JP2017159613A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、本発明者らは薄い樹脂フィルムにおいて、平坦性を維持しつつ硬度、耐傷性を向上させることを目的としている。
【解決手段】厚みTの支持基材の少なくとも一方の面に、厚みtの表面層を有する積層体であって、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの20%(以降、位置Aとする)、80%(以降、位置Bとする)の各位置における、原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,D、が以下の条件1〜4すべてを満たすことを特徴とする積層体。
条件1 T ≦ 30μm
条件2 0.10 ≦t/T≦0.45
条件3 E>E
条件4 D>D
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイ表面・内部部材、各種タッチパネル用部材、および各種成型体用外装部材等に用いられる積層体において、支持基材の表面に塗料組成物を塗布することで表面層を設けた積層体、および積層体の製造方法に関する。
液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイやタッチパネル材料には、さまざまなプラスチックフィルムが使用されている。その製造工程や最終製品の取り扱いにおいては、表面に傷がつかない「耐傷性」を付与することが求められる。
これに対して、プラスチックフィルムを支持基材とし、その表面に塗料組成物を塗布して表面層を設けた積層体を用いることが一般的である(特許文献1)。
近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイなどの最終製品は軽量化、薄型化が加速しており、これに対応すべく各部材の薄型化、さらに用いられるプラスチックフィルムや積層体の薄型化も求められている。また、より高機能化が進むにつれ、より光学特性が優れた材料を用いるため、従来よりも軟質な材料を使用することが求められる場合がある。
しかしながら、このようなより薄いプラスチックフィルムや、より軟質なプラスチックフィルムを用いた積層体であっても、最終製品の使われ方やその製造工程は大幅には変わらないため、従来とほぼ同等の耐傷性や、平坦性(低カール性)が求められる。
このような課題に対し、積層体の表面層の改良により、平坦性を維持しながら耐傷性を達成する方法として、特許文献2では、「一次粒子径300nm以下の金属酸化物超微粒子、紫外線硬化型樹脂として1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有し、かつ硬化後の収縮率が10%未満であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート(B)、有機溶剤、及び光重合開始剤から成り、さらに金属酸化物超微粒子の配合量が塗料組成物ハードコート層用塗料の硬化時の固形分に対して5.0重量%以上20.0重量%以下である塗料組成物を用い、比較的低積算光量にて重合させる方法」を提案している。
また、特許文献3では、「透明支持体上に活性エネルギーの照射により硬化する組成物からなるハードコート層および該支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を少なくとも一層有する反射防止フィルムにおいて、該透明支持体の厚みが60μ以下であり、該ハードコート層がエチレン性不飽和基を含む硬化性樹脂および開環重合性基を含む硬化性樹脂を含有する硬化性組成物からなることを特徴とする反射防止ハードコートフィルム」が提案されている。
国際公開第2003/026881号 特開2005−288787号公報 特開2004−126206号公報
本発明は、薄い、軟質な支持基材を用いた積層体であっても、耐傷性、平坦性(低カール)を満たす積層体であることを特徴とする
しかしながら、特許文献2、3に提案されている積層体について本発明者らが確認したところ、支持基材の厚みが40μm程度までは十分に機能するが、30μm台からその効果は不十分で、硬度の絶対値が低く、かつ耐傷性、平坦性(低カール)の両立が不可能であった。
そこで、本発明は、薄い樹脂フィルムにおいて、平坦性を維持しつつ硬度、耐傷性を向上させることを目的としている。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.厚みTの支持基材の少なくとも一方の面に、厚みtの表面層を有する積層体であって、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの20%(以降、位置Aとする)、80%(以降、位置Bとする)の各位置における、原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,D、が以下の条件1〜4すべてを満たすことを特徴とする積層体。
条件1 T ≦ 30μm
条件2 0.10≦t/T≦0.45
条件3 E>E
条件4 D>D
2.前記表面層の原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,Dが、以下の関係にある条件5、6をすべて満たすことを特徴とする1に記載の積層体。
条件5 Eが0.5GPa以上、Dが220eV未満
条件6 Eが0.4GPa未満、Dが220eV以上
3.前記表面層の前記位置Aと位置Bにおける、フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比(以降、A16801730,B16801730とする。)が以下の条件7から条件9を満たすことを特徴とする、1または2に記載の積層体。
条件7 A16801730 < B16801730
条件8 A16801730 < 0.6
条件9 0.9 < B16801730
4.前記表面層の、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの30%の位置から70%の位置の範囲において、フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比が、以下の条件10を満たす位置Cが存在することを特徴とする、1から3のいずれかに記載の積層体。
条件10 A16801730 < C16801730 < B16801730
5.前記積層体が、支持基材上に塗料組成物Bを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程1)、塗料組成物Aを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程2)、紫外線硬化を行う工程(工程3)を、連続してこの順に行うことを特徴とする積層体の製造方法。
