上述の特許文献1〜3に開示されている技術では、内部に芯部材が挿通されている拘束部材は、この拘束部材の外形状を形成している鋼管の内部に、芯部材が挿通される空間を残してコンクリート又はモルタルを充填したものとなっており、特許文献4に開示されている技術の拘束部材は、内部に芯部材を挿通させるための挿通部だけが形成されたものとなっている。
拘束部材の内部に芯部材を挿通させることにより構成される制振装置を、高層の建築物等の構築物に設置するためには、作業性を考慮すると、制振装置全体の重量を軽量化し、その取り扱い作業や設置作業等を容易に行えるようにすることが求められる。
本発明の目的は、全体重量を軽量化することができて、その取り扱い作業や設置作業等を容易に行えるようになる制振装置及びその製造設置方法を提供するところにある。
本発明に係る制振装置は、構築物を構成する2つの構成部材の間に配置され、長さ方向の一方の端部が、前記2つの構成部材のうち、一方の構成部材に結合されているとともに、前記長さ方向の他方の端部が、前記2つの構成部材のうち、他方の構成部材に結合されている芯部材と、この芯部材の外周を、前記芯部材の前記長さ方向が長さ方向となって覆っているとともに、内部に前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向に移動自在に挿通され、前記芯部材に圧縮力が作用したときに、前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向と角度をなす方向に変形することを拘束するための拘束部材と、を含んで構成されている制振装置において、前記拘束部材の内部に、前記芯部材を挿通させるために貫通形成された挿通部と、この挿通部と分離して形成された空間部とが設けられていることを特徴とするものである。
この制振装置では、拘束部材の内部に、芯部材を挿通させるために貫通形成された挿通部と、この挿通部と分離して形成された空間部とが設けられているため、拘束部材の重量は、空間部の分だけ軽量になり、このため、制振装置全体の重量も軽量化されて、拘束部材や制振装置の取り扱い作業や、制振装置の設置作業等を容易に行えるようになる。
以上の本発明において、構築物を構成する前記2つの構成部材は、構築物の構造材である柱や梁でもよく、あるいは、これらの柱や梁に取り付けられ、柱と梁を接合するためのガセットプレートを含むブラケットでもよい。
また、拘束部材の内部に、芯部材を挿通させるための挿通部と、この挿通部と分離して形成された空間部とが設けられていれば、この空間部の大きさや長さ等を任意に設定することができる。すなわち、空間部を、拘束部材の長さ方向に複数個又は多数個設けられた短寸法のものとしてもよく、あるいは、空間部を、拘束部材の長さ方向へ延びる長さを有する長寸法のものとしてもよい。空間部を後者のものとすると、拘束部材の重量を一層軽量化することができる。
なお、空間部を、拘束部材の長さ方向へ延びる長さを有するものとする場合には、この空間部を拘束部材の全長に渡る長さを有するものとしてもよい。このような拘束部材は、例えば、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形法又は引き抜き成形法で製造することができる。また、空間部を拘束部材の長さ方向の両端部まで達しないものとする場合を含めて、拘束部材をアルミダイカスト法を含む鋳造法によっても製造することができ、このため、拘束部材の材料を鉄鋼としてもよい。
また、拘束部材は、この拘束部材の長さ方向と直交する断面形状が、閉断面形状となっているものでもよく、あるいは、開断面形状となっているものでもよい。
そして、この断面形状を閉断面形状とする場合には、空間部が複数個設けられている閉断面形状の箇所が拘束部材に存在していてもよい。
また、閉断面形状は、例えば、四角形状や略四角形状、六角形状や略六角形状、八角形状や略八角形状、丸形状や略丸形状、楕円形状や略楕円形状等の任意の形状でよい。
また、拘束部材の長さ方向と直交する断面形状を開断面形状とする場合には、拘束部材の内部に設ける空間部を、開断面形状の開口部で外部と連通させてもよい。
さらに、拘束部材を軽量化するための空間部には、補強のためのリブ部を架設してもよい。これによると、空間部により拘束部材を軽量化しても、リブ部により拘束部材の全体強度を、圧縮力が作用したときの芯部材が座屈等してこの芯部材の長さ方向と角度をなす方向に変形することを防止するために必要とされる充分の大きさにすることができる。
また、本発明において、芯部材の個数は1個でもよいが、芯部材の個数を少なくとも2個とし、これらの芯部材を、互いに平行に配置して拘束部材の内部に挿通してもよい。これによると、構築物の振動エネルギが大きくても、これらの芯部材の引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形によって充分吸収できるようになる。
また、芯部材の個数を2個とする場合には、これらの芯部材の長さ方向の両端部が結合される前記2つの構成部材を、構築物の構造材に取り付けられたブラケットとし、これらのブラケットに対する2個の芯部材の長さ方向の両端部の結合を、2個の芯部材の端部同士でブラケットを挟んで行うようにしてもよい。
これによると、芯部材の個数を1個とし、この1個の芯部材の長さ方向の端面をブラケットの端面に突き当て、板状の連結部材やボルト等により芯部材とブラケットとを結合する場合よりも、結合部の長さを短縮できる利点を得られる。
さらに、本発明において、芯部材は、この芯部材の長さ方向と直交する方向の幅寸法が、芯部材の長さ方向に同じ寸法となって連続するものでもよいが、芯部材を、この芯部材の長さ方向の中央箇所が芯部材の長さ方向と直交する方向にくびれている形状にしてもよい。
