JP2017152132A - 燃料電池システム - Google Patents

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孝治 松本
暢一 佐津
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暢一 佐津
孝憲 四十物
Takanori Aimono
孝憲 四十物
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景一 池上
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真一 魚住
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圭史 西尾
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Abstract

【課題】 高温、高湿の環境下で、アノード循環ガス中の水素濃度を測定することができる燃料電池システムを提供する。【解決手段】 燃料電池システム1は、燃料電池2と、その制御部と、金属酸化膜を含んで構成され、燃料電池2のアノード電極2aからアノード戻り路15bに排出される循環ガスの流路に設けられた第1水素検知膜22aと、第1水素検知膜22aの透過光強度を検出する透過光強度検出部と、を備える。制御部は、燃料電池2を作動させているとき、透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、アノード電極2aからアノード戻り路15bに排出される循環ガスの水素濃度を測定する。【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
従来、燃料電池のアノード電極側に燃料ガス(例えば、水素)、カソード電極側に酸化剤ガス(例えば、大気)を供給し、これらのガスの電気化学反応により発電する燃料電池システムが知られている。
この燃料電池システムでは、アノード電極側の水素分圧が低下すると燃料電池の発電効率が低下するという問題があるが、この問題を解決するため、不純物が濃縮されたアノード排ガスを適切な時期にシステム外へ排出する工夫がなされている。
例えば、特許文献1に記載の燃料電池システムには、電気化学的水素ポンプが設けられている。電気化学的水素ポンプは、アノード排ガスから水素を選択的に取り出して燃料電池のアノード入口側へ送る機能を有する。
このとき、アノード排ガス中の不純物は、電気化学的水素ポンプの入口極側におけるガス導出部近傍に蓄積されていくので、不純物の濃度が高まるタイミングで入口極側のガス導出部に接続した開閉弁を開放することにより、不純物を選択的に外部に排出している(特許文献1/段落0023,0024,図1,2)。
特開2006−019120号公報
これまで、燃料電池が動作している高温、高湿の環境下でアノード循環ガスの水素濃度を測定することは困難であったことから、引用文献1のように所定のタイミングでアノード循環ガスを排ガスとして外部に排出していた。しかしながら、このような周期的な排出を行ったときには、不純物の濃度がそれ程高くない、無駄な排出も多く含まれていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高温、高湿の環境下でアノード循環ガスの水素濃度を測定することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明の燃料電池システムは、アノード電極及びカソード電極と、水素を含む燃料ガスを前記アノード電極に供給する燃料ガス供給路と、酸素を含む酸化剤ガスを前記カソード電極に供給する酸化剤ガス供給路と、前記アノード電極の出口と入口とを連通したアノード戻り路と、を有する燃料電池と、前記燃料電池の作動を制御する制御部と、を備えた燃料電池システムであって、金属酸化膜を含んで構成され、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの流路に設けられた第1水素検知膜と、前記第1水素検知膜の透過光強度を検出する透過光強度検出部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池を作動させているとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの水素濃度を測定することを特徴とする。
