JP2017157461A - 発光体用面状発熱体および発光体 - Google Patents

発光体用面状発熱体および発光体 Download PDF

Info

Publication number
JP2017157461A
JP2017157461A JP2016040812A JP2016040812A JP2017157461A JP 2017157461 A JP2017157461 A JP 2017157461A JP 2016040812 A JP2016040812 A JP 2016040812A JP 2016040812 A JP2016040812 A JP 2016040812A JP 2017157461 A JP2017157461 A JP 2017157461A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heating element
planar heating
layer
carbon nanotube
coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016040812A
Other languages
English (en)
Inventor
上岡 武則
Takenori Kamioka
武則 上岡
直樹 辻内
Naoki Tsujiuchi
直樹 辻内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Advanced Film Co Ltd
Original Assignee
Toray Advanced Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Advanced Film Co Ltd filed Critical Toray Advanced Film Co Ltd
Priority to JP2016040812A priority Critical patent/JP2017157461A/ja
Publication of JP2017157461A publication Critical patent/JP2017157461A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Surface Heating Bodies (AREA)
  • Resistance Heating (AREA)
  • Traffic Control Systems (AREA)

Abstract

【課題】透明性および発熱効率が高く、成型加工性に優れ、かつ湿熱耐久性が良好である発光体用面状発熱体を提供する。【解決手段】基材11の少なくとも一方に面に、カーボンナノチューブ層12および被覆層13を有する発光体用面状発熱体10であって、全光線透過率が75%以上、湿熱試験(85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露)後の表面抵抗値変化率(R)が50%以下であることを特徴とする、発光体用面状発熱体。【選択図】図1

Description

本発明は、発光体用面状発熱体に関し、より詳細には、透明性および発熱効率が高く、かつ成型加工性に優れた、発光体用面状発熱体およびこの発光体用面状発熱体を備えた発光体に関する。
発光体、例えば、信号機、車両ヘッドライト、表示装置、街灯などは、通常、発光源と透明な前面カバーで構成されている。
寒冷地では、発光体の前面カバー外表面に、氷、雪、霜などが付着して、視認性が低下することがある。そこで、発光体の前面カバーの内側に面状発熱体を配置することが提案されている(特許文献1〜4)。
特開平8−164788号公報 特開2009−145952号公報 特開2009−272303号公報 特開2014−109970号公報
面状発熱体を発光体の前面カバーに適用する場合は、高い透明性が必要である。
また、発光体の前面カバーは、通常、曲面形状となっており、面状発熱体自体を前面カバーとして適用する場合、あるいは前面カバーに面状発熱体をラミネートして一体成型する場合において、面状発熱体は曲面形状等に成型加工される。このとき、面状発熱体の少なくとも一部は、曲面形状に対応すべく加熱延伸されるが、この加熱延伸工程で面状発熱体の導電性材料である発熱素子が断線あるいは分断して発熱効率が低下したり、あるいはクラックが発生して透明性が低下するなどの問題が起こることがある。
また、発光体は太陽や雨に曝されることから、高温高湿下における耐久性(湿熱耐久性)が求められる。カーボンナノチューブを用いた面状発熱体は、導電性金属を用いた面状発熱体に比べて湿熱耐久性は比較的良好であるが、十分に満足するまでには至っていない。
近年、発光体の光源としてLED(発光ダイオード)が急速に普及している。LEDは従来の白熱電球に比べて発熱量が小さく、氷、雪、霜などの付着は深刻な問題となっており、LEDを光源とする発光体に使用される面状発熱体は、発熱効率が高いことが求められる。
しかしながら、前述した特許文献に開示されている技術では、上記した課題を同時に十分に満足させることはできない。
従って、本発明の目的は、上記問題に鑑み、透明性および発熱効率が高く、成型加工性に優れ、かつ湿熱耐久性が良好である発光体用面状発熱体を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明の発光体用面状発熱体を備えた発光体を提供することにある。
上記目的は、以下の発明によって達成される。
[1]基材の少なくとも一方に面に、カーボンナノチューブ層および被覆層を有する発光体用面状発熱体であって、全光線透過率が75%以上、湿熱試験(85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露)後の表面抵抗値変化率(R)が50%以下であることを特徴とする、発光体用面状発熱体。
[2]50%延伸後の表面抵抗値(R50)が1000Ω/□以下である、[1]に記載の発光体用面状発熱体。
[3]50%延伸後のヘイズ値(Hz1)が4.0%以下である、[1]または[2]に記載の発光体用面状発熱体。
[4]前記被覆層がウレタン樹脂を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
[5]前記被覆層が熱硬化性樹脂層もしくは活性エネルギー線硬化性樹脂層である、[1]〜[4]のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
[6]前記活性エネルギー線硬化性樹脂層がウレタン(メタ)アクリレートを含有する、[5]に記載の発光体用面状発熱体。
[7]前記被覆層の厚みが20nm以上300nm以下の範囲である、[1]〜[6]のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
[8]前記基材の160℃における100%伸長時の応力が40MPa以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
