JP2017191992A - エコー抑圧装置、その方法、プログラム、及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
Description
図2は第一実施形態に係るエコー抑圧装置100の機能ブロック図を、図3はその処理フローの例を示す。
適応フィルタ部101は、再生手段2の受話信号x(t)と誤差信号y2(t)とを受け取り、これらの値を用いて、収音手段3の収音信号y1(t)に含まれるエコー成分の推定値y'1(t)を求め(S101)、出力する。
y'1(t)=H(t)TX(t) (1)
H(t)=(h(0), h(1), ... , h(L-1))T (2)
X(t)=(x(t), x(t-1), ... , x(t-L+1))T (3)
ただし、上付き添え字Tは転置を表し、ATはベクトルAの転置を表し、Lは適応フィルタのタップ長を表す。
H(t+1)=H(t)+aX(t)y2(t)/X(t)TX(t) (4)
0<a<2 (5)
ただし、aはNLMSアルゴリズムのステップサイズを表す。フィルタ係数H(t)の更新方法や求め方はこの方法に限らず、従来の方法を用いればよい。
減算部102は、収音手段3の収音信号y1(t)とエコー成分の推定値y'1(t)とを受け取り、その差分y1(t)-y'1(t)を求め(S102)、誤差信号y2(t)(=y1(t)-y'1(t))として出力する。
周波数領域変換部103は、誤差信号y2(t)を受け取り、周波数領域の誤差信号Y2(ω)に変換し(S103)、出力する。変換方法としてはFFT(短時間フーリエ変換)等を用いることができる。
音響結合量推定部105は、周波数領域の誤差信号Y2(ω)と周波数領域の受話信号X(ω)とを受け取り、誤差信号Y2(ω)と、周波数領域の受話信号との比から、再生手段と収音手段との間の音響結合量D(ω)を周波数領域毎に推定し(S105)、出力する。例えば、音響結合量D(ω)は、再生手段2と収音手段3との間の伝達特性の振幅値であり、周波数領域の誤差信号Y2(ω)と周波数領域の受話信号X(ω)の絶対値の比で求められる。また、音響結合量の精度を向上するために時間平滑化が行われる。音響結合量D(ω)は次式により求められる。
D(ω)=E{|Y2(ω)|/|X(ω)|} (6)
ただし、E{A}はAの平均値を取ることを表し、|A|はAの絶対値をとることを表す。
エコーレベル推定部106は、周波数領域の受話信号X(ω)と音響結合量D(ω)とを受け取り、周波数領域の受話信号X(ω)のレベルに音響結合量D(ω)を乗じて収音信号に含まれるエコー成分のレベルを周波数帯域毎に推定し(S106)、推定値R(ω)を出力する。
R(ω)=D(ω)・P(ω)
P(ω)=|X(ω)| for P'(ω)≦|X(ω)|
P(ω)=u・P'(ω)+(l-u)・|X(ω)| for P'(ω)>|X(ω)| (7)
ただし、P(ω)は反響に相当する時間平滑を行ったあとの受話信号であり、P'(ω)は1フレーム前のP(ω)であり、uは反響の長さ(残響時間)の想定値を調整するための係数でありあらかじめ固定値が設定される。uは例えば0≦u<1の値をとり、1に近いほど残響時間の長い環境が模擬され、0に近いほど残響時間の短い環境が模擬される。
過大レベル検出部110は、時間領域の受話信号x(t)を受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)を求め(S110)、出力する。受話信号x(t)のレベルs(t)は、受話信号x(t)の絶対値s(t)=|x(t)|や、絶対値を平滑化した信号s(t)=α・s'(t)+(l-α)・|x(t)|や、以下の式で計算される受話信号x(t)の最大値保持レベルを用いる。
s(t)=|x(t)| for s'(t)≦|x(t)|
s(t)=α・s'(t)+(l-α)・|x(t)| for s'(t)>|x(t)|
s(t)は反響に相当する時間平滑を行ったあとの受話信号であり、s'(t)は1フレーム前のs(t)であり、αは平滑化関数であり、0から1の間の値をとる。
ゲイン取得部120は、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と、受話信号x(t)のレベルs(t)と、周波数領域の誤差信号Y2(ω)とを受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)が大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、仮に歪が生じない場合に用いるゲインよりも、抑圧量の大きいゲインG(ω)を周波数毎に求め(S120)、出力する。
(通常時乗算係数記憶部121及び過大時乗算係数記憶部122)
通常時乗算係数記憶部121及び過大時乗算係数記憶部122には、予め通常時乗算係数γ1及び過大時乗算係数γ2をそれぞれ記憶しておく。γ1<γ2とする。
