JP2017158459A - 釣糸及び釣糸の製造方法 - Google Patents

釣糸及び釣糸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水中で用いられる釣糸は、水流による圧力抵抗を軽減する為の細径化と、岩場での擦れによる破断を防ぐ為の耐摩耗性と、高い引張破断力と、軽くて、柔軟で、丈夫な釣糸が求められる。【解決手段】金属線と合成繊維の複合糸から成る釣糸の引張破断力は、金属線の引張破断力の大きさが必ずしも寄与していないことに着目し、一定の機械的強度特性を有する合成繊維のマルチフィラメント糸を、釣糸を構成する芯部等に用いる。又、釣糸の被覆部を形成する塗料の種類により、釣糸の外径と引張破断力が変化することに着目し、特定の塗料を用いる。これらにより、軽くて、柔軟で、丈夫な釣糸が提供できることを目的とする。【選択図】図1

Description

この発明は、魚釣用として用いられる釣糸、及び釣糸の製造方法に関する。
釣糸は、従来から釣り対象の魚種に応じて、金属線のみ、又はモノフィラメントのみから成る釣糸、並びに、金属線と合成繊維とを組み合せた複合糸から成る釣糸が開発されてきた。
釣糸は、水流による圧力抵抗の軽減と魚から釣糸を見えにくくする為に細径化が求められている。又、釣糸には、岩場での擦れによる破断を防ぐ為の耐摩耗特性と、ハリスとして用いられた場合の道糸との結束性が容易性が求められている。
そして、釣糸の細径化にも拘わらず、高い引張破断力が要求され、軽くて、柔軟で、丈夫な釣糸が切望されている。
さらに近年では、特に、金属線と合成繊維とを組み合わせた複合糸から成る釣糸は、その構造の複雑さから、釣糸の太さを表す号柄と実際の釣糸との太さの不一致が発生しており、号柄に対する太さ標準規格との一致化が求められるようになってきた。
特許文献1には、細くて高強力で、水中での抵抗を軽減した釣糸が記載されている。
特許文献2には、伸びを防止して柔軟性と堅牢性とを両立させた釣糸が記載されている。
特開平6−46725号公報 特開2015−6149号公報
特許文献1に記載の釣糸は、複数本の高強力ポリエチレン糸のそれぞれの外周に、ポリエステル糸を用いて製紐し、細径で水流による圧力抵抗を軽減し、耐摩耗性を向上させる技術である。
特許文献2に記載の釣糸は、繊維から成る芯線と平行に、少なくとも1本の金属線を第1側線に設け、芯線と金属線から成る第1側線の外周に、金属線から成る第2側線を巻回して、伸びを防止し、柔軟性と堅牢性とを両立させる技術である。
本発明は、合成繊維と金属線と樹脂被覆から成る釣糸であって、釣糸の引張破断力は、金属線の引張破断力の大きさが必ずしも大きく寄与するのではなく、高強力の合成繊維のマルチフィラメント糸の引張破断力の大きさが大きく寄与することに着目し、特定の機械的強度特性を有する合成繊維のマルチフィラメント糸を、芯部、又は芯部と芯部の外周に設けることにより、釣糸の引張破断力を向上させ、かつ、特定の機械的強度特性を有する合成繊維のマルチフィラメント糸と金属線とを用いて、釣糸の引張荷重と伸びの特性が、非線形特性であることを特徴とする、技術思想の釣糸である。
このような本発明の釣糸の技術思想については、前記特許文献1、2のいずれについても記載されていない。又、本発明の釣糸の構造とすることにより、一定の引張破断力を維持したままで極めて容易に細径化できる。
さらに本発明は、釣糸の被覆部の成形時に使用する塗料の種類により、細径化と環境規制(VOC)に対応可能とする釣糸を見い出した内容である。
そして、近年の釣糸業界の釣糸の太さと号柄に対する太さ標準規格との一致化の要望のみならず、環境規制対応の要望に大きく応えることができる釣糸等の発明である。
このような技術内容について、前記特許文献1、2のいずれについても、何ら記載されていない。これらのことは、釣糸にとって重要な技術課題である。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、釣糸の引張破断力を大幅に向上させることができ、その一方で、釣糸の一定の引張破断力を維持したままで極めて容易に細径化することができる。
そして、耐摩耗性と結束容易性に優れ、かつ、太さ標準規格との一致化が極めて容易で、軽くて、柔軟で、丈夫で、さらに環境規制に対応できる釣糸等の提供を目的とする。
上記目的を達成する為、芯部の外周に、側部を長手方向へ疎巻きに巻回し、芯部と側部とを有する芯線体を備える。芯線体の外周に、被覆部を設ける。
芯部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上である。
側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線を有する。
被覆部は、樹脂粒子径が5nm以上120nm以下のポリオレフィン系樹脂粒子又はポリアミド系樹脂粒子を含むエマルション塗料を用いて成る。被覆部は、表面から内側へ向かって樹脂粒子を徐変増大させて成る。
マルチフィラメント糸から成る芯部の引張破断力Poは、側部の金属線の引張破断力
P21よりも大きく(Po>P21)、かつ、釣糸の引張破断力Uは、一定の関係式を満たす。
そして、釣糸の引張荷重と伸びの特性は、釣糸の引張破断力の40%以下で、伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する第1種引張剛性範囲と、釣糸の引張破断力の40%を超えると、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性であることを特徴とする。
エマルション塗料を用いて成る被覆部は、分散質に樹脂粒子の軟化点が80℃以上220℃以下で、分散媒に紫外線吸収剤、又は顔料のいずれか一方、又は双方が含まれている。
側部は、平行して同一長手方向へ巻回する第1側部と第2側部から成る。
第1側部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上である。
第2側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線から成る。
マルチフィラメント糸から成る芯部の引張破断力Poと、第1側部の引張破断力をP1とは、いずれも第2側部の金属線の引張破断力をP2よりも大きく(Po>P2、P1>P2)、かつ、釣糸の引張破断力Uは、一定の関係式を満たす。
芯部の外周に、側部を長手方向へ疎巻きに巻回し、前記芯部と前記側部とを有する芯線体を備える。芯部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上のマルチフィラメント糸から成る。
芯線体の外周に被覆部を設けた釣糸の製造方法であって、被覆部の製造方法が、樹脂粒子の固形分を含むエマルション塗料液に芯線体を浸漬した後に乾燥させる第1工程と、
樹脂粒子の固形分を第1工程よりも少なくして、かつ、顔料を含むエマルション塗料液に第1工程を経た芯線体を浸漬した後に乾燥させる第2工程とを有する釣糸の製造方法である。
本発明の釣糸は、
芯部の外周に、側部を長手方向へ疎巻きに巻回し、芯部と側部とを有する芯線体を備える。芯線体の外周に、被覆部を設ける。
芯部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上である。
側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線を有する。
被覆部は、樹脂粒子径が5nm以上120nm以下のポリオレフィン系樹脂粒子又はポリアミド系樹脂粒子を含むエマルション塗料を用いて成る。被覆部は、表面から内側へ向かって樹脂粒子を徐変増大させて成る。
マルチフィラメント糸から成る芯部の引張破断力Poは、側部の金属線の引張破断力
P21よりも大きく(Po>P21)、かつ、釣糸の引張破断力Uは、一定の関係式を満たす。
