが阻害される。これにより、使用者の誤操作による化粧料4の繰り戻しが防止される。
次に、図5から図12を参照して、ホルダー1の組立手順について説明する。
まず、本体内筒40の後端開口48に雌ねじ部材50の前端面50aを通し、雌ねじ部材50を本体内筒40に挿入する。本体内筒40の凹部46aの底面と雌ねじ部材50の開口端面56aとが対向するように、凹部46aと雌ねじ部材50の延在部51bとを係合させる。
雌ねじ部材50を本体内筒40に対して更に挿入すると、雌ねじ部材50の突部51dが本体内筒40の段部49を乗り越える。これにより、雌ねじ部材50が本体内筒40の後端開口48から容易に脱落することが防止される。
次に、本体外筒21の前端開口22に、雌ねじ部材50が組み付けられた本体内筒40の後端面47を通し、本体内筒40および雌ねじ部材50を本体外筒21に挿入する。本体内筒40のガイド凹部45と本体外筒21のガイド凸部26とを位置合わせし、これらを互いに係合させる。本体内筒40を本体外筒21に対して更に挿入すると、本体外筒21の嵌合凹部23と本体内筒40の嵌合凸部42とが嵌合し、本体内筒40が本体外筒21に組み付けられる。
本体内筒40のガイド凹部45と本体外筒21のガイド凸部26とを位置合わせすることにより、雌ねじ部材50の羽根部55が、本体外筒21の近接ガイド部25と本体内筒40の離間ガイド部44との間で、前端面55aおよび後端面55bが夫々離間ガイド部44、近接ガイド部25に対して平行な状態で配置される。
次に、コイルばね7に対して押棒60を天面62から挿入し、コイルばね7を棒軸61の外周上に、コイルばね7と押棒60とを同軸に配置するとともに、コイルばね7を押棒60のコイルばね載置部63aに載置する。その後、押棒60(大径部63)のリブ63と駆動体30の溝35とを位置合わせし、押棒60を駆動体30に挿入する。
Oリング6を、駆動体30のOリング溝33に、押棒60を駆動体30に挿入する前に取り付けてもよいし、挿入した後に取り付けてもよい。
次に、押棒60の天面62をラチェット部材80の後端開口86に通し、押棒60をラチェット部材80に挿入する。ラチェット部材80に押棒60が挿入された状態で、ラチェット部材80の後端面80bを駆動体30の前端開口39に通し、ラチェット部材80の嵌入部82を駆動体30に挿入する。
ラチェット部材80の突部85が駆動体30の突部38を乗り越えるまでラチェット部材80を駆動体30に挿入すると、コイルばね7が押棒60のコイルばね載置部63aとラチェット部材80の後端面80bとの間で圧縮され、僅かに収縮する。突部85と突部38との係合により、ラチェット部材80が駆動体30から抜け難い状態にあることで、ラチェット部材80がコイルばね7により付勢され、駆動体30から脱落することが防止される。
次に、本体外筒21の後端開口29に押棒60の天面62およびラチェット部材80の前端面80aを通し、押棒60およびラチェット部材80を本体外筒21に挿入する。さらに、本体外筒21の後端開口29に駆動体30の先端面を通し、本体外筒21のラチェット溝24とラチェット部材80のラチェット歯81bとを位置合わせし、これらを互いに係合させた状態で、駆動体30の嵌入部31を本体外筒21に挿入する。駆動体30の嵌合凸部34と本体外筒21の嵌合凹部28とが嵌合することにより、駆動体30が本体外筒21(本体筒20)に組み付けられる。
駆動体30が本体外筒21に組み付けられただけの状態では、雌ねじ部材50は、コイルばね7の弾性力により、本体外筒21の近接ガイド部25から離間し、本体内筒40の離間ガイド部44に当接した状態にある。雌ねじ部材50は、離間ガイド部44により案内され、雌ねじ部53が雄ねじ部61aから離間しており、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとは、互いに螺合していない。よって、押棒60は、雌ねじ部材50に対する押棒60の相対回転に関わらず、雌ねじ部材50に対して軸方向に移動可能である。押棒60は、コイルばね7により付勢され、後端面63cが駆動体30の底面37に当接する位置(繰出下降限)にある状態で、本体筒20および駆動体30に収容される。
以上の手順により、ホルダー1が完成する。
次に、ホルダー1へのカートリッジ2の取付手順について説明する。
