以下、本発明にかかる測位システムの実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態における監視空間を模式的に示した図である。本実施の形態では、広域な施設の屋内を監視空間(点線で示した領域6)とし、当該監視空間に存在する人物5の位置を測定する測位システムの例を説明する。本実施形態における測位システムは、施設の天井に所定の間隔(例えば、4メートル間隔)で設置した複数の送信機3から音響信号を送信し、施設内に存在する受信機4が受信した音響信号に基づいて、当該受信機4の位置を測定する。このとき、本実施の形態では、人物5に受信機4を所持または装着させることにより、受信機4の位置を人物5の位置として測定する。本実施の形態では、図1に示すように、監視空間に全36個の送信機3が設置されている。
なお、本実施の形態では、屋内において人物の位置を測位する測位システムについて説明するが、本発明の測位システムは、この実施形態に限られない。例えば、屋外での測位に使用してもよいし、人物ではなく貨物等の物品に受信機を取り付けて、当該物品の測位に使用してもよい。
<システム構成>
図2は、本実施の形態における測位システム1の全体構成を示した図である。図2に示すように、測位システム1は、管理装置2、複数の送信機3、人物等の移動物体に所持される受信機4、を含んで構成される。
測位システム1において、管理装置2と複数の送信機3は、通信ネットワークにより接続される。通信ネットワークは、有線接続により実現されてもよいし、無線接続により実現されてもよい。また、必要に応じて、管理装置2と受信機4を通信ネットワークで接続するようにしてよい。
以下、図を参照して、測位システム1の各構成について詳しく説明する。
<管理装置2>
管理装置2は、図2に示すように、通信部21、記憶部22、同期信号送信部23を含んで構成される。本実施の形態では、管理装置2は、複数の送信機3に対して、同期信号を送信する。具体的には、同期信号送信部23は、記憶部22に記憶された測位周期を参照し、当該周期で、通信部21を介して、測位システム1を構成する全ての送信機3に対して同期信号を一斉に送信する。本実施の形態では、測位システム1は、同期信号送信部23から同期信号が複数の送信機3に対して1回送信される毎に、受信機4の位置を1回測定する。すなわち、記憶部22に記憶される測位周期は、測位システム1が測位を行う周期に相当する情報である。ここで、測位周期は、「同期信号の送信時点から、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号を送信し、その残響成分が減衰するまでの時間」を考慮して設定され、記憶部22に予め記憶される。
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置によって構成される。記憶部22は、上述したとおり、測位周期を記憶するが、その他にも、測位システム1の各処理において必要な情報を記憶しておき、通信部21を介して、送信機3や受信機4との間で当該情報を送受信するようにしてもよい。
同期信号送信部23は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の少なくとも1つのプロセッサ、およびその周辺回路を含んで構成される。同期信号送信部23は、上述したとおり、記憶部22に記憶された測位周期に従って、測位システム1を構成する全ての送信機3に対して同期信号を送信する。なお、本実施の形態では、同期信号送信部23を管理装置2の構成の一つとして説明しているが、同期信号送信部23を管理装置2とは別の装置として測位システム1を構成してもよい。この場合、同期信号送信部23は、管理装置2および送信機3と通信ネットワークにより接続され、管理装置2の記憶部22に記憶された測位周期を参照して、送信機3に対して同期信号を送信すればよい。
<送信機3>
送信機3は、監視空間に複数設置され、それぞれが所定のタイミングで音響信号を監視空間に対して送信する。図3は、本実施形態における送信機3の機能ブロック図を示した図である。図3に示すように、送信機3は、通信部31、記憶部32、送信制御部33、音響信号送信部34を含んで構成される。
通信部31は、管理装置2との間で、各種情報を送受信する。本実施の形態では、通信部31は、管理装置2の同期信号送信部23から送信された同期信号を受信する。
記憶部32は、ROM、RAM等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置によって構成される。記憶部32は、送信機3において各処理を実行するためのプログラム、設定データや生成されたデータ等の各種情報を記憶する。例えば、記憶部32は、送信機3に関する2種類のID(グループIDおよび送信順ID)、および信号送信周期を記憶する。以下、これらの情報について、詳しく説明する。
まず、グループIDについて説明する。測位システム1を構成する複数の送信機3は、予め、所定数の送信機3で構成される所定数のグループに分けられる。グループIDは、送信機3が所属するグループを識別するためのIDである。すなわち、同一のグループに所属する送信機3の記憶部32には、それぞれ同一のグループIDが記憶される。なお、本実施の形態では、グループIDを1以上の連続する整数としており、例えば、測位システム1を構成する複数の送信機3を4つのグループ(グループ1、グループ2、グループ3、グループ4)に分けた場合、各グループを識別するグループIDは、それぞれ、「1」、「2」、「3」、「4」となる。
次に、送信順IDについて説明する。送信順IDは、所属するグループ内における送信機3の送信順を識別するためのIDである。各送信機3は、送信順IDによって定まる順番で監視空間に対して、音響信号を送信する。ここで、送信順IDは、所属グループが同一の送信機3間では、それぞれ異なるIDが付与されるが、所属するグループが異なる送信機3間では、同一のIDが付与されることが許容されている。すなわち、測位システム1では、所属グループが異なる送信機3が、監視空間に対して同時に音響信号を送信することを許容しており、これらの送信機3には同一の送信順IDが付与される。なお、本実施の形態では、送信順IDを1から始まる連続する整数(グループを構成する送信機3の数が上限)としている。例えば、本実施の形態では、監視空間に設置された全36個の送信機3を、9個の送信機3から構成される4つのグループに分ける。このため、送信機3に付与される送信順IDは、1から9までの整数となる。
