JP2017164802A - ダイカスト金型用表面処理被膜およびその製造方法 - Google Patents

ダイカスト金型用表面処理被膜およびその製造方法 Download PDF

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泰雄 江崎
Yasuo Ezaki
泰雄 江崎
竹内 久人
Hisato Takeuchi
久人 竹内
梶野 正樹
Masaki Kajino
正樹 梶野
岩田 靖
Yasushi Iwata
靖 岩田
山田 研一
Kenichi Yamada
研一 山田
英男 太刀川
Hideo Tachikawa
英男 太刀川
成姫 金
Seiki Kin
成姫 金
萩野 達也
Tatsuya Hagino
達也 萩野
奉努 鈴木
Hodo Suzuki
奉努 鈴木
泰弘 野村
Yasuhiro Nomura
泰弘 野村
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Abstract

【課題】離型剤との親和性が高く金属溶湯の焼き付きの発生をより効果的に抑制できるダイカスト金型用表面処理被膜を提供する。【解決手段】このダイカスト金型用表面処理被膜は、ケイ素酸化物によって形成されるガラス層により構成され、該ケイ素酸化物のケイ素に結合するアルキル基またはアリール基を含む。この表面処理被膜のガラス層は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含んでいてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、ダイカスト用金型の成形面に形成されるダイカスト金型用表面処理被膜およびその製造方法に関する。
アルミニウム合金やマグネシウム合金、亜鉛合金等の溶湯を金型のキャビティへ高圧充填し、急冷凝固させて精密な鋳造品を得るダイカスト(金型鋳造方法)が多用されている。このダイカストを行う際、得られた製品(鋳物)と金型の成形面(キャビティ内壁面)との間の離型性の確保や焼付防止のため、通常、溶媒または分散媒で希釈した離型剤を、溶湯充填前の成形面へ噴霧塗布している。
離型剤の消費量を増大させることなく、金型表面での焼き付きを抑えるような技術が要望されている。特許文献1には、長時間に亘り焼き付きを抑制することができるダイカスト金型用表面処理被膜を金型表面に形成することにより、金型表面での焼き付きを防止する技術が記載されている。この表面処理被膜は、ダイカスト金型部材の表面に被覆され、ケイ素酸化物と、ケイ素よりも酸化物形成能の高い金属である添加金属の酸化物、水酸化物、および炭酸塩からなる群より選択される少なくとも一種とを含むケイ素酸化物系のガラス層により構成されている。
特開2015−6681号公報
特許文献1の表面処理被膜は、ケイ素酸化物系のガラス層であり、比較的結合強度が強い膜として金型表面に密着させることができるので、金属溶湯の射出によって簡単に剥離されず、焼き付きの抑制効果を長時間維持することができる。
特許文献1の表面処理被膜を金型表面に形成した場合においても、離型剤を用いて離型性を向上させることによって、金属溶湯の焼き付きの発生をより効果的に抑えることができる。離型性を向上させるためには、ダイカスト金型用表面処理被膜と離型剤との親和性を向上させることが好ましい。ダイカスト金型において一般的に用いられる離型剤は、シリコンオイル等の有機成分を主成分として含むため、離型剤との親和性を向上させるためには、離型剤の有機成分との親和性を向上させることが有効である。
本発明は、離型剤との親和性が高く金属溶湯の焼き付きの発生をより効果的に抑制できるダイカスト金型用表面処理被膜を提供することを目的とする。
本発明者は、ケイ素酸化物系のガラス層によって構成される表面処理被膜のガラス層にダイカスト金型において一般的に用いられる離型剤との親和性が高い有機基を組み込むことによって表面処理被膜と離型剤との親和性を向上させることに着目した。ダイカスト金型は高温の溶湯と接触するため、有機基は高温に晒された場合においても容易に表面処理被膜のガラス層から離脱しないことが好ましい。本発明者は、高温条件下でも表面処理被膜のガラス層から離脱しにくい状態で有機基をガラス層に組み込む技術について鋭意研究を行った。その結果、ケイ素酸化物を構成するケイ素Siと有機基を構成する炭素Cとが直接結合したSi−C結合をガラス層が有するように、有機基を組み込むことによって、高温条件下での有機基の離脱を抑制できるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
《ダイカスト金型用表面処理被膜》
