JP2017193158A - 積層体および電子素子 - Google Patents

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政也 岡田
Masaya Okada
政也 岡田
史典 三橋
Fuminori Mihashi
史典 三橋
上野 昌紀
Masanori Ueno
昌紀 上野
泰範 舘野
Yasunori Tateno
泰範 舘野
眞希 末光
Maki Suemitsu
眞希 末光
博一 吹留
Hirokazu Fukitome
博一 吹留
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Abstract

【課題】グラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合に高い移動度を安定して確保することが可能な積層体を提供する。【解決手段】積層体1は、炭化珪素からなり、カーボン面となす角が20°以下である第1主面2Aを有する基板部2と、第1主面2A上に配置され、基板部2を構成する炭化珪素の原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜3と、を備える。グラフェン膜3の基板部2側とは反対側の主面である露出面3Aを平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mm2あたり10個以下である。【選択図】図1

Description

本発明は積層体および電子素子に関し、より特定的にはグラフェン膜を含む積層体および電子素子に関するものである。
グラフェンは、炭素原子がsp混成軌道を形成して平面的に結合した物質である。このような炭素の結合状態に起因して、グラフェンは、極めて高いキャリアの移動度を有するという特徴がある。そのため、たとえばグラフェン膜をトランジスタなどの電子素子のチャネルとして利用することにより、電子素子の高速化が期待される。
グラフェン膜を含む積層体を作製し、当該積層体に電極等を形成することにより、グラフェン膜を導電部(たとえばチャネル)として利用した電子素子を製造することができる。グラフェン膜を含む積層体は、たとえばグラファイトから剥離されたグラフェン薄膜を支持基板に貼り付けることにより、あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)により成長させたグラフェン薄膜を支持基板に貼り付けることにより製造することができる。
電子素子を量産する場合において許容可能な生産効率を確保するためには、上記積層体において直径の大きい(たとえば2インチ以上の直径を有する)支持基板を採用することが好ましい。上述のようなグラフェン膜の貼り付けを含む手順で作製された積層体では、支持基板の表面においてグラフェン膜が存在しない領域が多く含まれる。このような場合、電極形成の位置合わせ等の電子素子の製造プロセスにおいて自動化が妨げられる。その結果、上記積層体を用いた電子素子の量産が難しいという問題が生じる。
これに対し、SiC(炭化珪素)からなる基板を加熱してSi原子を離脱させることで基板の表層部をグラフェンに変換し、基板上にグラフェン膜が形成された積層体を得る方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。これにより、基板の主面においてグラフェン膜が存在しない領域が小さくなる。その結果、当該積層体を用いた電子素子の量産が容易となる。
特開2015−48258号公報
しかしながら、上記SiCからなる基板部上にグラフェン膜が形成された積層体を用いてグラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合、導電部における移動度が期待される値に対して低くなる場合がある。
そこで、グラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合に高い移動度を安定して確保することが可能な積層体および当該積層体を含む電子素子を提供することを目的の1つとする。
本発明に従った積層体は、炭化珪素からなり、カーボン面となす角が20°以下である第1主面を有する基板部と、第1主面上に配置され、基板部を構成する炭化珪素の原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜と、を備える。グラフェン膜の基板部側とは反対側の主面である露出面を平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である。
上記積層体によれば、グラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合に高い移動度を安定して確保することができる。
