JP2017172440A - エンジンオイルの劣化推定装置 - Google Patents

エンジンオイルの劣化推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】エンジンオイルの劣化をより精度良く推定でき、それにより、エンジンオイルの交換時期をより適切に判定できるエンジンオイルの劣化推定装置を提供する。【解決手段】本発明のエンジンオイルの劣化推定装置では、エンジンオイルEO中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータとして、クランクケース内SOx濃度[SOx]を、排気管5に設けたSOxセンサ14の検出結果に基づくECU2による演算(図3のステップ2、図4)によって、又はクランクケース3eに設けたSOxセンサ14’による検出によって、取得する。そして、取得されたクランクケース内SOx濃度[SOx]に応じて、エンジンオイルEOの劣化を推定する(図3のステップ6、図6)。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関の潤滑に用いられるエンジンオイルの劣化を推定するエンジンオイルの劣化推定装置に関する。
エンジンオイルは、エンジンの潤滑機能に加えて、清浄化や、防錆、腐食防止などの様々な機能を有する。エンジンオイルが劣化すると、これらの諸機能が維持できなくなるとともに、スラッジの生成などによりエンジンの損傷などの不具合の原因にもなるので、劣化度合に応じて早期に交換することが好ましい。一方、近年の環境保護の観点からは、廃油量の削減が求められており、エンジンオイルの場合には特に、廃油量や交換頻度の多さから、交換間隔をできるだけ長くすることが強く望まれている。以上のようなエンジン保護と環境保護の両立という観点から、エンジンオイルの実際の劣化を精度良く推定し、エンジンオイルの交換時期を適切に設定することが、非常に重要な課題になっている。
このため、従来、エンジンオイルの劣化を推定する劣化推定装置が提案されており、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この劣化推定装置では、エンジンオイルの酸化防止性能(例えば酸化誘導時間OIT)と清浄維持性能(例えば全塩基価TBN)をそれぞれ別個に推定し、推定された酸化防止性能及び清浄維持性能に基づいて、エンジンオイルの劣化が推定される。
上記の酸化防止性能の推定は、エンジンオイルの温度(油温)、クランクケース内のNOx濃度及びエンジンオイル中の燃料濃度をパラメータとし、所定の算出式を用いて行われる。また、清浄維持性能の推定は、油温及びクランクケース内のNOx濃度をパラメータとし、所定の算出式を用いて行われる。
特開2009−8058号公報
上述した従来の劣化判定装置では、エンジンオイルの劣化を推定するためのパラメータとして、油温、クランクケース内のNOx濃度及びエンジンオイル中の燃料濃度が用いられている。しかし、発明者の知見によれば、これらのパラメータ以外に、、エンジンオイル中のSOx(硫黄酸化物)がエンジンオイルの劣化に影響を及ぼすことが判明した。これは、エンジンオイル中のSOx量が増えると、凝縮して硫酸になり、例えば清浄維持性能の場合には、清浄剤に含まれるリチウムが硫酸を中和し、エンジンオイルを塩基状態に維持するために消費されるためと推定される。エンジンオイルの劣化の主な原因がSOxの場合には特に、エンジンの各部における腐食が進行するおそれがある。
これに対し、従来の劣化判定装置では、上述したパラメータを用い、エンジンオイル中のSOxを考慮することなく、エンジンオイルの劣化を推定するので、良好な推定精度を確保することができない。その結果、エンジンオイルの交換時期を適切に判定できず、その交換が遅れがちになってしまう。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、エンジンオイルの劣化をより精度良く推定でき、それにより、エンジンオイルの交換時期をより適切に判定することができるエンジンオイルの劣化推定装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、内燃機関3の潤滑に用いられるエンジンオイルEOの劣化を推定するエンジンオイルの劣化推定装置であって、エンジンオイルEO中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータ(実施形態における(以下、本項において同じ)クランクケース内SOx濃度[SOx])を取得するSOx濃度パラメータ取得手段(SOxセンサ14、ECU2、図3のステップ2、図4、SOxセンサ14’)と、取得されたSOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルEOの劣化を推定する劣化推定手段(ECU2、図3のステップ6、図6)と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、エンジンオイル中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータを取得するとともに、取得されたSOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルの劣化が推定される。