以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
[第1実施形態]
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。図1に示すように、空気入りタイヤ10のトレッド部15には、複数のブロック20(陸部ブロック)が設けられている。
具体的には、空気入りタイヤ10は、ブロック20がタイヤ周方向DCに沿って設けられた複数のブロック列(陸部ブロック列)を有する。本実施形態では、タイヤ赤道線CLを基準として分断されたそれぞれの領域に、2つのブロック列が形成される。なお、ブロック列の数、ブロック20の位置及び形状などは、図1に示したようなパターンに限定されるものではない。
空気入りタイヤ10は、氷雪路の走行に対応したタイヤである。特に、空気入りタイヤ10は、氷雪路及び非氷雪路(乾燥路・湿潤路)における性能を高い次元で両立する。空気入りタイヤ10は、所与の性能を発揮するため、図1に示すように回転方向Rが指定されている。
ブロック20は、路面と接する部分である。具体的には、ブロック20の踏面21が主に路面と接する。隣接するブロック20間には、溝部30が形成される。溝部30は、タイヤ周方向DC及びタイヤ幅方向DTに延び、ブロック列を区画する。
トレッド部15、具体的には、ブロック20の踏面21には、タイヤ幅方向DT(所定方向)に沿って延びるサイプ100が複数形成される。サイプ100は、ブロック20の踏面21に開口する。
(2)ブロック20の構成
図2は、複数のブロック20を含む空気入りタイヤ10のトレッドの一部斜視図である。図2に示すように、ブロック20には、タイヤ幅方向DTに沿って延びる4つのサイプ100が形成されている。
サイプ100は、タイヤ幅方向DTにおいてジグザグ状である。また、サイプ100は、タイヤ径方向DR、つまり、サイプ100の深さ方向おいても、ジグザグ状に屈曲した部分を有する。
サイプ100は、タイヤ幅方向DTにおけるブロック20の一方の側壁22から他方の側壁23に亘って形成される。サイプ100は、タイヤ幅方向DTにおけるブロック20の両方の側壁(側壁22及び側壁23)に開口している。
サイプ100は、溝部30の溝底31までは達しておらず、溝底31よりもタイヤ径方向DR外側で終端する。つまり、サイプ100の深さは、溝部30の深さよりも浅い。
(3)サイプ100の形状
図3は、タイヤ幅方向視におけるサイプ100の側面図である。具体的には、図3は、路面と接するブロック20の踏面21を下側に示したサイプ100の単体側面図である。
図3に示すように、サイプ100は、3つの部位によって構成される。具体的には、サイプ100は、第1サイプ部160、屈曲部170及び第2サイプ部180を含む。
第1サイプ部160は、ブロック20の踏面21側に形成される。第1サイプ部160は、タイヤ幅方向視において直線状であるが、タイヤ径方向DRに対して傾斜している。
具体的には、第1サイプ部160は、タイヤ幅方向視において、タイヤ径方向DRに対して空気入りタイヤ10の回転方向Rと逆側に傾斜している。つまり、第1サイプ部160は、回転方向Rの後方に向かって傾斜している。
タイヤ幅方向視において、第1サイプ部160が踏面21と成す鋭角側の角度θは、70度以上、85度以下であることが好ましい。
また、第1サイプ部160は、踏面21に開口する開口端部分161を有する。開口端部分161は、タイヤ幅方向視において、第2サイプ部180の中心を通過し、タイヤ径方向DRと平行な直線L2に対して、回転方向R側にオフセットしている。なお、第2サイプ部180の中心とは、タイヤ周方向DCに沿った第2サイプ部180の溝幅の中心を意味する。
タイヤ幅方向視において、第1サイプ部160のタイヤ径方向内側端(内側端部分162)と、第1サイプ部160のタイヤ径方向外側端(開口端部分161)を結ぶ直線である直線L1(第1サイプ中心線)は、タイヤ径方向DRに対して傾斜している。一方、上述した直線L2は、第2サイプ部180のタイヤ径方向内側端(端部181)と、第2サイプ部180のタイヤ径方向外側端(端部182)を結ぶ直線(第2サイプ中心線)であり、タイヤ径方向DRに沿って、つまり、平行である。
また、開口端部分161は、直線L2上に位置せず、回転方向Rの前方にオフセットしている。
屈曲部170は、第1サイプ部160とタイヤ径方向内側端(内側端部分162)と、第2サイプ部180のタイヤ径方向外側端(端部182)とを結び、タイヤ周方向(所定方向)に屈曲している。つまり、屈曲部170は、サイプ100の延在方向視において、本実施形態では、タイヤ幅方向視において、ジグザグ状に屈曲している。また、屈曲部170は、第1サイプ部160よりもタイヤ径方向DR内側に位置する。
屈曲部170は、第1屈曲部分171、第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175を含む。
第1屈曲部分171は、タイヤ幅方向視において、回転方向Rに凸となるように屈曲、つまり、回転方向Rの前方側に頂点が位置するように屈曲している。つまり、第1屈曲部分171は、タイヤ幅方向視において、タイヤ周方向DCの一方側に屈曲する。
また、第1屈曲部分171は、タイヤ幅方向視において、直線L2(第2サイプ中心線)よりも第1サイプ部160側に位置する。
第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175は、第1屈曲部分171と逆側に屈曲している。つまり、第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175は、タイヤ周方向DCの他方側に屈曲する。