本発明では、燃料電池のアノード電極からアノード戻り路に排出される燃料ガスの流路に、金属酸化膜(例えば、Pt/WO膜)からなる第1水素検知膜を設ける。第1水素検知膜は水素に晒された場合に着色し、透過光強度が変化する。従って、透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、アノード電極からアノード戻り路に排出される燃料ガスの水素濃度を測定することができる。これにより、水素濃度を確認しながら新たな燃料ガスを供給すること等が可能となり、高効率の燃料電池システムを実現することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記アノード戻り路と前記第1水素検知膜とを連通した第1モニタ配管と、前記第1モニタ配管の前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側に設けられ、前記第1モニタ配管を開閉する第1モニタ開閉弁と、前記燃料ガス供給路と、前記第1モニタ配管における第1モニタ開閉弁の下流側かつ前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側の箇所とを連通した第2モニタ配管と、前記第2モニタ配管を開閉する第2モニタ開閉弁と、前記酸化剤ガス供給路と、前記第1モニタ配管における第1モニタ開閉弁の下流側かつ前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側の箇所とを連通した第3モニタ配管と、前記第3モニタ配管を開閉する第3モニタ開閉弁と、を備え、前記制御部は、前記第1モニタ開閉弁を開状態とし、前記第2モニタ開閉弁及び前記第3モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの水素濃度を測定し、前記第2モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1モニタ開閉弁及び前記第3モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極に供給する燃料ガスの水素濃度を測定し、前記第3モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1モニタ開閉弁及び前記第2モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記酸化剤ガスの水素濃度を測定することが好ましい。
この構成によれば、燃料電池システムは、第1モニタ配管とその開閉弁である第1モニタ開閉弁、第2モニタ配管とその開閉弁である第2モニタ開閉弁、及び第3モニタ配管とその開閉弁である第3モニタ開閉弁を備える。制御部は、各開閉弁の開閉状態を切替えることで、アノード電極からアノード戻り路に排出される燃料ガス、アノード電極に供給する燃料ガス又は酸化性ガスのそれぞれの水素濃度を測定することができる。
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記第3モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1水素検知膜に前記酸化剤ガスを送出して、前記第1水素検知膜の透過光強度を初期値に戻すことが好ましい。
この構成によれば、酸化剤ガスに含まれる酸素が第1水素検知膜中の水素を脱離するので、第1水素検知膜の着色が初期状態に戻る。これにより、透過光強度を初期値に戻すことができ、一度リセットした状態から水素濃度を正確に測定することができる。
また、本発明の燃料電池システムにおいて、金属酸化膜を含んで構成され、前記第3モニタ配管の前記第3モニタ開閉弁の配置箇所よりも上流側に設けられた第2水素検知膜と、前記第2水素検知膜の電気抵抗を検出する電気抵抗検出部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池を作動させているとき、前記電気抵抗検出部により検出される電気抵抗に基づいて、前記酸化剤ガスの水素濃度を測定し、前記第2水素検知膜により測定した前記酸化剤ガスの水素濃度と、前記第1水素検知膜により測定した該酸化剤ガスの水素濃度とを比較して精度を確認し、該酸化剤ガスの該第1水素検知膜の透過光強度を、測定基準値に設定することが好ましい。
この構成によれば、第3モニタ配管の第3モニタ開閉弁の配置箇所よりも上流側に、金属酸化膜(例えば、Pt/WO膜)からなる第2水素検知膜を設ける。第2水素検知膜は、水素に晒された場合に検知膜の電気抵抗が変化する。従って、電気抵抗検出部により検出される電気抵抗に基づいて、酸化剤ガスの水素濃度を測定することができる。
