JP2017186368A - 点眼剤 - Google Patents

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昌志 伊藤
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Abstract

【課題】増粘剤を含有しつつ霧視が抑制された点眼剤を提供する。
【解決手段】本発明の点眼剤は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5〜25μLであることを特徴とする。本発明の霧視の抑制方法は、点眼剤に(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、且つ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、点眼剤に関する。
点眼剤は、目の疾患を治療する為の医薬品として多くの種類が販売されている。点眼剤に配合される成分の一つとして、増粘剤がある。増粘剤は、眼球表面における点眼剤の滞留時間を延長させ、眼の乾燥を抑制する等の目的で、点眼剤に配合されている成分である。
しかしながら、増粘剤を含有する点眼剤において、点眼直後に、霧視と呼ばれる視界のぼやけを引き起こす問題点が知られている。そのため、増粘剤の機能を維持しつつ、点眼時の霧視を抑制する方法が求められている。
一方、テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン又はその塩は、それぞれ点眼剤の配合成分として公知であるが、霧視に対する影響については、全く知られていない。
また、点眼剤の一回の使用量は、通常29.5〜53μLであることが知られており(非特許文献1)、眼内から溢れだした薬液による眼周囲皮膚炎等の発生を回避する事を目的として、点眼剤の1滴量を少量とする技術が知られているが(特許文献1)、そのような技術と、増粘剤による霧視との関係については、全く知られていないのが現状である。
特開2005−211184号公報
池田博昭、他5名、「適正使用に必要な医療用点眼剤の情報」、病院薬学、1998年、24(6)、p.595−600
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、増粘剤を含有しつつ霧視が抑制された点眼剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、所定の成分を含有し、かつ、所定の1滴量で点眼できるように設計された点眼剤により、霧視を顕著に抑制できることを見出した。
また、本発明者らは、増粘剤を含有する点眼剤の、滴下量を少量となるように設計した場合に、1滴あたりの滴下量がばらつくという新たな課題を見出し、その課題が、さらにテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることにより解決し、点眼剤の1滴あたりの滴下量のばらつきが抑制されることを見出した。
また、本発明者らは、1滴あたりの滴下量が少量である点眼剤においては、点眼実効感が低いという新たな課題を見出し、その課題が、該点眼剤に増粘剤、並びにテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることにより解決され、点眼実効感が高まることを見出した。
即ち、本発明は、下記(1)〜(9)を提供するものである。
(1)本発明の点眼剤は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5〜25μLであることを特徴とする。
(2)本発明の点眼剤は、さらに、内容積が4〜30mLである容器に充填されたことが好ましい。
(3)本発明の点眼剤は、さらに、滴下口における内径が1.5mm未満であるノズルを有する容器に充填されたことが好ましい。
(4)本発明の点眼剤は、前記増粘剤が、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(5)本発明の点眼剤は、前記テルペノイド化合物が、dl−メントール、l−メントール、dl−カンフル、d−カンフル、d−ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(6)本発明の霧視の抑制方法は、点眼剤に(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計することを特徴とする。
(7)本発明の点眼剤の1滴量のばらつきを抑制する方法は、点眼剤に(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計することを特徴とする。
(8)本発明の点眼実効感向上方法は、点眼剤に(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量を5〜25μLとなるように設計すること特徴とする。
(9)本発明の容器入り点眼剤の製造方法は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤を、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計された容器に充填することを特徴とする。
本発明によれば、点眼剤において(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように該点眼剤を設計することにより、増粘剤を含有しつつ霧視が顕著に抑制された点眼剤を提供することができる。本発明の点眼剤によって、点眼直後でも視界のぼやけが生じにくくなり、患者の服薬コンプライアンスの向上にも繋がる。
また、本発明の別の効果として、1滴あたりの滴下量のばらつきが抑制された点眼剤を提供することが可能となる。すなわち、本発明者らは、増粘剤を含有しつつ1滴あたりの滴下量が少量となるように設計された点眼剤においては、滴下量のばらつきが生じ易いと言う新たな課題を見出したが、さらにテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることにより、点眼剤の1滴あたりの滴下量のばらつきが抑制されることを見出した。本発明の点眼剤によって、少量ずつであっても正確な量の点眼が可能となり、より確実な治療効果を得ることが可能となる。
また、本発明のさらに別の効果として、点眼実効感の高い点眼剤を提供できる。すなわち、本発明者らは、1滴あたりの滴下量が少量である点眼剤においては、実際ヒトの目に自ら点眼する場合に、1滴が目に入ったことを自覚し難い、すなわち点眼実効感が低いと言う新たな課題を見出したが、該点眼剤に(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることにより、点眼実効感が高まることを見出した。本発明の点眼剤によって、1滴が目に入ったかどうかを確実に実感する事ができ、服薬コンプライアンスが向上し、より確実な治療効果を得ることが可能となる。
本発明の点眼剤が充填された容器に装着される滴下ノズルの一例である。 本発明の点眼剤が充填された容器に装着される滴下ノズルの一例である。
1.点眼剤及び容器入り点眼剤
本発明は、(A)成分として増粘剤、並びに、(B)成分としてテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計された点眼剤であることを特徴とする。