[9]基材が、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、またはポリカーボネート樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとの積層樹脂フィルムである、[8]に記載の発光体用面状発熱体。
[10][1]〜[9]いずれか記載の発光体用面状発熱体を備えた発光体。
本発明によれば、透明性および発熱効率が高く、成型加工性に優れ、かつ湿熱耐久性が良好である発光体用面状発熱体を提供することができる。
図1は、本発明の発光体用面状発熱体の一例の模式断面図である。 図2は、本発明の発光体用面状発熱体の一例の模式断面図である。 図3は、本発明の発光体用面状発熱体を用いた発光体(信号機)の要部の模式断面図である。 図4は、面状発熱体の発熱効率を測定する方法を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の発光体用面状発熱体(以下、単に「面状発熱体」ということがある。)10は、基材11の少なくとも一方の面に、カーボンナノチューブ層12および被覆層13を有する。
本発明の面状発熱体は、湿熱試験(85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露)後の表面抵抗値変化率(R)が50%以下であることが重要である。これは、面状発熱体が夏季の高温高湿にさらされても、表面抵抗値の上昇が抑制され、発熱効率が低下しないことを意味する。
ここで表面抵抗値変化率(R)とは、85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露する湿熱試験後の表面抵抗値(R)と、初期(湿熱試験前)の表面抵抗値(R)とから以下の式(1)で算出される値である。
R=(R−R )/R×100 ・・・式(1)。
湿熱耐久性の観点、つまり、湿熱試験後の発熱効率の低下を抑制するという観点から、湿熱試験後の表面抵抗値変化率(R)は、さらに40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
湿熱耐久性は、詳しくは後述するが、カーボンナノチューブ層の上に被覆層を積層することによって向上する。
本発明の面状発熱体は、発光体に適用するときの成形加工後(例えば、延伸後)であっても、良好な発熱効率を維持することが好ましく、成型加工後の表面抵抗値は小さいことが好ましい。面状発熱体は、成型加工時に、通常、20%以上延伸される。そこで、本発明の面状発熱体は、50%延伸後の表面抵抗値(R50)が1000Ω/□以下であることが好ましく、さらに、900Ω/□以下であることが好ましく、800Ω/□以下であることが特に好ましい。面状発熱体の表面抵抗値が1000Ω/□を超えると発熱効率が低下することがある。
本発明の面状発熱体は、初期の表面抵抗値(R)は、湿熱試験後および成型加工後の表面抵抗値の変化を考慮して低めに設計されることが好ましい。初期の表面抵抗値(R)は具体的には、700Ω/□以下が好ましく、600Ω/□以下がより好ましく、500Ω/□以下が特に好ましい。下限は、特に限定されないが、10Ω/□程度である。
また、本発明の面状発熱体、初期の表面抵抗値(R)に対する50%延伸後の表面抵抗値(R50)の比率、即ち、(R50)/(R)×100は、400%以下が好ましく、350%以下がより好ましく、300%以下が特に好ましい。
発光体の前面カバーの形状は曲率が小さい曲面と大きい曲面が混在することが多く、面状発熱体を前面カバーの形状に合わせて成型するとき、上記比率が400%を超えて大きくなると、大きく延伸された箇所(曲率が小さい曲面は)と小さく延伸された箇所(曲率が小さい曲面)とで発熱効率に差が生じ、均一な発熱が得られないことがある。
本発明の面状発熱体の全光線透過率は、発光体の視認性を低下させない、つまり、発光量を低下させないという観点から、75%以上とすることが重要であり、80%以上とすることが好ましく、85%以上とすることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、95%程度である。カーボンナノチューブは、従来の導電性金属などに比べて透明性が高く、カーボンナノチューブを用いた面状発熱体は発光体に好適である。
また、面状発熱体の成形加工時に、クラックが発生するとヘイズ値が上昇し、透明性や外観品質が低下することがある。従って、本発明の面状発熱体は、50%延伸後のヘイズ値が4.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましく、1.0%以下が特に好ましい。
また、50%延伸前後のヘイズ値の差が小さいほど成型加工性に優れていることを意味する。
上記観点から、本発明の面状積層体は、50%延伸前のヘイズ値(Hz0)と50%延伸後のヘイズ値(Hz1)との差(Hz1−Hz0)が、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。
以下、本発明の面状発熱体を構成する各構成要素について詳細に説明する。
[基材]
本発明の面状発熱体を構成する基材としては、各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、耐熱透明樹脂アートン(登録商標)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらを積層して用いてもよい。
本発明の面状発熱体は、成形加工性が高いこと(成形加工時の延伸工程が円滑に実施されること)が好ましく、この観点から、基材は、160℃における100%伸長時の応力が40MPa以下であることが好ましい。
上記観点から、基材としては、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、特に易成型ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとの積層樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの樹脂フィルムは一般に市販されており、これらの市販品の中から選択して用いることができる。
ポリカーボネート樹脂フィルムの市販品としては、例えば、帝人化成(株)製の「パンライトフィルム」や「ピュアエース」、三菱ガス化学(株)製の「ユーピロン」、旭硝子(株)製の「レキサンフィルム」、「カーボグラス」、SABIC(Saudi Basic Industries Corporation)社製の「Lexan」、バイエル社製の「マクロフォル」等が挙げられる。
易成型ポリエステル樹脂フィルムの市販品としては、例えば、東洋紡(株)製の「ソフトシャイン」、帝人デュポンフィルム(株)製の「テフレックス」等が挙げられる。
アクリル樹脂フィルムの市販品としては、例えば、住友化学(株)製の「テクノロイ」、三菱レイヨン(株)製の「アクリプレン」、(株)カネカ製の「サンデュレン」などが挙げられる。