例えば、最初に酸化剤ガスの水素濃度を第1水素検知膜により測定した後、第2水素検知膜による水素濃度の測定値と比較することで測定精度を確認することができる。そして、精度が確認できた場合、酸化剤ガスの第1水素検知膜の透過光強度を測定基準値として燃料ガスの水素濃度の増減を調べることで、正確な濃度測定値を得ることができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図。 水素濃度測定時の各開閉弁の開閉タイミングチャート。 第1水素センサの装置構成図(第1実施形態)。 第2水素センサの装置構成図。 第1水素センサの装置構成図(第2実施形態)。
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成を示した図である。
図示するように、燃料電池システム1は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガス(ここでは、大気)の電気化学反応により発電する燃料電池セル2(本発明の「燃料電池」)と、燃料電池セル2に必要量の水素を供給する水素系統3と、必要量の大気を供給する大気系統4と、水素系統3からのオフガス、水素センサからのセンサ排出ガス、ミストセパレータからの排水含有ガス及び利用済み大気を排出する排出系統5と、燃料電池セル2により発電した電気を制御、蓄電、負荷等に供給する電気系統6と、制御装置7から構成される。
水素系統3は、水素が充填された水素シリンダ8と、水素シリンダ8から水素系統3へ水素を供給する水素シリンダ開閉弁9aと、水素シリンダ8から供給された高圧の水素を減圧する圧力調整弁9bと、水素系統3の循環系へ水素を供給するインジェクタ10と、水素系統3の圧力を測定する水素系統圧力センサ11aと、燃料電池セル2のアノードガスチャネル2a(本発明の「アノード電極」)と、アノードガスチャネル2aへ拡散して循環する燃料ガス中でミストとなった水分を分離するミストセパレータ12と、ミストセパレータ12からの排水含有ガスを排出するミストセパレータ開閉弁12aと、発電により生じたオフガスを排出するオフガス開閉弁13と、水素を循環させる水素系統送気ポンプ14aと、各々の構成部品間にガスを流す配管(後述する水素送り配管15a、配管15a’、水素戻り配管15b及び配管15b’)とで構成される。
大気系統4は、大気から微粒子や妨害ガスを取り除くフィルタ16と、フィルタリングした大気を送出する大気系統送気ポンプ14bと、送出された大気を加湿する加湿器18と、燃料電池セル2のカソードガスチャネル2b(本発明の「カソード電極」)と、大気系統4の圧力を測定する大気系統圧力センサ11bと、大気系統4の圧力を調圧する背圧調整弁19と、各々の構成部品間にガスを流す配管(後述する大気引込配管20a、大気送り配管20b及び大気排出配管20c)とで構成される。
燃料電池システム1には、2つの水素センサが設けられている。一方は、水素系統3の水素濃度を測定する第1水素センサ22a(本発明の「第1水素検知膜」)であり、大気開閉弁23及び後述する水素開閉弁24a,24bの下流側に配置されている。他方は、大気引込配管20aの途中に設けた第2水素センサ22b(本発明の「第2水素検知膜」)である。
また、水素系統3の水素送り配管15aからガスを引き込む配管15a’(本発明の「第2モニタ配管」)に第1水素開閉弁24a、水素戻り配管15b(本発明の「アノード戻り路」)からガスを引き込む配管15b’(本発明の「第1モニタ配管」)に第2水素開閉弁24bがある。
また、排出系統5の水抜き配管27aは、ミストセパレータ開閉弁12aが開状態のとき、ミストセパレータ12から排出される排水含有ガスを希釈器25に導く配管である。同様に、センサ排出ガス配管27bは、第1水素センサ22aから排出されるセンサ排出ガスを、オフガス配管27cは、オフガス開閉弁13が開状態のときオフガスを、それぞれ希釈器25に導く配管である。なお、センサ排出ガス配管27bには、ガス流量を調整するオリフィス26が配置されている。
制御装置7(本発明の「制御部」)は、CPU、メモリ、各種インタフェース回路等を備えて構成された電子回路ユニットである。制御装置7には、上述の水素センサ等の検出信号が入力される。また、制御装置7から出力される制御信号により、開閉弁等のアクチュエータの作動が制御される。
