本発明のラテックス組成物は、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスに、pHが7〜14である、セルロースナノファイバ水溶液を配合してなるラテックス組成物であって、ASTMD1417−10に準拠して、23℃、回転数14,000rpmの条件で30分間撹拌した後、80メッシュの金網にてろ過した場合における、ろ過残渣の量が、前記ラテックス組成物に対して0.1重量%以下であるラテックス組成物である。尚、「ASTMD1417−10に準拠して」とは、ASTMD1417−10の「Determination of Mechanical Stability」に記載の方法に準拠して機械的安定性試験を行った場合のことを意味し、具体的には MS−5114(上島製作所)またはLL5110NA MK3(Source 2 trade Ltd)を使用する。但し、撹拌ディスクはASTM D1076−10に規定されているものを使用する。
合成ポリイソプレンラテックス
本発明で用いる合成ポリイソプレンラテックスは、イソプレンを重合して得られる合成ポリイソプレンのラテックスである。
本発明で用いる合成ポリイソプレンラテックスに含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
合成ポリイソプレンは、従来公知の方法、たとえばトリアルキルアルミニウム−四塩化チタンからなるチーグラー系重合触媒やn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、不活性重合溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを溶液重合して得ることができる。溶液重合により得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液は、後述する合成ポリイソプレンラテックスの製造にそのまま用いてもよいが、該重合体溶液から固形の合成ポリイソプレンを取り出した後、有機溶媒に溶解して、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いることもできる。
この際、合成した後に重合体溶液中に残った重合触媒の残渣などの不純物を取り除いてもよい。また、重合中または重合後の溶液に、後述する老化防止剤を添加してもよい。また、市販の固形の合成ポリイソプレンを用いることもできる。
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2−ビニル結合単位、3,4−ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
合成ポリイソプレンの重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000〜5,000,000、より好ましくは500,000〜5,000,000、さらに好ましくは800,000〜3,000,000である。合成ポリイソプレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体などの膜成形体の引張強度が向上するとともに、合成ポリイソプレンラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
また、合成ポリイソプレンのポリマー・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは50〜80、より好ましくは60〜80、さらに好ましくは70〜80である。
合成ポリイソプレンラテックスを得るための方法としては、たとえば、(1)有機溶媒に溶解または微分散した合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液を、アニオン性界面活性剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去して、合成ポリイソプレンラテックスを製造する方法、(2)イソプレン単独または、イソプレンとそれと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との混合物を、アニオン性界面活性剤の存在下に、乳化重合もしくは懸濁重合して、直接、合成ポリイソプレンラテックスを製造する方法、が挙げられるが、イソプレン単位中のシス結合単位の割合が高い合成ポリイソプレンを用いることができ、引張強度等の機械的特性に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすい点から、上記(1)の製造方法が好ましい。
上記(1)の製造方法で用いる有機溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒が好ましく、シクロヘキサンが特に好ましい。
なお、有機溶媒の使用量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは20〜1,500重量部、更に好ましくは500〜1500である。
上記(1)の製造方法で用いるアニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等が挙げられる。
これらアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
また、合成ポリイソプレン由来の、微量に残留する重合触媒(特に、アルミニウムとチタニウム)をより効率的に除去でき、ラテックス組成物を製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩と、脂肪酸塩とを併用して用いることが特に好ましい。ここで、脂肪酸塩としては、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムが好ましく、また、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。また、これらの界面活性剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