本明細書において含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを、略号「POP」はポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
(1)増粘剤[(A) 成分]
本発明の点眼剤は、(A)増粘剤(以下、単に「(A)成分」と記載することもある。)を含有する。
(A)成分として使用される増粘剤については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。このような増粘剤として、具体的には、ビニル系増粘剤[例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25,K30,K90など)、カルボキシビニルポリマーなど]、セルロース系増粘剤[例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208,2906,2910など)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩など]、ポリエチレングリコール(マクロゴール300,マクロゴール400,マクロゴール1500,マクロゴール4000など)又はムコ多糖[例えば、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩など]などが挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。尚、上記増粘剤の塩としては、例えば無機塩基との塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩であり、特にナトリウム塩が好ましい。
これらの中で、霧視抑制作用、滴下量ばらつき抑制作用、点眼実効感向上作用を一層高めるという観点から、(A)成分として好ましくはビニル系増粘剤、セルロース系増粘剤、ポリエチレングリコール又はムコ多糖である。より好ましくは、ビニル系増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーであり、セルロース系増粘剤としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩であり、ポリエチレングリコールとしてはマクロゴール300,マクロゴール400であり、ムコ多糖としてはコンドロイチン硫酸又はその塩、アルギン酸またはその塩、ヒアルロン酸又はその塩である。さらに好ましくは、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ヒアルロン酸ナトリウムであり、特に好ましくはポリビニルピロリドン(K25、K90)、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)であり、最も好ましくはポリビニルピロリドンK25、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906である。
さらに、これらの増粘剤の中でも1.0w/v%となるように精製水に溶解した場合の25℃における粘度が以下の値を示すものが好ましい。尚、粘度の測定は、実施例に記載の方法に従う。
ポリビニルピロリドン :好ましくは0.1〜5.0mPa・s、さらに好ましくは0.3〜3.5mPa・s、特に好ましくは0.5〜2.0mPa・s。
カルボキシビニルポリマー :好ましくは1〜30000mPa・s、さらに好ましくは200〜5000mPa・s、特に好ましくは400〜3000mPa・s。
ヒドロキシエチルセルロース :好ましくは1〜5000mPa・s、さらに好ましくは5〜1000mPa・s、特に好ましくは15〜600mPa・s。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース :好ましくは1〜3000mPa・s、さらに好ましくは50〜800mPa・s、特に好ましくは100〜400mPa・s。
本発明の点眼剤において、(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、該点眼剤の用途等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量として、例えば、本発明の点眼剤の総量を基準に、(A)成分の含有量が、総量で、0.01〜10w/v%であることが好ましく、0.01〜5w/v%であることがさらに好ましく、0.05〜3w/v%であることが特に好ましく、0.1〜1w/v%であることが最も好ましい。
(A)成分の含有量が上記範囲内にある場合、眼球表面における滞留性向上や、眼の乾燥を抑制するという効果に優れた点眼剤が得られる。
また、(A)成分の含有量が上記範囲内にある場合、本発明の霧視抑制効果、滴下量のばらつき抑制効果、及び良好な点眼実効感向上効果が得られる。
(2)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン又はその塩[(B) 成分]
本発明の点眼剤は、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に「(B)成分」と記載することもある。)を含有する。
(B)成分として使用されるテルペノイド化合物については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。このようなテルペノイド化合物として、具体的には、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、メントン、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、本発明において、テルペノイド化合物として、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油等が挙げられる。これらのテルペノイド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、本発明の霧視抑制作用、滴下量ばらつき抑制作用、点眼実効感向上作用を一層高めるという観点から、好ましくは、dl−メントール、l−メントール、dl−カンフル、d−カンフル、d−ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、これらを含有する好ましい精油としてクールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等が例示される。より好ましくは、dl−メントール、l−メントール、dl−カンフル、d−カンフル、d−ボルネオール、ゲラニオールが挙げられ、更に好ましくは、l−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、特に好ましくはl−メントールが挙げられる。
(B)成分として使用されるイミダゾリン系血管収縮剤は、公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
イミダゾリン系血管収縮剤については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。イミダゾリン系血管収縮剤として、具体的には、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、メチゾリン及びこれらの塩が挙げられる。上記化合物の塩の形態としては、塩酸塩、硝酸塩等の無機酸塩が例示される。また、上記化合物及びその塩は、水和物の形態であってもよい。
