JP2017154326A - 意匠金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、図2を参照して、本発明の実施形態に係る意匠金属板10の構成について説明する。意匠金属板10は、金属板20と、意匠フィルム30と、接着層40とを備える。接着層40は、金属板20上に積層される下層側接着層41と、下層側接着層41上に積層される上層側接着層42とを備える。したがって、接着層40は2層構造になっている。意匠フィルム30は、上層側接着層42上に積層される。
金属板20の種類は特に制限されず、広く公知の金属板を使用できる。金属板20の例としては、鋼板、ステンレス板、Al板、Cu板、真鍮板、Ti板、クロム板、ニッケル板、亜鉛板、マグネシウム板などが挙げられる。
意匠フィルム30の種類も特に制限されず、従来の意匠金属板に使用される意匠フィルムであれば本実施形態の意匠フィルム30として使用可能である。意匠フィルム30には、上述したように、各種の意匠(例えば、色、柄、エンボス等)が施されている。意匠フィルム30の例としては、単色意匠フィルム、柄物意匠フィルム等が挙げられる。単色意匠フィルムは、顔料による着色が施された意匠フィルムである。単色意匠フィルムの表面にはエンボス加工が施される場合が多い。このようなエンボス加工により光反射が抑制される。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色及び柄の印刷が施された意匠フィルムである。柄物意匠フィルムの表面には、柄を保護するための透明保護フィルムがさらに積層されていてもよい。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色が施された着色フィルムと、柄が印刷された透明保護フィルムとを圧着することによって作製される場合がある。この場合、透明保護フィルムの柄印刷面が着色フィルム側に向けられる。
意匠フィルム30を構成する樹脂は、特に制限されない。すなわち、従来の意匠フィルムに適用される樹脂であれば、本実施形態の意匠フィルム30にも適用可能である。意匠フィルム30を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。意匠フィルム30は、上述した樹脂のうち、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうちいずれか1種以上で構成されることが好ましい。これらの樹脂で構成された意匠フィルム30は、印刷の濡れ性、エンボス加工性に優れるので、高度な意匠を付与しやすい。なお、詳細は後述するが、意匠フィルム30が塩化ビニル樹脂で構成される場合、本実施形態の効果がより顕著に得られる。以下、好ましい樹脂の例について詳細に説明する。
意匠フィルム30の軟化温度は特に制限されないが、上層側接着層42に接する部分の軟化温度は150℃未満であることが好ましい。ここで、軟化温度は熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analysis)により測定される。具体的には、試料を2℃/分で加熱しつつ、試料に直径1mmの円柱針を荷重500mNで押し込む。そして、試料への円柱針の侵入深さが以下の数式(1)を満たした時の温度を軟化温度とする。なお、試料への円柱針の侵入深さは、JIS−K−7196に準拠して測定される。
ti/t200=0.8 (1)
数式(1)において、tiは侵入深さ、t200は試料温度が200℃となるときの侵入深さである。したがって、数式(1)の左辺は軟化度を示す。
意匠フィルム30の厚さは特に制限されない。ただし、本実施形態の効果を有効に利用するという観点からは、意匠フィルム30の厚さは5〜400μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
接着層40は、下層側接着層41と上層側接着層42とで構成される。下層側接着層41は、金属板20に密着しており、上層側接着層42は、意匠フィルム30に密着している。下層側接着層41は、下層側接着剤及び無機顔料を含み、上層側接着層42は、上層側接着剤及び疎水性シリカ微粒子を含む。そして、下層側接着剤の軟化温度(Tunder)は90℃以上であり、上層側接着剤の軟化温度(Tup)は80℃以下である。なお、接着剤が熱硬化型接着剤である場合は、硬化剤を含まない接着主剤のみからなるフィルムで測定した値が接着剤の軟化温度として定義される。
上層側接着層42は、上層側接着剤の他、疎水性シリカ微粒子を含む。本発明者は、意匠金属板10の耐有機溶剤性を高めるために、疎水性シリカ微粒子に着目した。さらに、本発明者は、上層側接着層42及び下層側接着層41のどちらが有機溶剤に弱いのかを確認した。具体的には、接着層40を上層側接着層42の単層とした意匠金属板10、接着層40を下層側接着層41の単層とした意匠金属板10を作製した。そして、これらの意匠金属板10に対して、後述する耐有機溶剤性評価試験を行った。この結果、接着層40を下層側接着層41の単層とした意匠金属板10の表面には、膨れがほとんどなかったが、接着層40を上層側接着層42の単層とした意匠金属板10の表面には、多くの膨れが存在した。この膨れは、有機溶剤により上層側接着層42が膨潤することで形成されるものであり、意匠金属板10の意匠性を損なうものである。したがって、上層側接着層42が有機溶剤に弱いことが判明した。上層側接着剤のガラス転移点は80℃以下と低いので、上層側接着層42の自由体積が大きくなる。このため、有機溶剤が意匠フィルム30を介して上層側接着層42内に侵入し、上層側接着層42内で拡散すると推定される。そこで、本発明者は、上層側接着層42への有機溶剤の侵入、拡散を抑制すべく、上層側接着層42に疎水性シリカ微粒子を含めることとした。この結果、後述する実施例から明らかな通り、意匠金属板10の耐有機溶剤性が飛躍的に向上した。
下層側接着層41は、下層側接着剤の他に、無機顔料を含む。本発明者は、意匠フィルム30を薄膜化した場合の隠蔽性を高めるために、無機顔料に着目した。そして、本発明者は、上層側接着層42に無機顔料を添加した。この結果、隠蔽性は確かに上昇したが、意匠フィルム30が接着層40から剥がれやすくなってしまった。具体的には、後述する初期密着力が顕著に低下した。この傾向は、意匠フィルム30が塩化ビニル樹脂で構成される場合、すなわち、意匠フィルム30が塩化ビニルフィルムとなる場合に特に顕著に現れた。そこで、本発明者は、塩化ビニルフィルムの表面をメチルエチルケトン(MEK)で洗浄し、その後、意匠フィルム30を接着層40に貼り付けたところ、初期密着力が若干改善した。この結果、本発明者は、塩化ビニルフィルムに含まれる可塑剤が初期密着力低下の原因の一つであると考えた。塩化ビニルフィルムに含まれる可塑剤は、無機顔料との相性が非常に悪く、塩化ビニルフィルムの表面に偏析しやすいからである。すなわち、塩化ビニルフィルムの表面に偏析した可塑剤によって意匠フィルム30の初期密着力が低下したと考えられる。そして、塩化ビニルフィルムの表面をメチルエチルケトンで洗浄することで、可塑剤の一部が除去される。この結果、意匠フィルム30の初期密着力が若干改善したと考えられる。しかし、依然として意匠フィルム30の初期密着力は十分に高くならなかった。
下層側接着剤及び上層側接着剤を構成する接着剤は、上述した軟化温度の条件をみたすものであればどのようなものであってもよい。下層側接着剤及び上層側接着剤を構成する接着剤の例としては、溶剤型接着剤、水性接着剤,ホットメルト型接着剤、弾性接着剤、熱硬化型(熱硬化反応型)接着剤、感圧性接着剤、天然物系接着剤が挙げられる。
