以下、本発明について説明する。
[偏光板]
本発明の偏光板は、厚さが30μm 以下である偏光フィルムの少なくとも片面に、厚さが50μm 以下である保護フィルムが積層された構成を有する。
〈偏光フィルム〉
偏光板の構成部材である偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂から構成される原反フィルムに対し、二色性色素で染色して二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、ホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、及び水洗する工程(水洗処理工程)、及びフィルムを乾燥させる工程(乾燥工程)を順に施して製造される。このとき、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理工程の前、染色処理工程と同時、又は染色処理工程の後に、延伸される。
原反フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン、ビニルエーテル、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。またポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒドで変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、上記した原反フィルムとなる。ポリビニルアルコール系樹脂の製膜は、公知の方法で行うことができる。原反フィルムの膜厚は、例えば、約10〜150μm 、好ましくは約10〜100μm である。
偏光フィルムの製造方法において、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施されるフィルムの延伸は、一軸延伸でもあっても二軸延伸であってもよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して一軸延伸を行う場合、延伸は、上記のとおり染色処理工程の前、染色処理工程と同時、又は染色処理工程の後に行うことができる。一軸延伸を染色処理工程の後で行う場合は、ホウ酸処理工程の前に延伸を行ってもよいし、ホウ酸処理工程中に延伸を行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間で延伸する方法や、熱ロールを用いて延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
染色処理工程は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素としては、具体的に、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染料水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この二色性有機染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後に行われるホウ酸処理工程は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理工程の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、通常、水洗処理工程が施される。水洗処理工程は、例えば、ホウ酸処理工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法、又はフィルムに水を噴霧する方法などにより行うことができる。水に浸漬する場合、水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、水洗処理工程の後、乾燥工程を経て偏光フィルムとなる。乾燥工程は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥工程の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥工程の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。乾燥工程により、偏光フィルム中の水分率が実用程度にまで低減される。その水分率は、室温環境下(23℃)において、通常5〜20重量%程度であり、好ましくは8〜15重量%である。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また水分率が20重量%を超えると、熱安定性が不足する傾向にある。
ここで、水分率とは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの乾燥重量に対するフィルム中の水分の割合(重量%)を意味し、フィルムの一部を切り出したサンプルを加熱オーブンなどで乾燥させることによって測定することができる。具体的には、切り出したサンプルの乾燥前の重さと乾燥後の重さとから、下式で定義される。
水分率=[(乾燥前の重さ−乾燥後の重さ)/乾燥後の重さ]×100
以上のようにして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向した偏光フィルムを製造することができる。偏光フィルムの厚さは、例えば、1〜40μm 程度とすることができる。
本発明では、以上に説明した偏光フィルムのなかでも、23℃で相対湿度55%の雰囲気下、24時間調湿した偏光フィルムを、オーブン内で25℃から85℃まで2℃/分の速度で85℃まで加熱した後、0.3mL の23℃の純水を付着させ、この付着後1分間に生じる偏光フィルムの透過軸方向における長さの最大変化量(絶対値)と、水を付着させる前の偏光フィルムの透過軸方向における長さとから算出されるひずみ量が、700με以下、好ましくは650με以下となるものを採用する。このひずみ量が700με以下の偏光フィルムを採用し、またこれと後述する保護フィルムと組み合わせることで、高湿な雰囲気下で高温条件及び低温条件が繰り返される環境下において偏光板に結露が生じたとしても、耐久性に優れる偏光板となる。
ここで、ひずみとは、物体に荷重がかけられたときの単位長さあたりの変化量を言い、このときの伸びの比率をひずみ量と言い、ひずみ量は、次のとおり求められる値である。
長さL0 の材料に引張力(又は圧縮力)Pが加わった際、これに対応した応力σが材料の内部に発生するため、この応力σに比例した引張ひずみ(圧縮ひずみ)によって材料の長さLは長く又は短く変形する。ひずみ量は、長さL0 に対する材料の変形長さΔLの比率として求められ、以下の式(1)で表される。
ε=(L−L0)/L0=ΔL/L0 (1)
ひずみ量の算出に必要となる偏光フィルムの透過軸方向における長さの最大変化量の測定は、次のように行う。図1には、この最大変化量を測定する測定治具(A)及び偏光フィルムと測定治具を組み立てた際の断面図(B)をそれぞれ示した。図を参照して、偏光フィルムは、吸収軸方向×透過軸方向が100mm×100mmである大きさの断片に裁断され、このフィルム断片1の両面に、外周の大きさが140mm×140mmで、その中心部が80mm×80mmの大きさにくり抜かれている測定治具3が配置される。このとき、測定治具3は、偏光フィルムのフィルム断片1にしわやよれが無い状態で配置され、測定時に治具がずれないように、10mm幅の粘着テープ5で偏光フィルムと測定治具3を固定する。
測定治具3は、例えば、プラスチックダンボール(ポリプロピレンを原料とする中空構造押出成型品)から作製することができる。プラスチックダンボールとしては、適宜の市販品を採用することができ、市販品の例としては、住化プラステック(株)から入手できる商品名“サンプライ(登録商標) HPシリーズ”などがある。