本発明によれば、薄く、軟質な支持体上に表面層を設けた積層体であっても、高い鉛筆硬度、耐傷性、平坦性(低カール)を満たす積層体を得ることができる。
本発明の積層体の断面模式図である。 原子間力顕微鏡によるフォースカーブ測定の模式図である。
上記課題を達成するにあたり、本発明者らは薄い支持基材や柔軟な支持基材上に表面層を設けた場合に耐傷性が低下する理由について次のように考察した。
耐傷性の指標として、多くの場合に積層体の表面硬度を測定する鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4:1999)が用いられる。この試験は、6Bから6Hまでの14段階の芯の硬さが異なる鉛筆を用い、一定角度(45°±1°)、一定荷重(750g)で塗膜表面を擦過し、傷がつかない限界の鉛筆の硬さを、その表面の鉛筆硬度とするものである。
この試験は、支持基材上に表面層が形成されている積層体において、表面層の厚みが基材の影響を受けないほど十分に厚く、基材に対して密着強度が十分にあり、支持基材が表面層の硬さよりも十分に硬い場合には、表面層そのものの硬度に対応するが、一般的に積層体の表面層は支持基材よりも薄く、支持基材の硬さは表面層よりも柔らかいため、表面層と支持基材からなる複合体の耐傷性を見る評価方法として用いられる。
本発明者らは、この評価方法における傷のつきやすさの優劣を決めるメカニズムが、表面層が鉛筆により擦られた時、積層体の表面層と支持基材が発生する応力と、鉛筆の硬さによって実際の接触面積が定まり、その接触面積と荷重により定まる「面圧」に対して、表面層が耐えられるかどうかによって決まると考えている。
そのため、支持基材が薄いもしくは柔軟な材料になると、支持基材側から発生する応力が小さくなり、接触面積が小さくなるため、同じ表面層を形成したとしても、より高い面圧で擦られることになり、傷がつきやすくなる。
上記課題に対して、表面層の傷つきやすさを解消する方法としてこれまで用いられてきた技術は、高い面圧に耐えられるよう表面層の架橋密度を上げて、表面層内部の収縮応力を高めるものである。しかし本課題におけるように、基材が薄い、もしくは柔らかい場合には、著しいカールを起こし、平坦性を失ってしまう。前述の特許文献2、特許文献3の手法はいずれも、表面層の組成、および製造方法の工夫により収縮応力を下げる手法で、基本的には従来技術の延長線上にあるため、本課題が求める支持基材の厚みが30μm台、特に20μm台になると、その効果が不十分になる。
従来の技術の問題点に対し,本発明者らは前述のメカニズムに基づいて表面層の厚み方向の力の伝わり方に着目し、表面層の厚み方向の粘弾性制御による新しい改良方法を考案した。
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
まず、本発明の積層体は、図1のように、厚みTの支持基材1の少なくとも一方の面に、厚みtの表面層2を有し、前記表面層2の厚み方向に、前記表面層2の前記支持基材1に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの20%(位置A、図1中の3)、80%(位置B、図1中の4)の各位置における、原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,D、が以下の条件1〜4すべてを満たす。
条件1 T ≦ 30μm
条件2 0.10 ≦ t/T ≦0.45
条件3 E > E
条件4 D > D
ここで、本発明における「表面層」とは、支持基材上に形成された層をいう。すなわち、支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が「表面層」となる。また、例えば支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層すべてを1つの「表面層」というものとする。なお「積層体」および「層」の定義については後述する。
条件1は、図1中の支持基材1の厚みTの好ましい範囲を指す。支持基材の厚みTが30μm以下の条件で、従来技術のハードコートと比較して、高い鉛筆硬度および優れた耐傷性を示し、より好ましくは25μm以下にて鉛筆硬度および耐傷性の向上がより顕著となる。一方で、支持基材の厚みの下限については特に限定されないが、鉛筆硬度の評価時に支持基材が破れてしまう場合には、その効果が得られない。そのため、現実的な下限としては支持基材の弾性率にもよるが、概ね3μm程度である。
条件2は、図1中の支持基材1の厚みTと表面層2の厚みtの比の好ましい範囲を指し、0.10≦t/T≦0.45で効果を示し、0.12≦t/T≦0.4が好ましく、0.15≦t/T≦0.35がより好ましい。t/Tが0.10よりも小さいと、鉛筆硬度の向上効果が不十分である場合があり、0.45よりも大きいと平坦性(カール)が悪化する場合がある。
条件3と条件4は、表面層2の厚み方向の好ましい粘弾性を、特定の位置(位置A:図1中の3、位置B:図1中の4)での原子間力顕微鏡により測定された、弾性率と散逸エネルギーの関係で表している。
この原子間力顕微鏡による弾性率測定は、探針による極微小部分の圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いであるため、ばね定数が既知のカンチレバーを用いて、表面層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を測定する。
具体的には積層体を切断し、表面層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を原子間力顕微鏡により測定する。詳細は実施例の項で記載するが、下記に示す原子間力顕微鏡を用い、カンチレバー先端の探針を、表面層の断面に接触させ、10nNの押し付け力によりフォースカーブを測定して求めたカンチレバーの撓み量を測定することができる。測定の基本条件は以下の通りで有り、詳細については後述する。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡 DimensionIcon
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
原子間力顕微鏡による散逸エネルギー測定は、図2に記載のように、カンチレバーの応力5と、厚み方向の変位6の関係を測定し、カンチレバーの押し込み時のカーブ7と、引き離し時のカーブ8で囲まれる面積を、散逸エネルギー9として取り扱うもので、その物理的意味は試料表面の粘性と試料と探針の間に生じる凝着ヒステリシス損の総和に対応する。
条件3は弾性率の関係として、表面に近い位置A(図1中の3)の方が支持基材に近い位置B(図1中の4)よりも弾性率が高いことを示しており、条件4は散逸エネルギーの関係として、表面に近い位置Aの方が支持基材に近い位置Bよりも散逸エネルギーが低いことを示している。
