<第一の実施の形態>
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、制御装置1は、第一制御ユニットU1と、第一制御ユニットU1と別に設けた第二制御ユニットU2とを備えて構成されており、本実施の形態では、鞍乗車両である二輪車のダンパFD,RDを制御する制御装置として使用されている。
図1、図2および図3に示すように、制御装置1は、この例では、二輪車の車体Bと前輪FWとの間に介装される前輪側ダンパFDと、車体Bと後輪RWとの間に介装される後輪側ダンパRDにおける圧側室R2の圧力を制御するようになっている。また、制御装置1は、各ダンパFD,RDの制御のため、情報として車体Bのピッチング角速度ωと、前輪側ダンパFDにおける圧側室R2の圧力Pfと、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDにおける圧側室R2の圧力Prを検知するためのセンサを備える。具体的には、ピッチング角速度ωを検知するレートセンサ2と、前輪側ダンパFDにおける圧側室R2の圧力Pfを検知する圧力センサ3と、後輪側ダンパRDにおける圧側室R2の圧力Prを検知する圧力センサ4と備えている。レートセンサ2がCAN(controller area network)シリアルバスシステムを利用したネットワークとしての車載ネットワークNを介して第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2に接続されている。また、圧力センサ3は、直接に第一制御ユニットU1に情報の入力が可能なように接続され、圧力センサ4は、直接に第二制御ユニットU2に情報の入力が可能なように接続されている。このように、ダンパFD,RDの制御に必要な情報が第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2で得られるようになっている。第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、CAN規格による通信(CAN通信)が可能となるように主信号線51によって接続されていて、互いに通信可能である。なお、レートセンサ2についても圧力センサ3,4と同様に直接に第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2に接続してもよい。
また、本実施の形態では、第一制御ユニットU1に車載ネットワークNを介して接続される記録部としての記録器53と、携帯端末55と通信が可能な無線通信器54とを備えている。無線通信器54は、記録器53から情報を外部の携帯端末を通じてインターネット通信網56にアクセスできるようになっている。なお、記録器53は、車載ネットワークNを通じて第二制御ユニットU2に対しても接続されている。そのため、記録器53は、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2と直接に相互通信できる。なお、ネットワークである車載ネットワークNは、CAN通信以外の通信規格を利用した通信網であってもよい。また、記録器53は、車載ネットワークNを通じずに直接に第一制御ユニットU1と第二制御ユニットU2の一方または両方に接続されて相互通信を行うようにしてもよい。
以下、各部材について詳細に説明すると、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDは、図3に示すように、たとえば、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されてシリンダ10内に液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、同じくシリンダ10内に移動自在に挿入されてピストン11に連結されるピストンロッド12と、内部に圧側室R2に連通されるリザーバRを備えるタンク13と、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰通路14と、伸側減衰通路14に並列されて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側通路15と、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰通路16と、圧側減衰通路16に並列されてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路17と、圧側減衰通路16および吸込通路17に並列されて圧側室R2とリザーバRとを連通するバイパス路18と、当該バイパス路18の途中に設けた圧側室R2の圧力を調節する圧力制御要素としての制御バルブVとを備えており、この例では、ピストンロッド12のシリンダ10へ突出する図2中下端を二輪車の前輪FW或いは後輪RWに連結し、シリンダ10の図2中上端を二輪車の車体Bに連結されている。なお、伸側室R1と圧側室R2には、液体が充填され、リザーバRはタンク13内に設けた弾性隔壁19によって区画される液室Lと気室Gとを備えている。弾性隔壁19の代わりにタンク13内に摺動自在に挿入されるフリーピストンで液室Lと気室Gとを区画するようにしてもよい。液体には、作動油のほか、水、水溶液等を利用できる。
伸側減衰通路14および圧側減衰通路16は、途中に減衰バルブを備えており、通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。圧側通路15および吸込通路17は、途中に逆止弁を備えており、通過する液体の流れを一方通行に規制している。
制御バルブVは、たとえば、ソレノイドでポペット弁における弁体を駆動する電磁弁等とされ、供給する電流量によって弁の開度を変更して流路面積を調整できるようになっており、これにより、バイパス路18を流れる液体へ与える抵抗を変更できる。なお、制御バルブVは、流路面積を調節するもの以外にも、開弁圧を調節するようになっていてもよい。また、制御バルブVは、可変絞りタイプのものでもよいし、開閉弁タイプのものも使用可能である。制御バルブVにおけるソレノイドは、弁体に連結される可動鉄心と、可動鉄心の外周側に配置されて電流供給されると可動鉄心を駆動するコイルとを備えて構成されている。そして、この実施の形態では、図4に示すように、一つのソレノイドに二重巻線を構成する二つのコイルCo1,Co2が設けられており、コイルCo1,Co2の一方が断線しても他方への電流供給により、制御バルブVの弁開度の調整ができるようになっている。また、各ダンパFD,RDの制御バルブVのコイルCo1,Co2にそれぞれ流れる電流量は、電流センサ5,5’,6,6’によって検出されて、電流センサ5,5’,6,6’にそれぞれ接続されている第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2へ入力される。電流センサ5(6)は、コイルCo1の電流を検出し、電流センサ5’(6’)は、コイルCo2の電流を検出する。なお、制御バルブVは、ソレノイドの代わりにステッピングモータと送り螺子機構を有して、弁体を移動する構成を採用してもよい。
この前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDが伸長作動する場合、圧縮される伸側室R1から伸側減衰通路14を介して拡大される圧側室R2へ液体が移動する。そして、伸側減衰通路14が液体の流れに与える抵抗によって伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じ、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDは、この差圧に応じて伸長作動を抑制する伸側減衰力を発揮する。なお、拡大される圧側室R2内には、リザーバRから吸込通路17を介して液体が供給され、シリンダ10内から退出するピストンロッド12の体積補償がなされる。したがって、この前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDは、伸長作動時には、減衰特性が変化しないパッシブなダンパとして機能する。
反対に、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDが収縮作動する場合、圧縮される圧側室R2から圧側通路15を介して拡大される伸側室R1へ液体が移動する。また、その際に、シリンダ10内にピストンロッド12が侵入するのでシリンダ10内で過剰となった液体が圧側減衰通路16およびバイパス路18を介して圧側室R2からリザーバRへ排出される。このように、ピストンロッド12のシリンダ10内へ侵入した体積相当の液体がシリンダ10からリザーバRへ排出され、ピストンロッド12のシリンダ10内への侵入体積の補償がなされる。そして、圧側室R2からリザーバRへ液体が移動する際に圧側減衰通路16および制御バルブVが通過する液体の流れに抵抗を与えるので、シリンダ10内の圧力が上昇して、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDは、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮する。
ここでバイパス路18の途中に設けた制御バルブVに供給する電流量の調節により流路面積を変更すると、圧側室R2内の圧力をコントロールできる。より詳細には、ピストンロッド12のシリンダ10内への侵入によって、シリンダ10から押し出された液体は、リザーバRへ圧側減衰通路16とバイパス路18を通過しようとする。ここで制御バルブVの開度を小さくすれば、液体がリザーバRへ移動し難くなるので圧側室R2内の圧力は大きくなり、制御バルブVの開度を大きくすれば液体がリザーバRへ移動し易くなるので圧側室R2内の圧力は小さくなる。前輪側ダンパFD(後輪側ダンパRD)は、圧側室R2内の圧力をピストン11で受けて、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮するので、圧側室R2の圧力を調節すると、圧側減衰力を制御できる。なお、前輪側ダンパFD(後輪側ダンパRD)の圧側室R2の圧力は、収縮速度が同じであれば、任意の収縮速度において制御バルブVにおける流路面積を最小にすると最も高くなる。
また、液体に電気粘性流体や磁気粘性流体を用い、バイパス路18にバルブの代わりに通過する流体に与える電圧或いは磁界を調節可能な装置を組み込んで、バイパス路18を流れる流体に与える抵抗を変化させて圧側室R2内の圧力を制御してもよい。
また、圧力センサ3は、前輪側ダンパFDの圧側室R2内の圧力Pfを検知可能な位置に取付ければよいが、この場合、圧側室R2とリザーバRを連通する圧側減衰通路16の上流やバイパス路18の制御バルブVよりも上流に取付けてある。圧力センサ3は、情報として前輪側ダンパFDにおける圧側室R2の圧力Pfを検知し、直接、第一制御ユニットU1へ当該情報を出力するようになっている。さらに、圧力センサ4は、後輪側ダンパRDの圧側室R2内の圧力Prを検知可能な位置に取付ければよいが、この場合、圧側室R2とリザーバRを連通する圧側減衰通路16の上流やバイパス路18の制御バルブVよりも上流に取付けてある。圧力センサ4は、情報として後輪側ダンパRDにおける圧側室R2の圧力Prを検知し、直接、第二制御ユニットU2へ当該情報を出力するようになっている。
上記のように前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDを構成すると、一般的なダンパへバイパス路18と制御バルブVの追加で圧側室R2の圧力の制御を行える。また、圧力センサ3,4の設置が容易となるとともに、シリンダ10側を車体B側へ設置すると、圧力センサ3,4および制御バルブVが車体B側へ配置され、高周波で大振幅の振動が入力される車輪側へこれらを配置せずに済む。そのため、制御装置1の信頼性が高くなるともに、信号の取り出しや電流供給に使用される信号線やハーネスの取り回しも容易となり劣化も抑制される。
つづいて、レートセンサ2は、たとえば、レートジャイロを利用したセンサであり、車体Bの横方向軸周りの角速度であるピッチング角速度ωを検知可能できるようになっている。レートセンサ2は、多軸レートセンサとされてもよく、ピッチング角速度ωの他、車体Bの前後方向軸周りのロール角速度と車体Bの上下方向軸周りのヨー角速度の一方または両方を検知するものであってもよい。レートセンサ2は、情報として検知したピッチング角速度ωを車載ネットワークNを通じて第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2へ出力するようになっている。なお、レートセンサ2は、車体Bのピッチング回転中心およびその付近、或いは、車体Bの重心付近に設けられると、車体Bのピッチング角速度ωを精度よく検知できるが、車体Bの重心の付近以外に設置されてもよい。
また、この制御装置1では、車載ネットワークNを通じて警報装置Kへ接続されている。警報装置Kは、二輪車の運転者へ異常を知らせるために、警告ランプと警報音を発生するスピーカを備えている。そして、警報装置Kは、第一制御ユニットU1或いは第二制御ユニットU2からの警報信号を受け取ると、二輪車の搭乗者へ走行停止を促すために、警告ランプを点灯し、警報音をスピーカから出力する。警報装置Kは、警告ランプとスピーカのいずれか一方のみを備えるものであってもよい。
第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、図1および図4に示すように、それぞれ、主コントローラM1,M2と、主コントローラM1,M2よりも処理速度が低い副コントローラS1,S2とを備えて構成されている。主コントローラM1,M2は、それぞれ、ハイエンドのマイクロコンピュータであり、副コントローラS1,S2は、主コントローラM1,M2より低価格帯のミッドレンジのマイクロコンピュータとされている。第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、共に、図示しない車載バッテリーからの電力供給を受けて作動するようになっている。車載バッテリーからの電力供給は、一系統ではなく複数系統で行われると、一系統が機能しなくなっても、他の系統からの電力供給を受けられるので、堅牢なシステムを構築できる。また、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、共に、予備バッテリーSBを備えている。よって、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、車載バッテリーからの電力供給が途絶えても、予備バッテリーSBから電力供給を受けて、制御対象であるダンパFD,RDの制御を継続できるようになっている。
また、主コントローラM1,M2は、ともに、車載ネットワークNおよび制御ユニットU1,U2同士でCAN通信が可能なように、CANインタフェース21,22を備えている。さらに、主コントローラM1,M2は、制御指令を求めるが、この制御指令通りに制御バルブVのソレノイドを駆動するためのPWM指令を出力するための出力ポート23と、圧力センサ3(4)および電流センサ5,5’(6,6’)から出力されるアナログの信号をデジタル信号に変換してこれらセンサ群からの情報を受け入れるAD変換部24を備えている。
また、副コントローラS1,S2は、ともに、車載ネットワークNおよび制御ユニットU1,U2同士でCAN通信が可能なように、CANインタフェース31,32を備えている。さらに、副コントローラS1,S2は、制御指令通りに制御バルブVのソレノイドを駆動するためのPWM指令を出力するための出力ポート33と、圧力センサ3(4)および電流センサ5,5’(6,6’)から出力されるアナログの信号をデジタル信号に変換してこれらセンサ群からの情報を受け入れるAD変換部34を備えている。
さらに、各制御ユニットU1,U2は、主コントローラM1,M2のCANインタフェース21と副コントローラS1,S2のCANインタフェース31の双方に内部信号線41を介して接続されるコネクタ42,43と、CANインタフェース22およびCANインタフェース32の双方に内部信号線44を介して接続されるコネクタ45と、出力ポート23および出力ポート33の双方に内部信号線46,47を介して接続され、また、AD変換部24,34の双方に内部信号線52を介して接続されるコネクタ48と、内部信号線46,47の途中に設けられてPWM指令の入力により制御バルブVのソレノイドを駆動する駆動電流を供給する駆動回路49,50と、内部信号線52の途中に設けられてコネクタ48側から入力される信号を増幅してAD変換部24,34の双方に出力する増幅回路53とを備えている。一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2における前述の構成要素は、それぞれ、単一の基板CB上に設置されており、図示しない筐体に収められている。なお、レートセンサ2は、第一制御ユニットU1の基板CB或いは第二制御ユニットU2の基板CBに設置されてもよい。
