JP2017180560A - 高圧容器 - Google Patents

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俊夫 高野
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克範 藤村
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直樹 山内
敏 北川
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敏 北川
浩司 秋山
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浩司 秋山
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Mitsuo Shibuya
光夫 渋谷
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文将 槙
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Abstract

【課題】小型化、軽量化を図りながらも、水素がライナー層を透過してしまうことを防止することができる高圧容器を提供することを目的としている。【解決手段】多層樹脂ライナー層は、下記化学式6の構造単位を有するビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂層(A)を少なくとも1層有し、その内側にポリアミドを主成分とする組成物からなる層(B)を有し、外側にポリエチレンを主成分とする層(C)を有し、樹脂層(A)の端面に対応する第1の位置と開口端部の端面に対応する第2の位置との間にかけて設けられ、層(B)及び層(C)を含み、樹脂層(A)を含まない低バリアー部が形成され、バルブ部は、口金の内周面に接続される胴部と、胴部の先に接続され、開口端部の内周面と接触する先端部とが形成され、先端部は、先端側の位置から第1の位置に対応する位置に向かうにしたがって拡径しているものである。【選択図】図2

Description

本発明は、例えば高圧の水素等を収容する高圧容器に関するものである。
CO排出問題を解決すると共に、エネルギー問題を解決可能な燃料電池自動車は、今後の新たな自動車として期待されている。この燃料電池自動車に搭載される水素収容容器(高圧容器)については、水素が漏洩することを防止するために、高強度であることが必要となっている。その一方で、燃料電池自動車の燃費が低下等することを抑制できるように、水素収容容器には、軽量性も求められている。
このため、従来は、外層である炭素繊維樹脂層の内側のライナー層を、金属よりも軽量なポリアミドといった樹脂等で構成した容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第4588078号公報 米国特許出願公開第2011/0210515号明細書
水素収容容器のライナー層については、より水素の透過をさせにくくすることについての性能の向上が望まれている。これは、ライナー層を水素が通過すると、例えば、最外層の炭素繊維樹脂層とライナー層との界面に水素が滞留し、当該滞留した水素の圧力によってライナー層が変形してしまうことがあるからである。このため、ライナー層は、炭素繊維樹脂層のガスバリアー性と同程度以上のガスバリアー性を有することが望ましい。
特許文献1では、ガスバリアー性に優れたポリアミド樹脂をライナー用材料として使用していることが記載されている。しかし、例えば20(mm)の炭素繊維樹脂層と同等の水素に対するガスバリアー性をナイロン6で確保しようとする場合においては、水素透過度係数から計算すると、ライナー層の厚みを少なくとも64(mm)以上とする必要があり、容器の小型化、軽量化が妨げられる。
ライナー層の構成層は、単層とすることも複数層とすることもできる。しかし、ガスバリアー性が高い材料の中には、水に弱い等のデメリットがあるものも存在する。このような材料をライナー層に用いる場合には、ガスバリアー性を確保するバリアー層の他に、保護層も形成し、ライナー層を複数層とする。ここで、複数層のライナー層の製造にあたってはブロー成形を採用することが好ましいことから、ライナー層の端部(水素の流入出口)の形状は外側に突出し、この端部に口金が取り付けられる。
ブロー成形で製造したライナー層は、バリアー層の表面の広範囲が保護層で覆われる。しかし、ライナー層は層構造であるので、ライナー層の端部の端面の保護が手薄である。特に、高圧容器は高圧の水を封入する耐圧試験が実施され、ライナー層の端面の層間から水が進入してバリアー層が水と接触してしまう可能性がある。また、水素中にも僅かながら、水が含まれているため、試験中でなくても、ライナー層の端面の層間から水が進入してバリアー層が水と接触してしまう可能性がある。
特許文献2には、ライナー層5に挿入する雌ネジ9の外周面をテーパー状にしたことが記載されている。このように、テーパー状にすることで、ライナー層5と雌ネジ9の外周面との接触面圧を増加させ、ライナー層5と雌ネジ9の外周面との間を水が通過しにくくなる。このため、特許文献2の技術を、複数層で構成されたライナー層に適用すると、ライナー層5の端部の端面に水が至りにくくなり、一定程度であれば、バリアー層を保護できる。しかし、高圧容器に高圧水素を封入する場合であれば、試験時に封入される水の圧力も高く設定されることから、より確実にバリアー層を保護することが望まれる。
本発明は上記課題を解消するためのものであり、水素がライナー層を透過してしまうことを防止するにあたって小型化及び軽量化を図ることができるとともに、より確実にライナー層のバリアー層を保護することができる高圧容器を提供することを目的としている。
本発明の高圧容器は、外側に突出した開口端部を有する多層樹脂ライナー層と、多層樹脂ライナー層の外層に設けられた補強材層と、多層樹脂ライナー層の開口端部に配置された口金と、口金に着脱自在に設けられ、口金を塞ぐバルブ部と、を備え、多層樹脂ライナー層は、下記化学式1の構造単位を有するビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂層(A)を少なくとも1層有し、その内側にポリアミドを主成分とする組成物からなる層(B)を有し、外側にポリエチレンを主成分とする層(C)を有し、樹脂層(A)の端面に対応する第1の位置と開口端部の端面に対応する第2の位置との間にかけて設けられ、層(B)及び層(C)を含み、樹脂層(A)を含まない低バリアー部が形成され、バルブ部は、口金の内周面に接続される胴部と、胴部の先に接続され、開口端部の内周面と接触する先端部とが形成され、先端部は、先端側の位置から第1の位置に対応する位置に向かうにしたがって拡径しているものである。
本発明の高圧容器によれば、ライナー層は、下記化学式1の構造単位(以下において、側鎖1,2−ジオール構造単位とも称する)を有するビニルアルコール系樹脂からなるバリアー層を含む多層構造で構成されており、また、バルブ部の先端部は、樹脂層(A)の端面位置に対応する第1の位置から多層樹脂ライナー層の端面位置に対応する第2の位置までの部分に、多層樹脂ライナー層との接触面圧を増加させる接触面が形成されている。このため、水素がライナー層を透過してしまうことを防止するにあたって小型化及び軽量化を図ることができるとともに、より確実にライナー層のバリアー層を保護することができる。