本発明のダイカスト金型用表面処理被膜は、ケイ素酸化物によって形成されるガラス層により構成され、該ケイ素酸化物のケイ素に結合するアルキル基またはアリール基を含む。
本発明のダイカスト金型用表面処理被膜は、そのガラス層が有機基であるアルキル基またはアリール基を含んでいるため、離型剤との親和性が高く金属溶湯の焼き付きの発生をより効果的に抑制できる。また、アルキル基またはアリール基は、ケイ素酸化物を構成するケイ素Siと結合しており、Si−C結合をガラス層が有する状態でガラス層に組み込まれている。このため、例えば、有機基が酸素Oを介してケイ素酸化物を構成するケイ素Siと結合されておりSi−O−C結合を形成してガラス層に組み込まれている場合と比較して、本発明の表面処理被膜では、高温条件下での有機基の離脱を抑制でき、鋳造を繰り返しても離型剤との高い親和性を維持することができる。
前記ガラス層は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含んでいてもよい。ガラス層中で添加金属の酸化物、水酸化物または塩のバインダーとして機能し、強度の高い表面処理被膜を得ることができる。また、ガラス層に添加される添加金属の酸化物、水酸化物または塩は、その一部が富化相として存在し、これによってケイ素酸化物と金属溶湯との反応を抑制する効果を得ることができる。
前記アルキル基またはアリール基と結合するケイ素は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で10at%以上含まれていることが好ましい。高温条件下で離脱しにくい有機基を十分に含むことにより、鋳造を繰り返しても離型剤との高い親和性を維持する効果を十分に得ることができる。さらに、前記アルキル基またはアリール基と結合するケイ素は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で50at%以下含まれていることが好ましい。この割合が50at%を超えると、ガラス層の被膜の構造体における架橋構造の密度が低下して耐久性が低下し、ガラス層の被膜が剥がれ易くなる場合がある。
前記添加金属は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で5at%以上含まれていることが好ましい。添加金属の酸化物、水酸化物、塩が富化相として十分に存在してケイ素酸化物と金属溶湯との反応を抑制するため、焼き付きを防止する効果を十分に得ることができる。さらに、前記添加金属は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で50at%以下含まれていることが好ましい。この割合が50at%を超えると、表面処理被膜の製造工程においてガラス層前駆物質に添加金属を均質に溶解させることが困難になる場合がある。
《ダイカスト金型用表面処理被膜の製造方法》
本発明は、上述したダイカスト金型用表面処理被膜としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち、本発明は、ケイ素酸化物と、Si−C結合を有する有機シラン化合物と、溶媒とを含むガラス層前駆物質を準備する準備工程と、前記ガラス層前駆物質をダイカスト金型に被覆して加熱する加熱工程と、を含むダイカスト金型用表面処理被膜の製造方法でもよい。Si−C結合を有する有機シラン化合物を用いることで、ケイ素酸化物のケイ素に結合するアルキル基またはアリール基をガラス層に確実に含有させることができる。
上記の製造方法では、前記ガラス層前駆物質は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含んでいてもよい。
上記の製造方法では、前記準備工程は、前記ケイ素酸化物と、溶媒とを含む第1混合物を準備する第1準備工程と、該第1混合物にさらに前記有機シラン化合物を混合させる第2準備工程とを含むことが好ましい。第1準備工程においてガラス層の骨格を成すケイ素酸化物を主体とする成分を十分に混合した後で、Si−C結合を有する有機シラン化合物を添加することで、反応時間を調整して均質に混合することができる。
実施例5に係る試料表面の外観を示す写真である。 比較例1に係る試料表面の外観を示す写真である。 比較例2に係る試料表面の外観を示す写真である。
本発明において、「ダイカスト金型部材」とは、ダイカスト金型や、ダイカストピン、入子、中子等のダイカスト金型内に設置される部品の総称であり、ダイカスト鋳造に用いられる金属溶湯が接触する部材である。
(表面処理被膜)