係数選択部123は、受話信号x(t)のレベルs(t)を受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)が大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、過大時乗算係数記憶部122から過大時乗算係数γ2を取り出し、係数乗算部124に出力する(S123)。また、歪が生じない場合、通常時乗算係数記憶部121から通常時乗算係数γ1を取り出し、係数乗算部124に出力する(S123)。例えば、受話信号x(t)のレベルs(t)があらかじめ設定した閾値β1を超えた場合に、再生音に歪が生じる可能性がある(以下、このレベルを過大レベルともいう)と判定する。閾値β1は再生手段2に合わせて実験、シミュレーション等により予め調べておけばよい。
係数乗算部124は、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と、係数選択部123において選択された過大時乗算係数γ2または通常時乗算係数γ1とを乗じて積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))を求め(S124)、出力する。乗じた後の信号(γ1R(ω)またはγ2R(ω))がエコー成分のレベルの推定値として利用される。γ1<γ2なので、歪が生じる可能性があることを示す場合には、エコー成分のレベルが高く見積もられることとなる。
エコー抑圧ゲイン取得部125は、積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))と周波数領域の誤差信号Y2(ω)とを受け取り、周波数帯域毎に、積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))と誤差信号Y2(ω)のレベルとを比較し、積が大きい程抑圧量の大きいゲインを設定し、後述するエコー抑圧部108で用いるゲインG(ω)とし(S125)、出力する。
W(ω)≦C・γR(ω) (8)
ただし、γはγ1またはγ2である。なお、誤差信号Y2(ω)のレベルW(ω)としては、誤差信号Y2(ω)の絶対値や、絶対値を平滑化した信号を用いればよい。例えば、
W(ω)=|Y(ω)| for W'(ω)≦|Y(ω)|
W(ω)=u・W'(ω)+(l-u)・|Y(ω)| for W'(ω)>|Y(ω)|
とする。ただし、W(ω)は反響に相当する時間平滑を行ったあとの受話信号であり、W'(ω)は1フレーム前のW(ω)であり、uは反響の長さ(残響時間)の想定値を調整するための係数でありあらかじめ固定値が設定される。uは例えば0≦u<1の値をとり、1に近いほど残響時間の長い環境が模擬され、0に近いほど残響時間の短い環境が模擬される。
g(ω)=D for W(ω)≦C・R(ω)
g(ω)=1 for W(ω)>C・R(ω)
次に、瞬時利得係数g(ω)を時間平滑化して、エコー抑圧部108に出力するゲインG(ω)を求める。時間平滑化することでゲインの急激な変化による音質劣化を抑えることができる。時間平滑化は、例えば次式のように行われる。
G(ω)=a・G'(ω)+(l-a)・g(ω) for g(ω)≦G'(ω)
G(ω)=b・G'(ω)+(l-b)・g(ω) for g(ω)>G'(ω) (9)
ただし、G'(ω)は1フレーム前のゲインG(ω)である。aはゲイン下降時の平滑化係数、bはゲイン上昇時の平滑化係数であり、あらかじめ固定値で設定される。aとbは0から1の間の値をとり、1に近いほど長い時間での平滑化となり、0に近いほど短い時間での時間平滑化となる。
エコー抑圧部108は、周波数領域の誤差信号Y2(ω)とゲインG(ω)とを受け取り、周波数領域の誤差信号Y2(ω)にゲインG(ω)を乗じ、送話信号Y3(ω)(Y3(ω)=G(ω)Y2(ω))を求め(S108)、出力する。
時間領域変換部109は、送話信号Y3(ω)を受け取り、時間領域の送話信号y3(t)に変換し(S109)、出力する。変換方法としては、周波数領域変換部103及び周波数領域変換部104で用いた変換方法に対応するものを用いればよい。例えば、IFFT(逆短時間フーリエ変換)等を用いることができる。
以上の構成により、過大な受話信号を検出した場合のみ、大きな係数をエコーレベルに乗算することで、スピーカユニットやスピーカアンプの歪によるエコーの増加分を含んだエコーレベルに近い値が推定され、安定したエコー抑圧を行うことが可能である。
必ずしも適応フィルタ部101、減算部102を含まなくともよい。その場合、S103以降の処理では、誤差信号y2(t)に代えて収音信号y1(t)を用いればよい。なお、誤差信号y2(t)は収音信号y1(t)からエコー成分の推定値y'1(t)を減じた値であり、収音信号y1(t)に基づく値と言える。もちろん、収音信号y1(t)自体も収音信号y1(t)に基づく値と言える。
