JP2017186443A - バイオマス由来原料を含む熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマス由来の原料を用いて柔らかい熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品を実現し、バイオマス由来原料の用途を広げることにより、地球環境内における二酸化炭素の増加を抑制して地球温暖化を防ぐこと。【解決手段】原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、該不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、10〜150質量部の飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bを含有し、A硬度が20〜95である熱可塑性エラストマー組成物であって、前記不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、該組成物中において、有機過酸化物により動的架橋されたものである、熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法、該組成物からなる成形体、並びに該組成物が部材に融着した複合成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオマス由来原料を含む熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法、該組成物からなる成形体、並びに該組成物が部材に融着した複合成形体に関する。
二酸化炭素は、地球環境を温暖化するガス、すなわち温室効果ガスの一つとして知られており、人による産業活動とともに、産業革命以後、急増し続けている。そして、最近の異常気象や海面上昇による自然災害の頻発は、温室効果ガスの増加に原因があると考えられ、人の生存が持続可能な地球環境を維持するために、地球の海や大気に循環する二酸化炭素の総量を現在以上に増やさない理念が共有されている。
二酸化炭素の増加の原因として、化石燃料、または化石燃料由来の化合物を出発原料とする製品を燃焼させることにより、地中深くに固定され、大気中には存在しなかった炭素を、二酸化炭素として急激に大気中に放出することになるため、大気中の二酸化炭素が大きく増加し、地球温暖化の原因となる。一方、地球環境内において循環する二酸化炭素を、吸収したり有機物に変化させたりして育つ生物(植物、動物)を、地球の大気で燃やして二酸化炭素を発生しても、地球環境内に存在する二酸化炭素の循環であるため、その二酸化炭素を構成する炭素の総量には変化がない。
そこで、サトウキビやトウモロコシ等のバイオマス原料から発酵を経て得られたポリオレフィンを、バイオマス由来のポリオレフィンと呼び、燃焼させても地球環境内に存在する二酸化炭素を増減させない、いわゆるカーボンニュートラル材料として採用することが望まれている。
特許文献1には、植物由来のポリオレフィンを含有する弾性片を備えるヒンジキャップが開示されており、化石燃料由来のポリエチレンの一部から全部を植物由来ポリエチレンと代替した組成の弾性片を備えるヒンジキャップは、40℃で1週間熱処理して熱固定を行っても形状の歪み等が見られず、いずれも遜色なく使用できることが開示されている。しかしながら、植物由来のポリオレフィンとして具体的に開示されているのはポリエチレンのみであり、物品としてもヒンジキャップのみであって、それ以外の組成や物品に植物由来のポリオレフィンを応用することに関しては十分な開示がないため、地球環境内における二酸化炭素の増加を抑制して地球温暖化を防ぐには効果が不十分である。
特許文献2には、バージン石油系化合物を実質的に含まない持続可能な物品として、少なくとも90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンに加えて、リサイクルされたポリエチレンや、ポリプロピレンとを組み合わせた組成を用いた物品や、少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンテレフタレートに加えて、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートとを組み合わせた組成を用いた物品が開示されており、さらにリサイクルポリプロピレンにオレフィン系やスチレン系のエラストマーを併用することにより、耐衝撃性が向上することも開示されている。しかしながら、リサイクル材料については、そもそもの原料が化石燃料であれば真のカーボンニュートラル材料とは言えず、また、エラストマーについてはバイオマス由来のエラストマーを用いることが可能であることについては開示も示唆もなく、やはり、地球環境内における二酸化炭素の増加を抑制して地球温暖化を防ぐには効果が不十分である。
特開2013−133164号公報 特表2014−508688号公報
バイオマス由来のポリエチレンやポリエチレンテレフタレートが知られており、それらを、容器、キャップ、ラベルといった、比較的硬い物品については成形材料として用いることができることが知られているが、弾性体として用いることのできる柔らかいエラストマー組成物への適用については知られていない。
本発明の課題は、バイオマス由来の原料を用いて柔らかい熱可塑性エラストマー組成物及びその成形品を実現し、バイオマス由来原料の用途を広げることにより、地球環境内における二酸化炭素の増加を抑制して地球温暖化を防ぐことにある。
本発明は、
〔1〕 原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、該不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、10〜150質量部の飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bを含有し、A硬度が20〜95である熱可塑性エラストマー組成物であって、前記不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、該組成物中において、有機過酸化物により動的架橋されたものである、熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、該不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、10〜150質量部の飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bを含有し、A硬度が20〜95である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A、前記飽和オレフィン系熱可塑性樹脂B、及び有機過酸化物を含有する混合物を溶融混練する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