送信順IDについて、より具体的に説明すると、グループ1において音響信号の送信順が1番目の送信機3については、送信順ID「1」が付与され、グループ1において送信順が2番目の送信機3については、送信順ID「2」が付与され、同様に、グループ1において送信順が最後の送信機3については、送信順ID「9」が付与される。そして、グループ2において音響信号の送信順が1番目の送信機3については、送信順ID「1」が付与され、グループ2において送信順が2番目の送信機3については、送信順ID「2」が付与され、同様に、グループ2において送信順が最後の送信機3については、送信順ID「9」が付与される。グループ3およびグループ4についても、同様に送信順IDが付与される。ここで、本実施の形態では、同一の送信順IDが付与された送信機3は、監視空間に対して同時に音響信号を送信するため、例えば、送信順ID「1」が付与されたグループ1の送信機3と、送信順ID「1」が付与されたグループ2の送信機3、送信順ID「1」が付与されたグループ3の送信機3、送信順ID「1」が付与されたグループ4の送信機3が監視空間に対して同時に音響信号を送信する。
次に、信号送信周期について説明する。信号送信周期は、送信順が連続する送信機3間の音響信号の送信間隔である。本実施の形態では、信号送信周期は、音響信号に含まれる主バンドの信号(後述する)の送信間隔に相当する情報である。なお、信号送信周期は、測位システム1が設置される監視空間の残響時間を考慮して設定される。具体的には、信号送信周期は、送信機3から送信された音響信号の直接波と、当該送信機3より送信順が一つ前の送信機3から送信された音響信号の残響成分と、を受信機4が区別できるように、直前に送信された音響信号の残響成分が十分に減衰するまでの時間を考慮した長さに設定される。すなわち、信号送信周期は、残響時間が短い監視空間であれば短時間に設定され、残響時間が長くなるほど長く設定される。例えば、本実施の形態では、信号送信周期は、50msとしている。
以上説明したグループID、送信順ID、および信号送信周期は、各送信機3の記憶部32に予め記憶される。しかし、送信機3が、これらの情報の取得する方法については、特に制限はなく、既存の技術を用いればよい。例えば、グループIDおよび送信順IDは、各送信機3に設けられたディップスイッチ(図示しない)の状態を読み取って、記憶部32に記憶するようにしてもよい。また、管理装置2の記憶部22に、測位システム1を構成する全ての送信機3のグループIDおよび送信順ID、測位システム1の信号送信周期を予め記憶しておき、各送信機3は、通信部31を介して、自己のグループIDおよび送信順ID、信号送信周期を取得し、記憶部32に記憶するようにしてもよい。
送信制御部33は、CPU、DSP、MCU等の少なくとも1つのプロセッサ、およびその周辺回路を含んで構成される。送信制御部33は、記憶部32に記憶されたグループID、送信順ID、および信号送信周期を参照して、送信機3における音響信号の送信を制御する。具体的には、送信制御部33は、音響信号のデジタルデータを生成し、グループID、送信順ID、信号送信周期によって定まるタイミングで監視空間に音響信号を送信できるよう、当該音響信号のデジタルデータを後述する音響信号送信部34に出力する。以下に、送信機3から送信される音響信号について、詳しく説明する。
まず、送信機3が送信する音響信号の形式について説明する。本実施の形態では、音響信号として、ベースバンドのTSP(Time Stretched Pulse)を超音波帯域に周波数変調させた信号を送信する。ここで、周波数変調させる帯域は、送信機3における音圧が高い帯域と、受信機4の感度が高い帯域の両方が備わった連続する帯域を選択することが好ましい。
また、詳細は後述するが、本実施の形態の音響信号は、第1の周波数帯域(以下、主バンドと称する)の信号である第1信号と、第2の周波数帯域(以下、副バンドと称する)の信号である第2信号から構成される。ここで、主バンドおよび副バンドは、上述した好ましい周波数帯域からそれぞれ選択される。例えば、本実施の形態では、24kHz〜28kHzを主バンドとし、28kHz〜32kHzを副バンドとする。
なお、送信機3から送信する音響信号の形式は、上述したものに限られない。例えば、TSPではなく、M系列を周波数変調させた信号を音響信号として用いてもよい。また、TSPやM系列などのワイドバンドの信号を用いずに、BPSK (Binary Phase Shift Keying )やQPSK (Quad Phase Shift Keying )を使ったエンコード信号、バーストパルス信号を使用してもよい。この場合、送信機3において25kHzおよび40kHzの一般的な超音波送信素子を使用し、受信機4においても同じ周波数の超音波受信素子を使用すればよく、25kHzおよび40kHzのうち一方を主バンド、他方を副バンドとすればよい。また、本実施の形態では、音響信号として超音波帯域の信号を用いているが、可聴帯域の信号を用いることも可能である。
次に、上述した第1信号と第2信号について、詳しく説明する。送信制御部33は、記憶部32に記憶されたグループIDを参照して、当該グループIDに固有の音響信号を送信するように制御する。具体的には、送信制御部33は、上述した信号形式で第1信号および第2信号のデジタルデータを生成し、これらの信号がグループID毎に定められた時間間隔で監視空間に送信されるよう、第1信号のデジタルデータと第2信号のデジタルデータを当該時間間隔で音響信号送信部34に出力する。本実施の形態では、第1信号および第2信号から構成される信号を「音響信号」と称している。なお、時間間隔は、グループIDと対応付けて記憶部32に記憶しておけばよいし、時間間隔の値をグループIDの値として記憶するようにしてもよい。なお、グループIDに対応付ける時間間隔は、0以上とすればよい。
