JP2017184549A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】センサレス制御により駆動される電動ポンプ用のモータを始動して、流体圧回路に初期圧力を与える際にモータの回転速度が急落しても適切にモータを制御する。【解決手段】低回転速度領域RLでは、第1位置演算方式でモータを制御し、高回転速度領域RHでは、第1位置演算方式とは異なる第2位置演算方式でモータを制御し、モータを始動後、回転速度制御中に、モータの回転速度RSが下降した後、再び上昇して、目標回転速度RS1を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでは、第1位置演算方式を用いた制御方式でモータを制御する始動時制御を行い、その後、モータの回転速度RSと切換回転速度THとに基づいて制御方式を切り換えてモータを制御する。【選択図】図4

Description

本発明は、電動ポンプを駆動するモータを制御するモータ制御装置に関する。
永久磁石を用いたモータでは、ロータの位置(磁極位置)を検出するために、レゾルバなどの回転センサが利用される。しかし、小型化やコストダウンなどを目的として、そのような回転センサを無くし、磁極位置に応じた電気的現象に基づいて、電気的に磁極位置を検出するセンサレス磁極検出が行われる場合がある。例えば、ロータの回転によってステータコイルに生じる誘導起電力を利用して電気的に磁極位置を検出することができる。但し、この方法は、ロータが停止している場合や、低速で回転している場合には、誘導起電力が生じなかったり、誘導起電力が小さかったりすることから、精度良く磁極位置を検出することができない。そこで、低回転速度領域では、例えば、高周波の観測信号をモータに与えてその応答により磁極位置を推定する方法が用いられる。
モータが停止している状態からの幅広い回転速度範囲でモータをセンサレス制御する場合、モータが停止している状態から低回転速度の場合にそのような高周波の観測信号を印加する方法を用い、モータの回転速度が相対的に高回転速度の場合に上述したような誘起電圧に基づく方法を用いてロータの回転位置を検出するように制御方式を切り換える場合がある。しかし、電動ポンプを駆動制御するような場合には、流体の供給先の状態によって流体の流れが妨げられて、モータの回転速度が急落する場合がある。例えば、電動ポンプから流体を吐出して流体圧回路に初期圧力を与えるように、高周波印可方式によりモータを始動して回転速度を上げていくと、位置検出方式は誘起電圧方式となる。この状態で吐出先の圧力が急激に上がる現象が生じると、モータの回転速度がゼロ近くまで急激に低下して、位置検出方式の切り換えが間に合わずに、位置検出ができなくなり、モータを制御できなくなる場合がある。
特開2004−166436号公報(特許文献1)には、電動流体ポンプ(1)を駆動するブラシレスDCモータ(2)を、センサレス駆動回路(5)を用いて駆動制御する制御装置(3)が開示されている(背景技術の説明において括弧内に示す符号は、特許文献1のもの。)。この制御装置(3)は、ブラシレスDCモータ(2)のロータの回転によってステータコイルに生じる誘起電圧に基づいて、ロータの回転位置を検出する位置検出部(21)を有している。一方、この制御装置(3)は、モータ(3)の回転速度が低い場合や、モータ(3)が停止している場合には、モータにステップ信号を与えてステップ駆動させる。
特許文献1において、モータ(2)は、通常は「モータ電流制御」により制御され、モータ(2)の回転速度が予め定められた最低回転速度以下となると、「モータ回転数制御」に切り換えられる。「モータ電流制御」は,モータ電流値と指令値との偏差に基づく制御であり、「モータ回転数制御」はモータ(2)への通電方法を、180度通電など、3相各相の通電信号が切り換わりの際に重なるようなラップ通電とする制御である。しかし、この回転速度の変化は、負荷変動が生じ、電流フィードバック制御の影響でモータ電圧が下がり、回転速度が低下するようなケースを想定している(特許文献1[0009]等)。上述したように、吐出先の圧力が急激に上がってモータの回転速度がゼロ近くまで急激に低下するようなケースは想定されておらず、やはりモータが制御できなくなるおそれがある。
特開2004−166436号公報
上記背景に鑑みて、センサレス制御により駆動される電動ポンプ用のモータを始動して、流体圧回路に初期圧力を与える際にモータの回転速度が急落しても適切にモータを制御できることが望まれる。
磁気的突極性を有する状態で永久磁石が配置されたロータとステータコイルが巻き回されたステータとを備えたモータであって、少なくとも流体圧制御弁に対して流体を吐出する電動ポンプを駆動する当該モータを制御するモータ制御装置は、1つの態様として、
前記モータの回転速度が予め規定された切換回転速度よりも低い低回転速度領域では、第1位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める制御方式で前記モータを制御し、
前記モータの回転速度が前記切換回転速度以上の高回転速度領域では、前記第1位置演算方式とは異なる第2位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める制御方式で前記モータを制御し、
前記第1位置演算方式により前記ロータの磁極位置を演算可能な最大の回転速度を上限回転速度として、
前記モータが停止している状態から前記モータを始動後、前記モータの回転速度を前記上限回転速度以下の目標回転速度に近づけるように回転速度制御を行い、当該回転速度制御中に、前記モータの回転速度が下降した後、再び上昇して、前記目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでは、前記第1位置演算方式を用いた制御方式で前記モータを制御する始動時制御を行い、
その後、前記モータの回転速度と前記切換回転速度とに基づいて制御方式を切り換えて前記モータを制御する。
モータの始動後の目標回転速度は、上限回転速度以下であるから、目標回転速度が切換回転速度よりも高い回転速度であっても、第1位置演算方式を適用することができる。第1位置演算方式を用いた制御方式は、モータを始動した後、モータの回転速度が一旦下降した後、再び上昇して、目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまで継続される。このため、モータを始動した後、流体圧回路に初期圧力を与えるために加速している途中でモータの回転速度が急落した場合でも、モータの制御方式は第1位置演算方式である。従って、モータの回転速度が急落しても、位置検出方式を切り換えずに位置検出ができ、モータを制御し続けることができる。モータが目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転した後、つまり、始動時制御の完了後は、モータは、回転速度と切換回転速度とに基づいて制御方式を切り換えて制御される。従って、モータは、回転速度に応じた適切な制御方式を選択して、適切に制御される。このように、本構成によれば、センサレス制御により駆動される電動ポンプ用のモータを始動して、流体圧回路に初期圧力を与える際にモータの回転速度が急落しても適切にモータを制御することができる。
尚、始動時制御における判定、つまり、モータの回転速度が下降した後、再び上昇して、安定して回転する現象が発生したことの判定は、モータの回転速度を判定の物理量とする形態には限定されない。例えば、モータの回転速度が下降する際には、モータのトルクが上昇するなど、変化を伴っているから、モータのトルク(例えば、最大出力トルクや最大変化率(最大トルクレート))を判定の物理量として、上記現象の発生を判定してもよい。また、電動ポンプを含む装置の構造は既知であるから、試験やシミュレーション等によって、始動時制御を完了するまでの制御期間を予め設定しておき、当該制御期間を経過したことによって当該現象の発生を判定してもよい。