本発明のダイカスト金型用表面処理被膜は、ケイ素酸化物を含むガラス層により構成され、このケイ素酸化物を構成するケイ素の少なくとも一部には、アルキル基またはアリール基が結合されている。本発明のガラス層は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含んでいてもよい。「ガラス層」とは、金属原子と酸素原子がアモルファス状に結合してなる層状体を主体とする構成物を意味し、主に非晶質(アモルファス)構造のガラス層であるが、一部結晶化していてもよい。より具体的には、ガラス層は、下記の式(1)に示すガラス状態のケイ素酸化物を主成分として含み、ガラス層中で添加金属の酸化物、水酸化物または塩のバインダーとして機能する。表面処理被膜中のアルキル基またはアリール基と結合するケイ素はケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で50at%以下とし、残りのケイ素はケイ素酸化物を構成していることが好ましい。さらに、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をガラス層に添加し、添加金属の一部がケイ素酸化物を構成するケイ素と結合している場合には、アルキル基またはアリール基と結合するケイ素と添加金属と結合するケイ素との合計は、ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で55at%以下とし、残りのケイ素はケイ素酸化物を構成していることが好ましい。ケイ素酸化物がバインダーとして機能し、ガラス層としての形態を保持してダイカスト金型への密着性を確保することができる。一方で、表面処理被膜中のアルキル基またはアリール基と結合するケイ素が少な過ぎると、離型剤との親和性が低下することから、表面処理被膜中のアルキル基またはアリール基と結合するケイ素はケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で10at%以上であることが好ましい。すなわち、ケイ素酸化物を構成するケイ素の原子組成百分率は、45at%以上90at%以下であることが好ましい。
本発明では、 添加金属の酸化物、水酸化物または塩は、ガラス層中に取り込まれてケイ素酸化物と化学結合していてもよいし、固体微粒子の状態で被膜中に存在して富化相を形成していてもよい。また、添加金属は、ケイ素とによって複合酸化物を形成していてもよい。このような複合化合物も化学的に十分安定であるので、金属溶湯と反応し難く、焼き付きを効果的に防止できる。添加金属の酸化物、水酸化物、または塩によって形成される富化相は、ケイ素酸化物と金属溶湯との反応をより効果的に抑制する。添加金属の酸化物、水酸化物、および塩は、MgO、Al、TiO、BaO、ZrO、Mg(OH)、Ca(OH)、Al(OH)、Ba(OH)、Mg(NO、Ca(NO、MgCO、CaCO、およびBaCOからなる群より選択される少なくとも一種を好適に用いることができる。
ケイ素酸化物と金属溶湯との反応を抑制して焼き付きを抑制するために、表面処理被膜中の添加金属の含有量は、ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で5at%以上であることが好ましく、30at%以上であることが特に好ましい。また、添加金属の含有量が多くなると被膜中のバインダーの役割を担うケイ素酸化物の含有量が相対的に減少し、表面処理被膜の緻密度が低下するとともにダイカスト金型部材への密着性が低下するため、添加金属の含有量は50at%以下であることが好ましい。
本発明に係る表面処理被膜は、連続した緻密な膜であるのがよい。言い換えれば、表面または内部に微細孔が極力形成されていないのがよい。表面処理被膜の表面または内部に微細孔が形成されている場合、ダイカスト鋳造時にその微細孔に金属溶湯が入り込んで固化する。すると、鋳造製品の取り出し時に微細孔内の金属に引き摺られて表面処理被膜が剥離されるおそれがある。このため、表面処理被膜は、内部に金属溶湯が入り込まないように連続した緻密な膜であるのがよい。
(表面処理被膜の製造方法)
本発明に係る表面処理被膜は、以下に説明する準備工程、被覆工程、および加熱工程を経て製造できる。
準備工程では、ケイ素酸化物と、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩とを溶媒に混合させたガラス層前駆物質を作製する。ここで言う「ガラス層前駆物質」とは、ケイ素酸化物と添加金属の酸化物、水酸化物または炭酸塩とがアモルファス状に結合されてなるガラス層が生成される前段階の物質を意味する。
