JP2017193197A - 操舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本来の機能を制限する状況の発生を減少させること。【解決手段】操舵ECUは、ユーザーのステアリングの操作を補助するように転舵輪を転舵させるものである。操舵ECUは、モータの駆動を制御するマイコンと、内部温度Tmpjを検出する内部温度検出部と、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1よりも大きい且つ閾温度Tmp2以下の場合、内部温度Tmpjの上昇を抑制するためにECU過熱前フェールを設定するとともに、内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きい場合、内部温度Tmpjの低下を促すようにECU過熱フェールを設定する過熱状態検出部とを備えるようにしている。【選択図】図4

Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
例えば、特許文献1には、モータの駆動を制御して操舵機構にアシストトルクを付与することによって、ユーザーのステアリングの操作を補助する操舵制御装置を備えている電動パワーステアリング装置が開示されている。特許文献1に記載の操舵制御装置では、モータ過熱や、コントローラ(ECU)過熱や、電源等の故障を含む異常を検出した場合、ステアリングの操作を補助する際に操舵機構に付与するアシストトルクの上限を漸減させて制限するようにしている。
特開2008−6997号公報
特許文献1に記載の操舵制御装置では、例えば、上記異常のうちコントローラ(ECU)過熱を検出した場合、アシストトルクの制限、すなわち本来の機能を制限することによってコントローラ(ECU)の温度低下を促し、上記異常からの復帰が可能になる。ただし、上記異常が検出されなければアシストトルクの制限がされず、コントローラ(ECU)の温度の上昇が抑えられないことから、一旦、上記異常が検出されると本来の機能を制限する状況が長引く可能性があった。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、本来の機能を制限する状況の発生を減少させられる操舵制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する操舵制御装置は、ステアリングの操作に応じて転舵輪を転舵させるものである。この操舵制御装置は、転舵輪を転舵させる力である転舵力を付与するようにモータの制御量を制御する転舵処理部と、操舵制御装置内の温度である内部温度を検出する内部温度検出部と、操舵制御装置が動作可能な温度範囲内に、第1の閾温度と、当該第1の閾温度よりも高い温度である第2の閾温度を含む複数の閾温度を設定し、内部温度検出部で検出される内部温度と、複数の閾温度との関係を判定する温度判定部と、温度判定部の判定結果に基づいて、内部温度が第1の閾温度よりも大きい且つ第2の閾温度以下の場合、内部温度が第1の閾温度以下の場合と比較して、操舵制御装置の消費電力を低減する状態である消費電力低減状態を設定するとともに、内部温度が第2の閾温度よりも大きい場合、内部温度が前記第2の閾温度以下の場合と比較して、転舵処理部におけるモータの制御量の上限を制限する状態である制御量制限状態を設定する状態設定部とを備えるようにしている。
上記構成によれば、内部温度が第2の閾温度よりも大きい場合、制御量制限状態が設定されるが、当該制御量制限状態の設定に先立ち、消費電力低減状態が設定される。消費電力低減状態の設定中は、操舵制御装置の消費電力が低減されることによって、内部温度の上昇を抑制することができる。これにより、内部温度が上昇していく場合、消費電力低減状態において、内部温度の上昇を一旦抑えることができ、制御量制限状態が設定されるまでの間を延命させることができる。この場合、例えば、消費電力低減状態の設定中において、内部温度が第1の閾温度以下まで低下すれば、制御量制限状態の設定が回避される。したがって、制御量制限状態を設定され難くすることができ、操舵制御装置の本来の機能を制限する状況の発生を減少させることができる。
具体的に、上記状態設定部は、制御量制限状態を設定する場合、転舵処理部におけるモータの制御を停止させるものである。
上記構成において、制御量制限状態の設定中は、モータによって転舵力が付与されなくなるので、操舵制御装置の本来の機能が発揮されない状態である。その点、上記構成によれば、制御量制限状態の設定に先立ち、消費電力低減状態が設定されることによって、操舵制御装置の本来の機能が発揮されない状態が設定されるまでの間を延命させることができる。したがって、操舵制御装置の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
