以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、図面に表れる各部材は理解し易さの観点から大きさや形状を誇張、変形して表すことがある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「加熱電極シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「加熱電極シート」は、「加熱電極板(基板)」や「加熱電極フィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
本明細書において、「接合」とは、完全に接合を完了する「本接合」だけでなく、「本接合」の前に仮止めするための、いわゆる「仮接合」をも含むものとする。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
なお、図2に示すように本実施形態における加熱電極付き合わせガラス板1(以下、単に「合わせガラス板1」とも呼称する)、及び、加熱電極付き合わせガラス板1を構成する透明な第一のパネル、透明な第二のパネル、加熱電極などの構成要素は、湾曲している場合も多いが、他の図では、理解の容易のため平面状として図示している。
さらに、合わせガラス板1を乗り物に適用した際、合わせガラス板1に向かい合った時のガラス面に沿った水平方向に対応する方向を左右と呼称し、各図に於いて三次元直交座標系のX軸で表示する。又該X軸と直交すると共に合わせガラス板1の厚み方向に対応する方向を前後方向と呼称し、Z軸で表示する。そして、X軸及びZ軸と直交すると共に上下方向とも対応する方向を上下方向と呼称しY軸で表示する。
図1は1つの実施形態を説明する図で、加熱電極付き合わせガラス板1を其の板面の法線方向であるZ軸方向から平面視した概念図である。以降、斯かる平面視を単に「平面視」とも呼称し、又斯かる平面視で得られる形状を単に「平面視形状」とも呼称する。図2に示されているように、乗り物の一例としての自動車2は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウの窓部21が加熱電極付き合わせガラス板1で構成されている例を説明する。
また、図2には、この加熱電極付き合わせガラス板1を自動車の窓部21の一つであるフロントウィンドウに適用した例を示す。また、図1の合わせガラス板1のA−A線に対応する横断面図を図3に示す。
図1に示したように、本実施形態の加熱電極付き合わせガラス板1において、合わせガラス板1をその板面の法線方向(Z軸方向)から見たとき、加熱電極が設けられた加熱電極の形成領域Sは合わせガラス板面内において大部分を占める。そして、合わせガラス板面内の左右の端のうち、いずれか一方、若しくは、左右両方の端、加熱電極の形成領域の外側の端縁部の一部分に加熱電極の非形成領域Rが設けられている。加熱電極の非形成領域Rにはアンテナを含む送受信装置、若しくは送受信装置につながれた送受信用のアンテナが設けられている。
尚、図1は、図示と説明の便宜上、加熱電極付き合わせガラス板1を第一のパネル11の法線方向から平面視した状態に於いて、第一のパネル11及び第一の接合層14を除いて図示している。
このように構成することにより、送受信機、もしくは送受信用のアンテナ17は、加熱電極13による通信の阻害を受けることない。
また、加熱電極の非形成領域Rは、加熱電極の形成領域Sの内部に設ける場合と異なり、加熱電極の形成領域Sの外部に設けられているため、電界の分布を調整するために別途抵抗器を設けるなどの新たな工程が生じることがなく、加熱電極付き合わせガラス板1の生産性に影響を与えることがない。
自動車の窓部の場合、其の平面視形状が台形又は略台形となる形態が多い。此の場合は、窓部に於いて加熱電極13による凍結や曇りの解消の必要性(優先度)は、主に中央部から運転席に対峙する部分にかけての領域で高く、窓部の周縁部は比較的低い。
そこで、本実施形態に於いては、図1の如く、窓部の平面視形状を其の上底(図1に於いては+Y方向でもある上側)が短く下底(図1に於いては−Y方向でもある下側)が長い台形とした。
これに伴い、第一のパネル11及び第二のパネル12の平面視形状も該窓部形状に対応した図1の如き上底が下底より短い台形とした。
一方、加熱電極13の外輪郭の平面視形状は、図1の如く其の左右方向の寸法が第一のパネル11及び第二のパネル12の左右方向の寸法よりも短い長方形とし、加熱電極13の左右の第一のパネル11及び第二のパネル12に於いて同面積の加熱電極の形成領域Sが形成されている。
尚、本実施形態に於いては、図1の如く、第一のパネル11及び第二のパネル12に於いて加熱電極13の上下にも加熱電極の形成領域Sが形成されている。
図3に示された実施形態では、加熱電極付き合わせガラス板1は、間隙をおいて対となった透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12、一対の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の間の間隙に配置された加熱電極13とを有している。そして、合わせガラス板1面内の左右の端、いずれか一方、若しくは、左右両方の端、加熱電極の形成領域の外側の端縁部の一部分に設けた加熱電極の非形成領域Rの合わせガラス板1の表面に、アンテナを含む送受信装置、若しくは送受信装置につながれた送受信用のアンテナ17が設けられている。