〔3〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体、並びに
〔4〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物と非極性の硬質樹脂とが融着してなる複合成形体
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、バイオマス由来原料の用途を広げ、地球環境内における二酸化炭素の増加を抑制して地球温暖化抑制に貢献するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bとを含有するものであり、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、該組成物中において、有機過酸化物により動的架橋されたものである。
不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aのオレフィン原料としては、エチレン、プロピレン等が挙げられ、少なくとも一部にバイオマス由来のものが用いられる。本発明において、バイオマスとは、再生可能な、生物(植物、動物)由来の有機性資源であり、石油等の化石資源を除いたものをいう。
本発明における不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの原料として用いることのできるバイオマス由来のエチレン単量体(バイオエチレン)及びバイオマス由来のプロピレン単量体(バイオプロピレン)は、例えば、以下のようにしてバイオマス由来の原料から製造することができる。
まず、バイオマスからバイオエタノールを生成する。バイオエタノールの原料となるバイオマスとしては、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜、キャッサバ、ビート、木材、藻類等が挙げられる。これらのバイオマスのなかでは、生産効率の面から、糖質又はデンプン質を多く含む、サトウキビ、トウモロコシ及び甜菜が好ましい。
次に、バイオエタノールを出発物質として、脱水反応によりエチレン(バイオエチレン)に変換し、得られたバイオエチレンと生成水等とを分離した後、分離されたバイオエチレンを吸着法等により精製することができる。さらに、得られたバイオエチレンをn−ブテンを含有する原料とともに、メタセシス反応させることにより、バイオプロピレンを製造することができる。
精製されたバイオエチレン及びバイオプロピレンは、14C同位体比が石油由来の原料とは異なるが、従来公知の化学工学的技術を応用してオレフィン系熱可塑性樹脂の原料として用いることができる。
本発明において、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aは、バイオエチレン及びバイオプロピレンの少なくともいずれかを含むオレフィンとジエン化合物の共重合体であることが好ましい。
EPDMに用いられるジエン系化合物としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられ、これらの中では、ENBが好ましい。
なお、オレフィン原料の一部は、化学的性質が同じ石油由来の原料であってもよく、その場合は石油由来のオレフィン原料を使用した分だけ、バイオマス由来のオレフィン原料の含有率が減少するため、カーボンニュートラルの効果は減ずる。
また、ジエン系化合物に、バイオ由来の原料で製造されたジエンが含まれていてもよい。ただし、前記ジエン系化合物は、出発原料にブテン等のジエンを用いるのが通常の製法であり、バイオマス由来の原料から製造することは可能であるが、反応ステップが多くなるため生産効率は低下する。
従って、地球温暖化防止の観点からは、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの製造原料にすべてバイオマス由来の原料が用いられていることが好ましいが、現在の化学技術の水準による生産効率の観点を加えると、ジエン原料の一部は石油由来のものであることがより好ましく、さらに生産効率を追求するためには、プロピレン原料の一部も石油由来のものであることが好ましい。
オレフィンとジエンの共重合体は、重合触媒の存在下、エチレン及びプロピレンとジエン系化合物とを重合させて得ることができる。
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。重合触媒としては、バナジウム系化合物と有機アルミニウム化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒や、チタン化合物触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。これらの製造方法はいずれも公知であり、いずれの方法によるものでも好ましく用いることができるが、バナジウム系のチーグラー・ナッタ触媒を用いたものは比較的分子量分布の広い重合体が得られるため、低温特性に優れ、低温条件下での圧縮永久歪が小さくなる傾向があるのでより好ましい。
不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aとしては、少なくとも一部に前記バイオエチレン及びバイオプロピレンのいずれかを用いた、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)が好ましい。EPDMの物性はエチレン、プロピレン、ジエンの3成分の組成比によって大きく影響されるため、物性値の代りにEPDM中のエチレン成分の質量分率(C2%)とジエン成分の質量分率(ジエン%)とを表示することが知られている。本発明において好ましいEPDMは、伸びに優れる観点から、C2%が30〜85%、より好ましくは50〜80%であり、さらに好ましくは60〜75%である。また、ジエン%は大きい方が強度や圧縮永久歪に優れるものの、少ない方が伸びに優れるため、好ましいジエン%は2〜15%、より好ましくは3〜8%、さらに好ましくは4〜8%である。
