JP2011020320A - 成形体及び中空成形体の製造方法 - Google Patents

成形体及び中空成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】肉厚の均一性に優れ、かつ軽量化、燃料低透過性、耐薬品性、機械的特性、成形加工性にも優れる成形体を製造する方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂フィルムを予備成形する工程(1)、及びポリマー材料を射出成形する工程(2)を含み、該工程(2)は、予備成形したフッ素樹脂フィルムをインサート成形する工程であり、フッ素樹脂フィルムは、少なくともフッ素樹脂層5を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形体及び中空成形体の製造方法に関する。
ガソリンなどの燃料を保存または移送するための燃料タンクとしては、従来、金属製のものが用いられてきたが、車両の軽量化、防錆性、所望の形状への加工性等の点で、熱可塑性樹脂からなるものが提案されている。このような樹脂製の容器としては、機械的物性、経済性などの観点から、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂が使用されている。
しかしながら、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂を使用した容器は、自動車等に用いられる燃料タンクとして用いると、ガソリンがこれらの樹脂の壁面を透過して大気中に飛散するという問題があった。
この問題を解決するため、PA(ポリアミド)樹脂やEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)樹脂を、バリア層として用いることが提案されている。
例えば、射出成形または圧縮成形もしくは射出圧縮成形にて作成され、収納される燃料に対するバリア層となるフィルムを表面に備えた一対の半割体が、その開口縁部相互が突き合わされて接合されてなる樹脂製燃料容器が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、熱可塑性樹脂製の内面樹脂層と外面樹脂層から形成される自動車用燃料タンクにおいて、上記内面樹脂層は、分割して別々に成形されたアッパータンク部とロアタンク部のそれぞれの開口周縁部が合体されて形成され、上記外面樹脂層は、上記接合された内面樹脂層の外面全面を被覆して一体的に形成された自動車用燃料タンクが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
そして、ポリマー材料でインサート成形されている遮断フィルムを有する成形品が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開平10−157738号公報 特開2006−160093号公報 特表2004−504958号公報
しかしながら、従来提案されていた方法では、肉厚の均一性に優れ、かつ軽量化、燃料低透過性、耐薬品性に優れる成形体を製造することはできなかった。
例えば、特許文献1や特許文献2に記載の方法では、バリア層としてポリアミドやエチレンビニルアルコール共重合体を用いているが、耐バイオ燃料性が良好といえるものではなかった。また、特許文献3では、遮断フィルムを構成する材料の一つとして、フッ化ビニリデンも例示されているが、単にフッ化ビニリデンを遮断フィルムとして用いただけでは、該遮断フィルムの燃料バリア性や低温衝撃性が充分でなく、燃料タンク等として好適に用いられる成形体を得るためには改善の余地があった。
本発明は、肉厚の均一性に優れ、かつ軽量化、燃料低透過性、耐薬品性、機械的特性、成形加工性にも優れる成形体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、フッ素樹脂フィルムを予備成形する工程(1)、及びポリマー材料を射出成形する工程(2)を含み、該工程(2)は、予備成形したフッ素樹脂フィルムをインサート成形する工程であり、フッ素樹脂フィルムは、少なくともフッ素樹脂層を含むことを特徴とする成形体の製造方法である。
本発明はまた、上記成形体の製造方法により、別々に製造された2個の成形体を接合する工程を含むことを特徴とする中空成形体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
上記成形体の製造方法は、フッ素樹脂フィルムを予備成形する工程(1)を含む。フッ素樹脂フィルムの予備成形を行うことで、射出成形時に発生する皺の発生が起こりにくくなり、層間の欠陥がなくなることから、機械的特性も向上する。
フッ素樹脂フィルムの予備成形は、真空成形、圧空成形、プレス成形等で行うことができる。
上記フッ素樹脂フィルムの予備成形においては、用いるフッ素樹脂の種類、形状、用途等に応じて、適宜成形の条件を設定すればよい。
上記成形体の製造方法は、ポリマー材料を射出成形する工程(2)を含み、該工程(2)は、予備成形したフッ素樹脂フィルムをインサート成形する工程である。
本発明の成形体の製造方法によれば、接着剤や他の材料からなる接着層を用いなくとも、ポリマー材料を射出成形することで形成される層(以下「ポリマー材料層」ともいう。)と、フッ素樹脂フィルムとの高い接着性を得ることができる。
また、射出成形は、得られる成形体の肉厚をコントロールできるため、必要な機械強度を得られる最低限の肉厚とすることで、燃料タンクの軽量化を図ることができる。また、複雑な形状の成形体の成形に適しており、例えば、燃料タンク等の成形に特に好適に用いることができるし、生産性にも優れている。
上記射出成形は、例えば、ポリマー材料を金型に射出し、該金型に設置された予備成形したフッ素樹脂フィルムをインサート成形するものであることが好ましい。より具体的には、溶融したポリマー材料を、予備成形したフッ素樹脂フィルムを設置した金型に射出し、固化させることにより、フッ素樹脂層を表面に有する成形体を製造するものであることが好ましい。
上記インサート成形は、予備成形したフッ素樹脂フィルムと、ポリマー材料からなる層と、を一体とするものであればよい。
上記射出成形は、2回以上行ってもよいが、生産性の向上、コストの削減の観点からは、通常1回である。2回以上行う場合、ポリマー材料により形成されるポリマー材料層は、2層以上の多層構造であってもよい。なお、2回以上の射出成形を行う場合、2回目以降の射出成形は、インサート成形するものである必要はない。
上記射出成形の各条件は、使用するポリマー材料の種類や量に応じて適宜選択することができる。
上記射出成形は、層間の接着性向上の観点から、ポリマー材料を射出した後、温度を220〜300℃、好ましくは240〜280℃程度に維持することも好ましい。上記範囲で温度を維持することによって、フッ素樹脂層とポリマー材料層との接着性をより向上させることができる。上記射出成形において維持する時間は、1〜15分程度であることが好ましい。
なお、上記射出成形において維持する温度は、金型の温度である。
上記ポリマー材料は、フッ素を含有するものであってもよいが、フッ素を含有しないものであることが好ましい。フッ素を含有しないものであることにより、機械的特性が向上し、コスト面でも有利である。
