JP2017186197A - 物理強化ガラスの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この方法は、概略的には、図8に示すように、切断して面取りや洗浄を行った板ガラスを、熱処理工程においてまず600〜690℃まで加熱する。次に加熱した板ガラスの表面にエアを吹き付けて急冷(約550℃以下好ましくは500℃以下)し、さらに50℃以下(好ましくは室温程度)に冷却する。これによりガラスの表・裏面側に表面圧縮応力を発生させる。
加熱したガラスを急冷するための冷却用エアとしては、ブロワーで送風されるエア(ブロワーエアという)やコンプレッサーで圧縮したエア(圧縮エアという)があるが、急冷にはブロワーより圧縮エアを使う方が有効である。
しかし、圧縮エアのみでガラスの冷却を行う場合でも、圧縮エアは加圧時に外気よりも高温(季節により35〜45℃以上)になる。吹き付け時には温度は下がるが、雰囲気温度が高いと圧縮エアの温度も高くなりその分ガラスの冷却が遅れる。また、この方法では、圧縮エアのエアタンクの容量を過度に大きくする必要があり、経済的に引き合わず実際にはあまり使用されていない。
強化ガラスの製造装置(熱処理設備)は、投入されたガラス板を加熱する加熱ゾーンと、加熱した板ガラスを急冷する急冷ゾーン(クエンチエリア)と、急冷後の板ガラスをさらに冷却する冷却ゾーン(クーリングエリア)を含み、急冷ゾーンで板ガラスをエアで急冷するためのコンプレッサー、コンプレッサーで圧縮したエアを貯蔵するコンプレッサータンク、ブロワー等を備える。
とくに季節によって大幅な温度変動があると、エジェクタ効果を利用して冷却効率を高めても、一年を通じて常に同じ品質を維持することは困難である。
したがって、ブロワーとコンプレッサーを併用して急冷する従来の熱処理方法では、この点からも安定した品質維持が困難である。
本発明は、ブロワーと、コンプレッサーと、ガラスを所定温度に加熱する装置と、前記加熱したガラスに前記ブロワーから供給されるブロワーエアと前記コンプレッサーで生成した圧縮エアを吹き付けて冷却する急冷装置と、前記急冷装置で冷却されたガラスを少なくともブロワーエアで外気温度までさらに冷却する冷却装置と、を備えた前記ガラスの表面に表面圧縮応力を生成する物理強化ガラスの製造装置であって、前記圧縮エアを第1の所定温度まで冷却する第1の冷却装置と、前記第1の冷却装置で前記第1の所定温度に冷却した圧縮エアを、除湿のためにさらに第2の所定温度まで冷却する第2の冷却装置と、を有することを特徴とする物理強化ガラスの製造装置である。
図1は、本実施形態で実行する板ガラスに物理強化処理を施す際における、熱処理の手順を図8から抜き出し拡大した図である。
即ち、本発明で実施する物理強化処理により板ガラス、例えばソーダライムガラスを強化する際に、まず板ガラスを加熱炉内で約600〜690℃まで加熱し、加熱した板ガラスを加熱炉から出して搬送ローラで急冷ゾーンに搬送する。急冷ゾーンでは加熱した板ガラスを次の冷却ゾーンに搬送しながらその表面にエアを吹き付けて約500℃以下に急冷する。冷却ゾーンでは、板ガラスを所定回数往復動させ、例えば50℃以下になるまで冷却する。
なお、本実施形態では、急冷工程においては、圧縮エアとブロワーエアを併用するが、その後の冷却工程ではブロワーエアのみを用いて冷却を行ってもよい。
比較のため、まず、従来の圧縮エアの系統について説明する。
従来の圧縮エアの系統は、図2Aに示すように、導管11、13、24で順に接続されたコンプレッサー10と、熱交換器(エアドライヤ)12と、エアタンク14と、エアノズル20で構成されている。
この構成において、コンプレッサー10で所望の圧縮比で圧縮した圧縮エアを、導管11でエアドライヤ12に導入し、次にエアドライヤ12で脱水し、脱水したエアを導管13でエアタンクに導きエアタンク14に溜める。急冷時にはブロワー16からのブロワーエアと共にエアタンク14から導管24を介して供給される圧縮エアをエアノズル20から加熱した板ガラスに吹付ける。