準備工程で溶媒に混合する各物質は、2種類以上を同時に溶媒に混合してもよいし、分けて多段階に混合してもよい。例えば、ケイ素酸化物水溶液を作製してこれに添加金属の酸化物、水酸化物または炭酸塩を混合させた後に、Si−C結合を有する有機シラン化合物をさらに混合してもよい。また、シリコーン等のケイ素酸化物が含まれた市販の水溶液等に添加金属の酸化物等およびSi−C結合を有する有機シラン化合物を混合させるようにしてもよい。また、ケイ素酸化物と、添加金属の酸化物等を含む市販のガラス層前駆物質にSi−C結合を有する有機シラン化合物を混合させるようにしてもよい。また、例えば、ゾルゲル法によりゲル状のガラス層前駆物質を作製してもよい。
Si−C結合を有する有機シラン化合物は、アリール基またはアルキル基が1以上3以下結合するケイ素を含むことが好ましく、1つのケイ素に結合するアリール基またはアルキル基は2個以下であることがより好ましい。Si−C結合を有する有機シラン化合物は、アルコキシ基と、アルキル基およびアリール基とを有していることが好ましい。Si−C結合を有する有機シラン化合物の具体例としては、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシイソブチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジイソプロピルシラン、ジメトキシジイソブチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシシクロヘキシルメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン等を挙げることができる。
被覆工程では、ガラス層前駆物質をダイカスト金型部材に被覆する。この場合において、例えばスプレー塗布により液状のガラス層前駆物質をダイカスト金型部材に被覆することができる。ガラス層前駆物質がゲル状であれば、それをそのままダイカスト金型部材の所要部位に被覆することができるし、あるいはダイカストピン等に被覆する場合、ダイカストピンをゲル状のガラス層前駆物質に浸漬することによって、ダイカストピンにガラス状前駆物質を被覆することができる。
加熱工程では、ガラス層前駆物質が被覆されたダイカスト金型部材を加熱する。この加熱によって、ガラス層前駆物質中のケイ素酸化物と添加金属の酸化物等が結合してガラス層が形成される。また、この加熱によってガラス層中のケイ素がダイカスト金型部材の表面に結合し、表面処理被膜がダイカスト金型部材に固着する。ケイ素酸化物と添加金属の酸化物等とを十分に結合させてガラス層を確実に形成するとともにダイカスト金型部材との密着性を確保するために、加熱温度は300℃以上であることが好ましい。また、有機基が表面処理被膜から離脱することを防ぐために、加熱温度は600℃以下であることが好ましい。加熱温度は、300℃以上かつ600℃以下であることが好ましく、400℃以上かつ550℃以下であることがより好ましい。また、400℃〜550℃で加熱された場合、金属溶湯に接触する際の温度変化に起因した表面処理被膜の損傷を効果的に抑制することができる。
また、ダイカスト金型部材に予め表面処理を施しておいても良い。例えば、ガラス層の被覆部分に、PVD法、プラズマCVD法によって、予めTiAlN、CrN、AlCrN、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)をコーティングしておいてもよい。
(準備工程)
まず、DLC膜がコーティングされた熱間ダイス鋼(SKD61)製のダイカストピンを用意した。また、テトラエトキシシラン、硝酸カルシウム4水和物および硝酸マグネシウム6水和物を水に入れて攪拌し、混合することにより第1混合液を調整した(第1準備工程)。次に、第1混合液に、Si−C結合を有する有機シラン化合物としてトリメトキシメチルシランを入れて第2混合液(ガラス層前駆物質)を作製した(第2準備工程)。なお、Si−C結合を有する有機シラン化合物(本実施例ではトリメトキシメチルシラン)に含まれるSi元素の個数M1とテトラエトキシシランに含まれるSi元素の個数M2がM1/(M1+M2)=0.3を満たし、かつ、添加金属(本実施例ではMg元素およびCa元素)の個数M3が、それぞれM3/(M1+M2)=0.75となるように各混合物の量を調整した。
(被覆工程)
次いで、第2混合液にエタノールを加えて希釈した後、先に用意したダイカストピンを200℃に加熱した状態で回転させながら、混合液(ガラス層前駆物質)をダイカストピンの表面にスプレー塗布した。塗布膜厚が約1μmになるようにスプレー塗布を複数回(例えば5,6回)繰り返した。
(加熱工程)