モータ制御装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
車両用駆動装置の構成を模式的に示すブロック図 電動ポンプを含む油圧回路を模式的に示す図 モータ制御装置の構成の一例を模式的に示すブロック図 始動時制御実行時のモータの回転速度及びライン圧を示す波形図 dq軸直交座標系とδγ軸直交座標系との関係を示す図 αβ軸直交座標系とdq軸直交座標系との関係を示す図 モータ制御の手順を示すフローチャート 始動時制御実行時のモータの指令値及び回転速度の模式的波形図 始動時制御実行時のモータの指令値、回転速度、トルクの模式的波形図 始動時制御未実行時のモータの指令値及び回転速度の模式的波形図 始動時制御未実行時のモータの回転速度及びライン圧を示す波形図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、図1〜図3に示すように、車両の動力伝達装置の伝達状態を制御するための流体圧(オイル圧)を生成する電動ポンプ50を駆動するモータ30(電動ポンプ用回転電機)を制御するモータ制御装置1を例として説明する。
図1は、車両の動力伝達装置の一例としての車両用駆動装置100の構成を模式的に示している。車両用駆動装置100は、内燃機関(EG:Engine)70と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関70の側から順に、内燃機関70、内燃機関分離クラッチ75、回転電機(M/G:Motor/Generator)80、変速装置(TM:Transmission)90を備えている。車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源となる原動機60として、内燃機関70及び回転電機80を備えた、いわゆる1モータ・パラレル方式のハイブリッド駆動装置である。内燃機関70は、公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどである。回転電機80は、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機であり、電動機としても発電機としても機能することができる。
変速装置90は、変速比(=入力側の回転速度/出力側の回転速度)を変化させることができる自動変速装置である。変速装置90は、変速装置90に伝達された回転速度を、設定された変速比で変速すると共に、変速装置90に伝達されたトルクを変換して変速装置90の出力軸に伝達する。例えば、変速装置90は、遊星歯車機構等の歯車機構及び複数の係合装置(クラッチやブレーキ等)を備えた有段変速機構とすることができる。或いは、変速装置90は、ベルトやチェーンを渡して連結された2つのプーリーの径を変化させることで連続的な変速を可能にする無段変速機構(CVT : Continuously Variable Transmission))であってもよい。
内燃機関70と回転電機80とは、内燃機関分離クラッチ75を介して駆動連結されている。内燃機関70の出力軸である第1回転軸X1と、回転電機80の入力軸(ロータ軸と等価)である第2回転軸X2とは、内燃機関分離クラッチ75が係合している状態で一体的に回転するように連結される。変速装置90の入力軸は回転電機80の出力軸(ロータ軸と等価)に、本実施形態では固定的に駆動連結されている。変速装置90の入力軸及び回転電機80の出力軸(ロータ軸と等価)は、第3回転軸X3である。変速装置90の出力軸X4は、例えばディファレンシャルギヤ(出力用差動歯車装置)等によって2つに分岐した車軸を介して車輪Wに駆動連結されている。
尚、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指す。具体的には、「駆動連結」とは、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、上述したような、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等、及び、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれる。
図2は、電動ポンプ50(電動オイルポンプ)を含む油圧回路を模式的に示している。電動ポンプ50(EOP:Electric Oil Pump)は、機械式ポンプ40(MOP:Mechanical Oil Pump)と並列に油圧制御弁42(流体圧制御弁)に対して接続されている。油圧回路による油圧の供給先は不図示であるが、例えば、内燃機関分離クラッチ75を制御する係合油圧回路、変速装置90の係合装置を制御する変速制御油圧回路、変速装置のシフトレンジの位置やパーキングのロック状態を制御するパーキング・バイ・ワイヤ(PBW:Parking-by-wire)回路、などに油圧(流体圧)が供給される。また、回転電機80や、内燃機関分離クラッチ75の潤滑用のオイルも、油圧回路を介して供給される。
機械式ポンプ40は、例えば、内燃機関70の出力軸(第1回転軸X1)に連結されている。内燃機関分離クラッチ75が係合している状態では、内燃機関70の出力軸と回転電機80のロータ軸とは同期回転する。従って、機械式ポンプ40は、内燃機関70の出力軸(第1回転軸X1)及び回転電機80のロータ軸(第2回転軸X2又は第3回転軸X3)に、例えばワンウェイクラッチ等を介して接続されていてもよい。また、機械式ポンプ40は、内燃機関70が停止中でも駆動できるように、回転電機80のロータ軸(第2回転軸X2又は第3回転軸X3)に接続されていてもよい。何れにせよ、機械式ポンプ40は、車両の車輪Wを駆動する原動機60(内燃機関70、回転電機80)により駆動される。
電動ポンプ50は、交流のモータ30によって駆動される。このモータ30は、磁気的突極性を有する状態で永久磁石が配置されたロータとステータコイル31が巻き回されたステータとを備えている。モータ30を制御対象とするモータ制御装置1は、回転速度ωの目標値である回転速度指令ωと、実際の回転速度ω(本実施形態では後述する推定回転速度ω^)との偏差に基づいて、モータ30をフィードバック制御する。詳細は後述するが、モータ制御装置1は、モータ30の回転状態(磁極位置θや回転速度ω)をレゾルバ等の回転センサを用いることなく、いわゆるセンサレスで検出する機能を備えている。
モータ制御装置1は、不図示の上位のECU等からの速度指令ωに基づいて、モータ30を回転速度制御する。電動ポンプ50のトルクは、下記の式(1)に示すように、イナーシャ(J)と回転速度(ω)の時間微分との積と、流体の粘性(Dw)との和で表される。尚、“ω”に付加されているドット“・”は“Iq”の時間微分を意味している。
Figure 2017184549
流体の粘性(Dw)は、モータ制御装置1の制御対象外であるから、電動ポンプ50による流体圧の生成に寄与するトルク(T)の制御は、モータ30の回転速度ωを対象として行うことが好ましい。このため、本実施形態では、モータ30は、回転速度ωを制御対象とする回転速度制御により駆動される。また、電動ポンプ50を駆動するモータ30は、電動ポンプ50が停止状態から立ち上がる際、つまり低速回転速度領域でも充分なトルクを発揮することが望ましい。電動ポンプ50が停止した状態では、オイルの動きもなくイナーシャを期待することはできない。従って、迅速に回転速度ωを上げることができるトルクを出力することが求められる。また、環境温度が低い時(特に氷点下の場合など)には、オイルの粘性も高くなり、流体圧を得るために、より高いトルクが求められる。回転速度制御は、公知のV/f制御などに比べて、モータ30の低回転速度・高トルク領域から良好な応答性を有する制御が可能である。詳細は後述するが、モータ制御装置1は、モータ30の停止時から高速回転速度での回転時までの広い回転速度範囲において精度良く磁極位置を推定すると共に、高い安定性と高い応答性を備えてモータ30を駆動制御する。