次に、水素系統3における水素の流れを説明する。
燃料電池セル2のアノードガスチャネル2aに供給する水素は、35MhPa〜70MhPaの高圧で水素が充填された水素シリンダ8から、水素シリンダ開閉弁9aを開いて供給される。水素シリンダ8から供給された水素は、圧力調整弁9bで数百kPaまで減圧され、インジェクタ10を介して水素系統3の水素送り配管15aへ送出される。
これにより、水素シリンダ8から送出された水素がアノードガスチャネル2aに供給される。水素はアノードガスチャネル2aでその一部が消費され、残りは水素戻り配管15bに送られ、ミストセパレータ12でミスト分離されて水素系統送気ポンプ14aに至る。そして、水素系統送気ポンプ14aに至った水素は、再び水素送り配管15aへ送出される。
水素系統3のガス圧力は、水素系統圧力センサ11aで監視されている。水素が燃料電池セル2のアノードガスチャネル2aで消費され、設定圧力(例えば、2026hPa)より低下した場合には、水素シリンダ8から新たな水素が、インジェクタ10を介して水素送り配管15aに供給される。
燃料電池セル2では、発電により水素を消費するだけでなく、カソードガスチャネル2bからアノードガスチャネル2aへ水(水蒸気)や窒素等の不純物ガスが拡散(逆拡散)して水素濃度が低下する。このため、適宜、オフガス開閉弁13を開いて不純物ガスを排出する必要がある。
次に、大気系統4における大気の流れを説明する。
燃料電池セル2のカソードガスチャネル2bに供給する大気は、フィルタ16から吸入され、大気系統送気ポンプ14bで加圧されて、定められた流量が送出される。加圧送気された大気は加湿器18で湿度70%〜90%に加湿されて、大気送り配管20bを通過してカソードガスチャネル2bに供給される。供給された大気中の酸素は、カソードガスチャネル2bでその一部が消費され、残りの大気は大気排出配管20cに送られる。そして、残りの大気は、加湿器18(大気排出配管20c側では、除湿器として機能する)で一部の水分が除かれて、背圧調整弁19及び希釈器25を経由して排出される。
大気系統4のガス圧力は、大気系統圧力センサ11bで監視され、規定の圧力(例えば、2026hPa)を保たれるように、背圧調整弁19で排出流量が調整される。
次に、排出系統5における排出ガスの流れを説明する。
燃料電池システム1から排出されるガスとしては、大気系統4の大気引込配管20a(本発明の「第3モニタ配管」)から抽気される大気と、水素系統3の配管15a’,15b’から抽気された水素を含むガスとの何れかからなるセンサ排出ガス、ミストセパレータ12から排水と共に排出される排水含有ガス、及び水素系統3から排出される一部水素を含んだオフガスがある。
希釈器25では、水素を含んだオフガス及びセンサ排出ガスが、大気排出ガスと混合されて水素濃度が4.0%以下まで希釈され、燃料電池システム1外へ排出される。なお、ガス濃度(又は、気体濃度)を規定する「%」や「ppm」は、体積濃度を表すものとする。
次に、水素センサ中のガスの流れを説明する。ここでは、図2の各開閉弁の開閉タイミングチャートを適宜参照して説明する。
まず、第1水素センサ22aには、大気系統4から引き込む大気(ゼロ復帰ガス)と、配管15a’から引き込む水素送りガスと、配管15b’から引き込む水素戻りガスの3種のガスが流れる。
大気は、大気系統4のどの場所から抽気してもよいが、図1に示すように、大気系統送気ポンプ14bと加湿器18の間から抽気するとよい。これは、大気の湿度が低い方が第1水素センサ22aのゼロ復帰(リセット)が早く、モニタサイクル(図2参照)を短くすることができるためである。
制御装置7は、第1水素センサ22aのゼロ復帰を行う際に、大気開閉弁23を開状態とし、第1水素開閉弁24a及び第2水素開閉弁24bを閉状態とするように制御する。
また、水素送りガスは、インジェクタ10とアノードガスチャネル2aの間から抽気する。これは、インジェクタ10により新たな水素が供給された場合にも、アノードガスチャネル2aに供給されるガス中の水素濃度を測定できるからである。
制御装置7は、第1水素センサ22aによりアノードガスチャネル2aに供給される水素送りガスの水素濃度を測定する際に、第1水素開閉弁24aを開状態とし、大気開閉弁23及び第2水素開閉弁24bを閉状態とするように制御する。
また、水素戻りガスは、ミストセパレータ12と水素系統送気ポンプ14aの間から抽気する。この詳細は後述するが、ガス中にミストが存在すると、第1水素センサ22aが有するヒータで加熱した際にミストが水蒸気となり、アノードガスチャネル2aから排出された水素を薄めてしまうからである。