なお、上述したように、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることにより、得られるラテックスが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを含有するものとなる。
また、上記(1)の製造方法においては、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
さらに、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
上記(1)の製造方法で用いるアニオン性界面活性剤の使用量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。なお、2種類以上の界面活性剤を用いる場合においては、これらの合計の使用量を上記範囲とすることが好ましい。すなわち、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用量の合計を上記範囲とすることが好ましい。アニオン性界面活性剤の使用量が少なすぎると、乳化時に凝集物が多量に発生するおそれがあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、得られるディップ成形体などの膜成形体にピンホールが発生する可能性がある。
また、アニオン性界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用割合を、「脂肪酸塩」:「アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤の合計」の重量比で、1:1〜10:1の範囲とすることが好ましく、1:1〜7:1の範囲とすることがより好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤の使用割合が多すぎると、合成ポリイソプレンの取り扱い時に泡立ちが激しくなるおそれがあり、これにより、長時間の静置や、消泡剤の添加などの操作が必要になり、作業性の悪化およびコストアップに繋がるおそれがある。
上記(1)の製造方法で使用する水の量は、合成ポリイソプレンの有機溶媒溶液100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
有機溶媒に溶解または微分散した合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液を、アニオン性界面活性剤の存在下、水中で乳化する装置は、一般に乳化機または分散機として市販されているものであれば特に限定されず使用できる。合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液に、アニオン性界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
上記(1)の製造方法においては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去することが望ましい。
乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる合成ポリイソプレンラテックス中における、有機溶媒(好ましくは脂環族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
上記(1)の方法においては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去して、合成ポリイソプレンラテックスを得ることが望ましい。乳化物から有機溶媒を除去する方法は、得られる合成ポリイソプレンラテックス中における、有機溶媒としての脂環族炭化水素溶媒および芳香族炭化水素溶媒の合計含有量を500重量ppm以下とすることができるような方法であれば、特に限定されず、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
また、有機溶媒を除去した後、必要に応じ、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよく、特に、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるとともに、合成ポリイソプレンラテックス中の界面活性剤の残留量を低減することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100〜10,000G、遠心分離前の合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を、好ましくは2〜15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500〜1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03〜1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、合成ポリイソプレンラテックスを得ることができる。そして、これにより、合成ポリイソプレンラテックス中における、界面活性剤の残留量を低減することができる。
本発明で用いる合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%である。固形分濃度が低すぎると、後述するラテックス組成物の固形分濃度が低くなるために、後述するディップ成形体の膜厚が薄くなり破れ易くなる。逆に固形分濃度が高すぎると、合成ポリイソプレンラテックスの粘度が高くなり、配管での移送や調合タンク内での撹拌が困難になる場合がある。
本発明で用いる合成ポリイソプレンラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。この体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、合成ポリイソプレンラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
