JP2017166556A - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両用自動変速機の摩擦係合要素の温度の上昇による摩擦係合要素の特性への影響を軽減することができる制御装置を提供する。
【解決手段】摩擦係合要素の係合前の温度と係合による温度上昇とを予め推定するとともに、運転者の駆動要求を推定し、運転者の駆動要求に基づいて運転者の駆動要求に反する変速段への切換えを禁止とするとともに、摩擦係合要素の温度上昇によって摩擦係合要素の特性への影響を生じる恐れが有る場合に、摩擦係合要素の係合を遅延させることによって、摩擦係合要素の特性への影響を減少することが可能となる。
【選択図】図10
【解決手段】摩擦係合要素の係合前の温度と係合による温度上昇とを予め推定するとともに、運転者の駆動要求を推定し、運転者の駆動要求に基づいて運転者の駆動要求に反する変速段への切換えを禁止とするとともに、摩擦係合要素の温度上昇によって摩擦係合要素の特性への影響を生じる恐れが有る場合に、摩擦係合要素の係合を遅延させることによって、摩擦係合要素の特性への影響を減少することが可能となる。
【選択図】図10
Description
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に関し、摩擦係合装置によるギヤ段の係合作動に伴って生じる摩擦係合装置の発熱を抑制する技術に関するものである。
複数の車両用摩擦係合装置の組み合わせによって複数段の変速を行う車両用自動変速機において摩擦係合装置の熱的な劣化を抑制するために、変速後すなわちアップシフトおよびダウンシフト後における摩擦係合装置の発熱量を推定し、摩擦係合装置の発熱量が所定の値を超えると予想された場合に変速を禁止する制御装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載の車両用自動変速機の制御装置がその一例である。
特許文献1には、変速後の摩擦係合装置の予想される発熱量を摩擦係合装置の伝達トルクの平均値と摩擦係合要素の相対回転速度の平均値とに基づいて算出し、摩擦係合装置の発熱量が所定値を超えると予想された場合、前記摩擦係合装置の変速を禁止する技術が開示されている。
上記の技術は、摩擦係合装置の保護としては有効ではある。しかし、運転者の意図と異なった変速の禁止である場合には、運転者に違和感を抱かせることも生じうる。たとえば、アップシフト側への変速が禁止されダウンシフト側で保持された場合に、エンジンが高回転に維持されたまま車速が増加しない状態が生じることによって運転者に違和感を与えることがある。また、ダウンシフト側への変速が禁止され、アップシフト側に保持された場合には、たとえば運転者に駆動力の不足と感じさせる、もしくは、アクセルの踏込みすぎによって、たとえばトルクコンバータの発熱量の増加によって作動油温の急激な上昇が生じることもあり、運転者の意図に反した変速禁止制御となる可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは運転者の操作状況を反映させた変速禁止制御によって、摩擦係合装置の保護とドライバビリティとを両立させた車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
本発明の要旨とするところは、複数の摩擦係合要素の係合作動の組み合わせによって複数段の変速を行う有段式自動変速機と、前記複数の摩擦係合装置の発熱量を算出する発熱量推定手段とを備える車両用自動変速機の制御装置において、
運転者の駆動要求を推定する駆動要求推定手段を備え、前記発熱量推定手段によって推定される係合に係る摩擦係合要素の発熱量が予め設定された閾値を超える場合には、前記駆動要求を推定し、前記駆動要求が小さいほど、よりダウンシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定されるとともに、前記駆動要求が大きいほど、よりアップシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定され、
前記アップシフトへの変速を禁止するギヤ段が設定される場合に、エンジン回転数が所定の閾値以上であれば、前記変速に係る摩擦係合装置の発熱量が大きいほど、変速の遅延時間が長く設定されることを特徴とする
運転者の駆動要求を推定する駆動要求推定手段を備え、前記発熱量推定手段によって推定される係合に係る摩擦係合要素の発熱量が予め設定された閾値を超える場合には、前記駆動要求を推定し、前記駆動要求が小さいほど、よりダウンシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定されるとともに、前記駆動要求が大きいほど、よりアップシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定され、
前記アップシフトへの変速を禁止するギヤ段が設定される場合に、エンジン回転数が所定の閾値以上であれば、前記変速に係る摩擦係合装置の発熱量が大きいほど、変速の遅延時間が長く設定されることを特徴とする
このようにすれば、運転者の駆動要求を推定する手段を持つことによって、運転者の駆動要求と乖離する変速段側への変速のみ禁止すること、および発熱量の増加が大きい、ダウンシフト側への変速においては、発熱量に応じて変速を遅延させることによって、摩擦係合装置の保護とドライバビリティとを両立させることが可能となる。