次いで、混合液(ガラス層前駆物質)がスプレー塗布(被覆)されたダイカストピンを250℃の雰囲気中で5分間加熱し、その後、さらに、500℃の雰囲気中で10分間加熱した。この加熱により混合液中の有機溶媒および水が除去されるとともに、ガラス層前駆物質が反応してガラス層が形成された。また、形成されたガラス層がダイカストピンの表面に固着した。このようにして、表面処理被膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル1)を作製した。
ダイカストピンとして、タフトライド膜がコーティングされた熱間ダイス鋼(SKD61)製のダイカストピンを用意したこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル2)を作製した。
ダイカストピンとして、コーティングされていない熱間ダイス鋼(SKD61)製のダイカストピンを用意したこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル3)を作製した。
ダイカストピンとして、TiAlN膜がコーティングされた熱間ダイス鋼(SKD61)製のダイカストピンを用意したこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル4)を作製した。
Si−C結合を有する有機シラン化合物としてトリメトキシフェニルシランを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル5)を作製した。なお、実施例1と同様に、Si−C結合を有する有機シラン化合物(本実施例ではトリメトキシフェニルシラン)に含まれるSi元素の個数M1とテトラエトキシシランに含まれるSi元素の個数M2がM1/(M1+M2)=0.3を満たし、かつ、各添加金属の個数M3が、それぞれM3/(M1+M2)=0.75となるように各混合物の量を調整した。
Si−C結合を有する有機シラン化合物としてトリメトキシプロピルシランを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル6)を作製した。なお、実施例1と同様に、Si−C結合を有する有機シラン化合物(本実施例ではトリメトキシプロピルシラン)に含まれるSi元素の個数M1とテトラエトキシシランに含まれるSi元素の個数M2がM1/(M1+M2)=0.3を満たし、かつ、各添加金属の個数M3が、それぞれM3/(M1+M2)=0.75となるように各混合物の量を調整した。
Si−C結合を有する有機シラン化合物としてトリメトキシプロピルシランを用いたこと、および、添加金属の個数M3がM3/(M1+M2)=0.30となるように各混合物の量を調整したこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル7)を作製した。なお、実施例1と同様に、Si−C結合を有する有機シラン化合物(本実施例ではトリメトキシプロピルシラン)に含まれるSi元素の個数M1とテトラエトキシシランに含まれるSi元素の個数M2がM1/(M1+M2)=0.3を満たし、かつ、添加金属の個数M3がM3/(M1+M2)=0.3となるように各混合物の量を調整した。
(比較例1)
実施例2と同様に、ダイカストピンとして、タフトライド膜がコーティングされた熱間ダイス鋼(SKD61)製のダイカストピン(サンプル8)を用意した。
(比較例2)
準備工程において、Si−C結合を有する有機シラン化合物を混合する第2準備工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の手順で表面処理膜としてのガラス層が被覆されたダイカストピン(サンプル9)を作製した。
(焼き付き試験)
サンプル1〜9を、それぞれダイカスト金型のキャビティ内にセットし、金型の成形面に市販のシリコンオイルを主成分とする離型剤を塗布して、500tのダイカストマシンを使用してキャビティ内にアルミニウム溶湯(ADC12)を15回繰り返して射出し鋳造を行った。なお、型開きして鋳物を取り出した後には、成形面に再度離型剤を塗布した。
各サンプルについて、焼き付き試験後の正味の重量の増加量を測定した。結果を表1に示す。また、実施例5のサンプル1の外観を撮影した写真を図1に示し、比較例1のサンプル8の外観を撮影した写真を2に示し、比較例2のサンプル9の外観を撮影した写真を図1に示す。また、サンプル1〜7については赤外線分析(FT−IR)を行った。その結果、サンプル1〜7では、表面処理被膜にSi−C結合が含まれていることが確認できた。加熱工程において500℃の雰囲気中で10分間加熱した後でも、表面処理被膜から有機成分のSi−C結合が保持されていることが確認できた。また、赤外線分析の結果から、サンプル1〜7の表面処理膜中に含まれているSi元素のうち、Si−C結合を有するSi元素の割合を算出し、実測値として表1に合わせて示した。