まず、カートリッジ外筒10の後端面18bを本体内筒40の前端開口41に通し、カートリッジ外筒10の嵌入部19を本体内筒40に挿入する。カートリッジ外筒10の雄ねじ部15を本体内筒40の雌ねじ部43に螺合させながら、嵌入部19を本体内筒40に挿入すると、カートリッジ外筒10の後端面18bが雌ねじ部材50の前端面50aに当接して、これを押圧し、雌ねじ部材50の後端面50bがラチェット部材80の前端面80aを押圧する。これにより、雌ねじ部材50がラチェット部材80とともに軸方向に移動し、ラチェット部材80がコイルばね7を圧縮し、収縮させる。 雌ねじ部材50の羽根部55の前端面55aが本体内筒40の離間ガイド部44の傾斜面44aから離間するとともに、羽根部55の後端面55bが本体外筒21の近接ガイド部25の傾斜面25aに当接する。雌ねじ部材50が、近接ガイド部25により、雌ねじ部53が押棒60の雄ねじ部61aに近接する方向に案内され、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとが螺合する。
以上の手順により、ホルダー1へのカートリッジ2の取り付けが完了する。
ホルダー1へのカートリッジ2の取り付けが完了し、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとが螺合した状態において、駆動体30を本体筒20に対して相対回転させると、押棒60が雌ねじ部材50に対して相対回転し、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合を通じて押棒60が本体筒20に対して前進する。押棒60の先端部がカートリッジ外筒10の嵌入部19に進入し、天面62が保持部材70の底面74を押圧することで、カートリッジ外筒10に収容されている化粧料4が先端開口11aから繰り出される。
使用者により化粧料4が使用されて、化粧料4の残量が少なくなると、押棒60がカートリッジ外筒10に最も進入した状態となる。押棒60に形成されている雄ねじ部61aの終端部が雌ねじ部材50に形成されている雌ねじ部53を通過することで、雄ねじ部61aと雌ねじ部53とが最早螺合しない状態となり、本体筒20に対して駆動体30をそれ以上回転させても押棒60は前進しない。これにより、化粧料4の残りが少なくなったことを使用者に認識させることができる。
このように、本実施形態において、押棒60の最大繰り出し量(繰出ストローク)は、押棒60に形成される雄ねじ部61aの軸方向の長さにより決定され、使用される化粧料4の長さに応じて適宜調整することができる。なお、押棒60の最大繰り出し量は、雄ねじ部61aの長さに限らず、保持部材70の延設部の長さにより規定することも可能である。具体的には、延設部の長さを化粧料4の長さに適合させ、化粧料4を最後まで使用した時点で、保持部材70の大径部72がカートリッジ外筒10の段部17dに当接するように調整するのである。
次に、ホルダー1からのカートリッジ2の取外手順について説明する。
まず、カートリッジ外筒10を本体筒20に対して相対回転させて、雄ねじ部15と雌ねじ部43との螺合を解除し、カートリッジ2を本体筒20から離間させる。カートリッジ外筒10を離間させる過程で、雌ねじ部材50は、カートリッジ外筒10による押圧が解除され、ラチェット部材80を介して受けるコイルばね7の弾性力により、カートリッジ2とともに軸方向に移動する。
雌ねじ部材50が軸方向に移動すると、雌ねじ部材50の羽根部55の後端面55bが本体外筒21の近接ガイド部25の傾斜面25aから離間し、羽根部55の前端面55aが本体内筒40の離間ガイド部44の傾斜面44aに当接する。離間ガイド部44により、雌ねじ部材50が、雌ねじ部53が押棒60の雄ねじ部61aから離間する方向に案内され、雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除される。
雌ねじ部53と雄ねじ部61aとの螺合が解除されると、押棒60は、コイルばね7の弾性力を受けて駆動体30の底面37に向けて移動し、繰出下降限に到達する。このようにして、ホルダー1は、押棒60が繰出下降限に位置する状態に復帰する。
以上の手順により、ホルダー1からのカートリッジ2の取り外しが完了する。
第1実施形態に係る化粧料カートリッジ2およびカートリッジ式化粧料容器は、以上のように構成され、以下に述べる効果を奏する。