上記ポリマー材料は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。より好ましくは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、加熱すると塑性を示す重合体である。熱可塑性樹脂であることにより、機械的特性、成形加工性に優れる成形体を製造することができる。
上記ポリマー材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂〔ABS〕、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔PEEK〕、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。接着性と燃料低透過性の観点からは、エチレン/ビニルアルコール樹脂が好ましい。また、柔軟性、接着性、成形性等の面からは、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂であることが好ましい。
上記エチレン/ビニルアルコール樹脂は、エチレン及び酢酸ビニルから得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものである。共重合するエチレン及び酢酸ビニルの配合比は、後述する式によって規定される酢酸ビニル単位のモル数の割合に応じて適宜決定される。
上記エチレン/ビニルアルコール樹脂は、酢酸ビニル単位Xモル%及び鹸化度Y%が、X×Y/100≧7を満足するものが好ましい。
X×Y/100<7であると、層間接着力が不充分になることがある。X×Y/100≧10がより好ましい。
上記X×Y/100の値は、上記エチレン/ビニルアルコール樹脂が有するヒドロキシル基の含有率の指標であり、上記X×Y/100の値が大きいことは、上記エチレン/ビニルアルコール樹脂が有するヒドロキシル基の含有率が高いことを意味する。
上記ヒドロキシル基は、上記エチレン/ビニルアルコール樹脂からなる層と積層する相手材との接着に関与し得る基であり、上記ヒドロキシル基の含有率が高いと、得られる部品における層間接着性が向上する。本明細書において、上記「積層する相手材」は、接触して積層している材料のことをいう。
上記「酢酸ビニル単位Xモル%」とは、上記エチレン/ビニルアルコール樹脂の分子における付加されたエチレン及び酢酸ビニルの合計モル数〔N〕に占める、酢酸ビニル単位に由来する酢酸ビニルのモル数〔N〕の割合であって、下記式
(%)=(N/N)×100
で表されるモル含有率Xの平均値を意味する。上記酢酸ビニル単位Xモル%は、赤外吸収分光〔IR〕を用いて測定することにより得られる値である。
上記「酢酸ビニル単位」とは、上記エチレン/ビニルアルコール樹脂の分子構造上の一部分であって、酢酸ビニルに由来する部分を意味する。上記酢酸ビニル単位は、鹸化されてヒドロキシル基を有しているものであってもよいし、鹸化しておらずアセトキシル基を有しているものであってもよい。
上記「鹸化度」は、鹸化された酢酸ビニル単位の数と鹸化されていない酢酸ビニル単位の数との合計に対する、鹸化された酢酸ビニル単位の数の割合を表す百分率である。上記鹸化度は、赤外吸収分光〔IR〕を用いて測定することにより得られる値である。
上記エチレン/ビニルアルコール樹脂であって、X及びYが上記式を満足するものとしては、例えばエバールF101(クラレ社製、酢酸ビニル単位X=68.0モル%;鹸化度Y=95%;X×Y/100=64.6)、メルセンH6051(東ソー社製、酢酸ビニル単位X=11.2モル%;鹸化度Y=100%;X×Y/100=11.2)、テクノリンクK200(田岡化学社製、酢酸ビニル単位X=11.2モル%;鹸化度Y=85%;X×Y/100=9.52)等の市販品が挙げられる。
上記エチレン/ビニルアルコール樹脂は、200℃におけるMFRが0.5〜100g/10分であるものが好ましい。
上記MFRが0.5g/10分未満であっても、100g/10分を超えても、エチレン/ビニルアルコール樹脂の溶融粘度と、フッ素樹脂の溶融粘度との差が大きくなるので、各層の厚みにムラが生じることがあり好ましくない。好ましい下限は1g/10分であり、好ましい上限は50g/10分である。
上記ポリアミド樹脂は、分子内に繰り返し単位としてアミド結合〔−NH−C(=O)−〕を有するポリマーからなるものである。
上記ポリアミド樹脂としては、分子内のアミド結合が脂肪族構造又は脂環族構造と結合しているポリマーからなるいわゆるナイロン樹脂、又は、分子内のアミド結合が芳香族構造と結合しているポリマーからなる、いわゆるアラミド樹脂の何れであってもよい。
上記ナイロン樹脂としては特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン46、メタキシリレンジアミン/アジピン酸共重合体等のポリマーからなるものが挙げられ、これらの中から2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリアミド樹脂は、また、繰り返し単位としてアミド結合を有しない構造が分子の一部にブロック共重合又はグラフト共重合されている高分子からなるものであってもよい。
このようなポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6/ポリエステル共重合体、ナイロン6/ポリエーテル共重合体、ナイロン12/ポリエステル共重合体、ナイロン12/ポリエーテル共重合体等のポリアミド系エラストマーからなるもの等が挙げられる。
これらのポリアミド系エラストマーは、ナイロンオリゴマーとポリエステルオリゴマーがエステル結合を介してブロック共重合することにより得られたもの、又は、ナイロンオリゴマーとポリエーテルオリゴマーとがエーテル結合を介してブロック共重合することにより得られたものである。上記ポリエステルオリゴマーとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート等が挙げられ、上記ポリエーテルオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。上記ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロン6/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体が好ましい。
上記ポリアミド樹脂のアミン価は10〜60(当量/10g)であってよい。また、好ましい下限は15(当量/10g)であってよく、好ましい上限は50(当量/10g)、より好ましい上限は35(当量/10g)であってよい。
本明細書において、上記アミン価はポリアミド樹脂1gをm−クレゾール50mlに加熱溶解し、これを1/10規定p−トルエンスルホン酸水溶液を用いて、チモールブルーを指示薬として滴定して求められる値であり、特別の記載をしない限り、積層する前のポリアミド樹脂のアミン価を意味する。
上記ポリオレフィン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン等が挙げられる。
上記変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン等をマレイン酸変性、エポキシ変性又はアミン(NH)変性したものが挙げられる。
