以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1には、第1の実施の形態の逸脱減少情報提示装置のブロック図が示されている。本逸脱減少情報提示装置は車両に設けられている。本実施の形態では、操舵しながら所望の駐車スペースに後退駐車しようとするタスクの実行の際に、操舵が遅れ又は早すぎ、この結果、所望の駐車スペースから逸脱した位置に駐車することになる傾向のある運転者を例にとり説明する。
図1に示すように、本逸脱減少情報提示装置は、図示しないシフトレバーの位置を検出するシフト位置センサ10と、図示しない方向指示器による方向指示を検出する方向指示センサ12とを備えている。本逸脱減少情報提示装置は、車両が後退する場合に、駐車予定方向判定処理及びバイアス量初期化処理を実行する駐車予定方向判定処理部14を備えている。
本逸脱減少情報提示装置は、車両の後方を撮影するカメラ24と、カメラ24が車両の後方を撮影して得た画像に鏡面変換(左右反転)処理を施した画像であるカメラ画像を生成する鏡面変換処理部26とを備えている。
本逸脱減少情報提示装置は、初期バイアス量(Δ)、係数(ε)等を記憶する情報記憶装置Mと、カメラ画像にかけるバイアスのバイアス量であるバイアス切出画角を算出するバイアス切出画角算出処理部16を備えている。
本逸脱減少情報提示装置は、車両の速度を検出する車速センサ18と、ステアリングホイールの舵角を検出する舵角センサ20と、検出された車速及び舵角に基づいて、一定時間後までに車両が移動する将来予測軌道を算出する将来予測軌道算出処理部22とを備えている。
本逸脱減少情報提示装置は、鏡面変換処理部26からのカメラ画像からバイアス切出画角算出処理部16からのバイアス量に基づいて切り出した一定矩形領域の画像に、将来予測軌道算出処理部22からの将来予測軌道を合成する画像合成処理部28を備えている。本逸脱減少情報提示装置は、将来予測軌道が合成された一定矩形領域の画像を表示するディスプレイ30を備えている。
本実施の形態の上記各処理部(14、16、22、26、28)の各々を又は全体を、CPU(中央処理装置:Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備えたコンピュータで実現することができる。ディスプレイ30としては、液晶表示装置(LCD)、ブラウン管(CRT)、有機エレクトロルミネセンス表示装置(OELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED)等が適用できる。情報記憶装置Mとしては、SSD(Solid State Drive)、DVDディスク、ICカード、光磁気ディスク、CD−ROMなどの任意の「可搬型の記憶媒体」を採用することができる。
情報記憶装置Mは、本開示の「記憶部」の1例である。画像合成処理部28は、本開示の「作成部」の1例である。ディスプレイ30は、本開示の「提示部」の1例である。
次に、情報記憶装置Mに記憶された初期バイアス量(Δ)と係数(ε)とを説明する。初期バイアス量(Δ)と係数(ε)とは、後述するように上記運転者の個別の値である。なお、複数の運転者の平均値、最頻値、中央値等の統計量でもよく、運転者が事前に入力した固定値でもよく、これらの値を運転者が選択するようにしてもよい。
初期バイアス量(Δ)を説明する。後退駐車の際には、ディスプレイ30に、カメラ画像の中の所定位置に位置する一定矩形領域の画像を切り出して、表示する。運転者は、ディスプレイ30に表示された画像を基準に、操舵しながら所望の駐車スペースに後退駐車しようとする。運転者が過去に後退駐車して、所望の駐車スペースから逸脱した位置までの逸脱量と逸脱の方向とを、カメラ24により車両の後方を撮影して得た画像から計算しておく。上記所定位置に位置する一定矩形領域を移動させて切り出して表示すれば、上記逸脱が減少することになる当該一定矩形領域の移動量を、上記逸脱量と逸脱の方向とに基づいて、計算する。
より具体的に説明すると、まず、上記逸脱のない運転者の場合には、左右方向の中心がカメラ画像の左右方向の中心に一致する一定矩形領域の画像を、カメラ画像から切り出し、ディスプレイ30に表示する。上記のように操舵が遅れる傾向がある運転者の場合には、操舵するタイミングをより早くする必要がある。操舵するタイミングをより早くするには、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面から外れさせることが必要である。なぜなら、所望の駐車スペースが外れたディスプレイ30の表示画面を見た運転者は、所望の駐車スペースが外れないように操舵を開始するからである。後退方向を基準に右側に駐車する場合には、一定矩形領域を、カメラ画像の中心から水平方向(右方向:バイアス方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像を、カメラ画像から切り出して表示すれば、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面から外れさせることができる。左右方向の中心がカメラ画像の左右方向の中心に一致する一定矩形領域の画像をどの方向に移動させるのかは、上記逸脱の方向により定まる。また、上記一定矩形領域の画像をどれだけ移動させるのかは、逸脱量により定まる。逸脱量が大きいほど、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面から外れさせる量も大きい。以上の関係に基づいて、初期バイアス量(Δ)が定まる。この移動量が初期バイアス量である。初期バイアス量(Δ)を情報記憶装置Mに記憶する。
なお、初期バイアス量(Δ)は、上記計算により求めた固定値でもよく、後述する逸脱減少情報提示処理を実行した結果を学習して決定した値でもよく、運転者が決定した値でもよい。更には、これらの値を、運転者が選択してもよい。
初期バイアス量(Δ)は、後退駐車が車両の後退方向を基準に右側の場合の上記逸脱量を計算して上記移動量を計算して、求めたものである。後述するように、左側に駐車する場合の初期バイアス量は、−Δとして初期バイアス量(Δ)を利用する。逆に、初期バイアス量(Δ)は、後退駐車が車両の後退方向を基準に左側に駐車する場合の上記逸脱量を計算して上記移動量を計算して、求めたものとしてもよい。この場合、右側に駐車する場合の初期バイアス量は、−Δとして初期バイアス量(Δ)利用してもよい。また、後退駐車が車両の後退方向を基準に右側に駐車する場合と左側に駐車する場合とで上記逸脱量を計算して上記移動量を平均し、右側に駐車する場合のものとして求め、左側に駐車する場合の初期バイアス量は、−Δとして初期バイアス量(Δ)を利用してもよい。更に、初期バイアス量(Δ)は、後退駐車が車両の後退方向を基準に右側に駐車する場合と左側に駐車する場合とで個別に求めてもよい。