基材は、160℃における100%伸長時の応力は、更に35MPa以下が好ましく、30MPa以下がより好ましく、25MPa以下が特に好ましい。下限の応力は特に限定されないが、0.1MPa程度である。
本発明における基材フィルムとしては、伸長時の応力が比較的小さく、かつ強度が比較的高い、ポリカーボネート樹脂フィルムが最も好ましく用いられる。
基材の厚みとしては、20〜300μmの範囲が適当であるが、強度や成型加工性等の観点から30〜250μmの範囲が好ましく、50〜200μmの範囲が好ましい。
一方、発光体の前面カバーを本発明の面状発熱体のみで構成する場合は、前面カバーとしての強度を保つために、基材として厚みが300μm以上の樹脂板を用いることができる。
基材は、カーボンナノチューブ層を積層しやすくするために、基材表面にコロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、例えば、易接着層などの積層などの表面処理を行うことができる。
[アンダーコート層]
図2に示すように、本発明の面状発熱体10は、基材11とカーボンナノチューブ層12との間にアンダーコート層14を有することが好ましい。アンダーコート層が配置されることによりカーボンナノチューブ層の密着性向上、面状発熱体の表面凹凸が調整できるため好ましい。アンダーコート層は延伸可能な熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。具体的にはウレタン樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂およびオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これらの中でも高伸度で耐水性、耐溶剤性に優れる点からウレタン樹脂が特に好ましい。
また、アンダーコート層は、アンダーコート層表面の親水性を高めるために粒子を含有することが好ましい。かかる粒子としては、無機粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
上記したようなアンダーコート層、即ち、熱可塑性樹脂と粒子、特にシリカ粒子を含有するアンダーコート層を基材とカーボンナノチューブ層との間に配置することにより、面状発熱体の表面抵抗値が低下するという利点がある。
アンダーコート層の厚みは、50〜1500nmの範囲が好ましく、100〜1000nmの範囲がより好ましく、200〜800nmの範囲が特に好ましい。
アンダーコート層を基材上に積層する方法は特に限定されず、各種ウェットコーティング法を用いることができる。かかるウェットコーティング法としては、例えばキャストコート法、ディップコート法、スピンコート法、ナイフコート法、キスコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、バーコート法等が挙げられる。
[カーボンナノチューブ層]
カーボンナノチューブ層は、少なくともカーボンナノチューブを含有し、カーボンナノチューブを発熱素子とすることにより、高い透明性と高い発熱効率が得られる。
発光体に適用される面状発熱体は、成形加工時に延伸されても、高い発熱効率を維持できることが好ましい。この観点から、カーボンナノチューブは、成形加工時の延伸に対して比較的柔軟に対応できるので好ましい。つまり、カーボンナノチューブは、延伸されても破断されにくく、成形加工時の延伸後であっても比較的高い発熱効率が維持できる。
カーボンナノチューブ層におけるカーボンナノチューブの含有量は、全光線透過率が75%以上の高透過率を維持しながら良好な発熱効率、つまり、表面抵抗値2,000Ω/□以下を得るという観点から、1〜30mg/mの範囲が好ましく、2〜20mg/mの範囲がより好ましく、特に3〜17mg/mの範囲が好ましい。
また、カーボンナノチューブ層の全固形分塗布量は、2〜90mg/mの範囲が適当であり、3〜60mg/mの範囲が好ましく、4〜50mg/mの範囲が好ましい。
また、カーボンナノチューブ層の厚みは、1〜20nmの範囲が好ましく、2〜15nmの範囲がより好ましく、特に3〜10nmの範囲が特に好ましい。
カーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブ分散液を含む塗液をウェットコーティング法により塗布することによって形成することができる。ウェットコーティング法としては、例えばキャストコート法、ディップコート法、スピンコート法、ナイフコート法、キスコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、バーコート法等が挙げられる。これらの中でも、スロットダイコート法が好ましく用いられる。
[カーボンナノチューブ]
カーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できる。
これらの中でも、グラファイトの1枚面を2層に巻いた特に2層カーボンナノチューブがカーボンナノチューブ100本中に50本以上含まれていると、塗布用カーボンナノチューブ分散液中での分散性が高く、発熱効率が高くなることから好ましい。さらに、上記2層カーボンナノチューブがカーボンナノチューブ100本中75本以上含まれていることがより好ましく、80本以上が含まれていることが特に好ましい。最も好ましくは全て2層カーボンナノチューブである。
カーボンナノチューブは、直径が0.3〜20nm、長さが0.1〜20μm程度のものが好ましく用いられる。特に、導電層の透明性を高め、表面抵抗を低下させるという観点から、カーボンナノチューブの直径は1〜10nmでかつ長さは1〜10μmであることが好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はカーボンナノチューブに対するドーパントとして作用するため、好ましい。ドーパントとは、カーボンナノチューブに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、カーボンナノチューブの導電性を向上させるものである。硝酸処理法は本発明にかかるカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、5〜50時間の範囲であることが好ましい。
[カーボンナノチューブ分散液]
カーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの分散剤を含有することが好ましい。
かかる分散剤としては、分散性が高いイオン性分散剤が好ましく用いられる。イオン性分散剤としては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤が挙げられる。これらのイオン性分散剤の中でも、カーボンナノチューブの分散性および分散保持性に優れることから、アニオン性分散剤が好ましく用いられる。アニオン性分散剤の中でも、さらにカルボキシメチルセルロースおよびその塩、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩等、ポリスチレンスルホン酸の塩が、カーボンナノチューブを効率的に分散することができるので好ましい。