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
第二実施形態では、ゲイン取得部120に代えて、ゲイン取得部220を含む。
ゲイン取得部220は、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と、受話信号x(t)のレベルs(t)と、周波数領域の誤差信号Y2(ω)とを受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)が大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、仮に歪が生じない場合に用いるゲインよりも、抑圧量の大きいゲインG(ω)を周波数毎に求め(S220)、出力する。
エコー抑圧ゲイン取得部225は、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と誤差信号Y2(ω)とを受け取り、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と誤差信号Y2(ω)のレベルとを比較し、エコー成分のレベルの推定値R(ω)が大きい程抑圧量の大きいゲインG(1,ω)を周波数帯域毎に設定し(S225)、出力する。具体的な処理は、エコー抑圧ゲイン取得部125と同様であり、積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))に代えて、エコー成分のレベルの推定値R(ω)を用いる点が異なる。
過大時ゲイン記憶部226には、予め過大時ゲインG(2,ω)を記憶しておく。なお、エコー抑圧ゲイン取得部225で得られるどのようなG(1,ω)に対してもG(2,ω)<G(1,ω)を満たすように、過大時ゲインG(2,ω)を設定する。要は、過大時ゲインG(2,ω)が、ゲインG(1,ω)よりも抑圧量が大きいものとする。
ゲイン選択部227は、過大レベル検出部110で求めた受話信号x(t)のレベルs(t)を受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)のレベルが大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、過大時ゲイン記憶部226から過大時ゲインG(2,ω)を取り出し、エコー抑圧部108で用いるゲインG(ω)として出力し(S227)、歪が生じない場合にはエコー抑圧ゲイン取得部225で求めたゲインG(1,ω)をエコー抑圧部108で用いるゲインG(ω)として出力する(S227)。例えば、受話信号x(t)のレベルs(t)があらかじめ設定した閾値β2を超えた場合に、再生音に歪が生じる可能性があると判定する。閾値β2は再生手段2に合わせて実験、シミュレーション等により予め調べておけばよい。
このような構成とすることで、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第一実施形態の変形例と本実施形態とを組合せてもよい。
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。第三実施形態は、第一実施形態と第二実施形態とを組み合わせた構成である。
第三実施形態では、ゲイン取得部120に代えて、ゲイン取得部320を含む。
ゲイン取得部320は、エコー成分のレベルの推定値R(ω)と、受話信号x(t)のレベルs(t)と、周波数領域の誤差信号Y2(ω)とを受け取り、受話信号x(t)のレベルs(t)が大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、仮に歪が生じない場合に用いるゲインよりも、抑圧量の大きいゲインG(ω)を周波数毎に求め(S320)、出力する。
エコー抑圧ゲイン取得部325は、積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))と周波数領域の誤差信号Y2(ω)とを受け取り、周波数帯域毎に、積(γ1R(ω)またはγ2R(ω))と誤差信号Y2(ω)のレベルとを比較し、積が大きい程抑圧量の大きいゲインを設定し、ゲインG(1,ω)をゲイン選択部227に出力する(S325)。
このような構成とすることで、第一実施形態、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態では、閾値β1を超え閾値β2以下の場合は第一実施形態に示すようにエコー成分に過大時乗算係数を乗じ、閾値β2を超えた場合は第二実施形態に示すようにゲインを強制的に過大時ゲインに置き換える。
本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
