JP2017181217A - エンドトキシン測定のための前処理方法及びその測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち本発明は、試料を酵素で処理し溶解する工程を有し、該工程の後に、酵素を失活させる工程を有する、エンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、酵素を失活させる工程において溶液の温度を上昇させて酵素を失活させる、前記のエンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、酵素がタンパク質分解酵素である前記のエンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、酵素で処理した後の溶液が均一に溶解している前記のエンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、試料が生体適合性材料である前記のエンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、生体適合性材料が脱細胞化組織である前記のエンドトキシン測定のための前処理方法を提供するものである。
また本発明は、エンドトキシンが安定化している前記のエンドトキシン測定用試料を提供するものである。
また本発明は、前記のエンドトキシン測定のための前処理方法により前処理を行った後に、エンドトキシン測定を行う、エンドトキシンの測定方法を提供するものである。
また本発明は、エンドトキシン測定がリムルステストによって行われる前記のエンドトキシンの測定方法を提供するものである。
本発明の前処理方法は、エンドトキシン量を測定しようとする試料に対して行われる。試料は、エンドトキシン量を測定しようとする試料であれば特に限定されないが、エンドトキシン量を正確に測定できることから、生体適合性材料が好ましい。生体適合性材料の他には、ペプチド医薬品、タンパク質医薬品等の医薬品、食品、飲料等も試料として用いることができる。
また、人工コラーゲンや人工タンパク質等、人工的に製造したものも、生体適合性材料として挙げられる。
リムルステストに使用するリムルス試薬は市販のものが使用でき、また市販されているエンドトキシン測定用のキットや測定機器も使用できる。例えば、和光純薬工業株式会社製のエンドトキシン測定システムであるトキシノメーター等が挙げられる。
・ET溶液(エンドトキシン溶液)
コントロールスタンダードエンドトキシン(Limulus ES−II Single Test wako、和光純薬工業株式会社製、以下CSEと略記する)を蒸留水で希釈し、これを適宜希釈したものを使用した。
・Proteinase K溶液(プロテイナーゼK溶液)
600U/mlのProteinase K(recombinant、PCRGrade、Roche)を蒸留水で希釈し、これを適宜希釈したものを使用した。今回試験に使用したProteinase K溶液のエンドトキシン濃度の測定を行ったところ、検出限界値未満(0.0014EU/ml未満)であった。この結果より、使用したProteinase K溶液に含まれるエンドトキシンは、本測定には影響しないことが分かった。尚、EUとは、エンドトキシンユニットを指す。
(生体適合性材料の測定試料の準備)
屠畜場からブタ大動脈を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ大動脈を切り開いて採取したシート状の内膜(以下、内膜シート)と生理食塩水をポリエチンレン製バッグに入れてシールし、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)で100〜1000MPaにて高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素含有洗浄液及びアルコール含有洗浄液により洗浄し、脱細胞化組織である脱細胞化ブタ大動脈シートを得た。
得られた脱細胞化ブタ大動脈シートから1cm×1cmの試験片を2枚採取し、それぞれ重量を測定し、それぞれ2.0mlマイクロチューブに入れた。マイクロチューブの1本は添加回収試験用サンプルとし、1本はエンドトキシン測定用サンプルとした。
Proteinase K溶液をET溶液で希釈し、120U/mlの0.15EU/ml含有Proteinase K溶液を1.0ml調製した。
添加回収試験用サンプルに、120U/mlの0.15EU/ml含有Proteinase K溶液1.0mlを添加し、50℃で3時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。処理後、Proteinase Kを、80℃8分で失活させ、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
エンドトキシン測定用サンプルに、120U/mlのProteinase K溶液を1.0ml添加し、50℃で3時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。処理後、Proteinase Kを、80℃8分で失活させ、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
和光純薬工業株式会社製トキシノメーター(ET−6000/J)を用いて、比濁時間分析法の常法に従って、以下のようにエンドトキシン濃度の測定を行った。