分散剤の含有量は、カーボンナノチューブの発熱効率(表面抵抗値)を低下させずにかつ良好な分散性を確保するという観点から、カーボンナノチューブ100質量部に対して50〜1000質量部の範囲が好ましく、100〜600質量部の範囲がより好ましく、200〜400質量部の範囲が特に好ましい。
カーボンナノチューブ分散液の調製に用いる分散媒は、上記した分散剤を安全に溶解できること、廃液の処理が容易であること等の観点から、水が好ましい。
カーボンナノチューブ分散液は、例えば、カーボンナノチューブと分散剤とを分散媒中で混合分散機、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等を用いて分散することによって調製することができる。これらの混合分散機は単独で用いてもよいし、複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、振動ボールミルで予備的に分散を行った後、超音波装置を用いて分散する方法が、カーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
カーボンナノチューブを分散せしめるときのカーボンナノチューブの濃度は、分散時の処理時間が短縮できることから、0.003〜0.15質量%の範囲が好ましい。このようにして調製されたカーボンナノチューブ分散液は、さらに希釈して塗布に適した所定濃度に調整される。
カーボンナノチューブ分散液を塗布するに際し、塗布性を高めるために、カーボンナノチューブ分散液にアルコールや界面活性剤を含有させることができる。これらの中でもアルコールが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが好ましく用いられる。
[被覆層]
本発明における被覆層は、カーボンナノチューブ層を被覆し、カーボンナノチューブ層を保護する機能を有する。つまり、被覆層は、湿熱耐久性向上に寄与する。また、被覆層は、成形加工時の外圧などによりカーボンナノチューブが破断したり、脱落したりすることを抑制する。
被覆層は、カーボンナノチューブ層との密着性および保護機能(湿熱耐久性向上)が良好で、かつ成型加工性が良好であることが好ましい。被覆層の成型加工性が良好であることによって、成型時の延伸工程で被覆層やカーボンナノチューブ層にクラックが発生することが抑制される。成型加工時に被覆層やカーボンナノチューブ層にクラックが発生すると、成型後の表面抵抗値やヘイズ値が上昇することがある。
被覆層は、カーボンナノチューブ層の上に、例えば、樹脂を含有する塗液を塗布することによって形成することができる。かかる樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上記した湿熱耐久性および成型加工性の観点から、ウレタン樹脂を含有することが好ましい。
また、上記観点、湿熱耐久性および成型加工性の向上から、被覆層は、熱硬化性樹脂層あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂層であることが好ましく、特に、湿熱耐久性の観点から活性エネルギー線硬化性樹脂層であることが好ましい。
被覆層が熱硬化性樹脂層である場合、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は熱によって重合または架橋する樹脂であり、例えば、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、成型加工性が良好であり、保護機能(湿熱耐久性)が良好であることから、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
また、被覆層は、上記樹脂を架橋する架橋剤、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を含有することができる。
熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂を含有する塗布液を塗布した後、必要に応じて乾燥し、加熱硬化して形成することができる。
被覆層が活性エネルギー線硬化性樹脂層である場合、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で重合し硬化する樹脂であり、かかる樹脂としては分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する化合物(モノマーやオリゴマー)が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物を以下に例示するが、本発明はこれらの化合物に限定されない。尚、下記の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」なる表現は、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」との2つの化合物を含む。
例えば、メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
上記化合物の中でも、湿熱耐久性および成型加工性が良好であることから、ウレタン(メタ)アクリレートあるいはウレタンオリゴマーが好ましく用いられる。つまり、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートあるいはウレタンオリゴマーとしては、市販されているものを使用することができる。例えば、共栄社化学(株)製のAHシリーズ、ATシリーズ、UAシリーズ、UFシリーズ、根上工業(株)製のUN−3320シリーズ、UN−900シリーズ、新中村化学工業(株)製のUAシリーズ、NKオリゴUシリーズ、DIC(株)製のユニデックシリーズ、ダイセル・ユーシービー社製のEbecryl1290シリーズなどが挙げられる。
被覆層が活性エネルギー線硬化性樹脂層である場合、光重合開始剤を含むことが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂層は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗布液を塗布した後、必要に応じて乾燥し、活性エネルギー線を照射し硬化して形成することができる。
被覆層の厚みは、湿熱耐久性を向上させるという観点から、比較的大きいことが好ましく、具体的には20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が特に好ましい。一方、被覆層の厚みが大きくなりすぎると、成型加工性が低下したり、面状発熱体に引出電極を形成、例えば、銀ペーストの塗布などするときにカーボンナノチューブと電極との接点不良を起こすことがあるので、被覆層の厚みの上限は、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が特に好ましい。