本実施形態において、モータ30は、埋込型永久磁石同期モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor : IPMSM)であり、ロータの永久磁石のN極方向の磁気特性と電気的にこれと垂直な方向(電気角で90°ずれた方向)との磁気特性とが異なる突極性(逆突極性を含む)を有する。モータ制御装置1は、この突極性を利用して、モータ30の停止時や低速回転時においてもセンサレスで磁極位置や磁極の方向、回転速度などの回転状態を判定する。従って、モータ30は、突極性を有する他の方式のモータ、例えば、シンクロナスリラクタンスモータであってもよい。
モータ制御装置1は、モータ30の回転速度(RS[rpm],ω)が予め規定された切換回転速度THよりも低い低回転速度領域RLでは、ステータコイル31に対して高周波の観測信号を印加し、当該観測信号への応答成分としてモータ30からのフィードバック電流に含まれる高周波成分に基づいてロータの磁極位置を演算する第1位置演算方式を用いた制御方式(第1制御方式)でモータ30を制御する。また、モータ制御装置1は、モータ30の回転速度(RS,ω)が切換回転速度TH以上の高回転速度領域RHでは、ロータの回転によってステータコイル31に生じる誘起電圧に基づいてロータの磁極位置を演算する第2位置演算方式を用いた制御方式(第2制御方式)でモータ30を制御する。
詳細は後述するが、第1位置制御方式は、観測信号の印加や、応答成分を取り出す演算などが必要なため、第2位置演算方式に比べて応答性が低い。従って、ロータの回転速度が、第2位置演算方式が可能な回転速度に達すると速やかに第2制御方式に制御方式を切り換えることが好ましい。このため、切換回転速度THは、ロータの回転速度(周波数)が観測信号の周波数に近くなって第1位置演算方式による磁極位置の演算が困難となる回転速度よりも充分に低い回転速度に設定されている。従って、第1位置演算方式によりロータの磁極位置を演算可能な最大の回転速度である上限回転速度は、切換回転速度THよりも高い回転速度である。
ここで、車両が停車した状態から、原動機60を始動する際には、油圧回路に油圧を生じさせるために、油圧回路にオイルを供給する必要がある。原動機60が停止している状態では、機械式ポンプ40は停止しているから、油圧回路の油圧制御弁42にオイルを供給するポンプは、電動ポンプ50のみである。図11に示すように、電動ポンプ50のモータ30を始動して回転速度(RS)を上げていくと、切換回転速度TH(ここではTH1)において低回転速度領域RLから高回転速度領域RHに入り、制御方式が第1位置演算方式を用いた制御方式から、第2位置演算方式を用いた制御方式に移行する(時刻t2)。オイルの粘性が高い場合、油圧回路のライン圧PLが目標値であるライン圧指令PLを大きく超えて急激に上昇する現象が生じることがある(時刻tb)。モータ30は、このような急激な圧力の上昇に対して回転速度が急激に低下して、低回転速度領域RLの回転速度となる。この時、モータ30は、第2位置演算方式を用いた制御方式により制御されており、回転速度の急落に対応して回転速度制御を行うことができない。その結果、モータ30を制御できなくなってしまう。また、これにより電動ポンプ50も停止状態となるから、油圧回路のライン圧PLもライン圧指令PLに到達しないまま低下してしまう。
そこで、本実施形態では、図4に示すように、モータ制御装置1は、モータ30が停止している状態からモータ30を始動後、モータ30の回転速度を上限回転速度以下の目標回転速度RS(RS1)に近づけるように回転速度制御を行い、当該回転速度制御中に、モータ30の回転速度(RS)が一旦下降した後、再び上昇して、目標回転速度(RS1)を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでは、第1位置演算方式を用いた制御方式でモータ30を制御する始動時制御を行う。そして、その後、モータ制御装置1は、モータ30の回転速度(RS)と切換回転速度THとに基づいて制御方式を切り換えてモータ30を制御する。
図4に示すように、モータ制御装置1は、回転速度が一旦下降して再上昇し、安定して回転する状態が安定期間Tsを経過した後、目標回転速度RSを“RS1”から“RS2”に上昇させて、回転速度制御を行う。基本的には、安定期間Tsを経過したことにより、始動時制御が終了する(図7を参照して後述するが、第2制御方式への移行制限の解除(#8)により始動時制御が終了する。)。この際、切換回転速度THも通常の回転速度制御における“TH1”を“TH2”に変更してもよい(ここでは“TH2=RS2<上限回転速度”)。この場合、制御方式が第2制御方式に切り換わるのは、回転速度RSが“RS2”に達した時点である(時刻t5)。従って、実質的に時刻t5まで始動時制御が延長されていると見ることもできる。当然ながら、切換回転速度THは、通常の回転速度制御における“TH1”としたままでもよい。この場合には、回転速度RSが“TH1”に達した時点で制御方式が第2制御方式に切り換わる(時刻t3)。
以下、モータ制御装置1によるそのような始動時制御を含むモータ制御について詳細に説明する。始めに、ベクトル制御、位置演算方法について説明する。モータ30は、直流電源21から電力の供給を受けて動作する。交流のモータ30と直流電源21との間には、直流と交流との間で電力を変換するインバータ23が接続されている。直流電源21は、例えばバッテリ等の充電可能な二次電池である。インバータ23は、直流電源21の直流電力を複数相の交流に変換してモータ30に供給する。
インバータ23は、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC−MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC−SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN−MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などのパワー半導体素子を適用すると好適である。直流と複数相の交流(ここでは3相交流)との間で電力変換するインバータ23は、よく知られているように複数相(ここではU相、V相、W相の3相)のそれぞれに対応する数(ここでは3つ)のアームを有するブリッジ回路により構成される。
図3に示すように、モータ制御装置1は、インバータ制御部8と回転状態情報演算部7とを備えて構成されている。インバータ制御部8及び回転状態情報演算部7は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されたECU(electronic control unit)として構成されている。本実施形態において、インバータ制御部8は、ベクトル制御法を用いて、インバータ23を介してモータ30を駆動制御する。回転状態情報演算部7は、磁極位置や回転速度をステータコイルに流れる電流から推定する。インバータ制御部8は、回転状態情報演算部7により推定された磁極位置や回転速度を利用して、電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御部8及び回転状態情報演算部7は、種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウェアとソフトウェア(プログラム)との協働により実現される。