なお、操舵制御装置の内部温度は、周囲の温度として、例えば、モータの温度の影響も受けると考えられる。そのため、モータの温度の上昇を抑制することは、操舵制御装置の内部温度の上昇の抑制に対して有効である。
そこで、上記操舵制御装置において、状態設定部は、消費電力低減状態を設定する場合、転舵処理部におけるモータの制御量の上限を制限することによって、操舵制御装置の消費電力を低減するものであることが望ましい。
上記構成によれば、消費電力低減状態の設定中は、モータの制御量の上限を制限することによって、モータの温度の上昇が抑制されるようになる。これにより、消費電力低減状態の設定中は、操舵制御装置内から内部温度の上昇が抑制されるとともに、操舵制御装置の周囲からも内部温度の上昇が抑制され、制御量制限状態が設定されるまでの間をより好適に延命させることができる。また、この延命される間においても、操舵制御装置の本来の機能のうちいくらかの機能を発揮させることができる。したがって、消費電力低減状態の構成を有していない場合と比較して、操舵制御装置の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
なお、上記操舵制御装置は、転舵処理部が動作に必要な電力を供給するように制御する電力供給制御部をさらに備えている場合、当該電力供給制御部の機能が内部温度を上昇させる要因の一つとなる。このような構成であれば、上記状態設定部は、消費電力低減状態を設定する場合、電力供給制御部における機能の一部を停止させることによって、操舵制御装置の消費電力を低減するものであることが望ましい。
上記構成によれば、消費電力低減状態の設定中は、電力供給制御部の機能の一部を停止させることによって、電力供給制御部の温度の上昇が抑制されるようになる。これにより、消費電力低減状態の設定中は、操舵制御装置内から内部温度の上昇が好適に抑制され、制御量制限状態が設定されるまでの間をより好適に延命させることができる。また、この延命される間においても、操舵制御装置の本来の機能のうちいくらかの機能を発揮させることができる。したがって、消費電力低減状態の構成を有していない場合と比較して、操舵制御装置の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
また、上記構成では、消費電力低減状態において、電力供給制御部における機能の一部を停止させるとともに、転舵処理部におけるモータの制御量の上限を制限することによって、操舵制御装置の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生をより好適に減少させることができる。
具体的に、上記電力供給制御部は、転舵処理部が前記モータの駆動を制御するために必要な情報として入力される外部情報を、転舵処理部に対して出力する機能を合わせ持つものであり、状態設定部は、電力供給制御部の機能の一部として、外部情報のうち冗長化されている外部情報の処理に関わる機能を停止させるものである。
上記構成によれば、消費電力低減状態において停止させる電力供給制御部の機能として、外部情報の冗長化のために有している機能を選択するようにしている。この外部情報の冗長化のために有している機能は、停止させてもモータの駆動の制御の継続が可能になる機能と言える。これにより、操舵制御装置の本来の機能を制限する状況の発生を減少させるために、電力供給制御部の機能の一部を停止させるとしても、モータの機能の制御に与える影響を小さくすることができる。
本発明によれば、本来の機能を制限する状況の発生を減少させることができる。
電動パワーステアリング装置についてその概略を示す図。 電動パワーステアリング装置についてその電気的構成を示すブロック図。 操舵ECUについてその電源ICの構成を示すブロック図。 第1実施形態における内部温度と制御状態との関係を示す図。 内部温度と電流指令値の上限値との関係を示す図。 第2実施形態における内部温度と制限状態との関係を示す図。
(第1実施形態)
以下、操舵制御装置の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、例えば、車両には、操舵機構2に対して転舵輪15を転舵させる転舵力としてアシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という)1が搭載されている。EPS1は、ユーザーのステアリングの操作に応じてアシストトルクを付与し、ユーザーのステアリングの操作を補助する。
EPS1は、ユーザーのステアリングホイール10の操作に基づき転舵輪15を転舵させる操舵機構2、及びユーザーのステアリングの操作を補助するアシスト機構3を備えている。