本発明の実施の形態に係る高圧容器100の斜視図である。 本発明の実施の形態に係る高圧容器100の概要構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態に係る高圧容器100の口金50及び口金50の周辺構造を説明する図である。 本発明の実施の形態に係る高圧容器100のバルブ部60の先端部60C及びライナー層40の開口端部40aの拡大説明図である。 本発明の実施の形態に係る高圧容器100の口金50の変形例を説明する図である。 図1Eに示す変形例の先端部60C及びライナー層40の開口端部40aの拡大説明図である。 本発明の実施の形態に係る高圧容器100の断面図である。 バリアー層43に用いる側鎖1,2−ジオール構造単位を有するビニルアルコール系樹脂と、その他の素材との水素バリアー性能を比較して示したものである。 CFRP層と同等の水素バリアー性能とするために必要な各素材の厚さを示したものである。
以下に、本発明の高圧容器の好ましい実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
〔高圧容器100について〕
高圧容器100について説明する。図1Aは、本実施の形態に係る高圧容器100の斜視図である。図1Bは、本実施の形態に係る高圧容器100の概要構成を示す模式図である。図1Cは、本実施の形態に係る高圧容器100の口金50及び口金50の周辺構造を説明する図である。なお、図1C(a)は全体構造を示し、図1C(b)は突出部52b等の拡大図である。また、図1C(a)では、炭素繊維強化樹脂層30及び衝撃保護層31は図示を省略している。図1Dは、本実施の形態に係る高圧容器100のバルブ部60の先端部60C及びライナー層40の開口端部40aの拡大説明図である。図2は、本実施の形態に係る高圧容器100の断面図である。図1Aは、高圧容器100内の水素を貯留する空間SSが見えるように便宜的に高圧容器100を示した図である。図1Dではバルブ部60及びライナー層40が軸対象であることから、半分の部分を便宜的に示している。また、図1Dでは、ボス部52及びOリングO1等は便宜的に記載を省略している。図2は、図1Bの点線Aで示す矩形範囲における高圧容器100の断面図であり、高圧容器100の層構造について説明する図である。
高圧容器100は、例えば一方向に長い長尺状の水素タンクである。なお、図2に示す円筒状の高圧容器100は一例であり、高圧容器100の容量や各寸法は、性能要求等に合わせて適宜設定することができる。高圧容器100は、ライナー層40及び炭素繊維強化樹脂層30を含む構造体である。ライナー層40が多層樹脂ライナー層に対応し、炭素繊維強化樹脂層30が補強材層に対応する。
高圧容器100は、図1Aに示すように、炭素繊維強化樹脂層30が設けられた円筒状の胴部10aと、胴部10aの両端に設けられた肩部10bとを含んでいる。高圧容器100内には、内容物(水素等のガス等)を収容する空間SSが形成されている。炭素繊維強化樹脂層30は、例えば、胴部10a及び肩部10bの全体に、炭素繊維がヘリカル巻により巻線されて構成される層と、胴部10aにおいてフープ巻により巻線された層とが1層もしくは交互に積層された積層構造を有している。また、肩部10bにおいて、炭素繊維強化樹脂層30の上部には衝撃保護層31が設けられている。なお、衝撃保護層31は、必ずしも設けられている必要はない。また、高圧容器100には容器内に水素を流入させる、或いは、放出する口金50と、口金50を塞ぐバルブ部60とが設けられている。
口金50は、金属から構成されている。口金50は、肩部10bに設けられたボス部52と、ナット部70とを有している。口金50のボス部52には、バルブ部60が挿入される貫通孔が、高圧容器100の軸方向に延びるように形成されている。バルブ部60は、ボス部52に着脱自在に設けられている。なお、ナット部70は、ボス部52の端面52Aに配置されている。
図1C(a)に示すように、ライナー層40の開口端部40aには、ボス部52及びバルブ部60が取り付けられている。開口端部40aは、ライナー層40内に形成された水素を貯留する空間SSではなく、空間SSの外側に形成されている。つまり、開口端部40aは、外側に突出して形成されている。口金50は、この開口端部40aに配置されている。バルブ部60は、頭部60Aと、胴部60Bと、先端部60Cとを有している。バルブ部60は、金属から構成される。
頭部60Aは、胴部60B及び先端部60Cよりも外径が大きい。
胴部60Bは、円柱状部材であり、周面にねじ山60B1が形成されている。なお、ボス部52には、ねじ山60B1と締結(接続)するねじ山が形成されている第1の接続部52Bが形成されている。バルブ部60をボス部52にねじ込むことで、ねじ山60B1と第1の接続部52Bとが係合し、バルブ部60がボス部52に締結(接続)される。
先端部60Cは、バルブ部60の先端Tpに向かうにしたがって縮径するように形成されている。つまり、先端部60Cは、バルブ部60の先端Tpに向かうにしたがって先細るテーパー面60C1が形成されている。換言すると、先端部60Cは、先端側から胴部60B側に向かうにしたがって拡径するように形成された部分を有する。
先端部60Cのテーパー面60C1は、胴部60Bよりも先端側に形成され、開口端部40aの内周面と接触する。具体的には、図1Dに示すように、先端部60Cのテーパー面60C1は、先端Tpからバリアー層43の端面43aの位置に対応する第1の位置P1までにかけて形成されている。つまり、先端部60Cは、先端Tpから第1の位置P1に向かうにしたがって拡径している。なお、先端部60Cは、第1の位置P1からライナー層40の端面40bの位置に対応する第2の位置P2までは、テーパー面が形成されておらず、同一径である。テーパー面60C1が、ライナー層40との接触面圧を増加させている。なお、バリアー層43については後段で詳しく説明する。
バルブ部60をボス部52にねじ込むと、テーパー面60C1とライナー層40との接触面圧が増加し、ライナー層40内の空間の気密性が向上するように作用する。これにより、ライナー層40内に充填された水素が、端面40bに至ってしまうことを抑制することができ、端面40bを保護することができる。
先端部60Cは、バリアー層43の端面43aの位置に対応する第1の位置P1からライナー層40の端面40bの位置に対応する第2の位置P2までの部分の径が、ライナー層40の開口端部40aの内径よりも大きくなっている。このため、先端部60Cを開口端部40aに挿入すると、先端部60Cの外周面と開口端部40aの内周面とが強く押しつけ合うことになり、両者の接触面圧を増加させることができる。
なお、テーパー面60C1の態様は図1C及び図1Dに限定されるものではない。例えば、テーパー面60C1は、先端部60Cとライナー層40との接触部分だけであってもよい。つまり、先端部60Cは、先端Tpから、先端部60Cとライナー層40との接触部分のうち最も先端の第3の位置P3までが、同一径であってもよい。
また、例えば図1E及び図1Fに示すように、テーパー面60C1は、先端部60Cの先端Tpの位置からライナー層40の端面40bの位置に対応する第2の位置P2までにかけて、形成されてもよい。この構成でも、バルブ部60をボス部52にねじ込むと、テーパー面60C1とライナー層40との接触面圧が増加し、ライナー層40内の空間の気密性が向上させることができる。