次に、係数(ε)を説明する。後述するように、一定の処理(図2のステップ38〜48)を繰り返すと、仮にバイアス量が小さくならなければ、小さくならないバイアス量分移動した一定矩形領域の画像が切り出され、現実の画像からの乖離が大きくなる。よって、現実の画像に近づけるために、バイアス量を小さくする必要がある。係数(ε)は、バイアス量を、一定の処理を実行する毎に減少させるための係数(0<ε<1)である。具体的には、後退駐車開始から所望の駐車スペースまでの平均的な将来予測軌道、更新駐車の際の平均的な車速、及び上記一定の処理の実行時間から、車両が駐車スペースに到達する頃に、バイアス量が0となるように決定される。
次に、本逸脱減少情報提示装置の作用を説明する。図2には、第1の実施の形態の逸脱減少情報提示装置が実行する逸脱減少情報提示処理の逸脱減少情報提示プログラムのフローチャートが示されている。なお、逸脱減少情報提示プログラムは、本逸脱減少情報提示装置が備える情報記憶装置Mに記憶されている。上記CPUは、情報記憶装置Mから逸脱減少情報提示プログラムを読み出してRAMに展開し、逸脱減少情報提示プログラムが有するプロセスを実行する。
図2に示すように、ステップ32で、駐車予定方向判定処理部14は、シフト位置センサ10が検出したシフトレバーのシフト位置がRレンジに位置しているか否かを判断する。シフト位置がRレンジに位置していないと判断(F)されれば、Rレンジに位置すると判断されるまで、ステップ32の処理が繰り返される。
一方、ステップ32で、シフト位置がRレンジに位置している(T)と判断された場合には、ステップ34で、駐車予定方向判定処理部14は、駐車予定方向判定処理を実行し、ステップ36で、駐車予定方向判定処理部14は、バイアス量初期化処理を実行する。
図3には、図2のステップ34の、駐車予定方向判定処理部14が実行する駐車予定方向判定処理のフローチャートが示されている。図3のステップ50で、駐車予定方向判定処理部14は、方向指示センサ12からの信号に基づいて、方向指示器が指示する方向が右であるか否かを判断する。方向指示器が指示する方向が右であると判断された場合には、ステップ52で、駐車予定方向判定処理部14は、後退方向を基準にした場合の駐車予定方向が右であることを設定する。その後、処理は、図2のステップ36に進む。
ステップ50で、方向指示器が指示する方向が右であると判断されなかった場合には、ステップ54で、駐車予定方向判定処理部14は、方向指示センサ12からの信号に基づいて、方向指示器が指示する方向が左であるか否かを判断する。方向指示器が指示する方向が左であると判断された場合には、ステップ56で、駐車予定方向判定処理部14は、後退方向を基準にした場合の駐車予定方向が左であることを設定する。その後、処理は、図2のステップ36に進む。
ステップ54で、方向指示器が指示する方向が左であると判断されなかった場合には、方向指示器が右も左も指示しない場合であるので、ステップ58で、駐車予定方向判定処理部14は、駐車予定方向は中立であることを設定する。その後、処理は、図2のステップ36に進む。
図4には、図2のステップ36の、駐車予定方向判定処理部14が実行するバイアス量初期化処理のフローチャートが示されている。図4のステップ60で、駐車予定方向判定処理部14は、上記駐車予定方向が右に設定されているか否かを判断する。上記駐車予定方向が右に設定されていると判断された場合には、ステップ62で、駐車予定方向判定処理部14は、情報記憶装置Mから初期バイアス量Δ及び係数εを読み出し、バイアス量に+Δをセットし、係数にεをセットする。その後、処理は、図2のステップ38に進む。
ステップ60で、上記駐車予定方向が右に設定されていると判断されなかった場合には、ステップ64で、駐車予定方向判定処理部14は、上記駐車予定方向が左に設定されているか否かを判断する。上記駐車予定方向が左に設定されていると判断された場合には、ステップ62で、駐車予定方向判定処理部14は、情報記憶装置Mから初期バイアス量Δ及び係数εを読み出し、バイアス量に−Δをセットし、係数にεをセットする。その後、処理は、図2のステップ38に進む。
ステップ64で、上記駐車予定方向が左に設定されていると判断されなかった場合には、駐車予定方向は中立であり、操舵する必要がなく、後退駐車の際、駐車スペースの左右に逸脱することがないので、バイアス量及び係数に0をセットする。その後、処理は、図2のステップ38に進む。
なお、上記のように、初期バイアス量(Δ)は、後退駐車が車両の後退方向を基準に右側に駐車する場合と左側に駐車する場合とで個別に求めてもよい。この場合、ステップ62では、後退駐車が車両の後退方向を基準に右側に駐車する場合の初期バイアス量を用い、ステップ66では、後退駐車が車両の後退方向を基準に左側に駐車する場合の初期バイアス量を用いるようにしてもよい。
図2のステップ38で、カメラ画像取得処理が実行される。詳細には、カメラ24は、車両の後方を撮影し、得られた画像を鏡面変換処理部26に出力する。鏡面変換処理部26は、カメラ24からの画像に鏡面変換(左右反転)処理を施した画像であるカメラ画像を生成する。鏡面変換処理部26は、生成したカメラ画像を、画像合成処理部28に出力する。その後、処理は、図2のステップ40に進む。
ステップ40で、将来予測軌道算出処理部22は、将来予測軌道算出処理を実行する。
図5には、図2のステップ40の、将来予測軌道算出処理部22が実行する将来予測軌道算出処理のフローチャートが示されている。図5のステップ70で、将来予測軌道算出処理部22は、カメラ画像における1ピクセルあたりの距離を算出する。ステップ72で、将来予測軌道算出処理部22は、1ピクセルあたりの距離を用い、舵角センサ20からの現在の舵角と、車速センサ18からの現在の車速とを、2輪モデルに適合する。これにより、車両と典型的な駐車スペースとを含む車両後方側の領域を上方から見た予め定められかつ情報記憶装置Mに記憶された鳥瞰画像の中での一定時間後までに車両が走行する軌道である将来予測軌道が算出される。