以下、本発明の車両用自動変速機の制御装置の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両10に備えられた自動変速機12の構成を説明する骨子図である。図2は自動変速機12の複数のギヤ段を成立させる際の摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機12は、車両10の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース14(以下、ケース14)内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置16を主体として構成されている第1変速部18と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置20及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置22を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部24とを共通の軸心C上に有し、入力軸26の回転を変速して出力歯車28から出力する。入力軸26は、自動変速機12の入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の駆動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸と一体的に構成されている。また、出力歯車28は、自動変速機12の出力回転部材に相当するものであり、本実施例では例えば図3に示す差動歯車装置34に動力を伝達するために、デフリングギヤ35と噛み合うことでファイナルギヤ対を構成するデフドライブピニオンと同軸上に配置されたカウンタドリブンギヤと噛み合ってカウンタギヤ対を構成するカウンタドライブギヤとして機能している。そして、このように構成された自動変速機12等において、エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機12、差動歯車装置34、及び一対の車軸36等を含む車両用動力伝達装置11を順次介して左右の駆動輪38へ伝達されるようになっている(図3参照)。尚、自動変速機12やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
トルクコンバータ32は、エンジン30のクランク軸31に連結されたポンプ翼車32p、トルクコンバータ32のタービン軸(入力軸26に相当)を介して自動変速機12に連結されたタービン翼車32t、及び一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車32sとを備えており、ポンプ翼車32pとタービン翼車32tとの間で流体を介して動力伝達を行うようになっている。すなわち、本実施例のトルクコンバータ32においては、ポンプ翼車32pが入力回転部材に、タービン翼車32tが出力回転部材にそれぞれ対応し、流体を介してエンジン30の動力が自動変速機12側へ伝達される。また、ポンプ翼車32p及びタービン翼車32tの間には、それらの間すなわちトルクコンバータ32の入出力部材間を直結可能なロックアップクラッチ33が設けられている。また、ポンプ翼車32pには、自動変速機12を変速制御したり、ロックアップクラッチ33の作動を制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりする為の元圧となる潤滑油圧をエンジン30によって回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ40が連結されている。
自動変速機12は、第1変速部18及び第2変速部24の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段(前進変速段)が成立させられるとともに、後進ギヤ段「R」の後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。
図2の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。尚、第1ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。つまり、発進時にはクラッチC1のみを係合させれば良く、このクラッチC1は発進クラッチとして機能する。また、車両停止に際してクラッチC1をスリップ状態乃至解放状態としてエンジン30から駆動輪38までの間の動力伝達経路を動力伝達抑制状態とするニュートラル制御を行う。
上記クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、例えば多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御され、係合によりエンジン30の動力を駆動輪38側へ伝達する油圧式摩擦係合装置である。そして、油圧制御回路110内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5(図3参照)の励磁、非励磁や電流制御により、各クラッチC及びブレーキBの係合、解放状態が切り換えられると共に、係合、解放時の過渡係合油圧などが制御される。また、オンオフソレノイドバルブSV1の励磁、非励磁や電流制御により、図示されていないアキュムレータACMへの油圧の蓄圧とアキュムレータACMから各油圧式摩擦係合装置への油圧の供給とが切り替えられる。