偏光フィルムの透過軸方向における長さの最大変化量を測定するひずみゲージは、図2のように、偏光フィルムの透過軸方向(延伸方向と垂直である方向)と平行となるように配置される。ひずみゲージは、偏光フィルムの中央部に、接着剤を介して配置される。この接着剤としては、市販の接着剤、例えば、シアノアクリレート系接着剤を使用できる。
最大変化量を測定する際、偏光フィルムのフィルム断片に滴下される23℃の純水は、偏光フィルムのひずみゲージと接着している部位に滴下される。
〈保護フィルム〉
本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも片面に最も厚い保護フィルムとして厚さが50μm 以下である第一の保護フィルムが積層されたものであり、偏光フィルムの厚さに対する第一の保護フィルムの厚さの比が 1.9より大きい。この厚さの比は、2以上であるのが好ましく、また40以下であるのが好ましい。
本発明では、偏光フィルムの少なくとも片面に第一の保護フィルムが積層されるが、偏光フィルムの他方の面には、第一の保護フィルムと同じ厚さ又は第一の保護フィルムより薄い第二の保護フィルムが積層されていることが好ましい。なお、第一の保護フィルム及び第二の保護フィルムは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
第一及び第二の保護フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れる樹脂でそれぞれ構成されていることが好ましい。このような樹脂として、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂を代表例とするアクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を代表例とする鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂を包合するポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレンテフタレート系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂に対して任意のポリマー変性を行った樹脂も、保護フィルムを構成する樹脂として使用することができる。ポリマー変性としては、例えば、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性制御、異種ポリマー間の反応を伴う場合を含む混合などが挙げられる。
上記した樹脂のなかでも、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂及びポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、一般にはメタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることができる。このようなアクリル樹脂のなかでも、その樹脂全量を基準に、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を50重量%以上含むメタクリル酸メチル系樹脂が好ましい。メタクリル酸メチル系樹脂において、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、そのメタクリル酸メチル系樹脂の全量を基準に、好ましくは70重量%以上であるのが好ましい。この含有量が100重量%となるメタクリル酸メチルの単独重合体であってもよい。
メタクリル酸メチル系樹脂は、通常、メタクリル酸メチルを主成分とする単官能モノマーを、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤の共存下に重合させて得ることができる。単官能モノマーには、メタクリル酸メチルに加え、これと共重合しうる成分を配合して共重合させることもある。また所望により、メタクリル酸メチルを主成分とする単官能モノマーに多官能モノマーを少量配合し、これを共重合させることもある。
メタクリル酸メチルと共重合しうる単官能モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸エステル;アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、及びアクリル酸2−ヒドロキシブチルのようなアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;メタクリル酸、及びアクリル酸のような不飽和酸;クロロスチレン、及びブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレンのような置換スチレン;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル;無水マレイン酸、及び無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物;フェニルマレイミド、及びシクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミドなどを挙げることができる。これらのモノマーは、それぞれ単独でメタクリル酸メチルに共重合させてもよいし、2種以上を組み合わせて共重合させてもよい。
メタクリル酸メチルと共重合しうる多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールの水酸基を、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基を、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物;トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の多価アルコールを、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物;水酸基を2個以上有する化合物の末端水酸基に、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させた化合物;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸及びこれらのハロゲン置換体等の二塩基酸又はこれらのアルキレンオキサイド付加物に、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させた化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。多官能モノマーを共重合させる場合は、これらのなかでも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
また、メタクリル酸メチル系樹脂が有する官能基間で反応させることにより、変性された樹脂を用いることもできる。このような官能基間の反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応などが挙げられる。
メタクリル酸メチル系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、住友化学(株)から販売されている“スミペックス”(登録商標)、三菱レイヨン(株)から販売されている“アクリペット”(登録商標)、旭化成(株)から販売されている“デルペット”(登録商標)、(株)クラレから販売されている“パラペット”(登録商標)、(株)日本触媒から販売されている“アクリビュア”(登録商標)などがある。