表1に示すように、実施例1〜7に係るサンプル1〜7は、比較例1,2に係るサンプル8,9と比較して、焼き付き試験後の重量の増加量が小さくなっていた。図2,3に示すように、比較例1,2のサンプル8,9では、サンプルであるダイカストピンの表面に溶湯であるアルミニウムが付着して白くなっている部分が観察されたのに対し、図1に示す実施例5のサンプル1の写真では、アルミニウムが付着して白くなっている部分は観察されなかった。実施例1〜7では、表面処理被膜のガラス層が有機基であるアルキル基またはアリール基を含んでおり、離型剤との親和性が高いため、離型剤を表面処理被膜の表面に効果的に保持することができた結果、金属溶湯の焼き付きの発生を抑制できたものと考えられる。また、表1に示すように、サンプル1〜7の表面処理膜中に含まれているSi元素のうち、Si−C結合を有するSi元素の割合は、24%以上であった。
また、実施例1,5,6に係るサンプル1,5,6を比較例1に係るサンプル8と比較すると、表面処理被膜の無いサンプル8の重量増加量が3.5mgと多いのに対して、本発明の有機基を有する表面処理被膜を有するサンプル1,5,6では、重量増加量は0〜1.1mgと著しく少なく、焼き付き抑制効果が高かった。また、実施例1〜7に示すように、有機基の種類にかかわらず表面処理被膜が有機基を含むことによって親油性が向上し、高い焼き付き抑制効果が得られることがわかった。
また、実施例6,7に示すように、添加金属が固体微粒子状態で多くの富化相を形成するM3/(M1+M2)=0.75の場合(添加金属がケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で25at%含まれている場合)に焼き付き抑制効果が大きく、富化相が少ないM3/(M1+M2)=0.30の場合(添加金属がケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で10at%含まれている場合)においても焼き付き抑制効果が得られることがわかった。すなわち、添加金属による富化相が形成できれば焼き付き抑制効果を得られることがわかった。富化相は、表面処理被膜のガラス層と溶湯との反応を防止するとともに、表面処理被膜のダイカスト金型への密着性を向上させ、これによって焼き付き抑制効果を得ることができると考えられる。なお、富化相を形成するためには、ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で5at%以上の添加金属を添加する必要があると考えられる。すなわち、十分な焼き付き抑制効果を得るためには、富化相を形成可能な量の添加金属を添加する必要があり、添加金属の添加量は、ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で5at%以上であることが好ましい。

Claims (7)

  1. ケイ素酸化物によって形成されるガラス層により構成され、該ケイ素酸化物のケイ素に結合するアルキル基またはアリール基を含むダイカスト金型用表面処理被膜。
  2. 前記ガラス層は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含む請求項1に記載のダイカスト金型用表面処理被膜。
  3. 前記アルキル基またはアリール基と結合するケイ素は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で10at%以上かつ50at%以下含まれている請求項1または2に記載のダイカスト金型用表面処理被膜。
  4. 前記添加金属は、前記ケイ素酸化物を構成するケイ素に対して原子組成百分率で5at%以上かつ50at%以下含まれている請求項1〜3のいずれかに記載のダイカスト金型用表面処理被膜。
  5. ケイ素酸化物と、Si−C結合を有する有機シラン化合物と、溶媒とを含むガラス層前駆物質を準備する準備工程と、
    前記ガラス層前駆物質をダイカスト金型に被覆して加熱する加熱工程と、を含むダイカスト金型用表面処理被膜の製造方法。
  6. 前記ガラス層前駆物質は、Mg、Ca、Al、Ti、Ba、およびZrからなる群より選択される少なくとも一種の添加金属の酸化物、水酸化物、または塩をさらに含む請求項5に記載のダイカスト金型用表面処理被膜の製造方法。
  7. 前記準備工程は、
    前記ケイ素酸化物と、溶媒とを含む第1混合物を準備する第1準備工程と、
    該第1混合物にさらに前記有機シラン化合物を混合させる第2準備工程とを含む請求項5または6に記載のダイカスト金型用表面処理被膜の製造方法。
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