図3は、エンジン30や自動変速機12などを制御する為に車両10に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。図3において、車両10には、例えば前述したクラッチC1を用いた車両停止に際してのニュートラル制御などに関連する制御等を実行する電子制御装置50が備えられている。この電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン30の出力制御や自動変速機12の変速制御を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用のエンジン制御装置や自動変速機12の変速制御用の油圧制御装置等に分けて構成される。
電子制御装置50には、例えば潤滑油温センサ52により検出された油圧制御回路110内の潤滑油(例えば公知のATF)の温度である潤滑油温TOILを表す信号、アクセル開度センサ54により検出された運転者による車両10に対する要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル56の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、エンジン回転速度センサ58により検出されたエンジン30の回転速度であるエンジン回転速度Neを表す信号、冷却水温センサ60により検出されたエンジン30の冷却水温TWを表す信号、吸入空気量センサ62により検出されたエンジン30の吸入空気量Q/Nを表す信号、スロットル弁開度センサ64により検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θTHを表す信号、車速センサ66により検出された車速Vに対応する出力歯車28の回転速度である出力回転速度NOUTを表す信号、ブレーキスイッチ68により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル70の操作(ブレーキオン)BONを表す信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを表す信号、タービン回転速度センサ76により検出されたトルクコンバータ32のタービン軸の回転速度であるタービン回転速度NT(すなわち入力軸26の回転速度である入力回転速度NIN)を表す信号などがそれぞれ供給される。
また、電子制御装置50からは、例えばエンジン30の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SEとして、アクセル開度Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御する為のスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置から噴射される燃料噴射量を制御する為の噴射信号やイグナイタによるエンジン30の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、例えば自動変速機12の変速制御の為の油圧制御指令信号SPとして、自動変速機12のギヤ段を切り換える為に油圧制御回路80内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の励磁、非励磁などを制御する為のバルブ指令信号(油圧指令信号、油圧指令値、駆動信号)オンオフソレノイドバルブSLv1への油圧指令信号などの油圧指令信号Spが油圧制御回路80へ出力される。
また、シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、図3に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機12内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力歯車28の回転を阻止(ロック)する為の駐車ポジション(位置)である。また、「R」ポジションは自動変速機12の出力歯車28の回転方向を逆回転とする為の後進走行ポジション(位置)である。また、「N」ポジションは自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とする為の中立ポジション(位置)である。また、「D」ポジションは自動変速機12の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。また、「S」ポジションはギヤ段の変化範囲を制限する複数種類の変速レンジすなわち高車速側のギヤ段が異なる複数種類の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
上記「D」ポジションは自動変速機12の変速可能な例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速制御が実行される制御様式である自動変速モードを選択するレバーポジションでもあり、「S」ポジションは自動変速機12の各変速レンジの最高速側ギヤ段を超えない範囲で自動変速制御が実行されると共にシフトレバー74の手動操作により変更された変速レンジ(すなわち最高速側ギヤ段)に基づいて手動変速制御が実行される制御様式である手動変速モードを選択するレバーポジションでもある。