本発明において、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aは、有機過酸化物により、好ましくは有機過酸化物及び共架橋剤により、動的架橋されたものである。不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aは不飽和結合を有しているため、架橋反応により、熱可塑性エラストマー組成物全体の機械的強度や耐熱性を向上させることができる。熱可塑性エラストマー組成物において、動的架橋により不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが島相を、飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bが海相となる、海島構造が形成される。従って、動的架橋後も熱可塑性を保ち、リサイクル可能なものである。
不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの物性として、組成の他に用いることができるのがムーニー粘度である。ムーニー粘度は、JIS K6300により定義されており、成形性の指標として用いることができる。ムーニー粘度は組成や分子量等様々な要因で変化するが、小さいほど溶融流動性が良くなる一方、ある程度大きい方が組成物の強度が上がる傾向がある。本発明における不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの好ましいムーニー粘度として、125℃予備加熱1分間の後、回転開始後4分経過後のムーニー粘度(ML1+4)が、10〜150Mであることが好ましく、より好ましくは30〜100Mである。
動的架橋するための有機過酸化物としては、アルキルパーオキシエステル、パーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシジカーボネート、アルキルハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等が挙げられる。
有機過酸化物の10時間半減期温度は、動的架橋で効率よく消費される観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは130℃以下であり、安定性の観点から、50℃以上、より好ましくは80℃以上である。かかる観点から、有機過酸化物は、ジアルキルパーオキサイドが好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
また、有機過酸化物は、熱可塑性エラストマー組成物の可塑剤となり得る有機溶剤を含まないという点で、溶液型よりも不活性粉末に添着させた粉末タイプの方が好ましい。
有機過酸化物の使用量は、多い方がより早くより完全に不飽和結合に架橋反応を起こすことができるが、同時にポリマー主鎖の切断も起こるので機械物性の低下を避けるためには少ない方がよい。これらの観点から、有機過酸化物の使用量は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
共架橋剤は二官能以上を有する多官能化合物であり、有機過酸化物と併用されることにより、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aのポリマー主鎖の切断を抑えて架橋効率を上げる働きがある。
本発明において好ましい共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメタクリレート(EG)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)等が挙げられる。
共架橋剤の使用量は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの動的架橋は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと有機過酸化物、好ましくは有機過酸化物と共架橋剤とを溶融混練して行うことができるが、本発明では、後述のように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する際に、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと他の原料とともに、有機過酸化物、好ましくは有機過酸化物と共架橋剤を混合して、溶融混練することが好ましい。
不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。ここで、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aの含有量に有機酸化物及び共架橋剤の量は含まれない。
一方、飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−プロピレン共重合体(EPM)からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。これらの中では、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
組成物の分散性及び成形性の観点から、本発明で用いる飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bは、溶融流動性が高い方が好ましい。溶融流動性はメルトマスフローレイト(MFR)によって評価することができ、ASTM D1238に準拠し、ポリプロピレンの場合は230℃、ポリエチレンの場合は190℃で測定し、21.2N荷重の条件で、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは1g/10min以上、さらに好ましくは5g/10min以上である。また、上限としては、組成物の製造工程での混錬のしやすさから、100g/10min以下が好ましい。
飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bに用いられるオレフィン原料は、バイオマス由来のものであっても、石油由来のものであってもよいが、本発明では、地球環境内における二酸化炭素の増加抑制の観点から、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと同様に、前記バイオエチレン、バイオプロピレン等のバイオマス由来のオレフィン原料を含むものが好ましい。