グラフェン膜を含む積層体の構造を示す概略断面図である。 グラフェン膜の評価方法を説明するための概略図である。 グラフェン膜を含む積層体の製造方法の概略を示すフローチャートである。 積層体の製造方法を説明するための概略断面図である。 加熱装置の構造を示す概略断面図である。 グラフェン膜を含む電界効果トランジスタ(FET)の構造を示す概略断面図である。 グラフェン膜を含む電界効果トランジスタの製造方法の概略を示すフローチャートである。 グラフェン膜を含む電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。 グラフェン膜を含む電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。 グラフェン膜を含む電界効果トランジスタの製造方法を説明するための概略断面図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。本願の積層体は、炭化珪素からなり、カーボン面となす角が20°以下である第1主面を有する基板部と、第1主面上に配置され、基板部を構成する炭化珪素の原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜と、を備える。グラフェン膜の基板部側とは反対側の主面である露出面を平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である。
本発明者らは、SiCからなる基板部上にグラフェン膜が形成された積層体を用いてグラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合において、導電部における移動度が期待される値に対して低くなる原因について検討を行った。その結果、基板部を構成するSiCの原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜においては、部分的にグラフェンの膜厚が大きい領域が存在し、当該領域の存在が移動度に大きく影響していることを見出した。そして、グラフェン膜の膜厚が大きい領域を減少させることにより、具体的にはグラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数を1mmあたり10個以下とすることにより、高い移動度を安定して確保できる。
本願の積層体では、グラフェン膜の露出面を平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である。そのため、当該露出面に電極を形成することにより、高い移動度が安定して確保された電子素子を製造することができる。このように、本願の積層体によれば、グラフェン膜が導電部となる電子素子を製造した場合に高い移動度を安定して確保することが可能な積層体を提供することができる。なお、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数は、1mmあたり3個以下であることが好ましい。
上記積層体において、上記グラフェン膜は、第1主面の80%以上を覆っていてもよい。このようにすることにより、基板部の第1主面においてグラフェン膜が存在しない領域が小さくなる。その結果、上記積層体を用いた電子素子の量産が容易となる。
上記積層体において、グラフェン膜のキャリア移動度は、5000cm/Vs以上であることが好ましく、8000cm/Vs以上であることがより好ましい。このようにすることにより、上記積層体を用いて製造される電子素子の高速化を達成することができる。
上記積層体において、上記基板部は円盤状の形状を有していてもよい。上記基板部の直径は50mm以上であってもよい。このようにすることにより、上記積層体を用いた電子素子の製造の効率化を達成することができる。
本願の電子素子は、上記積層体と、上記露出面上に配置される第1電極と、上記露出面上に第1電極とは離れて配置される第2電極と、を備える。
本願の電子素子においては、第1電極と第2の電極とが、上記本願の積層体の上記露出面上に形成される。そのため、本願の電子素子によれば、導電部における高い移動度を安定して確保することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明にかかる積層体の一実施の形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態における積層体1は、基板部2と、グラフェン膜3とを備えている。基板部2は、炭化珪素(SiC)からなる。基板部2を構成するSiCは、六方晶SiCであって、たとえば6H構造を有する。基板部2は、円盤状の形状を有している。基板部2の直径は2インチ以上(50mm以上)である。基板部2は、第1主面2Aを有する。第1主面2Aは、基板部2を構成するSiCのカーボン面、すなわち(000−1)面となす角が20°以下であるカーボン面側の主面である。より具体的には、本実施の形態において、第1主面2Aは、基板部2を構成するSiCのカーボン面となす角が1°以下であるカーボン面側の主面である。つまり、第1主面2Aは、実質的にカーボン面である。