前述したように、SOxはエンジンオイルの劣化の要因の1つであり、エンジンオイル中のSOx濃度が高いほど、その劣化度合はより高くなる。したがって、取得されたSOx濃度パラメータに応じてエンジンオイルの劣化を推定することにより、エンジンオイル中のSOx濃度を反映させながら、エンジンオイルの劣化をより精度良く推定でき、それにより、エンジンオイルの交換時期をより適切に判定することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエンジンオイルの劣化推定装置において、劣化推定手段は、SOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルEOの酸化防止性能(酸化誘導時間OIT)を推定する酸化防止性能推定手段(ECU2、図3のステップ5)と、SOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルEOの清浄維持性能(全塩基価TBN)を推定する清浄維持性能推定手段(ECU2、図3のステップ4)と、を有し、推定された酸化防止性能及び清浄維持性能に基づいて、エンジンオイルEOの劣化を推定すること(図6)を特徴とする。
酸化防止性能及び清浄維持性能はいずれも、エンジンオイルの劣化度合を良好に表す劣化パラメータである。酸化防止性能は、エンジンオイルに添加される酸化防止剤によって発揮され、オイル中における酸化物の生成を防止する機能である。酸化防止性能が低下すると、主として低温状態において、酸化物による不溶解分が発生し、凝集することによって、スラッジが生成され(以下「低温スラッジ」という)、それに伴い、エンジンオイルの諸機能が低下する。
一方、清浄維持性能は、エンジンオイルに添加される清浄剤によって発揮され、混入物などによる不溶解分を微細な状態でオイル中に分散させ、エンジンオイルを清浄に維持する機能である。清浄維持性能が低下すると、高温状態のエンジンオイルが蒸発しても、不溶解分が蒸発せずに残留し、凝集することによって、スラッジが生成され(以下「高温スラッジ」という)、それに伴い、上述した低温スラッジの場合と同様、エンジンオイルの諸機能が低下する。
また、酸化防止性能及び清浄維持性能はいずれも、エンジンオイル中のSOxによって低下するとともに、SOx濃度が高いほど、低下度合が大きいことが確認されている。さらに、酸化防止性能と清浄維持性能では、上述したように消耗の要因やメカニズムが異なるため、消耗の状況や進行度合が互いに異なる。このため、酸化防止性能及び清浄維持性能の一方に基づいて劣化判定を行った場合には、安全率を高めに設定することが必要になり、エンジンオイルが無駄に交換されてしまう。
以上の技術的観点に基づき、本発明によれば、取得されたSOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルの酸化防止性能及び清浄維持性能をそれぞれ推定する。これにより、エンジンオイル中のSOx濃度を反映させながら、酸化防止性能及び清浄維持性能をそれぞれ精度良く推定できる。また、推定された酸化防止性能及び清浄維持性能に基づいて、エンジンオイルの劣化を最終的に推定する。このように酸化防止性能及び清浄維持性能という異なる2種類のオイル劣化パラメータを併用することによって、それらの一方のみを用いる場合よりも安全率を小さく設定しながら、エンジンオイルの劣化をさらに精度良く推定することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のエンジンオイルの劣化推定装置において、排気通路(排気管5)に設けられ、排気ガス中のSOx濃度SOxEを検出するSOxセンサ14と、検出された排気ガス中のSOx濃度SOxEに基づき、燃料中のSOx濃度SOxFを推定する燃料中SOx濃度推定手段(ECU2、図4のステップ11)と、内燃機関3の負荷(燃料噴射量QINJ)及び回転数NEを内燃機関3の運転状態として検出する運転状態検出手段(ECU2、クランク角センサ11)と、をさらに備え、SOx濃度パラメータ取得手段は、推定された燃料中SOx濃度SOxFと検出された内燃機関3の負荷及び回転数NEに基づき、エンジンオイルEOを貯留するクランクケース3e内のSOx濃度[SOx]を、SOx濃度パラメータとして算出すること(図4のステップ12、13)を特徴とする。
