JP2017177031A - 排水の処理方法、および排水処理用キット - Google Patents

排水の処理方法、および排水処理用キット Download PDF

Info

Publication number
JP2017177031A
JP2017177031A JP2016070049A JP2016070049A JP2017177031A JP 2017177031 A JP2017177031 A JP 2017177031A JP 2016070049 A JP2016070049 A JP 2016070049A JP 2016070049 A JP2016070049 A JP 2016070049A JP 2017177031 A JP2017177031 A JP 2017177031A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
wastewater
bacteria
degrading
weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016070049A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6674817B2 (ja
Inventor
顕嗣 稲川
Akitsugu Inagawa
顕嗣 稲川
平野 達也
Tatsuya Hirano
達也 平野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
CCI Corp
Original Assignee
CCI Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by CCI Corp filed Critical CCI Corp
Priority to JP2016070049A priority Critical patent/JP6674817B2/ja
Publication of JP2017177031A publication Critical patent/JP2017177031A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6674817B2 publication Critical patent/JP6674817B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】グリーストラップ内において油分分解菌による油分分解率を向上させる方法を提供することを目的とする。【解決手段】無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材と、油分分解菌と、を排水に接触させることを有する、排水の処理方法。【選択図】図1

Description

本発明は、排水の処理方法、および排水処理用キットに関する。
厨房や食品工場からの排水には、通常、生ゴミや調理用油が含まれている。生ゴミ等の固形物は、排水口にカゴ等を設けることによって容易に排水から除去することが可能であるが、調理油のように液状のものを除去することは容易ではない。したがって、多量の油分が混入した排水を排出する厨房や食品工場などの施設において、油分を集積し上層部に浮上した油分を分離して廃棄するためのグリーストラップが設けられている。
しかしながら、グリーストラップ内で集積した油分が固形化し、グリーストラップの水面にスカム(油の塊)として残留することがある。このとき、集積した油分は、酸化・腐敗して、悪臭・害虫の発生原因となることがある。また、集積した油分を放置すると、グリーストラップの油分除去能力が低下し、下水や河川に油分を流出させてしまう。そのため、グリーストラップ内で油分が集積した場合、専門の業者に依頼してバキューム処理や高圧洗浄処理などで油分の除去を行う必要があるためコストがかかってしまう。
そこで、グリーストラップにおいて、微生物を用いて効率よく油分を低減するさまざまな方法が検討されている。たとえば特許文献1には、グリーストラップ内にリパーゼ分泌微生物を添加し、油脂をグリセロールと脂肪酸とに分解させる方法が開示されている。しかしながら、微生物を用いる場合、微生物を増殖させるために、曝気や攪拌を行うことが必要となる。
攪拌を必要としない方法として、特許文献2には、多孔質担体であるスポンジに油脂分解能を有する微生物(酵母)を担持させて、排水中の油脂を分解する方法が開示されている。
特開2010−227849号公報 国際公開第2008/075678号
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、微生物による油分分解率が十分ではないという問題が存在する。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、グリーストラップ内において、油分分解菌による油分分解率を向上させる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材と、油分分解菌と、を排水に接触させることを有する、排水の処理方法によって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、グリーストラップ内において、油分分解菌による油分分解率を向上させる方法が提供される。
図1は、グリーストラップによる排水処理の仕組みを模式的に表す。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
<排水の処理方法>
本発明の一形態によれば、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材(本明細書中、単に「油分分解能向上材」とも称する)と、油分分解菌と、を排水に接触させることを有する、排水の処理方法が提供される。
本発明に係る排水の処理方法によれば、グリーストラップ内において油分分解菌による油分分解率を向上させることができる。推定される本発明のメカニズムを図1を参照して説明する。図1は、グリーストラップ10による排水処理の仕組みを模式的に表している。
本発明に係る方法において、油分分解能向上材や油分分解菌は、グリーストラップ10に排出する前の排水にあらかじめ添加されていてもよいが、典型的には、排水処理槽1中の排水へ添加される。但し、本発明に係る方法は、油分分解能向上材と油分分解菌とを排水に接触させることができる限り特に限定されない。
グリーストラップ10は、埋設式、可動式など、設置形態は特に制限されない。埋設式の場合、例えば厨房や食品加工場において、排水路に流出した排水が残渣受け3に注ぎ込まれるように、グリーストラップ10を埋設する。可動式の場合、例えば、シンクの排水溝の下部に残渣受け3が位置するようにグリーストラップ10を設置する。
図1において、排水は、矢印の方向へ流れる。なお、グリーストラップ10への排水の投入は、回分式であっても連続式であってもよい。油分含有排水は、残渣受け3を通じて排水処理槽1へと流れ込む。このとき、生ゴミ等の残渣の全部または一部は残渣受け3で捕集されるが、大部分の油分は残渣受け3を通過して排水処理槽1へと流入する。排水処理槽1へ流入した油分6は水面5へ向かって浮上し、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間に集まる。従って、油分分解能向上材と油分分解菌とを排水に加えない場合、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間で油分6が次第に凝集し、スカムを形成することとなる。
本発明に係る油分分解能向上材と油分分解菌とをグリーストラップ10に適用した場合、排水処理槽1にて(主として、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間にて)、油分分解能向上材と油分分解菌とが排水中の油分6と接触することとなる。油分6は、水面5へ向かって浮上し、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間に集まり油層を形成するものの、油分分解能向上材は、前記油層に分散することができる。加えて、本発明に係る油分分解能向上材は、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されるため、無機粉体の表面が親油性(撥水性)を有する。よって排水中の油分の凝集を抑制し、また油分の粘度を低下させることができる。このため、仕切り板2aと2cとで仕切られた空間において、油分分解菌と油分6との接触面積が増加し、油分分解菌と油分6との反応(つまり油分分解率)を向上させることができる。したがって、油分6が効率的に分解されうる。また、油分分解菌は、粘度が低下した油分6により形成された油層に吸着するため、排水処理層1の底へ沈殿することなく油層にとどまることができる。よって、油分分解菌による油分分解率をさらに向上させることができる。
以上のメカニズムは、あくまで推定であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
[油分分解能向上材]
本発明に係る油分分解能向上材は、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなるものである。
油分分解能向上材の平均粒径(体積換算)は、典型的には、0.1〜100μmであり、好ましくは、1〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは、5μm超20μm以下である。油分分解能向上材の平均粒径がかかる範囲であることにより、排水中の油分により形成された油層への高い分散性を示すため、本発明の効果をより高めることができる。なお、油分分解能向上材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置などの粒度分布計で測定することができる。
(無機粉体)
本発明に係る無機粉体としては、特に制限されず、例えばシリカ(シリカゲル、ホワイトカーボン、エアロジル、非晶質シリカを含む。)、マイカ、タルク、セリサイト、カオリン、クレー、ベントナイト、活性炭、カーボンブラック等;酸化チタン(アナタース型、ルチル型)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化クロム、酸化第一コバルト、四三酸化コバルト、酸化第二コバルト、酸化第一ニッケル、酸化第二ニッケル、酸化タングステン、酸化トリウム、酸化モリブデン、二酸化マンガン、三酸化マンガン、酸化ウラン、酸化トリウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一スズ、酸化第二スズ、一酸化鉛、四三酸化鉛、二酸化鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、チタン酸バリウム、酸化銀、酸化ゲルマニウム等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化クロム等の水酸化物;塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化ジルコニウム、フッ化カルシウム等のハロゲン化物;硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタニウム、硫酸ストロンチウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化アンチモン、硫化カルシウム、硫化銀、硫化ゲルマニウム、硫化コバルト、硫化スズ、硫化鉛、硫化ニッケル、硫化マンガン、硫化亜鉛等の硫酸塩や硫化物;リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸アルミニウム等のリン酸塩;窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化鉄、窒化バナジウム、窒化ジルコニウム、窒化タンタル等の窒化物;ケイ化モリブデン、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト等のケイ素化合物またはケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ジルコニウム、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ホウ素、炭化ウラン、炭化ベリリウム等の炭化物等;金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム等;ニッケル、銅、亜鉛、スズ、コバルト、鉄、アルミニウム、モリブデン、マンガン、タングステン、ガリウム、インジウム、テクネチウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム等;アルミニウム−マグネシウム合金、鉄−炭素合金、鉄−銅合金、鉄−ニッケル−クロム合金、銀−金合金、パラジウム−金合金、銀−パラジウム合金、銅−ニッケル合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−マグネシウム合金、スズ−鉛合金等が挙げられる。これらの無機粉体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の好ましい形態において、無機粉体は、シリコーン化合物との親和性の観点から、シリカであり、より好ましくはシリカゲルである。