また、第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175は、タイヤ幅方向視において、直線L2よりも第1サイプ部160と反対側に位置する。
具体的には、第2屈曲部分173は、第1屈曲部分171よりも第1サイプ部160寄りに形成され、タイヤ幅方向視において、第1屈曲部分171と逆側に屈曲する。
第2屈曲部分175は、第1屈曲部分171よりも第2サイプ部180寄りに形成され、タイヤ幅方向視において、第1屈曲部分171と逆側に屈曲する。
第1屈曲部分171の角度、第2屈曲部分173の角度、及び第2屈曲部分175の角度(α)は、全て同一に設定される。本実施形態では、αは、45度に設定されている。つまり、本実施形態では、第1屈曲部分171のタイヤ径方向DRにおける長さ、具体的には、直線L2の位置を基準としたタイヤ径方向DRにおける長さである周期Fは、第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175の周期Fと同一である。なお、ここでいう周期Fとは、実際には、屈曲部分一つのタイヤ径方向DRにおける長さ、つまり、1/2周期を意味する。
また、本実施形態では、第2屈曲部分の数は、第2屈曲部分173及び第2屈曲部分175の2つであり、第1屈曲部分の数は第1屈曲部分171の一つである。つまり、第2屈曲部分の数は、第1屈曲部分の数よりも多い。
また、本実施形態では、タイヤ幅方向視において、直線L2と第1屈曲部分171の頂部(図3の符号171によって示されている位置)との最短距離SDは、第1サイプ部160のタイヤ径方向内側端(内側端部分162)と、第1サイプ部160のタイヤ径方向外側端(開口端部分161)とのタイヤ周方向DCに沿った最短距離SDと同一である。なお、同一とは、何れか一方の距離を基準として、他方の距離が±20%以下であればよい。
第2サイプ部180は、屈曲部170に連なり、屈曲部170よりもタイヤ径方向DR内側に位置する。つまり、第2サイプ部180は、第1サイプ部160よりもタイヤ径方向内側に位置する。
上述したように、第1サイプ部160の開口端部分161は、タイヤ幅方向視において、第2サイプ部180の中心を通過する直線L2上に位置せず、回転方向R側にオフセットしているが、第1サイプ部160の内側端部分162は、直線L2上に位置する。内側端部分162は、第1サイプ部160のタイヤ径方向DR内側の端部であり、屈曲部170との境界、具体的には、第2屈曲部分173との境界部分である。
上述したように、サイプ100の深さは、溝部30(図2参照)の深さよりも浅い。具体的には、第2サイプ部180のタイヤ径方向DR内側の端部181は、溝部30の溝底31(図2及び図4参照)よりもタイヤ径方向DR外側において終端している。
なお、サイプ100の深さDは、空気入りタイヤ10のサイズや適用車種によって異なることは勿論であるが、一般的な乗用自動車用のタイヤ(例えば、205/55R16)の場合、7.0mm程度とすることが好ましい。また、サイプ100の幅Wは、0.4mm程度とすることが好ましい。但し、幅Wは、0.1〜1.0mmの範囲であればよい。
より具体的には、第1サイプ部160の深さ(踏面21〜直線L3までのタイヤ径方向DRに沿った距離)は1.7mm程度である。同様に、第2サイプ部180の深さ(直線L4(端部182)〜端部181までのタイヤ径方向DRに沿った距離)も1.7mm程度である。
屈曲部170の深さ(直線L3〜直線L4までのタイヤ径方向DRに沿った距離)は、3.6mm程度である。第1屈曲部分171の屈曲点(頂部)は、深さDの半分(D/2)の深さに位置する。
(4)ブロック20内におけるサイプ100の形成位置
図4は、タイヤ幅方向視におけるブロック20内におけるサイプ100の形成位置を示す図である。具体的には、図4は、タイヤ幅方向視におけるブロック20の一部側面図である。
図4に示すように、ブロック20において隣接するサイプ100は、間隔Sを隔てて形成される。なお、間隔Sは、隣接するサイプ100を通過する直線L2間の距離である。
サイプ100は、上述したようにジグザグ状に屈曲している屈曲部170を有する。屈曲部170の振幅Aは、サイプ100の深さDが7.0mmの場合、1.2mm程度である。なお、振幅Aは、タイヤ周方向DCに沿った屈曲部170の幅である。隣接するサイプ100の間隔Sは、屈曲部170の振幅Aよりも広い。
(5)作用・効果
次に、空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。まず、図4及び図5を参照して、ブロック20の作用について説明する。図4は、上述したように、タイヤ幅方向視におけるブロック20の一部側面図である。図5もタイヤ幅方向視におけるブロック20の一部側面図である。但し、図5では、空気入りタイヤ10が氷雪路を転動した場合におけるブロック20の形状が模式的に示されている。
図4に示すように、非氷雪路の場合、ブロック20が路面と接しながら回転方向Rに回転すると、ブロック20には回転方向Rと逆方向の前後力(Fx)が発生するともに、空気入りタイヤ10に掛かる荷重によって、ブロック20は、図中の黒い太矢印の方向に変形する。
上述したように、サイプ100、具体的には、第1サイプ部160が回転方向Rと逆側に傾斜しているため、回転方向Rと同方向(図中の反時計回り)に回転しようとするモーメントMが、ブロック20に発生する。また、第2サイプ部180は、タイヤ径方向DRに沿った直線状であるため、このようなモーメントMを発生させ易い。
このため、サイプ100によって分断されたブロック20が路面を転動した場合において、ブロック20では、蹴り出し側の接地圧が高くなり、逆に、踏み込み側の接地圧が低くなる。