ステップ74で、将来予測軌道算出処理部22は、上記算出された将来予測軌道をカメラ24の撮影方向の軌道に変換し、ステップ76で、将来予測軌道算出処理部22は、上記変換された将来予測軌道を、画像合成処理部28に出力する。その後、処理は、図2のステップ42に進む。
ステップ42で、バイアス切出画角算出処理部16は、車速センサ18からの信号に基づいて、車両は停止しているか否かを判断する。バイアス切出画角算出処理部16が、車両は停止していないと判断した場合には、本処理は、ステップ38に戻る。車両が停止していると判断された場合には、ステップ44で、バイアス切出画角算出処理部16は、バイアス量に係数(ε)を乗算した値をバイアス量として設定する。その後、処理はステップ46に進む。
ステップ46で、画像合成処理部28は、画像合成処理を実行する。図6には、図2のステップ46の、画像合成処理部28が実行する画像合成処理のフローチャートが示されている。
図7(A)には、後退駐車の際に操舵が遅れる傾向のある運転者が運転する車両の後退駐車の様子を示し、(B)は、車両の現実の位置から遠ざかった位置を想定し、(C)は、当該傾向を減少するための画像を示す図が示されている。
後退駐車の際、車両の後方を撮影した現実の画像をディスプレイ30に表示し、運転者は、当該現実の画像を基準に後退駐車をする。しかし、後退駐車の際に一定の傾向(操舵が速い又は遅い傾向)のある運転者の場合、現実の画像を基準に車両を所望の位置(駐車スペースの中)に移動させようとしても、現実には、所望の位置から逸脱した位置に駐車することがある。操舵のタイミングが遅い場合には、車両を所望の駐車スペースよりも遠ざかるように逸脱した位置に駐車する。一方、操舵のタイミングが早い場合には、車両を所望の駐車スペースよりも手前側に逸脱した位置に駐車する。
本実施の形態では、車両の後方を撮影した現実の画像を調整した画像を基準に、上記傾向のある運転者が車両を後退駐車した場合に、上記逸脱が減少することになる画像を、次のように作成する。
上記傾向がない運転者の場合には、図7(A)に示すように、車両は、現在位置84から、望ましい中間の状態(望ましい位置86)を経由して、所望の最終の状態になる(所望の駐車スペース内に駐車する)。
しかし、例えば、操舵が遅れる傾向がある運転者の場合、現実の画像を基準に後退駐車をすると、操舵するタイミングが遅れ、駐車スペースの中から遠ざかるルート90に沿って後退し、逸脱した位置に駐車する。
この場合、上記逸脱を減少するためには、操舵するタイミングを、現実の画像を基準に後退駐車する際の操舵するタイミングより早いタイミングに変化させる必要がある。具体的には、図7(B)に示すように、現在の位置84よりも水平方向に近づく位置92からカメラ24が車両の後方を撮影した画像をディスプレイ30に表示する。理由は次の通りである。現在の位置84よりも水平方向に近づく位置92からカメラ24が車両の後方を撮影した画像をディスプレイ30に表示すれば、この表示を見た運転者は、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面から外れていると錯覚し、操舵のタイミングが遅れていると錯覚する。よって、運転者は、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面に表示されるように、操舵を開始するようになる。これにより、操舵するタイミングを早めることができる。
より具体的に説明すると、まず、上記逸脱のない運転の場合には、左右方向の中心がカメラ画像94の左右方向の中心に一致する一定矩形領域96Aの画像を、カメラ画像94から切り出し、ディスプレイ30に表示する。上記のように操舵が遅れる傾向がある運転者の場合には、駐車予定方向が右の場合には、図7(C)に示すように、一定矩形領域96Aを、カメラ画像の中心から水平方向(紙面の右方向:バイアス方向F1)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像96B1を、カメラ画像94から切り出して表示すれば、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面から外れさせることができる。
そこで、図6のステップ78で、画像合成処理部28は、カメラ画像94から、カメラ画像の中心から水平方向(バイアス方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像96B1を切り出す。
図8には、後退駐車の際に操舵が遅れる傾向による逸脱を減少するための画像96B1に将来予測軌道L2を合成した図が示されている。
ステップ80で、画像合成処理部28は、図8に示すように、図5のステップ76で出力された将来予測軌道L2(ステップ5のステップ74で変換された将来予測軌道)を、ステップ78で切り出された一定矩形領域の画像96B1に合成する。なお、将来予測軌道L1は、画像にバイアスをかけないで切り出された一定矩形領域の画像に合成した場合の将来予測軌道である。
ステップ82で、画像合成処理部28は、将来予測軌道L2が合成された一定矩形領域の画像96B1を、ディスプレイ30に出力する。これにより、ディスプレイ30に、図8に示すように、将来予測軌道L2が合成された一定矩形領域の画像96B1が表示される。上記のように操舵が遅れる傾向がある運転者は、ディスプレイ30の表示内容を見ると、「思ったより早めにステアを切らないとなあ」と錯覚し、この錯覚に基づいて、ステアリングホイールを操作する。よって、上記逸脱が減少する。その後、処理は、図2のステップ48に進む。
図9(A)には、後退駐車の際に操舵が早い傾向のある運転者が運転する車両の後退駐車の様子を示し、(B)は、車両の現実の位置から近づいた位置を想定し、(C)は、当該傾向を減少するための画像を示す図が示されている。
上記傾向がない運転者の場合には、図9(A)に示すように、車両は、現在位置84から、望ましい中間の位置86を経由して、所望の最終状態88となる(所望の駐車スペースの中に駐車する)。
しかし、上記例と異なり、操舵が早い傾向がある運転者の場合、現実の画像を基準に後退駐車をすると、操舵するタイミングが早くなり、駐車スペースに近づくルート98に沿って後退し、操舵し直さなければならなくなる。