図4に記載した実施形態では、加熱電極13は、基材フィルム16上に形成されており、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12及び加熱電極13を設けた基材フィル16である加熱電極シート20とは、第一の接合層14及び第二の接合層15にて一体化されている。そして、加熱電極付き合わせガラス板1の面内の左右の端、いずれか一方、若しくは、左右両方の端に設けた加熱電極の非形成領域Rの合わせガラス板1内部に、アンテナを含む送受信装置、若しくは送受信装置につながれた送受信用のアンテナ17が設けられている。
加熱電極13は、透明な第一のパネル11、または、透明な第二のパネル12上に直接設ける構成としてもよい。このような構成をとることで、加熱電極付き合わせガラス板1が基材フィルム16および第一の接合層14、第二の接合層15のうち一層を含まないようにすることができる。
これにより、加熱電極付き合わせガラス板1全体の厚みをさらに小さくすることができる。また、合わせガラス板1内の界面数をさらに低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下をさらに効果的に抑制することができる。加えて、加熱電極13と透明な第一のパネル11、または、透明な第二のパネル12とが接触しているので、加熱電極13による透明な第一のパネル11、または、透明な第二のパネル12の加熱効率を上げることができる。
加熱電極シート20は、シート状の基材フィルム16と、基材フィルム16上に形成された加熱電極13と、加熱電極13に通電するための配線部であるバスバー電極18(図1参照)とを有している。
図1および図2に示した例では、自動車のバッテリー等の電源から、配線部およびバスバー電極18を介して加熱電極13に通電し、加熱電極13を抵抗加熱により発熱させる。加熱電極13で発生した熱は第一の接合層14及び第二の接合層15を介して透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12に伝わり、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12が温められる。これにより、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
加熱電極の非形成領域Rでは、付着した結露による曇りを取り除く機能、雪や氷を溶かす機能は低下するが、観察者の視界に入りにくい位置であるため問題を生じることがない。
なお、図2に示した例では、加熱電極付き合わせガラス板1は湾曲しているが、図1および図3〜図6では、図示の簡略化および理解の容易化のために、合わせガラス板1と透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12を平板状に図示している。
以下に、加熱電極付き合わせガラス板1について詳細に説明する。
まず、透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12について説明する。透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12は、図2で示された例のように自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。
透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12は板ガラスにより構成することができる。これには、当該加熱電極付き合わせガラス板1が適用され乗り物が通常に有する窓に用いられる板ガラスと同じものを用いることができる。例えばソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等から成る普通板ガラス、フロート板ガラス、強化板ガラス、部分板ガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、必要に応じて三次元的に曲面状に湾曲部を有するものであってもよい。
ただし必ずしもガラス板は無機ガラスである必要はなく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂から成る樹脂板いわゆる樹脂ガラス(有機ガラスとも言う)であってもよい。ただし、耐候性、耐熱性、透明性等の観点から無機ガラスであることが好ましい。
透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、加熱電極付き合わせガラス板1の用途上支障の無い範囲内に於いて、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12を得ることができる。一対の透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12は、異なる材料であってもよいが、熱膨張率が等しい同一の材料を用いたほうが温度変化に伴う反りを抑制出来、耐久性にも優れた加熱電極付き合わせガラス板1となる。
次に、接合層について説明する。第一の接合層14は、透明な第一のパネル11と加熱電極シート20との間に配置され、透明な第一のパネル11と導電体付き加熱電極シート20とを互いに接合する。第二の接合層15は、透明な第二のパネル12と加熱電極シート20との間に配置され、透明な第二のパネル12と加熱電極シート20とを互いに接合する。
このような接合層としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層の厚みは、それぞれ0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。一対の接合層は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