これによると、芯部材に、構築物の振動エネルギによる引っ張り力や圧縮力が作用した際に、芯部材の長さ方向の中央のくびれた箇所において、引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形を生じさせることができ、構築物の構成部材に結合されている芯部材の長さ方向の端部で破断等が生ずることを防止できる。
また、このように芯部材を、この芯部材の長さ方向の中央箇所が芯部材の長さ方向と直交する方向にくびれている形状にする場合には、芯部材の長さ方向とくびれ方向の両方向と直交する方向における位置において、芯部材と隣接して補強部材を配置し、この補強部材における芯部材のくびれ箇所と対応する箇所に、芯部材のくびれ箇所をくびれ方向両側から押え込むための押え込み部を設けてもよい。
これによると、芯部材に過大な圧縮力が作用したときに、この芯部材が、くびれ箇所において、くびれ方向へ湾曲変形することを、補強部材に設けた押え込み部の押え込み作用と、補強部材の強度とによって防止できるようになる。
さらに、芯部材の個数を2個とし、これらの芯部材を、これらの芯部材の長さ方向の中央箇所が芯部材の長さ方向と直交する方向にくびれている形状とする場合には、2個の芯部材の長さ方向とくびれ方向の両方向と直交する方向における位置となっている2個の芯部材の間の位置にスペース部材を配置し、このスペース部材における2個の芯部材のくびれ箇所と対応する箇所に、2個の芯部材のくびれ箇所をくびれ方向両側から押え込むための押え込み部を設けてもよい。
これによると、2個の芯部材が、これらの芯部材に設けられているくびれ箇所において、くびれ方向へ湾曲変形することを、スペース部材に設けた押え込み部の押え込み作用と、補強部材となっているスペース部材の強度とによって防止できるようになる。
また、本発明において、拘束部材の内部に設けられた前述の挿通部にモルタルを充填し、このモルタルの内部に芯部材を配置するようにしてもよい。
これによると、芯部材の周囲はモルタルで覆われることになるため、拘束部材の内部の挿通部を、芯部材の厚さ等の寸法に正確に対応させた高精度寸法で形成する必要がなくなり、これにより、拘束部材の製造を容易に行えるようになる。
本発明に係る制振装置の製造設置方法は、構築物を構成する2つの構成部材の間に配置され、長さ方向の一方の端部が、前記2つの構成部材のうち、一方の構成部材に結合されているとともに、前記長さ方向の他方の端部が、前記2つの構成部材のうち、他方の構成部材に結合されている芯部材と、この芯部材の外周を、前記芯部材の前記長さ方向が長さ方向となって覆っているとともに、内部に前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向に移動自在に挿通され、前記芯部材に圧縮力が作用したときに、前記芯部材がこの芯部材の前記長さ方向と角度をなす方向に変形することを拘束するための拘束部材と、を含んで構成される制振装置を製造設置するための方法であって、前記拘束部材を、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形又は引き抜き成形で製造することにより、前記拘束部材の内部に、前記芯部材を挿通するための挿通部と、この挿通部と分離して形成されている空間部とを前記拘束部材の全長に渡って設けるための作業工程と、前記挿通部に前記芯部材を挿通するための作業工程と、前記芯部材の長さ方向の前記一方の端部を、前記一方の構成部材に結合するとともに、前記芯部材の長さ方向の前記他方の端部を、前記他方の構成部材に結合するための作業工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
この制振装置の製造設置方法では、芯部材が内部に挿通される拘束部材が、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形又は引き抜き成形で製造されるものとなっているため、この製造時に、拘束部材の内部に、芯部材を挿通するための挿通部と、この挿通部と分離して形成されている空間部とが拘束部材の全長に渡って設けられ、拘束部材の材料が、鉄鋼やコンクリートよりも軽量のアルミ又はアルミ合金であることや、拘束部材の内部に、芯部材を挿通するための挿通部と分離した空間部が拘束部材の全長に渡って設けられていることのために、拘束部材の重量を軽量化することができ、このため、制振装置全体の重量も軽量化することができ、これにより、拘束部材や制振装置の取り扱い作業や、制振装置の設置作業等を容易に行える。
また、拘束部材の内部に、芯部材を挿通するための挿通部と、この挿通部と分離して形成された空間部とを設けることを、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形法又は引き抜き成形法により容易に行える。
以上説明した本発明において、芯部材の材質は、本発明に係る制振装置が設置される構築物に求められる制振性能に応じて任意に設定され、したがって、この芯部材は、降伏強度が異なっていて、引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形が生ずる強度が異なっている各種の材料のなかから適切に選択されたものを用いて製造される。
このため、本発明において、芯部材の材料として、降伏強度が大きく、引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形が生ずる強度も大きい材料を選択してもよく、このような場合における本発明に係る装置は、耐震装置ともいうべきものとなるため、本発明に係る制振装置は、実質的に耐震装置となっているものも含む。