内部信号線41は、一端がコネクタ42に接続されるとともに他端がコネクタ43に接続されるコネクタ接続線41aと、一端が主コントローラM1(M2)のCANインタフェース21に接続されるともに他端が副コントローラS1(S2)のCANインタフェース31に接続されるコントローラ接続線41bと、コネクタ接続線41aの中間とコントローラ接続線41bの中間を接続する接続線41cと、コネクタ接続線41aの接続線41cの接続点の両側に設けたリレー41d,41eとを備えている。よって、主コントローラM1と副コントローラS1は、第一制御ユニットU1内でコントローラ接続線41bを介して互いに通信ができ、主コントローラM2と副コントローラS2は、第二制御ユニットU2内でコントローラ接続線41bを介して互いに通信ができる。なお、リレー41dは、電流供給がないと閉成してコネクタ42と主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)とを接続し、電力供給されると開成してコネクタ42から主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)を遮断する。また、リレー41eは、電流供給がないと開成してコネクタ43と主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)を遮断し、電力供給されると閉成してコネクタ43と主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)を接続する。リレー41d,41eをON・OFFする図外の制御線は主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)の両方に対してワイヤードOR接続されており、リレー41d,41eへの指令は、主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)のいずれからでも可能とされている。
第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2のコネクタ42,43は、互いに主信号線51で接続されており、各制御ユニットU1,U2内だけではなく、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2が相互に通信できるようになっている。本例では、主信号線51は、二つのケーブル51a,51bを備えている。また、主信号線を構成する各ケーブル51a,51bは、単位時間にやり取りできる情報量を多くするため、CAN通信を行うための通信線をn重化(nは、2以上の整数)して構成されている。主信号線51におけるケーブル51a,51bにおける通信線のn重化に応じ、内部信号線41も同様にn重化された通信線で構成される。各ケーブル51a,51bは、一纏めではなく、互いに離間するように配置されると、一度に断線する危険を回避できる。なお、各ケーブル51a,51bにおける通信線のn重化は、任意であり、単に一つの通信線で構成されてもよい。
そして、内部信号線41におけるリレー41d,41eのいずれか一方を閉成すれば、主信号線51のケーブル51a,51bのうちいずれか一方を有効とでき、ケーブル51a,51bのいずれか一つが断線しても他方を有効とすれば、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2間の通信を確保できる。さらに、前述のように、リレー41dとリレー41eは、電力供給による開閉動作が逆となっているため、リレー41d,41eへの電力供給が途絶えても、必ず第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2間の通信を確保できるようになっている。
内部信号線44は、一端が主コントローラM1(M2)のCANインタフェース22に接続されるともに他端が副コントローラS1(S2)のCANインタフェース32に接続されるコントローラ接続線44aと、コントローラ接続線44aの中間をコネクタ45に接続するコネクタ接続線44bとを備えている。よって、主コントローラM1と副コントローラS1は、第一制御ユニットU1内でコントローラ接続線44aを介して互いに通信ができ、主コントローラM2と副コントローラS2は、第二制御ユニットU2内でコントローラ接続線44aを介して互いに通信ができる。
さらに、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2のコネクタ45は、信号線58,59を介して、互いに、車載ネットワークNに接続されている。よって、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2は、車載ネットワークNまたは主信号線51を通じて、レートセンサ2の他、車載ネットワークN上の様々な情報を入手でき、また、他の制御ユニットU1(U2)に接続された圧力センサ3,4および電流センサ5,5’,6,6’で検知した情報の入手することもできるようになっている。
内部信号線46は、主コントローラM1(M2)の出力ポート23をコネクタ48に接続し、内部信号線47は、副コントローラS1(S2)の出力ポート33をコネクタ48に接続している。主コントローラM1(M2)は、レートセンサ2、圧力センサ3,4から入力される各情報を処理して、ダンパFD,RDを制御するための制御指令を生成するようになっている。また、主コントローラM1(M2)は、制御指令通りにダンパFD,RDを制御するために必要な電流を制御バルブVのソレノイドへ駆動回路49を介して供給できるよう、駆動回路49へ与えるPWM指令を出力ポート23から出力するようになっている。つまり、主コントローラM1(M2)は、ダンパFD,RDの圧側減衰力を制御するため目標圧力を求め、前記目標圧力と圧力センサ3,4で検知した圧力値の差から前記ソレノイドを駆動する目標電流を求め、さらに、目標電流と電流センサ5(5’),6(6’)で検知した電流量との差からPWM指令を求める。そして、主コントローラM1(M2)は、出力ポート23からPWM指令を駆動回路49へ出力してダンパFD,RDの制御を実行するようになっている。また、副コントローラS1(S2)は、主コントローラM1(M2)が不調である場合、主コントローラM1(M2)の代わりに、制御指令であるPWM指令を求める。そして、この場合、副コントローラS1(S2)は、主コントローラM1(M2)の代わりに、制御バルブVを駆動するためのPWM指令を出力ポート33から駆動回路50へ出力しダンパFD,RDの制御を実行する。
駆動回路49,50は、PWM駆動回路とされており、PWM指令が入力されると、PWM指令が指定するデューティ比通りに制御バルブVのソレノイドにおけるコイルCo1,Co2へ駆動電流を供給するようになっている。コイルCo1は、駆動回路49に、コイルCo2は、駆動回路50にそれぞれ接続されている。よって、駆動回路49と駆動回路50のうち一方を選択して電流供給を行えば、二つのコイルCo1,Co2の一方に電流供給できる。
内部信号線52は、途中から分岐してコネクタ48を主コントローラM11(M12)のAD変換部24と副コントローラS11(S12)のAD変換部34に接続している。この内部信号線52の途中には、オペアンプで構成した非反転増幅回路といった増幅回路53を備えている。また、第一(第二)制御ユニットU11(U12)におけるコネクタ48は、圧力センサ3(4)に接続されている。また、電流センサ5,5’(6,6’)は、シャント抵抗で構成されており、本例では基板CB上に駆動回路49,50とともに実装されている。そして、圧力センサ3(4)および電流センサ5,5’(6,6’)からの信号が内部信号線52を介して増幅回路53に入力され、これらセンサからの信号が増幅回路53により増幅されて主コントローラM11および副コントローラS11に入力されるようになっている。
なお、前述したところでは、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2がCAN通信を行うようになっているが、車載ネットワークNを含めFlexRay規格による通信を行ってもよい。
各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、本例では、以下の処理を行って、各ダンパFD,RDの圧側減衰力を制御するための制御指令を生成する。まず、各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、レートセンサ2で検知したピッチング角速度ωから車体Bのピッチングを抑制する目標トルクτを求める。さらに、各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、前輪側ダンパFDと後輪側ダンパRDのうち、目標トルクτの符合から車体Bのピッチングを抑制する方向に圧側減衰力を発生可能なダンパを選択する。そして、各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、目標トルクτに変換係数を乗じて選択されたダンパの圧側室R2の目標圧力Pf*,Pr*を求める。続いて、各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、圧力センサ3或いは圧力センサ4で検出される選択したダンパの圧側室R2の圧力と目標圧力との偏差を演算する。そして、各主コントローラM1,M2および各副コントローラS1,S2は、前述の偏差から選択したダンパの制御バルブVのソレノイドを駆動するための制御指令を生成する。本例では、具体的には、各コントローラM1,M2,S1,S2は、レートセンサ2が検出するピッチング角速度ωに基づいて、車体のピッチングを抑制するために必要な各ダンパFD,RDの圧側室R2の目標圧力Pf*或いは目標圧力Pr*を求める。そして、各コントローラM1,M2,S1,S2は、目標圧力Pf*,Pr*と圧力センサ3,4で検出する圧力Pf,Prとの制御偏差に基づいて制御バルブVのコイルCo1(Co2)へ与えるべき目標電流if*,ir*を求める。さらに、各コントローラM1,M2,S1,S2は、電流センサ5,6が検出する各ダンパFD,RDの制御バルブVにおける電流量if,irをフィードバックして、電流量if,irと目標電流if*,ir*との制御偏差に基づいてPWM指令If,Irを求める。そして、本例では、このPWM指令If,Irを制御指令としている。PWM指令If,Irは、駆動回路49,50にて増幅されて、コイルCo1,Co2へ出力される。
主コントローラM1,M2は、制御バルブVを所定の制御周期で制御するために、この制御周期毎に制御指令を生成する。副コントローラS1,S2は、主コントローラM1,M2よりも処理速度が低いため、主コントローラM1,M2が制御指令を複数回演算する間に1回の割合で制御指令を演算する。副コントローラS1,S2が1回演算する間に主コントローラM1,M2が何回演算するかは、主コントローラM1,M2と副コントローラS1,S2の処理速度に応じて設定される。たとえば、主コントローラM1,M2が副コントローラS1,S2の10倍の速度で演算処理を行えるのであれば、主コントローラM1,M2が10回制御指令を演算するのに対して副コントローラS1,S2が1回制御指令を演算するように設定される等とされる。
このように、副コントローラS1,S2が制御指令の演算処理を終了するまでに、主コントローラM1,M2は複数回の制御指令の演算処理を行う。副コントローラS1,S2が演算処理して求めた演算結果である制御指令と主コントローラM1,M2が演算処理して求めた演算結果である制御指令が異なっている場合、いずれかのコントローラM1,M2,S1,S2が異常である可能性がある。
そこで、制御装置1は、副コントローラS1,S2の演算処理にて制御指令が得られるたびに、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2がそれぞれ求めた制御指令を比較して、各コントローラM1,M2,S1,S2に異常がないか診断する。
まず、制御指令の演算処理に先立って、制御指令の演算処理よりも演算負荷が軽い模擬演算処理を行って、処理結果を比較し、コントローラM1,M2,S1,S2は、多数決により自身が演算能力不調か否かを診断する。この模擬演算処理の結果の比較は、全てのコントローラM1,M2,S1,S2において行われる。具体的には、模擬演算処理が終了し演算結果が得られると、各コントローラM1,M2,S1,S2は、互いに通信して全ての演算結果を入手して、比較する。そして、各コントローラM1,M2,S1,S2は、演算結果の値を比較して多数決した結果、自身が他のコントローラが出力する演算結果のうち多数派の結果と異なる演算結果を出力する場合、自身を演算能力不調状態であると診断する。模擬演算処理は、たとえば、整数演算等の演算処理とされ、次に続く制御指令の演算処理を遅延させない程度の演算処理とされる。模擬演算処理は制御指令の演算に比較すると簡単な演算処理であり、模擬演算処理の結果の多数決で少数派の結果を出力するコントローラは、深刻な異常状態である可能性があるため、制御指令演算およびダンパFD,RDの制御を行うのに好ましくない状態にある。よって、各コントローラM1,M2,S1,S2のうち、演算能力不調で有ると自認したコントローラは、制御指令の演算処理を行わず、ダンパFD,RDの制御を実行しないよう出力ポート23,33からのPWM出力を0とする。たとえば、第一制御ユニットU1における主コントローラM1に異常がある場合、第一制御ユニットU1内で主コントローラM1と対となる副コントローラS1が主コントローラM1の代わりに第一制御ユニットU1の制御対象の前輪側ダンパFDを制御する。各コントローラM1,M2,S1,S2は、この処理により演算処理に不調がない場合、続く、制御指令の演算処理に移り、さらに、制御指令の比較によって、これらコントローラM1,M2,S1,S2の異常を診断するようになっている。なお、この模擬演算処理による演算能力不調の有無の判断は、主コントローラM1,M2の制御周期毎におこなれ、前回に演算能力不調で有ると診断されたコントローラであっても次回の模擬演算処理で演算能力不調が認められない場合、ダンパ制御に復帰する。なお、全ての主コントローラM1,M2に演算能力不調が認められる場合、演算能力不調となる前に採用された制御指令に基づいて副コントローラS1,S2が各ダンパFD,RDを制御する。また、模擬演算処理の演算結果の比較による異常診断にあっては、コントローラM1,M2,S1,S2は、多数決により自身の演算能力不調の認識だけでなく、他のコントローラが演算能力不調であるか否かについても診断してもよい。
つづいて、全コントローラM1,M2,S1,S2による模擬演算処理により演算能力不調がないと認められたコントローラは、制御指令の演算処理を行って制御指令の比較し、演算処理に参加しているコントローラの異常診断を行う。副コントローラS1,S2が一つの制御指令の演算処理を終了するまでに、主コントローラM1,M2は、複数回制御指令の演算処理を終了しているので、制御指令の比較は、各コントローラM1,M2,S1,S2が同じ情報から求めた制御指令を用いる。主コントローラM1,M2と副コントローラS1,S2が同じ情報を基にして制御指令の演算処理を開始すると、副コントローラS1,S2が制御指令の演算処理を終了するまでの間に、主コントローラM1,M2が複数回制御指令を演算処理する。そのため、主コントローラM1,M2が副コントローラS1,S2と同じ情報に基づいて演算処理して得られた制御指令を主コントローラM1,M2内に設けられるか或いは外部に設けた記憶装置に格納しておく。そして、副コントローラS1,S2が主コントローラM1,M2と同じ情報を基にして演算処理して得られた制御指令と前述の記憶装置に格納された制御指令とを比較する。このようにすると、主コントローラM1,M2と副コントローラS1,S2とが同じ情報から求めた制御指令を比較できる。たとえば、主コントローラM1,M2の制御周期が1ミリ秒で、副コントローラS1,S2が10ミリ秒に一回制御指令を演算する場合、主コントローラM1,M2が求めた制御指令が10ミリ秒程度保持され、10ミリ秒毎に制御指令の比較が行われる。
この制御指令の比較は、全てのコントローラM1,M2,S1,S2において行われる。具体的には、比較対象の制御指令の演算が終了すると、各コントローラM1,M2,S1,S2は、自身が演算した制御指令を他のコントローラM1,M2,S1,S2へ内部信号線41および主信号線51を介して送信する。各コントローラM1,M2,S1,S2は、自身が演算処理した制御指令に他のコントローラで演算された三つの制御指令を加えて四つの制御指令を比較する。そして、各コントローラM1,M2,S1,S2は、全ての制御指令が一致しないと、多数決により、自身も含めて他の制御指令と異なる制御指令を出力したコントローラを異常と診断する。なお、模擬演算処理の結果比較によって、制御指令に参加しないコントローラがある場合、正常と認められるコントローラが求めた制御指令のみで多数決を行えばよい。
具体的には、全ての制御指令が一致していれば、各コントローラM1,M2,S1,S2は、全てのコントローラM1,M2,S1,S2が正常であると診断する。他方、各コントローラM1,M2,S1,S2は、三つの一致した制御指令に対して一つの値の異なる制御指令がある場合、異なる制御指令を出力したコントローラを異常と診断する。また、各コントローラM1,M2,S1,S2は、二つの一致した制御指令とこの制御指令とはそれぞれ値の異なる二つの制御指令がある場合、二つの一致した制御指令を出力したコントローラを正常とし、それ以外のコントローラを異常と診断する。さらに、四つのコントローラM1,M2,S1,S2で異常診断を行うため、二つの一致した制御指令とこの制御指令とは異なる値で一致する二つの制御指令がある場合には、多数決によりどのコントローラが異常であるかは判明しないが異常があると診断される。また、四つのコントローラM1,M2,S1,S2でそれぞれ制御指令が異なる場合、多数決によりどのコントローラが異常であるかは判明しないが異常があると診断される。なお、制御指令の比較に当たり各制御指令の値の完全一致で制御指令が一致するとの判断を行うほか、制御指令同士の偏差、或いは全制御指令の平均値と制御指令の偏差が予め許容される値(閾値)を超えると制御指令が一致しないと判断するようにしてもよい。