なお、加熱電極付き合わせガラス板1には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせガラス板1の透明な第一のパネル11と加熱電極シート20、接合層、後述する加熱電極シート20の基材フィルム16の、少なくとも一つに何らかの機能を付与するようにしてもよい。合わせガラス板1に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、加熱電極シート20について説明する。加熱電極シート20は、図3の断面図の如くシート状の基材フィルム16と、基材フィルム16上に設けられた加熱電極13と、図1の平面図の如く加熱電極13に通電するための一対のバスバー電極18(18a、18b)とを有している。加熱電極シート20は、透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12と略同一の平面寸法を有して、加熱電極付き合わせガラス板1の全体にわたって配置されてもよいし、運転席の正面部分すなわち加熱電極形成領域Sに合わせて、合わせガラス板1の一部にのみ配置されてもよい。
シート状の基材フィルム16は、加熱電極13及びバスバー電極18を支持する基材として機能する。基材フィルム16は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板である。
基材フィルム16に含まれる樹脂としては、可視光を透過する樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、及びポリエステル樹脂は、エッチング耐性、耐候性、耐光性に優れており、好ましい。
また、基材フィルム16は、機械的強度、加熱電極13の保持性、及び光透過性等を考慮すると、0.03mm以上0.30mm以下の厚みを有していることが好ましい。基材フィルム16は、必要に応じて一軸又は二軸延伸したものを用いる。
図1、及び図4〜図6を参照して、加熱電極13について説明する。図1の如く加熱電極13は、図示しないバッテリー等の電源から、電源接続線23およびバスバー電極18を介して通電され、抵抗加熱により発熱する。そして、この熱が接合層14、15を介して透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12に伝わることで、透明な第一のパネル11及び透明な第二のパネル12が温められる。
本実施形態でバスバー電極18は、図5に示すように第一のバスバー電極18a及び第二のバスバー電極18bから形成されている。第一のバスバー電極18a、第二のバスバー電極18bはそれぞれ一方向(図1においてはX軸方向)に延びる帯状であり、第一のバスバー電極18aと第二のバスバー電極18bとは間隔を有して同じ方向に延びる(略平行となる)ように配置されている。
このような第一のバスバー電極18a及び第二のバスバー電極18bは公知の形態を適用することができ、帯状である当該電極の幅は3mm以上15mm以下が一般的である。
加熱電極13の厚さは、2μm以上、30μm以下であることが好ましい。
また、加熱電極13は、隣り合う加熱電極13とのピッチは、0.05mm以上、5.00mm以下とされることが好ましい。ピッチを0.05mmより小さくすると複数の加熱電極13が密に配置されて視認されやすくなると共に開口率を確保して加熱電極付き合わせガラス板1が十分な可視光線透過率を得ることが難しくなる。好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。一方、ピッチが5.00mmより大きいと均一な加熱性能が低下する虞がある。
加熱電極13の線幅は2μm以上15μm以下とすることが好ましい。又、加熱電極13は前記ピッチ及び線幅の範囲内に於いて、十分な可視光線透過率確保の為、開口率は75%以上、好ましくは80%以上とする。尚、此処で、加熱電極13の開口率とは、加熱電極が形成されている領域の全面積に対する加熱電極13非被覆領域の合計面積の比率で定義され、百分率(%)で表される。
加熱電極13を構成する導体材料としては例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、クロム、銅、銀、白金、アルミニウム等の金属、或いはこれら金属を含むニッケル−クロム合金、青銅、真鍮等の合金をエッチングによりパターン形成してなす帯状部材を挙げることができる。
電源接続線23は、図1からわかるように、第一のバスバー電極18aと第二のバスバー電極18b間に電源を接続する配線である。電源は、水滴(曇り)、凍結(霜)等を溶解或いは蒸発させるに必要な電力を供給可能なものであれば特に限定されることはなく、適宜の電圧、電流、或いは周波数を有する公知の直流又は交流電源を用いれば良いが、加熱電極付き合わせガラス板1が自動車に適用される場合には、電源として例えば自動車に既設の鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池等のバッテリーを直流電源として用いることができる。このときには例えばバッテリーの正極に第二のバスバー電極18b、負極に第一のバスバー電極18aを接続することができる。勿論、別途専用の電源(電池、発電機等)を用いても良い。又、電動機を動力とする鉄道車両の場合は架線から給電された直流又は交流電力を適宜の電圧及び電流に変換して用いることも出来る。