操舵機構2は、ステアリングホイール10と、ステアリングホイール10に連動して回転するステアリングシャフト11とを備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ピニオンシャフト11cの下端部は、ラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12に連結されている。したがって、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト11c及びラックシャフト12からなるラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12の軸方向(図1の左右方向)の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラックシャフト12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド14を介して、左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪15の転舵角が変化する。
アシスト機構3は、アシストトルクの発生源であるモータ20を備えている。例えば、モータ20は、3相(U,V,W)の駆動電力に基づき回転する3相ブラシレスモータである。モータ20の回転軸21は、減速機構22を介してコラムシャフト11aに連結されている。アシスト機構3は、モータ20の回転軸21の回転力を減速機構22を介して、ラックシャフト12を軸方向に往復直線運動させる力に変換する。このラックシャフト12に付与される軸方向の力がアシスト力となり、ユーザーのステアリングの操作を補助する。
モータ20には、モータ20の駆動を制御する操舵ECU30が接続されている。操舵ECU30は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果である外部情報に基づき、モータ20の駆動を制御する。各種のセンサとしては、例えば、トルクセンサ40、回転角センサ41、及び車速センサ42がある。トルクセンサ40はコラムシャフト11aに設けられ、回転角センサ41はモータ20に設けられている。トルクセンサ40は、ユーザーのステアリングの操作によりステアリングシャフト11に加えられる負荷である操舵トルクの大きさ及び向きを示す値であるトルク値Th0a,Th0bを検出する。なお、トルクセンサ40は、ホール素子等の2つの磁気センサから第1トルク値Th0aと第2トルク値Th0bの各デジタル値を出力する。これら2つの磁気センサは、同一構成をなしており、これらが共に正常な場合、略同一のデジタル値を出力するものである。すなわち、トルクセンサ40の検出結果は冗長化された外部情報である。回転角センサ41は、モータ20の回転軸21のモータ角度θmを検出する。車速センサ42は、車両の走行速度である車速値Vを検出する。操舵ECU30は、各センサの出力に基づき目標のアシストトルクを設定し、実際のアシストトルクが目標のアシストトルクとなるように、モータ20に供給される電流を制御する。
また、操舵ECU30には、車両に搭載されるバッテリ16が接続されている。バッテリ16は、各種のセンサ等にも接続されている。
次に、操舵ECU30の電気的構成について説明する。
図2に示すように、操舵ECU30は、PWM信号等のモータ制御信号Smを生成するマイコン(マイクロコンピュータ)31と、そのモータ制御信号Smに基づきモータ20に駆動電力として電流を供給する駆動回路32とを備えている。また、操舵ECU30は、マイコン31が動作に必要な電力(+5V)を供給する電源IC33を備えている。電源IC33は、マイコン31が動作に必要な電力を供給する機能の他、各種のセンサのうちトルクセンサ40の検出結果を取得し、マイコン31に対して出力する機能を有するカスタムIC、所謂、ASIC(エーシック)である。
マイコン31は、トルクセンサ40から電源IC33を介して得られる各トルク値Tha,Thb及び車速センサ42から得られる車速値Vに基づいて、モータ20に発生させるべきアシストトルクに対応したアシスト成分であるアシスト指令値を演算する。また、マイコン31は、アシスト指令値に基づいて、モータ20の制御量である電流値を指示する電流指令値I*を演算する。そして、マイコン31は、駆動回路32とアシスト機構3との間の給電経路に設けられた電流センサ34により検出される実電流値Iと、回転角センサ41により検出されるモータ角度θmとに基づいて、電流指令値I*に実電流値Iを追従させるように電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号Smを生成する。その後、マイコン31は、生成したモータ制御信号Smを駆動回路32に対して出力する。なお、マイコン31は転舵処理部の一例である。