グラフェン膜3は、基板部2の第1主面2A上に配置される。グラフェン膜3は、基板部2を構成するSiCの原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェンからなる。ここで、グラフェン膜3を構成するグラフェンの原子配列が基板部2を構成するSiCの原子配列に対して配向する状態とは、グラフェンの原子配列がSiCの原子配列に対して一定の関係性を有していることを意味する。グラフェンの原子配列がSiCの原子配列に対して配向しているか否かについては、たとえばLEED(Low Energy Electron Diffraction)法により確認することができる。グラフェン膜3の基板部2側とは反対側の主面である露出面3Aを平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である。
本実施の形態の積層体1では、グラフェン膜3の露出面3Aを平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である。そのため、露出面3Aに電極を形成することにより、高い移動度が安定して確保された電子素子を製造することができる。このように、本実施の形態の積層体1は、グラフェン膜3が導電部となる電子素子を製造した場合に高い移動度を安定して確保することが可能な積層体となっている。
なお、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数は、たとえば以下のように測定領域を設定して確認することができる。図2は、積層体1の露出面3A側の主面における測定領域を示す図である。測定領域19は、グラフェン膜3の全体を評価する観点から、図2に示す9領域とすることができる。具体的には、一辺50μmの正方形形状の測定領域19を9か所に設定する。円形形状を有する積層体1の露出面3A側の主面において、中心で直交する2つの直線を想定し、当該直線上に等間隔となるように測定領域19を設定する。中心に対して対角線の交点が一致する測定領域19を設定し、これを基準として他の8か所の測定領域19を設定する。そして、各測定領域19において、ラマン分光評価および顕微鏡観察することによりグラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数を調査し、1mmあたりの数密度を算出する。
グラフェン膜3は、面積率において基板部2の第1主面2Aの80%以上を覆っていることが好ましく、95%以上を覆っていることがより好ましい。これにより、基板部2の第1主面2Aにおいてグラフェン膜3が存在しない領域が小さくなる。その結果、積層体1を用いた電子素子の量産が容易となる。
また、グラフェン膜3のキャリア移動度は、5000cm/Vs以上であることが好ましく、8000cm/Vs以上であることがより好ましい。このようにすることにより、積層体1を用いて製造される電子素子の高速化を達成することができる。
次に、図3〜図5を参照して、本実施の形態における積層体1の製造方法の概要について説明する。
図3を参照して、本実施の形態における積層体1の製造方法では、まず工程(S10)として基板準備工程が実施される。図4を参照して、この工程(S10)では、たとえば直径2インチ(50.8mm)の6H−SiCからなる基板11が準備される。より具体的には、SiCからなるインゴットをスライスすることにより、SiCからなる基板11が得られる。基板11の表面が研磨された後、洗浄等のプロセスを経て主面の平坦性および清浄性が確保された基板11が得られる。基板11は、第1主面11Aを有する。第1主面11Aは、基板11を構成するSiCのカーボン面、すなわち(000−1)面となす角が1°以下であるカーボン面側の主面である。つまり、第1主面11Aは、実質的にカーボン面である。
次に、工程(S20)として炭化珪素膜形成工程が実施される。図4を参照して、この工程(S20)では、基板11の第1主面11A上に炭化珪素からなるSiC膜12が形成される。具体的には、基板11の第1主面11A上に、たとえばスパッタリングによりSiC膜12が形成される。SiC膜12は、たとえばアモルファスまたは多結晶のSiCからなる。SiC膜12の厚みは、たとえば0.5nm以上5nm以下とすることができる。工程(S20)が実施されることにより、基板11と、基板11の第1主面11A上に形成されたSiC膜12とを含む原料積層体10が得られる。
次に、工程(S30)としてグラフェン化工程が実施される。この工程(S30)は、たとえば図5に示す加熱装置を用いて実施することができる。図5を参照して、加熱装置90は、本体部91と、サセプタ92と、カバー部材93と、気体導入管95と、気体排出管96とを備えている。
本体部91は中空円筒状の形状を有する側壁部91Bと、側壁部91Bの第1の端部を閉塞する底壁部91Aと、側壁部91Bの第2の端部を閉塞する上壁部91Cとを含んでいる。本体部91の内部の底壁部91A上には、サセプタ92が配置されている。サセプタ92は、原料積層体10を保持するための基板保持面92Aを有している。