これらの中で滴下量ばらつき抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくは、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、又はそれらの塩、さらに好ましくは、テトラヒドロゾリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、又はナファゾリン硝酸塩が挙げられる。
(B)成分として使用されるネオスチグミンは、N−(−3−ジメチルカルバモイルオキシフェニル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムとも称される化合物である。ネオスチグミン及びその塩は、公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
ネオスチグミンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、メチル硫酸塩(メチル硫酸ネオスチグミン)、臭化物塩(臭化ネオスチグミン)等が例示される。これらの塩の中でも、好ましくはメチル硫酸塩が挙げられる。上記化合物及びその塩は、水和物の形態であってもよい。
これらの中で滴下量ばらつき抑制作用を一層高めるという観点から、好ましくはネオスチグミンの塩、更に好ましくはネオスチグミンメチル硫酸塩が挙げられる。
本発明の点眼剤において、(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量、該点眼剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて、適宜設定される。(B)成分の含有量としては、例えば、本発明の点眼剤の総量を基準として、(B)成分の含有量が、総量で、0.0001〜0.5w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.1w/v%であることがさらに好ましく、0.001〜0.08w/v%であることが特に好ましい。点眼剤において前記(A)成分を含むことにより、点眼直後に霧視が生じるという問題点があるが、 (B) 成分の含有量が上記範囲内にある場合、前記(A)成分の有する上述した効果を損なうことなく、霧視を効果的に抑制できる。また、前記(A)成分を含有しつつ1滴あたりの滴下量が少量である点眼剤においては、滴下量のばらつきが生じ易いと言う新たな課題に対し、(B) 成分の含有量が上記範囲内にある場合、前記(A)成分の有する上述した効果を損なうことなく、滴下量のばらつきを効果的に抑制できる。さらに、滴下量が少量である点眼剤においては、点眼実効感が低いと言う新たな課題に対し、(B) 成分の含有量が上記範囲内にある場合、点眼実効感が顕著に向上する。
また、本発明の点眼剤において、(B)成分の含有比率は特に限定されず、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量、該点眼剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて、適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、例えば、本発明の点眼剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.00003〜10質量部であることが好ましく、0.0001〜2質量部であることがより好ましく、0.0005〜1質量部であることがさらに好ましく、0.001〜0.8質量部であることが特に好ましい。点眼剤において前記(A)成分を含むことにより、点眼直後に霧視が生じるという問題点があるが、 (B) 成分の含有比率が上記範囲内にあり、1滴あたりの滴下量が少量となるように用いた場合、前記(A)成分の有する上述した効果を損なうことなく、霧視を効果的に抑制できる。また、前記(A)成分を含有しつつ1滴あたりの滴下量が少量となるように用いられる点眼剤においては、滴下量のばらつきが生じ易いと言う新たな課題に対し、(B) 成分の含有比率が上記範囲内にある場合、前記(A)成分の有する上述した効果を損なうことなく、滴下量のばらつきを効果的に抑制できる。さらに、滴下量が少量となるように用いられる点眼剤においては、点眼実効感が低いと言う新たな課題に対し、(B) 成分の含有比率が上記範囲内にある場合、点眼実効感が顕著に向上する。
テルペノイド化合物の含有量としては、例えば本発明の点眼剤の総量を基準として、テルペノイド化合物の含有量が、総量で、0.0001〜0.2w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.1w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.08w/v%であることがさらに好ましい。なお、テルペノイド化合物を含む精油を使用する場合は、点眼剤中に含有される精油中のテルペノイド化合物が上記含有量を満たすように設定することができる。上記テルペノイド化合物の含有量は、霧視抑制作用、滴下量ばらつき抑制作用、点眼実効感を向上させるという観点から好適である。
また、(A)成分に対するテルペノイド化合物の含有比率としては、例えば、本発明の点眼剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、テルペノイド化合物の総含有量が、0.00003〜4質量部であることが好ましく、0.0001〜2質量部であることがより好ましく、0.0005〜1質量部であることがさらに好ましく、0.001〜0.8質量部であることが特に好ましい。上記テルペノイド化合物の含有比率は、霧視抑制作用、滴下量ばらつき抑制作用、点眼実効感を向上させるという観点から好適である。
イミダゾリン系血管収縮剤の含有量としては、例えば本発明の点眼剤の総量を基準として、イミダゾリン系血管収縮剤の含有量が、総量で、0.0001〜0.5w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.1w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.05w/v%であることがさらに好ましい。上記イミダゾリン系血管収縮剤の含有量は、滴下量ばらつき抑制作用を向上させるという観点から好適である。
また、(A)成分に対するイミダゾリン系血管収縮剤の含有比率としては、例えば、本発明の点眼剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、イミダゾリン系血管収縮剤の総含有量が、0.00003〜10質量部であることが好ましく、0.0001〜2質量部であることがより好ましく、0.0005〜1質量部であることがさらに好ましく、0.001〜0.5質量部であることが特に好ましい。上記イミダゾリン系血管収縮剤の含有比率は、滴下量ばらつき抑制作用を向上させるという観点から好適である。
ネオスチグミン及び/又はその塩の含有量としては、例えば本発明の点眼剤の総量を基準として、ネオスチグミン及び/又はその塩の含有量が、総量で、0.0001〜0.05w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.01w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.005w/v%であることがさらに好ましい。上記ネオスチグミン及び/又はその塩の含有量は、滴下量ばらつき抑制作用を向上させるという観点から好適である。