本実施形態では、押棒60からの力を保持部材70により受け、カートリッジ外筒10の貫通孔17(化粧料充填領域19a)に充填されている化粧料4を保持部材70により押圧して、化粧料充填領域19aからカートリッジ2外へ押し出すことができる。駆動体30の一回転当たりに押し出される化粧料4の長さは、押棒60に設けられる雄ねじ部61aのねじ山のピッチにより決定される。ここで、押棒60は、駆動体30の回動により、ホルダー1からカートリッジ2に対する相対回転を伴って繰り出されるが、保持部材70の大径部72に形成されたリブ76とカートリッジ外筒10の内周面に形成されたローレット(溝)17eとの係合により、保持部材70がカートリッジ外筒10に対して周方向に係止され、保持部材70のカートリッジ外筒10に対する相対回転が制限される。これにより、押棒60の相対回転に連動する保持部材70の回転を規制し、化粧料4を繰り出す際に保持部材70が回転することを回避して、化粧料4に捩れが生じることを抑制し、もって、化粧料4が折損することを防止することができる。
図19および20は、第1実施形態に係るカートリッジ2に対する比較例として、「回転規制機構」を有していない、換言すれば、カートリッジ外筒10のローレット17e(凹部)および保持部材70のリブ76(凸部)をいずれも備えていない化粧料カートリッジ502を示している。
比較例では、カートリッジ502は、カートリッジ外筒510の内周面にローレットが形成されておらず、保持部材570の大径部にリブが形成されていないことを除き、第1実施形態と同様の構成を有する。ホルダー1の構成は、第1実施形態と同様である。化粧料4が第1実施形態と同様の方法により貫通孔の化粧料充填領域19aに充填された化粧料カートリッジ502をホルダー1に取り付け、ホルダー1の本体筒に対して(図示しない)駆動体を相対回転させる。第1実施形態と同様に、保持部材570が押棒60からの力を受けて前進するが、比較例では、保持部材570の回転を規制する手段がなく、保持部材570の押圧による前進に併せ、保持部材570が押棒60の相対回転に連動して回転する。
図19(c)は、保持部材570が押棒60により押圧され、貫通孔内を回転しながら前進する際に、カートリッジ外筒510の内周面に当接した状態にある凸部73が辿る経路73aを、点線により示している。溶融した状態で化粧料充填領域19aに充填された化粧料4は、冷却により固化した後、カートリッジ外筒510の内周面に付着する。よって、化粧料4は、保持部材570により押圧されて繰り出された後もその一部が内周面に付着して残り、凸部73により掻き取られ、この掻き取られた部分が経路73aとして現れたものである。
このように、回転規制機構がない場合は、カートリッジ外筒510の内周面に付着する化粧料4により僅かながらも粘着力が生じ、保持部材570の回転が伝わることで化粧料4に捩れが生じ、捩れの発生にも拘らずなお押棒60を前進させ続けるならば、この捩れに沿って化粧料4が折損する可能性がある。化粧料4が、断面が略円形の円形芯である場合は、繰出時に捩れが生じる傾向がより顕著となり、折損する可能性が高い。
これに対し、本実施形態では、カートリッジ外筒10のローレット17eおよび保持部材70のリブ76により、保持部材70のカートリッジ外筒10に対する相対回転が制限されることで、化粧料4に捩れが生じることを抑制し、化粧料4の折損を防止することができる。
本実施形態では、回転規制機構をローレット17eおよびリブ76により構成し、凹部と凸部との噛み合いにより保持部材70の回転を制限する構成としたことで、保持部材70のカートリッジ外筒10に対する相対回転を確実に制限することができる。
そして、カートリッジ外筒10の内周面にローレット17eを形成し、凹部を構成する溝をカートリッジ外筒10の周方向全体に亘って連続して形成したことで、保持部材70とカートリッジ外筒10との周方向の位置合わせが容易となる。さらに、リブ76(凸部)の数をローレット17eの溝の数よりも少なくしたことで、リブ76の形成により保持部材70の製造が過度に煩雑となることが回避される。
本実施形態では、保持部材70に延設部を形成して、保持部材70を全体として軸方向に長い長尺状とし、リブ76が設けられる大径部72を延設部の末端に形成したことで、回転規制機構の一部を保持部材70に組み込んで、構成をカートリッジ2全体として簡素化することができる。延設部の長さは、押棒60の繰出ストロークに一致させても、押棒60の繰出ストロークよりも長くしてもよい。延設部の長さを押棒60の繰出ストロークと一致させることで、押棒60の繰出ストローク全体を利用して化粧料4を繰り出すことが可能となり、カートリッジ2に収容されている化粧料4を無駄なく使用することができる。