第1信号と第2信号の時間間隔は、受信機4にてグループID毎に異なる時間間隔を区別可能な範囲で、なるべく短い時間になるように設定される。例えば、本実施の形態において、受信機4が1msの時間差を識別できる分解能を有する場合は、グループIDが「1」であれば時間間隔を「1ms」とし、グループIDが「2」であれば時間間隔を「2ms」とし、グループIDが「3」であれば時間間隔を「3ms」とし、グループIDが「4」であれば時間間隔を「4ms」とすればよい。なお、上述したように、本実施の形態では、送信制御部33は、第1信号と第2信号を互いに異なる周波数帯域(主バンドと副バンド)で生成する。これにより、受信機4は、第1信号と第2信号を、互いの残響成分の影響を受けずに区別することが可能であるため、第1信号と第2信号の時間間隔をさらに短時間に設定することが可能となる。なお、第1信号と第2信号を同じ周波数帯域で送信するようにしてもよい。
次に、送信機3における音響信号の送信タイミングについて説明する。送信機3は、記憶部32に記憶された送信順IDおよび信号送信周期を参照して、送信順IDで定まる順番、信号送信周期で定まる周期で音響信号を送信する。具体的には、各送信機3の送信制御部33は、通信部31を介して、管理装置2から同期信号を受信すると、まず、SYNC信号を監視空間に送信するよう制御する。すなわち、SYNC信号のデジタルデータを生成し、後述する音響信号送信部34に出力する。なお、SYNC信号は、上述した主バンドで生成されたパルス信号とすればよい。その後、送信制御部33は、送信順IDで定まる自らの送信タイミングになるまで待機し、当該送信タイミングになると生成しておいた音響信号のうち第1信号を監視空間に送信するよう制御する。その後、グループIDによって定まる時間間隔が経過すると、生成しておいた音響信号のうち第2信号を監視空間に送信するよう制御し、再び、管理装置2から同期信号を受信するまで音響信号の送信を待機する。例えば、本実施の形態では、送信順IDをi、信号送信周期をTとした場合に、送信制御部33は、SYNC信号の送信を制御した後、i・Tの時間待機して音響信号を送信するよう制御する。これにより、測位システム1の送信機3は、送信順IDで定められた順番、かつ信号送信周期で定められた周期で音響信号を送信することが可能となる。また、管理装置2から同期信号が送信される毎に、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号の送信を1回行うことが可能となる。
ここで、図4を参照して、音響信号の送信タイミングについて、より具体的に説明する。図4は、本実施の形態における音響信号の送信タイミングを模式的に示した図である。上述したように、本実施の形態の測位システム1は、全36個の送信機3を、9個の送信機3から構成される4つグループに分けたものであるため、図4においても、4つのグループ毎に、各グループに所属する9個の送信機3から送信される音響信号の送信タイミングを示している。図4において、黒矢印は第1信号の送信時点を表し、白矢印は第2信号の送信時点を表す。また、丸で囲われた数字は、送信機3の送信順IDに対応している。丸で囲われた1は送信順ID=1が付与された送信機3の音響信号であることを示し、同様に丸で囲われた2,3,9は、それぞれ送信順ID=2,3,9が付与された送信機3の音響信号であることを示している。なお、送信順ID=4〜8が付与された送信機3の音響信号については、図示を省略している。
図4に示すように、まず、送信機3は、管理装置2から同期信号を受信すると、SYNC信号を送信する。なお、SYNC信号は、全ての送信機3から同時に送信される。その後、SYNC信号の送信時点から、信号送信周期Tが経過すると、各グループの送信順ID「1」の送信機3が同時に第1信号を送信する。そして、各グループIDによって定まる時間間隔Dn(n=1〜4)が経過すると第2信号を送信する。具体的には、グループ1の送信順ID「1」の送信機3は時間間隔D1で第2信号を送信し、グループ2の送信順ID「1」の送信機3は時間間隔D2で第2信号を送信し、グループ3の送信順ID「1」の送信機3は時間間隔D3で第2信号を送信し、グループ4の送信順ID「1」の送信機3は時間間隔D4で第2信号を送信する。その後、SYNC信号の送信時点から2Tが経過すると、各グループの送信順ID「2」の送信機3が同時に第1信号を送信する。そして、グループ1の送信機3と同様に、各グループIDによって定まる時間間隔Dn(n=1〜4)が経過すると第2信号を送信する。その後、同様に、送信順ID「3」〜「9」の送信機3が順次、第1信号および第2信号を送信する。各送信機3は、管理装置2から、再び、同期信号を受信するまで音響信号の送信を待機する。すなわち、送信順ID「9」の送信機3が音響信号を送信し終えると、再び、管理装置2から同期信号が送信されるまで、測位システム1の送信機3は音響信号の送信を待機する。
図3に戻り、送信機3の音響信号送信部34について説明する。
音響信号送信部34は、D−A変換器、パワーアンプ、スピーカを含んで構成される。音響信号送信部34は、送信制御部33から音響信号のデジタルデータが出力される度に、当該音響信号を監視空間に対して送信する。具体的には、送信制御部33から音響信号のデジタルデータを入力すると、D−A変換器にて当該デジタルデータをアナログデータに変換し、当該アナログデータをパワーアンプで増幅した上で、スピーカから送信する。すなわち、本実施の形態では、送信制御部33にて生成されたSYNC信号、第1信号、第2信号のデジタルデータが音響信号送信部34に入力される度に、当該デジタルデータをアナログデータに変換してスピーカから送信する。送信制御部33は、各信号のデジタルデータを、上述した各信号の送信タイミングで音響信号送信部に出力するため、音響信号送信部34は、各信号をそれぞれの送信タイミングにおいて監視空間に対して送信することが可能となる。