ポリオレフィン系樹脂は、上記のとおり鎖状ポリオレフィン系樹脂と環状ポリオレフィン系樹脂とを包合するものである。鎖状ポリオレフィン系樹脂の典型的な例としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が挙げられる。なかでも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分とする鎖状オレフィンモノマーの重合体であり、通常は繰り返し単位の80モル%以上がプロピレンで構成される鎖状オレフィン系樹脂である。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンを主体とし、それに共重合可能なコモノマーを共重合させた共重合体であってもよい。共重合可能なコモノマーは、共重合に供するモノマーの全量を基準に1〜20重量%程度、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させることができる。
プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、又は1−ヘキセンが好ましい。なかでも、透明性に比較的優れるポリプロピレン系樹脂が得られることから、エチレンを1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させたものが好ましい。エチレンの共重合割合を1重量%以上とすることで、透明性を上げる効果が現れる。一方、エチレンの共重合割合が20重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、保護フィルムに要求される耐熱性が損なわれることがある。
ポリプロピレン系樹脂は、20℃におけるキシレンに可溶な成分(CXS成分:CXSは cold xylene solubleの略)の含有量が、その樹脂の全量において1重量%以下であることが好ましく、 0.5重量%以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のなかでも、CXS成分が1重量%以下、さらに 0.5重量%以下であるプロピレンの単独重合体は、好適な例の一つである。
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、(株)プライムポリマーから販売されている“プライムポリプロ”(登録商標)、日本ポリプロ(株)から販売されている“ノバテック”(登録商標)及び“ウィンテック”(登録商標)、住友化学(株)から販売されている“住友ノーブレン”(登録商標)、サンアロマー(株)から販売されている“サンアロマー”(登録商標)などがある。
環状ポリオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネン及び他のシクロペンタジエン誘導体のような環状オレフィンモノマーを、触媒の存在下に重合して得られるものである。
環状ポリオレフィン系樹脂の例としては、シクロペンタジエンとオレフィン又は(メタ)アクリル酸若しくはそのエステルとから、ディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン又は(メタ)アクリル酸若しくはそのエステルとから、ディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体、及びその他の環状オレフィンモノマーから選ばれる少なくとも2種のモノマーを同様に開環メタセシス共重合し、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はそれらの誘導体のような環状オレフィンに、鎖状オレフィン及び/又はビニル基を有する芳香族化合物を付加共重合させて得られる樹脂などが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、 TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている“TOPAS”(登録商標) 、JSR(株)から販売されている“アートン”(登録商標)、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(登録商標)及び“ゼオネックス”(登録商標)、三井化学(株)から販売されている“アペル”などがある。
セルロース系樹脂は、セルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部が、アセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロースの有機酸エステル又は混合有機酸エステルであることができる。その例としては、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるものが挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、その樹脂全量を基準に、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂であり、他のジカルボン酸成分及び/又は他のジオール成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、4,4′−ジカルボキシジフェニール、4,4′−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。また他のジオール成分としては、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
これら他のジカルボン酸成分や他のジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせることができ、またp−ヒドロキシ安息香酸やp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。また、他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合などを含有するジカルボン酸成分又はジオール成分を用いることもできる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸及びエチレングリコール(並びに必要に応じて他のジカルボン酸又は他のジオール)を直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステル及びエチレングリコール(並びに必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステル又は他のジオール)をエステル交換反応させながら重縮合させる方法、テレフタル酸(及び必要に応じて他のジカルボン酸)のエチレングリコールエステル(及び必要に応じて他のジオールエステル)を触媒の存在下で重縮合させる方法などが採用される。さらに、必要に応じて追加の固相重合を行って、分子量を増加させたり、低分子量成分を低減させたりすることもできる。
以上のような樹脂を製膜する方法は、それぞれの樹脂に応じた方法を適宜選択すればよい。例えば、溶剤に溶解させた樹脂を、金属製のバンド又はドラムに流延し、溶剤を乾燥除去してフィルムを得る溶剤キャスト法、樹脂をその溶融温度以上に加熱し、混練してダイから押し出し、冷却することによりフィルムを得る溶融押出法などが使用できる。溶融押出法では、単層フィルムを押し出すこともできるし、多層フィルムを同時押出することもできる。一般に、ポリオレフィン系樹脂の製膜に対しては、生産性の観点から溶融押出法が好ましく採用され、セルロース系樹脂の製膜に対しては、溶剤キャスト法が採用される。