ここで、被覆層の厚みは、断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。この断面観察(断面写真観察)において、カーボンナノチューブ層と被覆層との界面が明確な場合は被覆層の厚みを特定することができるが、一方、界面が明確でない場合(カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブの間に被覆層の樹脂が浸透して界面が不明確となって被覆層を特定できない場合)は、被覆層の厚みはカーボンナノチューブ層を含む厚みとする。
面状発熱体の発熱効率を高めるためには、例えば、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブ密度を高め、分散剤やバインダー等の含有量を少なくすることが好ましいが、このようなカーボンナノチューブ層は内部に比較的多くの空隙が存在することがあり、カーボンナノチューブ層上に塗布された被覆層の樹脂はカーボンナノチューブ層の空隙に浸透して、カーボンナノチューブ層と被覆層との界面が不明確となることがある。
被覆層は、上述した樹脂を含む塗料を含有する塗液をウェットコーティング法により塗布することによって形成することができる。ウェットコーティング法としては、例えばキャストコート法、ディップコート法、スピンコート法、ナイフコート法、キスコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、バーコート法等が挙げられる。
塗布された塗料は、必要に応じて乾燥し、加熱もしくは活性エネルギー線照射により硬化される。加熱硬化は、100〜160℃の温度で30〜300秒加熱することが好ましい。
活性エネルギー線照射としては、電子線照射や紫外線照射が好ましく、特に紫外線照射が好ましい。紫外線の発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。
紫外線照射の積算光量は、50〜3,000mJ/cmであることが好ましく、100〜1,000mJ/cmがより好ましい。紫外線照射により被覆層を効率よく硬化するには、紫外線照射を行う際の酸素濃度が低いことが好ましく、具体的には、5000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、500ppm以下が特に好ましい。
[面状発熱体の発光体への適用例]
本発明の面状発熱体は、各種発光体、例えば、信号機、車両ヘッドライト、踏切警報機、表示装置、街灯などの発光体に適用される。これらの発光体は、一般に、発光源とこの発光源を保護する前面カバーで構成されている。発光源としては、白熱電球、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDなどが挙げられる。
本発明の面状発熱体は、発熱量の小さいLEDを発光源とした発光体に好適である。また、本発明の面状発熱体は、信号機(特に降雪地域の信号機)に好適である。以下、信号機への適用例について説明する。
図3は、本発明の面状発熱体が適用された信号機の要部の模式断面図である。信号機本体20に発光源21および前面カバー22が配置されており、前面カバー21の内側(発光源21側)に面状発熱体10が取り付けられている。
発光源21はLED電球からなり、前面カバーは厚みが1〜4mm程度の樹脂板(例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂など)で形成されている。
面状発熱体の前面カバーへの取付けは、前面カバーを成形加工するときに、直接にあるいは接着剤を介して取り付けることができる。この成型方法としては、例えば、真空成型、圧空成型、真空成型と圧空成型を組み合わせた圧空真空成型、熱プレス成型、プラグ成型、ラミネート成型、インモールド成型、インサート成型、射出成型などが挙げられる。
また、成型加工された前面カバーに接着剤を介して面状発熱体を取り付けることができる。この成型方法としては、真空成型、圧空成型、真空成型と圧空成型を組み合わせた圧空真空成型などが挙げられる。
面状発熱体10は、カーボンナノチューブ層側が内側(発光源21側)となるように前面カバー22に取り付けられることが好ましい。これによって、電極の取り出し(カーボンナノチューブ層と電源の導通)が容易になる。
面状発熱体10は、前面カバー22の内側の空気接触面積の80%以上を覆うように取り付けられることが好ましく、90%以上を覆うように取り付けられることがより好ましく、ほぼ全領域(100%)に取り付けられることが好ましい。
また、面状発熱体は、前面カバーの外側に取り付けることができる。この場合は、面状発熱体のカーボンナノチューブ層側が前面カバー側となるように取り付けられることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(1)表面抵抗値の測定方法
面状発熱体のカーボンナノチューブ層側に4探針プローブを密着させて、4端子法により室温下で表面抵抗値を測定した。測定に使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TFPである。
(2)湿熱試験後の表面抵抗値変化率(R)の測定(湿熱耐久性)
面状発熱体のカットサンプル(100mm×100mm)を、85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露した後の表面抵抗値(R)と、湿熱試験前の表面抵抗値(R)をそれぞれ、上記「(1)表面抵抗値の測定方法」に従って測定し、下記式(1)にて表面抵抗値変化率(R)を算出した。
R=(R−R )/R×100 ・・・式(1)。
(3)50%延伸後の表面抵抗値(R50)の測定
面状発熱体を長さ150mm、幅20mmにカットし、引っ張り試験機(テンシロン ヤマト科学社製)の槽内温度を160℃に調整し、面状発熱体を試長30mmになるように設置し、面状発熱体を1分間加熱した。その後、槽内温度を保ったまま、引っ張り速度50mm/minで15mm延伸(50%延伸)し、そのまま10秒間固定しその後サンプルを取り出した。このサンプルの表面抵抗値(R50)を上記「(1)表面抵抗値の測定方法」に従って測定した。
(4)全光線透過率の測定
JIS K7361(1997年)に基づき、濁度計NDH4000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(5)ヘイズ値の測定
JIS−K7361(1997年)に基づき、濁度計NDH4000(日本電色工業(株)製)を用いて、50%延伸前のヘイズ値(Hz0)と、50%延伸後のヘイズ値(Hz1)をそれぞれ測定した。測定は、面状発熱体のカーボンナノチューブ層側から測定光を入射させた。
なお、50%延伸は、上記「(3)50%延伸後の表面抵抗値(R50)の測定」と同じ方法で延伸した。
(6)被覆層の厚み