上記ポリマー材料としては、ポリオレフィン樹脂又は変性ポリオレフィン樹脂であることが特に好ましい。本発明の製造方法により得られる成形体は、ポリマー材料がポリオレフィン樹脂又は変性ポリオレフィン樹脂であることによって、より機械的特性、成形加工性、コストに優れるものである。
上記ポリマー材料としては、なかでも高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)、エポキシ変性の高密度ポリエチレン、又は、アミン変性の高密度ポリエチレンがより好ましく、高密度ポリエチレンが更に好ましい。
上記高密度ポリエチレンは、密度が945〜970kg/mであることが好ましい。より好ましくは945〜965kg/mである。高密度ポリエチレンの密度が上記範囲内であれば、より機械的特性に優れる成形品とすることができる。
上記ポリマー材料としては、上述した材料を1種のみ含有するものであってもよいし、2種以上含有するものであってもよい。
上記フッ素樹脂フィルムは、少なくともフッ素樹脂層を含む。フッ素樹脂層は、フッ素を含有する重合体(フッ素樹脂)からなる。
フッ素樹脂フィルムは、単層であってもよいし、2層以上が積層されたものでもよい。フッ素樹脂フィルムが2層以上で構成される場合、フッ素樹脂フィルムを構成する全ての層がフッ素樹脂層であってもよいし、フッ素を含有していない層(フッ素非含有層)を含んでいてもよい。フッ素非含有層を含む場合、フッ素樹脂フィルムの少なくとも一方の表面を構成する層がフッ素樹脂層であることが好ましい。これによれば、本発明の製造方法で得られる成形体を用いて、中空成形体を製造する場合に、燃料と接する面をフッ素樹脂層にすることができるため好ましい。
上記フッ素樹脂は、溶融加工可能なフッ素樹脂であれば特に限定されないが、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体から誘導される繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体であることが好ましい。
上記フッ素樹脂は、含フッ素エチレン性単量体のみを重合してなるものであってもよいし、含フッ素エチレン性単量体とフッ素原子を有さないエチレン性単量体を重合してなるものであってもよい。
上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン、CH=CX(CF(式中、XはH又はF、XはH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、CF=CF−ORf(式中、Rfは、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等が挙げられ、なかでも、PMVE、PEVE又はPPVEがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
上記フッ素樹脂は、フッ素原子を有さないエチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有してもよく、耐熱性や耐薬品性等を維持する点で、炭素数5以下のエチレン性単量体に由来する繰り返し単位を有することも好ましい形態の一つである。上記フッ素樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有エチレン性単量体を有することも好ましい。
上記不飽和カルボン酸としては、共重合を可能にする炭素−炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも1個有し、且つ、カルボニルオキシ基〔−C(=O)−O−〕を1分子中に少なくとも1個有するものが好ましく、脂肪族不飽和モノカルボン酸であってもよいし、カルボキシル基を2個以上有する脂肪族不飽和ポリカルボン酸であってもよく、例えば、国際公開第2005/100420号パンフレットに記載の不飽和カルボン酸が挙げられる。
上記脂肪族不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸及びアコニット酸からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記フッ素樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、及び、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂であることがより好ましい。
上記クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕/テトラフルオロエチレン〔TFE〕共重合体は、CTFE単位とTFE単位とのモル比がCTFE:TFE=2:98〜98:2であることが好ましく、5:95〜90:10であることがより好ましく、20:80〜90:10であることが更に好ましい。CTFE単位が少なすぎると薬液低透過性が悪化し、また溶融加工が困難になる傾向があり、多すぎると成型時の耐熱性、耐薬品性が悪化する場合がある。
CTFE/TFE共重合体は、CTFE、TFE、並びに、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体からなる共重合体であることが好ましい。CTFE及びTFEと共重合可能な単量体としては、エチレン、VdF、HFP、CH=CX(CF(式中、XはH又はF、XはH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、CF=CF−ORf(式中、Rfは、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、エチレン、VdF、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVEであることがより好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
上記CTFE/TFE共重合体は、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、CTFE単位およびTFE単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が少なすぎると成形性、耐環境応力割れ性および耐ストレスクラック性に劣りやすく、多すぎると薬液低透過性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。CTFE及びTFEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位の下限は0.5モル%であることがより好ましく、上限は5モル%であることがより好ましい。
FEPは、とりわけ耐熱性が優れたものとすることができ、優れた燃料低透過性が発現する点で好ましい。FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位70〜99モル%とHFP単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜97モル%とHFP単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