無機粉体の平均粒径は、典型的には、0.1〜100μmであり、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜25μmである。なお、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を意味する。無機粉体の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置などの粒度分布計で測定することができる。
無機粉体は、油分との接触面積を増加させるとの観点から、多孔質粒子または多孔質化されているものが好ましい。無機粉体が多孔質粒子または多孔質化されているものの場合、無機粉体の比表面積は、好ましくは5〜2000m/gであり、より好ましくは10〜800m/gである。また、無機粉体の細孔容積は、好ましくは0.01〜5.0ml/gであり、より好ましくは0.01〜2.0ml/gである。なお、比表面積は、BET法により、細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。
無機粉体の形状は、特に制限されず、球状、真球状、楕円球状、不定形、破砕形状、円筒状、ペレット状、四角状、針状、円柱状、破砕状、鱗片状、葉状、薄片状、板状、金平糖状、多角形状等いずれであってもよい。
(シリコーン化合物)
本発明に係るシリコーン化合物としては、上記無機粉体を被覆することで、無機粉体に親油性(撥水性)を付与できるものであれば、特に制限されない。本発明の好ましい形態では、無機粉体への親油性の付与の観点から、シリコーン化合物が、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルおよびカルボキシル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも1種である。シリコーンオイルの具体例としては、トリエトキシカプリリルシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、アクリルシリコーン樹脂等を挙げることができる。
シリコーン化合物を用いて上記無機粉体を被覆する方法は、特に制限されず従来公知の方法、無機粉体粒子をイソプロピルアルコールなどの溶媒に分散させた後、シリコーン化合物を添加する方法や、乾式でミキサーで混合する方法などを用いることができる。例えば、特開2003−183027号公報、WO2007/077673号に記載の方法などを同様にしてまたは適宜修飾して適用することができる。
本発明に係る方法において使用される油分分解能向上材としては、市販品を用いることができ、例えば、サンスフェア(登録商標) H−51−ET、H−121−ET(AGCエスアイテック社製)などが使用できる。
本発明に係る方法においては、上述した油分分解能向上材を1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
[油分分解菌]
本発明に係る方法において使用される油分分解菌は、油分を分解できるものであれば特に制限されない。油分分解菌としては、例えば、細菌、糸状菌、酵母などが挙げられる。
細菌の例としては、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、セラチア(Serratia)属、テトラスファエラ(Tetrasphaera)属、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属などが挙げられる。
糸状菌の例としては、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、リゾプス(Rhizopus)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコラ(Humicola)属などが挙げられる。
酵母の例としては、ヤロウィア属、キャンディダ属、ピキア属、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、およびトリコスポロン属などが挙げられる。本発明の好ましい形態では、油分分解能の観点から、上述の酵母からなる群から選択される。
本発明に係る方法において使用される酵母は、より具体的には、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ヤロウィア スピーシーズ(Yarrowia sp.)、キャンディダ・ファマタ(Candida famata)、キャンディダ・ボンビコーラ(Candida bombicola)、キャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindoracea)、キャンディダ・ルゴサ(Candida rugosa)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・インターメディア(Candida intermedia)、キャンディダ・パラリポリティカ(Candida paralipolytica)、キャンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)、キャンディダ スピーシーズ(Candida sp.)、ピキア・ファリノサ(Pichia farinosa)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ピキア・カナデンシス(Pichia canadensis)、ピキア・フェルメンタンス(Pichia fermentans)、ピキア・ハプロフィラ(Pichia haplophila)、ピキア・メンブランアエファシエンス(Pichia menbranaefaciens)、ピキア・ロダネンシス(Pichia rhodanensis)、ハンセヌラ・アノマラ(Hansenura anomala)、ハンセヌラ・ビムンダリス(Hansenura bimundalis)、ハンセヌラ・カプスラタ(Hansenura capsulata)、ハンセヌラ・シフェリイ(Hansenura ciferrii)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・フェルメンタティ(Saccharomyces fermentati)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・ブラシカエ(Trichosporon brassicae)、トリコスポロン・キャピタタス(Trichosporon capitatus)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、トリコスポロン・ファーメンタンス(Trichosporon fermentans)、トリコスポロン・ネオファーメンタンス(Trichosporon neofermentans)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、トリコスポロンスピーシーズ(Trichosporon sp.)等が例示できる。
これらの酵母のうち、油分分解能の高さから、ヤロウィア属の酵母を用いることが好ましい。ヤロウィア属の酵母としては、ヤロウィア・リポリティカ ATCC48436、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1548、ヤロウィア・リポリティカ LM02−011(受託番号NITE P−01813)、ヤロウィア・リポリティカ NBRC0746、ヤロウィア・リポリティカ NBRC1209のようなヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ヤロウィア YH−01のようなヤロウィア スピーシーズ(Yarrowia sp.)等が例示できるが、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)がより好ましくヤロウィア・リポリティカ LM02−011(受託番号NITE P−01813)が更に好ましい。
上述の油分分解菌は、ATCC、NBRC、DSMZ等のカルチャーコレクションから入手可能である。また上述の油分分解菌は、1種単独で、または共存可能であれば2種以上選択して使用できる。
本発明に係る方法において使用される油分分解菌の培養方法は、当該油分分解菌が生育・増殖できるものであれば、いずれのものであってよい。例えば、本発明に係る方法において使用される油分分解菌の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用する油分分解菌が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。通常、培地は、炭素源、窒素源および無機物を含む。
本発明に係る方法において使用される油分分解菌の培養において使用できる炭素源としては、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。具体的には、油分分解菌の資化性を考慮して、グルコース、フラクトース、セロビオース、ラフィノース、キシロース、マルトース、ガラクトース、ソルボース、グルコサミン、リボース、アラビノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、α−メチル−D−グルコシド、サリシン、メリビオース、ラクトース、メレジトース、イヌリン、エリスリトール、グルシトール、マンニトール、ガラクチトール、N−アセチル−D−グルコサミン、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜等の糖類、麦、米等の天然物、グリセロール、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、ピルピン酸、クエン酸等の有機酸類、ヘキサデカン等の炭化水素などが挙げられる。上記炭素源は、培養する油分分解菌による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記炭素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
また、本発明の油分分解菌の培養において使用できる窒素源としては、肉エキス、魚肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、カゼイン、ミルクカゼイン、カザミノ酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素源;アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、尿素等の無機窒素源などが挙げられる。上記窒素源は、培養する油分分解菌による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記窒素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
本発明において使用できる無機物としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などの、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物等のハロゲン化物などが挙げられる。上記無機物は、培養する油分分解菌による資化性を考慮して適宜選択される。また、上記無機物を1種または2種以上選択して使用することができる。
本発明の油分分解菌に効率よく油分を分解・資化させるあるいは油分分解菌の油分分解・資化能を維持するために、培地中に油分を添加してもよい。