インバータ23は、インバータ制御部8が生成するスイッチング制御信号Sに応じてスイッチング動作する。インバータ23とインバータ制御部8との間には、必要に応じて電圧変換回路や絶縁回路などを有して構成されているドライブ回路(不図示)が備えられている。ドライブ回路は、インバータ制御部8が生成したスイッチング制御信号Sの駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めてスイッチング素子の制御端子(ゲート端子やベース端子など)に中継する回路である。
モータ30は、インバータ制御部8によりスイッチング制御されるインバータ23を介して、所定の出力トルク及び回転速度で駆動される。この際、モータ30の各ステータコイルに実際に流れる電流の値がインバータ制御部8にフィードバックされる。このため、インバータ23の各相アームとモータ30の各相のステータコイル31との間に設けられたバスバーなどの導体を流れる電流(Iu,Iv,Iw)が、電流センサ9により検出される。インバータ制御部8は、この実電流(フィードバック電流)とステータコイルに流す電流を指定する電流指令(Id,Iq)との偏差に対してPI制御(比例積分制御)やPID制御(比例積分微分制御)を実行してモータ30を駆動制御する。
ここで、インバータ制御部8によるベクトル制御について簡単に説明する。インバータ制御部8は、トルク指令演算部11と、トルク制御部12(電流指令演算部)と、電流制御部13(電圧指令演算部)と、変調制御部14と、3相2相座標変換部15とを備えている。また、ベクトル制御におけるベクトル空間(座標系)は、モータ30のロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と当該d軸に電気的に直交するq軸とのdq軸ベクトル空間(dq軸直交座標系)である。
本実施形態において、モータ30は、不図示の上位のECU等からの回転速度指令ωに基づいて、回転速度制御される。トルク指令演算部11は、回転速度指令ω及び実際の回転速度(ここでは後述する推定回転速度ω^)に基づき、回転速度制御を実行してトルク指令Tを演算する演算器(ASR:Automatic Speed Regulator)である。尚、本実施形態では、レゾルバ等の回転センサを用いることなくセンサレスでモータ30の回転を検出する。従って、実際の回転速度は、回転状態情報演算部7により推定される推定回転速度であり、図3に示すように^(ハット)付きのω(便宜上、文中ではω^と表記する。)である。トルク制御部12は、同一のトルク(ここではトルク指令T)を発生させる電流ベクトルのうちで,電流振幅を最小にする制御(最大トルク制御)を行う演算器(MTPA Controller:Maximum torque per ampere controller)である。トルク制御部12は、トルク指令Tに応じてベクトル制御の電流指令(Id,Iq)を設定する。電流指令(Id,Iq)は、上述したdq軸直交座標系に対応して設定される。
電流制御部13は、定電流(ここでは電流指令(Id,Iq)を出力するように制御する演算器(ACR:Automatic Current Regulator)である。電流制御部13は、dq軸直交座標系における電流指令(Id,Iq)と、フィードバック電流(Id,Iq)との偏差を例えばPI制御して、dq軸直交座標系における電圧指令(Vd,Vq)を演算する。フィードバック電流(Id,Iq)は、モータ30の各ステータコイルに流れる3相電流の検出値が、3相2相座標変換部15により2相のdq軸直交座標系に座標変換されてフィードバックされたものである。変調制御部14は、キャリア周波数に応じて直流を交流に変調する変調パターンを生成する。電圧指令(Vd,Vq)は、変調制御部14において3相の電圧指令に座標変換される。また、変調制御部14は、この3相の電圧指令に基づいてインバータ23をスイッチング制御するスイッチング制御信号Sを、例えばPWM(Pulse Width Modulation)により生成する。
変調制御部14及び3相2相座標変換部15における座標変換は、ロータの磁極位置θに基づいて行われる。つまり、モータ30をベクトル制御するためには、現実の3相座標系(3相空間)と2相のdq軸直交座標系との間での相互の座標変換が必要である。このため、ロータの磁極位置θを精度良く検出する必要がある。本実施形態では、レゾルバなどの回転検出装置を備えることなく、ロータの磁極位置θを推定するセンサレス制御を採用している。従って、磁極位置θは推定磁極位置であり、図3に示すように^付きのθ(便宜上、文中ではθ^と表記する。)である。
モータ30が回転中においては、ロータの回転によってステータコイルに誘起電圧が生じる(ロータの回転による誘導起電力)。このため、フィードバック電流Id,Iqに誘導起電力による脈動成分が含まれ、この脈動成分を検出することによって回転速度ω(推定回転速度ω^)を演算することができる。また、この推定回転速度ω^から磁極位置θ(推定磁極位置θ^)を演算することができる。一方、モータ30が停止している際には誘導起電力は生じず、モータ30が低速で回転している際には誘導起電力も小さいのでフィードバック電流(Id,Iq)に含まれる脈動成分も小さくなる。このため、回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)の演算には、別の手法が用いられる。例えば、モータ30が停止中あるいは低速で回転中の場合には、電気的な刺激となる高周波の観測信号(観測電流又は観測電圧)をモータ30(ステータコイル31)に印加し、その応答から回転速度ω(ω^)並びに磁極位置θ(θ^)を演算する。
図3に示すように、本実施形態では、相対的に回転速度が低い低回転速度領域RLにおいて回転速度ω(ω^)並びに磁極位置θ(θ^)を演算する第1位置演算部5(低速域位置演算部)と、相対的に回転速度が高い高回転速度領域RHにおいて回転速度ω(ω^)並びに磁極位置θ(θ^)を演算する第2位置演算部3(高速域位置演算部)との2つの位置演算部を備える。第2位置演算部3は、誘導起電力(誘起電圧)を利用し、第1位置演算部5は、高周波の観測信号を用いて回転速度ω(ω^)並びに磁極位置θ(θ^)を演算する。第2位置演算部3の演算結果(ω^及びθ^)と、第1位置演算部5の演算結果(ω^及びθ^)とは、後述するように切換部4によって選択されて、トルク指令演算部11や変調制御部14、3相2相座標変換部15で利用される。また、切換部4は、スイッチ6を制御して、高周波の観測信号(ここでは“Vd ”)を印加するか否かの切り換えも行う。本実施形態では、制御信号(制御フラグ)“sw”により、観測信号“Vd ”を印加するか、ゼロ値を印加するかがスイッチ6において選択される。
図3に模式的に示すように、切換部4は、モータ30の回転速度(ω又はRS[rpm])及びトルク[Nm]により規定された回転特性マップを有している。図中、“BL”は、低回転速度領域RL(第1回転域)と高回転速度領域RH(第2回転域)との境界を示している。境界BLは、連続した直線や曲線である必要はなく、階段状であってもよい。
上述したように、回転状態情報演算部7は、第1位置演算部5と第2位置演算部3との2つの位置演算部を備えている。また、モータ制御装置1は、第1位置演算部5により磁極位置θ(θ^)を演算してモータ30を制御する第1制御方式と第2位置演算部3により磁極位置θ(θ^)を演算してモータ30を制御する第2制御方式との少なくとも2つの制御方式によりモータ30を制御する。モータ制御装置1は、切換部4が、第1位置演算部5による第1位置演算方式の演算結果と、第2位置演算部3による第2位置演算方式の演算結果とを切り換えることにより、適切な磁極位置θ(θ^)等を用いてモータ30をフィードバック制御する。以下、第2位置演算部3及び第1位置演算部5による回転状態情報の演算手法について説明する。