また、芯部材は、この芯部材の全体形状が、細長の板状のものとなっているものでもよく、あるいは、他の形状、例えば、細長の板状のものに、厚さ方向へ突出する突出部が設けられた十字形断面の箇所が長さ方向の途中部に設けられたものでもよい。
また、本発明は、新築される建物等の構築物の構築作業中に、この構築物に取り付けられる制振装置に適用できるとともに、既存の建物等の構築物に後付けで取り付けられる制振装置にも適用できる。
さらに、本発明に係る制振装置は、建物に適用できるとともに、橋梁やタワー等にも適用でき、任意の構築物に設置することができる。
本発明によると、装置全体の重量を軽量化することができて、その取り扱い作業や設置作業等を容易に行えるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る制振装置1が、構築物である高層建物に設置されているときの状態が示されている。この建物は、左右の間隔をあけて立設されているH型鋼等による柱2,3と、これらの柱2,3の間に上下の間隔を架設されているI型鋼又はH型鋼等による梁4,5とが構造材となって構築されており、柱2と梁4との接合箇所には、ガセットプレート6が結合され、柱3と梁5との接合箇所には、ガセットプレート7が結合されている。これらの柱2,3と、梁4,5と、ガセットプレート6,7は、建物を構成する構成部材となっている。
また、これらの構成部材のうち、ガセットプレート6,7は、本実施形態の制振装置1を建物の2つの箇所の間に架け渡すために、この建物に設けられたブラケットにもなっており、ガセットプレート6,7は、高さの差をもって建物に配設されているため、柱2,3と梁4,5からなる四角形フレームの内側に配置されている制振装置1は、水平方向に対する傾き角度をもって建物に設置されている。
図2には、制振装置1だけが示されており、この制振装置1は、図3で示す拘束部材10の内部に、図4で示す芯部材20を、この芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bを外部に露出させて移動自在に挿通したものである。このため、両端部20A,20Bを除く芯部材20の外周は、拘束部材10により覆われている。拘束部材10は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品を所定の長さ寸法で切断したものであり、このため、拘束部材10は、拘束部材10の長さ方向と直交する箇所における断面形状が、同一形状となって拘束部材10の長さ方向に連続したものとなっており、この断面形状は、拘束部材10の長さ方向の一方の端部から他方の端部まで連続している。
図2のS5―S5線断面図である図5と、図2のS6―S6線断面図である図6には、拘束部材10の上記断面形状が示されており、この断面形状は、拘束部材10の外輪郭を形成している外輪郭部11が、上辺部11Aと、下辺部11Bと、左右の辺部である2つの側辺部11C,11Dとからなるため、四角形又は略四角形の閉断面形状となっている。拘束部材10の内部には、上辺部11Aと下辺部11Bに上下両端部が接続された縦長のコア部12が設けられており、このコア部12の内部に、芯部材20を移動自在に挿通するための挿通部13が形成されている。本実施形態の制振装置1の芯部材20は、図4に示されているように、全体形状が細長の板状のものとなっているため、挿通部13は、縦長の長孔状となっており、また、制振装置1には2個の芯部材20が用いられているため、コア部12の内部には、図5及び図6に示されているように、2個の挿通部13が左右方向に並設されており、これらの挿通部13の間は、コア部12における仕切り壁12Aとなっている。
コア部12は、2つの側辺部11C,11Dからそれぞれ等距離の位置に設けられているため、コア部12の両側は、拘束部材10の内部に挿通部13と分離して設けられた2個の空間部14となっている。それぞれの空間部14には、補強のためのリブ部15が架設されており、このリブ部15には、本実施形態では、コア部12と外輪郭部11を繋ぎ、コア部12から外輪郭部11に向かって斜め上向きに延びる第1リブ部15Aと、コア部12と外輪郭部11を繋ぎ、コア部12から外輪郭部11に向かって水平に延びる第2リブ部15Bと、コア部12と外輪郭部11を繋ぎ、コア部12から外輪郭部11に向かって斜め下向きに延びる第3リブ部15Cとがあり、合計6個のリブ部15が、2個の空間部14において、コア部12から外輪郭部11へ放射状に延出している。
以上説明した外輪郭部11、コア部12、挿通部13、空間部14、第1リブ部15A、第2リブ部15B及び第3リブ部15Cは、拘束部材10の長さ方向の一方の端部から他方の端部まで拘束部材10の全長に渡って連続形成され、挿通部13と空間部14は貫通形成されている。そして、この拘束部材10の長さ方向は、図4で示す芯部材20の長さ方向でもあり、拘束部材10の長さ方向と芯部材20の長さ方向は、一致している。
図4で示す芯部材20は、上述したように、全体形状が細長の板状となっている部材であるため、拘束部材10の挿通部13に挿通可能となっている厚さ寸法が、芯部材20の長さ方向の一方の端部20Aから他方の端部20Bまで同一寸法となって連続しており、したがって、芯部材20の厚さ寸法は、芯部材20の全長に渡って一定である。また、芯部材20の長さ方向の中央箇所には、この長さ方向と直交する上下の幅方向の寸法が、芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bの幅寸法よりも小さくなっているくびれ部20Cが設けられており、芯部材20の長さ方向への長さを有している箇所であって、芯部材20のくびれ箇所にもなっているこのくびれ部20Cの両側は、両端部20A,20Bに向かって幅寸法が次第に大きくなる幅寸法拡大部20D,20Eとなっている。