このような電源接続線23は公知の構成を適用すればよい。
図5〜図7を参照しながら加熱電極13について説明する。加熱電極13は、導電性物質よりなる複数の線状パターンであり、第一のバスバー電極18aから第二のバスバー電極18bへ伸びている。
図5の(a)においては、加熱電極13を構成する複数の線状パターンが第一のバスバー電極18aから第二のバスバー電極18bへ向かってY軸方向に直線的に延在している実施形態を示している。さらに、加熱電極13は、加熱電極13の延在している方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に複数本互いに離間して配列されている。
図5の(b)においては、加熱電極13が図5の(a)図示の上下方向に延在し左右方向に配列する線状パターンに加えて、配列方向に隣接した二本の該線状パターン同志を接続して連結する左右方向(X軸方向)に延在する線状パターン、即ち、連結パターンを有している。加熱電極13をこのようなメッシュ状のパターンとすることで、加熱電極13は、上下方向に延在する線状パターンがある個所で断線したとしても、連結パターンによって迂回路が形成されることで加熱されない部位を最小限に抑え、加熱ムラを生じにくくすることが出来る。
尚、斯かる連結パターンは図5(b)に図示の如き直線の一部(線分)の他、図6(b)に図示の如き曲線の一部(曲線分)であっても良い。
図6の(a)に示された実施形態では、複数の加熱電極13は、それぞれ波形曲線状で第一のバスバー電極18aから第二のバスバー電極18bへ延びている。加熱電極13の波形曲線形状は、不規則な曲がり方をしている。複数の加熱電極13は、当該加熱電極13の延在方向と非平行な方向に、互いから離間して配列されている。
とりわけ、図6の(a)に示された実施形態では、複数の加熱電極13は、当該加熱電極13の延在方向と直交する方向に配列されている。このとき、加熱電極13の配列間隔は不規則である。ただし、加熱電極13の曲がり方や配列間隔は、不規則ではあるが通電されたときに発熱ムラが生じないように配置されている。
斯かる波形曲線としては、本実施形態に於いては、正弦曲線を変調した曲線、x=Asin(ay+b)+cxを用いている。此処で、yは図6に於ける上下方向の座標、xは図5に於ける左右方向の座標である。そして、該正弦曲線の振幅A、波長(波数、乃至は空間周波数)a、位相bの何れか一つ又は二つ以上を上記の波形曲線の設計条件を満たすように変調したものを用いている。
変調の例としては、1例として、振幅Aをyの函数A(y)として変化させ、
x=A(y)sin(ay+b)
とする振幅変調が挙げられる。
又、別の例として、空間周波数に対応する波数aをyの函数a(y)として変化させ、
x=Asin{a(y)+b}
とする周波数変調が挙げられる。
また、本発明で用いる波形曲線としては、此の例に限定されることは無く、其の他に、Bessel函数曲線、楕円函数曲線、双曲線正弦曲線等の各種周期函数曲線の振幅、位相、及び/又は波長を適宜変調した曲線を用いることも出来る。或いは、加熱電極13は直線線分を連結して成る折れ線状であってもよい。このように不規則に加熱電極13を配置すると、所謂「光芒」の発生を効果的に抑制することができる。
尚、此処で「光芒」とは、加熱電極13を透過させて点光源(例えば、対向車の前照燈や街燈等)を観察した場合に、該光源から放射状に光が広がるように見える現象を言う。光芒は加熱電極13を構成する線状パターンの配列が光を回折して生じると考えられている。斯かる光芒は視界を妨げる為、好ましく無い。
図6の(b)に示された実施形態では、各加熱電極13は、図6の(a)図示の上下方向に延在し左右方向に配列する線状パターンに加えて、配列方向に隣接した二本の該線状パターン同志を接続して連結する左右方向に延在する線状パターン、即ち、連結パターンを有している。このような構成の加熱電極13では、上下方向に延在する線状パターンがある箇所で断線したとしても連結パターンによって迂回路が形成される為、発熱ムラを生じにくくさせることができる。
尚、斯かる連結パターンは図6(b)に図示の如き曲線分の他、図5(b)に図示の如き直線分(線分)であっても良い。
また、加熱電極13のパターンは、同一形状の正六角形の開口が規則的に配置されたメッシュパターンを有していてもよい。さらに、このようなメッシュパターンに限られず、三角形、四角形(矩形等)、五角形、七角形等の各種多角形の同一形状の開口が規則的に二次元配置されたメッシュパターン、互に異形状の開口が規則的に配置されたメッシュパターン、特開2013−238029号公報(特許文献4)開示の如くの、平面内で特定ランダム分布した母点に基づき平面をボロノイ分割した網目形状(ボロノイ図形)から構成される所謂「ボロノイメッシュ」のような、異形状の開口が不規則的に配置されたメッシュパターン等、種々のメッシュパターンを用いることができる。
図7に示された実施形態では、加熱電極13は、繰り返し規則性を有しない形状及びピッチで平面内に配列されている。とりわけ図7の(a)に図示された実施形態では、多数の開口領域53が、ボロノイ図における各ボロノイ領域と一致するように配列されている(加熱電極の拡大図を図7の(c)参照)。言い換えると、加熱電極13は、ボロノイ図におけるボロノイ領域の各境界、即ち、ボロノイ図形に於ける隣接する2分岐点52、52間を結ぶ線分54から構成されている。斯かる線分54を、以下、接続要素と呼稱する。尚、接続要素54は図7の(a)の如き一本の直線分から構成する以外に、複数の線分をジグザグ(zig zag)に接続した三角波の一部から構成することも出来る。