下層側接着層41及び上層側接着層42の層の厚さは特に制限されない。これらの厚さは、意匠金属板10に要求される特性に応じて適宜選択できる。ただし、両層ともに厚さは1μm以上であることが好ましい。厚さが1μm未満となる場合、各層が効率的に機能発現できない可能性がある。さらに経済性の観点から、各層の厚さは20μm以下であることが好ましい。
下層側接着層41及び上層側接着層42の間には、1または複数層の他の接着層が介在していてもよい。
意匠金属板10の製造方法は、意匠フィルムが鋼板に積層される工程、並びに意匠フィルムに接着剤を積層する工程がある場合はこれらの工程でも、意匠フィルムが加熱される温度が180℃以下であれば、特に制限されない。本実施形態では、積層工程で意匠フィルムが180℃以上に加熱されることがない。かつ、上層側接着層42を構成する上層側接着剤の軟化温度が80℃以下なので、金属板20の温度が180℃以下であっても上層側接着剤は十分に軟化する。したがって、意匠フィルム30と金属板20とを強固に密着することができる。意匠金属板10の製造方法の具体例としては、以下の第1の例及び第2の例が挙げられる。
第1の例では、以下の工程により意匠金属板10を作製する。まず、金属板20上に下層側接着剤組成物を塗工することで、金属板20上に下層側接着層41を形成する。ついで、下層側接着層41を加熱することで、下層側接着剤を金属板20に密着させる。ここで、金属板20の加熱温度は、下層側接着剤を金属板20に密着させる温度であれば特に制限されない。例えば、上述したように、下層側接着層41に溶剤が含まれるか否かによって加熱温度を調整してもよい。
第2の例では、以下の工程により意匠金属板10を作製する。まず、金属板20上に下層側接着剤組成物を塗工することで、金属板20上に下層側接着層41を形成する。ついで、金属板20を加熱することで、下層側接着剤を金属板20に密着させる。ここで、金属板20の加熱温度は、下層側接着剤を金属板20に密着させる温度であれば特に制限されない。例えば、上述したように、下層側接着層41に溶剤が含まれるか否かによって加熱温度を調整してもよい。
(3−1.第1の例)
製造方法の第1の例は、例えば、図3に示す製造装置100を用いることで実現される。そこで、製造装置100の構成について説明する。もちろん、意匠金属板10の製造装置は、図3に示す製造装置100,及び後述する製造装置101に限定されない。すなわち、上述した構造を有する意匠金属板10を作製可能な製造装置であれば、どのような装置であってもよい。例えば、以下の製造装置100、101では、ロールコータ法により各接着層を形成するが、他の方法、例えばスプレー塗布法、ディップ法、フィルム状の接着剤を積層する方法等によって各接着層を形成してもよい。
製造方法の第2の例は、例えば、図4に示す製造装置101を用いることで実現される。そこで、製造装置101の構成について説明する。ここで、製造装置101は、第2ロールコータ140及び第2オーブン150の設置位置が異なる他は、上述した製造装置100と同様の構成を有する。そこで、製造装置100との相違点について説明する。
<1A.接着剤組成物の調整>
(1A−1.上層側接着主剤の作製)
以下の工程により、上層側接着主剤を調製した。まず、撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部、及び所定量の疎水性シリカ微粒子を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、上述した上層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。以上の工程により、上層側接着主剤を作製した。なお、シランカップリング剤を添加する接着剤には、接着主剤が完全に溶解したのを確認した後に、シラン化合物(信越化学社製KBM−402)と触媒(サンアプロ社製U−CAT SA102、シラン化合物1質量部に対して0.1質量部)とを加え(後述の表には記載しない)、1時間室温で撹拌し、この後、MEKを20質量部投入し30分間室温で撹拌した。この触媒は、シランカップリング剤と疎水性シリカ微粒子とを反応させる触媒である。上層側接着主剤は、疎水性シリカ微粒子を含む接着主剤である。なお、上層側接着主剤は主に上層側接着層の作製に使用されるが、下層側接着層の作製に使用される場合もある。
撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、下層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。下層側接着主剤は、疎水性シリカ微粒子を含まない接着主剤である。なお、下層側接着主剤は主に下層側接着層の作製に使用されるが、上層側接着層の作製に使用される場合もある。
撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、下層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、所定量の無機顔料を添加して1時間室温で撹拌した。その後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。なお、シランカップリング剤を添加する接着剤には、無機顔料を投入するタイミングで、シラン化合物(信越化学社製KBM−402)5質量部を加えた。その後、MEKを20質量部投入し30分間室温で撹拌した。下層側接着主剤は、無機顔料を含む接着主剤である。なお、下層側接着主剤は主に下層側接着層の作製に使用されるが、上層側接着層の作製に使用される場合もある。
上記接着主剤に硬化剤溶液(横浜ゴム社製Y6410−B)、及び触媒(サンアプロ社製U−CAT SA102)を配合することで、硬化型接着剤組成物を得た。この触媒は、接着主剤の硬化を促進するための触媒である。また、Y6410−Bは、イソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%有するポリイソシアネート樹脂である。また、硬化剤溶液の投入量は、固形分で4質量部とし、触媒の投入量は、硬化剤1質量部に対して固形分で0.1質量部とした。硬化型接着剤組成物の組成を表1〜表4に示す。
以下の方法により、各接着剤組成物の軟化温度、具体的には、接着剤組成物を構成する接着主剤の軟化温度を測定した。まず、接着剤組成物を直径7.5cm厚さ1cm程度のPE(ポリエチレン)製の容器に静かに流し込んだ。ついで、容器を静かに傾けることで、接着剤組成物の厚さを容器内で均一にした。ついで、容器を水平に保って20℃恒温室で1〜3日乾燥させることで、接着剤フィルムを作製した。ついで、接着剤フィルムを容器より静かに剥離した。なお、接着剤組成物として疎水性シリカ微粒子、無機顔料、硬化剤及び触媒を投入するまえの接着剤組成物を使用して、軟化温度を測定した。
以下の工程により意匠フィルムを準備、または作製した。
(3A−1.塩化ビニルフィルム)
(3A−1−1.単色エンボスフィルム)
塩化ビニルからなる単色エンボスフィルムとして、オカモト社製のLE301を準備した。フィルム厚さは150μmである。また、エンボスフィルムの表面には、深さ15μmのカワシボエンボス模様が施されている。