ライナー層40内の水素が高圧であるほど、ライナー層40が膨張し、ライナー層40とバルブ部60とボス部52とが強く押しつけ合うことになる。このため、更に、ライナー層40内の空間の気密性が向上し、端面40bを保護することができる。つまり、ライナー層40内の水素が高圧であるほど、テーパー面60C1の接触面圧は、先端部60Cの径が軸方向において同一であると仮定した場合における、テーパー面60C1の対応部分の接触面圧よりも、大きい。具体的には、次の通りである。
ライナー層40内に水素が充填されると、ライナー層40の開口端部40aは、ボス部52内の狭い空間に押し込まれ、膨張する。このとき、開口端部40aには、バルブ部60の軸方向と平行な方向の第1の力やバルブ部60の軸方向と直交する方向の第2の力等が発生している。ここで、仮に、テーパー面60C1が形成されていないと、主に、第2の力だけが接触面圧に寄与することになる。しかし、テーパー面60C1が形成されていると、第2の力だけでなく第1の力も接触面圧に寄与することになる。このため、テーパー面60C1が形成されていると、接触面圧を増加させることができる。
しかし、ライナー層40内の水素が低圧である場合においては、押しつけ合う力が弱まり、気密性が低下する可能性がある。したがって、高圧容器100は、次に説明する、OリングO1及びOリングO2等を備えた構造を採用している。
ボス部52の内周面には、胴部60Bが締結される第1の接続部52Bが形成されている。また、ボス部52の内周面には、第1の接続部52Bよりも奥に形成され、開口端部40aの端面40bに接触する第1の面52b1、及び先端部60Cに接触する第2の面52b2を有する突出部52bが形成されている。つまり、突出部52bは、ライナー層40及びバルブ部60の両方に接触している。なお、突出部52bは、ボス部52のある外側からバルブ部60のある内側に向かう方向に突出している。さらに、ボス部52の内周面には、突出部52bよりも奥に形成され、開口端部40aの外周面に接続される第2の接続部52Cが形成されている。開口端部40aの外周面と第2の接続部52Cとの間にシール材を塗布してシール層を形成してもよい。これにより、開口端部40aの外周面と第2の接続部52Cとの間を水素が通過することを抑制することができる。
突出部52bは、第1の面52b1の形成位置に環状の溝52b11が形成されている。そして、溝52b11には、開口端部40aの内周面と先端部60Cとの間に流入した水素が、第1の面52b1と開口端部40aの端面40bとの間を通過することを防止するOリングO1が設けられている。OリングO1は、第1のシール部材に対応する。
OリングO1が設けられていることで、高圧容器100内の圧力が低く、ライナー層40とバルブ部60とボス部52とが強く押しつけ合う力が低下しても、ライナー層40とボス部52との間(端面40bと第1の面52b1との間)を通って水素が漏洩することを抑制することができる。
バルブ部60の先端部60Cにも、環状の溝60bが形成されている。溝60bには、開口端部40aの内周面と先端部60Cとの間に流入した水素が、第2の面52b2と先端部60Cとの間を通過することを防止するOリングO2が設けられている。OリングO2は、第2のシール部材に対応する。溝60bは、バルブ部60をボス部52に予め定められたストロークだけねじ込んだときに、OリングO2と第2の面52b2とが対向する位置に形成されている。
OリングO2が設けられていることで、高圧容器100内の圧力が低く、ライナー層40とバルブ部60とボス部52とが強く押しつけ合う力が低下しても、ボス部52とバルブ部60との間(第2の面52b2とテーパー面60C1との間)を通って水素が漏洩することを抑制することができる。
口金50は、ボス部52の外周面が炭素繊維強化樹脂層30及び衝撃保護層31に接触して、炭素繊維強化樹脂層30及び衝撃保護層31に固定されている。このように、口金50を高圧容器100の肩部10bに取り付ける構造を採用することにより、上述したブロー成形による一体的な多層構造を有する高圧容器100の成形が可能になる。
図示省略の水素ステーションに設置された高圧容器100から水素がバルブ部60を介して高圧容器100内に充填されるとともに、高圧容器100内に収容された水素はバルブ部60を介して自動車の動力源に供給されるようになっている。
(ライナー層40)
ライナー層40は、外側の層から順番に、炭素繊維強化樹脂層30が巻き付けられた外層41と、側鎖1,2−ジオール構造単位を有するビニルアルコール系樹脂を含むバリアー層43と、ポリアミド樹脂を主成分とする内層44とを備えている。外層41が層(C)に対応し、バリアー層43が樹脂層(A)に対応し、内層44が層(B)に対応する。また、ライナー層40は、外層41とバリアー層43との間に設けられ、外層41とバリアー層43とを接着する接着性樹脂で構成された接着層42(接着樹脂層)も備えている。
ここで、バリアー層43の端面43aの位置に対応する第1の位置P1は、ブロー成形で製造したライナー層40ごとにずれることがある。ブロー成形では、第1の位置P1を精度よく制御することができない場合があるからである。したがって、ライナー層40は、断面視したときに、バリアー層43が存在する部分(高バリアー部Hb)と、バリアー層43が存在しない部分(低バリアー部Lb)とがある。
低バリアー部Lbは、図1Dに示すように、第1の位置P1から第2の位置P2までの部分である。低バリアー部Lbは、バリアー層43の端面に対応する第1の位置P1と端面40bに対応する第2の位置P2との間にかけて設けられ、外層41及び内層44を含み、バリアー層43を含まない。低バリアー部Lbは、バリアー層43が存在しない分、ガスバリアー性が低くなっている。
一方、高バリアー部Hbは、ライナー層40のうち低バリアー部Lb以外の部分である。高バリアー部Hbは、図1Dに示すように、先端部60Cのうち第3の位置P3から第1の位置P1までの部分に接触し、先端部60Cとの接触面圧が増大している。このため、低バリアー部Lbと先端部60Cとの間に水素や水が流入してしまうことを抑制することができるようになっている。
外層41は、バリアー層43の外側に配置され、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)を主成分とするものである。本発明に用いられる高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)は、ブロー成形用の超高分子量のものが好ましい。
バリアー層43は、内層44の外側に配置され、次に示す化学式1(以下において、一般式(1)とも称する)で表される1,2−ジオール構造単位を有するビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂層である。上記のビニルアルコール系樹脂は、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)よりもガスバリアー性が優れており、水素バリアー性能が向上したものになっている。ここで、水素バリアー性能とは水素の透過のさせにくさを示す性能であり、水素バリアー性能が高いほど水素を透過させにくいということである。上記の特定の構造単位を有するビニルアルコール系樹脂は、水溶性でポリビニルアルコールに分類されるが、側鎖1,2−ジオール構造単位を有しない一般的なポリビニルアルコールと比べて、融点と分解温度の差が大きいことに基づき、溶融成形可能であるという利点がある。