本体部91の内部には、サセプタ92を覆うためのカバー部材93が配置されている。カバー部材93は、たとえば一対の端部のうち一方の端部が閉塞され、他方の端部が開口する中空円筒状の形状を有している。カバー部材93の他方の端部側が底壁部91Aに接触するように、カバー部材93は配置される。サセプタ92およびサセプタ92上の原料積層体10は、カバー部材93および本体部91の底壁部91Aにより取り囲まれる。カバー部材93および本体部91の底壁部91Aにより取り囲まれる空間である閉塞空間93C内に、サセプタ92およびサセプタ92上の原料積層体10が配置される。カバー部材93の内壁面93Aと、原料積層体10のSiC膜12の基板11とは反対側の主面12Aとが対向する(図4参照)。
気体導入管95および気体排出管96は、本体部91の上壁部91Cに接続されている。気体導入管95および気体排出管96は、上壁部91Cに形成された貫通孔に一方の端部において接続されている。気体導入管95の他方の端部は、不活性ガスを保持するガス保持部(図示しない)に接続されている。本実施の形態では、ガス保持部にはアルゴンが保持されている。気体排出管96の他方の端部は、ポンプなどの排気装置(図示しない)に接続されている。
工程(S30)は、加熱装置90を用いて以下のように実施することができる。まず、サセプタ92の基板保持面92Aに、工程(S20)において準備された原料積層体10が配置される。次に、サセプタ92および原料積層体10を覆うように、カバー部材93が底壁部91A上に配置される。これにより、サセプタ92およびサセプタ92上の原料積層体10は、カバー部材93および本体部91の底壁部91Aにより取り囲まれる。
次に、気体導入管95に設置されたバルブ(図示しない)が閉の状態で気体排出管96に設置されたバルブが開の状態とされる。そして、気体排出管96に接続された排気装置が作動することにより、本体部91の内部の気体が矢印Bに沿って気体排出管96から排出される。これにより、本体部91の内部が減圧される。ここで、サセプタ92および原料積層体10は、カバー部材93および本体部91の底壁部91Aにより取り囲まれているものの、カバー部材93と底壁部91Aとは接合されているわけではない。そのため、本体部91内の減圧が進行すると、閉塞空間93Cの内部と外部との圧力差によりカバー部材93と底壁部91Aとのわずかな隙間から内部の気体が排出される。その結果、閉塞空間93C内も減圧される。
次に、排気装置の動作が停止されるとともに、気体導入管95に設置されたバルブが開の状態とされる。これにより、ガス保持部に保持されているアルゴンが、気体導入管95を通して本体部91の内部に導入される(矢印A)。ここで、本体部91内の圧力が上昇すると、閉塞空間93Cの内部と外部との圧力差によりカバー部材93と底壁部91Aとのわずかな隙間から内部にアルゴンが侵入する。このようにして、本体部91の内部の気体が、アルゴンにより置換される。本体部91の内部のアルゴンの圧力が常圧(大気圧)にまで上昇すると、余剰のアルゴンが気体排出管96から排出されることにより、内部の圧力が常圧に維持される。すなわち、本体部91の内部が、常圧のアルゴン雰囲気に維持される。
次に、原料積層体10が加熱される。原料積層体10は、たとえば本体部91が加熱されることにより加熱される。本体部91は、たとえば誘導加熱により加熱されてもよい。原料積層体10は、たとえば常圧のアルゴン中において1300℃以上1800℃以下の温度に加熱される。これにより、図4を参照して、SiC膜12を構成するSiCからSi原子が離脱し、基板11とは反対側の主面12Aを含む領域であるSiC膜12の表層部がグラフェンに変換される。一方、SiC膜12の基板11側の主面12Bは基板11に接触している。そのため、上記加熱によって、主面12Bを含む領域の原子配列は、基板11を構成するSiCの原子配列に対して配向する。その結果、SiC膜12が変換されて生成するグラフェンの原子配列は、基板11を構成するSiCの原子配列に対して配向する。このようにして、図1を参照して、SiCからなる基板部2と、基板部2の第1主面2A上に配置され、基板部2を構成するSiCの原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜3とを含む積層体1が得られる。
以上の手順により、本実施の形態における積層体1が完成する。上述のように、本実施の形態においてはカバー部材93が採用される。そのため、SiC膜12から離脱したSi原子は閉塞空間93C内に滞留する。その結果、SiC膜12からのSiの離脱により、閉塞空間93C内のSiの蒸気圧が上昇する。これにより、SiCのグラフェンへの急速な変換が抑制される。このようにグラフェンへの変換速度が抑制されることにより、1原子層、または原子層数の少ない(1原子層に近い)グラフェン膜3が形成される。