この結果、ブロック20に前後力(Fx)が入力された場合でも、ブロック20の倒れ込みが抑制され、ブロック20が路面を転動した場合における接地圧が均一化され易い。これにより、蹴り出し側が踏み込み側よりも早く摩耗してしまうヒール&トゥ摩耗を抑制し得る。特に、空気入りタイヤ10の使用初期におけるヒール&トゥ摩耗を効果的に抑制し得る。
また、サイプ100の形状によれば、荷重が掛かった場合でも分断されたブロック20が互いに支え合うことができる。これにより、ブロック20の剛性の低下も避けられるため、非氷雪路での性能、特に、制動やコーナリング性能も確保できる。
一方、図5に示すように、氷雪路の場合、ブロック20が路面と接しながら回転方向Rに回転すると、ブロック20には回転方向Rと逆方向の前後力(Fx)が発生するともに、サイプ100に氷雪Snが入り込むため、ブロック20は、図中の黒い太矢印の方向に変形する。
この結果、回転方向Rと逆方向(図中の時計回り)に回転しようとするモーメントMが、ブロック20に発生する。また、第2サイプ部180は、タイヤ径方向DRに沿った直線状であるため、このようなモーメントMを発生させ易い。
勿論、氷雪路の場合でも、非氷雪路と同様に空気入りタイヤ10に掛かる荷重によってブロック20がタイヤ径方向DRにも変形するが、アスファルト路面などの非氷雪路と異なり、氷雪Sn自体も変形するため、ブロック20は、非氷雪路とは異なった変形を示す。
また、このようなモーメントMが発生するため、ブロック20のエッジEが突出し易くなり、エッジEが路面上の氷雪Snに貫入し易くなる。これにより、氷雪路での性能をさらに向上し得る。
次に、空気入りタイヤ10の評価試験結果について説明する。表1は、評価試験を実施したタイヤの構成、及び試験結果の数値を示す。
比較例1は、サイプ100とは異なる形状のサイプが形成されたブロックを有する空気入りタイヤである。具体的には、タイヤ幅方向に沿って延び、トレッド面視においてジグザグ状であるサイプ、つまり、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向のみで形状が変化し、タイヤ径方向では形状が変化しないサイプ(いわゆる2次元サイプ)が形成されている。
比較例2は、サイプ100とは同形状だが、第1サイプ部160が踏面21と成す鋭角側の角度θが90度であるサイプが形成されたブロックを有する空気入りタイヤである。また、比較例3は、角度θが60度であるサイプが形成されたブロックを有する空気入りタイヤである。
実施例1〜3は、角度θが85度、80度、70度であるサイプがそれぞれ形成されたブロックを有する空気入りタイヤである。なお、比較例2,3及び実施例1〜3において、サイプの屈曲部の角度αは全て45度である。
また、試験条件は、以下のとおりである。
・タイヤサイズ: 195/65R15
・設定内圧: 200kPa
・試験用車両: 乗用自動車
「耐摩耗性能」は、ドラム試験機を用いて各空気入りタイヤを10,000km走行させた後の溝残量を、比較例1を基準として指数化した数値である。
「氷雪路性能」は、各空気入りタイヤを装着した試験用車両の氷雪路における発進加速タイム(0〜50m到達時間)を、比較例1を基準として指数化した数値である。
表1に示すように、実施例1〜3では、氷雪路性能を維持しつつ、耐摩耗性能が大幅に向上している。
比較例2,3の場合、耐摩耗性能は、比較例1(2次元サイプ)よりも向上しているものの、実施例1〜3と比較すると向上幅は限定的である。また、氷雪路性能は、比較例1よりも低下している。
このように、第1サイプ部160が踏面21と成す鋭角側の角度θは、少なくとも70度〜85度であることが好ましい。角度θが85度を超えて90度に近づくと、上述した氷雪路での作用(図5参照)が得られ難くなるためである。一方、角度θが70度を下回って60度に近づくと、反ってブロックの接地圧のバランスが崩れるため、ヒール&トゥ摩耗の抑制に繋がらないためである。
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、図3に示したように、サイプ100は、タイヤ幅方向視において、直線L1(第1サイプ中心線)がタイヤ径方向DRに対して傾斜し、直線L2(第2サイプ中心線)がタイヤ径方向DRはタイヤ径方向に沿うような形状を有している。
このため、第1サイプ部160のエッジEによる氷雪路の引っ掻く能力(エッジ効果)、及び第2サイプ部180によるブロック20の倒れ込み抑制によるブロック剛性の向上による性能向上(耐摩耗性能など)を図り得る。さらに、サイプ100は、従来の三次元サイプなどと比較すると、形状がシンプルなため、タイヤ製造時におけるタイヤモールドのブレードの引き抜き性(いわゆる釜抜け性)も良好である。特に、本実施形態では、第1サイプ部160が直線状であるため、釜抜け性もさらに良好であり、上述したモーメントMの発生にも有利である。
本実施形態では、第2屈曲部分173の数は、第1屈曲部分171の数よりも多い。また、直線L2と第1屈曲部分171の頂部との最短距離SDは、第1サイプ部160のタイヤ径方向内側端(内側端部分162)と、第1サイプ部160のタイヤ径方向外側端(開口端部分161)とのタイヤ周方向DCに沿った最短距離SDと同一である。
このような形状は、特に氷雪路におけるモーメントMの発生(図5参照)に有利であり、氷雪路における性能をさらに向上し得る。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。以下、上述した第1実施形態に係る空気入りタイヤ10と異なる部分について主に説明し、同様の部分については、適宜その説明を省略する。
(1)タイヤの全体概略構成