本明細書において「油分」とは、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドのようなグリセリド類を多く含む食用または工業用油脂、ならびに脂肪酸を指す。培地へ添加する油分としては、例えば、オリーブ油、キャノーラ油、ココナッツ油、ごま油、米油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、牛脂、ラード、鶏油、魚油、鯨油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の食用油脂;アマニ油、ジャトロファ油、トール油、ハマナ油、ひまし油、ホホバ油等の工業用油脂;ならびに、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等、デセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、イコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ヘキサデカテトラエン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、オクタデカテトラエン酸、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、イコサテトラエン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ヘンイコサペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂肪酸;が好ましい。
培地への油分の添加量は、特に制限されず、培養する油分分解菌による油分分解・資化能などを考慮して適宜選択されうる。具体的には、油分を、培地1L中に1〜30g、より好ましくは5〜15gの濃度で添加することが好ましい。このような添加量であれば、油分分解菌は、高い油分分解・資化能を維持できる。なお、油分は、単独で添加してもまたは2種以上の混合物の形態で添加してもよい。
本発明の油分分解菌の培養は、通常の方法によって行える。例えば、油分分解菌の種類によって、好気的条件下または嫌気的条件下で培養する。前者の場合には、油分分解菌の培養は、振盪あるいは通気攪拌などによって行われる。また、油分分解菌を連続的にまたはバッチで培養してもよい。培養条件は、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本発明に係る方法において使用される油分分解菌が増殖できる条件であれば特に制限されず、培養する油分分解菌の種類に応じて適宜選択されうる。通常は、培養温度が、好ましくは15〜50℃、より好ましくは25〜40℃である。また、培養に適当な培地のpHは、好ましくは3〜11、より好ましくは5〜8である。さらに、培養時間は、特に制限されず、培養する油分分解菌の種類、培地の量、培養条件などによって異なる。通常は、培養時間は、好ましくは16〜48時間、より好ましくは20〜30時間である。
本発明に係る方法において使用される油分分解菌は、培養液中に懸濁された状態、培養液から固形分として回収された状態、乾燥された状態、担体に固定化された状態など、様々な形態で排水に接触させられうる。培養液中に懸濁され、培養液から固形分として回収され、または乾燥された状態の油分分解菌は、例えば、排水中へ添加され、排水と接触させられる。担体に固定化された状態の油分分解菌は、排水中へ添加されてもよいが、油分分解菌を固定化した担体をグリーストラップ内に設置し、担体に排水を通液させることにより油分分解菌と排水とを接触させることもできる。
培養液から固形分として回収した油分分解菌を使用する場合、回収方法は当業者に公知のいずれの手段をも採用できる。例えば、上述の方法により培養した油分分解菌の培養液を、遠心分離やろ過などにより固液分離し、固形分を回収して得ることができる。この固形分を乾燥(例えば、凍結乾燥)すれば、乾燥された状態の油分分解菌を得ることができる。
本発明の油分分解菌は、担体に固定化された状態で用いられてもよい。油分分解菌を固定化する担体としては、油分分解菌を固定化することができるものであれば特に制限されず、一般的に微生物を固定化するのに使用される担体が同様にしてあるいは適宜修飾されて使用される。例えば、アルギン酸、ポリビニールアルコール、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストラン等のゲル状物質に包括固定する方法や、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の表面に吸着固定する方法などが使用できる。
また、油分分解菌を担体に固定化する方法もまた特に制限されず、一般的な微生物の固定化方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて使用される。例えば、油分分解菌の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、アスピレーターを用いて担体を減圧下におき、油分分解菌の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、および油分分解菌の培養液を滅菌した培地と担体との混合物に流し込み、振とう培養し、上記混合物から取り出した担体を自然乾燥する方法などが挙げられる。
本発明の好ましい形態において、保存中の油分分解菌の生存性の観点から、油分分解菌は、生菌製剤の形態で使用される。油分分解菌としては、上記油分分解菌を用いることができる。油分分解菌は、油分分解能の観点から、好ましくはヤロウィア属、キャンディダ属、ピキア属、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、およびトリコスポロン属からなる群から選択される酵母である。油分分解菌として前記酵母を用いる場合、生菌製剤は、多孔質担体上に形成された油分分解菌含有層を含み、前記油分分解菌含有層が、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満のトレハロース、0.01〜5重量部の乳タンパク質、0.03〜10重量部のアミノ酸、および0.02〜10重量部の金属塩を含むものである。トレハロースが、油分分解菌含有層中に、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.8重量部以上含まれることで、製剤化をする際の酵母の生存率を向上させることができ、また、1.5重量部未満含まれることで、生菌製剤の保存期間中の酵母の生存率の低下を防止することができる。油分分解菌の製剤化の際の生存率と保存期間中の生存率とのさらなる好適なバランスの観点から、油分分解菌含有層のトレハロース含有量は、乾燥菌体換算で1重量部の油分分解菌に対して、好ましくは0.9重量部を超えて1.5重量部未満であり、より好ましくは1重量部以上1.4重量部以下である。
なお、トレハロース以外の二糖類、たとえばスクロース、ラクトース、マルトース等のトレハロース以外の二糖類を、1種単独でまたは2種以上を混合して、トレハロースと併用してもよい。この場合、トレハロース以外の二糖類の含有量は、乾燥菌体として1重量部の無芽胞菌に対して、例えば0.01質量部以上0.8質量部未満であり、好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
油分分解菌含有層中の乳タンパク質としては特に制限されず、従来公知の各種の乳タンパク質を含む材料を用いることができる。全脂粉乳のような乳脂肪分の多い原料を用いることもできるが、グリーストラップで使用するような油脂分解用生菌製剤を製造する場合は、製剤中の油分は少ない方が好ましいので、例えば、好ましい具体例としては、カゼイン、カゼインナトリウム、ホエイ、濃縮ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、ホエイパウダー、スキムミルク、乳タンパク濃縮物(MPC)、脱脂粉乳、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン等が例示でき、これらを1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。乳タンパク質が、油分分解菌含有層中に、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部含まれることで、製剤化をする際の油分分解菌の生存率を向上させることができる。
油分分解菌含有層中のアミノ酸は、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、リジン、セリン、スレオニン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギン、プロリン、チロシン、およびこれらの誘導体が例示できる。アミノ酸の誘導体としては、アミノ酸の塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩)、エステル体、水和物、溶媒和物等が例示できる。上記のアミノ酸は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。アミノ酸が、油分分解菌含有層中に、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.03〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部含まれることで、製剤化をする際の油分分解菌の生存率を向上させることができる。なお、油分分解層中に2種以上のアミノ酸が含まれる場合、上記数値は、2種以上の合計量を示す。
油分分解菌含有層中の金属塩は、例えばナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)などの金属元素の、硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオ硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸、塩酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物(たとえば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等が例示できるが、これらに限定されない。金属塩は、より具体的には、例えば、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、次亜硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、炭酸カリウム、過硫酸カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第三リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、塩化カルシウム等が例示できる。上記の金属塩は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。金属塩が、油分分解菌含有層中に、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.02〜10重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、より好ましくは0.1〜1重量部含まれることで、生菌製剤の保存期間中の油分分解菌の生存率の低下を防止することができる。なお、油分分解菌含有層が2種以上の金属塩を含む場合、上記数値は、2種以上の合計量を示す。
保存期間中における油分分解菌の生存率が特に優れるという観点から、金属塩が、Na、K、MgおよびCaからなる群から選択される元素の、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせであることが好ましく、Mgおよび/またはCaの硫酸塩であることがより好ましい。なお、上記の「金属塩」には、金属塩の水和物や溶媒和物も含まれる。
油分分解菌含有層には、上記の各成分のほか、任意に、例えばグルコース、フルクトース等の単糖類;スクロース、ラクトース、マルトース等のトレハロース以外の二糖類;シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、コーンスターチ等の多糖類;大豆タンパク等のタンパク質;大豆ペプチド、ゼラチン、ペプトン、トリプトン等のタンパク加水分解物やペプチド;大豆油、菜種油、パーム油、ゴマ油、オリーブ油等の油脂;アスコルビン酸やその塩、トコフェロール等のビタミン類;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤;ポリエチエレングリコール、グリセリンなどが含まれてもよい。
生菌製剤に用いられうる多孔質担体の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、タルク、クレー、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、炭酸カルシウム、活性白土、二酸化チタン、珪砂、軽石、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が例示できるが、これらに限定されない。多孔質担体の材料は、製剤化をする際の油分分解菌の生存率の観点から、好ましくは珪藻土である。