また、マイコン31は、後述の過熱状態検出部54によって検出される操舵ECU30内のECU過熱の状態に応じて、電流指令値I*の上限値Imaxを変動させるように構成されている。具体的に、マイコン31は、操舵ECU30の内部温度Tmpjに基づいて、電流指令値I*の上限値Imaxを制限しない通常モード、電流指令値I*の上限値Imaxを通常モードと比較して低く制限する制限モード、及び電流指令値I*の上限値Imaxを零とし、モータ20の駆動の制御を停止する停止モードの何れかでの制御を実行する。
通常モードは、ユーザーのステアリングの操作を補助する操舵ECU30の本来の機能を発揮するモードである。制限モードでは、通常モードに対して、電流指令値I*の上限値Imaxを約半分(2分の1)に制限することによって、モータ20の駆動の制御に関わる消費電力が通常モードと比較して低減される。制限モードは、ユーザーのステアリングの操作を補助する操舵ECU30の本来の機能のうちいくらかの機能しか発揮されないように制限されるモードである。また、停止モードでは、電流指令値I*の上限値Imaxを零に制限し、モータ20の駆動の制御自体を停止することによって、モータ20の駆動の制御に関わる消費電力が通常モード及び制限モードと比較して低減される。なお、停止モードは、ユーザーのステアリングの操作を補助する操舵ECU30の本来の機能が発揮されないモードである。本実施形態において、モータ20の駆動の制御に関わる消費電力は、操舵ECU30の消費電力を意味する。
ここで、電源IC33の機能について説明する。
図3に示すように、電源IC33は、バッテリ16(+12V)から供給される電力を昇降圧し、マイコン31が動作に必要な電力として定電圧(+5V)を供給する機能を有する電源回路50を備えている。また、電源IC33は、トルクセンサ40から第1トルク値Th0aを取得する第1トルク信号処理部51と、トルクセンサ40から第2トルク値Th0bを取得する第2トルク信号処理部52とを備えている。また、電源IC33は、操舵ECU30内の内部温度Tmpjを検出する内部温度検出部53と、その内部温度Tmpjに基づき操舵ECU30の過熱状態を検出する過熱状態検出部54とを備えている。また、電源IC33は、マイコン31との間において、SPI通信等のシリアル通信を可能にする通信インターフェース(以下、「I/F」という)55を備えている。本実施形態において、電源IC33は電力供給制御部の一例である。
第1トルク信号処理部51は、第1トルク値Th0aを取得すると、当該第1トルク値Th0aを補正処理し、補正処理後の第1トルク値ThaをI/F55に対して出力する。同じく第2トルク信号処理部52は、第2トルク値Th0bを取得すると、当該第2トルク値Th0bを補正処理、補正処理後の第2トルク値ThbをI/F55に対して出力する。各トルク値Tha,Thbは、所定のタイミングでI/F55を介してマイコン31に対して出力される。なお、各トルク信号処理部51,52には、バッテリ16が接続されており、トルクセンサ40やI/F55(マイコン31)との通信や補正処理に必要な電力が供給される。
内部温度検出部53は、内部温度Tmpjとして、電源IC33の発熱量及び周囲温度を検出し、これらの検出結果に基づいて、電源IC33のジャンクション温度を検出する。なお、発熱量は図示しない電源IC33の放熱板から検出され、周囲温度は電源IC33の周囲の空気層に配置した熱電対から検出される。内部温度Tmpjは、予め演算される電源IC33全体の熱抵抗に上記発熱量を乗算して得られる温度上昇に対して、上記周囲温度を加算して得られる。そして、内部温度検出部53は、内部温度Tmpjの検出結果を過熱状態検出部54に対して出力する。
過熱状態検出部54は、内部温度検出部53から得られる内部温度Tmpjに基づいて、操舵ECU30内のECU過熱の状態を検出する。また、過熱状態検出部54は、ECU過熱の状態を、操舵ECU30内に過熱異常が生じていない状態として、正常状態及びECU過熱前状態の2種類の状態を検出し、操舵ECU30内に過熱異常が生じている状態として、ECU過熱状態を検出する。そして、過熱状態検出部54は、ECU過熱の状態の検出結果をECU過熱FLGとしてI/F55に対して出力する。ECU過熱FLGは、所定のタイミングでI/F55を介してマイコン31に対して出力される。なお、ECU過熱FLGは、正常状態の検出時に出力されず、ECU過熱前状態の検出時に「1」が出力され、ECU過熱状態の検出時に「2」が出力される。本実施形態において、過熱状態検出部54は温度判定部及び制限状態設定部の一例である。