この場合、上記逸脱を減少するためには、操舵するタイミングを、現実の画像を基準に後退駐車する際の操舵するタイミングより遅れたタイミングに変化させる必要がある。現実の画像を、図9(B)に示すように、現在の位置84よりも水平方向に遠ざかる位置100からカメラ24が車両の後方を撮影した画像をディスプレイ30に表示すれば、操舵するタイミングを遅れさせることができる。理由は次の通りである。現在の位置84よりも水平方向に遠ざかる位置100からカメラ24が車両の後方を撮影した画像をディスプレイ30に表示すれば、運転者は、所望の駐車スペースが、ディスプレイ30の表示画面の中により入った状態を認識する。よって、運転者は、既にある程度操舵が進んだ状態であると錯覚する。よって、所望の駐車スペースがディスプレイ30の表示画面により入らないようにしなければならない、即ち、操舵を遅らせなければならないと錯覚する。よって、操舵を開始するタイミングを遅らせることができる。
この場合、図6のステップ78では、画像合成処理部28は、カメラ画像94から、左右方向の中心がカメラ画像の左右方向の中心に位置する一定矩形領域99Aをカメラ画像94の中心から水平方向(左方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像96B2を切り出す。
以上は、駐車予定方向が右においては、操舵が遅れ又は早すぎる傾向がある運転者の場合を説明した。
一方、駐車予定方向が左においては、操舵が遅れる傾向がある運転者の場合には、図6のステップ78では、画像合成処理部28は、カメラ画像から、カメラ画像の中心から水平方向(左方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像を切り出す。また、駐車予定方向が左においては、操舵が早すぎる傾向がある運転者の場合には、図6のステップ78では、画像合成処理部28は、カメラ画像から、カメラ画像の中心から水平方向(左方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像を切り出す。
図2のステップ48で、駐車予定方向判定処理部14は、シフト位置センサ10が検出したシフトレバーのシフト位置がRレンジに位置していないか否かを判断する。シフト位置がRレンジに位置していないと判断されなかった場合(シフト位置がRレンジに位置している場合)には、未だ後退駐車が終了していない、即ち、後退中であると判断できるので、ステップ38に戻って、以上の処理(ステップ38〜48)を繰り返す。
このように以上の処理(ステップ38〜48)を繰り返すと、仮にバイアス量が小さくならなければ、ステップ46(特に、図6のステップ78)では以上の処理(ステップ38〜48)を繰り返す毎に、小さくならないバイアス量分、水平方向に移動した一定矩形領域の画像が切り出され、現実の画像からの乖離が大きくなる。そこで、本実施の形態では、図2のステップ44で、現実の画像に近づけるために、バイアス量を係数で小さくしている。
また、図2のステップ42で、車両が停止していると判断された場合には、ステップ44〜48の処理をスキップして、ステップ38に戻るようにしている。これは、ステップ44〜48の処理をスキップしなければ、現実には車両は停止していても、ディスプレイ30には、水平方向に移動した画像が表示され、即ち、車両が移動しているように表示され、運転者に違和感を生じさせる。そこで、車両が停止していると判断された場合には、ステップ44〜48の処理をスキップして、ディスプレイ30には同じ画像を表示させている。
一方、シフト位置がRレンジに位置していないと判断された場合には、シフトレバーがRレンジに位置すると判断されて上記処理(ステップ34〜48)が実行され、その後、シフトレバーがRレンジに位置しなくなったので、後退駐車が終了したと判断でき、本処理が終了する。
以上説明したように本実施の形態は、カメラ画像の中心から水平方向(バイアス方向)にバイアス量だけ移動した一定矩形領域の画像を切り出して表示している。よって、本実施の形態は、操舵が遅れ又は早い傾向の運転者に、操舵を早め又は遅らせることが必要であると錯覚させる画像を表示することができる。従って、上記錯覚させる画像を見た運転者は、操舵を早め又は遅らせることが必要であると錯覚し、錯覚した内容に従って、操舵を早め又は遅らせる。よって、上記逸脱が減少する。
即ち、本実施の形態では、操舵をするタイミングが適正でないために所望の駐車スペースから逸脱した位置に駐車する傾向の運転者に、上記逸脱が減少するように、操舵をするタイミングを変化させる画像を提示することができる。
また、上記のように運転者は、上記錯覚させる画像を見て、操舵を早め又は遅らせることが必要であると錯覚し、錯覚した内容に従って、操舵を早め又は遅らせる。よって、運転者は、自分の思い通りの運転によって所望の駐車スペースに車両を駐車させることができ、違和感を減少させることができる。
更に、本実施の形態では、上記の一定の処理(ステップ38〜48)を繰り返す毎に、バイアス量を小さくして、錯覚させた画像と現実の画像との乖離を小さくして、現実の画像に近づけている。よって、最終的な駐車位置を、ディスプレイ30に表示された位置に近づけることができ、違和感を減少させることができる。
ところで、従来、車両が所望の駐車スペースに対して平行になった時にステアリングホイールを戻すように報知する技術がある。本実施の形態と当該技術とを比較すると、当該技術では、車両が当該平行にならない場合には、動作せず、煩わしいが、本実施の形態では、シフトレバーの位置がRレンジになった段階で動作するので、煩わしくなることはない。
更に、現実に駐車することが予想される位置を運転者に支援提示する技術と比較すると、当該技術では、支援が主で運転者が従の関係であるのに対し、本実施の形態では、運転者は、自分の思い通りの運転をして上記逸脱を減少でき、運転者が主で支援が従の関係である点で相違する。よって、本実施の形態では、違和感が当該技術より小さくすることができる。
また、人の生得的な偏りである無意識下刺激を活用する支援装置と比較すると、当該技術では、無意識下刺激が個人ごとに異なるので、適合が困難であるのに対し、本実施の形態では、無意識下刺激ではない画像を表示するので、適合がより容易である。
更に、駐車予定位置とその位置までの進路と切り返し位置を鳥瞰映像上に提示する技術と比較すると、当該技術では、駐車予定位置の自動又は手動による特定が必要となるのに対し、本実施の形態では、駐車予定位置の自動又は手動による特定は不要である点で相違する。