第2位置演算部3は、ロータの回転によってステータコイルに生じる誘起電圧に基づいてロータの磁極位置θ(θ^)を演算する。本実施形態では、誘起電圧を利用した手法の1つとして、“拡張誘起電圧モデル”によりロータの磁極位置θ(θ^)を演算する形態を例示する。即ち、本実施形態では、第2位置演算部3は、d軸電流によりロータに発生する磁束の回転により発生する誘起電圧、ステータ側のq軸のインダクタンスに流れる電流の変化分により発生する誘起電圧、永久磁石の磁束の回転により発生する誘起電圧を合算した拡張誘起電圧を用いた“拡張誘起電圧モデル”によりロータの磁極位置θ(θ^)を演算する。磁気的突極性を有する回転電機の回転座標系(dq軸直交座標系)での一般的な回路方程式は、下記式(2)で表される。ここで、pは微分演算子、Ld,Lqはそれぞれd軸インダクタンス及びq軸インダクタンス、Kは誘起電圧定数である。
Figure 2017184549
この一般的な誘起電圧モデルを用いて、第2位置演算部3を構成することも可能であるが、本実施形態では、回転電機の仕様に依存して推定精度の低下を招く可能性が低い“拡張誘起電圧モデル”に基づいて第2位置演算部3が構成されている。このような技術的背景については、市川真士、他による論文“拡張誘起電圧モデルに基づく突極方永久磁石同期モータのセンサレス制御(Sensorless Controls of Salient-Pole Permanent Magnet Synchronous Motors Using Extended Electromotive Force Models, T.IEE Japan, vol. N0.12, 2002)”に詳しいので、ここでは詳細な説明は省略する。
この論文によれば、式(2)に含まれる位置情報は、d軸とq軸との違いとして考えることができる。つまり、式(2)の右辺第1項の行列の対角成分及び逆対角成分のインダクタンスの違いと、右辺第2項の誘起電圧項に位置情報が含まれる。この位置情報を1つにまとめると、式(2)は、下記式(3)に書き直すことができる。“Iq”に付加されているドット“・”は“Iq”の時間微分を意味しており,ドットの付いた変数に対してのみ微分を作用させるため、式(2)の微分演算子pとは区別した表記としている。
Figure 2017184549
式(3)に示す電圧方程式を“拡張誘起電圧モデル”と称し、式(3)の第2項を下記式(4)に示すように、“拡張誘起電圧”と定義する。
Figure 2017184549
式(4)の右辺を部分的に展開した第1項“(Ld−Lq)ωId”は、d軸電流によりロータに発生する磁束の回転により発生する誘起電圧を示している。式(4)の同第2項“(Ld−Lq)Iq”は、ステータ側のq軸のインダクタンスに流れる電流の変化分により発生する誘起電圧を示している。式(4)の同第3項“ωK”はロータに取り付けられた永久磁石の磁束の回転により発生する誘起電圧を示している。つまり、回転電機の永久磁石とインダクタンスにおける位置情報は、全て“拡張誘起電圧”に集約されていることになる。詳細な説明は、市川氏らの論文に詳しいので省略するが、式(3)をモータ30のステータに設定された固定座標系(例えばαβ軸直交座標系)に変換すると、磁極位置の推定の際に処理が困難な値(論文によれば“2θ”)を含む項が存在しなくなるため、推定のための演算が容易となる。一般的な誘起電圧モデルを用いた磁極位置の演算の際には近似を用いる必要が生じて推定精度を低下させる可能性があるが、拡張誘起電圧モデルを用いた場合には、近似は不要となり、高精度な磁極位置θ(θ^)や回転速度ω(ω^)の推定が可能となる。
第1位置演算部5は、モータ30に高周波の観測信号を印加し、当該観測信号への応答成分としてフィードバック電流に含まれてフィードバックされる高周波成分に基づいてロータの磁極位置θ(θ^)を演算する。本実施形態では、モータ30に印加する高周波の観測信号として、d軸電圧指令Vdに重畳する高周波の観測信号(Vd :Vahcos(ω^t))が生成される。この観測信号に応じた座標系は、γδ軸直交座標系である。図5に示すように、dq軸直交座標系とγδ軸直交座標系との間には、“θ”(指令値としては位相指令“θ ”)の位相差が存在する。指令値として電圧指令に重畳した位相差に対する応答成分は、モータ30からのフィードバック電流に含まれる。
ところで、dq軸直交座標系は、モータ30のステータに設定される固定座標系(αβ軸直交座標系)に対して回転する座標系である。そして、磁極位置θは、図6に示すようにαβ軸を基準とした位相角“θ”として定義することができる。また、ロータの回転速度ωは、αβ軸直交座標系に対するdq軸直交座標系の回転速度ωとして定義することができる。本実施形態のように、磁極位置θを演算によって推定する場合には、実際のdq軸直交座標系を直接検出することはできない。従って、図6において^(ハット)付きのdq軸によって示すように、演算によって推定された磁極位置θ^に基づく推定dq軸直交座標系が設定される。αβ軸を基準としたロータの磁極位置は、図6に示すように^付きの“θ^”として定義され、αβ軸直交座標系に対する推定dq軸直交座標系の回転速度は^付きの“ω^”として定義される。
図6に示すΔθは、実際のdq軸直交座標系と推定dq軸直交座標系との誤差に相当する。この誤差“Δθ”をゼロにすることにより、推定dq軸直交座標系が実際のdq軸直交座標系に一致する。つまり、誤差“Δθ”をゼロとすることにより推定dq軸が実際のdq軸となるので、磁極位置が精度良く検出されることになる。回転状態情報演算部7は、この原理により磁極位置を演算する。
本実施形態では、q軸フィードバック電流Iq(δ軸フィードバック電流Iδ)が、ハイパスフィルタ、ヘテロダイン回路(ミキサー)、ローパスフィルタ等を用いて復調される。
q軸フィードバック電流Iq(δ軸フィードバック電流Iδ)からは、ハイパスフィルタを通過することによって高周波の観測信号に対する応答成分が抽出される。
ところで、ロータのインダクタンスには、ロータの鎖交磁束Φ(Φd,Φq)に対して、下記式(5)で定義されるダイナミックインダクタンスと、下記式(6)で定義されるスタティックインダクタンスとがある。ここで、Ld:d軸のダイナミックインダクタンス、Lq:q軸のダイナミックインダクタンス、Ld:d軸のスタティックインダクタンス、Lq:q軸のスタティックインダクタンスである。
Figure 2017184549
Figure 2017184549
モータ30の磁気的突極性を示す突極比はq軸のダイナミックインダクタンスをd軸のダイナミックインダクタンスで除した値“Lq/Ld”により示される。また、磁極位置の推定には突極比が“1”より大きいことが条件となる。そして、d軸とq軸とのダイナミックインダクタンスの平均値“ΣL”を“(Ld+Lq)/2”、d軸とq軸とのダイナミックインダクタンスの差分“ΔL”を“(Ld−Lq)/2”とすると、ハイパスフィルタを通過した後のδ軸フィードバック電流Iδの高周波成分“Iδ”は、下記式(7)で示される。
Figure 2017184549
次に、ハイパスフィルタにおいて抽出された応答成分“Iδ”と、観測指令生成部51から伝達される観測指令の高周波成分の正弦成分“sin(ωt)”とがミキサーによって混合されて下記式(8)に示す“ε”となる。“A”及び“B”は係数である。観測信号に起因する高周波成分を除去するローパスフィルタを通過した“ε”は、下記式(9)に示す“ε”となる。
Figure 2017184549
Figure 2017184549