本圧縮エア系統では、コンプレッサー10からの圧縮エアは導管11により水冷クーラー18に導入される。水冷クーラー18では、コンプレッサー10で35〜45℃程度(或いはそれ以上)に昇温された圧縮エアを、第1の所定温度(ガラスに吹き付ける圧縮エアの温度及び次段のエアドライヤ12の冷却能力を考慮して定めた所定の温度;例えば25℃)まで冷却する。次に、冷却した圧縮エアを導管11aによりエアドライヤ12に導入し、エアドライヤ12でさらに第2の所定温度まで冷却(例えば20℃以下に冷却)して、導管13を介してエアタンク14に蓄積する。加熱した板ガラスの冷却時には、エアタンク14から導管24を介して供給した圧縮エアを、ブロワーエアと共にエアノズル20を通してガラス面に吹き付ける。なお、圧縮エアの温度維持のために、導管11、11a、13、24、エアタンク14等は断熱することが望ましい。
本実施形態に係る2段階冷却装置は、図3Aに示すように水冷クーラー18とエアドライヤ12とから成る。ここで、水冷クーラー18は、装置内に略U字状に配置されたパイプ18aと、パイプ18aに対して垂直になるように等間隔に配置された複数の邪魔板18bを備えている。パイプ18a中には図示しない供給源から適宜供給される冷却用の水(冷却水)がパイプ18aの一端部(入口)から導入され、他端部(出口)に向かって流動する。
即ち、導入された圧縮エアは、水冷クーラー18中で、複数の邪魔板18bで区画された領域を通り抜けながらエアドライヤ12に向かって流動する。その流動中に、圧縮エアはパイプ18b中を流動する冷却水により第1の所定温度に冷却される。なお、圧縮エア中の水蒸気の一部は凝縮して水滴となって結露水のドレン18cを通して機外に排出される。
従来のエアドライヤ12だけの構造では、コンプレッサー10で35〜45℃程度に昇温された圧縮エアが直接エアドライヤ12に導入される。エアドライヤ12自体は、本実施形態で説明したものと同じ構造であり圧縮エアを冷却する(なお従来は、圧縮エアは冷却後に改めて図示のヒータHで加熱して元の温度に戻してエアタンク14に導入される)。
そのため、外気の温度の変動により、コンプレッサー10からエアドライヤ12に流入する圧縮エアの温度が変化すると、それに伴い板ガラスに吹き付ける圧縮エアの温度も変化する。そのため、例えば夏季などの高温期間と冬季などの低温期間における温度差の影響で、製造される強化ガラスのロット間に季節ごとの品質差が生じ、四季を通じて同じ表面圧縮応力を備えた品質一様な強化ガラスを得ることはできない。
したがって、本実施形態では、エアドライヤ12に流入する圧縮エアの外気温度の変動の影響が抑制され、エアドライヤ12から出てくる圧縮エアの温度は従来よりも低温(第2の所定温度)でほぼ一定にできる。つまり、本実施形態によれば、エアブロワーからのブロワーエアの温度変動も緩和され、季節などに関わらず比較的安定した温度のエアをエアタンク14に供給可能である。その結果、従来方法に対して相対的に高く安定した表面圧縮応力を外気温の変化に関わらずに生成することができる。
なお、図3は、一例を示すものであって、2段階で冷却する方法であれば本発明に包含される。また、好ましくは圧縮エアの場合と同様に、ブロワーエアを低温化する手段を付加することもできる。
図4Aは、比較のため従来のパイプ状ノズルを備えたエアノズルの断面図であり、図4Bは、本実施形態の強化ガラスの製造装置で用いるエアノズル20の断面図である。
そのため、既に指摘したようにノズルの形状・構造が複雑で、かつその清掃や調整が困難なため、冷却状態を均一に維持することが困難であり、経済性や安定性等で問題がある。
圧縮エア用ノズル24aは、ブロワーエアの導管22中においてその幅方向に挿入された圧縮エアの断面円形の導管24の半周面に、ブロワーエア用ノズル22aのオリフィスに対応して設けたその径方向に複数のオリフィスで構成されている。なお、好ましくは、圧縮エアの導管24とブロワーエアの導管22の断面半円形部分は同芯状であり、かつブロワーエア用ノズル22aと圧縮エア用ノズル24aの各オリフィスは同一直線上に配置される。
なお、図4Bは圧縮エア用ノズルの一例を示すものであって、ブロワーエアの導管が丸パイプ等で構成され、ブロワーエア用ノズルと圧縮エア用ノズルが同芯状であるものであってもよい。
本実施形態では、圧縮エア用ノズルは、単に圧縮エアの導管の周面に複数のオリフィスを設けただけの構成であるから、経済的にみて従来のパイプ状ノズルよりも有利である。さらに、ノズルの構造が単純であるため、その調整や清掃も不要であり常に安定した状態で板ガラスを急冷することができる。