また、合成ポリイソプレンラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ラテックス
本発明で用いるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ラテックス(SISラテックス)は、スチレンとイソプレンのブロック共重合体(SIS)のラテックスである(「S」はスチレンブロック、「I」はイソプレンブロックをそれぞれ表す。)。
本発明で用いるSISラテックスの製造方法としては、特に限定されないが、有機溶媒に溶解または微分散したSISの溶液または微細懸濁液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去して、SISラテックスを製造する方法が好ましい。
SISは、従来公知の方法、たとえばn−ブチルリチウムなどの活性有機金属を開始剤として、不活性重合溶媒中で、イソプレンとスチレンとをブロック共重合して得ることができる。そして、得られたSISの重合体溶液は、SISラテックスの製造にそのまま用いてもよいが、該重合体溶液から固形のSISを取り出した後、その固形のSISを有機溶媒に溶解して、SISラテックスの製造に用いることもできる。
この際、合成した後に重合体溶液中に残った重合触媒の残渣などの不純物を取り除いてもよい。また、重合中または重合後の溶液に、後述する老化防止剤を添加してもよい。また、市販の固形のSISを用いることもできる。
有機溶媒としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを使用することができ、芳香族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒が好ましく、シクロヘキサンおよびトルエンが特に好ましい。
なお、有機溶媒の使用量は、SIS100重量部に対して、通常50〜2,000、好ましくは80〜1,000重量部、より好ましくは10〜500重量部、さらに好ましくは150〜300重量部である。
界面活性剤としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができ、アニオン性界面活性剤が好適であり、ロジン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
界面活性剤の使用量は、SIS100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。この量が少なすぎると、ラテックスの安定性が劣る傾向にあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、ディップ成形時に問題が起きる可能性がある。
上述したSISラテックスの製造方法で使用する水の量は、SISの有機溶媒溶液100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げれる。また、メタノールなどのアルコールに代表される極性溶媒を水と併用してもよい。
SISの有機溶媒溶液または微細懸濁液を、界面活性剤の存在下、水中で乳化する装置は、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができる。そして、界面活性剤の添加方法は、特に限定されず、予め水もしくはSISの有機溶媒溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
上述したSISラテックスの製造方法においては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去して、SISラテックスを得ることが好ましい。乳化物から有機溶媒を除去する方法は、特に限定されず、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
また、有機溶媒を除去した後、必要に応じ、SISラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよい。
本発明で用いるSISラテックスの固形分濃度は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%である。固形分濃度が低すぎると、固形分濃度が低すぎると、後述するラテックス組成物の固形分濃度が低くなるためディップ成形体の膜厚が薄くなり破れ易くなる。逆に固形分濃度が高すぎると、SISラテックスの粘度が高くなり、配管での移送や調合タンク内での撹拌が難しくなる。
また、SISラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合しても良い。pH調整剤としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができ、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
このようにして得られるSISラテックスに含まれる、SIS中のスチレンブロックにおけるスチレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、さらに好ましくは100重量%である。
また、SIS中のイソプレンブロックにおけるイソプレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、さらに好ましくは100重量%である。
なお、SIS中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99〜90:10、好ましくは3:97〜70:30、より好ましくは5:95〜50:50、さらに好ましくは10:90〜30:70の範囲である。
SISの重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜5,00,000、さらに好ましくは100,000〜3,00,000である。SISの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体などの膜成形体の引張強度と柔軟性のバランスが向上するとともに、SISのラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