釣糸の引張破断力が一定の関係式を満たすこととする理由は、合成繊維のマルチフィラメント糸と金属線とを組み合わせた複合糸から成る釣糸の構成において、高強度の引張強さをもつ金属素線から成る金属線を用いても、用いる金属素線が細径である為、必ずしも釣糸の引張破断力の向上に寄与していないことにある。
本発明は、このことに着目して、金属素線から成る金属線よりも遥かに高い比強度と比弾性率をもつ合成繊維のマルチフィラメント糸を、芯部に用いることにより、かつ、極細マルチフィラメント糸から成る芯部への塗料の浸透性を高め、マルチフィラメント糸どおしの接着性を高めて造膜された被覆部とを併用することにより、釣糸の引張破断力をより高めて、道糸との結束性を向上させ、軽くて、柔軟で、丈夫な釣糸を提供する。尚、側部に金属線を用いる理由は、主に水中での釣糸の沈み性向上と、水中での岩場での擦れによる耐摩耗特性を向上させて、破断を防ぐ為である。
そして被覆部が、特定の粒子径をもつ樹脂粒子を含むエマルション塗料としたのは、極細マルチフィラメント糸から成る芯部への樹脂粒子の浸透性を高めて、マルチフィラメント糸どおしの相互接着性を高め、かつ、釣糸の引張破断力の向上を補完する為である。
そして又、被覆部の塗料による外径の径大化を抑制し、釣糸業界の釣糸の太さと号柄に対する太さ標準規格との一致化の要望みならず、環境規制の要望に大きく応える為である。
さらに、被覆部は、表面から内側へ向かって樹脂粒子を徐変増大させて成るとしたのは、マルチフィラメント糸から成る芯部へ浸透した樹脂粒子と同一樹脂粒子との造膜から成る被覆部との相互の接着性を高める為である。又、後述する釣糸の製造方法を用いることにより、被覆部の表面滑性を向上させる為である。
釣糸の引張荷重と伸びの特性は、釣糸の引張破断力の40%以下で、伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する第1種引張剛性範囲と、釣糸の引張破断力の40%を超えると、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性であることを特徴とする。
この理由は、第1種引張剛性範囲で魚の突発的な活動から生ずる衝撃力(例えば、鮎の友釣りの場合に縄張り争い等による衝撃力)を吸収し、第2種引張剛性範囲で前記衝撃力を超える大きな引張荷重が加わった場合に釣糸の破断を防ぐ為である。
エマルション塗料を用いて成る被覆部は、分散質に樹脂粒子の軟化点が80℃以上220℃以下で、分散媒に紫外線吸収剤、又は顔料のいずれか一方、又は双方が含まれている。
分散質の樹脂粒子の軟化点を前記範囲とすることにより、芯部及び後述する第1側部に用いるマルチフィラメント糸どおしの熱変形を防ぐことができ、かつ、紫外線吸収剤を含むことにより、マルチフィラメント糸の日光による黄変等を防いで、紫外線による機械的強度の劣化を防ぐことができる。
側部は、平行して同一長手方向へ巻回する第1側部と第2側部から成る。
第1側部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上である。
第2側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線から成る。
マルチフィラメント糸から成る芯部の引張破断力Poと、第1側部の引張破断力をP1とは、いずれも第2側部の金属線の引張破断力をP2よりも大きく(Po>P2、P1>P2)、かつ、釣糸の引張破断力Uは、一定の関係式を満たす。
この理由は、前述のように合成繊維のマルチフィラメント糸と金属線とを組み合わせた複合糸から成る釣糸の構成において、高強度の引張強さをもつ金属素線から成る金属線を用いても、用いる金属素線が細径である為、必ずしも釣糸の引張破断力の向上に寄与していないことにある。
この為、金属素線から成る金属線よりも遥かに高い比強度と比弾性率をもつ合成繊維のマルチフィラメント糸を、芯部と芯部の外周の第1側部との双方に用いることにより、釣糸の引張破断力をより高める為である。
被覆部にエマルション塗料を用いて成る釣糸の製造方法が、樹脂粒子の固形分を含むエマルション塗料液に芯線体を浸漬した後に乾燥させる第1工程と、
樹脂粒子の固形分を第1工程よりも少なくして、かつ、顔料を含むエマルション塗料液に第1工程を経た芯線体を浸漬した後に乾燥させる第2工程とを有する釣糸の製造方法である。
これにより、被覆部の表面から内側(芯部側)へ向かって樹脂粒子を徐変増大させた被覆部を形成することができる。そして、マルチフィラメント糸へ浸透した樹脂粒子と被覆部の内側の樹脂粒子との融着部分を増大させ、マルチフィラメント糸を用いて成る芯線体と被覆部との相互の接着性を高めることができる。
さらに、樹脂粒子の固形分を第1工程よりも少なくした第2工程を設けることにより、エマルション塗料の乾燥時に、表面に残存する樹脂粒子のザラツキを防いで、被覆部の表面滑性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態の釣糸を示し、図1(イ)は釣糸全体の一部切欠き側面図、図1(ロ)は図1(イ)の符号X−Xの横断面図を示す。 引張荷重と伸びの特性図を示す。 本発明の第2実施形態の釣糸の横断面図を示す。 本発明の第3実施形態の釣糸の横断面図を示す。 本発明の第1〜3実施形態の変形例の釣糸の横断面図を示す。 本発明の第4実施形態を示し、図6(イ)は、釣糸全体に一部切欠き側面図、図6(ロ)は、図6(イ)の符号Y−Yの横断面図、図6(ハ)は、塗料液中における釣糸全体の一部切欠き側面図を示す。 比較例の釣糸を示し、図7(イ)は釣糸全体の一部切欠き側面図、図7(ロ)は図7(イ)の符号Z−Zの横断面図を示す。
以下本発明の釣糸の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の釣糸1を示し、図1(イ)は、釣糸1の全体の一部切欠き側面図を示し、図1(ロ)は、図1(イ)の釣糸1の符号X−X断面図を示す。尚、本発明の第1実施形態は、本発明の第4実施形態の機械的強度特性をさらに向上させた発明であり、第4実施形態については、機械的強度特性とエマルション塗料を用いた被覆部の釣糸特性とを併せた比較説明を、図6、図7を用いて後述する。
釣糸1は、芯部2と第1側部3と第2側部4から成る芯線体5と、被覆部6を有する。
第2側部4は、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る。
芯部2の外周に、第1側部3と第2側部4とを平行して同一長手方向へ巻回する。
第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る第2側部4は、芯部2と第1側部3とが接触する凹部の符号C1、C2の両側に、それぞれ第2A金属線側部41と第2B金属線側部42とを配置する。
芯部2の外周に、第1側部3と第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る第2側部4とを平行して同一長手方向へ一定のピッチPで巻回して成る芯線体5を備える。
芯線体5の外周に被覆部6を設ける。尚、本発明の釣糸1は、長さに比較して線直径が小さく、縦横の縮尺率を同じにすると所定の範囲に図示することが困難なため、一部を拡張し、又省略して図示している。
芯部2と第1側部3は、後述する一定の繊度を有する合成繊維のマルチフィラメント糸を用いる。芯部2の外周に、第1側部3と第2側部4とを巻回する場合、芯部2に長手方向へ一定の引張力を加えて直線状にさせながら、その外周に第1側部3と第2側部4とを長手方向へ一定の引張力を加え、ラジアル方向へ回転させ、巻回する。
マルチフィラメント糸の第1側部3は、巻回時に加えられる長手方向への一定の引張力と、前記引張力に伴う径方向(外側から内側へ)への圧縮力、並びに、第1側部3の両側に配置した金属線から成る第2側部4からの巻回による圧縮力等の相互作用を受けて、図1(ロ)で示すように、符号aの自然状態から符号bの巻回後の状態へ偏平状に圧縮変形する。
この第1側部3が圧縮変形する理由は、第1側部3は第2側部4の金属線に比べて比重が1/5以下で軽く、かつ、繊維間に空隙が多く存在するマルチフィラメント糸であり、