バイオエチレン又はバイオプロピレンを、チーグラー・ナッタ触媒等の公知の重合触媒を用いて重合させることにより、バイオポリエチレン又はバイオポリプロピレンを得ることができる。化学的に精製したバイオエチレンやバイオプロピレンは、炭素の同位体比が石油由来のものとは異なるが、化学反応においては石油由来のものと同一であることは技術常識であり、石油由来のポリエチレン又はポリプロピレンと同じ物性を有するポリマーを得ることができ、できたものは本発明で利用することができる。
飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bの含有量は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、流動性(成形性)向上の観点から、10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、柔軟性を維持の観点から、150質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
また、飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
なお、バイオマス由来原料の使用量は、以下の論理から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる14Cと12Cの比を目安とすることができる。
地球上では、宇宙線の照射によって、常に窒素原子から原子量14の炭素同位体である14Cが生成しており、空気中には一定の14C/12C比で14Cが含まれる。生体系では炭素が絶えず外部環境と交換されており、生物が生きている限り14Cと12Cを同様に吸収するため、生物中でも14Cの比率は同じであり、14C/12C比の平均値は1.2×10-12に等しい。
生物が死んだ後、例えば土に埋もれて石油や石炭等の化石原料に変化する間、12Cは安定であるので、サンプル中の12C原子の数は時間が経っても一定であるが、14Cは放射性であり、サンプル中の14C原子の数は時間の関数で減少する。その半減期は5730年であり、十分に長い時間を経てきた化石原料では14C原子はほぼ消失していると見なすことができる。従って、石油由来の原料の使用量が多いほど、14Cの量が減少し、14C/12Cの値は小さくなる。一方、生物を基に短期間のうちに処理されたバイオマス由来原料では、環境中の14C/12C比(1.2×10-12)と差がないと見なすと、製品中の14C/12C比を測定することにより、バイオマス由来原料の含有率を決定することができる。
この方法は、ASTM D6866に14C/12C比の測定方法からバイオマス原料の含有率の決定方法までが定められている。ASTM D6866では、14C/12C比の測定方法として同位体比質量分析、加速器質量分析、液体シンチレーションスペクトロメトリ法を挙げているが、本発明で好ましいのは、同位体比質量分析であり、試料の燃焼ガス中のCOの質量分析によりバイオマス原料の含有率を算出できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中のバイオマス原料の含有率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。熱可塑性エラストマー組成物のバイオマス原料の含有率は、各構成成分中のバイオマス原料の含有率と各構成成分の含有率(質量%)の積の和により、算出することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性向上の観点から、さらに、軟化剤Cを含有していることが好ましい。
軟化剤Cは、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等のゴム用軟化剤等が挙げられるが、これらのなかでは、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aとの親和性が良好で、ブリードが起きにくいという観点から、ナフテンオイル及びパラフィンオイルが好ましく、パラフィンオイルがより好ましい。
これらのオイルはバイオエチレンからの化学合成が可能であるが、反応ステップが多くなるため生産効率はあまり高くない。従って、地球温暖化防止の観点からは、軟化剤Cの製造原料にすべてバイオマス由来の原料が用いられていることが好ましいが、現在の化学技術の水準による生産効率の観点を加えると、軟化剤Cの一部は石油由来のものであることが好ましく、全てが石油由来のものであることがより好ましい。
軟化剤Cの40℃での動粘度は、加熱溶融時の揮発を防ぎ、耐ブリード性を向上する観点から、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは30mm2/s以上、さらに好ましくは50mm2/s以上であり、取扱いが容易であることから、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以下、さらに好ましくは200mm2/s以下であり、耐摩耗性向上の観点から、さらに好ましくは150mm2/s以下である。
軟化剤Cの含有量は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性を高め、各種配合成分の分散性を向上する観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、オイルブリードにより生じるベタツキの抑制及び硬質樹脂への融着性の観点から、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。