単色フィルムの作製時に使用した樹脂組成物をカレンダー法により製膜することで、厚さ120μmの原反フィルムを作製した。ここで、カレンダー法に使用するロールを鏡面ロールとすることで、鏡面仕上げの原反フィルムを作製した。ついで、連続式ラミネータを使用して、当該原反フィルムにポリエステル系接着剤(積水フーラー社製 S−580X)を塗工し、80℃で乾燥した。乾燥後、原反フィルムの接着剤塗工面上に木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、印刷面と接着剤とが接するようにしてラミネートした。以上の工程により、高鮮映フィルムを得た。
2層Tダイスを使用して、白色顔料入り(20質量%)PET系アロイからなる単色フィルム、原反フィルムを得た。いずれのフィルムも厚さは100μmとした。なお、単色フィルムには、エンボスロールを使用して上記3−1−1.と同様のエンボス模様を施し、単色エンボスフィルムとした。さらに、原反フィルムでは鏡面ロールを使用し、鏡面仕上げとした。さらに、上記3−1−2.と同様のダブリング工程を行うことで、木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PETフィルムを原反フィルムに積層した。この工程により、高鮮映フィルムを得た。ここで、PET系アロイとは、PET(ユニチカ製 MA1344)、ポリオレフィン系エラストマー(三井化学製、タフマー4085S)、エチレン3元共重合体(住友化学株式会社製、ボンドファスト7L)を87/10/3に混合したアロイである。
2層Tダイスを使用して、上層:PP(ポリプロピレン、日本ポリプロ社製、ノバレックスFB3B)、下層:無水マレイン酸変性PP(三井化学社製、アドマーSF725)からなる2層PPフィルム(上層/下層=90/10μm)を作製した。この2層PPフィルムを用いて、単色エンボスフィルム、鏡面仕上げポリオレフィン原反を得た。ここで、単色エンボスフィルムには、上記3−1−1.と同様のエンボス模様を付した。さらに、上記3−1−2.と同様のダブリング工程を行うことで、木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PETフィルムを原反フィルムに積層した。この工程により、高鮮映フィルムを得た。
フッ素系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムとして、40μm厚PVDフィルム(テドラー、デュポン社製)、PMMA(100μm厚、協和レザー社製)の単色フィルムを用意した。これらの単色フィルムの表面に上記3−1−1.と同一のエンボス模様を施すことで、単色エンボスフィルムを作製した。
金属板として、0.45mm厚さの2種類の亜鉛系金鋼板(新日鉄住金製スーパーダイマー(K08)(以下、「SD鋼板」とも称する)、GI鋼板(Z18))、Al板(A5052、1.2mm厚)を用意した。そして、これらの金属板にアルカリ脱脂処理を施した後、クロメート液を塗布し、約45mg/m2のクロメート膜を金属板表面に形成した。また、他の金属板として、粗化処理したCu板(70μm、電解銅箔板)、真空焼鈍酸洗仕上げをしたJISH4600規格Ti板(1mm厚さ)を用意した。
(5A−1.実施例1A〜19A)
実施例1A〜19Aに係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物(下層側接着層組成物)を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。金属板を室温まで冷却した後、上層用の接着剤組成物(上層側接着剤組成物)を下層側接着層上に厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を上層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱することで、上層側接着層を形成した。金属板の温度が上層加熱温度に到達した後、上述した塩化ビニルフィルム(単色エンボスフィルム、高鮮映フィルムのいずれか)を上層側接着層の表面に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。なお、金属板の加熱温度は、予め金属板表面に装着した熱電対を用いて測定した。実施例1A〜11Aでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤としてポリエステル系の接着剤組成物を使用した。実施例12A〜13Aでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物として異なる材料系の接着剤組成物を使用した。実施例14A〜19Aでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物としてアクリル系接着剤組成物を使用した。金属板は実施例毎に異なるものを使用した。以下の説明では、単色エンボスフィルムが貼り付けられた意匠金属板を「単色エンボス板」とも称し、高鮮映フィルムが貼り付けられた意匠金属板を「高鮮映板」とも称する。
意匠フィルムの種類を変更した他は実施例1Aと同様の工程を行うことで、意匠金属板を作製した。
実施例24Aに係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。ついで、金属板を室温まで冷却した。一方、上述した塩化ビニルフィルム上にコータにて上層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、意匠フィルムを上層加熱温度まで加熱した。これにより、塩化ビニルフィルム上に上層側接着層を形成した。その後、意匠フィルムを室温まで冷却した。ついで、下層側接着層が形成された金属板を上層加熱温度まで加熱し、意匠フィルム上の上層側接着層を金属板上の下層側接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。
接着層を1層だけで構成することとした他は、実施例1Aと同様の工程により、意匠金属板を作製した。すなわち、実施例1Aと同様の工程により、金属板上に接着層を形成した。ついで、金属板を加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。ついで、塩化ビニルフィルムを接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を下層側接着剤の軟化温度より高くした他は、実施例1Aと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
下層側接着剤の軟化温度を90℃未満とした他は、実施例1Aと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を80℃より高くした他は、実施例1Aと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
疎水性シリカ微粒子の添加量を本実施形態の範囲外とするか、または、疎水性シリカ微粒子を下層側接着層に添加した他は比較例1Aと同様の工程を行うことで、意匠金属板を作製した。各実施例及び比較例で作製した意匠金属板の構成を表7〜23にまとめて示す。
(6A−1.初期密着力)
単色エンボス板を用いて、初期密着力を評価した。具体的には、カッターナイフで単色エンボスフィルムに5mm幅の#型切込みを入れた。ここで、切り込みの深さは金属板に達する程度の深さとした。ついで、エリクセン試験機(DKSH社製、エリクセン試験機)を用いて#型切込み部分を8mm張り出した。ここで、張り出し部分の中心(トップ部)を#型切込み部分の中心に一致させた。ついで、#型切込み部分をピンセットで強制剥離し、剥離の程度を以下の基準で評価した。