このように全体形状がくびれた形状にもなっている芯部材20の両端部20A,20Bには、これらの端部20A,20Bを図1で示したガセットプレート6,7に結合するための結合具30(図7を参照)の一部となっているボルト30Aを挿通するための複数個のボルト孔21が設けられている。また、両端部20A,20Bのうち、ガセットプレート6よりも低位置となっているガセットプレート7に結合具30で結合される端部20Bには、ボルト孔21より幅寸法拡大部20Eに近い箇所において、ストップ部22が設けられており、このストップ部22は、図2のS7−S7線断面図である図7に示されているように、芯部材20に溶接で小片状部材を取り付けたものであるため、芯部材20の厚さ方向に突出している。
制振装置1を図1で示した建物に設置するためには、まず工場において、制振装置1の構成要素である拘束部材10と2個の芯部材20とを製造する。拘束部材10は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形法又は引き抜き成形法により得た成形品を所定の長さ寸法で切断することにより、工場で製造される。また、それぞれの芯部材20にストップ部22となる小片状部材を溶接で取り付ける作業も工場で行われる。
このように拘束部材10を工場で製造したときには、拘束部材10の内部に、コア部12、挿通部13、空間部14、第1リブ部15A、第2リブ部15B及び第3リブ部15Cが設けられていることになり、これらのコア部12、挿通部13、空間部14、第1リブ部15A、第2リブ部15B及び第3リブ部15Cは、拘束部材10の全長に渡って連続形成され、挿通部13と空間部14は貫通形成されているとともに、コア部12の両側に2個設けられている空間部14は、このコア部12に形成されている挿通部13と分離されたものになっている。そして、拘束部材10の長さ方向の任意の箇所における前述した閉断面形状において、空間部14が2個存在していることになる。
また、芯部材20を工場で製造する際に、芯部材20の材質は、制振装置1が設置される建物に求められる制振性能に応じて選択される。例えば、降伏強度が小さい材料であればJIS規格でLYP225やLYP100等が選択され、これよりも降伏強度が大きい材料であればJIS規格でSM490やSS400等が選択される。
次いで、拘束部材10の2個の挿通部13に2個の芯部材20を挿通する作業を行い、この挿通作業は、図7から分かるように、2個の芯部材20に設けられているストップ部22の向きを互いに逆の外向きとし、かつストップ部22が設けられていない端部20Aからそれぞれの芯部材20を挿通部13に挿入することにより行い、それぞれの芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bを拘束部材10の長さ方向の両端面から突出させる。なお、それぞれの芯部材20を挿通部13に挿通する作業を行う前に、それぞれの芯部材20の表面に低摩擦材を付着させる作業を行い、これにより、これらの芯部材20を挿通部13に対して円滑に移動自在とする。
以上のようにして行う挿通部13への芯部材20の挿通作業は、工場で行ってもよく、あるいは、制振装置1が設置される建物の建築現場で行ってもよい。
次いで、建物の建築現場において、2個の芯部材20の長さ方向の一方の端部20Aを、図1及び図7に示されているガセットプレート6の厚さ方向の両側面に配置する作業、すなわち、2個の芯部材20の長さ方向の一方の端部20A同士により、ガセットプレート6を挟む作業を行い、また、2個の芯部材20の長さ方向の他方の端部20B同士により、図1及び図7に示されているガセットプレート7を挟む作業を行う。この後に、それぞれの端部20A,20Bに設けられているボルト孔21と、ガセットプレート6,7に設けられているボルト孔31(図7を参照)とにボルト30Aを挿入し、ボルト30Aに螺合したナット30Bを締め付けることにより、ボルト30Aとナット30Bからなる結合具30で、芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bを、前述したように建物の構成部材となっていて、芯部材20を建物の構造材に連結するためのブラケットにもなっているガセットプレート6,7に結合する。
なお、芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bをガセットプレート6,7に結合することは、ボルト30A、ナット30Bではなく、溶接により行ってもよい。
また、上述のように芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bをガセットプレート6,7に結合する作業を行うときには、芯部材20の端部20Aの側を高位とし、端部20Bの側を低位とすることにより、制振装置1の全体を水平方向に対し傾けることになるが、端部20Bには、ストップ部22が設けられているため、拘束部材10が芯部材20に沿ってスライド落下することがこのストップ部22で阻止されることになり、このため、芯部材20の両端部20A,20Bをガセットプレート6,7に結合する作業を容易に行うことができる。
制振装置1が図1に示されているように建物に設置された後に、地震や風圧により、建物に左右方向の横荷重Fが作用したときには、柱2,3と梁4,5からなる四角形フレームが変形し、横荷重Fによる引っ張り力や圧縮力により伸び変形や圧縮変形した芯部材20が、降伏点を超えて塑性変形することにより、横荷重Fによる建物の振動エネルギは、芯部材20の軸方向塑性変形である引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形によって吸収され、これにより、建物の揺れは減衰して抑制される。また、横荷重Fが、芯部材20に過大な圧縮力を作用させるものとなっていて、この芯部材20を、座屈等により芯部材20の長さ方向と角度をなす方向に変形させようとするときには、芯部材20は、拘束部材10の内部の挿通部13に移動自在に挿通されているため、芯部材20の変形は拘束部材10により拘束され、芯部材20は変形しない。