制御装置7は、第1水素センサ22aによりアノードガスチャネル2aから排出された水素戻りガスの水素濃度を測定する際に、第2水素開閉弁24bを開状態とし、大気開閉弁23及び第1水素開閉弁24aを閉状態とするように制御する。
オリフィス26は、第1水素センサ22aに流れるガス流量を調整する。オリフィス径(孔径)を小さくすれば流れるガス流量は少なくなり、大きくすればガス流量は増大する。
希釈器25にバキュームジェネレータ(VG;Vacuum Generator)を装備してもよい。この場合、大気開閉弁23,水素開閉弁24a,24bを閉じれば第1水素センサ22a内を減圧することができる。
例えば、VGの吸引圧力が40hPaならば、100%の水素(図2の水素送りガス)を測定した後にオフセット時間を設けることで、第1水素センサ22a内の水素残留圧が40hPaになるので、その後、大気圧(1013hPa)のゼロ復帰ガスを供給してもセンサ内の水素濃度は4%以下になる。2気圧(2026hPa)の場合、水素濃度を2%以下(爆発下限界値以下)にすることができるので、水素とゼロ復帰ガスを混合しても着火を防止することができる。
また、第2水素センサ22bは、大気(ゼロ復帰ガス)の水素濃度を測定するのに用いる。第2水素センサ22bもPt/WOからなる検知膜を用いた水素センサであるが、大気の水素濃度を測定する際には、後述する電気抵抗測定を行う。
基本的に、大気にはほとんど水素が含まれないので、第1水素センサ22aにより水素濃度を測定した場合、ほぼ0%となる。また、このときの測定値を第2水素センサ22bにより測定した水素濃度の測定値と比較して精度を確認する。測定値が正確であった場合、大気の第1水素センサ22aの透過光強度を、基準となる透過光強度Iとし、後述する吸光度Aを測定することで、水素濃度を正確に測定することができる。
次に、図3を参照して、第1水素センサ22aの装置構成を説明する。
第1水素センサ22aは、光学式スルータイプの水素センサ22a1と、その上流側に配置された外部加熱式ヒータ22a2とで構成される。測定する気体(以下、被測定ガスという)は、水素濃度の測定に湿度が影響しないように、水素センサ22a1に流入する直前に外部加熱式ヒータ22a2により所定温度(例えば、150℃)にまで加熱され、その後、水素センサ22a1に送られる。
外部加熱式ヒータ22a2は、熱電対が内蔵されたジャケット部28によりヒータボディ29を覆った構造となっている。ヒータボディ29と、その内部の多孔質体(焼結体)30を加熱して、ヒータ流路31を流れる被測定ガスを加熱する。そして、加熱された被測定ガスは、下流側の水素センサ22a1に送られる。
次に、水素センサ22a1は、センサボディ33内に設けられたセンサ流路33aを挟む形で、2枚のセンサチップ34a,34b(基板の接ガス面側に検知膜を積層。本発明の「透過光強度検出部」。)を備えた構造となっている。なお、センサチップ34a,34bは、センサ流路33aからガスが漏洩しないようにガスケット(図示省略)によって気密されている。
また、センサチップ34aの上方には、光源35(例えば、発光ダイオード又はレーザダイオード)が配置されている。光源35から出射された観測光(波長600nm〜1100nm)は、コリメートレンズ36で直径数ミリ程度の平行光線に変換される。観測光は、センサボディ33に嵌め込まれた固定リング37の内部を通過して、センサチップ34bの下方に配置された集光レンズ38で集光され、受光素子39(例えば、フォトダイオード)に入射する。
被測定ガスに水素が含まれている場合、水素濃度に応じて検知膜の観測光の吸光度Aが変化する。そこで、大気(例えば、水素濃度が0%)の場合の透過光強度をIとし、被測定ガスを流した際の透過光強度Iから吸光度Aを算出する。吸光度Aは、次式
A=−log10(I/I) ・・・(式1)
で与えられる。
次に、水素センサ22a1により水素濃度を測定する原理を、センサチップ34aを例に説明する。
センサチップ34aは、その最上層(接ガス面を上方とする)に検知膜が形成されている。検知膜は、白金Ptと三酸化タングステンWO(本発明の「金属酸化膜」)からなる薄膜(Pt/WO膜)であり、透光性基板上に成膜されている。
検知膜のPt原子は、WO膜中の至る所に点在している。そして、検知膜が水素に晒された場合に、水素分子HがPt表面で原子化し、WO膜内部に拡散する(スピルオーバー効果)。さらに、水素Hがイオン化することでプロトンHと電子eとして存在するようになる。この現象の化学反応式は、