また、移動度の低下に影響するグラフェンの膜厚が大きい領域は、基板11の表面の欠陥や基板作製時のダメージが存在する領域に対応して形成される。これに対し、本実施の形態においては、準備された基板11の表層部がグラフェンに変換されるのではなく、基板11上に形成されたSiC膜12がグラフェンに変換される。そのため、基板11の表層部に欠陥やダメージが存在する場合でも、これらに起因してグラフェンの膜厚が大きい領域が形成されることを抑制することができる。そのため、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数を1mmあたり10個以下とすることができる。その結果、高い移動度を安定して確保することが可能な積層体1を得ることができる。
(実施の形態2)
次に、上記実施の形態1の積層体1を用いて作製される電子素子の一例であるFET(Field Effect Transistor)について説明する。図6を参照して、本実施の形態におけるFET9は、上記実施の形態1の積層体1を用いて作製されたものであって、実施の形態1と同様に積層された基板部2およびグラフェン膜3を含む積層体1を備えている。FET9は、さらに第1電極としてのソース電極4と、第2電極としてのドレイン電極5と、第3電極としてのゲート電極7と、ゲート絶縁膜6とを備えている。
ソース電極4は、露出面3Aに接触して形成されている。ソース電極4は、グラフェン膜3とオーミック接触可能な導電体、たとえばNi(ニッケル)/Au(金)からなっている。ドレイン電極5は、露出面3Aに接触して形成されている。ドレイン電極5は、ソース電極4と離れて形成されている。ドレイン電極5は、グラフェン膜3とオーミック接触可能な導電体、たとえばNi/Auからなっている。
ソース電極4とドレイン電極5との間に位置するグラフェン膜3の露出面3Aを覆うように、ゲート絶縁膜6が形成されている。ゲート絶縁膜6は、ソース電極4とドレイン電極5との間に位置する露出面3Aを覆うとともに、ソース電極4およびドレイン電極5の上部表面(グラフェン膜3に接触する側とは反対側の主面)の一部を覆う領域にまで延在している。ゲート絶縁膜6は、たとえば窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)などの絶縁体からなっている。
ゲート電極7は、ゲート絶縁膜6上に接触するように配置されている。ゲート電極7は、ソース電極4とドレイン電極5との間に位置する露出面3Aに対応する領域に配置される。ゲート電極7は、導電体、たとえばNi/Auからなっている。
このFET9において、ゲート電極7に印加される電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちFET9がオフの状態では、ソース電極4とドレイン電極5との間(チャネル領域)に位置するグラフェン膜3にはキャリアとなる電子が十分に存在せず、ソース電極4とドレイン電極5との間に電圧が印加されても非導通の状態が維持される。一方、ゲート電極7に閾値電圧以上の電圧が印加されてFET9がオンの状態になると、チャネル領域にキャリアとなる電子が生成する。その結果、キャリアとなる電子が生成したチャネル領域よってソース電極4とドレイン電極5とが電気的に接続された状態となる。このような状態でソース電極4とドレイン電極5との間に電圧が印加されると、ソース電極4とドレイン電極5との間に電流が流れる。
ここで、本実施の形態のFET9では、ソース電極4とドレイン電極5とが、上記実施の形態1において説明した積層体1の露出面3A上に形成される。そのため、導電部としてのチャネル領域に対応するグラフェン膜3において高い移動度が安定して確保されている。その結果、FET9は、高速化が達成された電子素子となっている。FET9の特性としては、R(接触抵抗)は1Ωcm未満であることが好ましく、0.5Ωcm未満であることがより好ましい。また、R(シート抵抗)は1000Ωsq未満であることが好ましく、500Ωsq未満であることがより好ましい。また、g(相互コンダクタンス)は100mSを超えることが好ましく、1000mSを超えることがより好ましい。また、fT(遮断周波数)は100GHzを超えることが好ましく、1THzを超えることがより好ましい。
次に、図1および図6〜図10を参照して、本実施の形態のFET9の製造方法について説明する。図7を参照して、本実施の形態のFET9の製造方法では、まず工程(S110)として積層体準備工程が実施される。この工程(S110)では、上記実施の形態1の積層体1が準備される(図1参照)。積層体1は、上記実施の形態1において説明した製造方法により製造することができる。
次に、図7を参照して、工程(S120)としてオーミック電極形成工程が実施される。この工程(S120)では、図1および図8を参照して、積層体1の露出面3Aに接触するようにソース電極4およびドレイン電極5が形成される。ソース電極4およびドレイン電極5は、たとえばグラフェン膜3の露出面3A上に、ソース電極4およびドレイン電極5が形成されるべき領域に対応する開口を有するレジストからなるマスク層を形成し、ソース電極4およびドレイン電極5を構成する導電体(たとえばNi/Au)からなる導電膜を形成した後、リフトオフを実施することにより形成することができる。