なお、上記生菌製剤に用いられうる多孔質担体における「多孔質」とは、担体の表面に多数の小さな気泡状の空隙を有する状態をいう。好ましくは、多孔質担体の嵩密度(タッピング嵩密度)が0.01〜2g/mlである。上記のような嵩密度の多孔質担体を用いることにより、製剤化工程後の油分分解菌の生存率をより一層向上できる。多孔質担体の嵩密度は、より好ましくは0.05〜1.5g/mlであり、更に好ましくは0.2〜1g/mlである。なお、上記の嵩密度は、タッピング嵩密度測定法により測定した値である。
製剤化をする際の油分分解菌の生存率の観点から、担体は、平均粒径(直径、体積基準)が1〜300μmの粒子状であることが好ましく、平均粒径(直径、体積基準)が10〜200μmの粒子状であることがより好ましく、30〜150μmであることが更に好ましい。なお、担体の粒径は、レーザー回折法にて測定した値である。
生菌製剤は、上記生菌製剤に用いられうる多孔質担体に対して、噴霧液を噴霧して製剤化することができる。前記噴霧液は、上述した油分分解菌とトレハロース、乳タンパク質、アミノ酸、金属塩および必要に応じてその他の成分とを、水に添加し、必要に応じて撹拌して調製することができる。噴霧液の調製に用いる水としては、例えば水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水など、いずれを使用してもよいが、不純物の少ない蒸留水、イオン交換水、純水、または超純水を用いることが好ましい。メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや、アセトンなどの極性溶媒を、適宜水に添加した混合液を用いてもよい。
上記生菌製剤に用いられうる多孔質担体への噴霧液の噴霧は、例えば流動層造粒機を用いて行うことができる。流動層造粒法により製剤化することにより、油分分解菌含有層を比較的低温で多孔質担体上に形成することができる。このため、製剤化をする際の生存率の向上の観点から有利である。また、流動層造粒法により製剤化することにより、上記の油分分解菌含有層を均一に多孔質担体上に形成することができる、という点においても有利である。
多孔質担体に対する噴霧液の噴霧量は任意に設定でき、特に制限されるものではないが、1重量部の多孔質担体に対して、噴霧液の固形分として、例えば、0.1〜10重量部となる割合であり、好ましくは0.5〜2重量部となる割合である。
噴霧液は、通常は50〜300g/分程度の速度で多孔質担体へ噴霧される。
流動層造粒法により製剤化する場合は、温風の温度は油分分解菌の耐熱性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、入口温度30〜60℃であり、好ましくは35〜50℃である。流動層の温度も油分分解菌の耐熱性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、温度30〜60℃であり、好ましくは35〜50℃である。噴霧後、噴霧液を噴霧した多孔質担体を流動層造粒機内でそのまま乾燥してもよいし、別途乾燥機で乾燥してもよい。
粉末化した生菌製剤は、用途に応じて、公知のコーティング剤で表面の一部または全部を被覆してもよい。また、滑沢剤(例えば、タルク、マイカ、シリカ、ステアリン酸マグネシウム)、乾燥剤(酸化カルシウム、シリカゲル)、フィラーなどの粉末を、任意の割合で生菌製剤と混合し、混合製剤としてもよい。また、所望の粒度となるように製剤を粉砕したり、分級をしたりしてもよい。
保存期間中の油分分解菌の生存率の観点から、製剤化後の生菌製剤の水分含量は、3〜8重量%であることが好ましく、4.5〜7.5重量%であることがより好ましい。
[処理方法]
本発明にかかる方法において、排水に添加する油分分解能向上材の量は任意に設定できる。排水に添加する油分分解能向上材の量は、特に制限されるものではないが、排水に含まれる油分1gに対して0.001〜5gであり、好ましくは0.01〜0.5gである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば0.001〜5%(w/v)であり、好ましくは0.01〜0.5%(w/v)である。油分分解能向上材を排水に0.001%(w/v)以上添加することで、効率的に油分を低減することができる。油分分解能向上材の添加量を5%(w/v)以下にすることで、添加した油分分解能向上材が外部環境へ過剰に流出することを防ぐことができる。
本発明にかかる方法において、添加する菌量は任意に設定できる。排水に添加する菌量は、特に制限されるものではないが、排水に含まれる油分1gに対して1×10〜1×1012CFUであり、好ましくは1×10〜1×1011CFUである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば1×10〜1×1012CFU/L、より好ましくは1×10〜1×1011CFU/Lとなるような量であってもよい。なお、油分分解菌を2種以上組み合わせて用いる場合は、その合計量を意味する。なお、排水に添加する油分分解菌は、前培養したものを用いてもよい。前培養することにより、接種する菌量を容易に調節できる。また、生菌製剤の形態の油分分解菌を用いることでも、接種する菌量を容易に調節できる。
排水を外部環境へ排出する際、油分分解菌は排水と共にグリーストラップ外へと排出されるので、本発明においては、グリーストラップ(排水)に、定期的に油分分解菌を添加するのが好ましい。その間隔は、特に制限されないが、たとえば、1回/3時間、1回/16時間、1回/24時間、または2〜3日に1回の間隔で添加するのが好ましい。添加する方法は、特に制限されず、排水が連続的にグリーストラップに流入する場合には、排水に混在させて添加してもよいし、グリーストラップ内の排水に直接、添加してもよい。厨房のシンクなどの排水口から油分分解菌を添加すれば、洗浄により排出される排水とともに、油分分解菌をグリーストラップ内に導入することができる。
排水への油分分解能向上材は、油分分解菌と同時に排水へ添加しても良く、別々でもよい。好ましくは、油分分解能向上材は、1週〜12週に1回、好ましくは2週〜8週に1回の頻度で排水へ添加する。
排水中に含まれる油分としては、上述の食用油脂、工業用油脂や脂肪酸が例示できる。排水中の油分の含有量は、特に制限されない。排水中に含まれる油分は、2種類以上であっても良い。
本発明に係る方法において、油分分解能向上材および油分分解菌に加えて、他の成分を排水に添加してもよい。他の成分としては、たとえば、リパーゼ、pH調整剤などが挙げられる。
本発明に係る方法において、油分分解菌による油分の分解を補助するため、排水にリパーゼを添加しても良い。リパーゼとしては、たとえば、シュードモナス(Pseudomonas)、特にシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)、シュードモナス・マルトフィリア(Pseudomonas maltophilia)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・メフィチカ・リポリティカ(Pseudomonas mephitica lipolytica)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、シュードモナス・プランタリイ(Pseudomonas plantari)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびシュードモナス・ウィスコンシネンシス(Pseudomonas wisconsinensis)の菌株、アスペルギルス(Aspergillus)、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)の菌株、バチルス(Bacillus)、特にバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ピュミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)およびバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)の菌株、ペニシリウム(Penicillium)、特にペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)、ペニシリウム・クルストサム(Penicillium crustosum)およびペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)の菌株、リゾプス(Rhizopus)、特にリゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾプス・ミクロスポルス(Rhizopus microsporus)およびリゾプス・ノドサス(Rhizopus nodosus)の菌株、リゾムコール(Rhizomucor)、特にリゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)の菌株、ムコール(Mucor)の菌株、ペシロマイセス(Paecilomyces)の菌株、リゾクトニア(Rhizoctonia)、特にリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の菌株、アブシディア(Absidia)、特にアブシディア・ブラケスレーナ(Absidia blakesleena)およびアブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)の菌株、アクロモバクター(Achromobacter)、特にアクロモバクター・イオファグス(Achromobacter iophagus)の菌株、エロモナス(Aeromonas)の菌株、アルテルナリア(Alternaria)、特にアルテルナリア・ブラシッシオラ(Alternaria brassiciola)の菌株、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、特にアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の菌株、ボーベリア(Beauveria)の菌株、クロモバクター(Chromobacter)、特にクロモバクター・ビスコサム(Chromobacter viscosum)の菌株、コプリヌス(Coprinus)、特にコプリヌス・シネリウス(Coprinus cinerius)の菌株、フザリウム(Fusarium)、特にフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・ソラニ・ピシィ(Fusarium solani pisi)およびフザリウム・ロセウム・クルモルム(Fusarium roseum culmorum)の菌株、ゲオトリクム(Geotricum)、特にゲオトリクム・ペニシラタム(Geotricum penicillatum)の菌株、フミコラ(Humicola)、特にフミコラ・ブレビスポラ(Humicola brevispora)、フミコラ・ブレビス変種テルモイデ(Himicola brevis var.thermoidea)およびフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)の菌株、ハイホジーマ(Hyphozyma)の菌株、ラクトバチルス(Lactobacillus)、特にラクトバチルス・クルバタス(Lactobacillus curbatus)の菌株、メタリジウム(Metarhizium)の菌株、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、特にロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)の菌株、および/またはトリコデルマ(Trichoderma)、特にトリコデルマ・ハージアナム(Trichoderma harzianum)およびトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)の菌株から得ることができる。また、上述のヤロウィア属、キャンディダ属、ピキア属、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、および/またはトリコスポロン属の酵母から得たリパーゼを使用することもできる。
市販のリパーゼとしては、リパーゼMYおよびリパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼQLM(名糖産業株式会社);リパーゼA「アマノ(登録商標)」6、リパーゼM「アマノ(登録商標)」10、リパーゼG「アマノ(登録商標)50、リパーゼF−AP15、リパーゼAY「アマノ(登録商標)」30G、リパーゼR「アマノ(登録商標)」GおよびリパーゼT「アマノ(登録商標)」(アマノエンザイム株式会社);スミチーム(登録商標)NLS、スミチーム(登録商標)RLS(新日本化学工業株式会社);ならびにリリパーゼ(登録商標)A−10D、リリパーゼ(登録商標)AF−5(ナガセケムテックス株式会社);エンチロンAKG−2000、エンチロンLP、エンチロンLPG(洛東化成工業株式会社);Lipolase(登録商標)100T,Lipolase(登録商標)100L、Platase20000L、Lipex(登録商標)100T、Lipex(登録商標)100L(ノボザイムズ社製)等が挙げられる。