で与えられる。
また、このとき発生する電子eにより、WO膜中のタングステンイオンW6+の一部がW5+へと変化し、可視光領域において光吸収帯を形成すると共に、電子eがキャリアとなって電気伝導が促進される。このとき、Mを1価の陽イオンとして、化学反応式は、
で与えられる。
センサチップ34aの検知膜は、WO膜中のタングステンイオンW6+の一部がW5+へと変化したとき、具体的には、赤色光から近赤外光が吸収され、検知膜が青色に着色する。
検知膜の着色は、ガス雰囲気中の水素濃度が低いとき薄く、高くなるにつれて濃くなる。よって、光源35から出力されたセンサチップ34a及びセンサチップ34bを透過し、さらに受光素子39に入射したときの光強度を測定することで、水素濃度を測定することができる。
検知膜がPt/WO膜である場合、波長600nm〜1100nmの観測光を出力できる光源を用いるとよいが、観測光の波長は、検知膜の種類に応じて選択することができる。
また、酸素が含まれる雰囲気中では、検知膜の内部に拡散したプロトンHが酸素Oと反応して水HOを合成する。この化学反応式は、白金Ptを触媒として、
で与えられる。これにより、検知膜の内部の水素Hが脱離して、検知膜が脱色(透明化)する(検知膜のリセット)。なお、検知膜の透過光強度測定では、1.0%〜100%の広範囲領域の水素濃度を測定することができる。
次に、図4を参照して、第2水素センサ22bの装置構成を説明する。
第2水素センサ22bは、電気式の水素センサ22b1と、その上流側に配置された外部加熱式ヒータ22b2とで構成される。被測定ガスは、水素濃度の測定に湿度が影響しないように、水素センサ22b1に流入する直前に外部加熱式ヒータ22b2により所定温度(例えば、150℃)にまで加熱され、その後、水素センサ22b1に送られる。なお、外部加熱式ヒータ22b2は、上述の外部加熱式ヒータ22a2と同じ構成のため、説明を省略する。
水素センサ22b1は、センサボディ41の上方の開口が、ハーメチックシール42により密封されている。また、ハーメチックシール42の載置ステイ42aにはセンサチップ43(基板の接ガス面側に検知膜を積層。本発明の「電気抵抗検出部」)が載置され、検知膜の表面にパターニングされた電極パッド43aから取出し電極44が電気的に接続されている。
水素センサ22b1では、被測定ガスの水素濃度に応じて検知膜の電気抵抗が変化することを利用する。具体的には、検知膜の電気抵抗値から抵抗率ρと導電率σを求めて、水素濃度を算出する。導電率σは、抵抗率をρとして、次式
σ=1/ρ ・・・(式2)
で与えられる。また、抵抗率ρは、電気抵抗R、配線の長さをL、断面積をSとして、次式
R=ρ(L/S) ・・・(式3)
の関係がある。
例えば、水素センサを含むホイートストンブリッジ回路を組み、水素が存在しないときブリッジ回路が平衡状態となるように調整しておく。これにより、平衡状態が崩れることで、電気抵抗の変化を検出することができる。
次に、水素センサ22b1により水素濃度を測定する原理を、センサチップ43を例に説明する。
化学反応式(化2)によれば、検知膜のキャリア濃度は、水素濃度に比例して増加する。従って、水素センサ22b1では、検知膜の電極パッド43aにより電極間の電気抵抗を測定し、最終的に水素濃度を測定することができる。
被測定ガス中に水素が存在しない場合に検知膜の電気抵抗は高く、被測定ガス中の水素濃度が500ppm〜1000ppmとなると電気抵抗が減少し始め、水素が数%の濃度まで到達したとき電気抵抗の減少が止まる。電気抵抗測定は、主に500ppm(0.05%)〜4.0%程度の、低濃度領域の水素濃度を測定するのに用いられる。
以上のように第1水素センサ22a及び第2水素センサ22bは、高温・高湿の環境下でも水素濃度を正確に測定することができる。そして、燃料電池システム1の水素送り配管15a及び水素戻り配管15bを流れる循環ガスの水素濃度をモニタし、水素濃度が予め定めた閾値を下回ったとき、オフガス開閉弁13を開いてオフガスを排出する。水素濃度が高いうちは燃料ガスを再利用することができるので、高効率の燃料電池システムを実現することができる。
[第2実施形態]
最後に、図5を参照して、第2実施形態の第1水素センサ50aの装置構成を説明する。第1水素センサ50aは、第1実施形態で説明した第1水素センサ22aの代わりに用いることができる。