SISラテックス中のラテックス粒子(SIS粒子)の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。ラテックス粒子の体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、SISラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
セルロースナノファイバ水溶液
本発明で用いるセルロースナノファイバ水溶液は、水中にセルロースナノファイバを溶解ないし分散させてなる、pHが7〜14の水溶液である。セルロースナノファイバ水溶液に含まれるセルロースナノファイバは、天然セルロース繊維を、たとえば、平均繊維径(平均繊維幅)が10μm以下となるまで解きほぐして得られるものである。
天然セルロース繊維としては、特に限定されないが、たとえば、木材パルプ、綿系パルプ、非木材系パルプ、バクテリアセルロース等が含まれる。木材パルプとしては、たとえば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等を挙げることができる。綿系パルプとしては、コットンリンター、コットンリント等を挙げることができる。非木材系パルプとしては、麦わらパルプ、バガスパルプ等を挙げることができる。これらの天然セルロース繊維は、1種単独でも、2種以上を併用して用いることもできる。
セルロースナノファイバを得るための方法としては、特に限定されないが、たとえば、天然セルロース繊維を酸化して酸化セルロース繊維を得て、得られた酸化セルロース繊維を微細化する方法が挙げられる。天然セルロース繊維を酸化する方法としては、たとえば、水中において、酸化触媒を用いて、天然セルロース繊維を酸化する方法が挙げられる。また、酸化セルロース繊維を微細化する方法としては、たとえば、酸化セルロース繊維を、水等の溶媒中で撹拌する方法が挙げられる。なお、セルロースナノファイバは、市販品を用いることもできる。
セルロースナノファイバの平均重合度(セルロースナノファイバ1分子に含まれるグルコース単位の数)は、特に限定されないが、好ましくは100〜800、より好ましくは100〜750、さらに好ましくは100〜700である。セルロースナノファイバの平均重合度を上記範囲とすることにより、得られるラテックス組成物中における凝集物の発生を抑制する効果をより高めることができ、しかも、ラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度および引裂強度をより高めることができる。
セルロースナノファイバの平均繊維径(平均繊維幅)は、特に限定されないが、上述したように、通常10μm以下であり、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは1〜5μmである。セルロースナノファイバの平均繊維径を上記範囲とすることにより、得られるラテックス組成物中における凝集物の発生を抑制する効果をより高めることができ、しかも、ラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度および引裂強度をより高めることができる。
本発明で用いるセルロースナノファイバ水溶液は、このようなセルロースナノファイバを水中に溶解ないし分散させることで得られる。
本発明で用いるセルロースナノファイバ水溶液のpHは7〜14であり、好ましくは8〜14、より好ましくは9〜13、さらに好ましくは9〜12である。本発明で用いるセルロースナノファイバ水溶液は、pHに応じて、セルロースナノファイバの分散状態が変化する。さらに、このようなセルロースナノファイバ水溶液を上述したラテックスに配合してラテックス組成物とした際においても、配合するセルロースナノファイバ水溶液のpHに応じて、得られるラテックス組成物中におけるセルロースナノファイバの分散状態が変化する。本発明においては、セルロースナノファイバ水溶液のpHを上記範囲とすることにより、セルロースナノファイバ水溶液中におけるセルロースナノファイバの分散性を良好なものとすることができ、これにより、上述したラテックスに配合してラテックス組成物とした際に、ラテックス組成物中におけるセルロースナノファイバの分散性をより高めることができ、結果として、ラテックス組成物中における凝集物の発生の抑制効果、および、ディップ成形体などの膜成形体とした場合における、引張強度および引裂強度の向上効果をより高めることができる。セルロースナノファイバ水溶液のpHが低すぎる場合には、上述したラテックスに配合してラテックス組成物を作製する際に、ラテックス中で合成ポリイソプレンやSISの表面からアニオン性界面活性剤が離れやすくなってしまい、これにより、得られるラテックス組成物の機械的安定性が低下し、ラテックス組成物中に凝集物が発生しやすくなってしまう。また、セルロースナノファイバ水溶液のpHが高すぎる場合にも、同様に、得られるラテックス組成物の機械的安定性が低下し、ラテックス組成物中に凝集物が発生しやすくなってしまう。
セルロースナノファイバ水溶液のpHを上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、たとえば、セルロースナノファイバ水溶液にpH調整剤を添加する方法が挙げられる。
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
また、セルロースナノファイバ水溶液には、界面活性剤が添加されていることが好ましい。セルロースナノファイバ水溶液に界面活性剤を添加することにより、セルロースナノファイバ水溶液中におけるセルロースナノファイバの分散性が向上する。そして、これにより、セルロースナノファイバ水溶液を、上述したラテックスに配合してラテックス組成物とした際に、ラテックス組成物中におけるセルロースナノファイバの分散性をより高めることができ、結果として、ラテックス組成物中における凝集物の発生の抑制効果、および、ディップ成形体などの膜成形体とした場合における、引張強度および引裂強度の向上効果をより高めることができる。