制御指令の比較の結果、全ての制御指令が一致し、全てのコントローラM1,M2,S1,S2が正常であると診断されるケースでは、主コントローラM1,M2は、出力ポート23から制御指令であるPWM指令を出力する。副コントローラS1,S2は、主コントローラM1,M2が正常であるので、出力ポート33からPWM指令を出力せず、出力電流を0とする。このように、全てのコントローラM1,M2,S1,S2が正常であるため、主コントローラM1,M2が今回の制御周期で求めた制御指令のいずれかを選択して採用する。副コントローラS1,S2が1回制御指令を演算する間に、主コントローラM1,M2は複数回制御指令を演算しており、比較対象の制御指令は、主コントローラM1,M2が過去に求めたものである。これに対して、各ダンパFD,RDの制御で採用すべき制御指令は、主コントローラM1,M2が求める最新の制御指令である必要があり、各ダンパFD,RDの制御に採用すべき制御指令は、主コントローラM1,M2が今回の制御周期で求めた制御指令となる。よって、前述のように、主コントローラM1,M2が今回の制御周期で求めた制御指令のいずれかが採用される。そして、採用された制御指令に基づいて主コントローラM1,M2がPWM指令を出力し、駆動回路49が駆動電流を制御バルブVのソレノイドへ供給して、各ダンパFD,RDの圧側減衰力を制御する。全てのコントローラM1,M2,S1,S2が正常であると診断される場合、副コントローラS1,S2は、駆動回路50へPWM指令を出力せず、各ダンパFD,RDの制御には関与しない。制御指令の比較に当たり、制御指令の完全一致のみを一致と看做す場合、各ダンパFD,RDの制御に当たって選択される制御指令は、任意の主コントローラM1,M2が求めた制御指令を選択して用いればよいが制御指令の選択に当たり、予め、主コントローラM1,M2のうちいずれか一方が出力する制御指令を選択するか決めておいてもよいし、都度、任意に選択してもよい。また、制御指令の比較に当たり、制御指令同士の偏差、或いは全制御指令の平均値と制御指令の偏差が予め許容される値(閾値)以内であれば制御指令の一致と判断するような場合は、主コントローラM1,M2の二つの制御指令の平均値等を各ダンパFD,RDの制御に当たり使用される制御指令とすればよいが、主コントローラM1,M2のうち一方を優先すると決めておいてもよい。
制御指令の比較の結果、四つの制御指令のうち一つの制御指令が異なり、二つの主コントローラM1,M2がともに一致する制御指令を出力しているケースについて説明する。この場合、主コントローラM1,M2はともに正常であり、副コントローラS1,S2のうち異なる値の制御指令を出力するコントローラは異常であると診断される。そして、副コントローラS1,S2は、主コントローラM1,M2が正常であるので、ダンパFD,RDの制御については主コントローラM1,M2に任せればよいので、出力ポート33から制御指令に基づくPWM指令を出力せず、出力電流を0とする。主コントローラM1,M2が正常であるので、主コントローラM1,M2は、次回の制御指令の比較までは、主コントローラM1,M2が求めた最新の制御指令のいずれかを採用してPWM指令を生成する。そして、主コントローラM1,M2は、生成したPWM指令を駆動回路49へ出力し、駆動回路49が駆動電流を制御バルブVのコイルCo1へ供給して、各ダンパFD,RDの圧側減衰力が制御される。副コントローラS1,S2は、いずれも、正常であっても異常と認められても、共に駆動回路50へPWM指令を出力せず、各ダンパFD,RDの制御には関与しない。なお、副コントローラS1,S2のうち、異常と診断されたコントローラは、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、制御指令の演算と制御指令の比較に参加する。
四つの制御指令のうち一つの制御指令が異なり、二つの主コントローラM1,M2のうち一方と二つの副コントローラS1,S2が出力する制御指令が一致し、二つの主コントローラM1,M2のうち他方の制御指令のみが異なるケースについて説明する。この場合、主コントローラM1,M2のうち異なる制御指令を出力している他方が制御指令の演算に失敗したとして異常と診断する。そして、主コントローラM1,M2のうち正常な一方は、自身が出力する最新の制御指令を採用してPWM指令を生成して、駆動回路49にPWM指令を出力する。他方、主コントローラM1,M2のうち異常な他方は、制御指令演算失敗状態にあるので、正常な主コントローラが出力する制御指令に基づいてダンパFD或いはダンパRDを制御する。たとえば、第一制御ユニットU1における主コントローラM1が制御指令演算失敗し異常と診断されると、第一制御ユニットU1は、第二制御ユニットU2の主コントローラM2が求めた制御指令に基づいて第一制御ユニットU1の制御対象の前輪側ダンパFDを制御する。なお、この場合、副コントローラS1は正常であるので、主コントローラM1の代わりに、第二制御ユニットU2の正常な主コントローラM2が出力した制御指令に基づいてPWM指令を生成して、前輪側ダンパFDを制御する。第二制御ユニットU2では、主コントローラM2が正常であるために、主コントローラM2が最新の制御指令に基づいて制御対象の後輪側ダンパRDを制御し、副コントローラS2は出力ポート33から出力する電流を0とする。なお、主コントローラM1,M2のうち、異常と診断された主コントローラは、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するがそれまでは毎周期の制御指令の演算と出力を行わない。つまり、主コントローラM1,M2のうち、制御指令演算失敗状態となった方は、模擬演算処理で正常と認められても、次回の制御指令比較の対象となる副コントローラS1,S2の周期に合わせた制御指令の演算に復帰するが、それまでは毎周期の制御指令の演算と出力を行わず待機する。よって、主コントローラM1,M2のうち異常な一方が制御指令演算と出力を行わず待機している間は、主コントローラM1,M2のうち正常な他方のみが制御指令を演算し、この制御指令を利用して各制御ユニットU1,U2はダンパFD,RDを制御する。なお、主コントローラM1,M2の一方で制御指令演算失敗状態が指定回数以上継続する場合、失敗状態のコントローラを不調と判断して恒久的に停止させてもよい。
つぎに、制御指令の比較の結果、四つの制御指令のうち二つの制御指令が一致するとともに、それ以外の制御指令の二つが、バラバラの値で一致する制御指令に対しても異なるケースについて説明する。まず、二つの主コントローラM1,M2がともに一致する制御指令を出力している場合、これら主コントローラM1,M2は正常であると診断され、異なる制御姿勢を出力する副コントローラS1,S2はともに異常であると診断される。そして、副コントローラS1,S2は、主コントローラM1,M2が正常であるので、出力ポート33から制御指令に基づくPWM指令を出力せず、出力電流を0とする。主コントローラM1,M2が正常であるので、主コントローラM1,M2は、主コントローラM1,M2が求めた最新の制御指令のいずれかを採用してPWM指令を生成する。そして、主コントローラM1,M2は、生成したPWM指令を駆動回路49へ出力し、駆動回路49が駆動電流を制御バルブVのソレノイドへ供給して、各ダンパFD,RDの圧側減衰力が制御される。副コントローラS1,S2は、いずれも、異常と認められるので、共に駆動回路50へPWM指令を出力せず、各ダンパFD,RDの制御には関与しない。なお、異常と診断された副コントローラS1,S2は、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、制御指令の演算と制御指令の比較に参加する。
制御指令の比較の結果、四つの制御指令のうち一致する二つの制御指令を出力しているのが、主コントローラM1,M2の一方と、副コントローラS1,S2の一方であるケースは、以下のように処理される。この場合、主コントローラM1,M2のうち、一致する制御指令を出力している主コントローラは正常であり、一致しない制御指令を出力している主コントローラは異常であると診断される。主コントローラM1,M2のうち異常と診断された主コントローラは、制御指令演算失敗状態にあると認識される。主コントローラM1,M2のうち異常と診断された主コントローラは、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するがそれまでは毎周期の制御指令の演算と出力を行わない。つまり、主コントローラM1,M2のうち、制御指令演算失敗状態となった方は、次回の制御指令比較の対象となる副コントローラS1,S2の周期に合わせた制御指令の演算に復帰するが、それまでは毎周期の制御指令の演算と出力を行わず待機する。よって、主コントローラM1,M2のうち異常な一方が制御指令演算を行わず待機している間は、主コントローラM1,M2のうち正常な他方のみが制御指令を演算し、この制御指令を利用して各制御ユニットU1,U2はダンパFD,RDを制御する。副コントローラS1,S2のうち異常と診断されたコントローラは、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、制御指令の演算と制御指令の比較に参加する。なお、主コントローラM1,M2の一方で制御指令演算失敗状態が指定回数以上継続する場合、失敗状態のコントローラを不調と判断して恒久的に停止させてもよい。
制御指令の比較の結果、四つの制御指令のうち一致する二つの制御指令を出力しているのが、副コントローラS1,S2であるケースは、以下のように処理される。この場合、主コントローラM1,M2の双方が異常で制御指令演算失敗状態となっている。異常と診断された主コントローラM1,M2は、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するが、それまでは毎周期の制御指令の演算と出力を行わない。この場合、主コントローラM1,M2の双方が制御指令演算失敗状態となるので、模擬演算処理で正常と認められても、次回の制御指令比較の対象となる制御指令の演算に復帰するまで、毎周期の制御指令演算と出力を行わず待機する。よって、主コントローラM1,M2の双方が制御指令演算を行わず待機している間は、異常と診断される直前或いは直前の多数決で多数派であった副コントローラS1,S2による制御指令を利用してダンパFD,RDを制御する。このようにしても、主コントローラM1,M2は、副コントローラS1,S2の演算周期である10ミリ秒以内の制御指令を利用してダンパFD,RDの制御に当たるので制御を継続できる。なお、主コントローラM1,M2の双方で制御指令演算失敗状態が指定回数以上継続する場合、両者を不調と判断して恒久的に停止させてもよい。主コントローラM1,M2を恒久的に停止する目安となる前記指定回数は、任意に定めればよい。
さらに、制御指令の比較の結果、二つの一致した制御指令とこの制御指令とは異なる値で一致する二つの制御指令があるケースについて説明する。この場合、一致する制御指令が二つずつあるために、多数決によっては、いずれの制御指令が正しいのか判明しない。つまり、この場合は、制御指令を比較しても、どの制御指令が正しいか判断できない状態、制御指令演算確認不能状態に陥っている。そのため、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち、どのコントローラに異常があるのか判明しない。よって、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち、どのコントローラが出力した制御指令が正しいか認識できないので、ダンパFD,RDを正常に制御可能か否か不明となる。よって、この制御指令演算確認不能状態では、各コントローラM1,M2,S1,S2は、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するが、それまでは毎周期の制御指令の演算も制御も行わず待機する。この場合、主コントローラM1,M2の双方とも異常である可能性があるため、制御指令演算を行わず、また、正しい制御指令が不明であり制御を実行するのは好ましくないので、待機している間は、出力電流を0とするか、または、副コントローラS1,S2の演算周期である10ミリ秒前に制御指令の比較を行った時点で正しいと認められた制御指令値を維持する。なお、このような制御指令演算確認不能状態では、出力電流を中間値等の一定値にして出力してもよい。このようにしても、主コントローラM1,M2がダンパFD,RDを制御しない時間は、10ミリ秒であるので、問題はない。しかしながら、制御指令の比較結果がたとえば10回連続して制御指令演算確認不能状態となる場合、これ以上、ダンパFD,RDの制御を実行するのは好ましくない。このような事態となると、全てのコントローラM1,M2,S1,S2の制御指令の値を0として、出力ポート23,33からデューティ比を0とするPWM指令を出力する。また、本例では10回連続で制御指令演算確認不能状態となると、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDの適切な制御ができないと判断して、コントローラM1,M2,S1,S2のうち模擬演算により正常と判断されたコントローラから車載ネットワークNを介して警報装置Kへ警報信号を出力する。警報信号を受け取ると警報装置Kは、警報ランプを点灯し、スピーカから警報音を出力して、二輪車の運転者に走行停止を促す。制御不調であると診断する基準である制御指令演算確認不能状態の連続回数は任意に決定できるが、本例では、10回連続すると0.1秒間、演算失敗状態が継続するため、制御を停止させるようにしている。
つづいて、制御指令の比較の結果、四つのコントローラM1,M2,S1,S2の出力した制御指令がそれぞれ異なるケースについて説明する。この場合、全ての制御指令がばらばらであるために、多数決によっては、いずれの制御指令が正しいのか判明しない。つまり、この場合も制御指令を比較することによっては、どの制御指令が正しいか判断できない状態であり、制御指令演算確認不能状態に陥っている。そのため、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち、どのコントローラに異常があるのか判明しない。よって、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち、どのコントローラが出力した制御指令が正しいか認識できないので、ダンパFD,RDを正常に制御可能か否か不明となる。よって、このケースにおいても制御指令演算確認不能状態では、各コントローラM1,M2,S1,S2は、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するが、それまでは毎周期の制御指令の演算も制御も行わず待機する。この場合、主コントローラM1,M2の双方とも異常である可能性があるため、制御指令演算を行わず、また、正しい制御指令が不明であり制御を実行するのは好ましくないので、待機している間は、出力電流を0とするか、まはた、10ミリ秒前に制御指令の比較を行った時点で正しいと認められた制御指令値を維持する。なお、このような制御指令演算確認不能状態では、出力電流を中間値等の一定値にして出力してもよい。このようにしても、主コントローラM1,M2が制御していない時間は10ミリ秒となるので、問題はない。また、本例では10回連続で制御指令演算確認不能状態となると、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDの適切な制御ができないと判断して、コントローラM1,M2,S1,S2のうち模擬演算により正常と判断されたコントローラから車載ネットワークNを介して警報装置Kへ警報信号を出力する。警報信号を受け取ると警報装置Kは、警報ランプを点灯し、スピーカから警報音を出力して、二輪車の運転者に走行停止を促す。制御不調であると診断する基準である制御指令演算確認不能状態の連続回数は任意に決定できるが、本例では、10回連続すると0.1秒間、制御指令演算確認不能状態が継続し、制御を停止させるようにしている。
なお、前述では、制御指令の比較により、各コントローラM1,M2,S1,S2の異常を診断しているが、たとえば、PWM指令If,Irを求める前に求めるべき目標トルクτや目標圧力Pf*,Pr*を異常診断のための比較対象とするようにしてもよい。つまり、制御指令を求める過程で実行する種々の演算の一部の結果を比較対象として異常診断を行ってもよい。
また、四つのコントローラM1,M2,S1,S2の制御指令の比較は、主コントローラM1,M2が制御指令を複数回演算する間に1回の割合で行われる。つまり、主コントローラM1,M2は、制御指令毎に制御指令を求めるので、制御指令比較周期の間に複数回制御指令を演算する。そこで、制御指令の比較までの間に、主コントローラM1,M2が出力する制御指令が異なる場合は、両者の過去の制御指令のうち一致した最新の制御指令を用いて、各ダンパFD,RDを制御してもよい。このようにすると、フェールセーフが実現され、制御指令の比較が行われるまでの間にあっても、主コントローラM1,M2の異常を発見してダンパFD,RDを適正に制御できる。