条件3を満たさない場合には、鉛筆硬度試験の際に表面層の最表面側に掛かる面圧が大きくなるため、必要とする鉛筆硬度が得られない場合がある。また条件4を満たさない場合には、平坦性を得ることができない、もしくは凝着破壊を起こしやすく鉛筆硬度が低下する場合がある。
さらに、表面層の厚み方向の粘弾性については、以下の条件5、6をすべて満たすことが好ましい。
条件5 Eが0.5GPa以上、Dが220eV未満
条件6 Eが0.4GPa未満、Dが220eV以上
ここで、条件5は位置A(図1中の3)における好ましい弾性率を示しており、0.6GPa以上がより好ましく、散逸エネルギーは200eV未満がより好ましい。Eは大きい分には問題ないが、現実的には5GPa程度が限界である。また、Dは小さい方が好ましいが、実用材料としては100eV程度が限界である。
が0.5GPaより小さいと鉛筆硬度が低くなる場合があり、Dが220eVよりも大きいと平坦性が低下する場合がある。
条件6に示す位置B(図1中の3)における好ましい弾性率Eは、0.3GPa以下がより好ましく、散逸エネルギーDは240eV未満がより好ましい。Eは小さい方が好ましいが、0.08GPa程度よりも小さくなると、層内で凝集破壊を起こし、結果として鉛筆硬度が低下する場合がある。
が0.4GPaより小さいと鉛筆硬度が低くなる場合があり、Dが240eVよりも大きいと平坦性が低下する場合がある。
表面層が上記物性を達成する方法は特に限定されないが、その一つの方法として、層厚み方向の特定位置の組成を特定の範囲にすることが好ましく、具体的には、前記表面層の前記位置A(図1中の3)と位置B(図1中の4)における、フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比(以降A16801730,B16801730とする)が以下の条件7から条件9すべてを満たすことが好ましい。
条件7 A16801730 < B16801730
条件8 A16801730 < 0.6
条件9 0.9 < B16801730
ここで、フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1および1730cm−1はカルボニル基に起因するピーク位置であり、特に1680cm−1はウレタン樹脂に起因するピーク位置であり、1730cm−1はアクリル樹脂に起因するピーク位置である。すなわち条件7を満たすことは、支持基材に近い側の方がウレタン結合を有する化合物を多く含むことを意図している。
条件7の関係が逆転、すなわち表面側の方がウレタン結合を多く含む、もしくは同じであると、表面層内で力の伝わりが拡散しないため結果として鉛筆硬度が低下する場合がある。また条件8を満たさない場合には、すなわち表面側のアクリル樹脂成分が少ない場合には、表面の硬度が不足し、鉛筆硬度が低下する場合がある。一方、条件9を満たさない場合、すなわち基材側のウレタン成分が少ない場合には、カール抑制効果が不足し、平坦性が維持できない場合がある。
さらに、表面層が前述の粘弾性を発現するため、より好ましくは、前記表面層の、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの30%の位置から70%の位置の範囲における、表面層の表面から表面厚みX%の任意の位置Cにおいて、フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比が、以下の条件10を満たす位置Cが存在することが好ましい。
条件10 A16801730 < C16801730 < B16801730
条件10は、表面層の組成が、厚み方向に組成の境界界面なく連続的に変化、もしくは位置Aと位置Bの間に中間の組成を有する層を有していることを意図している。条件10の関係が満たされない、即ち表面層の厚みの30%の位置から70%の位置の範囲のすべての位置において1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比が、位置Aの1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比と同じであるか小さい、もしくは位置Bの1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比と同じであるか大きいので、表面層の厚み20%の位置から30%の位置、もしくは70%の位置から80%の位置の領域において、組成が厚み方向に対して急激に変化することになる。その領域において応力歪みが発生し、そこを基点とした塗膜の破壊が発生する可能性があるため好ましくない場合がある。
なお、前記位置A、位置B、位置Cのフーリエ変換型赤外分光光度計による、1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比の測定方法については、詳細は後述するが、表面層の断面方向の特定位置において測定を行うことを必要とする。表面層の厚みが十分に厚い場合には直接、透過、もしくは全反射型の顕微赤外分光法を使用すれば良いが、それが困難な場合には斜め切削法により表面層の厚みを、拡大して測定してもよい。
前述の前記表面層を形成する製造方法は特に限定されないが、好ましい方法の一つは、支持基材上に塗料組成物Bを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程1)、塗料組成物Aを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程2)、紫外線硬化を行う工程(工程3)を、連続してこの順に行う製造方法である。
ここで、塗布とは、塗料組成物を支持基材状に一定の厚みの液膜に広げること、乾燥とは、前記液膜から、溶媒を除去すること、紫外線硬化とは紫外線を照射することにより、重合を進行させることを指す。
前述の好ましい製造方法の意図は、工程1は支持基材側に塗布した塗料組成物Bが乾燥までするが、紫外線硬化していない状態であること、工程2で塗料組成物Aを塗布、乾燥し、最後に紫外線硬化させることにあり、工程1で未紫外線硬化の塗料組成物Bの塗布、乾燥膜上に、工程2の塗料組成物Aを塗布し・乾燥するときに、一部が溶解、混合した塗膜を形成したあとに硬化させることで、目的の構造をつくることができる。
仮に、工程1にて紫外線硬化まで行うと、塗料組成物Bを塗布・乾燥・紫外線硬化させることにより得られた層と、塗料組成物Aを塗布・乾燥・紫外線硬化させることにより得られた層の2層構成となるため、層間の密着力が低くなるとともに、表面層内で応力集中するポイントができてしまうため、好ましくない場合がある。以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
[積層体、および層]