また、(A)成分に対するネオスチグミン及び/又はその塩の含有比率としては、例えば、本発明の点眼剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ネオスチグミン及び/又はその塩の総含有量が、0.00003〜1質量部であることが好ましく、0.0001〜0.2質量部であることがより好ましく、0.0005〜0.1質量部であることがさらに好ましく、0.001〜0.05質量部であることが特に好ましい。上記ネオスチグミン及び/又はその塩の含有比率は、滴下量ばらつき抑制作用を向上させるという観点から好適である。
本発明の点眼剤は、さらに、イプシロン-アミノカプロン酸又はその塩を含有することができる。
本発明に係る点眼剤に用いられるイプシロン-アミノカプロン酸又はその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明の点眼剤に用いられるイプシロン-アミノカプロン酸又はその塩として、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。イプシロン-アミノカプロン酸又はその塩は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。好ましくはイプシロン-アミノカプロン酸である。
イプシロン-アミノカプロン酸又はその塩の含有量は、眼科用組成物全体に対して、0.1〜10w/v%が好ましく、0.25〜7.5w/v%がさらに好ましく、0.5〜5.0w/v%が特に好ましい。
(3)その他の成分[任意成分]
本発明の点眼剤は、(A)成分及び(B)成分に加えて、さらに点眼剤において汎用される有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗アレルギー薬成分、ビタミン、アミノ酸、抗菌薬成分又は殺菌薬成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、塩化リゾチーム、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:アシタザノラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
ビタミン:酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、など。
アミノ酸:アミノエチルスルホン酸(タウリン)、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:アルキルポリアミノエチルグリシン、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムなど。
また、本発明の点眼剤は、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、液剤の調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤等の各種添加剤が挙げられる。
担体:水、含水エタノールなどの水性溶媒など。
界面活性剤:POE-POPブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー407など)、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミンなど)、POEソルビタン(具体的には、ポリソルベート80など)、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油など)、POEヒマシ油(具体的には、POE(10)ヒマシ油、POE(35)ヒマシ油など)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(具体的にはステアリン酸ポリオキシル40など)などの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)などの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)など。
pH調節剤:塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ジエタノールアミンなど。
等張化剤:塩化カリウム、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
キレート剤:エデト酸ナトリウム、クエン酸、又はこれらの水和物など。
緩衝剤:クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤などが挙げられる。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂 、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど。
植物油 :ゴマ油、ヒマシ油など。
(4)点眼剤の物性
本発明に係る点眼剤のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。点眼剤のpHとしては、例えば、4.0〜9.5であることが好ましく、5.0〜9.0であることがより好ましく、5.5〜8.5であることが更に好ましい。
また、本発明に係る点眼剤の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。点眼剤の浸透圧比としては、例えば、0.5〜5.0であることが好ましく、0.6〜3.0であることがより好ましく、0.7〜2.0であることが更に好ましく、0.9〜1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、又は糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
上述した成分を含有する本発明の点眼剤の粘度は、1.1〜9000mPa・sであることが好ましい。
本発明において、粘度の測定は、第16改正日本薬局方の一般試験法に記載の粘度測定法に準拠し、25℃における粘度が100mPa・s以上である場合は(2)単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)、25℃における粘度が100mPa・s未満である場合は(3)円すい−平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)にて行う。本発明においては、ローターや回転速度等の条件の選定は、装置の取扱説明書に準拠し、25℃における粘度を測定する。
(5)点眼剤の1滴量
本発明の点眼剤は、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計される。(A)成分及び(B)成分を含有する点眼剤の1滴あたりの滴下量が、5〜25μLとなるように設計されることによって、本発明の霧視抑制作用、滴下量ばらつき抑制作用、点眼実効感向上作用のより一層顕著な効果が奏される。
また、本発明の点眼剤は、1滴あたりの滴下量が7〜20μLとなるように設計されていることが好ましく、9〜16μLとなるように設計されていることがより好ましい。
(6)点眼剤の容器等
本発明の点眼剤は、内容積が4〜30mLである容器に充填されてなることが好ましく、5〜20mLである容器に充填されてなることがより好ましく、6〜10mLである容器に充填されてなることが特に好ましい。