また、上記の実施形態及び変形例で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現してもよい。その場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
Claims (7)
- 周波数領域の収音信号に基づく値と、周波数領域の受話信号との比から、再生手段と収音手段との間の音響結合量を周波数領域毎に推定する音響結合量推定部と、
前記周波数領域の受話信号のレベルに前記音響結合量を乗じて収音信号に含まれるエコー成分のレベルを周波数帯域毎に推定するエコーレベル推定部と、
前記受話信号のレベルと、前記エコー成分のレベルの推定値と、前記収音信号のレベルとを用いて、前記再生手段において前記受話信号を再生する際に、前記受話信号のレベルが大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、仮に歪が生じない場合に用いるゲインよりも、抑圧量の大きいゲインG(ω)を周波数毎に求めるゲイン取得部と、
前記周波数領域の収音信号に基づく値に前記ゲインG(ω)を乗じるエコー抑圧部とを含む、
エコー抑圧装置。 - 請求項1のエコー抑圧装置であって、
前記ゲイン取得部は、
通常時乗算係数は過大時乗算係数よりも小さいものとし、前記受話信号のレベルが大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合には過大時乗算係数を選択し、歪が生じない場合には通常時乗算係数を選択する係数選択部と、
前記エコー成分のレベルの推定値と、前記係数選択部において選択された過大時乗算係数または通常時乗算係数とを乗じて積を求める係数乗算部と、
周波数帯域毎に、前記積と前記収音信号に基づく値のレベルとを比較し、前記積が大きい程抑圧量の大きいゲインを設定し、前記ゲインG(ω)とするエコー抑圧ゲイン取得部とを含む、
エコー抑圧装置。 - 請求項1のエコー抑圧装置であって、
前記ゲイン取得部は、
前記エコー成分のレベルの推定値と前記収音信号に基づく値のレベルとを比較し、前記エコー成分のレベルの推定値が大きい程抑圧量の大きいゲインG(1,ω)を周波数帯域毎に設定するエコー抑圧ゲイン取得部と、
過大時ゲインG(2,ω)は、ゲインG(1,ω)よりも抑圧量が大きいものとし、前記受話信号のレベルが大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合には過大時ゲインG(2,ω)を選択し、歪が生じない場合にはゲインG(1,ω)を選択し、前記ゲインG(ω)とするゲイン選択部とを含む、
エコー抑圧装置。 - 請求項1のエコー抑圧装置であって、
前記ゲイン取得部は、
β1<β2とし、受話信号のレベルをs(t)とし、通常時乗算係数は過大時乗算係数よりも小さいものとし、β1<s(t)≦β2の場合には過大時乗算係数を選択し、s(t)≦β1の場合には通常時乗算係数を選択する係数選択部と、
前記エコー成分のレベルの推定値と、前記係数選択部において選択された過大時乗算係数または通常時乗算係数とを乗じて積を求める係数乗算部と、
周波数帯域毎に、前記積と前記収音信号に基づく値のレベルとを比較し、前記積が大きい程抑圧量の大きいゲインG(1,ω)を設定するエコー抑圧ゲイン取得部と、
過大時ゲインG(2,ω)は、ゲインG(1,ω)よりも抑圧量大きいものとし、β2<s(t)の場合には過大時ゲインG(2,ω)を選択し、s(t)≦β2の場合にはゲインG(1,ω)を選択し、前記ゲインG(ω)するゲイン選択部とを含む、
エコー抑圧装置。 - 周波数領域の収音信号に基づく値と、周波数領域の受話信号との比から、再生手段と収音手段との間の音響結合量を周波数領域毎に推定する音響結合量推定ステップと、
前記周波数領域の受話信号のレベルに前記音響結合量を乗じて収音信号に含まれるエコー成分のレベルを周波数帯域毎に推定するエコーレベル推定ステップと、
前記受話信号のレベルと、前記エコー成分のレベルの推定値と、前記収音信号のレベルとを用いて、前記再生手段において前記受話信号を再生する際に、前記受話信号のレベルが大きいために再生音に歪が生じる可能性がある場合、仮に歪が生じない場合に用いるゲインよりも、抑圧量の大きいゲインG(ω)を周波数毎に求めるゲイン取得ステップと、
前記周波数領域の収音信号に基づく値に前記ゲインG(ω)を乗じるエコー抑圧ステップとを含む、
エコー抑圧方法。 - 請求項1から請求項4の何れかのエコー抑圧装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
- 請求項1から請求項4の何れかのエコー抑圧装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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