以上説明した本実施形態によると、拘束部材10の内部には、芯部材20が挿通された挿通部13と分離して形成されている空間部14が設けられているため、この空間部14の分だけ拘束部材10の重量を軽量化でき、これにより、制振装置1の全体重量も軽量化されるため、拘束部材10や制振装置1の取り扱い作業や、制振装置1の設置作業等を容易に行えるようになる。
また、本実施形態では、空間部14は、拘束部材10の長さ方向へ延びる長さを有していて、拘束部材10の全長に渡って形成されていること、及び挿通部13が形成されているコア部12の両側に2個の空間部14が設けられていること、さらには、拘束部材10はアルミ製又はアルミ合金製であることのために、拘束部材10の重量の軽量化、これによる制振装置1の全体重量の軽量化を一層有効に実現することができる。
また、拘束部材10は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形法又は引き抜き成形法により得られた成形品から製造されるため、挿通部13及び空間部14が内部に設けられた拘束部材10を容易に製造することができる。
さらに、拘束部材10の内部に軽量化のための空間部14が設けられていても、この空間部14には、補強のためのリブ部15が架設されているため、拘束部材10の全体強度を、圧縮力が作用したときの芯部材20が座屈等してこの芯部材20の長さ方向と角度をなす方向に変形することを防止するために必要とされる充分の大きさにすることができる。
また、芯部材20は2個あり、これらの芯部材20は、互いに平行に配置されて拘束部材10の内部に2個形成された挿通部13に挿通されているため、建物の振動エネルギが大きくても、これらの芯部材20の引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形によって振動エネルギを充分吸収できる。
また、2個の芯部材20のそれぞれの端部20A同士及び端部20B同士は、建物のガセットプレート6,7を挟んでおり、これらの端部20A同士及び端部20B同士がガセットプレート6,7にボルト30A,ナット30Bによる結合具30で結合されることにより、芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bが、建物の構成部材に連結されているため、芯部材20と建物の構成部材とを結合するための結合部の長さを短縮することができる。
これを具体的に説明すると、芯部材の個数を1個とし、この芯部材に建物の振動エネルギを所定どおり伝達できるようにするためには、芯部材の長さ方向の端面を、振動エネルギが伝達されるガセットプレートの端面に突き当て、芯部材とガセットプレートとに板状の連結部材を架け渡し、これらをボルト等の結合具で結合することになるが、これによると、芯部材とガセットプレートとの大きな結合強度を得るために、板状の連結部材を、芯部材の長さ方向の寸法が大きい長寸法のものにしなればならず、このため、芯部材とガセットプレートとを結合するための結合部の長さ寸法が大きくなってしまう。
これに対して本実施形態では、2個の芯部材20のそれぞれの端部20A同士及び端部20B同士は、建物のガセットプレート6,7を挟んでいるため、建物の振動エネルギを、ガセットプレート6,7を介してそれぞれの芯部材20に等分配して伝達できるとともに、上述の板状の連結部材を用いることなく、芯部材20とガセットプレート6,7とを結合具30により結合できるため、結合部の長さを短縮でき、これにより、建物におけるこの結合部の納まりを良好とすることができる。
さらに、本実施形態の芯部材20の全体形状は、この芯部材20の長さ方向の中央箇所にくびれ部20Cが設けられることにより、芯部材の長さ方向と直交する方向にくびれた形状になっているため、芯部材20に建物の振動エネルギによる引っ張り力や圧縮力が作用したときに、断面積が小さいくびれ部20Cにおいて、引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形が生じることになり、これにより、建物の構成部材であって、前述のブラケットにもなっているガセットプレート6,7に結合されている芯部材20の長さ方向の両端部20A,20Bで破断等が生ずることを防止できる。
図8は、建物の構造材である左右の柱42,43と上下の梁44,45により構成された四角形フレームの内側に、水平方向に対する傾き方向が互いに逆となっている2個の制振装置1を設置した実施形態を示している。この実施形態では、左右の柱42,43間のスパンが大きくなっており、梁44に設けたブラケット46に、2個の制振装置1におけるそれぞれの芯部材20の一方の端部20Aが結合され、2個の制振装置1のうち、一方の制振装置1における芯部材20の他方の端部20Bは、柱43と梁45との接合箇所に設けられたガセットプレート47に結合され、他方の制振装置1における芯部材20の他方の端部20Bは、柱42と梁45との接合箇所に設けられたガセットプレート48に結合されている。この実施形態でも、ガセットプレート47,48は、制振装置1を建物に結合するためのブラケットになっているとともに、ブラケット46とガセットプレート47,48は、柱42,43及び梁44,45と同様に、建物を構成する構成部材となっている。