◎◎:評点5(フィルムが凝集破壊して殆ど剥離なし)
◎:評点4(トップ部のみ剥離)
○:評点3(トップ部の全体および側面部の1/3未満が剥離)
×:評点2(トップ部の全体および側面部の全体が剥離)
××:評点1(トップ部の全体、側面加工部の全体、及び#型切込み部分の周囲が剥離)
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表7〜23にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つであるエンボス戻り率を評価した。具体的には、単色エンボスフィルム表面の算術平均粗さRa1と、単色エンボス板表面(具体的には、単色エンボス板に貼り付けられた単色エンボスフィルムの表面)の算術平均粗さRa2を接触式2次元粗さ計(オリンパス社製、OLS400)で測定した。観察面は、20×20mmとした。ついで、初期意匠保持性の指標の1つであるエンボス戻り率を以下の数式(2)により算出した。結果を表7〜23にまとめて示す。
エンボス戻り率χ: χ=1−Ra2/Ra1 (2)
高鮮映フィルムを用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つである鮮映度(PDG値)及び色落ちを評価した。具体的には、高鮮映フィルム表面及び高鮮映板表面(具体的には、高鮮映板の表面に貼り付けられた高鮮映フィルムの表面)の鮮映度を鮮明度光沢度計((財)日本色彩研究所社製PGD―IV)で測定した。そして、鮮映度を以下の基準で評価した。
◎:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1未満
○:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1〜0.2
×:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.3以上
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表7〜23にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
◎: △a<3.0
○: 3.0<△a<5.0
×: △a>5.0
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表7〜23にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、耐久性を評価した。具体的には、単色エンボス板を20日間沸騰水及び75℃の温水に浸漬した。なお、下層側接着剤の軟化温度が100℃未満となる場合、実施例6Aおよび一部の比較例を除き、75℃の温水にのみ浸漬した。以下、このような試験を「浸漬試験」とも称する。ついで、浸漬試験後のフィルム密着力を上述した初期密着力と同様の試験により評価した。さらに、浸漬試験後の単色エンボス板の端部を目視で観察し、単色エンボスフィルムの戻り(剥がれ)の有無、腐食の有無を評価した。なお、腐食の有無は、腐食が問題となる金属板、すなわちGI鋼板、SD鋼板についてのみ行った。そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表7〜23にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
以下の実験により、意匠金属板の耐有機溶剤性(耐薬品性)を評価した。50×50mmの意匠金属板を切り出し、端部をローでシールした。シール後、意匠金属板を表の薬品に常温、常圧で所定時間浸漬した(灯油、ベンジン:5時間、リグロイン:1時間)。浸漬後、表面に付着した薬品をろ紙で拭取り、表面を観察した。サンプルはN=5で調査した。そして、耐有機溶剤性を以下の基準で評価した。結果を表7〜23にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
◎◎:全く膨れなし。
◎:2個以下の微細膨れが発生するサンプルが1枚あった。ここで、微細膨れとは、微細膨れの平面形状を円近似した場合に、直径が1mm以下となる膨れを意味する。
○:2個以下の微細膨れが発生するサンプルが2枚あった。
×:全サンプルで全面に膨れが発生した。
50×50mmの単色エンボス板を切り出し、任意の5点のL値を上述した色差計で測定し、算術平均値Laを得た。標準サンプルとして、接着剤側、金属板側層に各々2μm厚みのPES−1、PES−5−R1を用い、100μm厚の単色エンボスフィルムを積層した単色エンボス板を作成した。そして標準サンプルのLaを求め、これをLasとした。隠蔽性は、下記の式で算出し、以下のように評価した。結果を表7〜23にまとめて示す。
隠蔽性: La/Las×100(%)
◎◎◎: La/Las>99.9
◎◎:La/Las99.5〜99.9
◎:La/Las=98.0〜99.5
○:La/Las=96.5〜98.0
×:La/Las<96.5
(7A−1.接着剤に関する考察)
実施例1A〜24Aでは、初期密着力、初期意匠保持性、耐久性のいずれも高い評価が得られた。すなわち、意匠フィルムが塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、フッ素樹脂フィルムのいずれであっても、また、金属板がアルミ、銅、チタン、鋼板のいずれであっても、初期の意匠性を保持しながら、初期および沸騰水への浸漬後も高い密着力を発現できた。
実施例1A〜24Aでは、意匠金属板を灯油、ベンジン、リグロインなどの有機溶剤に浸漬した場合に、膨れなどの意匠欠陥の発生を実用レベルで抑制することができた。比較例20A、21A、23Aでは、実施例と各接着層の構造が同一となっている。しかし、上層側接着層への疎水性シリカ微粒子の添加量が1質量部未満となっている。そして、比較例20A、21A、23Aでは、有機溶剤の浸漬により膨れが発生した。比較例22Aでは、上層側接着層への疎水性シリカ微粒子の添加量が10質量部を超えている。そして、比較例22Aでは、上層側接着層自体の強度が不十分になり、上層側接着層が凝集破壊して十分な初期密着力が発現できなかった。さらに、比較例24A、25Aでは、疎水性シリカ微粒子が上層側接着層ではなく下層側接着層に添加されている。比較例24A、25Aでは、有機溶剤浸漬時の膨れを防止できなかった。したがって、疎水性シリカ微粒子は、上層側接着層に添加する必要があり、かつ、その質量部は1〜10質量部であることが必要である。以下、実施例をさらに詳細に考察する。
PES1−1を使用した実施例4A−1では、疎水性シリカ微粒子の商品を開封した際に、疎水性シリカ微粒子が周囲に舞い散る傾向があり、ハンドリングしにくかった。実施例4A−1では、疎水性シリカ微粒子の平均1次粒径が7nmとなっており、他の疎水性シリカ微粒子よりも平均1次粒径が小さくなっている。このため、ハンドリング性が悪くなったと考えられる。
実施例4A−5と実施例4A−2とを比較すると、疎水性シリカ微粒子の平均1次粒径はほぼ同一であり、下層側接着層への添加量もほぼ同量である。しかし、実施例4A−2では、実施例4A−5よりも耐灯油性が優れていた。実施例4A−2では、疎水性ヒュームドシリカ微粒子を使用しており、実施例4A−5では、疎水性コロイダルシリカ微粒子を使用している。疎水性ヒュームドシリカ微粒子は、疎水性コロイダルシリカ微粒子よりも分散性が高いため、上層側接着層により高い耐有機溶剤性を付与していると考えられる。すなわち、疎水性シリカ微粒子としては、疎水性ヒュームドシリカ微粒子が好ましいと言える。