すなわち、添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として、それぞれの200μlを、和光純薬工業株式会社製のLimulus ES−2 Single Test wako(ゲル化感度:0.015EU/ml)のリムルス試薬(凍結乾燥品。カブトガニ血球抽出物(AL)を含有する。)に添加し、数秒間攪拌し、混合液を得た後、37℃保温下に、トキシノメーター(ET−6000/J)を用いて、上記混合液の透過光量が、測定開始から5%減少するまでの時間(以下、Tgと略記する。)を測定した。別に、蒸留水と濃度既知のエンドトキシン溶液を用いて同様の測定を行い、エンドトキシン濃度とTgとの関係を表す検量線を作成した。この検量線に基づいて、試料中のエンドトキシンの濃度を算出した。
(添加回収試験用サンプル溶液のエンドトキシン量測定値(EU/ml)−エンドトキシン測定用サンプル溶液のエンドトキシン量測定値(EU/ml))/エンドトキシン測定用サンプル溶液のエンドトキシン含有量(0.015EU/ml)×100=添加回収率(%)
0.15EU/ml含有Proteinase K溶液及びProteinase K溶液による脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させるための酵素処理の時間を3時間から22時間に変えた以外は、実施例1と同様の手順で添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
酵素処理し脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させるのに用いた0.15EU/ml含有Proteinase K溶液及びProteinase K溶液の濃度が60U/mlであること以外は、実施例1と同様の手順で添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
0.15EU/ml含有Proteinase K溶液及びProteinase K溶液による脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させるための酵素処理の時間を3時間から22時間に変えた以外は、実施例3と同様の手順で添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
酵素処理し脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させるのに用いた0.15EU/ml含有Proteinase K溶液及びProteinase K溶液の濃度が15U/mlであること以外は、実施例1と同様の手順で添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
屠畜場からブタ大動脈を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ大動脈を切り開いてシート状にした。以下実施例1と同様にして、脱細胞化した後、添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
屠畜場からブタ皮膚を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ皮膚から、真皮層を含む組織を採取した。以下実施例1と同様にして、脱細胞化した後、添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
屠畜場からブタ心膜を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ心膜から、脂肪組織を除去した。以下実施例1と同様にして、脱細胞化した後、添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
屠畜場からウシ心膜を購入し、冷蔵で搬送した。このウシ心膜から、脂肪組織を除去した。以下実施例1と同様にして、脱細胞化した後、添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。
(使用試薬)
・ET溶液(エンドトキシン溶液)
CSEを蒸留水で希釈し、これを適宜希釈したものを使用した。
・Papain溶液(パパイン溶液)
Papain(Carica papaya、Roche)を蒸留水で希釈し、これを適宜希釈したものを使用した。
実施例1と同様の手順で作製した。
Papain溶液をET溶液で希釈し、30U/mlの0.15EU/ml含有Papain溶液を1.0ml調製した。
添加回収試験用サンプルに、30U/mlの0.15EU/ml含有Papain溶液1.0mlを添加し、50℃で1.5時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。処理後、Papainを、80℃8分で失活させ、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
エンドトキシン測定用サンプルに、30U/mlのPapain溶液を1.0ml添加し、50℃で1.5時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。処理後、Papainを、80℃8分で失活させ、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
釈した。
(生体適合性材料の測定試料の準備)
実施例1と同様の手順で作製した。