本発明の積層体は支持基材の少なくとも1方の面に表面層を有していれば平面状(フィルム、シート、プレート)、3次元形状(成型体)のいずれであってもよいが、本発明の課題および効果が、薄く柔軟な支持基材であっても平坦性を維持しつつ、耐傷性を付与することにあるため、薄い支持基材、特に30μm以下、より好ましくは25μm以下のプラスチックフィルム上に表面層を形成した積層体の場合に、顕著な効果が得られる。
ここで、本発明における「層」とは、前記積層体の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位とは元素組成、含有物(粒子等)の形状、物理特性が不連続な境界面を有することにより区別でき、有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(IR,XPS,XRF,EDAX,SIMS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚みを有する部位を指す。
本発明の積層体に用いられる支持基材の好ましい材料については後述する。本発明の積層体に用いられる表面層は、後述する塗料組成物を塗布、乾燥、硬化した物が好ましい。表面層の厚みは、前述の支持基材との関係を満たせば特に限定はないが、本発明の効果が顕著に得られる、薄い支持基材、特に30μm以下のプラスチックフィルム上に表面層を形成する場合には、表面層の厚みは1μm〜10μmであることが好ましい。
前記表面層は、鉛筆硬度試験に対する耐久性の他に、反射防止、ハードコート、帯電防止、防汚性、導電性、熱線反射、易接着、紫外線吸収性や赤外線吸収性等の他の機能を有してもよい。
[塗料組成物]
本発明の積層体は、後述する支持基材上に後述する積層体の製造方法を用いて、塗料組成物を塗布、乾燥、硬化することで、前述の物性を達成可能な構造を持つ表面層を形成できる。
ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる室温にて液体の性状を示す混合物であり、後述の製造方法を用いることで、表面層を形成可能な材料を指す。
本発明の積層体では、前述の条件を満たす表面層を形成することができれば、塗料組成物を特に限定しないが、表面層内の基材側と表面側で弾性率、散逸エネルギーが特定の関係にあることが好ましく、厚み方向の組成が異なることが好ましいことから、少なくとも2種類の塗料組成物、塗料組成物A、塗料組成物Bを用いて表面層を形成することが好ましい。
ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、硬化触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
前記塗料組成物Bは、溶質として表面層の支持基材に近い側を形成するのに適した樹脂、または前駆体、粒子、硬化剤等を含む液体であり、前記塗料組成物Aは、溶質として表面層の表面側に近い側に適した樹脂、または前駆体、粒子、硬化剤等を含む液体である。
表面層を形成する方法、すなわち積層体の製造方法の詳細については後述するが、塗料組成物Aと塗料組成物Bを用いる場合、前述の塗料組成物Bと塗料組成物Aを1層ずつ塗布−乾燥−硬化させる逐次塗布、または多層ダイコートにより、塗料組成物Bと塗料組成物Aを同時塗布して形成してもよいが、支持基材上に塗料組成物Bを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程1)、塗料組成物Aを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程2)、紫外線硬化を行う工程(工程3)を、連続して順に行う方法が最も好ましい。
ここで、塗料組成物Bに使用される材料は、積層体として前述の物性が得られれば特に限定されないが、主たる溶質としてポリオール樹脂とイソシアネートを、より好ましくはウレタン変性アクリルポリオール樹脂と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。ウレタン変性アクリルポリオール樹脂は、主鎖となる(メタ)アクリルポリマーから、ウレタン側鎖をつくったものであり、ウレタンソフトセグメントがポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンオキサイドなど、いずれでもよく、本発明の目的以外の特性、例えば耐水性、耐熱性などを考慮して適宜選択される。
ウレタン変性アクリルポリオール樹脂としては「アクリット8UA−146」、「アクリット8UA−239」(共に大成ファインケミカル社製)などが挙げられる。
また、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物や、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン社製)等のビュレットポリイソシアネート化合物や、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業社製)等として知られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物や、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製)等の付加生成ポリイソシアネート化合物や、「コロネートL(TDIのトリメチロールプロパン付加生成物)」および「コロネートL−55E」(いずれも日本ポリウレタン工業社製)等の付加生成ポリイソシアネート化合物などを用いることができ、これらを単独で用いるか、又は2種以上混合して用いることができる。
ウレタン変性アクリルポリオール樹脂と分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を用いることにより、表面層の支持基材側を基材への密着力を確保すると共に、表面層の位置Bの弾性率を目標の領域に制御することが可能になる。
ここで、塗料組成物Aに使用させる材料も、積層体として前述の物性が得られれば特に限定されないが、溶質としてアクリル系ポリマー混合物、より好ましくは、ポリマー型アクリレート樹脂と多官能アクリレート、および粒子を含むことが好ましい。
ポリマー型アクリレート樹脂としては、「ユニディックV6840」、「ユニディックV6841」、「ユニディックV6850」、「ユニディックEMS−129」(共にDIC株式会社製)が挙げられる。
多官能アクリレートとしては、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。粒子については、後述する。
[粒子]
本発明の積層体が有する表面層は、粒子を含んでもよく、本発明の積層体に適した塗料組成物は粒子を含んでもよい。特に塗料組成物Aは粒子を含むことが好ましい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐久性の観点から無機粒子が好ましい。