本発明の測位システム1は、当該システムを構成する複数の送信機3を、所定数の送信機3から構成される所定数のグループに分け、送信機3はグループ内で定められた送信順で音響信号を監視空間に対して送信する。このとき、各グループの同じ送信順の送信機3は音響信号を監視空間に同時に送信するため、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間は、1つのグループを構成する送信機3の数と信号送信周期に応じて決まる。すなわち、送信機3の数を少なくすれば、全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間を短時間にすることができる。もちろん、本発明の測位システム1では、グループID毎に定めた時間間隔で第1信号と第2信号を送信するため、グループ数が増えるにつれて、当該時間間隔の最大値も大きくなる。しかし、本発明の測位システムでは、第1信号と第2信号を異なる周波数帯域で生成することにより、これらの混信を排除できるため、第1信号と第2信号の時間間隔を短時間に設定することができる。すなわち、本発明の測位システム1によれば、グループ数が増えても、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間を短時間に保つことが可能となる。従来は、システムを構成する各送信機が音響信号を順番に送信するものであったため、監視空間の広さをカバーするために必要な送信機の個数が増えるほど、全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間が長くなってしまう。すなわち、従来は、監視空間が広域になるほど、全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間が長くなってしまうという問題があった。しかし、本発明によれば、上述したように、監視空間が広域になっても、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間を短時間に保つことが可能となる。
なお、監視空間がさらに広域になると、本発明の測位システム1においても、さらに多くのグループを設定する必要があるため、グループ数が増えるにつれて増加する第1信号と第2信号の時間間隔が、全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間に与える影響を無視できなくなる可能性がある。しかし、本発明の音響信号は、第1信号と第2信号から構成されるものに限らないため、送信機3から送信する音響信号を、第1信号、第2信号、第3信号から構成されるようにし、第3信号の周波数帯を主バンドおよび副バンドと異なる周波数帯域とすればよい。そして、グループIDに応じて定められる時間間隔として、第1信号と第2信号の時間間隔と、第1信号と第3信号の時間間隔を採用すればよい。これにより、さらにグループ数を増やしても、測位システム1を構成する全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間を短時間に保つことが可能となる。
<受信機4>
受信機4は、監視空間に存在し、送信機3から送信された音響信号を受信する。本実施の形態では、受信機4は、監視空間に存在する人物によって所持または装着され、受信した音響信号に基づいて、監視空間における自己の位置を測定する。そして、受信機4は、測定した自己の位置を、人物の位置として出力する。図5は、本実施形態における受信機4の機能ブロック図を示した図である。図5に示すように、受信機4は、音響信号受信部41、記憶部42、信号解析部43、出力部44を含んで構成される。
音響信号受信部41は、マイク、マイクアンプ、A−D変換器を含んで構成される。音響信号受信部41は、送信機3から送信された音響信号を随時受信する。具体的には、音響信号受信部41は、監視空間に送信された音響信号をマイクで集音し、集音した音のアナログデータをマイクアンプで増幅した上で、A−D変換器にてデジタルデータに変換する。そして、音響信号受信部41は、変換したデジタルデータを後述する信号解析部43に出力する。なお、信号解析部43へのデジタルデータの出力は、後述する記憶部42を介して行ってもよい。
記憶部42は、ROM、RAM等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置によって構成される。記憶部42は、受信機4において各処理を実行するためのプログラム、設定データや生成されたデータ等の各種情報を記憶する。例えば、記憶部42は、高さ情報、グループIDテーブル、送信順IDテーブル、送信機3の配置情報を記憶する。以下、これらの情報について、詳しく説明する。なお、記憶部42には、送信機3の記憶部32と同様に、信号送信周期も記憶される。
まず、高さ情報について説明する。高さ情報は、監視空間における受信機4の床面からの高さを示す情報であり、後述する信号解析部43にて、受信機4の位置を測定する際に用いられる。本実施の形態では、受信機4は、人物によって所持または装着されるため、高さ情報は、床面から人物の手までの高さや、床面から受信機4の装着位置までの高さを考慮して設定され、予め記憶部42に記憶される。
次に、グループIDテーブルについて説明する。グループIDテーブルは、グループIDと上述した第1信号と第2信号の時間間隔を対応付けたテーブルである。グループIDテーブルは、後述する信号解析部43にて参照され、受信機4が受信した音響信号の第1信号と第2信号の時間間隔から当該音響信号を送信した送信機3の所属グループを識別するために用いられる。以下、グループIDに対応付けられた時間間隔を「グループ時間差」と称する。
なお、本実施の形態におけるグループIDテーブルは、グループID「1」とグループ時間差「1ms」、グループID「2」とグループ時間差「2ms」、グループID「3」とグループ時間差「3ms」、グループID「4」とグループ時間差「4ms」がそれぞれ対応付けられたテーブルとなる。