この構成によれば、SOx濃度パラメータとして、エンジンオイルを貯留するクランクケース内のSOx濃度が用いられる。これは、エンジンオイルは、クランクケースに貯留され、クランクケース内に存在するブローバイガスに常時、晒されるので、クランクケース内のSOx濃度とエンジンオイル中のSOx濃度が互いに密接に関連するためである。
また、この構成によれば、クランクケース内のSOx濃度を以下のようにして算出する。まず、排気通路に設けられたSOxセンサによって排気ガス中のSOx濃度を検出するとともに、検出された排気ガス中のSOx濃度に基づいて、燃料中のSOx濃度を推定する。また、推定された燃料中SOx濃度と検出された内燃機関の負荷及び回転数に基づき、クランクケース内のSOx濃度を算出する。内燃機関の負荷は燃料供給量に関連し、回転数は燃焼ガス量に関連するので、検出された実際の負荷及び回転数と燃料中のSOx濃度に基づいて、燃焼ガス中のSOx濃度、ひいてはクランクケース内のSOx濃度を精度良く算出できる。
そして、精度良く算出されたクランクケース内のSOx濃度をSOx濃度パラメータとして用い、それに応じて、エンジンオイルの劣化又は酸化防止性能及び清浄維持性能を推定するので、それらの推定を高精度で行うことができる。また、NOx触媒からSOxを除去するSOx除去制御などのために、排気通路にSOxセンサが設けられている場合には、そのような既存のSOxセンサとその検出結果を利用することによって、クランクケース内のSOx濃度の算出を容易かつ安価に行うことができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のエンジンオイルの劣化推定装置において、SOx濃度パラメータ取得手段は、互いに異なる所定の複数の燃料中SOx濃度SOxF1〜SOxFnに対して、内燃機関3の負荷及び回転数とクランクケース3e内のSOx濃度[SOx]との関係をそれぞれ規定した複数のマップ(図5)を記憶する記憶手段(ECU2)を有し、推定された燃料中SOx濃度SOxFに応じて複数のマップから選択されたマップを、検出された内燃機関3の負荷及び回転数に応じて検索することにより、クランクケース3e内のSOx濃度[SOx]を算出することを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関の負荷及び回転数とクランクケース内のSOx濃度との関係を、互いに異なる所定の燃料中SOx濃度ごとに規定した複数のマップがあらかじめ作成され、記憶されている。そして、これらの複数のマップから、推定された燃料中SOx濃度に応じてマップを選択し、選択されたマップを検出された内燃機関の負荷及び回転数に応じて検索することによって、クランクケース内のSOx濃度を算出するので、その算出を容易かつ適切に行うことができる。
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に記載のエンジンオイルの劣化推定装置において、SOx濃度パラメータ取得手段は、エンジンオイルEOを貯留するクランクケース3eに設けられ、クランクケース3e内のSOx濃度[SOx]をSOx濃度パラメータとして検出するSOxセンサ14’であることを特徴とする。
この構成によれば、クランクケースに設けられたSOxセンサによって、クランクケース内のSOx濃度を直接、検出するので、請求項3及び4のような推定や算出のための各種の演算処理を必要とすることなく、クランクケース内のSOx濃度を容易に取得することができる。
本発明の第1実施形態が適用された内燃機関を概略的に示す図である。 エンジンオイルの劣化推定装置の構成を示すブロック図である。 エンジンオイルの劣化推定処理のメインフローを示すフローチャートである。 クランクケース内のSOx濃度[SOx]の算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 SOx濃度[SOx]の算出に用いられるマップである。 劣化判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 残り寿命指数RTBNを求めるためのテーブルの一例である。 残り寿命指数ROITを求めるためのテーブルの一例である。 本発明の第2実施形態が適用された内燃機関を概略的に示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用された内燃機関3を示す。この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば4気筒のガソリンエンジンである。