側鎖1,2−ジオール構造単位を有するビニルアルコール系樹脂について説明する。側鎖1,2−ジオール含有ポリビニルアルコール系樹脂は、a)側鎖1,2−ジオール構造単位と称する、下記式(1)で表される単位;b)ビニルエステル系モノマーに由来するビニルアルコール構造単位;c)必要に応じて共重合される共重合モノマー単位を含有する。以下、これらの構造単位について、順に説明する。
a)側鎖1,2−ジオール構造単位
Figure 2017180560
上記一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示す。
〜Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。該有機基としては特に限定しないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じてハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。R〜Rとしては好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子である。R〜Rとしては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子である。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、結晶性の向上や非晶部におけるフリーボリューム(自由体積空孔サイズ)が低減し、バリアー性が向上する点から単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CHO)m−、−(OCH)m−、−(CHO)nCH−等のエーテル結合部位を含む構造単位;−CO−、−COCO−、−CO(CH)mCO−、−CO(C)CO−等のカルボニル基を含む構造単位;−S−、−CS−、−SO−、−SO−等の硫黄原子を含む構造単位;−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造単位;−HPO−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造単位;−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−等の珪素原子を含む構造単位;−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−等のチタン原子を含む構造単位;−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子等の金属原子を含む構造単位などが挙げられる。これらの構造単位中、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基であることが好ましい。またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10である。
これらのうち、製造時あるいは使用時の安定性の点から、炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特に炭素数1の炭化水素鎖が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R〜R及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である、下記化学式2(以下において、構造式(2)とも称する)で示される構造単位である。
Figure 2017180560
このような側鎖1,2−ジオール構造単位は、特に限定しないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示されるビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(5)で示される2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法などにより生成される。
かかる共重合の際に、必要に応じて、c)共重合モノマーを系内に共存させることにより、c)共重合モノマーを共重合させることが可能である。
Figure 2017180560
Figure 2017180560
Figure 2017180560
(3)(4)(5)式中、R〜Rは、いずれも(1)式の場合と同様である。R及びRは、それぞれ独立して水素またはR−CO−(式中、R9は、炭素数1〜4のアルキル基である)。R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子又は有機基である。
(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2002−284818号公報、特開2004−075866号公報、特開2004−285143号公報等に記載の公知の方法を採用できる。
なかでも、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で(i)の方法が好ましく、特にR〜Rが水素、Xが単結合、R、RがR−CO−であり、Rがアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、その中でも特にRがメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。
得られた共重合体のケン化についても、従来から公知のケン化方法を採用することができる。すなわち共重合体をアルコール又は水/アルコール溶媒に溶解させた状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行うことができる。アルカリ触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂における側鎖1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常0.1〜30モル%、好ましくは2〜15モル%、より好ましくは2〜8モル%である。側鎖1,2−ジオール含有率が高くなりすぎると、非晶部分のフリーボリュームが小さくなり、水素溶解性を低減させるという点では好ましいが、側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂の生産性が低下する傾向がある。
一方、側鎖1,2−ジオール含有率が低すぎると、側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂の融点と分解点が近づき、溶融成形が困難となり、多層構造のホース等の成型への適用上、不利になる傾向にある。さらに、水素透過係数が増大する傾向にあり、ひいては水素ガスバリアー性が低下する。
b)ビニルアルコール構造単位
ビニルアルコール構造単位は、通常、ビニルエステル系重合体又は共重合体を構成するビニルエステル系モノマーに由来する構造単位がケン化されることにより生成される。したがって、ケン化度が100モル%未満の場合には、側鎖1,2−ジオール含有ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル構造単位も含有する。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。このほか、例えば具体的には、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等を用いることができ、通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルが挙げられる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