実施例4A−9では、実施例4A−2、4A−10よりも耐有機溶剤性が劣化傾向にあった。実施例4A−9では、疎水性シリカ微粒子の添加量が1.5質量部となっており、若干少なくなっている。このため、耐有機溶剤性が十分に高くならなかったと考えられる。一方、実施例4A−11では、実施例4A−2、4A−10よりも初期密着強度が低下傾向にあり、かつ接着層内で凝集破壊した。同様に、実施例16A−6では、実施例16A−1、16A−5よりも初期密着強度が低下傾向にあり、かつ接着層内で凝集破壊した。実施例4A−11、16A−6では、疎水性シリカ微粒子の添加量が10質量部となっており、若干多くなっている。この一方、実施例4A−2、4A−10、16A−1、16A−5では、疎水性シリカ微粒子の添加量が2.5〜8質量部となっている。以上の結果より、疎水性シリカ微粒子の添加量は、2.5〜8質量部であることが好ましい。
実施例4A−8、4A−8−2では、実施例4A−2よりも耐有機溶剤性が向上している。同様に、実施例16A−4では、実施例16A−1よりも耐有機溶剤性が向上している。実施例4A−8、4A−8−2、16A−4では、上層側接着主剤にシランカップリング剤が添加されている。したがって、実施例4A−8、4A−8−2、16A−4では、シランカップリング剤により、疎水性シリカ微粒子がよりより均一に上層側接着層内に分散し、耐有機溶剤性がより一層向上したと考えられる。また、実施例4A−8、4A−8−2、16A−4によれば、シランカップリング剤の添加量は、疎水性シリカ微粒子100質量部に対して、少なくとも1質量部以上が好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
実施例1A〜24Aでは、意匠フィルムの厚さが100μm未満となる場合であっても、意匠フィルムの厚さが100μmとなる場合と同程度の隠蔽性を維持することができた。なお、比較例5A、6A、11Aでは、単層の接着層に無機顔料が添加されている。このため、初期密着力を確保することができなかった。また、比較例22Aでは、下層側接着層に無機顔料が添加されているが、初期密着力を十分に確保することができなかった。
<1B.接着剤組成物の調整>
(1B−1−1.上層側接着主剤の作製1)
以下の工程により、上層側接着主剤を調製した。まず、撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部、及び所定量の疎水性シリカ微粒子を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、上述した上層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。以上の工程により、上層側接着主剤を作製した。なお、シランカップリング剤を添加する接着剤には、接着主剤が完全に溶解したのを確認した後に、シラン化合物(信越化学社製KBM−402)と触媒(サンアプロ社製U−CAT SA102、シラン化合物1質量部に対して0.1質量部)とを加え(後述の表には記載しない)、1時間室温で撹拌し、この後、MEKを20質量部投入し30分間室温で撹拌した。この触媒は、シランカップリング剤と疎水性シリカ微粒子とを反応させる触媒である。上層側接着主剤は、疎水性シリカ微粒子を含む接着主剤である。なお、上層側接着主剤は主に上層側接着層の作製に使用されるが、下層側接着層の作製に使用される場合もある。
以下の工程により、上層側接着主剤を調製した。まず、撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、上述した上層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。以上の工程により、上層側接着主剤を作製した。上層側接着主剤は、無機顔料を含まない接着主剤である。上層側接着主剤は主に上層側接着層の作製に使用されるが、下層側接着層の作製に使用される場合もある。
撹拌棒と還流冷却管を備えたフラスコ中に高沸点ナフサ(ソルベッソ150)200質量部を投入し、10分ほど撹拌した。その後、接着主剤(ポリエステル、アクリル、及びウレタンの何れか)100質量部を投入し、室温で4時間撹拌溶解した。ここで、接着主剤は、下層側接着剤を構成するものである。接着主剤が完全に溶解したのを確認した後、所定量の無機顔料を添加して1時間室温で撹拌した。その後、MEK(メチルエチルケトン、丸善石油社製)を20質量部投入し30分間室温で撹拌した。なお、シランカップリング剤を添加する接着剤には、無機顔料を投入するタイミングで、シラン化合物(信越化学社製KBM−402)5質量部を加えた。その後、MEKを20質量部投入し30分間室温で撹拌した。下層側接着主剤は、無機顔料を含む接着主剤である。なお、下層側接着主剤は主に下層側接着層の作製に使用されるが、上層側接着層の作製に使用される場合もある。
上記接着主剤に硬化剤溶液(横浜ゴム社製Y6410−Bまたはバイエル社製デスモジュールRFE)、及び触媒(サンアプロ社製U−CAT SA102)を配合することで、硬化型接着剤組成物を得た。この触媒は、接着主剤の硬化を促進するための触媒である。また、Y6410−Bは、イソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%有するポリイソシアネート樹脂である。また、硬化剤溶液の投入量は、固形分で4質量部とし、触媒の投入量は、硬化剤1質量部に対して固形分で0.1質量部とした。硬化型接着剤組成物の組成を表24〜表27に示す。
以下の方法により、各接着剤組成物の軟化温度、具体的には、接着剤組成物を構成する接着主剤の軟化温度を測定した。まず、接着剤組成物を直径7.5cm厚さ1cm程度のPE(ポリエチレン)製の容器に静かに流し込んだ。ついで、容器を静かに傾けることで、接着剤組成物の厚さを容器内で均一にした。ついで、容器を水平に保って20℃恒温室で1〜3日乾燥させることで、接着剤フィルムを作製した。ついで、接着剤フィルムを容器より静かに剥離した。なお、接着剤組成物として疎水性シリカ微粒子、無機顔料、硬化剤及び触媒を投入するまえの接着剤組成物を使用して、軟化温度を測定した。
以下の工程により意匠フィルムを準備、または作製した。
(3B−1.塩化ビニルフィルム)
(3B−1−1.単色エンボスフィルム)
塩化ビニルからなる単色エンボスフィルムとして、オカモト社製のLE301を準備した。フィルム厚さは150μmである。また、エンボスフィルムの表面には、深さ15μmのカワシボエンボス模様が施されている。
単色フィルムの作製時に使用した樹脂組成物をカレンダー法により製膜することで、原反フィルムを作製した。ここで、カレンダー法に使用するロールを鏡面ロールとすることで、鏡面仕上げの原反フィルムを作製した。ついで、連続式ラミネータを使用して、当該原反フィルムにポリエステル系接着剤(積水フーラー社製 S−580X)を塗工し、80℃で乾燥した。乾燥後、原反フィルムの接着剤塗工面上に木目印刷を施した25μm厚の2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、印刷面と接着剤とが接するようにしてラミネートした。以上の工程により、高鮮映フィルムを得た。なお、塩化ビニルフィルムの軟化温度を測定したところ、140℃であった。また、フィルム厚みの異なる複数種類の塩化ビニルフィルムを作製した。表30にフィルムの厚みを示す。