セルロースナノファイバ水溶液に添加する界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、上述した合成ポリイソプレンラテックスを得るための乳化に用いるものと同様のものを使用することができる。
セルロースナノファイバ水溶液に界面活性剤を添加させる場合には、界面活性剤の添加量は、セルロースナノファイバ100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。界面活性剤の含有量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより高めることができる。
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスに、上述したpH7〜14のセルロースナノファイバ水溶液を配合してなるものであって、ASTMD1417−10に準拠して、23℃、回転数14,000rpmの条件で30分間撹拌した後、80メッシュの金網にてろ過した場合における、ろ過残渣の量が、ラテックス組成物に対して0.1重量%以下に抑制されたものである。なお、このような強攪拌条件で攪拌した後における、ろ過残渣の量が少ないほど、ラテックス組成物としての機械的安定性に優れているものと判断することができる。
特に、本発明者等の知見によれば、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスに、セルロースナノファイバを配合することにより、ディップ成形体などの膜成形体とした場合における、引張強度および引裂強度を高めることができることを見出したものである。その一方で、セルロースナノファイバを配合した場合であっても、セルロースナノファイバを配合する際の形態や、セルロースナノファイバを配合した後のラテックス組成物の状態により、引張強度および引裂強度の向上効果が得られないだけなく、場合によっては、凝集物の発生が多くなってしまい、引張強度および引裂強度が低下してしまうことがあった。
これに対し、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスに、セルロースナノファイバを配合する際に、セルロースナノファイバをpHが7〜14である水溶液の状態により添加するとともに、このようなセルロースナノファイバ水溶液を添加した後のラテックス組成物において、上記のような強攪拌条件で攪拌した後における、ろ過残渣の量、すなわち凝集物の発生量を、ラテックス組成物に対して0.1重量%以下に制御されたものとすることにより(すなわち、このような凝集物の発生量が0.1重量%以下となる程度に、優れた機械的安定性を備えるものとすることにより)、セルロースナノファイバの添加効果を適切に発揮させることができ、これにより、得られるラテックス組成物中における凝集物の発生を有効に抑制することができるとともに、ディップ成形体などの膜成形体とした場合における、引張強度および引裂強度を高めることができることを見出したものである。
なお、安定性試験機を用いて、ラテックス組成物を撹拌する方法としては、ASTMD1417−10の「Determination of Mechanical Stability」に記載された方法に準拠した方法を用いることができる。この際においては、安定性試験機としては、たとえば、上島製作所社製のMS−5114や、Source 2 trade社製のLL5110NA MK3等を用いることができる。撹拌ディスクとしては、ASTM D1076−10に規定されている、直径20.83±0.03mm、厚み1.57±0.05mmのディスクを使用した。ガラスビーカーとしては、ASTM D1417−10に規定されているガラス製ビーカーであって、内径が57.8±1mmであるものを使用することが好ましい。
また、安定性試験機を用いて、ラテックス組成物を撹拌する条件としては、上述したように、23℃(室温)、回転数14,000rpm、30分間とすればよい。
本発明においては、上述したろ過残渣を測定する際には、上述したようにラテックス組成物を撹拌した後、撹拌後のラテックス組成物を、80メッシュ金網によってろ過する。その後、80メッシュ金網に付着したろ過残渣を秤量して、ろ過残渣の重量を測定する。ろ過残渣の重量の測定方法としては、たとえば、次のような方法を用いることができる。まず、ラテックス組成物をろ過する前の80メッシュ金網の重量を測定しておく。次いで、ラテックス組成物を、この80メッシュ金網でろ過し、ろ過後の80メッシュ金網を石鹸水で洗浄し、蒸留水で石鹸を洗い流し、高温で乾燥させた後、乾燥した残渣物が付着した金網を秤量する。そして、残渣物が付着した金網の重量と、ラテックス組成物をろ過する前の金網の重量との差分を計算することにより、残渣物の重量を求めることができる。そして、この残渣物について、ラテックス組成物に対する重量比率を計算することで、ろ過残渣のラテックス組成物に対する重量を測定することができる。
本発明においては、ろ過残渣のラテックス組成物に対する重量は、0.1重量%以下、好ましくは0.08重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下である。ろ過残渣のラテックス組成物に対する重量が大きすぎると、ラテックス組成物中における凝集物の発生が多くなり、また、ディップ成形体などの膜成形体とした場合に、得られる膜成形体が引張強度および引裂強度に劣るものとなってしまう。