エンジン3のピストン3aとシリンダヘッド3bの間には、燃焼室3cが形成されている。シリンダヘッド3bには、吸気管4及び排気管5が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)6及び点火プラグ7(図2参照)が取り付けられている。インジェクタ6の燃料噴射量QINJ及び噴射時期と点火プラグ7の点火時期は、後述するECU(電子制御ユニット)2によって制御される。
エンジン3のクランクシャフト3dを収容するクランクケース3e内の底部には、オイルパン3fが設けられている。オイルパン3fには、エンジン3の潤滑に用いられるエンジンオイルEOが貯留されている。
また、クランクシャフト3dには、クランク角センサ11が設けられている(図2参照)。クランク角センサ11は、クランクシャフト3dの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号を、所定のクランク角(例えば30度)ごとにECU2に出力する。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
また、エンジン3には水温センサ12及び油温センサ13が設けられている(図2参照)。水温センサ12は、エンジン3の本体内を循環する冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを検出し、油温センサ13は、エンジンオイルEOの温度(以下「油温」という)TOILを検出する。それらの検出信号はECU2に出力される。
吸気管4内にはスロットル弁8が設けられ、スロットル弁8には、モータなどで構成されたTHアクチュエータ9が接続されている。スロットル弁8の開度は、THアクチュエータ9への供給電流をECU2で制御することによって制御され、それにより、燃焼室3cに吸入される吸入空気量が制御される。
一方、排気管5には、エンジン3から排出された排気ガスを浄化するための三元触媒やNOx触媒などから成る触媒10が設けられ、その上流側にはSOxセンサ14が取り付けられている。SOxセンサ14は、排気ガス中のSOx濃度SOxEを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
図2に示すように、ECU2にはさらに、アクセル開度センサ15から、車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、車速センサ16から、車両の速度(車速)VPを表す検出信号が、それぞれ出力される。また、車両の運転席には、エンジンオイルEOの劣化状態を表示するためのオイルランプ21が設けられており、その動作はECU2によって制御される。
ECU2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、前述した各種のセンサ11〜16の検出信号などに応じて、インジェクタ6の燃料噴射制御や、点火プラグ7の点火時期制御、スロットル弁8による吸気量制御などのエンジン制御処理を実行するとともに、本実施形態では特に、エンジンオイルEOの劣化を推定する劣化推定処理を実行する。
本実施形態では、ECU2によって、SOx濃度パラメータ取得手段、劣化推定手段、酸化防止性能推定手段、清浄維持性能推定手段、燃料中SOx濃度推定手段、運転状態検出手段、及び記憶手段が構成されている。
次に、図3を参照しながら、上述したエンジンオイルEOの劣化推定処理について説明する。本処理は、ECU2により、例えば所定時間ごとに繰り返し実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、クランクケース3e内のNOx濃度[NOx]を算出する。このNOx濃度[NOx]の算出は、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって行われる。
次に、クランクケース3e内のSOx濃度(以下「クランクケース内SOx濃度」という)[SOx]を算出する(ステップ2)。図4は、その算出処理のサブルーチンを示す。本処理では、まずステップ11において、燃料中のSOx濃度である燃料中SOx濃度SOxFを算出する。その算出は、例えばSOxセンサ14で検出された排気ガス中SOx濃度SOxEと、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって行われる。
次に、図5に示す複数のマップから、算出された燃料中SOx濃度SOxFに対応するマップを選択する(ステップ12)。同図に示すように、これらのマップは、互いに異なる所定の燃料中SOx濃度SOxF1〜SOxFnのそれぞれに対して、所定の燃料噴射量QINJ1〜i及びエンジン回転数NE1〜jとクランクケース内SOx濃度[SOx]との関係をあらかじめ実験などによって求め、マップ化したものである。なお、算出された燃料中SOx濃度SOxFが所定値SOxF1〜nのいずれにも一致しない場合には、燃料中SOx濃度SOxFに近い2つのマップが選択される。