面状発熱体の被覆層の厚みは、断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定した。測定する面状発熱体の断面を収束イオンビーム装置(FIB、Focused Ion Beam)(株式会社日立ハイテクノロジー製「FB2000A」)で薄膜化し、透過型電子顕微鏡(TEM、TRnsmission Electron Microscope)(株式会社日立ハイテクノロジー製「H7100FA」)を用いて観察した。得られた像のコントラスト差より、界面を判断し、計測した。観察は20,000倍から100,000倍の範囲で行い、被覆層の厚みが1視野内の縦方向で50%以上に収まる倍率を選択して計測した。なお、カーボンナノチューブ層と被覆層が混合して界面が不明な場合は、カーボンナノチューブ層を含めた厚みとした。
(7)発熱効率
図4に示すように、長手方向100mm×幅方向50mmにカットした面状発熱体の長手方向の両端部に幅5mmの銀ペースト電極(符号32;太陽インキ(株)製「ECM−100」)を形成した。この試験片に直流電圧(DC)(符号31)を印加し、3分後の表面温度を測定した。表面温度の測定位置は中央部(符号「×」)、表面温度計としてサーモグラフィー(NEC Avioテクノロジー社製)を用いた。試験環境は23℃、55%RHである。印加電圧を変化して、表面温度が5℃上昇したときの電圧を測定し、以下の基準で評価した。
最良:15V以下
良:15V超40V以下
可:40V超60V以下
劣:60V超。
(8)基材の160℃における100%伸長時の応力の測定
基材を長手方向および幅方向にそれぞれ長辺150mm×短辺10mmの短形に切り出して、基材の長手方向が長辺となるように切り出した試験サンプルa、および基材フィルムの幅方向が長辺となるように切り出した試験サンプルbをそれぞれ準備した。
引張試験機((株)オリエンテック製の「テンシロン UCT−100」)の槽内温度を160℃に調整し、引張試験機の引張速度が300mm/min、初期チャック間距離が50mmにて測定した。試験サンプルが100%伸長したとき(チャック間距離が100mmとなったとき)の試験サンプルにかかる荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(基材フィルムの厚み×10mm)で除した値を100%伸長時応力とした。測定は、試験サンプルaおよび試験サンプルbについてそれぞれ5回ずつ行い、得られた全ての値を平均した。
[材料および塗液の調製]
[カーボンナノチューブの製造例]
[触媒調製例:マグネシアへの触媒金属塩の担持]
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業(株)製)をメタノール(関東化学(株)製)に溶解させ、酸化マグネシウム(岩谷化学工業(株)製 MJ−30)を加え、撹拌機で撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮乾固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。上記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
[カーボンナノチューブ集合体製造例(カーボンナノチューブ集合体の合成)]
反応器は内径75mm、長さは1,100mmの円筒形石英管であり、中央部に石英焼結板を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管、上部には廃ガス管を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉を具備する。また反応管内の温度を検知するために熱電対を具備する。
触媒調製例で調製した固体触媒体を、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラーを用いて窒素ガスを16.5L/分で供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラーを用いてメタンガスを0.78L/分で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の質量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169分・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/秒であった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/分通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ、室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
[カーボンナノチューブ集合体の精製および酸化処理]
カーボンナノチューブ集合体製造例で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液を濾過した後、濾取物を再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥質量分に対して、約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業(株)製、1級、Assay60〜61質量%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ集合体を得た。
[カーボンナノチューブ層塗液(分散液)a1の調製]
上記で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ集合体、6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、セロゲン5A(質量平均分子量:8万))水溶液、イオン交換水、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)を容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)製)を用いてpH10に調整した(分散剤/カーボンナノチューブ質量比=2.5)。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、カーボンナノチューブペーストを調製した。
次にこのカーボンナノチューブペーストをカーボンナノチューブの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)製、VCX−130)の出力を20Wとし、1.5分間(0.6kW・分/g)、氷冷下分散処理した。その際、分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分間遠心処理し、カーボンナノチューブ分散液を得た。その後、イオン交換水を添加してカーボンナノチューブ集合体の濃度が0.06質量%となるように調整してカーボンナノチューブ層塗液(分散液)a1を得た。