無機粒子の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、2種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
また、本発明の成形材料を形成するのに適した塗料組成物中に含まれる粒子は、塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理において、熱や電離放射線などによりその表面状態を変化させた形で、前記表面層に含まれる。
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
無機粒子はSi,Al,Ca,Zn,Ga,Mg,Zr,Ti,In,Sb,Sn,BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO)である。
[溶媒]
本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。ここで「溶媒」とは、塗工後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[その他の添加剤]
本発明の積層体を形成するのに適した塗料組成物は、更に光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒は樹脂原料間の反応を促進するために用いられる。光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒としては、塗料組成物をラジカル反応等による重合および/またはシラノール縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
特に前述の塗料組成物Bはポリオールとイソシアネートの反応を促進する硬化触媒を、塗料組成物Aは、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
なお、光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒の含有割合は、塗料組成物中の樹脂原料の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
硬化触媒のポリオールとイソシアネートの反応を促進する例としては、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。例えばアミノ化合物、錫化合物、アセチルアセトン金属塩等が挙げられる。
前記アミノ化合物としては、例えば、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル−N’N’−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等が挙げられる。
前記錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
前記アセチルアセトン金属塩としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンベリリウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンモリブデン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンバナジウム、アセチルアセトンジルコニウム等が挙げられる。
本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させてもよい。
[塗料組成物A、塗料組成物B中の各原料の含有量]
塗料組成物Aは樹脂原料、粒子原料、光開始剤および溶媒を、塗料組成物Bは樹脂原料および樹脂原料の硬化を促進する硬化触媒、粒子原料および溶媒をそれぞれ含むが、塗料組成物中のそれぞれの質量関係について説明する。
本発明の塗料組成物100質量%において、樹脂原料が0.8質量%以上66質量%以下、粒子原料が0%以上35%以下、溶媒が30質量%以上95質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒のその他の成分が0.025質量%以上7質量%以下が好ましく例示される。より好ましくは、樹脂原料が3.2質量%以上56質量%以下、粒子原料が1質量%以上30質量%以下、溶媒が40質量%以上90質量%以下、光重合開始剤、熱重合開始剤、硬化剤、触媒のその他の成分が0.05質量%以上6質量%以下である。
[支持基材]
本発明の積層体には、前記「表面層」を設けるため支持基材を必要とする。支持基材に特に限定はなく、ガラス板、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、金属板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
プラスチックフィルム、プラスチックシートを支持基材に使用する場合、樹脂の例としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが挙げられるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート、およびこれらの共重合体、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ等が好ましく、さらにフィルムの形態の例としては、これらの樹脂からなる単層フィルム、共押し出し法による積層フィルム、ラミネートフィルムなどのいずれでもよい。
支持基材の厚み、弾性率については特に限定されないが、本発明の課題および効果が、厚みが薄く、柔軟な支持基材であっても平坦性を維持しつつ、耐傷性を付与することにあるため、薄い支持基材、特に30μm以下、より好ましくは25μm以下であって、ナノインデンテーション法により測定される押し込硬度が200N/mm以上6000N/mm以下、より好ましくは500N/mm以上5000N/mm以下、特に好ましくは1000N/mm以上4500N/mm以下、のプラスチックフィルム上に前述の表面層を形成した場合に、その効果が顕著である。
支持基材の表面には、前記表面層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、前述の支持基材の少なくとも片面に、表面層を形成することができれば、特に限定されないが、前述の塗料組成物を塗布し、次いで乾燥、硬化することにより、積層膜の各層を形成する方法であることが好ましく、支持基材上に塗料組成物Bを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程1)、塗料組成物Aを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程2)、紫外線硬化を行う工程(工程3)を、連続して順に行う製造方法がより好ましい。