これら樹脂のフィルムは、市販品を容易に入手することが可能である。メタクリル酸メチル系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、住友化学(株)から販売されている“テクノロイ”(登録商標)、三菱レイヨン(株)から販売されている“アクリライト”(登録商標)及び“アクリプレン”(登録商標)、旭化成(株)から販売されている“デラグラス”(登録商標)、(株)クラレから販売されている“パラグラス”(登録商標)及び“コモグラス”(登録商標)、(株)日本触媒から販売されている“アクリビュア”(登録商標)などがある。
ポリオレフィン系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”(「アートン」は同社の登録商標)、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”(登録商標)、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”(登録商標)などが挙げられる。
またセルロース系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、富士フイルム(株)から販売されている“フジタック(登録商標) TD” 、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から販売されているTACフィルムの“KCシリーズ”(商品名)などがある。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、三菱化学(株)から販売されている“ノバクリアー”(登録商標)、帝人化成(株)から販売されている“A-PET シート”などがある。ポリプロピレン系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、FILMAX 社から販売されている“FILMAX CPP フィルム”、サン・トックス(株)から販売されている“サントックス”、東セロ(株)から販売されている“トーセロ”、東洋紡績(株)から販売されている“東洋紡パイレンフィルム”、東レフィルム加工(株)から販売されている“トレファン”(登録商標)、日本ポリエース(株)から販売されている“ニホンポリエース”、フタムラ化学(株)から販売されている“太閤FC”などがある。
第一及び/又は第二の保護フィルムは、以上のような樹脂からそれぞれ構成されるが、用途に応じて延伸処理や収縮処理が施されて位相差(レターデーション)が付与されていてもよい。第一及び/又は第二の保護フィルムの有する位相差値は、波長590nmにおける面内レターデーションRe が10nm以下で、同波長における厚み方向のレターデーションRthの絶対値が10nm以下であり、かつ波長480〜750nmの範囲において、厚み方向のレターデーションRthの絶対値が15nm以下であることが好ましい。
第一及び/又は第二の保護フィルムに位相差を付与する場合、位相差値の制御が容易であり、入手も容易であることから、セルロース系樹脂又は鎖状ポリオレフィン系樹脂や環状ポリオレフィン系樹脂を包含するポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
第一の保護フィルムの厚さは、50μm以下であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは49μm 以下、より好ましくは30μm以下であるである。第二の保護フィルムの厚さは、第一の保護フィルムと同じ厚さ、又は第一の保護フィルムよりも薄いものであればよい。
本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも片面に、以上に説明した第一の保護フィルムが偏光フィルムに積層される最も厚い保護フィルムとして積層されたものであり、偏光フィルムの厚さに対するこの第一の保護フィルムの厚さの比が 1.9より大きいものである。
偏光フィルムの厚さと第一の保護フィルムの厚さとの比が上記の範囲であると、その偏光板は、高温条件と低温条件とが繰り返される環境(冷熱衝撃環境下)において、偏光フィルムに生じる収縮等の応力が保護フィルムにより抑制され、偏光フィルムにクラックが発生しにくくなることから、耐久性に優れる偏光板となる。
本発明では、偏光フィルムとして前記した特定の条件における偏光フィルムの透過軸方向(延伸方向に対する垂直な方向)におけるひずみ量が700με以下のものを採用し、かつ偏光フィルムと第一の保護フィルムの厚さの比率を上記の範囲とすることが重要となる。
偏光フィルムと第一の保護フィルムの厚さの比率が1.9 以下で、かつ偏光フィルムのひずみ量が700μεより大きい場合、その偏光板は、第一の保護フィルムが偏光フィルムに生じる寸法変化を十分に抑制できない傾向にあるため、高温及び低温が繰り返される環境を想定した冷熱衝撃試験、及び高湿な雰囲気下で高温条件及び低温条件が繰り返される環境を想定した結露冷熱衝撃試験において、偏光フィルムにクラックが発生しやすい傾向にある。また、偏光フィルムと第一の保護フィルムの厚さの比率が40より大きく、かつ偏光フィルムのひずみ量が700μεより大きい場合、その偏光板は、第一の保護フィルムが偏光フィルムに生じる寸法変化を過度に抑制する傾向にあるため、偏光フィルムの内部にかかる応力が大きくなり、冷熱衝撃試験及び結露冷熱衝撃試験において偏光フィルムにクラックが発生しやすい傾向にある。
〈接着剤(接着剤層)〉
以上に説明した偏光フィルムの少なくとも片面に、第一の保護フィルムが積層されて偏光板となる。保護フィルムは、通常、接着剤層又は粘着剤層を介して偏光フィルムに積層される。接着剤層又は粘着剤層は、その厚さを0.01〜30μm程度とすることができ、好ましくは0.01〜10μm、 さらに好ましくは0.05〜5μm である。接着剤層又は粘着剤層の厚さがこの範囲にあると、保護フィルムと偏光フィルムとの間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
接着剤層又は粘着剤層には、被着体の種類や目的に応じ、適宜の接着剤又は粘着剤を採用することができ、また必要に応じてアンカーコート剤を用いることもできる。接着剤としては、例えば、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合型接着剤、無溶剤型接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。また、粘着剤としては、偏光フィルム及び保護フィルムを十分に接着できるものであればよく、保護フィルムの種類によって後述する粘着剤層を採用することもできる。
好ましい接着剤の一つとして、水系接着剤、すなわち、接着剤成分が水に溶解又は分散しているものを挙げることができる。このような接着剤成分として、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、親水基を有するウレタン系樹脂などがある。水系接着剤は、このような接着剤成分を、必要に応じて配合される添加剤とともに、水に混合して調製することができる。水系接着剤に使用できる市販のポリビニルアルコール系樹脂の例を挙げると、(株)クラレから販売されているカルボキシル基変性ポリビニルアルコールである“クラレポバール(登録商標) KL-318 ”(商品名)などがある。