c)共重合モノマー単位
側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、上記側鎖1,2−ジオール構造単位を提供するモノマー、ビニルアルコール系モノマーの他、所望により他の共重合モノマーに由来する構造単位を含んでもよい。
側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂の製造に用いられ得る共重合モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;さらにビニレンカーボネート類やアクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル、アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド等のアミド、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、ビニルトリメトキシシランやビニルトリエトキシシランなどのシリル基含有モノマー、あるいはその塩などの化合物が共重合されていてもよい。1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどが挙げられる。中でも、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパンが製造容易性の点で好ましく用いられる。中でも側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂のポリアミド樹脂との親和性が向上する点で、また耐水性の改善や成形性を改善出来る点でエチレン、プロピレン等のα−オレフィンが好ましい。
本発明に用いる側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂においては、ガスバリアー性の観点から、エチレンやプロピレン等のα−オレフィンの含有率が、通常0モル%〜20モル%未満であることが好ましい。
以上のような構造単位で構成される側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂における重合度は、通常250〜1000、好ましくは300〜650、より好ましくは400〜500、さらに好ましくは440〜480である。重合度が高くなりすぎると、溶融粘度が高くなりすぎて、押出機に負荷がかかり、成形しにくくなる傾向がある。また、溶融混練時のせん断発熱により、樹脂温度が高くなり、樹脂が劣化するおそれがある。一方、重合度が低くなりすぎると、成形品がもろくなるため、ガスバリアー層にクラックが入りやすく、ガスバリアー性、特に小分子である水素ガスのバリアー性が低下する傾向にある。
また、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂のビニルエステル部分のケン化度は、JIS K6726に準じて測定した値で、通常80〜100モル%の範囲内で、側鎖1,2−ジオール含有ポリビニルアルコール系樹脂の構成、その他の所望により適宜選択される。好ましくは、98〜100モル%、より好ましくは99〜99.9モル%、特に好ましくは99.5〜99.8モル%である。ケン化度が低くなりすぎると、OH基の含有量が少なくなることを意味し、ガスバリアー性が低下する傾向にある。
側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の重合体を含有していてもよい。含有しうる重合体としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーなどの各種熱可塑性樹脂を挙げることができる。特に、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂の柔軟性を改善できる点でエチレンα−オレフィン共重合樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましい。
また、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂中の熱可塑性樹脂の分散性が向上し、ブロー成形性が改善できる点で、これらの熱可塑性樹脂が水酸基と反応又は水素結合を形成可能な極性官能基を有することが好ましく、極性官能基としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネンー2,3−ジカルボン酸無水物(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物ともいう)等のカルボン酸無水物基、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等のカルボキシル基、及びそれらのメチルエステル、エチルエステル等のアルキルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等があげられる。
側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂と上記の熱可塑性樹脂との含有量比は、質量比で9.5/0.5〜5/5であることが好ましく、より好ましくは9/1〜6/4、特に好ましくは9/1〜7/3である。熱可塑性樹脂の含有比率が小さすぎると、柔軟性、耐屈曲性の改善が不十分となる傾向があり、含有比率が大きくなりすぎると、水素ガスバリアー性が不足する傾向にある。
仮に水素がライナー層40を通過してしまうと、ライナー層40と炭素繊維強化樹脂層30との間に水素が滞留してしまう。高圧容器100を減圧すると、水素が膨張し、水素ガスがライナー層40を押し広げるように作用する。高圧容器100の加圧と減圧とが繰り返されることで、ライナー層40を押し広げる作用が繰り返され、やがて、高圧容器100のうちのライナー層40の部分が座屈変形してしまうことがある。高圧容器100は、バリアー層43を備えているためにライナー層40を水素が通過しにくくなっており、高圧容器100のうちのライナー層40の部分が座屈変形してしまうことを防止でき、耐コラプス性に優れたものとなっている。
側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、薄くても、高い水素バリアー性能を有している。このため、高圧容器100ではバリアー層43を薄くすることができる分、水素を貯留する容積を犠牲にしなくても、小型化が可能である。例えば、自動車に搭載する高圧容器100の場合には、ライナー層40全体の厚みが例えば3mm〜6mm程度となるように高圧容器100を構成しても、十分に水素バリアー性能を確保することができる。
また、樹脂は、一般的に、熱を持つと冷めにくい性質を有する。高圧容器100に水素を急速充填すると、高圧容器100内の温度が急激に上昇し、例えば90度程度まで上昇することもある。高圧容器100内の水素を安定的に貯留するためには、高圧容器100の温度が上がりすぎてしまうのは好ましくない。バリアー層43は薄くても十分なガスバリアー性を確保できるため、高圧容器100の放熱性を向上させることができる。この結果、高圧容器100は水素を安定的に貯留することができるようになっている。