本発明の点眼剤を充填する容器の内容積が上記範囲内にある場合、1滴量が少量であっても点眼しやすく、本発明の効果をより一層顕著に奏することができる。また、後述するように、小さい径の点眼ノズルを用いて点眼する場合にも、滴下量のばらつきを抑制し、使用者に点眼実効感を感じさせるという観点から特に好ましい。尚、このような点眼剤として、マルチドーズ型の点眼剤、即ち製品を一旦開封した後、数回以上に亘り使用される点眼剤であることが好ましい。
本発明の点眼剤が充填された容器に装着される滴下ノズルの一例としては、図1、図2に示す形状のものが挙げられる。本発明の点眼剤が充填された容器に装着される滴下ノズルとしては、滴下口における内径D1が、1.5mm未満であることが好ましく、0.01〜1.0mmであることがさらに好ましく、0.05〜0.8mmであることが特に好ましく、0.1〜0.5mmであることが更に特に好ましく、0.1〜0.4mmであることが最も好ましい。滴下口とは、点眼剤を該容器に充填し、該ノズルを装着した後に、開口した状態で倒立状態にしたときに液滴が形成される出口部を指す。
また、本発明の点眼剤が充填された容器に装着される滴下ノズルの外径としては、ノズルの形状、材質、目的等に応じて適宜設定され、一概に規定することはできないが、例えば8mm以下が好ましく、0.1〜5mmであることが更に好ましく、0.3〜3mmであることが特に好ましく、0.5〜2mmであることが更に特に好ましく、0.5〜1.5mmであることが最も好ましい。本発明における滴下ノズルの外径とは、滴下口付近の注出管胴部における外径を示し、ノズルの先端(滴下口)部を丸める加工が施してあってもよい。
本発明の点眼剤を充填する容器のノズル口径における上記範囲は、1滴あたりの滴下量を5〜25μLとするために適している。
かかるノズルの形状とすることにより、点眼剤の1滴あたりの滴下量を5〜25μLとする事が容易となり、例えば、1滴あたりの滴下量が15μLとなるように点眼剤を効率よく用いることができるため、上述した霧視の抑制効果をはじめとする本発明の効果を顕著に奏することができる。
ノズルは、容器本体とは別成形された構造のものでも、ノズルと容器本体とが一体成型された構造のもの(例えば、1回使い切りタイプの点眼剤など)のいずれであってもよい。
本発明の点眼剤を充填する容器は、プラスチック製が好ましい。該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、エラストマーの何れか1種、これらの共重合体、又はこれらの2種以上の混合体が挙げられる。特に押出の加減等で本願発明の効果を発揮し易い点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート若しくはこれらの共重合体、又はこれらの2種以上の混合体が好ましく、特にポリエチレンテレフタレート製容器が好ましい。
なお、本発明において例えばポリエチレンテレフタレート製容器と記載する場合は、容器の構成材質中にポリエチレンテレフタレートが含有されているものであれば特に限定されないが、容器の構成材質全体の重量に対し、ポリエチレンテレフタレートが50w/w%以上であるものが好ましい。
本発明の点眼剤は、このような材料を主材料とする透明容器(異物を観察するのに差し支えない程度の透明性を備えた容器)に充填されてもよいし、遮光された容器に充填されてもよい。遮光は、例えば上記した透明容器材料に着色剤を添加することにより行ってもよいし、容器をシュリンクフィルムや外箱などで覆うことにより、遮光してもよい。
またノズルの構成素材については、例えば、上記プラスチック容器の構成素材と同様のものが例示される。本発明の点眼剤の液切れを一層良好にさせ、滴下量のばらつきも抑制するという観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエラストマーを構成素材として含むノズルが好ましい。ポリエチレンの種類としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられ、中でも低密度ポリエチレンを構成素材として含むノズルが好ましい。
(7)容器入り点眼剤の物性
本発明の点眼剤は、所定の1滴量を滴下するのに適した容器入りであることが好ましい。係る容器入り点眼剤のスクイズ力は、0.5〜12Nであることが好ましく、1〜10Nであることがさらに好ましく、1.5〜8Nであることが特に好ましい。スクイズ力とは、点眼剤を1滴滴下する際に必要な容器を押す力を示す。本発明の容器入り点眼剤のスクイズ力が上記範囲内にある場合、滴下量のばらつき抑制効果、及び点眼実効感向上効果をより一層顕著に奏することができる。
スクイズ力の測定は、実施例に記載の方法に従って行う。
また、本発明の容器入り点眼剤の滴下時における容器の変位は、0.01〜2.0mmであることが好ましく、0.05〜1.0mmであることが更に好ましく、0.05〜0.5mmであることが特に好ましく、0.07〜0.3mmであることが最も好ましい。 容器入り点眼剤の滴下時における容器の変位とは、点眼剤を1滴滴下する際に必要な容器の変位である。本発明の容器入り点眼剤の滴下時における容器の変位が上記範囲内にある場合、滴下量のばらつき抑制効果、及び点眼実効感向上効果をより一層顕著に奏することができる。
滴下時における容器の変位の測定は、実施例に記載の方法に従って行う。
(8)点眼剤の用途
本発明に係る点眼薬は、一般点眼薬のほか、抗菌性点眼薬、人工涙液及びコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。
なお、上記コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。また、ソフトコンタクトレンズとは、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、SHCLと略記することもある。)及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズでは無いソフトコンタクトレンズ)の双方を包含する。
(9)点眼方法
本発明の点眼剤の滴下方法は特に限定されず、点眼容器、ノズルの形状、使用目的等に応じて、あらゆる角度から点眼することが可能である。本発明の滴下量のばらつき抑制効果を一層顕著に奏するという観点から、滴下口を真下に向けて滴下するのが好ましい。
2.霧視の抑制方法
また、前述したように、本発明の点眼剤は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計されることによって、霧視を抑制することができる。
従って、本発明は、さらに別の観点から、点眼剤に(A)成分として増粘剤、並びに、(B)成分としてテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように該点眼剤を設計する、霧視の抑制作用を該点眼剤に付与する方法をも提供する。
上記方法において、(A)成分、(B)成分が共存するのであれば、それらの添加は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。使用する(A)成分、(B)成分の種類、それらの含有量(または配合量)、それらの含有比率、1滴あたりの滴下量、その他に配合する成分の種類、含有量(または配合量)、点眼剤の製剤形態、容器の種類、ノズルの種類、その組み合わせ、実施方法等については、前記「1.点眼剤」と同様である。
なお、本明細書において、点眼剤に霧視の抑制作用が付与されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