水系接着剤は、必要に応じて架橋剤を含有することができる。架橋剤の例を挙げると、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、水溶性エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、多価金属塩などがある。ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする場合は、グリオキザールをはじめとするアルデヒド化合物、メチロールメラミンをはじめとするメチロール化合物、水溶性エポキシ樹脂などが、架橋剤として好ましく用いられる。
ここで水溶性エポキシ樹脂は、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応物であるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂であることができる。水溶性エポキシ樹脂の市販品の例を挙げると、住化ケムテックス(株)から販売されている“スミレーズレジン(登録商標) 650(30)”(商品名)などがある。
偏光板の作製に水系接着剤を採用する場合は、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に水系接着剤を塗布し、これを介して両者を貼り合わせた後、乾燥処理によって水系接着剤を硬化させることで、偏光板を得ることができる。貼合に先立って、保護フィルムには、ケン化処理、コロナ放電処理、又はプラズマ処理のような易接着処理を施し、濡れ性を高めておくのも有効である。乾燥温度は、例えば60〜100℃程度とすることができる。また、乾燥処理後、室温よりもやや高い温度、例えば30〜50℃程度の温度で1〜10日間程度養生すると、接着力を一層高めることができるため好ましい。
もう一つの好ましい接着剤としては、活性エネルギー線の照射又は加熱により硬化する硬化性接着剤が挙げられ、その例として、エポキシ系接着剤などがある。本発明では、取り扱い易さ、接着強度などの観点から、エポキシ系接着剤が好適に用いられる。ここで、エポキシ系接着剤とは、エポキシ樹脂を効果成分とする接着剤であり、このエポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、エポキシ基の開環を伴う重合反応により硬化する化合物又はポリマーのことを言いう。なお、この分野での慣例に従い、モノマーであってもエポキシ樹脂と称する。
エポキシ樹脂の硬化は、一般に、エポキシ樹脂のカチオン重合により行われる。生産性の観点から、この硬化は、活性エネルギー線の照射により行われることが好ましい。
硬化性接着剤に含有されるエポキシ樹脂は、耐候性、屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないものであることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂として、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが例示できる。このような硬化性接着剤に好適に含有されるエポキシ樹脂は、例えば特開 2004-245925号公報で詳細に説明されて公知であるが、ここでも概略を説明することとする。
水素化エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物に触媒の存在下、加圧条件で選択的に核水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF及びビスフェノールSのようなビスフェノール;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型の樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。このような芳香族ポリヒドロキシ化合物に核水素化反応を行い、得られる核水添ポリヒドロキシ化合物にエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテル化することができる。好適な水素化エポキシ樹脂として、水素化されたビスフェノールAのグリシジルエーテルが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、次式に示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、この式中、mは2〜5の整数である。
この式における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ樹脂となることができる。また、脂環式環を形成する (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ樹脂のなかでも、エポキシシクロペンタン構造(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン構造(上式においてm=4のもの)を有するエポキシ樹脂は、優れた接着性を示すことから好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ樹脂の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、 G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
脂肪族エポキシ樹脂は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンのような脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル(例えばポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル)などが挙げられる。
硬化性接着剤において、エポキシ樹脂は、1種のみを単独で採用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、このエポキシ樹脂は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する脂環式エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
硬化性接着剤に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常 30〜3,000g/当量、好ましくは 50〜1,500g/当量の範囲である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の偏光板の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、エポキシ当量が3,000g/当量 を超えると、接着剤に含有される他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
本発明では、上記のように、エポキシ樹脂としてカチオン重合性のものを採用することが好ましい。そのため、硬化性接着剤は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、及び電子線のような活性エネルギー線の照射又は加熱によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させる。接着剤は保存安定性及び作業性の観点から、カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射又は加熱により触媒的に作用する潜在性が付与されているものが好ましい。
以下、活性エネルギー線の照射によってカチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるカチオン重合開始剤を「光カチオン重合開始剤」といい、熱によってカチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるカチオン重合開始剤を「熱カチオン重合開始剤」という。