次に、送信順IDテーブルについて説明する。送信順IDテーブルは、送信順IDと受信機4が受信した音響信号のタイムスロット番号を対応付けたテーブルである。本実施の形態において、後述する信号解析部43は、音響信号受信部41から入力したデジタルデータを複数個のタイムスロットに分割して解析を行う。具体的には、信号解析部43は、デジタルデータに含まれるSYNC信号を監視しており、SYNC信号を検出すると、当該SYNC信号の検出時点から上述した信号送信周期Tの間隔でデジタルデータを分割して信号解析を行う。この分割された単位をタイムロットとする。例えば、本実施の形態では、SYNC信号の位置から信号送信周期Tが経過した時点を起点として、当該起点から信号送信周期Tが経過する時点までをタイムスロット「1」とし、タイムスロット「1」の終点から信号送信周期Tが経過する時点までをタイムスロット「2」とし、同様にタイムスロット「9」まで分割して音響信号を解析する。上述したように、送信機3は、SYNC信号を送信した後、信号送信周期Tの間隔で送信順IDによって定まる順番で音響信号を送信する。このため、信号解析部43は、SYNC信号からの受信タイミング、すなわち、SYNC信号から何番目のタイムスロットで検出された音響信号であるかを確認することで、当該音響信号を送信した送信機3の送信順IDを識別することが可能となる。
なお、本実施の形態における送信順IDテーブルは、送信順ID「1」とタイムスロット「1」、送信順ID「2」とタイムスロット「2」、送信順ID「3」とタイムスロット「3」、送信順ID「4」とタイムスロット「4」、送信順ID「5」とタイムスロット「5」、送信順ID「6」とタイムスロット「6」、送信順ID「7」とタイムスロット「7」、送信順ID「8」とタイムスロット「8」、送信順ID「9」とタイムスロット「9」が対応付けられたテーブルとなる。
次に、配置情報について説明する。配置情報は、監視空間における送信機3の配置を示す情報である。配置情報は、後述する信号解析部43にて参照され、受信機4の位置を測定するために用いられる。本実施の形態では、配置情報として、各送信機3の送信順ID、グループID、床面からの設置高、監視空間の床面をXY平面としたときの2次元座標(X,Y)が対応付けられている。
ここで、監視空間における送信機3の配置について、詳しく説明する。上述したように、本実施形態の測位システム1では、異なるグループに所属する送信順IDが同一の送信機3が、監視空間に音響信号を同時に送信する。このため、これらの同時に送信された音響信号が混信しないよう、同一の送信順IDが付与された送信機3は、監視空間において互いに隣り合わない位置、かつ所定距離以上離れた位置に設置される。
図6は、本実施の形態における送信機3の配置を模式的に示した図である。図6において、白丸印は送信機3の位置を示し、白丸で囲った数字は、送信機3の送信順IDに対応する。また、同一のグループIDが付与された送信機3をそれぞれ点線で囲って示している。図6に示すように、本実施の形態における測位システム1は、全36個の送信機3で構成されており、9個の送信機3から構成される4つのグループに分けられている。そして、送信順IDが同一の送信機3は、互いに隣り合わない位置、かつ所定距離以上離れた位置に配置されている。本発明の測位システム1は、このように送信機3を配置することにより、送信機3から同時に送信された音響信号が混信しないようにしている。
例えば、図6に示すように、受信機4が黒丸印4aの位置に存在している場合、グループID「1」の送信順ID「1」が付与された送信機3の位置と比べて、グループID「2」の送信順ID「1」が付与された送信機3、グループID「3」の送信順ID「1」が付与された送信機3、グループID「4」の送信順ID「1」が付与された送信機3は、受信機4までの距離が長い。このため、これらの送信機3が同時に音響信号を送信しても、受信機4では、最初にグループID「1」の送信順ID「1」が付与された送信機3から送信された音響信号が受信され、その後、時間差と信号強度の減衰を伴って、他のグループの送信順ID「1」が付与された送信機3から送信された音響信号を受信する。すなわち、送信順ID「1」が付与された送信機3が監視空間に対して同時に音響信号を送信しても、受信機4では、受信タイミングと信号強度から受信機4の近くに設置されている送信機3とそれ以外の送信機3を区別することが可能となる。なお、所定距離は、同時に送信された音響信号のうち、最も受信機4に近い位置に存在する送信機3から送信された音響信号の受信波形と、その他の送信機3から送信された音響信号の受信波形とを、受信機4にて信号強度から区別できるような値とすればよい。
また、受信機4が黒丸印4bの位置に存在している場合、各グループの送信順ID「1」が付与された送信機3から受信機4までの距離が略同一になる。この場合、送信順ID「1」が付与された送信機3から同時に送信された音響信号は、受信機4にて略同時かつ同程度の信号強度で受信されるため、これらを区別することが困難になる。しかし、図6に示すように、本発明の測位システム1では、同一の送信順IDが付与された送信機3は、隣り合わない位置に設置されている。これにより、受信機4にて送信順ID「1」が付与された送信機3の音響信号を区別できなくても、他の送信順IDが付与された送信機3、例えば、図6に示した送信順ID「5」,「6」,「8」が付与された送信機3から送信される音響信号については、上述したように受信タイミングと信号強度から区別することが可能となる。すなわち、受信機4は、これらの区別可能な音響信号に基づいて受信機4の位置を測定することが可能となる。
なお、送信機3の配置は、上述した例に限らない。例えば、本実施の形態では、測位システム1を構成する送信機3を、9個の送信機3から構成される4つのグループに分けたが、1つのグループを構成する送信機3の数やグループの数は、監視目的や監視空間の形状、監視空間の面積等を考慮して適宜変更してもよい。また、グループ毎に送信機3の配置を異ならせてもよい。