3.1滴量のばらつき抑制方法
また、前述したように、本発明の点眼剤は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように設計されることによって、1滴量のばらつきを抑制することができる。
従って、本発明は、さらに別の観点から、点眼剤に(A)成分として増粘剤、並びに、(B)成分としてテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように該点眼剤を設計する、1滴量のばらつきを抑制する方法をも提供する。
上記方法において、(A)成分、(B)成分が共存するのであれば、それらの添加は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。使用する(A)成分、(B)成分の種類、それらの含有量(または配合量)、それらの含有比率、1滴あたりの滴下量、その他に配合する成分の種類、含有量(または配合量)、点眼剤の製剤形態、容器の種類、ノズルの種類、その組み合わせ、実施方法等については、前記「1.点眼剤」と同様である。
なお、本明細書において、点眼剤の1滴量のばらつきが抑制されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
4.点眼実効感の向上方法
また、前述したように、本発明の点眼剤は、(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように該点眼剤を設計することによって、点眼実効感を向上させることができる。
従って、本発明は、さらに別の観点から、点眼剤に(A)成分として増粘剤、並びに、(B)成分としてテルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、かつ該点眼剤の1滴あたりの滴下量が5〜25μLとなるように該点眼剤を設計する、点眼実効感向上方法をも提供する。
上記方法において、(A)成分、(B)成分が共存するのであれば、それらの添加は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。使用する(A)成分、(B)成分の種類、それらの含有量(または配合量)、それらの含有比率、1滴あたりの滴下量、その他に配合する成分の種類、含有量(または配合量)、点眼剤の製剤形態、容器の種類、ノズルの種類、その組み合わせ、実施方法等については、前記「1.点眼剤」と同様である。
なお、本明細書において、点眼実効感が向上しているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
また、平均滴下量(μL)は、各容器入り点眼剤における平均滴下量(mg)を求め、比重を1として算出した。平均滴下量(mg)の測定方法としては、容器入り点眼剤のノズルの滴下口をほぼ垂直に下に向けて滴下し、1滴滴下毎に滴下重量を測定し、この操作を20回繰り返した値から算出した。
また、各表における組成の単位は、w/v%である。
(1)試料の調製
後掲の表1〜6に示す組成を有する各点眼剤を以下の方法で調製した。即ち、攪拌下に、精製水にカルボキシビニルポリマー等の増粘剤を添加し分散させ、次いで、pH調整剤(水酸化ナトリウム又は塩酸)以外の成分を添加して攪拌溶解した。更に、水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを調整した後、精製水を適量加えて所定の濃度となるよう調製した。
調製した各点眼剤に関して、粘度の測定を行い、また、点眼剤を所定の容器に充填した容器入り点眼剤に関して、スクイズ力の測定、滴下時における容器の変位の測定、点眼時の霧視抑制試験、滴下量のばらつき試験、及び点眼実効感試験を行った。
(2)物性測定方法
(2−1)粘度測定
各点眼剤の粘度を以下の方法で測定した。
25℃における粘度が100mPa・s以上のものは、第16改正日本薬局方 一般試験法 粘度測定法 第2法回転粘度計法に記載されている「(2)単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」の試験法に準拠して、以下の条件で25℃における粘度を測定した。

測定装置、回転数、ローターNo.設定時間
・処方例2−A、2−B、2−C、4−A、4−B、4−C、4−D、以下の増粘剤の1w/v%水溶液−カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース(試験1、試験5)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906:
測定装置_TV−10M、回転数_12rpm、ローターNo._M2、測定時間1分後の粘度
・処方例2−D、2−E、2−F:
測定装置_TV−10M、回転数_3rpm、ローターNo._M2、測定時間1分後の粘度

25℃における粘度が100mPa・s未満のものは第16改正日本薬局方 一般試験法 粘度測定法 第2法回転粘度計法に記載されている「(3)円すい−平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)」の試験法に準拠して、以下の条件で25℃における粘度を測定した。

測定装置、回転数、ローターNo.及び設定時間
・処方例3−D、3−E、3−F:
測定装置_RC−550、回転数_50rpm、ローター_標準コーンローター(1°34’ ×R24)、設定時間_1分後の粘度
・ヒドロキシエチルセルロース(試験3)の1w/v%水溶液:
測定装置_RC−550、回転数_20rpm、ローター_標準コーンローター(1°34’ ×R24) 、設定時間_3分後の粘度
・ポリビニルピロリドンK25の1w/v%水溶液:
測定装置_RC−550、回転数_100rpm、ローター_標準コーンローター(1°34’ ×R24)、設定時間_3分後の粘度
・処方例5−A、5−B:
測定装置_TV-20、回転数_100rpm、ローター_標準コーンローター(1°34’ ×R24)、設定時間_3分後の粘度
・処方例1、5−C、5−D:
測定装置_TV-20、回転数_10rpm、ローター_標準コーンローター(1°34’ ×R24) 、設定時間_3分後の粘度
(2−2)スクイズ力測定
各容器入り点眼剤のスクイズ力を以下の方法で測定した。
試験対象の容器入り点眼剤を、充填後未使用の状態で、滴下口を真下に向けて、2滴滴下した。次に、該容器入り点眼剤を滴下口を真下に向けて垂直な壁面に指で押さえ固定した。次いで、デジタルプッシュプルゲージ(CPU GAUGE 9520A ,アイコーエンジニアリング(株)製)の先端に直径5mmの平板型の治具を取り付けた状態で、容器の側面に圧力を加え、1 滴滴下するときのスクイズ力( N ) を測定した。測定は10回(10滴分)実施し、その平均を求めた。
(2−3)滴下時における容器の変位測定
各容器入り点眼剤の滴下時における容器の変位を、以下の方法で測定した。
試験対象の容器入り点眼剤について、充填後未使用の状態で、オートグラフ(製品名:AUTO GRAPH AGS−X 5kN TRAPEZIUM (SHIMADZU製))を用いて変位とスクイズ力の関係を求めた。その後、予め上記(2−2)の方法に従って求めておいたスクイズ力に相当する容器の変位の値を求めた。尚、オートグラフの測定条件は以下の通りである。
・クロスヘッドスピード :100mm/min
・治具 :Φ5mm
(3)試薬