次に、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEに応じ、選択したマップを検索することによって、クランクケース内SOx濃度[SOx]を算出し(ステップ13)、本処理を終了する。なお、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEがそれぞれ、所定値QINJ1〜i及びエンジン回転数NE1〜jのいずれにも一致しない場合には、SOx濃度[SOx]は補間計算によって算出される。また、上記のようにステップ12で2つのマップが選択された場合には、両マップを用いて算出されたSOx濃度[SOx]に対して補間計算が行われる。
図3に戻り、上記ステップ2に続くステップ3では、エンジンオイルEO中の燃料濃度(希釈率) [Fuel] を算出する。この燃料濃度 [Fuel] の算出方法は、本出願人が特開2009−8058号公報において開示したものと基本的に同じであるので、以下、その概略について説明する。まず、エンジン回転数NE及び燃料噴射量QINJに応じて、エンジンオイルEOへの燃料混入率RODを算出するとともに、この燃料混入率RODを燃料噴射量QINJに乗算し、さらにエンジン水温TW及び燃料噴射時期で補正することによって、燃料混入量QAODを算出する。
次に、エンジン回転数NE及び燃料噴射量QINJに応じて、エンジンオイルEOからの燃料蒸発率RVAFを算出するとともに、この燃料蒸発率RVAFを燃料希釈量QOD(エンジンオイルEO中に含まれる総燃料量)に乗算し、さらに油温TOILで補正することによって、燃料蒸発量QVAFを算出する。そして、燃料混入量QAODと燃料蒸発量QVAFとの差を積算することで、燃料希釈量QODを算出するとともに、燃料希釈量QODをエンジンオイル総量QOILで除算することによって、燃料濃度[Fuel]が算出される。
図3に戻り、上記ステップ3に続くステップ4では、エンジンオイルEOの全塩基価(以下「TBN」という)を算出する。このTBNは、エンジンオイルEOに添加される清浄剤の残存量を示す値であり、エンジンオイルEOの清浄維持性能の有効な指標になるものである。TBNがある限界値を下回ると、高温スラッジの生成が顕著になることが知られており、TBNは、エンジンオイルEOの劣化度合を良好に表す。
このTBNの算出は、油温TOILに応じ、前記ステップ1及び2で算出したNOx濃度[NOx]及びSOx濃度[SOx]を用い、次式(1)によって行われる。
Figure 2017172440
ここで、[TBN]INI はTBNの初期値である。
このTBNの算出式(1)は、以下のようにして導かれる。
まず、TBNの減少速度(単位時間当たりの消費量)d [TBN] /dtは、次式(2)で表される。
Figure 2017172440
ここで、右辺の第1項のk1[TBN]2は、熱劣化によるTBNの減少分に相当する熱減少項、第2項のk2[NOx]2[TBN]は、NOxによるTBNの減少分に相当するNOx減少項、第3項のk3[SOx]2[TBN]は、SOxによるTBNの減少分に相当するSOx減少項、第4項のk4は、エンジンオイルEO自体の熱分解によるTBNの減少分に相当する熱分解減少項である。
また、k1〜k4は、各項に関するTBNの反応速度係数であり、油温TOILに応じ、それぞれの所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。また、式(2)の[TBN] [NOx]及び[SOx]にそれぞれ付されたべき指数「2」は、第1項のTBNに関する反応速度次数、第2項のNOxに関する反応速度次数、及び第2項のNOxに関する反応速度次数がいずれも「2」であることを示すものであり、そのことは実験によって確認されている
そして、式(2)を積分することによって上記式(1)が得られ、この式(1)を用い、ステップ4においてTBNが算出される。
図3に戻り、上記ステップ4に続くステップ5では、エンジンオイルEOの酸化誘導時間(以下「OIT」という)を算出する。このOITは、試料油及び所定の基準物質を所定の高温及び高圧条件下においたときに発熱が開始されるまでの時間として定義されるものであり、酸化防止性能と密接な相関性を有し、その有効な指標となる。エンジンオイルEO中にOITが十分に残存していれば、不溶解分が発生せず、低温スラッジも生成されないことが、確認されており、OITは、エンジンオイルEOの劣化度合を良好に表す。
このOITの算出は、油温TOILに応じ、前記ステップ1〜3で算出したNOx濃度[NOx]、SOx濃度[SOx]及び燃料濃度[Fuel]を用い、次式(3)によって行われる。