図7は、送信機3の他の配置例を模式的に示した図である。図7(a)は、測位システム1を構成する送信機3を7個の送信機3から構成される2つのグループに分けた例を示しており、図7(b)は、測位システム1を構成する送信機3を5個の送信機3から構成される2つのグループに分けた例を示している。図7に示すとおり、グループを構成する送信機3の数やグループ毎の送信機3の配置は異ならせているが、各送信機3は上述した配置条件を満たし、同一の送信順IDが付与された送信機が互いに隣り合わない位置、かつ所定距離以上離れた位置に配置されていることがわかる。また、図示はしないが、グループ毎に構成する送信機3の数を異ならせてもよい。例えば、グループID「1」が付与された送信機3を7個、グループID「2」が付与された送信機を5個として、測位システム1を実現してもよい。また、本実施形態のように同一のグループIDが付与された送信機3が監視空間において近傍にまとまるように配置されなくてもよい。例えば、グループIDが異なる複数の送信機3どうしが互いに隣接するように送信機3を配置するようにしてもよい。
以上説明した、高さ情報、グループIDテーブル、送信順IDテーブル、送信機3の配置情報は、受信機4の記憶部32に予め記憶される。しかし、受信機4が、これらの情報の取得する方法については、特に制限はない。例えば、管理装置2の記憶部22に、高さ情報、グループIDテーブル、送信順IDテーブル、送信機3の配置情報を予め記憶しておき、受信機4は、通信ネットワークを介してこれらの情報を取得し、記憶部42に記憶するようにしてもよい。
次に、図5に戻り、受信機4の信号解析部43について説明する。
信号解析部43は、CPU、DSP、MCU等の少なくとも1つのプロセッサ、およびその周辺回路を含んで構成される。信号解析部43は、受信機4が受信した音響信号を解析し、監視空間における受信機4の位置を測定する。具体的には、本実施の形態では、音響信号受信部41から入力したデジタルデータを、上述したように複数個のタイムスロットに分割し、それぞれのタイムスロットについて解析を行う。なお、本実施の形態では、ベースバンドのTSPを超音波帯域に変調した信号を送信機3から送信するため、信号解析部43は、入力したデジタルデータをベースバンドに復調してからタイムスロットの解析を行う。また、本実施の形態では、2種類の周波数帯域(主バンドと副バンド)を用いているため、信号解析部43は、主バンドの信号と副バンドの信号に復調する。
信号解析部43は、各タイムスロットを分析し、タイムスロット内のパルスの信号強度、主バンドにおけるタイムスロットの開始時点から所定パルスまでの時間差(第1時間差)、主バンドの所定パルスと副バンドの所定パルスの時間差(第2時間差)、をそれぞれ算出する。
ここで、図8,図9を参照し、タイムスロットの分析について、詳しく説明する。図8は、本実施の形態における受信機4の受信波形を示した図である。図9は、本実施の形態におけるタイムスロット内の受信波形を示した図である。
まず、信号解析部43は、音響信号受信部41から入力したデジタルデータの受信波形から、SYNC信号を検出する。SYNC信号は、上述したとおり、主バンドのみのパルス信号であるため、信号解析部43は、主バンドが所定強度(以下、SYNC強度)以上となる時点を検出する。そして、副バンドにおいて、当該検出時点から所定時間(例えば、信号送信周期T)内に信号が存在しない場合に、当該検出時点をSYNC信号の受信時点とする。図8においては、矢印で示した時点がSYNC信号の受信時点となる。
そして、信号解析部43は、SYNC信号が検出されると、図8に示すように、当該受信時点から信号送信周期Tが経過した時点をタイムスロット「1」の起点として、当該起点から信号送信周期Tが経過した時点をタイムスロット「1」の終点とする。その後、タイムスロット「1」の終点をタイムスロット「2」の起点として、当該起点から信号送信周期Lが経過した時点をタイムスロット「2」の終点とする。同様に、送信順IDの数と同数のタイムスロットを規定する。なお、図8においては、タイムスロット「4」から「9」については、図示を省略している。
図9では、図8に示したタイムスロット「1」の受信波形を拡大して示している。信号解析部43は、タイムスロット内のパルスの信号強度を確認し、まず、主バンドのパルスが最初に所定強度(第1信号強度)以上となる時点を検出する。そして、信号解析部43は、タイムスロットの開始時点から当該検出した時点までの時間差sn(n=1〜9)を求める。この時間を第1時間差とする。図9に示すs1がタイムスロット「1」における第1時間差である。本実施形態における測位システム1の送信機3は、上述したように、送信順IDが同一の送信機3は所定距離以上離れた位置に設置されているため、タイムスロット内において、主バンドのパルスが最初に第1信号強度となる時点は、送信順IDが同一の送信機3のうち、受信機4に最も近い送信機3から送信された第1信号の直接波の受信時点とみなせる。なお、第1信号強度の値は、送信順IDが同一の送信機3間の距離を考慮して、最も受信機4に近い位置に存在する送信機3から送信された第1信号の受信波形と、その他の送信機3から送信された第1信号の受信波形とを、受信機4にて区別できる値に予め設定すればよい。
次に、信号解析部43は、タイムスロット内の副バンドのパルスの信号強度を確認し、最初に所定強度(第2信号強度)以上となる時点を検出する。そして、信号解析部43は、先に検出しておいた、主バンドのパルスが最初に第1信号強度以上となる時点との時間差dn(n=1〜9)を求める。この時間差が第2時間差である。図9に示すd1がタイムスロット「1」における第2時間差である。本実施形態における測位システム1の送信機3は、上述したように、送信順IDが同一の送信機3は所定距離以上離れた位置に設置されているため、タイムスロット内において、副バンドのパルスが最初に第2信号強度となる時点は、送信順IDが同一の送信機3のうち、受信機4に最も近い送信機3から送信された第2信号の直接波の受信時点とみなせる。なお、第2信号強度の値は、送信順IDが同一の送信機3間の距離を考慮して、最も受信機4に近い位置に存在する送信機3から送信された第2信号の受信波形と、その他の送信機3から送信された第2信号の受信波形とを、受信機4にて区別できる値に予め設定すればよい。