図7に示された例では、接続要素54、64の幅、すなわち、基材フィルム16のシート面に沿った加熱電極13の幅は5μm以上20μm以下とすることが好ましい。このような幅を有する加熱電極13によれば、その接続要素54、64が十分に細線化されているので、加熱電極13を効果的に不可視化することができる。また、接続要素54、64の高さ(厚さ)、すなわち、基材フィルム16のシート面への法線方向に沿った高さ(厚さ)は5μm以上20μm以下とすることが好ましい。このような高さ(厚さ)を有する接続要素54、64によれば、適切な抵抗値を有しつつ十分な導電性を確保することができる。
なお、このボロノイ図は、例えば、上記特許文献2、特許文献4に開示されているような公知の方法によって得られるので、ここではボロノイ図の作成方法についての詳細な説明は省略する。
また、図7の(b)に図示された実施形態では加熱電極13の形状が図7の(a)に図示した加熱電極13に於いて、其のボロノイ図形の接続要素54を直線分から波形曲線分に変更したパターンとなっている。図7の(b)及び図7の(d)の加熱電極13に於いては、加熱電極13の各分岐点は、図7の(a)及び図7の(c)の加熱電極13を構成するボロノイ図におけるボロノイ点と一致している(加熱電極の拡大図である図7の(d)参照)。理解の便宜上、図7の(d)中に図7の(c)の直線分を接続要素とする加熱電極を一点鎖線で記入してある。此の一点鎖線は実在の線では無く仮想的なものである。
図7の(d)は、加熱電極13の一部を、拡大して示す図であり、これを用いて図7の(d)(即ち、図7の(b))の加熱電極13のパターンを生成する工程を説明する。まず、図7の(d)中に一点鎖線で図示した図7の(c)と同形状の加熱電極13のパターンを生成し、其の各分岐点52上に、図7の(d)に示した加熱電極13の各分岐点62を配置する。次に、図7の(d)に示した加熱電極13の線分の両端をなす二つの分岐点52に対応する二つの分岐点62間を接続するように、加熱電極13の各接続要素64を配置する。
尚、其の際、図7の(c)の場合と異なり、各接続要素64は、曲線の一部である曲線分の、形状を有して構成され得る。斯かる曲線分を構成する曲線としては、例えば、円、楕円、カージオイド、サイクロイド、正弦波曲線、Bessel函数曲線、楕円函数曲線、双曲線正弦曲線等の形状を有して構成され得る。斯かる曲線分として正弦波曲線等の周期函数の一周期分以上を採用すれば、曲線の延在方向と交叉する方向について、交互に逆向きに極値(極大値又は極小値)が突出する、所謂「波形曲線」とすることが出来る。図7の(d)の実施形態では波形曲線を採用している。
以上のような、図7の(a)及び図7の(b)の実施形態の加熱電極13に於いて、3角波形直線分、曲線分等の、直線分以外の形状を有する接続要素54、64の側面に入射した光は、当該側面で乱反射する。これにより、当該接続要素64の側面に一定の方向から入射した光が、その入射方向に対応して当該側面で一定の方向に反射することが抑制される。したがって、この反射光が観察者に視認されて、接続要素64を有する加熱電極13が観察者に視認されることを、抑制することができる。又、光芒の発生も抑制することができる。
また、接続要素54、64が5μm以上の高さ(厚さ)を有する場合、接続要素64の側面で反射した光が観察者に視認される可能性が高く、接続要素64の側面で反射した光が観察者に視認されることを抑制するために、加熱電極13側面の乱反射による視認性抑制及び光芒抑制の点でとりわけ有効である。
このような加熱電極13を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン等の金属、及び、ニッケル−クロム合金、真鍮等のこれら例示の金属の中から選択した一種以上の金属を含む合金の一以上を例示することができる。
加熱電極13は、上述したように不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、加熱電極13は、70%以上99%以下程度の高い開口率(非被覆率)で形成される。また、加熱電極13の線幅は、2μm以上20μm以下程度となっている。このため、導電体30の加熱電極13が形成されている領域は、全体として透明に維持され、視認性を害さないようになっている。
優れた導電性を有する金属材料からなる導電性金属層33は、比較的高い光反射率を呈する。そして、加熱電極13をなす導電性金属によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、乗員の視界を妨げる場合がある。また、外部から導電性金属が視認されると、意匠性が低下する場合がある。
そこで、必要に応じて暗色層を、導電性金属よりなる加熱電極13の表面の少なくとも一部分に配置することも可能である。暗色層は、加熱電極13を形成する導電性金属よりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば、黒色、濃灰色等の低明度無彩色、茶褐色、臙脂色、紺色、深緑色等の低明度有彩色等の暗色の層である。この暗色層によって、加熱電極13が視認されづらくなり、乗員の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。
本実施形態においては、図1及び図2に示したように加熱電極付き合わせガラス板内部であり、加熱電極の形成領域Sの外部であり、少なくとも、前記加熱電極の形成領域Sの左右の端のいずれかの領域に、加熱電極の非形成領域Rが設けられている。