戻って、制御指令の比較が終了すると、前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDの制御が可能な状態では、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2が実際に対応する前輪側ダンパFDおよび後輪側ダンパRDを制御する。具体的には、コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち前述したケース毎で選択されるコントローラが制御バルブVのコイルCo1,Co2の一方へ電流供給を行って各ダンパFD,RDの制御が実行される。このコイルCo1(Co2)へ供給される電流量は、電流センサ5(5’),6(6’)で検出されて、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2で監視できるようになっている。また、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2は、この例では前述したように、自身が制御対象としているダンパFD,RDに設けられている電流センサ5(5’),6(6’)で検出される電流量をフィードバックしてコイルCo1(Co2)の電流量を制御している。主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2は、目標電流if*,ir*と検出された電流量の偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、駆動回路49,50の制御系統のうち制御を行っている方を異常と診断する。異常閾値は、目標電流if*,ir*と電流センサ5(5’),6(6’)で検出する電流量の制御偏差が正常に制御を行える状態ではありえない程度の値に設定される。フィードバック制御によって、目標電流if*,ir*に実電流が追従するはずであるが、一定時間が経過しても追従しない場合に異常と診断するようにしている。このような状態は、駆動回路49,50自体の異常か、或いは、駆動回路49,50へPWM指令を出力する各コントローラM1,M2,S1,S2、コイルCo1,Co2若しくはそれらを接続する配線に異常がある。たとえば、駆動回路49から電流供給を行っている場合に異常が認められると、駆動回路49とこれにPWM信号を出力する主コントローラM1(M2)またはコイルCo1の制御系統に異常がある。異常診断は、制御バルブVを制御するコントローラ自身と対になるコントローラの両方が行うようになっている。具体的には、たとえば、第一制御ユニットU1において主コントローラM1が制御バルブVを制御している場合、主コントローラM1および副コントローラS1が電流センサ5で検出する電流量と目標電流if*を監視して異常診断を行う。また、第二制御ユニットU2において主コントローラM2が制御バルブVを制御している場合、主コントローラM2および副コントローラS2が電流センサ6で検出する電流量と目標電流ir*を監視して異常診断を行う。したがって、本実施の形態の制御装置1にあっては、電流制御系統の異常も診断可能であるとともに、いずれか一方の制御系統に異常があっても、他方の制御系統を利用して制御を継続できる。なお、制御バルブVの制御中のコントローラの異常診断を行う際に、対となるコントローラが模擬演算処理或いは制御指令の比較の結果異常である場合、制御バルブVを制御中のコントローラが駆動回路49,50の異常診断を行えばよい。制御バルブVを制御中のコントローラは、電流値を認識しているため、異常診断を簡単に行える。
このように駆動回路49,50に異常がある場合やコントローラM1,M2,S1,S2が駆動回路49,50へ正常にPWM指令を出力できない場合、または、コイルCo1,Co2の断線などの場合、制御能力不調であり、該当するコントローラ側の系統は、これ以上、各ダンパFD,RDを正常に制御できない状況である。よって、制御能力不調が発生した時に、主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2のうち制御バルブVのコイルCo1,Co2へ電流供給している駆動回路49,50へPWM指令を出力しているコントローラが継続してPWM指令を出力するのは好ましくない。そこで、コントローラM1,M2,S1,S2のうち、制御能力不調が発生した時にPWM指令を出力しているコントローラは、他のコントローラに対してエラーコードを出力する。つまり、コントローラM1,M2,S1,S2のうち駆動回路49,50を含め異常が認められる系統のコントローラはエラーコードを出力する。ただし、このコントローラ自体が異常であってエラーコードを出力できない場合、このコントローラと制御ユニットU1,U2内で対を成すコントローラが代わりにエラーコードを出力する。エラーコードを受信した他のコントローラは、エラーコードによって異常が認められたコントローラを無視し、異常のないコントローラだけで制御を継続する。具体的にはたとえば、第一制御ユニットU1における駆動回路50にPWM指令を供給する副コントローラS1の系統に異常が認められる場合、副コントローラS1がエラーコードを発行する。また、この場合にあって、副コントローラS1が何らかの障害でエラーコードを発行できない場合、対となる主コントローラM1が代わりに駆動回路50に異常があるとしてエラーコードを出力する。副コントローラS1は、次の制御周期以降、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2への電力供給が停止するまで、制御指令の演算およびPWM指令の生成および出力を行わない。したがって、次の制御周期以降は、車両が停止して制御装置1が再起動しないと、副コントローラS1は制御に関わらず、主コントローラM1,M2および副コントローラS2のみが制御指令の演算と制御指令の比較を行う。一つのコントローラが異常でも三つのコントローラが正常に機能している場合、多数決によって正しい制御指令を得られるので、制御指令の比較による異常診断を継続して行える。ただし、一つのコントローラは異常であるので、このような場合でも、停車を促すべく、コントローラM1,M2,S1,S2から車載ネットワークNを介して警報装置Kへ警報信号を出力する。
また、第一制御ユニットU1の主コントローラM1の系統と副コントローラS1の系統の両方に制御能力不調が認められる場合、前輪側ダンパFDを正常に制御できない。主コントローラM1と副コントローラS1の両者からエラーコードが出力される場合、第一制御ユニットU1の全体が不調であるので、正常なコントローラM2,S2から車載ネットワークNを介して警報装置Kへ警報信号を出力し、車両運転者へ緊急停車を促す。第二制御ユニットU2における主コントローラM2の系統と副コントローラS2の系統の両方に制御能力不調が認められる場合、第二制御ユニットU2でも第一制御ユニットU1と同様の措置が取られる。
さらに、本実施の形態では、圧力センサ3,4を備えているので、制御対象であるダンパFD,RDに関する第一制御対象情報として圧側室R2の圧力を検出できる。また、制御バルブVの開弁圧力をコイルCo1,Co2に与える電流量で調節できるようになっている。そのため、各ダンパFD,RDの伸縮速度が低速である場合、電流センサ5,6で検出する電流量から制御対象である各ダンパFD,RDに関する第二制御対象情報として圧側室R2の圧力を推定できる。よって、電流センサ5の電流量から求める第二制御対象情報としての圧側室R2の圧力と圧力センサ3,4が検出する第一制御対象情報としての圧側室R2の圧力とに大きな乖離があると、制御装置1のシステム全体に何らかの異常があると診断できる。つまり、センサ3,4,5,6、ダンパFD,RDを含めた制御装置1のシステム全体の異常を発見できる。各ダンパFD,RDの伸縮速度が低速である場合、電流センサ5,6で検出する電流量から各ダンパFD,RDの圧側室R2の圧力を推定できるので、この圧力から各ダンパFD,RDの圧側の減衰力を推定できる。さらに、圧力センサ3,4で検出する圧側室R2の圧力から各ダンパFD,RDの圧側の減衰力を求められる。よって、第一制御対象情報および第二制御対象情報は、各ダンパFD,RDの圧側の減衰力であってもよい。また、たとえば、車体B、前輪FWおよび後輪RWの上下方向加速度を検出するGセンサを設け、このセンサから得られる車体Bの上下方向加速度および前後輪FW,RWの上下方向加速度を積分処理して差し引きすると、各ダンパFD,RDの伸縮速度が得られる。各ダンパFD,RDの伸縮速度と減衰力特性は、伸縮速度が高速であると、比例関係に近くなりやすい。この伸縮速度からダンパFD,RDの圧側の減衰力を求めて第一制御対象情報とする。また、圧力センサ3,4で検出する圧側室R2の圧力から各ダンパFD,RDの圧側の減衰力を推定でき、これを第二制御対象情報とする。これら第一制御対象情報と第二制御対象情報とを比較して両者に大きな乖離がある場合、制御装置1のシステム全体に何らかの異常があると診断できる。つまり、異なるセンサで検知した情報から制御対象(この場合、ダンパFD,RD)に関する何らかの二つの同種の情報を得て、これら情報を第一制御対象情報および第二制御対象情報として比較すれば、異常診断を行える。つまり、第一制御対象情報および第二制御対象情報は、異なるセンサの検出する情報或いはこの情報から計算により得られる同種の情報であればよい。また、第一制御対象情報および第二制御対象情報を得るのにともに複数のセンサを使用する必要がある場合、第一制御対象情報を得るのに使用されるセンサ群と第二制御対象情報を得るのに使用されるセンサ群の全部が一致していなければよい。つまり、前述のセンサ群の一部同士が一致するのは妨げられない。このような手順によって明らかな異常を認めた場合、コントローラM1,M2,S1,S2からエラーコードを出力するとともに、故障の内容が運転者に危険を及ぼすと判断できる場合、警報信号を警報装置Kへ出力して、二輪車の運転者に走行停止を促す。
記録器53は、図示しないメモリを備えていて、前述のようにエラーコードが出力されると、エラーコードを記録する。また、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、主信号線51を介して通信する際に、車載ネットワークNにも同じ情報を出力している。記録器53は、信号線57および車載ネットワークNを通じて、エラーコード以外にも、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2の相互の通信内容の一部を記録するようになっている。なお、前述したが、記録器53と第一制御ユニットU1と第二制御ユニットU2の一方または両方と直接に信号線で接続して、イーサネット(登録商標)やCAN通信等の通信を可能としてもよい。その場合、車載ネットワークNと信号線のいずれか一方が使用できなくなっても通信が確保される。また、記録器53は、たとえば、ドライブレコーダ等といった、車載される情報収集機器に統合されてもよい。そして、記録器53は、無線通信器54および携帯端末55との通信が確立されると、その機会を利用して、インターネット通信網56を通じて外部へエラーコードおよび第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2の相互の通信内容を送信する。このようにして送信されたエラーコード等は、たとえば、サスペンションメーカーの図示しないサーバで受け取られて蓄積される。エラーコード等の情報に制御装置1のシリアル番号といった固有の番号の情報も併せて送信され、サスペンションメーカー側では、制御装置1を特定でき、製造ロットで同一の異常が発生する可能性がある場合、サスペンションメーカー側から車両所有者への告知が可能となる。また、サスペンションメーカーは、エラーコード等の蓄積によって異常原因の解析が可能となり、タイムリーに対策を実行できる。なお、記録器53が送信する情報には、エラーコード出力日時の他、車両或いは携帯端末55に位置情報を取得可能な装置が搭載されている場合には位置情報をサスペンションメーカーへ送信できる。位置情報は、プライバシーに関わる情報であるため、車両搭乗者が送信の可否を選択できるようにしておくのが好ましい。なお、無線通信器54は、携帯端末55を介さずに直接インターネット通信網56へアクセスできるものであってもよい。その場合、携帯端末55を介さずに外部との通信を行える。
なお、これら前述した異常診断に加えて、各コントローラM1,M2,S1,S2を監視するウォッチドッグタイマを設けて各コントローラM1,M2,S1,S2が正常に動作しているか否かを定期的に判定し、異常のあるコントローラを停止させてもよい。
前述したところを主コントローラM1,M2と副コントローラS1,S2の動作を図5および図6の状態遷移図を用いて説明する。主コントローラM1(M2)は、図5に示すように、自身が正常であれば、常に優先的に制御バルブVのコイルCo1へ電流供給を行う制御を実行するプライマリコントローラとして機能する(状態ST1)。そして、主コントローラM1(M2)は、模擬演算結果の多数決によって敗北すると、状態ST2へ移行する。この状態は、演算能力不調状態である。そして、状態ST2では、主コントローラM1(M2)は、電流出力を0とし、次回の制御周期に状態ST1へ移行し制御に復帰して模擬演算に参加するが、それまでは電流出力0を維持する。また、主コントローラM1,M2は、制御指令の比較の多数決で敗北すると状態ST3へ移行する。状態ST3へ移行した主コントローラM1(M2)は、制御指令演算失敗状態にある。状態TS3にある主コントローラM1(M2)は、出力電流を0とする。状態TS3にある主コントローラM1(M2)は、次回の制御指令の比較演算には参加して、多数決で勝利すると状態ST1へ移行する。
つづいて、制御指令を比較してもどの制御指令が正しいか判断できない状態、つまり、制御指令演算確認不能となると、主コントローラM1,M2は、状態ST4へ移行する。この状態ST4は、制御指令演算確認不能状態である。この状態ST4では、主コントローラM1,M2は、以降の制御周期で実行する模擬演算処理で正常と認められる場合、次回の制御指令演算の比較に復帰するがそれまでは制御指令の演算を行わず待機する。この制御指令演算確認不能状態では、主コントローラM1,M2の双方とも異常である可能性があるため、制御指令演算を行わず、また、正しい制御指令が不明であり制御を実行するのは好ましくないので、待機中は出力電流を0とする。しかしながら、制御指令の比較結果が10回連続して制御指令演算確認不能状態となる場合、これ以上、ダンパFD,RDの制御を実行するのは好ましくない。よって、制御指令の比較の結果、10回連続で制御指令演算確認不能が継続すると、状態ST5へ移行して、全コントローラM1,M2,S1,S2から駆動回路49,50への出力電流を0として制御を中止する。この状態は、制御装置1の再起動まで維持される。なお、制御装置1の再起動は、車両のイグニッションがオフからオンされると実行されるようになっている。また、主コントローラM1,M2の制御系統が不調であると、制御能力不調状態である状態ST6へ移行し、主コントローラM1,M2は、出力電流を0とするが、制御指令の演算は継続する。そして、この状態ST6の状態において、対となる副コントローラS1,S2の制御系統においても制御能力不調となり、第一制御ユニットU1の全コントローラM1,S1或いは第二制御ユニットU2の全コントローラM2,S2が制御能力不調に陥ると状態ST7へ移行する。この状態ST7では、第一制御ユニットU1或いは第二制御ユニットU2のうち不調でないユニットからエラーコードを出力し、電源を落として機能を停止し制御を中止する。この状態は、制御装置1の再起動まで維持される。
副コントローラS1(S2)は、図6に示すように、対になる主コントローラM1(M2)が正常であれば自身が優先的に制御バルブVのコイルCo1へ電流供給を行う制御を実行しないので、セカンダリコントローラとして機能する(状態ST11)。そして、副コントローラS1(S2)は、模擬演算結果の多数決によって敗北すると、演算能力不調状態である状態ST12へ移行して、電流出力を0とし、次回の制御周期に制御に復帰して模擬演算に参加するまでその状態を維持する。つづいて、主コントローラM1(M2)が模擬演算結果或いは制御指令の多数決で敗北すると、状態ST13へ移行して対となる副コントローラS1(S2)は、制御バルブVの制御を実行するプライマリコントローラとして機能する。副コントローラS1(S2)は、対となる主コントローラM1(M2)が模擬演算結果或いは制御指令の比較の結果、正常な状態になると、状態ST11へ移行し、プライマリコントローラからセカンダリコントローラとして役割を切換える。副コントローラS1(S2)は、対となる主コントローラM1(M2)が模擬演算結果或いは制御指令の比較の結果、異常である場合、状態ST13の状態を維持して、プライマリコントローラとして機能する。また、副コントローラS1(S2)は、プライマリコントローラとなっている状態で、模擬演算結果の多数決で敗北すると、対となる主コントローラM1(M2)とともに不調な状態となるので、状態ST14へ移行して、エラーコードを出力する。また、副コントローラS1(S2)の制御系統が不調であると、制御能力不調状態であるとして状態ST15へ移行し、副コントローラS1(S2)は、出力電流を0として制御を停止する。この状態は、制御装置1の再起動まで維持される。そして、この状態ST15の状態において、対となる主コントローラM1,M2の制御系統においても制御能力不調となり、第一制御ユニットU1の全コントローラM1,S1或いは第二制御ユニットU2の全コントローラM2,S2が制御能力不調に陥ると状態ST16へ移行する。この状態ST16では、第一制御ユニットU1或いは第二制御ユニットU2のうち不調でないユニットからエラーコードを出力し、電源を落として機能を停止し制御を中止する。この状態は、制御装置1の再起動まで維持される。