さらに、ライナー層40を金属よりも軽い樹脂で構成するため、高圧容器100の軽量化を図ることもできるようになっている。
内層44は、ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる樹脂層である。ポリアミド樹脂で構成された樹脂は脆化温度が−40℃以下であり、かつ、230℃でのゼロせん断粘度が10,000〜1,000,000Pa・sであることが好ましい。脆化温度が−40℃より高いポリアミド樹脂では水素ガス充填時等、低温高圧下に晒されるとクラックが発生する可能性がある。脆化温度を−40℃以下のポリアミド樹脂で構成された樹脂とはポリアミド樹脂自体の脆化温度が−40℃以下のものを用いることができ、ポリアミド樹脂としてはナイロン66系の樹脂、ナイロン系エラストマー等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂自体としては脆化温度が−40℃より高くても、他の樹脂を添加することで、ポリアミド樹脂で構成された樹脂の脆化温度を−40℃以下とすることもできる。ポリアミド樹脂に添加する樹脂とは、脆化温度が−40℃以下であるエラストマー等があげられる。ここでいう脆化温度とは、JIS K7216で測定される脆化温度である。
また、外層41の高密度ポリエチレンに超高分子量の高密度ポリエチレンが使用されていれば、特に問題はないが、ポリアミド樹脂で構成された樹脂は230℃でのゼロせん断粘度が10,000〜1,000,000Pa・sであると更に好ましい。ゼロせん断粘度が10,000Pa・s未満ではブロー成形性が低下し、1,000,000Pa・s以上では溶融押出ができない。ゼロせん断粘度が10,000〜1,000,000Pa・sのポリアミド樹脂で構成された樹脂とはポリアミド樹脂自体のゼロせん断粘度が上記範囲のものを用いても良いし、ポリアミド樹脂に他の樹脂を添加することでゼロせん断粘度を上記範囲としても良い。ポリアミド樹脂に添加する他の樹脂としてはポリアミド樹脂との親和性が高いものが好ましく、特に反応性の極性基を有する樹脂が好ましい。反応性の極性基とは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物基が好ましい。
ここでいうゼロせん断粘度(η)とはせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦10の範囲で測定し、下記数式(Eq−1)のCross−(Arrhenius)モデルを最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出できる。
Figure 2017180560
ここで、BとTは材料定数であり、Tは温度である。
下記にポリアミド樹脂のゼロせん断粘度とブロー成形機で樹脂を押出した時のパリソンの保持時間を示す。
パリソンとはブロー成形機のダイスから押出された溶融状態の樹脂中空状円筒のことで、これを一定長さ分押出してから、金型で挟み込んだ後、空気を吹き込むことでライナーを作成するのであるが、ブロー成形機のダイスから押出された後、金型で挟み込まれるまでの間、パリソンは自重が掛かった状態で垂れ下がって行く。このとき、ゼロせん断粘度が低すぎると、パリソンが十分な長さまで押出される前に、自重で引き伸ばされてパリソンが薄く長くなってしまったり、空気を吹き込む前にパリソンが切れたり、中空内がくっついてしまうなど不具合が発生する。適切な垂れさがり時間を見積もる目安として、成形機から押出された溶融状態の樹脂が、高さ約1.5mの地面に着くまでの時間をパリソンの保持時間として測定するが、樹脂のゼロせん断粘度が低い場合、パリソンの保持時間が短くなり、ブロー成形性が低下する。通常、パリソンは60秒以上保持されることが好ましく、この場合、ゼロせん断粘度は10,000Pa・s以上であることが好ましい。
Figure 2017180560
ポリアミド樹脂を構成するものとしては、例えば、ナイロン6とナイロン66の共重合体であるナイロン6/66を採用することができる。内層44に強度に優れるポリアミド樹脂を採用することで、高圧容器100の強度を向上させることができる。
また、ナイロン6/66は、ポリアミド系の樹脂の中でも、比較的、柔軟性が高く、内層44に用いた場合、低温高圧下でクラックが発生しにくく、更にはナイロン6/66にエラストマーを添加したものがポリアミド樹脂で構成された樹脂層に好適に用いることができる。ポリアミド樹脂はポリオレフィン系樹脂に比べて、ガスバリアー性が高い。仮に、内層44を構成する樹脂のガスバリアー性が低いと樹脂内部に水素が入り込んだ状態で残留し、高圧容器100を加圧及び減圧する過程を経ることで、内層44にブリスタが発生してしまうことがある。一方、高圧容器100は、内層44にガスバリアー性が高い樹脂を採用しているため、水素が内層44内に入り込んだ状態で残留してしまうことを抑制することができるようになっており、耐ブリスタ性に優れたものとなっている。
例えば、高圧容器100内の水素を大量に放出すると、高圧容器100の温度が−40度程度まで低下することもある。例えば、車載用の高圧水素容器では、急加速して高速道路を高速で巡航する場合等には、水素を大量に消費することになるため、高圧容器100内の水素を大量に放出することになり、温度が低下する。ここで、樹脂は、低温にさらされると、一般的に脆くなる性質を有する。
しかし、内層44は、耐低温脆性に優れたポリアミド樹脂を採用しているため、高圧容器100の温度が急激に低下する使用環境にあっても脆くなることを抑制することができる。
また、バリアー層43の側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂と、内層44のポリアミド樹脂(ナイロン6/66)とは、親和性がある。このため、バリアー層43と内層44との間に、層間剥離が生じてしまうことを防止することができるようになっている。つまり、高圧容器100では、接着剤等を用いなくても、バリアー層43と内層44との接合をより確実なものとし、層間剥離を防止することができるようになっている。
内層44には、ポリアミド樹脂に加えて、エラストマーが添加されていてもよい。これにより、内層44のドローダウンを小さくすることができ、加工が行いやすくなる。エラストマーとしては、柔軟性、弾力性等を備えているものであるとよく、例えば、エチレン・オレフィン系エラストマーやウレタン系エラストマーを採用することができる。また、エラストマーとしては、反応性の官能基を有するエラストマーを用いてもよいし、これらのエラストマーを組み合わせてもよい。
接着層42は外層41とバリアー層43とを接着する層であり、外層41とバリアー層43との間に介在するように設けられている。接着層42には樹脂同士の接着をするものであれば、各種の材料を用いることができる。
ここで、高圧容器100のライナー層40を製造するときに行うブロー成形について説明する。高圧容器100のうちライナー層40に対応する部分の加工は、ブロー成形によって行われる。ブロー成形では、ライナー層40を構成することになる樹脂に空気を吹き込んで樹脂を膨らませる。これにより、樹脂の内側に水素を貯留する空間を形成する。ブロー成形を実施すると、樹脂が拡がって延びることになる。したがって、ブロー成形では、樹脂が適度な強度を有している方が、樹脂の形を安定させやすい。すなわち、外層41に高密度ポリエチレン樹脂を採用することで、高圧容器100を製造するにあたって加工性を向上させることができる。また、高密度ポリエチレン樹脂は、安価な樹脂であるため、高圧容器100の製造コストが増大してしまうことも抑制することができる。