第1水素センサ50aは、光学式スルータイプの水素センサ50a1と、その上流側に配置された直接加熱式ヒータ50a2とで構成される。被測定ガスは、水素濃度の測定に湿度が影響しないように、水素センサ50a1に流入する直前に直接加熱式ヒータ50a2により所定温度(例えば、150℃)にまで加熱され、その後、水素センサ50a1に送られる。
直接加熱式ヒータ50a2は、ヒータボディ45の内部に螺旋状の内部ヒータ46が配置された構造となっている。内部ヒータ46には、シース熱電対47が巻きつけられている。また、ヒータボディ45の側面には軸受け構造45aがあり、軸受け構造45aに嵌合したコネクタ48を介して、内部ヒータ46に給電している。
直接加熱式ヒータ50a2は、ヒータボディ45の上方からヒータ流路49に流入する被測定ガスを加熱する。そして、加熱された被測定ガスは、下流側の水素センサ50a1に送られる。
次に、水素センサ50a1は、センサボディ33内に設けられたセンサ流路33a’に接する形で、2枚のセンサチップ34a,34b(基板の接ガス面側に検知膜を積層。本発明の「透過光強度検出部」)を備えた構造となっている。センサ流路33a’を、図示するような形状とすることで、ここを流れる被測定ガスは、センサチップ34a,34bに吹き付けられる。なお、センサチップ34a,34bは、センサ流路33aからガスが漏洩しないようにガスケット(図示省略)によって気密されている。
また、センサチップ34aの上方には、光源35が配置されている。光源35から出射された赤外光源は、コリメートレンズ36で直径数ミリ程度の平行光線に変換される。そして、センサボディ33に嵌め込まれた固定リング37の内部を通過して、センサチップ34bの下方に配置された集光レンズ38で集光され、受光素子39に入射する。
被測定ガスに水素が含まれている場合、水素濃度に応じて検知膜の赤外線の吸光度Aが変化する。第1水素センサ50aでは、被測定ガスがセンサチップ34a,34bに接し易くすることで、検知膜の水素(又は酸素)に対する赤外吸収率の応答レスポンスが向上するという効果がある。
以上のように、この燃料電池システム1は、金属酸化膜を含んで構成された第1水素センサ22aを、アノードガスチャネル2aから水素戻り配管15bに排出される水素戻りガスの流路に設ける。そして、第1水素センサ22aの検知膜の透過光強度が水素濃度に応じて変化することを利用して、水素系統3の水素送り配管15a及び水素戻り配管15bを流れるガスの水素濃度を測定する。
さらに、水素送り配管15a及び水素戻り配管15bを流れるガス中に不純物が多く含まれるようになり、水素濃度が所定の閾値を下回ったとき、水素戻り配管15bを流れるガスをオフガスとして燃料電池システム1の外部に排出する。これにより、適切な量のオフガス排出処理を行うことができるので、高効率な燃料電池システムを実現することができる。
上記実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、これ以外にも様々な変形例が考えられる。例えば、第1水素センサ22a(第1水素センサ50a)のセンサチップは、1枚としてもよい。また、センサチップの検知膜は、Pt/WO膜に限られず、五酸化バナジュウムを採用してもよい。
水素系統3の水素送り配管15a及び水素戻り配管15bを流れるガスの水素濃度測定に用いる水素センサは、高温・多湿の環境下で水素濃度を測定する必要があるので、本発明の実施形態で説明した金属酸化膜を含む検知膜の水素センサが必要となる。
なお、大気(ゼロ復帰ガス)の測定にのみ用いる水素センサは必須の構成ではなく、これがなくても本発明の課題を解決することができる。該水素センサは、金属酸化膜を含む構成にする必要はなく、接触燃焼方式等の既存の水素センサを用いることができる。
1…燃料電池システム、2…燃料電池セル(燃料電池)、2a…アノードガスチャネル(アノード電極)、2b…カソードガスチャネル(カソード電極)、3…水素系統(燃料ガス供給路)、4…大気系統(酸化剤ガス供給路)、5…排出系統、6…電気系統、7…制御装置、8…水素シリンダ、9a…水素シリンダ開閉弁、9b…圧力調整弁、10…インジェクタ、11a…水素系統圧力センサ、11b…大気系統圧力センサ、12…ミストセパレータ、12a…ミストセパレータ開閉弁、13…オフガス開閉弁、14a…水素系統送気ポンプ、14b…大気系統送気ポンプ、15a…水素送り配管、15b…水素戻り配管、15a’,15b’…配管(第2モニタ配管,第1モニタ配管)、16…フィルタ、18…加湿器、19…背圧調整弁、20a…大気引込配管(第3モニタ配管)、20b…大気送り配管、20c…大気排出配管、22a(50a)…第1水素センサ(第1水素検知膜、透過光強度検出部)、22b…第2水素センサ(第2水素検知膜、電気抵抗検出部)、23…大気開閉弁(第3モニタ開閉弁)、24a…第1水素開閉弁(第2モニタ開閉弁)、24b…第2水素開閉弁(第1モニタ開閉弁)、25…希釈器、26…オリフィス、27a…水抜き配管、27b…センサ排出ガス配管、27c…オフガス配管。