このように本発明の制御装置1にあっては、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2にそれぞれ主コントローラM1,M2と副コントローラS1,S2を対として設けてある。よって、一部のコントローラM1,M2,S1,S2が不調に陥っても制御対象の制御が可能であるので、制御対象の制御を続行してフォールトトレランス機能を発揮できる。また、一部のセンサ値および推定値についても多数決によって正しい制御指令を採用して制御を行えるので、ノイズなどの影響を受けづらく、堅牢な制御が可能となる。さらに、多数決によって正しい制御指令を採用して制御を行えるので、全ての異常パターンを把握しておき、異常パターンに該当するか否かの判断を行って異常を認識する必要がなく、不測の事態が生じても正しい制御指令による制御が可能となる。
そして、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、それぞれ、制御対象を直接制御するようになっており、中央プロセッサが不要となる。加えて、主コントローラM1(M2)に対して副コントローラS1(S2)は、演算処理能力が低くて済むために、副コントローラS1(S2)については安価なマイクロコンピュータを利用でき、制御装置1のシステム全体を安価に構成できる。
また、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、共に、車載ネットワークNに接続されており、車載ネットワークN上を流れる情報およびレートセンサ2が検出する情報が第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2の双方に入力される。したがって、第一制御ユニットU1或いは第二制御ユニットU2の一方が車載ネットワークNとの接続が絶たれても、第一制御ユニットU1と第二制御ユニットU2とが互いに通信可能で制御対象の制御を切れ目なく続行できる。
また、第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2は、予備バッテリーSBを備えているので、車両の図示しない電源からの電力供給が途絶えても、制御対象の制御を継続できる。
また、制御装置1では、演算能力の低い各副コントローラS1,S2は、各主コントローラM1,M2の演算周期よりも低い演算周期で主コントローラM1,M2と同じ情報に基づいて制御指令を求める演算を行って、演算結果を比較して異常診断を行うので、副コントローラS1,S2に安価なマイクロコンピュータを用いても無理なく異常診断を行え、フォールトトレランスを実現できる。
なお、副コントローラS1,S2が各主コントローラM1,M2が制御指令を求める演算処理の一部を同一情報に基づいて演算し、各主コントローラM1,M2が演算処理の一部を演算処理して得た演算結果と各副コントローラS1,S2の演算結果を比較して異常診断を行う場合、副コントローラS1,S2が制御指令を演算するのに要する時間よりも短い時間で前述の演算結果を得られるため、異常診断の単位時間当たりの頻度を多くでき、密に異常診断を行える。
複数のセンサ3,4,5,6を備え、圧力センサ3(4)で検出する制御対象であるダンパFD(RD)に関する第一制御対象情報としてのダンパFD(RD)の圧側室R2の圧力と、電流センサ5(6)が検出する電流量から求める第一制御対象情報と同種の第二制御対象情報としてのダンパFD(RD)の圧側室R2の圧力との比較により、さらに、異常診断を行うので、液圧系も含む制御装置1のシステム全体の異常を診断できる。第一制御対象情報とこれと同種の第二制御対象情報は、制御対象に関する情報であればよく、実施の形態に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、第一制御ユニットU1と第二制御ユニットU2を接続する主信号線51は、通信線をn重化したケーブル51a(51b)を備えているので、1本のケーブルで接続する場合に比して、単位時間当たりにn倍のデータ通信量を転送でき、高速通信が可能である。主信号線51が二つのケーブル51a,51bを備え、第一制御ユニットU1と第二制御ユニットU2は、リレー41d,41eの切換えによって両ケーブル51a,51bのいずれかを選択して通信可能であるから、いずれかが断線しても通信を確保できる。さらに、前述のように、リレー41dとリレー41eは、電力供給による開閉動作が逆となっているため、電力供給が途絶えても、必ず第一制御ユニットU1および第二制御ユニットU2間の通信を確保できるようになっている。
加えて、本実施の形態の制御装置1にあっては、記録器53がエラーコードを記録し、外部へエラーコードを送信できるようになっている。よって、エラーコードの解析により異常の原因を解析できるので便利である。さらに、エラーコードをサスペンションメーカーへ送信可能であるので、サスペンションメーカー側でのエラーコードの解析が可能となって、制御装置1の異常発生防止措置などの対応が可能となるだけでなく、異常発生の恐れのある制御装置1が搭載された車両の所有者へ車両使用を控えるよう勧める等の告知を速やかに行える。
なお、前述したところでは、制御装置1の制御対象をダンパFD,RDとしているが、車両のハンドルの振動を抑制する減衰力調整可能なステアリングダンパ、油圧ポンプや電動アクチュエータによって車高調整を行うジャッキ装置を備える場合、ダンパFD,RDに加えて、或いはこれに代えて、これらステアリングダンパとジャッキ装置の一方または両方の制御を行うようにしてもよい。その場合、ダンパFD,RDへの制御指令、ステアリングダンパへの制御指令およびジャッキ装置の制御指令の全ての制御指令或いは任意に選択した制御指令について主コントローラM1,M2および副コントローラS1,S2がともに演算処理を行って、その演算結果について前述のような比較により多数決を行い、異常診断を行うようにしてもよい。当然、全制御指令の比較に代えて、全制御指令について演算処理の一部の演算結果を比較して異常診断してもよい。
<第二の実施の形態>
つづいて、図7に示した第二の実施の形態の制御装置101について説明する。図7に示すように、第二の実施の形態における制御装置101は、第一制御ユニットU11と、第一制御ユニットU11と別に設けた第二制御ユニットU12と、三つの副制御ユニットSU1,SU2,SU3とを備えて構成されている。本実施の形態では、図7に示すように、四輪の自動車の四つのダンパD1,D2,D3,D4と自動車のステアリングホイールSWの運転者による操作を補助する補助トルクを発生するモータMを制御する制御装置として使用されている。
図7に示すように、制御装置101は、この例では、自動車の車体VBと車輪Wの間に介装される四つのダンパD1,D2,D3,D4と、ステアリングホイールSWに補助トルクを与えるモータMとを制御するようになっている。ダンパD1,D2,D3,D4は、詳しく図示はしないが、シリンダとシリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるピストンロッドと、伸側室と圧側室とを連通する通路と、通路の途中に設けられて通路を通過する液体の流れに抵抗を与える減衰力可変バルブV1とを備えて構成されている。そして、制御装置101は、前述の減衰力可変バルブV1が液体の流れに与える抵抗を変更でき、ダンパD1,D2,D3,D4が伸縮時に発生する減衰力を制御できるようになっている。減衰力可変バルブV1は、たとえば、ソレノイドを利用した電磁弁とされる。なお、制御装置101がダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を制御できる限りにおいて、前述した構成に限定されるものではなく、種々の形態のダンパを利用できる。よって、第二の実施の形態における制御装置101の制御対象であるダンパD1,D2,D3,D4にあっても、液体に電気粘性流体や磁気粘性流体を用い、通路を通過する流体に与える電圧或いは磁界を調節可能な装置を組み込んで、減衰力を制御してもよい。
また、制御装置101は、各ダンパD1,D2,D3,D4のストロークを検出するストロークセンサSFR,SFL,SRR,SRLと、車体VBの各輪Wの直上の上下方向加速度を検出する四つの加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLと、減衰力可変バルブV1のソレノイドにおけるコイルCo3,Co4の電流を検出する電流センサCFR,CFL,CRR,CRLに接続されている。そして、制御装置101は、各ダンパD1,D2,D3,D4のストロークと車体VBの各輪Wの直上の上下方向加速度であるばね上加速度に基づいて、各ダンパD1,D2,D3,D4の目標減衰力を求める。減衰力可変バルブV1のソレノイドには二重巻線を構成する二つのコイルCo3,Co4が設けられており、いずれに電流供給しても電流量に応じて同様の作動を呈して液体の流れに与える抵抗が変更される。そして、制御装置101は、この目標減衰力に従って減衰力可変バルブV1のソレノイドにおけるコイルCo3,Co4へ与える電流量を指示する目標電流を制御指令として求める。さらに、制御装置101は、電流センサCFR,CFL,CRR,CRLでそれぞれ検出するコイルCo3,Co4に流れる電流量をフィードバック制御して、減衰力可変バルブV1による抵抗を調節し、各ダンパD1,D2,D3,D4の減衰力を制御するようになっている。なお、四つの加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLを設けてそれぞれ四つの車輪Wの直上の加速度を検出しているが、車体VBを剛体と看做して三つの加速度センサから得られる加速度から設ける残り一つの加速度を推定できる。つまり、三つ加速度センサを三つの車輪Wの直上の車体VBに設置して加速度を検出すると、加速度センサの設置のない車輪Wの直上の車体VBの加速度を推定できる。また、加速度センサの設置個所は、車輪Wの直上の車体VBの箇所以外に設置でき、車体VBに三つの加速度センサが同一直線状に配置されないように設置すれば、加速度センサが検出する加速度から四つの車輪Wの直上の加速度を推定できる。
モータMは、ロータがギヤを介してステアリングホイールSWの回転軸に連携されていて、回転動力をステアリングホイールSWへ伝達して、ステアリングホイールSWに補助トルクを与えられる。制御装置101は、運転者がステアリングホイールSWを操作した際に操舵トルクを検出するトルクセンサTSと、ステアリングホイールSWの舵角を検出する舵角センサRSと、モータMに流れる電流を検出する電流センサMCSと、車両速度を検出する車速センサVSに接続されている。制御装置101は、ステアリングホイールSWの操舵トルクと舵角と車両速度から補助トルクを求め、この補助トルクに従ってモータMへ与える電流量を指示する目標電流を制御指令として求める。なお、モータMには、二重巻線を構成する二つのコイルCo5,Co6が設けられており、コイルCo5,Co6の一方が断線しても他方への電流供給により、モータMを駆動できるようになっている。さらに、制御装置101は、コイルCo5,Co6に流れる電流量をフィードバック制御して、モータMの出力トルクを調節し、ステアリングホイールSWへ与える補助トルクを制御するようになっている。または、舵角センサRSでモータMのロータの回転角を検出してステアリングホイールSWの舵角を検知してもよい。
制御装置101における第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12は、第一の実施の形態の制御装置1と同様に主信号線151で接続されて相互通信が可能とされている。さらに、副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12とを主信号線151と並列して接続する副信号線161の途中に直列に配置されて接続されている。よって、第一制御ユニットU11、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3は相互に通信可能とされている。さらに、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、車両に搭載されたセンサ等に接続されてCAN規格の通信が可能なネットワークとしての車載ネットワークN1にも信号線162,163を介して接続されている。なお、ネットワークは、CAN通信以外の通信規格を利用した通信網であってもよい。
そして、この実施の形態では、第一制御ユニットU11がモータMを、第二制御ユニットU12がダンパD1を、副制御ユニットSU1がダンパD2を、副制御ユニットSU2がダンパD3を、副制御ユニットSU3がダンパD4をそれぞれ制御するようになっている。第一制御ユニットU11は、制御対象であるモータMの至近に配置され、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、自身の制御対象であるダンパD1,D2,D3,D4の至近にそれぞれ配置される。第一制御ユニットU11、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3をこのように配置すると、制御対象およびセンサ類との通信に使用されるケーブルおよび主信号線151および副信号線161のトータルの配線長が短くできる利点がある。
第一制御ユニットU11は、トルクセンサTS、舵角センサRSおよび電流センサMCSに直接接続されるとともに、車速センサVSに車載ネットワークN1を介して接続されている。そして、操作トルク、舵角、車両速度および電流量がモータMを制御するための情報として第一制御ユニットU11に入力される。また、第二制御ユニットU12は、ストロークセンサSFR、加速度センサGFRおよび電流センサCFRに直接接続され、これらが検出するストローク量、加速度および電流量がダンパD1を制御するための情報として直接に第二制御ユニットU12に入力される。さらに、副制御ユニットSU1は、ストロークセンサSFL、加速度センサGFLおよび電流センサCFLに直接接続され、これらが検出するストローク量、加速度および電流量がダンパD2を制御するための情報として直接に副制御ユニットSU1に入力される。副制御ユニットSU2は、ストロークセンサSRR、加速度センサGRRおよび電流センサCRRに直接接続され、これらが検出するストローク量、加速度および電流量がダンパD3を制御するための情報として直接に副制御ユニットSU2に入力される。副制御ユニットSU3は、ストロークセンサSRL、加速度センサGRLおよび電流センサCRLに直接接続され、これらが検出するストローク量、加速度および電流量がダンパD4を制御するための情報として直接に副制御ユニットSU3に入力される。
また、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、ダンパD1,D2,D3,D4を制御する制御指令と、モータMを制御する制御指令を所定の制御周期毎に求める。そのため、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12には、前述したストロークセンサSFR,SFL,SRR,SRL、加速度センサGFR,GFL,GRR,GRL、電流センサCFR,CFL,CRR,CRL、トルクセンサTS、舵角センサRS、電流センサMCSおよび車速センサVSから得られる情報の全てが主信号線151、副信号線161および車載ネットワークN1を通じて入力されるようになっている。お、ダンパD1,D2,D3,D4の制御に当たり、車体VBの姿勢変化に影響のあるブレーキ操作やアクセル操作も加味して制御を行う場合には、ブレーキ操作情報、アクセル開度情報を第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12に入力してもよい。
なお、本実施の形態では、第一制御ユニットU11、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3が出力するエラーコードや相互にやり取りする通信内容を記録する記録部と記録した情報を外部へ送信する無線通信器を設けていないが、第一の実施の形態と同様にこれらを設けてもよい。
また、制御装置101は、第一の実施の形態の制御装置1と同様に、車載ネットワークN1を通じて警報装置K1へ接続されている。よって、制御装置101に車両停止をさせるべき異常が発生した場合、警報装置K1から運転者へ走行停止を促すべく、警告ランプの点灯等を行えるようになっている。
第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、第一の実施の形態の制御装置1と同様に、図8に示すように、それぞれ、主コントローラM11,M12と、主コントローラM11,M12よりも処理速度が低い副コントローラS11,S12とを備えて構成されている。主コントローラM11,M12は、それぞれ、ハイエンドのマイクロコンピュータであり、副コントローラS11,S12は、主コントローラM11,M12より低価格帯のミッドレンジのマイクロコンピュータとされているのも第一の実施の形態の制御装置1と同様である。第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、共に、図示しない車載バッテリーからの電力供給を受けて作動するが予備バッテリーBS1からの電力供給で断電時でもある程度の時間作動が可能である。