なお、本実施の形態では、第1時間差と第2時間差を求める際、タイムスロット内において、パルスが最初に第1信号強度以上となる時点やパルスが最初に第2信号強度以上となる時点を用いた。しかし、これに限るものではない。例えば、パルスの信号強度を用いずに、タイムスロット内において最初に現れたパルスの受信時点を用いて、第1時間差と第2時間差を求めるようにしてもよい。この場合、送信機3を配置する際、送信順IDが同一の送信機3間の距離(所定距離)を、「同一の送信機3から送信された第1信号と第2信号が必ず連続して受信機4に受信されるような距離」にすればよい。なお、この場合、所定距離の値は、グループID毎に設定した第1信号と第2信号の時間間隔(グループ時間差)の最大値等を考慮して、適宜決定すればよい。
信号解析部43は、各タイムスロットについて、第1時間差および第2時間差を求めた後、タイムスロットのうち受信機4の測位に用いるタイムスロット(有効タイムスロット)を複数個選定する。なお、本実施の形態では、信号解析部43は、有効タイムスロットを3個選定する。これは、本実施の形態における信号解析部43が、三角測量の原理で受信機4の位置を測定するためであり、3個の送信機3の設置位置、当該送信機3から送信された音響信号が受信機に受信されるまでに要する時間(第1時間差)が測位に必要となるからである。このとき、測位に用いられる送信機3は、受信機4の近くに設置されているものから3個選定されることが好ましいため、信号解析部43は、有効タイムスロットとして、受信機4の位置の近くに設置されている送信機3から送信された音響信号が含まれるタイムスロットを選定する。したがって、本実施の形態においては、タイムスロット内の第1時間差が短い順、かつ、第1時間差の算出に用いたパルスの信号強度が所定強度(有効強度)以上となるタイムスロットを有効タイムスロットとして3個選定する。なお、有効タイムスロットにおける第1時間差の算出に用いたパルスが「第1受信信号」の一例に相当する。
信号解析部43は、有効タイムスロットを選定すると、各有効タイムスロットについて、第1時間差の算出に用いたパルスの送信元の送信機3を特定する。まず、信号解析部43は、記憶部42に記憶した送信順IDテーブルを参照し、有効タイムスロットのタイムスロット番号から送信元の送信機3の送信順IDを特定する。ここで、上述したように、本実施の形態における測位システム1は、送信順IDが同一の送信機3が同時に音響信号を送信するため、タイムスロット番号だけでは、第1時間差の算出に用いたパルスがどのグループに所属する送信機3から送信された音響信号によるものであるかが判別できない。そこで、信号解析部43は、グループを識別するために第2時間差を用いる。具体的には、信号解析部43は、記憶部42に記憶されているグループIDテーブルを参照し、当該テーブルのグループ時間差と有効タイムスロットの第2時間差を比較し、最も近いグループ時間差に対応付けられているグループIDを特定する。信号解析部43は、このように特定した送信順IDとグループIDから、測位に用いる送信機3を特定する。例えば、図6に示した図において、受信機4が4aに存在する場合、まず、有効タイムスロットとしてタイムスロット「1」、「2」、「4」が選定され、その後、タイムスロット番号から送信順ID「1」、「2」「4」が特定される。そして、それぞれの各有効タイムスロットの第2時間差から、グループID「1」送信順ID「1」の送信機3、グループ「1」送信順ID「2」の送信機3、グループID「1」送信順ID「4」の送信機3が、測位に用いる送信機3として特定される。なお、有効タイムスロットにおける第2時間差の算出に用いた副バンドのパルスが「第2受信信号」の一例に相当する。
信号解析部43は、測位に用いる3個の送信機3を特定すると、記憶部42に記憶されている受信機4の高さ情報、配置情報に含まれる送信機3の設置高と2次元座標を参照し、これらの情報と各送信機3の第1時間差を用いて、三角測量の原理で受信機4の位置を算出する。すなわち、本実施の形態では、受信機4の位置は、床面をXY平面としたときの2次元座標(X,Y)として測定される。なお、本実施の形態では、三角測量の原理を用いて受信機4の位置を測定したが、測定方法はこれに限るものではなく、上述した方法により測位に用いる送信機3を特定し、当該特定した送信機3の位置を用いて受信機4の位置を測定するものであればよい。
信号解析部43は、受信機4の位置を算出すると、算出結果を順次出力部44に出力する。
次に、図5に戻り、受信機4の出力部44について説明する。
出力部44は、信号解析部43から受信機4の位置を入力すると、当該位置を外部の装置に出力する。本実施の形態では、測定された受信機4の位置を液晶ディスプレイなどの表示装置(図示しない)に表示する。このとき、本実施の形態における受信機4は、人物に所持または装着されているため、出力部44は、信号解析部43で測定された受信機4の位置を、当該受信機4を所持する人物の位置として表示する。なお、出力部44の出力先や出力方法は、これに限らない。例えば、受信機4に外部の装置と通信を行う通信部(図示しない)を設け、通信ネットワークを介して、信号解析部43で測定された受信機4の位置(人物の位置)を出力するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、記憶部42、信号解析部43、出力部44を受信機4の構成の一つとして説明しているが、記憶部42、信号解析部43および出力部44を受信機4とは別の装置として測位システム1を構成してもよい。この場合、当該装置は、受信機4と通信ネットワークにより接続され、受信機4の音響信号受信部41から出力されるデジタルデータを順次解析して、受信機4の位置を測定するようにすればよい。
また、上述したように、さらに広域な監視空間を対象とするために音響信号を構成する信号として第3信号を増やした場合、信号解析部43は、第2時間差と同様に、第3信号の周波数帯域について解析を行って第3時間差を算出し、記憶部42のグループIDテーブルを参照して、第1信号と第3信号の時間間隔に対応づけられたグループIDを特定するようにすればよい。
<システムの動作>
以下、本実施の形態における測位システム1の動作について説明する。まず、図10を参照して、管理装置2の同期信号送信処理について説明する。図10は、本実施の形態における同期信号送信処理のフローチャートである。