特に、巻回時に加えられる長手方向への引張力と引張力に伴う圧縮力、並びに、第2側部4の金属線からの巻回による圧縮力等の相互作用の影響を受け易く、変形し易いことによると考えられる。
芯部2と第1側部3は、繊度が28dex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上の合成繊維のマルチフィラメント糸を用いる。
この理由は、細径でありながら引張強度が高く、水中において引張強度の変化が少なく、
軽くて柔軟性に富み、引張破断力の高い釣糸1を得る為である。
尚、水中において引張強度の変化を極めて少なくする為には、平衡水分率(20℃で湿度65%、24時間浸漬)が5%以下の合成繊維のマルチフィラメント糸が好ましい。
詳しくは、合成繊維のマルチフィラメント糸の比強度km(引張強度/密度)を算出すると、引張強度が18cN/dtexは2.538GPaで密度が1.41g/cm3であることから、比強度は約183.6km{(2538/9.806)/1.41}となる。又、合成繊維のマルチフィラメント糸の比弾性率km(引張弾性率/密度)を算出すると、引張弾性率が442cN/dtexは62.322GPaで密度が1.41g/cm3であることから、比弾性率は約4507.4kmとなる。
これに対して、例えばステンレス鋼線の場合、引張強さが2.5GPaで引張弾性率が227.4GPaで密度が7.9g/cm3のとき、前記同様に比強度と比弾性率を算出すると、比強度は約32.7km、比弾性率は約2935.4kmとなる。
本発明に用いる合成繊維のマルチフィラメント糸は、例えばステンレス鋼線に比べて比強度が約5.61倍高く、かつ、比弾性率が約1.54倍高い。
従って、比強度が183.6km以上で比弾性率が4507.4kmの双方の範囲を満たす、つまり、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上の双方の範囲を満たす合成繊維のマルチフィラメント糸を、釣糸1の芯部2と芯部2の外周の第1側部3の双方に用いることにより、軽くて、柔軟性に富み、引張破断力の高い釣糸1を得ることができる。
合成繊維のマルチフィラメント糸としては、液晶紡糸により得られるパラ系アラミド繊維の商品名ケブラー(デュポン社)、商品名テクノーラ(帝人(株))、全芳香族ポリエステル繊維の商品名ベクトラン(クラレ(株))、ヘテロ環含有のPBO繊維の商品名ザイロン(東洋紡(株))、ゲル紡糸により得られるポリエチレン繊維の商品名ダイニーマ(東洋紡(株))、PAN炭素繊維の商品名トレカ(東レ(株))、商品名ベスファイト(東洋レーヨン(株))等である。
本発明の第1実施形態の釣糸1は、芯部2と第1側部3に繊度28dtex、引張強度が22.9cN/dtex、引張弾性率が530cN/dtex、平衡水分率(20℃で湿度65%、24時間浸漬)が0.2%以下の全芳香族ポリエステル繊維で、5本のフィラメントから成るマルチフィラメント糸を、芯部2と第1側部3に用いる。又、芯部2の外径D11と第1側部3の変形前の外径Do1は、0.020mmである。
マルチフィラメント糸に全芳香族ポリエルテル繊維を用いる理由は、溶融状態で液晶を形成し、液晶ポリマーを溶融紡糸することにより、液晶ポリマーの分子鎖を繊維の長手方向へ高度に配向させ、機械的強度を大幅に向上させる為である。
第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る第2側部4は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下で、線直径d1、d2が、0.008mm以上0.100mm以下の金属素線を少なくとも1本以上用いる。好ましくは、8本以内である。金属素線の材質としては、タングステン線、ステンレス鋼線、NiTi合金線等を用いる。
本発明の第1実施形態の釣糸1は、芯部2の外周に、第1側部3と、第1側部3の両側に隣接する第2A金属線側部41と第2B金属線側部42を備える第2側部4とを平行して同一長手方向へ一定の撚りピッチPで巻回する。
第1側部3と第2側部4の撚りピッチPは、横断面の外径(D11+d1)の1.20倍以上50倍以下(第1実施形態では30倍)である。好ましくは、1.20倍以上40倍以下である。
第1側部4に用いる金属素線は、引張強さが3000N/mm2以上4200N/mm2以下で、K、Al、Siのうち少なくとも1種類以上を5ppm以上180ppm以下添加し、線直径d1、d2が0.012mmの電解研磨したドープタングステン線を用いる。
ドープタングステン線を用いる理由は、例えば線直径d1、d2が0.012mmのような細線の縮径伸線加工時に、純タングステン線を用いた場合には粒界滑りを起こして脆くなり易い。ドープ剤(前記K、Al、Si等)を添加することにより、粒界滑りを起こし難くさせ、機械的強度を向上させる為である。
ドープ剤の含有量を前記範囲としたのは、前記範囲を下回れば、長大結晶による粒界滑りを起こし難くさせる効果は低減し、前記範囲を超えれば、縮径伸線加工時に割れが発生し易くなり、機械的強度の向上効果は得られ難くなるからである。
好ましくは、電解研磨した金属素線を用いることである。この理由は、金属素線の表面には、縮径伸線加工時に用いる潤滑剤の残留、及び酸化被膜層の形成等により脆化を招き易く、この脆化を防いで、機械的強度を向上させる為である。
芯線体5の外周を被覆する被覆部6は、アクリル樹脂、ビニル樹脂等に揮発性溶剤を加えた揮発乾燥型塗料を用いてもよいが、本発明のような極細合成繊維に用いる場合には、浸透性、流動性、接着性、並びに、環境規制(VOC)の観点から好ましくない。
この為、本発明の釣糸の被覆部6は、エマルション塗料を用いて成る。芯線体5をエマルション塗料液に浸漬させた後に乾燥させて被覆部6を形成する。
ここでいうエマルション塗料とは、分散質が樹脂粒子で、分散媒が水、又はアルコール類の親水性化合物を用い、各種添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤、消泡剤等)を加えた乳濁液のことをいう。
被覆部6にエマルション塗料を用いる理由は、極細マルチフィラメント糸から成る芯部2、及び第1側部3への樹脂粒子の浸透性を高めて、マルチフィラメント糸どおしの相互接着性を高め、かつ、釣糸の引張強さの向上を補完する為である。
そして、被覆部の揮発性乾燥型塗料による釣糸の外径の径大化を抑制し、釣糸業界の釣糸の太さと号柄に対する太さ標準規格との一致化の要望のみならず、環境規制対応の要望に大きく応える為である。これについては、本発明の第4実施形態の釣糸で後述する。
具体的には、本発明の釣糸の被覆部6に用いるエマルション塗料は、分散質が樹脂粒子径が5nm以上120nm以下で、軟化点が80℃以上220℃以下のポリオレフィン系樹脂又はポリアミド系樹脂である。
ポリアミド系樹脂としては、6N、11N等の脂肪族ポリアミド、アラミド等の芳香族ポリアミドを用いる。接着性向上の観点からは、脂肪族ポリアミドが好ましく、耐熱性向上の観点からは芳香族ポリアミドが好ましい。
分散媒は、水、又はアルコール類、エーテルアルコール類等の親水性化合物を用いる。分散質の固形分は、10重量%以上45重量%以下で、残部は主に分散媒で、さらに各種添加剤を加える。
各種添加剤のうち、紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、2、4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を用いる。又、光安定剤としては、ベンジル等を用いる。
そして、紫外線吸収剤、及び光安定剤は、樹脂固形分100重量部に対して、0.1重量部以上8重量部以下配合する。