FEPは、TFE、HFP、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としてはCTFE及びTFEと共重合可能な単量体として例示した単量体であってもよい。当該単量体としては、CF=CF−OR (式中、R は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性および耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると薬液低透過性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。
PFAは、とりわけ耐熱性が優れたものとすることができ、優れた燃料低透過性が発現する点で好ましい。PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位70〜99モル%とPAVE単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜98.5モル%とPAVE単位1.5〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、PMVEであることが更に好ましい。
上記PFAは、TFE、PAVE、並びに、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としてはCTFE及びTFEと共重合可能な単量体として例示した単量体であってもよい。当該単量体としては、HFP、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
上記PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性および耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると薬液低透過性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。
上記ETFEは、力学物性や燃料バリア性が向上する点で好ましい。TFE単位とエチレン単位との含有モル比は20:80〜90:10が好ましく、37:63〜85:15がより好ましく、38:62〜80:20が更に好ましい。
上記ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、下記式
CH=CX 、CF=CFR 、CF=CFOR 、CH=C(R
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、R はエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)
で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF=CFR 、CF=CFOR 及びCH=CX で表される含フッ素ビニルモノマーが好ましく、HFP、CF=CF−OR (式中、R は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕及びR が炭素数1〜8のフルオロアルキル基であるCH=CX で表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。
上記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH=CFCFCFCFH)があげられる。
また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、上述したイタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。
TFE及びエチレンと共重合可能な単量体は、含フッ素重合体に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
上述した共重合体の各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
上記フッ素樹脂は、パーハロポリマーであることが好ましい。パーハロポリマーを使用することにより、燃料低透過性、耐薬品性に優れるものとなる。上記パーハロポリマーは、重合体の主鎖を構成する炭素原子の全部にハロゲン原子が結合している重合体である。
上記パーハロポリマーとしては、上述したクロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記フッ素樹脂は、主鎖炭素数10個あたり80〜500個の接着性官能基を有することが好ましい。接着性官能基が多すぎると、平滑な表面を有する成形体を得ることができず、成形体の内部に気泡を含有しやすくなるおそれがある。接着性官能基が少なすぎると、他の材料から形成される層と接着しにくくなるおそれがある。
上記接着性官能基としては、カルボニル基、ヒドロキシル基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記接着性官能基は、接着性官能基を有する単量体に由来する官能基であってもよいし、重合開始剤に由来する官能基であってもよい。
上記「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。上記カルボニル基としては特に限定されず、例えば、カーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合〔−C(=O)O−〕、酸無水物結合〔−C(=O)O−C(=O)−〕、イソシアネート基、アミド基、イミド基〔−C(=O)−NH−C(=O)−〕、ウレタン結合〔−NH−C(=O)O−〕、カルバモイル基〔NH−C(=O)−〕、カルバモイルオキシ基〔NH−C(=O)O−〕、ウレイド基〔NH−C(=O)−NH−〕、オキサモイル基〔NH−C(=O)−C(=O)−〕等の化学構造上の一部分であるもの等が挙げられる。
上記カーボネート基は、−OC(=O)O−R(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるものである。Rとしては、炭素数1〜20のアルキル基又はエーテル結合を有する炭素数2〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又はエーテル結合を有する炭素数2〜4のアルキル基であることがより好ましい。上記カーボネート基としては、例えば−OC(=O)OCH、−OC(=O)OC、−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHCHOCHCH等が好ましく挙げられる。
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基等の窒素原子に結合する水素原子は、例えばアルキル基等の炭化水素基により置換されていてもよい。
上記接着性官能基は、導入が容易である点、及び、得られる樹脂が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点で、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基が好ましく、なかでも、国際公開99/45044号パンフレットに記載のカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するものが特に好ましい。