次に、図7を参照して、工程(S130)として絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S130)では、図8および図9を参照して、ソース電極4とドレイン電極5との間に位置するグラフェン膜3の露出面3A、ソース電極4の積層体1とは反対側の主面およびドレイン電極5の積層体1とは反対側の主面を覆うように、絶縁膜61が形成される。絶縁膜61は、たとえばCVD法により形成することができる。絶縁膜61を構成する材料としては、たとえば窒化珪素を採用することができる。
次に、図7を参照して、工程(S140)としてゲート電極形成工程が実施される。この工程(S140)では、図9および図10を参照して、ソース電極4とドレイン電極5との間に位置する露出面3A上を覆う絶縁膜61上に接触するように、ゲート電極7が形成される。ゲート電極7は、たとえばゲート電極7が形成されるべき領域に対応する開口を有するレジストからなるマスク層を形成し、ゲート電極7を構成する導電体(たとえばNi/Au)からなる導電膜を形成した後、リフトオフを実施することにより形成することができる。
次に、図7を参照して、工程(S150)としてコンタクトホール形成工程が実施される。この工程(S150)では、図10および図6を参照して、ソース電極4上およびドレイン電極5上に位置する絶縁膜61を除去することにより、ソース電極4およびドレイン電極5と配線とのコンタクトを可能とするためのコンタクトホールが形成される。具体的には、たとえばソース電極4上およびドレイン電極5上に対応する領域に開口を有するマスクを形成し、開口から露出する絶縁膜61をエッチングにより除去する。これにより、コンタクトホールが形成されるとともに、残存する絶縁膜61は、ゲート絶縁膜6となる。ゲート絶縁膜6は、ソース電極4とドレイン電極5との間に位置する露出面3Aを覆うとともに、ソース電極4およびドレイン電極5の上部表面(グラフェン膜3に接触する側とは反対側の主面)の一部を覆う領域にまで延在する。
以上の工程により、本実施の形態におけるFET9が完成する。その後、たとえば配線が形成され、ダイシングにより各素子に分離される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本願の積層体は、高い移動度が求められるグラフェン膜を含む積層体および電子素子に、特に有利に適用され得る。
1 積層体
2 基板部
2A 第1主面
3 グラフェン膜
3A 露出面
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
9 FET
10 原料積層体
11 基板
11A 第1主面
12 SiC膜
12A,12B 主面
19 測定領域
61 絶縁膜
90 加熱装置
91 本体部
91A 底壁部
91B 側壁部
91C 上壁部
92 サセプタ
92A 基板保持面
93 カバー部材
93A 内壁面
93C 閉塞空間
95 気体導入管
96 気体排出管

Claims (5)

  1. 炭化珪素からなり、カーボン面となす角が20°以下である第1主面を有する基板部と、
    前記第1主面上に配置され、前記基板部を構成する炭化珪素の原子配列に対して配向する原子配列を有するグラフェン膜と、を備え、
    前記グラフェン膜の前記基板部側とは反対側の主面である露出面を平面的に見て、グラフェンの層数が10以上であって外接する円の直径が5μm以上100μm以下である領域の存在数が1mmあたり10個以下である、積層体。
  2. 前記グラフェン膜は、前記第1主面の80%以上を覆う、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記グラフェン膜のキャリア移動度は、5000cm/Vs以上である、請求項1または請求項2に記載の積層体。
  4. 前記基板部は円盤状の形状を有し、
    前記基板部の直径は50mm以上である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体と、
    前記露出面上に配置される第1電極と、
    前記露出面上に前記第1電極とは離れて配置される第2電極と、を備える、電子素子。
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Title
"Empirical Study of Hall Bars on Few-Layer Graphene on C-Face 4H-SiC", JOURNAL OF ELECTRONIC MATERIALS, vol. 39(12), JPN7020000998, 14 September 2010 (2010-09-14), CH, pages 2696 - 2701, ISSN: 0004364476 *

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