図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10Aのトレッドの一部平面展開図である。図6に示すように、空気入りタイヤ10Aのトレッド部15には、複数のブロック20A(陸部ブロック)が設けられている。
トレッド部15、具体的には、ブロック20Aの踏面21には、タイヤ幅方向DT(所定方向)に沿って延びるサイプ100Aが複数形成される。サイプ100Aは、空気入りタイヤ10のサイプ100と比較すると、タイヤ幅方向DTに沿った直線状ではなく、台形状に屈曲した部分を有する。
(2)ブロック20Aの構成
図7は、複数のブロック20Aを含む空気入りタイヤ10Aのトレッドの一部斜視図である。
サイプ100Aは、タイヤ幅方向DTに沿って延びるが、トレッド面視において台形状に屈曲した凸状部150を有する。凸状部150は、ブロック20Aのタイヤ幅方向DTにおける中央部分に形成される。
凸状部150は、回転方向Rと逆側に屈曲しており、つまり凸状である。具体的には、凸状部150は、回転方向Rの後方に向かって屈曲しており、つまり凸状である。
また、上述したように、第1サイプ部160は、タイヤ幅方向視において、タイヤ径方向DRに対して回転方向Rと逆側に傾斜している。従って、第1サイプ部160の傾斜方向と、凸状部150の屈曲方向とは、同一方向である。具体的には、第1サイプ部160の傾斜方向と、凸状部150の屈曲方向は、回転方向Rと逆側である。
(3)サイプ100Aの形状
図8は、トレッド面視におけるブロック20Aの一部平面図である。図8に示すように、サイプ100Aは、第1直線サイプ部120、第2直線サイプ部130及び凸状部150によって構成される。
なお、サイプ100Aの深さ方向における形状は、図7に示したように、サイプ100と同形状である。サイプ100Aの幅は、第1直線サイプ部120、第2直線サイプ部130及び凸状部150において同一である。
第1直線サイプ部120は、タイヤ幅方向DTに沿って延び、トレッド面視において直線状である。同様に、第2直線サイプ部130は、タイヤ幅方向DTに沿って延び、トレッド面視において直線状である。
凸状部150は、第1直線サイプ部120と第2直線サイプ部130との間に形成され、上述したように、タイヤ周方向DC(交差方向)に凸となる。なお、本実施形態では、凸状部150は、一つのみ形成されており、トレッド面視において、タイヤ周方向DCにおける一方側にのみに凸となる。
凸状部150は、第1傾斜部分151、直線部分152及び第2傾斜部分153によって構成される。直線部分152は、タイヤ幅方向DTに直線状に延びる。
第1傾斜部分151は、第1直線サイプ部120と直線部分152との間に形成にされる。第1傾斜部分151は、タイヤ幅方向DTに対して傾斜している。つまり、第1傾斜部分151は、タイヤ径方向DRに対しても傾斜している。ここで、傾斜とは、タイヤ幅方向DT及びタイヤ径方向DRに対して、平行でも直交でもない状態を意味する。
より具体的には、第1傾斜部分151は、直線部分152の一端と、第1直線サイプ部120の一端とに連なる。第1傾斜部分151は、直線部分152の一端よりもタイヤ幅方向外側に広がるように傾斜する。
第2傾斜部分153は、第2直線サイプ部130と直線部分152との間に形成にされる。第2傾斜部分153も、タイヤ幅方向DTに対して傾斜する。つまり、第2傾斜部分153は、タイヤ径方向DRに対しても傾斜している。但し、第2傾斜部分153は、第1傾斜部分151と逆側に傾斜している。
より具体的には、第2傾斜部分153は、直線部分152の他端と、第2直線サイプ部130の一端とに連なる。第2傾斜部分153は、直線部分152の他端よりもタイヤ幅方向外側に広がるように傾斜する。
直線部分152は、第1傾斜部分151と第2傾斜部分153との間に形成される。直線部分152は、タイヤ幅方向DTに沿って、具体的には、タイヤ幅方向DTと平行に延びている。
本実施形態では、第1傾斜部分151のタイヤ幅方向DTに沿った幅a1は、2.0mm程度である。第2傾斜部分153のタイヤ幅方向DTに沿った幅も同様に2.0mm程度である。また、直線部分152のタイヤ幅方向DTに沿った幅a2は、5.0mm程度である。なお、図8に示すように、幅a1, a2は、凸状部150のサイプ幅の中心を基準した数値である。
第1傾斜部分151のタイヤ周方向DCに沿った長さbは、2.0mm程度である。長さbも、凸状部150のサイプ幅の中心を基準した数値である。なお、長さb(振幅A’)は、上述した振幅A(図4参照)よりも短いことが好ましい。
なお、一般的に、乗用自動車用のタイヤの場合、溝部30の深さが8〜12mm、サイプ深さDが5〜10mm、周期Fが2.4〜3.2mm、振幅A’が1.0〜1.4mmであるが、本実施形態では、乗用自動車用のタイヤの場合、溝部30の深さが8〜12mm、サイプ深さDが5〜10mmで同じであるが、周期Fが5.4〜10.0mm、振幅A’が2.0〜2.4mmであり、従来例と比較すると、周期Fが3倍、振幅A’は2倍となっている。
また、トラックバス用タイヤその他では、溝部の深さが異なるため、サイプの深さDに対する比は変わらないが数値が異なってくる。
凸状部150のタイヤ幅方向DTに占める寸法である周期(周期F)は、サイプ100Aのブロック20Aの踏面からサイプ100Aの底までの長さであるサイプ深さ(深さD、図7参照)の0.8倍以上、2.0倍以下である。なお、ここでいう周期Fとは、実際には、凸状部150一つのタイヤ幅方向DTに占める寸法、つまり、1/2周期を意味する。同様に、振幅A’とは、実際には、凸状部150一つのタイヤ周方向DCに占める寸法、つまり、1/2振幅を意味する。
また、トレッド面視において、凸状部150のタイヤ周方向DCに占める寸法である振幅A’は、深さDの0.25倍以上、1.20倍以下であることが好ましく、0.30倍以上、1.00倍以下であることがより好ましい。