(炭素繊維強化樹脂層30)
炭素繊維強化樹脂層30は、高圧容器100の所要の耐圧性(機械的強度)を確保するための層であり、ライナー層40の外周面の全域を覆うように設けられている。この炭素繊維強化樹脂層30は、強化材に炭素繊維を用い、これに樹脂を含浸させて強度を向上させた複合材料であり、CFRP(carbon−fiber−reinforced plastic)と呼ばれている。
炭素繊維強化樹脂層30には、例えば、ピッチ系炭素繊維を採用することができる。ピッチ系炭素繊維は、繊維断面が褶曲した板状の結晶を有し、この結晶が繊維軸方向に沿って規則正しく配列して集合し、配向性が高くなっており、PAN系炭素繊維に比べて弾性率が大きい。なお、炭素繊維強化樹脂層30は、メソフェーズピッチ系であってもよいし等方性ピッチ系であってもよい。なお、炭素繊維強化樹脂層30を構成する繊維をライナー層40に巻き付ける方法には、例えば、フープ巻きやヘリカル巻きがある。なお、ライナー層40に内圧をかけながら、炭素繊維強化樹脂層30を構成する繊維をライナー層40に巻き付けるとよい。特に、ライナー層40は樹脂である上に従来より薄いため、炭素繊維強化樹脂層30を構成する繊維を巻き付ける際に、ライナー層40が変形等してしまうことを抑制することができる。
〔側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂について〕
図3は、バリアー層43に用いる側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂(BVOH)と、その他の素材の樹脂との水素バリアー性能を比較して示したものである。図3は、各種材料における水素透過度係数を示している(上の行参照)。また、図3は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)の水素透過度を1とし、他の材料との関係で比較している(下の行参照)。上側の行の数値も下側の行の数値も対応しており、上側の行の数値も下側の行の数値も小さいほど水素を透過しにくく、優れた素材であることを示している。
図3に示すように、炭素繊維強化樹脂(CFRP)の水素透過度係数が1529、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)の水素透過度係数が27000、ナイロン6(Nylon6)の水素透過度係数が4900、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の水素透過度係数が130、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂(BVOH)の水素透過度係数が20となっている。なお、水素透過度係数の単位は、cc/20μm/m/day/atm,41℃である。
ここで、20/1529≒0.013であるため、図3に示すように、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、CFRPの0.013倍程度しか、水素を透過しない。
また、20/27000≒0.00074であるため、図3では示していないが、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂とHDPEとの比較では、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、0.00074倍程度しか水素を透過しない。同様に、ナイロン6との関係では、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、0.0041倍程度しか水素を透過しない。このように、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、HDPEやナイロン6と比較するとはるかに水素を透過しにくいことがわかる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂については、ガスバリアー性の高い素材として知られている。しかし、20/130≒0.15であるため、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂は、EVOHの0.15倍程度しか、水素を透過しない。このように、EVOHとの比較においても側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂の方が、数分の1程度しか水素を透過せず、BVOHは、水素透過度に関する性能の点で非常に優れていることがわかる。
図4は、CFRP層と同等の水素バリアー性能とするために必要な各素材の厚さを示したものである。図4では、CFRPの厚みを40、30、20、10(mm)として、他の素材も比較している。
例えば、CFRPの厚みを40(mm)としたとき、この厚みのCFRPと同等の水素バリアー性能を確保するためには、HDPEの厚みを706(mm)とし、ナイロン6の厚みを128(mm)とする必要がある。このように、HDPEやナイロン6をライナー層40のバリアー層43に用いると、かなりの厚みになってしまうことがわかる。
また、EVOHは水素バリアー性能に優れていることから、CFRPの厚みが40(mm)であるときに、この厚みのCFRPと同等の水素バリアー性能を確保するためには、EVOHの厚みを3(mm)で賄うことができる。しかし、側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂(BVOH)は、さらに薄くすることができ、0.52(mm)で賄うことができる。
このように、バリアー層43を側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂を含有することで、例えばCFRPとの比較においては0.013倍程度の厚みで賄うことができ、また、EVOHとの比較においては0.17倍程度の厚みで賄うことができる。すなわち、高圧容器100では、バリアー層43に側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂を採用することで、バリアー層43を非常に薄くすることができ、高い水素バリアー性能を確保しながらも、大型化を抑制することができるようになっている。
〔本実施の形態の効果〕
本実施の形態に係る高圧容器100は、バリアー層43に水素バリアー性に優れた側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂を採用したため、軽量化を図りながらも、ライナー層40を水素が透過してしまうことをより確実に防止することができる。また、ライナー層40を水素が透過してしまうことを防止できる分、耐コラプス性が向上するとともに、高圧容器100の放熱性が向上する。
本実施の形態に係る高圧容器100は、内層44は、ナイロン6/66の共重合体にエラストマーが配合されて構成されたものであってもよく、水素バリアー性を保持しつつ、高圧容器100の強度の向上、耐ブリスタ性の向上、及び、耐低温脆性(耐衝撃性)の向上を図ることができる。