上記接着性官能基の個数は、特公昭37−3127号公報および国際公開第99/45044号パンフレットに記されている方法にて測定することができる。例えば、赤外分光光度計を用いてフルオロポリマーのフィルムシートの赤外吸収スペクトル分析し、官能基特有の周波数の吸収帯からその官能基の数を測定する場合、例えば、−COF末端は1884cm−1の吸収帯、−COOH末端は1813cm−1と1775cm−1の吸収帯、−COOCH末端は1795cm−1の吸収帯、−CONH末端は3438cm−1の吸収帯、−CHOH末端は3648cm−1の吸収帯、−CF=CF末端は1790cm−1の吸収帯から計算することができる。
上記フッ素樹脂は、接着性官能基を有するものである場合、接着性官能基を主鎖末端又は側鎖の何れかに有する重合体からなるものであってもよいし、主鎖末端及び側鎖の両方に有する重合体からなるものであってもよい。上記フッ素樹脂は、主鎖末端に接着性官能基を有する場合、主鎖の両方の末端に有していてもよいし、いずれか一方の末端にのみ有していてもよい。上記接着性官能基は、エーテル結合を有するものである場合、該接着性官能基を主鎖中に有するものであってもよい。
上記フッ素樹脂は、主鎖末端に接着性官能基を有する重合体からなるものが、機械特性、耐薬品性を著しく低下させない理由で、又は、生産性、コスト面で有利である理由で好ましい。
上記接着性官能基の導入方法としては、上記のような官能基含有の単量体を共重合して導入してもよいし、重合開始剤として導入してもよい。
本発明において、上記フッ素樹脂は特に限定されないが、融点が160〜270℃であることが好ましい。
上記フッ素樹脂の分子量は、得られる成形体の機械的特性、薬液透過性等を発現できるような範囲であることが好ましい。例えば、メルトフローレート〔MFR〕を分子量の指標として、フッ素樹脂一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度におけるMFRが0.5〜100g/10分であることが好ましい。
本明細書において、各樹脂の融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めたものであり、MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所社製)を用い、各温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定したものである。
上記フッ素樹脂は、燃料透過係数が10g・mm/m/day以下であることが好ましく、1g・mm/m/day以下であることがより好ましく、0.5g・mm/m/day以下であることが更に好ましい。本発明の製造方法で得られる成形体は、上記フッ素樹脂の燃料透過係数が上述の範囲内であることにより、より高度の燃料低透過性を有するものとすることができる。
本明細書において、上記燃料透過係数は、イソオクタン、トルエン及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒(以下、CE10と呼ぶ)と、7.5:7.5:85の容積比で混合した混合溶媒(以下、CE85と呼ぶ)とを、それぞれ投入した燃料透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たフィルムを入れ、60℃において測定した質量変化から算出される2つの値のうち、いずれか大きい値である。
上記フッ素樹脂は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。上記重合において、温度、圧力等の各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、所望のフッ素樹脂の組成や量に応じて適宜設定することができる。
上記フッ素樹脂フィルムは、上述のフッ素樹脂を用いて、通常の成形方法により得ることができ、その成形方法は特に限定されないが、例えば、上記成形体の製造方法は、押出成形によりフッ素樹脂フィルムを得る工程を含むことが、生産効率の観点から好ましい。
上記フッ素樹脂フィルムは、層間接着性を向上させ、得られる成形体の機械的特性を向上させる観点から、その表面が接着性表面処理されたものであってもよい。上記接着性表面処理としては特に限定されず、例えば、エッチング処理、プラズマ処理、コロナ処理、光化学的処理等公知の技術が挙げられる。上記接着性表面処理は、使用するフッ素樹脂の組成等に応じて適宜条件を設定して行うことができる。
フッ素樹脂フィルムは、有機材料(但し、フッ素樹脂を除く。)層を含むことも好ましい形態の一つである。これによれば、得られる成形体は、フッ素樹脂層とポリマー材料層との間に、有機材料層を含むものとすることができる。
フッ素樹脂フィルムが有機材料層を含むものであることによって、該有機材料層を構成する材料により得られる種々の特性を成形体に付与することができる。例えば、有機材料層は、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料から形成されるポリマー材料層との接着性を向上させる接着層として機能するものであることが好ましい。
フッ素樹脂フィルムがフッ素樹脂層のみからなる場合、本発明の製造方法で得られる成形体の用途、用いるフッ素樹脂、ポリマー材料等によっては、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との接着性が充分でないおそれもある。そのような場合には、有機材料層をフッ素樹脂層とポリマー材料層との間に設けることによって、接着性を向上させることができ、機械的特性に優れた成形体を得ることができる。
上記有機材料層を構成する有機材料(以下「有機材料」ともいう。)は、得られる成形体の種類、形状、用途等に応じて、適宜選択すればよく、例えば、上述したポリマー材料として例示した材料(但し、フッ素樹脂を除く。)が挙げられ、その中から有機材料層を設ける目的に応じて適宜選択すればよい。接着性向上の観点からは、ポリアミド樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂としては、変性ポリエチレンであることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂及び変性ポリオレフィンは、ポリマー材料層がポリオレフィン樹脂、特に高密度ポリエチレン、である場合により好ましい。
フッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂層/有機材料層の2層構造であってもよいし、フッ素樹脂層/第一有機材料層/第二有機材料層の3層構造であってもよいし、第一フッ素樹脂層/第二フッ素樹脂層/第一有機材料層/第二有機材料層の4層構造であってもよい(第一有機材料層と第二有機材料層とは異なる有機材料からなる有機材料層である。)。フッ素樹脂フィルムの構造としては、例えば、フッ素樹脂層/変性ポリエチレン樹脂層/ポリエチレン樹脂層の構造であることが好ましく、ポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレンからなる層であることがより好ましい。このような構造であることにより、フッ素樹脂フィルムを構成する層同士の層間、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との接着性がより優れるものとなる。