増粘剤は、1.0w/v%となるように精製水に溶解した場合の25℃における粘度が以下の値を示すものを使用した。(測定条件は(2)物性測定方法(2−1)粘度測定に記載の方法に準じた。)
カルボキシビニルポリマー :1911mPa・s
ヒドロキシエチルセルロース(試験1、試験5) :481.0mPa・s
ヒドロキシエチルセルロース(試験3) :18.6mPa・s
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906 :258.5mPa・s
ポリビニルピロリドンK25 :1.2mPa・s
[試験1]点眼時の霧視抑制試験
表1に示す組成の処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mL及び14.2mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器にそれぞれ6mL、及び13mL充填し、これらの容器にポリエチレン製ノズルを装着した。ポリエチレン製ノズルとしては、内容積7.7mLの容器には(i)5〜15μLの滴下に適したノズル(滴下口の内径0.3mm、外径0.9mm、以下ノズル(i)と記載することもある)、及び内容積14.2mLの容器には(ii)30〜50μLの滴下に適したノズル(滴下口の内径2mm、外径5.5mm、以下ノズル(ii)と記載することもある)を使用した。この容器入り点眼剤を用いて、霧視抑制試験を実施した。
被験者3名に対し、先ず、点眼前に視力を測定した。次に、ノズル(i)を装着した容器入り点眼剤を実施例1、ノズル(ii)を装着した容器入り点眼剤を比較例1として、両眼に比較例1を1回(1滴)点眼させた後、10秒後より点眼後の視力を測定した。十分に目を休ませた後、同様の手順でまず点眼前視力を測定し、次に、実施例1を連続して3回(3滴)点眼させた後、10秒後より点眼後の視力を測定した。
点眼前後における視力をもとに下記式(I)を用いて視力低下率(%)を算出した。
なお、視力の測定は、「マルチコントラスト視力表」(興和株式会社製)を用いて実施した。被験者は装置より3メートル離れた位置に立ち、視力表のチャート1のランドルト環を両目で見て、どの大きさまで判読できるかを調べた。横に並んだ同じ大きさのランドルト環を2つとも判読できれば正読とし、この値をその時点における視力とした。
また、予め、各容器入り点眼剤における平均滴下量(μL)を求めた。
Figure 2017186368
Figure 2017186368
表1に、視力低下率(%)を併せて示した。
実施例1を3回点眼させた場合には、比較例1を1回点眼させた場合に比べて、視力低下率が顕著に抑制されていた。すなわち、1滴の滴下量が少量であった場合には、総滴下量がほぼ同じであるにも関わらず、視力低下が生じにくく、点眼後の霧視が顕著に改善されることが確認された。
尚、実施例1のスクイズ力は2.5Nであり、滴下時の容器の変位は0.12mmであった。
[試験2]滴下量のばらつき評価1
表2に示す組成に従って各処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器に6mL充填し、この容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
ポリエチレン製ノズルとしては、ノズル(i)、及び(iii)30〜50μLの滴下に適したノズル(滴下口の内径2mm、外径6mm、以下ノズル(iii)と記載することもある)を使用した。この容器入り点眼剤をノズルの滴下口をほぼ垂直に下を向けて滴下し、1滴滴下毎に滴下重量を測定した。この操作を20回繰り返すことによって求めた平均滴下量(AVG:mg)、標準偏差(SD:mg)から、下記式(II)によって滴下量のばらつき(変動係数CV:%)を算出した。結果を表2に併せて示す。
Figure 2017186368
Figure 2017186368
*容器入り点眼剤のスクイズ力(N)は下記の通りであった。
実施例2−2−1 5.6
実施例2−2−2 5.4
*容器入り点眼剤の滴下時の容器の変位(mm)は下記の通りであった。
実施例2−2−1 0.24
実施例2−2−2 0.24
表2の結果から、増粘剤としてカルボキシビニルポリマー(以下、CVPと記載することもある)を含有した処方例2−A〜2−Cにおいて、ノズル(iii)を装着した参考例2−1に比較して、ノズル(i)を装着した比較例2−1では、滴下量のばらつきが顕著に増大することが確認された。一方、比較例2−1に、さらにl−メントール、d−カンフルを含有させた場合には、全く意外なことに、滴下量のばらつきが顕著に抑制されることが確認された(実施例2−1−1、2−1−2)。
また、CVPに加えてさらにε-アミノカプロン酸を含有させた処方例2−D〜2−Fの場合においても、ε-アミノカプロン酸を配合しない場合と全く同様の傾向が確認された(比較例2−2、参考例2−2、実施例2−2−1、実施例2−2−2)。
[試験3]滴下量のばらつき評価2
表3及び4に示す組成に従って各処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器に6mL充填し、この容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
ポリエチレン製ノズルとしては、ノズル(i)、及びノズル(iii)を使用した。 この容器入り点眼剤をノズルの滴下口をほぼ垂直に下を向けて滴下し、1滴滴下毎に滴下重量を測定した。この操作を20回繰り返すことによって求めた平均滴下量(AVG:mg)、標準偏差(SD:mg)から、上記式(II)によって滴下量のばらつき(変動係数CV:%)を算出した。
さらに、次式(III)を用いて、対応する比較例に対する滴下量のばらつき(%)を算出した。算出の結果を表3及び4に併せて示す。
Figure 2017186368
尚、対応する比較例は、例えば、実施例3−1−1、実施例3−1−2、参考例3−1−1、参考例3−1−2、参考例3−1−3については、比較例3−1 、実施例3−2−1、実施例3−2−2については、比較例3−2、実施例3−3、参考例3−3−1、参考例3−3−2については、比較例3−3である。
Figure 2017186368
*各容器入り点眼剤におけるスクイズ力(N)は下記の通りであった。
実施例3−1−1 1.6
実施例3−1−2 2.0
実施例3−2−1 2.1
実施例3−2−2 1.9
*各容器入り点眼剤における滴下時の容器の変位(mm)は下記の通りであった。
実施例3−1−1 0.06
実施例3−1−2 0.14
実施例3−2−1 0.10
実施例3−2−2 0.07
*各処方例における粘度(mPa・s)は、下記の通りであった。
処方例3D 3.14
処方例3E 3.19
処方例3F 3.26
Figure 2017186368
尚、実施例3−3のスクイズ力は1.5Nであり、滴下時の容器の変位は0.08mmであった。
表3の結果から、増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと記載することもある)を含有させた処方例3−A〜3−Cにおいて、ノズル(iii)を装着した参考例3−1に比較して、ノズル(i)を装着した比較例3−1では、滴下量のばらつきが顕著に増大することが確認された。また、ノズル(iii)を装着した場合には、HPMCを含有する処方例(参考例3−1−1)にさらにl−メントール又は、d−カンフルを含有させても、滴下量のばらつきは抑制されず、むしろ増大する傾向にあった(参考例3−1−2、参考例3−1−3)