そして、ローレット17eを、カートリッジ外筒10の貫通孔17において、第2貫通孔17cにのみ、換言すれば、化粧料充填領域19a外にのみ形成したことで、加熱され、溶融した状態にある液状化粧料を貫通孔17に流し込むことによりカートリッジ外筒10に充填する場合に、冷却後に固化した化粧料4が凹凸内(ローレット17eの溝)に残り、使用に際して化粧料4の円滑な繰り出しが阻害されることを防止することができる。
本実施形態では、カートリッジ外筒10の先端面18aをカートリッジ外筒10の中心軸に対して斜めに形成し、先端面18aを押棒60による化粧料4の押出方向に対して傾斜させたことで、回転規制機構により保持部材70の回転が抑制されることと相俟って、化粧料4の端面の傾斜がカートリッジ外筒10の先端面18aの傾斜と合致した状態を維持し、カートリッジ2およびカートリッジ式化粧料容器の利便性を向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、繰出時における化粧料4の折損を防止可能なカートリッジ式化粧用容器を提供することができる。 図13および14は、本発明の第1実施形態に係る化粧料カートリッジ2の変形例を示している。図13および14において、先の例の化粧料カートリッジ2およびカートリッジホルダー1と同様のまたは共通する構成には同一の符号を付し、当該構成の説明を省略する。
変形例では、保持部材70’の天面71’を先の例と同じく平面状とするが、保持部材70’の中心軸に対して斜めに形成し、カートリッジ外筒10’の先端面18aの傾斜と合致させる。これにより、押棒60の繰出ストロークの調整により保持部材70’の天面71’を先端開口11aに近い位置にまで移動させることが可能となり、化粧料4を最後まで無駄なく使用することができる。
ここで、天面71’の傾斜と先端面18aの傾斜とを合致させるため、カートリッジ外筒10’への保持部材70’の組み付けに際し、カートリッジ外筒10’と保持部材70’との位置合わせが必要となる。変形例では、回転規制機構にこの位置合わせのための機能を併せ持たせている。
具体的には、先の例と同様に、カートリッジ外筒10’の内周面に凹部17f、17gを形成するとともに、保持部材70’の基端側の端縁に大径部72’を設け、その外側面に、凹部17f、17gと係合する凸部76a、76bを形成する。ここで、変形例では、凹部17f、17gと凸部76a、76bとの数を等しくし、夫々2つとするとともに、一方の噛み合いを形成する凹部17fおよび凸部76aと、他方の噛み合いを形成する凹部17gおよび凸部76bと、の大きさ(高さおよび周方向の幅)を異ならせている。これにより、カートリッジ外筒10’に対し、保持部材70’を位置合わせした状態で挿入することができる。凹部17f、17gと凸部76a、76bとの数は、2つずつに限らず、夫々1つとしてもよい。
凹部17fおよび凸部76aと凹部17gおよび凸部76bとは、カートリッジ外筒10’の中心軸を基準として軸対称に配置するばかりでなく、軸対称の位置から周方向にずらして配置してもよい。
(第2実施形態)
以下、図15および16を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態との相違点を中心に説明することとし、第1実施形態と同様のまたは共通する構成には同一の符号を付し、当該構成の説明を省略する。
第1実施形態では、保持部材70全体の外径を貫通孔17の化粧料充填領域19aの内径に合わせ、保持部材70を全体として比較的小径に構成する一方、基端側の末端に大径部72を設け、大径部72の外径を保持部材挿入領域19bの内径に合わせ、大径部72の外側面に「回転規制機構」のリブ76を形成することとした。これにより、小径の化粧料4の使用に対応する。
これに対し、本実施形態では、貫通孔117の内径が先端開口111aから基端開口11bまでの全体に亘って一定であり(換言すれば、化粧料充填領域19aと保持部材挿入領域19bとで内径が等しく)、保持部材挿入領域19bの内周面に、第1実施形態に同様の凹部(ローレット17e)が形成されている。保持部材170も、天面171から底面174までの全体に亘って外径が一定に形成され、基端側の端部に、凸部(一対のリブ176)が軸対称の位置に設けられている。保持部材170は、リブ176がローレット17eの溝に沿って案内されることで、貫通孔117内を軸方向に移動可能である一方、リブ176がローレット17eの溝により周方向に係止されることで、カートリッジ外筒110に対する相対回転が制限される。