Figure 2017172440
ここで、[OIT]total はエンジンオイルEO中の総OITである。式(3)’の[OIT]AHは、酸化防止剤のうちの連鎖停止剤相当分のOITであり、式(3)の第1項に相当する。式(3)’の[OIT]ZNは、酸化防止剤のうちの過酸化物分解剤相当分のOIT)であり、式(3)の第2項に相当する。また、第3項のk13・tは、安全率を考慮した補正項である。
このOITの算出式(3)は、以下のようにして導かれる。
まず、[OIT]total の減少速度(単位時間当たりの消費量)d[OIT]total/dtは、次式(4)’及び(4)で表される。
Figure 2017172440
ここで、式(4)の右辺の第1項全体は[OIT]AHの減少速度d[OIT]AH/dtに相当しており、そのうちのk5は熱劣化による減少分に相当する熱減少項、k6[NOx]βはNOxによる減少分に相当するNOx減少項、k7[SOx]γはSOxによる減少分に相当するSOx減少項、k8[Fuel]δは、燃料による減少分に相当する燃料減少項である。
k5〜k8は、各項に関する[OIT]AHの反応速度係数であり、油温TOILに応じ、それぞれの所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。また、[NOx]、[SOx]及び[Fuel]に付されたべき指数β、γ及びδは、それぞれの反応速度次数を表し、あらかじめ実験などによって求められる。
同様に、式(4)の右辺の第2項全体は[OIT]ZNの減少速度d[OIT]ZN/dtに相当しており、そのうちのk9は熱劣化による減少分に相当する熱減少項、k10[NOx]βはNOxによる減少分に相当するNOx減少項、k11[SOx]γはSOxによる減少分に相当するSOx減少項、k12[Fuel]δは、燃料による減少分に相当する燃料減少項である。
k9〜k12は、各項に関する[OIT]AHの反応速度係数であり、油温TOILに応じ、それぞれの所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。[NOx]、[SOx]及び[Fuel]に付されたべき指数ε、ζ及びηは、それぞれの反応速度次数を表し、あらかじめ実験などによって求められる。また、k13は、安全率を考慮した補正係数であり、油量などに応じて設定される。
そして、式(4)を積分することによって上記式(3)が得られ。この式(3)を用い、ステップ5においてOITが算出される。
図3に戻り、前記ステップ5に続くステップ6では、上述したようにして算出したTBN及びOITに基づいて、エンジンオイルEOの劣化を判定し、本処理を終了する。
図6は、この劣化判定処理のサブルーチンを示す。本処理では、まずステップ21において、TBNに応じ、図7に示すテーブルを検索することによって、TBNに基づく残り寿命指数RTBNを算出する。このテーブルは、TBN値とエンジンオイルEOの残り寿命との関係を実験などによって求め、残り寿命指数RTBNとして表したものである。残り寿命指数RTBNは、その値が小さいほど、エンジンオイルEOの劣化度合が高く、その残り寿命がより短いことを示す。
次に、OITに応じ、図8に示すテーブルを検索することによって、OITに基づく残り寿命指数ROITを算出する(ステップ22)。このテーブルは、OIT値とエンジンオイルEOの残り寿命との関係を実験などによって求め、残り寿命指数ROITとして表したものである。残り寿命指数ROITもまた、その値が小さいほど、エンジンオイルEOの劣化度合が高く、その残り寿命がより短いことを示す。
次いで、ステップ21及び22で算出した残り寿命指数RTBN、ROITのうちのより小さい方を、最終的な残り寿命指数ROLFとして設定する(ステップ23)とともに、この残り寿命指数ROLFが所定の基準値RREFよりも小さいか否かを判別する(ステップ24)。
そして、この答えがNOで、ROLF≧RREFのときには、エンジンオイルEOが劣化していないと判定して、オイル劣化フラグF_OILNGを「0」にセットし(ステップ25)、本処理を終了する。
一方、ステップ24の答えがYESで、ROLF<RREFのときには、エンジンオイルEOが劣化していると判定し、そのことを表すために、オイル劣化フラグF_OILNGを「1」にセットし(ステップ26)、本処理を終了する。このようにオイル劣化フラグF_OILNGが「1」にセットされると、ECU2からの制御信号により、オイルランプ21が点灯することによって、運転者にエンジンオイルEOの交換が促される。