図6からも明らかなように、式(9)の“Δθ”が“0”に近づくと、推定dq軸直交座標系とdq軸直交座標系との誤差が小さくなる。第1位置演算部5は、2つの座標系の位相を同期させる演算器(PLL:Phase Locked Loop)を用いて、誤差“Δθ”が“0”となるようにPI制御を実行する。つまり、第1位置演算部5は、dq軸直交座標系と第1位置演算部5による演算に基づく推定dq軸直交座標系とを同期させる。PI制御の結果、推定回転速度“ω^”が求められる。回転速度(角速度)を積分すると距離、即ち角度が得られるので、この推定回転速度“ω^”を積分器で積分することによって、推定磁極位置“θ^”が求められる。
以上説明したように、第1位置演算部5及び第2位置演算部3によって、それぞれ回転状態情報が演算される。切換部4は、モータ30の回転速度及びトルクにより規定された回転特性マップ(図3参照)に基づいて位置演算方式を切り換え、推定回転速度“ω^”及び推定磁極位置“θ^”を決定する。本実施形態において、切換部4が、位置演算方式の切り換えの判定を行う際の基準となる回転速度は、実際の回転速度ωに対応する推定回転速度“ω^”である。上述したように、モータ制御装置1は、第2位置演算部3と第1位置演算部5とを備えることにより、それぞれの演算部に適した回転速度域において磁極位置θ(θ^)を推定することができる。
尚、第1位置演算部5により磁極位置θ(θ^)を推定する際には、d軸電圧指令Vdに対して高周波の観測指令を重畳する必要がある。このため、切換部4は、第1位置演算部5による演算が実行される際には、スイッチ6を切り換えて、d軸電圧指令Vdに対して高周波の観測指令を重畳させる。切換部4は、第1位置演算部5による演算が実行されない際には、スイッチ6を切り換えて、d軸電圧指令Vdに対する重畳信号を“0”に設定する。
ところで、第2位置演算部3は、上記式(4)に示した拡張誘起電圧から、回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)を演算する。一方、第1位置演算部5は、復調器、ローパスフィルタ、位相同期器等を経由して、回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)を演算する。つまり、第1位置演算部5では、ローパスフィルタや位相同期器の演算による遅れが生じる。このため、第2位置演算部3により演算された回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)を用いてモータ30を回転速度制御する場合に比べて、第1位置演算部5により演算された回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)を用いてモータ30を回転速度制御する場合は応答性が低くなる。
以下、図7のフローチャート、図8から図10の模式的波形図も参照して、始動時制御を含むモータ30の制御手順について説明する。図8は、始動時制御実行時のモータの指令値及び回転速度の波形図であり、図4に対応する。図9は、図8にさらにモータ30のトルクの波形図を併記したものである。図10は、始動時制御未実行時のモータの指令値及び回転速度の波形図であり、図11に対応する。モータ30が停止している場合には、まず、第1位置演算方式により磁極の初期位置を推定する初期位置推定処理が行われる(#1)。初期位置推定処理が完了すると推定した初期位置に基づいて時刻t1より回転速度制御によりモータ30が駆動制御される。
回転速度制御の開始に際しては、始動時制御(#48)の要否が判定される(#2,#3)。具体的には、まず、機械式ポンプ40が稼働しているか否かが判定され、機械式ポンプ40が稼働している場合には始動時制御(#48)を行わず、回転速度制御を開始する(#9)。機械式ポンプ40が稼働していれば、電動ポンプ50の駆動は基本的には必要なく、駆動するとしても機械式ポンプ40からの油圧が立ち上がるまでの非常に限定的な期間のみである。そして、このような限定的な期間内では、機械式ポンプ40からの油圧が立ち上がり、油圧制御弁42が開放されるため、上述したような問題が生じることはない。従って、始動時制御(#48)を行うことなく、回転速度制御(#9)が実施される。
機械式ポンプ40が停止している場合には、オイル(流体)の温度FTMPが低温しきい値THTMP未満であるか否かが判定される(#3)。オイルの温度が低い場合には、オイルの粘性が高くなり、吐出先の圧力が急激に上がる現象が生じ易くなる。一方、オイルの温度が高い場合には、オイルの粘性が低くなるので、そのような現象が生じにくくなる、或いは、そのような現象が生じてもその程度が小さく、切換回転速度を超えて回転速度(RS)が急落するようなことがない可能性が高くなる。このため、モータ制御装置1は、オイルの温度FTMPが低温しきい値THTMP未満の場合には、始動時制御(#48)を実施し、オイルの温度FTMPが低温しきい値THTMP以上の場合には、始動時制御(#48)を行うことなく回転速度制御(#9)を実施する。
始動時制御(#48)では、初めに第2制御方式への移行が禁止される(#4)。これは、回転速度(RS)が切換回転速度THを超えたとしても第1制御方式から第2制御方式へ移行しないように制限する処理である。尚、始動時制御(#48)では、目標回転速度(RS)が上限回転速度を超えない範囲の値(RS1)に設定されるため、第2制御方式への移行が制限されていても問題はない。図8では、目標回転速度としてモータ制御装置の内部パラメータとしての回転速度指令(ω)が切換回転速度THに対応する回転速度(ω)よりも小さい値“ω1”に設定されている。
始動時制御(#48)では、第2制御方式への移行を制限した状態で回転速度制御を開始する(#5)。回転速度制御の実行中に吐出先の圧力が急激に上がる現象(圧力上昇現象)が発生したか否かが判定される(#6)。この判定は、回転速度(RS,ω)の変化に基づいて行う。例えば、回転速度(RS,ω)の減速度(負の加速度)の絶対値が、予め定めた判定しきい値以上となった場合に、吐出先の圧力が急激に上がる現象が発生したと判定することができる。或いは、回転速度(RS,ω)が目標回転速度(RS,ω1)に対して予め定めた判定しきい値以上低くなった場合に、当該圧力上昇現象が発生したと判定することもできる。当該圧力上昇現象が発生すると、その後、回転速度(RS,ω)が安定しているか否かが判定される(#7)。この判定は、目標回転速度(RS,ω1)と回転速度(RS,ω)との関係に基づいて行う。例えば、目標回転速度(RS,ω1)と回転速度(RS,ω)との差が予め定めた判定しきい値以下の状態が、予め定めた判定時間以上継続した場合に、回転速度(RS,ω)が安定していると判定することができる。回転速度(RS,ω)が安定すると、第2制御方式への移行制限が解除される(#8)。移行制限の解除により始動時制御が完了する(時刻t3)。移行制限が解除された後は、ステップ#5で開始した回転速度制御によりモータ30が駆動制御される。
図8に示す制御例では、時刻t3以降、モータ制御装置は、回転速度指令(ω)を、切換回転速度THに対応する回転速度(ω)よりも小さい値“ω1”から、切換回転速度THに対応する回転速度(ω)よりも大きい値“ω2”へ上昇させる。モータ制御装置は、回転速度指令(ω)に従うようにモータ30を回転速度制御する。回転速度(ω)が切換回転速度THに対応する回転速度(ω)以上となると、制御方式が第2制御方式へ移行する。
尚、ステップ#6における判定、つまり、回転速度制御の実行中に吐出先の圧力が急激に上がる現象(圧力上昇現象)が発生したか否かの判定は、上述したような、回転速度(RS,ω)の変化に基づいて行う形態に限定されるものではない。図9に示すように、回転速度制御の実行中に吐出先の圧力が急激に上がる現象(圧力上昇現象)が発生すると、モータ制御装置1は、出力トルクTqを上昇させて回転速度を維持するように制御する。しかし、吐出先の圧力が高すぎると、出力トルクTqが不充分となって回転速度が低下することになる。従って、図9に示すように、回転速度の急落と合わせて、モータ30の出力トルクは、最大出力トルクTmaxまで上昇する。従って、ステップ#6における判定は、回転速度(RS,ω)の変化に基づいて行う形態に限らず、モータ30のトルク(出力トルクTq)に基づいて行ってもよい。例えば、モータ30のトルク(出力トルクTq)が最大出力トルクTmaxに達したことを判定基準とすることができる。尚、ここでは、モータ30のトルク(出力トルクTq)の値に基づいて判定する形態を例示したが、トルク指令Tや、トルク(出力トルクTq)が上昇する変化率が、最大変化率(最大トルクレート)を超えていることを判定基準としてもよい。