この理由は、芯部2、及び第1側部3に用いるマルチフィラメント糸は、全芳香族ポリエステル繊維で日光により黄変し易く、かつ、機械的強度が劣化し易い。全芳香族ポリエステル繊維は、多くのC−H結合で形成されているが、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、光安定剤等を配合することにより、C−H結合エネルギーを破壊させる日光に含まれる紫外線波長域の光を吸収して、紫外線による機械的強度の劣化を防ぐ効果が高いからである。
乳化重合に用いる界面活性剤は、ロジン酸のアルカリ塩等のアニオン型、脂肪族アミン塩等のカチオン型等であり、樹脂固形分の100重量部に対して、0.5重量部以上20重量部以下である。又、界面活性剤は、揮発性ではない為に残存界面活性剤により、光沢性が乏しく、又汚染性の課題がある。この為、界面活性剤を用いてもよいが、好ましくは、電荷をもたせた樹脂粒子によるエマルション塗料を用いる。
そして、エマルション塗料を用いた被覆部6は、被覆部6の表面から内側(芯部2)へ向かって樹脂粒子を徐変増大させて成ることを特徴とする。この理由は、マルチフィラメント糸から成る芯部2、及び第1側部3へ浸透した樹脂粒子と同一樹脂粒子から成る被覆部6との相互の接着性を高める為である。又、後述する釣糸の製造方法を用いることにより、被覆部6の表面滑性を向上させる為である。
本発明の第1実施形態の釣糸1は、本発明の第4実施形態の釣糸100の機械的強度特性を、より向上させた発明である。この為、図1に示す第1実施形態の釣糸1と、図6に示す第4実施形態の釣糸100とを対比して、以下説明する。尚、本発明のエマルション塗料を用いた被覆部6の特性については、第4実施形態の釣糸100と比較例を用いて後述する。
図6に示す第4実施形態の釣糸100は、本発明の第1実施形態の釣糸1に対して、マルチフィラメント糸から成る第1側部3が不存在の構造である。構造差を比較説明する為、他の芯部22、第2側部44、被覆部66は、それぞれ第1実施形態の釣糸1の芯部2、第2側部4、被覆部6と同一である。
つまり、芯部22は、繊度が28dtexの全芳香族ポリエステル繊維を用いて外径D51が0.020mm、5本のマルチフィラメント糸から成り、釣糸1の芯部2と同一で
あり、第2側部44は、線直径d1、d2が0.012mmの2本の電解研磨したドープタングステン線を用い、釣糸1の第2側部4と同一で、被覆部66も釣糸1の被覆部6と同一とする。
第4実施形態の釣糸100の横断面の外径(D51+d1)は、0.032mmで、芯部22と第2側部44から成る芯線体55の引張破断力は、芯部22の引張破断力の大きさが大きく寄与する。
この理由は、例えば第2側部44に用いる1本のドープタングステン線の引張強さが3800N/mm2のとき、線直径d1、d2が0.012mmの引張破断力は約42.9cNであり、2本のドープタングステン線の場合には、約85.8cNである。
芯部22の引張破断力は、繊度が28dtex、引張強度が22.9cN/dtexのマルチフィラメント糸である為、641.2cNである。
芯部22の引張破断力は、第2側部44の2本のドープタングステン線の引張破断力が約85.8cNであることから、金属線から成る第2側部44の引張破断力よりも約7.5倍大きい。この為、芯部22と第2側部44から成る芯線体55の引張破断力は、芯部22の引張破断力の大きさが大きく寄与することになるからである。
そして、芯線体55の引張破断力は、芯部22の引張破断力が芯線体55の引張破断力となり、641.2cNとなる。又、被覆部66が、芯線体55の引張破断力の約1.5%補完している為、釣糸100の引張破断力は約650.8cNとなる。
これに対して、図1に示す本発明の第1実施形態の釣糸1は、横断面の外径(D11+d1)が0.032mmで前記第4実施形態の釣糸100と同一である。
芯線体5の引張破断力は、前記第4実施形態の釣糸100と同様の理由から、芯部2と芯部2の外周に設けた第1側部3との、2つのフィラメント糸の引張破断力の大きさが大きく寄与する。
そして、芯線体5の芯部2と第1側部3として、繊度が28dtexで引張強度が22.9cN/dtexのマルチフィラメント糸を用いるとき、芯線体5の引張破断力は1282.4(28×2×22.9)cNとなる。
そして又、芯線体5の外周に膜厚t1が0.003mmの被覆部6を設けた、外径D1が0.038mmの釣糸1の引張破断力は、被覆部6により引張破断力を補完(前記第4実施形態と同じ9.6cN)している為、1292.0cNである。
従って、本発明の第1実施形態の釣糸1の引張破断力は、第4実施形態の釣糸100よりも約2倍大きな値となる。
図1の第1実施形態の釣糸1において、芯部2の外径D11が0.020mmで、第1側部3は第2側部4との巻回により偏平状となって厚さTは、第2側部4の金属素線の線直径d1、d2と同一となり、第2側部4の金属素線の線直径d1、d2は0.012mmで、被覆部6の膜厚t1が0.003mmであることから、釣糸1の横断面の最大外径D1は0.038mmである。又、図6の第4実施形態の釣糸100において、芯部22の外径51が0.020mmで、第2側部44の1本の金属素線の線直径d1、d2が0.012mmで被覆部66の膜厚t2が0.003mmであることから、釣糸100の横断面の外径D5は0.038mmである。
従って、本発明の第1実施形態の釣糸1は、横断面の最大外径D1が、第4実施形態の釣糸100の横断面の最大外径D5と同一でありながら、引張破断力を第4実施形態の釣糸100よりも約2倍向上させることができる。
このように、第1実施形態の釣糸1は、第4実施形態の釣糸100に対して機械的強度特性を、より向上させた釣糸1である。
そして、芯部2の、マルチフィラメント糸の繊度の総数をSo(dtex)、引張破断力をPo(cN)、第1側部3の、マルチフィラメント糸の繊度の総数をS1(dtex)、引張破断力をP1(cN)、第2側部4の金属線の引張破断力をP2(cN)、釣糸1の引張破断力をU(cN)とした場合に、芯部2の引張破断力Po(cN)と第1側部3の引張破断力P1(cN)とは、いずれも第2側部4の金属線の引張破断力P2(cN)よりも大きく(Po>P2、P1>P2)、かつ、マルチフィラメント糸の引張強度が18cN以上であることから、釣糸1の引張破断力U(cN)は、
U>18×(So+S1) ・・・(1)
の関係式(1)で表すことができる。
つまり、本発明の第1実施形態の釣糸1において、芯部2の、マルチフィラメント糸の繊度の総数Soは、28dtexであり、引張強度が22.9cN/dtexであることから、芯部2の引張破断力Poは、641.2cNである。
第1側部3の引張破断力P1は、マルチフィラメント糸の繊度の総数S1は、28dtexであり、引張強度が22.9cN/dtexであることから、641.2cNである。
第2側部4の金属線の引張破断力P2は、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42の2本のドープタングステン線から成る為、約85.8cNである。従って、芯部2の引張破断力Poと、第1側部3の引張破断力P1とは、いずれも第2側部4の金属線の引張破断力P2よりも大きい(Po>P2、P1>P2)。又、本発明の釣糸1の引張破断力Uは、前記したように1292.0cNである。
従って、関係式(1)において、18×(So+S1)は、1008cNとなり、本発明の釣糸1の引張破断力Uは、1292.0cNであることから、1008cNよりも大きく、関係式(1)を満たしている。
次に、図2は引張荷重と伸びの特性を示し、図2(イ)は、本発明の第1実施形態の釣糸1、図2(ロ)は一般的な材料、図2(ハ)は本発明の第1実施形態の釣糸1に用いる第2側部4の、ドープタングステン線を示す。
ここでは、引張荷重と伸びの特性の説明上、引張荷重を加えたとき、伸びの増加とともに引張荷重が徐々に増大する右肩上がりの二次曲線を描く範囲を第1種引張剛性範囲とし、引張荷重を加えたとき、伸びの増加に比例して引張荷重が増大する直線的な線を描く範囲を第2種引張剛性範囲とし、前記第2種引張剛性範囲を超えた後に引張荷重を続けて加えたとき、伸びの増加に対して引張荷重の増大が緩やかとなった後に、破断に至る範囲を第3種引張剛性範囲という。