過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjに対して、図4に示すようなECU過熱の状態を対応付けている。過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きく、操舵ECU30が動作不能な温度範囲である場合に、ECU過熱状態を検出する。閾温度Tmp2は、電源IC33によるマイコン31への電力の供給が遮断され、マイコン31(操舵ECU30)の動作が停止する温度であり、電源IC33の絶対最大定格に規定される温度の上限温度に設定される。本実施形態において、閾温度Tmp2は第2の閾温度の一例である。
また、過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp2以下で、操舵ECU30が動作可能な温度範囲であって、当該温度範囲のなかでも閾温度Tmp1よりも大きい比較的高温の温度範囲である場合に、ECU過熱前状態を検出する。閾温度Tmp1は、電源IC33によるマイコン31への電力の供給が可能で、マイコン31(操舵ECU30)の動作が保証される温度であり、操舵ECU30の性能を高く引き出すことのできる推奨周囲温度に対応する温度の上限温度Tmp0よりも高い温度に設定される。本実施形態において、閾温度Tmp1は、絶対最大定格に規定される温度の上限温度と推奨周囲温度に対応する温度の上限温度の中間の温度に設定されている。例えば、閾温度Tmp1は、電源IC33の絶対最大定格に規定される温度の上限温度が175℃、推奨周囲温度に対応する温度の上限温度が125℃の場合、150℃に設定される。本実施形態において、閾温度Tmp1は第1の閾温度の一例である。
また、過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1以下で、操舵ECU30が動作可能な温度範囲である場合に、正常状態を検出する。閾温度Tmp1以下の温度は、推奨周囲温度に対応する温度の上限温度Tmp0以下において、操舵ECU30の特性を高く引き出すことのできる範囲の温度である。
そして、図4に示すように、過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1以下であって、正常状態を検出する場合、ECU過熱FLGを出力しない。この正常状態では、電源回路50がマイコン31への電力の供給を維持する。この場合、マイコン31は、ECU過熱前状態の状況を判断するまでの間、モータ20の駆動の制御を電流指令値I*の上限値Imaxを制限しない通常モードでの制御を実行する。
また、同図に示すように、過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1よりも大きい且つ閾温度Tmp2以下であって、ECU過熱前状態を検出する場合、その旨を示す「1」のECU過熱FLGを出力し、内部温度Tmpjの上昇を抑制するためにECU過熱前フェールを作動させるように設定する。このECU過熱前フェールでは、過熱状態検出部54の検出結果に基づいて、電源回路50がマイコン31への電力の供給を維持する。この場合、マイコン31は、過熱状態検出部54からI/F55を介して得られるECU過熱FLGに基づいて、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1を超えて閾温度Tmp2に近付いている、すなわち過熱異常が生じる可能性がある旨を判断する。これ以後、マイコン31は、ECU過熱前状態が継続される間、モータ20の駆動の制御を電流指令値I*の上限値Imaxを制限する制限モードでの制御を実行する。本実施形態において、ECU過熱前フェールは消費電力低減状態の一例である。
また、同図に示すように、過熱状態検出部54は、内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きく、ECU過熱状態を検出する場合、その旨を示す「2」のECU過熱FLGを出力し、内部温度Tmpjの低下を促すためにECU過熱フェールを作動させるように設定する。このECU過熱フェールでは、過熱状態検出部54の検出結果に基づいて、電源回路50がマイコン31への電力供給路を遮断する。この場合、マイコン31は、過熱状態検出部54からI/F55を介して得られるECU過熱FLGに基づいて、過熱異常が生じている旨を判断する。これ以後、マイコン31は、過熱状態が解消されるまでの間、モータ20の駆動の制御を停止する停止モードでの制御を実行することになる。本実施形態において、ECU過熱フェールは制御量制限状態の一例である。
以上に説明した本実施形態によれば、以下に示す作用及び効果を奏する。