また、軟化剤Cの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤、無機充填剤、絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、水和金属化合物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン等の難燃剤、帯電防止剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aを動的架橋する観点から、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A、前記飽和オレフィン系熱可塑性樹脂B、及び有機過酸化物を含有する混合物を溶融混練する工程を含む方法により、製造することが好ましい。より具体的には、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A、飽和オレフィン系熱可塑性樹脂B、有機過酸化物、さらに必要に応じて軟化剤C、共架橋剤等を含む原料を溶融混合することにより動的架橋反応を起こした後、冷却により固化させて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
溶融混合する場合には、ニーダーや一般的な溶融押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、ニーダー等のバッチ混練機を使用することが好ましい。押出機への供給は、各種成分を直接押出機に供給しても良く、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
動的架橋のための溶融混練温度は、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A及び飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bとが混練可能な温度で有機過酸化物の半減期温度から設定するのが好ましく、好ましくは、有機過酸化物の10時間半減期温度以上、1分間半減期温度以下に設定するのが好ましい。より具体的に好ましい設定温度としては50〜250℃、より好ましくは100℃〜230℃、さらに好ましくは150℃〜210℃である。設定温度とは溶融混練装置の槽内設定温度であり、高トルクで混練を行うと、実際の組成物の温度は摩擦熱で設定温度よりも上昇することがあるが、温度上昇が30℃以下に収まるように適宜、混練条件を調整するのが好ましい。
原料を混合し、動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混合してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形方法によって所定のシート状成形品や金型成形品とすることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、95以下、好ましくは90以下、より好ましくは85以下であり、引っ張り強さや引き裂き強さの観点から、20以上、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体の用途は、特に限定されるものではなく一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、複合成形用材料としても用いることができ、ポリプロピレン等の非極性の硬質樹脂とは良好に融着する。
従って、本発明はさらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物と部材、好ましくは非極性の硬質樹脂とが融着し、一体となった複合成形体を提供する。これにより、複雑な接合面を有する部材や、互いに異なる形状の接合面を有する部材の複合化も可能となる。
非極性の硬質樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。この中では、耐熱性の観点から、ポリプロピレンが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
本発明において、融着は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点以上の熱を加えて、融液にした後、融点以下の温度にして固化することで、融着対象の界面に固着する現象をいう。熱を加えるには、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等を用いることができる。従って、融着部の界面が複雑な立体形状であっても、複雑な立体形状にうまくなじみ成形一体化することができる。熱可塑性エラストマー組成物と部材との融着は、全体にわたっていても、一部であってもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に融着した複合成形体は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形、多色成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、熱プレス成形、発泡成形、レーザー融着成形、押出成形等の方法により、成形加工して得ることができるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、取り扱いが容易で適度な溶融流動性もあるため、射出成形にも適用することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に融着した複合成形体としては、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体に硬質樹脂がインサートされたインサート成形体、熱可塑性エラストマー組成物と、硬質樹脂とを多色成形して得られる複合成形体等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料等の各種物性は、以下の方法により測定した。
<成分C(軟化剤)>
〔動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
<有機過酸化物>
〔10時間半減期温度及び1分間半減期温〕
ベンゼン中に0.10mol/L濃度の有機過酸化物を添加した場合の、過酸化物の濃度変化から、10時間で濃度が初期の1/2となるような温度を10時間半減期温度と呼び、1分間で濃度が初期の1/2となる温度を1分間半減期温度と呼ぶ。
バイオエチレンの製造例