図2(ロ)の一般的な材料の引張荷重と伸びの特性として、符号Aoは比例限界点、符号Boは降伏点、符号Coは最大の引張荷重、符号Doは引張破断点を示す。符号0−Ao間は、前記第2種引張剛性範囲、符号Ao−Do間は第3種引張剛性範囲である。
図2(イ)の本発明の第1実施形態の釣糸1の引張荷重と伸びの特性は、第1種引張剛性範囲と第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性である。
つまり、引張荷重を加えたとき、符号0から符号A1までは伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する右肩上がりの二次曲線を描く第1種引張剛性範囲を示す。
そして、符号A1を超えた後は、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、直線的な線を描き、符号B1で比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲を示す。
そして又、符号Eは、本発明の釣糸の引張破断力の40%のときの引張荷重の値(又は位置)を示し、この値以下で第1種引張剛性範囲が現れる。具体的には、釣糸1の引張破断力は1292.0cNである為、符号Eは引張荷重が516.8cNの値の位置を示し、釣糸1は引張荷重が516.8cN以下で、前記第1種引張剛性範囲が現れる。
第1種引張剛性範囲が現れる理由は、釣糸1に長手方向へ引張荷重が加わると、芯部2と第1側部3に用いられているマルチフィラメント糸に径方向(外側から内側へ)への圧縮力が加わり、マルチフィラメント糸の繊維間に存在している空隙が減少し、又は無くなるからである。又、芯部2の外周に巻回している第1側部3と第2側部4とが長手方向へ直線状になろうとするからである。
又、釣糸の引張破断力の40%以下で第1種引張剛性範囲を有するとしたのは、水中での魚の突発的な動き、又は釣人の魚を釣り上げようとする動きから生ずる釣糸への引張力・衝撃力を吸収して、釣糸の破断を防ぐ為である。
詳しくは、例えば鮎の友釣りの場合、囮鮎と釣り上げようとする鮎との2匹分の引張荷重を約140cN、衝撃荷重を約280cNとした場合、釣糸1には約420cNの引張荷重が加わる。釣糸1の引張破断力の40%の引張荷重516.8cN以下に第1種引張剛性範囲を設けることにより、釣糸1へ加わる引張力・衝撃力を吸収することができるからである。
そして、第1種引張剛性範囲の後に第2種引張剛性範囲を有するとしたのは、釣糸1へ加わる大きな引張荷重を第2種引張剛性範囲で受けて、釣糸1の破断を防ぐ為である。
図2(ハ)の本発明の第1実施形態の釣糸1に用いる第2側部4の、ドープタングステン線の引張荷重と伸びの特性は、引張荷重を加えたとき、符号0から比例限界点の符号A2までは第2種引張剛性範囲と、符号A2から引張破断点の符号B2までは第3種引張剛性範囲とを有する非線形特性である。
特に、比例限界点の符号A2から引張破断点の符号B2までの伸びは、ドープ剤を含んでいない純タングステン線の伸びよりも大きく、ステンレス鋼線の場合よりもさらに大きい。
この特性により、前記図2(イ)の第1種引張剛性範囲と同様の衝撃力吸収効果が現れる。
本発明の第1実施形態の釣糸1の引張荷重と伸びの特性は、釣糸1の引張破断力の40%以下で、伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する第1種引張剛性範囲と、釣糸1の引張破断力の40%を超えると、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性であることを特徴とする。
従って、本発明の第1実施形態の釣糸1の引張荷重と伸びの特性は、第1種引張剛性範囲と第2種引張剛性範囲とを有し、第2種引張剛性範囲と第3種引張剛性範囲から成る一般的な材料の引張荷重と伸びの特性とは異なる。又、図2(ハ)のドープタングステン線の引張荷重と伸びの特性とも異なる。
図3は、本発明の第2実施形態の釣糸20を示す横断面図である。釣糸20は、第1実施形態の釣糸1に対して、第1側部3Aが異なる。
第2実施形態の釣糸20は、芯部2と第1側部3Aと第2側部4から成る芯線体51と、芯線体51の外周に被覆部6を有する。第2側部4は、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る。
芯部2と、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る第2側部4と、被覆部6は第1実施形態の釣糸1と同様である。
従って、第1実施形態の釣糸1とは、第1側部3Aの外径D22が異なり、釣糸1の全体の一部切欠き側面図、図1(イ)と同様である為、釣糸20の全体の一部切欠き側面図は省略している。
釣糸20の第1側部3Aは、前記第1実施形態の釣糸1の、第1側部3を10回/m以上600回/m以下捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸である。
第1側部3Aは、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtexで、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上の合成繊維のマルチフィラメント糸を用い、10回/m以上600回/m以下捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸を用いる。
第2実施形態の釣糸20の第1側部3Aは、繊度が28dtex、引張強度が22.9cN/dtex、引張弾性率が530cN/dtexの全芳香族ポリエステル繊維を用いて、外径D22が0.020mmで5本のフィラメント糸を320回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸を用いる。尚、水中において引張強度の変化を極めて少なくする為には、平衡水分率(20℃で湿度65%、24時間浸漬)が5%以下の合成繊維のマルチフィラメント糸が好ましい。
第2実施形態の釣糸20において、芯部2の、マルチフィラメント糸の繊度の総数Soは、前記釣糸1と同様に28dtexで、芯部2の引張破断力Poは641.2cNである。第1側部3Aの、マルチフィラメント糸の繊度の総数S1は、前記釣糸1と同様に28dtexで、320回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸を用いることにより、引張強度が5.0%増大する為、第1側部3Aの引張破断力P1は673.26cNである。第2側部4の、金属線の引張破断力P2は、前記釣糸1と同様に、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42との2本のドープタングステン線から成る為、約85.8cNである。
従って、芯部2の引張破断力Poと第1側部3Aの引張破断力P1とは、いずれも第2側部4の、金属線の引張破断力P2よりも大きい(Po>P2、P1>P2)。
そして、釣糸20の引張破断力Uは、1314.46cNとなる。これは、芯部2の繊度の総数Soは28dtex、引張強度が22.9cN/dtexであり、第1側部3Aの繊度の総数S1は28dtex、引張強度が22.9cN/dtexで、320回/m捻回することにより引張強度が5%増大していることから、釣糸20の引張破断力Uは、(28×22.9+28×22.9×1.05)cNで算出される。
従って、関係式(1)において、18×(So+S1)は、1008cNとなり、釣糸20の引張破断力Uは、1314.46cNで、1008cNよりも大きく関係式(1)を満たしている。
そして、第1側部3Aの撚糸のマルチフィラメント糸を用いることにより引張破断力が向上する理由は、マルチフィラメント糸は各フィラメント間に微細な空隙が存在し、捻回することによりこの微細な空隙が埋まり、空隙が埋まった状態で引張荷重を加えると引張荷重に対する引張抵抗力が各フィラメントに均等分散された結果による、と考えられる。