フッ素樹脂フィルムが有機材料層を含む場合、フッ素樹脂フィルムを製造する方法は特に限定されないが、例えば、(i)フッ素樹脂及び上記有機材料を溶融状態で共押出成形することにより層間を熱溶融着(溶融接着)させ1段でフッ素樹脂フィルムを形成する方法(共押出成形)、(ii)押出機によりそれぞれ別個に作製したフッ素樹脂層を形成するための膜と、有機材料層を形成するための膜を重ね合わせ、熱融着により層間を接着させる方法、(iii)予め作製したフッ素樹脂層を形成するための膜又は有機材料層を形成するための膜の表面上に、押出機により溶融した有機材料又はフッ素樹脂を押し出すことによりフッ素樹脂フィルムを形成する方法、(iv)予め作製したフッ素樹脂層を形成するための膜又は有機材料層を形成するための膜の表面上に、有機材料又はフッ素樹脂を静電塗装したのち、得られる塗装物を全体的に又は塗装した側から加熱することにより、塗装に供した材料を加熱溶融して層を成形する方法、等が挙げられる。
各層を構成する樹脂が共押出可能なものであれば、上記(i)の共押出成形によって形成することが好ましい。上記共押出成形としては、マルチマニホールド法、フィードブロック法、多層ブロー法、多層インフレーション成形法等の従来公知の多層共押製造法が挙げられる。これらの方法を用いることによって、フッ素樹脂層及び有機材料層を含むフッ素樹脂フィルムを製造することができる。
上記(ii)及び(iii)の成形方法においては、各フッ素樹脂層を形成する膜と、有機材料層を形成する膜を形成したのち、層間接着性を高めることを目的として、各膜における他の膜との接触面を表面処理してもよい。そのような表面処理としては、ナトリウムエッチング処理等のエッチング処理;レーザーやエキシマーランプ等を用いた光化学処理;コロナ処理;プラズマ処理等が挙げられ、なかでも、プラズマ処理が好ましい。上記プラズマ処理は、例えば、Ar、He、H、O、N、NH若しくは炭化水素ガス、又は、これらの混合ガス等の雰囲気下で実施することができる。膜を表面処理することにより、充分な接着強度を得ることができる。
上記成形方法としては、上記(i)、及び、上記(ii)と(iii)の各方法において表面処理を施して積層させる方法が好ましく、生産効率の観点から(i)の方法が最も好ましい。
本発明の成形体の製造方法は、フッ素樹脂フィルム上に接着剤を塗布する工程を含むことも好ましい形態の一つである。これによれば、得られる成形体は、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との間に、接着剤からなる接着剤層を含むものとなる。
本発明の製造方法で得られる成形体の用途、用いるフッ素樹脂、ポリマー材料等によっては、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との接着性が充分でない場合もある。そのような場合には、フッ素樹脂フィルム上に接着剤を塗布することによって、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との接着性を向上させることができる。
上記接着剤は、予備成形したフッ素樹脂フィルムに塗布してもよいし、予備成形する前のフッ素樹脂フィルムに塗布して、その後、フッ素樹脂フィルムの予備成形を行ってもよい。
接着剤としては、特に限定されず、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層とを直接接着させた場合よりも、フッ素樹脂フィルムとポリマー材料層との接着性を向上させることができるものであることが好ましく、例えば、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着材、エマルジョン系接着剤等を用いることができる。
上述のように、本発明の製造方法により得られる成形体は、フッ素樹脂層とポリマー材料層との間に有機材料層及び/又は接着剤層を含むことも好ましい形態の一つである。上記成形体は、有機材料層、接着剤層の両方を含んでもよいし、各層は、複数設けられていてもよい。
上述した各層(フッ素樹脂層、ポリマー材料層、有機材料層又は接着剤層)を構成する材料は、更に、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、金属酸化物等の種々の充填剤を配合したものであってもよく、また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料等、その他任意の添加剤を配合したものであってもよい。
上記添加剤として、例えば、薬液透過低減の点で、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
上記添加剤として、例えば、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、例えば、金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等が挙げられる。
上記導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、例えば、銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレス等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等が挙げられる。
上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
上記導電化処理の方法としては特に限定されず、例えば、金属スパッタリング、無電解メッキ等が挙げられる。上述した導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。上記導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
導電性フィラーを配合してなる各層を構成する材料の体積抵抗率は、1×10〜1×10Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×10Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×10Ω・cmである。
導電性を付与する場合は、フッ素樹脂にのみ導電性を付与してもよい。この場合、フッ素樹脂層は、導電性を有するフッ素樹脂層と導電性を有しないフッ素樹脂層の両方を含んでいてもよい。
本発明の製造方法で得られる成形体は、フッ素樹脂層と、ポリマー材料からなるポリマー材料層と、を含む少なくとも2層からなる。必要に応じて、フッ素樹脂層とポリマー材料層との間に、有機材料層、接着剤層等を含んでいてもよい。
上記成形体の構造としては、例えば、フッ素樹脂層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/有機材料層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/接着剤層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/第一有機材料層/第二有機材料層/ポリマー材料層等の構造が挙げられる(第一有機材料層と第二有機材料層とは異なる有機材料からなる有機材料層である。)。