リパーゼの量は、リパーゼが油分と反応できれば特に制限されないが、排水に含まれる油分1gに対して、10〜2,000Uで用いることが好ましい。より好ましくは50〜1,500U、さらに好ましくは100〜1,000Uである。または、グリーストラップの容量に対して、好ましくは1,000〜100,000U/L、より好ましくは2,000〜80,000U/Lとなるような量であってもよい。なお、リパーゼの活性単位(U)は、37℃、pH7の条件で1分間に1μモルの脂肪酸を遊離する酵素量である。
pH調整剤としては、酸やアルカリが挙げられる。排水のpHが、油分分解菌の至適pHの範囲にない場合、酸やアルカリなどを添加して、至適なpHになるようpHを調整するのが好ましい。この際、酸やアルカリとしては、特に制限されないが、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが用いられる。pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。
グリーストラップは、油脂または脂肪酸含有排水を連続的に導入し、処理後の排水を連続的に排出する形態であってもよいし、油脂または脂肪酸含有排水を導入し、一括して処理した後に、処理後の排水を一括して排出する形態であってもよい。
また、本発明の方法において、油分分解菌が油分を分解する際の温度、すなわちグリーストラップ内の温度としては、用いられる油分分解菌により異なるため適宜選択することができる。また、油分分解菌が油分を分解する際のpH、すなわちグリーストラップ内のpHとしても、用いられる油分分解菌により異なるため適宜選択することができる。たとえば、一般的には、温度は、10〜60℃が好ましく、20〜50℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。pHは3〜10が好ましく、pH4〜9がより好ましく、pH5〜8がさらに好ましい。さらに、必要に応じて、排水基準を満たす範囲で、曝気等により排水にエアレーションを行ってもよいが、本発明に係る処理方法では、曝気などをしなくても効率的に排水中の油分を分解できるという点で優れている。
<排水処理用キット>
本発明の他の形態によれば、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材と、油分分解菌と、を含む、排水処理用キットが提供される。かかるキットは、排水基準を満たす範囲で、曝気などを行っても油分分解率を向上することができるが、本発明に係る処理キットでは、曝気などをしなくても効率的に排水中の油分を分解できるという点で優れたものとなる。本発明に係るキットにおいては、無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材、および油分分解菌、ならびに任意に含まれる成分(リパーゼ、pH調整剤など)は、同一の容器に収容されていても良いが、任意に別の容器に収容されても良い。本発明に係る排水処理用キットに含まれる無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材や油分分解菌については、上述の排水の処理方法における油分分解能向上材や油分分解菌についての記載と同様である。
本発明に係る排水処理用キットに含まれる油分分解菌は、保存中の油分分解菌の生存性の観点から、生菌製剤の形態であることが好ましい。本発明に係る排水処理用キットに含まれる生菌製剤は、上記排水の処理方法にて記載した内容と同様である。
また、本発明に係る排水処理用キットは、上述のリパーゼ、pH調整剤などを、本発明の目的効果を損なわない範囲において、任意の割合でさらに含んでも良い。
本発明に係るキットにおいて、油分分解能向上材、および油分分解菌、ならびに任意に含まれる成分(リパーゼ、pH調整剤など)を収容する容器は、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス製(例えば、褐色ガラス)、金属製、セラミック製、プラスチック製などのものが使用できる。本発明に係るキットは、キットに係るパーツの使用量やグリーストラップへの添加頻度等を記載した使用説明書を、任意にさらに含んでも良い。
本発明に係る排水処理用キットは、少なくとも油分分解能向上材および油分分解菌を同時にまたは別々に排水に添加して使用される。排水への添加量は、特に制限されるものではなく、排水中の油分の量や、排水の量に応じて適宜設定される。例えば、排水に添加する油分分解能向上材の量は、排水に含まれる油分1gに対して0.001〜5gであり、好ましくは0.01〜0.5gである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば0.001〜5%(w/v)であり、好ましくは0.01〜0.5%(w/v)である。排水に添加する菌量は、排水に含まれる油分1gに対して、例えば1×10〜1×1012CFUであり、好ましくは1×10〜1×1011CFUである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば1×10〜1×1012CFU/L、より好ましくは1×10〜1×1011CFU/Lである。
油分分解菌を生菌製剤の形態で用いる場合、排水に添加する生菌製剤の量は、特に制限されるものではなく、排水中の油分の量、排水の量、生菌製剤に含まれる油分分解菌の生菌数などに応じて適宜設定される。本発明に係る生菌製剤において、排水に添加する生菌製剤の量は、排水に含まれる油分1gに対して、例えば0.0001g〜300gであり、好ましくは0.001g〜30gである。または、グリーストラップ内の排水に対して、例えば0.001g〜300g/L、より好ましくは0.01〜30g/Lである。
本発明の排水処理用キットに含まれる油分分解能向上材は、例えば、1週〜12週に1回、好ましくは2週〜8週に1回の間隔でグリーストラップ(排水)に添加する。また、本発明の排水処理用キットに含まれる油分分解菌は、たとえば、1回/3時間、1回/16時間、1回/24時間、または2〜3日に1回の間隔でグリーストラップ(排水)に添加するのが好ましい。排水処理用キットに含まれる油分分解能向上材と油分分解菌とは、好ましい添加頻度が異なるため、別々の容器に収容されることが好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[試験用培地の調製]
以下の組成となるように、各成分を蒸留水に溶解し、塩酸を用いてpH5.0に調整して、試験用培地を調製した。
[油分の調製]
ナタネ油(和光純薬工業株式会社製)と大豆油(和光純薬工業株式会社製)とを1:1(w/w)の割合で混合して、油分を調製した。
[生菌製剤の調製]
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LM02−011株(平成26年3月6日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されており、その受託番号は、NITE P−01813である。)を下記の液体培地に接種して、ジャーファーメンターにて30℃で48時間(撹拌速度:300rpm)培養し、培養液を得た。
液体培地の作製方法:終濃度が0.18%(w/v)ポリペプトン、0.12%(w/v)肉エキス、0.07%(w/v)NaHCO、0.005%(w/v)NaCl、0.002%(w/v)KCl、0.002%(w/v)CaCl・2HO、0.003%(w/v))MgSO・7HOとなるように純水に溶解した。塩酸にてpH5に調整後、オートクレーブ滅菌したものを液体培地とした。
得られた培養液を10分間遠心分離(×10,000g)し、菌体を回収した。得られた菌体に対して酵母を乾燥菌体として11重量%、トレハロースを14重量%、スキムミルクを3重量%(乳タンパク質としては1重量%)、グリシンを3重量%、MgSO・7HOを1重量%、CaSO・2HOを1質量%となるように蒸留水に添加し、混合して噴霧液を調製した。なお、乳タンパク質としては、固形分中にタンパク質を35重量%、乳糖を52重量%の割合で含むスキムミルクを用いた。
流動層造粒機(FA−LAB−1、株式会社パウレック社)に300gの珪藻土(平均粒径75μm、嵩密度0.33g/ml、ラヂオライト(登録商標)♯3000、昭和化学工業株式会社)をセットした。珪藻土に対して、1077gの上記噴霧液を143g/分の速度で噴霧するとともに、40℃の温風を送風して内容物を流動させた状態で乾燥させた。噴霧後、引き続いて流動層造粒機内で40℃の温風を40分間送風して、造粒物を乾燥させた。これにより、生菌製剤を得た。生菌製剤の水分含量は5.5重量%であった。
(生菌製剤における生菌数の算出)
生菌製剤1gあたりの生菌数を以下の方法により算出した。実施例および比較例において、実施例および比較例を実施する前(48時間以内)に算出した生菌数を用いた。なお、生菌製剤の保存は、遮光ガラスバイアル瓶内に封入し、23℃で行った。
生菌製剤を、100倍量の蒸留水中で25℃で1分間撹拌して段階希釈し、得られた希釈液を寒天培地(組成:上記液体培地に、終濃度20重量%となるように寒天を添加したもの)の表面に塗布した。菌を30℃で48時間培養した後、寒天培地上に形成されたコロニー数を計測した。コロニー数から、製剤1g当たりの生菌数を算出した。
[比較例1]
以下の方法により、油分分解率を求めた。
(1)上記調製した試験用培地200mLを500mLトールビーカーに分注した。
(2)上記調製した油分1gを(1)のトールビーカーに添加した。
(3)(2)のトールビーカーを121℃、20分オートクレーブ滅菌し、試験用培地および油分が室温になるまで放冷した。
(4)(3)のトールビーカーに上記調製した生菌製剤を40mg(油分分解菌:1.2×10CFU)添加した。
(5)生菌製剤を添加した後、(4)のトールビーカーを30℃の恒温槽内で16時間、静置条件で放置した。
(6)(5)のトールビーカーから水層部分を100mL分取し、別途準備した新たな試験用培地(121℃、20分オートクレーブ滅菌したもの)をトールビーカーに100mL追加した。分取した水層部分は、破棄した。
(7)試験用培地を追加した後、(6)のトールビーカーを30℃の恒温槽内で8時間、静置条件で放置した。
(8)再度(6)を行った後、同じトールビーカーに油分1gと上記調製した生菌製剤40mg(油分分解菌:1.2×10CFU)とを追加した。
(9)油分と生菌製剤とを追加した後、(8)のトールビーカーを30℃の恒温槽内で16時間、静置条件で放置した。
(10)放置後、JIS K0102:2013(工業排水試験方法)に準じて、ノルマルヘキサン抽出物を調製した。ノルマルヘキサン抽出物を油分の残存量とし、添加した油分の合計量(2g)と油分の残存量(ノルマルヘキサン抽出物の量(g))とから、下記数式1により油分分解率を求めた。
[比較例2]
比較例1の(4)および(8)において、トールビーカーにシラスバルーン(ウインライトWB601、株式会社アクシーズケミカル製、平均粒径180μm)を10mgずつさらに添加・追加した以外は、比較例1と同様にして、油分分解率を求めた。
[実施例1]
比較例1の(4)および(8)において、トールビーカーにサンスフェア(登録商標) H−51−ET(AGCエスアイテック社製、平均粒径5μm;シリカゲルがトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンで被覆されたもの)を10mgずつさらに添加・追加した以外は、比較例1と同様にして、油分分解率を求めた。
[実施例2]
サンスフェア(登録商標) H−51−ETに代えてサンスフェア(登録商標) H−121−ET(AGCエスアイテック社製、平均粒径12μm;シリカゲルがトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンで被覆されたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、油分分解率を求めた。
[比較例3]
比較例1の(4)および(8)において、生菌製剤に代えてサンスフェア(登録商標) H−121−ETを10mgずつ添加・追加した以外は、比較例1と同様にして、油分分解率を求めた。
実施例1〜2および比較例1〜3の油分分解率を下記表2に示す。
表2に示す結果から明らかなように、本発明に係る排水の処理方法(実施例1および2)により、比較例1および2に対して、油分分解菌による油分分解率が優れていることが分かる。また、油分分解能向上材のみを用いた比較例3では、油分が分解されていないことからも、油分分解能向上材と油分分解菌との相乗効果により、油分分解率を向上させることができることが分かる。
1 排水処理槽、
2a、2b、2c 仕切り板、
3 残渣受け、
4 トラップ管、
5 水面、
6 油分、
10 グリーストラップ。