トレッド面視において、直線部分152の長さは、深さDの0.20倍以上、0.35倍以下であることが好ましく、0.22倍以上、0.30倍以下であることがより好ましい。また、トレッド面視において、直線部分152の長さは、第1傾斜部分151または第2傾斜部分153の長さの少なくとも何れかの長さの0.5倍以上、0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以上、0.7倍以下であることがより好ましい。
トレッド面視において、直線部分152と第1傾斜部分151または第2傾斜部分153の何れかとが成す角度は、90度以上、150度以下であることが好ましく、110度以上、145度以下であることがより好ましい。
また、第1傾斜部分151を形成するブロック20Aの側壁24には、突起190が設けられる。突起190は、ブロック20Aの側壁24の両方に設けられ、互いに対向する。同様に、第2傾斜部分153を形成するブロック20Aの側壁25には、突起190が設けられる。
突起190は、第1傾斜部分151の延在方向における中央に設けられる。同様に、突起190は、第2傾斜部分153の延在方向における中央に設けられる。なお、何れか一方の傾斜部分の突起が、中央以外に設けられてもよい。
(4)タイヤモールド
次に、図9及び図10を参照して、空気入りタイヤ10Aのブロック20Aを加硫成形するタイヤモールドの概略構成について説明する。
図9は、タイヤモールド400の一部概略断面図である。図9に示すように、タイヤモールド400は、成形モールド410、枠部420及び複数のブレード500を有する。
成形モールド410は、加硫成形前の空気入りタイヤである加硫前タイヤ10Pのトレッド部と対向し、タイヤ周方向DCにおいて複数に分割されている。枠部420は、成形モールド410のトレッド成形面に設けられ、溝部30などを成形する。
ブレード500は、成形モールド410のトレッド成形面に設けられ、サイプ100Aを成形する。
図10は、ブレード500の斜視図、及びブレード500によって成形されたブロック20Aのサイプ100Aの形成面を示す図である。
図10に示すように、ブレード500は、第1直線部510、第2直線部520及び凸状部530を有する。
第1直線部510は、タイヤ幅方向に直線状に延びる。同様に、第2直線部520もタイヤ幅方向に直線状に延びる。凸状部530は、第1直線部510と第2直線部520との間に形成され、タイヤ周方向に凸となる。
凸状部530は、第1傾斜部分531、直線部分532及び第2傾斜部分533を有する。直線部分532は、タイヤ幅方向に直線状に延びる。
第1傾斜部分531は、直線部分532の一端と、第1直線部510の一端とに連なる。第1傾斜部分531は、直線部分532の一端よりもタイヤ幅方向外側に広がるように傾斜する。
同様に、第2傾斜部分533は、直線部分532の他端と、第2直線部520の一端とに連なり、直線部分532の他端よりもタイヤ幅方向外側に広がるように傾斜する。
貫通孔540は、第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533にそれぞれ一つずつ形成されている。貫通孔540は、ブレード500の厚み方向に貫通しており、加硫前タイヤ10Pをタイヤモールド400で加硫成形する際の空気抜きを主な目的として形成される。
なお、貫通孔540は、第1傾斜部分531または第2傾斜部分533の少なくとも何れかに形成されていればよい。
また、本実施形態では、貫通孔540は、ブレード500の第1傾斜部分531または第2傾斜部分533の延在方向における中央に形成される。
また、本実施形態では、貫通孔540は、ブレード500の第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533の延在方向における中央に形成される。なお、第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533の延在方向における中央に貫通孔540を形成ことができない場合(例えば、周囲に障害物となる溝が形成されている場合、または構造上の必要強度が確保できない場合)、当該中央から±20%の領域内に形成してもよい。
本実施形態では、貫通孔540は円形状であり、貫通孔540の直径は、1.0mmである。また、本実施形態では、貫通孔540は、ブレード500の成形モールド410寄りの基端部に形成される。具体的には、貫通孔540は、ブロック20Aの踏面からタイヤ径方向内側に、0.3mm〜2.0mmの領域に形成される。これにより、加硫成形時にブロック20Aの踏面付近に溜まる空気を抜き、ブロック20Aに欠けなどのベア不良が生じることを防止する。
また、突起190は、加硫成形よって貫通孔540に入り込んだゴム部材によって形成される。貫通孔540がブレード500の成形モールド410寄りの基端部に形成されるため、突起190は、ブロック20Aの踏面寄りに設けられる。なお、図8に示したように、突起190がブロック20Aの側壁24の両方に設けられ、互いに対向しているのは、貫通孔540に入り込んだゴム部材が、ブレード500を加硫成形されたブロック20Aから引き抜く際に、ブレード500によって分断されるためである。
(5)作用・効果
空気入りタイヤ10Aによれば、上述した空気入りタイヤ10の作用・効果に加えて、以下のような作用・効果を奏し得る。
具体的には、サイプ100Aでは、タイヤ幅方向DTにおける中央部分に、一方側にのみ凸である凸状部150が形成され、かつトレッド面視において、第1傾斜部分151及び第2傾斜部分153は、直線部分152からタイヤ幅方向外側に広がるように傾斜する。