ここで、塗布する工程とは、塗料組成物を支持基材状に一定の厚みの液膜に広げること、乾燥を行う工程とは、前記液膜から、溶媒を除去すること、紫外線硬化を行う工程とは紫外線を照射することにより、重合させることを指す。
まず、塗布する工程では、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい。
一方、乾燥する工程では、得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、塗料組成物Aおよび塗料組成物Bを用い、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、80℃以上200℃以下がより好ましく、80℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
また、活性エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となり、十分な硬度が得られない場合がある。
また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm、好ましくは200〜2000mW/cm、さらに好ましくは300〜1500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm、好ましくは200〜2000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。
ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。また、実施例中の「部」、及び「%」は特に明示しない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
[樹脂原料]
[樹脂原料A1]
樹脂原料A1として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“KRM”8655 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%、15官能)を使用した。
[樹脂原料A2]
樹脂原料A2として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(“PET−30”日本化薬株式会社製、固形分濃度100質量%、3官能)を使用した。
[樹脂原料A3]
樹脂原料A3として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“KRM”8452 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%、10官能)を使用した。
[樹脂原料A4]
樹脂原料A4として、ノニルフェノールEO変性アクリレート(“アロニックス”M113 東亞合成株式会社製、固形分濃度100質量%、単官能)を使用した。
[樹脂原料B1]
樹脂原料B1として、ウレタン変性アクリルポリオール樹脂(“8UA−017” 大成ファインケミカル社製、固形分濃度50質量%)を使用した。
[樹脂原料B2]
樹脂原料B2として、ウレタン変性アクリルポリオール樹脂(“8UA−301” 大成ファインケミカル社製、固形分濃度30質量%)を使用した。
[樹脂原料B3]
樹脂原料B3として、ウレタン変性アクリルポリオール樹脂(“8UA−366” 大成ファインケミカル社製、固形分濃度35質量%)を使用した。
[硬化剤]
[硬化剤C1]
ポリイソシアネート化合物として、トリメチロールプロパン付加物ポリイソシアネート(“コロネートL”日本ポリウレタン工業社製、固形分濃度75質量%)を使用した。
[粒子]
[粒子D1]
粒子D1として、オルガノシリカゾル(MEK−ST−L 日産化学工業株式会社製、固形分濃度30質量%、平均粒子径50nm)を使用した。
[粒子D2]
粒子D2として、オルガノシリカゾル(MEK−ST 日産化学工業株式会社製、固形分濃度30質量%、平均粒子径15nm)を使用した。
[塗料組成物の作成]
[塗料組成物A1]
下記材料を混合し塗料組成物A1を得た。
樹脂原料A : 樹脂原料A1 16.0 質量%
粒子D : 粒子D1 27.0 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 56.4 質量%
光重合開始剤 : 1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製) 0.6 質量%。
[塗料組成物A2]
下記材料を混合し塗料組成物A2を得た。
樹脂原料A : 樹脂原料A2 30.0 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 69.4 質量%
光重合開始剤 : 1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製) 0.6 質量%。
[塗料組成物A3]
下記材料を混合し塗料組成物A3を得た。
樹脂原料A : 樹脂原料A3 30.0 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 69.4 質量%
光重合開始剤 : 1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製) 0.6 質量%。
[塗料組成物A4]
下記材料を混合し塗料組成物A4を得た。
樹脂原料A : 樹脂原料A4 30.0 質量%
溶媒 : 酢酸エチル 69.4 質量%
光重合開始剤 : 1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製) 0.6 質量%。
[塗料組成物A5]
下記材料を混合し塗料組成物A4を得た。
樹脂原料A : 樹脂原料A4 16.0 質量%
粒子D : 粒子D1 27.0 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 56.4 質量%
光重合開始剤 : 1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製) 0.6 質量%。
[塗料組成物B1]
樹脂原料B : 樹脂原料B1 63.0 質量%
硬化剤 : 硬化剤C1 11.2 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 25.8 質量%。
[塗料組成物B2]
樹脂原料B : 樹脂原料B2 27.6 質量%
粒子D : 粒子D2 20.0 質量%
硬化剤 : 硬化剤C1 11.2 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 44.2 質量%。
[塗料組成物B3]
樹脂原料B : 樹脂原料B3 32.2 質量%
粒子D : 粒子D2 20.0 質量%