図3の第2実施形態の釣糸20において、芯部2の外径D21が0.020mm、第1側部3Aの外径D22が0.020mm、被覆部6の膜厚t1が0.003mmであるこ
とから、釣糸20の横断面の最大外径D2は、0.046mmである(日釣工線径基準、号柄の0.03号相当)。
又、第1実施形態の釣糸1の横断面の最大外径D1は、0.038mmである(日釣工線径基準、号柄の0.01号相当)。
釣糸1と釣糸20との横断面の最大外径に差が生じる要因は、第1側部のマルチフィラメント糸が無捻回の釣糸1か、捻回(320回/m)した撚糸の釣糸20かの差である。
つまり、第1側部のマルチフィラメント糸を捻回しない釣糸1であれば横断面の最大外径(D2相当)は、号柄が0.01号相当で、第1側部のマルチフィラメント糸を捻回(320回/m)した釣糸20であれば、横断面の最大外径D2は、号柄が0.03号相当となる。
そして、第1側部3Aのマルチフィラメント糸の捻回数を概ね160回/mにすると、第1側部3Aのマルチフィラメント糸は、前記釣糸1の第1側部3と同様に、巻回時に加えられる長手方向への引張力と引張力に伴う圧縮力、並びに、第2側部4からの巻回による圧縮力等の相互作用を受けて偏平状となり、その厚さTは0.016mmとなって、横断面の最大外径(D2相当)は、0.042mmで、号柄が0.02号相当となる。
このように、本発明の釣糸の構造は、第1側部3Aに320回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメントを用いた釣糸20の横断面の最大外径D2が、0.046mmで号柄が0.03号に相当し、第1側部3Aに160回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメントを用いた釣糸の横断面の最大外径(D2相当)は、0.042mmで号柄が0.02号に相当し、第1側部3Aに捻回していないマルチフィラメントを用いた釣糸1の横断面の最大外径(D2相当)は、0.038mmで、号柄が0.01号相当となる。
従って、本発明の釣糸1、20の構造は、第1側部3、3Aに用いるマルチフィラメント糸の捻回数の多少により、釣糸1、20の横断面の最大外径(D1、D2)を可変することができ、釣糸の太さの標準規格との一致化を容易にすることができる、特段の作用効果がある。尚、補足すれば、前記釣糸1、20で説明したように、釣糸20の引張破断力を維持したままで釣糸1への細径化(横断面の最大外径が0.046mmから0.038mmへ、号柄では0.03号から0.01号へ)を容易にすることができる。
図4は、本発明の第3実施形態の釣糸30を示す横断面図である。前記第2実施形態の釣糸20とは、芯部2の外径D31が異なり、芯部2の外径D31の変化に伴って外径D3が異なってくる場合を除き、第1側部3Aと、第2A金属線側部41と第2B金属線側部42から成る第2側部4と、被覆部6は、第2実施形態の釣糸20と同様である。
従って、第2実施形態の釣糸20とは、芯部2の外径D31が異なる為、釣糸1全体の一部切欠き側面図、図1(イ)と同様であり、釣糸30全体の一部切欠き側面図は省略している。
第3実施形態の釣糸30は、芯部2と第1側部3Aと第2側部4から成る芯線体52と、芯線体52の外周に被覆部6を有する。
芯部2は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上の合成繊維のマルチフィラメント糸を用いる。
第3実施形態の釣糸30の芯部2は、繊度が56dtex、引張強度が22.9cN/dtex、引張弾性率が530cN/dtexの全芳香族ポリエステル繊維を用いて、外径D31が0.0282mmで、10本のフィラメントから成るマルチフィラメント糸を用いる。尚、水中において引張強度の変化を極めて少なくする為には、前記釣糸1、20と同様に、平衡水分率(20℃で湿度65%、24時間浸漬)が5%以下の合成繊維のマルチフィラメント糸が好ましい。
第3実施形態の釣糸30において、芯部2のマルチフィラメント糸の繊度の総数Soは、56dtexで、芯部2の引張破断力Poは、1282.4cNである。
第1側部3Aの引張破断力P1は、前記第2実施形態の釣糸20の第1側部3Aと同一である為、673.26cNである。
第2側部4の金属線の引張破断力P2は、前記第2実施形態の第2側部4と同一である為、約85.8cNである。
従って、芯部2の引張破断力Poと、第1側部3Aの引張破断力P1とは、いずれも第2側部4の金属線の引張破断力P2よりも大きい(Po>P2、P1>P2)。
そして、釣糸30の引張破断力Uは、1955.66cNとなる。
これは、芯部2の繊度の総数Soは56dtex、引張強度が22.9cN/dtexであり、第1側部3Aの繊度の総数S1は28dtex、引張強度が22.9cN/dtexで、320回/m捻回することにより引張強度が5%増大していることから、釣糸30の引張破断力Uは、(56×22.9+28×22.9×1.05)cNで算出される。
従って、関係式(1)において、18×(So+S1)は、1512cNとなり、釣糸30の引張破断力Uは、1955.66cNで、1512cNよりも大きく、関係式(1)を満たしている。
図4の第3実施形態の釣糸30において、芯部2の外径D31が0.0282mmで、第1側部3Aの外径D32が0.020mmで、被覆部6の膜厚t1が0.003mmであることから、釣糸30の横断面の最大外径D3は、0.0542mmである(日釣工線径基準号柄の、0.05号に相当)。
そして、前記第2実施形態の釣糸20の説明において、第1側部3Aのマルチフィラメント糸の捻回数を160回/mにすると、第1側部のマルチフィラメント糸は、釣糸1の第1側部3のように偏平状となり、その厚さTは0.016mmとなる。
第3実施形態の釣糸30に対して、第1側部3Aに、前記マルチフィラメント糸の捻回数を160回/mにした、撚糸のマルチフィラメント糸を用いた場合には、芯部2の外径D31が0.0282mmで、第1側部3Aの外径D32は偏平状となって、その厚さTは0.016mmとなり、被覆部6の膜厚t1が0.003mmであることから、横断面の最大外径(D3相当)の寸法は、0.0502mmとなる(日釣工線径基準号柄の、0.04号に相当)。
そしてさらに、第3実施形態の釣糸30に対して、第1側部3Aに捻回していない無捻回のマルチフィラメント糸を用いた場合には、前記第1実施形態の釣糸1と同様に、第1側部3Aは偏平状となって厚さTは、第2側部4の金属素線の線直径と同一となって0.012mmとなる。
第3実施形態の釣糸30に対して、第1側部3Aに捻回していない無捻回のマルチフィラメント糸を用いた場合には、芯部2の外径D31が0.0282mmで、第1側部3Aの外径D32は偏平状となって、第2側部40の金属素線の線直径と同一となって0.012mmとなり、被覆部6の膜厚t1が0.003mmであることから、横断面の最大外径(D3相当)の寸法は、0.0462mmとなる(日釣工線径基準号柄の、0.03号に相当)。
このように、本発明の釣糸30の構造は、横断面の最大外径D3は0.0542mmで号柄が0.05号に相当し、第1側部3Aに160回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメントを用いた釣糸の横断面の最大外径(D3相当)は、0.0502mmで号柄が0.04号に相当し、第1側部3Aに捻回していない、無捻回のマルチフィラメントを用いた釣糸の横断面の最大外径(D3相当)は、0.0462mmで号柄が0.03号相当となる。
従って、本発明の釣糸30の構造は、前記第2実施形態の釣糸20と同様に、第1側部3Aに用いるマルチフィラメント糸の捻回数の多少により、釣糸30の横断面の最大外径D3を可変することができ、釣糸の太さ標準規格との一致化を容易にすることができる、特段の作用効果がある。