このため、ブレード500の曲げ剛性が高くなる。これにより、空気入りタイヤ10Aを製造する際に、成形モールド410(ブレード500)の耐久性を高めることができる。具体的には、ブレード500に加硫前タイヤ10Pが当接する際に、ブレード500に生じる応力歪が大幅に低下するため、ブレード500の耐久性が大幅に向上する。ブレード500によれば、従来の三次元サイプ(後述する図12(a)参照)を製造するブレードと比較して、耐久性が120%〜150%に向上している。
より具体的には、第1実施形態に係るサイプ100の場合、タイヤ幅方向DTにおいて直線状のブレードとなるため、充分な曲げ剛性が確保できない場合がある。サイプ100Aによれば、このような問題を解消することができる。また、凸状部150を形成しても、空気入りタイヤ10と比較した大きな性能(耐摩耗性能及び氷雪路性能)低下は生じない。
特に、本実施形態では、凸状部150が一つのみ形成され、凸状部150の周期Fは、サイプ深さDの0.8倍以上、2.0倍以下である。また、凸状部150のタイヤ周方向の振幅A’は、サイプ深さDの0.25倍以上、1.20倍以下であり、直線部分152の長さは、サイプ深さDの0.20倍以上、0.35倍以下、第1傾斜部分151及び第2傾斜部分153の長さの少なくとも何れかの長さの0.5倍以上、0.8倍以下である。さらに、直線部分152と第1傾斜部分151または第2傾斜部分153の何れかとが成す角度は、90度以上、150度以下である。
このような数値範囲の凸状部150を有するサイプ100Aの場合、対応するブレード500に必要な剛性を十分に確保し得る。また、特に、振幅A’が上述した数値範囲を超えると、ブロック20Aに形成可能なサイプ数が減少するため好ましくない。
また、本実施形態では、第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533には、貫通孔540が形成される。このため、ブレード500の曲げ剛性を確保しつつ、加硫成形する際の空気抜きが可能となる。つまり、第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533は、ブレード500の凸状部530を形成するために曲げられた幅狭な部分であり曲げ剛性が高いため、この部分に貫通孔540を形成することによって、ブレード500の耐久性を確保し得る。
特に、本実施形態では、貫通孔540は、第1傾斜部分531及び第2傾斜部分533の延在方向における中央、ブレード500の成形モールド410寄りの基端部に形成されるため、さらにブレード500の耐久性を確保し易い。
さらに、このような貫通孔540に形成に伴って、ブロック20Aには、結果的に突起190が設けられるが、突起190は、側壁24,25を互いに支え合うことにも寄与するため、ブロック20Aの剛性向上の観点からも好ましい。
[その他の実施形態]
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
例えば、第1実施形態(及び第2実施形態)では、サイプ100は、第1サイプ部160、屈曲部170及び第2サイプ部180を含んでいたが、サイプ100は、次のような形状であってもよい。
図11は、タイヤ幅方向視におけるサイプ100Bの側面図である。具体的には、図11は、路面と接するブロック20の踏面21を下側に示したサイプ100Bの単体側面図である。
図11に示すように、サイプ100Bも、サイプ100と同様に、3つの部位によって構成される。具体的には、サイプ100Bは、第1サイプ部160、屈曲部170B及び第2サイプ部180を含む。
第1サイプ部160及び第2サイプ部180の形状は、サイプ100と同様である。
屈曲部170Aは、第1屈曲部分171a, 171b, 171c、第2屈曲部分177及び第2屈曲部分179を有する。
第1屈曲部分171a及び第1屈曲部分171cは、回転方向Rに凸となるように屈曲、つまり、回転方向Rの前方に向かって凸となるように屈曲している。一方、第2屈曲部分171bは、第1屈曲部分171a, 171cと逆側に屈曲している。
第2屈曲部分177は、第1屈曲部分171aよりも第1サイプ部160寄りに形成され、タイヤ幅方向視において、第1屈曲部分171aと逆側に屈曲する。
第2屈曲部分179は、第1屈曲部分171cよりも第2サイプ部180寄りに形成され、タイヤ幅方向視において、第1屈曲部分171cと逆側に屈曲する。
また、第1屈曲部分171a, 171b, 171cの角度、第2屈曲部分177の角度、及び第2屈曲部分179の角度(β)は、全て同一に設定される。
また、サイプ100は、次のような形状であってもよい。図12(a)〜(h)は、従来のサイプ及びサイプ100の変形例を示す図である。具体的には、図12(a)は、トレッド幅方向視(以下同)における従来の一般的なジグザグ状のサイプ(三次元サイプ)の形状を参考として示す。
一方、図12(b)及び(c)に示すように、サイプの踏面側の部分がサイプ100と同様に傾斜しておれば、サイプのタイヤ径方向内側の部分には、一つの屈曲部170Dのみが形成されてもよい。さらに、図12(c)に示すように、サイプの踏面側の部分は、傾斜していれば、必ずしも直線状でなくても構わない。
また、図12(d)に示すように、サイプのタイヤ径方向内側の部分、具体的には、第2サイプ部は、タイヤ周方向DCにジグザグ状に屈曲していてもよい。また、図12(d)の場合、第2サイプ部のうち、タイヤ径方向DRにおいて最も外側に位置する外側部分183は、タイヤ径方向DRに対して第1サイプ部160Aと反対側に傾斜していてもよい。
また、図12(d)の場合、第2サイプ中心線(直線L2)を基準としたタイヤ周方向DCにおける一方への第2サイプ部の振幅(A/2)は、第2サイプ中心線を基準としたタイヤ周方向における他方への第2サイプ部の振幅(A’/2)と同一であってもよい。