以上のように、本実施形態によれば、エンジンオイルEOの劣化に影響を及ぼすエンジンオイルEO中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータとして、クランクケース内SOx濃度[SOx]を算出するとともに、算出されたSOx濃度[SOx]に応じて、エンジンオイルEOの劣化を推定する。これにより、エンジンオイルEO中のSOx濃度を反映させながら、エンジンオイルEOの劣化をより精度良く推定でき、したがって、エンジンオイルEOの交換時期をより適切に判定することができる。
また、SOx濃度[SOx]に応じて、酸化防止性能の消耗度合を表すOITと清浄維持性能の消耗度合を表すTBNを、それぞれ別個に算出する。これにより、エンジンオイルEO中のSOx濃度を反映させながら、OIT及びTBNをそれぞれ精度良く算出できる。また、算出したOIT及びTBNの両方に基づいて、エンジンオイルEOの劣化を最終的に推定するので、それらの一方のみを用いる場合よりも安全率を小さく設定しながら、エンジンオイルEOの劣化をさらに精度良く推定することができる。
さらに、SOxセンサ14によって排気ガス中のSOx濃度SOxEを検出し、検出されたSOx濃度SOxEに基づいて燃料中SOx濃度SOxFを推定するとともに、この燃料中SOx濃度SOxFと燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEに基づいて、クランクケース内SOx濃度[SOx]を算出するので、その算出を精度良く行うことができる。
そして、精度良く算出されたSOx濃度[SOx]を用いて、OIT及びTBNを算出し、エンジンオイルEOの劣化を推定するので、その推定を高精度で行うことができる。また、触媒10のNOx触媒からSOxを除去するSOx除去制御などを行うために、排気管5にSOxセンサ14が設けられている場合には、そのような既存のSOxセンサ14とその検出結果を利用することによって、クランクケース内SOx濃度[SOx]の算出を容易かつ安価に行うことができる。
また、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEとクランクケースSOx濃度[SOx]との関係を、燃料中SOx濃度SOxFごとにあらかじめ規定した複数のマップから、推定された燃料中SOx濃度SOxFに該当するマップを選択し、選択されたマップを燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEに応じて検索することによって、SOx濃度[SOx]を算出するので、その算出を容易かつ適切に行うことができる。
図9は、本発明の第2実施形態を示す。図1との比較から明らかなように、第1実施形態ではSOxセンサ14が排気管5に設けられているのに対し、本実施形態では、クランクケース3eにSOx14’が設けられている。このSOxセンサ14’は、クランクケース内SOx濃度[SOx]を検出する。検出されたSOx濃度[SOx]は、前記式(1)及び(3)においてTBN及びOITの算出に用いられる。
このように、本実施形態によれば、クランクケース内SOx濃度[SOx]をSOxセンサ14’によって直接、検出するので、第1実施形態のような推定や算出のための各種の演算処理を必要とすることなく、クランクケース内SOx濃度[SOx]を容易に取得することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、エンジンオイルEO中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータとして、クランクケース内SOx濃度[SOx]を用いているが、これに代えて、他の適当なパラメータを用いてもよい。例えば、エンジンオイルEO中のSOx濃度を直接、センサで検出し又は演算などで推定してもよい。
また、第1実施形態では、検出された排気ガス中のSOx濃度SOxEから、燃料中SOx濃度SOxFやクランクケース内SOx濃度[SOx]を算出する際のパラメータとして、燃料噴射量QINJ及びエンジン回転数NEを用いている。この場合、燃料噴射量QINJに代えて、エンジン3の負荷を表す他の適当なパラメータを用いてもよく、例えばエンジン3に要求される要求トルクや、吸気圧、吸入空気量などを用いることが可能である。また、それらの算出結果を、エンジン3の運転状態を表す他の適当なパラメータ、例えば点火時期やエンジン水温TWなどで補正してもよい。
さらに、実施形態では、酸化防止性能を表す指標としてOITを、清浄維持性能を表す指標としてTBNを、それぞれ用いているが、これに限らず、他の適当な指標を用いることが可能である。また、実施形態で説明したOIT及びTBNの算出手法は、あくまで例示であり、他の適当な手法を採用できる。
また、実施形態では、OITの算出に用いるエンジンオイル中の燃料濃度[Fuel]を、燃料噴射量QINJやエンジン回転数NEなどのエンジン3の運転状態に応じて推定しているが、センサを用いて直接、検出してもよい。同様に、OIT及びTBNの算出に用いる油温TOILを、油温センサ13で検出しているが、エンジン3の運転状態、例えばエンジン水温TWや始動時からの燃料噴射量QINJの積算値などに応じて求めてもよい。