住友化学社製の活性アルミナ(NKHD24)100mLを外径20mm、長さ80cmの加圧流通装置のSUS製反応器の中心へ充填し、反応器上部から、常圧、500℃で窒素ガスを200mL/minの速度で2時間流通した後、350℃へ降温した。ここへ、ペトロプラス社製のバイオマス由来のエタノール(エタノール含量92質量%)を反応器上部から20g/hの速度で送液した。反応器下部の出口ラインは、凝縮トラップ(容量500mL)を経て0.5MPaに設定した背圧弁に繋がっており、反応中は、凝縮トラップを外部から氷冷することにより、反応により生成した水と未反応エタノールを捕集し、生成したエチレンは気体状態で背圧弁を経た後、圧縮機により5MPaまで圧縮し、液化エチレンとして液化ガス容器へ捕集した。10時間後、液化ガス容器にバイオエチレン119gを捕集した。エタノールからバイオエチレンへの転化率は99%以上、収率は99%であった。
バイオEPDMの製造例1
セパラブルカバーに攪拌器、温度計、滴下ロート、導入管、バブリング管、及び抜き出し管を設けた容量2Lのセパラブルフラスコを窒素置換し、内液を撹拌しながら内液温度が30℃となるように外部からウォーターバスで温度調節した。このセパラブルフラスコに、ノルマルヘキサンに17.8g/L濃度で溶解した5-エチリデン-2-ノルボルネンを毎時0.5L、触媒として、VO(OC2H5)Cl2のノルマルヘキサン溶液(0.8mmol/L)を毎時0.5L及びAl(CC2H5)1.5Cl1.5)のノルマルヘキサン溶液(8.0mmol/L)を毎時0.5L、溶媒として、ノルマルヘキサンを毎時0.5Lの量で連続的に導入し、同時に、抜き出し管から、フラスコ内の内液量が常に1Lになるように連続的に抜き出した。またバブリング管からバイオエチレンを毎時130L、プロピレンを毎時180L、水素を毎時5Lの速度でフラスコ内に供給した。得られた重合溶液を塩酸水で脱灰し、大量の冷メタノールに投入してポリマーを析出後、100℃で24時間減圧乾燥を行った。以上の方法により、毎時、66.4gのエチレン−プロピレン−ENB共重合体(EPDM A)を得た。なお、バイオエチレンは前記製造例により得られたバイオマス由来のエチレンであり、プロピレン及び5-エチリデン-2-ノルボルネンは石油由来のものである。
バイオEPDMの製造例2
5-エチリデン-2-ノルボルネンのノルマルヘキサン溶液の濃度を35.6g/L、バイオエチレンの供給量を毎時110L、プロピレンの供給量を毎時180Lに、それぞれ変更した以外は、製造例1と同じようにして、エチレン−プロピレン−ENB共重合体(EPDM B)を得た。
バイオEPDMの製造例3
5-エチリデン-2-ノルボルネン溶液の濃度を22g/L、バイオエチレンの供給量を毎時100L、プロピレンの供給量を毎時180Lに、それぞれ変更した以外は、製造例1と同じようにして、エチレン−プロピレン−ENB共重合体(EPDM C)を得た。
バイオEPMの製造例
5-エチリデン-2-ノルボルネンのノルマルヘキサン溶液を使用せず、ノルマルヘキサンの供給量を毎時1L、バイオエチレンの供給量を毎時100L、プロピレンの供給量を毎時180Lに、それぞれ変更した以外は、製造例1と同じようにして、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)を得た。
上記製造例で得られた共重合体を、重クロロホルム溶液として、13C-NMR(JEOL社製JNM-ECA400)測定を行い、解析結果から構成成分の合計が100質量%となるように組成を算出した。また、JIS K6300に準拠して100℃又は125℃で、予備加熱1分間の後、回転開始後4分経過後のムーニー粘度(ML1+4)を測定した。
EPDM A〜EPDM C及びEPMの組成とムーニー粘度を表1に示す。
Figure 2017186443
実施例1〜11及び比較例1〜6
(1) 熱可塑性エラストマー組成物の作製
軟化剤(成分C)以外の表3、4に示す固体状原料を乾式混合して、固体原料混合物を調製し、該混合物に液状原料(表3、4に示す成分C)を添加して混合、含浸させて原料混合物を調製した。
170℃に温調設定したバッチ式ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダーラボステーションにミキサーとして350mL容のプラネタリーミキサーを接続したもの)に、表3、4に示す組成比の原料成分を、合計で250g投入し、100r/minの回転数で、15分間、溶融混練した。溶融状態の混練物を全量取り出し、室温で冷却して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
実施例、比較例、及び参考例で使用した表3、4に記載の原料の詳細は以下の通り。
Figure 2017186443
(2) 熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
ペレットを、下記の条件でプレス成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレスシートを作製した。
〔プレス成形条件〕
プレス成形機:42ton加熱冷却二段油圧成形機100MSIII-10E(商品名、東邦マシナリー(株)製)
加熱圧力:5MPa
加熱時間:2分
冷却圧力:5MPa
冷却時間:2分
実施例1〜11及び比較例1〜6で得られた組成物について、下記の測定を行った。結果を表3、4に示す。
〔耐オイルブリード性〕
プレスシートを雰囲気温度23℃で24時間静置した後、表面を目視により観察するとともに指で触り、以下の評価基準に従って、耐オイルブリード性を評価した。
<評価基準>
◎:目視ではぬれ光沢はなく、表面がさらっとして貼りつき感がない。
○:目視ではぬれ光沢はなく、指で触ると貼りつきはしないが若干ねばり感がある。
×:目視ではぬれ光沢はないが、指で触ると貼りつくようなタックがある。
〔A硬度〕
2mm厚さのプレスシートを恒温恒湿室(温度23℃、相対湿度50%)に24時間以上静置し、状態を安定させた後、シートを3枚重ね、JISK7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じて測定する。
〔引張強さ及び引張伸び率〕
引張強さと伸び率は、JIS K 6251に準じた方法により測定した。試験片はダンベル3号形を使用し、試験室温度23℃、引張速度500mm/minで、試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の初期断面積で除した値を引張強さ、試験片が切断したときの伸びを、初期に対する比率(%)で表したものを伸び率とした。
〔引裂き強さ〕
JIS K 6252に準じた方法により、切込みなしアングル形試験片で測定した。
〔圧縮永久歪(CS)〕