なお、本発明は、圧縮エアが圧縮エア用ノズル24aのオリフィスからブロワーエアの導管22内に吹き出し、そこでブロワーエアと混じり合ってブロワーエア用ノズル22aのオリフィスから吹き出すものであればよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
クエンチエリアにおいては、ノズルは、ローラ30上を移送されてくる加熱されたガラスの両面側に複数個等間隔に、かつ上下で互い違いになるように配置される。
加熱した板ガラス35は、圧縮エアとブロワーエアの両方を用いてその表裏両面からエアが吹き付けられて上述のように急冷される。なお図中32は、板ガラス35のガイド部材である。
図6は、ブロワーエアと圧縮エアを併用した比較例と本実施形態による急冷効果についてのシミュレーションに基づく数値解析結果を示す図である。
図6Aは、板ガラスの厚み6mmの場合における、比較例A〜Cと本発明との比較結果を示す。
即ち、板ガラス冷却用にいずれもエアを用いた場合であって、比較例Aはブロワーエアのみを用いた場合、比較例B、Cは圧縮エアとブロワーエアを併用した場合を示す。
(比較例A;ブロワーのみ使用)
ブロワーエアの風圧は12kPa、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、急冷開始から3秒後の板ガラスの温度は525℃であり、結果として得られた表面圧縮応力は、200MPaであった。
圧縮エアの風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エアの温度25℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、急冷開始から3秒後の板ガラスの温度は483℃であり、結果として得られた表面圧縮応力は、220MPaであった。
(比較例C;2重管構造、但し1段冷却)
圧縮エアの風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エア(2重管構造但しパイプ状ノズルなし)の温度25℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、急冷開始から3秒後の板ガラスの温度は489℃であり、結果として得られた表面圧縮応力は、200MPaであった。
圧縮エアの風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エア(2重管構造、但しパイプ状ノズルなし)の温度20℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、急冷開始から3秒後の板ガラスの温度は463℃であり、結果として得られた表面圧縮応力は、220MPaであった。
(比較例A)
ブロワーエアの風圧は12kPa、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、結果として得られた表面圧縮応力は、180MPaであった。
圧縮エア(2重管構造、但しパイプ状ノズルあり)の風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エアの温度25℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、結果として得られた表面圧縮応力は、195MPaであった。
(比較例C)
圧縮エアの風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エア(2重管構造、但しパイプ状ノズルなし)の温度25℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、結果として得られた表面圧縮応力は、185MPaであった。
圧縮エアの風圧は、300kPa、ブロワーエアの風圧は9kPa、圧縮エア(2重管構造但しパイプ状ノズルなし)の温度20℃、ブロワーエアの温度は45℃、板ガラスの加熱温度は650℃としたとき、結果として得られた表面圧縮応力は、195MPaであった。
以上の比較から明らかなように、本実施例の場合は、パイプ状ノズルを使用しないにも関わらず、得られる冷却効果(したがって表面圧縮応力)が高いことが証明された。加えて、既に述べたように雰囲気温度の影響が抑制されるため、季節に関わらず、或いは雰囲気温度に関わらず常に安定した表面圧縮応力を得ることができる。