また、主コントローラM11,M12は、第一の実施の形態と同様、ともに、車載ネットワークN1および制御ユニットU11,U12同士でCAN通信を行うためのCANインタフェース121,122,125と、モータM或いは減衰力可変バルブV1のコイルC03,Co5の制御のためのPWM指令を出力するための出力ポート123とを備えるほか、本例では、電流センサMCS,CFR、ストロークセンサSFR、加速度センサGFR、トルクセンサTS、舵角センサRSのうち接続されているセンサ群から出力されるアナログの信号をデジタル信号に変換してセンサ群からの情報を受け入れるAD変換部124を備えている。
また、副コントローラS11,S12は、第一の実施の形態と同様、ともに、車載ネットワークN1および制御ユニットU11,U12同士でCAN通信を行うためのCANインタフェース131,132,135と、モータM或いは減衰力可変バルブV1のコイルCo4,Co6の制御のためのPWM指令を出力するための出力ポート133とを備えるほか、本例では、電流センサMCS,CFR、ストロークセンサSFR、加速度センサGFR、トルクセンサTS、舵角センサRSのうち接続されているセンサ群から出力されるアナログの信号をデジタル信号に変換してセンサ群からの情報を受け入れるAD変換部134を備えている。
さらに、各制御ユニットU11,U12は、主コントローラM11,M12のCANインタフェース121と副コントローラS1,S2のCANインタフェース131の双方に内部信号線141を介して接続されるコネクタ142と、CANインタフェース122およびCANインタフェース132の双方に内部信号線143を介して接続されるコネクタ144と、CANインタフェース125およびCANインタフェース135の双方に内部信号線152を介して接続されるコネクタ145と、出力ポート123および出力ポート133の双方に内部信号線146,147を介して接続されるとともにAD変換部124,134の双方に内部信号線148を介して接続されるコネクタ150と、内部信号線146,147の途中に設けられてPWM指令の入力によりモータM或いは減衰力可変バルブV1のコイルCo3,Co4,Co5,Co6へ駆動電流を供給する駆動回路P1,P2と、内部信号線148の途中に設けられてコネクタ150側から入力される信号を増幅してAD変換部124,134の双方に出力する増幅回路149とを備えている。第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12における前述の構成要素は、それぞれ、単一の基板CB1上に設置されており、図示しない筐体に収められている。なお、第二制御ユニットU12の車体への設置個所が制御を担当する前右輪のダンパD1の直上であれば、加速度センサGFRを第二制御ユニットU12の基板CB1に実装してもよい。また、モータM或いは減衰力可変バルブV1のコイルCo3,Co4,Co5,Co6へ駆動電流を供給する駆動回路P1,P2を備えているので、電流センサCFR,CFL,CRR,CRL,MCSも基板CB1上に実装すればよい。
内部信号線141は、コネクタ142を主コントローラM11,M12のCANインタフェース121と副コントローラS1,S2のCANインタフェース131の双方に接続しており、この場合、CAN通信を行うための通信線を四重化して構成されている。第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12のコネクタ142同士は、主信号線151によって接続されており、主コントローラM11,M12および副コントローラS11,S12は、主信号線151を介して相互に通信可能となっている。主信号線151についても、CAN通信を行うための通信線を四重化して構成されていて、単位時間にやり取りできる情報量が多くなるので、主コントローラM11,M12および副コントローラS11,S12は、高速通信が可能となっている。四重化された通信線は、互いに離間して配置すると一度全てが断線する危険を回避できる。なお、主信号線151の通信線数は、任意に設定可能である。
内部信号線143は、一端が主コントローラM11(M12)のCANインタフェース122に接続されるともに他端が副コントローラS11(S12)のCANインタフェース132に接続されるコントローラ接続線143aと、コントローラ接続線143aの中間とコネクタ144とを接続するコネクタ接続線143bと、コネクタ接続線143bの途中に設けたリレー143cとを備えている。よって、主コントローラM11と副コントローラS11は、第一制御ユニットU11内でコントローラ接続線143aを介して、主コントローラM12と副コントローラS12は、第二制御ユニットU12内でコントローラ接続線143aを介して、相互に通信可能である。
また、内部信号線152は、コネクタ145を主コントローラM11,M12のCANインタフェース125と副コントローラS1,S2のCANインタフェース135の双方へ接続している。
そして、コネクタ144は、副信号線161に接続され、コネクタ145は、信号線162(163)を介して車載ネットワークN1に接続されている。このように、副信号線161は、主信号線151に対して並列されて第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12とを接続している。よって、第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12は、副信号線161に直列に接続されている副制御ユニットSU1,SU2,SU3と通信可能とされ、また、信号線162,163を介して車載ネットワークN1に接続されていて、車速センサVSで検知する情報の入手ができるようになっている。なお、副信号線161は、CAN通信を行うための通信線を二重化して構成されていて、単位時間にやり取りできる情報量を多くしている。二重化された通信線は、互いに離間して配置すると一度に全てが断線する危険を回避できる。また、リレー143cは、電力供給が有ると開成してコネクタ144とCANインタフェース122,132との接続を絶ち、電力供給がない場合には閉成されてコネクタ144とCANインタフェース122,132とを接続する。よって、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12への電力供給が途絶えても、コネクタ144とCANインタフェース122,132は接続されて、副信号線161と接続状態となるようになっている。リレー143cをON・OFFする図外の制御線は主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)の両方に対してワイヤードOR接続されており、リレー143cへの指令は、主コントローラM1(M2)および副コントローラS1(S2)のいずれからでも可能とされている。
内部信号線146は、主コントローラM11(M12)の出力ポート123をコネクタ150に接続し、内部信号線147は、副コントローラS11(S12)の出力ポート133をコネクタ150に接続している。主コントローラM11,M12は、ともに、ステアリングホイールSWの操舵トルクと舵角と車両速度の各情報から補助トルクτ*を求め、この補助トルクτ*に従ってモータMへ与える目標電流iM*を求める。また、第一制御ユニットU11の制御対象はモータMであるので、主コントローラM11は、電流センサMCSが検出するモータMのコイルCo5に流れる電流量iMをフィードバックして、電流量iMと目標電流iM*との制御偏差に基づいて制御指令としてのPWM指令IMを求める。PWM指令IMは、本例では三相PWM駆動信号として求められる。主コントローラM11は、目標電流iM*に基づいて駆動回路P1にて要求するPWM指令IMを生成し、PWM指令IMを出力ポート23から出力して駆動回路P1へ入力する。
また、主コントローラM11,M12は、各ダンパD1,D2,D3,D4のストロークと車体VBのダンパD1,D2,D3,D4が設けられている車輪Wの直上のばね上加速度の各情報に基づいて、たとえば、カルノップ制御則を用い各ダンパD1,D2,D3,D4の目標減衰力f1*,f2*,f3*,f4*を求める。さらに、主コントローラM11,M12は、この目標減衰力f1*,f2*,f3*,f4*に従って前述の減衰力可変バルブV1のコイルCo3(Co4)へ与える目標電流id1*,id2*,id3*,id4*を求める。第二制御ユニットU12の制御対象はダンパD1である。そのため、主コントローラM12は、電流センサCFRが検出する減衰力可変ダンパのコイルCo3に流れる電流量id1をフィードバックして、電流量id1と対応する目標電流id1*との制御偏差に基づいて制御指令としてPWM指令ID1を求める。主コントローラM12は、目標電流id1*に基づいて駆動回路P1にて要求するPWM指令ID1を生成し、PWM指令ID1を出力ポート23から出力して駆動回路P1へ入力する。
駆動回路P1は、PWM指令が指定するデューティ比通りにモータMのコイルCo5或いはダンパD1の減衰力可変バルブV1のコイルCo3へ駆動電流を供給するようになっている。また、副コントローラS11(S12)は、対となる主コントローラM11(M12)が不調である場合、主コントローラM11(M12)の代わりに、制御指令IM(ID1)に基づいてPWM指令を求める。そして、副コントローラS11(S12)は、モータM或いはダンパD1の減衰力可変バルブV1のコイルCo4(Co6)へ電力供給する駆動回路P2へPWM指令を出力ポート33から出力するようになっている。
主コントローラM11,M12は、モータMおよび各ダンパD1,D2,D3,D4を所定の制御周期で制御するために、この制御周期毎に制御指令を生成する。副コントローラS11,S12は、主コントローラM11,M12よりも処理速度が低いため、主コントローラM11,M12が制御指令を複数回演算する間に1回の割合で制御指令を演算する。副コントローラS11,S12が1回演算する間に主コントローラM11,M12が何回演算するかは、主コントローラM11,M12と副コントローラS11,S12の処理速度に応じて設定される。たとえば、主コントローラM11,M12が副コントローラS11,S12の10倍の速度で演算処理を行えるのであれば、主コントローラM11,M12が10回制御指令を演算するのに対して副コントローラS11,S12が1回制御指令を演算するように設定される等とされる。
駆動回路P1,P2は、PWM駆動回路とされており、PWM指令が入力されると、PWM指令が指定するデューティ比通りにコイルCo3,Co4,Co5,Co6へ駆動電流を供給するようになっている。モータMに設けられた二つのコイルCo5,Co6は、それぞれ対応する第一制御ユニットU11における駆動回路P1,P2に接続されている。よって、駆動回路P1と駆動回路P2のうち一方を選択して電流供給を行えば、二つのコイルCo5,Co6のうちいずれか一方を選択して電流供給できるようになっている。また、ダンパD1における減衰力可変バルブV1に設けられた二つのコイルCo3,Co4は、それぞれ対応する第二制御ユニットU12における駆動回路P1,P2に接続されている。よって、駆動回路P1と駆動回路P2のうち一方を選択して電流供給を行えば、二つのコイルCo3,Co4のうちいずれか一方を選択して電流供給できるようになっている。
内部信号線148は、途中から分岐してコネクタ150を主コントローラM11(M12)のAD変換部124と副コントローラS11(S12)のAD変換部134に接続している。この内部信号線148の途中には、オペアンプで構成した非反転増幅回路といった増幅回路149を備えている。また、第一制御ユニットU11におけるコネクタ150は、トルクセンサTSおよび舵角センサRSに接続されている。また、電流センサMCSは、本例では、シャント抵抗で構成されて基板CB1上に駆動回路P1,P2とともに実装されている。そして、電流センサMCS、トルクセンサTSおよび舵角センサRSからの信号が増幅回路149により増幅されて主コントローラM11および副コントローラS11に入力されるようになっている。また、第二制御ユニットU12におけるコネクタ150は、ストロークセンサSFRおよび加速度センサGFRに接続されている。また、電流センサCFRは、本例では、シャント抵抗で構成されて基板CB1上に駆動回路P1,P2とともに実装されている。そして、電流センサCFR、ストロークセンサSFRおよび加速度センサGFRからの信号が増幅回路149により増幅されて主コントローラM12および副コントローラS12に入力されるようになっている。また、ダンパD2,D3,D4の減衰力可変バルブV1のコイルCo3,Co4についても、二重化されて二つ用意されており、一方が断線しても他方への電流供給により、各ダンパD2,D3,D4の減衰力の制御ができるようになっている。
副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、図9に示すように、それぞれ、二つの低級コントローラL1,L2を備えて構成されている。低級コントローラL1,L2は、それぞれ、ローエンドのマイクロコンピュータであり、副コントローラS11,S12より低価格帯で演算処理速度が低いマイクロコンピュータとされている。副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、共に、図示しない車載バッテリーからの電力供給を受けて作動するようになっている。車載バッテリーからの電力供給は、一系統ではなく複数系統で行われると、一系統が機能しなくなっても、他の系統からの電力供給を受けられるので、堅牢なシステムを構築できる。また、副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、共に、予備バッテリーSB2を備えている。よって、副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、車載バッテリーからの電力供給が途絶えても、予備バッテリーSB2から電力供給を受けて、対応する制御対象であるダンパD2,D3,D4の制御を継続できるようになっている。
また、低級コントローラL1,L2は、制御ユニットU11,U12と副制御ユニットSU1,SU2,SU3で相互にCAN通信が可能なように、CANインタフェース171を備えるほか、電流センサCFL,CRR,CRL、ストロークセンサSFL,SRR,SRLおよび加速度センサGFL,GRR,GRLのうち接続されているセンサ群から出力されるアナログの信号をデジタル信号に変換してセンサ群からの情報を受け入れるAD変換部173を備えている。
さらに、低級コントローラL1,L2は、第一制御ユニットU11或いは第二制御ユニットU12から制御指令の入力を受けて、この制御指令通りに減衰力可変バルブV1のコイルCo3,Co4へ電力供給するためのPWM指令を出力するため、出力ポート172とを備えている。
各副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、低級コントローラL1,L2のそれぞれのCANインタフェース171,171の双方に内部信号線181を介して接続されるコネクタ182,183と、出力ポート172,172の双方に内部信号線184,185を介して接続され、また、AD変換部173,173の双方に内部信号線186を介して接続されるコネクタ188と、内部信号線186の途中に設けられてPWM指令の入力により減衰力可変バルブV1のコイルCo3,Co4へ駆動電流を供給する駆動回路P3,P4と、内部信号線186の途中に設けられてコネクタ188側から入力される信号を増幅して各AD変換部173,173の双方に出力する増幅回路187とを備えている。そして、副制御ユニットSU1,SU2,SU3における前述の構成要素は、それぞれ、単一の基板CB2上に設置されており、図示しない筐体に収められている。なお、副制御ユニットSU1,SU2,SU3の車体VBへ設置個所が制御対象のダンパD2,D3,D4が連結される各輪Wの直上とすれば、加速度センサGFL,GRR,GRLを対応する副制御ユニットSU1,SU2,SU3の基板CB2に実装してもよい。