以上説明した第1の実施の形態では、所望の状態は、所望の駐車スペースの中に車両が停止する状態としているが、所望の状態は、所望の駐車スペースに停止するまでの中間での所望の状態(例えば、図7(A)における状態86)でもよい。
また、第1の本実施の形態では、上記の一定の処理(ステップ38〜48)を繰り返しているが、本発明はこれに限定されず、上記の一定の処理(ステップ38〜48)を最初に実行した後は、ディスプレイ30には、車両の後方を撮影した現実の画像を表示するようにしてもよい。なぜなら、上記処理(ステップ38〜48)を1回実行しただけでも、運転者には上記のように錯覚させることができるからである。また、将来予測軌道と現実の軌道との差が所定量大きくなった場合に、上記処理を、少なくとも1回又は当該差が処理量以下となるまで、実行するようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態の構成は、第1の実施の形態と略同様であるので、異なる点を説明する。本実施の形態の逸脱減少情報提示装置は、後述する制御部を備えている。図10には、ディスプレイ30に代えて採用する装置を示す図が示されている。具体的には、本実施の形態では、聴覚を刺激するための可聴音スピーカ110を、ディスプレイ30の代わりに採用している。なお、可聴音スピーカではなく、触覚を刺激するための超音波スピーカや振動モータ、温熱で刺激する電磁モータ等を採用してもよい。可聴音スピーカ110、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等は、本開示の「提示部」の1例であり、情報記憶装置Mは、本開示の「記憶部」の1例であり、制御部は、本開示の「作成部」の1例である。
前述した第1の実施の形態では、操舵しながら所望の駐車スペースに後退駐車しようとする際に、操舵が遅れ又は早すぎ、この結果、所望の駐車スペースから逸脱した位置に駐車することになる傾向のある運転者を例にとり説明した。
これに対し、第2の実施の形態では、左折するタスクの実行の際に、操舵が遅れ又は早すぎ、この結果、路側帯から離れ過ぎ又は近づき過ぎになる傾向のある運転者を例にとり説明する。
本実施の形態では、光センサやGPS装置を利用して車両と路側帯との間の距離を測定する。制御部は、車両と路側帯との間の距離が所望の距離の場合に、所定の大きさが可聴音スピーカ110から発し、車両と路側帯との間の距離が所望の距離よりも短くなり又は長くなるに従って所定の大きさより大きく又は小さくなるように可聴音スピーカ110を制御している。
情報記憶装置Mには、車両が左折する際に、具体的には、車両の先端が、現在走行としている道路と左折して侵入しようとする道路との境界線に位置した時の、車両と路側帯との間の距離が所望の距離から逸脱する運転者の個別の逸脱量の値と、逸脱の方向(上記距離が所望の距離より大きくなるか又は小さくなるか)を示す値とが記憶されている。運転者の個別の値でなく、複数の運転者の平均値、最頻値、中央値等の統計量でもよく、個別の値と統計量を運転者が選択するようにしてもよい。また、これらの値は、過去の履歴から計算した固定値でもよく、後述する処理を実行した結果を学習して決定した値でもよく、運転者が決定した値でもよい。更には、これらの値を、運転者が選択してもよい。
そして、方向指示器が左を指示していることを方向指示センサ12が検出した場合、制御部は、車両と路側帯との間の現在の距離に応じた音の大きさと、情報記憶装置Mに記憶された逸脱量及び方向の各々の値とに基づいて、車両と路側帯との間の現在の距離に応じた音の大きさを調整して可聴音スピーカ110から発した場合、上記逸脱が減少することになる音の大きさを決定する。そして、制御部は、決定された大きさの音が発するように可聴音スピーカ110を制御する。
図11には、左折する際に運転者が認識する車両の位置84を示す図が示されている。例えば、運転者に、左折する際に、車両と路側帯との間の距離が、所望の距離から小さくなるように逸脱する傾向があるとする。よって、左折する際、車両と路側帯との間の現在の距離が所望の距離の位置よりも路側帯に近づく傾向になる。そこで、車両と路側帯との間の現在の距離に応じた音の大きさよりも大きくすると、運転者は、車両の現在の位置が現実よりも近づいていると錯覚する。よって、運転者は、車両と路側帯との間の距離が長くなるように左折することになり、車両と路側帯との間の距離の所望の距離からの逸脱量が小さくなる。
なお、車両と路側帯との間の現在の距離に応じた音の大きさと、上記逸脱量及び方向の各々の値に基づいて決定された音の大きさとの差を、左折が進むに従って小さくする。
以上説明した例では、車両と路側帯との間の距離が所望の距離の場合に、所定の大きさが可聴音スピーカ110から発し、車両と路側帯との間の距離が所望の距離よりも短くなり又は長くなるに従って所定の大きさより大きく又は小さくなるようにしている。これに限定されるものでなく、これに代えて又はこれと共に、車両と路側帯との間の距離が所望の距離の場合に、所定の周波数の音が可聴音スピーカ110から発し、車両と路側帯との間の距離が所望の距離よりも短くなり又は長くなるに従って周波数が所定の周波数より高く又は低くなるようにしてもよい。左折時には、上記逸脱が減少するように周波数を調整する。
また、所望の状態は、車両の先端が、現在走行としている道路と左折して侵入しようとする道路との境界線に位置した時の車両の路側帯から所望の距離の位置に位置する状態としているが、次の状態でもよい。第1に、車両の先端が上記境界線よりも一定距離手前に位置した時の車両の路側帯から所望の距離の位置に位置する状態としてもよい。第2に、左折して侵入しようとする道路に侵入して、走行していた道路の進行方向から45°左の方向に曲がった時の車両の路側帯から所望の距離の位置に位置する状態としてもよい。第3に、左折して侵入しようとする道路に侵入して、侵入した道路と平行となった時の車両の路側帯から所望の距離の位置に位置する状態としてもよい。
また、可聴音スピーカ110に代え、又は可聴音スピーカ110と共に、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等を採用してもよい。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態の構成は、第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する