電子制御装置50は、図4に示すような車速V及びアクセル開度ACCを変数として予め定められた関係(変速マップ、変速線図)に実際の車速Vおよびアクセル開度ACCを適用し、車両状態を示す点が変速線を横切ることで変速段を判断し、その判断した所定のギヤ段が得られるように、自動変速機12の変速に関する係合装置を係合及び/又は解放させる変速指令として油圧制御指令信号Spを油圧制御回路80へ出力する。この油圧制御指令信号Spに従って、自動変速機12の変速が実行されるように油圧制御回路80内のリニアソレノイドバルブSL1−SL5が駆動させられて、その変速に関与する係合装置の油圧アクチュエータが作動させられる。図4の変速マップにおいて、実線はアップシフトが判断されるためのアップシフト線であり、破線はダウンシフトが判断されるためのダウンシフト線である。
また、電子制御装置50は、クラッチクラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の作動状況に基づいて発熱量、すなわち発熱温度Tcを推定するとともに、発熱を抑制する制御を行う(以後クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3をクラッチと総称する)。図5には、クラッチの発熱を抑制する電子制御装置50の制御作動の要部が示されている。クラッチ温度推定手段100において、変速に関連する全てのクラッチ温度Tcが推定される。それぞれのクラッチ温度Tcは、クラッチの係合または解放が生じた時点におけるクラッチ温度Tcに係合と解放による発熱量を加えることでクラッチの発熱量が算出され、またその後のクラッチの放置時間、すなわちクラッチの係合または解放に係ることの無い時間経過による放熱量を減じることで算出される。作業油温Toilもクラッチ温度Tcの算出に用いられるとともに、上記の放置時間が長い場合には、作業油温Toilがクラッチの温度となるようクラッチ温度Tcの推定式が設定されている。図4の変速マップによって変速が判断されると、電子制御装置50から指令信号が出力され、クラッチ発熱量予測手段102によって、クラッチの解放もしくは係合に係るクラッチの発熱量が算出される。さらに変速後クラッチ温度推定手段104において、クラッチ温度推定手段100によって推定された推定温度に、クラッチ発熱量予測手段102によって予測された発熱量を加えることで変速後のクラッチ温度Tcが推定される。変速後クラッチ温度第1閾値判定手段106は、変速後クラッチ温度推定手段104によって推定されたクラッチ温度Tcが閾値Ta以上、すなわちクラッチの係合または開放によりクラッチの耐久性に影響を生じる可能性のある発熱に達するか否かを判定する。係合によるクラッチの発熱は、解放によるクラッチの発熱より大きいため、以降はクラッチを係合した場合における発熱、すなわち係合側のクラッチの温度上昇のみを記述する。クラッチの推定発熱量Tcが閾値Taを下回る場合には、変速後クラッチ温度推定手段104によって算出されたクラッチ温度Tcがクラッチ温度推定手段100に出力され、変速後のクラッチ温度がクラッチ温度Tcとされるとともに、クラッチの発熱量の抑制の必要が無いため、クラッチの係合が許可される。また、クラッチの推定発熱量Tcが閾値Ta以上である場合には、ドライバ駆動意図評価手段108において、ドライバの駆動意図Iが評価される。
ドライバの駆動意図Iの評価方法の一例が、図6に示されている。ドライバの駆動意図Iは、アクセル開度Accとアクセル操作スピードAcs(mm/sec)によって評価される。なおアクセル操作スピードAcsは、ドライバ駆動意図評価手段108によって、単位時間当りのアクセル開度Accの変化から算出される。図6は、ドライバの駆動意図Iをアクセル開度Accとアクセル操作スピードAcsからドライバの変速意図Iを判定するために予め定められ記憶された関係(マップ)であり、アクセル開度Accが高開度であるほど、またアクセル操作スピードAccが速いほど高い数値、すなわち高い意図となるように予め設定されている。
ドライバ駆動意図評価手段108によって、ドライバの意図Iが評価され、ドライバ駆動意図閾値判定手段110において、ドライバの意図Iがドライバ駆動意図閾値Ia以上であるか否かが判定される。ドライバ駆動意図閾値Iaを下回る場合には、ダウンシフト禁止ギヤ段判定手段112によってダウンシフト禁止ギヤ段が設定される。図7に示された破線はダウンシフト線であり、Iaで示されたダウンシフト線は、ドライバ駆動意図Iが閾値Iaである場合のダウンシフト線が示されている。また、ダウンシフト線は、ドライバの駆動意図Iが低いほどよりダウンシフト側に設定される。図7においては、IaからI2、I1へと離れるほどドライバ駆動意図Iが低く、ドライバ駆動意図Iが低いほどダウンシフト禁止が拡がるように設定されている。またドライバ駆動意図Iに基づき設定されるダウンシフト禁止範囲は、1stから5thまでの各段へのダウンシフト毎に、所定の値が予め記憶され定められている。
ドライバ駆動意図閾値判定手段110において、ドライバ駆動意図Iが閾値Ia以上と判定された場合は、エンジン回転数閾値判定手段114においてエンジン回転数Neがエンジン回転数閾値Nea以上であるか否かが判定される。図8において、エンジン回転数Neが閾値Neaを下回る場合は、アップシフト禁止ギヤ段判定手段116によって、アップシフト禁止ギヤ段が設定される。図9に示された実線は、アップシフト線であり、Iaで示されたアップシフト線は、ドライバ駆動意図Iが閾値Iaである場合のアップシフト線が示されている。また、アップシフト線は、ドライバの駆動意図Iが高いほどよりアップシフト側に設定される。図9においては、IaからI3、I4へと離れるほどドライバ駆動意図Iが高く、ドライバ駆動意図Iが高いほどアップシフト禁止が拡がるように設定されている。またドライバ駆動意図Iに基づき設定されるアップシフト禁止範囲は、2ndから6thまでの各段へのアップシフト毎に、所定の値が予め記憶され定められている。