さらに、釣糸30の引張破断力を維持したままで、細径化(横断面の最大外径が0.0542mmから0.0462mmへ、号柄では0.05号から0.03号へ)を容易にすることができる。尚、ここでいう合成繊維のマルチフィラメント糸と金属線を用いた複合糸から成る釣糸は、モノフィラメント糸から成る釣糸と比較して形状が複雑で、太さが極めて細い為、太さの測定に際して、接触型測定機を用いた場合には、釣糸への接触圧力により太さが変動し易い。これを防ぐ為、非接触型のレーザー測定機を用いて、釣糸の横断面の最大外径を釣糸の太さとして、太さ標準規格と対比して述べた。この為、接触型測定機を用いた場合とは、その値は異なる。
図5は、本発明の第1〜3実施形態の変形例の釣糸40、50を示す。図5(イ)は、変形例1の釣糸40を示し、芯部2と第1側部3と第2側部4Aから成る芯線体53と、芯線体53の外周に被覆部6を有する。
本発明の第1実施形態の釣糸1と異なるところは、第2側部4Aがいずれも2本の金属素線から成る第2A金属線側部411と第2B金属線側部422を有し、他は第1実施形態の釣糸1と同様である。
図5(ロ)は、変形例2の釣糸50を示し、芯部2と第1側部3Aと第2側部4から成る芯線体54と、芯線体54の外周に被覆部6を有する。
本発明の第3実施形態の釣糸30と異なるところは、第1側部3Aが、第1A繊維側部31と第1B繊維側部32から成り、第1A繊維側部31と第1B繊維側部32とは、いずれも第3実施形態の釣糸30の第1側部3A(第2実施形態の釣糸20の第1側部3Aと同じ)と同一の、320回/m捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸をそれぞれ用いる。他は、第3実施形態の釣糸30と同様である。
このように本発明の釣糸は、芯部2と、芯部2の外周に第1側部3と第2側部4とを平行して同一長手方向へ巻回し、芯部2と第1側部3と第2側部4とを有する芯線体5を備え、芯部2と第1側部3とは、いずれも一定の機械的強度特性を有するマルチフィラメント糸から成り、第1側部3は、釣糸50で示すように第1A繊維側部31と第1B繊維側部32として複数設けてもよい。好ましくは、1〜4個である。
又、金属素線から成る第2側部4は、釣糸40で示すように第2A金属線側部411と第2B金属線側部422として複数設けてもよい。好ましくは、1〜4個である。
そして又、捻回した、撚糸のマルチフィラメント糸は、第1側部3と芯部2のいずれか一方、又は双方に用いてもよい。
本発明のエマルション塗料を用いた被覆部の特性を説明する為、図6は本発明の第4実施形態の釣糸100を示し、図7は比較例の釣糸200を示す。図6(イ)は釣糸100の全体の一部切欠き側面図を示し、図6(ロ)は、図6(イ)の釣糸100の符号Y−Y断面図を示す。又、図6(ハ)は塗料液中における釣糸100の全体の一部切欠き側面図を示す。図7(イ)は釣糸200の全体の一部切欠き側面図を示し、図7(ロ)は、図7(イ)の釣糸200の符号Z−Z断面図を示す。
釣糸100は、芯部22と側部44から成る芯線体55と被覆部66を有する。側部44は、2本の金属素線を隣接した金属線から成る。芯部22の外周に側部44を長手方向へ一定のピッチP(前記第1側部3と第2側部4の撚りピッチと同じ)で巻回して成る芯線体55を備える。芯線体55の外周に被覆部66を設ける。
芯部22と側部44と被覆部66とは、前記第1実施形態の釣糸1の、芯部2と第2側部4と被覆部6とそれぞれ同一である。前記第1実施形態の釣糸1と同様に、芯部22は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上である。
側部44は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の2本以上の金属素線を用いた金属線を有する。
被覆部66は、樹脂粒子径が5nm以上120nm以下のポリオレフィン系樹脂粒子、又はポリアミド系樹脂粒子を含むエマルション塗料を用いて成る。被覆部66は、表面から内側(芯部22側)へ向かって樹脂粒子を徐変増大させて成ることを特徴とする。
この理由は、前記同様に、マルチフィラメント糸から成る芯部22へ浸透した樹脂粒子と同一樹脂粒子との造膜から成る被覆部66との相互の接着性を高める為である。又、後述する釣糸の製造方法を用いることにより、被覆部66の表面滑性を向上させる為である。
芯部22の、マルチフィラメント糸の繊度の総数をSo(dtex)、引張破断力をPo(cN)、側部44の、金属線の引張破断力をP21(cN)とし、釣糸の引張破断力をU(cN)とした場合に、
芯部22の引張破断力Poは、側部44の引張破断力P21(cN)よりも大きく(Po>P21)、かつ、釣糸の引張破断力U(cN)は、
U>18×So ・・・(2)
の関係式(2)で表すことができる。
つまり、前記第1実施形態の釣糸1と同様に、芯部22の引張破断力Poは、641.2cNで、2本の金属素線から成る側部44の引張破断力P21は、約85.8cNであり、釣糸100の引張破断力Uは、約650.8cNである。
従って、芯部22の引張破断力Poは、側部44の引張破断力P21よりも大きい(Po>P21)。前記関係式(2)において、18×Soは504cNとなり、本発明の釣糸100の引張破断力Uは、約650.8cNであることから、504cNよりも大きく、関係式(2)を満たしている。
そして、釣糸100の引張荷重と伸びの特性は、前記第1実施形態の釣糸1と同様に、釣糸100の引張破断力の40%以下で、伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する第1種引張剛性範囲と、釣糸100の引張破断力の40%を超えると、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性であることを特徴とする。
次に、釣糸の被覆部に、エマルション塗料を用いた場合と有機溶剤を含む溶剤型塗料を用いた場合との差について、第4実施形態の釣糸100と図7に示す比較例の釣糸200とを対比して、以下説明する。
図7に示す比較例の釣糸200は、本発明の第4実施形態の釣糸100に対して、被覆部661がアクリル樹脂とベンゼン、アセトン等の有機溶剤を含む溶剤型塗料を用いて成る。
他の、芯部221、側部441はそれぞれ第4実施形態の釣糸100の芯部22、側部44と同一である。
釣糸100の芯部22の外径D51は、0.020mm、側部44の金属線の外径d1は0.012mm、エマルション塗料による被覆部66の膜厚t1は0.003mmであり、釣糸100の外径D5は0.038mmとなる。この外径寸法は、日釣工線径基準の号柄0.01号に相当する。
これに対して、釣糸200の芯部221の外径D61は0.020mm、側部441の金属素線の外径d1は0.012mmで、前記釣糸100と同一寸法でありながら、溶剤型塗料による被覆部661の膜厚t2は、0.007mmとなって、釣糸200の外径D6は0.046mm(0.020+0.012+0.007×2)となる。この外径寸法は、日釣工線径基準の号柄0.03号に相当することになる。
つまり、同一構成でありながら、被覆部66、661を形成する塗料の種類により、釣糸の外径が変化することとなる。この理由は、溶剤型塗料は、エマルション塗料と比較して、粘度が高い為に流動性が劣り、溶剤を揮発させるのに時間を要し、充分溶剤を揮発させる前に造膜が開始されて被覆部661を形成することになるからである。
従って、本発明の釣糸100は、比較例の釣糸200に対して、釣糸の外径が0.01号の細径でありながら、引張破断力は号柄0.03号の釣糸と同一となり、釣糸200と同一構成でありながら、釣糸200よりも細くて、丈夫な釣糸である。
そして、溶剤型塗料は、環境規制の要望に応えられないものであるのに対して、本発明のエマルション塗料を用いた釣糸は、媒質が水、又はアルコール類である為、環境規制の要望に大きく応えるものである。