測位システム1が動作を開始すると、まず、管理装置2の同期信号送信部23は、複数の送信機3に対して、通信部21を介して同期信号を送信する。このとき、同期信号送信部23は、計時を開始する(S101)
その後、同期信号送信部23は、記憶部22に記憶された測位周期を参照し、測位周期になったか否かを判定する(S102)。測位周期になった場合(S102,YES)、ステップS101に移行し、新たな同期信号を複数の送信機3に対して送信する。このとき、計時をリセットし、再度計時を開始する。測位周期になっていない場合(S102,NO)は、測位周期になるまで同期信号の送信を待機する。
次に、図11を参照して、送信機3の音響信号送信処理について説明する。図11は、本実施の形態における音響信号送信処理のフローチャートである。
測位システム1が動作を開始すると、送信機3の送信制御部33は、第1信号および第2信号のデジタルデータを生成する(S201)。そして、送信制御部33は、通信部31を介して管理装置2から同期信号を受信したか否かを判定する(S202)。同期信号を受信した場合(S202,YES)、SYNC信号のデジタルデータを生成し、音響信号送信部34に出力する。入力を受けた音響信号送信部34は、監視空間にSYNC信号を送信する(S203)。同期信号を受信していない場合(S202,NO)、同期信号を受信するまでSYNC信号の送信を待機する。
送信制御部33は、SYNC信号の送信を制御すると、計時を開始し、第1信号の送信タイミングであるか否かを判定する(S204)。具体的には、本実施の形態では、記憶部32に記憶された信号送信周期「T」および送信順ID「i」を参照し、時間T・iが経過したか否かを判定する。時間T・iが経過した場合(S204,YES)、第1信号の送信タイミングになったと判定し、生成しておいた第1信号のデジタルデータを音響信号送信部34に出力する。入力を受けた音響信号送信部34は、監視空間に第1信号を送信する(S205)。時間T・iが経過していない場合(S204,NO)、第1信号の送信タイミングではないと判定し、時間T・iが経過するまで第1信号の送信を待機する。
送信制御部33は、第1信号の送信を制御すると、計時をリセットし、再度計時を開始する。そして、第2信号の送信タイミングであるか否かを判定する(S206)。具体的には、本実施の形態では、記憶部32に記憶されたグループIDを参照し、当該グループIDに対応付いた時間(グループ時間差)が経過したか否かを判定する。グループ時間差が経過した場合(S206,YES)、第2信号の送信タイミングになったと判定し、生成しておいた第2信号のデジタルデータを音響信号送信部34に出力する。入力を受けた音響信号送信部34は、監視空間に第2信号を送信する(S207)。グループ時間差が経過していない場合(S206,NO)、第2信号の送信タイミングではないと判定し、グループ時間差が経過するまで第2信号の送信を待機する。送信制御部33は、第2信号の送信を制御すると、計時を0にし、ステップS202に戻り、再び同期信号を受信するまで待機する。
次に、図12を参照して、受信機4の測位処理について説明する。図12は、本実施の形態における測位処理のフローチャートである。
受信機4は、動作を開始すると、音響信号受信部41にて監視空間の音を集音し、順次、信号解析部43にデジタルデータを出力する。信号解析部43は、入力したデジタルデータにSYNC信号が含まれているか否かを判定する(S301,S302)。SYNC信号を検出すると(S302,YES)、記憶部42の信号送信周期、送信順IDテーブルを参照し、送信順IDの数だけタイムスロットを分割する(S303)。SYNC信号が検出されない場合(S302,NO)、ステップS301に戻り、SYNC信号が検出されるまで、SYNC信号の検出処理を繰り返す。
信号解析部43は、タイムスロットの分割を行うと、タイムスロット毎にステップS305からステップS306の処理を行う。全てのタイムスロットについて、ステップS305からステップS306が終了すると、ステップS308に移行する(S304,S307)。信号解析部43は、処理対象のタイムスロットについて、信号を解析し、第1時間差を算出する(S305)。その後、処理対象のタイムスロットについて、信号を解析し、第2時間差を算出する(S306)。
信号解析部43は、全てのタイムスロットについて、第1時間差および第2時間差を算出すると、タイムスロットの中から有効タイムスロットを所定数選定する。本実施の形態では、有効スタイムロットを3個選定する(S308)。
信号解析部43は、有効タイムスロットの選定が終了すると、記憶部42の送信順IDテーブルを参照し、各有効タイムスロットについて、タイムスロット番号に対応する送信順IDを特定する。その後、記憶部42のグループIDテーブルを参照し、各有効タイムスロットについて、グループIDテーブルに記憶されたグループ時間差と第2時間差を比較し、グループIDを特定する。信号解析部43は、特定された送信順IDおよびグループIDに基づいて、測位に用いる送信機3を特定する。そして、信号解析部43は、記憶部42に記憶された配置情報を参照し、特定した送信機3の設置高と2次元座標を取得する。信号解析部43は、記憶部42に記憶された高さ情報、特定した送信機3の設置高と2次元座標、各有効タイムスロットの第1時間差に基づいて、受信機4の位置を測定する。信号解析部43は、測定した位置情報を出力部44に出力する(S309)。
出力部44は、信号解析部43から受信機4の位置の入力を受けると、当該位置を、受信機4を所持する人物の位置として、外部に出力する。本実施の形態では、表示装置に人物の位置を表示する(S310)。出力処理が終わると、ステップS301に戻り、再び、SYNC信号が検出されるまで、SYNC信号の検出処理を繰り返す。
以上のように、本実施の形態における測位システム1によれば、システムを構成する送信機3の数を増やしても、全ての送信機3が音響信号を送信し終えるまでに要する時間、すなわち、受信機4の位置を測定するために必要な時間を短時間に保つことができる。このため、監視空間が広域であっても、当該監視空間を移動する受信機4の位置、すなわち、移動物体の位置を精度良く測定することが可能となる。