金属板として、0.45mm厚さの2種類の亜鉛系金鋼板(新日鉄住金製スーパーダイマー(K08)(以下、「SD鋼板」とも称する)、GI鋼板(Z18))、Al板(A5052、1.2mm厚)を用意した。そして、これらの金属板にアルカリ脱脂処理を施した後、クロメート液を塗布し、約45mg/m2のクロメート膜を金属板表面に形成した。また、他の金属板として、粗化処理したCu板(70μm、電解銅箔板)、真空焼鈍酸洗仕上げをしたJISH4600規格Ti板(1mm厚さ)を用意した。
(5B−1.実施例1B〜36B)
実施例1B〜36Bに係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物(下層側接着層組成物)を下層側接着層の厚みが所定厚みとなるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。金属板を室温まで冷却した後、上層用の接着剤組成物(上層側接着剤組成物)を下層側接着層上に上層側接着層の厚みが所定厚みとなるように塗布した。ついで、金属板を上層加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱することで、上層側接着層を形成した。金属板の温度が上層加熱温度に到達した後、上述した塩化ビニルフィルム(単色エンボスフィルム、高鮮映フィルムのいずれか)を上層側接着層の表面に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。なお、金属板の加熱温度は、予め金属板表面に装着した熱電対を用いて測定した。実施例1B〜11Bでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤としてポリエステル系の接着剤組成物を使用した。実施例12B〜17Bでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物としてアクリル系接着剤組成物を使用した。実施例18B〜36Bでは、上層用の接着剤組成物及び下層用の接着剤組成物として異なる材料系の接着剤組成物を使用した。金属板は実施例毎に異なるものを使用した。以下の説明では、単色エンボスフィルムが貼り付けられた意匠金属板を「単色エンボス板」とも称し、高鮮映フィルムが貼り付けられた意匠金属板を「高鮮映板」とも称する。
実施例37Bに係る意匠金属板は以下の工程により作製した。まず、金属板にコータにて下層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、金属板を下層加熱温度まで加熱した。これにより、金属板上に下層側接着層を形成した。ついで、金属板を室温まで冷却した。一方、上述した塩化ビニルフィルム上にコータにて上層用の接着剤組成物を厚さが2μmになるように塗布した。ついで、意匠フィルムを上層加熱温度まで加熱した。これにより、塩化ビニルフィルム上に上層側接着層を形成した。その後、意匠フィルムを室温まで冷却した。ついで、下層側接着層が形成された金属板を上層加熱温度まで加熱し、意匠フィルム上の上層側接着層を金属板上の下層側接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を得た。
接着層を1層だけで構成することとした他は、実施例1Bと同様の工程により、意匠金属板を作製した。すなわち、実施例1Bと同様の工程により、金属板上に接着層を形成した。ついで、金属板を加熱温度(詳細な値は後述する表に示す)まで加熱した。ついで、塩化ビニルフィルムを接着層に圧着した。以上の工程により、意匠金属板を作製した。
無機顔料の添加量を本実施形態の範囲外とするか、または、無機顔料を上層側接着層に添加した他は、実施例1Bと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を下層側接着剤の軟化温度より高くした他は、実施例1Bと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
上層側接着剤の軟化温度を80℃より高くした他は、実施例1Bと同様の工程により、意匠金属板を作製した。
下層側接着剤の軟化温度を90℃未満とした他は、実施例1Bと同様の工程により、意匠金属板を作製した。各実施例及び比較例で作製した意匠金属板の構成を表31〜42にまとめて示す。
(6B−1.初期密着力)
単色エンボス板を用いて、初期密着力を評価した。具体的には、カッターナイフで単色エンボスフィルムに5mm幅の#型切込みを入れた。ここで、切り込みの深さは金属板に達する程度の深さとした。ついで、エリクセン試験機(DKSH社製、エリクセン試験機)を用いて#型切込み部分を8mm張り出した。ここで、張り出し部分の中心(トップ部)を#型切込み部分の中心に一致させた。ついで、#型切込み部分をピンセットで強制剥離し、剥離の程度を以下の基準で評価した。
◎◎:評点5(フィルムが凝集破壊して殆ど剥離なし)
◎:評点4(トップ部のみ剥離)
○:評点3(トップ部の全体および側面部の1/3未満が剥離)
×:評点2(トップ部の全体および側面部の全体が剥離)
××:評点1(トップ部の全体、側面加工部の全体、及び#型切込み部分の周囲が剥離)
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表31〜42にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つであるエンボス戻り率を評価した。具体的には、単色エンボスフィルム表面の算術平均粗さRa1と、単色エンボス板表面(具体的には、単色エンボス板に貼り付けられた単色エンボスフィルムの表面)の算術平均粗さRa2を接触式2次元粗さ計(オリンパス社製、OLS400)で測定した。観察面は、20×20mmとした。ついで、初期意匠保持性の指標の1つであるエンボス戻り率を以下の数式(2)により算出した。結果を表31〜42にまとめて示す。
エンボス戻り率χ: χ=1−Ra2/Ra1 (2)
高鮮映フィルムを用いて、初期意匠保持性の評価指標の1つである鮮映度(PDG値)及び色落ちを評価した。具体的には、高鮮映フィルム表面及び高鮮映板表面(具体的には、高鮮映板の表面に貼り付けられた高鮮映フィルムの表面)の鮮映度を鮮明度光沢度計((財)日本色彩研究所社製PGD―IV)で測定した。そして、鮮映度を以下の基準で評価した。
◎:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1未満
○:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.1〜0.2
×:高鮮映フィルム及び高鮮映板の鮮映度の差が0.3以上
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表31〜42にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
◎: △a<3.0
○: 3.0<△a<5.0
×: △a>5.0
そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表31〜42にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