硬化剤 : 硬化剤C1 8.2 質量%
溶媒 : 酢酸ブチル 39.6 質量%。
<積層体の製造方法>
[積層体の作成方法1]
支持基材(図1の1)として、易接着性塗料が塗布されている、厚み23μmおよび30μmのPET樹脂フィルムを用いた。塗工設備として、巻き出し部→塗工部→乾燥部→紫外線硬化部→巻き取り部を有する塗工設備を使用した。最初に、支持基材上に塗料組成物Bをスロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、乾燥後の表面層の厚みが表1に指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、A層を形成し、次いで下記の条件で乾燥工程Bを行い、支持基材上にB層を形成した。
「乾燥工程B」
送風温湿度 : 温度:100℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 1分間。
さらに、同装置を用い、上記で得られたB層上に塗料組成物Aを、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで下記の条件で乾燥工程A、硬化工程を行い、積層体を得た。
「乾燥工程A」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 1分30秒間。
「硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
[積層体の作成方法2]
支持基材(図1の1)として、易接着性塗料が塗布されている、厚み23μmおよび30μmのPET樹脂フィルムを用いた。塗工設備として、巻き出し部→塗工部→乾燥部→紫外線硬化部→巻き取り部を有する塗工設備を使用した。最初に、支持基材上に塗料組成物Bをスロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、乾燥後の表面層の厚みが表1に指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで下記の条件で乾燥工程Bおよび硬化工程Bを行い、支持基材上にB層を形成した。
「乾燥工程B」
送風温湿度 : 温度:100℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 1分間。
「硬化工程B」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
さらに、同装置を用い、上記で得られたB層上に塗料組成物Aを、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、A層を形成し、次いで下記の条件で乾燥工程A、硬化工程Aを行い、積層体を得た。
「乾燥工程A」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 1分30秒間。
「硬化工程A」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
以上の方法により実施例1〜9、比較例1〜5の積層体を作成した。各実施例・比較例に対応する上記積層体の作成方法、使用する塗料組成物、各層の膜厚を表1に記載した。
[積層体の評価]
作製した積層体について、以降に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2および表3に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1水準の任意の箇所から3つのサンプルを切り出し、3サンプルについて測定を行い、その平均値を用いた。
[原子間力顕微鏡による弾性率の測定]
実施例1〜9、比較例1〜5の積層体を電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し硬化させた後、凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面を測定面として専用のサンプル固定台に固定した。AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
具体的にはPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3以上0.5N/m以下、先端曲率半径15nm以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。
測定条件
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: Burker Corporation製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 10(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重(Peak Force Setpoint) : 10(nN)
次いで得られた断面像から表面層の厚みが視野角内に収まるように倍率を調整した。この時、表面層−支持基材界面は、表面層と支持基材の境界部分の弾性率の不整合から輝線または暗線として観察され、この輝線または暗線の中央を表面層の厚み方向の測定基準線とした。また最表面についても同様に、表面層と包埋樹脂との弾性率不整合により生じる輝線または暗線の中央を表面層の厚み方向の測定基準線とした。以下の測定においては、「最表面からの距離」という場合は、前述の最表面における輝線または暗線の中央をからの距離をいい、「最表面までの距離」という場合は、前述の最表面における輝線または暗線の中央までの距離をいう。同様に、「表面層−支持基材界面からの距離」という場合は、前述の界面における輝線または暗線の中央をからの距離をいい、「表面層−支持基材界面までの距離」という場合は、前述の界面における輝線または暗線の中央までの距離をいう。続いて表面層の表面から表面層厚みの20%(位置A)および80%(位置B)の各位置にてForce Monitorよりフォースカーブを採取した。更に付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にフォースカーブを取り込み、DMT Modulusとして弾性率EおよびEを、Dissipationとして散逸エネルギーDおよびDをそれぞれ算出した。
[顕微フーリエ変換型赤外分光光度計による赤外スペクトルの測定]
始めにダイプラ・ウィンテス社製SAICAS装置CN−20を用いて、斜め方向に切り出された断面を作成した。具体的には切刃として単結晶ダイヤモンド刃を用い、定速度モード、水平速度:0.05μm/sec、垂直速度:0.005μm/secの条件にて切削を行い、断面を得た。上記方法は、垂直方向の分布状態の分解能を10倍に拡大することに相当し、後述の顕微型赤外分光と組み合わせることで、厚み方向に約200nmの分解能を持って測定を行うことが可能となる。