この実施形態によると、建物に横荷重が作用し、これにより、2個の制振装置1のうち、一方の制振装置1の芯部材20に圧縮力が作用したときには、他方の制振装置1の芯部材20に引っ張り力が作用し、横荷重の向きが逆になると、一方の制振装置1の芯部材20に引っ張り力が作用して、他方の制振装置1の芯部材20に圧縮力が作用するため、振動エネルギの吸収が2個の制振装置1により有効に行われ、建物の揺れを一層有効に抑制できる。
なお、この実施形態において、ブラケット46の箇所に間柱が立設されていてもよく、立設されていなくてもよい。
図9には、別実施形態に係る制振装置51が示されている。この制振装置51は、図10で示す拘束部材60と、図11で示す芯部材70と、図12で示すスペース部材80とを含んで構成されたものとなっている。図11の芯部材70は、図4で示した前記実施形態の芯部材20と同様に、全体形状が細長の板状となっている部材であるため、同一の厚さ寸法が、芯部材70の長さ方向の一方の端部70Aから他方の端部70Bまで連続しており、したがって、芯部材70の厚さ寸法は、芯部材70の全長に渡って一定である。また、芯部材70の長さ方向の中央箇所には、この長さ方向と直交する上下の幅方向の寸法が、芯部材70の長さ方向の両端部70A,70Bの幅寸法よりも小さくなっているくびれ部70Cが設けられ、芯部材70の長さ方向への長さを有するこのくびれ部70Cの両側は、両端部70A,70Bに向かって幅寸法が次第に大きくなる幅寸法拡大部70D,70Eとなっている。
また、以上のように全体形状がくびれた形状にもなっている芯部材70の両端部70A,70Bには、これらの端部70A,70Bを図1で示したガセットプレート6,7に結合するための結合具30の一部となっているボルト30Aを挿通するための複数個のボルト孔71が設けられ、また、両端部70A,70Bのうち、端部70Bには、ボルト孔71より幅寸法拡大部70Eに近い箇所において、芯部材70に溶接で小片状部材を取り付けることで設けたストップ部72が設けられている。
図12のスペース部材80も、全体形状が細長の板状となっている部材であるが、このスペース部材80には、スペース部材80の長さ方向の中央箇所において、この長さ方向と直交する幅方向の寸法が小さくなっているくびれ部が設けられていない。このため、このスペース部材80は、上下の幅寸法が同一寸法となってスペース部材80の全長に渡って連続しているものとなっており、スペース部材80の長さ方向及び幅方向と直交する方向の寸法である厚さ寸法も、同一寸法となってスペース部材80の全長に渡って連続している。
図11と図12の比較で分かるように、スペース部材80の全長は、芯部材70の全長よりも短く、スペース部材80の長さ寸法は、芯部材70の全長からこの芯部材70の両端部70A,70Bの長さ寸法を差し引いた寸法となっている。さらに、スペース部材80の上下の幅寸法は、芯部材70の最大の幅寸法と同じ又は略同じになっている。
図14は、図9のS14−S14断面図であり、図15は、図9のS15−S15断面図である。これらの図14及び図15に示されているように、この実施形態に係る制振装置51でも2個の芯部材70が用いられ、これらの芯部材70の間にスペース部材80が配置されている。このため、この制振装置51では、芯部材70の長さ方向とくびれ方向の両方向と直交する方向における位置において、芯部材70と隣接してスペース部材80が配置されており、このため、芯部材70に対してスペース部材80が配置される位置は、2個の芯部材70の間の位置となっており、この位置は、2個の芯部材70のそれぞれについて、芯部材70の長さ方向とくびれ方向の両方向と直交する方向における位置となっている。
なお、2個の芯部材70の間にスペース部材80を配置してこれらの芯部材70とスペース部材80を組み合わせる際には、図9のS16−S16断面図である図16から分かるように、それぞれの芯部材70に設けられているストップ部72の向きを互いに逆の外向きとし、また、それぞれの芯部材70の長さ方向の両端部70A,70Bをスペース部材80の長さ方向の両端面から突出させた状態とする。
このように2個の芯部材70とスペース部材80を組み合わせたときの状態が、図13に示されている。スペース部材80には、芯部材70に形成されているくびれ部70Cと対応する箇所において、このくびれ部70Cを、くびれ部70Cのくびれ方向両側となっている上下両側から押え込むための押え込み部81が設けられている。本実施形態に係る押え込み部81は、図15に示されているように、スペース部材80にボルト82A、ナット82Bによる結合具82で押え込み部材83を取り付けたものとなっており、この押え込み部材83は、スペース部材80の厚さ方向の両面に設けられているため、2個の芯部材70のそれぞれのくびれ部70Cが、これらの芯部材70の間に配置されているスペース部材80に設けられた押え込み部81により上下両側から押え込まれるようになっている。
このような押え込み部81を備えているスペース部材80は、後述の説明でも分かるように、芯部材70が上下方向に湾曲変形することに対して抵抗し、芯部材70の強度を補強するための補強部材となっている。
図10の拘束部材60も、図3の拘束部材10と同様に、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品を所定の長さ寸法で切断したものであるため、拘束部材60は、この拘束部材60の長さ方向と直交する箇所における断面形状が、同一形状となって拘束部材60の長さ方向に連続したものとなっており、この断面形状は、拘束部材60長さ方向の一方の端部から他方の端部まで連続している。