図8において、エンジン回転数Neが、閾値Nea以上である場合は、変速遅延時間判定手段118によってクラッチ発熱量、すなわちクラッチ温度Tcとエンジン回転数Neに基づいてシフトの遅延時間De(msec)が設定される。図8に示されたDe11からDe35は、シフト遅延時間Deを設定するため予め設定され記憶された関係(マップ)であり、クラッチ発熱量Tcが高いほど、またエンジン回転数Neが高回転であるほど長いシフト遅延時間Deとなるように予め設定されている。
変速遅延時間判定手段118によって判定されたシフト遅延時間Deに基づいて、変速後クラッチ温度第2閾値判定手段120において変速後のクラッチ発熱量、すなわちクラッチ温度Tcが、変速後クラッチ温度第2閾値Tbを下回るか否かが判定される。クラッチ温度Tcが第2閾値Tb以上である場合には、ダウンシフト禁止ギヤ段判定手段112、もしくはアップシフト禁止ギヤ段判定手段116を介して、対応するギヤ段への変速が禁止される。また、クラッチ温度Tcが第2閾値Tbを下回る場合には、変速後クラッチ温度第2閾値判定手段120によって、対応するギヤ段への変速が許可される。また、変速後クラッチ温度第2閾値判定手段120からは、変速後クラッチ温度推定手段104に変速後のクラッチ温度Tcの推定温度が出力され、変速後クラッチ温度推定手段104を介して、出力されたクラッチ温度Tcがクラッチ温度推定手段100におけるクラッチ温度Tcとして記憶される。
図10は、電子制御装置50の図5に示された制御動作の要部を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。電子制御装置50において、変速、すなわちアップシフトもしくはダウンシフトが判定されると、図10における、クラッチ温度推定手段100、クラッチ発熱量予測手段102、変速後クラッチ温度推定手段104に対応するステップS10(以下、ステップを省略する)において、変速後のクラッチ温度Tcが推定される。変速後クラッチ温度第1閾値判定手段106が対応するS20において、S10において推定された変速後のクラッチ温度Tcが、クラッチ温度第1閾値Ta以上か否かが判定される。変速後のクラッチ温度Tcが、閾値Taを下回る場合は、変速が許可される。またS20において、変速後のクラッチ温度Tcが第1閾値Ta以上である場合には、ドライバ駆動意図評価手段108に対応するS30において、アクセル開度Accとアクセル操作スピードAcsに基づいてドライバの駆動意図が評価される。ドライバ駆動意図閾値判定手段110に対応するS40において、ドライバ駆動意図Iが閾値Ia以上であるか否かが判定される。この判定が否定された場合は、ダウンシフト禁止ギヤ段判定手段112に対応するS50において、ドライバ駆動意図Iに基づいてダウンシフト禁止ギヤ段が設定される。この判定が肯定された場合は、エンジン回転数閾値判定手段114に対応するS60において、エンジン回転数Neが閾値Nea以上であるか否かが判定される。この判定が否定された場合は、アップシフト禁止ギヤ段判定手段116に対応するS70において、ドライバ駆動意図Iに基づいてアップシフト禁止ギヤ段が設定される。この判定が肯定された場合は、変速遅延時間判定手段118に対応するS80において、クラッチ発熱量、すなわちシフト後の推定クラッチ温度Tcと、エンジン回転数Neとに基づいて、変速、すなわちシフトの遅延時間Deが設定される。また、変速後クラッチ温度第2閾値判定手段120に対応するS90において、変速の遅延後において変速が行われた後のクラッチ温度Tcが閾値Tbを下回るか否かが判定される。この判定が否定された場合は、変速が予定されていたギヤ段は、シフト禁止ギヤ段に設定される。この判定が肯定された場合は、変速後クラッチ温度第2閾値判定手段120の対応するS110において、変速すなわちシフトが許可され、また変速後クラッチ温度推定手段104を介してクラッチ温度推定手段100に変速後の温度が出力される。S20において用いられる閾値TaとS90において用いられる閾値Tbとは、同一の温度を用いることができる。また、閾値Taと閾値Tbとを異なった温度設定とすることもできる。たとえばドライバ駆動意図Iが高い場合に、クラッチ発熱量閾値Tbをクラッチの耐久性に影響を及ぼさない範囲で上げることによって、ドライバ駆動意図が高い場合にシフト禁止となることを減少させることもできる。また、クラッチ発熱閾値TbをTaより低く設定することもできる。
このように本発明によれば、ドライバの駆動意図Iを推定する手段を持つことによりドライバの駆動要求と異なる変速段への変速を禁止することができるとともに、発熱量の大きい変速においては、発熱量に応じたシフト遅延時間Deを設定することによりクラッチの発熱による特性への影響を抑制することが可能となる。これにより、クラッチの保護とドライバビリティとの両立が可能となる。
本実施例においては、S80におけるシフト遅延時間Deの設定を、シフト後の推定クラッチ温度Tcと、エンジン回転数Neとに基づいて設定されるものとしたが、たとえばシフト遅延時間Deを許容できる所定の固定された時間、すなわちシフト遅延時間Deを変化させないものとし、所定の固定された時間だけシフトを遅延させるものとしても良い。この場合においても、シフト後の推定クラッチ温度Tcが閾値Tb以上である場合には、シフト禁止ギヤ段とし、シフト後の推定クラッチ温度Tcが閾値Tbを下回る場合にはシフトが許可される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の様態においても適用される。