加熱電極の形成領域Sは、加熱電極付き合わせガラス板内部の中心を含む大部分を占める領域であり、上部に左右(X軸)方向に延在した第一のバスバー電極18aが、下部に左右(X軸)方向に延在した第二のバスバー電極18bが、存在しており、第一のバスバー電極18aと第二のバスバー電極18bの間は加熱電極13が存在している領域である。
一方、加熱電極の非形成領域Rは、加熱電極付き合わせガラス板内部の左右どちらか一方の端部、若しくは左右両方の端部、加熱電極の形成領域の外側の端縁部の一部分に形成された領域である。また、加熱電極の非形成領域Rは、加熱電極の形成領域Sの左右の端、いずれかもしくは左右両方の端に位置する領域である。加えて、加熱電極13が形成されていない領域であると同時に、バスバー電極18も形成されていない領域であり、且つ、加熱電極13、バスバー電極18のいずれにも挟まれることも、囲まれることもない領域である。
従って、本実施形態における加熱電極の非形成領域Rは、何ら電気的に影響を及ぼすことがない。このため特段の構造を有することなく、加熱電極13、バスバー電極18形成時にこれらの電極を設けないことにより容易に形成される。
加熱電極の非形成領域Rは、加熱電極付き合わせガラス板1の使用時において発熱部である加熱電極13を持たないため、付着した結露による曇りを取り除く機能、雪や氷を溶かす機能は低下するが、視界の左右に存在するため乗員の視野の妨げとなることはない。
加熱電極の非形成領域Rには、少なくともその一部に送受信機、若しくは送受信用アンテナが設けられる。
本実施形態においては、図1及び図2に示したように加熱電極付き合わせガラス板の内部、又は前記ガラス板の表面に、加熱電極の非形成領域Rに送受信機、若しくは送受信用アンテナ17を設けている。
本実施形態において受送信とは、電磁波を媒体とした情報の授受を示す。受信、送信の両方を行う場合のみではなく、受信のみ、送信のみの場合も含む概念である。
本実施形態における送受信装置としては、ナビゲーションシステム(位置情報の取得装置、地図データの取得装置)、電子料金収受システム(Electronic Toll Collection System 略称ETC(登録商標))、音楽や動画データの利用する装置、テレビやラジオの受信装置などが例示される。また、今後も自動運転の実用化、IoTの導入に伴い、自動車の状態を送信する装置、運航に必要な情報を受信する装置などが例示される。
送受信装置は、小型のものであれば、合わせガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付き合わせガラス板1の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける加熱電極の非形成領域Rの合わせガラス板1の内部に埋め込んで設けてもよい(図4)。また、合わせガラス板1の透明な第一のパネル11、または、合わせガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、透明な第二のパネル12の外側面であり、且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける加熱電極の非形成領域Rに接着して設けてもよい(図3)。
また、送受信装置自体でなくても、送受信装置に接続された送受信用アンテナのみを合わせガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付き合わせガラス板1の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける加熱電極の非形成領域Rに埋め込んで設けてもよい(図4)。また、合わせガラス板1の透明な第一のパネル11、または、透明な第二のパネル12の外側面であり、且つ加熱電極の非形成領域Rに接着して設けてもよい(図3)。
また、送受信用アンテナの場合には、加熱電極13の形成時に、加熱電極の非形成領域Rに送受信用アンテナの機能を果たす導電性金属のパターンを設けておくことにより、合わせガラス板1の板面の法線方向、即ち厚み方向に於いて、加熱電極付き合わせガラス板1の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の間であり且つ該板面の法線方向から見た平面視に於ける加熱電極の非形成領域Rに埋め込まれる形で設けてもよい(図4)。
図4の如く、送受信装置或いは送受信アンテナ17を透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12との間に埋め込んだ形態とした場合に、外界からの風雨、外力、日光、空気中の酸素による酸化等の影響、送受信装置或いは送受信アンテナ17の損傷、変質、劣化を低減することが出来る。
次に、図8〜図9を参照して、加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の一例について説明する。図8〜図9は、合わせガラス板1の製造方法の一例を順に示す断面図である。
まず、図8の(a)に示すように、加熱電極13を形成するようになる導電性金属層33を基材フィルム16の一方の面上に設ける。導電性金属層33は、加熱電極13をなす材料として既に説明したように、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの金属の一種以上を含む合金の一以上を用いて形成され得る。導電性金属層33は、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。