このように第2サイプ部がジグザクの形状を有し、外側部分183がタイヤ径方向DRに対して第1サイプ部と反対側に傾斜することによって、第1サイプ部による氷雪路の引っ掻き性能を確保しつつ、ブロックの剛性をさらに向上し得る。また、第2サイプ部の振幅(A/2, A’/2)が同一の場合、モーメントM(図5参照)の発生にも有利である。
さらに、図12(e)〜(h)に示すように、第1屈曲部分及び第2屈曲部分の数、振幅(タイヤ周方向DCの長さ)、及び周期(タイヤ径方向DRの長さ)の少なくとも何れかは、異なっていてもよい。
例えば、図12(e)及び(f)に示すように、第1屈曲部分171dのタイヤ径方向DRにおける長さである周期は、第2屈曲部分173dのタイヤ径方向DRにおける周期よりも大きくてもよい。このような形状により、図4及び図5に示したモーメントMの発生を要求性能に応じて調整できる。
また、図12(g)に示すように、第2サイプ部の外側部分183Aは、サイプの延在方向視において、屈曲部170Bとともに一方側(ここでは、タイヤ周方向DCの一方側)に向かって凸となるように傾斜する。また、第1サイプ部160Bは、屈曲部170Bとともに他方側に向かって凸となるように傾斜する。
また、サイプ100は、さらに、次のような形状であってもよい。図13は、サイプ100の変形例を示す図である。具体的には、図13に示すように、トレッド幅方向視において、所定の曲率(回転半径)を有し、湾曲した第1サイプ部160C及び第2サイプ部180Cを有するサイプ100Cのような形状であってもよい。また、第1サイプ部160Cと第2サイプ部180Cとの間に形成される屈曲部170Cも、サイプ100のような鋭角状ではなく、所定の曲率を有し、湾曲している。
なお、サイプ100Cは、次のように表現されてもよい。具体的には、サイプは、ブロック表面への開口端側に位置する第1のサイプ部と、第1のサイプ部のタイヤ径方向内側に位置する第2のサイプ部とを有し、サイプのブロック表面への開口端であるサイプ最浅部とタイヤ径方向最内部であるサイプ最深部とを結ぶ直線であるサイプ中心線と第1のサイプ部の延長方向とが、ともに、タイヤ径方向に対して傾斜しており、かつ、その傾斜角度が互いに反対方向であるように形成されていてもよい。
或いは、サイプは、ブロック表面への開口端側に位置する第1サイプ部と、第1サイプ部のタイヤ径方向内側に位置する第2サイプ部と、第1サイプ部のタイヤ径方向内部側の端と第2サイプ部のタイヤ径方向外側の端とを結ぶ第1屈曲部とを有し、第2サイプ部の曲率半径が屈曲部の曲率半径よりも大きく、第2サイプ部の曲率中心と屈曲部の曲率中心とが、サイプを挟んで互いに反対側にあってもよい。
また、上述した第1実施形態では、第1サイプ部160の開口端部分161は、タイヤ幅方向視において、直線L2に対して回転方向R側にオフセットしていたが、必ずしも回転方向R側にオフセットしていなくても構わない。
例えば、空気入りタイヤの回転方向が指定されない代わりに、車両装着時に内側または外側になるように装着することが指定される(いわゆるOutsideの指定)場合、第1サイプ部160の開口端部分161は、ブロック内において、タイヤ周方向DCの一方側または他方側にオフセットしていてもよい。或いは、Outsideの指定の場合、第1サイプ部160の開口端部分161は、同一のブロック内において、タイヤ周方向DCの一方側のみにオフセットしていてもよい。
また、上述した第2実施形態では、凸状部150は、一つのみ形成されており、トレッド面視において、タイヤ周方向DCにおける一方側にのみに凸となっていたが、凸状部150は、必ずしも一つのみでなくてもよく、複数形成されてもよい。また、凸状部150が一方側のみでなく他方側にも形成される場合には、両方の凸状部は、同一のサイズとすることが、ブロック及びブレード500の剛性確保の観点などから好ましい。
さらに、凸状部150が複数形成される場合、第1直線サイプ部120及び第2直線サイプ部130は、必ずしも複数の凸状部150のタイヤ周方向DCにおける中心に位置していなくても構わない。
また、上述した実施形態では、サイプ100及びサイプ100Aなどは、タイヤ幅方向DTに沿って延びていたが、タイヤ幅方向DT以外、例えば、タイヤ周方向DCに沿って延びていてもよい。この場合、サイプの延在方向視も変化する。つまり、サイプがタイヤ周方向DCに沿って延びる場合、サイプの延在方向視とは、タイヤ周方向からの視点(タイヤ周方向視)を意味する。
また、本発明は、次のように表現されてもよい。本発明の一態様は、トレッド部の踏面に開口するサイプが形成されたタイヤであって、前記サイプは、前記踏面側に形成される第1サイプ部と、前記第1サイプ部よりもタイヤ径方向内側に位置する第2サイプ部と、前記第1サイプ部のタイヤ径方向内側端と、前記第2サイプ部のタイヤ径方向外側端とを結び、所定方向に屈曲した屈曲部とを含み、前記サイプの延在方向視において、前記第1サイプ部のタイヤ径方向内側端と、前記第1サイプ部のタイヤ径方向外側端を結ぶ直線である第1サイプ中心線は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、前記第2サイプ部のタイヤ径方向内側端と、前記第2サイプ部のタイヤ径方向外側端を結ぶ直線である第2サイプ中心線は、タイヤ径方向に沿っている。
本発明の一態様において、前記サイプの延在方向視において、前記第1サイプ部は直線状であってもよい。
本発明の一態様において、前記第2サイプ部のうち、タイヤ径方向において最も外側に位置する外側部分は、前記サイプの延在方向視において、前記屈曲部とともに一方側に向かって凸となるように傾斜し、前記第1サイプ部は、前記屈曲部とともに他方側に向かって凸となるように傾斜してもよい。