ろ過残渣のラテックス組成物に対する重量を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、セルロースナノファイバ水溶液のpHを上記範囲とすることに加えて、上述したようにセルロースナノファイバ水溶液に界面活性剤を添加する方法、用いるセルロースナノファイバの平均重合度を上記範囲とする方法、セルロースナノファイバ水溶液を添加した後のラテックス組成物のpHを後述する範囲とする方法、ラテックス組成物中におけるセルロースナノファイバの配合量を後述する範囲とする方法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のラテックス組成物中における、セルロースナノファイバの含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.5重量部である。セルロースナノファイバの含有量を上記範囲とすることにより、得られるラテックス組成物中における凝集物の発生を抑制する効果をより高めることができ、しかも、ラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度および引裂強度をより高めることができる。
本発明のラテックス組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋促進剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有することが好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度をより高めることができる。
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤;分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
老化防止剤としては、2,6−ジ−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
老化防止剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスに、pH7〜14のセルロースナノファイバ水溶液、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスに混合する方法などが挙げられる。
なお、合成ポリイソプレンラテックスおよび/またはSISラテックスと、pH7〜14のセルロースナノファイバ水溶液と、を配合してなる本発明のラテックス組成物は、配合後のラテックス組成物のpHが、好ましくは7〜14、より好ましくは8〜12、さらに好ましくは9〜12である。配合後のラテックス組成物のpHを上記範囲とすることで、ラテックス組成物中におけるセルロースナノファイバの分散性をより高めることができ、結果として、ラテックス組成物中における凝集物の発生の抑制効果、および、ディップ成形体などの膜成形体とした場合における、引張強度および引裂強度の向上効果をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体などの膜成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度が低下する場合がある。
膜成形体
本発明の膜成形体は、本発明のラテックス組成物からなる膜状の成形体である。本発明の膜成形体の膜厚は、好ましくは0.03〜0.50mm、より好ましくは0.05〜0.40mm、特に好ましくは0.08〜0.30mmである。
本発明の膜成形体としては、特に限定されないが、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られるディップ成形体であることが好適である。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
本発明の膜成形体、およびその一態様であるディップ成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られるものであるため、引張強度および引裂強度に優れるものであり、たとえば、手袋として特に好適に用いることができる。膜成形体が手袋である場合、膜成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
また、本発明の膜成形体、およびその一態様であるディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「%」および「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定された。
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
固形分濃度
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
機械的安定性(強攪拌後における、凝集物量)
ASTMD1417−10の「Determination of Mechanical Stability」に記載の方法に準拠して以下の方法により機械的安定性を評価した。
MS−5114(上島製作所)またはLL5110NA MK3(Source 2 trade Ltd)を使用して機械的安定性を測定した。但し、撹拌ディスクはASTM D1076−10に規定されている直径が20.83±0.03mm、厚みが1.57±0.05mmのものを使用した。ガラスビーカーはASTM D1417−10に規定されているガラス製ビーカーで内径が57.8±1mmであるものを使用した。ラテックス組成物50gを精秤し、23℃、回転数14,000rpmの条件で30分間撹拌した。撹拌後のラテックス組成物を、80メッシュ金網にてろ過した。次いで、この80メッシュ金網を石鹸水で洗浄し、蒸留水で石鹸を洗い流した後、105℃で2時間乾燥した。乾燥後、金網上の残渣物を秤量して、ラテックス組成物50gに対する比率(単位:重量%)を計算し、その値により機械的安定性を評価した。値が小さいほど、機械的安定性に優れる。
凝集物含有割合
上記した方法に従って、ラテックス組成物の固形分濃度を測定し、そのラテックス組成物約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックス組成物を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、下記式に基づいて凝集物含有割合(単位:重量%)を求めた。
凝集物含有率={(α−β)/(γ×Δ)}×10,000