内部信号線181は、一端がコネクタ182に接続されるとともに他端がコネクタ183に接続されるコネクタ接続線181aと、一端が低級コントローラL1のCANインタフェース171に接続されるとともに他端がコネクタ接続線181aのうち一本に接続されるコントローラ接続線181bと、一端が低級コントローラL2のCANインタフェース171に接続されるとともに他端がコネクタ接続線181aのうち一本に接続されるコントローラ接続線181cと、コネクタ接続線181aのコントローラ接続線181b,181cの接続点の両側に設けたリレー181d,181eとを備えている。コネクタ接続線181aは、二重化された通信線を持つ副信号線161と同様に、CAN通信可能な通信線を二重化して構成されている。コントローラ接続線181bは、単一の通信線で構成されており、コネクタ接続線181aの二つの通信線のうち一方に接続され、コントローラ接続線181cは、単一の通信線で構成されており、コネクタ接続線181aの二つの通信線のうち他方に接続されている。なお、低級コントローラL1,L2同士は、ほかに設けた通信線189によって接続されていて互いにシリアル通信可能となっている。したがって、低級コントローラL1は、副信号線161の二重化された通信線のうち一方に内部信号線181を通じて接続され、低級コントローラL2は、副信号線161の二重化された通信線のうち他方に内部信号線181を通じて接続される。このように接続しても、低級コントローラL1,L2同士が通信線189を通じて情報のやり取りが可能である。よって、低級コントローラL1は、副信号線161の通信線の一方から直接得られる情報に加えて低級コントローラL2を介して副信号線161の通信線の他方も情報を得られる。これは、低級コントローラL2において同様である。したがって、低級コントローラL1,L2は、それぞれ一つのCANインタフェース171のみを設けるだけで、二重化された通信線を備える副信号線161からの情報の全てを得られる。また、リレー181d,181eは、電流供給がないと閉成してコネクタ182,183と低級コントローラL1,L2を接続し、電力供給されると開成してコネクタ182,183から低級コントローラL1,L2を遮断する。よって、副制御ユニットSU1,SU2,SU3のいずれかへの電力供給が途絶えても、コネクタ182とコネクタ183は接続されて、副信号線161を通じて制御ユニットU11,U12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3と接続状態となるようになっている。リレー181d,181eをON・OFFする図外の制御線は低級コントローラL1,L2の両方に対してワイヤードOR接続されており、リレー181d,181eへの指令は、低級コントローラL1,L2のいずれからでも可能とされている。また、本制御装置101では、副信号線161が断線していない状態では、副制御ユニットSU2のリレー181dと副制御ユニットSU3のリレー181eを開放して副制御ユニットSU2と副制御ユニットSU3との間の副信号線161を遮断状態としている。つまり、図10に示すように、副制御ユニットSU2と副制御ユニットSU3との間の副信号線161が遮断されて、制御ユニットU11,U12を介さないと両者は通信しない状態となっている。なお、図10中では、各制御ユニットU11,U12,SU1,SU2,SU3の接続状態の理解を容易にするため、リレーを制御ユニットから独立して図示している。たとえば、図11に示すように、制御ユニットU11と副制御ユニットSU1との間の副信号線161の二重化された通信線の一方が切断された場合には、制御ユニットU11と副制御ユニットSU1との間の副信号線161を利用した通信では、通信が可能ではあるが通信速度が低下する。この場合、図12に示すように、制御ユニットU11と副制御ユニットSU1との間の副信号線161をリレー143c,181eを開いて遮断し、両者の通信を制御ユニットU12および副制御ユニットSU2,SU3を介して行う方が高速で通信できる。また、制御ユニットU11,U12を主信号線151に並列に接続される副信号線161に副制御ユニットSU1,SU2,SU3が直列に接続されているので、副信号線161の一箇所が完全断線しても、制御ユニットU11,U12と全副制御ユニットSU1,SU2,SU3と通信が可能である。つまり、副信号線161の途中に断線がある場合、断線箇所によって、リレー143cおよびリレー181d,181eの開閉によって、通信を確保できる。また、リレー181d,181eは、電力供給がないと閉成するので、副制御ユニットSU1,SU2,SU3が停止しても、副信号線161の通信が可能である。
戻って、内部信号線184は、低級コントローラL1の出力ポート172をコネクタ188に接続し、内部信号線185は、低級コントローラL2の出力ポート172をコネクタ188に接続している。低級コントローラL1,L2は、副信号線161を介して第一制御ユニットU11或いは第二制御ユニットU12が求めた目標電流の入力を受けると、いずれか一方が優先的に目標電流に基づいてPWM指令を生成し出力ポート172から出力する。低級コントローラL1,L2のうち低級コントローラL1が予め優先的にPWM指令を出力するようになっており、低級コントローラL1に異常が認められると低級コントローラL2がPWM指令を出力するようになっている。低級コントローラL1が優先される場合、各副制御ユニットSU1,SU2,SU3における低級コントローラL1は、それぞれ電流センサCFL,CRR,CRLが検出する減衰力可変ダンパのコイルCo3に流れる電流量id2,id3,id4をフィードバックして、各電流量と対応する目標電流との制御偏差に基づいてPWM指令ID2,ID3,ID4を求める。そして、各低級コントローラL1は、自身の制御対象であるダンパD2,D3,D4を制御するために、駆動回路P3にて要求するPWM指令ID2、ID3,ID4を生成して出力ポート172から出力する。低級コントローラL1に異常が認められて不調である場合、前述のPWM指令の生成を低級コントローラL2が受け持ち、減衰力可変ダンパのコイルCo4に流れる電流量id2,id3,id4をフィードバックして、PWM指令を駆動回路P4へ出力する。
駆動回路P3,P4は、PWM駆動回路とされており、PWM信号が入力されると、PWM指令が指定するデューティ比通りにコイルCo3,Co4へ駆動電流を供給するようになっている。各ダンパD2,D3,D4における減衰力可変バルブV1を駆動するコイルCo3,Co4は、それぞれ、各副制御ユニットSU1,SU2,SU3における駆動回路P3,P4に接続されている。よって、駆動回路P3と駆動回路P4のうち一方を選択して電流供給を行えば、二つのコイルCo3,Co4のうち、いずれか一方へ電流供給できるようになっている。
内部信号線186は、途中から分岐してコネクタ188を低級コントローラL1のAD変換部173と低級コントローラL2のAD変換部173に接続している。この内部信号線186の途中には、オペアンプで構成した非反転増幅回路といった増幅回路187を備えている。各副制御ユニットSU1,SU2,SU3のコネクタ188は、それぞれ、対応するダンパD2,D3,D4に設けられたストロークセンサSFL,SRR、SRLおよび加速度センサGFL,GRR,GRLに接続されている。電流センサCFL,CRR,CRLは、本例では、シャント抵抗で構成されて基板CB2上に駆動回路P3,P4とともに実装されている。そして、ストロークセンサSFL,SRR、SRL、加速度センサGFL,GRR,GRLおよび電流センサCFL,CRR,CRLからの情報が増幅回路187により増幅されて低級コントローラL1,L2に入力されるようになっている。
なお、前述したところでは、第一制御ユニットU11、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3がCAN通信を行うようになっているが、車載ネットワークNを含めFlexRay規格による通信を行ってもよい。
つづいて、主コントローラM11,M12は、モータMおよび各ダンパD1,D2,D3,D4を所定の制御周期で制御するために、この制御周期毎に制御指令を生成する。第一の実施の形態の制御装置1と同様に、副コントローラS11,S12は、主コントローラM11,M12よりも処理速度が低いため、主コントローラM11,M12が制御指令を複数回演算する間に1回の割合で制御指令を演算する。よって、制御装置101は、第一実施形態の制御装置1と同様、副コントローラS11,S12が制御指令を求めるたびに、全コントローラM11,M12,S11,S12の制御指令を比較し、全コントローラM11,M12,S11,S12の異常診断を行う。
第一実施形態の制御装置1と同様に、副コントローラS11,S12が1回演算する間に主コントローラM11,M12が何回演算するかは、主コントローラM11,M12と副コントローラS11,S12の処理速度に応じて設定される。本例でも、主コントローラM11,M12が10回制御指令を演算する間に副コントローラS11,S12が1回制御指令を演算するように設定されている。よって、本例でも、主コントローラM11,M12が10回制御指令を演算するごとにこの制御指令と副コントローラS11,S12が求めた制御指令を比較して異常診断を行う。
制御指令の比較による異常診断に先立ち、第二実施形態の制御装置101にあっても、第一実施形態の制御装置1と同様に、演算負荷が軽い模擬演算処理を全ての制御ユニットU11,U12,SU1,SU2,SU3の全コントローラで行い異常診断を行う。
したがって、全制御ユニットU11,U12,SU1,SU2,SU3のコントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2は、模擬演算処理によって求めた演算結果を比較し、多数決により自身が演算能力不調か否かを診断する。
このように、模擬演算処理の結果の比較は、全てのコントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2において行われる。具体的には、模擬演算処理が終了し演算結果が得られると、各コントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2は、互いに通信して全ての演算結果を入手して、比較する。そして、各コントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2は、演算結果の値を比較して多数決した結果、自身が他のコントローラが出力する演算結果のうち多数派の結果と異なる演算結果を出力する場合、自身を演算能力不調状態であると診断する。模擬演算処理は、たとえば、簡易な演算処理とされ、次に続く制御指令の演算処理を遅延させない程度の演算処理とされる。各コントローラM11,M12,S11,S12のうち、演算能力不調で有ると自認したコントローラは、制御指令の演算処理を行わず、出力ポート123,133からの出力電流を0とする。また、低級コントローラL1,L2は、制御指令の演算処理は行わないが、制御対象のダンパD2,D3,D4の制御を行うようになっている。そのため、低級コントローラL1,L2は、模擬演算結果の多数決によって異常と認められた場合、ダンパD2,D3,D4のうち自身の制御対象についての制御には参加しない。低級コントローラL1,L2を除いた各コントローラM11,M12,S11,S12は、模擬演算処理で不調がない場合、続く、制御指令の演算処理に移り、さらに、制御指令の比較によって、これらコントローラM11,M12,S11,S12の異常を診断するようになっている。なお、この模擬演算処理による演算能力不調の有無の判断は、主コントローラM11,M12の制御周期毎に行われる。コントローラM11,M12,S11,S12のうち前回に演算能力不調で有ると診断されたコントローラであっても次回の模擬演算処理で演算能力不調が認められない場合、ダンパの制御に復帰する。低級コントローラL1,L2のうち前回に演算能力不調で有ると診断されたコントローラであっても次回の模擬演算処理で演算能力不調が認められない場合、制御対象であるダンパの制御に復帰できる。
なお、全ての主コントローラM11,M12に演算能力不調が認められる場合、演算能力不調となる前に採用された制御指令に基づいて副コントローラS11がモータMを制御し、副コントローラS12がダンパD1を制御する。また、全ての主コントローラM11,M12に演算能力不調が認められる場合、演算能力不調となる前に採用された制御指令に基づいて、低級コントローラL1,L2の一方が各ダンパD2,D3,D4を制御する。模擬演算処理の演算結果の比較による異常診断にあっては、コントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2は、多数決により自身の演算能力不調の認識だけでなく、他のコントローラが演算能力不調であるか否かについても診断してもよい。
つづいて、全コントローラM11,M12,S11,S12による模擬演算処理により演算能力不調がないと認められたコントローラは、制御指令の演算処理を行って制御指令の比較し、演算処理に参加しているコントローラの異常診断を行う。副コントローラS11,S12が一つの制御指令の演算処理を終了するまでに、主コントローラM11,M12は、複数回制御指令の演算処理を終了しているので、制御指令の比較は、各コントローラM11,M12,S11,S12が同じ情報から求めた制御指令を用いる。主コントローラM11,M12と副コントローラS11,S12が同じ情報を基にして制御指令の演算処理を開始すると、副コントローラS11,S12が制御指令の演算処理を終了するまでの間に、主コントローラM11,M12が複数回制御指令を演算処理する。そのため、主コントローラM11,M12が副コントローラS11,S12と同じ情報に基づいて演算処理して得られた制御指令を主コントローラM11,M12内に設けられるか或いは外部に設けた記憶装置に格納しておく。そして、副コントローラS11,S12が主コントローラM11,M12と同じ情報を基にして演算処理して得られた制御指令と前述の記憶装置に格納された制御指令とを比較する。このようにすると、主コントローラM11,M12と副コントローラS11,S12とが同じ情報から求めた制御指令を比較できる。たとえば、主コントローラM11,M12の制御周期が1ミリ秒で、副コントローラS11,S12が10ミリ秒に一回制御指令を演算する場合、主コントローラM11,M12が求めた制御指令が10ミリ秒程度保持され、10ミリ秒毎に制御指令の比較が行われる。
この制御指令の比較は、全てのコントローラM11,M12,S11,S12において行われる。具体的には、比較対象の制御指令の演算が終了すると、各コントローラM11,M12,S11,S12は、自身が演算した制御指令を他のコントローラM11,M12,S11,S12へ内部信号線141および主信号線151を介して送信する。各コントローラM11,M12,S11,S12は、自身が演算処理した制御指令に他のコントローラで演算された三つの制御指令を加えて四つの制御指令を比較する。そして、各コントローラM11,M12,S11,S12は、全ての制御指令が一致しないと、多数決により、他の制御指令と異なる制御指令を出力したコントローラを異常と診断する。多数決による結果、異常と診断されるケースは、第一の実施の形態の制御装置1と同様である。
具体的には、全ての制御指令が一致していれば、各コントローラM1,M2,S1,S2は、全てのコントローラM1,M2,S1,S2が正常であると診断する。四つの制御指令のうち一つの制御指令が異なり、二つの主コントローラM11,M12がともに一致する制御指令を出力しているケースでは、副コントローラS11,S12のうち異なる値の制御指令を出力するコントローラが異常であると診断される。四つの制御指令のうち一つが異なり、二つの主コントローラM11,M12のうち一方と二つの副コントローラS11,S12が出力する制御指令が一致するケースでは、異なる制御指令を出力した主コントローラを制御指令の演算に失敗したとして異常と診断する。この状態は、主コントローラM11,M12のうち異常と認められる一方が制御指令演算失敗状態とされる。二つの主コントローラM11,M12の制御指令が一致し、副コントローラS11,S12の制御指令が他とは異なるバラバラの値であるケースでは、主コントローラM11,M12は正常で、副コントローラS11,S12は異常であると診断される。主コントローラM11,M12の一方と副コントローラS11,S12の一方のみが一致する制御指令を出力するケースでは、一致する制御指令を出力しているコントローラは正常であり、一致しない制御指令を出力しているコントローラは異常であると診断される。この状態では、主コントローラM11,M12のうち異常と認めれらる一方が制御指令演算失敗状態にあると認識される。副コントローラS11,S12の制御指令が一致し、主コントローラM11,M12の制御指令が他とは異なるバラバラの値であるケースでは、副コントローラS11,S12は正常で、主コントローラM11,M12はともに異常であると診断される。この状態は、主コントローラM11,M12の双方が制御指令演算失敗状態として認識される。二つの一致した制御指令とこの制御指令とは異なる値で一致する二つの制御指令があるケースでは、多数決によっては、いずれの制御指令が正しいのか判明しないが異常があり、制御指令演算確認不能状態と診断される。四つ制御指令がそれぞれ異なるケースでは、全ての制御指令がばらばらであるために、多数決によっては、いずれの制御指令が正しいのか判明しないが異常であり、この状態は、制御指令演算確認不能状態と認識される。そして、第二実施形態の制御装置101の前述の各ケースにおける対処は、第一実施形態の制御装置1と同様である。なお、模擬演算処理の結果比較によって、制御指令に参加しないコントローラがある場合、正常と認められるコントローラが求めた制御指令のみで多数決を行えばよい。また、各コントローラM11,M12,S11,S12は、モータMおよびダンパD1,D2,D3,D4を制御するための全制御指令について多数決を行って異常診断してもよいし、全制御指令のうち一部の制御指令についてのみ比較して異常診断してもよい。また、第一実施形態の制御装置1と同様に、第二実施形態の制御装置101においても、制御指令を求める過程で実行する種々の演算の一部の結果を比較対象として異常診断を行ってもよい。
また、四つのコントローラM11,M12,S11,S12の制御指令の比較は、主コントローラM11,M12が制御指令を複数回演算する間に1回の割合で行われる。つまり、主コントローラM11,M12は、制御指令毎に制御指令を求めるので、制御指令比較周期の間に複数回制御指令を演算する。そこで、制御指令の比較までの間に、主コントローラM11,M12が出力する制御指令が異なる場合は、過去の制御指令のうち一致する最新の制御指令を用いて、モータMおよびダンパD1,D2,D3,D4を制御してもよい。このようにすると、フェールセーフが実現され、制御指令の比較が行われる間にあっても、主コントローラM11,M12の異常を発見してモータMおよびダンパD1,D2,D3,D4を適正に制御できる。