[被覆層塗液b1]
ウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社製「UF−8001G」)の固形分濃度が2.0質量%となるように、溶媒(イソプロピルアルコール:酢酸エチル=7:3(質量比))で希釈し、さらに光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE184」)を樹脂(ウレタンアクリレート)に対して5質量%添加して調製した。
[被覆層塗液b2]
ウレタンアクリレート(新中村化学株式会社製「UA−122P」)の固形分濃度が2.0質量%となるように、溶媒(イソプロピルアルコール:酢酸エチル=7:3(質量比))で希釈し、さらに光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE184」)を樹脂(ウレタンアクリレート)に対して5質量%添加して調製した。
[被覆層塗液b3]
ウレタンアクリレート(DIC株式会社製「ユニデック」)の固形分濃度が2.0質量%となるように、溶媒(イソプロピルアルコール:酢酸エチル=7:3(質量比))で希釈し、さらに光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE184」)を樹脂(ウレタンアクリレート)に対して5質量%添加して調製した。
[被覆層塗液b4]
6官能アクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)の固形分濃度が2.0質量%となるように、溶媒(イソプロピルアルコール:酢酸エチル=7:3(質量比))で希釈し、さらに光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE184」)を樹脂(6官能アクリレート化合物)に対して5質量%添加して調製した。
[被覆層塗液b5]
熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂の水分散体(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス150」固形分濃度:30質量%)を、固形分濃度が2.0質量%となるように純水で希釈して調製した。
[アンダーコート層塗液c1]
ポリウレタン樹脂の水分散体(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス150」固形分濃度:30質量%)を固形分換算で60質量部、シリカ粒子の水分散体(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOUP」固形分濃度:15質量%)を固形分換算で40質量部、および純水を加えて、固形分濃度が15質量%のアンダーコート層塗液を調製した。
[実施例1]
以下の要領で面状発熱体を作製した。
<カーボンナノチューブ層の積層>
厚みが200μmのポリカーボネート樹脂フィルム(帝人化成(株)製の「パンライトフィルム」)の一方の面に、カーボンナノチューブ層塗液a1をスロットダイコート法により、カーボンナノチューブの固形分塗布量が7mg/mとなるように塗布した後、100℃で1分間乾燥してカーボンナノチューブ層を形成した。
<被覆層の積層>
上記で積層したカーボンナノチューブ層の上に、被覆層塗液b1をスロットダイコート法により、乾燥厚みが80nmとなるように塗布し、90℃で1分間乾燥後、紫外線を500mJ/cm照射し硬化させて被覆層を積層した。
[実施例2]
実施例1において、基材とカーボンナノチューブ層との間に、下記のアンダーコート層を設ける以外は、実施例1と同様にして、面状発熱体を作製した。
<アンダーコート層の積層>
基材の表面にアンダーコート層塗液c1をスロットダイコート法により塗布し、125℃で1分間乾燥してアンダーコート層を形成した。アンダーコート層の厚みは600nmであった。
[実施例3]
被覆層塗液b2に変更する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例4]
被覆層塗液b3に変更する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例5]
被覆層塗液b4に変更する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例6]
被覆層塗液b5に変更する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例7]
被覆層の乾燥厚みを50nmに変更する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例8]
被覆層の乾燥厚みを230nmに変更する以外は実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例9]
カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブの固形分塗布量が11mg/mとなるように塗布する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例10]
カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブの固形分塗布量が15mg/mとなるように塗布する以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例11]
基材として、厚みが188μmのPETフィルム(東洋紡(株)製の「ソフトシャイン」)を用いる以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[実施例12]
基材として、厚みが125μmのアクリル樹脂フィルム(三菱レイヨン(株)製「アクリプレン」)を用いる以外は、実施例2と同様にして面状発熱体作成した。
[比較例1]
被覆層を積層しないこと以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[比較例2]
実施例2において、基材を厚みが188μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム:東レ(株)製「ルミラー」(登録商標))に変更し、かつ被覆層を積層しないこと以外は、実施例2と同様にして面状発熱体を作製した。
[評価]
実施例および比較例で得られた面状発熱体について、前述の測定方法および評価方法に基づいて性能を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2017157461
10 面状発熱体
11 基材
12 カーボンナノチューブ層
13 被覆層
14 アンダーコート層
20 信号機本体
21 発光源
22 前面カバー
31 直流電圧(DC)
32 銀ペースト電極

Claims (10)