(1)内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きく、操舵ECU30内で過熱異常が生じていることを判断できる場合、ECU過熱フェール(マイコン31の停止モード)が設定されるが、当該ECU過熱フェールの設定に先立ち、ECU過熱前フェール(マイコン31の制限モード)が設定される。ECU過熱前フェールの設定中は、操舵ECU30の消費電力が低減されることによって、内部温度Tmpjの上昇を抑制することができる。
例えば、ECU過熱前状態を設定する構成を有していない場合(以下、「比較例」という)には、時間tに対して、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1よりも大きくなった後、内部温度Tmpjの上昇が抑制されないので、図5の一点鎖線で示すような上昇し続ける内部温度Tmpjの変化を生じる。これに対し、本実施形態では、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1よりも大きくなった後、内部温度Tmpjの上昇が抑制されるので、同図の実線X1,X2,X3で示すような比較例と比較して緩やかに上昇する内部温度Tmpjの変化を生じる。
その後においては、同図の実線X1で示すような比較例と同様の勾配を有して上昇する内部温度Tmpjの変化を生じる場合、比較例における内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きくなるタイミングt0に対して、遅れたタイミングt1で内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きくなる。また、同図の実線X2で示すような比較例と比較して緩やかに上昇し続ける内部温度Tmpjの変化を生じる場合、実線X1における内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きくなるタイミングt1に対して、遅れたタイミングt2で内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きくなる。
このように、内部温度Tmpjが上昇していく場合、ECU過熱前フェールにおいて、内部温度Tmpjの上昇を一旦抑えることができ、ECU過熱フェールが設定されるまでの間を延命させることができる。
図5の場合、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1よりも大きくなった後、実線X3で示すような低下する内部温度Tmpjの変化を生じる場合、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1以下まで低下すれば、ECU過熱フェールの設定が回避される。この実線X3の場合、内部温度Tmpjが閾温度Tmp1以下まで低下した後、再び上昇する内部温度Tmpjの変化を生じたとしても、内部温度Tmpjが閾温度Tmp2よりも大きくなるタイミングは、上記タイミングt0,t1,t2の何れよりも遅れることとなる。
したがって、ECU過熱フェール(マイコン31の停止モード)を設定され難くすることができ、操舵ECU30の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
(2)内部温度Tmpjは、周囲の温度として、モータ20の温度の影響も受けると考えられる。そのため、モータ20の温度の上昇を抑制することは、内部温度Tmpjの上昇の抑制に対して有効である。
すなわち、本実施形態のようにECU過熱前フェールの設定中は、モータ20の電流指令値I*の上限値Imaxを制限することによって、モータ20の温度の上昇が抑制されるようになる。これにより、ECU過熱前フェールの設定中は、操舵ECU30内から内部温度Tmpjの上昇が抑制されるとともに、操舵ECU30の周囲からも内部温度Tmpjの上昇が抑制され、ECU過熱フェールが設定されるまでの間をより好適に延命させることができる。また、この延命される間において、操舵ECU30の本来の機能のうちいくらかの機能を発揮させることができる。したがって、ECU過熱前フェールの構成を有していない上記比較例と比較して、操舵ECU30の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
(第2実施形態)