単色エンボス板を用いて、耐久性を評価した。具体的には、単色エンボス板を20日間沸騰水及び75℃の温水に浸漬した。なお、下層側接着剤の軟化温度が100℃未満となる場合、実施例6Bおよび一部の比較例を除き、75℃の温水にのみ浸漬した。以下、このような試験を「浸漬試験」とも称する。ついで、浸漬試験後のフィルム密着力を上述した初期密着力と同様の試験により評価した。さらに、浸漬試験後の単色エンボス板の端部を目視で観察し、単色エンボスフィルムの戻り(剥がれ)の有無、腐食の有無を評価した。なお、腐食の有無は、腐食が問題となる金属板、すなわちGI鋼板、SD鋼板についてのみ行った。そして、同様の試験を5回繰り返して行った。結果を表31〜42にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
以下の実験により、意匠金属板の耐有機溶剤性(耐薬品性)を評価した。50×50mmの意匠金属板を切り出し、端部をローでシールした。シール後、意匠金属板を表の薬品に常温、常圧で所定時間浸漬した(灯油、ベンジン:5時間、リグロイン:1時間)。浸漬後、表面に付着した薬品をろ紙で拭取り、表面を観察した。サンプルはN=5で調査した。そして、耐有機溶剤性を以下の基準で評価した。結果を表31〜42にまとめて示す。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
◎◎:全く膨れなし。
◎:2個以下の微細膨れが発生するサンプルが1枚あった。ここで、微細膨れとは、微細膨れの平面形状を円近似した場合に、直径が1mm以下となる膨れを意味する。
○:2個以下の微細膨れが発生するサンプルが2枚あった。
×:全サンプルで全面に膨れが発生した。
50×50mmの単色エンボス板を切り出し、任意の5点のL値を上述した色差計で測定し、算術平均値Laを得た。標準サンプルとして、接着剤側、金属板側層に各々2μm厚みのPES−1、PES−5−R1を用い、100μm厚の単色エンボスフィルムを積層した単色エンボス板を作成した。そして標準サンプルのLaを求め、これをLasとした。隠蔽性は、下記の式で算出し、以下のように評価した。結果を表31〜42にまとめて示す。
隠蔽性: La/Las×100(%)
◎◎◎: La/Las>99.9
◎◎:La/Las99.5〜99.9
◎:La/Las=98.0〜99.5
○:La/Las=96.5〜98.0
×:La/Las<96.5
(7B−1.接着剤に関する考察)
実施例1B〜37Bでは、初期密着力、初期意匠保持性、耐久性のいずれも高い評価が得られた。すなわち、金属板がアルミ、銅、チタン、鋼板のいずれであっても、初期の意匠性を保持しながら、初期および沸騰水への浸漬後も高い密着力を発現できた。
実施例1B〜37Bでは、意匠フィルムの厚さが100μm未満となる場合であっても、意匠フィルムの厚さが100μmとなる場合と同程度の隠蔽性を維持することができた。さらに、実施例4B−8、4B−12に示すように、意匠フィルム厚みが大きく変動した場合であっても、隠蔽性を確保できた。
実施例4B−5、4B−6、4B−7は隠蔽性が他の実施例に比較して劣位であった。いずれも、添加した無機顔料の粒径が、0.3μm超である。さらに、粒径が大きくなるほどこの傾向が強くなった。粒径が大きくなると散乱断面積が減少するので、隠蔽性が低下したと考えられる。さらに、粒径1μm超の無機顔料を添加した実施例4B−7では、接着剤層が凝集破壊して、初期密着力もやや劣った。粒径が大きくなると、下層側接着剤/無機顔料界面に応力が集中しやすくなるため、このような現象が生じたと考えられる。以上より、添加する無機顔料の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。無機顔料の平均粒径は0.2〜0.4μmであることがさらに好ましく、0.2μm以上0.4μm未満であることがさらに好ましく、0.2〜0.3μmであることがさらに好ましい。
実施例4B−4と実施例4B−3とでは、いずれも無機顔料の添加量、平均粒径が同じであった。それにも関わらず、実施例4B−3の方が隠蔽性に優れた。実施例4B−3の無機顔料は有機処理されている。このため、下層側接着層中により均一に分散し、散乱断面積が増加したと考えられる。
実施例4B−9、4B−10によれば、無機顔料の添加量が増大するほど、隠蔽性が増加した。但し、無機顔料の添加量が50質量部となる実施例4B−13では、接着層の機械強度がやや劣化した。実施例4B−7と同様な原因と推定される。本結果から、無機顔料の添加量は、25〜50質量部であることが好ましく、25質量部以上50質量部未満であることがより好ましく、30−45質量部であることがより好ましい。
(7B−3.疎水性シリカ微粒子に関する考察)
実施例1B〜37Bでは、意匠金属板を灯油、ベンジン、リグロインなどの有機溶剤に浸漬した場合に、膨れなどの意匠欠陥の発生を実用レベルで抑制することができた。
20 鋼板
30 意匠フィルム
40 接着層
41 下層側接着層
42 上層側接着層
100、101 意匠金属板の製造装置
120 第1ロールコータ
130 第1オーブン
140 第2ロールコータ
150 第2オーブン
160 意匠フィルム搬送装置
170 冷却装置
Claims (31)
- 金属板と、
前記金属板上に積層された下層側接着層と、
前記下層側接着層上に積層された上層側接着層と、
前記上層側接着層上に積層された意匠フィルムと、を備え、
前記下層側接着層は、下層側接着剤及び無機顔料を含み、
前記上層側接着層は、上層側接着剤及び疎水性シリカ微粒子を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であり、
前記下層側接着層は、前記下層側接着剤100質量部に対して前記無機顔料を3〜50質量部含み、
前記上層側接着層は、前記上層側接着剤100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子を1〜10質量部含むことを特徴とする、意匠金属板。 - 前記上層側接着層は、前記上層側接着剤100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子を2.5〜8質量部含むことを特徴とする、請求項1記載の意匠金属板。
- 前記疎水性シリカ微粒子の平均1次粒径は、500nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の意匠金属板。
- 前記疎水性シリカ微粒子の平均1次粒径は、85nm以下であることを特徴とする、請求項3記載の意匠金属板。
- 前記上層側接着層は、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤からなる群から選択されるいずれか1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着層は、前記下層側接着剤100質量部に対して前記無機顔料を25〜50質量部含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の意匠金属板。
- 前記無機顔料の平均粒径は、1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記無機顔料の平均粒径は、0.2〜0.4μmであることを特徴とする、請求項7記載の意匠金属板。