次に、図8の(b)に示すように、導電性金属層33上に、レジスト層35を設ける。レジスト層35は、公知方法で形成することが出来る。例えば液体レジストを塗布、乾燥することによって設けてもよいし、ドライレジストフィルム(DRF)を貼りあわせることで設けてもよい。
次に、図8の(c)に示すように、導電性金属層33上に、設けた感光性のレジスト層35をパターニングする。レジスト層35のパターニングは、加熱電極の形成領域Sに形成されるべき加熱電極13に対応した形となっている。ここで説明する方法では、最終的に加熱電極13をなす箇所の上にのみ、レジスト層35が設けられている。このレジスト層35は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。
また、必要に応じて、このプロセスで、加熱電極の形成領域Sにバスバー電極18や加熱電極の非形成領域Rに送受信用アンテナ17を形成する形状にレジスト層をパターニングして残すことにより加熱電極13とバスバー電極18や送受信用アンテナ17を同時形成してもよい。
次に、図8の(d)に示すように、パターニングしたレジスト層35をマスクとして、導電性金属層33をエッチング(腐食加工)する。このエッチングにより、導電性金属層33がパターニングしたレジスト層35と略同一のパターンにパターニングされる。この結果、パターニングされた導電性金属層33から、加熱電極13をなすようになる導電性金属層33が、形成される。
なお、エッチング方法は特に限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、エッチング液を用いるウェットエッチングや、プラズマエッチングなどが挙げられる。エッチング液やエッチング用プラズマの材料やエッチング条件は導電性金属層33の材料と加熱電極13のパターン形状に応じて、公知の物及び条件を選択、採用すれば良い。例えば、導電性金属層33が銅である場合、代表的なエッチング液としては、塩化第二鉄水溶液を挙げることが出来る。その後、図8の(e)に示すように、レジストパターン39を除去する。
次に、図9の(a)に示すように、加熱電極13の側から第一の接合層14及びガラスよりなる透明な第一のパネル11を積層して、加熱電極シート20と透明な第一のパネル11とを接合する。同様に、基材フィルム16の側から第二の接合層15及びガラスよりなる透明な第二のパネル12を積層して、加熱電極シート20と透明な第二のパネル12とを接合する。これにより、図9の(b)に示すように示した加熱電極付き合わせガラス板1が作製される。
最後に、加熱電極の非形成領域Rの位置に送受信装置または、送受信用のアンテナを設置する。送受信装置または、送受信用のアンテナの設置は、透明な第二のパネルの露出した面の加熱電極の非形成領域Rに送受信装置もしくは、送受信用のアンテナを接着テープまたは、接着剤などで貼り付けることによって加熱電極付き合わせガラス板1が作製される。
以上のように、本実施形態における加熱電極付き合わせガラス板1は、透明な第一のパネルと、前記透明な第一のパネルの板面の法線方向に対して間隙を有して配置される透明な第二のパネルと、一対の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12の間に配置され電圧を印加される加熱電極シート20を備え、一対の透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12と加熱電極シート20の間に配置された第一の接合層14、第二の接合層15と、を備えている。
更に本実施形態に於いて、加熱電極の形成領域Sには、一対のバスバー電極18a、18bと、一対のバスバー電極18a、18bの間を線状に延びる加熱電極13と、を有し、前記加熱電極の形成領域Sの外部であり、少なくとも、前記加熱電極の形成領域Sの左右いずれかに、加熱電極の非形成領域Rが設けられており、前記加熱電極の非形成領域に於ける前記ガラス板の内部又は表面に送受信機、もしくは送受信用のアンテナを設けたことを特徴とする加熱電極付き合わせガラス板である。
このような加熱電極付き合わせガラス板1によれば、送受信装置もしくは、送受信用のアンテナ設置前までは、通常合わせガラス板1の製造方法と変わることがなく、生産性を低下させることなく送受信性能に優れた合わせガラス板を供給することができる。
なお、前述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、前述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図10〜図11を参照して、加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の変形例について説明する。図10〜図11は、加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の変形例を順に示す断面図である。
まず、加熱電極シート20を作製する。加熱電極シート20は、上述の加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の一例において説明した方法により作製することができる。