このように、ステップ#6における判定は、回転速度(RS,ω)とは異なる物理量を判定対象としてもよい。従って、上述したトルク(出力トルクTq)の他、図9に示す制御期間(第1制御期間T1、第2制御期間T2)などの経過時間を判定対象の物理量としてもよい。例えば、電動ポンプ50を含む油圧回路などの装置の構造は既知であるから、試験やシミュレーション等によって、始動時制御を完了するまでの制御期間(第1制御期間T1、第2制御期間T2)を予め設定しておき、当該制御期間(第1制御期間T1、第2制御期間T2)を経過したことによって当該現象の発生を判定してもよい。ここで、第1制御期間T1は、初期位置推定処理の終了(t1)を起点とした期間である。また、第2制御期間T2は、初期位置推定処理を含み、モータ制御開始を起点とした期間である。
1つの態様として、このような制御期間、例えば第1制御期間T1を設定経過時間として、モータ30が停止している状態からモータ30を始動後、当該設定経過時間(第1制御期間T1)が経過するまでは、始動時制御を行うと好適である。設定経過時間は、第1制御期間T1以上、つまり、モータ30の回転速度が下降した後、再び上昇して、目標回転速度RS1を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでの時間以上の時間に設定されていると好適である。
図10は、始動時制御を行うことなく、初期位置推定処理の完了後(時刻t1以後)、初めから回転速度指令(ω)を“ω2”に設定して、始動時制御を行うことなく回転速度制御を開始した場合の比較例を示している。回転速度(ω)が切換回転速度THに対応する回転速度(ω)以上となると、制御方式が第2制御方式へ移行する。その後、吐出先の圧力が急激に上がる現象(圧力上昇現象)が発生すると、回転速度(ω)が切換回転速度THを下回り、第2制御方式ではモータ30を制御することができなくなってしまう。
これに対して、図8に例示したように、始動時制御を行うことで、モータ30を始動した後、流体圧回路に初期圧力を与えるために加速している途中でモータ30の回転速度が急落しても、モータ30を制御し続けることができる。そして、始動時制御の完了後は、モータ30は、回転速度と切換回転速度THとに基づいて制御方式を切り換えて制御される。従って、モータ30は、回転速度に応じた適切な制御方式を選択して、適切に制御される。
尚、図8では、始動時制御の際に、切換回転速度THに対応する回転速度(ω)よりも小さい値“ω1”を目標回転速度(回転速度指令(ω))としている。しかし、始動時制御の際の目標回転速度(回転速度指令(ω))は、切換回転速度THに対応する回転速度(ω)よりも大きい値であってもよい。始動時制御では、図7のステップ#4に示すように、第2制御方式への移行が制限されているから、目標回転速度(回転速度指令(ω))が切換回転速度THに対応する回転速度(ω)以上であっても第2制御方式には移行しない。また、この場合は、図7のステップ#8に示すように第2制御方式への移行制限が解除されると、制御方式が第2制御方式に移行する。
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。また、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
(1)上記説明においては、第1位置演算部5が、電圧指令に観測信号を重畳させる例を用いて説明したが、第1位置演算部5の構成はこの形態に限定されるものではない。高周波の観測信号を回転電機に印加して、その応答によって磁極位置を推定する種々の態様を適用することができる。例えば、電流指令に観測信号が重畳される形態であってもよい。
(2)上記説明においては、第1位置検出方式が高周波の観測信号を印加する方式であり、第2位置検出方式が拡張誘起電圧モデルを利用する方式である形態を例示した。しかし、第1位置検出方式及び第2位置検出方式は、それぞれ他の方式であってもよい。例えば、第1位置検出方式として、3相各相の電気角180°に亘るパルスをオーバーラップさせるオーバーラップ通電でロータを微小回転させた後、誘起電圧を利用してロータの磁極位置を演算してもよい。また、第2位置検出方式は、拡張誘起電圧モデルを利用することなく、上記式(2)に示される一般的な誘起電圧モデルを利用する方式であってもよい。
(3)上記説明においては、オイルの温度FTMPが低温しきい値THTMP以上の場合には、始動時制御(#48)を行うことなく回転速度制御(#9)を実施する場合を例として説明した。しかしこれに限定されるものではなく、モータ制御装置1が、全てのオイルの温度FTMPで始動時制御(#48)を実施するようにしてもよい。
(4)上記説明においては、油圧制御弁42に対して電動ポンプ50と並列に機械式ポンプ40が接続されている構成を例として説明した。しかし、モータ制御装置1が適用される油圧回路の構成はこれに限定されるものではない。例えば、油圧制御弁42に対して電動ポンプ50のみから油圧等の流体圧を供給する構成であってもよい。
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明したモータ制御装置(30)の概要について簡単に説明する。
磁気的突極性を有する状態で永久磁石が配置されたロータとステータコイル(31)が巻き回されたステータとを備えたモータ(30)であって、少なくとも流体圧制御弁(42)に対して流体を吐出する電動ポンプ(50)を駆動する当該モータ(30)を制御するモータ制御装置(1)は、1つの態様として、
前記モータ(30)の回転速度(RS)が予め規定された切換回転速度(TH)よりも低い低回転速度領域(RL)では、第1位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める制御方式で前記モータ(30)を制御し、
前記モータ(30)の回転速度が前記切換回転速度(TH)以上の高回転速度領域(RH)では、前記第1位置演算方式とは異なる第2位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める第2位置演算方式を用いた制御方式で前記モータ(30)を制御し、
前記第1位置演算方式により前記ロータの磁極位置を演算可能な最大の回転速度を上限回転速度として、
前記モータ(30)が停止している状態から前記モータ(30)を始動後、前記モータ(30)の回転速度を前記上限回転速度以下の目標回転速度(RS1)に近づけるように回転速度制御を行い、当該回転速度制御中に、前記モータ(30)の回転速度が下降した後、再び上昇して、前記目標回転速度(RS1)を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでは、前記第1位置演算方式を用いた制御方式で前記モータ(30)を制御する始動時制御を行い、
その後、前記モータ(30)の回転速度と前記切換回転速度とに基づいて制御方式を切り換えて前記モータ(30)を制御する。