- 前記上層側接着剤の軟化温度は70℃以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤の軟化温度は100℃以上であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、及びユリア系の熱硬化型接着剤のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、線状ポリエステル樹脂100質量部にイソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%以上有するポリイソシアネート樹脂3〜25質量部を添加したポリエステル系熱硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記下層側接着層は、シランカップリング剤を前記下層側接着剤100質量部に対して2〜15質量部含むことを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂で構成されることを特徴とする、請求項14記載の意匠金属板。
- 前記意匠フィルムのうち、前記上層側接着層に接する部分の軟化温度は150℃未満であることを特徴とする、請求項1〜15の何れか1項に記載の意匠金属板。
- 請求項1〜16の何れか1項に記載の意匠金属板を製造する意匠金属板の製造方法であって、
180℃以下の前記金属板と前記意匠フィルムとを前記下層側接着層及び前記上層側接着層を介して接着することを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 下層側接着剤及び無機顔料を金属板上に積層することで、下層側接着層を前記金属板上に形成する工程と、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させる工程と、
上層側接着剤及び疎水性シリカ微粒子を前記下層側接着層上に積層することで、上層側接着層を前記下層側接着層上に形成する工程と、
前記金属板を180℃以下の加熱温度まで加熱することで、前記上層側接着剤を軟化させる工程と、
前記上層側接着層上に意匠フィルムを積層する工程と、を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であり、
前記下層側接着層は、前記下層側接着剤100質量部に対して前記無機顔料を3〜50質量部含み、
前記上層側接着層は、前記上層側接着剤100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子を1〜10質量部含むことを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 下層側接着剤及び無機顔料を金属板上に積層することで、下層側接着層を前記金属板上に形成する工程と、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させる工程と、
上層側接着剤及び疎水性シリカ微粒子を含む上層側接着層が意匠フィルム上に積層された積層フィルムを準備する工程と、
前記金属板の温度を180℃以下とした状態で、前記金属板上の前記下層側接着層と前記意匠フィルム上の前記上層側接着層とを貼り合わせる工程と、を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であり、
前記下層側接着層は、前記下層側接着剤100質量部に対して前記無機顔料を3〜50質量部含み、
前記上層側接着層は、前記上層側接着剤100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子を1〜10質量部含むことを特徴とする、意匠金属板の製造方法。 - 前記積層フィルムを準備する工程は、
前記上層側接着剤及び前記疎水性シリカ微粒子を前記意匠フィルム上に積層することで、上層側接着層を前記意匠フィルム上に形成する工程と、
前記意匠フィルムを加熱することで、前記上層側接着層を前記意匠フィルムに密着させる工程と、を含むことを特徴とする、請求項19記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記下層側接着剤、前記無機顔料及び溶剤を含む下層側接着剤組成物を前記金属板上に積層することで、前記下層側接着層を形成し、
前記金属板を加熱することで、前記下層側接着層に含まれる前記溶剤を蒸発させるとともに、前記下層側接着層を前記金属板に密着させることを特徴とする、請求項18〜20の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記金属板を180℃超の加熱温度まで加熱することで、前記下層側接着層を前記金属板に密着させることを特徴とする、請求項18〜20の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記上層側接着剤の軟化温度は70℃以下であることを特徴とする、請求項18〜22の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤の軟化温度は100℃以上であることを特徴とする、請求項18〜23の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、及びユリア系の熱硬化型接着剤のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項18〜24の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤及び前記上層側接着剤は、線状ポリエステル樹脂100質量部にイソシアネート基を全ジカルボン酸残基に対して30モル%以上有するポリイソシアネート樹脂3〜25質量部を添加したポリエステル系熱硬化型接着剤であることを特徴とする請求項18〜25の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記下層側接着剤、前記無機顔料及びシランカップリング剤を含む下層側接着剤組成物を前記金属板上に積層することで、前記下層側接着層を形成し、
前記シランカップリング剤は、前記下層側接着剤100質量部に対して2〜15質量部の割合で前記下層側接着剤組成物に含まれることを特徴とする、請求項18〜26の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。 - 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうち何れか1種以上で構成されることを特徴とする、請求項18〜27の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記意匠フィルムは、塩化ビニル樹脂で構成されることを特徴とする、請求項28記載の意匠金属板の製造方法。
- 前記意匠フィルムのうち、前記上層側接着層に接する部分の軟化温度は150℃未満であることを特徴とする、請求項18〜29の何れか1項に記載の意匠金属板の製造方法。
- 金属板と、意匠フィルムとを接着する意匠金属板用多層接着剤であって、
前記意匠金属板用多層接着剤は、前記意匠フィルムと接する上層側接着層と、前記金属板と接する下層側接着層とを含み、
前記下層側接着層は、下層側接着剤及び無機顔料を含み、
前記上層側接着層は、上層側接着剤及び疎水性シリカ微粒子を含み、
前記上層側接着剤の軟化温度は80℃以下であり、
前記下層側接着剤の軟化温度は90℃以上であり、
前記下層側接着層は、前記下層側接着剤100質量部に対して前記無機顔料を3〜50質量部含み、
前記上層側接着層は、前記上層側接着剤100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子を1〜10質量部含むことを特徴とする、意匠金属板用多層接着剤。
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