この断面形状は、図14及び図15に示されているように、八角形の閉断面形状であるため、拘束部材60の外輪郭部61は、上辺部61Aと、下辺部61Bと、左右の辺部である2つの側辺部61C,61Dと、これらの上辺部61A、下辺部61Bと側辺部61C,61Dの間に斜めに設けられた4つの斜辺部61E,61F,61G,61Hとからなる。また、拘束部材60の内部には、コア部62が形成され、このコア部62の内部には、互いに厚さ方向に重ねられて組み合わせられた2個の芯部材70と1個のスペース部材80とを移動自在に挿通させるための1個の挿通部63が設けられている。上辺部61Aと下辺部61Bに上下両端部が接続されているコア部62の両側は、挿通部63と分離した空間部64となっており、挿通部63と空間部64は、コア部62の一部である隔壁66により隔絶されているとともに、拘束部材60の全長に渡って貫通形成されている。
挿通部63は、2個の芯部材70と1個のスペース部材80の合計厚さ寸法と対応する幅狭の寸法となっている上下中央部の幅狭挿通部63Aと、結合具82のボルト82A及びナット82Bも移動自在とするために幅広の寸法となっている上下両端部の幅広挿通部63B,63Cとからなる。このため、挿通部63と空間部64を隔絶している隔壁66は、幅狭挿通部63Aと対応する箇所の上下中央部66Aと、幅広挿通部63B,63Cと対応する箇所の上下両端部66B,66Cとからなる。
拘束部材60の内部には、コア部62の両側において、外輪郭部61とコア部62とを繋ぐ水平のリブ部65が形成され、本実施形態では、リブ部65として上下2個のリブ部65A,65Bが設けられている。このため、この実施形態でも、拘束部材60の内部に設けられている空間部64には、これらのリブ部65A,65Bが架設されていることになる。
また、本実施形態では、隔壁66のうち、上下中央部66Aには、挿通部63の幅狭挿通部63Aと向かい合う面において、小さな凹凸が上下方向に連続している凹凸部67が形成されている。
以上の実施形態に係る制振装置51の拘束部材60も、工場において、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形法又は引き抜き成形法により得た成形品を所定の長さ寸法で切断することにより製造され、それぞれの芯部材70にストップ部72となる小片状部材を溶接で取り付ける作業も工場で行われる。
拘束部材60の挿通部63に2個の芯部材20と1個のスペース部材80を挿通する作業を行う際には、図13で説明したように、2個の芯部材70の間にスペース部材80を配置してこれらの芯部材70とスペース部材80を組み合わせ、次いで、芯部材70の両端部70A,70Bのうち、ストップ部72が設けられていない端部70Aから芯部材70とスペース部材80を挿通部63に挿入し、それぞれの芯部材70の長さ方向の両端部70A,70Bを拘束部材60の長さ方向の両端面から突出させる。このときの状態が図9に示されている。なお、この実施形態でも、それぞれの芯部材70とスペース部材80を挿通部63に挿通する作業を行う前に、それぞれの芯部材20の表面に低摩擦材を付着させる作業を行い、これにより、これらの芯部材70を挿通部63に対して円滑に移動自在とする。
次いで、この実施形態に係る制振装置51を建物に設置するために、この制振装置51を図1で示したガセットプレート6,7の間に架設するときには、前述した実施形態の制振装置1と同様に、2個の芯部材70の長さ方向の一方の端部70Aを、図16に示されているように、ガセットプレート6の厚さ方向の両側面に配置して、これらの端部70A同士でガセットプレート6を挟み、また、2個の芯部材70の長さ方向の他方の端部70B同士でガセットプレート7を挟み、それぞれの端部70A,70Bに設けられているボルト孔71と、ガセットプレート6,7に設けられているボルト孔31とにボルト30Aを挿入し、ボルト30Aに螺合したナット30Bを締め付けることにより、結合具30で芯部材70の長さ方向の両端部70A,70Bをガセットプレート6,7に結合する。
なお、この実施形態でも、芯部材70の長さ方向の両端部70A,70Bをガセットプレート6,7に結合することを、ボルト30A、ナット30Bではなく、溶接により行ってもよい。
また、この実施形態でも、地震や風圧により、建物に左右方向の横荷重が作用したときには、横荷重による引っ張り力や圧縮力により伸び変形や圧縮変形した芯部材70が、降伏点を超えて塑性変形することにより、横荷重による建物の振動エネルギは、芯部材70の引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形によって吸収され、建物の揺れは減衰して抑制される。
そして、この実施形態でも、拘束部材60の内部には空間部64が設けられ、この空間部64は、拘束部材60の長さ方向へ延びる長さを有しており、また、空間部64にはリブ部65が架設されているため、前述した実施形態の制振装置1についてと同じ作用効果を得られ、また、芯部材70の個数は2個となっており、これらの芯部材70の全体形状はくびれ部70Cによってくびれた形状になっており、また、2個の芯部材70の端部70A同士、端部70B同士は、ガセットプレート6,7を挟んで結合具30により結合されているため、これらに関しても、前述した実施形態の制振装置1についてと同じ作用効果を得られる。
また、この実施形態では、前述したように、隔壁66の上下中央部66Aには、挿通部63の幅狭挿通部63Aと向かい合う面において、凹凸部67が形成されており、この凹凸部67は、芯部材70との摩擦を低減するため、横荷重により芯部材70が拘束部材60の挿通部63を移動するときの摩擦を小さくし、芯部材70を円滑に移動させることができる。