モータ(30)の始動後の目標回転速度(RS1)は、上限回転速度以下であるから、目標回転速度(RS1)が切換回転速度(TH)よりも高い回転速度であっても、第1位置演算方式を適用することができる。第1位置演算方式を用いた制御方式は、モータ(30)を始動した後、モータ(30)の回転速度が一旦下降した後、再び上昇して、目標回転速度(RS1)を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまで継続される。このため、モータ(30)を始動した後、流体圧回路に初期圧力を与えるために加速している途中でモータ(30)の回転速度が急落した場合でも、モータ(30)の制御方式は第1位置演算方式である。従って、モータ(30)の回転速度が急落しても、位置検出方式を切り換えずに位置検出ができ、モータ(30)を制御し続けることができる。モータ(30)が目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転した後、つまり、始動時制御の完了後は、モータ(30)は、回転速度と切換回転速度(TH)とに基づいて制御方式を切り換えて制御される。従って、モータ(30)は、回転速度に応じた適切な制御方式を選択して、適切に制御される。このように、本構成によれば、センサレス制御により駆動される電動ポンプ(50)用のモータ(30)を始動して、流体圧回路に初期圧力を与える際にモータ(30)の回転速度が急落しても適切にモータ(30)を制御することができる。
尚、始動時制御における判定、つまり、モータ(30)の回転速度が下降した後、再び上昇して、安定して回転する現象が発生したことの判定は、モータ(30)の回転速度を判定の物理量とする形態には限定されない。例えば、モータ(30)の回転速度が下降する際には、モータ(30)のトルクが上昇するなど、変化を伴っているから、モータ(30)のトルク(例えば、最大出力トルク(Tmax)や最大変化率(最大トルクレート))を判定の物理量として、上記現象の発生を判定してもよい。また、電動ポンプ(50)を含む装置の構造は既知であるから、試験やシミュレーション等によって、始動時制御を完了するまでの制御期間(T1,T2)を予め設定しておき、当該制御期間(T1,T2)を経過したことによって当該現象の発生を判定してもよい。
1つの態様として、モータ制御装置(1)は、前記流体の温度(FTMP)が予め規定された低温しきい値(THTMP)未満の場合には、前記始動時制御を行い、前記流体の温度(FTMP)が前記低温しきい値(THTMP)以上の場合には、前記始動時制御を行わずに前記モータを制御すると好適である。
モータ(30)の始動後に生じる回転速度の急落は、流体の粘性が高い場合に生じ、流体の粘性が低い場合には生じにくい。回転速度が急落しなければ、位置検出方式の切り換えも必要はなく、モータ(30)が制御できなくなるおそれもない。従って、始動時制御は、流体の粘性が高い場合のみ実施されれば充分である。流体の粘性が高くなるのは、流体の温度(FTMP)が低い時であるから、上記のように流体の温度(FTMP)に基づいて、始動時制御を行うか否かを決定すると好適である。
1つの態様として、前記流体圧制御弁(42)に対して前記電動ポンプ(50)と並列に、車両の車輪(W)を駆動する原動機(60)により駆動される機械式ポンプ(40)が接続され、前記始動時制御は、前記機械式ポンプ(40)の停止中にのみ実施されると好適である。
機械式ポンプ(40)によって流体圧を与えている状況では、電動ポンプ(50)の駆動は基本的には必要なく、駆動するとしても機械式ポンプ(40)からの流体圧が立ち上がるまでの非常に限定的な期間のみである。そして、このような限定的な期間内では、機械式ポンプ(40)からの流体圧が立ち上がり、油圧制御弁(42)が開放されるため、上述したような問題が生じることはない。従って、始動時制御は、機械式ポンプ(40)が稼働中には行う必要はなく、機械式ポンプ(40)の停止中にのみ実施されると好適である。
また、1つの態様として、前記モータ(30)が停止している状態から前記モータ(30)を始動後、設定経過時間(T1)が経過するまでは、前記始動時制御を行い、前記設定経過時間(T1)は、前記モータ(30)の回転速度が下降した後、再び上昇して、前記目標回転速度(RS1)を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでの時間以上の時間に設定されていると好適である。
上述したように、電動ポンプ(50)を含む装置の構造は既知であるから、試験やシミュレーション等によって、始動時制御を完了するまでの制御期間(T1,T2)を予め設定しておき、当該制御期間(T1,T2)を経過したことによって、モータ(30)の回転速度が下降した後、再び上昇して、安定して回転する現象が発生したと、判定することができる。このような制御期間(T1,T2)を設定経過時間(T1)として設定しておくことで、制御装置の簡素化や、演算の簡素化を図ることができる。
ω,RS :回転速度
1 :モータ制御装置
21 :直流電源
30 :モータ
31 :ステータコイル
40 :機械式ポンプ
42 :油圧制御弁(流体圧制御弁)
50 :電動ポンプ
60 :原動機
TMP :オイルの温度(流体の温度)
Id :d軸フィードバック電流(フィードバック電流)
Iq :q軸フィードバック電流(フィードバック電流)
RH :高回転速度領域
RL :低回転速度領域
ω,RS:目標回転速度
TH :切換回転速度
W :車輪

Claims (4)

  1. 磁気的突極性を有する状態で永久磁石が配置されたロータとステータコイルが巻き回されたステータとを備えたモータであって、少なくとも流体圧制御弁に対して流体を吐出する電動ポンプを駆動する当該モータを制御するモータ制御装置であって、
    前記モータの回転速度が予め規定された切換回転速度よりも低い低回転速度領域では、第1位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める制御方式で前記モータを制御し、
    前記モータの回転速度が前記切換回転速度以上の高回転速度領域では、前記第1位置演算方式とは異なる第2位置演算方式により電気的に前記ロータの磁極位置を求める制御方式で前記モータを制御し、
    前記第1位置演算方式により前記ロータの磁極位置を演算可能な最大の回転速度を上限回転速度として、
    前記モータが停止している状態から前記モータを始動後、前記モータの回転速度を前記上限回転速度以下の目標回転速度に近づけるように回転速度制御を行い、当該回転速度制御中に、前記モータの回転速度が下降した後、再び上昇して、前記目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでは、前記第1位置演算方式を用いた制御方式で前記モータを制御する始動時制御を行い、
    その後、前記モータの回転速度と前記切換回転速度とに基づいて制御方式を切り換えて前記モータを制御する、モータ制御装置。
  2. 前記流体の温度が予め規定された低温しきい値未満の場合には、前記始動時制御を行い、前記流体の温度が前記低温しきい値以上の場合には、前記始動時制御を行わずに前記モータを制御する、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記流体圧制御弁に対して前記電動ポンプと並列に、車両の車輪を駆動する原動機により駆動される機械式ポンプが接続され、前記始動時制御は、前記機械式ポンプの停止中にのみ実施される、請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記モータが停止している状態から前記モータを始動後、設定経過時間が経過するまでは、前記始動時制御を行い、
    前記設定経過時間は、前記モータの回転速度が下降した後、再び上昇して、前記目標回転速度を含む一定範囲内の回転速度で安定して回転するまでの時間以上の時間に設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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