光カチオン重合開始剤を添加し、活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させる方法は、常温での硬化が可能となり、偏光フィルムの耐熱性又は膨張によるひずみを考慮する必要が減少することから、保護フィルムと偏光フィルムとを良好に接着できる点において有利である。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、エポキシ樹脂に混合しても保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレーン錯体などを挙げることができる。光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。
光カチオン重合開始剤の配合量が 0.5重量部を下回ると、硬化が不十分になり、硬化物の機械的強度や接着強度が低下する傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が20重量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下する可能性がある。
光カチオン重合開始剤を配合する場合、硬化性接着剤は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を用いることで、カチオン重合の反応性を向上させ、硬化物の機械的強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤を配合する場合、その量は、硬化性接着剤100重量部に対し、 0.1〜20重量部の範囲内とすることが好ましい。
一方、熱カチオン重合開始剤としては、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。
エポキシ樹脂を含有する硬化性接着剤は、先述のとおり光カチオン重合によって硬化させることが好ましいが、上記の熱カチオン重合開始剤を配合し、熱カチオン重合によって硬化させることもできるし、光カチオン重合と熱カチオン重合との両方で硬化させることもできる。光カチオン重合と熱カチオン重合との両方で硬化させる場合、硬化性接着剤には、光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤との両方を配合することが好ましい。
また、硬化性接着剤は、オキセタン化合物やポリオール化合物など、カチオン重合を促進させる化合物をさらに含有してもよい。オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物である。オキセタン化合物を配合する場合、その配合量は、硬化性接着剤の全量を基準に、通常5〜95重量%、好ましくは5〜50重量%である。またポリオール化合物は、エチレングリコールやヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを包含するアルキレングリコール又はそのオリゴマー、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどであることができる。ポリオール化合物を配合する場合、その配合量は、硬化性接着剤の全量を基準に、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
さらに、硬化性接着剤は、その接着性を損なわない限り、他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などを含有することができる。イオントラップ剤としては、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系、これらの混合系などを包含する無機化合物が挙げられ、酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
偏光板の作製に硬化性接着剤を採用する場合は、偏光フィルム又は保護フィルムの貼合面、あるいはこれら双方の貼合面に硬化性接着剤を塗工した後、接着剤を介して貼合し、活性エネルギー線を照射するか又は加熱することにより未硬化の接着剤層を硬化させ、偏光フィルムと保護フィルムとを接着させることができる。接着剤の塗工方法としては、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が採用できる。
この硬化性接着剤は、基本的には溶剤を実質的に含まない無溶剤型接着剤とすることができるが、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、粘度調整のために溶剤を含有させてもよい。溶剤は、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、エポキシ樹脂をはじめとする各成分を良好に溶解する有機溶剤であることが好ましく、例えば、トルエンに代表される炭化水素、酢酸エチルに代表されるエステルなどを用いることができる。
活性エネルギー線の照射により接着剤を硬化させる場合、活性エネルギー線としては、先述した各種のものを用いることができるが、取扱いが容易で、照射光量などの制御もしやすいことから、紫外線が好ましい。活性エネルギー線、例えば紫外線の照射強度や照射量は、偏光フィルムの偏光度をはじめとする各種光学性能、及び保護フィルムの透明性や位相差特性をはじめとする各種光学性能に影響を及ぼさない範囲で、適度の生産性が保たれるように適宜決定される。
熱により接着剤を硬化させる場合は、一般に知られた方法で加熱すればよい。通常は、硬化性接着剤に配合された熱カチオン重合開始剤がカチオン種やルイス酸を発生する温度以上に加熱され、その加熱温度は、例えば50〜200℃程度である。
[粘着剤層]
本発明の偏光板は、通常、第一又は第二の保護フィルム上に粘着剤層が積層され、これを介して液晶セルなどに貼合される。
粘着剤層を形成する粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性、接着性などを包含する粘着特性に優れるものであればよいが、さらに耐久性などに優れるものが好ましく用いられる。具体的には、粘着剤層を形成する粘着剤として、アクリル系樹脂を含有する粘着剤(アクリル系粘着剤)が好ましく用いられる。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルを主要なモノマーとする樹脂である。このアクリル系樹脂には通常、極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとは、重合性不飽和結合及び極性官能基を有する化合物であり、ここで重合性不飽和結合は、(メタ)アクリロイル基に由来するものとするのが一般的であり、また極性官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などでありうる。極性モノマーの具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどがある。
またアクリル系粘着剤には、通常、アクリル系樹脂とともに架橋剤が配合されている。
架橋剤の代表例として、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有するイソシアネート化合物を挙げることができる。