一方、ノズル(i)を装着した場合には、比較例3−1にさらにl−メントール又はd−カンフルを含有させた場合、全く意外なことに、滴下量のばらつきが顕著に抑制されることが確認された(実施例3−1−1、実施例3−1−2)。
また、表3の結果からさらに、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(以下HECと記載することもある)を含有させた場合にも、同様に、ノズル(i)を装着した場合において、HECを含有させた比較例3−2に比較して、さらにl−メントール又はd−カンフルを含有させた場合には、滴下量のばらつきが顕著に抑制されることが確認された(実施例3−2−1、実施例3−2−2)。
さらに、表4の結果から、増粘剤としてポリビニルピロリドンK25(以下PVPと記載することもある)を含有させた場合においても、同様に、ノズル(iii)を装着した参考例3−3−1に比較して、ノズル(i)を装着した比較例3−3では、滴下量のばらつきが増大した。ノズル(iii)を装着した場合には、PVPを含有する参考例3−3−1に、さらにd−カンフルを含有させても、滴下量のばらつきは抑制されず、むしろ増大するのに対し、ノズル(i)を装着した場合には、PVPを含有する比較例3−3にさらにd−カンフルを含有させた場合、滴下量のばらつきが抑制されることが確認された(実施例3−3)。
[試験4]滴下量のばらつき評価3
表5に示す組成に従って各処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器に6mL充填し、この容器にポリエチレン製ノズルを装着した。ポリエチレン製ノズルとしては、ノズル(i)を使用した。
この容器入り点眼剤をノズルの滴下口をほぼ垂直に下を向けて滴下し、1滴滴下毎に滴下重量を測定した。この操作を20回繰り返すことによって求めた平均滴下量(AVG:mg)、標準偏差(SD:mg)から、上記式(II)によって滴下量のばらつき(変動係数CV:%)を算出し、さらに、上記(III)を用いて対応する比較例4に対する滴下量のばらつき(%)を算出した。算出の結果を表5に併せて示す
Figure 2017186368
表5の結果から、ノズル(i)を装着した場合において、CVPを含有させた比較例4と比較して、さらにテトラヒドロゾリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有させた場合には、滴下量のばらつきが抑制されることが確認された(実施例4−1、実施例4−2、実施例4−3)。
[試験5]点眼時の実効感試験
表6に示す組成に従って各処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mL、及び14.2mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器にそれぞれ6mL、及び13mL充填し、この容器にポリエチレン製ノズルを装着した。ポリエチレン製ノズルとしては、内容積7.7mLの容器にはノズル(i)、及び内容積14.2mLの容器にはノズル(ii)を使用した。この容器入り点眼剤を、被験者本人によって1回(1滴)ずつ点眼させて、点眼時の点眼実効感を測定した。点眼実効感とは、自らが点眼をする際に、滴下した点眼剤が眼に入ったことを自覚できる感覚を示す。
具体的には、被験者10名にブラインドで試験液を所定量点眼させ、点眼したことをはっきり認識できる場合を10、点眼したことを全く認識できない場合を0としたVAS(Visual Analog Scale)法を用いて、点眼実効感スコアを求めた。結果を表6に併せて示す。
また、各容器入り点眼剤における平均滴下量(μL)は予め求めておいた。
Figure 2017186368
*各容器入り点眼剤におけるスクイズ力(N)は下記の通りであった。
実施例5−1 2.9
実施例5−2 2.5
*各容器入り点眼剤における滴下時の容器の変位(mm)は下記の通りであった。
実施例5−1 0.12
実施例5−2 0.12
表6に点眼実効感スコアを併せて示した。
処方例5−A、5−Bを充填しノズル(ii)を装着した、参考例5−1、5−2を点眼させた場合には、メントールの有無に関わらず、全被験者において点眼実効感が10となった。一方、ノズル(i)を装着した比較例5−1の場合には、実効感のスコアが低く、さらにメントールを含有させても実効感を殆ど感じられていなかったが(比較例5−2)、意外なことに増粘剤とメントールを併用することで(実施例5−1及び実施例5−2)顕著な点眼実効感の向上が認められた。
[試験6]滴下量のばらつき評価4
表7に示す組成に従って各処方例(点眼剤)を調製し、内容積7.7mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器に6mL充填し、この容器にポリエチレン製ノズルを装着した。ポリエチレン製ノズルとしては、ノズル(i)を使用した。
この容器入り点眼剤をノズルの滴下口をほぼ垂直に下を向けて滴下し、1滴滴下毎に滴下重量を測定した。この操作を20回繰り返すことによって求めた平均滴下量(AVG:mg)、標準偏差(SD:mg)から、上記式(II)によって滴下量のばらつき(変動係数CV:%)を算出し、さらに、上記(III)を用いて対応する比較例に対する滴下量のばらつき(%)を算出した。算出の結果を表7に併せて示す。対応する比較例は、実施例6−1、実施例6−2については、それぞれ比較例6−1、比較例6−2である。
Figure 2017186368
*各容器入り点眼剤におけるスクイズ力(N)は下記の通りであった。
実施例6−1 2.2
実施例6−2 1.7
*各容器入り点眼剤における滴下時の容器の変位(mm)は下記の通りであった。
実施例5−1 0.09
実施例5−2 0.07
表7の結果から、ノズル(i)を装着した場合において、増粘剤を含有させた比較例6-1、比較例6−2と比較して、さらにテルペノイドを含有させた場合には、滴下量のばらつきが抑制されることが確認された(実施例6-1、実施例6−2)。
[製剤例]
表8及び表9(製剤処方例1〜7)並びに表10及び表11(製剤処方例8〜13)に示す製剤処方例(点眼剤)を調製し、所定の容器に充填した後所定のノズルを装着したものを製剤例(容器入り点眼剤)とした。
・製剤例1〜13:製剤処方例1〜13を内容積6mLの容器に充填した後、滴下口における内径が0.1mmであり、外径が0.4mmであるノズルを装着したもの(滴下量:9μL)
・製剤例14〜26:製剤処方例1〜13を内容積8mLの容器に充填した後、滴下口における内径が0.3mmであり、外径が1.0mmであるノズルを装着したもの(滴下量:15μL)
・製剤例27〜39:製剤処方例1〜13を内容積10mLの容器に充填した後、滴下口における内径が0.5mmであり、外径が1.2mmであるノズルを装着したもの(滴下量:18μL)
Figure 2017186368
Figure 2017186368
Figure 2017186368
Figure 2017186368
本発明の点眼剤は、増粘剤の有する機能を維持しつつ霧視を抑制し、1滴量を少なくして点眼する場合に、滴下量のばらつきを抑制し、使用者の点眼実効感を向上させることができる。従って、本発明の点眼剤は、服薬コンプライアンスの向上や確実な治療効果に繋がり、実用性に富み、使用感が良好である。

Claims (1)

  1. (A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5〜25μLであることを特徴とする点眼剤。
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