次に、ガラス板よりなる透明な第一のパネル11、第一の接合層14、加熱電極シート20をこの順に重ね合わせ、加熱及び加圧する。図10に示された例では、まず、図10の(a)に示したように、第一の接合層14をガラス板よりなる透明な第一のパネル11に仮接着する。次に、図10の(b)に示したように、ガラス板よりなる透明な第一のパネル11の第一の接合層14が仮接着された側が、加熱電極シート20に対向するようにして、第一の接合層14が仮接着された透明な第一のパネル11を、加熱電極シート20の導電体30の側から重ね合わせ、加熱及び加圧する。これにより、図10の(b)に示すように、透明な第一のパネル11および加熱電極シート20が、第一の接合層14を介して接合(仮接合または本接合)される。
次に、図10の(c)に示されているように、加熱電極シート20の基材フィルム16を除去する。例えば、加熱電極シート20を作製する際に、基材フィルム16上に剥離層19を形成しておき、この剥離層19上に加熱電極13を形成する。この剥離層19は、上述の導電性金属層33をエッチングする工程で除去されない層であることが好ましい。この場合、基材フィルム16と、加熱電極13とは剥離層19を介して接合される。そして、加熱電極シート20の基材フィルム16及び剥離層19を除去する工程では、加熱電極シート20の加熱電極13と剥離層19との界面から剥離層19及び基材フィルム16を剥離除去して加熱電極13を第一の接合層14側に残す。
剥離層19としては、例えば界面剥離型の剥離層を用いることが好ましい。界面剥離型の剥離層としては、基材フィルム16との密着性と比べて、加熱電極13および第一の接合層14との密着性が相対的に低い剥離層を好適に用いることができる。このような層としては、シリコーン樹脂層、フッ素樹脂層、ポリオレフィン樹脂層等が挙げられる。尚、加熱電極13および第一の接合層14との密着性と比べて、基材フィルム16との密着性が相対的に低い剥離層を用い、剥離層19と基材フィルム16との界面で剥離させ、加熱電極13及び剥離層19を接合層14に残留させることもできる。此の場合には、剥離層19は第二の接合層15とは十分な密着性を有する材料を選択する必要が有る。
剥離層19として、基材フィルム16との密着性と比べて、加熱電極13および第一の接合層14との密着性が相対的に低い層を有する界面剥離型の剥離層を用いた場合、剥離層19と加熱電極13および第一の接合層14との間で剥離現象が生じる。この場合、剥離層19が、加熱電極13および第一の接合層14側に残らないようにすることができる。すなわち、基材フィルム16は、剥離層19とともに除去される。このようにして基材フィルム16および剥離層19が除去されると、加熱電極13の非被覆部に、第一の接合層14が露出するようになる。
従って、此の場合は剥離層19の材料の選択に当たっては、特に第二の接合層15との密着性を考慮する必要が無く、材料選択の幅が広がる。
最後に、図10(c)に図示する透明な第一のパネル11、第一の接合層14および加熱電極13の積層体の加熱電極13側の面に、第二の接合層15、ガラス板よりなる透明な第二のパネル12をこの順に重ね合わせ、加熱及び加圧する。図11の(a)に示された例では、まず、第二の接合層15を透明な第二のパネル12に仮接着する。次に、透明な第二のパネル12の第二の接合層15が仮接着された側が、加熱電極13および第一の接合層14に対向するようにして、透明な第一のパネル11、加熱電極13および第一の接合層14、第二の接合層15が仮接着された透明な第二のパネル12をこの順に重ね合わせ、加熱及び加圧する。これにより、透明な第一のパネル11、加熱電極13、透明な第二のパネル12が、第一の接合層14、第二の接合層15を介して接合(本接合)され、図11の(b)に示す加熱電極付き合わせガラス板1が製造される。
図11に示された加熱電極付き合わせガラス板1によれば、合わせガラス板1が基材フィルム16を含まないようにすることができる。これにより、合わせガラス板1全体の厚みを小さくすることができる。また、合わせガラス板1内の界面数を低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下を抑制することができる。
次に、図12を参照して、加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の他の変形例について説明する。図12は、合わせガラス板1の製造方法の他の変形例を順に示す断面図である。
まず、上述の加熱電極付き合わせガラス板1の製造方法の変形例と同様の工程により、ガラス板よりなる透明な第一のパネル11上に加熱電極13を直接作製する。本工程は、図8を参照して説明した工程において基材フィルム16を透明な第一のパネル11に置き換えることにより公知の方法で製造が可能である。
次に、図12の(a)に示すように、透明な第一のパネル11、透明な第一のパネル11上に加熱電極13および第二の接合層15、透明な第二のパネル12よりなる透明な第二のパネル12をこの順に重ね合わせ、加熱及び加圧する。これにより、透明な第一のパネル11と加熱電極13直接接合(本接合)され、且つ、透明な第一のパネル11と透明な第二のパネル12とが第二の接合層15を介して接合(本接合)される。そして、図12の(b)に示す加熱電極付き合わせガラス板1が製造される。
図12の(a)に示された加熱電極付き合わせガラス板1によれば、合わせガラス板1が基材フィルム16および第一の接合層14を含まないようにすることができる。これにより、合わせガラス板1全体の厚みをさらに小さくすることができる。また、合わせガラス板1内の界面数をさらに低減することができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下をさらに効果的に抑制することができる。加えて、加熱電極13と透明な第二のパネル12とが接触しているので、加熱電極13による透明な第二のパネル12の加熱効率を上げることができる。