たとえば、ドライバ駆動意図Iをアクセル開度Accとアクセル操作スピードAcsとに基づいて設定するものとしたが、これに限られるものではなく、変速から次の変速への判断時間によってドライバ駆動意図Iを判定し、シフト禁止ギヤ段の設定を行われるものとしても良い。たとえば、ダウンシフトからアップシフトへの判断時間について、たとえばアクセルの踏み込みによるダウンシフトの実施からアクセルの開放、すなわちアクセルを戻す操作が行われるまでの経過時間によってドライバ駆動意図Iを評価することもできる。具体的には、ダウンシフトが実行されたアクセルが踏込まれた状態から、アクセルを開放するまでの時間をドライバ駆動意図Iとして用い、ダウンシフトからすぐにアクセルを開放した場合にドライバ駆動意図Iが低いものと見なし、ダウンシフト後数msec以上経過した場合にドライバ駆動意図Iが高いものと見なすことができる。また、アップシフトからのダウンシフトの判断時間について、たとえばアップシフト後、アクセル開度が増加される操作、すなわちアクセルが踏込まれるまでの経過時間によってドライバ駆動意図Iを評価することもできる。具体的には、アップシフトが実行されたアクセルが開放、もしくはアクセル開度が低い状態に維持されている状態から、アクセルが所定の開度以上踏込まれるまでの時間の長さによってドライバ駆動意図Iを評価することもできる。この場合においては、アップシフトからアクセルが踏込まれるまでの時間が短いほど、ドライバ駆動意図Iが高いものとみなされる。
このように本実施例においては、ドライバ駆動意図Iを、ダウンシフト後のアップシフトへの判断時間すなわち経過時間と、アップシフト後のダウンシフトへの判断時間すなわち経過時間とによって判断し、ドライバの駆動要求と異なる変速段への変速を禁止することができるとともに、発熱量の大きい変速においては、発熱量に応じたシフト遅延時間Deを設定することによりクラッチの発熱による特性への影響を抑制することが可能となる。これにより、クラッチの保護とドライバビリティとの両立が可能となる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:自動変速機(有段式自動変速機)
50:制御装置(電子制御装置)
C1、C2、B1、B2、B3、F1:クラッチ(摩擦係合装置)
De:シフト遅延時間(遅延時間)
I:ドライバ駆動意図(駆動要求)
Nea:エンジン回転数閾値(閾値)
Ta:クラッチ温度第1閾値(閾値)
Tb:クラッチ温度第2閾値(閾値)
Tc:クラッチ発熱量
50:制御装置(電子制御装置)
C1、C2、B1、B2、B3、F1:クラッチ(摩擦係合装置)
De:シフト遅延時間(遅延時間)
I:ドライバ駆動意図(駆動要求)
Nea:エンジン回転数閾値(閾値)
Ta:クラッチ温度第1閾値(閾値)
Tb:クラッチ温度第2閾値(閾値)
Tc:クラッチ発熱量
Claims (1)
- 複数の摩擦係合要素の係合作動の組み合わせによって複数段の変速を行う有段式自動変速機と、前記複数の摩擦係合装置の発熱量を算出する発熱量推定手段とを備える車両用自動変速機の制御装置において、
運転者の駆動要求を推定する駆動要求推定手段を備え、
前記発熱量推定手段によって推定される係合に係る摩擦係合要素の発熱量が予め設定された閾値を超える場合には、前記駆動要求を推定し、
前記駆動要求が小さいほど、よりダウンシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定されるとともに、
前記駆動要求が大きいほど、よりアップシフト側に変速を禁止するギヤ段が設定され、
前記アップシフトへの変速を禁止するギヤ段が設定される場合に、エンジン回転数が所定の閾値以上であれば、前記変速に係る摩擦係合装置の発熱量が大きいほど、変速の遅延時間が長く設定される
ことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016051702A JP2017166556A (ja) | 2016-03-15 | 2016-03-15 | 車両用自動変速機の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016051702A JP2017166556A (ja) | 2016-03-15 | 2016-03-15 | 車両用自動変速機の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017166556A true JP2017166556A (ja) | 2017-09-21 |
Family
ID=59913115
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016051702A Pending JP2017166556A (ja) | 2016-03-15 | 2016-03-15 | 車両用自動変速機の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017166556A (ja) |
-
2016
- 2016-03-15 JP JP2016051702A patent/JP2017166556A/ja active Pending
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