Claims (4)

  1. アノード電極及びカソード電極と、水素を含む燃料ガスを前記アノード電極に供給する燃料ガス供給路と、酸素を含む酸化剤ガスを前記カソード電極に供給する酸化剤ガス供給路と、前記アノード電極の出口と入口とを連通したアノード戻り路と、を有する燃料電池と、
    前記燃料電池の作動を制御する制御部と、を備えた燃料電池システムであって、
    金属酸化膜を含んで構成され、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの流路に設けられた第1水素検知膜と、
    前記第1水素検知膜の透過光強度を検出する透過光強度検出部と、を備え、
    前記制御部は、前記燃料電池を作動させているとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの水素濃度を測定することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
    前記アノード戻り路と前記第1水素検知膜とを連通した第1モニタ配管と、
    前記第1モニタ配管の前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側に設けられ、前記第1モニタ配管を開閉する第1モニタ開閉弁と、
    前記燃料ガス供給路と、前記第1モニタ配管における第1モニタ開閉弁の下流側かつ前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側の箇所とを連通した第2モニタ配管と、
    前記第2モニタ配管を開閉する第2モニタ開閉弁と、
    前記酸化剤ガス供給路と、前記第1モニタ配管における第1モニタ開閉弁の下流側かつ前記第1水素検知膜の配置箇所よりも上流側の箇所とを連通した第3モニタ配管と、
    前記第3モニタ配管を開閉する第3モニタ開閉弁と、を備え、
    前記制御部は、
    前記第1モニタ開閉弁を開状態とし、前記第2モニタ開閉弁及び前記第3モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極から前記アノード戻り路に排出される燃料ガスの水素濃度を測定し、
    前記第2モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1モニタ開閉弁及び前記第3モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記アノード電極に供給する燃料ガスの水素濃度を測定し、
    前記第3モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1モニタ開閉弁及び前記第2モニタ開閉弁を閉状態としたとき、前記透過光強度検出部により検出される透過光強度に基づいて、前記酸化剤ガスの水素濃度を測定することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
    前記制御部は、前記第3モニタ開閉弁を開状態とし、前記第1水素検知膜に前記酸化剤ガスを送出して、前記第1水素検知膜の透過光強度を初期値に戻すことを特徴とする燃料電池システム。
  4. 請求項2又は3に記載の燃料電池システムにおいて、
    金属酸化膜を含んで構成され、前記第3モニタ配管の前記第3モニタ開閉弁の配置箇所よりも上流側に設けられた第2水素検知膜と、
    前記第2水素検知膜の電気抵抗を検出する電気抵抗検出部と、を備え、
    前記制御部は、前記燃料電池を作動させているとき、前記電気抵抗検出部により検出される電気抵抗に基づいて、前記酸化剤ガスの水素濃度を測定し、
    前記第2水素検知膜により測定した前記酸化剤ガスの水素濃度と、前記第1水素検知膜により測定した該酸化剤ガスの水素濃度とを比較して精度を確認し、該酸化剤ガスの該第1水素検知膜の透過光強度を、測定基準値に設定することを特徴とする燃料電池システム。
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