2mm厚のプレスシートを6枚重ねて作製した円盤状成形体を試験片として用い、JIS K6262に規定される圧縮永久ひずみ試験によって測定した。
具体的には、標準温度(23.2±2℃)において、試験片の直径及び厚さがそれぞれ、29.0±0.5mm(直径)、12.5mm±0.5mm(厚さ)であることを確認し、厚さ9.3〜9.4mmのスペーサをかませた圧縮板に試験片を挟んで、25体積%圧縮の条件で、70℃で24時間保持した後、23℃で圧縮板を外して30分放置した後の試験片中央部の厚さを測定した。
測定結果を下記の圧縮永久歪算出式にあてはめて、圧縮永久歪CS(%)の数値を算出した。
CS(%)=t0−t2/(t0−t1)×100
(式中、t0は試験片の元の厚さ(mm)、t1はスペーサの厚さ(mm)、t2は圧縮装置から取り外してから30分後の試験片の厚さ(mm)を示す)
圧縮解放後、エラストマー組成物が完全に圧縮前の寸法形状に戻ったときのCSの値は0%であり、圧縮から開放しても圧縮されたままの形状で寸法形状が元に戻らない場合のCSの値は100%であるから、CSの値は0から100%の間で小さいほど回復が優れていることを意味する。
Figure 2017186443
Figure 2017186443
<非極性樹脂に対する融着力(PP融着力)>
表5に示すポリオレフィンの射出成型プレート(厚さ2mm×幅25mm×長さ125mm)に、長さの一端から40mmまでの間にPTFEテープを巻いたものを金型内にインサートしておき、実施例1及び7で得られたペレットを、230℃でインサート体を含む全体の厚さ6mm×幅25mm×長さ125mmとなる金型に射出成形し、融着試験片(複合成形体)を作製した。
得られた融着試験片は、インサート体の長さの一端から40mmまでの間のPTFEテープ部分は容易に剥離できるので、剥離して融着試験のつかみしろ部分として用いた。そして厚さ2mmのインサート部材(基材層)とその上に成形された厚さ4mmの表皮材層とをそれぞれつかみ具でつかみ、JIS K 6854に準拠した方法により、雰囲気温度23℃で表皮材層(熱可塑性エラストマー層)と基材層(ポリオレフィン層)とを180°方向に50mm/minで引張試験を行い、表皮材層と基材層の剥離強度(N/25mm)を測定した。
Figure 2017186443
実施例1〜11の組成物は、良好な柔軟性を有し、オイルブリードもなく、引張強さ等の熱可塑性エラストマー組成物としての性能も良好であることが分かる。また、実施例1、7の熱可塑性エラストマー組成物に代表されるように、非極性硬質樹脂とも良好に融着することが分かる。
これに対し、不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aを使用せず、代わりにジエン系化合物が用いられていない飽和オレフィン系熱可塑性樹脂を使用した比較例1〜3の組成物は、特に引張り伸び率の低下が顕著である。また、動的架橋されていない比較例4の組成物は、特に圧縮永久歪の発生が顕著である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、燃焼させても化石燃料由来の二酸化炭素の発生が少ないため、環境に対する負荷が小さく、かつ、柔軟性やゴム弾性、成形性、リサイクル性を有するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車、機械、建設資材、衣料、電子材料、食品容器、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用である。

Claims (9)

  1. 原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、該不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、10〜150質量部の飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bを含有し、A硬度が20〜95である熱可塑性エラストマー組成物であって、前記不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、該組成物中において、有機過酸化物により動的架橋されたものである、熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体である、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bが、バイオマス由来の原料を含む、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−プロピレン共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. さらに、軟化剤Cを含有する、請求項1〜3いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aが、有機過酸化物と共架橋剤とにより動的架橋されたものである、請求項1〜4いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 原料の少なくとも一部がバイオマス由来の共重合体である不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Aと、該不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A 100質量部に対して、10〜150質量部の飽和オレフィン系熱可塑性樹脂Bを含有し、A硬度が20〜95である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記不飽和オレフィン系熱可塑性樹脂A、前記飽和オレフィン系熱可塑性樹脂B、及び有機過酸化物を含有する混合物を溶融混練する工程を含む、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  7. 混合物が、さらに共架橋剤を含有する、請求項6記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
  9. 請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物と非極性の硬質樹脂とが融着してなる複合成形体。
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