粘着剤には、さらに各種の添加剤が配合されていてもよい。好適な添加剤として、シランカップリング剤や帯電防止剤などが挙げられる。シランカップリング剤は、ガラスとの接着力を高めるうえで有効である。帯電防止剤は、静電気の発生を低減又は防止するうえで有効である。一般に、粘着剤層を介して偏光板を液晶セルに貼る際には、それまで粘着剤層を覆って仮着保護していた表面保護フィルム(セパレータ)を剥がしてから液晶セルに貼り合わされるが、その表面保護フィルムを剥がすときに発生する静電気によって、液晶セル内の液晶の配向不良を生じ、この現象が液晶表示装置の表示不良をもたらすことがある。このような静電気の発生を低減又は防止する手段として、粘着剤への帯電防止剤の配合は有効である。
粘着剤層は、以上のような粘着剤成分を有機溶剤に溶解して粘着剤組成物を調製し、これを偏光板の保護フィルム上に直接塗布して溶剤を乾燥除去する直接塗工法により、あるいは、離型処理が施された樹脂フィルムからなる基材フィルムの離型処理面に上記の粘着剤組成物を塗布し、溶剤を乾燥除去して粘着剤層とし、これを偏光板の保護フィルム上に貼着する転写法により、形成できる。前者の直接塗工法によって保護フィルム上に粘着剤層を形成した場合は、その表面に離型処理が施された樹脂フィルム(セパレータとも呼ばれる)を貼合し、使用時まで粘着剤層表面を仮着保護するのが通例である。有機溶剤溶液である粘着剤組成物の取扱い性の観点などから、後者の転写法が多く採用されており、この場合は、最初に粘着剤層の形成に用いる離型処理された基材フィルムが、偏光板に貼着した後そのままセパレータとなりうる点からも好都合である。
[液晶表示装置]
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に用いられる。液晶表示装置は、液晶パネルを備えるものである。この液晶パネルは、液晶セルとその液晶セルの片面又は両面に積層される偏光板とを備えるものであり、液晶セル及び偏光板は上述のとおり、粘着剤層を介して貼合される。この液晶セルは、IPSモード、VAモード、TNモードなど、各種の方式であることができる。本発明の偏光板を貼合した液晶セルの反対側には、同種の偏光板又は公知の偏光板を貼合することができる。
本発明の偏光板を、液晶セルの視認側に配置する場合、液晶セルから遠い側の保護フィルム(最も視認側に位置する保護フィルム)は、ヘーズが付与された防眩性を有するフィルムとすることができる。保護フィルムにヘーズを付与する方法としては、例えば、保護フィルムを構成する原料の樹脂に無機微粒子又は有機微粒子を混合してフィルムを製造する方法、微粒子が混合された樹脂と微粒子が混合されていない樹脂とを使用して多層押出により二層のフィルムを製造するか、又はさらに微粒子が混合された樹脂を外層にして三層のフィルムを製造する方法、フィルムの片側に無機微粒子又は有機微粒子を硬化性バインダー樹脂に混合した塗布液をコートし、バインダー樹脂を硬化させて防眩層を設ける方法などがある。
上記の無機微粒子としては、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機微粒子としては、例えば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子などが挙げられる。
保護フィルムにヘーズを付与する場合は、そのヘーズ値が6〜45%の範囲内となるようにすることが好ましい。このヘーズ値が6%を下回ると、十分な防眩効果が得られないことがある。一方で、ヘーズ値が45%を超えると、その保護フィルムが配置された液晶表示装置の画面が白ちゃけるなど、画質の低下を招くことがある。ヘーズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比として定義される値であり、 JIS K 7136:2000 「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠して、市販のヘーズメーターを用いて測定することができる。市販のヘーズメーターとしては、例えば、(株)村上色彩技術研究所から販売されている“HM-150”(製品名)などがある。ヘーズ値の測定に際しては、フィルムの反りを防止するため、例えば、光学的に透明な粘着剤を用い、防眩面が表面となるようにフィルム面をガラス基板に貼合した測定サンプルを用いることが好ましい。
また、本発明の偏光板を液晶セルの視認側に配置する場合、液晶セルから遠い側の保護フィルムの最表面(偏光フィルムと反対側の面)には、導電層、ハードコート層、低反射層などを包含する機能層を設けることができる。上記の防眩層を構成するバインダー樹脂を含む塗布液として、これらの機能が発現可能な樹脂組成物を選択することもできる。
本発明の偏光板を液晶セルの背面側に配置する場合、液晶セルから遠い側(バックライト側)となる保護フィルムには、前記した透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れる樹脂から構成される樹脂フィルムに代えて、輝度向上フィルムを選択することもできる。輝度向上フィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、その例を挙げると、それぞれ商品名で、住友スリーエム(株)から販売されている“DBEF”(登録商標)、“APF”(製品名)などがある。なお、液晶セルから遠い側(バックライト側)となる保護フィルムとして輝度向上フィルムを採用する場合は、上記した粘着剤によって積層させることができる。
本発明の偏光板を液晶セルに貼合した場合、視認側であっても背面側であっても、液晶セル側(液晶セルと偏光フィルムとの間)に位置する保護フィルムの保護フィルムは、前記した範囲の位相差を有することが好ましく、セルロース系樹脂又はポリオレフィン系樹脂から構成されることがより好ましい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例において、偏光フィルムのひずみ量の算出、並びに偏光フィルム及び保護フィルムの厚さの測定は、次の方法で行った。
偏光フィルムのひずみ量は、次のとおり求めた。まず、偏光フィルムを吸収軸方向×透過軸方向が100mm×100mmである大きさに裁断し、この偏光フィルム断片を、140mm×140mmの大きさで、中心部が80mm×80mmの大きさにくり抜かれたプラダン(ポリプロピレンを原料とする中空構造押出成型品)で図1に示すように挟み、測定時にこれらがずれないよう、10mm幅の耐熱絶縁用ポリイミド粘着テープ〔日東電工(株)の商品名“No.360シリーズ” 〕で偏光フィルムとプラダンを固定し、測定用サンプルとした。偏光フィルムの透過軸方向と平行になるように、(株)共和電業から販売されている汎用箔ひずみゲージ“KFG-5-120-C1”を偏光フィルムの中央位置に接着した。偏光フィルム及びひずみゲージは、シアノアクリレート系接着剤〔東亜合成(株)から販売されている商品名“アロンアルフア(登録商標) 201”〕により接着した。ひずみゲージは、(株)共和電業から販売されている高速データロガー“UCAM-65A”につないだ。これにより偏光フィルムの透過軸方向における寸法変化を計測した。次に、この測定用サンプルをオーブン内に静置し、オーブン内の温度を25℃から85℃まで2℃/分の速度で85℃まで昇温した後、サンプルを取り出し、ひずみゲージと接着している偏光フィルム部位に対し、 0.3mLの23℃の純水を滴下した。純水滴下後1分間に生じた最大の寸法変化量(絶対値)を記録し、前記式(1)によりひずみ量を算出した。
偏光フィルム及び保護フィルムの厚さは、(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH−15M”(製品名)で測定した。
(製造例1)