第2の実施の形態では、左折する際に、操舵が遅れ又は早すぎ、この結果、路側帯から離れ過ぎ又は近づき過ぎになる傾向のある運転者を例にとり説明した。これに対し、第3の実施の形態では、停止線で停止するタスクの実行の際に、ブレーキペダルを踏むのが遅れ又は早すぎ、この結果、車両の先端が停止線より手前又は停止線を通り過ぎる傾向のある運転者を例にとり説明する。
本実施の形態の制御部は、GPS装置を利用して車両が停止線の手前の所定距離に位置したことが判断された場合に、可聴音スピーカ110を制御して、所定の音量の定常音が発し始める。当該位置から車両が更に進み、停止線の手前の特定の距離の位置まで近づくにつれて定常音の音量を大きくし、特定の距離の位置を過ぎて停止線に到達するまで、定常音の音量を小さくし、停止線に到達したときに定常音を停止するようにしている。
図12(A)には、停止線の前で、ブレーキペダルを早踏みする傾向のある運転者が運転する車両の様子を示し、図12(B)は、停止線の前で、ブレーキペダルを遅踏みする傾向のある運転者が運転する車両の様子を示し、図12(C)は、図12(A)及び図12(B)の傾向を減少させるために提示する情報の内容を示す図が示されている。
図12(A)及び図12(B)に示すように、車両の先端が停止線に位置して停止する所望の状態106となるのが理想である。
しかし、停止線の前で、ブレーキペダルを早踏みする傾向のある運転者が車両を運転すると、図12(A)に示す軌跡104にあるように、車両の先端は停止線よりも手前に位置して停止する。また、停止線の前で、ブレーキペダルを遅踏みする傾向のある運転者が車両を運転すると、図12(B)に示す軌跡108にあるように、図12(A)に示す軌跡104よりも停止線に近づいており、車両の先端が停止線を超えて停止する。
情報記憶装置Mには、停止線で停止する際に、車両の先端と停止線との間の距離の値と、停止線よりも手前に停止したか又は停止線を通りすぎたのかを示す値とが記憶されている。これらの値は、運転者の個別の値でもよく、複数の運転者の平均値、最頻値、中央値等の統計量でもよく、個別の値と統計量を運転者が選択するようにしてもよい。また、これらの値は、過去の履歴から計算した固定値でもよく、後述する処理を実行した結果を学習して決定した値でもよく、運転者が決定した値でもよい。更には、これらの値を、運転者が選択してもよい。
本実施の形態では、上記のように車両の停止線に対する現実の位置に応じた音量の定常音を聞いて、運転者は、車両の位置を認識する。この状態では、上記の傾向により、車両の先端が停止線よりも手前又は停止線を通り過ぎて停止する。しかし、本実施の形態の制御部は、情報記憶装置Mに記憶された値と、車両の先端と停止線との間の現実の距離の値に応じた音量とに基づいて、定常音の音量を調整した場合、上記逸脱が減少することになる音量を決定し、決定した音量の定常音が発するように可聴音スピーカ110を制御する。
例えば、停止線の前で、ブレーキペダルを早踏みする傾向のある運転者には、より遅れたタイミングでブレーキペダルを踏ませるようにする。具体的には、上記傾向に応じて、現実の位置よりも、停止線との間の距離が長い位置に応じた音量の定常音が可聴音スピーカ110から発するようにする。よって、運転者は、現実の位置よりも手前に車両が位置すると錯覚する。よって、より遅れたタイミングでブレーキペダルを踏むことになり、上記逸脱が減少する。例えば、図12(C)の点線に示すように、音量のピークに対応する車両の位置が、特定位置Pよりも停止線側に近い位置となる。
また、停止線の前で、ブレーキペダルを遅踏みする傾向のある運転者には、より早いタイミングでブレーキペダルを踏ませるようにする。具体的には、上記傾向に応じて、現実の位置よりも、停止線との間の距離が短い位置に応じた音量の定常音が可聴音スピーカ110から発するようにする。よって、運転者は、現実の位置よりも停止線に近い位置に車両が位置すると錯覚する。よって、より早いタイミングでブレーキペダルを踏むことになり、上記逸脱が減少する。例えば、図12(C)の一点鎖線に示すように、音量のピークに対応する車両の位置が、特定位置Pよりも手前側の遠い位置となる。
なお、車両の現実の位置に応じた音の大きさと、上記逸脱量及び方向の各々の値に基づいて決定された音の大きさとの差を、車両が停止線に近づくに従って小さくする。
以上説明した例では、可聴音スピーカ110からの定常音の音量を制御している。これに限定されるものでなく、これに代えて又はこれと共に、定常音の周波数を制御するようにしてもよい。例えば、停止線の前で、ブレーキペダルを早踏みする傾向のある運転者には、周波数のピークに対応する車両の位置が、特定位置よりも停止線側に近い位置となるようにする。また、停止線の前で、ブレーキペダルを遅踏みする傾向のある運転者には、周波数のピークに対応する車両の位置が、特定位置よりも停止線側に遠い位置となるようにする。
車両の先端が停止線に位置して停止する状態が所望の状態としているが、所望の状態は、これに限定されず、車両の先端が停止線よりも所定距離手間に位置する時に所定の速度で走行している状態を所望の状態としてもよい。
また、可聴音スピーカ110に代え、又は可聴音スピーカ110と共に、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等を採用してもよい。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態の構成は、第1の実施の形態と略同様であるので、異なる点を説明する。本実施の形態では、制御部、及びヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display(HUD))を備えている。また、本実施の形態では、加速度センサを備えている。HUDは、本開示の「提示部」の1例である。
前述した第1の実施の形態では、操舵しながら所望の駐車スペースに後退駐車しようとする際に、操舵が遅れ又は早すぎ、この結果、所望の駐車スペースから逸脱した位置に駐車することになる傾向のある運転者を例にとり説明した。これに対し、第4の実施の形態では、高速道路に合流するタスクの実行の際に、加速するタイミングが遅れ又は早すぎ、この結果、高速道路に合流する際の速度が所望の速度より小さい又は大きくなるように逸脱する傾向のある運転者を例にとり説明する。