次に、操舵制御装置の第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成などは、同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態のECU過熱前フェールでは、上記第1実施形態と同様の内容に加えて、電源IC33の機能の一部として、各トルク信号処理部51,52のうち第2トルク信号処理部52の機能(トルク値の入力及び出力(補正処理))を停止させる。第2トルク信号処理部52の機能を停止させる場合、例えば、当該第2トルク信号処理部52への電力供給路が遮断されるようにする。この場合、第2トルク信号処理部52への電力供給路の遮断は、電源回路50、各トルク信号処理部51,52、及び過熱状態検出部54の何れかが実行してもよい。これ以後、マイコン31は、電源IC33から得られる各トルク値Tha,Thbのうち第1トルク値Thaのみを用いて、アシスト指令値の演算等、モータ20の駆動の制御を実行する。なお、本実施形態のECU過熱フェールでは、上記第1実施形態と同様の内容に加えて、第2トルク信号処理部52の機能を停止させた状態が維持される。
以上に説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を得ることができる。
(3)操舵ECU30は、マイコン31が動作に必要な電力の供給を制御するものであって、電源IC33を備えている場合、当該電源IC33の機能が内部温度Tmpjを上昇させる要因の一つとなる。本実施形態であれば、過熱状態検出部54は、ECU過熱前フェールを設定する場合、電源IC33における機能の一部として、第2トルク信号処理部52の機能を停止させることによって、操舵ECU30の消費電力を低減することができる。
なお、各トルク信号処理部51,52には、バッテリ16が接続されており、トルクセンサ40やI/F55(マイコン31)との通信や補正処理に必要な電力が供給されている。このトルクセンサ40やI/F55(マイコン31)との通信や補正処理は、例えば、制御周期毎等、常時実行されるものであるので、電源IC33の機能のうち消費電力が多い機能と言うことができる。そのため、第2トルク信号処理部52の機能を停止させることは、内部温度Tmpjの上昇の抑制に対して有効である。
そして、本実施形態では、ECU過熱前フェールにおいて、電源IC33における第2トルク信号処理部52の機能を停止させるとともに、マイコン31におけるモータ20の電流指令値I*の上限値Imaxを制限することによって、操舵ECU30の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
(4)ECU過熱前フェールにおいて停止させる電源IC33の機能として、トルクセンサ40の検出結果の冗長化のために設けられている第2トルク信号処理部52の機能を選択するようにした。このトルクセンサ40の検出結果の冗長化のために有している第2トルク信号処理部52の機能は、停止させてもモータ20の駆動の制御の継続が可能になる機能と言える。これにより、操舵ECU30の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させるために、ECU過熱前フェールにおいて、第2トルク信号処理部52の機能を停止させるとしても、モータ20の駆動の制御への影響を小さくすることができる。
なお、上記各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第2実施形態では、トルクセンサ40の検出結果の他、各種のセンサの検出結果として冗長化している外部情報を有している場合、当該外部情報の冗長化のために設けられる機能を、ECU過熱前フェールにおいて停止させるようにしてもよい。この場合、第2トルク信号処理部52の機能とともに停止させるようにしてもよい。
・第2実施形態では、ECU過熱前フェールにおいて第2トルク信号処理部52の機能の替わりに、例えば、第1トルク信号処理部51の機能等、他の機能を停止させてもよい。ただし、停止させることのできる機能は、停止させてもモータ20の駆動の制御を継続可能なものに限られる。
・第2実施形態において、ECU過熱前フェールでは、マイコン31におけるモータ20の電流指令値I*の上限値Imaxを制限しないようにすることもできる。この場合であっても、ECU過熱前フェールの設定中は、電源IC33の機能の一部を停止させているので、内部温度Tmpjの上昇が抑制されるようになる。これにより、ECU過熱前フェールの設定中は、操舵ECU30内から内部温度Tmpjの上昇が好適に抑制され、ECU過熱フェールが設定されるまでの間をより好適に延命させることができる。また、この延命される間においても、操舵ECU30の本来の機能のうちいくらかの機能を発揮させることができる。したがって、上記比較例と比較して、操舵ECU30の本来の機能が発揮されなくなる状況の発生を減少させることができる。
・内部温度検出部53は、操舵ECU30内であれば電源IC33の外部に設けられていてもよい。これは、過熱状態検出部54についても同様である。
・ECU過熱前フェールでは、マイコン31におけるモータ20の電流指令値I*の上限値Imaxを、内部温度Tmpjが上昇するにつれて漸減やステップ状に減少させる態様で制限してもよい。