本発明の一態様において、前記屈曲部は、前記サイプの延在方向視において、タイヤ周方向の一方側に屈曲する第1屈曲部分と、タイヤ周方向の他方側に屈曲する第2屈曲部分とを含み、前記第1屈曲部分は、タイヤ幅方向視において、前記第2サイプ中心線よりも前記第1サイプ部側に位置し、前記第2屈曲部分は、タイヤ幅方向視において、前記第2サイプ中心線よりも前記第1サイプ部と反対側に位置してもよい。
本発明の一態様において、前記サイプの延在方向視において、前記第2サイプ中心線と前記第1屈曲部分の頂部との最短距離は、前記第1サイプ部のタイヤ径方向内側端と、前記第1サイプ部のタイヤ径方向外側端との最短距離と同一であってもよい。
本発明の一態様において、前記第2屈曲部分の数は、前記第1屈曲部分の数よりも多くてもよい。
本発明の一態様において、前記第2サイプ部は、前記サイプの延在方向視において、前記サイプの延在方向視において、ジグザグ状に屈曲するとともに、前記第2サイプ中心線を基準とした所定方向における一方への前記第2サイプ部の振幅は、前記第2サイプ中心線を基準とした所定方向における他方への前記第2サイプ部の振幅と同一であってもよい。
本発明の一態様は、所定方向に延びるサイプがトレッド部の踏面に形成されたタイヤであって、トレッド面視において、前記サイプは、前記所定方向に直線状に延びる第1直線サイプ部と、前記所定方向に直線状に延びる第2直線サイプ部と、前記第1直線サイプ部と前記第2直線サイプ部との間に形成され、前記所定方向に交差する交差方向に凸となる凸状部とを含み、前記凸状部は、直線状に延びる直線部分と、前記直線部分の一端と、前記第1直線サイプ部の一端とに連なり、前記直線部分の一端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第1傾斜部分と、前記直線部分の他端と、前記第2直線サイプ部の一端とに連なり、前記直線部分の他端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第2傾斜部分とを有し、前記凸状部の前記所定方向に占める寸法である周期は、前記サイプの前記トレッド部の踏面から前記サイプの底までの長さであるサイプ深さの0.8倍以上、2.0倍以下である。
本発明の一態様において、トレッド面視において、前記凸状部の前記交差方向に占める寸法である振幅は、前記サイプ深さの0.25倍以上、1.20倍以下であってもよい。
本発明の一態様において、トレッド面視において、前記直線部分の長さは、前記サイプ深さの0.20倍以上、0.35倍以下であってもよい。
本発明の一態様において、トレッド面視において、前記直線部分の長さは、前記第1傾斜部分または前記第2傾斜部分の長さの少なくとも何れかの長さの0.5倍以上、0.8倍以下であってもよい。
本発明の一態様において、トレッド面視において、前記直線部分と前記第1傾斜部分または前記第2傾斜部分の何れかとが成す角度は、90度以上、150度以下であってもよい。
本発明の一態様において、トレッド面視において、前記凸状部は、前記交差方向における一方側にのみに凸となってもよい。
本発明の一態様は、トレッド部の踏面に所定方向に延びるサイプを成形するブレードが設けられた成形モールドを備えるタイヤモールドであって、前記ブレードは、前記所定方向に直線状に延びる第1直線部と、前記所定方向に直線状に延びる第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部の間に形成され、前記所定方向に交差する交差に凸となる凸状部とを有し、前記凸状部は、タイヤ幅方向に直線状に延びる直線部分と、前記直線部分の一端と、前記第1直線部の一端とに連なり、前記直線部分の一端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第1傾斜部分と、前記直線部分の他端と、前記第2直線部の一端とに連なり、前記直線部分の他端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第2傾斜部分とを有し、前記第1傾斜部分または前記第2傾斜部分の少なくとも何れかには、前記ブレードの厚み方向に貫通した貫通孔が形成されている。
本発明の一態様において、前記貫通孔は、前記ブレードの前記第1傾斜部分または前記第2傾斜部分の延在方向における中央に形成されていてもよい。
本発明の一態様において、前記貫通孔は、前記ブレードの前記成形モールド寄りの基端部に形成されていてもよい。
本発明の一態様は、所定方向に延びるサイプがトレッド部の踏面に形成されたタイヤであって、トレッド面視において、前記サイプは、前記所定方向に直線状に延びる第1直線サイプ部と、前記所定方向に直線状に延びる第2直線サイプ部と、前記第1直線サイプ部と前記第2直線サイプ部との間に形成され、前記所定方向に交差する交差方向に凸となる凸状部とを含み、前記凸状部は、前記所定方向に直線状に延びる直線部分と、前記直線部分の一端と、前記第1直線サイプ部の一端とに連なり、前記直線部分の一端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第1傾斜部分と、前記直線部分の他端と、前記第2直線サイプ部の一端とに連なり、前記直線部分の他端よりも前記所定方向の外側に広がるように傾斜する第2傾斜部分とを有し、前記第1傾斜部分及び前記第2傾斜部分を形成する前記トレッド部の側壁には、互いに対向する突起が設けられている。
本発明の一態様において、前記突起は、前記第1傾斜部分または前記第2傾斜部分の延在方向における中央に設けられてもよい。
本発明の一態様において、前記突起は、前記トレッド部の踏面寄りに設けられてもよい。
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。