次いで得られた断面をパーキンエルマー社製赤外顕微鏡イメージングシステムSpotlight 400を用いてATRイメージングモードにより、3500〜1700cm−1における吸収強度(強度と略すことがある)の断面方向の強度分布プロファイルを観察した。測定パラメータは以下に通りである。
分解能:8cm−1
スキャン/ピクセル:2、スキャン速度:1.0cm−1
スキャン開始:3500cm−1、スキャン終了:1700cm−1
ピクセルサイズ:1.56μm
サンプルサイズ:150μm×150μm
続いて、得られたイメージング像から、表面層の表面から表面層厚みの20%(位置A)と80%(位置B)に対応する位置をそれぞれ3点ずつ抽出し、各点における赤外吸収スペクトルから読み取られる1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比の平均値を、それぞれA1680/1730およびB1680/1730とした。
更に表面層の表面から表面層厚みの30%から70%の各位置について5%毎の間隔にて同様に解析し、得られた積層体断面に1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比が位置Aより大きく、位置Bよりも小さい位置Cが存在するか否かを分類した。
[積層体の耐カール性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、10cm四方の正方形状に切り出し、水平面上に静置した。次いで積層体の4隅点と水平面の距離を計測し、その数値の平均により5段階に分類した。
5点:1mm未満
4点:1mm以上、10mm未満
3点:10mm以上、20mm未満
2点:20mm以上
1点:筒状となり計測不可。
[表面層の鉛筆硬度試験法による表面硬度測定]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、同環境にてJIS K 5600−5−4(1999年)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に従い、表面層の表面硬度を測定した。
[表面層の耐擦傷性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、表面層を有する面に対して、500g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、5cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行った。
5点:0本
4点:1本以上 5本未満
3点:5本以上 10本未満
2点:10本以上 20本未満
1点:20本以上。
[全光線透過率、ヘイズ]
ヘイズおよび全光線透過率の測定はJIS−K7136(2000)およびJIS−K 7361−1(1997)に基づき、日本電色工業(株)製ヘイズメーターを用いて、積層体サンプルの支持基材とは反対側(第1層および第2層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行った。なお、同一サンプルの異なる3箇所で測定し、その平均値をヘイズおよび全光線透過率とした。
Figure 2017159613
Figure 2017159613
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本発明に係る積層体は液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイやタッチパネル部材として、具体的には液晶表示装置の偏光板やタッチパネルの表面を保護するフィルム、画像表示装置表面のガラス飛散防止フィルムなどに用いることができるほか、および各種成型体用外装部材としても用いることができる。
1.支持基材
2.表面層
3.位置A
4.位置B
5.カンチレバーの応力
6.厚み方向の変位
7.カンチレバー押し込み時のカーブ
8.カンチレバー引き離し時のカーブ
9.散逸エネルギー

Claims (5)

  1. 厚みTの支持基材の少なくとも一方の面に、厚みtの表面層を有する積層体であって、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの20%(以降、位置Aとする)、80%(以降、位置Bとする)の各位置における、原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,D、が以下の条件1〜4すべてを満たすことを特徴とする積層体。
    条件1 T ≦ 30μm
    条件2 0.10 ≦ t/T ≦0.45
    条件3 E > E
    条件4 D > D
  2. 前記表面層の原子間力顕微鏡により測定された、弾性率E,E、散逸エネルギーD,D、が、以下の条件5、6をすべて満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
    条件5 Eが0.5GPa以上、Dが220eV未満
    条件6 Eが0.4GPa未満、Dが220eV以上
  3. 前記表面層の前記位置Aと位置Bにおける、顕微フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比(以降、A16801730,B16801730とする。)が以下の条件7から条件9をすべて満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
    条件7 A16801730 < B16801730
    条件8 A16801730 < 0.6
    条件9 0.9 < B16801730
  4. 前記表面層の、前記表面層の厚み方向に、前記表面層の前記支持基材に垂直な断面において、表面層の表面から表面層厚みの30%の位置から70%の位置の範囲において、顕微フーリエ変換型赤外分光光度計による1680cm−1の強度と1730cm−1の強度との強度比が、以下の条件10を満たす位置Cが存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
    条件10 A16801730 < C16801730 < B16801730
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、支持基材上に塗料組成物Bを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程1)、塗料組成物Aを塗布、次いで乾燥を行う工程(工程2)、紫外線硬化を行う工程(工程3)を、連続してこの順に行うことを特徴とする積層体の製造方法。
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