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%で厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレの商品名“VF−PE#3000”〕を、37℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.04/1.5/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/ 3.6/100の水溶液に 56.5℃で浸漬した。引き続き、10℃の純水で洗浄した後、85℃で乾燥し、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚さ約12μm の偏光フィルム1を作製した。延伸は、主にヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は 4.8倍であった。偏光フィルムのひずみ量は611μεであった。
(製造例2)
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%で厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名“VF−PE#6000”〕を、37℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.04/1.5/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/ 3.6/100の水溶液に 56.5℃で浸漬した。引き続き、10℃の純水で洗浄した後、85℃で乾燥し、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚さ約23μm の偏光フィルム2を作製した。延伸は、主にヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は 5.3倍であった。偏光フィルムのひずみ量は711μεであった。
以下の実施例及び比較例では、上で作製した偏光フィルムと以下の保護フィルムとから偏光板を作製した。
〈保護フィルム〉
保護フィルムA:ハードコート付きトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、厚さ49μm 、コニカミノルタオプト(株)から入手した製品名“KY-40-C2A3”。
保護フィルムB:TACフィルム、厚さ25μm 、コニカミノルタオプト(株)から入手した製品名“KC2UAW”。
保護フィルムC:ハードコート付きTACフィルム、厚さ44μm 、凸版印刷(株)から入手した製品名“40CHC”。
保護フィルムD:シクロオレフィンポリマー(COP)成型品、厚さ20μm 、日本ゼオン(株)から入手した商品名“ゼオノアフィルム”(登録商標)。
保護フィルムE:シクロオレフィンポリマー(COP)成型品、厚さ23μm 、日本ゼオン(株)から入手した商品名“ゼオノアフィルム”(登録商標)。
[実施例1]
(水系接着剤の調製)
水100部に対し、(株)クラレから入手したカルボキシル基変性ポリビニルアルコール“KL-318”(商品名)を3部溶解し、その水溶液に、住化ケムテックス(株)から入手した水溶性ポリアミドエポキシ樹脂“スミレーズレジン(登録商標) 650(30)”(商品名、固形分濃度30%の水溶液)を1.5部添加して水系接着剤を調製した。
(偏光板の作製)
保護フィルムA及び保護フィルムDの貼合面にそれぞれケン化処理を施した。偏光フィルム1の片面には、上で調製した水系接着剤を介して保護フィルムAを、他方の面には、同じ水系接着剤を介して保護フィルムDをそれぞれ貼合し、80℃で5分間乾燥して偏光板を作製した。
〔評価〕
上で作製した偏光板の保護フィルムDにおける偏光フィルム1とは反対側の面に、アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付き偏光板を作製した。この粘着剤層付き偏光板を、5.1 インチ型サイズ(幅約113mm×縦約64mm)に裁断し、その粘着剤層側から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介してガラス板に貼合した。これを評価用サンプルとし、冷熱衝撃環境試験及び結露冷熱衝撃環境試験を行った。
この冷熱衝撃環境試験は、偏光板をガラス板に貼り合わせた状態で、冷熱衝撃試験装置〔エスペック(株)から販売されている製品名“TSA-71L-A-3” 〕を用いて、高温条件を85℃晒し時間30分、低温条件を―40℃晒し時間30分を1サイクルとして行った。
なお、温度移行時間を1分として温度移行時に温度移行時間を0分として温度移行時に外気を導入せずに光学部材に結露を発生させない条件を設定した。その結果、400サイクル繰り返しても偏光フィルムにはクラックが生じなかった。
結露冷熱衝撃環境試験は、上記の冷熱衝撃環境試験において、温度移行時に装置内に外気を5分間導入することにより光学部材に意図的に結露を発生させた条件で行った。その結果、50サイクル繰り返しても偏光フィルムにはクラックが生じなかった。なお、この測定は、23℃で相対湿度55%に設定された環境下で行った。
冷熱衝撃環境試験(サイクル数:400回)、及び結露冷熱衝撃環境試験(サイクル数:50回)を行った後、クラックの有無を目視で確認した。後述の表1において、試験前と変化がないものを「○」、試験後にクラックが発生したものを「×」とした。
[実験例2]
保護フィルムAを保護フィルムBに、保護フィルムDを保護フィルムEにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
この偏光板の保護フィルムEにおける偏光フィルム1とは反対側の面に、アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付き偏光板を作製した。この粘着剤層付き偏光板を、実施例1と同様に、 5.1インチ型サイズに裁断し、その粘着剤層をガラス板に貼合して評価用サンプルとした。この評価用サンプルに対し、実施例1と同様に冷熱衝撃環境試験及び結露冷熱衝撃環境試験を行った。その結果、冷熱衝撃環境試験では、400サイクル繰り返しても偏光フィルムにクラックを生じなかった。また結露冷熱衝撃環境試験では、50サイクル繰り返しても偏光フィルムにクラックを生じなかった。
[比較例1]
保護フィルムAを保護フィルムCに、保護フィルムDを保護フィルムEに、偏光フィルム1を偏光フィルム2に変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
この偏光板の保護フィルムEにおける偏光フィルム3とは反対側の面に、アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付き偏光板を作製した。この粘着剤層付き偏光板を、実施例1と同様に、 5.1インチ型サイズに裁断し、その粘着剤層をガラス板に貼合して評価用サンプルとした。この評価用サンプルに対し、実施例1と同様に冷熱衝撃環境試験及び結露冷熱衝撃環境試験を行った。その結果、冷熱衝撃環境試験では400サイクル冷熱衝撃環境試験を繰り返しても偏光フィルムにクラックは生じなかった。一方、結露冷熱衝撃環境試験においては、50サイクル繰り返すと偏光フィルムにクラックが見られた。
[比較例2]
保護フィルムAを保護フィルムBに、偏光フィルム1を偏光フィルム2に変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
この偏光板の保護フィルムD面にアクリル系粘着剤シートを貼合して、粘着剤層付き偏光板を作製した。得られた粘着剤層付き偏光板を5.1インチ型サイズに裁断し、その粘着剤層をガラス板に貼合して、実施例1と同じ、冷熱衝撃環境試験及び結露冷熱衝撃環境試験を行った。その結果、冷熱衝撃環境試験では400サイクル繰り返すと偏光フィルムにクラックが生じた。また、結露冷熱衝撃環境試験においても50サイクル繰り返すと偏光フィルムにクラックを生じた。