本発明の釣糸100の被覆部66は、樹脂粒子径が5nm以上120nm以下のポリオレフィン系樹脂粒子、又はポリアミド樹脂粒子を含むエマルション塗料を用いて、被覆部66の表面から内側(芯部22側)へ向かって、前記樹脂粒子を徐変増大させて樹脂粒子どおしを融着させて成る。
このような被覆部66とする製造工程は、樹脂粒子の固形分を含むエマルション塗料液に芯線体55を浸漬した後に、80℃以上220℃以下で乾燥させる第1工程と、
前記樹脂粒子の固形分を前記第1工程よりも20重量%以上70重量%以下に少なくして、かつ、顔料を含むエマルション塗料液に前記第1工程を経た芯線体55を浸漬した後に、80℃以上220℃以下で乾燥させる第2工程とを有する。
又、第2工程の後に、前記樹脂粒子の固形分が第2工程よりも20重量%以上70重量%以下に少なくして、かつ、顔料を含むエマルション塗液に前記第2工程を経た芯線体55を浸漬した後に、80℃以上220℃以下で乾燥させる第3工程を設けてもよい。
又は、第2工程の後に、第2工程と同一のエマルション塗料を用いて、前記第2工程を経た芯線体55を浸漬した後に、80℃以上220℃以下で乾燥させる第3工程を設けてもよい。いずれを選択するかは、魚種等の釣糸に求められる要求特性による。
顔料は、前記各工程で用いるエマルション塗料に混合させてもよいが、第2工程以降に用いるエマルション塗料に混合することが好ましい。この理由は、以下である。エマルション塗料液は、乳濁色で含まれている樹脂粒子は白色系の粉末である。前記被覆部66の製造工程における第1工程では、顔料(有色)が含まれていないエマルション塗料による造膜で白色系である。第2工程では顔料(有色)を含むエマルション塗料による造膜(有色)である。この為、第1工程の白色系の造膜上に、顔料(有色)を含む第2工程の造膜(有色)となる為、顔料(有色)の光反射率が高くなり、鮮明な色彩を得ることができるからである。
この製造方法により、釣糸100の被覆部66と芯線体55との接着性を高めることができる。この理由は、以下である。
エマルション塗料は、樹脂粒子径がnm(ナノメートル)サイズで極めて微細であり、かつ、親水性である為にマルチフィラメント糸から成る芯線体55内へ樹脂粒子が浸透し易い。被覆部66の成形時に、エマルション塗料液内の釣糸を引っ張ると、引張方向と反対方向(作用反作用の法則)にエマルション塗料液が流動し始め、釣糸100のスパイラル状の構造特性により、エマルション塗料液は、符号70Aで示すスパイラル状の流れを生じる(図6(ハ))。かかる場合に、エマルション塗料液中の樹脂粒子は、芯部22と側部44との接触部に堆積し易くなる(図6(ハ)、符号66A)。
そして、芯部22内へ浸透した樹脂粒子と、芯部22と側部44との接触部に堆積した樹脂粒子66Aとは、乾燥工程により相互に融着して造膜する。第2工程により、第1工程のエマルション塗料に含まれる樹脂粒子と第2工程のエマルション塗料に含まれる同一樹脂粒子どおしが乾燥工程により、相互に融着して造膜する。これらの各工程により、被覆部66が形成される。
これにより、芯線体55と被覆部66との相互の接着性を高めることになるからである。
前記被覆部66のエマルション塗料を用いた釣糸の製造方法により、被覆部66の表面のザラツキを防いで、表面滑性を向上させることができる。この理由は、エマルション塗料を用いた場合、エマルション塗料に含まれる樹脂粒子の量が多いほど分散媒の水等が蒸発すると未融着の樹脂粒子が残存し、表面のザラツキが発生し易くなる。前記第1工程の後に、樹脂粒子分の少ないエマルション塗料を用いた第2工程を設けることにより、被覆部66の表面のザラツキの発生を抑えて、表面滑性を向上させることができるからである。
これにより、例えば、水中で釣糸の長さ、又は囮鮎の位置等を釣人が視認する為に用い、釣糸に取り付けられた「鮎釣り用目印」の移動を容易にすることができる。
このような被覆部66にエマルション塗料を用いた作用効果については、前記第1、2、3実施形態の釣糸1、20、30、及び変形例1、2についても同様である。
1 釣糸1(第1実施形態)
2 芯部
3 第1側部
4 第2側部
44 側部
5 芯線体
6 被覆部
20 釣糸(第2実施形態)
30 釣糸(第3実施形態)
40 釣糸(変形例1)
50 釣糸(変形例2)
100 釣糸(第4実施形態)
200 釣糸(比較例)

Claims (4)

  1. 芯部の外周に、側部を長手方向へ疎巻きに巻回し、前記芯部と前記側部とを有する芯線体を備え、前記芯線体の外周に、被覆部を設けた釣糸であって、
    前記芯部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上で、
    前記側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線を有し、
    前記被覆部は、樹脂粒子径が5nm以上120nm以下のポリオレフィン系樹脂粒子又はポリアミド系樹脂粒子を含むエマルション塗料を用い、表面から内側へ向かって前記樹脂粒子を徐変増大させて成り、
    前記芯部の、マルチフィラメント糸の繊度の総数をSo、引張破断力をPo、前記側部の、金属線の引張破断力をP21とし、前記釣糸の引張破断力をUとした場合に、
    前記芯部の引張破断力Poは、前記側部の引張破断力P21よりも大きく(Po>P21)、かつ、前記釣糸の引張破断力Uは、
    U>18×Soの関係式を満たし、
    前記釣糸の引張荷重と伸びの特性は、前記釣糸の引張破断力の40%以下で、伸びの増加とともに引張荷重が緩やかに増大する第1種引張剛性範囲と、前記釣糸の引張破断力の40%を超えると、伸びの増加に比例して引張荷重が増大し、比例限界点に達して破断に至る第2種引張剛性範囲とを有する非線形特性であることを特徴とする釣糸。
  2. 前記エマルション塗料を用いて成る被覆部は、分散質の樹脂粒子の軟化点が80℃以上220℃以下で、分散媒に紫外線吸収剤、又は顔料のいずれか一方、又は双方が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
  3. 前記側部は、平行して同一長手方向へ巻回する第1側部と第2側部から成り、
    前記第1側部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dtex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上で、
    前記第2側部は、引張強さが1500N/mm2以上4200N/mm2以下の、少なくとも1本以上の金属素線を用いた金属線から成り、
    前記第1側部の、マルチフィラメント糸の繊度の総数をS1、引張破断力をP1、前記第2側部の、金属線の引張破断力をP2とすると、
    前記芯部の引張破断力Poと、前記第1側部の引張破断力P1とは、いずれも前記第2側部の金属線の引張破断力P2よりも大きく(Po>P2、P1>P2)、かつ、前記釣糸の引張破断力Uは、
    U>18×(So+S1)の関係式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸。
  4. 芯部の外周に、側部を長手方向へ疎巻きに巻回し、前記芯部と前記側部とを有する芯線体を備え、
    前記芯部は、繊度が28dtex以上280dtex以下、引張強度が18cN/dt
    ex以上で、かつ、引張弾性率が442cN/dtex以上のマルチフィラメント糸から成り、前記芯線体の外周に被覆部を設けた釣糸の製造方法であって、
    前記被覆部の製造方法が、樹脂粒子の固形分を含むエマルション塗料液に前記芯線体を浸漬した後に乾燥させる第1工程と、
    前記樹脂粒子の固形分を前記第1工程よりも少なくして、かつ、顔料を含むエマルション塗料液に前記第1工程を経た前記芯線体を浸漬した後に乾燥させる第2工程とを有することを特徴とする釣糸の製造方法。
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