・ECU過熱前フェールでは、マイコン31について、クロック数を低下させたり、間欠動作させたりして、当該マイコン31自体の機能を制限することによって、操舵ECU30の消費電力を低減するようにしてもよい。
・ECU過熱フェールでは、ECU過熱前フェールと比較して、マイコン31におけるモータ20の電流指令値I*の上限値Imaxを制限するように構成されていればよい。
・ECU過熱の状態は、内部温度として、ジャンクション温度の替わりに、周囲温度のみを用いて検出されるようにしてもよい。この場合、各閾温度Tmp1,Tmp2は、周囲温度に対応する温度に変更して設定されていればよい。
・閾温度Tmp1と閾温度Tmp2の間において、さらに閾温度を追加することもできる。また、推奨周囲温度に対応する温度の上限温度Tmp0と閾温度Tmp1の間において、さらに閾温度を追加することもできる。これらの場合、内部温度Tmpjが減少するにつれてフェールの制限を緩く設定すればよい。フェールの制限とは、第1実施形態ではモータ20の電流指令値I*の上限値Imaxの高低のことであり、第2実施形態では電源IC33の停止させる機能のことである。
・各実施形態では、EPS1をステアリングシャフト11にアシストトルクを付与するコラム型で具体化したが、ラック(アシスト)型に適用してもよい。この場合、例えば、トルクセンサ40がピニオンシャフト11cに設けられている。
・各実施形態は、EPS1に具体化したが、これに限られない。例えば、ステアバイワイヤ(SBW)方式のステアリング装置に適用してもよい。
1…EPS(電動パワーステアリング装置)、2…操舵機構、3…アシスト機構、10…ステアリングホイール、11…ステアリングシャフト、11c…ピニオンシャフト、15…転舵輪、20…モータ、30…操舵ECU、31…マイコン、33…電源IC、40…トルクセンサ、50…電源回路、51…第1トルク信号処理部、52…第2トルク信号処理部、53…内部温度検出部、54…過熱状態検出部、Imax…上限値、Tmp1,Tmp2…閾温度、Tmpj…内部温度、Th0a…第1トルク値、Tha…補正処理後の第1トルク値、Th0b…第2トルク値、Thb…補正処理後の第2トルク値。

Claims (5)

  1. ステアリングの操作に応じて転舵輪を転舵させる操舵制御装置において、
    前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を付与するようにモータの制御量を制御する転舵処理部と、
    前記操舵制御装置内の温度である内部温度を検出する内部温度検出部と、
    前記操舵制御装置が動作可能な温度範囲内に、第1の閾温度と、当該第1の閾温度よりも高い温度である第2の閾温度を含む複数の閾温度を設定し、前記内部温度検出部で検出される内部温度と、前記複数の閾温度との関係を判定する温度判定部と、
    前記温度判定部の判定結果に基づいて、前記内部温度が前記第1の閾温度よりも大きい且つ前記第2の閾温度以下の場合、前記内部温度が前記第1の閾温度以下の場合と比較して、前記操舵制御装置の消費電力を低減する状態である消費電力低減状態を設定するとともに、前記内部温度が前記第2の閾温度よりも大きい場合、前記内部温度が前記第2の閾温度以下の場合と比較して、前記転舵処理部における前記モータの制御量の上限を制限する状態である制御量制限状態を設定する状態設定部と、
    を備えていることを特徴とする操舵制御装置。
  2. 前記状態設定部は、前記制御量制限状態を設定する場合、前記転舵処理部における前記モータの制御を停止させるものである請求項1に記載の操舵制御装置。
  3. 前記状態設定部は、前記消費電力低減状態を設定する場合、前記転舵処理部における前記モータの制御量の上限を制限することによって、前記操舵制御装置の消費電力を低減するものである請求項2に記載の操舵制御装置。
  4. 前記転舵処理部が動作に必要な電力を供給するように制御する電力供給制御部をさらに備え、
    前記状態設定部は、前記消費電力低減状態を設定する場合、前記電力供給制御部における機能の一部を停止させることによって、前記操舵制御装置の消費電力を低減するものである請求項2に記載の操舵制御装置。
  5. 前記電力供給制御部は、前記転舵処理部が前記モータの駆動を制御するために必要な情報として入力される外部情報を、前記転舵処理部に対して出力する機能を合わせ持つものであり、
    前記状態設定部は、前記電力供給制御部の機能の一部として、前記外部情報のうち冗長化されている外部情報の処理に関わる機能を停止させるものである請求項4に記載の操舵制御装置。
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