ここで、αは乾燥後の金網及び乾燥凝集物の重量、βは金網の重量、γはラテックス組成物の重量、Δはラテックス組成物の全固形分の重量をそれぞれ示す。
ディップ成形体の引張強度
ASTM D412に基づいて、ディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK−100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)を測定した。
ディップ成形体の引裂強度
ASTM D624−00に基づいて、ディップ成形体を、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室で24時間以上放置した後、ダンベル(商品名「Die C」、ダンベル社製)で打ち抜き、引裂強度測定用の試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、A&D社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、引裂強度(単位:N/mm)を測定した。
実施例1
重量平均分子量が1,300,000の合成ポリイソプレン(商品名「IR2200L」、日本ゼオン社製、イソプレンの単独重合体、シス結合単位量98%)100部を、シクロヘキサン(和光純薬工業社製)1150部に溶解し、合成ポリイソプレンのシクロヘキサン溶液(A−1)を得た。
次に、ロジン酸ナトリウム(商品名「ロンジスN−18」、荒川化学社製)0.8重量%およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名「ネオペレックスG−15」、花王社製)0.4重量%を含有してなる、合成ポリイソプレンを含まない界面活性剤水溶液1245部を調整した。
そして、上記合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)の全量、および、上記界面活性剤水溶液の全量を、SUS304製の容器に入れて撹拌混合し、続いてホモジナイザー(商品名「マイルダーMDN−303V」、太平洋機工社製)によって乳化分散処理を施し、乳化液(B−1)を得た。
次に、乳化工程で得られた乳化液(B−1)を、溶剤除去用タンクに移し、減圧蒸留により、シクロヘキサンを除去した乳化液(C−1)を得た。シクロヘキサンを除去した乳化液(C−1)の固形分濃度は、10重量%であった。そして、200メッシュステンレス製金網を用い、乳化液(C−1)中の凝集物を除去した。
次に、乳化液(C−1)から凝集物を除去した前記合成ポリイソプレンラテックスに対し、密閉ディスク型連続遠心分離機(アルファ・ラバル社製SGR509)により、9000G、通液流量1600L/hrの条件で遠心分離を行った。その結果、固形分濃度60重量%の合成ポリイソプレンラテックス(E−1)が得られた。遠心分離機のボウルを開け、ディスクを開放すると、前記合成ポリイソプレンラテックス(E−1)における凝集物の発生はほとんど観察されなかった。
(ラテックス組成物の調製)
まず、セルロースナノファイバ(α1)(商品名「FMa−10002」、平均重合度:200、平均繊維径:2μm、スギノマシン社製)を、水に分散ないし溶解させた後、pH調整剤によりpHを10に調整したセルロースナノファイバ水溶液(a−1)を得た。
セルロースナノファイバの配合量が1部となるように、セルロースナノファイバ水溶液(a−1)を、上記合成ポリイソプレンラテックス(E−1)に撹拌しながら添加し、ラテックス組成物(E’−1)を得た。上述した方法に従い、機械的安定性を測定した。結果を表1に示す。
次いで、上記合成ポリイソプレンラテックス(E’−1)を撹拌しながら、合成ポリイソプレンラテックス(E’−1)中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛0.7部となるように、各配合剤の水分散液を添加して、pHを10.5に調整したラテックス組成物(F−1)を得た。得られたラテックス組成物(F−1)について、凝集物含有割合を測定した。結果を表1に示す。
次いで、得られたラテックス組成物(F−1)を、30℃に調整された恒温水槽で72時間熟成した。
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)を含む凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
その後、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、ラテックス組成物(F−1)に10秒間浸漬した。次いで、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬した。さらに、130℃のオーブン内に置き30分間加硫を行った後、室温まで冷却し、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体を得た。得られたディップ成形体について、上述した方法に従い、引張強度および引裂強度を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
pH調整剤の使用量を変更することで、pHを8とした以外は、実施例1と同様にして、セルロースナノファイバ水溶液(a−2)を調製した。そして、セルロースナノファイバ水溶液(a−1)に代えて、セルロースナノファイバ水溶液(a−2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物(E’−2)、(F−2)の製造を行い、同様に評価を行った。また、得られたラテックス組成物(F−2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。なお、比較例2では、ラテックス組成物(F−2)中に、わずかに凝集物が発生していたため、ラテックス組成物(F−2)をろ過して凝集物を取り除き、ろ過後のラテックス組成物(F−2)を用いてディップ成形体を製造した。結果を表1に示す。
実施例3