さらに、この実施形態によると、2個の芯部材70のそれぞれにくびれ部70Cが形成されていても、これらのくびれ部70Cは、これらの芯部材70の間に配置されているスペース部材80に設けられた押え込み部81により上下両側から押え込まれているため、前述した横荷重によってこれらの芯部材70に大きな圧縮力が作用した際に、芯部材70が、くびれ部70Cにおいて、上下方向に湾曲変形することを押え込み部81により阻止することができる。言い換えると、押え込み部81が取り付けられているスペース部材80は、芯部材70がこの芯部材70のくびれ箇所となっているくびれ部70Cで上下方向に湾曲変形することに対して抵抗する部材となり、スペース部材80の強度により、芯部材70が上下方向に湾曲変形することを防止できるため、スペース部材80は、芯部材70の上下方向への湾曲変形についての強度を補強している補強部材となっており、これにより、建物の振動エネルギの吸収及び建物の揺れの減衰、抑制を一層有効に実現するために、芯部材70に引っ張り塑性変形及び圧縮塑性変形を一層確実に生じさせることができる。
なお、この実施形態の制振装置51も、図8で示したように、建物の四角形フレームの内側に、水平方向に対する傾き方向を互いに逆にして2個設置することができる。
図17は、別実施形態に係る拘束部材100を示している。この拘束部材100も、これまでの実施形態の拘束部材10,60と同様に、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品を所定の長さ寸法で切断したものであって、長さ方向と直交する箇所における断面形状が、同一形状となって拘束部材100の長さ方向に連続しており、図17で示すこの断面形状は、拘束部材100の長さ方向の一方の端部から他方の端部まで連続している。
図17で示す断面形状は、図14及び図15の実施形態の拘束部材60と同様に、八角形の閉断面形状であるため、拘束部材100の外輪郭部101は、上辺部101Aと、下辺部101Bと、左右の辺部である2つの側辺部101C,101Dと、これらの上辺部101A、下辺部101Bと側辺部101C,101Dの間に斜めに設けられた4つの斜辺部101E,101F,101G,101Hとからなる。また、拘束部材100の内部には、上下方向に直線的に延びる2個の隔壁102A,102Bが間隔をあけて並設されており、拘束部材100のコア部102を形成しているこれらの隔壁102A,102Bの間が、2個の芯部材90を並設させて挿通させるための挿通部103となっている。コア部102の両側は、挿通部103と分離した空間部104となっており、挿通部103と空間部104は、コア部102の隔壁102A,102Bにより隔絶されているとともに、拘束部材100の全長に渡って貫通形成されている。
拘束部材100の内部には、コア部102の両側において、外輪郭部101とコア部102とを繋ぐ水平のリブ部105が形成され、この実施形態では、拘束部材100の全長に渡って形成されているリブ部105として、上下3個のリブ部105A,105B,105Cが設けられている。このため、この実施形態でも、拘束部材100の内部に挿通部103と分離して形成されている空間部104には、これらのリブ部105A,105B,105Cが架設されていることになる。
この実施形態では、挿通部103にモルタル106が充填されており、このモルタル106の内部に2個の芯部材90が間隔をあけて並設され、これらの芯部材90の周囲はモルタル106で覆われている。2個の芯部材90をモルタル106が充填された挿通部103に配置するためには、始めに、表面に低摩擦材を付着させたこれらの芯部材90を挿通部103に挿通する作業を行い、次いで、挿通部103にモルタル106を充填する作業を実施する。2個の芯部材90の間隔は、図1で示したガセットプレート6,7の厚さと対応しており、エンド部材が被冠された拘束部材100の長さ方向の両端部から突出しているこれらの芯部材90の長さ方向の両端部は、前述の実施形態と同様に、ガセットプレート6,7を挟んでボルト、ナットによる結合具又は溶接により結合される。
この実施形態でも、地震や風圧により、建物に左右方向の横荷重が作用したときには、横荷重による引っ張り力や圧縮力により伸び変形や圧縮変形した芯部材90が、降伏点を超えて塑性変形することになり、横荷重による建物の振動エネルギは、芯部材90の引っ張り塑性変形や圧縮塑性変形によって吸収されるため、建物の揺れは減衰して抑制される。
そして、この実施形態でも、拘束部材100の内部には、空間104が挿通部103と分離して設けられており、この空間部104は、拘束部材100の長さ方向へ延びる長さを有しており、また、空間部104にはリブ部105が架設されているため、前述した実施形態の制振装置1についてと同じ作用効果を得られる。
特に、この実施形態では、拘束部材100の内部に設けられている挿通部103には、モルタル106が充填されており、このモルタル106の内部に芯部材90が配置されているため、芯部材90の周囲はモルタル103で覆われることになる。これによると、拘束部材100の内部の挿通部103を、芯部材90の厚さ等の寸法に正確に対応させた高精度寸法で形成する必要がなくなり、このため、拘束部材100の製造を容易に行えるようになる。
なお、この実施形態の拘束部材100も、図8で示したように、建物の四角形フレームの内側に、水平方向に対する傾き方向を互いに逆にして2個設置される制振装置にも適用することができる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る制振装置1が、構築物である高層建物に設置されているときの状態が示されている。この建物は、左右の間隔をあけて立設されているH型鋼等による柱2,3と、これらの柱2,3の間に上下の間隔をあけて架設されているI型鋼又はH型鋼等による梁4,5とが構造材となって構築されており、柱2と梁4との接合箇所には、ガセットプレート6が結合され、柱3と梁5との接合箇所には、ガセットプレート7が結合されている。これらの柱2,3と、梁4,5と、ガセットプレート6,7は、建物を構成する構成部材となっている。