本実施形態によれば、第1実施形態により得られるのと同様の効果に加え、保持部材170の天面171に比較的広い面積が確保されるため、第1実施形態と比較してより太い化粧料4を採用することが可能となる。
さらに、本実施形態では、保持部材170がカートリッジ外筒110から脱落することを回避する構成として、保持部材170の先端部の外側面に環状凸部173が形成され、カートリッジ外筒110の内周面に、環状凸部173を軸方向に係止する凸部117aが形成されている。 図16(b)により明確に示すように、本実施形態では、カートリッジ外筒110の先端面118aを中心軸に対して垂直に形成しているが、使用時における便宜性を考慮して、先端面118aを斜めに形成してもよい。
(第3実施形態)
以下、図17および18を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態との相違点を中心に説明することとし、第1実施形態と同様のまたは共通する構成には同一の符号を付し、当該構成の説明を省略する。 第1実施形態では、保持部材70がカートリッジ外筒10から脱落することを回避するため、保持部材70の外周面に凸部73を形成するとともに、カートリッジ外筒10の内周面に環状凸部17aを形成することとした。
これに対し、本実施形態では、保持部材270の外周上に基端側に面する当接面273を形成するとともに、カートリッジ外筒210の内周上に、先端側に面し、当接面273と対向して配置される段部217dを形成し、保持部材270をカートリッジ外筒210に組み付けた状態で、当接面273が段部217dにより係止されることで、保持部材270の脱落が防止されるように構成した。
具体的には、図18(d)に示すように、保持部材270は、軸方向全体に亘って外径が一定に形成され、外側面に軸方向に延びる複数の凹部276が形成されている。凹部276は、カートリッジ外筒210の内周面に形成される凸部217eと係合し、「回転規制機構」を構成するものである。
保持部材270の先端部に、化粧料4をその後端部を包囲した状態で保持する薄膜カップ状の保持部271が形成されており、凹部276が保持部271以外の部分で保持部材270に形成されることで(図18(d)および(f))、当接面273が保持部271の底面の一部として形成されている。他方で、カートリッジ外筒210の内周面に、径方向内側に突出する凸部217eが形成され、凸部217eの上端面により段部217dが形成されている(図18(c))。よって、保持部材270の底面274をカートリッジ外筒210の先端開口111aから挿入して行くと、保持部材270の当接面273がカートリッジ外筒210の段部217dに当接し、当接面273が段部217dにより係止されて、保持部材270の脱落が防止される。
本実施形態によれば、第1実施形態により得られるのと同様の効果に加え、「回転規制機構」を構成する凸部217eを保持部材270ではなく、カートリッジ外筒210に形成することとしたので、凸部を保持部材270に設けることとした場合の外径の拡大分を考慮してカートリッジ外筒210(嵌入部)を拡径させる必要がなく、カートリッジ2全体をコンパクトに構成することができる。
さらに、保持部材270をカートリッジ外筒210に挿入する際に、第1実施形態では必要であった、凸部73が環状凸部17aを乗り越える操作が不要となり、カートリッジ外筒210に対し、先端開口111aを介してより円滑に挿入することが可能となる。
図18(b)により明確に示すように、本実施形態では、カートリッジ外筒210の先端面118aを中心軸に対して垂直に形成しているが、使用時における便宜性を考慮して、先端面118aを斜めに形成してもよい。
本実施形態に係るカートリッジ202は、化粧料4を成形済みの化粧料(成形芯)とし、これを保持部材270(保持部271)に装着して使用する場合に好適である。
以上で述べた実施形態全体を通じ、化粧料カートリッジ2、2’、102、202は、カートリッジホルダー1とは別に、個別にまたは複数個の組で販売されてもよく、カートリッジホルダー1とのパッケージとして、カートリッジホルダー1に取り付けられた状態または取り外された状態で販売されてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記説明は、いずれも本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。