Proteinase K溶液をET溶液で希釈し、60U/mlの0.15EU/ml含有Proteinase K溶液を2.0ml調製した。
添加回収試験用サンプルに、60U/mlの0.15EU/ml含有Proteinase K溶液1.0mlを添加し、50℃で3時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。その後、Proteinase Kの失活処理をせず、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
エンドトキシン測定用サンプルに、60U/mlのProteinase K溶液を1.0ml添加し、50℃で3時間酵素処理し、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。その後、Proteinase Kの失活処理をせず、溶液を室温に戻した後、蒸留水を用いて10倍希釈した。
この添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を試料として用いて、前記<エンドトキシン濃度の測定方法>によりエンドトキシン濃度の測定を行い、前記<添加回収率の算出方法>で添加回収率を算出した。結果を表1に示す。この結果より、Proteinase Kの失活処理をしない場合、添加回収率は200%を大きく超えてしまった。添加回収率は50〜200%の間でなければならないため(日本薬局方)、酵素の失活処理をしない方法は、分析方法として適さないことがわかる。
添加回収率が200%を大きく超えてしまった理由は定かではないが、その理由のひとつとして、残存したProteinase Kがリムルス試薬のゲル化カスケードを開始させてしまったため、疑陽性を示したと考えられる。
(使用試薬)
・ET溶液
CSEを蒸留水で希釈し、これを適宜希釈したものを使用した。
・NaOH溶液
蒸留水に水酸化ナトリウム(NaOH)を溶解し、40mg/ml(1.0規定)のNaOH溶液を調製した。これを適宜希釈したものを使用した。
・HCl溶液
蒸留水で塩酸を希釈し、18mg/ml(0.5規定)のHCl溶液を調製した。
屠畜場からブタ大動脈を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ大動脈を切り開いて採取したシート状の内膜(以下、内膜シート)と生理食塩水をポリエチンレン製バッグに入れてシールし、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)で100〜1000MPaにて高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素含有洗浄液及びアルコール含有洗浄液により洗浄し、脱細胞化組織である脱細胞化ブタ大動脈シートを得た。
脱細胞化ブタ大動脈シートから1cm×1cmの試験片を2枚採取し、それぞれ重量を測定し、それぞれ2.0mlマイクロチューブに入れた。1本は添加回収試験用サンプルとし、1本はエンドトキシン測定用サンプルとした。
NaOH溶液をET溶液で希釈し、0.5規定の0.30EU/ml含有NaOH溶液を2.0ml調製した。
添加回収試験用サンプルに、0.5規定の0.30EU/ml含有NaOH溶液1.0mlを添加し、45℃で22時間処理して、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。
エンドトキシン測定用サンプルに、0.5規定のNaOH溶液を1.0ml添加し、45℃で22時間処理して、脱細胞化組織の試験片を均一に溶解させた。
0.30EU/ml含有NaOH溶液による脱細胞化組織への処理時間を1分間に変更し、比較例2と同様の手順で添加回収試験用サンプル溶液とエンドトキシン測定用サンプル溶液を調製した。
添加回収試験用サンプル溶液、エンドトキシン測定用サンプル溶液とも、脱細胞化組織の試験片は均一に溶解せず溶け残りがあったため、脱細胞化組織溶解時のエンドトキシン濃度を測定することができなかった。
Claims (10)
- 試料を酵素で処理し溶解する工程を有し、該工程の後に、酵素を失活させる工程を有する、エンドトキシン測定のための前処理方法。
- 酵素を失活させる工程において溶液の温度を上昇させて酵素を失活させる請求項1記載のエンドトキシン測定のための前処理方法。
- 酵素がタンパク質分解酵素である請求項1又は2記載のエンドトキシン測定のための前処理方法。
- 酵素で処理した後の溶液が均一に溶解している請求項1〜3の何れか1項に記載のエンドトキシン測定のための前処理方法。
- 試料が生体適合性材料である請求項1〜4の何れか1項に記載のエンドトキシン測定のための前処理方法。
- 生体適合性材料が脱細胞化組織である請求項5に記載のエンドトキシン測定のための前処理方法。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載のエンドトキシン測定のための前処理方法を行ったエンドトキシン測定用試料。
- エンドトキシンが安定化している請求項7記載のエンドトキシン測定用試料。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載のエンドトキシン測定のための前処理方法により前処理を行った後に、エンドトキシン測定を行う、エンドトキシンの測定方法。
- エンドトキシン測定がリムルステストによって行われる請求項9記載のエンドトキシンの測定方法。
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