なお、比較例は、図6で説明した比較例Cに対応する。
ここでは、(i)ガラス厚5.7mmで、面積が600×900mm、(ii)ガラス厚4.7mmで、面積が600×900mmについて行った性能確認結果を示す。
(i)ガラス厚5.7mmで、面積が600×900mm
ここで、ガラス加熱温度(660〜665℃)、クエンチ搬送速度(0.6〜1.0m/min)、ブロワ風圧(8.7kPa)、ブロワ風温(35℃)、圧縮エア比(450kPa)は比較例及び本実施例とも共通とし、圧縮エア温度のみが比較例では、25℃であるところ、本実施例では、17℃であった。その結果、表面圧縮応力は、比較例では、203MPaであるのに対し、本実施例では225MPaであることが確認できた。
ここで、ガラス加熱温度(660〜665℃)、クエンチ搬送速度(0.6〜1.0m/min)、ブロワ風圧(8.7kPa)、ブロワ風温(35℃)、圧縮エア比(450kPa)は、比較例及び本実施例とも共通とし、圧縮エア温度のみが比較例では、25℃であるところ、本実施例では、17℃であった。その結果、表面圧縮応力は、比較例では、185MPaであるのに対し、本実施例では198MPaであることが確認できた。
図示のように、ガラス厚が6(5.7〜5.8)mm、5(4.7〜4.8)mm、4(3.7〜3.8)mm、3(2.7〜2.8)mmの板ガラスに本発明の強化ガラス方法を適用して熱処理を行ったところ、それぞれ、225MPa、198MPa、175MPa、130MPaの表面圧縮応力が生成された。また、その際に生成されるローラーウェーブは、ガラス厚が6(5.7〜5.8)mm、5(4.7〜4.8mmの板ガラスにおいて、0.3mm未満、ガラス厚が4(3.7〜3.8)mmのものでは、0.5mm未満であった。
このように、加熱板ガラスに対して本発明による急冷を実行することで、比較的高い表面圧縮応力が生成されるとともに、ローラーウェーブも無視し得るレベルであることが分かった。
Claims (5)
- ガラスを所定温度に加熱する工程と、前記所定温度に加熱したガラスに、ブロワーから供給されるブロワーエアとコンプレッサーで生成した圧縮エアを吹き付けて冷却する急冷工程と、急冷工程に続きガラスを少なくともブロワーエアで外気温度までさらに冷却する冷却工程とを有し、前記ガラスの表面に表面圧縮応力を生成する物理強化ガラスの製造方法であって、
前記圧縮エアを第1の所定温度まで冷却する第1の冷却工程と、前記第1の冷却工程で前記第1の所定温度に冷却した圧縮エアを、除湿のためにさらに第2の所定温度まで冷却する第2の冷却工程と、
を有することを特徴とする物理強化ガラスの製造方法。 - 請求項1に記載された物理強化ガラスの製造方法において、
前記急冷工程において、圧縮エアを圧縮エアの導管に設けたオリフィスから前記ブロワーエアの導管中に吐出し、前記ブロワーエアのオリフィスから前記ブロワーエアと共に、前記ガラスに吹き付けることを特徴とする物理強化ガラスの製造方法。 - ブロワーと、コンプレッサーと、ガラスを所定温度に加熱する装置と、前記加熱したガラスに前記ブロワーから供給されるブロワーエアと前記コンプレッサーで生成した圧縮エアを吹き付けて冷却する急冷装置と、前記急冷装置で冷却されたガラスを少なくともブロワーエアで外気温度までさらに冷却する冷却装置と、を備えた前記ガラスの表面に表面圧縮応力を生成する物理強化ガラスの製造装置であって、
前記圧縮エアを第1の所定温度まで冷却する第1の冷却装置と、
前記第1の冷却装置で前記第1の所定温度に冷却した圧縮エアを、除湿のためにさらに第2の所定温度まで冷却する第2の冷却装置と、
を有することを特徴とする物理強化ガラスの製造装置。 - 請求項3に記載された物理強化ガラスの製造装置において、
前記圧縮エアのノズルは、前記ブロワーエアのノズル内に配置され、
前記圧縮エアのノズルと、前記ブロワーエアのノズルは、同芯状に配置されそれぞれ複数のオリフィスを備えた円周面部分を有し、前記複数のオリフィス同士は、互いに前記同芯状の円弧の半径方向同一直線上になるように配置したことを特徴とする物理強化ガラスの製造装置。 - 請求項3又は4に記載された物理強化ガラスの製造装置において、
前記第1の冷却装置は、水冷の熱交換器であることを特徴とする物理強化ガラスの製造装置。
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