本実施の形態の制御は、GPS装置を利用して車両が高速道路に合流する交錯点の手前の所定距離に位置したことが判断された場合に、HUDを制御して背景を光らせ始める。当該位置から車両が更に進み、交錯点の手前の特定の距離の位置まで近づくにつれてHUDの背景輝度を大きくし、特定の距離の位置を過ぎて交錯点に到達するまで、HUDの背景輝度を小さくし、交錯点に到達したときにHUDの背景輝度を0にするようになっている。
図13(A)には、高速道路に合流する交錯点KPの付近の様子を示し、図13(B)には、交錯点KP手前から交錯点KPまで走行する際の平均加速度を示し、図13(C)には、交錯点KPの手前から交錯点KPまで走行する際の平均ヨーレートを示す図が示されている。
図14(A)には、高速道路に合流する交錯点KPの付近の様子を示し、図14(B)には、高速道路に合流する際の速度が所望の速度より小さい又は大きくなるように逸脱する傾向を減少させるためのHUDの背景輝度の内容を示し、図14(C)には、当該傾向を減少させる定常音の周波数の内容を示す図が示されている。
情報記憶装置Mには、運転者の個別の、高速道路に合流する際、即ち、交錯点KPから所定距離手前の位置から交錯点KPまでの車両の平均加速度の積算値が記憶されている。
図13(A)に示すように、高速道路に合流する際に、加速するタイミングが適正で、高速道路に合流する際の速度が所望の速度の場合には、交錯点KPから所定距離手前の位置から交錯点KPまでの車両の加速度の積算値は所定の値となる。図13(B)に示すように、車両は、交錯点の手前から加速し始める。よって、車両の平均加速度も徐々に増加し、交錯点に差し掛かると、加速度が小さくなり、減速するので加速度はマイナスとなり、高速道路に合流すると一定の速度で走行するので、加速度は0となる。
しかし、高速道路に合流する際に、加速するタイミングが遅れると、車両の加速度の積算値は、上記所定値よりも小さくなる。逆に、加速するタイミングが早いと、車両の加速度の積算値は、上記所定値よりも大きくなる。本実施の形態では、上記のように、運転者の個別の、高速道路に合流する際の車両の平均加速度の積算値が記憶されている。
なお、車両の平均加速度の積算値は、運転者の個別の値でなく、複数の運転者の平均の積算値でもよく、個別の積算値と平均の積算値を運転者が選択するようにしてもよい。また、上記積算値は、過去の履歴から計算した固定値でもよく、後述する処理を実行した結果を学習して決定した値でもよく、運転者が決定した値でもよい。更には、これらの値を、運転者が選択してもよい。
本実施の形態では、上記のように車両の交錯点に対する現実の位置に応じたHUDの輝度の光を認識して、運転者は、車両の位置を認識する。この状態では、上記の傾向により、高速道路に合流する際の速度が所望の速度より小さい又は大きくなるように逸脱する。
本実施の形態の制御部は、情報記憶装置Mに記憶された値と、車両の交錯点までの現実の距離の値に応じたHUDの背景輝度とに基づいて、HUDの背景輝度を調整した場合、上記逸脱が減少することになる背景輝度を決定し、決定した背景輝度でHUDの背景の光が発するようにHUDを制御する。
例えば、交錯点の前で、加速するタイミングが早い傾向のある運転者には、より遅れたタイミングで加速するように、上記傾向に応じて、現実の位置よりも遠い位置に応じた背景輝度の光がHUDから発するようにする。よって、運転者は、現実の位置よりも遠い位置に車両が位置すると錯覚する。よって、より遅れたタイミングで加速することになり、上記逸脱が減少する。例えば、図14(B)に示すように、背景輝度のピークに対応する車両の位置が、特定位置よりも交錯点側に近い(後だし)位置となる。
また、交錯点の前で、加速するタイミングを遅い傾向のある運転者には、より早いタイミングで加速するように、上記傾向に応じて、現実の位置よりも近い位置に応じた背景輝度の定常音がHUDから発するようにする。よって、運転者は、現実の位置よりも近い位置に車両が位置すると錯覚する。よって、より早いタイミングで加速し始めることになり、上記逸脱が減少する。例えば、図14(B)に示すように、背景輝度のピークに対応する車両の位置が、特定位置よりも交錯点に遠い(前出だし)位置となる。
なお、車両の現実の位置に応じた音の大きさと、情報記憶装置Mに記憶された値に基づいて決定された音の大きさとの差を、車両が交錯点KPに近づくに従って小さくする。
以上説明した例では、車両の加速度の積算値を基準にHUDの背景輝度を制御している。これに限定されない。ヨーレートセンサを備え、車両の加速度に代え又は加速度と共に、ヨーレートの積算値を記憶するようにしてもよい。加速度に代えて又は加速度と共に、ヨーレートを用いて同様にHUDの背景輝度を制御するようにしてもよい。
以上説明した例では、高速道路に合流する交錯点KPでの速度が所望の速度を所望状態としているが、所望状態は、これに限定されず、交錯点KPより所定距離手前の位置で車両が所定速度の状態としてもよい。
また、HUDに代えて、可聴音スピーカ110からの定常音の音量及び周波数の少なくとも一方を制御してもよい。なお、可聴音スピーカ110に代え、又は可聴音スピーカ110と共に、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等を採用してもよい。なお、可聴音スピーカ110、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等は、本開示の「提示部」の1例である。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。本実施の形態の構成の逸脱減少情報提示装置は、車両に設けられている。本逸脱減少情報提示装置は、電子料金収受システム(Electronic Toll Collection System(ETC))における、ETCカードが挿入されるETC車載器、及びETC車載器のETCカードが挿入される部分を含む車内を撮影するカメラを備えている。また、本逸脱減少情報提示装置は、情報記憶装置M、可聴音スピーカ110、及び可聴音スピーカ110を制御する制御部を備えている。
情報記憶装置Mは、本開示の「記憶部」の1例である。制御部は、本開示の「作成部」の1例である。可聴音スピーカ110は、本開示の「提示部」の1例である。