さらに、実施形態では、エンジンオイルEOの劣化推定の結果として求めた残り寿命指数ROLFと、所定の基準値RREFとの比較結果に基づき、エンジンオイルEOの劣化度合(寿命)を判定し、オイルランプ21で表示するようにしているが、これに限らない。例えば、車速センサ16で検出された車速VPやエンジン回転数NEなどに基づき、エンジンオイルEOの交換時から現在までの車両の走行距離を積算し、この走行距離と残り寿命指数ROLFとの関係から、エンジンオイルEOが寿命に達するまでの残存走行距離を算出し、表示するようにしてもよい。
また、実施形態は、本発明を車両用のガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ディーゼルエンジンなどの各種のエンジンや、クランクシャフトを鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
2 ECU(SOx濃度パラメータ取得手段、劣化推定手段、酸化防止性能推定手段、
清浄維持性能推定手段、燃料中SOx濃度推定手段、運転状態検出手段及び記憶手
段)
3 エンジン
3e クランクケース
5 排気管(排気通路)
11 クランク角センサ(運転状態検出手段)
14 SOxセンサ(SOx濃度パラメータ取得手段)
14’SOxセンサ(SOx濃度パラメータ取得手段)
EO エンジンオイル
OIT 酸化誘導時間(酸化防止性能)
TBN 全塩基価(清浄維持性能)
[SOx] クランクケース内のSOx濃度(SOx濃度パラメータ)
SOxE 排気ガス中のSOx濃度
SOxF 燃料中のSOx濃度
QINJ 燃料噴射量(内燃機関の負荷)
NE エンジン回転数(内燃機関の回転数)

Claims (5)

  1. 内燃機関の潤滑に用いられるエンジンオイルの劣化を推定するエンジンオイルの劣化推定装置であって、
    エンジンオイル中のSOx濃度を表すSOx濃度パラメータを取得するSOx濃度パラメータ取得手段と、
    当該取得されたSOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルの劣化を推定する劣化推定手段と、
    を備えることを特徴とするエンジンオイルの劣化推定装置。
  2. 前記劣化推定手段は、
    前記SOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルの酸化防止性能を推定する酸化防止性能推定手段と、
    前記SOx濃度パラメータに応じて、エンジンオイルの清浄維持性能を推定する清浄維持性能推定手段と、を有し、
    前記推定された酸化防止性能及び清浄維持性能に基づいて、エンジンオイルの劣化を推定することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンオイルの劣化推定装置。
  3. 排気通路に設けられ、排気ガス中のSOx濃度を検出するSOxセンサと、
    当該検出された排気ガス中のSOx濃度に基づき、燃料中のSOx濃度を推定する燃料中SOx濃度推定手段と、
    前記内燃機関の負荷及び回転数を当該内燃機関の運転状態として検出する運転状態検出手段と、をさらに備え、
    前記SOx濃度パラメータ取得手段は、
    前記推定された燃料中SOx濃度と前記検出された内燃機関の負荷及び回転数に基づき、エンジンオイルを貯留するクランクケース内のSOx濃度を、前記SOx濃度パラメータとして算出することを特徴とする、請求項1又は2に記載のエンジンオイルの劣化推定装置。
  4. 前記SOx濃度パラメータ取得手段は、
    互いに異なる所定の複数の燃料中SOx濃度に対して、前記内燃機関の負荷及び回転数と前記クランクケース内のSOx濃度との関係をそれぞれ規定した複数のマップを記憶する記憶手段を有し、
    前記推定された燃料中SOx濃度に応じて前記複数のマップから選択されたマップを、前記検出された内燃機関の負荷及び回転数に応じて検索することにより、前記クランクケース内のSOx濃度を算出することを特徴とする、請求項3に記載のエンジンオイルの劣化推定装置。
  5. 前記SOx濃度パラメータ取得手段は、エンジンオイルを貯留するクランクケースに設けられ、当該クランクケース内のSOx濃度を前記SOx濃度パラメータとして検出するSOxセンサであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエンジンオイルの劣化推定装置。
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