Claims (8)

  1. 無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材と、油分分解菌と、を排水に接触させることを有する、排水の処理方法。
  2. 前記油分分解能向上材の平均粒径が、0.1〜100μmである、請求項1に記載の排水の処理方法。
  3. 前記無機粉体が、シリカゲルである、請求項1または2に記載の排水の処理方法。
  4. 前記シリコーン化合物が、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルおよびカルボキシル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  5. 前記油分分解菌が、ヤロウィア属、キャンディダ属、ピキア属、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、およびトリコスポロン属からなる群から選択される酵母である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  6. 前記油分分解菌が、生菌製剤の形態であって、
    前記生菌製剤が、多孔質担体上に形成された油分分解菌含有層を含み、
    前記油分分解菌含有層が、乾燥菌体として1重量部の前記油分分解菌に対して、0.8重量部以上1.5重量部未満のトレハロース、0.01〜5重量部の乳タンパク質、0.03〜10重量部のアミノ酸、および0.02〜10重量部の金属塩を含む、請求項5に記載の排水の処理方法。
  7. 前記油分分解菌が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である、請求項5または6に記載の排水の処理方法。
  8. 無機粉体がシリコーン化合物で被覆されてなる油分分解能向上材と、油分分解菌と、を含む、排水処理用キット。
JP2016070049A 2016-03-31 2016-03-31 排水の処理方法、および排水処理用キット Active JP6674817B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016070049A JP6674817B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 排水の処理方法、および排水処理用キット