より具体的には、フッ素樹脂層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/NH変性ポリエチレン樹脂層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/ポリアミド樹脂層/マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/ポリアミド樹脂層/(エチレン/ビニルアルコール樹脂層)/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層/ポリマー材料層、フッ素樹脂層/エポキシ変性ポリエチレン樹脂層/ポリマー材料層等の構造が好ましい。
なお、生産性の観点からは好ましくないが、更なる特性を付与するために、ポリマー材料層のフッ素樹脂層が設けられる側とは反対側の面に、更に他の層を設けることも可能である。
また、上記の層以外に多層タンクを加工する際に発生した樹脂の廃材や上記多層タンクがリサイクルされて分別された樹脂を二軸押出機や単軸押出機で溶融混練して得られたペレットをリサイクル層として入れることも可能である。
上記成形体において、フッ素樹脂層は50〜500μmであることが好ましく、フッ素樹脂層以外の層は合計で100〜50000μmであることが好ましい。
上記フッ素樹脂層の好ましい膜厚は100〜300μmであり、フッ素樹脂層以外の層の好ましい膜厚は合計で300〜20000μm、より好ましくは900〜10000μmである。
上記成形体は、その用途に応じて、その大きさを選択することができる。
本明細書において、各層の膜厚は、マイクロスコープ等により測定したものである。
本発明の製造方法により得られる成形体は、中空成形体の製造に好適に使用することができる。中空成形体としては、例えば、自動車のガソリンタンク、軽油タンク等の燃料タンク;ラジエータータンク;溶剤用タンク;塗料用タンク;半導体用薬液等の酸・アルカリ等の腐食性、侵食性の強い薬液の容器や研磨材のスラリー用の容器;飲料用又は飲食物用タンク等、液体を収容するボトル、容器、タンク、袋、燃料補給ステーションに用いられる地下埋設チューブ又はホース等が挙げられる。また、上記成形体は、ディーゼルエンジン排ガスに尿素水を噴霧してNOを低減するシステムにおける尿素水用容器としても、その優れた耐薬品性から好適に使用できる。
中でも、その優れた機械的特性、耐薬品性等から、自動車のガソリンタンク、軽油タンク等の燃料タンクに特に好適に使用することができる。
本発明は更に、上記成形体の製造方法により、別々に製造された2個又は3個以上の成形体を接合する工程を含む中空成形体の燃料タンクの製造方法でもある。
燃料タンク等の中空成形体を製造する場合、射出成形後に金型を取り除く必要があるため、一回の射出成形により中空成形体を作成することはできず、複数個の成形体を製造し、その後、熱融着、接着等の手段によって一体に接合することにより、所望の中空成形体を得ることができる。
本明細書において、上記接合とは、熱融着や接着剤を用いること等により、接合部において燃料漏れが生じない程度にまで成形体同士を接着させることを意味する。
上記成形体の接合は、例えば、各成形体の周縁部を熱板により溶融させ、相互に熱溶着する(以下「熱溶融接着」ともいう。)ことにより行うことができる。上記熱板による溶融は、使用する成形体の層構成に応じて選択することができるが、接着させるフッ素樹脂及びポリマー材料の融点以上、上記フッ素樹脂及びポリマー材料の熱分解温度以下で行うことが好ましい。また、上記熱溶着の他の条件についても、使用する成形体の層構成に応じて適宜設定することができる。
上記成形体に有機材料層を設けている場合には、該有機材料層を構成する有機材料の融点以上であることが好ましい。
上記熱溶融接着としては、熱盤を使用する方法、熱風を利用する方法、摩擦熱を利用する方法(機械的、超音波)や高周波を利用する方法なども挙げられる。
上述した熱溶融接着の方法は、組み合わせて行ってもよい。
上記成形体の製造方法と、上記中空成形体の製造方法を連続して行う場合、通常、成形体の製造において加熱されている。成形の安定性のために、製造された成形体を一度冷却してから、熱溶融接着を行ってもよいが、生産性の観点からは、用いられる成形体が製造された直後に熱溶融接着を行うことが好ましい。なお、溶着部に電熱線を用いたエレクトロフージョン(電気融着接合)も熱溶融接着として用いることもできる。
また、上記接合としては、接着剤を利用する方法も挙げられる。この場合、例えば、継目に接着剤を塗布し、互いに押し付け、そしてこの接着剤を少なくとも部分的に硬化させる。次いで、135〜150℃の環境に放置した後、この継目を加圧のもとで冷却する。この継目の完全な硬化には室温で5〜8日間必要とする。
上記接合は、別々に製造された2個又は3個以上の成形体を、フッ素樹脂層が最内層となるように接合することが好ましい。フッ素樹脂層を最内層とすることで、中空成形体を燃料タンク等に用いた場合に、燃料低透過性に優れたものとなる。
上記接合は、別々に製造された2個又は3個以上の成形体を、少なくともフッ素樹脂層同士で接合することが好ましい。これによれば、中空成形体の接合部がフッ素樹脂であるため、接合部の燃料透過性が損なわれることなく、中空成形体全体の燃料低透過性及び耐薬品性を維持することができる。
上記接合は、別々に製造された2個又は3個以上の成形体を、少なくともフッ素樹脂層同士で接合することが好ましいが、更に、ポリマー材料層同士を接合することも好ましい形態の一つである。これによれば、より機械的強度が優れる中空成形体とすることができる。
各層どうしを接合しやすくするために、接合される各成形体の端の少なくとも一部を図1のようにあらかじめ加工してもよい。
以下、図1を用い、接合される各成形体の端の加工例の態様について説明する。図1は、接合される上記各成形体の端をあらかじめ加工する態様の一例である。3はポリマー材料層、4は有機材料層、5はフッ素樹脂層を表している。加工前の成形体1の端を、加工後の成形体2のように加工することで、各層同士で接合しやすくなる。
本発明の中空成形体の製造方法は、複数の成形体を接合させることよりなるものであるので、例えば、中空成形体を一段階で成形するブロー成形による製造方法に比べ、簡易な装置で行うことができることから設備投資を低くすることができ、複雑な形状のものであっても、寸法精度が高く強度に優れた燃料タンクを容易に製造することができる。
上記製造方法により得られる中空成形体は、フッ素樹脂層と、ポリマー材料層と、を含む少なくとも2層からなる。必要に応じて、フッ素樹脂層とポリマー材料層との間に、有機材料層、接着剤層等を含んでいてもよい。また、上述した成形体の層構造を有していてもよい。
上記中空成形体の最内層はフッ素樹脂層であることが好ましい。上述したように、最内層にフッ素樹脂層が配置されることで、ガソリン等の燃料はフッ素樹脂層と接触することになるため、透過を抑制できる。また、中空成形体の最外層はポリマー材料であることが好ましく、また、ポリマー材料は、高密度ポリエチレンであることが好ましい。高密度ポリエチレンは強度が大きいので、軽量でも頑丈な燃料タンクとなる。
上記中空成形体の燃料透過速度は、下限を例えば、0.05g/m/dayとすることができ、上限を例えば、30g/m/dayとすることができる。