セルロースナノファイバ水溶液のpHを8に変更するとともに、セルロースナノファイバ100部に対する含有量が3部となるように界面活性剤(商品名「ネオペレックスG−15」、花王社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして、セルロースナノファイバ水溶液(a−3)を調製した。そして、セルロースナノファイバ水溶液(a−1)に代えて、セルロースナノファイバ水溶液(a−3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物(E’−3)、(F−3)の製造を行い、同様に評価を行った。なお、ラテックス組成物(F−3)中における上記界面活性剤の配合量は、合成ポリイソプレン100部に対して1部であった。また、得られたラテックス組成物(F−3)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4
セルロースナノファイバの配合量が合成ポリイソプレン100部に対して0.3部になるように、セルロースナノファイバ水溶液(a−2)の使用量を変更した以外は、実施例2と同様にしてラテックス組成物(E’−4)、(F−4)の製造を行い、同様に評価を行った。また、得られたラテックス組成物(F−4)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5
セルロースナノファイバ(α1)に代えて、セルロースナノファイバ(α2)(商品名「BMa−10002」、平均重合度:700、平均繊維径:2μm、スギノマシン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、セルロースナノファイバ水溶液(a−5)を調整した。そして、セルロースナノファイバ水溶液(a−1)に代えて、セルロースナノファイバ水溶液(a−5)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物(E’−5)、(F−5)の製造を行い、同様に評価を行った。また、得られたラテックス組成物(F−5)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6
合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)に代えて、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)(商品名「QUINTAC 3620」、日本ゼオン社製)を濃度8重量%となるようにシクロヘキサン溶液に溶解してなる重合体溶液(A−2)を用いた以外は、実施例2と同様にしてラテックス組成物(E’−6)、(F−6)の製造を行い、同様に評価を行った。そして、得られたラテックス組成物(F−6)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
セルロースナノファイバ水溶液(a−1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物(E’−7)、(F−7)の製造を行い、同様に評価を行った。そして、得られたラテックス組成物(F−7)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
pH調整剤の使用量を変更することで、pHを5とした以外は、実施例1と同様にして、セルロースナノファイバ水溶液(a−8)を調製した。そして、セルロースナノファイバ水溶液(a−1)に代えて、セルロースナノファイバ水溶液(a−8)を使用した以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物(E’−8)、(F−8)の製造を行い、同様に評価を行った。また、得られたラテックス組成物(F−8)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。なお、比較例2では、ラテックス組成物(F−8)中に、多くの凝集物が発生していたため、ラテックス組成物(F−8)をろ過して凝集物を取り除き、ろ過後のラテックス組成物(F−8)を用いてディップ成形体を製造した。結果を表1に示す。
比較例3
セルロースナノファイバ水溶液(a−2)を使用しなかった以外は、実施例6と同様にして、ラテックス組成物(E’−9)、(F−9)の製造を行い、同様に評価を行った。そして、得られたラテックス組成物(F−9)を使用した以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、合成ポリイソプレンまたはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスに、pHが7〜14であるセルロースナノファイバ水溶液を配合してなるラテックス組成物であって、上述した強攪拌後における凝集物量を0.1重量%以下としたラテックス組成物は、凝集物含有割合が少なく、しかも、このラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形体は、引張強度および引裂強度が、いずれも高いものであった(実施例1〜6)。
一方、合成ポリイソプレンまたはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスに、セルロースナノファイバを含む水溶液を配合しなかった場合には、得られるラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形体は、引張強度および引裂強度が、いずれも低いものであった(比較例1,3)。
また、合成ポリイソプレンのラテックスに、セルロースナノファイバ水溶液を配合したものの、配合したセルロースナノファイバ水溶液のpHが7未満であった場合には、得られるラテックス組成物は、ラテックス組成物中のセルロースナノファイバの分散性が悪いため、強攪拌後における凝集物量が多かった(比較例2)。しかも、この比較例2のラテックス組成物は、ラテックス組成物中のセルロースナノファイバの分散性が悪いため、ろ過により凝集物を取り除いた上でディップ成形体を製造した場合であっても、得られるディップ成形体は、引張強度および引裂強度が、いずれも低いものであった。