本実施の形態に係る高圧容器100は、バリアー層43で水素透過を遮断できることから、特殊な機能性を外層41に持たせる必要がなく、従来からある多層膜容器(例えば、ガソリンタンク等)で使用されている高密度ポリエチレンを採用することができる。このため、高圧容器100の製造コストを抑制することができる。
本実施の形態に係る高圧容器100は、バリアー層43と外層41の間に接着樹脂層を有していてもよい。接着樹脂層に用いられる接着性樹脂としては、公知の接着性樹脂を用いることが可能であり、通常ポリオレフィン系樹脂をマレイン酸等の不飽和カルボン酸(または不飽和カルボン酸無水物)で変性したカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂や、極性基を有するフッ素樹脂が好ましく用いられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、外層41で用いられる樹脂を用いることができる。外層41に高密度ポリエチレンを採用した場合は、マレイン酸変性の高密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
本実施の形態に係る高圧容器100は、先端部60Cが、先端側の位置から第1の位置P1に対応する位置に向かうにしたがって拡径している。このため、バルブ部60をボス部52にねじ込むと、テーパー面60C1とライナー層40との接触面圧が増加し、ライナー層40内の空間の気密性が向上するように作用する。したがって、ライナー層40内に充填された水素が、低バリアー部Lb側へ至ってしまうことを抑制することができる。なお、高圧容器100内の圧力が高くなるほど、ライナー層40が膨張し、さらに、テーパー面60C1とライナー層40との接触面圧が増加するため、ライナー層40内の空間の気密性がより向上する。
本実施の形態に係る高圧容器100は、バリアー層43に水素バリアー性に優れた側鎖1,2−ジオール含有ビニルアルコール系樹脂を採用しているため、バリアー層43を水から保護する内層44の厚みを薄くすることができる。すなわち、従来は、ライナー層(バリアー層及び内層)の厚みを増大させることで、水素バリアー性を確保していたが、高圧容器100はバリアー層43を採用しており、薄くても十分な水素バリアー性を確保することができる。このため、水素バリアー性の観点から内層44を厚くする必要がなく、内層44は、例えば、水からバリアー層43を保護することができる程度の厚みでよい。このように、高圧容器100は、内層44の厚みを薄くすることができ、耐ブリスタ性が向上する。また、内層44には、外層41と比較すると高価なポリアミドを用いているので、内層の厚みを薄くできる分、高圧容器100の製造コストが増大してしまうことも抑制することができる。
本実施の形態に係る高圧容器100は、第1のシール部材であるOリングO1及び第2のシール部材であるOリングO2を備えている。このため、高圧容器100内が低圧となり、上述した接触面圧が低下しても、高圧容器100から水素が漏洩することを抑制することができる。
また、例えば炭素繊維強化樹脂層30がピッチ系炭素繊維からなる場合について例示しているが、その表面にガラス繊維を強化繊維としたGFRPを被膜するようにしてもよい。
10a 胴部、10b 肩部、30 炭素繊維強化樹脂層、31 衝撃保護層40 ライナー層、40a 端部、40b 端面、41 外層、42 接着層、43 バリアー層、43a 端面、44 内層50 口金、52 ボス部、52A 端面、52B 第1の接続部、52B 突出部、52b1 第1の面、52b11 溝、52b2 第2の面、52C 第2の接続部、60 バルブ部、60A 頭部、60B 胴部、60B1 ねじ山、60C 先端部、60C1 テーパー面、60b 溝、70 ナット部、100 高圧容器、O1 Oリング、O2 Oリング、SS 空間、P1 第1の位置、P2 第2の位置、P3 第3の位置、Tp 先端、Lb 低バリアー部、Hb 高バリアー部。

Claims (5)

  1. 外側に突出した開口端部を有する多層樹脂ライナー層と、
    前記多層樹脂ライナー層の外層に設けられた補強材層と、
    前記多層樹脂ライナー層の前記開口端部に配置された口金と、
    前記口金に着脱自在に設けられ、前記口金を塞ぐバルブ部と、
    を備え、
    前記多層樹脂ライナー層は、
    下記化学式6の構造単位を有するビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂層(A)を少なくとも1層有し、その内側にポリアミドを主成分とする組成物からなる層(B)を有し、外側にポリエチレンを主成分とする層(C)を有し、
    前記樹脂層(A)の端面に対応する第1の位置と前記開口端部の端面に対応する第2の位置との間にかけて設けられ、前記層(B)及び前記層(C)を含み、前記樹脂層(A)を含まない低バリアー部が形成され、
    前記バルブ部は、
    前記口金の内周面に接続される胴部と、
    前記胴部の先に接続され、前記開口端部の内周面と接触する先端部とが形成され、
    前記先端部は、
    先端側の位置から前記第1の位置に対応する位置に向かうにしたがって拡径している
    ことを特徴とする高圧容器。
    Figure 2017180560
    〔式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
  2. 前記ポリアミドを主成分とする組成物の脆化温度が−40℃以下であり、かつ、230℃でのゼロせん断粘度が10,000〜1,000,000Pa・sであることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
  3. ビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂層(A)とポリエチレンを主成分とする層(C)の間に接着樹脂層(D)を有する
    ことを特徴する請求項1又は2に記載の高圧容器。
  4. 前記先端部は、
    前記低バリアー部に対向する部分の径が、前記多層樹脂ライナー層の前記開口端部の内径よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高圧容器。
  5. 前記口金は、
    内周面に形成され、前記胴部が接続される第1の接続部と、
    前記内周面のうち前記第1の接続部よりも奥に形成され、前記開口端部の端面に接触する第1の面及び前記先端部に接触する第2の面を有する突出部と、
    前記内周面のうち前記突出部よりも奥に形成され、前記開口端部の外周面に接続される第2の接続部と、が形成され、
    前記第1の面には、
    前記開口端部の内周面と前記先端部との間に流入した内容物が、前記第1の面と前記開口端部の前記端面との間を通過することを防止する第1のシール部材が設けられ、
    前記バルブ部の先端部には、
    前記開口端部の内周面と前記先端部との間に流入した内容物が、前記第2の面と前記先端部との間を通過することを防止する第2のシール部材が設けられた
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高圧容器。
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