本明細書において、上記中空成形体の燃料透過速度は、成形体全体から単位日数、単位内面積当たりに透過する薬液の質量であり、CE10、又は、CE85を用いて、60℃での透過量を測定し得られる値である。
上記中空成形体におけるフッ素樹脂層、ポリマー材料層等の各層の厚みは、それぞれ本発明の成形体の製造方法に関して説明したものと同様である。
上記中空成形体は、自動車の廃棄の際でも水蒸気や溶剤の存在下で、高温処理、高圧処理等の適当な処理を組み合わせて行い、フッ素を含有していないポリマー材料を劣化、溶解させることにより、フッ素樹脂だけを取り出してリサイクルすることも可能である。
本発明の製造方法により得られる中空成形体は、上記成形体の製造方法により得られた成形体を接合することにより、一体としたものであるので、強度や燃料低透過性に優れていることに加え、フッ素樹脂層を最内層にすることによって、燃料低透過性に加えて耐ガソリン性にも優れている。そのため、積層構造を単純化でき、コストダウンも図ることができる。更に、上記中空成形体は、バリア層となるフッ素樹脂層同士を接合することによって、接合部においてもバリア層が存在しない箇所がないという利点も有する。更に、上記中空成形体を構成する成形体は、射出成形により容易に製造することができるため、生産性等においても好ましい。
本発明の製造方法により得られる成形体及び中空成形体は、肉厚の均一性に優れ、かつ軽量化、燃料透過性、耐薬品性、機械的特性にも優れる。また、複雑な層構造が必要なく、簡易に製造することができる。
図1は、接合される上記各成形体の端をあらかじめ加工する態様の一例である。
つぎに本発明を実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例
フッ素樹脂A、変性ポリエチレン(アルケマ社製、LOTADAR ADX1200)、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB120)を用いて、40φ押出機2台、50φ押出機1台、計3台の押出機を備えた3種3層の多層フィルム成形機で45cm幅、肉厚(フッ素樹脂A/変性ポリエチレン/高密度ポリエチレン=150μm/50μm/100μm、トータル肉厚300μm)の多層フィルムを成形した。
その多層フィルムを、高密度ポリエチレン層が金型側にくるように設置し、真空成形機で長径250mm、短径200mm、深さ50mm、角のRは10mmの楕円形状の金型を用いて予備成形を行った。予備成形は、300℃〜350℃のヒーターを使用して加熱し、多層フィルムの表面温度は250℃であった。
予備成形された多層フィルムを80t射出成形機の可動側金型にフッ素樹脂層が可動側金型側になるように固定し、金型を閉めた後、シリンダー温度200〜240℃、金型温度80℃で高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB120)の射出を行い、タンクの片側となる成形品を2個作製した。その後、タンクの片側となる成形品の溶着部をそれぞれ同時にフッ素樹脂Aの融点以上に熱板で加熱した後、溶着し、最内層がフッ素樹脂A、最外層が高密度ポリエチレンからなるタンク形状の成形品を得た。タンク形状の成形品の燃料透過速度は、0.45g/m/dayであった。燃料透過速度は、成形体全体から単位日数、単位内面積当たりに透過する薬液の質量であり、CE10を用いて、60℃での透過量を測定して得られる値である。
実施例においては、以下のフッ素樹脂を使用した。
[フッ素樹脂A(CTFE系共重合体)]
(合成方法)
水175kgを収容できるジャケット付攪拌式重合槽に、脱ミネラルした純水50kgを仕込み、内部空間を純窒素ガスで充分置換した後、窒素ガスを真空で排除した。次いでオクタフルオロシクロブタン40.5kg、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕2.4kg、テトラフルオロエチレン〔TFE〕6.5kg、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕4.5kgを圧入し、温度を35℃に調節し、攪拌を開始した。ここへ重合開始剤としてジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔NPP〕の50質量%メタノール溶液を0.2kg添加して重合を開始した。重合中には、所望の共重合体組成と同組成に調製した混合モノマーを、槽内圧力が0.8MPaを維持するように追加仕込みしながら重合した後、槽内の残存ガスを排気して生成したポリマーを取り出し、脱ミネラルした純水で洗浄し、乾燥させて19kgの粒状粉末のCTFE共重合体を得た。次いでφ50mm単軸押出機を用いてシリンダー温度280℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。次いで得られたペレット状のCTFE共重合体を180℃で24時間加熱した。
得られたペレットは以下の組成及び物性を有していた。
CTFE/TFE/PPVE:34.5/63.4/2.1(モル%)
融点:230℃
MFR:18g/10min(297℃−荷重5kgで測定)
官能基:カーボネート基(主鎖炭素10個に対するカーボネート個数100個)
燃料透過係数:0.3g・mm/m/day
本発明の製造方法により得られる成形体及び中空成形体は、肉厚の均一性に優れ、かつ軽量化、燃料透過性、耐薬品性、機械的特性にも優れるため、ガソリン等を貯蔵する燃料タンクとして好適に利用できる。
1:加工前の成形体
2:加工後の成形体
3:ポリマー材料層
4:有機材料層
5:フッ素樹脂層

Claims (6)

  1. フッ素樹脂フィルムを予備成形する工程(1)、及び
    ポリマー材料を射出成形する工程(2)を含み、
    該工程(2)は、予備成形したフッ素樹脂フィルムをインサート成形する工程であり、
    フッ素樹脂フィルムは、少なくともフッ素樹脂層を含む
    ことを特徴とする成形体の製造方法。
  2. フッ素樹脂フィルムは、有機材料(但し、フッ素樹脂を除く。)層を含む
    ことを特徴とする請求項1記載の成形体の製造方法。
  3. フッ素樹脂フィルム上に接着剤を塗布する工程
    を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の成形体の製造方法。
  4. ポリマー材料は、高密度ポリエチレンである
    ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の成形体の製造方法。
  5. フッ素樹脂層は、クロロトリフルオロエチレン系重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体及びテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂からなる
    ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の成形体の製造方法。
  6. 請求項1、2、3、4又は5記載の成形体の製造方法により、別々に製造された2個以上の成形体を接合する工程
    を含むことを特徴とする中空成形体の製造方法。
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