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016070049A JP6674817B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 排水の処理方法、および排水処理用キット

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017177031A true JP2017177031A (ja) 2017-10-05
JP6674817B2 JP6674817B2 (ja) 2020-04-01

Family

ID=60007995

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016070049A Active JP6674817B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 排水の処理方法、および排水処理用キット

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6674817B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017176067A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 シーシーアイ株式会社 生菌製剤の製造方法、ならびに生菌製剤およびこれを用いた排水処理方法
WO2019098255A1 (ja) * 2017-11-14 2019-05-23 国立大学法人名古屋大学 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JP2019166455A (ja) * 2018-03-22 2019-10-03 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社 乾燥製剤及び廃液処理方法
JP2019195778A (ja) * 2018-05-10 2019-11-14 シーシーアイホールディングス株式会社 排水処理方法
WO2019220831A1 (ja) * 2018-05-17 2019-11-21 シーシーアイホールディングス株式会社 油脂の新規分解微生物
JP2020168604A (ja) * 2019-04-03 2020-10-15 シーシーアイホールディングス株式会社 油分解剤および油の分解方法
CN112576229A (zh) * 2020-12-11 2021-03-30 大庆油田有限责任公司 一种利用微生物作用地下原油产甲烷方法
CN113371848A (zh) * 2021-06-29 2021-09-10 内蒙古阜丰生物科技有限公司 氨基酸废水的综合处理工艺