図15には、運転者がETCカードをETC車載器の挿入部に挿入する際の様子が示されている。
本実施の形態では、ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入するタスクを実行する際に、ETCカードが挿入部から所定量、所定の方向に逸脱する傾向のある運転者を例にとり説明する。なお、運転者は、ETCカードやETC車載器の挿入部を見ないで、ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとする。
本実施の形態の逸脱減少情報提示装置は、カメラが撮影した画像に基づいて、ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとしていることを判断する。ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとしていることが認識できた場合には、ETC車載器の挿入部とETCカードの位置との距離に応じて、当該距離が小さくなるに従って大きくなる音量の音が可聴音スピーカ110から発するようにしている。よって、運転者は、可聴音スピーカ110から発せられた音に基づいて、ETCカードのETC車載器の挿入部に対する距離を把握することができる。
情報記憶装置Mには、ETC車載器の挿入部に挿入しようとしたETCカードの現実の位置の上記挿入部の位置(所望の状態)からの逸脱量及び逸脱の方向をそれぞれ示す値が記憶されている。なお、これらの値は、運転者の個別の値であるが、個別の値ではなく、複数の運転者の平均値、最頻値、中央値等の統計量でもよく、個別の値と統計量を運転者が選択するようにしてもよい。また、上記値は、過去の履歴から計算した固定値でもよく、後述する処理を実行した結果を学習して決定した値でもよく、運転者が決定した値でもよい。更には、これらの値を、運転者が選択してもよい。
次に、本実施の形態の処理を説明する。本実施の形態の逸脱減少情報提示装置は、ETC車載器の挿入部を含む所内をカメラが撮影して得た画像に基づいて、ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとしているか判断する。ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとしていると判断されなかった場合には、当該判断が肯定されるまで、当該判断が繰り返される。
ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入しようとしていることが認識するできた場合には、ETC車載器の挿入部とETCカードの位置との現実の距離に応じた音量を調整した場合に、上記逸脱が減少することになる音量を決定する。具体的には、情報記憶装置Mに記憶された上記逸脱量及び逸脱の方向をそれぞれ示す値と、ETC車載器の挿入部とETCカードの位置との現実の距離に応じた音量とに基づいて、上記逸脱が減少することになる音量を決定する。そして、決定した音量の音が発するように、可聴音スピーカ110を制御する。
例えば、ETC車載器の挿入部が、現実の位置より運転者に近い位置にあると感覚的に意識する運転者は、ETCカードを、ETC車載器の挿入部に挿入する際、当該挿入部の現実の位置より運転者に近い位置に逸脱するように移動させる傾向にある。よって、運転者には、ETCカードが現実の位置よりも運転者に近い位置に対応する音量を、上記逸脱が減少することになる音量として決定し、可聴音スピーカ110から発生させる。これにより、運転者は、ETCカードが現実の位置よりも運転者に近い位置に位置すると錯覚する。よって、運転者は、ETCカードを運転者から遠ざける、即ち、ETC車載器の挿入部に近づけようとする。よって、上記逸脱が減少することになる。
なお、ETCカードの現実の位置と、運転者に錯覚させたETCカードの位置との差は、ETCカードがETC車載器の挿入部に近づくに従って小さくする。
以上説明した例では、ETCカードがETC車載器の挿入部に位置する状態を所望の状態としているが、所望の状態は、これに限定されず、ETC車載器の挿入部から一定距離離れた位置にETCカードが位置することを所望の状態としてもよい。
可聴音スピーカ110に代え、又は可聴音スピーカ110と共に、超音波スピーカ、振動モータ、電磁モータ等を採用してもよい。これらは、本開示の「提示部」の1例である。
更に、可聴音スピーカ110に代え又は可聴音スピーカ110と共に、ディスプレイ30を備え、ETCカードが現実の位置よりも運転者に近い又は遠い位置に位置するようにディスプレイ30に表示するようにしてもよい。これにより、運転者は、ETCカードが現実の位置よりも運転者に近い又は遠い位置に位置すると錯覚する。よって、運転者は、ETCカードを運転者から遠ざけ又は近づける、即ち、ETC車載器の挿入部に近づけようとする。よって、上記逸脱が減少することになる。なお、ディスプレイ30に代えて、HUDやヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ、Head Mounted Display、(HMD))を用いて上記のように表示をしてもよい。
また、本発明は、ETC車載器の挿入部にETCカードを挿入する場合に限定されるものではない。例えば、イグニッションキーをイグニッションキー挿入部に挿入する場合にも同様にしてもよい。更に、本発明は、車両に関係するものではなく、例えば、家のドアの鍵穴に鍵を挿入する場合にも同様に適用することができる。
なお、前述した各実施の形態では、逸脱減少情報提示プログラムを情報記憶装置Mから読み出す場合を例示したが、必ずしも最初から情報記憶装置Mに記憶させておく必要はない。例えば、ROMに記憶させたり、通信回線を介して逸脱減少情報提示に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部に逸脱減少情報提示プログラムを記憶させたりしてもよい。他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部に逸脱減少情報提示プログラムを記憶させた場合、逸脱減少情報提示装置は、他のコンピュータ又はサーバ装置等から逸脱減少情報提示プログラムを取得して実行する。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。