戻って、制御指令の比較が終了すると、制御可能な状態では、第一制御ユニットU11がモータMを、第二制御ユニットU12がダンパD1を、副制御ユニットSU1,SU2,SU3がそれぞれ対応するダンパD2,D3,D4を制御する。
第一制御ユニットU11にあっては、主コントローラM11および副コントローラS11のうち主コントローラM11が正常である場合には主コントローラM11がモータMを制御する。主コントローラM11が演算能力不調状態か以下で説明する制御能力不調である場合には副コントローラS11がモータMを制御する。モータMのコイルCo5(Co6)に流れる電流量は、電流センサMCSで検出され、フィードバック制御に利用されるほか、第一制御ユニットU11で監視され第一実施形態と同様に次に続く制御能力の異常診断に利用される。このモータMの電流量と目標電流との偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、第一制御ユニットU11における駆動回路P1,P2のうち、制御行っている制御系統が異常であり制御能力不調であると診断する。この異常診断は、主コントローラM11および副コントローラS11のうち制御していない方と制御している方の両方で行う。
第二制御ユニットU12にあっては、主コントローラM12および副コントローラS12のうち主コントローラM12が正常である場合には主コントローラM12が、ダンパD1を制御する。主コントローラM12が演算能力不調状態か制御能力不調である場合には副コントローラS12がダンパD1を制御する。ダンパD1の減衰力可変バルブV1のコイルCo3(Co4)に流れる電流量は、電流センサCFRで検出され、フィードバック制御に利用されるほか、第二制御ユニットU12で監視され第一実施形態と同様に次に続く制御能力の異常診断に利用される。このダンパD1のコイルCo3(Co4)の電流量と目標電流との偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、第二制御ユニットU12における駆動回路P1,P2のうち、制御行っている制御系統が異常であり制御能力不調であると診断する。この異常診断は、主コントローラM12および副コントローラS12のうち制御していない方と制御している方の両方で行う。
副制御ユニットSU1にあっては、模擬演算処理結果の多数決の結果、低級コントローラL1,L2のうち低級コントローラL1が正常である場合には低級コントローラL1が、低級コントローラL1が異常の場合には低級コントローラL2がダンパD2を制御する。ダンパD2の減衰力可変バルブV1のコイルCo3(Co4)に流れる電流量は、電流センサCFLで検出され、フィードバック制御に利用されるほか、副制御ユニットSU1で監視され制御能力の異常診断に利用される。このダンパD2のコイルCo3(Co4)の電流量と目標電流との偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、副制御ユニットSU1における駆動回路P3,P4のうち、制御行っている制御系統に異常があり制御能力不調であると診断する。異常診断は、低級コントローラL1,L2のうち制御していない方と制御している方の両方で行う。
副制御ユニットSU2にあっては、模擬演算処理結果の多数決の結果、低級コントローラL1,L2のうち低級コントローラL1が正常である場合には低級コントローラL1が、低級コントローラL1が異常の場合には低級コントローラL2がダンパD3を制御する。ダンパD3の減衰力可変バルブV1のコイルCo3(Co4)に流れる電流量は、電流センサCRRで検出され、フィードバック制御に利用されるほか、副制御ユニットSU2で監視され制御能力の異常診断に利用される。このダンパD3のコイルCo3(Co4)の電流量と目標電流との偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、副制御ユニットSU2における駆動回路P3,P4のうち、制御行っている制御系統に異常があり制御能力不調であると診断する。異常診断は、低級コントローラL1,L2のうち制御していない方と制御している方の両方で行う。
副制御ユニットSU3にあっては、模擬演算処理結果の多数決の結果、低級コントローラL1,L2のうち低級コントローラL1が正常である場合には低級コントローラL1が、低級コントローラL1が異常の場合には低級コントローラL2がダンパD4を制御する。ダンパD4の減衰力可変バルブV1のコイルCo3(Co4)に流れる電流量は、電流センサCRLで検出され、フィードバック制御に利用されるほか、副制御ユニットSU3で監視され制御能力の異常診断に利用される。このダンパD4のコイルCo3(Co4)の電流量と電流指令ID4目標電流との偏差が所定の異常を判定するための異常閾値を一定時間の間、常に超える場合、副制御ユニットSU3における駆動回路P3,P4のうち、制御行っている制御系統に異常があり制御能力不調であると診断する。異常診断は、低級コントローラL1,L2のうち制御していない方と制御している方の両方で行う。
このように第一制御ユニットU11、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3の制御系統に異常がある場合、その制御系統における制御能力不調であり、その制御系統を利用しては正常に制御できない。
よって、第一実施形態の制御装置1と同様に、第二実施形態の制御装置101にあっても、制御能力不調が発生した制御系統のコントローラは、他のコントローラに対してエラーコードを出力する。ただし、コントローラ自体が異常であってエラーコードを出力できない場合、このコントローラと対を成すコントローラが代わりにエラーコードを出力する。エラーコードを受信した他のコントローラは、エラーコードによって異常が認められたコントローラを無視し、異常のないコントローラだけで制御を継続する。異常と認められる制御系統に属するコントローラは、車両が停止して電力供給が停止し制御装置101が再起動されるまでは、全ての演算処理および制御に復帰しない。
第一制御ユニットU11は、この例では、車両の操舵に影響を与える補助トルクを発生するモータMを制御しているので、第一制御ユニットU11の全制御系統に異常がある場合、警報装置K1へ警報信号を出力し、車両運転者へ緊急停車を促す。第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3は、この例では、ダンパD1,D2,D3,D4を制御しており、正常に制御できない場合、乗心地に悪影響を及ぼす。よって、第二制御ユニットU12および副制御ユニットSU1,SU2,SU3のうち一つの全制御系統に異常がある場合、警報装置K1へ警報信号を出力し、車両運転者へ停車を促す。
また、これら前述した異常診断に加えて、各コントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2を監視するウォッチドッグタイマを設けて各コントローラM11,M12,S11,S12,L1,L2を監視して、異常なコントローラを停止させてもよい。
さらに、本実施の形態では、四つの加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLを備えているので、たとえば、三つの加速度センサGFR,GFL,GRRで検知する加速度から加速度センサGRLが検出する加速度を推定できる。この推定された加速度と加速度センサGRLが検出する加速度とに看過できない偏差がある場合、加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLの異常を発見できる。よって、制御ユニットU11,U12,SU1,SU2,SU3の前述の異常診断に加えて加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLの異常診断を行ってもよい。また、加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLを各制御ユニットU12,SU1,SU2,SU3とは独立に設け、各制御ユニットU12,SU1,SU2,SU3の基板CB1,CB2に1軸或いは多軸の安価で補助的な加速度センサを設けてもよい。この場合、基板CB1,CB2に設けた加速度センサの出力から加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLが検出する加速度を推定できる。よって、この推定された加速度と加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLが検出する加速度とを比較して加速度センサGFR,GFL,GRR,GRLの異常を診断してもよい。また、異常が認められた場合、基板CB1,CB2に設けた安価で補助的な加速度センサが検出する加速度を利用して制御指令の生成も可能であるので、堅牢な制御システムを構築できる。また、補助的な加速度センサを設ける場合、この加速度センサは基板CB1,CB2に設けられるので安価である。
第二実施形態の制御装置101における異常診断は前述のように行われるが、異常と判断された場合の主コントローラM11,M12および副コントローラS11,S12の対応は、第一実施形態の制御装置1と同様である。つまり、主コントローラM11,M12は、図5に示す状態遷移図のように、副コントローラS11,S12は、図6に示す状態遷移図のように、自身の状態によって状態が遷移し、採るべき行動が決定される。対して、副制御ユニットSU1,SU2,SU3における低級コントローラL1,L2は、図13に示す状態遷移図に従って行動する。基本的には、低級コントローラL1,L2のうち低級コントローラL1を予め副制御ユニットSU1,SU2,SU3においてプライマリコントローラとして動作する。低級コントローラL2をプライマリコントローラとしてもよい。低級コントローラL1がプライマリコントローラであるとき、そのコントローラは、自身が好調であればプライマリコントローラとしての地位を維持し、制御対象のダンパの減衰力可変バルブV1のコイルCo3へ通電する制御を実施する(状態ST21)。対して、プライマリコントローラである低級コントローラL1が模擬演算処理結果の多数決にて敗北すると、状態ST22へ移行して、出力ポート172からの電流出力を0として、次回の制御周期に制御に復帰して模擬演算に参加するまでその状態を維持する。次回の制御周期で行う模擬演算処理結果の比較により正常となると、制御に復帰できる状態となるが、コントローラは、セカンダリコントローラとして復帰する(状態ST23)。つまり、セカンダリコントローラは、模擬演算結果の多数決には参加するが、出力電流を0として制御には参加しない。さらに、セカンダリコントローラも模擬演算処理結果の多数決で敗北すると状態ST26へ移行する。状態ST26では、副制御ユニットSU1,SU2,SU3における低級コントローラL1,L2は、制御を停止して出力電流を0とし、エラーコードの出力と制御ユニットの停止を行う。したがって、低級コントローラL1が模擬演算処理結果の多数決で敗北した時に、低級コントローラL2がセカンダリコントローラとして正常に待機できていれば、この低級コントローラL2がプライマリコントローラとして機能し始める。そして、次回の制御周期の模擬演算処理結果の多数決で低級コントローラL1が勝利し制御復帰が可能となっても、低級コントローラL1はセカンダリコントローラとして機能し、低級コントローラL2がプライマリコントローラとして機能し続ける。この状態で、低級コントローラL2が模擬演算処理結果の多数決で敗北し、低級コントローラL1が模擬演算処理結果の多数決で勝利すると低級コントローラL1が状態ST21へ移行してプライマリコントローラとして機能する。また、状態ST22にあって、さらに、セカンダリコントローラの演算能力が不調の場合、つまり、低級コントローラL1,L2の両方の模擬演算処理結果の多数決で敗北し演算能力が不調の場合には、状態ST26へ移行する。この場合、副制御ユニットSU1,SU2,SU3における低級コントローラL1,L2は、制御を停止して出力電流を0とし、エラーコードの出力と制御ユニットの停止を行う(ST26)。
プライマリコントローラとして機能している低級コントローラL1(L2)の制御系統が不調となると、不調である制御系統の出力を0として制御を停止する(状態ST24)。この状態で、さらに対となる低級コントローラL2(L1)の制御系統が不調となると、状態ST25へ移行する。この状態ST25では、低級コントローラL1,L2ともに制御不能であるので、エラーコードを出力し、制御を中止する。この状態は、制御装置101の再起動まで維持される。
このように本発明の制御装置101にあっては、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12にそれぞれ主コントローラM11,M12と演算処理能力が低い副コントローラS11,S12を対として設けてある。よって、一部のコントローラM11,M12,S11,S12が不調に陥っても制御対象の制御が可能であるので、制御対象の制御を続行してフォールトトレランス機能を発揮できる。また、多数決によって正しい制御指令を採用して制御を行えるので、ノイズなどの影響を受けづらく、堅牢な制御が可能となる。さらに、多数決によって正しい制御指令を採用して制御を行えるので、全ての異常パターンを把握しておき、異常パターンに該当するか否かの判断を行って異常を認識する必要がなく、不測の事態が生じても正しい制御指令による制御が可能となる。
そして、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、それぞれ、制御対象を直接制御するようになっており、中央プロセッサが不要となる。加えて、主コントローラM11(M12)に対して副コントローラS11(S12)は、演算処理能力が低くて済むために、副コントローラS11(S12)については安価なマイクロコンピュータを利用でき、制御装置1のシステム全体を安価に構成できる。
また、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、共に、車載ネットワークN1に接続されており、制御に必要な情報が第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12の双方に入力される。したがって、第一制御ユニットU11或いは第二制御ユニットU12の一方が車載ネットワークN1との接続が絶たれても、第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12とが互いに通信可能で制御対象の制御を切れ目なく続行できる。
また、第一制御ユニットU11および第二制御ユニットU12は、予備バッテリーSB1を備えているので、車両の図示しない電源からの電力供給が途絶えても、制御対象の制御を継続できる。
また、制御装置1では、演算能力の低い各副コントローラS11,S12は、各主コントローラM11,M12の演算周期よりも低い演算周期で主コントローラM11,M12と同じ情報に基づいて制御指令を求める演算を行って、演算結果を比較して異常診断を行うので、副コントローラS11,S12に安価なマイクロコンピュータを用いても無理なく異常診断を行え、フォールトトレランスを実現できる。
なお、副コントローラS11,S12が各主コントローラM11,M12が制御指令を求める演算処理の一部を同一情報に基づいて演算し、各主コントローラM11,M12が演算処理の一部を演算処理して得た演算結果と各副コントローラS11,S12の演算結果を比較して異常診断を行う場合、副コントローラS11,S12が全ての制御指令を演算するのに要する時間よりも短い時間で前述の演算結果を得られるため、異常診断の単位時間当たりの頻度を多くでき、密に異常診断を行える。
また、本実施の形態では、第一制御ユニットU11と第二制御ユニットU12を接続する主信号線151に並列して両者を接続する副信号線161を有し、この副信号線161に副制御ユニットSU1,SU2,SU3が直列に接続され、副信号線161の途中で有って第一制御ユニットU11と副制御ユニットSU1との間、副制御ユニットSU1,SU2,SU3間、および第二制御ユニットU12と副制御ユニットSU3との間にリレー143c,181d,181eを設けている。そのため、副信号線161に断線が生じた場合も、副信号線161の断線部分を迂回して通信を行って通信可能な状態を維持し、且つ、通信速度の低下を抑制する。副制御ユニットが一つの場合には、リレーは、副信号線161上の第一制御ユニットU11と副制御ユニットとの間と、第二制御ユニットU12と副制御ユニットとの間とに設ければよく、副制御ユニットが複数ある場合には、これに加えて、副制御ユニット間にも設ければよい。
なお、前述したところでは、制御装置101の制御対象をモータM、ダンパD1,D2,D3,D4としているが、制御対象数が増減する場合、適宜、制御対象数のあわせて副制御ユニット数を増減すればよい。たとえば、パワーステアリング装置で大トルクを必要としてモータを二つ設け、制御対象数がダンパD1,D2,D3,D4と合わせて六個である場合、副制御ユニットを一つ追加して、六個の制御ユニットを用意すればよい。また、本制御装置101は、車体と車輪との間に介装されるダンパを制御する場合、車両の輪数に合わせて副制御ユニット数を決定すればよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。