  1. 基材の少なくとも一方に面に、カーボンナノチューブ層および被覆層を有する発光体用面状発熱体であって、全光線透過率が75%以上、湿熱試験(85℃、85%RHの雰囲気下に500時間暴露)後の表面抵抗値変化率(R)が50%以下であることを特徴とする、発光体用面状発熱体。
  2. 50%延伸後の表面抵抗値(R50)が1000Ω/□以下である、請求項1に記載の発光体用面状発熱体。
  3. 50%延伸後のヘイズ値(Hz1)が4.0%以下である、請求項1または2に記載の発光体用面状発熱体。
  4. 前記被覆層がウレタン樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
  5. 前記被覆層が熱硬化性樹脂層もしくは活性エネルギー線硬化性樹脂層である、請求項1〜4のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
  6. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂層がウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項5に記載の発光体用面状発熱体。
  7. 前記被覆層の厚みが20nm以上300nm以下の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
  8. 前記基材の160℃における100%伸長時の応力が40MPa以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の発光体用面状発熱体。
  9. 基材が、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとの積層樹脂フィルム、から選ばれる一つである、請求項8に記載の発光体用面状発熱体。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の発光体用面状発熱体を備えた発光体。
JP2016040812A 2016-03-03 2016-03-03 発光体用面状発熱体および発光体 Pending JP2017157461A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016040812A JP2017157461A (ja) 2016-03-03 2016-03-03 発光体用面状発熱体および発光体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016040812A JP2017157461A (ja) 2016-03-03 2016-03-03 発光体用面状発熱体および発光体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2017157461A true JP2017157461A (ja) 2017-09-07

Family

ID=59810650

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016040812A Pending JP2017157461A (ja) 2016-03-03 2016-03-03 発光体用面状発熱体および発光体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2017157461A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020149306A1 (ja) * 2019-01-15 2020-07-23 積水化学工業株式会社 面状発熱体
KR102287045B1 (ko) * 2020-10-30 2021-08-09 한국전자기술연구원 자유 곡면형 3차원 구조 면상 히터 제조방법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020149306A1 (ja) * 2019-01-15 2020-07-23 積水化学工業株式会社 面状発熱体
KR102287045B1 (ko) * 2020-10-30 2021-08-09 한국전자기술연구원 자유 곡면형 3차원 구조 면상 히터 제조방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI659854B (zh) 積層體及其製造方法、電極材、散熱材、氣體阻隔材以及儲氣槽
KR101537987B1 (ko) 복합체 탄소나노튜브 파이버/얀의 제조 방법
KR101532987B1 (ko) 폴리에스테르 필름 및 그 제조방법, 및 그것을 이용한 면광원, 태양전지 백시트, 태양전지
KR101487273B1 (ko) 도전성 필름 및 그 제조 방법
WO2016208371A1 (ja) 導電積層体、それを用いた成型体、静電容量式タッチセンサーおよび面状発熱体、ならびに成型体の製造方法
JP5682694B2 (ja) 透明導電膜
KR102161963B1 (ko) 투명 적층 필름, 투명 도전성 필름 및 가스 배리어성 적층 필름
KR20190021470A (ko) 투명 도전 필름 및 투명 도전 패턴의 제조 방법
WO2016114389A1 (ja) 導電積層体および導電積層体の製造方法
TW201403635A (zh) 導電積層體、圖案化導電積層體、其製造方法、及使用彼等而成之觸控面板
JP2017157461A (ja) 発光体用面状発熱体および発光体
KR20180099782A (ko) 금속 나노와이어 잉크, 투명 도전 기판 및 투명 대전 방지용 기판
US11760070B2 (en) Electroconductive layered product, touch panel, and process for producing electroconductive layered product
WO2020171115A1 (ja) 積層フィルムおよびその製造方法
JP2011070792A (ja) 透明電極の製造方法及び透明電極
WO2012137828A1 (ja) 光硬化性組成物並びに導電性複合フィルム及びその製造方法
JP2017174666A (ja) 導電積層体
JP6185867B2 (ja) 機能性積層材料、機能性積層材料の製造方法、および機能性積層材料を含む有機電界発光装置
CN109427983B (zh) 有机发光二极管
JP4830365B2 (ja) フレキシブルディスプレイ用基板
JP2019127531A (ja) 樹脂成型体およびその製造方法、ならびにその方法に用いる塗料組成物
JP2016055583A (ja) 導電性積層体およびそれを用いたタッチパネル
TW200908778A (en) Electroluminescent element containing particles with nanostructures
JP6303769B2 (ja) 積層ポリエステルフィルム
TW201919892A (zh) 離型膜