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10313853A (ja) * 1997-03-19 1998-12-02 Yuji Mae 微生物含有半流動性組成物、微生物剤並びに使用方法
US6059963A (en) * 1995-12-19 2000-05-09 Biorem Ag Fat and oil removal installation
JP2006131875A (ja) * 2004-10-08 2006-05-25 Asahi Glass Si-Tech Co Ltd 撥水性無機粉体又は撥水性樹脂ビーズの製造方法
WO2007077673A1 (ja) * 2005-12-28 2007-07-12 Agc Si-Teck Co., Ltd. 撥水性無機粉体及びその製造方法
WO2008075678A1 (ja) * 2006-12-18 2008-06-26 Biogenkoji Research Institute 酵母を用いた油脂含有廃水の処理方法及び新規酵母
JP2015192943A (ja) * 2014-03-31 2015-11-05 シーシーアイ株式会社 排水の処理方法、および排水処理用キット
JP2015192611A (ja) * 2014-03-31 2015-11-05 シーシーアイ株式会社 油脂および脂肪酸の新規分解微生物

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6059963A (en) * 1995-12-19 2000-05-09 Biorem Ag Fat and oil removal installation
JPH10313853A (ja) * 1997-03-19 1998-12-02 Yuji Mae 微生物含有半流動性組成物、微生物剤並びに使用方法
JP2006131875A (ja) * 2004-10-08 2006-05-25 Asahi Glass Si-Tech Co Ltd 撥水性無機粉体又は撥水性樹脂ビーズの製造方法
WO2007077673A1 (ja) * 2005-12-28 2007-07-12 Agc Si-Teck Co., Ltd. 撥水性無機粉体及びその製造方法
WO2008075678A1 (ja) * 2006-12-18 2008-06-26 Biogenkoji Research Institute 酵母を用いた油脂含有廃水の処理方法及び新規酵母
JP2015192943A (ja) * 2014-03-31 2015-11-05 シーシーアイ株式会社 排水の処理方法、および排水処理用キット
JP2015192611A (ja) * 2014-03-31 2015-11-05 シーシーアイ株式会社 油脂および脂肪酸の新規分解微生物

Cited By (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017176067A (ja) * 2016-03-31 2017-10-05 シーシーアイ株式会社 生菌製剤の製造方法、ならびに生菌製剤およびこれを用いた排水処理方法
JP7128530B2 (ja) 2017-11-14 2022-08-31 国立大学法人東海国立大学機構 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JP2021100758A (ja) * 2017-11-14 2021-07-08 国立大学法人東海国立大学機構 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JP7319695B2 (ja) 2017-11-14 2023-08-02 国立大学法人東海国立大学機構 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
WO2019098255A1 (ja) * 2017-11-14 2019-05-23 国立大学法人名古屋大学 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JPWO2019098255A1 (ja) * 2017-11-14 2019-11-21 国立大学法人名古屋大学 油脂含有排水処理方法、システムおよび装置
JP2019166455A (ja) * 2018-03-22 2019-10-03 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社 乾燥製剤及び廃液処理方法
JP2019195778A (ja) * 2018-05-10 2019-11-14 シーシーアイホールディングス株式会社 排水処理方法
JP7230013B2 (ja) 2018-05-17 2023-02-28 シーシーアイホールディングス株式会社 油脂の新規分解微生物
US11897799B2 (en) 2018-05-17 2024-02-13 Cci Holdings Inc. Microorganism for degrading oils and fats
CN112262210A (zh) * 2018-05-17 2021-01-22 禧禧艾控股株式会社 油脂的新型分解微生物
WO2019220831A1 (ja) * 2018-05-17 2019-11-21 シーシーアイホールディングス株式会社 油脂の新規分解微生物
CN112262210B (zh) * 2018-05-17 2024-01-12 禧禧艾控股株式会社 油脂的分解微生物
JPWO2019220831A1 (ja) * 2018-05-17 2021-06-17 シーシーアイホールディングス株式会社 油脂の新規分解微生物
JP2020168604A (ja) * 2019-04-03 2020-10-15 シーシーアイホールディングス株式会社 油分解剤および油の分解方法
JP7264699B2 (ja) 2019-04-03 2023-04-25 シーシーアイホールディングス株式会社 油分解剤および油の分解方法
CN112576229A (zh) * 2020-12-11 2021-03-30 大庆油田有限责任公司 一种利用微生物作用地下原油产甲烷方法
CN113371848B (zh) * 2021-06-29 2022-09-16 内蒙古阜丰生物科技有限公司 氨基酸废水的综合处理工艺
CN113371848A (zh) * 2021-06-29 2021-09-10 内蒙古阜丰生物科技有限公司 氨基酸废水的综合处理工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP6674817B2 (ja) 2020-04-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6674817B2 (ja) 排水の処理方法、および排水処理用キット
Cappelletti et al. Biotechnology of Rhodococcus for the production of valuable compounds
Affandi et al. Degradation of oil and grease from high-strength industrial effluents using locally isolated aerobic biosurfactant-producing bacteria
JP5685783B2 (ja) 新規ヤロウィア属微生物、並びにそれを用いた油分解剤及び油分解除去方法
JP6099054B2 (ja) 油脂および脂肪酸の新規分解微生物
JP4566207B2 (ja) 油脂分解性微生物及びそれを用いた油脂含有廃水の処理方法
JP2011030737A (ja) 消臭剤
JP2017136033A (ja) 油分分解微生物
JP2013202512A (ja) 油脂または脂肪酸含有排水の処理方法
JP2017176067A (ja) 生菌製剤の製造方法、ならびに生菌製剤およびこれを用いた排水処理方法
JP2024052862A (ja) 脂肪酸含有油脂を分解する新規微生物
JP6343838B2 (ja) 排水の処理方法、および排水処理用キット
Karimi et al. Biodesulphurization of thiophene as a sulphur model compound in crude oils by supported on polyethylene
JP6920089B2 (ja) 生菌製剤の製造方法、ならびに生菌製剤およびこれを用いた排水処理方法
JP2017136032A (ja) 油分分解微生物
WO2019220831A1 (ja) 油脂の新規分解微生物
JP2013116067A (ja) 油脂分解酵母およびそれを用いた処理方法
JP7109305B2 (ja) 油脂の新規分解微生物
JP2002125659A (ja) 新規微生物及び排水の処理方法
JP7260369B2 (ja) 油脂の新規分解微生物
JP7264699B2 (ja) 油分解剤および油の分解方法
JP2019208460A (ja) 油脂の新規分解微生物
JP2018170996A (ja) 酵母培養用培地ならびにそれを用いた酵母の培養方法および増殖方法
JP2020202813A (ja) 酵母培養用培地
JP2022124353A (ja) 微生物、油分分解剤及び油分分解方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160401

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20180426

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190121

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20191120

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191126

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200212

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200309

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6674817

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250